説明

作業車の車速制御構造

【課題】運転者に負担を強いることなく発進時での過負荷に起因したエンジンストールの発生を抑制できるようにする。
【解決手段】エンジン回転数がエンジン3のアイドリング回転数に設定した第1設定回転数である場合は、無段変速装置9の変速比が最小変速比よりも大きい変速比に設定した第1変速比になり、又、エンジン回転数が第1設定回転数よりも高速側に設定した第2設定回転数以上の回転数である場合は、無段変速装置9の変速比が最小変速比に維持され、更に、エンジン回転数が第1設定回転数と第2設定回転数との間の回転数である場合は、そのときのエンジン回転数が低いほど無段変速装置9の変速比が第1変速比と最小変速比との間の大きい変速比に変更されるように、車速制御手段27Bがエンジン回転数検出手段62の出力に基づいて変速比変更手段Cの作動を制御するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速装置の変速比を変更する変速比変更手段と前記変速比変更手段の作動を制御する車速制御手段とを備えた作業車の車速制御構造に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の車速制御構造としては、静油圧式無段変速装置のトラニオン軸を操作する変速用の油圧シリンダ(変速比変更手段に相当)、変速用の油圧シリンダの作動を制御する制御装置(車速制御手段に相当)、変速レバーの操作量を検出するポテンショメータ型の速度設定器、及び、トラニオン軸の実回動量を検出するポテンショメータ型のフィードバックセンサを備え、フィードバックセンサの検出値が速度設定器による設定値に合致するように、制御装置が油圧シリンダの作動を制御するように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−23610号公報(段落番号0012、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車では、作業効率の向上などを図るために無段変速装置の変速比を小さい変速比(高速側)に設定しておくことが多く、このような設定状態で作業車を発進させる場合には、エンジン回転数の低い段階から小さい変速比による大きい負荷がエンジンにかかるようになることから、過負荷に起因したエンジンストールが発生し易くなる。そのため、エンジンストールの発生を回避するためにはアクセル操作を慎重に行なう必要があり、特に、負荷が大きくなる登りの傾斜地や作業装置を連結した作業状態などで作業車を発進させる場合には、エンジンストールが発生し易くなる傾向が顕著になってアクセル操作をより慎重に行なう必要があることから、操作性の面で改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、運転者に負担を強いることなく発進時での過負荷に起因したエンジンストールの発生を抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段では、
エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段、無段変速装置の変速比を変更する変速比変更手段、及び、前記変速比変更手段の作動を制御する車速制御手段を備え、
エンジン回転数がエンジンのアイドリング回転数又はアイドリング回転数に近い回転数に設定した第1設定回転数である場合は、前記無段変速装置の変速比が最小変速比よりも大きい変速比に設定した第1変速比になるように、又、エンジン回転数が前記第1設定回転数よりも高速側に設定した第2設定回転数以上の回転数である場合は、前記無段変速装置の変速比が最小変速比に維持されるように、更に、エンジン回転数が前記第1設定回転数と前記第2設定回転数との間の回転数である場合は、そのときのエンジン回転数が低いほど前記無段変速装置の変速比が前記第1変速比と前記最小変速比との間の大きい変速比に変更されるように、前記車速制御手段が前記エンジン回転数検出手段の出力に基づいて前記変速比変更手段の作動を制御するように構成してある。
【0007】
この課題解決手段によると、アクセル操作でエンジン回転数をアイドリング回転数から上昇させて作業車を発進させる場合には、エンジン回転数が第1設定回転数に近い低い回転数であるほど無段変速装置の変速比が低速側の大きい変速比になってエンジンにかかる負荷を軽減することから、無段変速装置の変速比を負荷の大きい高速側の小さい変速比に維持した状態で作業車を発進させる場合に比較して、運転者に負担を強いることなく、発進時での過負荷に起因したエンジン回転数の低下やエンジンストールの発生を効果的に抑制することができ、作業車の発進をスムーズに行なうことができる。
【0008】
又、走行中に走行負荷や作業負荷などに起因してエンジン回転数が第2設定回転数よりも低い回転数に低下した場合には、第2設定回転数からの低下量に応じて無段変速装置の変速比が低速側の大きい変速比になってエンジンにかかる負荷を軽減することから、エンジンに粘りを持たせることができて過負荷に起因したエンジンストールの発生を効果的に抑制することができる。
【0009】
そして、エンジン回転数が第2設定回転数以上に上昇すると、アクセル操作あるいは走行負荷や作業負荷によってエンジン回転数が増減しても、無段変速装置の変速比は最小変速比で一定になることから、車速がエンジン回転数に比例する関係を維持することになる。これにより、無段変速装置により変速していないエンジンからの動力を作業用とすることが一般的な作業車において、ロータリ耕耘作業のように車速と作業装置の作動速度とをそれらがエンジン回転数に比例する一定の関係に維持することが望ましい作業を行う場合には、作業走行時の走行負荷や作業負荷などに起因してエンジン回転数が変化しても、エンジン回転数の変化に応じて車速と作業装置の作動速度とが一定の関係を維持しながら変化することになる。その結果、車速と作業装置の作動速度とを一定の関係を維持することができなくなることに起因して作業装置による作業跡に斑が生じることを防止することができる。
【0010】
しかも、エンジン回転数が第1設定回転数と第2設定回転数との間の回転数である場合は、アクセル操作によってエンジン回転数とともに無段変速装置の変速比が変化することにより、アクセル操作による車速の調節範囲が広くなるとともに、アクセル操作量に対する車速の変化量が大きくなってアクセル操作による加減速が行い易くなることから、移動走行を快適に行うことができる。
【0011】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記第2設定回転数を前記エンジンが最大トルクを発揮する回転数に設定してある。
【0012】
この課題解決手段によると、エンジンが最大トルクを発揮する第2設定回転数から定格回転数にわたる高速側の広い回転数領域において、車速と作業装置の作動速度とをそれらがエンジン回転数に比例する一定の関係を維持することができ、これにより、ロータリ耕耘作業のように車速と作業装置の作動速度とを一定の関係に維持することが望ましい作業を行う場合には、その高速側の広い回転数領域において、作業走行時の走行負荷や作業負荷などに起因してエンジン回転数が変化しても、車速と作業装置の作動速度とを一定の関係に維持することができて、車速と作業装置の作動速度とを一定の関係に維持することができなくなることに起因して作業装置による作業跡に斑が生じることを防止することができる。
【0013】
しかも、第2設定回転数をエンジンが最大トルクを発揮する回転数に設定してあることにより、走行負荷や作業負荷に起因したエンジン回転数の第2設定回転数からの低下を抑制することができて、車速と作業装置の作動速度とを一定の関係に維持する状態を継続し易くなることから、作業装置による作業跡に斑が生じることをより効果的に防止することができる。
【0014】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記第2設定回転数を前記エンジンの定格回転数又は定格回転数に近い回転数に設定してある。
【0015】
この課題解決手段によると、アイドリング回転数又はアイドリング回転数に近い回転数から定格回転数又は定格回転数に近い回転数にわたる広い回転数領域において、アクセル操作によってエンジン回転数とともに無段変速装置の変速比が変化するようになって、アクセル操作による車速の調節範囲が広くなるとともに、アクセル操作による加減速が行い易くなることから、高速での移動走行をも快適に行うことができる。
【0016】
本発明の第4の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記第2設定回転数を前記エンジンが最大トルクを発揮する回転数に設定した第1設定状態と、前記第2設定回転数を前記エンジンの定格回転数又は定格回転数に近い回転数に設定した第2設定状態とに切り換え可能に構成してある。
【0017】
この課題解決手段によると、ロータリ耕耘作業のように車速と作業装置の作動速度とをそれらがエンジン回転数に比例する一定の関係に維持することが望ましい作業を行う場合には第1設定状態に切り換えることにより、エンジンが最大トルクを発揮する第2設定回転数から定格回転数にわたる高速側の広い回転数領域において、車速と作業装置の作動速度とをそれらがエンジン回転数に比例する一定の関係を維持することができ、これにより、作業走行時の走行負荷や作業負荷などに起因してエンジン回転数が変化しても、車速と作業装置の作動速度とを一定の関係に維持することができて、車速と作業装置の作動速度とを一定の関係に維持することができなくなることに起因して作業装置による作業跡に斑が生じることを防止することができる。
【0018】
しかも、第2設定回転数をエンジンが最大トルクを発揮する回転数に設定してあることにより、走行負荷や作業負荷に起因したエンジン回転数の第2設定回転数からの低下を抑制することができて、車速と作業装置の作動速度とを一定の関係に維持する状態を継続し易くなることから、作業装置による作業跡に斑が生じることをより効果的に防止することができる。
【0019】
又、移動走行を行なう場合には第2設定状態に切り換えることにより、アイドリング回転数又はアイドリング回転数に近い回転数から定格回転数又は定格回転数に近い回転数にわたる広い回転数領域において、アクセル操作によってエンジン回転数とともに無段変速装置の変速比が変化するようになって、アクセル操作による車速の調節範囲が広くなるとともに、アクセル操作による加減速が行い易くなることから、高速での移動走行をも快適に行うことができる。
【0020】
本発明の第5の課題解決手段では、上記第4の課題解決手段において、
作業用の変速段と移動用の変速段とに切り換え可能に構成した有段変速装置の変速段を検出する変速段検出手段を備え、
前記有段変速装置の変速段が前記作業用の変速段である場合は前記第1設定状態に切り換わり、前記有段変速装置の変速段が前記移動用の変速段である場合は前記第2設定状態に切り換わるように構成してある。
【0021】
この課題解決手段によると、有段変速装置の変速段を作業用の変速段に切り換えることにより作業走行に適した第1設定状態に切り換えることができ、有段変速装置の変速段を移動用の変速段に切り換えることにより移動走行に適した第2設定状態に切り換えることができ、第1設定状態と第2設定状態とに切り換える手間を省くことができる。
【0022】
本発明の第6の課題解決手段では、上記第1〜5の課題解決手段のいずれか一つにおいて、
前記無段変速装置の最小変速比を設定する変速比設定手段を備え、
前記車速制御手段が、前記変速比設定手段の出力に基づいてエンジン回転数に対応する前記無段変速装置の変速比を補正するように構成してある。
【0023】
この課題解決手段によると、エンジン回転数に対応する無段変速装置の変速比を、変速比設定手段により設定した最小変速比を基準とする運転者の意図を反映した適切なものに補正することができる。
【0024】
本発明の第7の課題解決手段では、上記第1〜6の課題解決手段のいずれか一つにおいて、
エンジン回転数が零よりも大きい回転数である場合は前記無段変速装置が中立にならないように前記車速制御手段が前記エンジン回転数検出手段の出力に基づいて前記変速比変更手段の作動を制御するように構成してある。
