説明

作業機械用液圧システム

作業機械用液圧システムが開示される。液圧システム(100)は、流体の供給を蓄積するように構成されたタンク(114)と、タンク(114)と流体連通する加圧流体源(112)とを備える。第1油圧アクチュエータ(128)および第2油圧アクチュエータ(160)は加圧流体源(112)と流体連通している。第1流体リターンライン(158)は流体のリターン流を第1油圧アクチュエータ(128)からタンク(114)へ送るように構成され、第2流体リターンライン(130)は流体のリターン流を第2油圧アクチュエータ(160)からタンク(114)へ送るように構成されている。圧力制御手段(170)が第2流体リターンライン(130)内に配置され、第2流体リターンライン(130)内の流体圧力の大きさを選択的に調整するように動作可能である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液圧システムに関し、より詳細には、作業機械用の液圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械は一般的に、例えば土、建設資材、および/またはデブリなどの重量物を動かすために使用される。これらの作業機械は例えばホイールローダ、掘削機、フロントショベル、モータグレーダ、ブルドーザ、バックホウ、トラックローダであってもよく、一般的に少なくとも2種類の動力システムと、推進システムと、作業器具システムとを備えている。推進システムは例えば作業現場周辺あるいは作業現場間で作業機械を移動させるために用いられ、作業器具システムは例えば現場において作業サイクル中に作業器具を動かすために用いられる。
【0003】
これらの作業機械は一般的に、推進システムおよび作業器具システムの双方に動力を供給する液圧システムを備えている。これらの種類の液圧システムは一般的に、推進システムおよび作業器具システムを作動させる一連の液圧アクチュエータを備えるものである。例えば、1個以上の油圧シリンダおよび/または油圧モータを用いて作業器具システムを作動させ、1個以上の油圧モータを用いて推進システムを作動させることができる。
【0004】
液圧システムの液圧アクチュエータはキャビテーションが生じた場合に損傷を受ける可能性がある。例えば、油圧モータへの供給流体流がモータからのリターン流体流より少ないと、油圧モータにキャビテーションが生じることがある。この状態は、油圧モータへの供給流体の流れが停止して油圧モータの運動が停止すると発生する可能性がある。油圧モータ内の慣性により、油圧モータは回転を続けようとする。油圧モータの入口側へ補給流体流が送られない場合、油圧モータにキャビテーションが生じることがある。そのようなキャビテーションが生じると、液圧システム、とりわけキャビテーションが生じる液圧アクチュエータが、損傷を受ける可能性がある。さらに、キャビテーションが生じると、不快な騒音が発生する可能性もある。
【0005】
(特許文献1)に示されるように、油圧モータ内のキャビテーションを低減するある方法には、油圧モータからの流体リターンラインに背圧弁を配置することが含まれる。背圧弁は、背圧弁と油圧モータとの間の流体リターンライン内に、ある大きさの流体圧力を維持する。この加圧された流体は油圧モータの動きに抗するように作用する。従って、モータへの流体の供給が停止すると、リターンライン内の流体の圧力はモータの継続した動きを妨げ、それによって油圧モータの供給側におけるキャビテーションを防止するように作用する。
【0006】
しかしながら、流体リターンライン内の背圧を維持することは油圧モータの効率を低下させるように作用するかもしれない。油圧モータが発生させる動力は油圧モータに関する圧力差の関数である。従って油圧モータに対する背圧を増大させると、油圧モータによって発生する動力が低下するように作用することになる。動力の低下は効率の低下につながり、これは例えば作業機械がかなりの距離を移動する際など、油圧モータを長期間作動させる場合に特に顕著である。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,673,605号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書の液圧システムは上記問題のうち1つ以上を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態は、流体の供給を蓄積するように構成されたタンクと、タンクと流体連通する加圧流体源とを備える液圧システムを対象としている。第1油圧アクチュエータおよび第2油圧アクチュエータは加圧流体源と流体連通している。第1流体リターンラインは流体のリターン流を第1油圧アクチュエータからタンクへ送るように構成され、第2流体リターンラインは流体のリターン流を第2油圧アクチュエータからタンクへ送るように構成されている。圧力制御装置が第2流体リターンライン内に配置され、第2流体リターンライン内の流体圧力の大きさを選択的に調整するように動作可能である。
