説明

作業機

【課題】旋回内側の後輪による圃場の荒らしが軽減できると共に、連結されている作業装置の揺れを低減し、車両の操作性や作業装置の連結機構の耐久性を向上させる作業機の提供である。
【解決手段】走行車体2と、前輪10及び後輪11と、操縦席31と、操向ハンドル34と、操向ハンドル34の操作に連動して前輪10の向きを変更できるステアリング機構(86I、180、217)と、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して昇降可能に装着された苗植付部4と、ステアリング機構(86Iなど)に連動して旋回内側の後輪11の駆動力を不規則に断続的に入切する不規則入り切り制御機能Bを備えた制御装置163とを備えた作業機である。車両の旋回時に旋回内側の後輪11が不規則に断続的に駆動することで、走行車体2上の構造物が後輪11の駆動力に共振することを防止し、走行車体2の揺れ及び振動を抑えて操縦者の作業環境を良好に維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両に苗植え付け装置などの作業装置を連結した乗用型作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業車両の進行方向左右に配置される車輪にサイドクラッチやサイドブレーキを装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して旋回内側となる後輪の推進力を抑制させて左右後輪の推進力の差によって機体を旋回させることで、小回り旋回を行うようにした乗用型作業機などがある。これは、操向ハンドルの操作で、該ハンドルの操作に対応した車輪のサイドクラッチやサイドブレーキなどを入切して旋回させるものである。
【0003】
下記特許文献1には、左右の後輪への伝動を各別に断続するサイドクラッチと、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されると旋回内側のサイドクラッチを切り操作する機械式の自動操向機構を備えており、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されている状態が検出されると、旋回内側の後輪に対するサイドクラッチをアクチュエータによって自動的かつ間欠的に入り切り制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−196000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成によれば、自動操向機構が作動して旋回内側の後輪に対するサイドクラッチが切り操作される状態になると、自動的にアクチュエータが作動制御されてサイドクラッチを間欠的に入り切り操作することにより、旋回内側の後輪は遊転状態と駆動状態に繰り返し切り換えられる。したがって、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、旋回内側の後輪による圃場の荒らしを軽減できるようになる。
【0006】
しかし、上記構成では、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されると一定の周期で所定時間ずつ間欠的に通電制御されるもので、前輪の操向角度には対応しているものの、設定角度以上に操向されると、後は自動的に入り切り状態となる画一的な制御である。作業車両に苗植え付け装置などの作業装置を連結した作業車両では、一定の周期で所定時間ずつ間欠的にサイドクラッチを入り切り操作した場合に、その周期が作業装置の固有振動数に合うと共振し、サイドクラッチの入り切り操作に連動して作業装置の揺れが増大してしまう。苗植え付け装置などの作業装置の揺れが増大すると、操縦者(オペレータ)にもその揺れによって不快感をもたらし、また、適正な植え付け作業が困難となる。そして、リンク機構等により作業車両に作業装置を連結している場合は、作業装置の揺れが増大することによって連結機構の耐久性が劣ってしまう。
【0007】
そこで、本発明の課題は、旋回内側の後輪による圃場の荒らしが軽減できると共に、連結されている作業装置などの揺れを低減し、操作性や作業装置の連結機構の耐久性を向上させる乗用型作業機などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、走行車体(2)と、該走行車体(2)の前進方向に向かって左右にそれぞれ設けられた前輪(10)及び後輪(11)と、前記走行車体(2)上に設けられ、走行車体(2)の操縦を行うための操縦席(31)と、該操縦席(31)に設けられ、走行車体(2)の操向方向を決める操向ハンドル(34)と、該操向ハンドル(34)の操作に連動して、左右の前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(86I、180、217)と、前記走行車体(2)の前進方向に向かって後側に昇降リンク装置(3)を介して昇降可能に装着された作業装置(4)と、前記ステアリング機構(86I、180、217)に連動して旋回内側の後輪(11)の駆動力を不規則に断続的に入り切りする不規則的入り切り制御機能(B2)を有する制御装置(163)とを設けた作業機である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記走行車体(2)の挙動を検出する挙動検出センサ(230)を設け、前記制御装置(163)は、前記ステアリング機構(86I、180、217)に連動して旋回内側の後輪(11)の駆動力を規則的に断続的に入り切りする規則的入り切り制御機能(B1)と前記挙動検出センサ(230)の検出値に応じて前記規則的入り切り制御機能(B1)による制御と前記不規則的入り切り制御機能(B2)による制御を切り替える切り替え制御機能(C)とを有する請求項1記載の作業機である。
【0010】
なお、規則的入り切り制御機能(B1)の「後輪(11)の駆動力を規則的に断続的に入り切りする」とは、後輪(11)の駆動力の入り又は切りがそれぞれ1回現出される作動周期(T)が一定であり、且つ前記作動周期中のオン/オフ時間の割合(比率)が一定であることを言う。
また、不規則的入り切り制御機能(B2)の「後輪(11)の駆動力を不規則に断続的に入り切りする」とは、後輪(11)の駆動力の入り又は切りがそれぞれ1回現出される作動周期(T)が可変であること、又は前記作動周期中のオン/オフ時間の割合(比率)が可変であることを言う。
【0011】
すなわち、(a)作動周期(T)が一定で、オン/オフ時間の割合も一定、(b)作動周期(T)が一定で、オン/オフ時間の割合は可変、(c)作動周期(T)が可変で、オン/オフ時間の割合は一定、(d)作動周期(T)が可変で、オン/オフ時間の割合も可変、の(a)〜(d)の4つの形態があるが、(a)の制御機能は規則的入り切り制御機能(B1)であり、(b)から(d)の制御機能は不規則的入り切り制御機能(B2)である。
ただし、何らかのファクターに応じて一次関数的に作動周期を変えること(ただし作動周期中のオン/オフ時間の割合(比率)は一定とする)、例えば車速に応じて作動周期を一次関数的に変えること(作動周期中のオン/オフ時間の割合(比率)は一定)は、上記(c)に該当するが、規則的入り切り制御機能(B1)に含む。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、車両の旋回時に旋回内側の後輪(11)が不規則に断続的に駆動することで、走行車体(2)上の構造物や走行車体(2)の後ろ側に連結した作業装置(4)などが後輪(11)の駆動力に共振することを防止し、走行車体(2)の揺れ及び振動を抑えて操縦者の不快感をなくし、作業環境を良好に維持できる。
そして、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の上記効果に加えて、走行車体(2)の揺れに応じて旋回内側の後輪(11)を規則的又は不規則に作動させるので、例えば、走行車体(2)の揺れが比較的小さい(又はない)ときには旋回内側の後輪(11)を規則的に作動させることで、作業機の操向を円滑に行え、走行車体(2)の揺れが比較的大きい(又はある)ときには、旋回内側の後輪(11)を不規則的に作動させることで、走行車体(2)の揺れ及び振動を効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の平面図である。
【図3】図3(a)は、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構図(平面図)であり、図3(b)は、図3(a)の側面図である。
【図4】図3(b)のミッションケース周辺の拡大図である。
【図5】図3(a)に油圧式無段変速装置を図示した場合の図である
【図6】図1の乗用型田植機のチェンジレバー部の斜視図である。
【図7】図1の乗用型田植機の制御ブロック図である。
【図8】図1の乗用型田植機の旋回連動制御の考え方を示す図である。
【図9】図8の旋回連動制御のフローチャートである。
【図10】図1の乗用型田植機の旋回連動制御のフローチャートである。
【図11】図10の旋回連動制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入切り周期のタイムチャートである。
【図12】図1の乗用型田植機の旋回連動制御時に車体が深く沈み込んでいる場合などで苗植付装置の下降を速くするためのフローチャート(図12(a))と旋回内側の車輪の回転数設定値N1又は設定値N2の昇降リンクセンサの検出値に対する値の関係を示すグラフ(図12(b))である。
【図13】図1の乗用型田植機の操作盤の間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル部分の平面図である。
【図14】図1の乗用型田植機の操作盤の植始め調節ダイヤル部分の平面図である。
【図15】図1の乗用型田植機の不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートである。
【図16】不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートの別の例である。
【図17】不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートの別の例である。
【図18】不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートの別の例である。
【図19】不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートの別の例である。
【図20】不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートの別の例である。
