説明

作業機械の油圧制御回路

【課題】簡単な構造で操作性に優れかつエネルギ効率のよい作業機械の油圧回路を提供すること。
【解決手段】この油圧制御回路は、可変容量式ポンプ7と、このポンプ7からブームコントロールバルブ5を介して供給される作動油により作動するブームシリンダ1の排出側と、この排出側の流量を変化させる流量調整弁10との間の油路から分岐してポンプ吐出側に連通する回生回路23と、ブームシリンダ1の排出側の圧力を検出する圧力センサ15と、ポンプ7の吐出圧を検出する圧力センサ16と、ブームシリンダ1の排出側の圧力がポンプ吐出圧よりも高い場合に、この排出側の作動油を回生回路23を通してポンプ吐出側に戻して回生を行うように流量制御弁9,10を制御するとともに、この回生を行う場合に、回生を行わないときに設定される目標ポンプ吐出流量から回生流量を減じるようにポンプ7を制御するコントローラ8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の油圧制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧式の作業機械では、位置エネルギや慣性エネルギは回生されずに絞りにより熱エネルギに変換されて捨てられており、エネルギ効率が悪いという問題があった。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1の技術では、エンジンの出力軸に可変容量モータを結合し、アクチュエータの油圧エネルギをこのモータにより回生している。また、特許文献2の技術では、ブームシリンダでブーム下げ動作を行った場合に、戻り油を拡大再生弁を通してブームシリンダと共通のポンプを使用する他のアクチュエータの制御系に連通させ、他のアクチュエータを増速させているものの、この技術は必ずしもエネルギ効率の向上を図るものではない。さらに、特許文献3の技術では、アクチュエータから排出される作動油を回生し、回生流量に応じて油圧ポンプの吐出流量を減少させることで省エネを図ることが行われている。
【特許文献1】特開2003−120616号公報
【特許文献2】特開2003−120604号公報
【特許文献3】特開2004−84907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術では、エンジンの出力軸に可変容量モータを新たに結合させる必要があり、構造が複雑になるとともに、可変容量モータの設置スペースが必要となりレイアウトが難しくなるといった問題があった。
【0005】
また、他のアクチュエータを増速させたくない場合もあるが、上記特許文献2の技術では、そのような場合には戻り油の流量が過大となる結果、当該他のアクチュエータの速度が変化し、操作性が悪化するといった問題があった。
【0006】
なお、上記特許文献2の技術を、旋回モータに適用したとすると、上記問題に加えてさらなる問題があった。すなわち、通常旋回モータの出入口ポートにはリリーフ弁が設置されているため、回生操作において旋回操作レバーを急に戻して急制動をかけた場合、旋回モータからの作動油のリターン圧がリリーフ圧まで上昇し、上記リリーフ弁が作動することがある。このような場合、減速時の慣性エネルギはリリーフ弁の圧力損失として消費されてしまうため、回生できる慣性エネルギが減少してしまうといった問題があった。
【0007】
さらに、上記特許文献3の技術では、単一のアクチュエータについて回生を行うようにしているため、例えば、このアクチュエータが減速している状況下では、このアクチュエータに対して要求される作動油の供給量が少量であるため、回生に利用できる流量が少量となる結果、減速時の回生による省エネ効果がほとんど得られなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構造で操作性に優れかつエネルギ効率のよい作業機械の油圧制御回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、可変容量式ポンプと、このポンプから供給される作動油により作動する複数のアクチュエータと、上記アクチュエータの排出側の流量を変化させる流量可変手段と、コントローラとを備えた作業機械の油圧制御回路において、上記アクチュエータの排出側と上記流量可変手段との間の油路から分岐してポンプ吐出側に連通する回生回路を設け、上記コントローラは、上記アクチュエータの排出側の圧力がポンプ吐出圧よりも高い場合に、この排出側の作動油を上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻して回生を行うように上記流量可変手段を制御する第1制御手段と