【0025】
この課題解決手段によると、エンジンが稼働しているにもかかわらず、エンジン回転数の低下で無段変速装置が中立になって作業車が走行を停止するといった運転者が違和感を覚える虞のある現象の発生を防止することができる。
【0026】
又、走行負荷や作業負荷によってエンジン回転数が第1設定回転数以下に低下しても、無段変速装置が中立にならずに走行状態を維持することから、第1設定回転数以下の低回転数領域においてもエンジンにある程度の粘りを持たせることができて、この粘りを運転者に感じさせることができ、これにより、低回転数領域でのエンジンに対する負荷の掛け過ぎを認識させて、負荷を軽減するための減速操作などの処置を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】トラクタの全体平面図である。
【図3】トラクタの伝動構造を示す概略平面図である。
【図4】制御構成を示すブロック図である。
【図5】主変速装置(HST)の構成及び操作構造を示す概略図である。
【図6】車速制御のフローチャートである。
【図7】前後進切り換え制御のフローチャートである。
【図8】発進停止制御のフローチャートである。
【図9】制動発進停止制御のフローチャートである。
【図10】エンジン回転数と主変速装置の変速比と車速との関係を示す図である。
【図11】車速設定制御のフローチャートである。
【図12】第1切り換え制御のフローチャートである。
【図13】第2切り換え制御のフローチャートである。
【図14】第3切り換え制御のフローチャートである。
【図15】表示パネルの正面図である。
【図16】液晶表示器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車の車速制御構造を作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1及び図2に示すように、トラクタは、左右一対の前輪1を操舵可能かつ駆動可能に装備し、左右一対の後輪2を駆動可能かつ独立制動可能に装備して4輪駆動形式に構成してある。トラクタの前部側にはエンジン3を搭載し、このエンジン3の後部に車体フレーム兼用のトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)4を連結してある。トラクタの後部側には、前輪操舵用のステアリングホイール5や運転座席6などを配備して搭乗運転部7を形成し、門型の保護フレーム8を立設してある。
【0030】
図1及び図3に示すように、このトラクタでは、エンジン3からの動力を走行用の主変速装置9に伝達し、主変速装置9による変速後の動力を走行用とし、主変速装置9を通過する非変速動力を作業用とする。走行用の動力は、走行用の副変速装置10に伝達し、副変速装置10による変速後に前輪駆動用と後輪駆動用とに分岐する。前輪駆動用の動力は、前輪用の伝動切換装置11や前輪用の差動装置12などを介して左右の前輪1に伝達する。後輪駆動用の動力は、後輪用の差動装置13などを介して左右の後輪2に伝達する。作業用の動力は、作業用のクラッチ14や作業用の変速装置15などを介して動力取り出し用のPTO軸16に伝達する。
【0031】
つまり、このトラクタは、エンジン3から主変速装置9への伝動を断続することによって駆動輪である左右の前輪1及び左右の後輪2への伝動とPTO軸16への伝動とを同時に断続する主クラッチを備えないクラッチレス仕様に構成してある。
【0032】
図1及び図2に示すように、搭乗運転部7において、ステアリングホイール5の右下方には、前後揺動式で任意の操作位置に位置保持可能に構成したアクセルレバー17を配備してある。右足元部には、踏み込み操作式で踏み込み解除位置に自動復帰するように構成したアクセルペダル18と左右一対のブレーキペダル19を配備してある。運転座席6の左側方には、前後揺動式で任意の操作位置に位置保持可能に構成した主変速レバー20と、前後揺動式で低速位置と高速位置と高速移動位置の3位置に位置保持可能に構成した副変速レバー21を配備してある。ステアリングホイール5の左下方には、前後揺動式で中立位置と前進位置と後進位置の3位置に位置保持可能に構成した前後進切り換え用のFRレバー22を配備してある。左足元部には、踏み込み操作式で踏み込み解除位置に自動復帰するように構成した停止ペダル23を配備してある。ステアリングホイール5の前下方には、車速などの情報を表示する表示パネル24を配備してある。
【0033】
図4に示すように、エンジン3は、その調速機(図示せず)の調速レバー25を操作するアクセルシリンダ26の作動により、その出力回転数をアイドリング回転数と定格回転数との間で無段階に調節することができる。アクセルシリンダ26には電動シリンダを採用してある。アクセルシリンダ26の作動は、電子制御ユニット(以下、ECUと称する)27に制御プログラムとして備えたアクセル制御手段27Aの制御作動により制御する。
【0034】
ECU27は、CPUやEEPROMなどを備えたマイクロコンピュータを利用して構成してある。ECU27には、アクセルレバー17の操作位置を検出するレバーセンサ28の出力、アクセルペダル18の操作位置を検出するペダルセンサ29の出力、及び、調速レバー25の操作位置を検出するレバーセンサ30の出力を入力してある。アクセルレバー用のレバーセンサ28、アクセルペダル用のペダルセンサ29、及び、調速レバー用のレバーセンサ30には、回転式のポテンショメータを採用してある。
【0035】
アクセル制御手段27Aは、アクセルレバー用のレバーセンサ28の出力、アクセルペダル用のペダルセンサ29の出力、及び、調速レバー用のレバーセンサ30の出力に基づいて、アクセルレバー17の操作位置とアクセルペダル18の操作位置とを比較し、アクセルペダル18の操作位置がアクセルレバー17の操作位置よりも高速側でない場合は、調速レバー25の操作位置がアクセルレバー17の操作位置に対応するようにアクセルシリンダ26の作動を制御する。又、アクセルペダル18の操作位置がアクセルレバー17の操作位置よりも高速側である場合は、調速レバー25の操作位置がアクセルペダル18の操作位置に対応するようにアクセルシリンダ26の作動を制御する。
【0036】
図3及び図5に示すように、主変速装置9には無段変速装置の一例である静油圧式無段変速装置(以下、HSTと称する)を採用してある。HST9は、T/Mケース4に内蔵したアキシャルプランジャー型の可変容量ポンプ31や可変容量モータ32などにより構成してある。そして、HST9を通過する動力(非変速動力)を作業用として可変容量ポンプ31のポンプ軸31Aから出力し、HST9による変速後の動力を走行用として可変容量モータ32のモータ軸32Aから出力する。可変容量ポンプ31と可変容量モータ32は、第1油路33と第2油路34を介して閉回路を形成するように接続してある。この閉回路には、エンジン3からの動力で作動するチャージポンプ35からのオイルを供給してある。
【0037】
図4及び図5に示すように、可変容量ポンプ31は、T/Mケース4の内部に備えたポンプ用の変速シリンダ36の作動により、ポンプ斜板31Bの操作角(可変容量ポンプ31の斜板角)を無段階に変更することができる。変速シリンダ36には、ポンプ斜板31Bの操作角が零になる中立状態に変速シリンダ36を復帰付勢する一対の圧縮バネ37を内蔵した複動型の油圧シリンダを採用してある。変速シリンダ36の作動は、電磁比例弁を利用して構成した前進用の変速弁38と後進用の変速弁39の作動により制御する。これらの変速弁38,39の作動は、ECU27に制御プログラムとして備えた車速制御手段27Bの制御作動により制御する。
【0038】
つまり、ポンプ用の変速シリンダ36、前進用の変速弁38、及び後進用の変速弁39により、車速制御手段27Bの制御作動に基づいて可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bを無段階に操作するポンプ斜板操作手段Aを構成してある。
【0039】
可変容量モータ32は、T/Mケース4の内部に備えたモータ用の低速シリンダ40と高速シリンダ41の作動により、モータ斜板32Bの操作角(可変容量モータ32の斜板角)を低速用の設定角度に設定する低速段と高速用の設定角度に設定する高速段との高低2段に切り換えることができる。低速シリンダ40と高速シリンダ41には単動型の油圧シリンダを採用してある。低速シリンダ40と高速シリンダ41の作動は、パイロット操作式の切換弁を利用して構成した変速弁42の作動により制御する。変速弁42の作動は、電磁比例弁を利用して構成した変速操作弁43の作動により制御する。変速操作弁43の作動は車速制御手段27Bの制御作動により制御する。
【0040】
つまり、モータ用の低速シリンダ40、高速シリンダ41、変速弁42、及び変速操作弁43により、車速制御手段27Bの制御作動に基づいて可変容量モータ32のモータ斜板32Bを高低2段に操作するモータ斜板操作手段Bを構成してある。
【0041】
そして、ポンプ斜板操作手段A及びモータ斜板操作手段Bにより主変速装置9の変速比を変更する変速比変更手段Cを構成してあり、主変速装置9は、車速制御手段27Bの制御作動で変速比変更手段Cの作動を制御してポンプ斜板31B及びモータ斜板32Bの操作角を変更することにより、その変速比を無段階及び有段階に変更することが可能な電子制御式に構成してある。
【0042】
図示は省略するが、副変速装置10には、低速作業用の低速段と高速作業用の高速段と高速移動用の最速段の3段の変速が可能となるように構成したギア式変速装置(有段変速装置)を採用してある。副変速装置10は、副変速レバー21を低速位置に操作すると変速段が低速段に切り換わり、副変速レバー21を高速位置に操作すると変速段が高速段に切り換わり、副変速レバー21を高速移動位置に操作すると変速段が最速段に切り換わるように、副変速用の機械式連係機構を介して副変速レバー21に連係してある。
【0043】
ちなみに、このトラクタでは、エンジン回転数を定格回転数に設定し、主変速装置9の変速比を最速変速比(最小変速比)に設定し、副変速装置10の変速段を低速作業用の低速段に設定したときに得られる低速作業での最大速度が5km/hになり、エンジン回転数を定格回転数に設定し、主変速装置9の変速比を最速変速比に設定し、副変速装置10の変速段を高速作業用の高速段に設定したときに得られる高速作業での最大速度が12km/hになり、エンジン回転数を定格回転数に設定し、主変速装置9の変速比を最速変速比に設定し、副変速装置10の変速段を高速移動用の最速段に設定したときに得られる高速移動での最大速度が30km/hになるように走行伝動系を構成してある。
【0044】
図3に示すように、T/Mケース4における後部側の左右両側部には、対応する後輪2を制動する多板型のサイドブレーキ44を装備してある。左側のサイドブレーキ44は左側のブレーキペダル19に、右側のサイドブレーキ44は右側のブレーキペダル19に、それぞれ、対応するブレーキペダル19の踏み込み操作量に応じた制動力で対応する後輪2を制動するように制動用の機械式連係機構(図示せず)を介して連係してある。
【0045】
この構成により、例えば、ステアリングホイール5を旋回方向に回動操作する旋回走行時に、旋回内側の後輪2に対応する左右いずれかのブレーキペダル19を単独で踏み込み操作することにより、そのときの旋回状態を、ステアリングホイール5の回動操作による通常旋回状態から、この通常旋回状態に加えて旋回内側の後輪2を制動する制動旋回状態に切り換えることができ、車体の旋回半径を小さくすることができる。又、直進走行時に、圃場耕盤の凹凸などの影響により車体の進行方向にズレが生じた場合には、ズレ方向と反対側のブレーキペダル19を単独で踏み込み操作することにより、そのときの走行状態を、直進状態から片ブレーキ走行状態に切り換えることができ、これにより、ステアリング操作系を直進状態に維持しながら車体の進行方向を修正することができる。そして、左右のブレーキペダル19を両踏み操作することにより、左右のサイドブレーキ44を減速停止用のブレーキとして使用することができる。
【0046】
