説明

作業車両

【課題】バッテリへの充電をより効率的に行うことにより、電動機を駆動源として行う作業を従来に比して早期にかつ長時間継続することができる作業車両を提供する。
【解決手段】作業用アクチュエータ3に作動油を供給する油圧ポンプPと、油圧ポンプPにPTO装置1を介して接続可能なエンジンEと、油圧ポンプPに連結されバッテリ5から供給される電力によって油圧ポンプPを駆動する電動機GMと、エンジンEまたは電動機GMのいずれかを油圧ポンプPの駆動源として切り換え選択するコントローラCと、を備える。電動機GMは、エンジンEが油圧ポンプPの駆動源として選択されている場合に、PTO装置1の作動によってバッテリ5に電力を蓄える発電手段として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用アクチュエータを作動する油圧ポンプの駆動源として、エンジンまたは電動機のいずれかを切り換えて用いることができる作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば塵芥収集車のように、種々の作業機械が積載された作業車両が知られている。こうした作業車両においては、油圧ポンプから吐出される作動油によって作業用アクチュエータを作動しているが、特許文献1,2に示される作業車両においては、油圧ポンプの駆動源としてエンジンと電動機とが用いられている。
すなわち、特許文献1,2に示される作業車両は、油圧ポンプがPTO装置を介してエンジンに接続されるとともに、電動機によっても駆動するようになっている。したがって、作業内容や作業環境に応じて、エンジン駆動で作業を行ったり、電動機を駆動して作業を行ったりすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−224354号公報
【特許文献3】特開平10−37904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような作業車両においては、バッテリに蓄えられた電力量の範囲内でしか電動機を駆動することができないため、電動機を駆動源として作業を行う場合には時間的制約が大きいという課題がある。
また、バッテリ残量が少なくなった場合には、エンジンを駆動してバッテリに充電を行う必要があるが、必要電力が蓄えられるまでには時間がかかるため、電動機を駆動源とする作業開始までに時間を要してしまうという課題がある。
この点、特許文献1,2に示される作業車両においては、電動機を発電手段として機能させることにより、バッテリに充電を行うようにしているものの、上記の課題を解決するには至っていないという実態がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、バッテリへの充電をより効率的に行うことにより、電動機を駆動源として行う作業を従来に比して早期にかつ長時間継続することができる作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、作業用アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプにPTO装置を介して接続可能なエンジンと、前記油圧ポンプに連結され、バッテリから供給される電力によって前記油圧ポンプを駆動する電動機と、前記エンジンまたは電動機のいずれかを前記油圧ポンプの駆動源として切り換え選択する駆動源切り換え手段と、を備え、前記電動機は、前記駆動源切り換え手段によって前記エンジンが油圧ポンプの駆動源として選択されている場合に、前記PTO装置の作動によって前記バッテリに電力を蓄える発電手段として機能することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記作業用アクチュエータの作動状態または作動停止状態を判定する状態判定手段と、前記状態判定手段の判定結果に応じて前記バッテリへの充電を可能とする充電許可手段と、を備え、前記充電許可手段は、前記駆動源切り換え手段によって前記エンジンが油圧ポンプの駆動源として選択され、かつ、前記状態判定手段によって前記作業用アクチュエータが作動停止状態であると判定された場合に、前記バッテリへの充電を可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エンジンを駆動源として油圧ポンプが駆動しているときに、電動機が発電手段として機能するので、バッテリへの充電をより効率的に行うことができる。したがって、従来に比して、バッテリに電力を蓄えることが可能となり、電動機を駆動源として行う作業を、より早期にかつ長時間継続することができる。