、この回生を行う場合に、回生を行わないときに上記複数のアクチュエータへの供給流量の和として設定される目標ポンプ吐出流量から上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻される作動油の流量を減じるように上記ポンプを制御する第2制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明のように、上記コントローラは、上記目標ポンプ吐出流量から上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻される作動油の流量を減じた流量が、最小ポンプ吐出流量以下の場合に、上記第1制御手段により、上記アクチュエータの排出側の作動油を、上記目標ポンプ吐出流量から最小ポンプ吐出流量を減じた流量だけ上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻すように上記流量可変手段を制御し、上記第2制御手段により、最小ポンプ吐出流量となるように上記ポンプを制御することとしてもよい。
【0011】
請求項3記載の発明のように、上記アクチュエータの排出側の圧力を検出する第1検出手段と、上記ポンプ吐出圧を検出する第2検出手段とを備え、上記コントローラは、両検出値に基づいて上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻される作動油の流量を推定する推定手段を備えたこととしてもよい。
【0012】
請求項4記載の発明のように、作業機械は、上記アクチュエータとしてブーム下げ用油圧シリンダを備えた建設機械であることとしてもよい。
【0013】
請求項5記載の発明のように、作業機械は、上記アクチュエータとして旋回用油圧モータを備えた建設機械であって、この旋回用油圧モータの出入口ポートにそれぞれリリーフ弁を備えるとともに、最大リターン流量が上記リリーフ弁に流れた場合のリリーフ圧より低い設定圧力を設け、上記コントローラは、上記設定圧力よりもリターン側圧力が高くなった場合に、この設定圧力とリリーフ圧との偏差に対して上記流量可変手段をフィードバック制御する第3制御手段を備えたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アクチュエータの排出側の圧力がポンプ吐出圧よりも高い場合に、この排出側の作動油を回生回路を通してポンプ吐出側に戻して回生が行われるように流量可変手段が制御されるとともに、この回生が行われる場合に、回生が行われないときに設定される目標ポンプ吐出量から回生流量が減じられるようにポンプが制御されるので、簡単な構造により、アクチュエータの排出側の作動油を回生し、回生された流量だけポンプ吐出量を減少させることで、ポンプの仕事量を低減させてエネルギ効率を向上させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、排出側に回生回路が設けられたアクチュエータが減速を行う際の減速エネルギーを回生し、これとは別のアクチュエータの駆動にこの回生された減速エネルギーを使用することで、アクチュエータ減速時についても省エネを図ることができる。
【0016】
しかし、例えば流量可変手段を全閉してアクチュエータの吐出側の作動油の全量を回生回路に流すと回生流量が多くなり、ポンプ吐出流量を最小にしてもその吐出量が上回ることがある。その場合には、ポンプ吐出流量を回生流量だけ減少させることができなくなるといった不具合がある。これに対し、請求項2記載の発明によれば、回生を行わないときに設定される目標ポンプ吐出流量から回生回路を通してポンプ吐出側に戻される作動油の流量を減じた流量が、最小ポンプ吐出流量以下の場合に、アクチュエータの排出側の作動油を、上記目標ポンプ吐出流量から最小ポンプ吐出流量を減じた流量だけ上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻すように流量可変手段が制御され、最小ポンプ吐出流量となるようにポンプが制御されるので、最小ポンプ吐出流量を確保しつつ、アクチュエータの排出側の作動油を回生させることで、ポンプの仕事量を低減させてエネルギ効率を向上させることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、アクチュエータの排出側の圧力検出値と、ポンプ吐出圧検出値とに基づいて回生回路を通してポンプ吐出側に戻される作動油の流量が推定されるので、回生回路への流量計等の設置が不要となり簡単な構成となる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、ブーム下げ時の位置エネルギを回生し、省エネルギ効果が得られる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、リリーフ弁を通過する流量が減少し、リリーフ弁の圧力損失により消費される慣性エネルギが減少する結果、回生可能なエネルギが増大し、省エネルギ効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、作業機械として油圧ショベルを例にとって説明する。