【図21】不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートの別の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明の作業機の一実施例である乗用型田植機の側面図と平面図である。この乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0015】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸(前輪アクスル)14(図4)に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0016】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。変速レバー16などにより決められるミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0017】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に操縦席31が設置されている。操縦席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0018】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダー46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0019】
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(迎い角センサとも言う)235により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダー46を制御する油圧バルブ(昇降バルブ)161を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0020】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体(図示せず)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0021】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0022】
フロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両方のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される。
【0023】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
【0024】
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
また、苗植付部4を圃場に下げたときに、苗植付部4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた。
【0025】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付部4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式無段変速装置23に伝えられ、油圧式無段変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0026】
苗植付部4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付部4の構成について説明する。先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ49(図4,図5)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付部4が上下動されるように構成されている。
【0027】
図3(a)の平面図(展開図)には、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪11のサイドクラッチ作動機構図を示し、図3(b)には、図3(a)の側面図を示す。また、図4には、図3(b)のミッションケース12周辺の拡大図を示し、図5には、図3(a)の平面図に油圧式無段変速装置23を図示した場合を示している。
左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180がミッションケース12の左右両側に設けられ、該クラッチ連動用の左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iは左右のプルシリンダ217を介して連結している。
【0028】
左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221(図4,図5)を備えている上記構成を用いて、ハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切り又は入りにする制御(A)ともう一つは一定周期(又は不定期)で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。ハンドル34を操作するとトルクジェネレータ(パワーステアリング)37によって旋回内側のプルシリンダ217を作動させてサイドクラッチを切り(又は入り)にする。これらサイドクラッチ操作アーム86I、クラッチ連動用の左右ロッド180、プルシリンダ217、サイドクラッチ制御用電磁バルブ221などをステアリング機構と言う。
【0029】
上記した実施例では、ステアリングハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチスイッチを作業モニタ装置に備えた操作盤33(図2)に設けておき、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。または、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
【0030】
次に、後進時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、図6に示すように、チェンジレバー90(前後進レバー)を後進速に操作すると、チェンジレバー90の基部に設けた接当片190が接当してオンになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置163(図7)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇しているので、苗植付部4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0031】
次に、旋回時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に自動リフト切替スイッチ192(図14)をオンにすると、制御装置163の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付部4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0032】
操作盤33には、苗植付部4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図7,図14)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がオンになるか自動リフト切替スイッチ192がオンでステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転すると自動的に苗植付部4は制御装置163の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をオフにしていると、バックリフトスイッチ191がオンになってもステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4は自動上昇されない。
【0033】
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がオンになっても自動リフト切替スイッチ192がオフであればステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0034】
なお、自動リフト切替スイッチ192をオフにして、バックリフトスイッチ191がオンになってもステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても苗植付部4が自動上昇しないので、苗植付部4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付部4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付部4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をオフにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても苗植付部4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0035】
また、上記構成からなる乗用型田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0036】
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをハンドル34の旋回角度(切れ角)センサ193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の回転数センサ205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
【0037】
この制御の考え方を図8と表1に示す。
【表1】

【0038】
すなわち、ステアリングハンドル34を切り、旋回内側の後輪11のサイドクラッチが切れた状態で、左右ドライブシャフトの回転数を検出し、旋回時の内側の後輪11の伝動軸回転数が設定値N1を超えると苗植付部4を下降させる。その後、後輪11の伝動軸回転数が設定値N2と苗植付け具126の作動が「切り」状態に入って(=苗植付装置52が上げ状態に移って)からステアリングハンドル34の切り操作開始までの後輪11の伝動軸の回転数nの合計値以上になると 植付クラッチケース25内の植付クラッチが入りになって植付「入り」にする機構である(図7のPTOクラッチ作動ソレノイドを作動させて、植付「入り」にする)。
