説明

作業車輌の原動部構造

【課題】エンジンの冷却効率に優れ、保守・点検を容易に行なうことができる作業車輌の原動部構造を提供する。
【解決手段】エンジン(20)の外側の部位にラジエータ(80)を配置し、ラジエータ(80)の外側の部位に濾過体(12)を配置し、エンジン(20)とラジエータ(80)の間の部位にはファン(40)を配置し、エンジン(20)の駆動力を変速してファン(40)を駆動する正逆転出力可能な油圧式無段変速機(30)を設け、ファン(40)の回転軸芯方向から視て、油圧式無段変速機(30)をファン(40)の回転軌跡の外側に偏倚させて配置する構成としたことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車輌のエンジンルームの限られたスペースに、ラジエータ、冷却ファン、油圧式無段変速機及びエンジンを配置する作業車輌の原動部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインのエンジンルームの省スペースを図るため、特許文献1には、エンジンルームに機体外側から内側に向かってラジエータ、冷却ファン、油圧式無段変速機及びエンジンを並列に配置する原動部構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−88823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術にあっては、とエンジンとの間に油圧式無段変速機を配置し、油圧式無段変速機の入力軸をエンジンに対向する機体内側に位置させ、出力軸を冷却ファンに対向する機体外側に位置させていることから、機体正面視から見たエンジンルームの幅寸法が大きくなる。従って、エンジンルームが機体外側方に張出すこととなり、周囲に障害物が多い作業環境では、エンジンルームの外側部が、旋回時等に障害物と干渉しやすくなる問題があった。
また、冷却ファンにより吸入された外気をエンジンに向かって送風する際に、油圧式無段変速機が障害となりエンジンの冷却効率が低下する問題もあった。
また、油圧式無段変速機をエンジンと冷却ファンとの間に配置しているため、この油圧式無段変速機のメンテナンスが行い難くなる問題があった。
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、エンジン(20)の外側の部位にラジエータ(80)を配置し、該ラジエータ(80)の外側の部位に濾過体(12)を配置し、前記エンジン(20)とラジエータ(80)の間の部位にはファン(40)を配置し、
前記エンジン(20)の駆動力を変速してファン(40)を駆動する正逆転出力可能な油圧式無段変速機(30)を設け、
該油圧式無段変速機(30)の変速作動によって、前記ファン(40)を正転駆動して濾過体(12)の外側から内側へ外気を吸入する冷却状態と、該ファン(40)を逆転駆動して濾過体(12)の内側から外側へ風を吹き出す除塵状態とに切換自在に構成すると共に、
ファン(40)の回転軸芯方向から視て、前記油圧式無段変速機(30)を該ファン(40)の回転軌跡の外側に偏倚させて配置したことを特徴とする作業車輌の原動部構造である。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記エンジン(20)の出力軸(21)からの駆動力を、前記ファン(40)の回転軸芯方向から視て前記ラジエータ(80)の投影形状の面積重心近傍における前記エンジン(20)側の部位に支持した中間軸(71)に入力し、該中間軸(71)から前記油圧式無段変速機(30)に駆動力を伝達する構成とし、
前記中間軸(71)に前記ファン(40)を回転自在に支持したことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造である。
【0007】
請求項3に係る発明は、前記エンジン(20)の駆動力による前記中間軸(71)の回転方向と前記冷却状態における前記ファン(80)の回転方向とを同一方向に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の作業車輌の原動部構造である。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記エンジン(20)の上方に操縦部を囲うキャビン(9)を設けると共に、
前記エンジン(20)の上方前側に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0009】
請求項5に係る発明は、前記エンジン(20)の上方後側に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0010】
請求項6に係る発明は、前記エンジン(20)の上方に操縦部を囲うキャビン(9)を設けると共に、
前記エンジン(20)の下方前側に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0011】
請求項7に係る発明は、前記エンジン(20)の下方前側であって、前記キャビン(9)内のステップ(95)の下方の部位に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項6記載の作業車輌の原動部構造である。
【0012】
請求項8に係る発明は、前記エンジン(20)の下方後側に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0013】
請求項9に係る発明は、前記エンジン(20)を内装するエンジンルーム(10)の後側の部位に、外側方へ開放可能な作業部(7)を配置し、該作業部(7)とエンジンルーム(10)との間に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項8記載の作業車輌の原動部構造である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、油圧式無段変速機(30)をファン(40)の回転軌跡の外側に偏倚させて設置したので、油圧式無段変速機(30)が冷却ファン(40)の送風の障害にならないため、エンジン(20)の冷却効率を高めることができる。
また、ファン(40)をエンジン(20)に接近させて配置することができ、原動部の左右幅をコンパクトに構成することができ、この原動部が機体外側方へ張り出しにくくなり、障害物との干渉を防いで円滑に走行することができる。
