説明

作業機械の油圧制御装置

【課題】圧力補償付き流量制御弁によって一定のアクチュエータ流量を確保する方式を前提として、流量制御弁の差圧設定値をオペレータの好みに応じて自由に変更できるようにする。
【解決手段】複数の油圧アクチュエータを共通の油圧源としての油圧ポンプにパラレルに接続し、それぞれコントロールバルブによって作動制御する回路構成において、破砕用コントロールバルブ29の圧油供給開口の前後差圧を設定値に保つように流量制御を行う圧力補償付きの流量制御弁30を設ける。この流量制御弁30は、破砕用コントロールバルブ29の操作時にパイロット圧によって上記差圧の設定値が変化するように構成する。一方、差圧設定値指令手段39の操作に基づくコントローラ40からの指令によって制御圧が変化するパイロット圧制御弁41を設け、このパイロット圧制御弁41によって流量制御弁30の差圧設定値をオペレータの好みによって自由に変更できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベルやこれを転用して構成される破砕機等の作業機械の油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
油圧ショベルは、図4に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が縦軸まわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2に、ブーム3、アーム4、バケット5、及びこれらを作動させる油圧アクチュエータとしてのブーム、アーム、バケット各シリンダ(油圧シリンダ)6〜8から成る作業アタッチメントAが装着されて構成され、掘削、積み込み作業等を行う。
【0004】
また、他の油圧アクチュエータとして、下部走行体1を走行駆動する左右の走行モータと、上部旋回体2を旋回駆動する旋回モータ(いずれも図示しない)が設けられている。
【0005】
一方、この油圧ショベルを他の作業機械、たとえば図5に示すような破砕機に転用する場合がある。
【0006】
この場合、作業アタッチメントAの先端に、バケット5に代えて、図示しない破砕シリンダ(オプションアクチュエータ)により開閉作動してコンクリート構造物等を破砕するオプションとしての破砕装置9が取付けられる。従って、油圧アクチュエータは破砕シリンダを加えた七つとなる。
【0007】
この油圧アクチュエータ群、及びこれらを個別に制御する油圧パイロット切換弁であるコントロールバルブ群は、通常、二つにグループ分けされ、別ポンプで駆動される。
【0008】
具体例を図6に示す。
【0009】
図左側の第1グループG1は、図の上側から順にアームシリンダ7、旋回モータ10、左走行モータ11L、破砕シリンダ12、及びこれらを個別に制御する油圧パイロット切換弁であるコントロールバルブ13〜16から成り、第1圧油供給ラインL1に対してパラレルに接続されている。
【0010】
図右側の第2グループG2は、図の上側から順にブームシリンダ6、バケットシリンダ8、右走行モータ11R、及びこれらを個別に制御する油圧パイロット切換弁であるコントロールバルブ17〜19から成り、第2圧油供給ラインL2に対してパラレルに接続されている。
【0011】
また、コントロールバルブごとにリモコン弁20〜26が設けられ、このリモコン弁20〜26からのパイロット圧により各コントロールバルブ13〜19がストローク作動して各アクチュエータの作動が制御される。
【0012】
一方、油圧アクチュエータ群に対する圧油供給源として第1、第2両ポンプ27,28が設けられ、第1油圧ポンプ27の吐出油が第1圧油供給ラインL1を介して第1グループG1に、第2油圧ポンプ28の吐出油が第2圧油供給ラインL2を介して第2グループG2にそれぞれ供給される。Tはタンクである。
【0013】
この回路構成において、同一グループ内の複数の油圧アクチュエータを同時に作動させる複合操作時に、同時作動する油圧アクチュエータの負荷圧(作動圧)が異なる場合に、高負荷圧側のアクチュエータ流量が不足するという問題がある。
【0014】
たとえば、旋回モータ10とアームシリンダ7とを同時に作動させる場合、負荷圧の高い旋回モータ10の回路流量が不足し、旋回速度が遅くなる。また、破砕シリンダ12と他のアクチュエータとを同時に作動させる場合には、高負荷圧側の破砕シリンダの回路流量が不足する。
【0015】
この問題を解決する手段として、たとえば特許文献1に記載された技術が公知である。
【0016】
