説明

作業車両

【課題】チルト式のステアリングハンドルを備えた作業車両において、主変速レバーの支持構成を簡単にして強固に支持する。
【解決手段】左右方向のチルト軸により操縦ハンドルを前後に調節可能に構成し、該操縦ハンドルの左右一側には変速操作溝を前後方向に沿うように設ける。主変速装置操作用の主変速レバーを前記チルト軸に支持し前記変速操作溝に沿って移動可能に構成し、前記チルト軸には、前記主変速レバーで作動できる主変速装置の前進変速用の前進アーム部、及び、主変速装置の後進変速用の後進アーム部をそれぞれ軸支し、前記前進アーム部には主変速装置変速用の主変速前進ケーブルを連結し、前記後進アーム部には主変速装置変速用の主変速後進ケーブルを連結することを特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業を行う作業車両に関する。特に、作業車両の変速操作レバーに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の変速操作構成において、操縦ハンドルの下側で機体右側あるいは左側の一方に、走行用の主変速装置を操作する主変速レバーを設け、操縦ハンドルの下側で機体の右側あるいは左側の他方に、作業車両に装着している作業機駆動用の変速を行うPTO変速装置を操作するPTO変速レバーを設け、主変速レバー及びPTO変速レバーの操作を行ない易くするようにしたものは、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−341737号公報(図10、図18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、操縦ハンドルをチルト軸回りに前後方向に調節可能に構成した作業車両において、このチルト軸を利用して主変速レバーを取り付け、構成を簡単化しながら強固な主変速装置の操作構成を具現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、エンジンの動力をミッションケース(2)内の主変速装置を経由して前輪(3),後輪(4)に伝達する作業車両において、左右方向のチルト軸(14)により操縦ハンドル(13)を前後に調節可能に構成し、該操縦ハンドル(13)の左右一側には変速操作溝(22)を前後方向に沿うように設け、該変速操作溝(22)を、前後方向中間部の左右方向の中立溝(22n)と、該中立溝(22n)の左右一側から前方に延びる前進変速溝(22a)と、中立溝(22n)の左右他側から後方へ延びる後進変速溝(22b)とで構成し、前記主変速装置操作用の主変速レバー(21)を前記チルト軸(14)に支持し前記変速操作溝(22)に沿って移動可能に構成し、前記チルト軸(14)には、前記主変速レバー(21)で作動できる前記主変速装置の前進変速用の前進アーム部(21b)、及び、前記主変速装置の後進変速用の後進アーム部(21c)をそれぞれ軸支し、前記前進アーム部(21b)には前記主変速装置変速用の主変速前進ケーブル(26)を連結し、前記後進アーム部(21c)には前記主変速装置変速用の主変速後進ケーブル(31)を連結することを特徴とする作業車両とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明は、主変速レバー(21)を中立溝(22n)から前進変速溝(22a)に沿って操作すると、主変速前進ケーブル(26)が押し引きされて主変速装置が前進1速、前進2速及び前進高速に変速される。また、主変速レバー(21)を中立溝(22n)から後進変速溝(22b)に沿って操作すると、主変速後進ケーブル(31)が押し引きされて主変速装置が後進変速される。
【0007】
そして、操縦ハンドル(13)は重要部材であるために、操縦ハンドル(13)の前後調節用のチルト軸(14)は強固に構成しており、このチルト軸(13)を利用して、主変速レバー(21)、前進アーム部(21b)及び後進アーム部(21c)を支持しているので、主変速レバー(21)の支持構成を簡単強固に支持して、耐久性を高めることができる。また、主変速レバー(21)、前進アーム部(21b)、及び後進アーム部(21c)を支持する別部材が不要となるので、ハンドルコラム内の構成が簡素となり廉価な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】トラクタの全体側面図。
【図2】トラクタの操縦ハンドル部の側面図。
【図3】トラクタの操縦ハンドル部の正面図。
【図4】トラクタの操縦ハンドル部の側面図。
【図5】主変速レバー部の側面図。
