説明

作業用走行車両

【課題】コンバインのように機体各部の異常を検出する複数の異常検出手段を備えた作業用走行車両において、該作業用走行車両に搭乗しない補助作業者が機体各部の異常を速やかに把握してオペレータと連係しながら対応できるようにする。
【解決手段】機体各部の異常を検出する複数の異常検出手段42,43,45,46,47,48の異常検出に基づいて、当該異常検出手段42,43,45,46,47,48に近い位置の方向指示器24L,24L´,24R,24R´,25L,25Rを点灯または点滅させる制御手段41を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやトラクタ及び田植機等のように、機体各部の異常を検出する複数の異常検出手段を備えた作業用走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業用走行車両の一例であるコンバインにおいては、脱穀部から機体他側にある操縦席の後部上方まで揚上螺旋を内装した籾輸送管を延出すると共に、この籾輸送管の上部に大小の径からなる二股状の籾吐出管を設け、大径の籾吐出管を主吐出用とする一方、小径の籾吐出管を補助吐出用として、大径の籾吐出管から吐出される籾により籾袋が満たされた時、超過する籾を小径の籾吐出管により次に使用する籾袋に逃がすことができるように構成し、更に大径の籾吐出管の途中には、籾袋に籾が満たされて大径の籾吐出管内に籾が滞留し始めた時、籾の重量圧により籾袋の満杯状態を検出する検出器を設け、この検出器が検出した籾のオーバーフロー信号を、補助作業者が視認し易い側の方向指示器に異常警報として点滅または点灯出力できるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭56−41210号公報(第1−2頁、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、実際のコンバインには、刈り取り作業中における機体各部の異常を検出すべく、籾の満杯状態を検出するモミセンサやオーバーフローセンサの他に、エンジンの冷却水の温度を検出する水温センサ、前処理部の扱ぎ深さ搬送装置における穀稈の詰まりを検出する前処理詰まりセンサ、脱穀部のフィードチェンにおける排稈詰まりを検出するフィードチェン詰まりセンサ、排稈搬送装置の排稈チェンにおける排稈詰まりを検出する排稈詰まりセンサ、後処理部のカッタにおける排稈詰まりを検出するカッタ詰まりセンサ等の多くの異常検出手段を備えており、これらの異常検出手段が検出する機体各部の異常についても、コンバインに搭乗しない補助作業者が速やかに把握してオペレータと連係しながら対応できるように、更なる改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、機体前後の左右両側に方向指示器を備えると共に、機体各部の異常を検出する複数の異常検出手段と、これら異常検出手段の異常検出に対応する異常表示手段とを備えた作業用走行車両において、前記複数の異常検出手段の異常検出に基づいて、当該異常検出手段に近い位置の方向指示器を点灯させる制御手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、作業用走行車両の機体各部の異常を検出する複数の異常検出手段の異常検出に基づいて、当該異常検出手段に近い位置の方向指示器を点灯させる制御手段を設けたことによって、作業用走行車両に搭乗するオペレータと共同して作業を行う補助作業者が、機体に発生した不具合の位置を作業用走行車両から離れた位置から容易に把握することができるので、この不具合を解消すべく両者の速やかな対応が可能となり作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明に係る作業用走行車両の一例であるコンバイン1の左右側面図、また図3は、平面図であって、当該コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2,2によって支持される機体フレーム3を有し、この機体フレーム3の前部右側に図示しないエンジンを搭載すると共に、該エンジンの上方にオペレータが着座する座席5を設けている。
【0007】
そして、機体フレーム3の前部には、穀稈を刈取って搬送する前処理部6を昇降可能に支持すると共に、この前処理部6の後方には、刈取った穀稈を脱穀し、且つ脱穀した穀粒を選別する脱穀部7と、脱穀された後の排稈を排出処理する後処理部8を設けている。
【0008】
また、座席5の後方には、脱穀部7で選別された穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク9が設けてあり、この穀粒タンク9内に一時的に貯留された穀粒は、縦搬送パイプ11を経て起伏及び回動動作可能な穀粒排出オーガ12の排出口12aから機外に排出できるようになっている。
