作業車両
【課題】状況に応じて効率の良いDPFの再生を課題とする。
【解決手段】排気ガス中の粒状化物質PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ46bとディーゼルエンジンEを搭載し、ディーゼルパティキュレートフィルタ46b内の粒状化物質PMを除去する再生制御を行う構成の作業車両において、ディーゼルパティキュレートフィルタ46bの上流側に燃焼室73を有する第二排気通路71を設け、この第二排気通路71を迂回するようにバルブ72を有する第一排気通路70を設けた作業車両とする。また、ディーゼルパティキュレートフィルタ46bを再生しない運転のときには、バルブ72を全開するように構成した作業車両とする。
【解決手段】排気ガス中の粒状化物質PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ46bとディーゼルエンジンEを搭載し、ディーゼルパティキュレートフィルタ46b内の粒状化物質PMを除去する再生制御を行う構成の作業車両において、ディーゼルパティキュレートフィルタ46bの上流側に燃焼室73を有する第二排気通路71を設け、この第二排気通路71を迂回するようにバルブ72を有する第一排気通路70を設けた作業車両とする。また、ディーゼルパティキュレートフィルタ46bを再生しない運転のときには、バルブ72を全開するように構成した作業車両とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気系に粒状化物質(PM)を除去するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備え、ディーゼルエンジンを搭載した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
DPF内部に粒状化物質(PM)が溜まると排気温度を上昇させて除去(再生)する必要があるが、DPF自体の温度が低いと再生が効率良く行われず再生不良になってしまう。そこで、DPFの上流側に燃料噴射ノズルと点火プラグを有するバーナー燃焼室を設け、DPF内のPM量が多くなるとバーナーに点火して排気ガス温度を上げ、高温の排気ガス温度でDPF内のPMを焼く飛ばす構成である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−260944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知技術においては、エンジンに高負荷が作用して排気ガス温度が高くなりすぎると、DPF再生のための燃料噴射ノズルは排気ガスから熱害を受けてしまい損傷してしまう可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消するディーゼルエンジンを搭載した作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)とディーゼルエンジン(E)を搭載し、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)内の粒状化物質(PM)を除去する再生制御を行う構成の作業車両において、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側に燃焼室(73)を有する第二排気通路(71)を設け、この第二排気通路(71)を迂回するようにバルブ(72)を有する第一排気通路(70)を設けたことを特徴とする作業車両としたものである。
【0007】
排気ガスは、条件により第二排気通路(71)又は第一排気通路(70)のいずれか一方、またはその両方を通過する。
請求項2記載の発明では、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生しない運転のときには、前記バルブ(72)を全開するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
【0008】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生しない運転のときにはバルブ(72)を全開する。排気ガスは、第二排気通路(71)と第一排気通路(70)の両方を通過する。
【0009】
請求項3記載の発明では、作業車両を停車させてアイドリング状態のエンジン回転数で前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する運転のときには、前記バルブ(72)を全閉し、前記燃焼室(73)に設けている燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射して点火用グロープラグ(75)に通電するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
【0010】
作業車両を停車させてアイドリング状態のエンジン回転数でディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する運転のときには、バルブ(72)を全閉する。排気ガスは、第二排気通路(71)のみを通過する。そして、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射して点火用グロープラグ(75)に通電する。
【0011】
請求項4記載の発明では、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側に排気ガスの温度を検出する排気ガス温度センサ(92)を設け、排気ガス温度センサ(92)の検出値が所定範囲内になると、バルブ(72)を部分的に閉じて排気ガスの一部を燃焼室(73)へ誘導し、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
【0012】
排気ガス温度センサ(92)の検出値が所定範囲内になると、バルブ(72)を部分的に閉じて排気ガスの一部を燃焼室(73)へ誘導する。排気ガスは、第二排気通路(71)と第一排気通路(70)の両方を通過する。そして、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、状況に応じて排気ガスの通路を第二排気通路(71)や第一排気通路(70)を選択することで、効率の良いDPF(46b)の再生ができる。
【0014】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生しない運転のときにはバルブ(72)を全開することで、排気ガスは第二排気通路(71)と第一排気通路(70)の両方を通過するので、燃料噴射ノズル(74)側を通過する排気ガス温度が相対的に低くなる。これにより、燃料噴射ノズル(74)は、高温の排気ガスから受ける熱害の影響が少なくなる。
【0015】
請求項3記載の発明においては、請求項1の効果に加え、作業車両を停車させてアイドリング状態のエンジン回転数でディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する運転のときには、バルブ(72)を全閉し、燃焼室(73)に設けている燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射して点火用グロープラグ(75)に通電するように構成したので、メイン噴射の後に行うポスト噴射に比べて、DPF(46b)の近い場所で燃料が燃焼するので、より高温の排気ガスがDPF(46b)を通過することで粒状化物質(PM)が焼き飛ばされ、DPF(46b)の再生が良好に行われるようになる。そして、DPF(46b)の近い場所で燃料が燃焼するので、ポスト噴射に比べて燃料使用量が少なくて済み、さらに燃え残った燃料がオイルに混入する不具合を防止できるようになる。
【0016】
請求項4記載の発明においては、請求項1の効果に加え、排気ガス温度センサ(92)の検出値が所定範囲内になると、バルブ(72)を部分的に閉じて排気ガスの一部を燃焼室(73)へ誘導し、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射するように構成したので、DPF(46b)内にPMが多く詰まっていない状態、即ち、特に急な再生を要しない状況でも、特定の条件により高温の排気ガスがDPF(46b)内を通過するので(PM)が除去され、強制再生の頻度を少なくすることができて燃料使用量を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクタの左側面図
