説明

併用療法におけるCD83の使用

本発明は、CD83の使用を含む、望ましくない免疫応答を抑制および/または予防する改善された方法に関する。いくつかの実施形態において、CD83を、少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物とともに、被験体に同時投与する。寛容誘導性樹状細胞および制御性T細胞を産生するための方法も提供される。これらの細胞は、治療目的のためのさらなる細胞を産生するために、インビトロにおいて使用可能であり、または望ましくない免疫応答を抑制および/または予防するために、インビボにおいて使用可能である。本発明の方法は、自己免疫疾患を予防するため、またはその重症度を減少させるために使用可能であり、治療用タンパク質または移植組織のような、少なくとも1つの治療用組成物に対する寛容誘導性を誘導するためにも使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年5月3日に出願された米国特許仮出願第60/927,377号、および2006年8月18日に出願された米国特許仮出願第60/838,812号(両方の内容は参照によって明確に本明細書に組み込まれている)の優先権を主張する。
発明の分野
本発明は、望ましくない免疫応答を抑制または予防するために、被験体を治療する改善された方法に関する。本方法にはCD83の使用が含まれ、被験体を治療用組成物に対して寛容化する。たとえば、本方法は、移植組織の拒絶を予防するために使用可能である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
哺乳動物の免疫系は、非常に多数の外来抗原に対する防御反応を開始することが可能である。不運なことに、この応答性が、たとえば移植組織、遺伝子治療ベクター、および特定の疾患および疾病の治療のために使用される化合物(とりわけタンパク質)を含む、治療上の使用を意図した化合物へ向けられた場合、まさにこの応答性が困難を引き起こす可能性がある。たとえば、B型血友病に苦しんでいる患者は、治療用第IX因子に対して、ならびにこれらの患者において、第IX因子を発現するために使用される遺伝子移入ベクターに対して免疫応答を生ずる可能性がある(たとえば、Dobryzynskiら(2006)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 103:4592−4597を参照のこと)。同様に、治療用抗体(たとえばRituxan(登録商標)およびBexxar(登録商標))で治療した患者は、これらの治療用抗体に対する免疫応答を生ずる可能性があり、これらの治療用抗体の効果をなくし、さらなるリスクを患者に対して引き起こす。
【0003】
不運なことに、望ましくない免疫応答を予防する、または除去するための現在の治療は、典型的に、免疫応答の全体的な抑制を引き起こす化合物の使用を伴う(たとえば、Janewayら編(2001)Immunobiology(5th ed.,Garland Publishing,New York,NY)の第14章を参照のこと)。これらの治療は、患者に将来の感染に対するリスクを与え(たとえばGottschalkら(2005)Annu.Rev.Med.56:29−44を参照のこと)、一般に望ましくない、重度の副作用を持つ。異なる治療を組み合わせたいくつかの研究によって、いくつかの組合せが実際に毒性を悪化させることが示された(たとえば、Andohら,(1996)Transplantation 62:311−316を参照のこと)。現在使用可能な治療は、長時間、場合によっては(たとえば組織移植の場合)患者の人生の残り時間にわたる治療もまた必要とする可能性がある。
【0004】
また、たとえば、接触皮膚炎、慢性喘息、薬物アレルギー、および全身性アナフィラキシーのような、アレルギー性反応および過敏反応を治療することにおいて、集中的で、時間制限を設けた免疫系の抑制が望ましい多くの他の例が存在する(たとえばJanewayら編(2001)Immunobiology(5th ed.Garland Publishing,New York NY)の第12章を参照のこと)。一般に、これらの応答を抑制するための臨床治療はまた、広範囲に効果を持つ(Janewayら,上記を参照のこと)。別の例が、B細胞媒介性応答に関して見られる。B細胞は、抗体が媒介する移植片拒絶の主要なメディエーターであり、また抗原提示細胞としても機能する。しかしながら、望ましくないB細胞媒介性応答の副作用を予防するための現在の療法は、CD20に対するモノクローナル抗体(mAb)を用いる枯渇に限定されており、B細胞活性化および/または分化を予防するための効果的な療法は存在しない。望まれない免疫応答のために現在使用されている他の治療は、特定の阻害剤を使用して、マスト細胞によって産生される炎症性メディエーターの合成および効果を遮断する。脱感作を誘導するために設計されたいくつかの治療は、特定の抗原(単数または複数)の注入を伴い、これらの治療は、T2型応答からT1型応答へアレルゲンに対する免疫応答を変更し、それによってIgGがIgEのかわりに産生されると考えられる。これらの治療は多くの症例で成功してきたが、すべての症例で成功したわけではない。
【0005】
細胞リンパ球溶解、遅延型過敏症(DTH)、移植拒絶および同種移植片拒絶を含む、多くの型の免疫が、T細胞によって媒介される(たとえば、Paul(1993)Fundamental Immunology(Raven Press,New York,New York)(3rd ed.)を参照のこと)。T細胞の挙動は、樹状細胞(「DC」)によって影響を受けるが、これらは免疫系の専門的抗原提示細胞であり、T細胞応答を劇的に刺激可能である(本明細書で場合により「免疫刺激性樹状細胞(Immunostimulatory dendritic cell)」とも呼ぶ;たとえばBanchereau and Schmitt編(1995)Dendritic Cells in Fundamental and Clinical Immunology,Vol.2(Plenum Press,New York);Schulerら(2003)Curr.Opin.Immunol.15:138−147;米国特許出願第10/287,813号を参照のこと)。
【0006】
状況によっては、樹状細胞はまた、免疫寛容において重要な役割を果たす。これに関連して、これらはしばしば「寛容誘導性樹状細胞(tolerogenic dendritic cells)」と呼ばれる(たとえば、Steinmanら(2003)Ann.Rev.Immunol.21:685−711;Kubachら(2005)Int.J.Hematol.81:197−203を参照のこと)。不運なことに、樹状細胞は末梢血で非常に稀であり、したがって、特定の適用は、治療量の寛容誘導性樹状細胞を産生するためにエクスビボの方法を必要としうる。免疫刺激性DCを作製するための方法が記述されている(たとえば米国特許第6,274,378号を参照のこと)が、これらのDCは寛容誘導性ではない。「制御性T細胞」を含む別の型の細胞もまた、寛容誘導性において役割を果たすことが示された(たとえばBoehmer(2005)Nat.Immunol.6:338−344を参照のこと)。齧歯類での研究によって、自己応答性T細胞の活性化およびエフェクター機能の両方を積極的かつ優位に防止する、専門的な制御性(または「サプレッサー」)T細胞の固有のCD4CD25集団が示された(Sakaguchiら(1995)J.Immunol.155:1151−1164;Takahashiら(1998)Int.Immunol.10:1969−1980;Itohら(1999)J.Immunol.162:5317−5326)。これらの制御性T細胞の除去または不活性化が、結果として、重度の自己免疫疾患となり、またアロ抗原および腫瘍に対する免疫応答を増強することが示された(たとえばShimizuら(1999)J.Immunol.163:5211−5218も参照のこと)。最近の研究によって、ヒトにおいて制御性T細胞が同定された(米国特許出願第10/661,804号)。制御特性を持つが、CD4CD25T細胞ではないヒトT細胞の調製も報告された(米国特許出願第10/618,134号を参照のこと)。
【0007】
CD83は、免疫グロブリン(「Ig」)スーパーファミリーのタンパク質からの分子である(たとえば、Zhouら(1999)J.Immunol.149:735−742を参照のこと;また米国特許第7,169,898号を参照のこと;概説のために、FujimotoおよびTedder(2006)J.Med.Dent.Sci.53:86−91を参照のこと)。CD83の正確な機能はまだ決定されていないが、CD83の可溶型が、未熟および成熟樹状細胞の両方に結合することが報告された(Lechmannら(2001)J.Exp.Med.194:1813−1821を参照のこと)。筆者らはまた、このタンパク質が、インビトロにおいて成熟させた樹状細胞によって、CD80およびCD83の発現を減少させたこと、およびT細胞をインビトロにおいて刺激する樹状細胞の能力を阻害したことを報告した(Lechmannら(2002)Trends in Immunology 23:273−275も参照のこと)。別の者が、インビボでのCD83の可溶型の存在を報告した(たとえば、Hockら(2002)Int.Immunol.13:959−967を参照のこと)。HSV−1感染DCでの研究によって、ウイルス感染が、CD83の分解とCD83 mRNA輸送の阻害とを導くことが示された;HSV−1による回避についてのこの可能性のある機構は、CD83のDC生物学に対する重要性をさらに支持する(たとえばKruseら(2000)J.Virol.74:7127−7136を参照のこと)。Kruseら(2000)(J.Exp.Med.191:1581−1589)は、GC7(N(1)−グアニル−1,7−ジアミノヘプタン)が、CD83 mRNAの核細胞質間移行を干渉し、CD83の表面発現を阻止し、これらのDCによるTリンパ球の活性化を有意に阻害したことを報告した。
【0008】