図示は省略するが、左右のブレーキペダル19には、左右のブレーキペダル19を連結して左右のブレーキペダル19の単独操作を阻止する連結状態と、左右のブレーキペダル19の連結を解除して左右のブレーキペダル19の単独操作を可能にする連結解除状態とに切り換え可能に構成した連結機構を装備してある。これにより、副変速装置10の変速段を作業用の低速段や高速段に設定した場合には、連結機構による左右のブレーキペダル19の連結を解除しておくことにより、作業走行時に有用な片ブレーキ走行状態や制動旋回状態への切り換えを可能にすることができる。又、副変速装置10の変速段を高速移動用の最速段に設定した場合には、連結機構により左右のブレーキペダル19を連結しておくことにより、高速移動時でのブレーキペダル19の踏み損ないなどによって走行状態が片ブレーキ走行状態や制動旋回状態に切り換わる虞を未然に回避することができる。
【0047】
図5に示すように、停止ペダル23は、主変速装置9に備えたアンロード弁45に走行停止用の機械式連係機構(図示せず)を介して連係してある。アンロード弁45は、主変速装置9の第1油路33に接続した戻り油路46に備えてあり、停止ペダル23が所定の踏み込み限界領域まで踏み込み操作されていない場合は、第1油路33からのオイルの排出を阻止する遮断状態を維持し、停止ペダル23が所定の踏み込み限界領域まで踏み込み操作されるのに連動して、第1油路33からのオイルの排出を許容する連通状態に切り換わるように構成してある。
【0048】
つまり、停止ペダル23を所定の踏み込み限界領域まで踏み込み操作することにより、主変速装置9の第1油路33からオイルを排出して可変容量ポンプ31から可変容量モータ32への油圧伝動を遮断することができ、車体の走行を停止又は阻止することができる。
【0049】
その結果、左右いずれか一方のブレーキペダル19を踏み込み操作した片ブレーキ走行状態や制動旋回状態において車体を停止させる必要が生じた場合には、停止ペダル23を所定の踏み込み限界領域まで踏み込み操作することにより、左右のブレーキペダル19を片踏み状態から両踏み状態に踏み換える手間を要することなく車体を迅速に停止させることができる。
【0050】
図1及び図4に示すように、T/Mケース2の後部には、トラクタの後部に連結するロータリ耕耘装置や薬剤散布装置などの作業装置(図示せず)の昇降操作を可能にする左右一対のリフトアーム47、及び、対応するリフトアーム47を揺動駆動する左右一対のリフトシリンダ48、などを配備してある。左右のリフトシリンダ48には単動型の油圧シリンダを採用してある。そして、トラクタからの動力で作動するロータリ耕耘装置などの作業装置をトラクタの後部に連結する場合には、PTO軸16から取り出した動力を着脱式の外部伝動機構(図示せず)を介して作業装置に供給することができる。
【0051】
図2〜4に示すように、作業用のクラッチ14は、電磁制御弁を利用して構成したクラッチ弁49の作動により、主変速装置9からの非変速動力を作業用の変速装置15を介してPTO軸16に伝動する入り状態と、その伝動を遮断する切り状態とに切り換わる。クラッチ弁49の作動は、ECU27に制御プログラムとして備えた作業動力制御手段27Cの制御作動により制御する。作業用のクラッチ14には多板型の油圧クラッチを採用してある。
【0052】
ECU27には、PTO軸16に対する伝動の入り切りを設定するPTOスイッチ50の出力、及び、リフトアーム47の揺動角を作業装置の高さとして検出するアームセンサ51の出力、などを入力してあり、作業動力制御手段27Cは、それらの出力などに基づいてクラッチ弁49の作動を制御する。
【0053】
具体的には、作業動力制御手段27Cは、PTOスイッチ50の出力に基づいてPTOスイッチ50の操作位置を判別する。そして、PTOスイッチ50の操作位置が切り位置である場合は、作業用のクラッチ14が切り状態を維持するようにクラッチ弁49の作動を制御する。PTOスイッチ50の操作位置が入り位置である場合は、作業用のクラッチ14が入り状態を維持するようにクラッチ弁49の作動を制御する。PTOスイッチ50の操作位置が自動位置である場合には、リフトアーム用のアームセンサ51の出力に基づいて、リフトアーム47の揺動角が設定角度以上の浮上側の角度領域に達している間は作業用のクラッチ14が切り状態になり、又、リフトアーム47の揺動角が設定角度未満の接地側の角度領域に達している間は作業用のクラッチ14が入り状態になるように、クラッチ弁49の作動を制御する。
【0054】
つまり、作業装置としてPTO軸16からの動力で作動するロータリ耕耘装置などの接地作業式の作業装置を連結している場合には、PTOスイッチ50を自動位置に操作しておくことにより、作業装置の下降操作によりリフトアーム47の揺動角が設定角度未満になるのに連動して作業装置を作動させることができる。又、作業装置の上昇操作によりリフトアーム47の揺動角が設定角度以上になるのに連動して作業装置の作動を停止させることができる。
【0055】
PTOスイッチ50は、搭乗運転部7における運転座席6の右側方の位置に配備してある(図2参照)。PTOスイッチ50には、3位置切り換え式で下方への押圧操作により切り位置に復帰するように構成したダイヤル型の多接点スイッチを採用してある。リフトアーム用のアームセンサ51には回転式のポテンショメータを採用してある。
【0056】
図示は省略するが、作業用の変速装置15には、正逆転の切り換えと正転4段の変速が可能となるように構成したギア式の変速装置を採用してある。作業用の変速装置15は、搭乗運転部7における運転座席6の右側方に配備した作業用の変速レバー52(図2参照)の操作位置に対応して作動状態が切り換わるように、作業変速用の機械式連係機構を介して作業用の変速レバー52に連係してある。作業用の変速レバー52は、前後方向と左右方向とに揺動操作が可能な複合揺動式で位置保持可能に構成してある。
【0057】
図4に示すように、左右のリフトシリンダ48の作動は、電磁制御弁を利用して構成した昇降弁53の作動により制御する。昇降弁53の作動は、ECU27に制御プログラムとして備えた昇降制御手段27Dの制御作動により制御する。
【0058】
ECU27には、高さ設定レバー54の操作位置を作業装置の制御目標高さとして検出するレバーセンサ55の出力、昇降指令レバー56の中立位置から上昇位置又は下降位置への操作を検出するレバーセンサ57の出力、及び、基準位置からの回動操作量を作業装置の制御目標上限位置として出力する上限設定器58の出力、などを入力してある。昇降制御手段27Dは、それらの出力などに基づいて、作業装置を任意の高さ位置に位置させる高さ制御や、この高さ制御に優先して作業装置を設定上限位置まで上昇させる上昇制御、などを行う。
【0059】
高さ制御では、高さ設定レバー用のレバーセンサ55の出力とリフトアーム用のアームセンサ51の出力に基づいて、リフトアーム47の揺動角が高さ設定レバー54の操作位置に対応するように昇降弁53の作動を制御する。
【0060】
上昇制御は、昇降指令レバー56の上昇位置への操作をレバーセンサ57が検出した場合に高さ制御に優先して行う。上昇制御では、上限設定器58の出力とリフトアーム用のアームセンサ51の出力に基づいて、リフトアーム47の揺動角が上限設定器58の基準位置からの回動操作量に対応するように昇降弁53の作動を制御する。そして、昇降指令レバー56の下降位置への操作をレバーセンサ57が検出した場合に、上昇制御の優先を解除して高さ制御を行う。
【0061】
つまり、高さ設定レバー54を操作することにより、作業装置の高さを高さ設定レバー54の操作位置に応じた任意の高さに変更することができる。又、昇降指令レバー56を上昇位置に揺動操作することにより、作業装置の高さを上限設定器58により設定した上限位置に変更することができる。そして、昇降指令レバー56を下降位置に揺動操作することにより、作業装置の高さを高さ設定レバー54の操作位置に応じた任意の高さに戻すことができる。
【0062】
図1及び図2に示すように、高さ設定レバー54は、搭乗運転部7における運転座席6の右側方に配備してあり、前後揺動式で位置保持可能に構成してある。昇降指令レバー56は、搭乗運転部7におけるステアリングホイール5の右下方に配備してあり、上下揺動式で中立復帰型に構成してある。上限設定器58は、搭乗運転部7における運転座席6の右側方に配備してあり、ダイヤル操作式に構成してある。高さ設定レバー用のレバーセンサ55と上限設定器58には回転式のポテンショメータを採用してある。昇降指令レバー用のレバーセンサ57にはスイッチを採用してある。
【0063】
ところで、主変速装置9を構成するHST9は、負荷が大きくなるほどオイルのリークによる油圧のロスが大きくなって動力伝達効率が低下することが知られている。そのため、例えば、主変速装置9におけるポンプ斜板31Bの操作角を検出する斜板角センサを設け、車速制御手段27Bが、主変速レバー20の操作位置に基づいて設定した制御目標操作角に斜板角センサの出力が一致する(制御目標操作角の不感帯幅内に斜板角センサの操作角が収まる)ようにポンプ斜板操作手段Aの作動を制御する斜板フィードバック制御を行うように構成すると、この斜板フィードバック制御によって制御目標操作角にポンプ斜板31Bの操作角を一致させることはできるが、負荷の変動に起因した主変速装置9での動力伝達効率の変動分を補うことはできないことから、この動力伝達効率の変動によって主変速装置9の変速比が安定し難くなり、車速がエンジン回転数に比例する関係を精度良く維持することが難しくなる。
【0064】
これにより、ロータリ耕耘作業のように車速と作業装置の作動速度とをそれらがエンジン回転数に比例する一定の関係に精度良く維持することが望ましい作業を行う場合には、その関係を精度良く維持することができないことで、作業装置の作動速度に対する適正車速と車速とに差が生じ易くなって作業装置による作業跡に斑が生じ易くなることから、作業装置による作業跡を精度良く均一にすることが難しくなる。
【0065】
そこで、このトラクタの車速を制御する車速制御において、車速制御手段27Bが、主変速レバー20の操作位置などに基づいて設定した制御目標車速に車速が一致する(制御目標車速の不感帯幅内に車速が収まる)ように変速比変更手段Cの作動を制御する車速フィードバック制御を行うように構成してある。
【0066】
その構成について詳述すると、図3、図4及び図6に示すように、ECU27には、主変速レバー20の操作位置を検出するレバーセンサ59の出力、副変速レバー21の操作位置を検出するレバーセンサ60の出力、FRレバー22の操作位置を検出するレバーセンサ61の出力、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段であるエンジンセンサ62の出力、主変速装置9の出力回転数を制御上の車速として検出する車速センサ63の出力、停止ペダル23の所定の踏み込み限界領域への到達を検出するペダルセンサ64の出力、及び、左右のブレーキペダル19の踏み込み解除位置からの両踏み操作量を検出するペダルセンサ65の出力を入力してある。又、ECU27には、エンジン回転数と主変速装置9の変速比と車速(主変速装置9の出力回転数)との関係を示す車速設定データを備えてある。
【0067】
主変速レバー用のレバーセンサ59とブレーキペダル用のペダルセンサ65には回転式のポテンショメータを採用してある。副変速レバー用のレバーセンサ60とFRレバー用のレバーセンサ61と停止ペダル用のペダルセンサ64にはスイッチを採用してある。エンジンセンサ62と車速センサ63には電磁ピックアップ式の回転センサを採用してある。車速設定データにはマップデータや関係式などを採用することができる。
【0068】