【図4】トラクタの平面図
【図5】吸気系と排気系の模式図
【図6】(a)排気系の模式図(通常運転時)、(b)排気系の模式図(DPF再生運転時)
【図7】排気系の模式図(排気温度所定範囲内でのDPF再生運転時)
【図8】吸気系と排気系の模式図
【図9】(a)排気系の模式図(煤排出多い条件時)、(b)排気系の模式図(煤排出少ない条件時)
【図10】EGRバルブ制御とDPF再生のフローチャート
【図11】自動再生時における耕深深さ制御のフローチャート
【図12】DPFの断面図
【図13】トラクタのエンジンルームの断面図
【図14】DPFの断面図
【図15】冷却水の流れの模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
なお、後述する各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【0019】
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
【0020】
このように、コモンレール1は、エンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0021】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
【0022】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0023】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0024】
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0025】
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
【0026】
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
【0027】
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0028】
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0029】
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
【0030】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0031】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0032】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケースT内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0033】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
【0034】
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0035】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダーである。
【0036】
図5はエンジンのシリンダー5内への吸気と排気の模式図であり、4サイクルのディーゼルエンジンの実施例である。過給器TBの吸気タービン36により過給された空気は、エアクリーナー35から吸気タービン36、インタークーラー37を通過して吸気マニホールド38からシリンダー5内へ送られる構成である。39は吸気バルブであり、40はピストンである。48はカムでありロッカーアーム49を介して吸排気バルブ39、41を開閉させるものである。
【0037】
シリンダー5内で燃焼した排ガスは、排気バルブ41から排気マニホールド42を通過した後、過給器TBの排気タービン45で過給器TBを駆動して排出される構成である。
このディーゼルエンジンは、排気ガスの一部を吸気側に混入させるためのEGR(排気再循環装置)回路44を有している。EGR回路で排気ガスの一部を吸気側に混入させることで酸素量(O2)を減らして、窒素酸化物Noxの発生を低減させるように構成している。ただし、EGR率が上昇しすぎると、逆に酸素量が少なくなって不完全燃焼になるので、燃焼状態によりEGR率を調節する必要がある。この調節は、EGRバルブ43にて行う。EGR回路44は、後述する後処理装置46下流側の排気管55と過給器TBの吸気タービン36上流側の吸入管56との間を接続している。また、EGR回路44の途中にはEGRクーラ57を設ける構成としている。このEGRバルブ43の開閉具合でシリンダー5内への排気ガスの還元量が変化する。
【0038】
排気タービン45を通過後の排気ガスは、後処理装置46を通過してマフラー50から大気中に排出される。後処理装置46は、酸化触媒(DOC)46aとディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bとから構成されている。
【0039】
酸化触媒(DOC)は不燃物室を燃焼させるものであり、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)は粒状化物質(PM)を捕集するためのものである。前記EGRバルブ43と絞り弁47については、ECU100により制御される構成である。後処理装置46はディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bのみで構成してもよい、酸化触媒(DOC)を設けると不燃物質が燃焼するので、よりクリーンな排気ガスとなる。
【0040】
DPF46bは、排気ガスの温度が低い状態(低負荷)が長時間続くと、PMが溜まってきて能力の低下が懸念される。そこで、後処理装置46の下手側に絞り弁47を設け、この絞り弁47を絞るとDPF46b内の圧力が高く保持されるので温度も高くなる。これにより、高い温度の影響により、DPF46bの再生が可能となる。即ち、高い温度の排気ガスがDPF46bを通過すると、DPF46b内に存在しているPMが焼き飛ばされることでDPF46bが再生される。
【0041】
DPF46bを再生させるためのDPF再生運転としては、EGRバルブ43と絞り弁47の両方を絞る。そして、燃料噴射タイミングのリタード(遅角)と合わせてDPF46b内のガス温度を上昇させ、DPF46bが再生に入るようにする。これにより、燃料のアフター噴射(排気ガス温度を上昇させるため)が不要となったり、アフター噴射の回数を減らすことができるようになるので、燃料消費量を抑制できて環境にもよい。
【0042】
このようなDPF再生運転を行うための条件としては、後処理装置46の上手側に圧力センサ52を設け、後処理装置46の下手側にも圧力センサ53を設け、この圧力差が所定値以上になるとDPF46b内にPMが蓄積して抵抗となっている状態なので、DPF再生運転を行うようにする。また、圧力センサ52の替わりにDOC46aとDPF46bとの間に圧力センサ58を設ける構成としてもよい。
【0043】
また、DPF再生運転に入った状態が長時間続くと、過熱状態となってしまいDPF46bが損傷してしまう。そこで、後処理装置46の下手側に温度センサ59を設け、この温度センサ59の値が所定値を超えるとDPF再生運転を止めて通常運転に戻るようにする。
【0044】
通常の運転は、EGRバルブ43と絞り弁47を同時に制御してEGR量を適宜コントロールするようにする。特に、絞り弁47を有することで、DPF46b内のガス温度を高く保持することができるようになる。
【0045】
前述のような構成としたことで、吸気スロットルが不要となる。即ち、過給器付き機関では吸気側圧力が高いので、EGRガス量を確保するために排気絞り弁または吸気スロットルを設け、EGRバルブと連動した制御が必要となるが、このようなシステムが不要となる。