CD83は、約45kDaの一本鎖糖タンパク質であり、CD83の未熟型には、膜の中へのタンパク質の挿入に際して除去される、シグナルペプチドが含まれる。成熟CD83には、3つの構造ドメイン、すなわち細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインが含まれる(たとえば、細胞外ドメインを正しく同定した、WO2004/046182を参照のこと)。CD83細胞外ドメインには、少なくとも2つのエキソンによってコードされており(たとえばZhouら(1999)J.Immunol.149:735−742;GenBank ID #Z11697)、ネイティブの成熟樹状細胞(「mDC」)の細胞表面上に非常に強く発現している、単一Ig様(V型)ドメインが含まれる。
【0009】
米国特許第5,316,920号および対応するWO93/21318は、CD83タンパク質(「HB15」と呼ばれる)および「任意の特定のドメイン、リガンド結合断片または免疫特異的断片を含む、HB15タンパク質またはその部分をコードするcDNA配列」を記述している(第2欄、23〜25行目)。この特許はまた、「免疫学的障害、疾患または症候群を治療するための、HB15に応答する抗体および抗HB15抗体、または他のHB15機能に対するアンタゴニストの使用方法」の使用も議論している(要約を参照のこと)。この特許はさらに、「HB15抗体、その免疫特異的結合断片若しくはリガンド結合断片若しくは特異的なドメイン、またはHB15機能に干渉するHB15に対する他のアンタゴニストを、免疫応答若しくは細胞相互作用の発現若しくは進行を調節若しくは阻害するため、またはHB15を発現している細胞に対して薬物、毒素若しくは造影剤を送達するために、治療上使用可能である」ことを推測している(第3欄、6〜12行目)。
【0010】
米国特許第5,710,262号(米国特許第5,316,920号として特許付与された出願の一部継続出願)および対応するWO95/29236は、CD83タンパク質を対象とし、ヒトタンパク質とマウスタンパク質との比較を議論している(第2欄、46〜48行目)。これらの特許および出願はさらに、「ヒトHB15またはHB15の哺乳動物ホモログを産生する方法」(第3欄、5〜6行目)、抗体の産生(第4欄、35〜37行目)、および「HB15を発現する細胞に薬物、毒素または造影剤を送達する」ためのHB15抗体の使用(第4欄、38〜39行目)を対象としている。
【0011】
WO97/29781は、「薬学的に許容可能な担体中のCD83試薬および抗原を投与し、それによってCD83が抗原特異的抗体の産生を刺激することを含む、体液性免疫応答を刺激する方法」を対象としている(1ページ)。該出願は、「好ましい実施形態において、CD83試薬は、CD83の細胞外ドメインを含むCD83ペプチド、およびCD83の細胞外ドメインをコードするDNAである」と言及している(2ページ)。該出願はまた、哺乳動物における望ましくない抗原特異的応答を阻害するためのCD83抗体の使用を議論しており、「そのような方法は・・・自己免疫疾患、および組織または器官の移植拒絶を防止または治療するする際に、ならびにアレルギーまたは喘息の治療または予防の際に有用である」と言及している(3ページ)。
【0012】
WO2004/046182および対応する米国特許第7,169,898号(両方とも、そのすべてが参照によって本明細書に組み込まれている)は、CD83の細胞外ドメインを正しく同定し、「樹状細胞、T細胞および/またはB細胞に関する細胞性免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または病状の治療および予防のための・・・CD83ファミリーのタンパク質の可溶性型のメンバーの使用」を示している(WO2004/046182、7ページ)。このPCT出願(12ページ)は、CD83の一形態が、未熟および成熟樹状細胞の両方において、変化した表面マーカー発現パターンを誘導したことを言及している。さらに、「本発明のCD83ファミリーのタンパク質の可溶性型のメンバーが、樹状細胞のT細胞および/またはB細胞との相互作用を崩壊させ、および/または樹状細胞−T細胞クラスターの形成を阻害することが可能である・・・」(14ページ;またSenechalら(2004)Blood 103:4207−4215を参照のこと)。該出願はさらに、hCD83extで治療したマウスは、実験的自己免疫脳炎(「EAE」)に関連した典型的な麻痺症を発症しなかったことを開示している(12ページ;またZinserら(2004)J.Exp.Med.200:345−351を参照のこと)。
【0013】
以上を概観すると、本出願人らは、免疫応答の全体的な抑制を生ずることなしに、そして患者に対する他の損害を引き起こすことなしに、特定の組成物に対する免疫応答を抑制可能である安全で効果的な治療に対する必要性を認識した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/927,377号
【特許文献2】米国特許仮出願第60/838,812号
【特許文献3】米国特許出願第10/287,813号
【特許文献4】米国特許第6,274,378号
【特許文献5】米国特許出願第10/661,804号
【特許文献6】米国特許出願第10/618,134号
【特許文献7】米国特許第7,169,898号
【特許文献8】WO2004/046182
【特許文献9】米国特許第5,316,920号
【特許文献10】WO93/21318
【特許文献11】米国特許第5,710,262号
【特許文献12】WO95/29236
【特許文献13】WO97/29781
【特許文献14】米国特許出願第10/382,397号
【特許文献15】米国特許出願第10/535,522号
【特許文献16】米国特許第7,015,204号
【特許文献17】米国特許第7,160,987号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Dobryzynskiら(2006)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 103:4592−4597
【非特許文献2】Janewayら編(2001)Immunobiology(5th ed.,Garland Publishing,New York,NY)の第14章
【非特許文献3】Gottschalkら(2005)Annu.Rev.Med.56:29−44
【非特許文献4】Andohら,(1996)Transplantation 62:311−316
【非特許文献5】Janewayら編(2001)Immunobiology(5th ed.Garland Publishing,New York NY)の第12章
【非特許文献6】Paul(1993)Fundamental Immunology(Raven Press,New York,New York)(3rd ed.)
【非特許文献7】Banchereau and Schmitt編(1995)Dendritic Cells in Fundamental and Clinical Immunology,Vol.2(Plenum Press,New York)
【非特許文献8】Schulerら(2003)Curr.Opin.Immunol.15:138−147
【非特許文献9】Steinmanら(2003)Ann.Rev.Immunol.21:685−711
【非特許文献10】Kubachら(2005)Int.J.Hematol.81:197−203
【非特許文献11】Boehmer(2005)Nat.Immunol.6:338−344
【非特許文献12】Sakaguchiら(1995)J.Immunol.155:1151−1164
【非特許文献13】Takahashiら(1998)Int.Immunol.10:1969−1980
【非特許文献14】Itohら(1999)J.Immunol.162:5317−5326
【非特許文献15】Shimizuら(1999)J.Immunol.163:5211−5218
【非特許文献16】FujimotoおよびTedder(2006)J.Med.Dent.Sci.53:86−91
【非特許文献17】Lechmannら(2001)J.Exp.Med.194:1813−1821
【非特許文献18】Lechmannら(2002)Trends in Immunology 23:273−275
【非特許文献19】Hockら(2002)Int.Immunol.13:959−967
【非特許文献20】Kruseら(2000)J.Virol.74:7127−7136
【非特許文献21】Kruseら(2000)J.Exp.Med.191:1581−1589
【非特許文献22】Senechalら(2004)Blood 103:4207−4215
【非特許文献23】Zinserら(2004)J.Exp.Med.200:345−351
【非特許文献24】Zhouら(1992)J.Immunol.149:735−742
【非特許文献25】Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.)
【非特許文献26】Daiら(2005)Cell.Mol.Immunol.2:169−175
【非特許文献27】PratおよびAntel(2005)Curr.Opin.Neurol.18:225−230
【非特許文献28】Stepkowski(2000)Expert Rev.Mol.Med.June 21,2000:1−23
【非特許文献29】Hockら(2006)Tissue Antigens 67:57−60
【非特許文献30】Mahanondaら(2002)J.Periodontal Res.37:177−183
【非特許文献31】Bitterら(1987)Methods in Enzymology 153:516−544
【非特許文献32】Gennaro(1995)Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.(Mack Pub.Co.,Easton,PA,U.S.)