この技術では、全油圧アクチュエータのうち最高負荷圧の油圧アクチュエータ(以下、特定油圧アクチュエータという)以外の油圧アクチュエータの回路流量を絞り弁で絞ることにより、特定油圧アクチュエータの必要回路流量を確保する構成がとられている。
【0017】
しかし、この技術によると、絞りによる圧損が大きくてエネルギー効率(燃費)が悪くなる上に、特定油圧アクチュエータ以外の全油圧アクチュエータに対して絞り弁を設けるため、バルブ構成が複雑化しコストアップとなる。
【0018】
一方、特定油圧アクチュエータ用のコントロールバルブの上流側に圧力補償付きの流量制御弁を設け、この流量制御弁により、圧油供給開口の前後差圧を一定に保つように流量制御を行う技術も公知である(たとえば特許文献2参照)。
【0019】
この技術によると、負荷圧に関係なく、前後差圧の設定値によって決まる回路流量を確保できるため、上記特定油圧アクチュエータと他のアクチュエータの複合操作時に、特定油圧アクチュエータに対して必要な回路流量を供給することができる。しかも、特許文献1の公知技術と比較して、圧損が少なくてエネルギー効率が良いとともに、バルブ構成が簡単ですむ。
【特許文献1】特開2003−301803号公報
【特許文献2】特開2006−183413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところが、公知の圧力補償付き流量制御技術によると、上記のように負荷圧に関係なく差圧設定値で決まる流量に制御できるが、差圧設定値は一定不変で変更できないため、オペレータの好みに応じた流量特性が得られず、この点で操作性が悪くなる場合があった。
【0021】
そこで本発明は、圧力補償付き流量制御方式を前提として、差圧設定値、つまり流量特性をオペレータの好みに応じて自由に変更でき、これによって操作性を改善することができる作業機械の油圧制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1の発明は、複数の油圧アクチュエータが共通の油圧源としての油圧ポンプにパラレルに接続され、それぞれコントロールバルブによって作動制御される作業機械の油圧制御装置において、上記油圧ポンプと、上記複数の油圧アクチュエータのうち特定の油圧アクチュエータの作動を制御する特定のコントロールバルブとを結ぶ管路に、上記特定のコントロールバルブの圧油供給開口の前後差圧を設定値に保つように流量制御を行う圧力補償付きの流量制御弁が設けられ、この流量制御弁は、上記特定のコントロールバルブの操作時に、上記油圧ポンプからの吐出油を上記特定のコントロールバルブに優先的に供給する優先位置に切換わるとともに、パイロットポートに加えられるパイロット圧によって上記差圧の設定値が変化するように構成され、かつ、この流量制御弁に供給されるパイロット圧を制御するパイロット圧制御弁と、オペレータによって操作される差圧設定値指令手段と、この差圧設定値指令手段の操作に基づいて上記パイロット圧制御弁に上記差圧の設定値を指令する制御手段とが設けられたものである。
【0023】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、作業機械としての油圧ショベルの走行モータ、旋回モータ、及びオプションアクチュエータとしての破砕シリンダのうちいずれか一つの油圧アクチュエータの作動を制御するコントロールバルブを上記特定のコントロールバルブとして圧力補償付き流量制御弁、パイロット圧制御弁及び制御手段が設けられたものである。
【0024】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成おいて、複数の油圧ポンプと上記特定のコントロールバルブとを結ぶ管路にそれぞれ上記圧力補償付きの流量制御弁が設けられ、この各流量制御弁によって流量制御された油を合流させて上記特定の油圧アクチュエータに供給するように構成されたものである。
【0025】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、油圧ポンプとして、上記特定の油圧アクチュエータを含む複数の油圧アクチュエータから成る第1グループを駆動する第1油圧ポンプと、特定の油圧アクチュエータを含まない複数の油圧アクチュエータから成る第2グループを駆動する第2油圧ポンプとが設けられるとともに、上記圧力補償付きの流量制御弁として、第1油圧ポンプと上記特定のコントロールバルブとを結ぶ管路に第1流量制御弁、上記第2油圧ポンプと上記特定のコントロールバルブとを結ぶ管路に第2流量制御弁がそれぞれ設けられ、この第2流量制御弁は、上記特定のコントロールバルブの操作時に、上記第2油圧ポンプからの吐出油を上記特定のコントロールバルブに優先的に供給する優先位置に切換わるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、パラレルに接続された複数の油圧アクチュエータを共通の油圧ポンプで駆動する回路構成において、油圧ポンプと特定のコントロールバルブとを結ぶ管路に圧力補償付きの流量制御弁を設け、この流量制御弁によって、特定のコントロールバルブにおける圧油供給開口の前後差圧を設定値に保つように流量制御を行う構成としたから、基本的な作用効果として、特定の油圧アクチュエータ(請求項2では走行モータ、旋回モータ、破砕シリンダのいずれか一つ)に対し、その負荷圧に関係なく設定値によって決まる流量を供給することができる。
