説明

作業機の駆動力切替装置及びこれを備える作業車

【課題】電動モータによる油圧ポンプの駆動とエンジンによる油圧ポンプ駆動とを切り替える切替時間を作業内容や作業者の好みに応じて切り替え変更できる駆動力切替装置及びこれを備える作業車を提供すること。
【解決手段】電動モータ23で駆動させる第1の油圧ポンプ22又はエンジン24に駆動される第2の油圧ポンプ25で駆動される作業機6を備えると共に、作業機6の操作部14の操作時に電動モータ23による第1の油圧ポンプ22の作動とエンジン24による第2の油圧ポンプ25の作動を切換信号により切り替え制御する制御手段21を有し、制御手段21は、操作部14による操作開始から作動時間をカウントするタイマー29と、タイマー29で設定された切替時間に達すると切換信号を出力する比較手段29aと、タイマー29の切替時間を設定変更する切替時間設定手段30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業機の駆動力切替装置及びこれを備える作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、移動式クレーンや高所作業車等の作業車はエンジンで走行可能に設けられている。この作業車は、旋回台(可動部)の上に伸縮ブーム(可動部)を起伏可能に取り付けた作業機が設けられている。この旋回台は油圧モータで旋回駆動可能に設けられ、伸縮ブームは伸縮シリンダで伸縮可能に設けられている。しかも、伸縮ブームは、起伏シリンダで起伏可能に設けられている。
【0003】
このような油圧モータや伸縮シリンダ,起伏シリンダ等の油圧駆動ユニットは、通常、作業車の走行に用いられるエンジンで回転駆動される油圧ポンプにより、駆動されるようになっているのが普通である。
【0004】
一方、近年、夜間や住宅地などの騒音や排ガスを嫌う環境下において作業車により作業をする場合、エンジンを停止した状態で作業を行う必要性が増大している。この必要性を満たす作業車として、電動モータで油圧ポンプを駆動して、油圧駆動ユニットを静かに駆動できるようにしたものもある。
【0005】
また、この油圧ポンプをエンジンと電動モータで選択的に駆動可能にした作業車も知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特許第3330908号公報
【特許文献2】特開2006−160432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような作業車においては、旋回台の旋回動作や伸縮ブームの起伏動作及び伸縮動作等を備える作業機の移動(駆動)をスムーズ且つ迅速に行えるのが望ましい。しかも、作業機の操作時に、電動モータによる油圧ポンプの駆動とエンジンによる油圧ポンプの駆動を切り替えて作業機を移動させる場合も、切替時間を作業内容や作業者の好みに応じて変更できるのが望ましい。
【0007】
そこで、この発明は、電動モータによる油圧ポンプの駆動とエンジンによる油圧ポンプ駆動とを切り替える切替時間を作業内容や作業者の好みに応じて切り替え変更できる駆動力切替装置及びこれを備える作業車を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、請求項1の発明は、エンジンが搭載された車体に設けられた作業機と、前記作業機を駆動させるための油圧を発生する第1の油圧ポンプと、前記第1の油圧ポンプを駆動させる電動モータと、前記エンジンに駆動され前記作業機を駆動させるための油圧を発生する第2の油圧ポンプと、前記作業機の操作に用いる操作手段と、前記操作手段の操作時に前記電動モータによる前記第1の油圧ポンプの作動と前記エンジンによる前記第2の油圧ポンプの作動を切換信号により切り替え制御する制御手段を有する作業機の駆動力切替装置において、前記制御手段は、前記操作手段による操作開始から作動時間をカウントするタイマーと、タイマーで設定された切替時間に達すると前記切換信号を出力する比較手段と、前記タイマーの切替時間を設定変更する切替時間設定手段とを設けた作業機の駆動力切替装置としたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記制御手段は、前記操作手段の操作開始時に前記電動モータを作動制御して前記第1の油圧ポンプを駆動させ、前記比較手段からの前記切換信号で前記電動モータの作動制御から前記エンジンの作動制御に切り換えて、前記エンジンの駆動力を前記第2の油圧ポンプに伝達させるように制御することを特徴とする。
【0010】
更に、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、前記タイマーの切替時間を段階的又は無段階に変更操作可能にする手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、作業姿勢検出手段により検出した作業姿勢の検出結果によって前記タイマーの切替時間を設定変更することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、前記操作手段において検出した操作量の検出結果によって前記タイマーの切替時間を設定変更することを特徴とする。
【0013】
更に、請求項6の発明は、請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、前記操作手段において検出した操作対象のアクチュエータの検出結果によって前記タイマーの切替時間を設定変更することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、前記操作手段において検出した前記操作手段のうち操作に係っているのがどの位置に設けられている操作手段であるかの検出結果によって前記タイマーの切替時間を設定変更することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか一つに記載の作業機の駆動力切替装置における前記エンジンは、車輪を駆動する車両駆動エンジンであることを特徴とする作業機の駆動力切替装置。
【0016】
更に、請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか一つに記載の作業機の駆動力切替装置を備える作業車としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、エンジンと電動モータを切り替える時間を変更する切替時間設定手段を設けているので、電動モータによる第1の油圧ポンプの駆動とエンジンによる第2の油圧ポンプの駆動とを切り替える切替時間を、作業内容や作業者の好みに応じて変更できる。
【0018】
例えば、作業機の操作開始時には電動モータで駆動される第1の油圧ポンプにより作業機を駆動制御させた後、作業者が切替時間設定手段により設定した切替時間で電動モータの制御をエンジンの制御に切り替えて、エンジンの回転駆動力を第2の油圧ポンプに伝達させ、第2の油圧ポンプを駆動制御させることにより、作業機の移動開始を作業内容や好みに応じた時間でスムーズに行わせた後に作業機の移動制御を迅速に行わせることができる。
【0019】