【非特許文献33】Antonyら(1999)Biochemistry 38:10775−10784
【非特許文献34】Escriouら(1998)Biochem.Biophys.Acta 1368:276−288
【非特許文献35】Guy−Caffeyら(1995)J.Biol.Chem.270:31391−31396
【非特許文献36】Feignerら(1987)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 84:7413−7417
【非特許文献37】Benimetskayaら(1998)Nucl.Acids Res.26(23):5310−5317
【非特許文献38】Current Protocols in Immunology、Coicoら編(Wiley,Hoboken,NJ)
【非特許文献39】Wangら(2003)J.Immunol.171:3823−3836
【非特許文献40】Lechmannら(2002)Protein Expression and Purification 24:445−452
【非特許文献41】Lutzら(1999)J.Immunol.Meth.223:77
【非特許文献42】Carusoら(1997)Cytometry 27:71
【非特許文献43】Fujihashiら(1993)J.Immunol.Meth.160:181
【非特許文献44】TanquayおよびKillion(1994)Lymphokine Cytokine Res.13:259
【非特許文献45】Parkhurstら(1996)Immunol.157:2539
【発明の概要】
【0016】
発明の概要
本発明は、CD83の使用を含む、望ましくない免疫応答を抑制および/または予防する改善された方法に関する。いくつかの実施形態において、CD83を、少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物とともに、被験体に同時投与する。寛容誘導性樹状細胞および制御性T細胞を産生するための方法も提供される。これらの細胞は、治療目的のためのさらなる細胞を産生するために、インビトロにおいて使用可能であり、または望ましくない免疫応答を抑制および/または予防するために、インビボにおいて使用可能である。本発明の方法は、自己免疫疾患を予防するため、またはその重症度を減少させるために使用可能であり、治療用タンパク質または移植組織のような、少なくとも1つの治療用組成物に対する寛容誘導性を誘導するためにも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(実施例2を参照のこと)は、T細胞増殖アッセイにおける[H]−チミジン取り込みを、T細胞が由来したマウスに投与したキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)の濃度の関数として示す。簡単に記すと、動物をsCD83で処理し、ついでKLHを注射し、28日後、脾臓細胞を採取して、様々な用量のKLHで再刺激した。sCD83で処理した動物から得た細胞(菱形)、ならびにBSAで処理していない(四角)またはBSAで処理した(三角)対照動物に関して、H−チミジンの組み込みをKLH濃度(μg/ml)の関数として示す。
【図2】図2は、T細胞増殖アッセイにおける[H]−チミジン取り込みを、T細胞が由来したマウスに投与したキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)の濃度の関数として示す(実施例3を参照のこと)。簡単に記すと、動物をsCD83で処理し、ついでKLHを注射し、10日後、脾臓細胞を採取して、様々な用量のKLHで再刺激した。sCD83で処理した動物から得た細胞(菱形)、ならびに偽接種した対照動物(三角)に関して、H−チミジンの組み込みをKLH濃度(μg/ml)の関数として示す。
【図3】図3は、T細胞増殖アッセイにおける[H]−チミジン取り込みを、T細胞が由来したマウスに投与したキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)の濃度の関数として示す(実施例3を参照のこと)。簡単に記すと、動物をsCD83で処理し、ついでKLHを注射し、22日後、脾臓細胞を採取して、様々な用量のKLHで再刺激した。sCD83で処理した動物から得た細胞(菱形)、ならびに偽接種した対照動物(三角)に関して、H−チミジンの組み込みをKLH濃度(μg/ml)の関数として示す。
【図4】図4は、実施例5で記述した実験の結果を示し、可溶性CD83(「sCD83」)が、エクスビボでB細胞増殖を抑制することを明らかにする。
【図5】図5は、実施例5で記述した実験の結果を示し、sCD83が、移植レシピエントのB細胞によるエクスビボでの抗体産生を抑制することを明らかにする。アスタリスクは、p<0.01をす。
【図6】図6は、実施例7で記述した実験の結果を示し、sCD83が、外来抗原に対するB細胞によるアロ−抗体応答の誘導を防止可能であることを明らかにする。
【図7】図7は、実施例8で記述した実験の結果を示し、シロリムス(「Rapa」)および抗CD45RB mAbとのsCD83の同時投与が、移植心臓組織の長期間の生存をもたらしたことを明らかにする。
【図8】図8は、実施例8で記述した実験の結果を示し、シロリムス(「Rapa」)および抗CD45RB mAbとのsCD83の同時投与が、移植レシピエントにおけるDC成熟化を阻害したことを明らかにする。アスタリスクは、p<0.05を示す。
【図9】図9は、実施例8で記述した実験の結果を示しており、図8と同様に、シロリムス(「Rapa」)および抗CD45RB mAbとのsCD83の同時投与が、移植レシピエントにおけるDC成熟化を阻害したことを明らかにする。アスタリスクは、p<0.01を示す。
【図10】図10は、実施例8で記述した実験の結果を示し、シロリムス(「Rapa」)および抗CD45RB mAbとのsCD83の同時投与が、移植レシピエントにおいて制御性T細胞を産生したことを明らかにする。アスタリスクは、p<0.01をす。
【図11】図11は、実施例9で記述した実験の結果を示し、sCD83が、インビトロで、TNF−α産生とカニクイザル由来のmDCによるmDC活性化マーカーの表面発現とを抑制したことを明らかにする。
【図12】図12は、実施例9で記述した実験の結果を示し、sCD83が、インビトロで、TNF−α産生と単球活性化マーカーの表面発現とを中程度に抑制したことを明らかにする。
【図13】図13は、実施例9で記述した実験の結果を示し、sCD83が、制御性T細胞の産生を促進したことを示す。縦軸は、CD4CD25iFoxp3細胞の割合を示す。
【図14】図14は、実施例9で記述した実験の結果を示し、増加した数の制御性T細胞が、可溶性CD83で処理した樹状細胞によって産生されたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、被験体を治療するためにCD83を用いる方法を提供する。本発明の方法には、CD83単独の使用、または少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物との組合せでの使用が含まれる。CD83を単独で、または少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物と組み合わせて使用する方法が提供され、またCD83と少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物とを含む組成物も提供される。本発明の方法には、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたは5つまたはそれ以上の免疫抑制性化合物と一緒にCD83を用いる方法が含まれる。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明の方法にはまた、別の化合物の使用が含まれる。たとえば、いくつかの実施形態において、治療用組成物(単数または複数)に対して被験体を寛容化するために、少なくとも1つの治療用組成物をCD83とともに被験体に同時投与する。いくつかの実施形態において、本発明の方法には、CD83と、少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物を、少なくとも1つの治療用組成物と一緒に、被験体に同時投与することによって、被験体を寛容化することが含まれる。本発明の方法は、たとえば、少なくとも1つの治療用組成物に対する寛容性を誘導するため、または自己免疫疾患を予防またはその重症度を減少させるために使用可能である。治療用組成物は、移植組織であってよい。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法を、移植組織の拒絶を予防するために使用する。
【0020】
本発明はまた、インビボまたはインビトロ(たとえばエクスビボ)のいずれかにおけるCD83および少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物の存在下での成熟化を介して、寛容誘導性樹状細胞を産生することを含む、被験体を寛容化する方法を提供する。いくつかの実施形態において、寛容誘導性樹状細胞を、制御性T細胞を産生するために使用する。本発明の寛容誘導性樹状細胞および制御性T細胞は、インビボまたはエクスビボで産生可能であり、エクスビボで産生された細胞はついで被験体に投与可能である。本発明の寛容誘導性樹状細胞および制御性T細胞は、自己由来であってよく、または幹細胞に由来してよい。本発明の組成物および方法を、抗原に対する寛容化のため、ならびに免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または病状(たとえば障害)の治療または予防のために使用してよく、ここで、有効量のCD83と少なくとも1つの別の免疫抑制性化合物を被験体に投与する。
【0021】
本発明の目的は、実施形態によって異なってよい。いくつかの実施形態において、本発明の目的には、治療用組成物に対する被験体の完全寛容化が含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の目的には、免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状の予防、治癒、軽減および/または緩和が含まれる。被験体は、これらの目的の少なくとも1つが達成された場合に、寛容化される、および/または免疫抑制されたと考えられる(すなわち免疫寛容が、誘導または獲得されたと考えられる)。したがって、本明細書で使用するところの、被験体を「寛容化すること」、または「免疫抑制」を誘導することは、樹状細胞、B細胞、またはT細胞に関する免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状が、未治療対照またはその他の適切な対照と比較して(たとえば、治療が免疫応答の発生を予防するか、または重症度を軽減することを意図する場合、治療の前の症状、または治療なしでの症状の予想される重症度と比較して)、予防、治癒、軽減または緩和されることを意味する。当業者は、症状の測定および評価の方法の選択および適用、ならびに適切な対照の選択に詳しい。