油圧ショベルにおいては、ブーム、アーム、バケット用アクチュエータとして油圧シリンダを使用し、旋回用アクチュエータとして油圧モータを使用している。このうち、特にブームについては、ブームを持ち上げた際の位置エネルギが大きく、これをブーム下げ動作において、回生可能である。また、旋回については、回転慣性が大きいため、旋回減速時のエネルギ回生を行うことが可能である。以下、それぞれの回生を行う場合の最良の形態について説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る油圧ショベルの油圧制御回路の全体構成図、図2は図1のコントローラの機能ブロック図である。なお、本実施形態1は、ブーム下げ動作時における回生制御の例を示したものである。
【0022】
図1において、7は可変容量式ポンプ、1はポンプ7から供給される作動油により駆動されるアクチュエータとしてのブームシリンダ(ブーム下げ用油圧シリンダに相当する。)、2はバケットシリンダである。3はブームシリンダ1の速度をオペレータが操作するためのブーム操作レバー、4はバケットシリンダ2の速度をオペレータが操作するためのバケット操作レバーである。5はブームシリンダ1への供給流量を制御するブームコントロールバルブ、6はバケットシリンダ2への供給流量を制御するバケットコントロールバルブである。8はコントローラ、9,10は流量調整弁、11〜16は圧力センサ、17はポンプ7のレギュレータ、24はチェック弁である。
【0023】
このうち流量調整弁9は、ブームシリンダ1とブームコントロールバルブ5とを連通する配管22と、ポンプ7の吐出側配管21とをさらに連通する配管(回生回路に相当する。)23上に設けられて、開口面積を変化させることで回生流量を調整する。
【0024】
流量調整弁10は、流量可変手段に相当し、ブームコントロールバルブ5のメータアウトとタンク20との間に設置されて、開口面積を変化させることでブームシリンダ1の排出側の圧力を制御するメータアウト制御弁として機能するとともに、上記流量調整弁10と協働して回生流量を調整する。
【0025】
圧力センサ15は、第1検出手段に相当し、配管22に設けられてブームシリンダ1の排出側の圧力を検出する。圧力センサ16は、第2検出手段に相当し、配管21に設けられてポンプ吐出圧を検出する。
【0026】
そして、ブーム操作レバー3の操作量はリモコン弁18によりパイロット圧に変換されてブームコントロールバルブ5に伝達されるとともに、圧力センサ11,12により検出されたパイロット圧がコントローラ8に入力され、バケット操作レバー4の操作量はリモコン弁19によりパイロット圧に変換されてバケットコントロールバルブ6に伝達されるとともに、圧力センサ13,14により検出されたパイロット圧がコントローラ8に入力されるようになっている。
【0027】
コントローラ8は、図2に示すように、判定部81と、第1比較部82と、推定手段としての推定部83及び演算部84と、第1制御手段としての第1制御部86aと、第2制御手段としての第2制御部86bとを備えており、各部81〜86bは、例えば各種プログラムが図示しないCPUに読み込まれて実行されることにより、コントローラ内に構築されるようになっている。
【0028】
このうち判定部81は、ブーム操作レバー3により発生するパイロット圧Piの圧力センサ11,12の検出値に基づいてブームシリンダ1の動作方向を判定する。
【0029】
第1比較部82は、圧力センサ15により検出されるブームシリンダ1の排出側の圧力Prと、圧力センサ16により検出されるポンプ7の吐出側の圧力Ppとを比較する。
【0030】
推定部83は、上記第1比較部82による比較の結果、圧力Prが圧力Ppよりも高い場合には、両圧力Pr,Ppに基づいて回生回路23を流れる作動油の最大流量(最大回生流量)Qrvmaxを推定する。
【0031】
演算部84は、回生を行わない場合のポンプ7の吐出流量指令値(回生を行わないときに設定される目標ポンプ吐出流量)Qp1から最大回生流量Qrvmaxを減じた流量Qp2を演算する。
【0032】
第2比較部85は、流量Qp2と最小ポンプ吐出流量Qpminとを比較する。
