説明

作業機械の駆動装置

【課題】上部旋回体の旋回を停止させる際の発電効率(エネルギ回生効率)が良好な作業機械の駆動装置を提供する。
【解決手段】基体12に旋回自在に取り付けられた上部旋回体14を駆動する作業機械の駆動装置において、前記上部旋回体14を駆動する旋回用油圧モータ52と、該旋回用油圧モータ52と共に前記上部旋回体14を駆動可能で、且つ該上部旋回体14の減速時に回生発電を行う旋回用電動発電機64と、前記旋回用油圧モータ52の作動油の入口と出口を短絡可能な短絡切換弁56と、を備え、前記上部旋回体14の回生発電時に前記旋回用油圧モータ52の作動油の出入口M3、M4を短絡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等の作業機械の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下部走行体(基体)と、上部旋回体と、アーム機構(フロントアタッチメント)と、を備えた建設機械(作業機械)が広く普及している。
【0003】
上部旋回体は、下部走行体に旋回可能に連結されており、旋回の際には大きな慣性運動エネルギを持つ。しかし、従来、この慣性運動エネルギは、油圧駆動装置の油圧回路中において作動油が流動するときの損失としてそのまま捨てられていた。
【0004】
これに対し、特許文献1には、上部旋回体の駆動を旋回用油圧モータおよび旋回用電動発電機で行い、該旋回用電動発電機に、該旋回用油圧モータの駆動補助および発電(エネルギ回生)を行わせる技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−124381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においても、上部旋回体の旋回を停止させる際の損失が大きく、上部旋回体の旋回の慣性運動エネルギを活用した発電の効率(エネルギ回生効率)が十分でないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、上部旋回体の旋回を停止させる際の発電効率(エネルギ回生効率)が良好な作業機械の駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基体に旋回自在に取り付けられた上部旋回体を駆動する作業機械の駆動装置において、前記上部旋回体を駆動する旋回用油圧モータと、該旋回用油圧モータと共に前記上部旋回体を駆動可能で、且つ該上部旋回体の減速時に回生発電を行う旋回用電動発電機と、前記旋回用油圧モータの作動油の入口と出口を短絡可能な短絡切換弁と、を備え、前記上部旋回体の回生発電時に前記旋回用油圧モータの作動油の入口と出口を短絡させることにより、上記課題を解決したものである。
【0009】
この構成によれば、上部旋回体の回生発電時に旋回用油圧モータの作動油の入口と出口を短絡切換弁で短絡させることができる。短絡切換弁で短絡させることにより、上部旋回体の回生発電時に油圧回路における旋回用油圧モータのいわゆる連れ廻り負荷による損失がほとんどなくなり、上部旋回体の慣性力の大部分が旋回用電動発電機に加わることとなるので、上部旋回体の慣性運動エネルギを効率的に電気エネルギに変換(回生)することができる。
【0010】
なお、前記旋回用油圧モータを駆動する油圧回路に、該旋回用油圧モータに対する油圧ブレーキとして機能するブレーキ弁機構を備えさせた場合には、前記短絡切換弁により、該ブレーキ弁機構による前記油圧ブレーキをも解除可能とすることができ、上部旋回体の慣性運動エネルギを効率的に電気エネルギに変換(回生)することができる。
【0011】
