説明

作業機械

【課題】操作性を低下させることなく、優先度の高い装置の作動速度を確保できる作業機械を提供する。
【解決手段】パワーショベルは、油圧力を用いて作動する走行装置とショベル機構とを有し、油圧力を供給するメインポンプ39と、走行モータ用コントロールバルブ52と、走行モータ用コントロールバルブ52の作動を制御するための第1パイロット圧を生成する走行用パイロットバルブユニット32と、ブーム用コントロールバルブ51と、ブーム用コントロールバルブ51の作動を制御するための第2パイロット圧を生成する右作業用パイロットバルブユニット34と、走行装置およびショベル機構が同時に操作されたときに、メインポンプ39から走行装置およびショベル機構に対する圧油の供給を優先度を付けて振り分け供給する制御を行うように、第1および第2パイロット圧の少なくともいずれかを調圧する減圧バルブ33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータにより作業装置を作動させて作業を行う作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業機械の一例として、地面を掘削したり掘削した土砂等を移動させる際に使用されるスキッドステアローダやパワーショベルなどが、従来広く知られている。例えばパワーショベルは、走行装置を備えた車体に、ブーム、アームおよびバケット等の作業装置を設けて構成され、これら走行装置や作業装置は油圧駆動式のアクチュエータにより駆動される。アクチュエータに対する圧油の供給制御はコントロールバルブにより行われるが、このコントロールバルブの制御は、オペレータの操作に応じて生成されるパイロット圧に基づいて行われる(例えば、特許文献1を参照)。そして、メインポンプからコントロールバルブに供給された圧油が、コントロールバルブにより制御された供給方向および供給量でアクチュエータに供給されることで、その供給方向に応じた駆動方向およびその供給量に応じた駆動速度で、走行装置や作業装置が駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−97505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、土砂等を移動させる作業の状況によっては、走行装置を駆動させる操作と作業装置を駆動させる操作とが、同時に行われることがある。このような操作が行われると、走行装置用のコントロールバルブおよび作業装置用のコントロールバルブの両方に対し、アクチュエータに対して圧油を供給させるパイロット圧が入力される。そうすると、例えば走行装置用のコントロールバルブに供給される圧油量が要求量に対して不足し、走行操作に対応したパイロット圧がコントロールバルブに入力されても、実際には操作量もしくはパイロット圧に対応する速度よりも低い速度でしか走行させることができないという現象が起きる。
【0005】
そこで、作業装置の駆動よりも走行装置の駆動を優先させたいような場合、従来はオペレータ自身が、作業装置の作動速度を遅くする方向に操作(具体的には、操作レバーを中立位置の方向に戻す操作)を行うことで、作業装置用のコントロールバルブに供給される圧油を減少させ、その減少分を走行装置用のコントロールバルブに供給させて、走行装置の走行速度を確保していた。このように、優先度の高い装置の作動速度を確保するために、優先度の低い装置に対して作動速度を遅くする操作を行う必要があり、操作性が低下するという課題があった。
【0006】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、操作性を低下させることなく優先度の高い装置の作動速度を確保できる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る作業機械(例えば、実施形態におけるパワーショベル1)は、車体(例えば、実施形態における旋回台6)と、前記車体に設けられ、油圧力を用いて作動する第1および第2油圧装置(例えば、実施形態における走行装置4おおよびショベル機構7)とを有する作業機械であって、前記油圧力を供給するメイン側圧油供給源(例えば、実施形態におけるメインポンプ39)と、前記メイン側圧油供給源から前記第1油圧装置に対する圧油供給を制御する第1コントロールバルブ(例えば、実施形態における走行モータ用コントロールバルブ52)と、前記第1油圧装置を作動させるための第1操作装置(例えば、