【0010】
別の形態では、本発明は作業機械上の液圧システムを制御する方法を対象としている。加圧流体は第1油圧アクチュエータおよび第2油圧アクチュエータに供給される。第1油圧アクチュエータからの流体のリターン流は第1リターンラインを介してタンクへ送られる。第2油圧アクチュエータからの流体のリターン流は第2リターンラインを介してタンクへ送られる。第2リターンライン内に配置された圧力制御装置は、第2リターンライン内の流体圧力の大きさを選択的に調整するように調整される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
作業機械用液圧システム100の例示的な実施形態を図1に示す。液圧システム100はタンク114を備えてもよい。タンク114は作動流体の供給を保つように構成されている。作動流体は液圧システムで通常用いられるいかなる種類の流体であってもよい。
【0012】
液圧システム100は複数の液圧アクチュエータを備えてもよい。液圧アクチュエータは、例えば一連の油圧シリンダ、一連の油圧モータ、または油圧シリンダと油圧モータとの組み合わせであってもよい。図1の実施形態では、液圧システム100は一連の油圧シリンダ128、138、150と、一連の油圧モータ160、162、および164とを有している。当該技術において認識されているように、液圧システム100は液圧アクチュエータの様々な他の組み合わせを備えてもよいと考えられる。
【0013】
各油圧シリンダ128、138、および150は、ピストンロッドアセンブリ133、141、および154をそれぞれ取り付けたハウジング131、139、および152をそれぞれ備えている。油圧シリンダ128のピストンロッドアセンブリおよびハウジングはヘッド側チャンバ127とロッド側チャンバ129とを定める。油圧シリンダ138および150は同様に、ヘッド側チャンバとロッド側チャンバとを備える。
【0014】
加圧した流体を各油圧シリンダ128、138、および150に向けて流すと、それぞれのハウジング内においてそれぞれのピストンロッドアセンブリの運動を生じさせることができる。例えば、加圧流体の流れを油圧シリンダ128のヘッド側127に導入すると、ピストンロッドアセンブリ133をロッド側チャンバ129に向けて動かすことができる。ピストン133の移動によりロッド側チャンバ129の容積が減少するにつれて、ロッド側チャンバ129に存する流体はロッド側チャンバ129から流動する。特定の油圧シリンダから放出された流体は、タンク114につながる流体リターンライン158に向けられる。
【0015】
液圧システム100は、各油圧シリンダ128、138、および150に対する流体の流れを制御するため、複数の流量制御弁装置を備えてもよい。例えば、液圧システム100は、一連の独立計量弁装置102、104、および106を備えてもよい。弁装置102は油圧シリンダ128に対する流体の流れを制御するように構成してもよい。弁装置104は油圧シリンダ138に対する流体の流れを制御するように構成してもよい。弁装置106は油圧シリンダ150に対する流体の流れを制御するように構成してもよい。
【0016】
独立計量弁装置102、104、および106の各々は、複数の独立して作動し電子制御される計量弁を備えてもよい。例えば、各独立計量弁装置102、104、および106は、複数の計量弁120、122、124、126を備えてもよい。計量弁120は、ヘッド側チャンバ127から流体リターンライン158への流体の流れを制御する。計量弁122は、流体ライン155からヘッド側チャンバ127への加圧流体の流れを制御する。計量弁124は、流体ライン155からロッド側チャンバ129への加圧流体の流れを制御する。計量弁126は、ロッド側チャンバ129からタンク114への流体の流れを制御する。これらの計量弁は、流体ラインを通過する流体の流量を制御するために使用可能なスプール弁、ポペット弁、または他の従来型計量弁とすることができる。
【0017】
各油圧モータ160、162、および164は可逆流体駆動モータであってもよい。加圧流体を各油圧モータ160、162、および164の一方の側に導入すると、それぞれの油圧モータを第1の方向に回転させることができる。加圧流体を油圧モータ160、162、および164の第2の側に導入すると、それぞれの油圧モータを反対方向に回転させることができる。各油圧モータ160、162、および164は、流体リターンライン130内に流体を選択的に放出することができる。
【0018】
液圧システム100は各油圧モータ160、162、および164に対する流体の流れを制御するため、複数の流量制御弁装置を備えてもよい。例えば、液圧システム100は、一連の独立計量弁装置108、110、および111を備えてもよい。弁装置108は油圧モータ160に対する流体の流れを制御するように構成してもよい。弁装置110は油圧モータ162に対する流体の流れを制御するように構成してもよい。弁装置111は油圧モータ164に対する流体の流れを制御するように構成してもよい。