【0033】
第1制御部86aは、流量制御弁9,10の開度制御を行い、第2制御部86bは、ポンプ7の流量制御を行う。すなわち、上記第2比較部85による比較の結果、流量Qp2が最小ポンプ吐出流量Qpminよりも大きい場合には、第2制御部86bは、ポンプ吐出流量指令値を流量Qp2としてレギュレータ17に指令を発してポンプ7の傾転角を制御し、第1制御手段86aは、流量調整弁9を全開、流量調整弁10を全閉として全量回生を行う。
【0034】
一方、流量Qp2が最小ポンプ吐出流量Qpminよりも小さい場合には、第2制御部86bは、ポンプ吐出流量指令値を最小ポンプ吐出流量Qpminとしてレギュレータ17に指令を発してポンプ7の傾転角を制御し、第1制御部86aは、流量調整弁9の開度をArv、流量調整弁10の開度をAmoとして部分回生を行う。両開度Arv,Amoについては後述する。
【0035】
図3は本油圧制御回路の動作を示すフローチャートである。以下、本油圧制御回路の動作について説明する。
【0036】
図3において、ブーム操作レバー3により発生するパイロット圧Piを圧力センサ11,12により検出し、この検出値をコントローラ8に入力すると、判定部81がブームシリンダ1の動作方向を判定する(ステップS1)。ここでは、圧力センサ12で検出される圧力Pi1が正圧に上昇した場合、ブームシリンダ1は配管25側が供給側配管になり、配管22がリターン側配管となると判定する。
【0037】
ついで、配管22がリターン側配管となると判定された場合において(ステップS1でYes)、第1比較部82は、圧力センサ15で検出したリターン圧検出値Prと、圧力センサ16で検出したポンプ圧検出値Ppとを比較する(ステップS2)。そして、リターン圧検出値Prがポンプ圧検出値Ppよりも高い場合には(ステップS2でYes)、後述する回生制御を行う。一方、配管22がリターン側配管とならないと判定された場合(ステップS1でNo)、及び、リターン圧検出値Prがポンプ圧検出値Ppよりも低い場合においては(ステップS2でNo)、回生制御を行うことなく、ステップS1に戻る(ステップS3)。
【0038】
前記回生制御においては、まず推定部83が、流量制御弁9の最大開口面積Arvmaxより、次式を用いて最大回生流量Qrvmaxを演算する(ステップS4)。
【0039】
Qrvmax=Cv・Arvmax・√(2g(Pr−Pp)/γ)・・・(1)
ここで、Cvは流量係数、gは重力加速度、γは作動油の密度である。
【0040】
さらに、演算部84は、回生を行わない場合の可変容量ポンプ吐出流量指令値Qp1に対して、最大回生流量Qrvmaxを減じた流量Qp2(=Qp1−Qrvmax)を求める(ステップS5)。
【0041】
第2比較部85は、流量Qp2と最小ポンプ吐出流量Qpminとを大小比較する(ステップS6)。
【0042】
そして、第2比較部85の比較結果、流量Qp2が最小ポンプ吐出流量Qpminを超えている場合には(ステップS6でYes)、第1制御部86aと第2制御部86bとで、リターン流量の全量回生を行う(ステップS7)。この場合、第2制御部86bが、流量Qp2を新たなポンプ吐出流量指令値としてレギュレータ17に指令を発することによりポンプ7の傾転角を制御するとともに、第1制御部86aが、流量制御弁10を全閉とし、流量制御弁9を全開となるように制御する。しかる後にステップS1に戻る。
【0043】
しかし、上記のようにブームシリンダ1の排出流量の全量を回生回路23に流すと回生流量が多くなり、ポンプ吐出流量を最小にしてもその吐出量が上回ることがある。その場合には、ポンプ吐出流量を回生流量だけ減少させることができなくなるといった不具合がある。そこで、第2比較部85の比較結果、流量Qp2が最小ポンプ吐出流量Qpmin以下となっている場合には(ステップS6でNo)、第1制御部86aと第2制御部86bとで、リターン流量の部分回生を行う(ステップS8)。この場合、第2制御部86bが、ポンプ吐出流量指令値をQminとしてレギュレータ17に指令を発してポンプ7の傾転角を制御するとともに、回生流量目標値Qrv=Qp1−Qminを演算する。ついで、第1制御部86aが、流量制御弁9の開口面積制御目標値Arvを次式のように計算する。
【0044】
Arv=Qrv/(Cv√(2g(Pr−Pp)/γ))・・・(2)
さらに、第1制御部86aが、流量制御弁10の開口面積制御目標値Amoを、次のように求める。まず、パイロット圧検出値よりブームシリンダ1の目標速度Va1を求める。ブームシリンダ1の排出流量Qrはシリンダヘッド側断面積AhとVa1より、Qr=Ah・Va1とすることで求まる。
【0045】
この結果、流量制御弁10の流量は次式により求められる。
