説明

作業車両

【課題】従来構成のシートスイッチは、上下方向の摺動によって入り・切り作動させるものであるため、作動が不正確である。また、感動調整機能がないため、スイッチを適正な感度に調整できない問題があった。
【解決手段】運転席7のシートプレート8と下方のシートブラケット9との間に、運転者の着座により下動してスイッチを入り作動させてエンジンの始動を可能にするシートスイッチ機構15を装備し、該シートスイッチ機構15を上下鉛直方向に対して所定の角度θに傾けて設置すると共に、前記シートプレート8側にはシートスイッチ機構15のスイッチ部感度を調整する感度調整手段18を設けたことを特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等の作業車両に装備の運転席に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転席に運転者が着座すると、シートスイッチが入りとなってエンジンの始動が可能となるように構成されたものは、例えば、特許文献1によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−247142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成のシートスイッチは、上下方向の摺動によってオン・オフ作動させるものであるため、作動が不正確である。また、感動調整機能がないため、スイッチを適正な感度に調整できない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、運転席(7)のシートプレート(8)と下方のシートブラケット(9)との間に、運転者の着座により下動してスイッチを入り作動させてエンジンの始動を可能にするシートスイッチ機構(15)を装備し、該シートスイッチ機構(15)を上下鉛直方向に対して所定の角度(θ)に傾けて設置すると共に、前記シートプレート(8)側にはシートスイッチ機構(15)のスイッチ部感度を調整する感度調整手段(18)を設けたことを特徴とする作業車両としたものである。
【0006】
運転者が運転席(7)に着座すると、運転者の重力によりシートプレート(8)が下動し、感度調整手段(18)がシートスイッチ機構(15)のスイッチアームに当接してこれを下方に押し下げることによりスイッチが入り作動する。従って、このスイッチの入り作動により、エンジンの始動が可能な状態となる。
【0007】
シートスイッチ機構(15)は、鉛直方向に対して所定の傾き角(θ)を保持しているため、スイッチの入り・切り作動が適正、確実に行える。また、上下に調整可能な感度調整手段(18)によってスイッチアームの感度調整ができるため、常に適正なスイッチ感度に調整して対応することができ、スイッチ機能の向上が図れる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、運転席(7)上下回動用の横支軸(10)を前記シートブラケット(9)の前部に構成し、運転席(7)の下方後部に張圧スプリング(11)を設けて運転席(7)を受ける構成とし、前記シートスイッチ機構(15)を前記横支軸(10)と張圧スプリング(11)の間であって、運転席(7)の前後中間部に設けたことを特徴とする請求項1記載の作業車両としたものである。
【0009】
シートスイッチ機構(15)を横支軸(10)と張圧スプリング(11)の間であって、運転席(7)の前後中間部に設ける。
【発明の効果】
【0010】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、シートスイッチ機構を所定角度に傾けて設置することにより、省スペースで配置できるばかりでなく、スイッチアームのオン・オフ作動が適正且つ確実に行え、スイッチアームの感度調整が可能であるため、常に適正な感度に調整し得てスイッチ機能の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の効果に加え、シートスイッチ機構の検出精度が向上するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トラクタの側面図
【図2】運転席要部の側面図
【図3】運転席要部の背面図
【図4】運転席を取り除いた要部の平面図
【図5】シートスイッチ機構要部の拡大側面図
【図6】運転席支持構造の要部の背面図
【図7】同上一部の拡大背面図
【図8】運転席支持構造の要部の背面図及びその一部の斜視図
【図9】シートスイッチ用スプリングの背面図
【図10】別実施例のシートスイッチ用スプリングの側断面図
【図11】トラクタの運転操作部の正面図
【図12】同上要部の平面図
【図13】フロント操作パネル部の斜視図
【図14】ロプスの支持構造を示す正面図
【図15】同上側面図
【図16】同上一部の正面図
【図17】ロプス受座板の斜視図
【図18】ロプス支持構造要部の側面図
【図19】同上一部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、トラクタを示すものであり、この走行車体1前部のボンネット2内部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前車輪4及び後車輪5とに伝えるようにしている。エンジンEの後方に前車輪4,4を操舵するステアリングハンドル6が装備され、更に、その後方には運転席7が設置されている。
【0014】
運転席7は、このシートプレート8がシートブラケット9前端の横支軸10を支点として揺動開閉可能に支持されてあり、シートプレート8の後端とシートブラケット9後端との間に張圧スプリング11を介装し、運転席7に運転者が着座すると、その運転者の重力によりシートプレート8が張圧スプリング11を圧縮しながら下動するようになっている。
【0015】
シートプレート8とシートブラケット9との間には、スイッチボックス12、スイッチアーム13、スイッチアームの上下回動によりオン・オフするボックス12内のスイッチ部14等からなるシートスイッチ機構15が設置され、シートブラケット9に支持ステー16、ボルト・ナット17等を介して装着支持されている。
【0016】
そして、シートスイッチ機構15は、鉛直方向に対してスイッチアームが下向き傾斜となるよう所定の角度θ(35度)に傾けて配置した構成としている。