さらに、ラジエータ(80)とファン(40)、及びエンジン(20)とファン(40)を接近させることができ、ファン(40)による冷却風をラジエータ(80)及びエンジン(20)に効果的に作用させ、エンジン(20)の冷却効率を高めることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、エンジン(20)の出力軸からの駆動力を、ファン(40)の回転軸芯方向から視てラジエータ(40)の投影形状の面積重心近傍におけるエンジン(20)側の部位に支持した中間軸(71)に入力し、この中間軸(71)から油圧式無段変速機(30)に駆動力を伝達する構成とし、中間軸(71)にファン(40)を回転自在に支持したことにより、ラジエータ(80)に対して広範囲にファン(40)の冷却風又は除塵風を送風することができ、ラジエータ(80)の冷却効率が高まる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、エンジン(20)の駆動力による中間軸(71)の回転方向と前記冷却状態におけるファン(40)の回転方向とを同一方向に設定したので、中間軸(71)とファン(40)との相対回転速度差が小さくなり、ファン(40)の軸受けの磨耗を防ぎ、耐久性を向上させることができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3記載の発明の効果に加えて、エンジン(20)の上方に操縦部を囲うキャビン(9)を設けると共に、エンジン(20)の上方前側に油圧式無段変速機(30)を配置したことから、キャビン(9)内から油圧式無段変速機(30)の保守・点検を容易に行なえる構成とすることができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至3記載の発明の効果に加えて、エンジン(20)の上方後側に油圧式無段変速機(30)を配置したことから、エンジン(20)の後側から油圧式無段変速機(30)の保守・点検を容易に行なうことができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至3記載の発明の効果に加えて、エンジン(20)の上方に操縦部を囲うキャビン(9)を設けると共に、エンジン(20)の下方前側に油圧式無段変速機(30)を配置したことから、エンジン(20)に油圧式無段変速機(30)を一体的に固定する構成とした場合、エンジン(20)の重心が下ることで振動を低減することができ、キャビン(9)に着座している操作者に伝わる振動を低減することができる。
また、キャビン(9)に着座している操作者と油圧式無段変速機(30)との距離が離れていることから、操作者に伝わる油圧式無段変速機(30)で発生する騒音を低減することができる。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、請求項1乃至3及び6記載の発明の効果に加えて、エンジン(20)の下方前側であってキャビン(9)内のステップ(95)の下方の部位に油圧式無段変速機(30)を配置したことから、キャビン(9)を開放することなく、ステップ(95)の開放部より油圧式無段変速機(30)の保守・点検を容易に行なうことができる。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至3記載の発明の効果に加えて、エンジン(20)の下方後側に油圧式無段変速機(30)を配置したことから、エンジン(20)の後側から油圧式無段変速機(30)の保守・点検を容易に行なうことができる。
また、キャビン(9)に着座している操作者と油圧式無段変速機(30)との距離が離れていることから、操作者に伝わる油圧式無段変速機(30)で発生する騒音を低減することができる。
【0022】
請求項9記載の発明によれば、請求項1乃至3及び8記載の発明の効果に加えて、エンジンルーム(10)の後側の部位に、外側方へ開放可能な作業部(7)を設け、この作業部(7)とエンジンルーム(10)との間に油圧式無段変速機(30)を配置したことから、キャビン(9)の後側の作業部(7)を開放することにより、油圧式無段変速機(30)の保守・点検をより一層容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態のコンバインの右側面図である。
【図2】第1実施形態のコンバインの左側面図である。
【図3】第1実施形態のコンバインの平面図である。
【図4】第1実施形態のエンジンルームの拡大右側面図である。
【図5】第1実施形態の原動部の拡大正面図である。
【図6】第1実施形態の原動部の要部拡大正面図である。
【図7】第1実施形態の原動部の右側面図である。
【図8】第1実施形態のクラッチ動作時の原動部の右側面図である。
【図9】第1実施形態の原動部の動力伝達図である。
【図10】第1実施形態のコンバインの動力伝達図である。
【図11】油圧式無段変速機の油圧回路図である。
【図12】油圧式無段変速機の説明図である
【図13】第1実施形態の原動部の拡大正面図である。
【図14】第2実施形態の原動部の右側面図である。
【図15】第3実施形態の原動部の右側面図である。
【図16】第4実施形態の原動部の右側面図である。
【図17】第5実施形態の原動部の右側面図である。
【図18】第6実施形態の原動部の右側面図である。
【図19】第7実施形態の原動部の拡大正面図である。
【図20】第7実施形態の原動部の動力伝達図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の作業車輌の原動部構造の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態は、作業車輌としてコンバインを例示してあるがコンバインに限定されるものではなく、トラクター、田植機等の農業用作業車輌にも適用できるものである。
【0025】
以下の説明において、コンバイン1の機体内側を「内側」、機体外側を「外側」といい、キャビン9内の操作席(図示省略)に着座する操作者から見て右手側を「右側」、左手側を「左側」、上方側を「上方」、下方側を「下方」、コンバインの進行方向を「前側」と、後退方向を「後側」という。
【0026】
「正転駆動状態」とは外側から内側に向かい外気を吸入する冷却ファン(ファン)40の回転方向をいい、「逆転駆動状態」とは内側から外側に向かい内気を送風する冷却ファン40の回転方向をいい、「非駆動状態」とは冷却ファン40が正転および逆転していないファンの休止状態をいうものとする。
【0027】
すなわち、後述する冷却ファン40における「正転駆動状態」とは、図6にS1で示すように、エンジンカバー11の目抜き鉄板などからなる濾過体12を介して外側からエンジン20、ラジエータ80に向かって外気を吸入し送風する冷却ファン40の回転方向をいい、冷却ファン40における「逆転駆動状態」とは、図6にS2で示すように、エンジンカバー11の目抜き鉄板などからなる濾過体12を介して内側からコンバイン1の外側に向かって内気を排気し送風する冷却ファン40の回転方向をいう。