【0046】
Qmo=Qr−Qrv・・・(3)
Amo=Qmo/(Cv√(2g・Pr/γ))・・・(4)
そして、第1制御部86aが、流量制御弁9を上記開口面積目標値Arvとなるように制御するとともに、流量制御弁10を上記開口面積目標値Amoとなるように制御する。しかる後にステップS1に戻る。
【0047】
以上のようにして、ブームシリンダ1の排出側流量をポンプ7の吐出側に回生させることにより、回生流量分だけポンプ流量をカットすることができる。このため、ポンプ7を駆動する動力を削減し、省エネルギを図ることができる。
【0048】
また、回生流量に応じてポンプ流量を減少させているので、負荷の大小等により回生流量が変動した場合でも、これによってバケットシリンダ2の速度が影響されないため、操作性を向上させることができる。
【0049】
さらに、排出側に配管23が設けられたブームシリンダ1が減速を行う際の減速エネルギーを回生し、これとは別のバケットシリンダ2の駆動にこの回生された減速エネルギーを使用することで、ブームシリンダ1の減速時についても省エネを図ることができる。
【0050】
(実施形態2)
図4は本発明の実施形態2に係る油圧ショベルの油圧制御回路の全体構成図、図5は図4のコントローラの機能ブロック図である。なお、本実施形態2は、旋回減速時における回生制御の例を示すものである。
【0051】
図4において、37は可変容量式ポンプ、30はこのポンプ37から供給される作動油により駆動されるアクチュエータとしての旋回モータ(旋回用油圧モータに相当する。)、31はアームシリンダ、32a,32bはリリーフ弁である。33は旋回モータ30の旋回動作をオペレータが操作するための旋回操作レバー、34はアームシリンダ31の速度をオペレータが操作するためのアーム操作レバーである。35は旋回モータ30への供給流量を制御する旋回コントロールバルブ、36はアームシリンダ31への供給流量を制御するアームコントロールバルブである。38はコントローラ、39,40は流量調整弁、41〜46は圧力センサ、47はポンプ37のレギュレータ、54はチェック弁である。
【0052】
このうち流量調整弁39は、旋回コントロールバルブ35のメータアウトとタンク50とを連通する配管52と、ポンプ37の吐出側配管51とをさらに連通する配管(回生回路に相当する。)53上に設けられて、開口面積を変化させることで回生流量を制御する。
【0053】
流量調整弁40は、流量可変手段に相当し、配管52に設置されて、開口面積を変化させることで旋回モータ30の排出側の圧力を制御するメータアウト制御弁として機能するとともに、上記流量調整弁39と協働して回生流量を制御する。
【0054】
圧力センサ45は、第1検出手段に相当し、配管52に設けられて旋回モータ30の排出側の圧力を検出する。圧力センサ46は、第2検出手段に相当し、配管51に設けられてポンプ吐出圧を検出する。
【0055】
そして、旋回操作レバー33の操作量はリモコン弁48によりパイロット圧に変換されて旋回コントロールバルブ35に伝達されるとともに、圧力センサ41,42により検出されたパイロット圧がコントローラ38に入力され、アーム操作レバー34の操作量はリモコン弁49によりパイロット圧に変換されてアームコントロールバルブ36に伝達されるとともに、圧力センサ43,44により検出されたパイロット圧がコントローラ38に入力されるようになっている。
【0056】
すなわち、本実施形態2では、上記実施形態1と同様の動作を行うことにより、旋回モータ30の戻り油をポンプ吐出側に回生し、旋回モータ30と同一ポンプで駆動する例えばアームシリンダ31を駆動するためのポンプ流量を回生流量分だけカットすることができるので、ポンプ動力が減少し、省エネルギを図ることができる。
【0057】
ところが、上記実施形態1と異なり、例えば上記の油圧ショベルにおける回生操作の場合において、旋回操作レバー33を急に戻して急制動をかけた場合、旋回モータ30からの作動油のリターン圧がリリーフ圧まで上昇し、リリーフ弁32aが作動することがある。このような場合、減速時の慣性エネルギはリリーフ弁32aの圧力損失として消費されてしまうため、回生できる慣性エネルギが減少してしまうといった問題がある。
【0058】
そこで、本実施形態2では、コントローラ38は、上記実施形態1と同様の判定部81と、第1比較部82と、推定手段としての推定部83及び演算部84と、第2比較部85と、第1制御手段としての第1制御部86aと、第2制御手段としての第2制御部86bとに加え、さらに、第3比較部87と、第4比較部88と、第3制御手段としての第3制御部89とを備えており、各部81〜89は、例えば各種プログラムが図示しないCPUに読み込まれて実行されることにより、コントローラ内に構築されるようになっている。