実施形態における右走行用操作レバー21、左走行用操作レバー22)を備え、前記第1操作装置に対する操作に応じて前記第1コントロールバルブの作動を制御するための第1パイロット圧を生成する第1パイロット圧生成手段(例えば、実施形態における走行用パイロットバルブユニット32)と、前記メイン側圧油供給源から前記第2油圧装置に対する圧油供給を制御する第2コントロールバルブ(例えば、実施形態におけるブーム用コントロールバルブ51、アーム用コントロールバルブ53)と、前記第2油圧装置を作動させるための第2操作装置(例えば、実施形態における右作業用操作レバー19、左作業用操作レバー20)を備え、前記第2操作装置に対する操作に応じて前記第2コントロールバルブの作動を制御するための第2パイロット圧を生成する第2パイロット圧生成手段(例えば、実施形態における右作業用パイロットバルブユニット34、左作業用パイロットバルブユニット35)と、前記第1操作装置および前記第2操作装置が同時に操作されて、前記第1コントロールバルブに前記第1パイロット圧が作用するとともに、前記第2コントロールバルブに前記第2パイロット圧が作用するときに、前記メイン側圧油供給源から前記第1および前記第2油圧装置に対する圧油の供給を優先度を付けて振り分け供給する制御を行うように、前記第1および前記第2パイロット圧の少なくともいずれかを調圧するパイロット圧制御手段(例えば、実施形態における減圧バルブ33)とを備えることを特徴とする。
【0008】
上述の作業機械において、前記第1および前記第2パイロット圧を生成するためのパイロット元圧を、前記第1パイロット圧生成手段および前記第2パイロット圧生成手段に供給するパイロット側圧油供給源(例えば、実施形態におけるパイロットポンプ31)を備え、前記パイロット圧制御手段は、前記第1および第2油圧装置のうち優先度の高い油圧装置に対応する前記第1もしくは前記第2コントロールバルブの作動に応じて、前記パイロット側圧油供給源から前記第1および第2油圧装置のうち優先度の低い油圧装置に対応する前記第1もしくは前記第2パイロット圧生成手段に、前記パイロット元圧を減圧させたパイロット減圧元圧を供給させることが好ましい。
【0009】
また、上述の作業機械において、前記第1および前記第2パイロット圧を生成するためのパイロット元圧を、前記第1パイロット圧生成手段および前記第2パイロット圧生成手段に供給するパイロット側圧油供給源を備え、前記パイロット圧制御手段は、前記第1および第2油圧装置のうち優先度の高い油圧装置に対応する前記第1もしくは前記第2パイロット圧生成手段における前記第1もしくは前記第2パイロット圧の生成に応じて、前記パイロット側圧油供給源から前記第1および第2油圧装置のうち優先度の低い油圧装置に対応する前記第1もしくは前記第2パイロット圧生成手段に、前記パイロット元圧を減圧させたパイロット減圧元圧を供給させることも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る作業機械は、第1操作装置および第2操作装置が同時に操作されたときに、第1および第2油圧装置に対する圧油の供給を優先度を付けて振り分け供給する制御を行うように、第1および第2パイロット圧の少なくともいずれかを調圧するパイロット圧制御手段を備えて構成される。このため、第1油圧装置および第2油圧装置のうちで作動速度の確保が要求される油圧装置に優先的に圧油が供給されるので、圧油供給量が不足することに起因した作動速度の低下を自動で防止でき、操作性を低下させることなく優先度の高い油圧装置の作動速度を確保できる。
【0011】
上述の作業機械において、第1および第2油圧装置のうち優先度の高い油圧装置に対応するコントロールバルブの作動に応じて、パイロット側圧油供給源から優先度の低い油圧装置に対応するパイロット圧生成手段に、パイロット元圧を減圧させたパイロット減圧元圧を供給させることが好ましい。このように、優先度の高い油圧装置に対応するコントロールバルブの作動に応じてパイロット元圧を減圧させる構成とした場合には、パイロット元圧を減圧させるタイミング精度を高めることが可能になり、優先度の高い油圧装置の作動速度を確実に確保できる。
【0012】