前記シートプレート8側には、シートスイッチ機構のスイッチ部感度を調整する感度調整手段として、上下方向の長穴18a及び調整ボルト18bを介して上下伸縮調整可能な感度調整用プレート18がシートプレート8と一体的に設けられている。感度調整用プレート18は、2枚のプレート18a,18bからなり、一方のプレート18aがシートプレート8に固定され、他方のプレート18bがプレート18aに対して上下方向の長穴19及び調整ボルト20を介して上下にスライド調整できるように構成されている。従って、感度調整用プレート18はシートプレート8の下動に伴って一体的に下動し、その下端がスイッチアーム13に接当して押し下げることによりスイッチ部14がスイッチオンすることになる。そして、プレート18aに対しプレート18bを上下に調整すればスイッチ部の感度が敏感或いは鈍感となるよう適宜調整されることになる。
【0017】
図6に示す実施例は、運転席の下方に緩衝用スプリング21をスプリング支持プレート22上の左右に配置して支持し、この左右の緩衝用スプリング21,21の上に皿型のスプリング保持プレート23を載架すると共に、この保持プレート23の皿型凹部にシートスイッチ専用の張圧スプリング11,11を配置して支持させた構成としている。また、上記構成において、図7にも示すように、スプリング支持プレート22には、二つのガイドピン24,24が一体的に溶着して設けられていて、これらを上側のスプリング保持プレート23に貫通することにより、該保持プレート23の上下動が正確に規制案内されるようになっている。
【0018】
なお、スプリング保持プレート23のガイド方法として、図8に示す実施例では、保持プレート23の端部を下方に延長して構成した延長プレート23aに上下方向のガイド孔23bを設け、スプリング支持プレート22に取り付けたL型金具25の孔25aと前記ガイド孔23bとに係合ピン26を挿通支持することによってガイドする構成としている。
図9に示す構成例は、圧縮力の異なるダブルスプリング(強大スプリング11a,弱小スプリング11b)を用いることによってシートスイッチの作動を可能にしたもので、大幅な変更を要せずにシートスイッチの性能を向上させることができる。 また、図10に示すように、圧縮力の異なる強弱スプリング11a,11bを用いることによっても上記と同等の効果を奏することができる。
【0019】
次に、トラクタのフロントパネル構造について説明する。
図11〜図13において、輸出用トラクタでは、操作パネル30の上面一側にパーキングレバー用のガイド穴31を設けて、パーキングレバー32によって操作できる構成とし、国内用トラクタでは、操作パネル30上面に主変速レバー用のガイド穴を設けて主変速レバー操作できる構成としている。また、輸出機ではレバー式コンビスイッチ34を設けてパーキングレバー操作ができる構成としている。
【0020】
また、上記操作パネル30は、ハンドルカバー35一体式と、ハンドルカバー分割式の二種類で構成され、分割部は凹ライン36を設けた構成としている。
図14及び図15に示す実施例について説明する。かかる図例では、ミッションケース3側から立設する左右のリヤフレーム38L,38Rと、トップリンク39を装着支持するトップリンクブラケット40とを溶接手段等によって一体化することにより、組立工数、部品点数の削減化を図った構成としている。リヤフレーム38L,38Rは、帯鋼板材からなるように構成して軽量化し、下端側をミッションケース3の左右両側面と下面とに接合固着して支持構成の安定化を図っている。トップリンクブラケット40は、厚みの薄い角パイプで構成して強度を確保して軽量化すると共に、これを左右のリヤフレームに連結させることにより帯鋼のねじれを防止することができ、両部材の軽量化と相俟って溶接工数も削減できてコストダウンとなる。更に、角パイプ(ブラケット40)は、リヤフェンダの下部に位置させることができ、樹脂フェンダの支え部材として兼ね備えたものとなる。
【0021】
また、トップリンクブラケット(角パイプ)40の左右位置には補強部材41,41を設けることにより、角パイプの応力分散及びリヤフレーム曲げ部のツッパリ効果が発揮できる。
【0022】
ロプス(安全フレーム)42の取付座板43を受けるロプス受座板44は、図17に示すような板金一体曲げ形状とし、左右帯鋼38L,38R及び角パイプ40に対して一体的に溶接固定する構成としている。なお、フェンダ位置決めプレート45は、ロプス取付座板43とロプス受座板44との間に挟んで締付固定する構成としている。
【0023】
従来構成のロプスは、ロプスアッパの曲げ部のR部が大き過ぎロプス安全領域が確保されず、丸棒をロプス曲げ部の左右に当てて溶接をしていた。本例では、ロプスアッパを分割し、板厚の薄い角パイプなどの繋ぎ部材を介して溶着固定することにより、強度アップが可能となり、ロプス安全領域が確保されるものとなった。
【0024】
また、ロプスアッパの角パイプの左右幅を安全領域が確保される幅にし、板厚は上側42Uを薄く(2.3mm程度)下側42Dを厚く(3.2mm程度)することによって安全領域が確保されるようになり、従来のような丸棒の溶接を廃止することもできる。
【符号の説明】
【0025】
θ 角度
7 運転席
8 シートプレート
9 シートブラケット
10 横支軸
11 弾圧スプリング
12 スイッチボックス
13 スイッチアーム
14 スイッチ部
15 シートスイッチ機構
18 感度調整手段(感度調整用プレート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席(7)のシートプレート(8)と下方のシートブラケット(9)との間に、運転者の着座により下動してスイッチを入り作動させてエンジンの始動を可能にするシートスイッチ機構(15)を装備し、該シートスイッチ機構(15)を上下鉛直方向に対して所定の角度(θ)に傾けて設置すると共に、前記シートプレート(8)側にはシートスイッチ機構(15)のスイッチ部感度を調整する感度調整手段(18)を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
運転席(7)上下回動用の横支軸(10)を前記シートブラケット(9)の前部に構成し、運転席(7)の下方後部に張圧スプリング(11)を設けて運転席(7)を受ける構成とし、前記シートスイッチ機構(15)を前記横支軸(10)と張圧スプリング(11)の間であって、運転席(7)の前後中間部に設けたことを特徴とする請求項1記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−274730(P2010−274730A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127730(P2009−127730)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】