【0009】
そして、座席5前方の床面を形成する搭乗ステップ13の前側には、機体の操向及び前処理部6の昇降操作を行うマルチステアリングレバー14を備えた操縦塔15を立設している。更に詳しくは、マルチステアリングレバー14は、操縦塔15の上部を覆う上面パネル16の左右一側から突出すると共に、該上面パネル16の他側には、コンバイン1の刈り取り作業(運転)に必要な各種運転情報を表示するメータパネル17を内装してある。一方、座席5左側のサイドパネル18には、主変速レバー19、副変速レバー21、及び作業機・刈取クラッチレバー22等のコンバイン1の操縦に必要な複数の操作レバーやスイッチ類が配設してあって、既述した構成によりコンバイン1の操縦部23が形成されている。
【0010】
また、コンバイン1の機体の四隅には、路上走行時等において機体の進路変更や旋回を行う際、点滅しながら他車や周辺の作業者に機体の進行方向を知らしめる視認灯、即ち一般車両と略同様な方向指示器(フラッシャランプ)24L,24L´,24R,24R´,25L,25Rを備えている。これらの方向指示器24L,24L´24R,24R´,25L,25Rは、通常は操縦部23の上面パネル16の左側に設けたコンビネーションスイッチ26によってON・OFFされる。
【0011】
尚、図4は、メータパネル17の平面図であり、その右側には、エンジンの回転数を表示する回転計31を配置すると共に、該回転計31の下部には、コンバイン1の作業時間の積算値を表示するアワーメータ32を備えている。また、メータパネル17の左側には、コンバイン1の刈り取り作業中における機体各部の異常を表示すべく、詳細は後述する異常表示手段としてのインジケータ群33が設けられている。
【0012】
また、コンバイン1は、図5に示すブロック図のようにマイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM)を用いて構成される制御手段としての制御部41を備えており、この制御部41の入力側には、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ42、前処理部6の扱ぎ深さ搬送装置(不図示)における穀稈の詰まりを検出する前処理詰まりセンサ43、脱穀部7のフィードチェン(不図示)における排稈の詰まりを検出するフィードチェン詰まりセンサ45、脱穀済みの排稈を後処理部8に搬送する排稈搬送装置の排稈チェン(不図示)における排稈の詰まりを検出する排稈詰まりセンサ46、後処理部8のカッタにおける排稈の詰まりを検出するカッタ詰まりセンサ47、穀粒タンク9における籾の満杯状態を検出するオーバーフローセンサ48、ホーン(警報)をON・OFFするホーンスイッチ49、方向指示器24L,24L´,24R,24R´,25L,25RをON・OFFするコンビネーションスイッチ26、及び作業機・刈取クラッチレバー22の操作による作業機クラッチのON・OFF状態を検出する作業機クラッチスイッチ51を、所定の入力インターフェイス回路を介して接続している。
【0013】
一方、制御部41の出力側には、機体右前側の方向指示器(フラッシャランプ)24R、エンジン冷却水の温度異常を表示する水温ランプ52、燃料カットによりエンジンを停止させるエンジン停止ソレノイドバルブ53、機体左前側の方向指示器24L、前処理部6の扱ぎ深さ搬送装置における穀稈の詰まりを表示する前処理ランプ54、機体左前横側の方向指示器24L´、脱穀部7のフィードチェンと排稈搬送装置の排稈チェンと後処理部8のカッタにおける排稈の詰まりを表示する稈処理ランプ55、機体左後側の方向指示器25L、機体右後側の方向指示器25R、機体右前横側の方向指示器24R´、穀粒タンク9における籾の満杯状態を表示する籾満杯ランプ56、及び警報を出力するホーン57を所定の出力インターフェイス回路を介して接続している。尚、前記水温ランプ52、前処理ランプ54、稈処理ランプ55、及び籾満杯ランプ56等が上述したインジケータ群33に相当する。
【0014】
そして、図6は、本発明の警報制御を示すフローチャートであって、以下このフローチャートに基づいて説明する。
【0015】
先ず、ステップS1では、水温センサ42によるエンジン冷却水の温度が設定以上になっているか否かを判断し、設定値以上であればステップS2に進み、設定値以下であれば、ステップS3に進む。
【0016】
ステップS2では、エンジン冷却水の循環経路に設置される水温センサ42に近い位置の方向指示器24Rと、メータパネル17の水温ランプ52とをONにすると共に、ホーン57による警告音(断続音)を出力させながらステップS3に進む。