また、上述の作業機械において、第1および第2油圧装置のうち優先度の高い油圧装置に対応するパイロット圧生成手段におけるパイロット圧の生成に応じて、パイロット側圧油供給源から優先度の低い油圧装置に対応するパイロット圧生成手段に、パイロット元圧を減圧させたパイロット減圧元圧を供給させることが好ましい。このように、優先度の高い油圧装置に対応するパイロット圧生成手段におけるパイロット圧の生成に応じてパイロット元圧を減圧させる構成とした場合にも、パイロット元圧を減圧させるタイミング精度を高めることができて、優先度の高い油圧装置の作動速度を確実に確保できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した作業機械の一例としてのパワーショベルを示す斜視図である。
【図2】上記パワーショベルの油圧回路図である。
【図3】別の実施例に係る油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1には、本発明を適用した作業機械の一例としてクローラ型のパワーショベル1を示しており、まずこの図1を参照しながら、パワーショベル1の全体構成について説明する。
【0015】
このパワーショベル1は、平面視略H字状の走行台車2(車体)の左右に走行機構3,3が設けられて構成される走行装置4と、走行台車2の後部に上下に揺動自在に設けられたブレード5と、走行台車2の上部に旋回可能に設けられた旋回台6と、旋回台6の前部に設けられたショベル機構7と、旋回台6の上部に立設された運転者搭乗用のオペレータキャビン8(車体)とから構成されている。
【0016】
走行装置4を構成する左右一対の走行機構3,3は、走行台車2の左右前部に設けられた駆動用スプロケットホイール9と、走行台車2の左右後部に設けられたアイドラホイール10との間に履帯11が巻き掛けられて構成される。駆動用スプロケットホイール9は、油圧で作動する走行油圧モータ54(図2参照)により回転駆動される。ブレード5は、油圧駆動式のブレードシリンダ(不図示)の作動により揺動され、旋回台6は、油圧で作動動する旋回油圧モータ(不図示)により旋回動される。なお、走行油圧モータ54は、左右一対の駆動用スプロケットホイール9のそれぞれに対応させて設けられている。
【0017】
ショベル機構7は、旋回台6の前部に起伏動自在に枢結されたブーム12と、ブーム12の先端部にブーム12の起伏面内で上下に揺動自在に枢結されたアーム13と、アーム13の先端に上下で揺動自在に枢結されたバケット14と、油圧駆動式のブームシリンダ15、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ17とから構成されている。ブーム12はブームシリンダ15により起伏動され、アーム13はアームシリンダ16により揺動され、バケット14はバケットシリンダ17により揺動される。以降の説明では、走行油圧モータ54を「走行用油圧アクチュエータ」と呼び、一方、走行油圧モータ54以外の油圧アクチュエータ(シリンダ15〜17やブレード5のブレードシリンダ等)を纏めて「作業用油圧アクチュエータ」と呼ぶことにする。
【0018】
オペレータキャビン8は、上下前後左右が囲まれた矩形箱状に形成されており、内部に運転者が前方に向いて着座するためのオペレータシート18が設けられている。オペレータシート18の左右には、ショベル機構7等の作動動操作を行うための一対の右作業用操作レバー19と左作業用操作レバー20とが設けられており、また、オペレータシート18の前方には、走行装置4の作動操作を行うための一対の右走行用操作レバー21と左走行用操作レバー22とが設けられている。右走行用操作レバー21は、走行装置4における右側の走行油圧モータ54を操作するための操作レバーで、左走行用操作レバー22は、走行装置4における左側の走行油圧モータ54を操作するための操作レバーである。
【0019】
このように構成されるパワーショベル1においては、オペレータがオペレータシート18に着座して、右作業用操作レバー19および左作業用操作レバー20を前後左右に傾動操作したり、右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22を前後に傾動操作することにより、パワーショベル1を前後に走行させたり、また、ショベル機構7等の作動を制御して、掘削等の作業をさせたりすることができる。
【0020】
以上ここまでは、パワーショベル1の全体構成について説明した。次に、このパワーショベル1の油圧回路にについて、以下の実施例1と実施例2とに分けて詳しく説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、図2を参照しながら、ショベル機構7等の駆動に対して走行装置4の駆動を優先させて行わせる構成例としての油圧回路30について説明する。なお、図2には、走行用油圧アクチュエータおよび作業用油圧アクチュエータの操作に関連する部分を中心に抜粋した油圧回路30を示している。