【0022】
したがって、免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状が、適切な対照と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%軽減または緩和される場合に、被験体は寛容化されたと考えられ、および/または免疫抑制が発生したと考えられる。治療が、自己免疫疾病を発症することに対する被験体のリスクを軽減することを意図する実施形態において、このリスクは、適切な対照と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%軽減または緩和され、この評価を、被験体の集団において、統計学的に実施することができる。治療が、治療用組成物に対して被験体を寛容化することを意図する実施形態において、免疫応答の望ましくない機能は、適切な対照と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%減少する。他の実施形態において、本発明の目的には、寛容誘導性樹状細胞の産生が含まれ、これらの実施形態において、「症状」は、インビボまたはインビトロのいずれかでの、細胞の挙動のパラメータを意味する。
【0023】
本発明の方法は、治療目的のために有用であり、したがって、免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状を予防、治癒または緩和することを意図する。治療が予防的であることが意図される場合、たとえば治療の前の症状との比較、または予想される症状の重症度との比較のような、適切な対照との比較で、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、70%、90%またはそれ以上、必要に応じて、症状が軽減、増加、または改善される場合に、疾患または障害の症状は、軽減または緩和されたと考えられる。当業者は、症状における変化を評価するための技術および基準に詳しい。免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の症状が当業者に既知であり、これには以下の、移植組織の異常な組織構造;移植組織の異常機能;診断または移植のような事象後の短期間の生存期間;望ましくない抗体または望ましくない細胞(たとえば抗原特異的樹状細胞またはT細胞)のような、血中の指標タンパク質(単数または複数)または他の化合物(単数または複数)の異常に、または望ましくないほどに高い、または低い濃度または数;血中または体内の別の場所での、指標細胞の異常に、または望ましくないほどに低い濃度または数、たとえば制御性T細胞の望ましくないほどに低い濃度または数が含まれ、望ましくない免疫応答が開始または維持される。
【0024】
必要に応じて、インビボ寛容化または寛容性および/または免疫抑制を、たとえば被験体より単離された細胞を用いる混合リンパ球反応のような、インビトロアッセイを用いて測定することができる。同様に、エクスビボにて細胞内で達成される寛容化または寛容性および/または免疫抑制を、たとえば樹状細胞、T細胞またはB細胞のような、種々の型の細胞を用いるエクスビボアッセイにおいて測定することができる。寛容化または寛容性、および/または免疫抑制を、エクスビボ法を用いて測定する場合、寛容化または寛容性は、適切な対照との比較において、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、70%、90%またはそれ以上、免疫刺激に対する細胞の応答が減少した場合に、発生したと考えられる。好適なアッセイが、直接的、または間接的に免疫応答を測定し、当該技術分野で既知であり、それらには限定はされないが、混合リンパ球反応アッセイ、細胞傷害性アッセイ、抗体力価アッセイ、IL−10の産生についてのアッセイ、TGF−βの産生についてのアッセイ、細胞表面マーカーの評価、およびFoxp3の発現についてのアッセイが含まれる。
【0025】
本明細書で使用するところの用語「可溶性CD83」または「sCD83」は、CD83ファミリーのメンバーのタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分を含む、タンパク質性分子を意味する。いくつかの実施形態において、可溶性CD83タンパク質は、それが発現している細胞の膜へ前記分子をつなぐことが可能なアミノ酸配列を持たない。たとえば、可溶性CD83タンパク質には、細胞外ドメインの外にある、全長のネイティブCD83タンパク質のさらなる残基が含まれうる。CD83タンパク質、核酸配列および構造が当該技術分野で既知である。(GenBank受入番号Z11697に記載のような)ヒトCD83の核酸配列は配列番号:1と記載される。本配列には、(終止コドンを含む)位置11〜628のコード配列、および位置11〜67のシグナルペプチドが含まれる。成熟CD83ペプチドをコードする配列は、位置68〜625に広がっている。制限酵素認識部位は、配列の先頭および末端に存在する(位置1〜6および1755〜1760)。(Genbank受入番号Q01151に記載され、配列番号:1と記載された核酸配列によってコードされた)ヒトCD83のアミノ酸配列を、配列番号:2として記載する。
【0026】
CD83の細胞外ドメインは、ネイティブ全長タンパク質のアミノ酸20〜144を含むことが記述されている。CD83の全長アミノ酸配列を、配列番号:2と記載し、全長CD83のアミノ酸20〜144をまた配列番号:4と記載する。細胞外ドメインをコードするCD83核酸配列の部分を、配列番号:3と記載する。たとえばそのすべてが参照によって本明細書に組み込まれている、Zhouら(1992)J.Immunol.149:735−742、GenBank受入番号Z11697、およびSwissProt Acc.No.Q01151、WO2004/046182も参照のこと。
【0027】
他の実施形態において、CD83タンパク質は、「膜結合型」であり、すなわち、CD83ファミリーのメンバーのタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分を含み、また細胞の膜のような膜へつなぐことが可能であるアミノ酸配列を持つタンパク質またはペプチドを含む。本明細書で使用するところの用語「CD83」は、可溶性CD83と膜結合型CD83を包含する。
【0028】
いくつかの実施形態において、CD83タンパク質は、配列番号:2において記載された、および/またはSwissProt Acc.No.Q01151において記載されたヒトCD83タンパク質の配列の対応する部分に対して、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の配列同一性を持ちうる。したがって用語「CD83」は、マウスCD83タンパク質(「HB15」とも呼ばれる、たとえばBerchtoldら(1999)FEBS Lett.461:211−216を参照のこと)を包含する。いくつかの実施形態において、CD83タンパク質は、ネイティブの全長CD83タンパク質に由来する少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、100またはそれ以上の連続するアミノ酸の断片を含むか、そのような断片に対して、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。一般に、本明細書で使用するところの「配列同一性」は、配列の型(すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸)に対して適切なデフォルトパラメータで、周知のBLASTアライメントプログラムを用いて決定される、2つの配列間の配列同一性を意味する。これ以外のプログラムは、BLASTNおよびBLASTPであり、これらのプログラムの詳細は当該技術分野で既知であり、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトで見ることができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書で使用するところの「可溶性CD83」または「sCD83」は、CD83ファミリーのメンバーのタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分を含むエピトープを意味し、前記エピソープは、たとえば被験体に投与した時に、それ自体に対する免疫応答を刺激する。そのような実施形態において、sCD83であるエピトープに対する免疫応答は、sCD83に関して本明細書に記述した活性および効果を摸倣しうる。すなわち、sCD83であるエピトープに対する免疫応答は、ネイティブCD83の細胞外ドメインを含むsCD83の活性を持ってよく、もしくはsCD83であるエピトープに対する免疫応答は、ネイティブCD83の細胞外ドメインを含むsCD83の投与によって生じる効果と同様である、それが投与された被験体における効果を持ってよい。そのような実施形態において、アッセイ中の、または被験体に対するCD83の活性または効果は、エピトープに対する免疫応答の結果である可能性があり、またはCD83それ自体の結果である可能性があり、またはそれら両方の結果である可能性がある。
【0030】
本発明で使用されるCD83は、CD83タンパク質のダイマーまたはマルチマーであってよい。ダイマー化またはマルチマー化は、(たとえば、ネイティブタンパク質の位置12、27、35、100、107、129および163に存在する)CD83タンパク質の単量体型内に存在するシステイン残基間の1つまたはそれ以上のジスルフィド結合の形成によって、またはCD83タンパク質の単量体型内の、同一または異なる官能基(たとえばカルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオ基など)を連結する、二官能性リンカー分子(たとえばジアミン、ジカルボン酸化合物など)によって達成されてよい。後者には、組換え技術によって直接産生可能な二量体構造を産生するための、ポリペプチドリンカー(たとえば[(Gly)Ser]−(式中xはたとえば3または4で、yはたとえば1〜5である)のような小さな極性アミノ酸残基からなる)の使用が含まれる。いくつかの実施形態において、本発明で使用されるCD83は、ホモダイマーまたはホモマルチマー(たとえば可溶性CD83の第五システイン残基(すなわちネイティブタンパク質中のアミノ酸129に対応するシステイン残基)との間でジスルフィド結合を介して連結した、ネイティブCD83タンパク質のアミノ酸残基20〜144(すなわち配列番号:2)を含むsCD83)である。