また、例えば、作業機の移動終了位置の直前まで第2の油圧ポンプで作業機を迅速に移動させる時間を作業者の好みに応じて設定して、作業機の移動終了位置の直前に、エンジンによる第2の油圧ポンプの駆動制御を電動モータによる第1の油圧ポンプの駆動制御に切り替え、第1の油圧ポンプによる作業機の微小な移動制御をさせることにより、作業内容や作業者の好みに応じた作業機の移動操作を容易に行うことができる。
【0020】
更に、請求項2の発明によれば、作業機の操作開始時には電動モータで駆動される第1の油圧ポンプにより作業機を駆動制御させるので、作業機の移動開始をスムーズに行うことができる。しかも、作業機が所定の作業姿勢になったのをタイマーにより検出して、電動モータの作動をエンジンの作動に切り替えて、エンジンの回転駆動力を第2の油圧ポンプに伝達して、第2の油圧ポンプを駆動制御させるので、作業機の移動制御を迅速に行わせることができる。
【0021】
また、請求項3の発明によれば、電動モータの作動とエンジンの作動の切替時間を変更させる切替時間設定手段を簡単な構成で実現できる。この切替時間の設定は段階的または無段階に行うことができるので、作業者の好みに応じた切替時間を容易に設定できる。
【0022】
また、請求項4の発明によれば、切替時間設定手段は作業姿勢検出手段により検出した作業姿勢の検出結果によってタイマーの切替時間を設定変更するので、作業機が目的の作業姿勢になるまでの移動を作業者にとって好ましい状態で実行できる。
【0023】
また、請求項5の発明によれば、切替時間設定手段は操作手段において検出した操作量の検出結果によってタイマーの切替時間を設定変更するので、例えば操作量が小さい範囲では切替を遅らせ且つ操作量の大きい範囲で切替を早く行うようにすることにより、操作量が小さい範囲では切替が行われない内に作業機の微動操作を行うことができる。
【0024】
更に、請求項6の発明によれば、前記切替時間設定手段は操作手段において検出した操作対象のアクチュエータの検出結果によってタイマーの切替時間を設定変更するので、小移動時のアクチュエータによる速度差を小さくできる。
【0025】
また、請求項7の発明によれば、切替時間設定手段は前記操作手段において検出した前記操作手段のうち操作に係っているのがどの位置に設けられている操作手段であるかの検出結果によって前記タイマーの切替時間を設定変更するので、作業機の移動を操作手段の設けられている位置に応じた移動速度で安全に行うことができる。
【0026】
また、請求項8の発明によれば、請求項1と同様な効果を有する。
【0027】
また、請求項9の発明によれば、請求項1〜7の作業機の駆動力切替装置の効果を備える作業車を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[構成]
図1は、この発明に係る作業機の駆動力切替装置が設けられる作業車の一例として、高所作業車を示したものである。
【0029】
この図1において高所作業車1は、車体2の前端部に車両運転用のキャビン(運転室)3を有する。また、車体2の前部には前輪4が設けられ、車体2の後部には後輪5が設けられている。
【0030】
また、高所作業車1は、高所作業に用いる作業機6を有する。この作業機6は、水平旋回可能に車体2に取り付けられた旋回台7と、旋回台7上に固定されたブラケット8を有する。この旋回台7は、図2の油圧モータ7aにより旋回駆動されるようになっている。
【0031】
更に、高所作業車1は、基端部がブラケット8側に配設された伸縮ブーム9と、伸縮ブーム9の先端部側に配設された垂直ポスト10と、伸縮ブーム9の先端部側に配設された作業台としてのバケット11を有する。
【0032】
この伸縮ブーム9は、第1ブーム9aと、第2ブーム9b、第3ブーム9b1を入れ子式に嵌合することにより、伸縮可能に設けられている。また、伸縮ブーム9は、図2の伸縮シリンダ(伸縮アクチュエータ)9cにより伸縮駆動されるようになっている。しかも、伸縮ブーム9は、支持軸9dを中心に起伏可能に第1ブーム9aの基端部がブラケット8に支持軸9dで取り付けられている。更に、伸縮ブーム9は、ブラケット8と第1ブーム9aとの間に介装した起伏シリンダ(起伏アクチュエータ)12で起伏駆動可能に設けられている。
【0033】
また、第2ブーム9bの先端部にはポスト支持部材13が一体に設けられ、ポスト支持部材13には支持ポスト10が支持軸10aを介して回動可能に取り付けられている。この支持ポスト10は、伸縮ブーム9の起伏状態が変化しても支持軸10aを介して回動して、常時鉛直方向を向くようにポスト支持部材13に取り付けられている。この構成には周知の構成が採用されているので、その詳細な説明は省略する。
【0034】
更に、支持ポスト10には、バケット11が水平回動可能(水平旋回可能)に取り付けられている。このバケット11は、図1では図示を省略したバケット回動モータにより水平回動駆動可能に設けられている。このバケット回動モータとしては、油圧モータ又は電動モータを用いることができる。尚、本実施例では、バケット回動モータとして電動モータを用いている。また、バケット11には作業機6の操作部14が操作手段として設けられ、車体2の後端部には作業機6の操作部14aが操作手段として設けられている。
【0035】
また、車体2の前部側の両側部には前側アウトリガー15がそれぞれ設けられ、車体2の後部側の両側部には後側アウトリガー16がそれぞれ設けられている。このアウトリガー15,16は、作業機6による作業時に接地させて用いられる。この構成にも周知の構成を採用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
更に、操作手段としての操作部14は、図2に示したように、所定方向に傾動操作可能な旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19,バケット操作レバー20等を有する。
【0037】
この旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19,バケット操作レバー20等は、往復する方向に傾動操作可能にそれぞれ設けられていて、その傾動操作量及び傾動操作方向が図示を省略したレバー操作検出センサーによりそれぞれ検出されるようになっている。そして、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19,バケット操作レバー20の各レバー操作検出センサーからの操作信号が制御装置である制御手段(制御回路)21の演算制御回路21aに入力されるようになっている。
【0038】
また、図2において演算制御回路21aは、第1の油圧ポンプ22を駆動する電動モータ(ポンプ駆動源)23と、ポンプ駆動源として用いる車両駆動エンジン24と、バケット11を回動駆動する電動モータ27に接続されている。
【0039】
尚、図1の高所作業車1は、後輪5を図示しないトランスミッションを介して図2の車両駆動エンジン24で駆動させることにより、走行可能となっている。この構成には周知の構成を採用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0040】
また、第1の油圧ポンプ22又は第2の油圧ポンプ25から吐出される作動油は油圧回路28に供給される。この油圧回路28は複数の電磁切換弁(図示せず)を有し、この複数の電磁切換弁(図示せず)は演算制御回路21aにより切替制御されるようになっている。