【0022】
油圧回路30は、パイロットポンプ31、走行用パイロットバルブユニット32、減圧バルブ33、右作業用パイロットバルブユニット34、左作業用パイロットバルブユニット35、メインポンプ39、ブーム用コントロールバルブ51、走行モータ用コントロールバルブ52、およびアーム用コントロールバルブ53等を備えて構成される
【0023】
パイロットポンプ31は、例えばエンジン(不図示)により回転駆動されることで、作動油タンク37に貯留された作動油を吸い上げ、所定圧の圧油としてパイロット油路40に吐出する。パイロット油路40内の油圧は、パイロット圧調圧バルブ40aにより所定のパイロット油圧に調圧される。
【0024】
走行用パイロットバルブユニット32は、右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22の根本部分に設けられており、右走行用操作レバー21に対する前後への傾動操作に応じてパイロット圧を生成する一対のパイロットバルブ(不図示)と、左走行用操作レバー22に対する前後への傾動操作に応じてパイロット圧を生成する一対のパイロットバルブ(不図示)とを備えて構成される。この走行用パイロットバルブユニット32は、パイロット油路40から分岐した第1パイロット油路41を介してパイロット油路40と繋がれており、上記パイロット油圧が供給される。
【0025】
右作業用パイロットバルブユニット34は、右作業用操作レバー19の根本部分に設けられており、右作業用操作レバー19に対する前後左右への傾動操作に応じたパイロット圧を生成する複数(4つ)のパイロットバルブ(不図示)を備えて構成される。
この右作業用パイロットバルブユニット34は、パイロット油路40から分岐した第2パイロット油路42a、および減圧バルブ33を介して第2パイロット油路42aに繋がれた第3パイロット油路42bを介してパイロット油路40と繋がれており、上記パイロット油圧が供給される。
【0026】
左作業用パイロットバルブユニット35は、左作業用操作レバー20の根本部分に設けられており、左作業用操作レバー20に対する前後左右への傾動操作に応じたパイロット圧を生成する複数(4つ)のパイロットバルブ(不図示)を備えて構成される。この左作業用パイロットバルブユニット35は、パイロット油路40から分岐した第2パイロット油路42a、および減圧バルブ33を介して第2パイロット油路42aに繋がれた第3パイロット油路42bを介してパイロット油路40と繋がれており、上記パイロット油圧が供給される。
【0027】
減圧バルブ33は、第2パイロット油路42aと第3パイロット油路42bとの接続部分に設けられており、第2パイロット油路42a内のパイロット圧を有した圧油を減圧することなくそのまま右作業用パイロットバルブユニット34および左作業用パイロットバルブユニット35に出力する通常位置と、後述する減圧信号が入力されることで、第2パイロット油路42a内のパイロット圧を有した圧油を減圧して右作業用パイロットバルブユニット34および左作業用パイロットバルブユニット35に出力する減圧位置とに切換可能な構成となっている。なお、減圧バルブ33は、減圧信号が非入力の状態では通常位置に位置している。
【0028】
メインポンプ39は、例えばエンジンにより回転駆動されることで、作動油タンク37に貯留された作動油を吸い上げ、ブーム用コントロールバルブ51、走行モータ用コントロールバルブ52およびアーム用コントロールバルブ53を繋ぐメイン油路49に、所定圧の圧油として吐出する。メイン油路49内の油圧は、メイン圧調圧バルブ(不図示)により所定の油圧に調圧される。
【0029】
ブーム用コントロールバルブ51は、移動位置に応じてメイン油路49とブームシリンダ15とを繋ぐ油路を切換可能なバルブスプール(不図示)が移動自在に挿入されて構成され、端部に一対の上昇側パイロットポートと降下側パイロットポートとを備えて構成される。この一対のパイロットポートは、例えば右作業用パイロットバルブユニット34を構成するパイロットバルブとそれぞれ繋がれている。そのため、ブーム用コントロールバルブ51は、右作業用パイロットバルブユニット34で生成されたパイロット圧に応じてバルブスプールが移動されることで、メイン油路49からの圧油をバルブスプールの移動位置に応じた供給方向および供給量でブームシリンダ15に供給する。そうすることで、ブームシリンダ15が伸縮されて、旋回台6に対してブーム12が上下に揺動される。