そして、車速フィードバック制御において、車速制御手段27Bは、先ず、主変速レバー用のレバーセンサ59の出力から主変速レバー20により設定された主変速装置9の変速比(以下、設定変速比と称する)、副変速レバー用のレバーセンサ60の出力から副変速レバー21により設定された副変速装置10の変速段(以下、設定変速段と称する)、エンジンセンサ62の出力、及び、車速設定データに基づいて行われる車速設定制御により決定された車速センサ63の出力に対する制御目標車速(制御目標回転数)を読み込み〔ステップ#1〕、FRレバー用のレバーセンサ61の出力から制御目標車速が前進用か後進用かを読み取る〔ステップ#2〕。次に、車速センサ63の出力を読み込み〔ステップ#3〕、前進用又は後進用の制御目標車速と車速センサ63の出力とを比較する〔ステップ#4,#5〕。そして、前進用又は後進用の制御目標車速に車速センサ63の出力が一致している(前進用又は後進用の制御目標車速の不感帯幅内に車速センサ63が出力する制御上の車速が収まっている)場合は、現在の車速が維持されるように前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39及び変速操作弁43への通電を制御する定速制御を行う〔ステップ#6〕。前進用又は後進用の制御目標車速よりも車速センサ63の出力が小さい場合は、前進用又は後進用の制御目標車速に車速センサ63の出力が一致するように前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39及び変速操作弁43への通電を制御して増速させる増速制御を行う〔ステップ#7〕。前進用又は後進用の制御目標車速よりも車速センサ63の出力が大きい場合は、前進用又は後進用の制御目標車速に車速センサ63の出力が一致するように前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39及び変速操作弁43への通電を制御して減速させる減速制御を行う〔ステップ#8〕。
【0069】
これにより、負荷の増減に伴って変動する油圧のロスに起因した主変速装置(HST)9での動力伝達効率の変動分のみを車速制御手段27Bの制御作動で補うことができ、主変速装置9による変速を精度良く行うことができる。その結果、ロータリ耕耘作業のように車速と作業装置の作動速度とをそれらがエンジン回転数に比例する一定の関係に精度良く維持することが望ましい作業を行う場合には、その関係を主変速装置9での動力伝達効率の変動にかかわらず精度良く維持することができ、作業装置の作動速度に対する適正車速と車速とに差が生じ難くなることから、作業装置による作業跡を精度良く均一に仕上げることができる。
【0070】
図4及び図7に示すように、車速制御手段27Bは、FRレバー用のレバーセンサ61の出力からFRレバー22の操作を検知した場合は、FRレバー22の操作に基づく前後進切り換え制御を行うように構成してある。
【0071】
図7のフローチャートに基づいて前後進切り換え制御について説明すると、車速制御手段27Bは、車速制御手段27Bは、FRレバー用のレバーセンサ61の出力からFRレバー22の操作を検知すると、操作後のFRレバー22の操作位置を判別する〔ステップ#1,#2〕。そして、操作後のFRレバー22の操作位置が中立位置である場合は前進用の変速弁38及び後進用の変速弁39への通電を停止する〔ステップ#3〕。これにより、ポンプ斜板31Bの操作角を零にして主変速装置9を中立にすることができ、車速設定制御により決定された制御目標車速にかかわらず車速センサ63の出力を零にすることができる。操作後のFRレバー22の操作位置が前進位置又は後進位置である場合は、このときの前進位置又は後進位置への操作で所定の走行条件が成立したか否かを判別し〔ステップ#4,#5〕、所定の走行条件が成立した場合は車速フィードバック制御に移行する〔ステップ#6〕。所定の走行条件が成立しなかった場合は前進用の変速弁38及び後進用の変速弁39への通電停止を継続する〔ステップ#7〕。
【0072】
尚、所定の走行条件が成立している状態とは、FRレバー22の操作位置が前進位置又は後進位置であることをFRレバー用のレバーセンサ61が検出し、停止ペダル23の所定の踏み込み限界領域への到達を停止ペダル用のペダルセンサ64が検出しておらず、左右のブレーキペダル19の両踏み込み操作位置が制動解除領域内であることをブレーキペダル用のペダルセンサ65が検出している状態である。
【0073】
図4及び図8に示すように、車速制御手段27Bは、停止ペダル用のペダルセンサ64の出力から停止ペダル23の操作を検知した場合は、停止ペダル23の操作に基づく発進停止制御を行うように構成してある。
【0074】
図8のフローチャートに基づいて発進停止制御について説明すると、車速制御手段27Bは、停止ペダル用のペダルセンサ64の出力から停止ペダル23の操作を検知すると、操作後の停止ペダル23の操作位置を判別する〔ステップ#1〕。そして、操作後の停止ペダル23の操作位置が所定の踏み込み限界領域内である場合は前進用の変速弁38及び後進用の変速弁39への通電を停止する〔ステップ#2〕。これにより、ポンプ斜板31Bの操作角を零にして主変速装置9を中立にすることができ、車速設定制御により決定された制御目標車速にかかわらず車速センサ63の出力を零にすることができる。操作後の停止ペダル23の操作位置が踏み込み限界領域外である場合は、この操作によって所定の走行条件が成立したか否かを判別する〔ステップ#3〕。所定の走行条件が成立した場合は、停止ペダル23の踏み込み限界領域外への操作に連動してアンロード弁45が連通状態から遮断状態に切り換わって主変速装置9の回路圧が設定値まで上昇するのに要する設定時間が経過したか否かを判別する〔ステップ#4〕。そして、設定時間の経過とともに車速フィードバック制御に移行する〔ステップ#5〕。ステップ#3において所定の走行条件が成立しなかった場合は前進用の変速弁38及び後進用の変速弁39への通電停止を継続する〔ステップ#6〕。
【0075】
尚、この発進停止制御での所定の走行条件が成立している状態とは前述した前後進切り換え制御での所定の走行条件が成立している状態と同じ状態である。
【0076】
図4及び図9に示すように、車速制御手段27Bは、ブレーキペダル用のペダルセンサ65の出力から左右のブレーキペダル19の両踏み操作を検知した場合は、左右のブレーキペダル19の両踏み操作に基づく制動発進停止制御を行うように構成してある。
【0077】
図9のフローチャートに基づいて制動発進停止制御について説明すると、車速制御手段27Bは、ブレーキペダル用のペダルセンサ65の出力から左右のブレーキペダル19の両踏み操作を検知すると、先ず、所定の走行条件が成立しているか否かを判別する〔ステップ#1〕。そして、所定の走行条件が成立している場合は、ブレーキペダル用のペダルセンサ65の出力から左右のブレーキペダル19の両踏み操作位置を判別し〔ステップ#2,#3〕、左右のブレーキペダル19の両踏み操作位置が制動解除領域内である場合は車速フィードバック制御を継続する〔ステップ#4〕。左右のブレーキペダル19の両踏み操作位置が制動解除領域に続く制動変速領域内である場合は、車速設定制御により決定された制御目標車速を読み込み〔ステップ#5〕、FRレバー用のレバーセンサ61の出力から制御目標車速が前進用か後進用かを読み取るとともに〔ステップ#6〕、制動変速領域内での左右のブレーキペダル19の両踏み操作量が大きくなるほど車速センサ63の出力が前進用又は後進用の制御目標車速から零に近づくように、前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39への通電を制御してポンプ斜板31Bの操作角を変更する制動変速制御を行う〔ステップ#7〕。左右のブレーキペダル19の両踏み操作位置が制動変速領域に続く停止制動領域内である場合は前進用の変速弁38及び後進用の変速弁39への通電を停止する〔ステップ#8〕。これにより、ポンプ斜板31Bの操作角を零にして主変速装置9を中立にすることができ、車速設定制御により決定された制御目標車速にかかわらず車速センサ63の出力を零にすることができる。ステップ#1において所定の走行条件が成立していない場合は、左右のブレーキペダル19の停止制動領域から制動変速領域への両踏み操作を検知したか否かを判別する〔ステップ#9〕。そして、左右のブレーキペダル19の停止制動領域から制動変速領域への両踏み操作を検知した場合は、この操作によって所定の走行条件が成立したか否かを判別し〔ステップ#10〕、所定の走行条件が成立した場合はステップ#2に移行する。これにより、左右のブレーキペダル19の両踏み操作位置が制動変速領域内である間は制動変速制御を行い、左右のブレーキペダル19が制動解除領域内に復帰するのに伴って車速フィードバック制御を行うことになる。ステップ#9において左右のブレーキペダル19の停止制動領域から制動変速領域への両踏み操作を検知していない場合、及び、ステップ#10において所定の走行条件が成立しなかった場合は、前進用の変速弁38及び後進用の変速弁39への通電停止を継続する〔ステップ#11〕。
【0078】
尚、この制動発進停止制御での所定の走行条件が成立している状態とは前述した前後進切り換え制御及び発進停止制御での所定の走行条件が成立している状態と同じ状態である。
【0079】
図示は省略するが、作業動力制御手段27Cは、停止ペダル用のペダルセンサ64の出力に基づいて停止ペダル23の所定の踏み込み限界領域への操作を検知した場合は、PTOスイッチ50の操作位置やリフトアーム用のアームセンサ51の出力などに基づいて作業用のクラッチ14の状態を判別する。そして、作業用のクラッチ14が切り状態であればこの状態を維持し、作業用のクラッチ14が入り状態であれば、停止ペダル23の踏み込み操作に基づくアンロード弁45の連通状態への切り換えなどによって車体が走行停止した後に作業装置が作動停止するように、停止ペダル23の所定の踏み込み限界領域への操作を検知してから設定時間の経過後に作業用のクラッチ14を切り状態に切り換える。
【0080】
又、停止ペダル23の踏み込み限界領域への操作を検知しなくなるとともに所定の走行条件の成立を検知した場合は、PTOスイッチ50の操作位置やリフトアーム用のアームセンサ51の出力などから作業用のクラッチ14を切り状態から入り状態に切り換えるための条件(以下、作業開始条件と称する)が成立しているか否かを判別する。そして、作業開始条件が成立していれば作業用のクラッチ14を入り状態に切り換え、作業開始条件が成立していなければ作業用のクラッチ14を切り状態に維持する。
【0081】
作業動力制御手段27Cは、ブレーキペダル用のペダルセンサ65の出力に基づいて、停止制動領域の踏み込み限界側に備えた作業停止領域への左右のブレーキペダル19の移動を検知した場合は、PTOスイッチ50の操作位置やリフトアーム用のアームセンサ51の出力などに基づいて作業用のクラッチ14の状態を判別する。そして、作業用のクラッチ14が切り状態であればこの状態を維持し、作業用のクラッチ14が入り状態であれば切り状態に切り換える。
【0082】
又、左右のブレーキペダル19の作業停止領域から作業停止領域外の停止制動領域への移動を検知した場合は、その後の左右のブレーキペダル19の制動解除領域への移動によって所定の走行条件が成立する状態か否かを判別し、所定の走行条件が成立する状態であれば作業開始条件が成立しているか否かを判別し、作業開始条件が成立していれば作業用のクラッチ14を入り状態に切り換え、作業開始条件が成立していなければ作業用のクラッチ14を切り状態に維持する。
【0083】
上述した車速制御手段27B及び作業動力制御手段27Cの制御作動により、主クラッチを備えないクラッチレス仕様に構成しながらも、停止ペダル23の踏み込み操作又は左右のブレーキペダル19の両踏み操作を行うことにより、駆動輪である左右の前輪1と左右の後輪2への伝動とともにPTO軸16への伝動を断続することができる。そして、停止ペダル23の踏み込み操作又は左右のブレーキペダル19の両踏み操作で車体の走行と作業装置の作動を制御する場合には、車体の走行停止後に作業装置が作動を停止し、又、作業装置の作動開始後に車体が走行を開始するようになる。これにより、車体の停止位置や発進位置において適切な作業を確実に行うことができ、特に、作業装置としてロータリ耕耘装置を装備する場合には、車体の停止位置や発進位置における残耕などの発生を防止することができる。
【0084】
図示は省略するが、ブレーキペダル用のペダルセンサ65は、左右のブレーキペダル19に両踏み操作量検出用の機械式連係機構(図示せず)を介して連係してある。両踏み操作量検出用の機械式連係機構は、左右のブレーキペダル19の両踏み操作に連動してペダル踏み込み方向に追従変位するようにバネ付勢した移動部材を備え、左右いずれか一方のブレーキペダル19を片踏み操作した場合には、その一方のブレーキペダル19に対する移動部材の追従変位を移動部材と他方のブレーキペダル19との接当により阻止し、左右のブレーキペダル19を両踏み操作した場合にのみ、移動部材が左右のブレーキペダル19に対して追従変位して、そのときの左右のブレーキペダル19の両踏み操作量をブレーキペダル用のペダルセンサ65に伝えるように構成してある。