また、冷却ファン40は、図6に示すように、油圧式無段変速装置30のトラニオン軸115をアーム116で回動することにより、正転駆動状態、非駆動状態及び非駆動状態に切換えられる。
【0028】
「内方」とはエンジンルーム10で区画される内部領域をいい、「外方」とはエンジンルーム10で区画される領域の外部をいうものとする。
【0029】
図1〜図3には、本発明の原動部構造を有するコンバイン1が示されている。コンバイン1の車台2の下方には土壌面を走行するための左右一対のクローラからなる走行装置3が設けられ、車台2の上方左側には脱穀および選別をする為の脱穀装置4が設けられ、脱穀装置4の前側には刈取装置6が設けられている。
刈稈は刈取装置6に備えた刈刃(図示省略)で刈り取られ脱穀装置4に送られる。脱穀装置4で脱穀および選別された穀粒は脱穀装置4の右側に設けられたグレンタンク(作業部)7に貯留され、貯留された穀粒は穀粒排出筒8により外部へ排出される。
車台2の上方右側には操作者が搭乗する操作席を備えたキャビン9が設けられ、キャビン9の下方にはエンジンルーム10が設けられている。
【0030】
図4に示すように、キャビン9には冷却ファン40の駆動状態を切換える操作レバー14が設けられ、エンジンルーム10のエンジンカバー11には目抜き鉄板などからなる濾過体12A,12B,12C,12Dが設けられている。
また、エンジンカバー11の濾過体12A、12B、12C、12Dの目合いを同一にすることもできるが、冷却ファン40と対向して設けられていない濾過体12A,12Dの目合いを大きくし、冷却ファン40と対向して設けられている濾過体12B、12Cの目合いを小さくするのが好ましい。
【0031】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第1実施形態について説明する。
【0032】
図5〜図8に示すように、第1実施形態は、エンジンルーム10のエンジンカバー11の内側には、外側から順に、インタークーラ90、オイルクーラ85、ラジエータ80、冷却ファン40、エンジン20が配置され、エンジンルーム10のエンジン20の上方前側には、冷却ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させ油圧式無段変速装置30が配置されている。
【0033】
インタークーラ90は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、エンジン11の吸気経路であるマニホールド93に接続されている。
インタークーラ90は、ラジエータ80の外側に設けられた支持部材83に着脱自在に取付けられ、インタークーラ90の上方部は、連結部材91を介して回動支持部材92に支持されている。支持部材92を時計方向に回動させることにより、図13にS3で示すように、インタークーラ90は、上方外側に向かって開放される。そのため、ラジエータ80の洗浄、ラジエータ80の外側に付着した藁屑、塵埃の除去等の保守・点検作業を容易に行なうことができる。
【0034】
オイルクーラ85は、昇降用シリンダ及びミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、インタークーラ90の下方のラジエータ80の外側に設けられた支持部材83に取付けられている。なお、用途毎に複数個のオイルクーラ85を設けることもできる。
【0035】
ラジエータ80は、エンジン11により加熱された冷却水を冷却する機器であり、エンジン11の冷却水経路であるマニホールド82に接続されている。
ラジエータ80は、インタークーラ90及びオイルクーラ85と冷却ファン40の間に配置され、ラジエータ80の外側には、インタークーラ90及びオイルクーラ85を取付ける支持部材83が設けられ、ラジエータ80の内側には、後述する冷却ファン40の吸入効率を高めるため、冷却ファン40を取り囲むシュラウド81が設けられている。
シュラウド81の形状は、冷却ファン40の外周に沿わせて円形状あるいは多角形状に形成し、冷却ファン40による外気の吸入の抵抗を小さくするため薄板状の鋼板により成形加工するのが好適である。
【0036】
冷却ファン40は、正転駆動状態にあっては、エンジンカバー11の濾過体12を介して外側から内側に外気を吸入し、ラジエータ80及びエンジン20を冷却し、逆転駆動状態にあっては、エンジンカバー11の濾過体12を介して機体内側から機体外側に内気を排気し、濾過体12に付着した藁屑、塵埃等を除去する機器である。
冷却ファン40は、羽根40Aと羽根40Aの基部を支持する中心部40Bにより構成され、冷却ファン40の中心部40Bには、内側に伸びる入力軸41が取付けられ、入力軸41の内側端部には、プーリ42が軸支されている。なお、冷却ファン40の入力軸41は、ベアリング43を介して、後述するウオータポンプ70の入力軸(中間軸)71に回転自在に軸支されている。
【0037】
油圧式無段変速装置30は、冷却ファン40の駆動状態の切換え、油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転(動力)の増減速を行なう機器である。油圧式無段変速装置30は、エンジンルーム10の操作フレームとエンジンリアフレームに両端部が固定されている上部補強フレームに設けられたブラケットに取付けられ、エンジン20の上方前側に配置されている。
【0038】
油圧式無段変速装置30の外側には、エンジン20の回転が伝動されるプーリ32を軸支する入力軸31が設けられ、油圧式無段変速装置30の内側には、油圧式無段変速装置30で増減速された回転を出力するギアボックスが設けられている。
ギアボックスは、増減速された回転を出力する出力軸33と、出力軸33に軸支されたギア34と、中間軸35と、中間軸35に軸支されたギア36と、回転を伝動する出力軸38と、中間軸38に軸支されたギア37から構成され、ギア34とギア36及びギア36とギア37が相互に噛合している。なお、第1実施形態にあっては、同一のモジュール径を有するギア34,36,37を用いているが、モジュール径が異なるギア34,36,37を用いることもでき、この場合、ギアボックスにおいても回転の増減速を行なうことができる。
【0039】