【0030】
また、ブーム用コントロールバルブ51は、バルブスプールの移動に応じて移動される減圧信号生成部51aを備えており、パイロット油路40から分岐した第4パイロット油路43とこの減圧信号生成部51aとが繋がれている。減圧信号生成部51aは、その移動位置に関らず第4パイロット油路43からの圧油を通過させる構成となっている。なお、ショベル機構7等の駆動に対して走行装置4の駆動を優先させて行わせるように構成された油圧回路30においては、この減圧信号生成部51aを省いても良い。
【0031】
走行モータ用コントロールバルブ52は、移動位置に応じてメイン油路49と走行油圧モータ54とを繋ぐ油路を切換可能なバルブスプール(不図示)が移動自在に挿入されて構成され、端部に一対の前進側パイロットポートと後進側パイロットポートとを備えて構成される。この一対のパイロットポートは、例えば走行用パイロットバルブユニット32を構成するパイロットバルブとそれぞれ繋がれている。そのため、走行モータ用コントロールバルブ52は、走行用パイロットバルブユニット32で生成されたパイロット圧に応じてバルブスプールが移動されることで、メイン油路49からの圧油をバルブスプールの移動位置に応じた供給方向および供給量で走行油圧モータ54に供給する。そうすることで、走行油圧モータ54がその供給方向に応じた駆動方向に、その供給量に応じた回転速度で駆動されて、走行装置4が前進走行または後進走行される。
【0032】
走行モータ用コントロールバルブ52は、バルブスプールの移動に応じて移動される減圧信号生成部52aを備えており、この減圧信号生成部52aは、バルブスプールが中立位置に位置する場合には、第4パイロット油路43の圧油をポート内を介して通過させ、バルブスプールが前進位置または後進位置に位置する場合には、第4パイロット油路43を塞ぐことで第4パイロット油路43内に所定圧の減圧信号を発生させるようになっている。
【0033】
また、パイロット油路40には絞り43aが設けられており、この絞り43aによって、絞り43aよりも上流側のパイロット油路40をパイロット圧調圧バルブ40aにより調圧された所定のパイロット油圧に維持され、絞り43aの開口面積に応じた油圧に減圧された作動油が第4パイロット油路43および第5パイロット油路44に供給される。
【0034】
アーム用コントロールバルブ53は、移動位置に応じてメイン油路49とアームシリンダ16とを繋ぐ油路を切換可能なバルブスプール(不図示)が移動自在に挿入されて構成され、端部に一対の上昇側パイロットポートと降下側パイロットポートとを備えて構成される。この一対のパイロットポートは、例えば左作業用パイロットバルブユニット35を構成するパイロットバルブとそれぞれ繋がれている。そのため、アーム用コントロールバルブ53は、左作業用パイロットバルブユニット35で生成されたパイロット圧に応じてバルブスプールが移動されることで、メイン油路49からの圧油をバルブスプールの移動位置に応じた供給方向および供給量でアームシリンダ16に供給する。そうすることで、アームシリンダ16が伸縮されて、ブーム12に対してアーム13が上下に揺動される。
【0035】
また、アーム用コントロールバルブ53は、バルブスプールの移動に応じて移動される減圧信号生成部53aを備えており、この減圧信号生成部53aと第4パイロット油路43とが繋がれている。減圧信号生成部53aは、その移動位置に関らず第4パイロット油路43からの圧油を通過させる構成となっている。なお、ショベル機構7等の駆動に対して走行装置4の駆動を優先させて行わせるように構成された油圧回路30においては、この減圧信号生成部53aを省いても良い。
【0036】
以上ここまでは、油圧回路30の構成について説明した。このように構成されるパワーショベル1において、例えば右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22を操作して前進走行させながら、同時に右作業用操作レバー19も操作してブーム12を揺動させる操作が行われることがある。このような操作が行われた場合、従来のパワーショベルにおいては、例えば前進走行させるパイロット圧が走行モータ用コントロールバルブに入力されても、操作量に対応する速度よりも低い速度でしか前進走行させることができないとう現象が発生していた。