【0046】
また、DPF46b下流の排気ガスを取り出すために、過給器TBの汚れに伴う性能劣化を生じることを防止できるようになる。そして、EGRガスはEGRクーラ57で冷却されるため、NOx低減に対して効果が大きくなる。
【0047】
前述したように、DPFの再生運転を行なうDPF強制再生モードにおいては、排気絞り弁47を絞り、ON−OFF制御によってEGRバルブ43を全閉とするように構成する。したがって、排気ガスの還元が行なわれないのでNOが増加し、このNOが酸化触媒(DOC)46aによってNO2に転換され、DPF46bの再生が促進されるようになる。
【0048】
また、DPF46bの強制再生中において、エンジン回転がローアイドルに移行した場合は、前記EGRバルブ43を全開とする。DPF46bの下流側には温度センサ59を設けているので、この温度センサ59による検出値が所定値以上に上昇したことも条件に加えるようにしてもよい。
【0049】
前記絞り弁47を絞ってDPF46bの強制再生を行なう場合において、エンジン回転数を低い回転数にして供給酸素量を増加させるとともに、排気ガス流速が減少することで温度を上昇しやすくしていた。ところが、再生中にエンジン回転数がローアイドルまたはその近傍に変更された場合、供給酸素量の増加と流速の減少により、煤が急速に燃焼してしまう。その結果、温度が急速に上昇してDPF46bが損傷してしまう可能性がある。そこで、最高温度が許容温度を超えないようにする煤を管理する必要がある。
【0050】
このために、温度センサ59が所定値を超えると、エンジン回転数を中速域まで上昇させるように構成する。これにより、排気ガスの流速が速くなるので最高温度が下がり、DPF46bの損傷を防止できるようになる。また、前記温度センサ59の所定値の値を限界値近傍で制御すると、DPF46bの再生を効率よく行なうことができるようになる。
【0051】
前記エンジン回転数を中速域まで上昇させるにあたり、一旦最高回転数まで上昇させ、その後中速域まで減速させるように構成してもよい、これにより、一旦排気ガスが最高速度で流れるので、予熱などでDPF46bが加熱されてしまって閾値の温度を超えてしまうことを防止できるようになる。
【0052】
また、DPF46bの強制再生中において、前述のようにエンジン回転数をローアイドルに移行するときにおいて、ポスト噴射を中断し、その後エンジン回転数を最高回転数まで上昇させ、中速域に移行する段階でポスト噴射を再開する構成とする。これにより、排気ガス温度の急激な上昇が抑制できるので、DPF46bの損傷を防止できるようになる。
【0053】
DPF46b前後の差圧が所定値以上になった場合、作業後に運転者がDPF46bの再生モードを選択スイッチ67で選択することで、自動でDPF46bの再生を行い、DPF46b再生後は自動でエンジンを停止するように構成する。DPF46b前後の差圧を圧力センサ58、53で監視する。エンジン停止直前のDPF46b前後差圧が所定値以上であると、警告ランプやアラームで報知し、運転者は自らDPF46bの再生を行なうスイッチ(図示せず)を操作する。
【0054】
そして、エンジンキーが切りの位置になっても、前記再生モードを選択していることで、エンジンはアイドリング状態で回転を維持し、DPF46bの再生を実行する。DPF46b前後の差圧が所定値以下になると、エンジンを自動で停止する。
【0055】
これにより、作業終了後であっても自動でDPF46bの再生、エンジン停止が可能となるために、運転者は本機から離れて他の作業ができるようになる。
DPF46bの再生を行なうときには、図5に示すように、吸気側の空気を管路61からDPF46bの上流側に送るように構成してもよい。即ち、DPF46bの再生を行なうときには、バルブ60を開いて酸素量の多い過給器TB上流側の吸気側の空気をDPF46bの上流側に送るように構成してもよい。これにより、再生効率が向上するようになる。
【0056】
また、DPF46bの温度を温度センサ62、59で監視し、3段階のステップで再生時の昇温を確認するようにしてもよい。まず、吸気の絞り(図示せず)を行い、この吸気の絞り状態での昇温確認を行う。次に、第一ポスト噴射を行って昇温を確認する。この時点で、DPF46bの前後温度が250度に達していなければ第二ポスト噴射を行っても更なる温度上昇は見込めないので、一旦再生を中断するようにする。もちろん、250度以上であれば第二ポスト噴射を行ってDPF46bの再生を行なうようにする。
【0057】
図5に示しているように、DPF46bの下流側には空燃比センサ63を設けている。ポスト噴射を行なってDPF46bの再生を行なう場合、燃料噴射量が多くなりすぎると燃費が悪化し、少ないと温度が上昇しなくて再生ができなくなる。そこで、空燃比センサ63の値をECU100にフィードバックして噴射量を決める構成とする。これにより、適切な燃費となるとともに、DPF46bの再生の可能となる。また、前記空燃比センサ63の替わりに吸気マニホールド内の圧力値をフィードバックするように構成してもよい。
【0058】
前述のようなDPF46bの再生を行なうにあたり、複数気筒の場合、一部の気筒の燃焼を停止するように構成してもよい。このように、一部気筒の燃焼を停止することで、エンジンのフリクションは同一でもシリンダーあたりの負荷を増やして排気温度を上昇させるようにしてもよい。
【0059】
図6について説明する。後処理装置46の上流側に第一排気通路70と第二排気通路71を構成している。第一排気通路70にはバルブ72を設けている。第二排気通路71には燃焼室73を設けており、この燃焼室73内に燃料を噴射する燃料噴射ノズル74と点火用グロープラグ75を設けている。
【0060】
図6(a)は通常運転時の状態を示しており、バルブ72を全開している。ことときは、排気ガスは第一排気通路70と第二排気通路71の両方に流れる。従って、第二排気通路71を流れる排気ガスの量が減る状態となる。これにより、燃料噴射ノズル74を排気ガスの熱から保護できる。
【0061】
図6(b)はDPF46bを強制(手動)再生(機体は停車状態。エンジン回転数はアイドリング。メイン噴射の後にポスト噴射を行う。)させる場合であり、バルブ72を全閉して全ての排気ガスを燃焼室73へ誘導している。そして、燃料噴射ノズル74から燃料を噴射し、点火用グロープラグ75に通電して燃料に点火する構成とする。これにより、メイン噴射の後に行うポスト噴射に比べて、DPF46bの近い場所で燃料が燃焼するので、より高温の排気ガスがDPF46bを通過することで粒状化物質PMが焼き飛ばされ、DPF46bの再生が良好に行われるようになる。そして、DPF46bの近い場所で燃料が燃焼するので、ポスト噴射に比べて燃料使用量が少なくて済み、さらに燃え残った燃料がオイルに混入する不具合を防止できるようになる。
【0062】
DPF46bの強制再生は、これ以上機体を走行させるとDPF46b内のPMの詰まり状態が飽和してしまい、DPF46bが損傷してしまう可能性があるので、機体を停車させた状態で行う。
【0063】
図7は走行中(作業中でも非作業中でもよい。)において、エンジンにある程度の負荷(約20%〜40%)が作用した状態を示している。負荷の検出は負荷演算手段91(図5)で行う。具体的な負荷の演算は、設定しているエンジン回転数Rを維持可能な最大燃料噴射量Q1を分母とし、エンジン回転数Rを実際に維持するために使用されている現在の燃料噴射量Q2を分子として負荷率を算出している。
【0064】
このように、エンジンにある程度の負荷(約20%〜40%)が作用しているときには、バルブ72を部分的に閉じ(略50%)て排気ガスの一部を燃焼室73へ誘導する。即ち、第二排気通路71に流れる排気ガスの量を多くする。そして、燃料噴射ノズル74から燃料を噴射する。点火用グロープラグ75に通電しなくても、エンジンにはある程度の負荷が作用しているため排気温度が高く、このため燃料に着火する。これにより、DPF(46b)内にPMが多く詰まっていない状態、即ち、特に急な再生を要しない状況でも、特定の条件により高温の排気ガスがDPF(46b)内を通過するので(PM)が除去され、強制再生の頻度を少なくすることができて燃料使用量を抑制できる。
【0065】