【0031】
いくつかの実施形態において、CD83は、モノマーであってよく、そのような実施形態において、1つまたはそれ以上のCD83のネイティブシステイン残基が、別のアミノ酸残基、たとえば小さいアミノ酸残基および/または極性アミノ酸残基によって置換されてよい。いくつかの実施形態において、好ましくは、小さいアミノ酸残基、および/または極性アミノ酸残基は、セリン、アラニン、グリシン、バリン、スレオニンなどから選択される。CD83がモノマーの場合、いくつかの実施形態において、CD83タンパク質の少なくとも1つのシステイン残基が置換され、たとえば全長ネイティブタンパク質の位置129に対応するシステイン残基がアラニンで置換されてよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、用語「可溶性CD83」または「sCD83」はまた、CD83の細胞外ドメインの少なくとも一部分ならびに機能的断片および誘導体の融合タンパク質を包含する(たとえば、WO2004/046182を参照のこと)。融合タンパク質が本明細書で定義したようなCD83活性を維持している限り、好適な融合タンパク質には、CD83の細胞外ドメインの少なくとも一部分と、少なくとも1つの他のペプチドまたはタンパク質が含まれる。したがって、いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、CD83の細胞外ドメインの少なくとも一部分を含むであろう。そのようなタンパク質またはペプチドが当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態において、細胞外ドメイン外のCD83のさらなる残基を含むタンパク質が、用語「可溶性CD83」によって包含される。したがって、好適な誘導体には、限定はされないが、C末端またはN末端に結合したさらなる配列を持つタンパク質、たとえば、それらのC末端に膜貫通ドメインの部分、または短いペプチドをN末端に持つ(たとえば遺伝子工学的に改変した融合タンパク質の産物のような、トロンビンによるトロンビン部位の開裂によって生じ得る、たとえばGly−Ser−Pro−Gly、または融合タンパク質の開裂後のGSTの断片から生じる短いペプチド)ものが含まれる。いくつかの実施形態において、sCD83は、ネイティブな全長タンパク質(配列番号:2)のアミノ酸20〜145からなるか、または該アミノ酸を含み、細胞外ドメインと、C末端でのさらなるアミノ酸を含む。他の実施形態において、sCD83は、配列番号:2のアミノ酸20〜143からなる。
【0033】
本発明で使用されるCD83の活性は、当該技術分野で既知の方法によって評価可能である。CD83タンパク質は、任意の好適なアッセイによって測定されるような、ネイティブな全長CD83タンパク質の少なくとも1つの活性を示す場合に、「CD83活性」を持つと言われる。CD83タンパク質は、そのようなアッセイにおいて、同様のアッセイにて測定されたネイティブな全長CD83タンパク質の活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の活性を持つ場合に、「CD83活性」を持つと言われる。好ましくは、本発明で使用されるCD83タンパク質は、成熟免疫刺激性樹状細胞に結合し、T細胞増殖を刺激するこれらの樹状細胞の能力を減少させることができる。いくつかの実施形態において、CD83は、成熟DCまたは単球において、たとえば、実施例9で記述したアッセイにおいて、TNF−αを抑制または減少させる。この活性は、直接的または間接的に評価可能であり、インビボまたはインビトロにて測定可能であり、好適なアッセイが当該技術分野で既知であって、たとえば混合リンパ球反応アッセイすなわち「MLR」(たとえばKruseら(2000)J.Virol.74:7127−7136;Lechmannら(2001)J.Exp.Med.194:1813−1821を参照のこと)が含まれる。したがって、本発明で使用されるCD83タンパク質は、たとえばsCD83のない状態での、成熟免疫刺激性樹状細胞とT細胞との間の相互作用のような、適切な対照との比較において、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%またはそれ以上、T細胞増殖を刺激する、成熟免疫刺激性樹状細胞の能力を減少させることができる。いくつかの実施形態において、CD83は、エピトープであり、免疫応答を刺激する活性を持つ。本活性は、インビトロアッセイにおいて、または被験体への投与に続いて、CD83に対する応答において産生される、抗CD83抗体を同定することによってアッセイしてよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明で使用されるCD83タンパク質は、適切な対照との比較において、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%またはそれ以上、少なくとも1つの成熟化過程の工程の間、可溶性CD83の存在下のインビトロにおいて成熟した免疫刺激性樹状細胞による、TNF−α、CD80および/またはCD83の発現を減少させることができる(たとえばLechmannら(2001)J.Exp.Med.194:1813−1821、WO2004/046182、実施例9を参照のこと)。このように、CD83は、細胞表面マーカーの発現を変化させたと言うことができ、すなわち、処理した細胞の免疫表現型を変更したということができる。細胞表面マーカーの発現の解析のために一般に使用されている技術(たとえばFACS解析)がしばしば、細胞の混合集団を表すデータを生成しうること、およびどの集団が特定のデータセットにおいて表されうるかを同定するために注意が払われるべきであることが当業者によって理解されている。
【0035】
タンパク質のCD83ファミリーの他のメンバーは、たとえば、哺乳動物のような他の動物からの、または同一の生物の他の組織からの、核酸の種々の供給源(たとえばゲノムDNA、cDNAまたはRNA)に対して、細胞外部分をコードしているヒトCD83コード領域の全体または一部を含む核酸をハイブリッド形成させることによって得ることが可能である。本発明の方法および組成物において使用されるCD83および他のタンパク質を任意の好適な方法によって生産および精製してよい。種々のタンパク質およびその誘導体、ならびにこれらをコードする核酸を生産、精製および操作するための方法が、当該技術分野でまたよく知られている。たとえば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.)を参照のこと、また米国特許第7,169,898号、米国特許出願第10/382,397号、および米国特許出願第10/535,522号を参照のこと。
【0036】
いくつかの実施形態において、CD83タンパク質をコードする核酸を被験体に提供することによって、CD83を被験体に投与する。たとえば、CD83は、米国特許第7,169,898号の配列番号:1のヌクレオチド58〜432を含むDNA断片として、または対応するmRNAとして、被験体に投与可能である(たとえば米国特許第7,015,204号を参照のこと)。同様に、いくつかの実施形態において、宿主細胞(すなわち細胞)へCD83タンパク質をコードする核酸を形質転換することによって、CD83をインビトロまたはインビボにおいて細胞に提供し、形質転換宿主細胞がついでCD83タンパク質を発現し、それによって、他の細胞ならびにそれ自身(すなわち形質転換宿主細胞)に対してCD83タンパク質を提供する。そのような実施形態において、好適な宿主細胞には樹状細胞が含まれる。CD83が、CD83タンパク質をコードする核酸として提供される実施形態において、用語「CD83」はまた、CD83タンパク質をコードする核酸も意味する。CD83タンパク質をコードする限り、DNA、RNAまたは合成核酸を含む、任意の好適な核酸を使用することができる。核酸は、コードされたタンパク質またはタンパク質断片の発現のために好適なベクター内で提供されうる。これらを産生するための好適なベクターおよび方法が当該技術分野で既知である。
【0037】
本明細書で使用するところの「治療用組成物」は、治療目的のために使用され、それに対する免疫応答が望ましくない、外来性組成物を意味する。したがって、用語「治療用組成物」は、純粋な調製物(すなわち単一の、本質的に純粋な物質または化合物からなる調製物)ならびに物質または化合物の混合物を包含する。本明細書で使用するところの用語「治療目的」には、疾患または障害の少なくとも1つの症状を予防、治癒または軽減若しくは緩和するための努力が含まれる。このように、「治療目的」には、本発明の組成物および/または方法の治療上の使用および予防上の使用の両方が含まれ、したがって、治療用組成物には、T細胞に関する免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の発症を予防するために使用されるものが含まれる。
【0038】
本発明で使用される好適な治療用組成物には、限定はされないが、抗体、タンパク質、「小分子」、遺伝子治療ベクターおよび遺伝子治療ベクターによって発現される任意のタンパク質、抗原、アレルゲン、(幹細胞を含む)細胞、ならびに組織移植片が含まれる。これらのカテゴリーは、必ずしも相互に排他的ではなく、したがって、たとえば多くのタンパク質が抗原であり、多くの抗原がタンパク質であることが理解される。治療用組成物をCD83と同時投与するが、被験体が、少なくとも1つの他の治療用組成物または少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物で治療されてはいない実施形態において、治療用組成物は移植組織ではない。治療用組成物をCD83と同時投与するが、被験体が、少なくとも1つの他の治療用組成物または少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物で治療されてはいない実施形態において、治療用組成物は、移植組織に関連する抗原ではない。
【0039】
抗原である好適な治療用組成物は、それに対して免疫応答が発生しうる任意の組成物(すなわち、被験体が免疫応答を持つか、または持ちうる任意の組成物)である。好適な抗原には、自己免疫疾患の発症に関与する若しくは関連する抗原、またはそれに対する抗体が自己免疫疾患を持つ被験体において発見される抗原などの、たとえば寛容性が望まれる自己免疫疾患に関連した抗原などの、タンパク質およびタンパク質断片が含まれる。
【0040】