油圧式無段変速装置30の機種により異なるが、第1実施形態の油圧式無段変速装置30にあっては、冷却ファン40を正転駆動状態にするには、キャビン9に設けられた操作レバーで遠隔操作される操作ロッド117を短縮させ、油圧式無段変速装置30のトラニオン軸115に軸支されたアーム116を時計方向に回動させ、冷却ファン40を逆転駆動状態にするには、操作ロッド117を伸張させ、油圧式無段変速装置30のトラニオン軸115に軸支されたアーム116を反時計方向に回転させることにより行なう。
また、冷却ファン40を非駆動状態にするには、操作ロッド117を中立位置に戻し、油圧式無段変速装置30のトラニオン軸115に軸支されたアーム116を12時の時計方向に位置させることにより行なう。
【0040】
図11に示すように、油圧式無段変速装置30の流入管110及び流出管111は、それぞれ油圧バルブ装置200とオイルクーラ85の間の油圧回路に接続されている。油圧式無段変速装置30から流出した駆動オイルは、オイルクーラ85で冷却されるため、油圧式無段変速装置30に専用の冷媒用チャージポンプを設ける必要はない。
駆動用オイルは、オイルタンク201から浮遊物等を除去するフィルタ202を介して走行用油圧式無段変速装置151に流入し、走行用油圧式無段変速装置151に流入した一部の駆動用オイルは、走行用油圧式無段変速装置151から昇降用シリンダ及びミッションを駆動する作業バルブを有する油圧バルブ装置200に流入し、その後、油圧バルブ装置200から油圧式無段変速装置30とオイルクーラ85を介して再びオイルタンク201に流入する。
また、走行用油圧式無段変速装置151に流入した一部の駆動用オイルは、走行用油圧式無段変速装置151からフィルタ202と分流バルブ204を介して刈取用油圧式無段変速装置191に流入し、その後、刈取用油圧式無段変速装置191からオイルタンク201に流入する。
【0041】
図12に示すように、油圧式無段変速装置30は、入力軸31に接続された定常式油圧ポンプ112と、出力軸33に接続された可変式油圧モータ113を有する。入力軸31に伝動された回転を増減速し出力軸33に出力するには、キャビン9に設けられた操作レバーで遠隔操作される可変式油圧ポンプ112の斜板44の傾斜角度を変更する。
なお、第1実施形態の油圧式無段変速装置30にあっては、出力軸31に定常式油圧モータ113を接続しているが、可変式油圧モータ113を用いることもでき、この場合、出力軸33に伝動された回転を広範囲で増減速できる。
【0042】
次に、エンジンの動力系について説明する。
【0043】
図9に示すように、エンジン20の回転を発電機を起動するジェネレータ60及び冷却水をエンジン20に循環させるウオータポンプ70に伝動するため、エンジン20の出力軸21に軸支され出力軸21と一体となって回転するプーリ22と、ジェネレータ60の入力軸61に軸支され入力軸61と一体となって回転するプーリ62と、ウオータポンプ70の入力軸71に軸支され入力軸71と一体となって回転するプーリ72には、ベルト51が巻き掛けられている。
【0044】
ウオータポンプ70の入力軸71に伝動されたエンジン20の回転を冷却ファン40の駆動状態の切換え及び回転の増減速を行なう油圧式無段変速装置30に伝動するため、ウオータポンプ70の入力軸71に軸支され入力軸71と一体となって回転するプーリ73と、油圧式無段変速装置30の入力軸31に軸支され入力軸31と一体となって回転するプーリ32には、ベルト52が巻き掛けられている。
また、油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転は、油圧式無段変速装置30の内部で回転方向が切換え、また、増減速され、油圧式無段変速装置30の出力軸33に伝動され、相互に噛合いするキア34,36,37を介して出力軸38に伝動される。
【0045】
油圧式無段変速装置30の出力軸38に伝動されたエンジン20の回転を冷却ファン40に伝動するため、油圧式無段変速装置30の出力軸38に軸支され出力軸38と一体となって回転するプーリ39と、冷却ファン40の入力軸41に軸支され入力軸41と一体となって回転するプーリ42には、ベルト53が巻き掛けられている。
また、冷却ファン40の入力軸41は、ベアリング43を介してウオータポンプ70の入力軸71に回転自在に軸支されている。
【0046】
図7、図8に示すように、ベルト52のテンションは、テンションクラッチ130により調整することができる。一方、ベルト53のテンションは、常時アーム141の先端に取付けられたテンションローラ140により押圧され緊張している。
テンションクラッチ130は、ベルト52を押圧するテンションローラ131と、テンションローラ131を支持し支持部材133を中心に回動するアーム132と、支持部材133を中心に回動する電動モータ136と、電動モータ136の出力軸に取付けられクランク運動を行なう連結部材135と、アーム132と連結部材135を連結するコイルスプリング134より構成されている。
ベルト52のテンションを緩めるには、キャビン9に設けられた操作レバーで遠隔操作される電動モータ136を回動し連結部材135を前側に移動させ、支持部材133を中心にアーム132を時計方向に回動しテンションローラ131の押圧を弱めることにより行なう。一方、ベルト52のテンションを強めるには、電動モータ136を回動し連結部材135を後側に移動させ、支持部材133を中心にアーム132を反時計方向に回動しテンションローラ131の押圧を強めることにより行なう。
油圧式無段変速装置30における冷却ファン40の駆動状態時に同期させベルト52のテンションを緩めることが好適であり、このような場合、冷却ファン40の駆動状態の切換えがスムーズに行なえ、また、ベルト52の耐久性も向上する。
【0047】
次に、コンバインの動力系について説明する。
【0048】
図10に示すように、エンジン20の回転を走行用油圧式無段変速装置151に伝動するため、エンジン20の回転は、エンジン20の出力軸21に軸支され出力軸21と一体となって回転するプーリ23と、トランスミッション150の入力軸に軸支され、入力軸と一体となって回転するプーリ152には、ベルトが巻き掛けられている。
また、トランスミッション150の入力軸に伝動されたエンジン20の回転は、トランスミッション150の出力軸を介して走行用油圧式無段変速装置151に伝動される。
【0049】
エンジン20の回転を選別装置部185に伝動するため、エンジン20の出力軸21に軸支されたプーリ23と、ギアボックス163の入力軸162に軸支され入力軸162と一体となって回転するプーリ161には、ベルトが巻き掛けられている。なお、脱穀クラッチ160が入力された場合に限り、エンジン20の回転は、プーリ161に伝動される。