【0085】
図10に示すように、ECU27に備えた車速設定データには、作業走行用の第1車速設定データ〔図10の(A)参照〕と高速移動用の第2車速設定データ〔図10の(B)参照〕とがある。各車速設定データでは、主変速レバー20の最速位置に対応する主変速装置9の最速変速比を基準にしてエンジン回転数と主変速装置9の変速比と車速(車速センサ63の出力)との関係を設定してある。
【0086】
各車速設定データについて詳述すると、基本的には第1及び第2車速設定データとも共通して次のように設定してある。エンジン回転数がアイドリング回転数に設定した第1設定回転数N1である場合は、主変速装置9の変速比が低速側の大きい変速比に設定した第1変速比になって車速が予め設定した低い速度になるように設定してある。エンジン回転数が第1設定回転数N1よりも高速側に設定した第2設定回転数N2以上の高回転数領域NHでの回転数である場合は、主変速装置9の変速比が最速変速比に維持されて車速がエンジン回転数に比例するように設定してある。エンジン回転数が第1設定回転数N1と第2設定回転数N2との間の中回転数領域NMでの回転数である場合は、そのときのエンジン回転数が低いほど主変速装置9の変速比が第1変速比と最速変速比との間における低速側の大きい変速比に変更されて車速がエンジン回転数と主変速装置9の変速比とに比例する(車速の変化率が高回転数領域NHでの変化率よりも大きい変化率で一定の変化率になる)ように設定してある。エンジン回転数が第1設定回転数N1以下の低回転数領域NLでの回転数である場合は、エンジン回転数が零よりも大きい回転数であれば主変速装置9が中立にならず車速が零にならないように(車速の変化率が高回転数領域NHでの変化率よりも小さい変化率で一定になるように)エンジン回転数に応じて主変速装置9の変速比が変化するように設定してある。
【0087】
具体的には、第1車速設定データでは、第1設定回転数N1を前述したようにアイドリング回転数に設定してあり、第2設定回転数N2はエンジン3が最大トルクを発揮する回転数に設定してある。そして、エンジン回転数と主変速装置9の変速比と車速との関係を、高回転数領域NHでは、車速が主変速装置9の最速変速比でエンジン回転数に対応するように、車速がエンジン回転数に比例する関係に設定してある。中回転数領域NMでは、エンジン回転数が第1設定回転数(アイドリング回転数)N1に達したときに車速が極低速の設定速度になり、かつ、エンジン回転数が最大トルクを発揮する第2設定回転数N2に達したときに、車速が主変速装置9の最速変速比でエンジン回転数に対応するように、車速がエンジン回転数と主変速装置9の変速比とに比例する関係に設定してある。低回転数領域NLでは、車速が極低速の設定速度で一定になるように、車速がエンジン回転数に反比例する主変速装置9の変速比でエンジン回転数に対応する関係に設定してある〔図10の(A)参照〕。
【0088】
一方、第2車速設定データでは、第1設定回転数N1を前述したようにアイドリング回転数に設定してあり、第2設定回転数N2はエンジン3の定格回転数よりも少し低い回転数に設定してある。そして、エンジン回転数と主変速装置9の変速比と車速との関係を、高回転数領域NHでは、車速が主変速装置9の最速変速比でエンジン回転数に対応するように、車速がエンジン回転数に比例する関係に設定してある。中回転数領域NMでは、エンジン回転数が第1設定回転数(アイドリング回転数)N1に達したときに車速が低速の設定速度になり、かつ、エンジン回転数が定格回転数よりも少し低い定格回転数近くの第2設定回転数N2に達したときに、車速が主変速装置9の最速変速比でエンジン回転数に対応するように、車速がエンジン回転数と主変速装置9の変速比とに比例する関係に設定してある。低回転数領域NLでは、エンジン回転数が第1設定回転数(アイドリング回転数)N1に達したときに車速が低速の設定速度になり、かつ、エンジン回転数が零のときに主変速装置9が中立になって車速が零になるように、車速がエンジン回転数に比例する主変速装置9の変速比でエンジン回転数に対応する関係に設定してある〔図10の(B)参照〕。
【0089】
尚、図10に示す一点鎖線は、低回転数領域NL及び中回転数領域NMにおいて主変速装置9の変速比を最速変速比に維持した状態を想定したものである。
【0090】
又、図10の(B)に示す破線は、可変容量モータ32を低速段に維持した状態で、零から定格回転数の間で変化するエンジン回転数に比例して可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bの操作角を零から操作限界角度に変更した場合に得られる主変速装置9の変速比を想定したものである。つまり、第2車速設定データの低回転数領域NLでの主変速装置9の変速比は、可変容量モータ32を低速段に設定した状態でエンジン回転数に比例して可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bの操作角を変更することによって低回転数領域NLにおいて得ることができる変速比である。
【0091】
車速制御手段27Bは、副変速装置(有段変速装置)10の変速段を検出する変速段検出手段として機能する副変速レバー用のレバーセンサ60の出力に基づいて採用する車速設定データを変更する。具体的には、副変速レバー用のレバーセンサ60の出力に基づいて読み取った副変速装置10の変速段が低速作業用の低速段又は高速作業用の高速段であれば第1車速設定データを採用し、高速移動用の最速段であれば第2車速設定データを採用する。そして、第1車速設定データを採用した状態が第1設定状態となり、第2車速設定データを採用した状態が第2設定状態となる。
【0092】
ECU27には、主変速装置9の最速変速比を基準にして設定した各車速設定データを、任意に設定した主変速レバー20の操作位置に対応する設定変速比を基準とするものに補正するためのゲインを備えてある。
【0093】
車速制御手段27Bは、主変速レバー用のレバーセンサ59の出力から主変速レバー20の操作位置に対応するゲインを読み取り、採用した車速設定データに読み取ったゲインを乗じて、採用した車速設定データを主変速レバー20の操作位置に対応する設定変速比を基準とする適正なものに自動的に補正する。
【0094】
例えば、その一例として、主変速レバー20の操作位置が主変速レバー20の最速位置に対する50%の位置であれば、採用した車速設定データに0.5を乗じて、採用した車速設定データを、その全域にわたって主変速装置9の最速変速比に対する50%の変速比を基準とする適正なもの〔図10において仮想線(二点鎖線)で示す関係が得られるもの〕に自動的に補正する。又、主変速レバー20の操作位置が最速位置であれば、採用した車速設定データに1.0を乗じて、採用した車速設定データを、その全域にわたって主変速装置9の最速変速比を基準とする適正なもの〔図10において実線で示す関係が得られるもの〕に自動的に補正する。
【0095】
これにより、図10の(A)に示すように、適正化後の第1車速設定データでは、エンジン回転数と主変速装置9の変速比と車速との関係が、高回転数領域NHでは、車速が主変速レバー20の操作位置に対応する補正後の主変速装置9の最速変速比(設定変速比)でエンジン回転数に対応するように、車速がエンジン回転数に比例する関係となる。又、中回転数領域NMでは、エンジン回転数が第1設定回転数(アイドリング回転数)N1に達したときに車速が主変速レバー20の操作位置に基づく補正後の極低速の設定速度になり、かつ、エンジン回転数が最大トルクを発揮する第2設定回転数N2に達したときに車速が前述した補正後の主変速装置9の最速変速比でエンジン回転数に対応するように、車速がエンジン回転数と主変速装置9の変速比とに比例する関係となる。低回転数領域NLでは、車速が前述した補正後の極低速の設定速度で一定になるように、車速がエンジン回転数に反比例する主変速装置9の変速比でエンジン回転数に対応する関係となる。
【0096】
一方、図10の(B)に示すように、適正化後の第2車速設定データでは、エンジン回転数と主変速装置9の変速比と車速との関係が、高回転数領域NHでは、車速が主変速レバー20の操作位置に対応する補正後の主変速装置9の最速変速比(設定変速比)でエンジン回転数に対応するように、車速がエンジン回転数に比例する関係となる。又、中回転数領域NMでは、エンジン回転数が第1設定回転数(アイドリング回転数)N1に達したときに車速が主変速レバー20の操作位置に基づく補正後の低速の設定速度になり、かつ、エンジン回転数が定格回転数よりも少し低い第2設定回転数N2に達したときに車速が前述した補正後の主変速装置9の最速変速比でエンジン回転数に対応するように、車速がエンジン回転数と主変速装置9の変速比とに比例する関係となる。低回転数領域NLでは、エンジン回転数が第1設定回転数(アイドリング回転数)N1に達したときに車速が前述した補正後の低速の設定速度になり、かつ、エンジン回転数が零のときに主変速装置9が中立になって車速が零になるように、車速がエンジン回転数に比例する主変速装置9の変速比でエンジン回転数に対応する関係となる。
【0097】
そして、適正化した車速設定データでのエンジン回転数と主変速装置9の変速比と車速との関係が成立するように、適正化後の車速設定データとエンジンセンサ62の出力とに基づいて制御目標車速を設定する。
【0098】
上記の車速設定制御を図11のフローチャートに基づいて説明すると、車速制御手段27Bは、副変速レバー用のレバーセンサ60の出力から副変速装置10の変速段を判別し〔ステップ#1〕、変速段が低速作業用の低速段又は高速作業用の高速段である場合は車速設定データとして作業走行用の第1車速設定データを採用し〔ステップ#2〕、変速段が高速移動用の最速段である場合は車速設定データとして高速移動用の第2車速設定データを採用する〔ステップ#3〕。次に、主変速レバー用のレバーセンサ59の出力から車速設定データに対するゲインを読み取り〔ステップ#4,#5〕、このゲインを採用した車速設定データに乗じて車速設定データを主変速レバー20の操作位置に対応する設定変速比(主変速レバー20により設定された主変速装置9の最速変速比)を基準とする適正なものに自動的に補正する車速設定データの適正化を行なう〔ステップ#6,#7〕。そして、エンジンセンサ62の出力からエンジン回転数を読み込み〔ステップ#8,#9〕、適正化した車速設定データと読み込んだエンジン回転数とに基づいて車速センサ63の出力に対する制御目標車速を決定する〔ステップ#10,#11〕。
【0099】
そして、この車速設定制御で決定した制御目標車速をFRレバー用のレバーセンサ61の出力から前進用又は後進用に設定し、設定した前進用又は後進用の制御目標車速に車速センサ63の出力が一致する(前進用又は後進用の制御目標車速の不感帯幅内に車速センサ63の出力が収まる)ように、変速比変更手段Cの作動を制御し、ポンプ斜板31Bやモータ斜板32Bの操作角を変更して主変速装置9の変速比を変更する車速フィードバック制御を行う。
【0100】
上記の構成から、例えば、主変速レバー20を零速位置から任意の操作位置に操作し、かつ、所定の走行条件を成立させた状態で、アクセルレバー17又はアクセルペダル18によるアクセル操作を行うと、エンジン回転数が中回転数領域NMにある間は、アクセル操作によってエンジン回転数が増減するとともに、この増減するエンジン回転数に比例して主変速装置9の変速比が変化して、車速が高回転数領域NHでの変化率よりも大きい一定の変化率で変化する。
【0101】
これにより、アクセル操作でエンジン回転数をアイドリング回転数から徐々に上昇させて車体を発進させる場合には、エンジン回転数がアイドリング回転数に近いほど主変速装置9の変速比が低速側の大きい変速比になってエンジン3にかかる負荷を軽減することから、主変速装置9の変速比を主変速レバー20の操作位置に対応した設定変速比に維持した状態で車体を発進させる場合に比較して、発進時での過負荷に起因したエンジン回転数の低下やエンジンストールの発生を効果的に抑制することができ、車体の発進をスムーズに行うことができる。