【0017】
ステップS3では、作業機クラッチのON・OFF、即ち作業機クラッチスイッチ51がONになって刈り取り作業中にあるか否かを判断し、ON状態で刈り取り作業中にあればステップS4に進み、OFF状態で刈り取り作業中でなければステップS1に戻る。
【0018】
ステップS4では、上述した複数の稈詰りセンサ43,45,46,47のうち何れかのセンサがONになって穀稈または排稈の詰まりが発生しているか否かを判断し、何れかのセンサがON状態で穀稈または排稈の詰まりが発生していればステップS5に進み、OFF状態で詰りが発生していなければステップS15に進む。
【0019】
ステップS5では、前処理部6の扱ぎ深さ搬送装置における穀稈の詰まりを検出する前処理詰まりセンサ43がONになって稈詰りが発生しているか否かを判断し、ON状態で稈詰りが発生していればステップS6に進み、OFF状態で稈詰りが発生していなければステップS7に進む。
【0020】
ステップS6では、前処理詰まりセンサ43が設置される扱ぎ深さ搬送装置に近い位置の機体左前側の方向指示器24Lと、メータパネル17の前処理ランプ54とをONにしてステップS13に進む。
【0021】
一方、ステップS7では、排稈搬送装置の排稈チェンにおける排稈の詰まりを表示する稈処理ランプ55をONにしてステップS8に進む。
【0022】
ステップS8では、脱穀部7のフィードチェンにおける排稈の詰まりを検出するフィードチェン詰まりセンサ45がONになって稈詰りが発生しているか否かを判断し、ON状態で稈詰りが発生していればステップS9に進み、OFF状態で稈詰りが発生していなければステップS10に進む。
【0023】
ステップS9では、フィードチェン詰まりセンサ45が設置されるフィードチェンに近い位置の機体左前横側の方向指示器24L´をONにしてステップS13に進む。
【0024】
一方、ステップS10では、排稈搬送装置の排稈チェンにおける排稈の詰まりを検出する排稈詰まりセンサ46がONになって詰りが発生しているか否かを判断し、ON状態で稈詰りが発生していればステップS11に進み、OFF状態で稈詰りが発生していなければステップS12に進む。
【0025】
そして、ステップS11では、排稈詰まりセンサ46が設置される排稈搬送装置に近い位置の機体左後側の方向指示器25LをONにしてステップS13に進む。また、ステップS12では、カッタ詰まりセンサ47が設置される後処理部8に近い位置の機体右後側の方向指示器25RをONにしてステップS13に進む。
【0026】
ステップS13では、上述した複数の稈詰まりセンサ43,45,46,47のうち何れかのセンサがOFF状態からON状態になったか否かを判断し、何れかのセンサがOFF状態からON状態になったならばステップS14に進み、以前からON状態であればステップS15に進む。
【0027】
ステップS14では、ホーン57による警告音を単音出力すると共に、エンジン停止ソレノイドバルブ53にON出力して燃料カットによるエンジン停止を実行してステップS15に進む。
【0028】
そして、ステップS15では、穀粒タンク9における籾の満杯状態を検出するオーバーフローセンサ48がONになったか否かを判断し、ON状態で穀粒タンク9内に籾が満杯であればステップS16に進み、OFF状態で満杯になっていなければステップS1に戻る。
【0029】
ステップS16では、オーバーフローセンサ48が設置される穀粒タンク9に近い位置の機体右前横側の方向指示器24R´と、メータパネル17の籾満杯ランプ56をONにしてステップS17に進む。
【0030】
ステップS17では、オーバーフローセンサ48がOFF状態からON状態になったか否かを判断し、OFF状態からON状態になったならばステップS18に進み、以前からON状態であればステップS1に戻る。
【0031】
そして、ステップS18では、ホーン57による警告音を単音出力すると共に、エンジン停止ソレノイドバルブ53にON出力して燃料カットによるエンジン停止を実行してステップS1に戻る。
【0032】
つまり、上述した本発明の警報制御は、機体各部に備える複数の異常検出手段42,43,45,46,47,48のうち何れかの異常検出手段42,43,45,46,47,48が異常を検出した時、操縦部23に備えるメータパネル17の対応する異常表示手段であるインジケータ群33、例えば水温ランプ52、前処理ランプ54、稈処理ランプ55、籾満杯ランプ56等を点灯してオペレータに知らしめるだけでなく、異常を検出した異常検出手段42,43,45,46,47,48に近い位置の方向指示器24L,24L´,24R,24R´,25L,25Rを点灯または点滅させると共に、ホーン57による警告音を断続音または単音出力してオペレータと補助作業者に知らしめるように構成したものである。