特に請求項2に記載の発明によれば、作業用アクチュエータが作動停止状態となったアイドリング中にのみ充電が行われる。これにより、充電によってもたらされる負荷変動によって作業に影響を及ぼすことなく、無駄に生じているエネルギー損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】塵芥収集車における機能ブロック図である。
【図2】コントローラの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および図2を用いて、本発明を塵芥収集車に適用した場合の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の塵芥収集車は、エンジンEの出力を取り出すPTO(POWER TAKE OFF)装置1を備えており、このPTO装置1の伝達軸1aを介してエンジンEに油圧ポンプPが接続可能となっている。このPTO装置1は、コントローラCからの制御信号に基づいて、エンジンEと油圧ポンプPとを接続したり、あるいはエンジンEと油圧ポンプPとの接続を断ったりすることができるように断接機能を有している。PTO装置1によってエンジンEと油圧ポンプPとが接続された状態でエンジンEが駆動すると、その出力が伝達軸1aを介して油圧ポンプPに伝達され、油圧ポンプPから吐出通路2に作動油が吐出されることとなる。
【0011】
吐出通路2には、複数のコントロールバルブCVが接続されており、全てのコントロールバルブCVが図示の中立位置にある場合には、油圧ポンプPから吐出された作動油がタンクTに還流する。この状態からいずれかのコントロールバルブCVを切り換えると、このコントロールバルブCVに接続された作業用アクチュエータ3に作動油が導かれる。なお、本実施形態の塵芥収集車においては、作業用アクチュエータ3として、塵芥収容箱を開閉するための油圧シリンダや、塵芥収容箱を傾倒するための油圧シリンダ、あるいは塵芥収容箱内の積込装置を作動する油圧モータが設けられている。
【0012】
また、PTO装置1の伝達軸1aには電動機GMが設けられている。この電動機GMは、インバータ4を介して接続されたバッテリ5から供給される電力によって駆動するものである。この電動機GMが駆動すると、伝達軸1aを介して油圧ポンプPに動力が伝達され、上記と同様に油圧ポンプPから作動油が吐出される。つまり、本実施形態においては、エンジンE、電動機GMおよび油圧ポンプPがPTO装置1によって直列配置されており、エンジンEおよび電動機GMの双方が油圧ポンプPの駆動源として機能することとなる。
【0013】
また、電動機GMは、エンジンEを駆動源として油圧ポンプPが作動している際には、バッテリ5に電力を蓄える発電手段として機能しうる。つまり、エンジンEを駆動源として油圧ポンプPを作動しているときにも、電動機GMは伝達軸1aに接続されたままになっている。したがって、伝達軸1aの回転によって電動機GMに起電力が生じることとなり、電動機GMとバッテリ5とが接続されていれば、バッテリ5に充電を行うことが可能となっている。
【0014】
上記のように、油圧ポンプPの駆動源を切り換えたり、あるいはバッテリ5への充電を制御したりするのがコントローラCである。このコントローラCには、各コントロールバルブCVの位置を検出するストロークセンサ6が接続されており、各コントロールバルブCVの位置を知らせる信号がコントローラCに入力するようになっている。また、コントローラCには、PTO検出センサ7、電動機検出センサ8およびバッテリ検出センサ9が接続されている。
PTO検出センサ7は、PTO装置1の接続状態を検出するものであり、エンジンEと油圧ポンプPとが接続されているか否かを示す信号をコントローラCに入力する。
また、電動機検出センサ8は、電動機GMの駆動状態や故障などの検出信号をコントローラCに入力し、バッテリ検出センサ9は、バッテリ残量などをコントローラCに入力する。
【0015】
なお、コントローラCには、操作部10から操作信号が入力するようになっている。この操作部10は、各作業用アクチュエータ3を作動するためのアクチュエータ作動スイッチ10aを備えており、アクチュエータ作動スイッチ10aから入力した信号に基づいて、コントローラCは、いずれかのコントロールバルブCVを切り換えるように制御する。