【0037】
そこで、本発明を適用したパワーショベル1においては、操作性を低下させることなく、ショベル機構7等の駆動よりも優先度の高い走行装置4の駆動を優先させて行わせる構成を特徴構成として備えている。
【0038】
この特徴構成について、右作業用操作レバー19のみが操作されている状態において、さらに右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22が操作される場合を例示して、以下に説明する。
【0039】
まず、右作業用操作レバー19のみが単独で操作されている状態(右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22が操作されていない状態)では、走行用パイロットバルブユニット32において第1パイロット油路41からの圧油を基にしてパイロット圧は生成されていない。このとき、絞り43aにより、パイロット油路40、第1パイロット油路41および第2パイロット油路42aが所定のパイロット油圧に維持されたままで、第4パイロット油路43では減圧信号が生成されることなく、第4パイロット油路43の作動油はドレインされる。減圧バルブ33は、減圧信号の入力がないために通常位置に位置し、第2パイロット油路42aの圧油が、減圧バルブ33で減圧されることなく第3パイロット油路42bを介して、右作業用パイロットバルブユニット34および左作業用パイロットバルブユニット35に出力される。
【0040】
右作業用パイロットバルブユニット34において、右作業用操作レバー19の傾動操作に応じたパイロット圧が生成され、このパイロット圧が例えばブーム用コントロールバルブ51に出力される。そうすることで、ブーム用コントロールバルブ51によって制御された供給方向および供給量で、メインポンプ39からメイン油路49に吐出された圧油がブームシリンダ15に供給され、ブームシリンダ15が伸縮作動される。
【0041】
上述の操作状態において、さらに右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22が追加的に操作されると、走行用パイロットバルブユニット32において、第1パイロット油路41からのパイロット油圧を基にして、右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22への操作に応じたパイロット圧が生成される。そのパイロット圧が走行モータ用コントロールバルブ52に出力されることで、走行モータ用コントロールバルブ52の減圧信号生成部52aにおいて、第4パイロット油路43が塞がれて、第4パイロット油路43および第5パイロット油路44に減圧信号が生成される。この減圧信号が、第5パイロット油路44を介して減圧バルブ33に入力されることで、減圧バルブ33は通常位置から減圧位置に切り換わり、第2パイロット油路42aからのパイロット油圧が減圧バルブ33で減圧されて、第3パイロット油路42bを介して右作業用パイロットバルブユニット34および左作業用パイロットバルブユニット35に出力される。
【0042】
そうすることにより、右作業用操作レバー19に対する操作量に見合ったパイロット圧よりも低いパイロット圧が生成される。そのため、ブーム用コントロールバルブ51においては、そのパイロット圧に基づいてバルブスプールが移動制御されて、右作業用操作レバー19への操作量に対応する供給量よりも少ない量の圧油が、ブーム用コントロールバルブ51からブームシリンダ15に供給される。
【0043】
一方で、走行用パイロットバルブユニット32においては、第1パイロット油路41からのパイロット油圧を基にして、右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22への操作に応じたパイロット圧が生成される。ここで、走行モータ用コントロールバルブ52においては、減圧バルブ33により第3パイロット油路42bを減圧させることでブーム用コントロールバルブ51に供給されなかった分の圧油もが供給されるので、バルブスプールの移動位置に応じた供給量の圧油を走行油圧モータ54に供給することができる。そのため、右作業用操作レバー19に加えて、右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22が操作された場合であっても、自動で走行速度を確保することが可能になる。
【0044】