したがって、例示的な抗原には、(多発性硬化症の発症に関与する)ミエリン塩基性タンパク質、(尋常性天疱瘡の発症に関与すると考えられている)デスモグレイン−3タンパク質、(グレーブス病の発症に関与する)甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプター、(橋本甲状腺炎の発症に関与する)甲状腺ペルオキシダーゼ、(重症筋無力症の発症に関与する)アセチルコリンレセプター、および(I型糖尿病の発症に関与する)インスリンが含まれる。抗体である好適な治療用組成物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、または抗体の一部または断片を含む、任意の型の抗体またはその誘導体であってよい。
【0041】
本発明の方法は、本発明の方法において使用される治療用組成物が、望ましくない免疫応答の近くまで寛容誘導性細胞を導く限り、免疫応答が指向される抗原または指向される可能性のある抗原が未知である場合でさえも、寛容誘導性を誘導可能である。したがって、望ましくない免疫応答が指向されるまたは指向される可能性のある組織中、またはその近くにおける抗原の正体にもかかわらず、好適な治療用組成物には、寛容化が望まれる特定の組織に関連する抗原が含まれる。このように、いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物は、「決定基拡散(determinant spreading)」が発生したか、発生しうる、疾患または障害を治療、および/または予防することにおいてとりわけ有用であり得る(たとえばDaiら(2005)Cell.Mol.Immunol.2:169−175;PratおよびAntel(2005)Curr.Opin.Neurol.18:225−230を参照のこと)。
【0042】
抗原は、その組織を構成する細胞によって発現される場合、またはその組織を構成する細胞上またはその近く(たとえばその組織の細胞外マトリックス)にある場合、特定の組織に「関連する」。特定の組織に「関連した」抗原の使用には、組織それ自体から分離した精製形態での抗原の使用が含まれ、またはインサイチュ(すなわち組織内)での抗原の使用が含まれる可能性がある。本明細書で使用するところの用語「組織」は、個々の器官(たとえば肝臓、腎臓、心臓、肺など)、ならびに「液体」組織(たとえば血液、血清のような血液成分、T細胞のような細胞など)、およびいずれかまたは両方の部分またはサブパートを包含する。
【0043】
必要に応じて、治療用組成物は、本発明の方法において使用される時に、被験体を寛容化するそれらの能力以外の生物学的活性を欠くように選択してよい。したがってたとえば、治療用組成物は、ネイティブインスリンの正常な生理学的活性を欠くネイティブインスリンタンパク質の一部または断片のみからなってよい。抗体である好適な治療用組成物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体または抗体の一部または断片を含む、任意の型の抗体またはその誘導体であってよい。当業者は、本発明の方法での使用のために、好適な治療用組成物を同定および提供可能である。
【0044】
好適な治療用組成物には、本発明の目的(たとえば移植組織に対する寛容化)が達成される限り、寛容化が望まれる特定の組織と関連するか否かを問わず、寛容化を刺激するために役に立つ抗原または他の薬剤が含まれうる。いくつかの実施形態において、好適な治療用組成物には、対象とする組織から単離された総RNA、またはRNAの一部が含まれ、これは被験体に直接投与可能であり(たとえば米国特許第7,015,204号を参照のこと)、または樹状細胞を形質導入するために使用可能であり、その結果たとえば被験体を治療するため、または制御性T細胞のインビトロ産生のために使用可能である。タンパク質またはポリペプチドである治療用組成物を、タンパク質またはポリペプチドとして投与してよく、またはそれをコードする核酸を細胞または被験体に提供することによって投与してよい。したがって、いくつかの実施形態において、治療用組成物には、RNAが含まれる(たとえば、米国特許第7,015,204号を参照のこと)。いくつかの実施形態において、2つ以上の治療用組成物を被験体に投与する。
【0045】
用語「免疫抑制性化合物(immunosuppressive compound)」は、リンパ球のTおよび/またはBクローンの集団のサイズを枯渇させることが可能であるか、またはそれらの反応性、増殖または分化を抑制することが可能である、化合物を意味する。本発明の方法において使用される免疫抑制性化合物には、限定はされないが、シクロスポリン(「CsA」としても知られ、Neoral(登録商標)またはSandimmune(登録商標)として市販されている)およびタクロリムス(「FK506」としても知られ、Prograf(登録商標)として市販されている)を含むカルシニューリン阻害剤;ミコフェノール酸モフェチル(「MMF」としても知られ、Cellcept(登録商標)として市販されている)およびアザチオプリン(Azasan(登録商標)またはImuran(登録商標)として市販されている)のようなプリン代謝阻害剤;エベロリムス(Certican(登録商標)として市販されている)およびシロリムス(「ラパマイシン」または「Rapa」としても知られ、Rapamune(登録商標)として市販されている)のような増殖阻害剤;抗CD45および抗CD45RBのようなモノクローナル抗体(「mAb」)(たとえば米国特許第7,160,987号を参照のこと);OKT3のような、T細胞に対して指向されるモノクローナル抗体;バシリキシマブおよびダクリズマブのような、ヒト化抗TaT抗体を含む、IL−2レセプターに対して指向されるモノクローナル抗体;CTLA−4−Ig1融合タンパク質のような、T細胞共刺激経路を遮断する物質;キメラ現象(すなわち、移植片組織が自己として認識される、ドナーおよびレシピエント免疫細胞の共存)を誘導可能な物質;シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)として市販されている)のような、骨髄非破壊的移植前治療(non−myeloblative pre−transplantation treatments)が含まれる。免疫抑制薬およびそれらの標的の議論のために、たとえばStepkowski(2000)Expert Rev.Mol.Med.June 21,2000:1−23を参照のこと)。
【0046】
シロリムス(「ラパマイシン」または「Rapa」としても知られ、Rapamune(登録商標)として市販されている)は、13歳以上の腎臓移植患者における、器官拒絶の予防のために現在必要とされている。製造業者は、Rapamune(登録商標)を、最初にシクロスポリンおよびコルチコステロイドとの処方において使用するべきであると推奨している。実験モデル(すなわちマウス、ブタおよび/または霊長類)における研究によって、シロリムスが、たとえば腎臓、心臓、皮膚、膵島、小腸、膵−十二指腸組織、および骨髄の同種移植片生存を延長したことが示された。シロリムスは、ラットにおける心臓および腎臓の同種移植片の急性拒絶を無効にし、前感作ラットにおける移植片生存を延長した。いくつかの研究において、シロリムスの免疫抑制効果は、治療の中止後6ヶ月まで続いた。シロリムスの寛容性効果は、同種移植片特異的である。自己免疫疾患の齧歯類モデルにおいて、シロリムスが、全身性紅斑性狼瘡、コラーゲン誘導関節炎、自己免疫性(I型)糖尿病、自己免疫性心筋炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎、移植片対宿主疾患および自己免疫性ぶどう膜網膜炎に関連した、免疫が媒介する事象を抑制した。
【0047】
ミコフェノール酸モフェチル(「MMF」としても知られ、Cellcept(登録商標)として市販されている)は、同種異系心移植(心臓)または肝移植(肝臓)を受ける患者における器官拒絶の予防のために現在必要とされている。製造業者は、Cellcept(登録商標)をシクロスポリンおよびコルチコステロイドと一緒に使用することを推奨している。ミコフェノール酸モフェチルが、実験動物モデルにおいて、腎臓、心臓、肝臓、腸、四肢、小腸、膵島、および骨髄を含む同種移植片の生存を延長したことが示された。ミコフェノール酸モフェチルはまた、イヌ腎臓モデルおよびラット心臓同種移植片モデルにおいて、発生している急性拒絶を覆すことも示され、ラットにおける大動脈および心臓の同種移植片ならびに霊長類異種移植片の実験モデルにおいて、増殖性の動脈疾患を阻害した。ミコフェノール酸モフェチルはまた、マウス腫瘍移植モデルにおいて、腫瘍発生を阻害し、生存を延長したことが明らかにされた。ミコフェノール酸モフェチルは、単独、または別の免疫抑制薬剤との組合せで使用してよい。
【0048】
タクロリムス(「FK506」としても知られ、Prograf(登録商標)として市販されている)は、同種異系の肝移植、腎移植または心移植を受けている患者における器官拒絶の予防のために現在必要とされている。タクロリムスは、副腎コルチコステロイドと一緒に使用されるべきである。心臓移植レシピエントにおいて、Prograf(登録商標)は、アザチオプリンまたはMMFと一緒に使用されることが推奨されている。タクロリムスは、肝臓、腎臓、心臓、骨髄、小腸および膵臓、肺および気管、皮膚、角膜および四肢の動物移植モデルにおいて、宿主および移植片の生存を延長することが示された。動物において、タクロリムスは、いくつかの体液性免疫を抑制し、そして、より大きな程度まで、同種移植拒絶、遅延型過敏症、コラーゲン誘導動脈炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎および移植片対宿主疾患のような細胞媒介性反応を抑制することが明らかにされた。本発明は、任意の化合物またはそれらの組合せの作用機序にとらわれるわけではなく、またタクロリムスの正確な作用機序は未知であるけれども、タクロリムスは、カルシニューリンのホスファターゼ活性を阻害し、Tリンパ球活性化を阻害すると考えられている。
【0049】
シクロスポリン(「CsA」としても知られ、Neoral(登録商標)またはSandimmune(登録商標)として市販されている)は、腎臓、肝臓および心臓の同種移植に対する器官拒絶の予防のために現在必要とされている。シクロスポリンは、アザチオプリンおよびコルチコステロイドとの組合せで使用されており、リウマチ性関節炎患者において、メトトレキサートとの組合せで使用可能である。シクロスポリンは、疾患が十分にメトトレキサートに反応しなかった重度の活性リウマチ性関節炎の患者の治療のために必要とされている。シクロスポリンはまた、重度の難治性尋常性乾癬の、成人で免疫システムが損なわれていない患者の治療のために必要とされている。シクロスポリンは、動物モデルにおいて、皮膚、腎臓、肝臓、心臓、膵臓、骨髄、小腸および肺を含む同種移植片の生存を延長する、強力な免疫抑制薬剤である。シクロスポリンは、いくつかの体液性免疫を抑制し、そして、より大きな程度まで、種々の器官に対して多くの動物種における、同種移植拒絶、遅延型過敏症、実験的アレルギー性脳脊髄炎、フロイントアジュバント関節炎(Freund's adjuvant arthritis)および移植片対宿主疾患のような細胞媒介性免疫応答を抑制することが示されている。本発明は、任意の化合物またはそれらの組合せの作用機序にとらわれるわけではないが、シクロスポリンは、細胞周期のG0およびG1期において、免疫応答性リンパ球を阻害し、そしてTリンパ球を選択的に阻害することが示されてきた。