【0019】
各独立計量弁装置108、110、および111は、複数の独立して作動し電子制御される計量弁を備えてもよい。例えば、各独立計量弁装置108、110、および111は、複数の計量弁140、142、144、および146を備えてもよい。計量弁140は、それぞれの油圧モータの第1の側への加圧流体の流れを制御し、計量弁142は、それぞれの油圧モータの第2の側への加圧流体の流れを制御する。そのため、計量弁140および142は「メータイン(meter in)」弁と呼ぶことができる。計量弁144は、それぞれの油圧モータの第2の側から流体リターンライン130への流体の流れを制御し、計量弁146は、それぞれの油圧モータの第1の側から流体リターンライン130への流体の流れを制御する。そのため、計量弁144および146は「メータアウト(meter out)」弁と呼ぶことができる。これらの計量弁は、流体ラインを通過する流体の流量を制御するために使用可能なスプール弁、ポペット弁、または他の従来型計量弁とすることができる。
【0020】
液圧システム100は、各液圧アクチュエータに加圧流体を供給する加圧流体源112を備えてもよい。加圧流体源112は第1ポンプ116と第2ポンプ118とを備えてもよい。第1および第2ポンプ116および118の各々は例えば可変出力高圧ポンプまたは定出力高圧ポンプであってもよい。第1および第2ポンプ116および118に駆動力を供給するため、エンジン(図示せず)または他の原動力を設けることができる。第1ポンプ116および第2ポンプ118の各々は、タンク114から流体を吸引して流体の圧力を増大させるため独立して作動させることができる。
【0021】
第1および第2ポンプ116および118は一連の液圧アクチュエータに多くの異なる方法で接続することができる。以下により詳細に述べるように、液圧システム100は作業機械(図2に示す例示的な実施形態)とともに用いることができる。図1に示す液圧システム100の実施形態では、第1および第2ポンプ116および118は、液圧システム100の予期される動作条件に基づき加圧流体の流れが各液圧アクチュエータにおいて利用可能となるように一連の液圧アクチュエータに接続される。液圧システム100を例えば別種類の作業機械などの異なる用途に適合させるために、加圧流体源112と液圧アクチュエータとの間の流体接続には様々な変更をなしうるものと考えられる。
【0022】
第1ポンプ116は流体ライン155を介して油圧シリンダ128および138に接続してもよい。弁装置102は、流体ライン155から油圧シリンダ128への加圧流体の流れを制御するように作動可能である。弁装置104は、流体ライン155から油圧シリンダ138への加圧流体の流れを制御するように作動可能である。油圧シリンダ128および138の各々からのリターン流は流体リターンライン158を介してタンク114に向けてもよい。
【0023】
第2ポンプ118は流体ライン156を介して油圧シリンダ150に接続してもよい。弁装置106は、流体ライン156から油圧シリンダ150への加圧流体の流れを制御するように作動可能である。油圧シリンダ150からのリターン流は流体リターンライン158に向け、油圧シリンダ128および138からのリターン流と合流させタンク114に戻してもよい。
【0024】
液圧システム100は、一対の複合リリーフ・バイパス弁190を備えてもよい。複合弁190は流体ライン155および156から流体ライン192へ圧力を逃がすように作動させることができる。さらに、複合弁190は第1および第2ポンプ116および118から流体ライン192へ流れを迂回させるように作動可能である。流体ライン192は、逃がしまたは迂回の流れを油圧モータ160、162、および164からのリターン流と合流させるように流体リターンライン130と接続してもよい。
【0025】
第1および第2ポンプ116および118は各々、加圧流体を油圧モータ160、162、および164に供給してもよい。流体ライン155における第1ポンプ116からの加圧流体の流れは第2ポンプ118から流体ライン159への加圧流体の流れと合流させてもよい。流体ライン155および156と流体ライン159との間には一対の集流器148を配置してもよい。集流器148は、加圧流体が流体ライン155および156の各々から流体ライン159へ流れる速度を制御するように作動させることができる。
【0026】
流体ライン159は、加圧流体の流れを弁装置108、110、および111を介して油圧モータ160、162、および164へ向けるものである。弁装置108は油圧モータ160への加圧流体の流れを制御するように作動可能である。弁装置110は油圧モータ162への加圧流体の流れを制御するように作動可能である。弁装置111は油圧モータ164への加圧流体の流れを制御するように作動可能である。各油圧モータ160、162、および164からのリターン流は、タンク114につながる流体リターンライン130に向けてもよい。
【0027】