【0027】
従って、負荷圧の高い油圧アクチュエータ(たとえば破砕シリンダ)を上記特定油圧アクチュエータとして流量制御弁を設けることにより、この特定油圧アクチュエータと、これよりも負荷圧の低い他の油圧アクチュエータとを同時に作動させる複合操作時に、特定油圧アクチュエータの必要回路流量を確保することができる。
【0028】
しかも、このような圧力補償付き流量制御方式において、流量制御弁を、パイロット圧によって設定値が変化する油圧パイロット弁として構成し、この流量制御弁のパイロット圧を、オペレータによって操作される差圧設定値指令手段からの指令に応じて制御する構成としたから、流量制御弁の差圧設定値を自由に変更することができる。
【0029】
すなわち、圧力補償付き流量制御方式を前提として、特定油圧アクチュエータの流量特性をオペレータの好みに応じて自由に変更でき、これによって操作性を改善することができる。
【0030】
ところで、油圧ショベル等の作業機械においては、一般に複数(通常は請求項4のように二つ)の油圧ポンプが設けられ、この各ポンプの吐出量が各油圧アクチュエータ(請求項4では第1、第2グループ)に振り分けられる。
【0031】
この場合、請求項3,4の発明によると、各油圧ポンプと特定のコントロールバルブとを結ぶ管路にそれぞれ圧力補償付きの流量制御弁を設け、この各流量制御弁によって流量制御された油を合流させて特定油圧アクチュエータに供給する構成としたから、流量制御の範囲を拡大することができる。このため、操作性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下の実施形態では、背景技術の説明に合せて、破砕機に転用された油圧ショベルを適用対象として例にとっている。
【0033】
第1実施形態(図1参照)
第1実施形態において、以下の点は図6に示す従来技術と同じである。
【0034】
(A)油圧アクチュエータとして、ブーム、アーム、バケット各シリンダ6〜8のほか、左右の走行モータ11L,11Rと旋回モータ10、それに破砕装置用の破砕シリンダ12とを具備する点。
【0035】
(B)この油圧アクチュエータ群、及びこれらを個別に制御する油圧パイロット式のコントロールバルブ群が第1及び第2の二つのグループG1,G2に分けられている点。
【0036】
(C)図左側の第1グループG1は、図の上側から順にアームシリンダ7、旋回モータ10、左走行モータ11L、破砕シリンダ12、及びこれらを個別に制御する油圧パイロット切換弁であるコントロールバルブ13,14,15,29から成り、第1圧油供給ラインL1に対してパラレルに接続されている点。
【0037】
(D)図右側の第2グループG2は、図の上側から順にブームシリンダ6、バケットシリンダ8、右走行モータ11R、及びこれらを個別に制御する油圧パイロット切換弁であるコントロールバルブ17,18,19から成り、第2圧油供給ラインL2に対してパラレルに接続されている点。
【0038】
(E)コントロールバルブごとにリモコン弁20〜26が設けられ、このリモコン弁20〜26からのパイロット圧により各コントロールバルブがストローク作動して各アクチュエータの作動が制御される点。
【0039】
(F)油圧アクチュエータ群に対する圧油供給源として第1、第2両ポンプ27,28が設けられ、第1油圧ポンプ27の吐出油が第1圧油供給ラインL1を介して第1グループG1に、第2油圧ポンプ28の吐出油が第2圧油供給ラインL2を介して第2グループG2にそれぞれ供給される点。
【0040】
なお、破砕用コントロールバルブ29は、図6に示す破砕用コントロールバルブ16とはバルブ構成が異なるため異なる符号を付している。
【0041】
第1実施形態では、第1グループG1中で負荷圧が最も高い破砕シリンダ12を特定油圧アクチュエータ、破砕用コントロールバルブ29を特定コントロールバルブとして、同コントロールバルブ29と第1油圧ポンプ27とを結ぶ第1圧油供給ラインL1の最上流部分に圧力補償付きの流量制御弁30が設けられている。