【0041】
即ち、油圧回路28は、旋回操作レバー17の操作方向に応じて演算制御回路21aにより切替操作される旋回方向切替用の電磁切換弁(図示せず)、起伏操作レバー18の操作方向に応じて演算制御回路21aにより切替操作される起伏方向切替用の電磁切換弁(図示せず)、伸縮操作レバー19の操作方向に応じて制御手段(制御装置)21の演算制御回路21aにより切替操作される伸縮方向切替用の電磁切換弁(図示せず)を有する。
【0042】
この演算制御回路21aは、旋回操作レバー17を一方向に傾動操作すると、旋回方向切替用の電磁切換弁(図示せず)を切替制御して、第1の油圧ポンプ22又は第2の油圧ポンプ25から吐出される作動油で油圧モータ7aを一方向に回転させるように、油圧モータ7aに作動油を供給させる一方、旋回操作レバー17を反対方向に傾動操作すると、旋回方向切替用の電磁切換弁(図示せず)を切替制御して、第1の油圧ポンプ22又は第2の油圧ポンプ25から吐出される作動油で油圧モータ7aを反対方向に回転させるように、油圧モータ7aに作動油を供給させる。
【0043】
また、演算制御回路21aは、起伏操作レバー18を一方向に傾動操作すると、起伏方向切替用の電磁切換弁(図示せず)を切替制御して、第1の油圧ポンプ22又は第2の油圧ポンプ25から吐出される作動油で起伏シリンダ12を伸長させて、伸縮ブーム9を起立させる方向に移動させるように、起伏シリンダ12に作動油を供給させる一方、起伏操作レバー18を反対方向に傾動操作すると、起伏方向切替用の電磁切換弁(図示せず)を切替制御して、第1の油圧ポンプ22又は第2の油圧ポンプ25から吐出される作動油で起伏シリンダ12を縮小させて、伸縮ブーム9を倒伏させる方向に移動させるように、起伏シリンダ12に作動油を供給させる。
【0044】
更に、演算制御回路21aは、伸縮操作レバー19を一方向に傾動操作すると、伸縮方向切替用の電磁切換弁(図示せず)を切替制御して、第1の油圧ポンプ22又は第2の油圧ポンプ25から吐出される作動油で伸縮シリンダ9cを伸長させるように、伸縮シリンダ9cに作動油を供給させる一方、伸縮操作レバー19を反対方向に傾動操作すると、伸縮方向切替用の電磁切換弁(図示せず)を切替制御して、第1の油圧ポンプ22又は第2の油圧ポンプ25から吐出される作動油で伸縮シリンダ9cを縮小させるように、起伏シリンダ12に作動油を供給させる。
【0045】
このように演算制御回路21aは、旋回操作レバー17の操作方向に応じて油圧モータ7aを正転又は逆転させて旋回台7を正転又は逆転させ、起伏操作レバー18の操作方向に応じて起伏シリンダ12を伸縮させて伸縮ブーム9を起伏させ、伸縮操作レバー19の操作方向に応じて伸縮シリンダ9cを伸縮させて伸縮ブーム9を伸縮させるようになっている。
【0046】
そして、演算制御回路21aは、油圧回路28の複数の電磁切換弁(図示せず)を切替制御して、旋回操作レバー17の操作に応じて作動油を油圧モータ7aに供給し、起伏操作レバー18の操作に応じて作動油を起伏シリンダ12に供給し、伸縮操作レバー19の操作に応じて作動油を伸縮シリンダ9cに供給するようになっている。
【0047】
このような旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19の操作による油圧モータ7a,起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9cの作動の構成については周知の構成を採用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0048】
また、演算制御回路21aは、電動モータ23を駆動する際、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19の傾動操作量に応じて、第1の油圧ポンプ22の作動油の吐出量を増減するようになっている。また、演算制御回路21aは、車両駆動エンジン25を駆動する際、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19の傾動操作量に応じて、第2の油圧ポンプ25の作動油の吐出量を増減するようになっている。これらの作動油の吐出量が増減されると、油圧回路28から伸縮シリンダ9c,起伏シリンダ12,油圧モータ7a等に供給される作動油の量も増減される。
【0049】
これらの場合、例えば第1,第2の油圧ポンプ22,25に可変吐出量型プランジャポンプ等を用いて、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19の傾動操作量に応じ、可変吐出量型プランジャポンプ等の吐出量を増減させるように演算制御回路21aで制御させる。
【0050】
尚、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19の傾動操作量に応じて、油圧回路28から伸縮シリンダ9c,起伏シリンダ12,油圧モータ7a等に供給される作動油の量を増減させる手段としては、可変流量バルブ(図示せず)を用いることができる。この場合、油圧回路28内に可変流量バルブ(図示せず)を設けておいて、この可変流量バルブ(図示せず)及び図示しない電磁切換弁を介して第1の油圧ポンプ22又は第2の油圧ポンプ25からの作動油を伸縮シリンダ9c,起伏シリンダ12,油圧モータ7a等に供給するようにする。しかも、可変流量バルブ(図示せず)の流量を旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19の傾動操作量に応じて演算制御回路21aにより制御して変更させることで、油圧回路28から伸縮シリンダ9c,起伏シリンダ12,油圧モータ7a等に供給される作動油の量を増減させることができる。
【0051】
また、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19の傾動操作量に応じて電動モータ23の回転出力を変更させる変速手段により、第1の油圧ポンプ22の回転数を増減させることで、油圧回路28から伸縮シリンダ9c,起伏シリンダ12,油圧モータ7a等に供給される作動油の量を増減させることができる。更に、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19の傾動操作量に応じて車両駆動エンジン24の回転出力を変更させる変速手段により、第2の油圧ポンプ25の回転数を増減させることで、油圧回路28から伸縮シリンダ9c,起伏シリンダ12,油圧モータ7a等に供給される作動油の量を増減させることができる。
【0052】
しかも、演算制御回路21aは、操作部14の操作時に電動モータ23と車両駆動エンジン24を切替制御するようになっている。この際、演算制御回路21aは、電動モータ23を先に駆動制御している場合には、電動モータ23の駆動開始から所定時間後に電動モータ23を停止させる一方、車両駆動エンジン24を始動させて、車両駆動エンジン24からの回転駆動力をPTO装置26を介して第2の油圧ポンプ25に伝達させるようになっている。
【0053】