また、前記負荷演算手段91の代わりに排気ガスの温度により前述のような制御を行ってもよい。排気ガス温度センサ92は、後処理装置46の上流側に設ける構成としている。この排気ガス温度センサ92により、排気ガス温度が所定値(T1)以上で所定値(T2)以下の範囲内にあれば、バルブ72を部分的に閉じ(略50%)て排気ガスの一部を燃焼室73へ誘導する。そして、同様に燃料噴射ノズル74から燃料を噴射し、点火用グロープラグ75に通電しない構成とする。これにより、高温の排気ガスがDPF46b内を通過するのでPMが除去され、図6(b)のような強制再生の頻度を少なくすることができて燃料使用量を抑制できる。
【0066】
前記排気ガス温度T1は、燃料噴射ノズル74から燃料を噴射すると燃料が着火する温度であり、前記排気ガス温度T2は、燃料噴射ノズル74が損傷しない温度にしている。
図8は過給器TBの上流にエアーフローセンサ76と吸気絞り弁77を設ける構成である。そして、DPF46bの強制再生中に吸気量をモニターし、空気量と燃料噴射量から空燃比を演算する。空燃比が大きい場合には吸気絞り弁77の吸気絞り開度を小さくし、空燃比が小さい場合には吸気絞り弁77の吸気絞り開度を大きくする。これにより、未燃燃料が過剰に排気ガス中に混入するのを防止でき、適度な未燃燃料を排気ガス中に混合することで、後処理装置46が速やかに昇温していく。
【0067】
図9は後処理装置46に対してバイパス回路78を構成するものであり、バイパス回路78に絞り弁79を設けている。図9(a)は煤排出が多い条件のとき、即ち低速で高負荷の状態を示しており、絞り弁79を閉じることで排気ガスが浄化される。図9(b)は煤排出が少ない条件(排気ガス規制クリア)のときであり、絞り弁79を開いている。これにより、DPF46bに堆積する煤の量が減少して強制再生の頻度が少なくなる。また、排気ガスなバイパス回路78を流れるときは、DPF46b圧損による燃費の悪化を抑制可能となる。
【0068】
図10は手動でDPF46bを再生させる場合のフローチャートである。吸気温度が低いときには、EGR回路44(図5)のEGRバルブ43を開いて、排気温度を上昇させる構成とする。これにより、より高い温度でDPF46bを再生可能となり、再生時間が短縮されて燃費も向上するようになる。
【0069】
DPF46bを再生させるときには、前述したような条件(DPF前後の差圧等)で行うが、実際に測定しなくても推定して行うように構成してもよい。即ち、エンジン回転数、燃料噴射量、時間からDPF46b内のPM堆積量を推定して、DPF46bの再生を行う構成とする。そして、PMの堆積量を推定するにあたり、トラクタの傾斜地での走行を加味する構成とする。具体的には、トラクタに傾斜センサを設け、上り走行中と下り走行中でPM堆積量を補正マップで補正する構成とする。上り走行時は特定の比率によって計算した値を加算し、下り走行時は特定の比率によって計算した値を減算する構成とする。これにより、PMの堆積量を精度良く推定可能となる。
【0070】
トラクタが作業走行中にDPF46bの自動再生を行う場合において、作業時の排気ガス温度が低下すると、ロータリ等の作業機21を自動下降(手動下降を促してもよい)させて耕深深さを深くし、エンジン負荷を増大させる構成とする。この構成をフローチャート図11に示している。これにより、自動再生を継続可能となる。
【0071】
図12は後処理装置46の断面図を示している。矢印Kは通常の排気ガスの流れであり、矢印K1は外気方向の流れである。80は排気ガスの一部を後処理装置46の上流側に戻すリターン回路である。外気方向とリターン回路80の分岐点に切換弁81を設けている。DPF46b再生時において、排気ガス温度が低い場合はDPF46bの再生時間が長くなってしまう。そこで、排気ガス温度が低いときには、前記切換弁81を切り換えて排気ガスの一部を後処理装置46の上流側に戻す構成とする。これにより、DPF46bの再生時間を短くすることができ、また排気温度上昇のためのポスト噴射やポスト噴射量を少なくすることが可能となる。また、電熱線82で排気ガス温度を上昇させるように構成してもよい。
【0072】
前記図5に示す符号83は吸気側ヒータであり、符号84は排気側ヒータである。DPF46bの手動再生時において、吸気側ヒータ83と排気側ヒータ84に通電することで排気温度を上昇させ、さらに発電機の発電負荷を利用してエンジンに負荷掛けを行うことで排気温度を上昇させる構成とする。これにより、エンジンの基本構成を大きく変更することなく、DPF46bの手動再生に利用される燃料量を低減可能となる。また、ポスト噴射やポスト噴射量が少なくなることで、エンジン潤滑油がポスト噴射により希釈される量も少なくなる。吸気側ヒータ83と排気側ヒータ84については、両方設けてもよいしいずれか一方を設ける構成でもよい。
【0073】
図13はトラクタ前部のフレーム87上に搭載されているエンジンE、ラジエータ85、ラジエータファン86を示している。エンジンEの上方に後処理装置46を搭載している。後処理装置46は、その長手方向を機体の前後方向となるように配置している。
【0074】
図14は後処理装置46の断面を示している。後処理装置46の外周面はプレート88で覆う構成である。これにより、ラジエータファン86で起風された冷却風は、後処理装置46とプレート88との間を通過するようになる。従って、後処理装置46の過昇温を防止でき、周辺機器への悪影響を防止できるようになる。
【0075】
前記ラジエータファン86はモータ86aで回転する構成としているので、ラジエータファン86の回転数制御を行うことができる。通常であれば、冷却水温が76度前後となるように制御しているが、DPF46bの強制再生時には冷却水温が90度前後となるように制御する。これにより、排気温度が上昇してDPF46bの再生のアシストができ、再生時間が短くなる。また、ポスト噴射やポスト噴射量も少なくなる。
【0076】
図15は冷却水の流れを示す模式図である。エンジンEとラジエータ85との間に冷却水路が形成され、ウォーターポンプ89で冷却水を循環している。90はラジエータ85の出口部分に配置されているサーモスタットバルブである。通常であれば80度程度の水温でサーモスタットバルブ90が開いて冷却水が循環するが、DPF46b再生時においては、サーモスタットバルブ90を絞って冷却水の流れを阻害して冷却水温度を90度前後まで上昇させる構成とする。これにより、排気温度が上昇してDPF46bの再生のアシストができ、再生時間が短くなる。また、ポスト噴射やポスト噴射量も少なくなる。
【0077】
また、DPF46b再生時においては、サーモスタットバルブ90の動作温度自体を90度程度まで可変可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
PM 粒状化物質
E ディーゼルエンジン
46b ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
70 第一排気通路
71 第二排気通路
72 バルブ
73 燃焼室
74 燃料噴射ノズル
75 点火用グロープラグ
92 排気ガス温度センサ
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気系に粒状化物質(PM)を除去するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備え、ディーゼルエンジンを搭載した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
DPF内部に粒状化物質(PM)が溜まると排気温度を上昇させて除去(再生)する必要があるが、DPF自体の温度が低いと再生が効率良く行われず再生不良になってしまう。そこで、DPFの上流側に燃料噴射ノズルと点火プラグを有するバーナー燃焼室を設け、DPF内のPM量が多くなるとバーナーに点火して排気ガス温度を上げ、高温の排気ガス温度でDPF内のPMを焼く飛ばす構成である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−260944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知技術においては、エンジンに高負荷が作用して排気ガス温度が高くなりすぎると、DPF再生のための燃料噴射ノズルは排気ガスから熱害を受けてしまい損傷してしまう可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消するディーゼルエンジンを搭載した作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)とディーゼルエンジン(E)を搭載し、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)内の粒状化物質(PM)を除去する再生制御を行う構成の作業車両において、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側に燃焼室(73)を有する第二排気通路(71)を設け、この第二排気通路(71)を迂回するようにバルブ(72)を有する第一排気通路(70)を設けたことを特徴とする作業車両としたものである。