【0042】
この流量制御弁30は、片側(図の左側)に優先側パイロットポート31、反対側(同、右側)に非優先側パイロットポート32を備えた油圧パイロット弁として構成され、両側パイロットポート31,32に加えられるパイロット圧に応じて、図左側の優先位置イと、右側の非優先位置ロとの間で切換わり、かつ、流量制御を行う。33は流量制御弁30のスプリングである。
【0043】
同制御弁30には、第1圧油供給ラインL1に通じる通路(図の方向性に従って右側通路という)34と、破砕用コントロールバルブ29の圧油供給開口に通じる通路(同、左側通路という)35とが設けられ、左側通路35がポンプ吐出油を破砕用コントロールバルブ29に優先的に送る優先通路となり、右側通路34が余剰流量を第1圧油供給ラインL1(他のコントロールバルブ13〜15)に送る通路となる。
【0044】
流量制御弁30の優先側パイロットポート31には破砕シリンダ作動時の負荷圧(作動圧)Pohが、また右側パイロットポート32には破砕シリンダ作動時の供給圧Poiがそれぞれパイロット管路36,37を介してパイロット圧として加えられる。
【0045】
なお、左側パイロット管路36は絞り38を介してタンクTに通じている。
【0046】
また、非優先側パイロットポート32に、差圧設定値指令手段39及び制御手段としてのコントローラ40によって制御されるパイロット圧制御弁(電磁比例弁)41が接続され、このパイロット圧制御弁41の出力Peも非優先側パイロットポート32にパイロット圧として加えられる。
【0047】
差圧設定値指令手段39は、オペレータが差圧設定値を、たとえば「高速」「中速」「低速」という形で段階的に、あるいは低速から高速まで無段連続的に選択する所謂操作パネルとして構成され、この差圧設定値指令手段39からの指令がコントローラ40経由でパイロット圧制御弁41に加えられることにより、流量制御弁30の差圧設定値が変化する。
【0048】
この点を含めたこの装置の作用を詳述する。
【0049】
破砕用コントロールバルブ29が破砕シリンダ伸び側または縮み側に操作されると、前記のように破砕シリンダ12の負荷圧Pohが流量制御弁30の優先側パイロットポート31にパイロット圧として加えられ、図示のように同制御弁30が優先位置イにセットされる。
【0050】
この状態で、第1油圧ポンプ27の吐出油が、流量制御弁30の左側通路35及び破砕用コントロールバルブ29を介して破砕シリンダ12に優先的に供給され、余剰油が第1圧油供給ラインL1に供給される。
【0051】
一方、破砕シリンダ12に供給される圧力Poiとパイロット圧制御弁41の出力(制御圧力)Peとが右側パイロットポート32にパイロット圧として加えられる。
【0052】
この結果、流量制御弁30は、次式の圧力でバランスがとられる。次式中、A1はパイロット圧Poh、Poiに対する流量制御弁30の受圧部面積、A2はパイロット圧Peに対する受圧部面積、Fsはスプリング33のバネ力である。
【0053】
Poh・A1+Fs=Poi・A1+Pe・A2……式1
これにより、破砕用コントロールバルブ29の供給側開口の前後差圧ΔP=Poi−Pohは次式のようになる。
【0054】
ΔP=Poi−Poh=Fs/A1−Pe・A2/A1……式2
そして、破砕用コントロールバルブ29の流量Qoは、同コントロールバルブ29の開口面積をAoとすると、次式により与えられる。ここで、Cvは流量係数、gは重力加速度、γは作動油の比重である。
【0055】
Qo=CvAo√(2g・ΔP/γ)……式3
以上より、差圧設定値指令手段39の操作を通じてパイロット圧制御弁41の制御圧力Peを0〜Fs/A2の範囲で制御することで差圧設定値を変化させ、破砕シリンダ12の流量を0〜CvAo√(2g・Fs/A1γ)の範囲で任意に設定することが可能となる。
【0056】
すなわち、オペレータが差圧設定値指令手段39を高速側または低速側に操作することにより、コントローラ40からパイロット圧制御弁41に上記操作に応じたパイロット圧Peの指令が出され、このパイロット圧Peに応じた流量制御が行われる。
【0057】
たとえば、オペレータが速度アップの指令を出すと、パイロット圧Peが減少して、式2より差圧ΔPが増加し、式3よりQoが増加することで破砕シリンダ12の速度が増加する。逆に、速度ダウンの指令を出すと、パイロット圧Peが増加して差圧ΔPが減少し、Qoが減少することで破砕シリンダ12の動作速度が低下する。
【0058】