流体リターンライン130には圧力制御装置170を配置してもよい。圧力制御装置170は、流体リターンライン130内に、ある大きさの圧力を維持するように構成される。圧力制御装置170は、液圧システム100の動作に基づき流体リターンライン130内の圧力の大きさを変化させるように構成された、いかなる種類の装置でもよい。
【0028】
例えば、圧力制御装置170は流体付勢チェック弁172を備えてもよい。チェック弁172は、加圧流体源176から流体ライン178を通過した加圧流体に対し露出してもよい。流体ライン178内の流体圧力の大きさは、チェック弁172が開いて、流体が流体リターンライン130を通ってタンク114へ流動可能となる圧力を決定するものである。従って、流体ライン178内の流体圧力を増大させると流体リターンライン130内の流体圧力が増大することになる。反対に、流体ライン178内の流体圧力を低下させると流体リターンライン130内の流体圧力は低下することになる。
【0029】
圧力制御装置170は、流体ライン178内の圧力の大きさを制御して、それにより流体リターンライン130内の圧力の大きさを制御するため比例減圧弁174を備えてもよい。比例減圧弁174は弁体179を備えてもよい。弁体179の位置は、比例減圧弁174内の開口の大きさを制御して、それにより流体ライン178内の圧力の大きさを制御するように調整可能である。加圧流体源と流体ライン178との間の比例減圧弁174内の開口が大きくなると、流体ライン178内の流体圧力が大きくなる。加圧流体源と流体ライン178との間の比例減圧弁174内の開口が小さくなると、流体ライン178内の流体圧力が小さくなる。
【0030】
比例減圧弁174は、弁体179に作用して比例減圧弁174内の開口の大きさを制御するように構成されたソレノイド175およびバネ177を備えてもよい。バネ177は、流体ライン178をタンク114に完全に連通させる位置へ弁体179を移動させるように作用可能である。ソレノイド175に電流を印加することにより、タンクの開口が閉じ加圧流体源と流体ライン178との間の接続が次第に開く位置に向かって弁体179を移動させる力を弁体179に加えることができる。ソレノイド175に印加される電流を大きくすると、弁体179にかかる力が大きくなるとともに弁体179が移動し、印加される電流の増大に比例して流体ライン178内の流体の圧力が増大する。ソレノイド175に印加される電流が小さくなると、比例減圧弁174内の開口の大きさにより、印加される電流の低下に比例して流体ライン178内の圧力も低下する。このように、ソレノイド175に印加される電流を調整することにより、比例減圧弁174を調整して、流体ライン178および流体リターンライン130内の圧力の大きさを制御することができる。
【0031】
圧力制御装置170は、流体ライン178内の流体圧力の大きさを制御するように構成されたいかなる種類の弁あるいは他の機構を備えてもよいことが留意されるべきである。例えば、圧力制御装置170は、チェック弁172を付勢するように作用する可変抵抗ばねあるいは別の種類の機構を備えてもよい。
【0032】
圧力制御装置170を制御するために制御装置180を設けてもよい。制御装置180はコンピュータを備えてもよく、このコンピュータは例えばメモリ、補助記憶装置、中央処理装置のようなプロセッサなどアプリケーションを実行するのに必要なすべての構成要素を有している。このコンピュータが付加的あるいは異なる構成要素を搭載可能であることは当業者の了解するところであろう。さらに、本発明の諸形態はメモリに格納されているものとして記述されているが、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、または他の形態のRAMあるいはROMを含む、コンピュータチップや補助記憶装置など、他の種類のコンピュータプログラム製品またはコンピュータ読み取り可能な媒体にこれらの諸形態を格納可能あるいはそれらから読み取り可能であることは当業者の了解するところであろう。制御装置180は例えば電源回路、信号調整回路、ソレノイド駆動回路など他の様々な既知の回路をさらに備えてもよい。
【0033】
制御装置180は、油圧モータ160、162、および164の動作に基づき比例減圧弁174のソレノイド175に印加される電流を制御するように構成してもよい。モータキャビテーションの可能性が相対的に低い場合などの動作条件では、制御装置180はソレノイド175に印加する電流を低下させることにより流体リターンライン130内の圧力を低下させてもよい。モータキャビテーションの可能性が相対的に高い場合など他の動作条件では、制御装置180はソレノイド175に印加する電流を増大させ流体リターンライン130内の圧力を増大させてもよい。
【0034】
これまでに述べたように、上述の液圧システム100は作業機械に組み込むことができる。作業機械200の例示的な実施形態を図2に示す。作業機械200は、操作者用の座席領域を含むハウジング202を有している。
【0035】