【0033】
更に詳しくは、水温センサ42がエンジン冷却水の異常を検出した時は、該水温センサ42が設置されるエンジン冷却水の循環経路に近い位置の方向指示器24Rを点灯または点滅させ、前処理詰まりセンサ43が穀稈の詰まりを検出した時は、該前処理詰まりセンサ43が設置される扱ぎ深さ搬送装置に近い位置の機体左前側の方向指示器24Lを点灯または点滅させ、フィードチェン詰まりセンサ45が排稈の詰まりを検出した時は、該フィードチェン詰まりセンサ45が設置されるフィードチェンに近い位置の機体左前横側の方向指示器24L´を点灯または点滅させ、排稈詰まりセンサ46が排稈の詰まりを検出した時は、該排稈詰まりセンサ46が設置される排稈搬送装置の排稈チェンに近い位置の機体左後側の方向指示器25Lを点灯または点滅させ、カッタ詰まりセンサ47が排稈の詰まりを検出した時は、該カッタ詰まりセンサ47が設置される後処理部8に近い位置の機体右後側の方向指示器25Rを点灯または点滅させ、またオーバーフローセンサ48が穀粒タンク9における籾の満杯状態を検出した時は、該オーバーフローセンサ48が設置される穀粒タンク9に近い位置の機体右前横側の方向指示器24R´を点灯または点滅させるようになっている。したがって、コンバイン1に搭乗するオペレータと共同で作業を行う補助作業者は、機体に発生した不具合の位置をコンバイン1から離れた位置から容易に把握することができるので、この不具合を解消すべく両者の速やかな対応が可能となり作業性が向上する。尚、各稈詰りセンサ43,45,46,47及びオーバーフローセンサ48の検出時は、エンジンが同時に停止するので圃場周辺への騒音に配慮して単音出力としている。それに対し水温センサ42のオーバーヒート検出時は、オーバーヒートの対策としてエンジンを停止させない方がよいので、オペレータが気付き易い断続音出力としている。
【0034】
ところで、近年は、コンバイン1に搭乗するオペレータは、携帯電話機を用いて諸連絡を取り合うことが多くなってきているが、その着信音は、作業中の騒音にかき消されて聞き辛いことから、コンバイン1の制御部41を構成するマイクロコンピュータに、図示しないシリアルコミュニケーションインターフェース、コントローラ、及びカプラーを介して携帯電話機を接続し、該携帯電話機の着信に連係させてメータパネル17のインジケータや、方向指示器24L,24L´,24R,24R´,25L,25Rを点滅または点灯制御可能に構成することで、オペレータや周辺作業者が当該携帯電話機の着信を速やかに視認できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】コンバインの左側面図。
【図2】コンバインの右側面図。
【図3】コンバインの平面図。
【図4】メータパネルの平面図。
【図5】制御部のブロック図。
【図6】警報制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0036】
24L 方向指示器(機体左前側)
24L´ 方向指示器(機体左前横側)
24R 方向指示器(機体右前側)
24R´ 方向指示器(機体右前横側)
25L 方向指示器(機体左後側)
25R 方向指示器(機体右後側)
33 異常表示手段
41 制御手段
42 異常検出手段(水温センサ)
43 異常検出手段(前処理詰まりセンサ)
45 異常検出手段(フィードチェン詰まりセンサ)
46 異常検出手段(排稈詰まりセンサ)
47 異常検出手段(カッタ詰まりセンサ)
48 異常検出手段(オーバーフローセンサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前後の左右両側に方向指示器(24L,24L´,24R,24R´,25L,25R)を備えると共に、機体各部の異常を検出する複数の異常検出手段(42,43,45,46,47,48)と、これら異常検出手段(42,43,45,46,47,48)の異常検出に対応する異常表示手段(33)とを備えた作業用走行車両において、前記複数の異常検出手段(42,43,45,46,47,48)の異常検出に基づいて、当該異常検出手段(42,43,45,46,47,48)に近い位置の方向指示器(24L,24L´,24R,24R´,25L,25R)を点灯させる制御手段(41)を設けたことを特徴とする作業用走行車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−161129(P2008−161129A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354947(P2006−354947)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】