このように油圧回路中にブレーキ弁機構を備えた場合には、前記上部旋回体の旋回停止直後にのみ該ブレーキ弁機構による前記油圧ブレーキを使用するように構成するとよい。これにより、停止直後の上部旋回体の位置が移動しにくく、メカニカルブレーキ機構を含め、前記旋回用電動発電機を小型にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上部旋回体の旋回を停止させるときの発電効率(エネルギ回生効率)が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面に基づいて、本発明に係る作業機械の駆動装置の好適な実施形態の一例について詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態の一例に係る作業機械の駆動装置を示すブロック構成図であり、図2はその要部拡大図であり、図3は本発明が適用された油圧ショベル(作業機械)10の全体構成を示す斜視図である。
【0015】
図3に示すように、油圧ショベル10は、下部走行体(基体)12と、上部旋回体14と、アーム機構16と、を備える。
【0016】
上部旋回体14は、下部走行体12に旋回可能に連結されており、後述する旋回用油圧モータ52および旋回用電動発電機64から駆動力を供給されて旋回することができるようになっている。また、上部旋回体14は、前側にキャブ(運転室)30を備え、そのキャブ30の横にはアーム機構16が取り付けられている。
【0017】
アーム機構16は、ブーム32、アーム34、バケット36からなる3リンクと、それらをそれぞれ駆動するブームシリンダ38、アームシリンダ40、バケットシリンダ42で構成されている。
【0018】
次に、図1、図2を用いて、本実施形態に係る作業機械の駆動装置の構成をさらに詳細に説明する。
【0019】
図2に示すように、エンジン1の出力軸1aには、電動機としてだけでなく、発電機としても機能する電動発電機2と、油圧アクチュエータに作動油を供給するメインポンプ(可変容量型の油圧ポンプ)3A、3Bおよびパイロット回路に作動油を供給するパイロットポンプ3Cと、がパラレルに取付けられている。
【0020】
電動発電機2には、交流を直流に変換するコンバータ機能、及び直流を交流に変換するインバータ機能の双方を有する変換装置4が接続されており、変換装置4にはバッテリー5およびコントローラ6が接続されている。
【0021】
バッテリー5は、変換装置4を介して電動発電機2との間で電気エネルギを授受する機能を有しており、電動発電機2の減速時に回収される回生電気エネルギを、変換装置4を介して蓄電可能である。一方、電動発電機2の作動時には、バッテリー5は、電動発電機2に対し、変換装置4を介して電気エネルギを供給し、電動発電機2を電動機として作動させることができる。
【0022】
コントロールバルブ群50は、オペレータの操作する図示せぬ操作レバーの動きに応じて自動的に操作され、旋回用油圧モータ52以外の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ38、アームシリンダ40、バケットシリンダ42、右走行用油圧モータ22、左走行用油圧モータ24)についての油圧回路を流れる作動油の圧力、流量、方向を制御する。
【0023】
図2に示すように、コントロールバルブ群50は、右走行用制御弁100、左走行用制御弁102、ブームシリンダ用制御弁104、アームシリンダ用制御弁106、バケットシリンダ用制御弁108、予備制御弁110、112、切換弁114、116、118を備えている。予備制御弁110、112のうち一方は、通常は上部旋回体14の旋回用の制御弁として使われているが、本実施形態では後述する旋回リモコンレバー装置62を設けているため、予備制御弁が2つとなっており、他の用途に2つの予備制御弁を使用することができる。
【0024】
旋回用油圧モータ52とメインポンプ3Aとの間には旋回用制御弁54が設けられ、この旋回用制御弁54と旋回用油圧モータ52との間には短絡切換弁56が設けられ、この短絡切換弁56と旋回用油圧モータ52との間には油圧ブレーキ弁機構60が設けられている。この油圧ブレーキ弁機構60は、リリーフ弁60A、60Bおよびチェック弁60C、60Dを備える。
【0025】
旋回用制御弁54は3位置4ポートの切換弁であり、3つの切り換え位置A、B、Cを備えており、メインポンプ3Aから旋回用油圧モータ52へ向かう作動油の流れる方向と流量を制御する。旋回用制御弁54のスプールの両端には、それぞれパイロットポート54a、54bが設けられている。また、旋回用制御弁54のスプールの両端は、ばね54c、54dで付勢されている。