植付クラッチが入り状態になることで、全植付条の苗植付け具126が作動すると共に、苗載台51も左右移動を開始し、苗載台51の左右移動端では全植付条の苗送りベルト51bが作動する。伝動機構としては、植付クラッチから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動され、苗植付部4内において各畦クラッチ(図示せず)を介して各々対応する苗植付け具126へ伝動され、苗植付部4内において各苗送りクラッチ(図示せず)を介して各々対応する苗送りベルト51bへ伝動される。
【0039】
上記旋回連動制御のフローを図9に示す。
まず、左右の後輪11,11の伝動軸の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値(左旋回と判断する角度))、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値(右旋回と判断する角度))をセットする。
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ(圃場深さ)等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206a〜208b(図7)により、補正値n0を設定する。
【0040】
苗植付部4の苗植付け具126が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー166(苗植付部4の駆動の入り切り操作をしたり、苗植付部4の昇降操作をしたりできるレバー)の操作に伴う制御装置163の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき(図7のPTOクラッチ作動ソレノイドを作動させて、植付「切り」にする)、苗植付け具126の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具126の作動が「切り」状態になるまでの後輪11の伝動軸の回転数nを旋回内側の伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。次いで、ステアリングハンドル34の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル34のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図7)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれの方向に旋回中であるかどうかを検出する。
【0041】
左旋回中であると左後輪11の伝動軸の回転数を検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので苗植付部4を下げる。この苗植付部4の下降で枕地が均平化される。また、機体を90度旋回させた後には、ハンドル34の旋回度合いを緩めながら前進させ、左後輪11の左右ドライブシャフトの回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、植付クラッチケース25内の植付クラッチが入りになり苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる。
【0042】
本実施例の乗用型田植機1では、自動植付開始モードが設定された時にも、自動的に制御装置163によって、旋回外側の後輪11の回転数に応じて旋回内側の後輪11の駆動を規則的に断続的にサイドクラッチを伝動する規則的入り切り制御機能(B1)(上記制御(B)に対応するもので、間欠サイドクラッチ制御という)を作動させることができる。
【0043】
なお、規則的に断続的にサイドクラッチを伝動するとは、サイドクラッチ入又はサイドクラッチ切がそれぞれ1回現出される作動周期(T)が一定であり、且つ前記作動周期中のオン/オフ時間の割合(比率)が一定であることを言う。なお、上記作動周期Tとは、後輪11の駆動力の入り又は切りがそれぞれ1回現出される時間のことであり、すなわち一回だけオン/オフが現出される時間をいう。
具体例としては、サイドクラッチの入り時間と切り時間がいつも同じ時間である場合(例えば、いつもオン0.3秒、オフ0.3秒)や、オン時間とオフ時間は異なるが、各回のオン時間、オフ時間はそれぞれ同じである場合(例えば、いつもオン0.4秒、オフ0.3秒)などがある。
【0044】
このように間欠サイドクラッチ制御を行うことにより、旋回半径をコントロールでき、ブレーキングによる衝撃も少なく、エンジン回転や車速の影響を受けずに後輪11の旋回角度に応じたブレーキングの周期を得ることができる。前記旋回内側の後輪11のクラッチをオン/オフする間欠サイドクラッチ制御において、車速が遅ければ遅い程クラッチをオン/オフする周期を短く、速ければ速いほどクラッチをオン/オフする周期を長くすることで、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができる。車速は伝動軸回転数センサ205で測定する。
【0045】
例えば、車速0m/sで旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず:クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)の作動周期T(オン/オフを含む)が0.5秒、車速0.5m/sで前記サイドクラッチ作動周期T(オン/オフを含む)が1.0秒、車速1.0m/sで前記サイドクラッチ作動周期T(オン/オフを含む)が1.5秒となるように一次関数的に車速に応じて旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ作動周期を変更する。このように、何らかのファクターに応じて一次関数的に作動周期Tを変えること(ただし作動周期T中のオン/オフ時間の割合(比率)は一定とする)は、規則的入り切り制御機能(B1)に含む。
【0046】
高速走行時は特に後輪11の伝動軸のクラッチをオンするときでも、オフするときでも衝撃が大きい。そこで上記のように、間欠サイドクラッチ制御による衝撃を少なくするために、高速走行時ほど間欠サイドクラッチ制御(クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)のオン/オフの周期を長めにする。
本実施例の8条植の乗用型田植機1のように、大型の作業車両(作業機)は旋回時には比較的大回りをする必要がある。しかし、旋回中に旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切ったままでおくと、小回りになり過ぎる。しかし、本実施例のように旋回内側の後輪11の伝動軸を間欠サイドクラッチ制御すると、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができ、オペレータの希望する適切な旋回半径で8条植の乗用型田植機1に相応しい比較的大回りの旋回が可能となる。
【0047】
前記旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチの接続は、図13に示すように操作盤33に設けている間欠サイドクラッチ制御(ポンピングクラッチともいう)調節ダイヤル210で設定された回転数(回転角度)に旋回内側の後輪11の回転数が達するまでなされる。
間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210は、後輪回転角度(=後輪11の伝動軸の回転角度)で11度〜27度の間で調整を行う。なお、前記間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210を後輪11(後輪11の伝動軸)の回転角度でなく、後輪11の伝動軸作動用のクラッチ(図示せず)の作動時間、例えば210msから510msまでの時間で設定できる構成にして、この間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210で設定された時間の間、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず)が接続される構成としても良い。また、路上走行などで高速走行しているときには、間欠サイドクラッチ制御を選択すると、大回り旋回になり易く、そのためむしろハンドリングに違和感があるので、路上走行などの高速走行中には、前記間欠サイドクラッチ制御は不要である。そこで、作業車両が一定車速、例えば1.0m/s以上で高速走行しているときには、間欠サイドクラッチ制御が行われないようにしている。
【0048】
本実施例の乗用型田植機1において、ステアリングハンドル34を回して旋回する場合に、旋回外側の後輪11の回転数(a1)に応じて旋回内側の後輪11の回転数(b1;b1<a1)を決めるように前記間欠サイドクラッチ制御を行う構成としても良い。
この制御フローの具体実施例を図10に示すが、ステアリングハンドル34を回して旋回する場合に、旋回を始めてから旋回外側の後輪11の回転数が所定値(a0)に達すると(この間は旋回「内」側後輪11のサイドクラッチは「切」)、前記旋回「内」側の後輪11のサイドクラッチを「入」にして、それから旋回「外」側の後輪11が所定の回転数(a1)になるまで旋回「内」側の後輪11のサイドクラッチを「入」にしておく。
【0049】
また、前記旋回内側の後輪11のサイドクラッチの「入」と「切」のタイミングは制御装置163が自動設定するが、図11に示すタイムチャートのように旋回内側後輪11のサイドクラッチの「切」に対応する旋回外側の後輪11の回転数(a0)と旋回内側のサイドクラッチの「入」に対応する旋回外側の後輪11の回転数(a1)を間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210により手動で設定することもできる。
この様な図10のフローに示す制御を行うと湿田での作業性が従来より向上する。
【0050】
また、図9に示す制御フローの設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)を小さくするほど、旋回内側の後輪11が深い圃場などにおいて深く沈み込んでいる場合など、苗の植え付け時の苗植付装置52の下降を速く行いたい場合に有効である。
【0051】
後輪11が深く圃場に沈み込んでいる場合には昇降リンクセンサ48で上リンク40と下リンク41の昇降の程度を検出することにより、苗植付部4の昇降の程度も検出できる。この昇降リンクセンサ48は、上リンク40の角度を検出するセンサであり、上リンク40の上下回動範囲に亘って上リンク40の角度を検出する。そして、この昇降リンクセンサ48によって、圃場の深さ(耕盤深さ)を測定する。
なお、昇降リンクセンサ48は上リンク40に設けても、下リンク41に設けても良い。下リンク41に設けると、下リンク41の上下回動範囲に亘って下リンク41の角度を検出する。昇降リンクセンサ48は上リンク40又は下リンク41のいずれか一方に設ければ良く、どちらに設けても昇降リンク装置3のリンク角度を検出するものである。