【図6】主変速レバー部の側面図。
【図7】ブレーキペダルの平面図、正面図。
【図8】クラッチペダルの側面図。
【図9】クラッチペダルの平面図。
【図10】自動レバー部の側面図、切断正面図。
【図11】トラクタ後部の平面図。
【図12】トラクタ後部及びロータリ耕耘装置の平面図。
【図13】昇降レバー部の側面図。
【図14】昇降レバー部の正面図、平面図。
【図15】昇降制御弁の側面図。
【図16】昇降制御弁、昇降レバーの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいてこの発明を農業用トラクタに施した実施の形態について説明する。
トラクタTは、図1に示すように、車体前側部のボンネット1内にエンジン(図示省略)を配設し、エンジンの回転動力をミッションケース2内の伝動機構の主変速装置及び副変速装置を経由して左右前輪3,3及び左右後輪4,4へ伝達している。
【0010】
また、前記ミッションケース2の後側上部には、作業機昇降用の油圧シリンダ(図示省略)を内装しているシリンダケース(図示省略)を配設し、このシリンダケース(図示省略)にリフトアーム7,7を上下回動自在に軸架し、昇降油圧シリンダ(図示省略)のピストンの伸縮作動により、リフトアーム7,7を上下回動するように構成している。また、前記ミッションケース2の後側部には、上部リンクと左右ロワーリンクからなる三点リンク機構(図示省略)を設けて、例えばロータリ耕耘装置(図示省略)を連結し、リフトアーム7,7により昇降するように構成している。
【0011】
また、エンジンの後方にハンドルポスト11を立設し、ハンドルポスト11にハンドル軸12を軸架し、ハンドル軸12の上端部に操縦ハンドル13を軸支している。ミッションケース2の上側にはフロア18を設け、フロア18上には前進ペダル(図示省略)、後進ペダル(図示省略)、左右ブレーキペダル(図示省略)、クラッチペダル(図示省略)、アクセルペダル(図示省略)等を設けている。操縦ハンドル13の後方にシート19を設けている。
【0012】
次に、図3及び図4に基づき、ミッションケース2内に設けた主変速装置(図示省略)の変速構成について説明する。
また、図4に示すように、下部ハンドルポスト11aに下部ハンドル軸12aを軸架し、上部ハンドルポスト11bに上部ハンドル軸12bを軸架し、下部ハンドル軸11aと上部ハンドル軸12bとを自在継手で連結し、下部ハンドルポスト11aの上端部と上部ハンドルポスト11bの下端部を左右方向のチルト軸14回りに回動自在に軸支し、チルトレバー15により所定回動調節位置で固定し、操縦ハンドル13を前後調節可能に構成している。
【0013】
チルト軸14には、図4に示すように、主変速レバー21のボス部21aを軸支し、ボス部21aに前後方向の軸21b回りに回動自在に操作レバー部21cを軸支し、主変速レバー21を前後方向及び左右方向に回動可能に構成している。チルト軸14のボス部21aの左右両側に前進アーム部21d、後進アーム部21eをそれぞれ軸支している。
【0014】
操縦ハンドル13のハンドルポスト11の上部には、図3に示すように、操作パネル20を設け、その左側部に変速操作溝22を前後方向に沿うように設けている。この変速操作溝22を、前後方向中間の左右方向の中立溝22nと、中立溝22nの例えば中央寄り部から前方に延びる前進1速位置、前進2速位置、前進高速位置のある前進変速溝22aと、中立溝22nの左側寄りから後方へ延びる後進位置のある後進変速溝22bとで構成し、主変速レバー21をこれらの変速位置に操作可能に構成している。
【0015】
しかして、主変速レバー21を中立溝22nに沿って右側に操作し、前進変速溝22aへの前進変速が可能になると、主変速レバー21の基部の変速係合部が前進アーム部21dに係合して、前進アーム部21dが作動可能になる。また、主変速レバー21を中立溝22nの左側に操作し、後進溝22bへの移動が可能になると、主変速レバー21の基部の変速係合部が後進アーム部21eに係合し、後進アーム部21eを作動可能になる。
【0016】
また、前進アーム部21dの先端部には主変速前進ケーブル26のインナーケーブル26aの一端を連結すると共に、アウターケーブル26bの一端をハンドルポストのブラケット27にナット28,…で調節自在に固定している。また、ミッションケース2の左側には、図5に示すように、前記主変速装置操作用の主変速アーム29を設け、主変速前進ケーブル26の他端を主変速アーム29の近傍まで延出し、インナーケーブル26aの他端を主変速アーム29の一端にピン連結すると共に、アウターケーブル26bの他端をミッションケース2のブラケット27にナット28,…で調節自在に固定している。