【0007】
排気ガスは、条件により第二排気通路(71)又は第一排気通路(70)のいずれか一方、またはその両方を通過する。
請求項2記載の発明では、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生しない運転のときには、前記バルブ(72)を全開するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
【0008】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生しない運転のときにはバルブ(72)を全開する。排気ガスは、第二排気通路(71)と第一排気通路(70)の両方を通過する。
【0009】
請求項3記載の発明では、作業車両を停車させてアイドリング状態のエンジン回転数で前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する運転のときには、前記バルブ(72)を全閉し、前記燃焼室(73)に設けている燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射して点火用グロープラグ(75)に通電するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
【0010】
作業車両を停車させてアイドリング状態のエンジン回転数でディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する運転のときには、バルブ(72)を全閉する。排気ガスは、第二排気通路(71)のみを通過する。そして、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射して点火用グロープラグ(75)に通電する。
【0011】
請求項4記載の発明では、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側に排気ガスの温度を検出する排気ガス温度センサ(92)を設け、排気ガス温度センサ(92)の検出値が所定範囲内になると、バルブ(72)を部分的に閉じて排気ガスの一部を燃焼室(73)へ誘導し、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
【0012】
排気ガス温度センサ(92)の検出値が所定範囲内になると、バルブ(72)を部分的に閉じて排気ガスの一部を燃焼室(73)へ誘導する。排気ガスは、第二排気通路(71)と第一排気通路(70)の両方を通過する。そして、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、状況に応じて排気ガスの通路を第二排気通路(71)や第一排気通路(70)を選択することで、効率の良いDPF(46b)の再生ができる。
【0014】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生しない運転のときにはバルブ(72)を全開することで、排気ガスは第二排気通路(71)と第一排気通路(70)の両方を通過するので、燃料噴射ノズル(74)側を通過する排気ガス温度が相対的に低くなる。これにより、燃料噴射ノズル(74)は、高温の排気ガスから受ける熱害の影響が少なくなる。
【0015】
請求項3記載の発明においては、請求項1の効果に加え、作業車両を停車させてアイドリング状態のエンジン回転数でディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する運転のときには、バルブ(72)を全閉し、燃焼室(73)に設けている燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射して点火用グロープラグ(75)に通電するように構成したので、メイン噴射の後に行うポスト噴射に比べて、DPF(46b)の近い場所で燃料が燃焼するので、より高温の排気ガスがDPF(46b)を通過することで粒状化物質(PM)が焼き飛ばされ、DPF(46b)の再生が良好に行われるようになる。そして、DPF(46b)の近い場所で燃料が燃焼するので、ポスト噴射に比べて燃料使用量が少なくて済み、さらに燃え残った燃料がオイルに混入する不具合を防止できるようになる。
【0016】
請求項4記載の発明においては、請求項1の効果に加え、排気ガス温度センサ(92)の検出値が所定範囲内になると、バルブ(72)を部分的に閉じて排気ガスの一部を燃焼室(73)へ誘導し、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射するように構成したので、DPF(46b)内にPMが多く詰まっていない状態、即ち、特に急な再生を要しない状況でも、特定の条件により高温の排気ガスがDPF(46b)内を通過するので(PM)が除去され、強制再生の頻度を少なくすることができて燃料使用量を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクタの左側面図
【図4】トラクタの平面図
【図5】吸気系と排気系の模式図
【図6】(a)排気系の模式図(通常運転時)、(b)排気系の模式図(DPF再生運転時)
【図7】排気系の模式図(排気温度所定範囲内でのDPF再生運転時)
【図8】吸気系と排気系の模式図
【図9】(a)排気系の模式図(煤排出多い条件時)、(b)排気系の模式図(煤排出少ない条件時)
【図10】EGRバルブ制御とDPF再生のフローチャート
【図11】自動再生時における耕深深さ制御のフローチャート
【図12】DPFの断面図
【図13】トラクタのエンジンルームの断面図
【図14】DPFの断面図
【図15】冷却水の流れの模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
なお、後述する各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【0019】
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
【0020】
このように、コモンレール1は、エンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0021】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
【0022】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0023】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0024】
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0025】
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
【0026】
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
【0027】
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0028】
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0029】
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