また、制御手段21は、操作部(操作手段)14による操作開始から作動時間をカウントするタイマー29と、タイマー29で設定された切替時間に達すると切換信号を出力する比較手段29aと、タイマー29の切替時間を設定変更する切替時間設定手段30とを有する。
【0054】
そして、比較手段29aの切換信号は演算制御回路21aに入力されるようになっている。また、切替時間設定手段30は、タイマー29の切替時間を段階的又は無段階に変更操作する切替時間変更手段31を有する。
【0055】
尚、切替時間変更手段31としてロータリースイッチ(ダイヤル操作されるスイッチ)やスライドスイッチ、アップ・ダウンスイッチ等により切替時間を段階的に変更させるようにすることもできる。また、切替時間変更手段31としてダイヤル式の可変抵抗やスライド抵抗等を用いて、切替時間を無段階に変更させるようにすることもできる。
【0056】
このように電動モータ23の作動と車両駆動エンジン24の作動との切替時間を変更させる切替時間設定手段30は、切替時間変更手段31を設けただけの簡単な構成で実現できる。しかも、切替時間の設定は切替時間変更手段31により段階的または無段階に行うことができるので、作業者の好みに応じた切替時間を容易に設定できる。
【0057】
また、図1に示したように、伸縮ブーム9の第1ブーム9aには、伸縮ブーム9の起伏角を検出する起伏角センサ(作業姿勢検出手段としての起伏角検出手段)32と、伸縮ブーム9の伸縮量を検出する伸縮量検出センサ(又はブーム長さ検出手段)としてポテンショメータ(作業姿勢検出手段としての伸縮量検出手段)33が設けられている。この起伏角センサ32には振り子式の周知のセンサが用いられている。尚、伸縮量検出センサにはロータリーエンコーダを用いることもできる。
【0058】
また、ポテンショメータ33の図示しない回転軸には巻取ドラム34が取り付けられていて、この巻取ドラム34に捲回されたワイヤ35の端部は伸縮ブーム9の第3ブーム9b1の先端部に固定されている。尚、巻取ドラム34は図示しない渦巻きバネ等でワイヤ35を捲回する方向に回転付勢されている。
【0059】
そして、起伏角センサ32から出力される角度信号及びポテンショメータ33からの回転信号は演算制御回路21aに入力される。この演算制御回路21aは、起伏角センサ32からの角度信号から伸縮ブーム9の起伏角を求め、ポテンショメータ33からの回転信号から伸縮ブーム9の長さ(ブーム長さ)を求めるようになっている。
【0060】
尚、この発明の構成を図1では車体2に設けられたブームレスト2aに伸縮ブーム9が略水平に格納される高所作業車で説明したが、図3に示したように伸縮ブーム9の先端を後方に向けて格納したり、下方に傾斜した状態で格納する高所作業車であっても良い。
[作用]
次に、このような図1〜図3の高所作業車における構成の作業機6の駆動力切替装置の作用を説明する。
(i).伸縮ブーム9の作業姿勢による駆動源の切り替え
<作業機6の作業位置への移動>
高所作業車の伸縮ブーム9を図1のように水平に格納した状態、又は図3のように伸縮ブーム9の先端側が下方に傾斜した格納位置にある状態で、作業者が高所作業車1の電源をONさせた後、アウトリガー15,16を操作する手段(図示せず)を操作して作業機6の操作のためにアウトリガー15,16を接地させる。
【0061】
次に、この格納状態で作業者が旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19等を操作する場合、演算制御回路21aは起伏操作レバー18が操作されたか否かを起伏操作レバー18のレバー操作検出センサー(図示せず)からの操作信号から判断する。
【0062】
そして、演算制御回路21aは、起伏操作レバー18を伸縮ブーム9が起立する方向に操作したのを起伏操作レバー18のレバー操作検出センサー(図示せず)からの操作信号から判断すると、電動モータ23を駆動させて第1の油圧ポンプ22を回転駆動させ、第1の油圧ポンプ22から吐出される作動油を油圧回路28を介して起伏シリンダ12に供給し、起伏シリンダ12を伸長させて、伸縮ブーム9を起立させる方向に移動させる。この移動は、電動モータ23により駆動される第1の油圧ポンプ22で行うため、伸縮ブーム9の起伏動作がスムーズに行われる。この際、演算制御回路21aは、伸縮ブーム9の起伏角を起伏角センサ32からの角度信号から求める。
【0063】
また、演算制御回路21aは、伸縮ブーム9を図1のように水平に格納した状態、又は図3のように伸縮ブーム9の先端側が下方に傾斜した格納位置にある状態から、伸縮操作レバー19を伸縮ブーム9が伸長する方向に操作すると、第1の油圧ポンプ22から吐出される作動油を油圧回路28を介して伸縮シリンダ9cに供給し、伸縮シリンダ9cを伸長させて、伸縮ブーム9を伸長させる。この伸長(移動)は、電動モータ23により駆動される第1の油圧ポンプ22で行うため、伸縮ブーム9の伸長動作がスムーズに行われる。この際、ワイヤ35が巻取ドラム34から引き出されて、ポテンショメータ33が巻取ドラム34と一体に回転させられる。そして、演算制御回路21aは、この際のポテンショメータ33の回転信号から伸縮ブーム9のブーム長さを求める。
【0064】
ところで、図1のように伸縮ブーム9が略水平な格納位置にあるときや、図3のように伸縮ブーム9の先端側が下方に傾斜した格納位置にあって、伸縮ブーム9の長さが3〜4mのときに、起伏操作レバー18を伸縮ブーム9が起立する方向に操作した場合、演算制御回路21aは伸縮ブーム9の起立方向への移動操作は大移動の意思ありと判断する。
【0065】
この判断により演算制御回路21aは、電動モータ23による第1の油圧ポンプ22の駆動時間を短くして、早く車両駆動エンジン24を作動させて、車両駆動エンジン24の回転駆動力をPTO装置26を介して第2の油圧ポンプ25に伝達させる。この場合、電動モータ23の作動から車両駆動エンジン24及びPTO装置26の作動への切替時間は、作業者が予め切替時間設定手段30の切替時間変更手段31で段階的又は無段階に設定して演算制御回路21aに入力し、この入力により演算制御回路21aがタイマー29に設定させる。
【0066】
そして、電動モータ23の動作開始からの時間をタイマー29でカウントさせて、このカウント時間が設定した切替時間になると、比較手段29aから切換信号が出力され、演算制御回路21aはこの切換信号により電動モータ23の作動から車両駆動エンジン24の作動へ切り替える。
【0067】
このように、演算制御回路21aは、電動モータ23の作動から車両駆動エンジン24の作動への切替タイミングは、起伏角センサ32からの角度信号から求めた伸縮ブーム9の起伏角や、ポテンショメータ33からの回転信号から求めた伸縮ブーム9のブーム長さから判断して実行している。
【0068】
また、この切り替えにより、第2の油圧ポンプ25が車両駆動エンジン24により駆動されると、第2の油圧ポンプ25からの作動油が多量に起伏シリンダ12に伸縮ブーム9の起伏方向に供給され、伸縮ブーム9の起立速度が速くなる。この際、伸縮操作レバー19が伸縮ブーム9の伸長方向に操作されている場合には、第2の油圧ポンプ25からの作動油が多量に伸縮シリンダ9cに供給されて、伸縮ブーム9の伸長速度が速くなる。
【0069】