【0017】
また、後進アーム部21eの先端部には主変速後進ケーブル31のインナーケーブル31aの一端を連結すると共に、アウターケーブル31bの一端をハンドルポストのブラケット27にナット28,…で調節自在に固定している。主変速後進ケーブル31の他端側を主変速アーム29の近傍まで延出し、インナーケーブル31aの他端を主変速アーム29の他端にピン連結すると共に、アウターケーブル31bの他端をミッションケース2側のブラケット27にナット28,…で調節自在に固定している。
【0018】
しかして、主変速レバー21を中立溝22nの中央寄りから前進変速溝22aの前進1速位置、前進2速位置、前進高速位置に移動すると、主変速前進ケーブル26のインナーケーブル26aが引っ張られ、主変速装置が前進1速、前進2速及び前進高速に変速される。また、主変速レバー21を中立溝22nの左側寄りから後進変速溝22bに沿って後進変速位置に操作すると、主変速後進ケーブル31のインナーケーブル31aが引っ張られ、主変速装置が後進に変速される。
【0019】
なお、前進アーム部21dと主変速装置操作用の主変速アーム29とを、図6に示すように、第1前進ロッド33a,中間アーム33b,第2前進ロッド33cを介して作動可能に構成し、後進アーム部21eと主変速装置操作用の主変速アーム29とを、第1後進ロッド34a,中間アーム34b,第2前進ロッド34cを介して作動可能に構成してもよい。
【0020】
前記構成によると、操縦ハンドル13の前後調節用のチルト軸14に主変速レバー21を支持するので、主変速レバー21の支持構成を簡単にし、強硬に支持することができる。
【0021】
次に、図7に基づき左右ブレーキペダル41f,41rのロック構成について説明する。
フロア18には左右ブレーキペダル41f,41rを踏み込み自在に並設している。右ブレーキペダル41rの裏面に直交するように取付ボルト42を取り付け、この取付ボルト42にロックアーム43を軸支し、ナット42aに抜け止めしている。また、左ブレーキペダル41fの裏面には箱状のセンサホルダ44を取り付け、センサホルダ44にロックセンサ45をボルト・ナットで取り付けている。
【0022】
そして、ロックアーム43の先端部には、長手方向に対して交叉する回動方向に延びる検出板部43aと操作部43bを構成している。しかして、ロックアーム43の先端側を回動し、図7の実線で示すように、センサホルダ44の切欠き部44aに進入嵌合させると、左右ブレーキペダル41f,41rがロックされ、左右ブレーキ装置が一体作動状態となる。この状態では、ロックセンサ45の検出光を照射する検出孔45aがロックアーム43の検出板部43aで閉鎖され、ロック状態を検出するように構成している。
【0023】
前記構成によると、センサホルダ44の切欠き部44aにより、ロックアーム43のロック状態を保持するので、左右ブレーキペダル41f,41rの撓みによる移動を防止しながら、確実にロックすることができる。また、ロックセンサ45の検出光をロックアーム43の回動方向に長い検出板部43aにより検出するので、左右ブレーキペダル41f,41rが振動してもロック状態を確実に検出することができる。
【0024】
次に、図8及び図9に基づきクラッチペダル51のクラッチ切り保持構成について説明する。
トラクタのエンジン(図示省略)の出力軸とミッションケース2の入力軸との間に主クラッチ(図示省略)を設け、フロア18には主クラッチを入り切する足踏み式のクラッチペダル51を設けている。クラッチペダル51のアーム部51a基部を左右方向の軸により軸支し、アーム部51a先端側のクラッチペダル51の下方部位に、ロックピン52を左右一側に突出するように設けている。
【0025】
また、フロア18側のブラケット54には、アーム部51aの回動部位の左右一側で、且つ、主クラッチ切り位置にある前記ロックピン52よりも下方に位置するようにフック53を設けている。このフック53を直線状のアーム部53aと先端の屈曲したフック部53bとにより構成し、アーム部53aの基部を左右方向の軸53cにより軸支すると共に、アーム部53aとブラケット54との間に復帰スプリング55を介装し、アーム部53aが前後方向に沿った状態で、主クラッチ切り位置にある前記ロックピン52の下方に位置するように付勢している。また、フック53には手動操作用の操作レバー56を取り付けている。
【0026】