【0030】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0031】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0032】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケースT内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0033】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
【0034】
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0035】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダーである。
【0036】
図5はエンジンのシリンダー5内への吸気と排気の模式図であり、4サイクルのディーゼルエンジンの実施例である。過給器TBの吸気タービン36により過給された空気は、エアクリーナー35から吸気タービン36、インタークーラー37を通過して吸気マニホールド38からシリンダー5内へ送られる構成である。39は吸気バルブであり、40はピストンである。48はカムでありロッカーアーム49を介して吸排気バルブ39、41を開閉させるものである。
【0037】
シリンダー5内で燃焼した排ガスは、排気バルブ41から排気マニホールド42を通過した後、過給器TBの排気タービン45で過給器TBを駆動して排出される構成である。
このディーゼルエンジンは、排気ガスの一部を吸気側に混入させるためのEGR(排気再循環装置)回路44を有している。EGR回路で排気ガスの一部を吸気側に混入させることで酸素量(O2)を減らして、窒素酸化物Noxの発生を低減させるように構成している。ただし、EGR率が上昇しすぎると、逆に酸素量が少なくなって不完全燃焼になるので、燃焼状態によりEGR率を調節する必要がある。この調節は、EGRバルブ43にて行う。EGR回路44は、後述する後処理装置46下流側の排気管55と過給器TBの吸気タービン36上流側の吸入管56との間を接続している。また、EGR回路44の途中にはEGRクーラ57を設ける構成としている。このEGRバルブ43の開閉具合でシリンダー5内への排気ガスの還元量が変化する。
【0038】
排気タービン45を通過後の排気ガスは、後処理装置46を通過してマフラー50から大気中に排出される。後処理装置46は、酸化触媒(DOC)46aとディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bとから構成されている。
【0039】
酸化触媒(DOC)は不燃物室を燃焼させるものであり、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)は粒状化物質(PM)を捕集するためのものである。前記EGRバルブ43と絞り弁47については、ECU100により制御される構成である。後処理装置46はディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bのみで構成してもよい、酸化触媒(DOC)を設けると不燃物質が燃焼するので、よりクリーンな排気ガスとなる。
【0040】
DPF46bは、排気ガスの温度が低い状態(低負荷)が長時間続くと、PMが溜まってきて能力の低下が懸念される。そこで、後処理装置46の下手側に絞り弁47を設け、この絞り弁47を絞るとDPF46b内の圧力が高く保持されるので温度も高くなる。これにより、高い温度の影響により、DPF46bの再生が可能となる。即ち、高い温度の排気ガスがDPF46bを通過すると、DPF46b内に存在しているPMが焼き飛ばされることでDPF46bが再生される。
【0041】
DPF46bを再生させるためのDPF再生運転としては、EGRバルブ43と絞り弁47の両方を絞る。そして、燃料噴射タイミングのリタード(遅角)と合わせてDPF46b内のガス温度を上昇させ、DPF46bが再生に入るようにする。これにより、燃料のアフター噴射(排気ガス温度を上昇させるため)が不要となったり、アフター噴射の回数を減らすことができるようになるので、燃料消費量を抑制できて環境にもよい。
【0042】
このようなDPF再生運転を行うための条件としては、後処理装置46の上手側に圧力センサ52を設け、後処理装置46の下手側にも圧力センサ53を設け、この圧力差が所定値以上になるとDPF46b内にPMが蓄積して抵抗となっている状態なので、DPF再生運転を行うようにする。また、圧力センサ52の替わりにDOC46aとDPF46bとの間に圧力センサ58を設ける構成としてもよい。
【0043】
また、DPF再生運転に入った状態が長時間続くと、過熱状態となってしまいDPF46bが損傷してしまう。そこで、後処理装置46の下手側に温度センサ59を設け、この温度センサ59の値が所定値を超えるとDPF再生運転を止めて通常運転に戻るようにする。
【0044】
通常の運転は、EGRバルブ43と絞り弁47を同時に制御してEGR量を適宜コントロールするようにする。特に、絞り弁47を有することで、DPF46b内のガス温度を高く保持することができるようになる。
【0045】
前述のような構成としたことで、吸気スロットルが不要となる。即ち、過給器付き機関では吸気側圧力が高いので、EGRガス量を確保するために排気絞り弁または吸気スロットルを設け、EGRバルブと連動した制御が必要となるが、このようなシステムが不要となる。
【0046】
また、DPF46b下流の排気ガスを取り出すために、過給器TBの汚れに伴う性能劣化を生じることを防止できるようになる。そして、EGRガスはEGRクーラ57で冷却されるため、NOx低減に対して効果が大きくなる。
【0047】
前述したように、DPFの再生運転を行なうDPF強制再生モードにおいては、排気絞り弁47を絞り、ON−OFF制御によってEGRバルブ43を全閉とするように構成する。したがって、排気ガスの還元が行なわれないのでNOが増加し、このNOが酸化触媒(DOC)46aによってNO2に転換され、DPF46bの再生が促進されるようになる。
【0048】
また、DPF46bの強制再生中において、エンジン回転がローアイドルに移行した場合は、前記EGRバルブ43を全開とする。DPF46bの下流側には温度センサ59を設けているので、この温度センサ59による検出値が所定値以上に上昇したことも条件に加えるようにしてもよい。
【0049】
前記絞り弁47を絞ってDPF46bの強制再生を行なう場合において、エンジン回転数を低い回転数にして供給酸素量を増加させるとともに、排気ガス流速が減少することで温度を上昇しやすくしていた。ところが、再生中にエンジン回転数がローアイドルまたはその近傍に変更された場合、供給酸素量の増加と流速の減少により、煤が急速に燃焼してしまう。その結果、温度が急速に上昇してDPF46bが損傷してしまう可能性がある。そこで、最高温度が許容温度を超えないようにする煤を管理する必要がある。
【0050】
このために、温度センサ59が所定値を超えると、エンジン回転数を中速域まで上昇させるように構成する。これにより、排気ガスの流速が速くなるので最高温度が下がり、DPF46bの損傷を防止できるようになる。また、前記温度センサ59の所定値の値を限界値近傍で制御すると、DPF46bの再生を効率よく行なうことができるようになる。
【0051】
前記エンジン回転数を中速域まで上昇させるにあたり、一旦最高回転数まで上昇させ、その後中速域まで減速させるように構成してもよい、これにより、一旦排気ガスが最高速度で流れるので、予熱などでDPF46bが加熱されてしまって閾値の温度を超えてしまうことを防止できるようになる。
【0052】
また、DPF46bの強制再生中において、前述のようにエンジン回転数をローアイドルに移行するときにおいて、ポスト噴射を中断し、その後エンジン回転数を最高回転数まで上昇させ、中速域に移行する段階でポスト噴射を再開する構成とする。これにより、排気ガス温度の急激な上昇が抑制できるので、DPF46bの損傷を防止できるようになる。
【0053】