プーリ161に伝動されたエンジン20の回転は、ギアボックス163の中間軸165に軸支され中間軸165と一体となって回転するプーリ166に伝動される。
プーリ166と、選別装置部185の入力軸186に軸支され入力軸186と一体となって回転するプーリには、ベルトが巻き掛けられており、プーリ166に伝動されたエンジン20の回転は、選別装置部185に伝動される。
【0050】
エンジン20の回転を脱穀装置部180に伝動するため、プーリ161に伝動されたエンジン20の回転は、ギアボックス163の出力軸167に軸支され出力軸167と一体となって回転するプーリ168に伝動される。
プーリ168と、脱穀装置部180の入力軸181に軸支され入力軸181と一体となって回転するプーリ182には、ベルトが巻き掛けられており、プーリ168に伝動されたエンジン20の回転は、脱穀装置部180に伝動される。
【0051】
エンジン20の回転を刈取装置部190に伝動するため、プーリ161に伝動されたエンジン20の回転は、ギアボックス163の出力軸169を介して刈取用油圧式無段変速装置191に伝動される。
刈取用油圧式無段変速装置191に伝動されたエンジン20の回転は、出力軸192に伝動され、複数の相互に噛合うギア193を介して、刈取装置部190の入力軸195に伝動され刈取装置部190に伝動される。
【0052】
第1実施形態にあっては、油圧式無段変速機30をエンジンルーム10の冷却ファン40と重ならない周辺部のエンジン20の上方前側に配置していることから、油圧式無段変速機30が冷却ファン40により吸入された外気の送風の障害にならずエンジン20の冷却効率を高めることができ、冷却ファン40により排出される内気の送風の障害にもならず濾過体12に付着した藁屑、塵埃の除去効率を高めることができ、キャビン9内から油圧式無段変速機30の保守・点検を容易に行なうことができる。
また、ベルト51,52,53がエンジン20及び油圧式無段変速装置30の外側に配置されていることから、エンジンルーム10のエンジンカバー11を開放することにより保守・点検を容易に行なうことができる。
さらに、ウオータポンプ70の入力軸71に対してプーリ22,62,72に巻き掛けされたベルト51による下方後側への引張力と、ウオータポンプ70の入力軸71に対してプーリ32,73に巻き掛けされたベルト52による上方前側への引張力とが相殺することにより、ウオータポンプ70の入力軸71に生じる撓みを抑制することができる。
【0053】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0054】
図14に示すように、第2実施形態は、エンジンルーム10のエンジンカバー11の内側には、外側から順に、インタークーラ90、オイルクーラ85、ラジエータ80、冷却ファン40、エンジン20が配置され、エンジンルーム10のエンジン20の上方後側には、冷却ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させ油圧式無段変速装置30が配置されている。
【0055】
インタークーラ90は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、エンジン11の吸気経路であるマニホールド93に接続されている。
オイルクーラ85は、昇降用シリンダ及びミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、インタークーラ90の下方のラジエータ80の外側に設けられた支持部材83に取付けられている。
ラジエータ80は、エンジン11により加熱された冷却水を冷却する機器であり、エンジン11の冷却水経路であるマニホールド82に接続されている。
冷却ファン40は、羽根40Aと羽根40Aの基部を支持する中心部40Bにより構成され、冷却ファン40の中心部40Bには、内側に伸びる入力軸41が取付けられ、入力軸41の内側端部には、プーリ42が軸支されている。
【0056】
油圧式無段変速装置30は、冷却ファン40の駆動状態の切換え及び油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転(動力)の増減速を行なう機器である。油圧式無段変速装置30は、エンジンルーム10の操作フレームとエンジンリアフレームに両端部が固定されている上部補強フレームに設けられたブラケットに取付けられ、エンジンルーム10のエンジン20の上方後側に配置されている。
【0057】
第2実施形態にあっては、油圧式無段変速機30をエンジンルーム10の冷却ファン40と重ならない周辺部のエンジン20の上方後側に配置していることから、油圧式無段変速機30が冷却ファン40により吸入された外気の送風の障害にならずエンジン20の冷却効率を高めることができ、冷却ファン40により排出される内気の送風の障害にもならずエンジンカバー11の濾過体12に付着した藁屑、塵埃の除去効率を高めることができ、エンジン20の後側から油圧式無段変速機30の保守・点検を容易に行なうことができる。
また、ベルト51,52,53がエンジン20及び油圧式無段変速装置30の外側に配置されていることから、エンジンルーム10のエンジンカバー11を開放することにより保守・点検を容易に行なうことができる。
【0058】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0059】
図15に示すように、第3実施形態は、エンジンルーム10のエンジンカバー11の内側には、外側から順に、インタークーラ90、オイルクーラ85、ラジエータ80、冷却ファン40、エンジン20が配置され、エンジンルーム10のエンジン20の下方前側には、冷却ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させ油圧式無段変速装置30が配置されている。
【0060】
インタークーラ90は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、エンジン11の吸気経路であるマニホールド93に接続されている。
オイルクーラ85は、昇降用シリンダ及びミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、インタークーラ90の下方のラジエータ80の外側に設けられた支持部材83に取付けられている。
ラジエータ80は、エンジン11により加熱された冷却水を冷却する機器であり、エンジン11の冷却水経路であるマニホールド82に接続されている。
冷却ファン40は、羽根40Aと羽根40Aの基部を支持する中心部40Bにより構成され、冷却ファン40の中心部40Bには、内側に伸びる入力軸41が取付けられ、入力軸41の内側端部には、プーリ42が軸支されている。