前記構成によると、クラッチペダル51を高いクラッチ入り位置から低いクラッチ切り位置に踏み込み、クラッチペダル51側のロックピン52をフック53のアーム部53aに当接あるいは接近する上方位置に移動させる。すると、主クラッチ切り状態となり、フック53のフック部53bがクラッチペダル51側のロックピン52に係合可能状態となる。次いで、操作レバー56を図8の反時計方向に操作すると、フック53のアーム部53aが反時計方向に回動してフック部53bによりロックピン52を係止し、クラッチペダル51の上方への復帰回動を阻止し、クラッチペダル51を主クラッチ切り状態に保持することができる。
【0027】
また、フック53のフック部53bにロックピン52を係止しているクラッチペダル51の切り状態から、クラッチペダル51を更に下方へ踏み込むと、アーム部53aは復帰スプリング55の付勢力で時計方向に回動し、クラッチペダル51側のロックピン52がフック部53bから離脱可能状態となる。次いで、クラッチペダル51から足を外すと、クラッチペダル51は復帰スプリング57の作用により上方のクラッチ切り位置に回動復帰し、フック53及び操作レバー56も復帰スプリング55の付勢力で時計方向に回動し、通常の開放状態に復帰する。
【0028】
例えば、苗移植作業機で苗の移植作業をしている場合には、苗補給や燃料切のときには、機体の走行を停止させる必要がある。
前記構成によると、クラッチペダル51を足で踏み込み操作するだけでは、クラッチペダル51を通常の切り状態でクラッチを入切することができ、切り状態でロックされることはない。また、クラッチ切り状態でクラッチペダル51をロックしたいという意志がオペレータにあるときにだけ、クラッチペダル51を踏み込んだままの状態で、操作レバー56を手動操作してフック53をロック位置に引き上げれば、主クラッチ切りのロック状態とすることができ、誤操作を防止できる。
【0029】
次に、図10乃至図12に基づきロータリ耕耘装置63の耕深調節構成について説明する。
トラクタTの機体後部には前記三点リンク機構61を設けてロータリ耕耘装置63を連結し、リフトアーム7,7により昇降するように構成している。ミッションケース2には昇降制御弁64を設けている。昇降制御弁64操作用の昇降レバー62を、図11に示すように、シート19の例えば右側方に設け、昇降レバー62の基部を左右方向の軸で軸支している。そして、昇降レバー62を前方へ回動すると、昇降制御弁64のスプール64aを下降作動してロータリ耕耘装置63を下降させ、後方へ回動すると、ロータリ耕耘装置63を上昇させるように構成している。
【0030】
また、昇降レバー62の側方にオートレバー70を同様に回動自在に構成し、オートレバー70の上下回動操作により、昇降制御弁64のスプール64aを作動し、ロータリ耕耘装置63を昇降するように構成している。
【0031】
昇降制御弁64のブラケット64bには、図10(A)に示すように、ケーブル作動アーム65を左右方向の軸65a回りに回動自在に軸支し、オートレバー70のアーム部とケーブル作動アーム65の中途部とを長さ調節自在の連動ロッド66により連結すると共に、オートレバー70の基部とケーブル作動アーム65の先端部とをスプリング71により連結し引っ張り付勢している。
【0032】
ケーブル作動アーム65の先端側にオートケーブル68の前側端部を連結し、ロータリ耕耘装置63に上下回動自在に取り付けているリヤーカバー63aにオートケーブル68の後側端部を連結している。
【0033】
しかして、オートレバー70を図10(A)の位置から後側(右側)に回動すると、昇降制御弁64が切り換えられてロータリ耕耘装置63が上昇し、オートレバー70を前側に回動すると、ロータリ耕耘装置63が下降し、リヤーカバー63aが接地した所でオートケーブル68の後側への移動が停止し、ロータリ耕耘装置63を所定の耕耘深度に保ちながら耕耘作業をすることができる。
【0034】
次に、オートケーブル68の耕深調節構成について説明する。
オートケーブル68のインナーケーブル68aの前側端部を前記ケーブル作動アーム65の先端部に連結し、オートケーブル68のアウターケーブル68bの前側端部とインナーケーブル68aの前側端部との間にブーツ76により被覆している。インナーケーブル68aの後側端部をロータリ耕耘装置63側のリヤーカバー63aに連結し、アウターケーブル68bの後側端部をロータリ耕耘装置63側のブラケットに固着し、オートケーブル68の押し引きによりリヤーカバー63aを上下回動するように構成している。
【0035】