【0102】
又、車体を圃場に出入りさせる畦越え走行や、歩み板を使用して車体をトラックの荷台に積み降ろしする積み降ろし走行などを行う場合には、アクセル操作でエンジン回転数をアイドリング回転数に近づけるほど主変速装置9の変速比が低速側の大きい変速比になってエンジン3にかかる負荷を軽減するとともに車速が大きく低下することから、畦越え走行や積み降ろし走行などを低速で良好に行うことができる。特に、副変速レバー21を低速位置又は高速位置に操作して第1車速設定データを採用すれば、副変速装置10の変速段をトルクの高い低速段又は高速段に設定することができ、車速を極低速に設定できることから、畦越え走行や積み降ろし走行などを高トルクの極低速でより良好に行うことができる。
【0103】
しかも、中回転数領域NMでは、アクセル操作によってエンジン回転数が増減するだけの構成に比較してアクセル操作による車速の調節範囲が広くなり、又、アクセル操作量に対する車速の変化量が大きくなってアクセル操作による加減速が行い易くなることから、中回転数領域NMを利用した移動走行を快適に行うことができる。特に、副変速レバー21を高速移動位置に操作した高速移動状態では、第2設定回転数N2をエンジン3の定格回転数よりも少し低い回転数に設定してある第2車速設定データを採用することにより、アイドリング回転数から定格回転数にわたる領域の略全域においてアクセル操作による加減速が行い易くなることから、高速での移動走行をも快適に行うことができる。
【0104】
一方、エンジン回転数が高回転数領域NHにある間は、アクセル操作や走行負荷あるいは作業負荷によってエンジン回転数が変化しても、主変速装置9の変速比は主変速レバー20の操作位置に対応する設定変速比で一定になることから、車速がエンジン回転数に比例する関係を維持することができる。特に、副変速レバー21を低速位置又は高速位置に操作した作業走行状態では、エンジン3が最大トルクを発揮する回転数を第2設定回転数N2に設定してある第1車速設定データを採用することにより、高回転数領域NHが、エンジン3が最大トルクを発揮する第2設定回転数N2から定格回転数にわたる広い領域になり、この広い高回転数領域NHにおいて車速がエンジン回転数に比例する関係を維持することができる。これにより、PTO軸16から取り出したエンジン3からの非変速動力で作動するロータリ耕耘装置などの作業装置を車体の後部に連結して作業を行う場合には、副変速レバー21を低速位置又は高速位置に操作しておけば、エンジン3が最大トルクを発揮する第2設定回転数N2から定格回転数にわたる広い高回転数領域NHにおいて、車速と作業装置の作動速度とをそれらがエンジン回転数に比例する一定の関係に維持することができる。その結果、車速と作業装置の作動速度とを一定の関係に維持することができなくなることに起因して作業装置による作業跡に斑が生じることを防止することができ、作業装置による作業跡を均一に作業を施した良好な状態に仕上げることができる。特に、車体の後部にロータリ耕耘装置を連結して耕耘作業を行う場合には、ロータリ耕耘装置による耕耘跡を均一に耕した良好な耕耘状態に仕上げることができる。
【0105】
そして、走行負荷や作業負荷などに起因してエンジン回転数が高回転数領域NHから中回転数領域NMに低下した場合には、中回転数領域NMでのエンジン回転数の低下とともに主変速装置9の変速比が低速側の大きい変速比になってエンジン3にかかる負荷を軽減することから、エンジン3に粘りを持たせることができ、過負荷によるエンジン回転数の低下やエンジンストールの発生を効果的に抑制することができる。又、これにより、エンジン回転数を高回転数領域NHに維持した状態での左右のブレーキペダル19又は停止ペダル23の踏み込み解除操作あるいはFRレバー22の中立位置から前進位置又は後進位置への揺動操作で車体を発進させる場合に、そのときの走行負荷や作業負荷などに起因してエンジン回転数が低下しても、中回転数領域NMまで低下すればエンジン3に粘りを持たせることができて過負荷によるエンジン回転数の低下やエンジンストールの発生を効果的に抑制できることから、左右のブレーキペダル19や停止ペダル23あるいはFRレバー22を利用した車体の発進をスムーズに行うことができる。
【0106】
更に、走行負荷や作業負荷などに起因してエンジン回転数が低回転数領域NLまで低下した場合には、作業走行時に採用する第1車速設定データでは車速が極低速の設定速度で一定になり、又、高速移動時に採用する第2車速設定データではエンジン回転数が零のときに車速が零になるように設定していることから、エンジン回転数が零に低下するまでの間で主変速装置9が中立になることはなく、これにより、エンジン3が稼働しているにもかかわらずエンジン回転数の低下で主変速装置9が中立になって車体が走行停止するといった運転者が違和感を覚える虞のある現象の発生を防止することができる。
【0107】
その上、低回転数領域NLでは低速又は極低速の走行状態を維持することから、低回転数領域NLにおいてもエンジン3にある程度の粘りを持たせることができ、この粘りにより、運転者に、低回転数領域NLでのエンジン3に対する負荷の掛け過ぎを認識させて、負荷を軽減するための主変速レバー20の減速操作などの何らかの処置を促すことができる。そして、何の処置も行なわれなかった場合には過負荷によるエンジンストールが発生して低回転数領域NLでのエンジン3に対する負荷の掛け過ぎを運転者に再認識させることができる。
【0108】
尚、この実施形態では、主変速レバー20及び主変速レバー用のレバーセンサ59により、主変速装置(無段変速装置)9の最速変速比(最小変速比)を設定する変速比設定手段Dを構成してある。
【0109】
ちなみに、車速制御に関する構成としては、上記の構成に代えて、主変速装置9の変速比と副変速装置10の変速比を合わせたものを走行用の変速装置の変速比とし、車速設定データとして、エンジン回転数と走行用の変速装置の変速比と車速(副変速装置10の出力回転数)との関係を示すものを採用し、副変速装置10の出力回転数を制御上の車速として検出する車速センサを備える構成としてもよい。又、主変速装置9の変速比、副変速装置10の変速比、及び、後輪用の差動装置13などによる最終減速比、などを合わせたものを後輪伝動系の変速比とし、車速設定データとして、エンジン回転数と後輪伝動系の変速比と車速との関係を示すものを採用する構成としてもよい。
【0110】
図4及び図12〜13に示すように、車速制御手段27Bには、主変速レバー20の操作位置やエンジン回転数などに基づいて設定される主変速装置9の変速比を判定する変速比判定手段27Ba、エンジン回転数の設定回転数からの低下量(以下、エンジンドロップ量と称する)を検出する低下量検出手段27Bb、主変速レバー用のレバーセンサ59の出力に基づいて可変容量モータ32の変速段を切り換える第1切換制御手段27Bc、変速比判定手段27Baの判定に基づいて可変容量モータ32の変速段を切り換える第2切換制御手段27Bd、及び、低下量検出手段27Bbの出力に基づいて可変容量モータ32の変速段を切り換える第3切換制御手段27Beを備えてある。
【0111】
そして、車速制御手段27Bは、副変速レバー用のレバーセンサ60の出力から読み取った副変速装置10の変速段に応じて、可変容量モータ32の変速段の切り換えに関する制御作動を切り換えるように構成してある。具体的には、車速制御手段27Bは、副変速装置10の変速段が低速作業用の低速段である場合は第1切換制御手段27Bcを作動させ、副変速装置10の変速段が高速作業用の高速段である場合は第1切換制御手段27Bc及び第3切換制御手段27Beを作動させ、副変速装置10の変速段が高速移動用の最速段である場合は第2切換制御手段27Bd及び第3切換制御手段27Beを作動させる。
【0112】
尚、変速比判定手段27Baは、採用している適正化後の車速設定データ(主変速レバー20の操作位置に基づいて補正した車速設定データ)とエンジンセンサ62の出力に基づいて設定した制御目標車速が可変容量モータ32の低速段で得ることが可能な速度の限界値を超えているか否かを判定することで、主変速レバー20の操作位置やエンジン回転数などに基づいて設定される主変速装置9の変速比が可変容量モータ32の低速段で得ることが可能な変速比か否かを判定するように構成してある。
【0113】
低下量検出手段27Bbは、調速レバー用のレバーセンサ30の出力に基づいてアクセルレバー17又はアクセルペダル18で設定されたエンジン3の設定回転数を読み取り、読み取ったエンジン3の設定回転数とエンジンセンサ62の出力に基づいてエンジンドロップ量を演算する。
【0114】
図12のフローチャートに基づいて第1切換制御手段27Bcの制御作動で可変容量モータ32の変速段を切り換える第1切り換え制御について説明すると、第1切換制御手段27Bcは、主変速レバー用のレバーセンサ59の出力に基づいて主変速レバー20の操作位置を判別する〔ステップ#1,#2〕。そして、主変速レバー20の操作位置が零速位置を含む低速設定領域内である場合は、可変容量モータ32の変速段が低速段に維持されるように変速操作弁43への通電停止を継続する〔ステップ#3〕。主変速レバー20の操作位置が最速位置を含む高速設定領域内である場合は、可変容量モータ32の変速段が高速段に維持されるように変速操作弁43への通電を継続する〔ステップ#4〕。主変速レバー20の操作位置が低速設定領域と高速設定領域との間の中速設定領域内である場合は、中速設定領域への操作過程を判別し〔ステップ#5〕、低速設定領域からの操作で中速設定領域に位置している場合は可変容量モータ32の変速段が低速段に維持され、高速設定領域からの操作で中速設定領域に位置している場合は可変容量モータ32の変速段が高速段に維持されるように変速操作弁43への通電を制御する〔ステップ#3,4〕。又、可変容量モータ32の変速段が低速段である場合は、主変速レバー用のレバーセンサ59の出力に基づいて主変速レバー20の中速設定領域から高速設定領域への操作の有無を判別し〔ステップ#6〕、高速設定領域への操作を検知した場合は、可変容量モータ32の変速段が低速段から高速段に切り換わるように変速操作弁43への通電を開始するとともに〔ステップ#7〕、可変容量モータ32の低速段から高速段への切り換えによって変化する主変速装置9の変速比の増速分を補うように設定した操作量で可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bが減速操作されるように前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39への通電を制御する〔ステップ#8〕。可変容量モータ32の変速段が高速段である場合は、主変速レバー用のレバーセンサ59の出力に基づいて主変速レバー20の中速設定領域から低速設定領域への操作の有無を判別し〔ステップ#9〕、低速設定領域への操作を検知した場合は、可変容量モータ32の変速段が高速段から低速段に切り換わるように変速操作弁43への通電を停止するとともに〔ステップ#10〕、可変容量モータ32の高速段から低速段への切り換えによって変化する主変速装置9の変速比の減速分を補うように設定した操作量で可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bが増速操作されるように前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39への通電を制御する〔ステップ#11〕。
【0115】