【0050】
「有効量」の物質によって、本発明の方法にしたがって、被験体に投与した場合に、少なくとも、本発明の少なくとも1つの目的を達成するのに十分な量が意図される。したがって、たとえば、「有効量」の治療用組成物は、CD83および少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物と一緒に被験体に同時投与した時に、治療用組成物に対して被験体を寛容化するのに少なくとも十分である。同様に、「有効量」のCD83は、治療用組成物および少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物と同時投与したときに、治療用組成物に対して患者を寛容化するのに、少なくとも十分である。「有効量」の免疫抑制性化合物は、CD83と、任意に治療用組成物とを同時投与した時に、免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状に対して、測定可能な効果を生ずるのに少なくとも十分である。いくつかの実施形態において、有効量の免疫抑制性化合物は、本明細書の別の場所で定義したように、寛容性および/または免疫抑制を誘導するのに、少なくとも十分である。免疫抑制性化合物の有効量は、個々の被験体が示した症状に関して決定されてよく、または臨床研究から決定するか、若しくはモデル系における適切な研究から外挿してよい。したがって、たとえば、免疫抑制性化合物の有効量には、本発明の方法を用いる臨床研究において決定された用量範囲に基づいて、疾患または障害の少なくとも1つの症状において、測定可能な効果を生ずることが予想されうる量が含まれる。
【0051】
有効量は、1つまたはそれ以上の投与、適用または用量で投与可能である。好適な投与、適用および用量は、限定はされないが、組成物の特異的活性;組成物の処方;治療される被験体の体重、年齢、健康、疾患および状態;ならびに組成物の被験体内への投与の経路を含む、多数の因子によって変化しうる。場合によっては、有効量であることが要求されるCD83の最小量は、患者内にすでに存在しているCD83、とりわけ可溶性CD83の存在によって、減少させてよく(たとえばHockら(2006)(Tissue Antigens 67:57−60を参照のこと)、当業者は、用量および投与などを、最適な結果を達成するために簡単に適合可能である。たとえば、CD83は、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、5、7、10、20、50、70、100、200、500若しくは700mg/kgまたは1、2、5、7、10、20、50若しくは100g/kgの下限、および0.05、0.1、0.5、1、2、5、7、10、20、50、70、100、200、500若しくは700mg/kgまたは1、2、5、7、10、20、50、100、若しくは200g/kgの上限を持つ範囲内で、患者に投与してよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、それに対して免疫応答が指向されるかまたは指向される可能性のある抗原が未知である場合でさえも、寛容性を誘導可能である。したがって、好適な治療用組成物には、それに対する望ましくない免疫応答が指向されるかまたは指向され留可能性がある組織中またはその組織の近くにおける抗原の正体にもかかわらず、寛容化が望まれる特定の組織に関連する抗原が含まれる。このように、いくつかの実施形態で、本発明の方法および組成物が、「決定基拡散」が発生するか、または発生しうる疾患または障害を治療すること、および/または予防することにおいてとりわけ有用であり得る(たとえば、Daiら(2005)Cell.Mol.Immunol.2:169−175、PratおよびAntel(2005)Curr.Opin.Neurol.18:225−230を参照のこと)。抗原は、組織を構成する細胞によって発現される場合、または組織を構成する細胞上またはその近くで(たとえば組織の細胞外マトリックス中で)見られる場合に、特定の組織に「関連する」。
【0053】
本発明の方法は、少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物とCD83との同時投与によって生じる相乗効果の利益を提供し、それによって、併用治療の効果は、2つの個々の治療の組合せから期待されるものよりも格段に高い。さらに、CD83を、2つまたはそれ以上の他の免疫抑制性化合物とともに被験体に同時投与する場合、さらにより大きな利益が提供されうる。このように、本発明は、個々の治療のみによって提供されるものよりも大きな効果を持つ、併用治療(または「同時投与」治療)を提供する。いくつかの実施形態において、併用治療または同時投与治療は、各個々の治療によって提供される利益の合計よりも大きな利益を提供する。いくつかの実施形態において、併用治療または同時投与治療は、少なくとも10%、20%、25%、30%、50%、75%、100%、200%若しくはそれ以上、または1.5倍、2倍、3倍、4倍若しくはそれ以上、個々の治療によって提供される利益よりも大きな利益を提供する。いくつかの実施形態において、併用治療または同時投与治療は、少なくとも10%、20%、25%、30%、50%、75%、100%、200%若しくはそれ以上、または1.5倍、2倍、3倍、4倍若しくはそれ以上、個々の治療によって提供される利益の合計より大きな利益を提供する。
【0054】
併用(または「同時投与」)治療のこの改善された効果が、化合物を単独で使用する場合に必要であるものよりも低い用量の個々の化合物を、被験体を治療するために使用可能である、本発明の治療の方法を提供する。このように、本発明は、現在使用されているよりも少ない個々の化合物を用いて、効果的な治療を可能にする。言い換えれば、本発明は、被験体を治療するための化合物の量を減少させて使用する方法を提供し、被験体を治療するために使用する化合物の量を減少させる方法を提供する。したがって、本発明は、減少した用量を使用することによって、副作用の可能性の低下した、および/または副作用の重症度を減少させる治療を提供する。そのような副作用には、カルシニューリン阻害剤について一般的に見られるもの(たとえば腎臓毒性)が含まれる。個々のカルシニューリン阻害剤はまた、特定の副作用を生ずる傾向にあり、たとえば、シクロスポリン治療で見られる傾向にある副作用には、糖尿病、高血圧、高脂血症、麻痺、歯肉過形成、多毛症、および皮膚変化が含まれ、一方で、タクロリムス治療において見られる傾向にある副作用には、糖尿病の発症の増加が含まれるが、高脂血症、高血圧、および歯肉過形成はシクロスポリン治療で見られるよりもその傾向が少ない。ミコフェノール酸モフェチル治療で一般に見られる副作用には、白血球減少症のリスクの増加、下痢、貧血、高血圧、食道炎、胃炎および胃腸管出血が含まれる。
【0055】
「減少した用量」は、個々の化合物を、別の場合に被験体を治療するために使用しうるものよりも、低い投与量レベルで、被験体に投与することを意図する。いくつかの実施形態において、「減少した用量」によって、個々の化合物が、製造業者によって推奨されるもの、すなわち化合物に関する取扱説明書で推奨される投与量レベルよりも低い投与量レベルで、被験体に投与されることが意図される。参照として、本発明のいくつかの化合物に関して、取扱説明書において現在推奨されている投与量レベルは以下のとおりである。推奨投与量レベルが、治療の段階または治療間隔によって変化する場合(たとえば、新規移植患者のための投与量レベルに対する維持投与量レベル)、本発明の方法には、被験体をただ1つの治療段階または治療間隔の間、または少なくとも1つの治療段階または治療間隔の間、減少した用量の化合物で被験体を治療する治療方法が含まれる。治療の段階および/または治療間隔は、当業者によって理解され、たとえば、慢性自己免疫障害または疾患の長期維持または管理;移植前準備;移植後回復;および移植後維持が含まれる。あるいは、治療間隔は、1日、1週間、1ヶ月若しくは2、3、4、5若しくは6ヶ月、若しくは1年、または特定の治療目標(単数または複数)が達成されたことを被験体が示す間、またはその後の間隔のような、治療が実施される期間および/または評価される期間であってよい。
【0056】
タクロリムス(「FK506」としても知られ、Prograf(登録商標)として市販されている)に関して、製造業者の推奨は、連続静脈注入として、0.01mg/kg/日(心臓移植について)、または0.03〜0.05mg/kg/日(肝臓または腎臓移植について)の開始用量で、移植から6時間後に投与することである。連続注入は、患者が経口投与を受容できる間までのみ続けられるべきである。
【0057】
シロリムス(「ラパマイシン」としても知られる、Rapamune(登録商標)として市販されている)に関して、推奨用量は、患者に対する免疫学的リスク、および移植後治療の段階によって変化する。免疫リスクが低〜中レベルである患者に対して、Rapamune(登録商標)経口溶液および錠剤を、シクロスポリンとコルチコステロイドと組み合わせて使用することが推奨され、シクロスポリンは、移植から2〜4ヶ月後に中止すべきである。デノボ移植レシピエントに対して、維持用量の3倍に相当する負荷量のRapamune(登録商標)が与えられるべきである。たとえば、腎臓移植患者に対して、2mgの維持用量が、6mgの負荷量とともに推奨される。シクロスポリンの中止が検討された患者には、Rapamune(登録商標)とシクロスポリンとの併用療法を与えるべきである。移植後2〜4ヶ月の時点で、シクロスポリンを、4〜8週間にわたって、漸次停止し、Rapamune(登録商標)を、移植後1年目に、16〜24ng/mLの範囲内の全血トラフ濃度を得るように調節すべきであり、その後標的は10〜20ng/mLであるべきである。
【0058】