【0026】
旋回用制御弁54のスプールの位置の切り換えは、旋回リモコンレバー装置62を操作することにより行う。旋回リモコンレバー装置62は、レバー62aと、リモコン弁62b、62cと、パイロットポンプ3cとを有してなる。
【0027】
なお、旋回用制御弁54のスプールの3つの位置A、B、Cは、代表的な状態を模式的に示したものであり、各位置にステップ状に切り換わるのではなく、作動油の流通を完全に停止させた完全ブロック状態の中立位置Bを中心として、A側またはC側に向けて中間位置Bを含んで滑らかに切換可能である。従って、オペレータが旋回リモコンレバー装置62を操作して、中立位置Bから作動状態のA、Cへの切り換わり状態を制御することにより、作動油の供給流量の可変制御が可能である。
【0028】
短絡切換弁56は2位置4ポートの切換弁であり、2つの切り換え位置D、Eを備えており、また、4つのポートP1、P2、M1、M2を備えている。短絡切換弁56は旋回用油圧モータ52の作動油の出入口M3、M4を短絡(旋回用油圧モータ52側の2つのポートM1、M2を短絡)する役割を有する。短絡切換弁56のスプールの一端には、ソレノイド部56aが設けられている。また、短絡切換弁56のスプールの他端はばね56bで付勢されており、切り換え位置D側に常に付勢されている。
【0029】
ソレノイド部56aは、回生発電中との電気信号が電気信号線6bに入力されると、ばね56bを押し縮めるように短絡切換弁56のスプールを押して、切り換え位置Eにスプールを移動させて、旋回用油圧モータ52の作動油の出入口M3、M4を短絡(旋回用油圧モータ52側の2つのポートM1、M2を短絡)する。一方、コントローラ6によって回生発電終了(この実施形態では旋回終了:旋回用電動発電機64の回転速度零)と判断されると電気信号線6bの電気の供給が絶たれて、短絡切換弁56のスプールはばね56bの付勢力により押されて切り換え位置Dに移動し、旋回用油圧モータ52の作動油の出入口M3、M4の短絡(旋回用油圧モータ52側の2つのポートM1、M2の短絡)は解除される。
【0030】
油圧ブレーキ弁機構60は、リリーフ弁60A、60Bおよびチェック弁60C、60Dを有してなる。リリーフ弁60A、60Bは、旋回用油圧モータ52についての油圧回路の圧力が設定圧力以上となったときに開放されて、作動油をリリーフする。チェック弁60C、60Dはキャビテーションを防止する。
【0031】
油圧ブレーキ弁機構60は旋回用油圧モータと並列に配置されているので、短絡切換弁56のスプールが切り換え位置Eに移動して、旋回用油圧モータ52の作動油の出入口M3、M4を短絡(旋回用油圧モータ52側の2つのポートM1、M2を短絡)すると、油圧ブレーキ弁機構60も短絡され、油圧ブレーキは解除される。
【0032】
この結果、結局、油圧ブレーキ弁機構60による油圧ブレーキは、旋回停止直後にのみ使用されることになる。
【0033】
上部旋回体14への駆動力の供給は、旋回用油圧モータ52および旋回用電動発電機64によってなされ、旋回用電動発電機64の駆動軸64aに旋回用油圧モータ52が連結されている。旋回用電動発電機64は、旋回用油圧モータ52の駆動を補助するとともに上部旋回体14の減速時には回生発電を行う。このため、本実施形態では、旋回用油圧モータ52および旋回用電動発電機64の合計出力で上部旋回体14は駆動される。また、旋回用電動発電機64には旋回減速機70が取り付けられており、旋回減速機70は旋回用電動発電機64の駆動軸64aの回転を減速して上部旋回体14に伝達する。
【0034】
旋回用電動発電機64には、交流を直流に変換するコンバータ機能、及び直流を交流に変換するインバータ機能の双方を有する変換装置7が接続されており、変換装置7にはバッテリー5およびコントローラ6が接続されている。
【0035】
バッテリー5は、変換装置7を介して旋回用電動発電機64との間で電気エネルギを授受する機能を有しており、上部旋回体14の減速時に旋回用電動発電機64が発電する回生電気エネルギを、変換装置7を介して蓄電可能である。一方、旋回用電動発電機64が電動機として作動する時には、バッテリー5は、旋回用電動発電機64に対し、変換装置7を介して電気エネルギを供給する。