ハウジング202は、垂直軸206を中心としてハウジング202を回転ないし回動させるように構成された旋回アセンブリ204上に取り付けてもよい。旋回アセンブリ204には、例えば流体モータ164(図1を参照)のような液圧アクチュエータにより動力を供給することができる。弁装置111は流体モータ164への加圧流体の流れを制御することによって旋回アセンブリ204の移動の方向および速度を制御することができる。
【0036】
ハウジング202および旋回アセンブリ204は牽引装置208により支持してもよい。牽引装置208は、現場周辺および/または現場間で作業機械200を移動させるように構成された、いかなる種類の装置でもよい。例えば、牽引装置208は一対の無限軌道210(そのうち一方のみを図2に示す)を備えてもよい。各無限軌道210には、例えば流体モータ160および162(図1を参照)の一方のような液圧アクチュエータにより動力を供給することができる。弁装置108は流体モータ160への加圧流体の流れを制御することによって一方の無限軌道の移動方向および速度を制御することができる。弁装置110は流体モータ162への加圧流体の流れを制御することによって第2の無限軌道の移動方向および速度を制御することができる。
【0037】
作業機械200は、地面係合工具224を操作可能に搭載した作業器具リンク機構212を備えてもよい。作業器具リンク機構212はブーム220を備えてもよい。ブーム220は、矢印221によって示す方向への動きのため、ハウジング202上に回動自在に取り付けてもよい。別の例示的な実施形態では、ブーム220は旋回アセンブリ204に直接取り付けてもよく、ハウジング202を牽引装置208に対し固定してもよい。この代替的実施形態では、旋回アセンブリ204によって、ブームが垂直軸を中心としてハウジング202に対し回動することが可能になる。
【0038】
ブーム220には、矢印223によって示す方向への動きのためスティック222を回動自在に取り付けてもよい。スティック222には、矢印225によって示す方向への動きのため地面係合工具224を作動可能に取り付けてもよい。地面係合工具224は、土、デブリ、または他の資材の荷重226を移動させるために作業機械で一般的に使用されるいかなる種類の機構であってもよい。例えば、地面係合工具224はショベル、バケット、ブレード、またはクラムシェルであってもよい。
【0039】
作業器具リンク機構212には、例えば液圧システム100(図1を参照)の油圧シリンダ128、138および150のような一連の液圧アクチュエータにより動力を供給することができる。油圧シリンダ150のハウジング152はハウジング202に連結してもよく、油圧シリンダ150のピストンロッドアセンブリ154はブーム220に連結してもよい。弁装置106は油圧シリンダ150に対する流体の流れを制御することによりブーム220の動きを制御することができる。
【0040】
油圧シリンダ138および128は、それぞれスティック222および地面係合工具224の動きに動力を供給することができる。油圧シリンダ138のハウジング139をブーム220に連結し、油圧シリンダ138のピストンロッドアセンブリ141をスティック222に連結してもよい。弁装置104は油圧シリンダ138に対する流体の流れを制御することによりブーム220に対するスティック222の動きを制御することができる。同様に、油圧シリンダ128のハウジング131をスティック222に連結し、油圧シリンダ128のピストンロッドアセンブリ133を地面係合工具224に連結してもよい。弁装置102は油圧シリンダ128に対する流体の流れを制御することによりスティック222に対する地面係合工具224の動きを制御することができる。
【0041】
制御装置180(図1を参照)は、操作者から受けた入力に基づき各弁装置102、104、106、108、110、および111に制御信号を送るように構成してもよい。これら制御信号は弁装置の各々の内部で計量弁を動かして各液圧アクチュエータに対する流体の流れを制御するように構成することができる。このようにして、制御装置180は操作者が望む特定の動きまたは作用を生じさせることができる。
【0042】
制御装置180は液圧システム100における液圧アクチュエータの動作を監視し、液圧アクチュエータの1つがキャビテーションを起こしている状態を識別することができる。例えば、制御装置180は油圧モータ160、162、および164の現在の動作特性を示す一連の信号S、S、およびSを受け取ることができる。信号S、S、およびSは例えば各油圧モータを出る流体流量、各油圧モータの回転速度、各油圧モータの出力、または他の関連する動作特性を表わすものでもよい。
【0043】
制御装置180は信号S、S、およびSを処理して液圧システム100におけるキャビテーションの可能性を識別することができる。キャビテーションの危険度が増大すると、制御装置180は圧力制御装置170を調整して流体リターンライン130内の流体圧力を上げることができる。キャビテーションの危険度が低下すると、制御装置180は圧力制御装置170を調整して流体リターンライン130内の流体圧力を下げることができる。