なお、破砕シリンダ12の操作がない場合、左側パイロット管路36の圧力が低下するため、流量制御弁30は非優先位置ロにセットされる。この状態では、第1油圧ポンプ27の吐出油は第1圧油供給ラインL1(破砕シリンダ12以外のアクチュエータ)に優先的に供給される。
【0059】
このように、特定油圧アクチュエータである破砕シリンダ12の操作が行われると、圧力補償付き流量制御弁30によって制御された優先流量が破砕シリンダ12に供給されるため、この破砕シリンダ12と、第1グループG1内の他の油圧アクチュエータ(アームシリンダ7、旋回モータ10、左走行モータ11L)とを同時に作動させる複合操作時に、破砕シリンダ12の負荷圧に関係なく一定流量が優先的に供給される。このため、負荷圧の高い破砕シリンダ12の回路流量が不足して動作速度が低下する問題を解消することができる。
【0060】
しかも、このような圧力補償付き流量制御方式において、流量制御弁30をパイロット圧によって差圧設定値が変化する油圧パイロット弁として構成し、この流量制御弁30のパイロット圧Peを、オペレータによって操作される差圧設定値指令手段39からの指令に応じて制御する構成としたから、流量制御弁30の差圧設定値を自由に変更することができる。
【0061】
すなわち、圧力補償付き流量制御方式を前提として、特定油圧アクチュエータ(破砕シリンダ12)の流量特性をオペレータの好みに応じて自由に変更でき、これによって操作性を改善することができる。
【0062】
第2実施形態(図2参照)
以下の第2、第3両実施形態については、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0063】
第2実施形態では、破砕シリンダ12に代えて旋回モータ10を特定油圧アクチュエータとし、旋回用コントロールバルブ42を特定コントロールバルブとして、流量制御弁30により制御された流量を旋回用コントロールバルブ42を介して旋回モータ10に優先的に供給する構成がとられている。
【0064】
この構成によると、第1グループG1内での旋回動作と他のアクチュエータ動作が同時に行われる複合操作時に、旋回モータ10にその負荷圧にかかわらず一定流量が供給されるため、旋回モータ10の回路流量が不足し、動作速度が低下する問題を解決できるとともに、オペレータの好みに応じて旋回速度を自由に変更することができる。
【0065】
なお、この場合、破砕用コントロールバルブ16は、図6に示す従来回路における破砕用コントロールバルブ16と同じバルブ構成でよいため同じ符号を付している。
【0066】
ところで、走行モータ11Lを特定油圧アクチュエータとして、これに優先流量を供給する構成をとることもできる。
【0067】
第3実施形態(図3参照)
第3実施形態においては、たとえば第1実施形態の構成を前提として、第2油圧ポンプ28の吐出側にも、第1実施形態の圧力補償付き流量制御弁30と同じ構成の圧力補償付き流量制御弁30´(以下、これらを第1、第2流量制御弁という)が設けられている。
【0068】
この第2流量制御弁30´は、左側通路35が破砕用コントロールバルブ29の圧油供給開口に、右側通路34が第2圧油供給ラインL2にそれぞれ通じる状態で設けられ、第1流量制御弁30と同様に、優先側パイロットポート31に破砕シリンダ12の負荷圧Pohが、非優先側パイロットポート32に破砕シリンダ作動時の供給圧Poiとパイロット圧制御弁41´の制御圧力Peとがそれぞれ加えられる。
【0069】
この構成によると、第2流量制御弁30´によって制御された第2油圧ポンプ28からの優先流量が、第1流量制御弁30ルートで供給される第1油圧ポンプ27からの優先流量と合流して破砕シリンダ12に供給される。
【0070】
従って、第2実施形態によると、たとえばオペレータが破砕シリンダ流量を増加させるように差圧設定値指令手段39を操作した場合、流量が0〜CvAo√(2g・Fs/A1γ)までは、第1流量制御弁30によって制御し、これを超える範囲(最大で2CvAo√(2g・Fs/A1γ)で第2流量制御弁30´によって流量制御することができる。
【0071】
すなわち、破砕シリンダ12の流量を0〜2CvAo√(2g・Fs/A1γ)の範囲で連続的に制御することが可能となり、破砕シリンダ12の動作速度をきわめて広い範囲で調整することが可能となるため、操作性をさらに向上させることができる。
【0072】
この第3実施形態の構成は、他のアクチュエータを特定油圧アクチュエータとした場合も同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態を示す回路構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す回路構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す回路構成図である。