【0052】
そして、この場合の制御フローを図12(a)に示し、図12(b)に旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値N1又は機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの旋回内側の前記ドライブシャフト回転信号設定値N2の昇降リンクセンサ48の検出値に対する値の関係を示す。
【0053】
また、図9に示す自動植付制御モードにおいて、ステアリングハンドル34の操作角度θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)による苗植付部4の上昇のタイミングを前記θ1、θ2の設定ダイヤル206a,206bで任意に変更可能なように構成することができる。
上記構成により旋回制御中にオペレータが苗植付部4の上昇タイミングを任意に設定できるので自分のペースに合わせた作業を行うことができる。
こうして、8条植えなどの多条植え用の乗用型作業機であっても、前回の植付条に一部重なった状態で苗の植え付けをするおそれがなく圃場での旋回が可能となる。
なお、右旋回の場合にも左旋回時と全く同様の制御が行われる。
【0054】
このようにサイドクラッチが切れている後輪11の伝動軸(ドライブシャフト)の回転数を検出する方法は、動力の伝わっている後輪11の回転数検出方法に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪11より回転の速いドライブシャフトの回転数を検出するため、容易にその測定精度を上げることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅が一定)となる効果がある。
また、上記図9に示す一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を、上記苗植付のスタート位置の設定を行うボタンとして兼用してもよい。 このように、畦際から発進して苗植付のスタート位置の設定を行うボタンと前記一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を兼用することによりボタン操作の忘れを防止できる。
【0055】
前記自動植付開始モードの設定は植始め調節ダイヤル212(図14)で行い、また前記旋回開始時からの苗の植付け始めまでの走行距離は、図14に示す植始め調節ダイヤル212を回して設定する。
前記植始め調節ダイヤル212の回転角度に応じて前記走行距離を適宜選択できる構成であるが、該ダイヤル212の前記走行距離の調節範囲より外れたダイヤル旋回角度領域(しかも自動植付開始モードに入る前のダイヤル旋回角度領域)に、車両の旋回開始時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるオートリフト機能及び車両の後進時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるバックリフト機能を兼用させている。
【0056】
そして、植始め調節ダイヤル212のダイヤル回転操作でオートリフト機能に対応した位置に植始め調節ダイヤル212の指示部が「オートリフト」と指示された位置に至ると、当該オートリフト機能がオンになり、オートリフト制御モードが開始すると同時に前記間欠サイドクラッチ制御を開始する制御モードを採用することもできる。
これは、湿田での旋回走行中では、前輪10及び後輪11がスリップし易く、自動植付開始モードで苗の植え付け開始位置が予定した位置になり難いため、前記間欠サイドクラッチ制御を選定するが、このときも連動して間欠サイドクラッチ制御をすることができる。こうしてスリップし易い条件下での車両の旋回走行を容易に行うことができるようになる。
【0057】
また、自動植付開始モードが設定されていない時、例えば路上走行時には前記間欠サイドクラッチ制御をしないで、旋回内側の車輪(後輪11)の伝動軸のサイドクラッチを継続的に切りながら旋回する通常の旋回モード(上述の継続して前記サイドクラッチを切り又は入りにする制御(A)に対応するもので、継続的入り切り制御機能A1とも言う)とすることもできる。
【0058】
そして、本実施例による乗用型田植機1の制御装置163によれば、サイドクラッチ操作アーム86I、クラッチ連動用の左右ロッド180、プルシリンダ217、サイドクラッチ制御用電磁バルブ221などのステアリング機構に連動して旋回内側の後輪11の駆動を入り又は切りにする継続的入り切り制御機能(A1)と伝動軸回転数センサ205により検出される旋回外側の後輪11の回転数に応じて旋回内側の後輪11の駆動を規則的に断続的に入/切する。
そして、規則的入り切り制御機能(B1)(上述の間欠サイドクラッチ制御のことである)の他に、旋回内側の後輪11の駆動を不規則に断続的に入/切する(入/切の周期が一定でなく、不定期である)不規則的入り切り制御機能(B2)を有することを特徴としている。不規則的入り切り制御機能(B2)の「後輪11の駆動力を不規則に断続的に入り切りする」とは、後輪11の駆動力の入り又は切りがそれぞれ1回現出される作動周期(T)が可変であること、又は前記作動周期中のオン/オフ時間の割合(比率)が可変であることを言う。
【0059】
すなわち、不規則的入り切り制御機能(B2)では、制御装置163により、旋回内側の後輪11に断続的にサイドクラッチを伝動するサイドクラッチ入り時間を一定時間ではなく、長くしたり、短くしたりする制御を行う。また、サイドクラッチ切り時間のみを変えたり(サイドクラッチの切り時間を不規則とする)、サイドクラッチ入り時間とサイドクラッチ切り時間の両方を変える場合も含まれる。具体的に言うと、サイドクラッチのオン時間(又はオフ時間)を設定時間よりも長くしたり、短くしたりする場合である。規則的入り切り制御機能(B1)では、サイドクラッチのオン/オフの作動周期Tが一定であるのに対し、不規則的入り切り制御機能(B2)では、サイドクラッチのオン/オフ作動周期Tを不規則に変化させる。
【0060】
図15には、不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
図15に示すように、間欠サイドクラッチ制御の場合の設定時間の半分または倍のサイドクラッチ入り時間(不規則とするサイドクラッチ入り時間とも言う)を数回(例えば2回〜3回)のオン時に一度(又は複数回)入れる。なお、不規則とするサイドクラッチ入り時間は設定時間の半分または倍でなくても、1/3や3倍、1/4や4倍など適宜変更可能とすればよい。又は、不規則とするサイドクラッチ入り時間を設定時間からの差分(±α(α>0))とし、「設定時間+α」または「設定時間−α」のサイドクラッチ入り時間を2回〜3回のオン時に一度入れるようにしても良い。サイドクラッチの切り時間を変えても同様のことが言える。また、サイドクラッチの入り時間と切り時間を共に変えても良い。
【0061】
図15(a)にはサイドクラッチ入りの設定時間を0.3秒とし、その倍の0.6秒を3回のオン時に一度入れた場合を示している。
図15(a)には、最初の2回はサイドクラッチ入りの設定時間を間欠サイドクラッチ制御の設定時間(この時の周期Tを標準周期T0(T0>0)とする)として、3回目にサイドクラッチ入りの設定時間を間欠サイドクラッチ制御の設定時間よりも長くする(この時の周期TをT1(T1>T0,T1>0とする)場合を示す。
【0062】
図15(a)に示す例は、サイドクラッチ入りの設定時間を0.3秒とし、3回のサイドクラッチオン時に一度、設定時間の倍の0.6秒を入れた場合である。最初の2回は標準周期T0であるが、3回目は標準周期T0に比べて、周期が長くなり(T1)、これが繰り返される。図15(a)には、3の倍数回(3,6,9…)で周期がT1となる例を示しているが、周期T1が続いても良く、周期T1が標準周期T0の回数よりも多くなっても構わない。
【0063】
また、設定時間の倍のサイドクラッチ入り時間を入れる例として、最初の2回は設定時間の0.3秒とし、3回目に設定時間の倍の0.6秒とするが、次の4回から6回は設定時間の0.3秒とし、7回目で設定時間の倍の0.6秒とするような制御でも良い。すなわち、3回のサイドクラッチオン時に1回、サイドクラッチ入りの時間を設定時間の倍の0.6秒とすると、次は4回のサイドクラッチオン時に1回、設定時間の倍の0.6秒として、その次はまた3回のサイドクラッチオン時に1回、設定時間の倍の0.6秒とし、更にその次は4回のサイドクラッチオン時に1回、設定時間の倍の0.6秒とする制御である。最初の2回の標準周期T0に比べて3回目は周期が長くなり、また次の3回(4回から6回)は標準周期T0で、その次(7回目)は周期が長くなり(T1)、次の2回(8回から9回)は標準周期T0で、10回目は周期が長くなる(T1)パターンである。
【0064】
また、最初の2回はサイドクラッチ入りの設定時間を0.3秒(標準周期T0)とし、3回目に0.6秒とすると、次の4回、5回は設定時間の0.3秒(標準周期T0)とし、次の6回、7回は0.8秒とし、次の8回、9回は0.6秒とするなど、ランダムにサイドクラッチ入りの設定時間を変えても良い。
【0065】
図15(b)にはサイドクラッチ入りの設定時間を0.3秒とし、その半分の0.15秒を3回のオン時に一度入れた場合を示している。図15(b)には最初の2回はサイドクラッチ入りの設定時間(標準周期T0)として、3回目にサイドクラッチ入りの時間を短くする(この時の周期TをT2(T0>T2,T2>0)とする)場合を示す。
【0066】
図15(b)に示す例ではサイドクラッチ入りの設定時間を0.3秒とし、3回のサイドクラッチオン時に一度、設定時間の半分の0.15秒を入れた場合である。最初の2回は標準周期T0であるが、3回目は標準周期T0に比べて、周期が短くなり(T2)、これが繰り返される。図15(b)には、3の倍数回(3,6,9…)で周期がT2となる例を示しているが、周期T2が続いても良く、周期T2が標準周期T0の回数よりも多くなっても構わない。
また、設定時間の半分のサイドクラッチ入り時間を入れる例としては、上述の設定時間の倍のサイドクラッチ入り時間を入れる制御例と同様のことが言える。
【0067】
そして、図15(c)には、サイドクラッチ入りの設定時間を0.3秒とし、その倍の0.6秒とその半分の0.15秒とを3回のオン時に交互に一度ずつ入れた場合を示している。なお、図15(c)に示す例に限らず、サイドクラッチ入りの設定時間とは異なる時間(設定時間よりも長くても短くても良い)をランダムに入れれば良く、要するに周期T0とは異なる周期T1(又はT2)となれば良く、周期T0の一定であるという規則性、すなわちサイドクラッチ入り時間が一定であるという規則性が崩れればよい。また、サイドクラッチ切り時間を同じにする必要もなく、変化させても良い。すなわち、サイドクラッチの切り時間と入り時間の設定が間欠サイドクラッチ制御と単に異なれば良い。