【0036】
また、旋回用電動発電機64の駆動軸64aには、角度検出器(レゾルバ)72およびメカニカルブレーキ74が取り付けられている。角度検出器(レゾルバ)72から駆動軸64aの回転速度情報を得て、コントローラ6は回生発電が行われる状態かどうかを判断する。例えば上部旋回体14の減速を検知したときは、回生発電中と判断できるので、短絡切換弁56を切り換え位置Eに切り換える旨の電気信号をソレノイド部56aへ送る。
【0037】
メカニカルブレーキ74は、上部旋回体14の旋回を最終的に停止させる。
【0038】
次に、上述のように構成された作業機械の作用を説明する。
【0039】
エンジン1が回転すると、電動発電機2とメインポンプ3A、3Bとが共通に駆動される。電動発電機2の駆動軸2aは、図示せぬ変速機によりエンジン1の出力軸1aの回転速度に対して大きく増速された状態で回転し、所定の発電を行う。電動発電機2によって発電された交流電力は、変換装置4で直流電力に変換された後、バッテリー5に蓄電される。一方、メインポンプ3A、3Bは、図示せぬ変速機によって、エンジン1の出力軸1aの回転速度よりも若干速い回転速度に増幅駆動され、作動油を供給する。
【0040】
メインポンプ3A、3Bから作動油を供給して所定の油圧アクチュエータを駆動する際、メインポンプ3A、3Bに高負荷がかかるときは、バッテリー5から変換装置4を介して電動発電機2に電力が供給され、該電動発電機2は電動機として駆動される。この結果、電動発電機2は、メインポンプ3A、3Bの駆動に関して、エンジン1のトルクアシストを行うことができ、エンジン1が小型でもメインポンプ3A、3Bを十分に駆動できるようになる。また、メインポンプ3A、3Bの最大負荷にいつでも対応するべく、エンジン1を、常に高回転速度で予備的に運転している必要がなくなり、エンジン1の最大回転速度を低く設定することができ、省エネと同時に低騒音作業が可能になる。
【0041】
ここで、メインポンプ3A、3Bから旋回用油圧モータ52以外の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ38、アームシリンダ40、バケットシリンダ42、走行(右)用油圧モータ22、走行(左)用油圧モータ24)への作動油の供給はコントロールバルブ群50を介して行われるが、旋回用油圧モータ52への作動油の供給は旋回用制御弁54および短絡切換弁56を介して行われる。
【0042】
旋回用制御弁54のスプールは、オペレータが旋回リモコンレバー装置62を操作することによって移動し、旋回用油圧モータ52に供給される作動油の方向と流量を制御する。
【0043】
レバー62aを図1中のR側に傾けると、リモコン弁62bはパイロットポンプ3Cとパイロットポート54aとを連通する位置に切り換わり、旋回用制御弁54のスプールは図1において左方向に移動し、切り換え位置Aとなる。短絡切換弁56は、通常は切り換え位置Dとなっているので、メインポンプ3Aからの作動油(圧油)は、ポートP1、ポートM1、出入口M3の順に流れて旋回用油圧モータ52へ流入する。旋回用油圧モータ52からの作動油(戻り油)は、出入口M4、ポートM2、ポートP2の順に流れて、タンクに排出される。よって、旋回用油圧モータ52は一方の方向に回転する。レバー62aを図1中のL側に傾けると、リモコン弁62cはパイロットポンプ3Cとパイロットポート54bとを連通する位置に切り換わり、旋回用制御弁54のスプールは図1において右方向に移動し、切り換え位置Cとなる。この結果、メインポンプ3Aからの作動油(圧油)は、ポートP2、ポートM2、出入口M4の順に流れて旋回用油圧モータ52へ流入する。旋回用油圧モータ52からの作動油(戻り油)は、出入口M3、ポートM1、ポートP1の順に流れて、タンクに排出される。よって、旋回用油圧モータ52は逆方向に回転する。レバー62aを図1中の中立位置に戻すと、パイロットポート54a、54bのどちらにもパイロット圧は加わらず、ばね54c、54dの付勢力により旋回用制御弁54のスプールは中立位置である切り換え位置Bとなり、旋回用油圧モータ52への作動油の供給はポートP3、P4によってブロックされ、旋回用油圧モータ52は停止する。