なお、上述した場合とは反対に、右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22のみが単独で操作されている状態において、さらに右作業用操作レバー19が追加的に操作された場合、右作業用操作レバー19に対する操作が開始される時点において、既に減圧信号が減圧バルブ33に入力されている。そのため、この状態において、右作業用操作レバー19が追加的に操作されても、走行速度を低下させることなく確保できる。
【実施例2】
【0045】
次に、図3を参照しながら、ショベル機構7等の駆動に対して走行装置4の駆動を優先させて行わせる実施例2に係る油圧回路130について説明する。なお、図3には、走行用油圧アクチュエータおよび作業用油圧アクチュエータの操作に関連する部分を中心に抜粋した油圧回路130を示している。また、上述した油圧回路30と同一部材には同一の番号を付してその説明を省略し、油圧回路30とは異なる部材について説明する。
【0046】
実施例2に係る油圧回路130は、実施例1に係る油圧回路30と比較して、ブーム用コントロールバルブ151、走行モータ用コントロールバルブ152、およびアーム用コントロールバルブ153のそれぞれに、減圧信号生成部が設けられておらず、シンプルな構成となっている。また、油圧回路130には、第4パイロット油路43に相当する構成および圧力保持絞り43aに相当する構成が省略されており、シンプルに構成されている。
【0047】
油圧回路130においては、走行用パイロットバルブユニット32を構成する複数のパイロットバルブのうちで、例えば右走行用操作レバー21に対する前後への傾動操作に応じてパイロット圧を生成する一対のパイロットバルブと、走行モータ用コントロールバルブ152の端部とを繋ぐパイロット油路32a,32bに跨って、シャトルバルブ140が設けられている。このシャトルバルブ140は、第5パイロット油路144を介して減圧バルブ33と繋がれている。
【0048】
そのため、右走行用操作レバー21が操作されて、パイロットバルブにおいて前進用または後進用のパイロット圧が生成されると、このパイロット圧が減圧信号として、シャトルバルブ140を介して減圧バルブ33に出力される。そうすると、減圧バルブ33により第3パイロット油路42b内が減圧されるので、実施例1と同様に、右作業用操作レバー19に加えて、右走行用操作レバー21および左走行用操作レバー22が操作された場合であっても、自動で走行速度を確保することが可能になる。
【0049】
上述の実施例2においては、走行用パイロットバルブユニット32を構成する4のパイロットバルブのうちで、一対のパイロット油路32a,32bに跨ってシャトルバルブ140を設けた構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、走行用パイロットバルブユニット32において、残りの一対のパイロットバルブに対応するパイロット油路にも、シャトルバルブを設けることで、走行用パイロットバルブユニット32を構成するいずれかのパイロットバルブにおいて生成されたパイロット圧を、減圧信号として減圧バルブ33に出力する構成としても良い。
【0050】
上述の実施例1および2においては、エンジンを用いてパイロットポンプ31およびメインポンプ39を回転駆動させる構成を例示したが、例えば、エンジンに代えて電動モータを用いることで、これらのポンプを回転駆動させる構成としても良い。
【0051】
上述の実施例1および2では、作業機械の一例としてのパワーショベル1に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこのパワーショベルに限定して適用されるものではない。例えば、スキッドステアローダ等の作業機械に対しても、同様に本発明を適用できて、同様の効果を得ることができる。
【0052】
上述の実施例1および2では、ショベル機構7等の駆動に対して走行装置4の駆動を優先させて行わせるように構成された油圧回路について説明したが、この油路回路は本発明の一例を示したものであって、この構成に限定されるものではない。例えば実施例1において、減圧バルブ33の配設位置、および第4パイロット油路43を塞いで減圧信号を生成する減圧信号生成部の配設位置を変更することで、走行装置4の駆動に対してショベル機構7等の駆動を優先させる構成も可能である。また、例えば実施例2において、減圧バルブ33の配設位置、およびシャトルバルブ140の配設位置を変更することで、走行装置4の駆動に対してショベル機構7等の駆動を優先させる構成も可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 パワーショベル(作業機械)