【0044】
図1の実施形態では、圧力制御装置170は油圧モータ160、162、および164におけるキャビテーションの可能性を低下させるように構成されている。しかし、圧力制御装置170はさらに、油圧アクチュエータ128、138、および150におけるキャビテーションを防止するように構成してもよいと考えられる。これは例えばリターンライン158と流体リターンライン130との間に流体接続ラインを設けることにより実現可能である。油圧アクチュエータ128、138、および150からのリターン流のすべてまたは一部分を流体リターンライン130に向けるため、この流体接続ライン内に制御弁(図示せず)を配置してもよい。このように、圧力制御装置170を用いて、油圧アクチュエータ128、138、および150のうち1つ以上に対する背圧の大きさを制御することができる。
【0045】
流体リターンライン130を通過する流体の流量が相対的に小さい場合、油圧モータ160、162、および164におけるキャビテーションの危険度が高まることがある。これが生じるのは例えば、油圧モータ160、162、164のうち1基のみが稼動中に回転を停止される場合である。これにより漏出が大きくなり、十分な補給流体が得られなくなる場合がある。この状況では、制御装置180は圧力制御装置170を動作させて流体リターンライン130内の流体圧力を上げることができる。作動中の油圧モータ160、162、または164への流体流を停止すると、流体リターンライン130の背圧が高まり、メータアウト弁の働きにより必要な補給流体が供給される。
【0046】
流体リターンライン130を通過する流体の流量が相対的に大きい場合、油圧モータ160、162、および164におけるキャビテーションの危険度は低くなることがある。これが生じるのは例えば、作業機械200が一定距離を移動する際など油圧モータ160、162、164のうち2つ以上が稼動している場合である。さらに、加圧流体源112が流体ライン192を通じて流体リターンライン130へ流体の迂回流または逃がし流を供給しているときは、流体リターンライン130を通過する流体の流量が相対的に大きくなることがある。この状況では、制御装置180は圧力制御装置170を動作させて流体リターンライン130内の流体圧力を下げることができる。流体リターンライン130内の流体圧力を下げると、作動中の油圧モータの効率が高まる可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上記液圧システムは、液圧システム100における1基以上の油圧アクチュエータの動作に関連したキャビテーションの可能性を低下させるために使用することができる。例えば油圧モータ160、162、および164のような油圧アクチュエータのうちいくつかからの流体のリターン流は、圧力制御装置170を通過させることができる。例えば油圧シリンダ128、138、および150のような他の油圧アクチュエータからの流体のリターン流はタンク114に直接送ることができる。キャビテーションの可能性が高まると、圧力制御装置170を調整して流体リターンライン130内の圧力を上げることにより、油圧モータ160、162、および164にかかる背圧を上げることができる。キャビテーションの可能性が低くなると、流体リターンライン130内の圧力を下げ、背圧を下げることができる。
【0048】
圧力制御装置170の可変性により、液圧システム100における油圧アクチュエータの効率は向上する。一定の状況の下で流体リターンライン130内の圧力を下げると液圧システム100の効率を高めることができる。さらに、油圧アクチュエータ128、138、および150からの流体のリターン流をタンクに直接送ることによっても液圧システム100の効率を高めることができる。
【0049】
上記液圧システム100の圧力制御装置170は、液圧システム100の他の形態に対する制御を改善するために使用することができる。例えば、加圧流体源112からのアンロード流が圧力制御装置170に通されるにつれて、圧力制御装置を作動させて加圧流体源112に関するアンロード圧力を調整することができる。他のそのような制御形態は当業者にとって明らかであろう。
【0050】
本明細書に記述された液圧システム100は作業機械200と共に用いることができる。液圧システム100は掘削機(図2参照)に関連して説明を行なってきたが、液圧システムはいかなる種類の作業機械でも使用可能と考えられる。例えば、作業機械200はホイールローダ、フロントショベル、モータグレーダ、ブルドーザ、バックホウ、またはトラックローダであってもよい。
【0051】