【0068】
また、図15の例では、サイドクラッチ切りの設定時間(0.3秒)を変えずにサイドクラッチ入りの時間を設定時間よりも長くしたり、短くする場合を示しているが、反対にサイドクラッチ入りの設定時間を変えずに(0.3秒)、サイドクラッチ切りの時間を設定時間(0.3秒)よりも長くしたり、短くする場合も本実施例に含まれる。また、間欠サイドクラッチ制御では、一つの作動周期T内のオン時間とオフ時間は同じであるが(作動周期がT0(秒)の場合にオン、オフともT0/2(秒)であること)、作動周期Tを変えずに、オンとオフの時間を設定時間とは異なる時間とすることも含まれる。但し、この場合は作動周期Tが変わらないので共振抑制の効果は小さくなることが考えられる。
【0069】
これらのタイムチャートのパターンは制御装置163にプログラミングされており、オペレータがどのプログラムを選定するかでパターンが変更可能であり、適宜設定も可能である。また、通常は規則的入り切り制御機能(B1)による制御とし、オペレータの判断で不規則的入り切り制御機能(B2)による制御にする切り替えスイッチ(図示せず、押せばオン、再度押すとオフとなるなど)を設けても良い。
【0070】
更に、単にサイドクラッチ入り又は切りの時間を制御するものだけでなく、下記(1)〜(8)に示す制御例も可能である。なお、下記(1)〜(6)において、「所定の回転数」とは、累計回転数のことであり、すなわち距離のことである。なお、「所定の回転数に到達するたびに」累積回転数のカウントはクリアする。回転数を変えるのは、増える方向でも減る方向でも良い。
【0071】
また、下記(1)〜(6)の制御例をまとめたものを表2に示し、下記「所定の回転数」、「第一の所定の回転数」等の変更例を表3に示す。
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
図16には、下記(1)の不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
(1)旋回外側の後輪11の回転数が所定の回転数に到達するたびに所定時間サイドクラッチ入り(サイドクラッチオン)にする場合、オンになるごとに前記所定の回転数を変える。この場合、車速一定の前提条件の下では、オンを指令する旋回外側の後輪11の回転数が変わるため、結果的にオフ時間が変わることになる。
【0074】
表2及び表3に示すように、所定の回転数を2/3回転とし、サイドクラッチがオンになると、次回のオン時の所定の回転数を1回転に変える場合について説明する。
まず、旋回外側の後輪11の回転数が前回のオン開始時から2/3回転になったときにサイドクラッチがオンになり、所定時間((ロ)で示す。例えば0.3秒)サイドクラッチがオンのままになる。累計回転数はサイドクラッチがオンになるとクリアされて再び回転数のカウントが始まる。
【0075】
そして、さらに旋回外側の後輪11が回転して1回転(1回目のオン開始時から数える)になったときに再び所定時間(0.3秒)サイドクラッチがオンになる。更にその後、所定の回転数を2/3回転に変えると、旋回外側の後輪11が回転して2/3回転(2回目のオン開始時から数える)になったときに再び所定時間(0.3秒)サイドクラッチがオンになる。なお、1回目のサイドクラッチオン時に、後輪11が1回転に達した場合は後輪11の累積回転数のカウントがクリアされ、再度後輪11の累積回転数のカウントが開始されることになる。後述する他の例でも同様である。
【0076】
また、図16の1回目のサイドクラッチオンの前(図16では左側)に図示されているサイドクラッチオン(オン時間)は、不規則的入り切り制御機能(B2)の設定オン時間(例えば0.3秒)を表している。または、規則的入り切り制御機能(B1)から不規則的入り切り制御機能(B2)に切り替わる際の間欠サイドクラッチ制御のオン時間を表している。このことは、後述する他の例でも同様である。
【0077】
図17には、下記(2)の不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
(2)旋回外側の後輪11の回転数が所定の回転数に到達するたびに所定時間サイドクラッチ入りにする場合、オンになるごとに前記所定時間を変える。この場合、結果的にオン時間が変わることになる。また、車速一定の前提条件の下では、オンオフがそれぞれ1回現出される時間(作動周期T、(ハ)で示す)は変わらず、オン時間が変われば、オフ時間も変わることになる。
【0078】
所定の回転数を2/3回転とした場合に、所定時間(例えば0.3秒)サイドクラッチがオンになるとする。まず、旋回外側の後輪11の回転数が前回のオン開始時から2/3回転になったときにサイドクラッチがオンになり、所定時間(例えば0.3秒)サイドクラッチがオンのままになる。累計回転数は上記(1)と同様にサイドクラッチがオンになるとクリアされて再び回転数のカウントが始まる。
そして、さらに旋回外側の後輪11が回転して2/3回転(1回目のオン開始時から数える)となったときに、今度は0.15秒間、サイドクラッチがオンになる。更にその後、旋回外側の後輪11が回転して2/3回転(2回目のオン開始時から数える)となったときに、再び所定時間(0.3秒)、サイドクラッチがオンになる。
【0079】
図18には、下記(3)の不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
(3)旋回外側の後輪11の回転数が第一の所定の回転数に到達するたびに旋回内側の後輪11が第二の所定の回転数に到達するまでサイドクラッチ入りにする場合、オンになるごとに前記第一の所定の回転数を変える。この場合、車速一定の前提条件の下では、「第二の所定の回転数」は変わらないため、オン時間((ロ)で示す)は変わらず、結果的にオフ時間が変わることになる。
【0080】
表2及び表3に示すように、第一の所定の回転数を2/3回転とし、第二の所定の回転数を1/15回転とした場合に、第一の所定の回転数を1回転に変える場合について説明する。まず、旋回外側の後輪11の回転数が前回のオン開始時から2/3回転になったときにサイドクラッチがオンになり、旋回内側の後輪11が1/15回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。
【0081】
そして、さらに旋回外側の後輪11が回転して1回転(1回目のオン開始時から数える)となったときにサイドクラッチがオンになり、旋回内側の後輪11が再び1/15回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。更にその後、第一の所定の回転数を2/3回転に変えると、旋回外側の後輪11が回転して2/3回転(2回目のオン開始時から数える)となったときにサイドクラッチがオンになり、旋回内側の後輪11が再び1/15回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。
なお、通常は旋回外側の後輪11(第一の所定の回転数に相当)が1回転する場合、旋回内側の後輪11(第二の所定の回転数に相当)は1/3〜1/4回転するので、図18では第一の所定の回転数と第二の所定の回転数の横軸の目盛りがそのようになるように図示している。図19においても同様である。
【0082】
そして、図19には、下記(4)の不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
(4)旋回外側の後輪11の回転数が第一の所定の回転数に到達するたびに旋回内側の後輪11が第二の所定の回転数に到達するまでサイドクラッチ入りにする場合、オンになるごとに前記第二の所定の回転数を変える。この場合、結果的にオン時間が変わることになる。また、車速一定の前提条件の下では、オンオフがそれぞれ1回現出される時間(作動周期T、(ハ)で示す)は変わらず、オン時間が変われば、オフ時間も変わることになる。
【0083】
表2及び表3に示すように、第一の所定の回転数を2/3回転とし、第二の所定の回転数を1/15回転とした場合に、第二の所定の回転数を2/15回転に変える場合について説明する。まず、旋回外側の後輪11の回転数が前回のオン開始時から2/3回転になったときにサイドクラッチがオンになり、旋回内側の後輪11が1/15回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。
【0084】
そして、さらに旋回外側の後輪11が回転して2/3回転となったときに(1回目のオン開始時から数える)サイドクラッチがオンになり、旋回内側の後輪11が2/15回転に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。更にその後、第二の所定の回転数を1/15回転に変えると、旋回外側の後輪11が回転して2/3回転となったときに(2回目のオン開始時から数える)サイドクラッチがオンになり、旋回内側の後輪11が再び1/15回転に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。
【0085】
図20には、下記(5)の不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
(5)旋回外側の後輪11の回転数が第一の所定の回転数に到達するたびに旋回外側の後輪11が第三の所定の回転数に到達するまでサイドクラッチ入りにする場合、オンになるごとに前記第三の所定の回転数を変える。この場合、結果的にオン時間が変わることになる。また、車速一定の前提条件の下では、オンオフがそれぞれ1回現出される時間(作動周期T、(ハ)で示す)は変わらず、オン時間が変われば、オフ時間も変わることになる。
【0086】
表2及び表3に示すように、第一の所定の回転数を2/3回転とし、第三の所定の回転数を1/5回転とした場合に、第三の所定の回転数を1/4回転に変える場合について説明する。まず、旋回外側の後輪11の回転数が前回のオン開始時から2/3回転になったときにサイドクラッチがオンになり、回転数が1/5回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。
【0087】
そして、さらに旋回外側の後輪11が回転して2/3回転となったときに(1回目のオン開始時から数える)サイドクラッチがオンになり、旋回外側の後輪11の回転数が1/4回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。更にその後、旋回外側の後輪11が回転して2/3回転となったときに(2回目のオン開始時から数える)サイドクラッチがオンになり、旋回外側の後輪11の回転数が再び1/5回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。
【0088】
図21には、下記(6)の不規則的入り切り制御機能(B2)による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