【0044】
短絡切換弁56のスプールの位置の切り換えは、短絡切換弁56のソレノイド部56aへの電気の供給の有無により行う。ソレノイド部56aに電気が供給されていない状態では、短絡切換弁56のスプールは、ばね56bの付勢力により切り換え位置Dに位置しており、ポートP1とポートM1が連通し、ポートP2とポートM2が連通している。この状態においては、メインポンプ3Aから供給された作動油(圧油)および旋回用油圧モータ52からの作動油(戻り油)はスムーズに短絡切換弁56を通過するので、前述したように旋回用制御弁54のスプールの位置を位置AまたはCにすることで、旋回用油圧モータ52をどちらの方向にも作動させることができる。
【0045】
この実施形態では、短絡切換弁56の切り換えは、角度検出器(レゾルバ)72によって検出された旋回用電動発電機64の駆動軸64aの回転速度情報に基づきコントローラ6が行う。コントローラ6は、上部旋回体14の減速を検知したときに、電気信号線6bを介して電気信号をソレノイド部56aに送る。短絡切換弁56では、この電気信号によりスプールが図1において右方向に移動し、切り換え位置がEに変わる。これにより旋回用油圧モータ52の作動油の出入口M3、M4が短絡されて、旋回用電動発電機64の発電効率(エネルギ回生効率)が向上する。
【0046】
また、コントローラ6は、回生発電中において、旋回用電動発電機64の駆動軸64aの回転速度が所定の値以下又は零になると、回生発電が終了したと判断し、それまで電気信号線6bに送っていた電気信号を絶つ。このため、ばね56bによる付勢力により、短絡切換弁56のスプールは図1において左方向に移動して、切り換え位置Dに戻る。これにより旋回用油圧モータ52についての油圧回路は短絡を解除される。
【0047】
短絡切換弁56により、回生発電中に旋回用油圧モータ52の作動油の出入口M3、M4を短絡(旋回用油圧モータ52側の2つのポートM1、M2を短絡)させると、旋回用油圧モータ52の連れ廻り負荷がほとんどなくなり、旋回用油圧モータ52は上部旋回体14の旋回の実質的な抵抗とはならなくなる。
【0048】
ここで、本実施形態では、短絡切換弁56が切り換え位置Eに切り換えられたときに、旋回用油圧モータ52の作動油の出入口M3、M4のみならず油圧ブレーキ弁機構60も同時に短絡される。したがって、油圧ブレーキ弁機構60を設けていても、短絡切換弁56を切り換え位置Eにしている間は、油圧ブレーキ弁機構60による油圧ブレーキも機能しない。
【0049】
このため、上部旋回体14の慣性力のほとんどの部分は旋回用電動発電機64に加わることとなるので、旋回用油圧モータ52に連結された旋回用電動発電機64を発電機として機能させる際、上部旋回体14の慣性運動エネルギを効率的に電気エネルギに変換(回生)することができる。上部旋回体14は重量が大きく慣性力が大きいので、上部旋回体14の慣性運動エネルギを効率的に電気エネルギに変換(回生)することは、省エネルギの点でメリットが大きい。
【0050】
また、旋回用電動発電機64の駆動軸64aに旋回用油圧モータ52が連結しているので、上部旋回体14の駆動を旋回用油圧モータ52と旋回用電動発電機64の両方で行うことができる。このため、旋回用油圧モータ52の高い出力能力と旋回用電動発電機64の高い制御性の両方を活用することができる。この結果、高出力でありながら、状況に応じて臨機応変に運転条件を変更することができるとともに、旋回用電動発電機を小型にすることができる。
【0051】
一方、短絡切換弁56による短絡により、作動油は旋回用油圧モータ52及び油圧ブレーキ弁機構60についての油圧回路内をほとんど無負荷状態で流動するが、上部旋回体14の旋回停止直後に短絡を解除すると、流動している作動油から旋回用油圧モータ52がサージ圧を受ける恐れがある。
【0052】
しかしながら、旋回用油圧モータ52についての油圧回路に油圧ブレーキ弁機構60を備えさせておくことにより、上部旋回体14の旋回停止直後に短絡を解除すると同時に、油圧ブレーキ弁機構60による油圧ブレーキが働くため、旋回用油圧モータ52が過大なサージ圧を受けることはない。このため、メカニカルブレーキ74を含めて旋回用電動発電機64を小型にしても、停止した後に油圧モータ52側からの影響を受けにくく、旋回用電動発電機64を小型にすることができる。