図13のフローチャートに基づいて第2切換制御手段27Bdの制御作動で可変容量モータ32の変速段を切り換える第2切り換え制御について説明すると、第2切換制御手段27Bdは、変速比判定手段27Baの判定に基づいて、採用している適正化後の車速設定データとエンジンセンサ62の出力に基づいて決定した制御目標車速が可変容量モータ32の低速段で得ることが可能な速度の限界値を超えているか否かを判別する〔ステップ#1〕。そして、制御目標車速が限界値を超えていない場合は制御目標車速が速度の限界値を超えたか否かを判別し〔ステップ#2〕、速度の限界値を超えていない場合は、可変容量モータ32の変速段が低速段に維持されるように変速操作弁43への通電停止を継続する〔ステップ#3〕。制御目標車速が限界値を超えた場合は、可変容量モータ32の変速段が低速段から高速段に切り換わるように変速操作弁43への通電を開始するとともに〔ステップ#4〕、可変容量モータ32の低速段から高速段への切り換えによって変化する主変速装置9の変速比の増速分を補うように設定した操作量で可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bが減速操作されるように前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39への通電を制御する〔ステップ#5〕。ステップ#1において制御目標車速が速度の限界値を超えている場合は速度の限界値以下に低下したか否かを判別し〔ステップ#6〕、速度の限界値以下に低下していない場合は、可変容量モータ32の変速段が高速段に維持されるように変速操作弁43への通電を継続する〔ステップ#7〕。制御目標車速が限界値以下に低下した場合は、可変容量モータ32の変速段が高速段から低速段に切り換わるように変速操作弁43への通電を停止するとともに〔ステップ#8〕、可変容量モータ32の高速段から低速段への切り換えによって変化する主変速装置9の変速比の減速分を補うように設定した操作量で可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bが増速操作されるように前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39への通電を制御する〔ステップ#9〕。
【0116】
図14のフローチャートに基づいて第3切換制御手段27Beの制御作動で可変容量モータ32の変速段を切り換える第3切り換え制御について説明すると、第3切換制御手段27Beは、変速操作弁43に対する通電状態から可変容量モータ32の変速段を判別する〔ステップ#1〕。そして、変速段が高速段である場合に、低下量検出手段27Bbの出力からエンジンドロップ量を監視し〔ステップ#2〕、エンジンドロップ量が設定量(例えば設定回転数の20%の値)に達したか否かを判別し〔ステップ#3〕、エンジンドロップ量が設定量に達した場合に、可変容量モータ32の変速段が高速段から低速段に切り換わるように変速操作弁43への通電を停止する〔ステップ#4〕。その後、エンジンドロップ量が所定の許容範囲内まで回復したか否かを判別し〔ステップ#5〕、所定の許容範囲内まで回復した場合に、可変容量モータ32の変速段が高速段から低速段に切り換わるように変速操作弁43への通電を開始する〔ステップ#6〕。
【0117】
上記の構成から、副変速装置10の変速段を低速段に設定した低速作業状態や高速段に設定した高速作業状態において、重負荷作業などをより快適に行えるようにするために、より高いトルクを確保したい場合には、主変速レバー20を低速設定領域又は低速設定領域から中速設定領域に位置させることにより、可変容量モータ32の変速段を低速段に設定することができ、より高いトルクを確保することができる。これにより、重負荷作業時などでの車体の発進や走行などをスムーズに行うことができ、重負荷作業などをより快適に行うことができる。
【0118】
そして、副変速装置10の変速段を低速段に設定する低速作業状態では、その変速段によって高いトルクを確保していることで過負荷に起因したエンジン回転数の低下やエンジンストールが発生し難くなっていることから、主変速装置9における可変容量モータ32の高低切り換えは、運転者の意思による主変速レバー20の操作によってのみ行えるようにしてある。これにより、低速作業状態において作業効率の向上を図るために主変速装置9の可変容量モータ32を高速段に切り換えた場合であっても、エンジン回転数の低下によって可変容量モータ32の変速段が不測に高速段から低速段に切り換わることはなく、エンジン回転数が高回転数領域NH内であれば、作業を考慮した運転者の意思に基づく主変速レバー20やアクセルレバー17又はアクセルペダル18の操作で設定した主変速装置9の変速比を維持することができる。そして、エンジン回転数の低下が著しい場合には、運転者の意思による主変速レバー20の操作で主変速装置9の可変容量モータ32を低速段に切り換えることができ、エンジン回転数の低下を抑制あるいは防止することができる。その結果、ロータリ耕耘作業のように車速と作業装置の作動速度とをそれらがエンジン回転数に比例する一定の関係に維持することが望ましい作業を良好に行うことができる。
【0119】
又、副変速装置10の変速段を高速段に設定する高速作業状態では、その変速段によって比較的高いトルクを確保しているものの、低速段である場合に比較して過負荷に起因したエンジン回転数の低下やエンジンストールが発生し易いことから、主変速装置9における可変容量モータ32の高低切り換えは、運転者の意思による主変速レバー20の操作だけでなく、エンジンドロップ量に基づいて自動的に行われるようにしてある。これにより、主変速装置9における可変容量モータ32の高低切り換えを作業に応じた運転者の意思に基づいて行えるようにしながらも、過負荷に起因したエンジンストールの発生を防止することができる。
【0120】
更に、低速作業状態と高速作業状態のいずれにおいても、主変速装置9の変速比を低速側の大きい変速比に設定する低速走行時には、可変容量モータ32の変速段が低速段になることにより、可変容量ポンプ31におけるポンプ斜板31Bの操作角として油圧伝達効率の高い高速側の大きい角度を採用することができ、結果、低速走行時での車速を安定させることができる。
【0121】
しかも、中速設定領域においてヒステリシスを持たせていることから、主変速レバー20の操作で可変容量モータ32の高低切り換えが頻繁に行われることを防止することができる。
【0122】
一方、副変速装置10の変速段を最速段に設定する高速移動状態では、その変速段によってトルクが低くなっていることから、制御目標車速が可変容量モータ32の低速段で得ることが可能な速度である限り、可変容量モータ32の変速段を低速段に維持して高いトルクを確保するようにしてある。これにより、副変速装置10の変速段を最速段に設定した高速移動状態での車体の発進時や走行中における過負荷に起因したエンジン回転数の低下やエンジンストールの発生を効果的に抑制することができる。又、できる限り可変容量モータ32を低速段に維持することにより、ポンプ斜板31Bの操作角として油圧伝達効率の高い大きい角度をより広い変速領域で使用することができ、これにより、副変速装置10の変速段を最速段に設定した高速移動状態での発進時や走行中における主変速装置9での油圧伝達効率を向上させることができ、高速移動状態での車体の発進時や走行中における過負荷に起因したエンジン回転数の低下やエンジンストールの発生をより効果的に抑制することができる。
【0123】
しかも、第1切換制御手段27Bc又は第2切換制御手段27Bdの制御作動で可変容量モータ32の変速段を切り換える場合には、その切り換えによって変化する主変速装置9の変速比の変化分を補うように設定した操作量でポンプ斜板31Bを操作することから、主変速レバー20やアクセルレバー17又はアクセルペダル18を操作して主変速装置9の変速比を変更する変速操作を、可変容量モータ32の変速段の切り換えが行われた場合であっても無段階でスムーズに行うことができる。
【0124】
そして、副変速装置10の変速段を低速段に設定する低速作業状態、高速段に設定する高速作業状態、及び、最速段に設定する高速移動状態のそれぞれに適した可変容量モータ32の変速段の切り換えに関する制御作動の選択を、副変速レバー21による副変速装置10の変速段の切り換えとともに自動的に行うことができる。
【0125】
ちなみに、主変速レバー20の中速設定領域は、可変容量モータ32の変速段を低速段と高速段のいずれに切り換えた場合でも得ることが可能な主変速装置9の変速比を主変速レバー20により設定することができる領域である。又、可変容量モータ32の低速段で得ることが可能な速度とは、可変容量モータ32の変速段を低速段に設定した状態で可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bの操作角を零から操作限界角度に変更することによって得ることができる変速比と、この変速比に第2車速設定データで対応するエンジン回転数とで得ることができる速度であり、この速度の限界値は、可変容量モータ32の変速段を低速段に設定した状態で可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bの操作角を操作限界角度に変更することによって得ることができる低速段での最速変速比と、この最速変速比に第2車速設定データで対応するエンジン回転数とで得ることができる速度である。
【0126】
尚、第1切換制御手段27Bcの制御作動においては、第1切換制御手段27Bcが、主変速レバー用のレバーセンサ59の出力に基づいて、主変速レバー20の低速設定領域から中速設定領域への操作を検知した場合に、可変容量モータ32の変速段が低速段から高速段に切り換わるように変速操作弁43への通電を開始するとともに、可変容量モータ32の低速段から高速段への切り換えによって変化する主変速装置9の変速比の増速分を補うように設定した操作量で可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bが減速操作されるように前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39への通電を制御し、主変速レバー20の中速設定領域から高速設定領域への操作を検知した場合は可変容量モータ32の変速段が高速段に維持されるように変速操作弁43への通電を制御し、主変速レバー20の高速設定領域から中速設定領域への操作を検知した場合に、可変容量モータ32の変速段が高速段から低速段に切り換わるように変速操作弁43への通電を停止するとともに、可変容量モータ32の高速段から低速段への切り換えによって変化する主変速装置9の変速比の減速分を補うように設定した操作量で可変容量ポンプ31のポンプ斜板31Bが増速操作されるように前進用の変速弁38又は後進用の変速弁39への通電を制御し、主変速レバー20の中速設定領域から低速設定領域への操作を検知した場合は可変容量モータ32の変速段が低速段に維持されるように変速操作弁43への通電を停止するように構成してもよい。
【0127】
図4、図15及び図16に示すように、表示パネル24には、エンジン回転数を表示するタコメータ66や車速などを表示する液晶表示器67などを備えてある。液晶表示器67には、車速を文字表示する車速表示部67A、主変速装置9の変速段を文字表示する主変速段表示部67B、可変容量モータ32の変速段を文字表示するモータ変速段表示部67C、副変速装置10の変速段を文字表示する副変速段表示部67D、及び、任意に設定された車速を文字表示する設定車速表示部67E、などを備えてある。液晶表示器67の作動は、ECU27に制御プログラムとして備えた表示制御手段27Eの制御作動により制御する。
【0128】
車速表示部67Aは、液晶表示器67における中段下部の右側部分に配置してある。主変速段表示部67Bは、車速表示部67Aから離れるように液晶表示器67における上段の左側部分に配置してある。モータ変速段表示部67Cは、車速表示部67Aと主変速段表示部67Bとの間に位置するように液晶表示器67における中段上部の左側部分に配置してある。副変速段表示部67Dは、液晶表示器67における主変速段表示部67Bの左側に隣接配置してある。設定車速表示部67Eは、車速表示部67Aの下方に位置するように液晶表示器67における下段の右側部分に配置してある。
【0129】
表示制御手段27Eは、車速センサ63が出力する主変速装置9の出力回転数、副変速レバー用のレバーセンサ60の出力から読み取った副変速装置10の設定変速段での変速比、及び、車速の演算に関する固定データである後輪用の差動装置13などによる最終減速比と後輪2の外周の長さに基づいて実際の車速(以下、実車速と称する)を演算する車速演算部27Eaを備え、この車速演算部27Eaが出力する実車速を車速表示部67Aに表示する。
【0130】