【0059】
以下、本油圧制御回路の動作を説明する。図6は図4の油圧制御回路におけるリリーフ弁の特性図、図7は油圧制御回路の動作を示すフローチャート、図8はリターン圧フィードバック制御を示すブロック図である。
【0060】
図6に示すように、最大リターン流量Qrfmaxが全量リリーフ弁32a(又は32b)を通過する場合のリリーフ圧Prfmaxより低くなるよう設定された目標圧力Prfを設けている。
【0061】
そして、図7に示すように、第3比較部87でリターン圧Prと目標圧力Prfとの比較を行う(ステップS31)。その比較結果、リターン圧Prが目標圧力Prfよりも高い場合には(ステップS31でYes)、第4比較部88により次式で示されるリターン流量Qrtと、上記パイロット圧の検出値より計算される目標リターン流量Qrとの比較を行う(ステップS32)。
【0062】
Qrt=Cv・Arv・√(2g(Pr−Pp)/γ)+Cv・Amo・√(2gPr/γ)・・・(5)
そして、リターン流量Qrtが目標リターン流量Qrよりも大きい場合には(ステップS32でYes)、第3制御部89でリターン圧フィードバック制御を行う(ステップS33)。すなわち、図8に示すように、上記リターン圧Prと目標圧力Prfとの偏差に対して、ゲイン、流量調整弁40の開口面積の増分ΔAmo、及び、油圧回路からなる各要素を乗算して新たなリターン圧Prとする。
【0063】
なお、流量制御弁39の制御については、上記実施形態1と同様に流量Qp2を演算し、この流量Qp2が最小ポンプ吐出流量Qpminより大きい場合は全開、流量Qp2が最小ポンプ吐出流量Qpminより小さい場合は、開口面積は上記(2)式により求めたArvとなるように制御を行う。しかる後にステップS31に戻る。
【0064】
また、リターン流量Qrtが目標リターン流量Qrよりも小さい場合(ステップS32でNo)、及び、急減速操作の結果、旋回モータ30の旋回速度が減速することで、リターン流量Qrtが減少し、目標リターン流量Qr以下となった場合には(ステップS32でNo)、上記リターン圧フィードバック制御を解除して(ステップS34)、ステップS31に戻る。
【0065】
このとき、リリーフ弁32a(又は32b)のリリーフ流量とリリーフ圧との関係は図6のような関係となっているため、本リターン圧フィードバック制御により、リターン圧を、Prfを目標値として制御することにより、リリーフ弁32a(又は32b)を通過する流量がQrfmaxからQrfに減少し、リリーフ弁32a(又は32b)の圧力損失により消費される慣性エネルギが減少する。この結果、回生可能なエネルギが増大し、省エネルギ効果が得られる。
【0066】
なお、上記実施形態1では、ブームシリンダ1とポンプ7を共通とするアクチュエータとしてバケットシリンダ2を例示したが、アームシリンダであってもよい。また、上記実施形態2では旋回モータ30とポンプ37を共通するアクチュエータとしてアームシリンダ31を例示したが、バケットシリンダであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態1では、回生回路23内の回生流量をブームシリンダ1の排出側の圧力検出値とポンプ吐出圧検出値とに基づいて推定しているが、回生回路23に流量計を設けて直接測定することとしてもよい。上記実施形態2についても同様である。
【0068】
さらに、上記実施形態1,2では、油圧ショベルの油圧制御回路を例示したが、その他の作業機械の油圧制御回路であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態1における油圧ショベルの油圧制御回路の全体構成図である。
【図2】図1のコントローラの機能ブロック図である。
【図3】図1の油圧制御回路の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態2における油圧ショベルの油圧制御回路の全体構成図である。
【図5】図4のコントローラの機能ブロック図である。
【図6】図4の油圧制御回路におけるリリーフ弁の特性図である。
【図7】図4の油圧制御回路の動作を示すフローチャートである。
【図8】リターン圧フィードバック制御のブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
1 ブームシリンダ(アクチュエータ、ブーム下げ用油圧シリンダに相当する。)
2 バケットシリンダ
3 ブーム操作レバー
4 バケット操作レバー
5 ブームコントロールバルブ
6 バケットコントロールバルブ
7 ポンプ