このようにすることで、伸縮ブーム9を格納位置から作業位置近傍まで移動させる際に、駆動初期は電動モータ23及び第1の油圧ポンプ22により伸縮ブーム9を滑らかに短時間移動させた後に、車両駆動エンジン24及び第2の油圧ポンプ25により伸縮ブーム9を迅速に移動させることができるので、伸縮ブーム9を格納位置から作業位置近傍まで移動させる時間を短縮できる。
【0070】
そして、演算制御回路21aは、伸縮ブーム9の起伏角が例えば5°で伸縮ブーム9の長さが例えば4mを超えたとき、作業機6やバケット11が目的の作業位置近くまで到達していると判断し、作業機6を小移動させる小移動モードに切り替える。即ち、演算制御回路21aは、小移動モードになると、車両駆動エンジン24の作動を電動モータ23の作動に切り替える。これにより、第1の油圧ポンプ22からの小量の作動油が油圧回路28を介して起伏シリンダ12や伸縮シリンダ9cに供給されて、起伏シリンダ12や伸縮シリンダ9cの伸長速度が遅くなり、伸縮ブーム9の起立速度や伸長速度が遅くなり、作業機6を目的の作業位置まで微動させることができる。
【0071】
このような切り替えも、起伏角センサ32からの角度信号から求めた伸縮ブーム9の起伏角や、ポテンショメータ33からの回転信号から求めた伸縮ブーム9のブーム長さから判断して実行している。
【0072】
そして、旋回操作レバー17の操作により、第1の油圧ポンプ22からの小量の作動油が油圧回路28を介して油圧モータ7aに供給させて、旋回台7を回転させ(正転又は逆転)ながら、伸縮ブーム9及びバケット11を目的の作業位置に移動させる。
<作業機6の作業位置からの格納位置への移動>
また、作業機6を格納位置へ移動する際には、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19等で作業機6を上述した動作と逆に操作することにより、演算制御回路21aは上述した制御動作とは逆の制御動作をする。
【0073】
尚、本実施例における伸縮ブーム9の起伏角等による切り替えタイミングは一例を示したものであるので、必ずしも上述した起伏角やブーム長さの数値に限定されるものではない。例えば、この切り替えタイミング即ち切替時間は、作業者(オペレータ)の好みや作業内容に応じて、切替時間設定手段30の切替時間変更手段31により段階的又は無段階に設定変更できる。即ち、小移動モードから大移動モードへの切替時間や、大移動モードから小移動モードへの切替時間は、作業者の好みに応じて切替時間設定手段30の切替時間変更手段31により設定変更できる。
(ii)操作レバーの傾動操作量(傾動操作位置)による切り替え
また、図4に示したように、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19等の操作レバーは、大きく傾動操作ができるようになっている。これらの操作レバーの傾動操作量は、図示を省略した傾動センサ又はスイッチ等で検出できるようになっている。そして、この検出した操作レバーの傾動操作量は図4の制御回路(判定部)21に入力されるようになっている。しかも、演算制御回路21aは、操作レバーの傾動量に応じて、小移動モード又は大移動モードでの旋回台7の回転制御や伸縮ブーム9の起伏速度や伸縮速度の制御を実行させるようになっている。
【0074】
即ち、図4に示したように、操作レバーの傾動操作量が小さい操作範囲Aでは演算制御回路21aは小移動モードとなる。そして、演算制御回路21aは、小移動モードでは車両駆動エンジン24の作動を停止させると共に、電動モータ23を作動させることにより、電動モータ23で第1の油圧ポンプ22を駆動させて、第1の油圧ポンプ22から油圧モータ7a,起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9c等に小量の作動油を供給する時間を長くする。これに伴い、旋回台7が油圧モータ7aにより低速回転させられ、伸縮ブーム9が起伏シリンダ12により低速で起伏させられ、伸縮ブーム9が伸縮シリンダ9cにより低速で伸縮させられるようになっている。
【0075】
また、演算制御回路21aは、旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19等の操作レバーの傾動操作量が大きくストロークエンドまでの大きい操作範囲(傾動操作量が例えば70%以上の範囲)B,Cでは、伸縮ブーム9の移動操作は大移動の意思ありと判断して、大移動モードへの切替え時間を早くする。
【0076】
そして、演算制御回路21aは、大移動モードでは電動モータ23の作動を停止すると共に、車両駆動エンジン24を作動させることにより、車両駆動エンジン24で第2の油圧ポンプ25を作動させて、第2の油圧ポンプ25から油圧モータ7a,起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9c等に多量の作動油を供給するようにする。これに伴い、旋回台7が油圧モータ7aにより高速回転させられ、伸縮ブーム9が起伏シリンダ12により高速で起伏させられ、伸縮ブーム9が伸縮シリンダ9cにより高速で伸縮させられるようになっている。
【0077】
尚、油圧モータ7a,起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9c等への作動油の供給は、上述したように各旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19等の操作に応じて個別に行われる。また、各旋回操作レバー17,起伏操作レバー18,伸縮操作レバー19等の幾つかを同時に操作すれば、操作したレバーに応じて作動油が油圧モータ7a,起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9c等の幾つかに同時に(複合的)に供給される。
(iii)操作内容による切り替え
また、切替時間を、例えば、伸縮操作レバー19の操作のみによる伸縮ブーム9の伸縮は約3秒、起伏操作レバー18の操作のみによる伸縮ブーム9の起伏制御は約2秒、旋回操作レバー17の操作のみによる旋回台7の回転制御は約10秒とすることができる。この場合において、伸縮操作レバー19の操作による伸縮ブーム9の伸縮や、起伏操作レバー18の操作による伸縮ブーム9の起伏制御、或いは旋回操作レバー17の操作のみによる旋回台7の回転制御は単独で行うことができる。
【0078】
また、伸縮操作レバー19の操作による伸縮ブーム9の伸縮や、起伏操作レバー18の操作による伸縮ブーム9の起伏制御、或いは旋回操作レバー17の操作のみによる旋回台7の回転制御は、幾つかを同時に(複合的に)演算制御回路21aで制御させることができる。この場合には次のような傾向がある。
【0079】
即ち、例えば伸縮ブーム9の起伏制御と伸縮制御を同時に(複合的に)行う場合は、電動モータ23により第1の油圧ポンプ22を駆動して、第1の油圧ポンプ22から起伏シリンダ12や伸縮シリンダ9c等に作動油を供給した場合、供給される作動油は複数のアクチュエータを作動させる場合に比べて量が少ないので、伸縮ブーム9の起伏や伸縮の移動速度が遅くなる。
【0080】
従って、このような場合において、伸縮ブーム9の起伏や伸縮の移動速度を早くして十分な速度が得られるようにするには、起伏シリンダ12や伸縮シリンダ9cに多量の作動油を供給する必要がある。
【0081】