本明細書の液圧システムにおいて本明細書の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更をなしうることは当業者にとって明らかであろう。開示されたシステムに関する明細書および実施を考慮することにより、他の実施形態も当業者にとって明らかであろう。本明細書および実施例は単なる例示と見なすべきであり、本明細書の厳密な範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの同等物によって示されるものと解される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態による液圧回路の概略図である。
【図2】作業機械の例示的な実施形態の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の供給を蓄積するように構成されたタンク(114)と、
タンク(114)と流体連通する加圧流体源(112)と、
加圧流体源(112)と流体連通する第1油圧アクチュエータ(128)と、
加圧流体源(112)と流体連通する第2油圧アクチュエータ(160)と、
流体のリターン流を第1油圧アクチュエータ(128)からタンク(114)へ送るように構成された第1流体リターンライン(158)と、
流体のリターン流を第2油圧アクチュエータ(160)からタンク(114)へ送るように構成された第2流体リターンライン(130)と、
第2流体リターンライン(130)内の流体圧力の大きさを選択的に調整するための圧力制御手段(170)と、
を備える液圧システム。
【請求項2】
第1油圧アクチュエータ(128)が油圧シリンダであり、第2油圧アクチュエータ(160)が油圧モータであり、加圧流体源(112)が第1ポンプ(116)と第2ポンプ(118)とを備える、請求項1の液圧システム。
【請求項3】
加圧流体源(112)と油圧シリンダ(128)との間の流体の流れを制御するとともに、油圧シリンダ(128)から第1流体リターンライン(158)への流体の流れを制御するように構成された第1組の独立計量弁(102)と、
加圧流体源(112)と油圧モータ(160)との間の流体の流れを制御するとともに、油圧モータ(160)から第2流体リターンライン(130)への流体の流れを制御するように構成された第2組の独立計量弁(106)と、
をさらに備える、請求項2のシステム。
【請求項4】
圧力制御手段(170)を調整することにより第2流体リターンライン(130)内の流体圧力の大きさを調整するように構成された制御装置(180)をさらに備える、請求項1のシステム。
【請求項5】
圧力制御手段(170)が、第2流体リターンライン(130)内に配置されたチェック弁(172)と、第2流体リターンライン(130)内の流体圧力の大きさを制御するように構成された比例減圧弁(174)とを備える、請求項4のシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液圧システム(100)を備える作業機械(200)。
【請求項7】
第1油圧アクチュエータ(128)および第2油圧アクチュエータ(160)に加圧流体を供給することと、
第1油圧アクチュエータ(128)から第1リターンラインを介してタンク(114)へ流体のリターン流を送ることと、
第2油圧アクチュエータ(160)から第2リターンライン(130)を介してタンク(114)へ流体のリターン流を送ることと、
第2リターンライン(130)内の流体圧力の大きさを選択的に調整するために、第2リターンライン(130)内に配置された圧力制御装置(170)を調整することと、
を含む、作業機械上の液圧システムを制御する方法。
【請求項8】
第2油圧アクチュエータ(160)が油圧モータであり、
油圧モータ(160)への流体の流れを制御することによって旋回アセンブリ(204)の動きを制御することと、
旋回アセンブリ(204)の動作の変化に応じて圧力制御装置(170)を調整することと、
をさらに含む、請求項7の方法。
【請求項9】
第1牽引装置(208)に関連する第2油圧モータ(162)の動作の変化と第2牽引装置(208)に関連する第3油圧モータ(164)の動作の変化とに応じて、圧力制御装置(170)を調整することをさらに含む、請求項8の方法。
【請求項10】
第2リターンライン(130)を通る流体流量の低下に応じて第2リターンライン(130)内の流体圧力の大きさを増大させることと、
第2リターンライン(130)を通る流体流量の増大に応じて第2リターンライン(130)内の流体圧力の大きさを低下させることと、
をさらに含む、請求項9の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−510864(P2007−510864A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536636(P2006−536636)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031187
【国際公開番号】WO2005/042983
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】