8 コントローラ
9 流量調整弁
10 流量調整弁(流量可変手段に相当する。)
15 圧力センサ(第1検出手段に相当する。)
16 圧力センサ(第2検出手段に相当する。)
17 レギュレータ
23 回生回路
30 旋回モータ(アクチュエータ、旋回用油圧モータに相当する。)
31 アームシリンダ
32a,32b リリーフ弁
33 旋回操作レバー
34 アーム操作レバー
35 旋回コントロールバルブ
36 アームコントロールバルブ
37 ポンプ
38 コントローラ
39 流量調整弁
40 流量調整弁(流量可変手段に相当する。)
45 圧力センサ(第1検出手段に相当する。)
46 圧力センサ(第2検出手段に相当する。)
47 レギュレータ
53 回生回路
81 判定部
82 第1比較部
83 推定部(推定手段に相当する。)
84 演算部(推定手段に相当する。)
85 第2比較部
86a 第1制御部(第1制御手段に相当する。)
86b 第2制御部(第2制御手段に相当する。)
87 第3比較部
88 第4比較部
89 第3制御部(第3制御手段に相当する。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量式ポンプと、このポンプから供給される作動油により作動する複数のアクチュエータと、上記アクチュエータの排出側の流量を変化させる流量可変手段と、コントローラとを備えた作業機械の油圧制御回路において、
上記アクチュエータの排出側と上記流量可変手段との間の油路から分岐してポンプ吐出側に連通する回生回路を設け、
上記コントローラは、上記アクチュエータの排出側の圧力がポンプ吐出圧よりも高い場合に、この排出側の作動油を上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻して回生を行うように上記流量可変手段を制御する第1制御手段と、この回生を行う場合に、回生を行わないときに上記複数のアクチュエータへの供給流量の和として設定される目標ポンプ吐出流量から上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻される作動油の流量を減じるように上記ポンプを制御する第2制御手段とを備えたことを特徴とする作業機械の油圧制御回路。
【請求項2】
上記コントローラは、上記目標ポンプ吐出流量から上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻される作動油の流量を減じた流量が、最小ポンプ吐出流量以下の場合に、上記第1制御手段により、上記アクチュエータの排出側の作動油を、上記目標ポンプ吐出流量から最小ポンプ吐出流量を減じた流量だけ上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻すように上記流量可変手段を制御し、上記第2制御手段により、最小ポンプ吐出流量となるように上記ポンプを制御することを特徴とする請求項1記載の作業機械の油圧制御回路。
【請求項3】
上記アクチュエータの排出側の圧力を検出する第1検出手段と、上記ポンプ吐出圧を検出する第2検出手段とを備え、上記コントローラは、両検出値に基づいて上記回生回路を通してポンプ吐出側に戻される作動油の流量を推定する推定手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の作業機械の油圧制御回路。
【請求項4】
作業機械は、上記アクチュエータとしてブーム下げ用油圧シリンダを備えた建設機械であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械の油圧制御回路。
【請求項5】
作業機械は、上記アクチュエータとして旋回用油圧モータを備えた建設機械であって、この旋回用油圧モータの出入口ポートにそれぞれリリーフ弁を備えるとともに、最大リターン流量が上記リリーフ弁に流れた場合のリリーフ圧より低い設定圧力を設け、上記コントローラは、上記設定圧力よりもリターン側圧力が高くなった場合に、この設定圧力とリリーフ圧との偏差に対して上記流量可変手段をフィードバック制御する第3制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械の油圧制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−25706(P2008−25706A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198406(P2006−198406)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】