(6)旋回外側の後輪11の回転数が第一の所定の回転数に到達するたびに旋回外側の後輪11が第三の所定の回転数に到達するまでサイドクラッチ入りにする場合、オンになるごとに前記第一の所定の回転数を変える。この場合、車速一定の前提条件の下では、「第三の所定の回転数」は変わらないため、オン時間((ロ)で示す)は変わらず、結果的にオフ時間が変わることになる。
【0089】
表2及び表3に示すように、第一の所定の回転数を2/3回転とし、第三の所定の回転数を1/5回転とした場合に、第一の所定の回転数を1回転に変える場合について説明する。まず、旋回外側の後輪11の回転数が前回のオン開始時から2/3回転になったときにサイドクラッチがオンになり、回転数が1/5回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。そして、さらに旋回外側の後輪11が回転して1回転(1回目のオン開始時から数える)になったときに再びサイドクラッチがオンになり、回転数が1/5回転に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。更にその後、旋回外側の後輪11が回転して2/3回転となったときに(2回目のオン開始時から数える)サイドクラッチがオンになり、旋回外側の後輪11の回転数が1/5回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。
【0090】
上記(1)、(3)、(6)の例は、車速一定の前提条件の下では、オン時間(ロ)は変わらず、結果的にオフ時間が変わることになる。また、上記(2)、(4)、(5)の例は、オンオフがそれぞれ1回現出される時間(ハ)は変わらず、オン時間が変われば、オフ時間も変わることになる。
【0091】
次の(7)及び(8)の例は、後輪11の累計回転数ではなく、後輪11の単位時間あたりの回転数(回転速度)を基準とした場合の制御例である。
(7)旋回内側の後輪11の回転数が所定の回転速度(単位時間あたりの回転数)以下になるたびに所定時間サイドクラッチ入りにする場合、オンになるごとに前記所定時間を変える。
この「所定の回転速度以下になるたびに」とは、オン終了後もまだ所定の回転数以下である場合は含まず、一旦所定の回転数に達してから再び所定の回転数以下になる場合のことを示している。下記(8)においても同様である。
そして、この場合、結果的にオン時間が変わることになる。また、一定時間おきに所定の回転速度以下になる条件の下では、オンオフがそれぞれ1回現出される時間(図17、図19、図20の作動周期T、(ハ))は変わらず、オン時間が変われば、オフ時間も変わることになる。
【0092】
(8)旋回内側の後輪11の回転数が所定の回転速度(単位時間あたりの回転数)以下になるたびに旋回内側の後輪11が第二の所定の回転速度に到達するまでサイドクラッチ入りにする場合、オンになるごとに前記第二の所定の回転速度を変える。この場合、結果的にオン時間が変わることになる。また、一定時間おきに所定の回転速度以下になる条件の下では、オンオフがそれぞれ1回現出される時間(図17、図19、図20の作動周期T、(ハ))は変わらず、オン時間が変われば、オフ時間も変わることになる。
また、上記(1)〜(8)の「オン(サイドクラッチ入り)」を「オフ(サイドクラッチ入り」に置き換える別実施例も考えられる。
【0093】
そして、前輪10が直進姿勢から設定角度以上に操向されると一定の周期で所定時間ずつ間欠的に通電制御される間欠サイドクラッチ制御の場合は、前輪10の操向角度には対応しているものの、設定角度以上に操向されると、後は自動的に入り切り状態となる画一的な制御である。苗植付部4を連結した乗用型田植機1では、一定の周期で所定時間ずつ間欠的にサイドクラッチを入り切り操作した場合(間欠サイドクラッチ制御の場合)に、その周期による振動数(周波数)が苗植付部4単体の固有振動数に合うと共振し、サイドクラッチの入り切り操作に連動して苗植付部4の揺れが増大してしまう。苗植付部4の揺れが増大すると、オペレータにもその揺れによって不快感をもたらし、また、適正な植え付け作業が困難となる。そして、リンク機構3により苗植付部4を連結しているため、苗植付部4の揺れが増大することによって連結機構の耐久性が劣ってしまう。
【0094】
しかし、間欠サイドクラッチ制御の他に不規則的入り切り制御機能(B2)を設けることで、乗用型田植機1の旋回時に旋回内側の後輪11が不規則に断続的に駆動するため、走行車体2上の構造物や走行車体2の後ろ側に連結した苗植付部4の振動数に合うことがない。したがって苗植付部4などが後輪11の駆動力に共振することを防止し、走行車体2などの機体の揺れ及び振動を抑えてオペレータの不快感をなくし、作業環境を良好に維持できる。また、乗用型田植機1の旋回時に旋回内側の後輪11のサイドクラッチを入り切り操作することで、旋回内側の後輪11による圃場の荒らしが軽減できると共に、不規則的入り切り制御機能(B2)による制御により連結されている苗植付部4の揺れを低減し、乗用型田植機1の操作性やリンク機構3の耐久性を向上させることが可能となる。また、揺れが低減されることで、作業を傍目で見ている場合にも安心感がある。
【0095】
従来と同様に、サイドクラッチ入又はサイドクラッチ切を小刻みに作動させて機体の旋回を円滑に行える間欠サイドクラッチ制御も行いながら、不規則的入り切り制御機能(B2)を設けることで、前記周期は長く設定できるため、苗植付部4などの共振を抑えることができ、仮に共振しても機体の耐久性やオペレータの作業環境に与える影響は極めて小さくでき、機体の耐久性が向上すると共にオペレータの作業環境も向上する。
【0096】
また、乗用型田植機1の機体の揺れに応じて、規則的入り切り制御機能(B1)による制御(間欠サイドクラッチ制御)と不規則的入り切り制御機能(B2)による制御とを自動的に切り替えるB1とB2との間の切り替え制御機能(C)(図7)を制御装置163に設けても良い。なお、オペレータが前記切り替えスイッチを操作した場合は、その操作が優先されるようにすればよい。
具体的には、乗用型田植機1の苗植付部4の植付部端X(図2)に苗植付部4の(車体2でも良い)の揺れを感知する(挙動を検出する)角速度センサ230(揺れセンサとも言う)を設け、乗用型田植機1の旋回時に角速度センサ230の検出値によって一定値以上の揺れを感知すると規則的入り切り制御機能(B1)による制御から不規則的入り切り制御機能(B2)による制御に切り替わり、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ入り時間の設定時間を増減し、揺れを抑える構成でも良い。
【0097】
図7に示すように、角速度センサ230からのセンサ信号が制御装置163に入力されてセンサ値が所定値以上の場合に、B1とB2との間の切り替え制御機能(C)により規則的入り切り制御機能(B1)による制御から不規則的入り切り制御機能(B2)による制御に切り替わる。すなわち、角速度センサ230からのセンサ値が所定値以上の場合は不規則的入り切り制御機能(B2)が有効になり、センサ値が所定値未満の場合は規則的入り切り制御機能(B1)が有効になる制御である。
なお、前記角速度センサ230は、苗植付部4の前後傾斜制御(ピッチング制御)や左右傾斜制御(ローリング制御)のためのセンサと共用してもよい。また、苗植付部4の挙動を検出するためのセンサとしては、角速度センサ以外にも、傾斜角度センサ等も考えられる。
【0098】
なお、不規則的入り切り制御機能(B2)による制御は規則的入り切り制御機能(B1)の間欠サイドクラッチ制御に対応する言葉として、不規則的間欠サイドクラッチ制御と言うことにする。
上述のように、間欠サイドクラッチ制御では、サイドクラッチのオン/オフの作動周期Tによる振動数(周波数)が苗植付部4単体の固有振動数に合うと共振し、サイドクラッチの入り切り操作に連動して苗植付部4の揺れが増大してしまう。したがって、角速度センサ230によって一定以上の揺れを感知して苗植付部4(又は車体2)の揺れが大きくなった(揺れがある又は揺れが大きくなりそうである)と判断される場合に不規則的間欠サイドクラッチ制御を行うことにより、真に必要なときに苗植付部4の揺れが低減できる。
【0099】
通常は間欠サイドクラッチ制御だけでも、旋回半径をコントロールでき、ブレーキングによる衝撃も少なく、エンジン回転や車速の影響を受けずに後輪11の旋回角度に応じたブレーキングの周期を得ることができ、旋回内側の後輪11による圃場の荒らしを軽減できる。しかし、苗植付部4(又は車体2)の揺れが大きくなった場合は不規則的間欠サイドクラッチ制御を行うことで、苗植付部4の揺れを防止でき、的確で適正な後輪駆動制御を行うことができる。
本構成を採用することにより、機体の揺れが比較的小さい(又はない)ときには旋回内側の後輪11を規則的に作動させることで、乗用型田植機1の操向を円滑に行え、機体の揺れが比較的大きい(又はある)ときには、旋回内側の後輪11を不規則的に作動させることで、機体の揺れ及び振動を効果的に抑えることができる。
【0100】
また、圃場の深さ(耕盤深さ)が浅い浅田の場合は、乗用型田植機1の旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを継続的に切りながら旋回する通常の旋回モードである継続的入り切り制御機能A1としても良い。浅田の場合に、間欠サイドクラッチ制御(B1)や不規則的間欠サイドクラッチ制御(B2)を行うと、浅田では車輪のスリップ率が小さくなる傾向が有り、サイドクラッチ入り時の後輪の地面に対する衝撃が吸収されにくく、車体2の揺れが大きくなる。
また、浅田の場合は乗用型田植機1の旋回時に圃場の泥を抱き込むことがないため、圃場を荒らすことも少ない。
【0101】
したがって、浅田の場合は、制御装置163により継続的入り切り制御機能(A1)を機能させて旋回内側の後輪11のサイドクラッチを継続的に切ることで、車体2の(苗植付部4も)揺れを軽減し、また小回り旋回が可能となる。一方、圃場の深さが深い場合には、間欠サイドクラッチ制御(B1)や不規則的間欠サイドクラッチ制御(B2)を機能させることで旋回内側の後輪11を適宜駆動回転させることにより、旋回内側の後輪11が移動して圃場の同じ箇所で操向しにくくなり、旋回半径を大きくとって圃場の荒らしを軽減できる。
【0102】
圃場の深さ(耕盤深さ)は、昇降リンク装置3に設けた圃場深さ測定手段である昇降リンクセンサ48(回転ポテンショメータなど)(図1,図7)によって検出、測定でき、昇降リンクセンサ48のセンサ信号が制御装置163に入力され、昇降リンクセンサ48のセンサ値によって圃場の深さが判断される。
また、継続的入り切り制御機能(A1)の解除スイッチ(間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210(図13)で兼用しており、このダイヤル210の「断続無」の位置に操作すれば継続的入り切り制御機能(A1)になる)を設けることで、適宜オペレータや圃場条件に応じた後輪駆動制御を行うことができる。したがって、このように圃場深さに応じたきめの細かい制御が可能となる。