このためには、電動モータ23の作動を車両駆動エンジン24の作動に早く切り替え、電動モータ23による第1の油圧ポンプ22の駆動が停止させると共に、車両駆動エンジン24を作動させて、第2の油圧ポンプ25を車両駆動エンジン24で駆動させ、第2の油圧ポンプ25から多量の作動油を起伏シリンダ12や伸縮シリンダ9cに供給させる。これにより、伸縮ブーム9の起伏や伸縮の移動速度を速くすることができる。
【0082】
このような制御は、伸縮操作レバー19,起伏操作レバー18,旋回操作レバー17等の操作を図示しないセンサにより検出して演算制御回路21aに入力させて、演算制御回路21aにより判断させることにより、演算制御回路21aにより実行させる。
【0083】
尚、本実施例における移動速度の秒数は一例を示したものであるので、必ずしも移動速度は上述した秒数に限定されるものではない。
(iV)操作部14の設ける位置による切替制御
また、操作部14の設ける位置により、電動モータ23と車両駆動エンジン24との切替操作を行う場合について説明する。
【0084】
例えば、操作部14をバケット(作業台)11に設け、操作部14と同様な操作レバーを有する操作部を車体(フレーム)2に設けることができると共に、操作部14と同様な操作レバーを有する操作部(図示せず)を旋回台7に設けることができる。この車体(フレーム)2に操作部を設ける場合には、図1のように操作部14と同様な操作レバーを有する操作部14aを車体2の後部に設けたり、操作部14と同様な操作レバーを有する操作部14bを図3のようにキャビン3の直後に設けることができる。
【0085】
そして、 操作部14を図1の如くバケット(作業台)11に設けた場合には、作業者がバケット11に乗った状態で操作部14を使用することになるので、安全性を考慮して演算制御回路21aによる作業機6の移動速度の制御を小移動モードが長くなるようにする。
【0086】
この場合、演算制御回路21aは、電動モータ23を作動させて第1の油圧ポンプ22を駆動させ、小量の作動油を第1の油圧ポンプ22から油圧モータ7a,起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9c等に供給して、旋回台7の回転速度,伸縮ブーム9の起伏速度や伸縮速度を遅くする。この際、演算制御回路21aは、作業機6の移動を例えば略10秒程度かけて遅く切替制御する。
【0087】
また、旋回台7に設けた操作部(図示せず)や車体2に設けた操作部14a,14bは、バケット11に作業者が乗らない状態で作業機6の動作の点検を行うために用いる。このため、旋回台7や車体2に設けた操作部14a,14bにより作業機6を点検等のために動かす(移動させる)場合には、作業機6をスピーディ(迅速)に移動させる大移動モードに早く切替えるのが点検時間を短くする上でも好ましい。
【0088】
この際、旋回台7に設けた操作部(図示せず)により作業機6を点検等のために動かす(移動させる)場合、作業機6を略5秒程度かけて早く移動させ、車体2に設けた操作部14a,14bにより作業機6を点検等のために動かす(移動させる)場合、作業機6を略2秒程度かけてより早く移動させるようにする。
【0089】
このように制御手段21は、操作部(操作手段)14,14b,14c等の設けられている位置に応じて切替時間を変更するので、作業機6の移動を安全に行うことができる。
【0090】
尚、本実施例における移動速度の秒数は一例を示したものであるので、必ずしも移動速度は上述した秒数に限定されるものではない。
(V)車両駆動エンジンの他に静音エンジンを設けた場合の切り替え
また、図5に示したように、車輪を駆動する車両駆動エンジン24と、この車両駆動エンジン24とは別に設けられた静音エンジン24aが高所作業車1に搭載されている場合、この車両駆動エンジン24と静音エンジン24aを電動モータ23と組み合わせて用いることができる。
【0091】
そして、作業機6を移動させるモードには、車両駆動エンジン24を作動させる大移動モードと、静音エンジン24aを作動させる中移動モードと、電動モータ23を作動させる小移動モードがある。
(作業機6の小移動モードと大移動モードによる移動)
この大移動モードと小移動モードの切替は、モード切替スイッチ(モード切替手段)34で行うことができる。そして、演算制御回路21aは、モード切替スイッチ34で大移動モードに切り替えられると、車両駆動エンジン24の作動と電動モータ23の作動の切替を上述したように実行する。
【0092】
この場合には、作業機6を遅い移動速度と早い移動速度とで切り替え移動させることができる。従って、伸縮ブーム9が格納された位置から作業機6の移動操作を開始する場合には、小移動モードの電動モータ23によって作業機6の移動開始を迅速に実行した後、大移動モードで作業機6を目的の作業位置付近まで速い速度で移動させ、作業機6が目的の作業位置付近まで移動したときに、再度、小移動モードで作業機6を目的の作業位置まで微小移動させて位置決めできる。
【0093】
しかも、このように電動モータ23により駆動される第1の油圧ポンプ22と車両駆動エンジン24により駆動される第2の油圧ポンプ25を切り替え制御して、第1の油圧ポンプ22又は第2の油圧ポンプ24で駆動される作業機の移動をスムーズ且つ迅速に行うことができる。
(作業機6の小移動モードと中移動モードによる移動)
また、演算制御回路21aは、モード切替スイッチ34で中移動モードに切り替えられると、静音エンジン24aの作動と電動モータ23の作動の切替を、上述した作業内容や作業姿勢に応じて或いは切替時間で実行する。この中移動モードでは、小移動モードと大移動モードの中間の中移動速度で作業機6を移動させることができる。
【0094】
しかも、この場合には、作業機6を遅い移動速度と中移動速度で切り替え移動させることができる。従って、伸縮ブーム9が格納された位置から作業機6の移動操作を開始する場合には、小移動モードの電動モータ23によって作業機6の移動開始を迅速に実行した後、中移動モードで作業機6を目的の作業位置付近まで中移動速度で移動させ、作業機6が目的の作業位置付近まで移動したときに、再度、小移動モードで作業機6を目的の作業位置まで微小移動させて位置決できる。
【0095】
この中移動モードでは作業機6を移動させる速度が大移動モードに比べて遅いが、中移動モードでの静音エンジン24aは大移動モードでの車両駆動エンジン24に比べてエンジン作動音が小さく静かであると共に排ガスの排出量が少ない。従って、静かさや排ガス規制を求められる場所や夜間等での作業を行う場合に、中移動モードとすることにより、ある程度静かで排ガスの排出量を少なくしながら、作業機6の移動をある程度迅速に行うことができる。
【0096】
従って、電動モータ23と車両駆動エンジン24で作業機6を移動制御する場合に比べて、作業機6の移動を静かに且つ少ない排ガスで行うことができるので、夜間や住宅地などの騒音や排ガスを嫌う環境下においての作業に適している。この場合でも、電動モータ23で駆動される第1の油圧ポンプ22のみによる作業機の移動制御に比べて、作業機6をスムーズ且つ迅速に行うことができる。
【0097】