【0061】
油圧式無段変速装置30は、冷却ファン40の駆動状態の切換え、油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転(動力)の増減速を行なう機器である。油圧式無段変速装置30は、エンジンルーム10の操作フレームに設けられたブラケットに取付けられ、エンジンルーム10のエンジン20の下方前側に配置されている。
【0062】
第3実施形態にあっては、油圧式無段変速機30をエンジンルーム10の冷却ファン40と重ならない周辺部のエンジン20の下方前側に配置していることから、油圧式無段変速機30が冷却ファン40により吸入された外気の送風の障害にならずエンジン20の冷却効率を高めることができ、冷却ファン40により排出される内気の送風の障害にもならずエンジンカバー11の濾過体12に付着した藁屑、塵埃の除去効率を高めることができる。
また、ベルト51,52,53がエンジン20及び油圧式無段変速装置30の外側に配置されていることから、エンジンルーム10のエンジンカバー11を開放することにより保守・点検を容易に行なうことができる。
さらに、キャビン9に着座している操作者と油圧式無段変速機30との距離が離れていることから、操作者への伝わる油圧式無段変速機30の騒音を低減することができ、エンジン20に油圧式無段変速機30を一体的に固定した場合、エンジン20の重心が下がることから操作者への伝わるエンジン20の振動を低減することもできる。
【0063】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0064】
図16に示すように、第4実施形態は、エンジンルーム10のエンジンカバー11の内側には、外側から順に、インタークーラ90、オイルクーラ85、ラジエータ80、冷却ファン40、エンジン20が配置され、エンジンルーム10のエンジン20の下方後側には、冷却ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させ油圧式無段変速装置30が配置されている。
【0065】
インタークーラ90は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、エンジン11の吸気経路であるマニホールド93に接続されている。
オイルクーラ85は、昇降用シリンダ及びミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、インタークーラ90の下方のラジエータ80の外側に設けられた支持部材83に取付けられている。
ラジエータ80は、エンジン11により加熱された冷却水を冷却する機器であり、エンジン11の冷却水経路であるマニホールド82に接続されている。
冷却ファン40は、羽根40Aと羽根40Aの基部を支持する中心部40Bにより構成され、冷却ファン40の中心部40Bには、内側に伸びる入力軸41が取付けられ、入力軸41の内側端部には、プーリ42が軸支されている。
【0066】
油圧式無段変速装置30は、冷却ファン40の駆動状態の切換え、油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転(動力)の増減速を行なう機器である。油圧式無段変速装置30は、エンジンルーム10のエンジンリアフレームに設けられたブラケットに取付けられ、エンジンルーム10のエンジン20の下方後側に配置されている。
【0067】
第4実施形態にあっては、油圧式無段変速装置30をエンジンルーム10の冷却ファン40と重ならない周辺部のエンジン20の下方後側に配置していることから、油圧式無段変速機30が冷却ファン40により吸入された外気の送風の障害にならずエンジン20の冷却効率を高めることができ、冷却ファン40により排出される内気の送風の障害にもならずエンジンカバー11の濾過体12に付着した藁屑、塵埃の除去効率を高めることができ、エンジン20の後側から油圧式無段変速機30の保守・点検を容易に行なうことができる。
また、ベルト51,52,53がエンジン20及び油圧式無段変速装置30の外側に配置されていることから、エンジンルーム10のエンジンカバー11を開放することにより保守・点検を容易に行なうことができる。
さらに、キャビン9に着座している操作者と油圧式無段変速機30との距離が離れていることから、操作者への伝わる油圧式無段変速機30の騒音を低減することができる。
【0068】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0069】
図17に示すように、第5実施形態は、エンジンルーム10のエンジンカバー11の内側には、外側から順に、インタークーラ90、オイルクーラ85、ラジエータ80、冷却ファン40、エンジン20が配置され、エンジン20の下方後側であってエンジンルーム10とグレンタンク7との間には、冷却ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させ油圧式無段変速装置30が配置されている。
【0070】
インタークーラ90は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、エンジン11の吸気経路であるマニホールド93に接続されている。
オイルクーラ85は、昇降用シリンダ及びミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、インタークーラ90の下方のラジエータ80の外側に設けられた支持部材83に取付けられている。
ラジエータ80は、エンジン11により加熱された冷却水を冷却する機器であり、エンジン11の冷却水経路であるマニホールド82に接続されている。
冷却ファン40は、羽根40Aと羽根40Aの基部を支持する中心部40Bにより構成され、冷却ファン40の中心部40Bには、内側に伸びる入力軸41が取付けられ、入力軸41の内側端部には、プーリ42が軸支されている。
【0071】
油圧式無段変速装置30は、冷却ファン40の駆動状態の切換え、油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転(動力)の増減速を行なう機器である。油圧式無段変速装置30は、エンジンルーム10のエンジンリアフレームに設けられたエンジンルーム10の後側に張出したブラケットに取付けられ、エンジンルーム10のエンジン20の下方であってエンジンルーム10の後側に配置されている。
【0072】