【図4】油圧ショベルの概略側面図である。
【図5】油圧ショベルを破砕機に転用した状態の概略側面図である。
【図6】従来の回路構成図である。
【符号の説明】
【0074】
G1 第1グループ
G2 第2グループ
L1,L2 圧油供給ライン
1 油圧ショベルの下部走行体
2 同、上部旋回体
A 同、作業アタッチメント
3 作業アタッチメントを構成するブーム
4 同、アーム
5 同、バケット
6 ブームシリンダ
7 アームシリンダ
8 バケットシリンダ
9 破砕装置
10 旋回モータ
11L 左走行モータ
11R 右走行モータ
12 特定油圧アクチュエータとしての破砕シリンダ
13 アーム用コントロールバルブ
14 旋回用コントロールバルブ
15 左走行用コントロールバルブ
17 ブーム用コントロールバルブ
18 バケット用コントロールバルブ
29 特定コントロールバルブとしての破砕用コントロールバルブ
27 第1油圧ポンプ
28 第2油圧ポンプ
29 破砕用コントロールバルブ
30 圧力補償付き流量制御弁
31,32 同流量制御弁の両側パイロットポート
34 右側通路
35 左側通路
36,37 パイロット管路
39 差圧設定値指令手段
40 制御手段としてのコントローラ
41 パイロット圧制御弁
42 旋回用コントロールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の油圧アクチュエータが共通の油圧源としての油圧ポンプにパラレルに接続され、それぞれコントロールバルブによって作動制御される作業機械の油圧制御装置において、上記油圧ポンプと、上記複数の油圧アクチュエータのうち特定の油圧アクチュエータの作動を制御する特定のコントロールバルブとを結ぶ管路に、上記特定のコントロールバルブの圧油供給開口の前後差圧を設定値に保つように流量制御を行う圧力補償付きの流量制御弁が設けられ、この流量制御弁は、上記特定のコントロールバルブの操作時に、上記油圧ポンプからの吐出油を上記特定のコントロールバルブに優先的に供給する優先位置に切換わるとともに、パイロットポートに加えられるパイロット圧によって上記差圧の設定値が変化するように構成され、かつ、この流量制御弁に供給されるパイロット圧を制御するパイロット圧制御弁と、オペレータによって操作される差圧設定値指令手段と、この差圧設定値指令手段の操作に基づいて上記パイロット圧制御弁に上記差圧の設定値を指令する制御手段とが設けられたことを特徴とする作業機械の油圧制御装置。
【請求項2】
作業機械としての油圧ショベルの走行モータ、旋回モータ、及びオプションアクチュエータとしての破砕シリンダのうちいずれか一つの油圧アクチュエータの作動を制御するコントロールバルブを上記特定のコントロールバルブとして上記圧力補償付き流量制御弁、パイロット圧制御弁及び制御手段が設けられたことを特徴とする請求項1記載の作業機械の油圧制御装置。
【請求項3】
複数の油圧ポンプと上記特定のコントロールバルブとを結ぶ管路にそれぞれ上記圧力補償付きの流量制御弁が設けられ、この各流量制御弁によって流量制御された油を合流させて上記特定の油圧アクチュエータに供給するように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械の油圧制御装置。
【請求項4】
油圧ポンプとして、上記特定の油圧アクチュエータを含む複数の油圧アクチュエータから成る第1グループを駆動する第1油圧ポンプと、特定の油圧アクチュエータを含まない複数の油圧アクチュエータから成る第2グループを駆動する第2油圧ポンプとが設けられるとともに、上記圧力補償付きの流量制御弁として、第1油圧ポンプと上記特定のコントロールバルブとを結ぶ管路に第1流量制御弁、上記第2油圧ポンプと上記特定のコントロールバルブとを結ぶ管路に第2流量制御弁がそれぞれ設けられ、この第2流量制御弁は、上記特定のコントロールバルブの操作時に、上記第2油圧ポンプからの吐出油を上記特定のコントロールバルブに優先的に供給する優先位置に切換わるように構成されたことを特徴とする請求項3記載の作業機械の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−101096(P2010−101096A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274526(P2008−274526)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】