以上説明したように、この発明の実施の形態の作業機の駆動力切替装置は、エンジン(24,24a)が搭載された車体2に設けられた作業機6と、前記作業機6を駆動させるための油圧を発生する第1の油圧ポンプ22と、前記第1の油圧ポンプ22を駆動させる電動モータ23と、前記エンジン(24,24a)に駆動され前記作業機6を駆動させるための油圧を発生する第2の油圧ポンプ(25,25a)と、前記作業機6の操作に用いる操作手段(操作部14)と、前記操作手段の操作時に前記電動モータ23による前記第1の油圧ポンプ22の作動と前記エンジン(24,24a)による前記第2の油圧ポンプ(25,25a)の作動を切換信号により切り替え制御する制御手段21を有する。しかも、前記制御手段21は、前記操作手段(操作部14)による操作開始から作動時間をカウントするタイマー29と、タイマー29で設定された切替時間に達すると切換信号を出力する比較手段29aと、前記タイマー29の切替時間を設定変更する切替時間設定手段30とを有する。
【0098】
この構成によれば、エンジン(24,24a)と電動モータ23を切り替える時間を変更する切替時間設定手段30を設けているので、電動モータ23による第1の油圧ポンプ22の駆動とエンジン(24,24a)による第2の油圧ポンプ25の駆動とを切り替える切替時間を、作業内容や作業者の好みに応じて変更できる。
【0099】
例えば、作業機の操作開始時には電動モータ23で駆動される第1の油圧ポンプ22により作業機を駆動制御させた後、作業者が切替時間設定手段30により設定した切替時間で電動モータ23の制御をエンジン(24,24a)の制御に切り替えて、エンジン(24,24a)の回転駆動力を第2の油圧ポンプ(25,25a)に伝達させ、第2の油圧ポンプ(25,25a)を駆動制御させることにより、作業機6の移動開始を作業内容や好みに応じた時間でスムーズに行わせた後に作業機の移動制御を迅速に行わせることができる。
【0100】
また、例えば、作業機6の移動終了位置の直前まで第2の油圧ポンプ(25,25a)で作業機を迅速に移動させる時間を作業者の好みに応じて設定して、作業機6の移動終了位置の直前に、エンジン(24,24a)による第2の油圧ポンプ(25,25a)の駆動制御を電動モータ23による第1の油圧ポンプ22の駆動制御に切り替え、第1の油圧ポンプ22による作業機6の微小な移動制御をさせることにより、作業内容や作業者の好みに応じた作業機6の移動操作を容易に行うことができる。
【0101】
また、この発明の実施の形態の作業機の駆動力切替装置において、前記制御手段21は、前記操作手段(操作部14)の操作開始時に前記電動モータ23を作動制御して前記第1の油圧ポンプ22を駆動させ、前記比較手段30aからの前記切換信号で前記電動モータ23の作動制御から前記エンジン(24,24a)の作動制御に切り換えて、前記エンジン(24,24a)の駆動力を前記第2の油圧ポンプ(25,25a)に伝達させるように制御する。
【0102】
この構成によれば、作業機6の操作開始時には電動モータで駆動される第1の油圧ポンプ22により作業機6を駆動制御させるので、作業機6の移動開始をスムーズに行うことができる。しかも、作業機6が所定の作業姿勢になったとのをタイマー30により検出して、電動モータ23の作動をエンジン(24,24a)の作動に切り替えて、エンジン(24,24a)の回転駆動力を第2の油圧ポンプ(25,25a)に伝達して、第2の油圧ポンプ25を駆動制御させるので、作業機6の移動制御を迅速に行わせることができる。
【0103】
更に、この発明の実施の形態の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段30は、前記タイマー29の切替時間を段階的又は無段階に変更操作する手段31を備えている。この構成によれば、電動モータ23の作動とエンジン(24,24a)の作動の切替時間を変更させる切替時間設定手段30を簡単な構成で実現できる。この切替時間の設定は段階的または無段階に行うことができるので、作業者の好みに応じた切替時間を容易に設定できる。
【0104】
また、この発明の実施の形態の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段30は、作業姿勢検出手段により検出した作業姿勢の検出結果によって前記タイマー29の切替時間を設定変更することができる。
【0105】
ここで、作業姿勢検出手段は、図1,図2に示した起伏角センサ32やポテンショメータ(ブーム長さ検出手段)33、旋回台7の旋回角を検出する旋回角検出手段(図示せず)等である。そして、作業姿勢は、伸縮ブーム9の起伏角やブーム長さ、旋回台の旋回角等がある。しかも、この構成において、切替時間設定手段30は、図示を省略したROM等のメモリ(記憶手段、記録手段)や他の記録手段(光磁気ディスク等)に記憶させた切替時間変更テーブルに従って切替時間を変更する。この切替時間変更テーブルは、切替時間設定手段30に設けられている。
【0106】
例えば、この切替時間変更テーブルには、操作部(14,124a,14b)の操作により伸縮ブーム9が格納位置にある状態から作業位置まで作業姿勢を変化させる際、最初の短時間は電動モータ23で第1の油圧ポンプ22を駆動することにより、滑らかに伸縮ブーム9を起立させたり伸縮ブーム9を伸長させた後、迅速に電動モータ23からエンジン(24,24a)に切り替えて、エンジン(24,24a)により第2の油圧ポンプ(25,25a)を駆動することにより、伸縮ブーム9の起立速度を早くさせたり伸縮ブーム9の伸長速度を速くするような、切替時間を記憶又は記録させておく。また、この切替時間変更テーブルには、伸縮ブーム9が格納位置にない場合の電動モータ23とエンジン(24,24a)切替時間等も記憶又は記録させておく。
【0107】
この構成によれば、切替時間設定手段30は作業姿勢検出手段により検出した作業姿勢の検出結果によってタイマー29の切替時間を設定変更するので、作業機が目的の作業姿勢になるまでの移動を作業者にとって好ましい状態で実行できる。
【0108】
また、この発明の実施の形態の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段30は、前記操作手段において検出した操作量の検出結果によって前記タイマー29の切替時間を設定変更することができる。この操作手段は、操作部(14,14a,14b)における操作レバー等である。この切替時間も上述した切替時間変更テーブルに記憶又は記録させておく。
【0109】
この構成によれば、切替時間設定手段30は操作手段において検出した操作量の検出結果によってタイマー29の切替時間を設定変更するので、例えば操作量が小さい範囲では切替を行うのを遅らせ且つ操作量の大きい範囲で切替を早く行うようにすることにより、操作量が小さい範囲では切替を行われない内に作業機の微動操作を行うことができる。
【0110】
また、この発明の実施の形態の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段30は、前記操作手段において検出した操作対象のアクチュエータ(起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9c)の検出結果によって前記タイマー29の切替時間を設定変更することができる。この操作手段は、操作部(14,14a,14b)における操作レバー等である。この検出結果による切替時間も上述した切替時間変更テーブルに記憶又は記録させておく。
【0111】