【0103】
また、乗用型田植機1の旋回時に機体の前部が持ち上がると、前記不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間を短くするような制御でも良い。また、乗用型田植機1の旋回時に機体の前部が持ち上がると、B1とB2との間の切り替え制御機能(C)により間欠サイドクラッチ制御から不規則的間欠サイドクラッチ制御に自動的に切り替えると共に前記不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間を短くするような制御でも良い。
機体の前部が持ち上がったことが前後傾斜センサ233(図7)により検出され、その検出結果に応じて不規則的間欠サイドクラッチ制御のサイドクラッチ入りの時間を短くする制御を行う。また、間欠サイドクラッチ制御から不規則的間欠サイドクラッチ制御に切り替えて、不規則的間欠サイドクラッチ制御のサイドクラッチ入りの時間を短くする制御を行うようにしても良い。
【0104】
例えば、間欠サイドクラッチ制御の場合の設定時間の半分のサイドクラッチ入り時間を2回〜3回のオン時に一度入れる。図15(b)に示すように、サイドクラッチ入りの設定時間を0.3秒とし、3回のサイドクラッチオン時に、1回、0.3秒の半分の0.15秒とすると良い。
乗用型田植機1の旋回時に前輪10が浮き上がると前輪10の駆動力が少なくなり、機体の小回りがきかなくなって大回りになってしまう。したがって、旋回性能が落ちてしまう。
【0105】
そこで、前後傾斜センサ233のセンサ信号が制御装置163に入力され、前後傾斜センサ233のセンサ値によって前輪10が浮き上がっていると判断される場合は不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を短くする。すなわち、後輪11が駆動される時間を短くすることで機体の向きが変わりやすくなって旋回半径が小さくなり小回り旋回が可能となる。
したがって、乗用型田植機1の安定した旋回が可能となる。また、旋回性能を上げることで、作業性も損なわれない。
【0106】
更に、乗用型田植機1の旋回中、あまり旋回が進まない(機体が進まない)ような場合は、前記不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間を長くするような制御でも良い。また、乗用型田植機1の旋回中、あまり旋回が進まないような場合は、B1とB2との間の切り替え制御機能(C)により間欠サイドクラッチ制御から不規則的間欠サイドクラッチ制御に自動的に切り替えて、旋回内側の後輪11の不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を長くするような制御をしても良い。
【0107】
旋回内側の後輪11の回転数が小さい場合は旋回が進んでおらず、旋回内側の後輪11の回転数が大きい場合は旋回が進んでいると判断される。そして、旋回内側の後輪11の回転数は回転数センサ205によって検出できる。回転数センサ205から検出される回転数が所定値以上の場合は、間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間をそのまま(設定時間、例えば0.3秒)とし、回転数センサ205から検出される回転数が所定値未満の場合は、間欠サイドクラッチ制御から不規則的間欠サイドクラッチ制御に切り替えて、サイドクラッチ入りの時間を長くする制御(例えば0.6秒)が制御装置163により行われる。
サイドクラッチ入りの時間を長くすると、後輪11は駆動し、小回りはしにくいが旋回は進み易く(機体は進み易く)なる。
【0108】
例えば、間欠サイドクラッチ制御の場合の設定時間の倍のサイドクラッチ入り時間を2回〜3回のオン時に一度入れる。図15(a)に示すように、サイドクラッチ入りの設定時間を0.3秒とし、3回のサイドクラッチオン時に、1回、0.3秒の倍の0.6秒とすると良い。
乗用型田植機1の旋回中、旋回内側の後輪11の回転数が小さくて、あまり旋回が進まないような場合に、不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を長くすると、旋回は進み易く(機体は進み易く)なるので、旋回性が向上する。
【0109】
そして、乗用型田植機1の後輪11のローリングが多い(大きい)場合は、乗用型田植機1の旋回時の間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチのオン/オフの作動周期Tを小刻みに(短く)すると良い。本制御は間欠サイドクラッチ制御(B1)及び不規則的間欠サイドクラッチ制御(B2)のどちらでも成り立つ。
後輪11のローリングの程度は後輪ローリング軸に設けられた後輪ローリングセンサ240(図7)により検出され、検出結果に応じて間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチのオン/オフの作動周期Tを変更する。後輪ローリングセンサ240(図7)により検出されたセンサ値が所定値以上の場合は間欠サイドクラッチ制御のオン/オフの作動周期Tを短くする(例えば設定時間である1秒から0.5秒に)制御が制御装置163によって行われる。
【0110】
圃場が荒れている場合は乗用型田植機1の後輪11のローリングの程度が大きくなるが、間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチのオン/オフの作動周期Tを通常の設定周期(標準周期T0)よりも短くすることで、周期が短くなるとサイドクラッチのオンが現出される回数が増えるため後輪11が頻繁に駆動され、荒れている圃場から速く脱出でき、乗用型田植機1が円滑に旋回できる。
【0111】
また、乗用型田植機1の旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行う自動植付開始モードが設定されていない場合(植始め調節ダイヤル212(図14)が切り時(植始め調節ダイヤル212(図14)を端の「オートリフト」位置に操作すると「切り」になる)には、前記不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間を長くするような制御でも良い。また、B1とB2との間の切り替え制御機能(C)により間欠サイドクラッチ制御から不規則的間欠サイドクラッチ制御に自動的に切り替えて、不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を長くするような制御をしても良い。
【0112】
圃場の状態によっては、凹凸があったり乗用型田植機1が旋回しにくい所もあり、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ入りの時間を長くして後輪11の駆動される時間を長くする方が、スリップ等により機体が動かなくなることを防止できる。
例えば、間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を設定時間(例えば0.3秒)とし、不規則的間欠サイドクラッチ制御に切り替わるとサイドクラッチ入りの時間を「設定時間+α(α>0)」(例えば0.5秒)として、設定時間よりも長くする制御が制御装置163によって行われる。また、図15(a)に示すように、間欠サイドクラッチ制御の場合の設定時間の倍のサイドクラッチ入り時間を2回〜3回のオン時に一度入れても良い。
【0113】
圃場の状態によって、オペレータが旋回しづらいと判断した場合に、あるいは圃場が荒れている枕地等で作業をしている場合に、植始め調節ダイヤル212を切りにすることで、サイドクラッチ入りの時間が長い不規則的間欠サイドクラッチ制御が行われる。制御装置163によってサイドクラッチ入りの時間を設定時間よりも長くする制御が行われることで、スリップ等により機体が動かなくなることを防止でき、乗用型田植機1の旋回性が向上する。
【0114】
更に、乗用型田植機1の前輪デフ装置の差動をロックするフロントデフロックの入り時は前記不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間を長くするような制御でも良い。また、B1とB2との間の切り替え制御機能(C)により間欠サイドクラッチ制御から不規則的間欠サイドクラッチ制御に自動的に切り替えて不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を長くするような制御をしても良い。
例えば、前輪デフロックペダル245(図1)の操作作動を検出する前輪デフロックペダルセンサ247(図7)を前輪デフロックペダル245に設ける。
【0115】
そして、前輪デフロックペダルセンサ247のセンサ信号が制御装置163に入力され、前輪デフロックペダルセンサ247のセンサ値によってフロントデフロックが入りと判断される場合は不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を長くする制御が制御装置163によって行われる。例えば、図15(a)に示すように、間欠サイドクラッチ制御の場合の設定時間の倍のサイドクラッチ入り時間を2回〜3回のオン時に一度入れると良い。また、設定時間よりも長くする時間を間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間+α(α>0)(例えば0.5秒)としても良い。前記フロントデフロックの入りにするほどスリップしやすい圃場の時は旋回外側の後輪が空転して進んでいない可能性がある。すなわち、オペレータは前輪10が空転していると判断した場合に左右の前輪10を等速で駆動させるために、フロントデフロックを入りにする。
オペレータが前輪デフロックペダル245を踏むと、フロントデフロックが入りになって、前輪デフロックペダルセンサ247により当該信号が検出される。
そこで、このような場合は不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を長くする制御が制御装置163によって行われることで後輪11が駆動されるので、前輪10が接地してしっかりと地面をつかみ、空転することを防止できる。
【0116】
また、苗載台51上の苗搭載量により、機体の操向角速度を下げる補正をする制御をしても良い。具体的には、間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間を補正することになる。
例えば、苗載台51上の苗搭載量が一定量よりも多い場合は、間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間を長くしてゆっくり旋回し、苗載台51上の苗搭載量が一定量よりも少ない場合は、間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間を短くして速く旋回する。