【0016】
また、操作部10には、PTO駆動スイッチ10bおよび電動駆動スイッチ10cが設けられている。これら両スイッチ10b,10cは、エンジンEまたは電動機GMのいずれの出力で作業を行うか、言い換えれば、油圧ポンプPの駆動源をエンジンEとするか電動機GMとするかを選択するものである。PTO駆動スイッチ10bから操作信号が入力すると、コントローラCは、PTO装置1を制御してエンジンEと油圧ポンプPとを接続する。これにより、油圧ポンプPは、エンジンEの出力によって作動することとなり、作業がエンジンEの出力によって実行されることとなる。一方、電動駆動スイッチ10cから操作信号が入力すると、コントローラCは、PTO装置1を制御してエンジンEと油圧ポンプPとを断接するとともに、アクチュエータ作動スイッチ10aから操作信号が入力したところで、電動機GMを駆動するようにインバータ4を制御する。これにより、油圧ポンプPは、電動機GMの出力によって作動することとなり、作業が電動機GMの出力によって実行されることとなる。
【0017】
そして、本実施形態においては、コントローラCは、各センサ6〜9から入力する検出信号や操作部10から入力する操作信号を判定するとともに、その判定結果が予め設定された条件に適合する場合に限り、電動機GMを発電手段として機能するように制御する。このコントローラCが実行する処理について、図2を用いて説明する。なお、図2に示す処理は、電動駆動スイッチ10cがOFFされているときにのみ、所定の間隔で実行されるものである。
【0018】
(ステップS1)
まず、コントローラCは、PTO検出センサ7からの入力信号に基づいて、PTO装置1を介してエンジンEと油圧ポンプPとが接続状態にあるか否かを判定する。その結果、エンジンEと油圧ポンプPとが接続されている場合にはステップS2に処理を移し、エンジンEと油圧ポンプPとが断接されている場合にはステップS6に処理を移す。
【0019】
(ステップS2)
上記ステップS1において、エンジンEと油圧ポンプPとが接続されていると判定した場合には、コントローラCは、ストロークセンサ6からの入力信号に基づいて、いずれかの作業用アクチュエータ3が作動中であるか否かを判定する。その結果、全ての作業用アクチュエータ3が作動停止状態であると判定した場合にはステップS3に処理を移し、いずれかの作業用アクチュエータ3が作動中であると判定した場合にはステップS6に処理を移す。
【0020】
(ステップS3)
上記ステップS2において、全ての作業用アクチュエータ3が作動停止状態であると判定した場合には、コントローラCは、電動機検出センサ8からの入力信号に基づいて、電動機GMに異常が生じているか否かを判定する。その結果、電動機GMに異常は生じていないと判定した場合にはステップS4に処理を移し、電動機GMに異常が生じていると判定した場合にはステップS6に処理を移す。
【0021】
(ステップS4)
上記ステップS3において、電動機GMが正常であると判定した場合には、コントローラCは、バッテリ検出センサ9からの入力信号に基づいて、バッテリ5に異常が生じているか否かを判定する。その結果、バッテリ5に異常は生じていないと判定した場合にはステップS5に処理を移し、バッテリ5に異常が生じていると判定した場合にはステップS6に処理を移す。
【0022】
(ステップS5)
上記ステップS4において、バッテリ5が正常であると判定した場合には、コントローラCは、電動機GMとバッテリ5との接続回路に設けられたスイッチを閉じるようにインバータ4を制御する。これにより、エンジンEを駆動源として油圧ポンプPが作動しているときに、電動機GMが発電手段として機能し、バッテリ5に電力が蓄えられることとなる。
【0023】
(ステップS6)
一方、エンジンEと油圧ポンプPとが接続されていない場合(ステップS1のNO)、いずれかの作業用アクチュエータ3が作動している場合(ステップS2のYES)、電動機GMまたはバッテリ5に異常が生じている場合(ステップS3,4のYES)には、コントローラCは、インバータ4を制御して電動機GMとバッテリ5との接続回路を開く。このように、電動機GMとバッテリ5の接続回路が開かれることにより、電動機GMが発電手段として機能しない状態となる。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、エンジンEが油圧ポンプPの駆動源として選択され、かつ、全ての作業用アクチュエータ3が作動停止状態である場合に限って、電動機GMを発電手段として機能させるようにしている。つまり、従来、油圧ポンプPから単に作動油が吐出するだけのいわゆるアイドリング中にのみバッテリ5に充電が行われる。これにより、充電によってもたらされる負荷変動によって、作業用アクチュエータ3の作動に影響が及ぼされる心配をなくしながらも、作業待機中にバッテリ5に充電を行うことが可能となる。