この場合、操作部(14,14a,14b)における操作レバー等の操作状態及び操作時間等、または上述した作業姿勢の検出手段からアクチュエータ(起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9c)の伸縮状態を検出して、この検出結果が切替時間変更テーブルに記憶又は記録させた切替時間に対応したときに、電動モータ23とエンジン(24,24a)とを切り替える。例えば、上述したように伸縮ブーム9の作業姿勢が格納位置であるか他の位置であるかにより、上述したように電動モータ23とエンジン(24,24a)とを切り替える時間を切り替える。尚、作業姿勢の検出手段は起伏角センサ32やポテンショメータ(ブーム長さ検出手段)33、旋回台7の旋回角を検出する旋回角検出手段(図示せず)等である。
【0112】
この構成によれば、前記切替時間設定手段30は操作手段において検出した操作対象のアクチュエータ(起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9c)の検出結果によってタイマー29の切替時間を設定変更するので、確実に操作対象のアクチュエータ(起伏シリンダ12,伸縮シリンダ9c)の移動速度の切替を行うことができる。
【0113】
また、この発明の実施の形態の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段30は、前記操作手段において検出した前記操作手段のうち操作に係っているのがどの位置に設けられている操作手段(14,14a,14b)の検出結果によって前記タイマー29の切替時間を設定変更することができる。
【0114】
この構成によれば、切替時間設定手段30は前記操作手段において検出した前記操作手段のうち操作に係っているのがどの位置に設けられている操作手段(14,14a,14b)であるかの検出結果によって前記タイマー29の切替時間を設定変更するので、作業機の移動を操作手段の設けられている位置に応じた移動速度で安全に行うことができる。
【0115】
また、この発明の実施の形態の作業車の上述した作業機の駆動力切替装置における前記エンジンは、車輪を駆動する車両駆動エンジンである。この構成によれば、請求項1〜7の作業機の駆動力切替装置の効果を備える作業車を提供できる。
【0116】
以上説明した実施例ではこの発明に係る作業機の駆動力切替装置を高所作業車に適用した例を説明したが、この発明に係る作業機の駆動力切替装置は高所作業車以外の移動式クレーン等の作業車にも適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】この発明に係る作業機の駆動力切替装置を備える高所作業車の斜視図である。
【図2】図1に示した作業機の駆動力切替装置の制御回路図である。
【図3】図1に示した高所作業車の変形例を示す斜視図である。
【図4】図2の操作レバーの説明図である。
【図5】図2に示した作業機の駆動力切替装置の他の制御回路図である。
【符号の説明】
【0118】
1・・・高所作業車(作業車)
2・・・車体
6・・・作業機
14・・・操作部(操作手段)
17・・・旋回操作レバー
18・・・起伏操作レバー
19・・・伸縮操作レバー
21a・・・演算制御回路
22・・・第1の油圧ポンプ
23・・・電動モータ
24・・・車両駆動エンジン(エンジン)
24a・・・,静音エンジン(エンジン)
25・・・第2の油圧ポンプ
26・・・PTO装置)
29・・・タイマー
29a・・・比較手段
30・・・切替時間設定手段
31・・・切替時間変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが搭載された車体に設けられた作業機と、前記作業機を駆動させるための油圧を発生する第1の油圧ポンプと、前記第1の油圧ポンプを駆動させる電動モータと、前記エンジンに駆動され前記作業機を駆動させるための油圧を発生する第2の油圧ポンプと、前記作業機の操作に用いる操作手段と、前記操作手段の操作時に前記電動モータによる前記第1の油圧ポンプの作動と前記エンジンによる前記第2の油圧ポンプの作動を切換信号により切り替え制御する制御手段を有する作業機の駆動力切替装置において、
前記制御手段は、前記操作手段による操作開始から作動時間をカウントするタイマーと、タイマーで設定された切替時間に達すると前記切換信号を出力する比較手段と、前記タイマーの切替時間を設定変更する切替時間設定手段とを設けたことを特徴とする作業機の駆動力切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記制御手段は、前記操作手段の操作開始時に前記電動モータを作動制御して前記第1の油圧ポンプを駆動させ、前記比較手段からの前記切換信号で前記電動モータの作動制御から前記エンジンの作動制御に切り換えて、前記エンジンの駆動力を前記第2の油圧ポンプに伝達させるように制御することを特徴とする作業機の駆動力切替装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、前記タイマーの切替時間を段階的又は無段階に変更操作可能にする手段を備えたことを特徴とする作業機の駆動力切替装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、作業姿勢検出手段により検出した作業姿勢の検出結果によって前記タイマーの切替時間を設定変更することを特徴とする作業機の駆動力切替装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、前記操作手段において検出した操作量の検出結果によって前記タイマーの切替時間を設定変更することを特徴とする作業機の駆動力切替装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、前記操作手段において検出した操作対象のアクチュエータの検出結果によって前記タイマーの切替時間を設定変更することを特徴とする作業機の駆動力切替装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の作業機の駆動力切替装置において、前記切替時間設定手段は、前記操作手段において検出した前記操作手段のうち操作に係っているのがどの位置に設けられている操作手段であるかの検出結果によって前記タイマーの切替時間を設定変更することを特徴とする作業機の駆動力切替装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の作業機の駆動力切替装置における前記エンジンは、車輪を駆動する車両駆動エンジンであることを特徴とする作業機の駆動力切替装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の作業機の駆動力切替装置を備えることを特徴とする作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−242066(P2009−242066A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91520(P2008−91520)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】