表示制御手段27Eは、エンジン3の定格回転数、主変速レバー用のレバーセンサ59の出力に基づく車速制御手段27Bの制御作動で適正化された車速設定データ(主変速装置9の設定変速比)、副変速装置10の設定変速段での変速比、最終減速比、及び、後輪2の外周の長さに基づいて、主変速レバー20及び副変速レバー21により任意に設定した変速状態でエンジン回転数が定格回転数に達したときに得られる理論上の車速である定格車速を演算する定格車速演算部27Ebを備え、この定格車速演算部27Ebが出力する定格車速を主変速装置9の変速段として単位のない状態で主変速段表示部67Bに表示する。
【0131】
表示制御手段27Eは、可変容量モータ32の変速段を車速制御手段27Bの制御作動から読み取ってモータ変速段表示部67Cに表示する。又、副変速装置10の変速段を副変速レバー用のレバーセンサ60の出力から読み取って副変速段表示部67Dに表示する。
【0132】
表示制御手段27Eは、調速レバー用のレバーセンサ30の出力から読み取ったエンジン3の設定回転数、この設定回転数と車速制御手段27Bが採用している適正化後の車速設定データとから決まる主変速装置9の変速比、副変速装置10の設定変速段での変速比、最終減速比、及び、後輪2の外周の長さに基づいて、主変速レバー20及び副変速レバー21により任意に設定した変速状態でエンジン回転数が任意に設定した設定回転数に達したときに得られる理論上の車速である設定車速を演算する設定車速演算部27Ecを備え、この設定車速演算部27Ecが出力する設定車速を設定車速表示部67Eに表示する。
【0133】
各表示部67A〜67Eでの表示は、具体的には、演算した車速が10km/hであれば「10.0km」を、4.5km/hであれば「4.5km」を車速表示部67Aに表示する。演算した定格車速が12km/hであれば「12.0」を、6km/hであれば「6.0」を主変速装置9の変速段として主変速段表示部67Bに表示する。車速制御手段27Bの制御作動から読み取った可変容量モータ32の変速段が低速段であれば「L」を、高速段であれば「H」をモータ変速段表示部67Cに表示する。副変速レバー用のレバーセンサ60の出力から読み取った副変速装置10の変速段が作業用の低速段であれば「低」を、作業用の高速段であれば「高」を、高速移動用の最速段であれば「高速」を副変速段表示部67Dに表示する。演算した設定車速が10km/hであれば「10.0km」を、4.5km/hであれば「4.5km」を設定車速表示部67Eに表示する。そして、設定車速表示部67Eでの表示は、車速が変わる操作が行われた場合に、そのときの設定車速を設定時間(例えば5秒)の間だけ表示する割り込み表示としてある。
【0134】
ちなみに、ここでいう車速が変わる操作(車速を変える操作)とは、アクセルレバー17の操作、アクセルペダル18の操作、左右のブレーキペダル19の両踏み操作、主変速レバー20の操作、副変速レバー21の操作、FRレバー22の操作、及び、停止ペダル23の操作である。
【0135】
上記の構成から、主変速レバー20を操作して主変速装置9の設定変速比を変更すると、主変速段表示部67Bに表示される主変速装置9の変速段が主変速レバー20の操作位置に応じて連続的に変化することから、主変速レバー20による主変速装置9の変速比の設定が行い易くなる。そして、主変速段表示部67Bに表示される主変速装置9の変速段は、主変速レバー20及び副変速レバー21により設定した変速状態でアクセル操作を最大にしたときに得られる最高速度と一致する定格車速であることから、各変速状態での最高速度を記した車速表を用いることなく作業条件に応じた車速設定を容易に行うことができる。又、主変速段表示部67Bに表示される主変速装置9の変速段が定格車速であることにより、副変速装置10の変速段を変更すると、変更した副変速装置10の変速段に応じて主変速段表示部67Bでの表示レンジが自動的に切り換わることから、副変速装置10の変速段の切り換えを含めた作業条件に応じた車速設定が行い易くなり、しかも、主変速段表示部67Bと副変速段表示部67Dとが左右に隣接して位置することから、主変速装置9の変速段と副変速装置10の変速段との関連性が把握し易くなる。その上、車速表示部67Aから離れた位置に主変速段表示部67Bを配置し、かつ、車速表示部67Aと主変速段表示部67Bとの間にモータ変速段表示部67Cを配置し、更に、主変速段表示部67Bでの表示に単位を付けないことにより、アクセル操作を最大にすることで車速表示部67Aに表示される実車速と主変速段表示部67Bに表示される主変速装置9の変速段とが同じ値になったとしても、それらの表示内容を簡単に見分けることができる。
【0136】
又、設定車速表示部67Eでは、アクセルレバー17や主変速レバー20などによる車速設定操作を行うと、アクセルレバー17又はアクセルペダル18の操作位置と主変速レバー20及び副変速レバー21の操作位置とから決まる設定車速(車速設定操作から予想される到達車速)が即座に表示されるとともに、表示される設定車速が車速設定操作に応じて連続的に変化することから、例えば任意のエンジン回転数及び車速で作業を行う場合などにおける車速の設定を、走行中や停止中にかかわらず簡単に素早く行うことができる。そして、設定車速表示部67Eでの表示を車速が変わる操作が行われた場合の割り込み表示としていることにより、設定車速表示部67Eでの表示の意味を運転者に明確に認識させることができ、しかも、車速表示部67Aに表示される車速と設定車速表示部67Eに表示される設定車速とが同じになる設定車速での走行中は設定車速表示部67Eでの表示が行われないことから、液晶表示器67において同じ値(速度)が上下に並んで無駄に表示されることを防止することができる。
【0137】
更に、モータ変速段表示部67Cにおいて可変容量モータ32の変速段を表示することにより、主変速レバー20の操作や車速の増減などによって切り換わる可変容量モータ32の変速段を運転者に容易に認識させることができる。
【0138】
〔別実施形態〕
【0139】
〔1〕作業車としては、乗用田植機やコンバインなどの農作業車、乗用草刈機、又は、ホイールローダなどの建設作業車などであってもよい。
【0140】
〔2〕作業車としては、有段変速装置10を備えていない構成のもの、左右の後輪2を独立して変速する左右一対の無段変速装置9を備えるように構成したもの、主クラッチを備えるように構成したもの、あるいは、前後進切り換え専用の前後進切換機構を備えるように構成したものなどであってもよい。
【0141】
〔3〕無段変速装置9としては、可変容量モータ32を3段以上に変速可能に構成したHST、定容量モータを備えたHST、ベルト式無段変速装置、又は、HSTと遊星歯車とを組み合わせて構成した油圧機械式無段変速装置(HMT)などであってもよい。
【0142】
〔4〕変速比変更手段Cの構成は採用する無段変速装置9に応じて種々の変更が可能であり、例えば、無段変速装置9に定容量モータを備えたHSTを採用する場合、変速比変更手段Cはポンプ斜板操作手段Aのみを備える構成となる。
【0143】
〔5〕有段変速装置10としては、作業用の低速段と移動用の高速段の2段の変速が可能となるように構成したものであってもよい。
【0144】
〔6〕有段変速用の変速段検出手段60としては、有段変速装置10に備えた変速段切り換え用のシフト部材の操作位置を検出するように構成したものなどであってもよい。
【0145】
〔7〕車速制御手段27Bとしては、例えば、ポンプ斜板31Bの操作角を検出する斜板角センサの出力が、主変速レバー20の操作位置に基づいて設定した制御目標操作角に一致する(斜板角センサの操作角が制御目標操作角の不感帯幅内に収まる)ようにポンプ斜板操作手段Aの作動を制御する斜板フィードバック制御を行うように構成したものであってもよい。
【0146】
〔8〕車速制御手段27Bとしては、変速比設定手段Dの出力に基づいて中回転数領域NM及び高回転数領域NHでのエンジン回転数に対応する無段変速装置9の変速比を補正するように構成したものであってもよい。
【0147】
〔9〕車速設定データにおける第1設定回転数をアイドリング回転数に近い回転数に設定してもよい。又、第1車速設定データにおける第2設定回転数をエンジン3が最大トルクを発揮する回転数に近い回転数に設定してもよい。更に、車速設定データにおける第1変速比及び第2設定回転数を作業車の種類や装備する作業装置に応じて変更するように構成してもよい。
【0148】
〔10〕第1車速設定データを採用する第1設定状態と第2車速設定データを採用する第2設定状態とに車速設定状態を切り換えるスイッチなどの操作具を備えるように構成してもよい。
【0149】
〔11〕低速作業専用の車速設定データと高速作業専用の車速設定データとを備えるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明に係る作業車の車速制御構造は、無段変速装置の変速比を変更する変速比変更手段と変速比変更手段の作動を制御する車速制御手段とを備えたトラクタ、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0151】
9 無段変速装置
10 有段変速装置
27B 車速制御手段
60 変速段検出手段
62 エンジン回転数検出手段
C 変速比変更手段
D 変速比設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段、無段変速装置の変速比を変更する変速比変更手段、及び、前記変速比変更手段の作動を制御する車速制御手段を備え、
エンジン回転数がエンジンのアイドリング回転数又はアイドリング回転数に近い回転数に設定した第1設定回転数である場合は、前記無段変速装置の変速比が最小変速比よりも大きい変速比に設定した第1変速比になるように、又、エンジン回転数が前記第1設定回転数よりも高速側に設定した第2設定回転数以上の回転数である場合は、前記無段変速装置の変速比が最小変速比に維持されるように、更に、エンジン回転数が前記第1設定回転数と前記第2設定回転数との間の回転数である場合は、そのときのエンジン回転数が低いほど前記無段変速装置の変速比が前記第1変速比と前記最小変速比との間の大きい変速比に変更されるように、前記車速制御手段が前記エンジン回転数検出手段の出力に基づいて前記変速比変更手段の作動を制御するように構成してある作業車の車速制御構造。
【請求項2】
前記第2設定回転数を前記エンジンが最大トルクを発揮する回転数に設定してある請求項1に記載の作業車の車速制御構造。
【請求項3】
前記第2設定回転数を前記エンジンの定格回転数又は定格回転数に近い回転数に設定してある請求項1に記載の作業車の車速制御構造。
【請求項4】
前記第2設定回転数を前記エンジンが最大トルクを発揮する回転数に設定した第1設定状態と、前記第2設定回転数を前記エンジンの定格回転数又は定格回転数に近い回転数に設定した第2設定状態とに切り換え可能に構成してある請求項1に記載の作業車の車速制御構造。
【請求項5】
作業用の変速段と移動用の変速段とに切り換え可能に構成した有段変速装置の変速段を検出する変速段検出手段を備え、
前記有段変速装置の変速段が前記作業用の変速段である場合は前記第1設定状態に切り換わり、前記有段変速装置の変速段が前記移動用の変速段である場合は前記第2設定状態に切り換わるように構成してある請求項4に記載の作業車の車速制御構造。
【請求項6】
前記無段変速装置の最小変速比を設定する変速比設定手段を備え、
前記車速制御手段が、前記変速比設定手段の出力に基づいてエンジン回転数に対応する前記無段変速装置の変速比を補正するように構成してある請求項1〜5のいずれか一つに記載の作業車の車速制御構造。
【請求項7】
エンジン回転数が零よりも大きい回転数である場合は前記無段変速装置が中立にならないように前記車速制御手段が前記エンジン回転数検出手段の出力に基づいて前記変速比変更手段の作動を制御するように構成してある請求項1〜6のいずれか一つに記載の作業車の車速制御構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−149496(P2011−149496A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11330(P2010−11330)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】