第5実施形態にあっては、エンジンルーム10とグレンタンク7との間に油圧式無段変速装置30を配置していることから、油圧式無段変速機30が冷却ファン40により吸入された外気の送風の障害にならずエンジン20の冷却効率を高めることができ、冷却ファン40により排出される内気の送風の障害にもならずエンジンカバー11の濾過体12に付着した藁屑、塵埃の除去効率を高めることができ、グレンタンク9を開放することにより、油圧式無段変速機30の保守・点検を容易に行なうことができる。
また、ベルト51,52,53がエンジン20及び油圧式無段変速装置30の外側に配置されていることから、エンジンルーム10のエンジンカバー11を開放することにより保守・点検を容易に行なうことができる。
さらに、キャビン9に着座している操作者と油圧式無段変速機30との距離が離れていることから、操作者への伝わる油圧式無段変速機30の騒音を低減することができる。
【0073】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第6実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0074】
図18に示すように、第6実施形態は、エンジンルーム10のエンジンカバー11の内側には、外側から順に、インタークーラ90、オイルクーラ85、ラジエータ80、冷却ファン40、エンジン20が配置され、エンジン20の下方前側であってエンジンルーム10の前側のキャビン9のステップ95の下方には、冷却ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させ油圧式無段変速装置30が配置されている。
【0075】
インタークーラ90は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、エンジン11の吸気経路であるマニホールド93に接続されている。
オイルクーラ85は、昇降用シリンダ及びミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、インタークーラ90の下方のラジエータ80の外側に設けられた支持部材83に取付けられている。
ラジエータ80は、エンジン11により加熱された冷却水を冷却する機器であり、エンジン11の冷却水経路であるマニホールド82に接続されている。
冷却ファン40は、羽根40Aと羽根40Aの基部を支持する中心部40Bにより構成され、冷却ファン40の中心部40Bには、内側に伸びる入力軸41が取付けられ、入力軸41の内側端部には、プーリ42が軸支されている。
【0076】
油圧式無段変速装置30は、冷却ファン40の駆動状態の切換え及び油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転(動力)の増減速を行なう機器である。油圧式無段変速装置30は、エンジンルーム10の操作フレームに設けられたエンジンルーム10の前側に張出したブラケットに取付けられ、エンジンルーム10のエンジン20の下方であってエンジンルーム10の前側のキャビン9のステップ95の下方に配置されている。
【0077】
第6実施形態にあっては、油圧式無段変速装置30をエンジンルーム10の冷却ファン40と重ならない周辺部のエンジン20の下方前側のキャビン9のステップ95の下方に配置していることから、油圧式無段変速機30が冷却ファン40により吸入された外気の送風の障害にならずエンジン20の冷却効率を高めることができ、冷却ファン40により排出される内気の送風の障害にもならずエンジンカバー11の濾過体12に付着した藁屑、塵埃の除去効率を高めることができ、キャビン9を開放することなく、ステップ95の開放部より油圧式無段変速機30の保守・点検を容易に行なうことができる。
また、ベルト51,52,53がエンジン20及び油圧式無段変速装置30の外側に配置されていることから、エンジンルーム10のエンジンカバー11を開放することにより保守・点検を容易に行なうことができる。
さらに、キャビン9に着座している操作者と油圧式無段変速機30との距離が離れていることから、操作者への伝わる油圧式無段変速機30の騒音を低減することができる。
【0078】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第7実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0079】
図19に示すように、第7実施形態は、エンジンルーム10のエンジンカバー11の内側には、外側から順に、インタークーラ90、オイルクーラ85、ラジエータ80、冷却ファン40、エンジン20が配置され、エンジンルーム10のエンジン20の上方前側であってエンジン20の内側には、冷却ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させ油圧式無段変速装置30が配置されている。
【0080】
インタークーラ90は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、エンジン11の吸気経路であるマニホールド93に接続されている。
オイルクーラ85は、昇降用シリンダ及びミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、インタークーラ90の下方のラジエータ80の外側に設けられた支持部材83に取付けられている。
ラジエータ80は、エンジン11により加熱された冷却水を冷却する機器であり、エンジン11の冷却水経路であるマニホールド82に接続されている。
冷却ファン40は、羽根40Aと羽根40Aの基部を支持する中心部40Bにより構成され、冷却ファン40の中心部40Bには、内側に伸びる入力軸41が取付けられ、入力軸41の内側端部には、プーリ42が軸支されている。
【0081】
油圧式無段変速装置30は、冷却ファン40の駆動状態の切換え及び油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転(動力)の増減速を行なう機器である。油圧式無段変速装置30は、エンジンルーム10の操作フレームとエンジンリアフレームに両端部が固定されている上部補強フレームに設けられたブラケットに取付けられ、エンジン20の上方前側であってエンジン20の内側(左側)に配置されている。
【0082】
次に、第7実施形態のエンジンの動力系について説明する。
【0083】
図20に示すように、エンジン20の回転を発電機を起動するジェネレータ60及び冷却水をエンジン20に循環させるウオータポンプ70に伝動するため、エンジン20の出力軸21に軸支され出力軸21と一体となって回転するプーリ22と、ジェネレータ60の入力軸61に軸支され入力軸61と一体となって回転するプーリ62と、ウオータポンプ70の入力軸71に軸支され入力軸71と一体となって回転するプーリ72には、ベルト51が巻き掛けられている。