アウターケーブル68bの前側端部には係止部68cを前後のナットにより固着している。また、ミッションケース2のシート19の側方にはロプスフレーム72を設け、このロプスフレーム72の下部に左右方向の軸回りに回動するように耕深調節レバー73を軸支している。耕深調節レバー73のアーム部73aを前記係止部63cの係止凹部に係合し、ロプスフレーム72側に調節目盛付きのガイド溝74を設け、耕深調節レバー73を目盛に沿って前後も移動調節し、所定調節位置で係止できるように構成している。
【0036】
前記構成によると、耕深調節レバー73を前後に調節しガイド溝74に係止することにより、インナーケーブル68aに対して係止部68c、アウターケーブル68bの前側端部が前後方向に調節され、オートケーブル68の引き代を調整できる。従って、ロータリ耕耘装置63のリヤーカバー63aの下降回動位置を上下に調節し、耕耘深度を調節することができる。
【0037】
従来構成はオートケーブル68の調整機構がロータリ耕耘装置63側に設けていたので、代掻き作業時に耕深調整が必要になると、オペレータはトラクタから降りて調節しなければならず、不便であった。
【0038】
しかし、前記構成によると、代掻き作業時にオペレータはトラクタに乗ったままで耕深調節レバー73を操作することにより、耕深調整をすることができる。また、既存のロプスフレーム72を利用して耕深調節レバー73を取り付けると共に、耕深調節レバー73をオートケーブル68の前側端部近傍に配設したので、構成を簡単化し、耕深調整レバー73の配置箇所が判り易くなり、耕深調節を円滑に行なうことができる。
【0039】
また、前記ケーブル作動用のアーム65に、オートケーブル68のインナーケーブル68aの前側端部を連結するにあたり、アーム65に長手方向に沿って複数の取付孔(図示省略)を設け、アーム65の基部側の取付孔に連結すると、オートケーブル68を敏感に動かし、また、先端側の取付孔に連結すると、オートケーブル68を鈍感に動かすことができる。
【0040】
次に、図13及び図14に基づき昇降レバー62の他の実施例について説明する。
昇降レバー62により昇降制御弁64を作動してロータリ耕耘装置63を昇降する作業機昇降装置において、昇降レバー62の中途部左右一側に突起81を設け、昇降レバー62の突起81の移動奇跡に沿ってガイド板82を設けている。このガイド板82の一部に突起81が嵌合できる凹部82aを設け、このガイド板82を突起81の移動奇跡に沿って調節可能に構成している。なお、82bはガイド板82のスライド調節用レバーである。
【0041】
ロータリ耕耘装置63で枕地を耕耘する際に、ロータリ耕耘装置63の耕耘爪を圃場に接地しない程度まで下げ、トラクタTを後進させてロータリ耕耘装置63を畔際に接近させ、次いで、耕耘深度まで下げ耕耘作業を開始する工程がある。
【0042】
この場合に、ロータリ耕耘装置63がどこまで下がっているのかが判りにくく、昇降レバー62をゆっくり操作し、ロータリ耕耘装置63の耕耘爪が接地しない程度に下げ、次いで機体を後進させてロータリ耕耘装置63を畔際に接近させ、更に耕深位置まで下げる必要がある。この実施例は、このような畔際での耕耘作業を容易化し、作業能率を高めようとするものである。
【0043】
前記構成によると、ガイド板82を昇降レバー62の操作方向にスライド調節し、ガイド板82の凹部82aの位置を調節する。そして、昇降レバー62の突起81が凹部82aに嵌合し停止する位置を、ロータリ耕耘装置63の耕耘爪が接地しない程度まで下げた位置とする。
【0044】
従って、昇降レバー62を下げ操作し、突起81をガイド板82の凹部82aに嵌合させ昇降レバー62を停止させると、ロータリ耕耘装置63の耕耘爪が接地しない程度まで下がった位置で一端停止することができる。次いで、トラクタを後進させて、ロータリ耕耘装置63を畔際まで移動し、次いで、昇降レバー62を耕深位置まで下げる操作をすることにより、ロータリ耕耘装置63で畔際から所定の耕耘深度を保持しながら能率的に耕耘作業をすることができる。
【0045】
次に、図15の実施例について説明する。
昇降レバー62により昇降制御弁64を作動してロータリ耕耘装置63を昇降する作業機昇降装置において、昇降制御弁64のスプール64aに下げ速度調節レバー85を設け、スプール64aを長手方向に移動し、通常速度下げ位置(図15の実践で示す位置)に調節したり、あるいは、低速下げ位置(図15の仮想線で示す位置)に調節可能に構成している。しかして、スプール64aを低速下げ位置に調節すると、ロータリ耕耘装置63の昇降シリンダ(図示省略)からスプール64aを経由してタンク(図示省略)に流れる油量を極端に減らすことができ、ロータリ耕耘装置63をゆっくり下降させることができる。