【0053】
また、低速での押付力が必要な場合や位置を保持する必要がある場合、例えば傾斜地においてアーム機構16を保持する場合等において、油圧ブレーキ弁機構60による位置の保持機能のみで十分であれば、旋回用電動発電機64による保持トルクは必要でなくなる。
【0054】
また、旋回リモコンレバー装置62により旋回用油圧モータ52の運転を制御するので、コントロールバルブ群50の旋回ポート(予備制御弁110または112)は他目的に使用でき、本作業機械の適用可能範囲が広がり、汎用性が向上する。
【0055】
以上、本発明に係る作業機械の駆動装置の好適な実施形態の一例を説明したが、下部走行体12は走行機能を有していなくてもよく、走行機能を有さない基体に上部旋回体14が取り付けられた作業機械に対しても本発明は適用することができる。
【0056】
また、短絡切換弁56は、この実施形態では油圧ブレーキ弁機構60をも短絡させるようにしていたが、本発明では必ずしも油圧ブレーキ弁機構60まで短絡させる必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
建設用の作業機械のように、旋回する部位の重量が大きい作業機械に特に有効に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る作業機械の駆動装置を示すブロック構成図
【図2】前記作業機械の駆動装置の要部拡大図
【図3】本発明が適用された油圧ショベル(作業機械)の全体構成を示す斜視図
【符号の説明】
【0059】
1…エンジン
1a…出力軸
2…電動発電機
2a…駆動軸
3A、3B…メインポンプ
3C…パイロットポンプ
4、7…変換装置
5…バッテリー
6…コントローラ
10…油圧ショベル
12…下部走行体(基体)
14…上部旋回体
50…コントロールバルブ群
52…旋回用油圧モータ
54…旋回用制御弁
56…短絡切換弁
60…油圧ブレーキ弁機構
60A、60B…リリーフ弁
60C、60D…チェック弁
62…旋回リモコンレバー装置
64…旋回用電動発電機
64a…駆動軸
70…旋回減速機
72…角度検出器(レゾルバ)
74…メカニカルブレーキ
P1、P2、P3、P4、M1、M2…ポート
M3、M4…出入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に旋回自在に取り付けられた上部旋回体を駆動する作業機械の駆動装置において、
前記上部旋回体を駆動する旋回用油圧モータと、
該旋回用油圧モータと共に前記上部旋回体を駆動可能で、且つ該上部旋回体の減速時に回生発電を行う旋回用電動発電機と、
前記旋回用油圧モータの作動油の入口と出口を短絡可能な短絡切換弁と、を備え、
前記上部旋回体の回生発電時に前記旋回用油圧モータの作動油の入口と出口を短絡させることを特徴とする作業機械の駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記旋回用油圧モータを駆動する油圧回路には、該旋回用油圧モータに対する油圧ブレーキとして機能するブレーキ弁機構が備えられており、且つ、前記短絡切換弁により、該ブレーキ弁機構による前記油圧ブレーキをも解除可能としたことを特徴とする作業機械の駆動装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記上部旋回体の旋回停止直後のみ、前記ブレーキ弁機構による前記油圧ブレーキを使用することを特徴とする作業機械の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−65510(P2010−65510A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235688(P2008−235688)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】