【0084】
エンジン20の回転を冷却ファン40の駆動状態の切換え及び回転の増減速を行なう油圧式無段変速装置30に伝動するため、エンジン20の出力軸21と、油圧式無段変速装置30の入力軸31に軸支され入力軸31と一体となって回転するプーリ32には、ベルト54が巻き掛けられている。
また、油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転は、油圧式無段変速装置30の内部で回転方向が切換え、また、増減速され、油圧式無段変速装置30の出力軸33に伝動され、相互に噛合いするキア34,36,37を介して出力軸38に伝動される。
【0085】
油圧式無段変速装置30の出力軸38に伝動されたエンジン20の回転を冷却ファン40に伝動するため、油圧式無段変速装置30の出力軸38に軸支され出力軸38と一体となって回転するプーリ39と、冷却ファン40の入力軸31に軸支され入力軸41と一体となって回転するプーリ42には、ベルト53が巻き掛けられている。
また、冷却ファン40の入力軸31は、ベアリング43を介してウオータポンプ70の入力軸71に回転自在に軸支されている。
【0086】
第7実施形態にあっては、油圧式無段変速装置30をエンジンルーム10の冷却ファン40と重ならない周辺部のエンジン20の下方前側に配置していることから、油圧式無段変速機30が冷却ファン40により吸入された外気の送風の障害にならずエンジン20の冷却効率を高めることができ、冷却ファン40により排出される内気の送風の障害にもならずエンジンカバー11の濾過体12に付着した藁屑、塵埃の除去効率を高めることができ、キャビン9内から油圧式無段変速機30の保守・点検を容易に行なうことができる。
また、エンジン20の上方前側であってエンジン20の内側のエンジンルーム10の空間を有効利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、農業用作業車輌に適用できるものである。
【符号の説明】
【0088】
1 コンバイン
7 グレンタンク(作業部)
9 キャビン
10 エンジンルーム
11 エンジンカバー
12 濾過体
20 エンジン
21 出力軸
30 油圧式無段変速装置
31 入力軸
33 出力軸
38 出力軸
40 冷却ファン(ファン)
41 入力軸
51 ベルト
52 ベルト
53 ベルト
60 ジェネレータ
61 入力軸
70 ウオータポンプ
71 入力軸(中間軸)
80 ラジエータ
85 オイルクーラ
90 インタークーラ
95 ステップ
112 油圧ポンプ
113 油圧モータ
115 トラニオン軸
130 テンションクラッチ
131 テンションローラ
140 テンションローラ
150 トランスミッション
151 走行用油圧式無段変速装置
180 脱穀装置部
185 選別装置部
190 刈取装置部
191 刈取用油圧式無段変速装置
200 油圧バルブ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(20)の外側の部位にラジエータ(80)を配置し、該ラジエータ(80)の外側の部位に濾過体(12)を配置し、前記エンジン(20)とラジエータ(80)の間の部位にはファン(40)を配置し、
前記エンジン(20)の駆動力を変速してファン(40)を駆動する正逆転出力可能な油圧式無段変速機(30)を設け、
該油圧式無段変速機(30)の変速作動によって、前記ファン(40)を正転駆動して濾過体(12)の外側から内側へ外気を吸入する冷却状態と、該ファン(40)を逆転駆動して濾過体(12)の内側から外側へ風を吹き出す除塵状態とに切換自在に構成すると共に、
ファン(40)の回転軸芯方向から視て、前記油圧式無段変速機(30)を該ファン(40)の回転軌跡の外側に偏倚させて配置したことを特徴とする作業車輌の原動部構造。
【請求項2】
前記エンジン(20)の出力軸(21)からの駆動力を、前記ファン(40)の回転軸芯方向から視て前記ラジエータ(80)の投影形状の面積重心近傍における前記エンジン(20)側の部位に支持した中間軸(71)に入力し、該中間軸(71)から前記油圧式無段変速機(30)に駆動力を伝達する構成とし、
前記中間軸(71)に前記ファン(40)を回転自在に支持したことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項3】
前記エンジン(20)の駆動力による前記中間軸(71)の回転方向と前記冷却状態における前記ファン(80)の回転方向とを同一方向に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項4】
前記エンジン(20)の上方に操縦部を囲うキャビン(9)を設けると共に、
前記エンジン(20)の上方前側に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項5】
前記エンジン(20)の上方後側に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項6】
前記エンジン(20)の上方に操縦部を囲うキャビン(9)を設けると共に、
前記エンジン(20)の下方前側に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項7】
前記エンジン(20)の下方前側であって、前記キャビン(9)内のステップ(95)の下方の部位に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項6記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項8】
前記エンジン(20)の下方後側に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項9】
前記エンジン(20)を内装するエンジンルーム(10)の後側の部位に、外側方へ開放可能な作業部(7)を配置し、該作業部(7)とエンジンルーム(10)との間に前記油圧式無段変速機(30)を配置したことを特徴とする請求項8記載の作業車輌の原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−126325(P2012−126325A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281375(P2010−281375)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】