【0046】
前記構成によると、ロータリ耕耘装置63により圃場で通常の耕耘作業をする場合には、昇降制御弁64のスプール64aを下げ速度調節レバー85により前記通常速度下げ位置に調節することにより、ロータリ耕耘装置63を迅速に昇降しながら能率的に耕耘作業をすることができる。また、枕地の耕耘作業をする場合には、昇降制御弁64のスプール64aを下げ速度調節レバー85により前記低速下げ位置に調節する。しかして、ロータリ耕耘装置63をゆっくり下げ調節し、ロータリ耕耘装置63の耕耘爪が接地しない程度まで下がった位置で一旦下降を停止し、次いで、トラクタを後進させてロータリ耕耘装置63を畔際まで移動し、次いで、所定の耕耘深度まで下げ、ロータリ耕耘装置63の破損を防止しながら、枕地の耕耘作業を円滑にすることができる。
【0047】
次に、図16に基づき作業機昇降制御装置について説明する。
この作業機昇降制御装置は、ソレノイドを具備しないメカ式の昇降制御弁64により油圧を切り換えて作業機を昇降するものである。ミッションケース2の後側上部に昇降制御弁64を設け、昇降制御弁64のブラケットには昇降レバー62を左右方向の軸で回動できるように設け、昇降レバー62の基部には昇降ポテンショメータ96を設けている。
【0048】
昇降制御弁64のスプールバルブ64aにはスプール作動用アーム91を取り付け、このアーム91の支点部にアームポテンショメータ92を設けている。アーム91の先端部に連動ロッド93の一端をピン連結し、連動ロッド93の屈曲している他端部を、昇降制御弁64のブラケットに取り付けた昇降モータ94の回転駆動部にピン連結している。
【0049】
しかして、昇降レバー62を昇降操作すると、昇降ポテンショメータ96により操作位置が検出されてコントローラ(図示省略)に送られる。次いで、コントローラから昇降モータ94に昇降指令が出力され正逆回転し、連動ロッド93が押し引きされ、スプールバルブ64aが切換作動され、ロータリ耕耘装置63が昇降する。
【0050】
また、スプール作動用のアーム91には、図16(B)に示すように長孔91aを設け、連動ロッド93の端部をアーム91の長孔91aに沿って調節可能にピン連結することにより、アーム91の作動比率を変更できるようにしている。
【0051】
前記構成によると、アーム91の長孔91aの基部側に連動ロッド93を連結することにより、作業機の昇降速度を速くし、また、アーム91の長孔91aの先端側に連動ロッド93を連結することにより、作業機の昇降速度を遅くすることができる。
【符号の説明】
【0052】
2 ミッションケース
3 前輪
4 後輪
14 チルト軸
13 操縦ハンドル
21 主変速レバー
22 変速操作溝
21b 前進アーム部
21c 後進アーム部
22n 中立溝
22a 前進変速溝
22b 後進変速溝
26 主変速前進ケーブル
31 主変速後進ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力をミッションケース(2)内の主変速装置を経由して前輪(3),後輪(4)に伝達する作業車両において、左右方向のチルト軸(14)により操縦ハンドル(13)を前後に調節可能に構成し、該操縦ハンドル(13)の左右一側には変速操作溝(22)を前後方向に沿うように設け、該変速操作溝(22)を、前後方向中間部の左右方向の中立溝(22n)と、該中立溝(22n)の左右一側から前方に延びる前進変速溝(22a)と、中立溝(22n)の左右他側から後方へ延びる後進変速溝(22b)とで構成し、前記主変速装置操作用の主変速レバー(21)を前記チルト軸(14)に支持し前記変速操作溝(22)に沿って移動可能に構成し、前記チルト軸(14)には、前記主変速レバー(21)で作動できる前記主変速装置の前進変速用の前進アーム部(21b)、及び、前記主変速装置の後進変速用の後進アーム部(21c)をそれぞれ軸支し、前記前進アーム部(21b)には前記主変速装置変速用の主変速前進ケーブル(26)を連結し、前記後進アーム部(21c)には前記主変速装置変速用の主変速後進ケーブル(31)を連結することを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−228615(P2010−228615A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79071(P2009−79071)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】