【0025】
なお、上記実施形態においては、本発明を塵芥収集車に適用した場合について説明したが、本発明は塵芥収集車に限らず、作業用アクチュエータを有する作業機械が積載された作業車両に広く適用可能である。
また、上記実施形態においては、エンジンEが油圧ポンプPの駆動源として選択され、かつ、全ての作業用アクチュエータ3が作動停止状態である場合に限って、電動機GMを発電手段として機能させることとしている。しかしながら、電動機を発電手段として機能させる条件はこれに限らない。例えば、複数の作業用アクチュエータのうち、その作動にもっとも大出力が要求される作業用アクチュエータが作動停止状態にあることを、電動機を発電手段として機能させる条件としてもよい。つまり、電動機を発電手段として機能させる条件を、エンジンが油圧ポンプの駆動源として選択され、かつ、複数の作業用アクチュエータのうち予め設定された作業用アクチュエータが作動停止状態にあることとしても構わない。
【0026】
さらには、エンジンを駆動源として作業を行う場合に、いずれの作業用アクチュエータを作動したとしても出力に十分な余裕がある場合には、作業用アクチュエータの作動状況に関わらずに、電動機を発電手段として機能させてもよい。つまり、エンジンが油圧ポンプの駆動源として選択されていることのみを、電動機を発電手段として機能させる条件としてもよい。
【0027】
なお、本実施形態において、PTO駆動スイッチ10bおよび電動駆動スイッチ10cからの操作信号の入力を受けてPTO装置1または電動機GMを制御するコントローラCが本発明の駆動源切り換え手段に相当する。
また、本実施形態において、ストロークセンサ6からの入力信号に基づき、図2に示すステップS2の処理を実行するコントローラCが本発明の状態判定手段に相当する。
また、本実施形態において、図2に示すステップS5またはステップS6の処理を実行するコントローラCが本発明の充電許可手段に相当する。
【符号の説明】
【0028】
1 PTO装置
2 吐出通路
3 作業用アクチュエータ
4 インバータ
5 バッテリ
6 ストロークセンサ
7 PTO検出センサ
8 電動機検出センサ
9 バッテリ検出センサ
10 操作部
10a アクチュエータ作動スイッチ
10b PTO駆動スイッチ
10c 電動駆動スイッチ
C コントローラ
CV コントロールバルブ
E エンジン
GM 電動機
P 油圧ポンプ
T タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにPTO装置を介して接続可能なエンジンと、
前記油圧ポンプに連結され、バッテリから供給される電力によって前記油圧ポンプを駆動する電動機と、
前記エンジンまたは電動機のいずれかを前記油圧ポンプの駆動源として切り換え選択する駆動源切り換え手段と、を備え、
前記電動機は、
前記駆動源切り換え手段によって前記エンジンが油圧ポンプの駆動源として選択されている場合に、前記PTO装置の作動によって前記バッテリに電力を蓄える発電手段として機能することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記作業用アクチュエータの作動状態または作動停止状態を判定する状態判定手段と、
前記状態判定手段の判定結果に応じて前記バッテリへの充電を可能とする充電許可手段と、を備え、
前記充電許可手段は、
前記駆動源切り換え手段によって前記エンジンが油圧ポンプの駆動源として選択され、かつ、前記状態判定手段によって前記作業用アクチュエータが作動停止状態であると判定された場合に、前記バッテリへの充電を可能とすることを特徴とする請求項1記載の作業車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−116637(P2012−116637A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269239(P2010−269239)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】