DPF46b前後の差圧が所定値以上になった場合、作業後に運転者がDPF46bの再生モードを選択スイッチ67で選択することで、自動でDPF46bの再生を行い、DPF46b再生後は自動でエンジンを停止するように構成する。DPF46b前後の差圧を圧力センサ58、53で監視する。エンジン停止直前のDPF46b前後差圧が所定値以上であると、警告ランプやアラームで報知し、運転者は自らDPF46bの再生を行なうスイッチ(図示せず)を操作する。
【0054】
そして、エンジンキーが切りの位置になっても、前記再生モードを選択していることで、エンジンはアイドリング状態で回転を維持し、DPF46bの再生を実行する。DPF46b前後の差圧が所定値以下になると、エンジンを自動で停止する。
【0055】
これにより、作業終了後であっても自動でDPF46bの再生、エンジン停止が可能となるために、運転者は本機から離れて他の作業ができるようになる。
DPF46bの再生を行なうときには、図5に示すように、吸気側の空気を管路61からDPF46bの上流側に送るように構成してもよい。即ち、DPF46bの再生を行なうときには、バルブ60を開いて酸素量の多い過給器TB上流側の吸気側の空気をDPF46bの上流側に送るように構成してもよい。これにより、再生効率が向上するようになる。
【0056】
また、DPF46bの温度を温度センサ62、59で監視し、3段階のステップで再生時の昇温を確認するようにしてもよい。まず、吸気の絞り(図示せず)を行い、この吸気の絞り状態での昇温確認を行う。次に、第一ポスト噴射を行って昇温を確認する。この時点で、DPF46bの前後温度が250度に達していなければ第二ポスト噴射を行っても更なる温度上昇は見込めないので、一旦再生を中断するようにする。もちろん、250度以上であれば第二ポスト噴射を行ってDPF46bの再生を行なうようにする。
【0057】
図5に示しているように、DPF46bの下流側には空燃比センサ63を設けている。ポスト噴射を行なってDPF46bの再生を行なう場合、燃料噴射量が多くなりすぎると燃費が悪化し、少ないと温度が上昇しなくて再生ができなくなる。そこで、空燃比センサ63の値をECU100にフィードバックして噴射量を決める構成とする。これにより、適切な燃費となるとともに、DPF46bの再生の可能となる。また、前記空燃比センサ63の替わりに吸気マニホールド内の圧力値をフィードバックするように構成してもよい。
【0058】
前述のようなDPF46bの再生を行なうにあたり、複数気筒の場合、一部の気筒の燃焼を停止するように構成してもよい。このように、一部気筒の燃焼を停止することで、エンジンのフリクションは同一でもシリンダーあたりの負荷を増やして排気温度を上昇させるようにしてもよい。
【0059】
図6について説明する。後処理装置46の上流側に第一排気通路70と第二排気通路71を構成している。第一排気通路70にはバルブ72を設けている。第二排気通路71には燃焼室73を設けており、この燃焼室73内に燃料を噴射する燃料噴射ノズル74と点火用グロープラグ75を設けている。
【0060】
図6(a)は通常運転時の状態を示しており、バルブ72を全開している。ことときは、排気ガスは第一排気通路70と第二排気通路71の両方に流れる。従って、第二排気通路71を流れる排気ガスの量が減る状態となる。これにより、燃料噴射ノズル74を排気ガスの熱から保護できる。
【0061】
図6(b)はDPF46bを強制(手動)再生(機体は停車状態。エンジン回転数はアイドリング。メイン噴射の後にポスト噴射を行う。)させる場合であり、バルブ72を全閉して全ての排気ガスを燃焼室73へ誘導している。そして、燃料噴射ノズル74から燃料を噴射し、点火用グロープラグ75に通電して燃料に点火する構成とする。これにより、メイン噴射の後に行うポスト噴射に比べて、DPF46bの近い場所で燃料が燃焼するので、より高温の排気ガスがDPF46bを通過することで粒状化物質PMが焼き飛ばされ、DPF46bの再生が良好に行われるようになる。そして、DPF46bの近い場所で燃料が燃焼するので、ポスト噴射に比べて燃料使用量が少なくて済み、さらに燃え残った燃料がオイルに混入する不具合を防止できるようになる。
【0062】
DPF46bの強制再生は、これ以上機体を走行させるとDPF46b内のPMの詰まり状態が飽和してしまい、DPF46bが損傷してしまう可能性があるので、機体を停車させた状態で行う。
【0063】
図7は走行中(作業中でも非作業中でもよい。)において、エンジンにある程度の負荷(約20%〜40%)が作用した状態を示している。負荷の検出は負荷演算手段91(図5)で行う。具体的な負荷の演算は、設定しているエンジン回転数Rを維持可能な最大燃料噴射量Q1を分母とし、エンジン回転数Rを実際に維持するために使用されている現在の燃料噴射量Q2を分子として負荷率を算出している。
【0064】
このように、エンジンにある程度の負荷(約20%〜40%)が作用しているときには、バルブ72を部分的に閉じ(略50%)て排気ガスの一部を燃焼室73へ誘導する。即ち、第二排気通路71に流れる排気ガスの量を多くする。そして、燃料噴射ノズル74から燃料を噴射する。点火用グロープラグ75に通電しなくても、エンジンにはある程度の負荷が作用しているため排気温度が高く、このため燃料に着火する。これにより、DPF(46b)内にPMが多く詰まっていない状態、即ち、特に急な再生を要しない状況でも、特定の条件により高温の排気ガスがDPF(46b)内を通過するので(PM)が除去され、強制再生の頻度を少なくすることができて燃料使用量を抑制できる。
【0065】
また、前記負荷演算手段91の代わりに排気ガスの温度により前述のような制御を行ってもよい。排気ガス温度センサ92は、後処理装置46の上流側に設ける構成としている。この排気ガス温度センサ92により、排気ガス温度が所定値(T1)以上で所定値(T2)以下の範囲内にあれば、バルブ72を部分的に閉じ(略50%)て排気ガスの一部を燃焼室73へ誘導する。そして、同様に燃料噴射ノズル74から燃料を噴射し、点火用グロープラグ75に通電しない構成とする。これにより、高温の排気ガスがDPF46b内を通過するのでPMが除去され、図6(b)のような強制再生の頻度を少なくすることができて燃料使用量を抑制できる。
【0066】
前記排気ガス温度T1は、燃料噴射ノズル74から燃料を噴射すると燃料が着火する温度であり、前記排気ガス温度T2は、燃料噴射ノズル74が損傷しない温度にしている。
図8は過給器TBの上流にエアーフローセンサ76と吸気絞り弁77を設ける構成である。そして、DPF46bの強制再生中に吸気量をモニターし、空気量と燃料噴射量から空燃比を演算する。空燃比が大きい場合には吸気絞り弁77の吸気絞り開度を小さくし、空燃比が小さい場合には吸気絞り弁77の吸気絞り開度を大きくする。これにより、未燃燃料が過剰に排気ガス中に混入するのを防止でき、適度な未燃燃料を排気ガス中に混合することで、後処理装置46が速やかに昇温していく。
【0067】
図9は後処理装置46に対してバイパス回路78を構成するものであり、バイパス回路78に絞り弁79を設けている。図9(a)は煤排出が多い条件のとき、即ち低速で高負荷の状態を示しており、絞り弁79を閉じることで排気ガスが浄化される。図9(b)は煤排出が少ない条件(排気ガス規制クリア)のときであり、絞り弁79を開いている。これにより、DPF46bに堆積する煤の量が減少して強制再生の頻度が少なくなる。また、排気ガスなバイパス回路78を流れるときは、DPF46b圧損による燃費の悪化を抑制可能となる。
【0068】
図10は手動でDPF46bを再生させる場合のフローチャートである。吸気温度が低いときには、EGR回路44(図5)のEGRバルブ43を開いて、排気温度を上昇させる構成とする。これにより、より高い温度でDPF46bを再生可能となり、再生時間が短縮されて燃費も向上するようになる。
【0069】
DPF46bを再生させるときには、前述したような条件(DPF前後の差圧等)で行うが、実際に測定しなくても推定して行うように構成してもよい。即ち、エンジン回転数、燃料噴射量、時間からDPF46b内のPM堆積量を推定して、DPF46bの再生を行う構成とする。そして、PMの堆積量を推定するにあたり、トラクタの傾斜地での走行を加味する構成とする。具体的には、トラクタに傾斜センサを設け、上り走行中と下り走行中でPM堆積量を補正マップで補正する構成とする。上り走行時は特定の比率によって計算した値を加算し、下り走行時は特定の比率によって計算した値を減算する構成とする。これにより、PMの堆積量を精度良く推定可能となる。