【0117】
乗用型田植機1の旋回時に間欠サイドクラッチ制御(B1)や不規則的間欠サイドクラッチ制御(B2)を行う場合に、苗載台51上の苗搭載量が多いとサイドクラッチのオン/オフによって機体に揺れが生じて、旋回性が変化する。すなわち、オペレータにとって違和感があってオペレータの乗り心地が悪くなる。
しかし、苗載台51上の苗搭載量に応じて乗用型田植機1の旋回時の操向角速度を制御装置163により自動的に補正して調整することで、旋回性を向上させて、オペレータの不快感をなくし、作業環境を良好に維持して乗用型田植機1の操作性を高めることができる。また、正確なカウント(植始めの制御のための旋回内側の後輪11の回転数のカウント)が可能となる。
【0118】
また、苗載台51上の苗搭載量が満載の時は、前記不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの設定時間を短くするような制御でも良い。また、B1とB2との間の切り替え制御機能(C)により間欠サイドクラッチ制御から不規則的間欠サイドクラッチ制御に自動的に切り替えて、不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を短くするような制御をしても良い。
【0119】
苗載台51上の苗搭載量が満載の時は苗載台51全体の重量が大きいため、間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間が長いと苗植付部4や機体の揺れが増大してしまう。
苗植付部4の揺れが増大すると、オペレータにもその揺れによって不快感をもたらし、また、適正な植え付け作業が困難となる。更に、リンク機構3により苗植付部4を連結しているため、苗植付部4の揺れが増大することによって連結機構の耐久性が劣ってしまう。
【0120】
したがって、苗載台51上の苗搭載量が満載などの重量が大きいと思われる場合は、不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を短くする。
例えば、苗載台51上の苗搭載量を検出する苗搭載量重量センサ249(図7)を苗載台51に設ける。
そして、苗搭載量重量センサ249のセンサ信号が制御装置163に入力され、苗搭載量重量センサ249のセンサ値によって苗搭載量が所定値以上と判断される場合は不規則的間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間を短くする制御が制御装置163によって行われる。例えば、図15(b)に示すように、サイドクラッチ入りの設定時間を0.3秒とし、3回のサイドクラッチオン時に、1回、0.3秒の半分の0.15秒とすると良い。
【0121】
苗載台51上の苗搭載量が満載の時は苗載台51全体の重量が大きいため、間欠サイドクラッチ制御によるサイドクラッチ入りの時間が長いと苗植付部4や機体の揺れが増大しやすいが、サイドクラッチ入りの時間を短くする不規則的間欠サイドクラッチ制御を行うことで、苗植付部4や機体の揺れが低減し、当該揺れ及び振動を抑えてオペレータの不快感をなくし、作業環境を良好に維持できる。また、旋回内側の後輪11による圃場の荒らしが軽減できると共に、連結されている苗植付部4の揺れを低減し、乗用型田植機1の操作性やリンク機構3の耐久性を向上させることが可能となる。
【0122】
そして、上述のように、乗用型田植機1の旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行う自動植付開始モードが設定されている場合(植始め調節ダイヤル212(図14)が入り時(植始め調節ダイヤル212(図14)を端の「オートリフト」位置以外に操作すると「入り」になる)には、制御装置163によって旋回内側の後輪11のドライブシャフトの回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御が行われる。
この苗の植え付けが開始されるタイミングを苗植付部4が圃場表面に確実に接地した時とする制御にすれば良い。
【0123】
従来は乗用型田植機1の旋回時にフロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)が接地する状態で植付クラッチケース25内の植付クラッチ(図示せず)が入りになって、苗の植え付けが開始されるが、その場合は、苗植付部4の昇降位置が不安定なことがあり、苗の植え付け深さが適正にならない。
【0124】
センターフロート55が接地したことは、苗植付部4のピッチング装置251(図1)により苗植付部4の前後方向の揺れを検出することで判断される。ピッチング装置251とは、長孔により、苗植付部4が昇降リンク装置3に対して所定の融通範囲内で前後傾斜自在にしたものであり、センターフロート55の接地の判断は苗植付部4が接地したかどうかの判断になる。ピッチング装置251による苗植付部4の前後傾斜の回動支点より後側に苗植付部4の重心が位置するため、苗植付部4が対地浮上すると後傾斜し、接地すると前側に傾斜する。
【0125】
そして、ピッチング装置251の前後方向の揺れを検出するピッチングセンサ253(図7)をピッチング装置251に設け、ピッチングセンサ253からの検出値により当該検出値が所定値以下となって確実にセンターフロート55が接地したことを感知してから(苗植付部4が前側に傾斜したとき)植付クラッチを入りにする制御が制御装置163によって行われる。
このように、完全にセンターフロート55が接地した後に苗の植え付けが開始されることで、苗植付部4の昇降位置が安定する。したがって、苗の植え付け深さが適正になり、正確な植え付けが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、8条植などの多条の苗植付用作業機の旋回時の操作性がよいので乗用型田植機などの乗用型作業機に利用できる。
【符号の説明】
【0127】
1 乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 施肥装置 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 14 前輪アクスル
15 メインフレーム 16 変速レバー
18 後輪ギヤケース
19 苗植付レバー 20 エンジン
21 ベルト伝動装置 23 油圧式無段変速装置
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27(27a,27b) ロータ 28 施肥伝動機構
30 エンジンカバー 31 操縦席
32 フロントカバー 33 操作盤
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ 37 トルクジェネレータ
38 予備苗載台 40 上リンク
41 下リンク 42 リンクベースフレーム
43 縦リンク 44 連結軸
45 ケーブル 46 昇降油圧シリンダー
48 昇降リンクセンサ
49 油圧ポンプ 50 苗植付伝動ケース
51 苗載台 51a 苗取出口
51b 苗送りベルト 52 苗植付装置
53 ブロア用電動モータ 55 センターフロート
56 サイドフロート 57 ミドルフロート
58 ブロア 59 エアチャンバ
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 65 支持枠体
65a 支持ローラ 65b 両側辺部材
66 梁部材 66a 突出部
67 支持アーム 68 ロータ支持フレーム
70 駆動軸 71 連結部材
76,77 リンク部材 78 スプリング
81 ロータ上下位置調節レバー 82 折曲片
86I 左右クラッチ操作アーム
90 チェンジレバー(前後進レバー)
126 苗植付け具
161 昇降バルブ
163 制御装置 166 フィンガーレバー
180 左右ロッド
184 旋回制御のスタートボタン(スイッチ)
190 接当片
191 バックリフトスイッチ 192 自動リフト切替スイッチ
193 ハンドル切れ角センサ 205 伝動軸回転数センサ
206a〜208b 設定ダイヤル
210 間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル
212 植始め調節ダイヤル 217 プルシリンダ
221 クラッチ制御用電磁バルブ
230 角速度センサ(揺れセンサ)
233 前後傾斜センサ 235 迎い角センサ(迎角制御センサ)
240 後輪ローリングセンサ 247 前輪デフロックペダルセンサ
249 苗搭載量重量センサ 251 ピッチング装置
253 ピッチングセンサ
A1 継続的入り切り制御機能
B1 規則的入り切り制御機能(間欠サイドクラッチ制御)
B2 不規則的入り切り制御機能(不規則的間欠サイドクラッチ制御)
C 規則的入り切り制御機能B1と不規則的入り切り制御機能B2との間の切り替え制御機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)と、
該走行車体(2)の前進方向に向かって左右にそれぞれ設けられた前輪(10)及び後輪(11)と、
前記走行車体(2)上に設けられ、走行車体(2)の操縦を行うための操縦席(31)と、
該操縦席(31)に設けられ、走行車体(2)の操向方向を決める操向ハンドル(34)と、
該操向ハンドル(34)の操作に連動して、左右の前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(86I、180、217)と
前記走行車体(2)の前進方向に向かって後側に昇降リンク装置(3)を介して昇降可能に装着された作業装置(4)と、
前記ステアリング機構(86I、180、217)に連動して旋回内側の後輪(11)の駆動力を不規則に断続的に入り切りする不規則的入り切り制御機能(B2)を有する制御装置(163)と
を設けたことを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記走行車体(2)の挙動を検出する挙動検出センサ(230)を設け、
前記制御装置(163)は、前記ステアリング機構(86I、180、217)に連動して旋回内側の後輪(11)の駆動力を規則的に断続的に入り切りする規則的入り切り制御機能(B1)と前記挙動検出センサ(230)の検出値に応じて前記規則的入り切り制御機能(B1)による制御と前記不規則的入り切り制御機能(B2)による制御を切り替える切り替え制御機能(C)とを有することを特徴とする請求項1記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−227009(P2010−227009A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78277(P2009−78277)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】