4 走行装置(第1油圧装置)
6 旋回台(車体)
7 ショベル機構(第2油圧装置)
19 右作業用操作レバー(第2操作装置)
20 左作業用操作レバー(第2操作装置)
21 右走行用操作レバー(第1操作装置)
22 左走行用操作レバー(第1操作装置)
31 パイロットポンプ(パイロット側圧油供給源)
32 走行用パイロットバルブユニット(第1パイロット圧生成手段)
33 減圧バルブ(パイロット圧制御手段)
34 右作業用パイロットバルブユニット(第2パイロット圧生成手段)
35 左作業用パイロットバルブユニット(第2パイロット圧生成手段)
39 メインポンプ(メイン側圧油供給源)
51 ブーム用コントロールバルブ(第2コントロールバルブ)
52 走行モータ用コントロールバルブ(第1コントロールバルブ)
53 アーム用コントロールバルブ(第2コントロールバルブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に設けられ、油圧力を用いて作動する第1および第2油圧装置とを有する作業機械であって、
前記油圧力を供給するメイン側圧油供給源と、
前記メイン側圧油供給源から前記第1油圧装置に対する圧油供給を制御する第1コントロールバルブと、
前記第1油圧装置を作動させるための第1操作装置を備え、前記第1操作装置に対する操作に応じて前記第1コントロールバルブの作動を制御するための第1パイロット圧を生成する第1パイロット圧生成手段と、
前記メイン側圧油供給源から前記第2油圧装置に対する圧油供給を制御する第2コントロールバルブと、
前記第2油圧装置を作動させるための第2操作装置を備え、前記第2操作装置に対する操作に応じて前記第2コントロールバルブの作動を制御するための第2パイロット圧を生成する第2パイロット圧生成手段と、
前記第1操作装置および前記第2操作装置が同時に操作されて、前記第1コントロールバルブに前記第1パイロット圧が作用するとともに、前記第2コントロールバルブに前記第2パイロット圧が作用するときに、前記メイン側圧油供給源から前記第1および前記第2油圧装置に対する圧油の供給を優先度を付けて振り分け供給する制御を行うように、前記第1および前記第2パイロット圧の少なくともいずれかを調圧するパイロット圧制御手段とを備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記第1および前記第2パイロット圧を生成するためのパイロット元圧を、前記第1パイロット圧生成手段および前記第2パイロット圧生成手段に供給するパイロット側圧油供給源を備え、
前記パイロット圧制御手段は、前記第1および第2油圧装置のうち優先度の高い油圧装置に対応する前記第1もしくは前記第2コントロールバルブの作動に応じて、前記パイロット側圧油供給源から前記第1および第2油圧装置のうち優先度の低い油圧装置に対応する前記第1もしくは前記第2パイロット圧生成手段に、前記パイロット元圧を減圧させたパイロット減圧元圧を供給させることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記第1および前記第2パイロット圧を生成するためのパイロット元圧を、前記第1パイロット圧生成手段および前記第2パイロット圧生成手段に供給するパイロット側圧油供給源を備え、
前記パイロット圧制御手段は、前記第1および第2油圧装置のうち優先度の高い油圧装置に対応する前記第1もしくは前記第2パイロット圧生成手段における前記第1もしくは前記第2パイロット圧の生成に応じて、前記パイロット側圧油供給源から前記第1および第2油圧装置のうち優先度の低い油圧装置に対応する前記第1もしくは前記第2パイロット圧生成手段に、前記パイロット元圧を減圧させたパイロット減圧元圧を供給させることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−197835(P2012−197835A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61407(P2011−61407)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000150154)株式会社竹内製作所 (50)
【Fターム(参考)】