【0070】
トラクタが作業走行中にDPF46bの自動再生を行う場合において、作業時の排気ガス温度が低下すると、ロータリ等の作業機21を自動下降(手動下降を促してもよい)させて耕深深さを深くし、エンジン負荷を増大させる構成とする。この構成をフローチャート図11に示している。これにより、自動再生を継続可能となる。
【0071】
図12は後処理装置46の断面図を示している。矢印Kは通常の排気ガスの流れであり、矢印K1は外気方向の流れである。80は排気ガスの一部を後処理装置46の上流側に戻すリターン回路である。外気方向とリターン回路80の分岐点に切換弁81を設けている。DPF46b再生時において、排気ガス温度が低い場合はDPF46bの再生時間が長くなってしまう。そこで、排気ガス温度が低いときには、前記切換弁81を切り換えて排気ガスの一部を後処理装置46の上流側に戻す構成とする。これにより、DPF46bの再生時間を短くすることができ、また排気温度上昇のためのポスト噴射やポスト噴射量を少なくすることが可能となる。また、電熱線82で排気ガス温度を上昇させるように構成してもよい。
【0072】
前記図5に示す符号83は吸気側ヒータであり、符号84は排気側ヒータである。DPF46bの手動再生時において、吸気側ヒータ83と排気側ヒータ84に通電することで排気温度を上昇させ、さらに発電機の発電負荷を利用してエンジンに負荷掛けを行うことで排気温度を上昇させる構成とする。これにより、エンジンの基本構成を大きく変更することなく、DPF46bの手動再生に利用される燃料量を低減可能となる。また、ポスト噴射やポスト噴射量が少なくなることで、エンジン潤滑油がポスト噴射により希釈される量も少なくなる。吸気側ヒータ83と排気側ヒータ84については、両方設けてもよいしいずれか一方を設ける構成でもよい。
【0073】
図13はトラクタ前部のフレーム87上に搭載されているエンジンE、ラジエータ85、ラジエータファン86を示している。エンジンEの上方に後処理装置46を搭載している。後処理装置46は、その長手方向を機体の前後方向となるように配置している。
【0074】
図14は後処理装置46の断面を示している。後処理装置46の外周面はプレート88で覆う構成である。これにより、ラジエータファン86で起風された冷却風は、後処理装置46とプレート88との間を通過するようになる。従って、後処理装置46の過昇温を防止でき、周辺機器への悪影響を防止できるようになる。
【0075】
前記ラジエータファン86はモータ86aで回転する構成としているので、ラジエータファン86の回転数制御を行うことができる。通常であれば、冷却水温が76度前後となるように制御しているが、DPF46bの強制再生時には冷却水温が90度前後となるように制御する。これにより、排気温度が上昇してDPF46bの再生のアシストができ、再生時間が短くなる。また、ポスト噴射やポスト噴射量も少なくなる。
【0076】
図15は冷却水の流れを示す模式図である。エンジンEとラジエータ85との間に冷却水路が形成され、ウォーターポンプ89で冷却水を循環している。90はラジエータ85の出口部分に配置されているサーモスタットバルブである。通常であれば80度程度の水温でサーモスタットバルブ90が開いて冷却水が循環するが、DPF46b再生時においては、サーモスタットバルブ90を絞って冷却水の流れを阻害して冷却水温度を90度前後まで上昇させる構成とする。これにより、排気温度が上昇してDPF46bの再生のアシストができ、再生時間が短くなる。また、ポスト噴射やポスト噴射量も少なくなる。
【0077】
また、DPF46b再生時においては、サーモスタットバルブ90の動作温度自体を90度程度まで可変可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
PM 粒状化物質
E ディーゼルエンジン
46b ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
70 第一排気通路
71 第二排気通路
72 バルブ
73 燃焼室
74 燃料噴射ノズル
75 点火用グロープラグ
92 排気ガス温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)とディーゼルエンジン(E)を搭載し、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)内の粒状化物質(PM)を除去する再生制御を行う構成の作業車両において、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側に燃焼室(73)を有する第二排気通路(71)を設け、この第二排気通路(71)を迂回するようにバルブ(72)を有する第一排気通路(70)を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生しない運転のときには、前記バルブ(72)を全開するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
作業車両を停車させてアイドリング状態のエンジン回転数で前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する運転のときには、前記バルブ(72)を全閉し、前記燃焼室(73)に設けている燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射して点火用グロープラグ(75)に通電するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側に排気ガスの温度を検出する排気ガス温度センサ(92)を設け、排気ガス温度センサ(92)の検出値が所定範囲内になると、バルブ(72)を部分的に閉じて排気ガスの一部を燃焼室(73)へ誘導し、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項1】
排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)とディーゼルエンジン(E)を搭載し、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)内の粒状化物質(PM)を除去する再生制御を行う構成の作業車両において、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側に燃焼室(73)を有する第二排気通路(71)を設け、この第二排気通路(71)を迂回するようにバルブ(72)を有する第一排気通路(70)を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生しない運転のときには、前記バルブ(72)を全開するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
作業車両を停車させてアイドリング状態のエンジン回転数で前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する運転のときには、前記バルブ(72)を全閉し、前記燃焼室(73)に設けている燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射して点火用グロープラグ(75)に通電するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側に排気ガスの温度を検出する排気ガス温度センサ(92)を設け、排気ガス温度センサ(92)の検出値が所定範囲内になると、バルブ(72)を部分的に閉じて排気ガスの一部を燃焼室(73)へ誘導し、燃料噴射ノズル(74)から燃料を噴射するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−159018(P2012−159018A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18466(P2011−18466)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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