免疫学的リスクの高い患者に対して、Rapamune(登録商標)経口溶液および錠剤を、1年目は、シクロスポリンとコルチコステロイドとの組合せで使用することが推奨されている。シクロスポリンと一緒にRapamune(登録商標)を受けている患者に対して、Rapamune(登録商標)治療を、移植後第1日目に、15mgまでの負荷量で開始すべきである。移植後第2日に開始して、5mg/日の初期維持用量が与えられるべきである。シクロスポリンの開始用量は、分割用量で、7mg/kg/日までであり、用量はつづいて、標的の全血トラフ濃度(すなわち血中の最小濃度)を達成するように調節されるべきである。プレドニゾンを、最小量5mg/日で投与すべきである。
【0059】
腎臓同種移植レシピエントに対して使用するために、開始用量のRapamune(登録商標)を、移植後可能な限り早く投与すべきである。非定常状態のRapamune(登録商標)濃度に基づく頻繁なRapamune(登録商標)用量調節によって、過剰投与または過小投与が起こりうるため、そのような用量調節は、注意深く実施され、モニタされるべきである。一旦維持用量が調節されたならば、患者を、少なくとも7〜14日間、新規維持用量に維持すべきである。
【0060】
ミコフェノール酸モフェチル(「MMF」としても知られ、Cellcept(登録商標)として市販されている)に関して、腎臓移植患者に対する製造業者の推奨は、総1日用量2グラムで、1日2回、(2時間以上にわたり)経口または静脈内に投与される、1グラム用量である。生後3ヶ月〜18歳の小児患者に対して、Cellcept(登録商標)経口懸濁液の推奨1日用量は、600mg/mの1日2回(最大2グラム/10ml経口懸濁液まで)である。体表面積は、たとえば、体重の関数としての体表面積の標準表を用いて決定してよい(たとえば、Sharkeyら(2001)British J.Cancer 85:23−28を参照のこと)。心臓移植患者に対して、成人には、2時間以上にわたり、静脈内に1日2回(「b.i.d.」)1グラムの用量か、または3グラムの1日用量について、経口で1日2回投与される1.5グラムの用量で治療すべきである。肝臓移植患者に関して、成人は、2時間以上にわたり、静脈にb.i.d.で投与される1グラムの用量か、または総1日用量3グラムについて、経口でb.i.d.で投与される1.5グラムで治療すべきである。
【0061】
シクロスポリン(「CsA」としても知られ、Neoral(登録商標)またはSandimmune(登録商標)として市販されている)に関して、製造業者の推奨は、開始経口用量のNeoral(登録商標)を、移植前4〜12時間、または手術後与えることが可能である、というものである。新規移植患者において、平均開始用量(±SD)は、腎臓移植患者について、9(±3)mg/kg/日、肝臓移植患者について8(±4)mg/kg/日、心臓移植患者について7(±3)mg/kg/日である。総1日用量は2つの等用量にわけ、用量を続いて先に定義されたシクロスポリン血中濃度を達成するために調節する;個人の体重に基づいた代表的な投与スケジュールは、最初の14日間、2mg/kg/日で開始し、その後、用量を1週間で1mg/kg/日まで漸減し、さらに2週間で0.6mg/kg/日まで、1ヶ月で0.3mg/kg/日まで、そして2ヶ月で0.15mg/kg/日まで漸減させ、その後維持治療とする。病初では、副腎コルチコステロイドでの補助治療が推奨される。
【0062】
リウマチ性関節炎の治療のために、シクロスポリンの初期用量は、分割経口用量として、1日2回服用する、2.5mg/kg/日である。サリチル酸、非ステロイド性抗炎症剤、および経口コルチコステロイドの他の治療を継続してよい。任意の時点での有害事象を制御するために、用量は25〜50%まで減少すべきである。乾癬の治療のために、シクロスポリンの初期用量は、分割経口投与として、1日2回服用する、2.5mg/kg/日である。有害事象がなければ、患者には少なくとも4週間、この用量を維持すべきである。有意な臨床改善が4週間後に見られない場合、用量を、最大4mg/kg/日まで0.5mg/kg/日ずつ、2週間間隔で増加させることができる。任意の時点での有害事象を制御するために、用量を25〜50%減少させるべきである。
【0063】
本明細書で使用するところの用語「化合物」、「組成物」および「物質」はそれぞれ、本発明の方法で使用することが意図された任意の物質を意味する(すなわち、CD83、治療用組成物または免疫抑制性化合物を含む)。物質を被験体に同時に投与する場合、または別の物質を被験体に投与する前、または後、2、4、6、8、10、12、若しくは14時間以内、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150若しくは200日以内に、物質を被験体に投与した場合、物質は、他の物質と「同時投与」され、「同時投与」が発生する。物質を同時に投与する場合、投与の前に物質を組み合わせてよく、または同時に別々に投与可能である。
【0064】
本発明の方法には、一用量若しくは一投与、または各化合物または組成物の複数回用量若しくは複数回投与が含まれうる。複数回投与が好ましい実施形態において、化合物または組成物の少なくとも1回の投与は、投与される別の化合物または組成物の「有効性の時間枠(window of effectiveness)」内で発生する。いくつかの実施形態において、第二の物質の投与は、併用治療の(すなわち両方の物質の投与の)効果が、別々に投与された場合、すなわち適切な対照実験において、個々の治療の1つまたは両方を超えるか、または個々の治療とは異なる場合、またはそれらのことが予想される場合に、第一の物質の「有効性の時間枠」内で発生したとみなされる。いくつかの実施形態において、第二の物質の投与は、併用治療の(すなわち両方の物質の投与の)効果が、別々に投与された場合、すなわち適切な対照実験において、個々の治療を組み合わせた効果を超えるか、または当該効果とは異なる場合、またはそれらのことが予想される場合に、第一の物質の「有効性の時間枠」内で発生したとみなされる。たとえば、被験体を、CD83の投与と、CD83の有効性の時間枠内での治療用組成物の投与とを含む方法によって、治療用組成物に対して寛容化してよく、この結果は、治療用組成物の投与が、CD83の有効性の時間枠内で発生する被験体をCD83と治療用組成物とで別々に治療した場合に予想されないものである。
【0065】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの化合物または組成物を、その物質の「有効性の時間枠」と少なくとも1つの他の物質の「有効性の時間枠」とが少なくともいくらか重なるように投与する。そのような重なりは、併用治療の効果が、別々に投与された場合、すなわち適切な対照実験において、個々の治療と組み合わせた効果を超えるか、または当該効果とは異なるか、またはそれらのことが予想される場合に発生すると考えられる。いくつかの実施形態において、特定の治療の経過の間、さらなる投与が、1つまたはそれ以上の物質の有効性の時間枠の前、間または後に発生してよく、一方他の実施形態において、1つまたはそれ以上の物質の有効性の時間枠外でのさらなる投与は存在しない。いくつかの実施形態において、各物質のすべての投与は、被験体へ投与される物質の互いの有効性の時間枠内で発生する。3つ以上の物質を被験体に投与する実施形態において、物質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の他の物質の有効性の時間枠内で投与可能である。
【0066】
本発明の方法にはまた、2つ以上の治療用組成物の投与が含まれうる。したがって、本発明の方法には、複数の治療用組成物の投与が含まれうる。治療用組成物は、類似しているか、または異なってよい。たとえば、本発明の方法で被験体に投与した治療用組成物には、関連抗原が含まれうる。したがって、たとえば、いくつかの実施形態において、被験体に投与した治療用組成物は、特定の組織から調製したRNA(「総組織RNA(total tissue RNA)」)を含みうる。
【0067】
治療目的のために、被験体を、CD83によって外来化合物に対して寛容化可能であるので、被験体が、少なくとも治療の間に、または少なくともCD83の効果のウインドウの間に、寛容化が望ましくない化合物に暴露されないことが重要である。したがって、たとえば、被験体は、腫瘍特異的抗原、およびウイルス、細菌、かびなどを含む病原微生物に暴露されるべきではない。一般に、本明細書で使用する場合、「被験体」は、治療を必要とする任意の動物を意図する。したがって、たとえば、「被験体」はヒト患者、若しくは非ヒト哺乳動物患者であってもよく、または動物である別の患者であってよい。
【0068】
疾患または病状の予防が望まれる場合、被験体を、一定間隔(たとえば、約2年ごと、毎年、6ヶ月ごと、2〜4ヶ月ごとまたは毎月)で治療してよい。しかしながら、本発明のすべての実施形態において、本発明の方法および組成物を、免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる特定の疾患または障害をもつとして同定された被験体に、または特定の疾患または障害を発症する可能性があるとして同定された被験体に、投与する。たとえば、被験体を、被験体の家族歴の検査の結果、遺伝的試験若しくは被験体の酵素若しくは代謝物濃度を測定するための試験のような医学的試験の結果、または別の疾患若しくは障害と診断される結果として、そのような特定の疾患または障害を発症する可能性として同定してよい。このように、たとえば、本発明の方法は、自己免疫疾患を治療するため、自己免疫疾患の発症を予防するため、または自己免疫疾患の発症に関する被験体のリスクを減少させるために使用してよい。一般に、一連の治療は、免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる特定の疾患または病状を緩和する、または予防するために被験体をそれ以上治療しないときに終わる。
【0069】
したがって、本発明は、免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または病状の治療または予防の方法を提供し、そこで、有効量のCD83が、少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物とともに、免疫抑制が達成されるように被験体に同時投与される。任意に、治療用組成物をまた、投与してよい。治療用組成物を投与する場合、治療用組成物は、被験体が治療用組成物に対して寛容化するように、CD83の有効性の時間枠の間に被験体に投与される。任意の形態の投与が、目的が達成される限り、CD83および治療用組成物の送達のために選択される。したがって、たとえば、CD83および治療用組成物は、一緒に、および同一の投与形態によって投与してよく、または別々に、および/または異なる投与形態によって投与してよい。したがって、たとえば、CD83を、タンパク質として被験体に投与してよく、または(たとえば、mRNAとして、または発現ベクター内で)CD83をコードする核酸として被験体に投与してよい。
【0070】
本発明の方法を、たとえば、アレルギー;喘息;組織移植の拒絶;慢性的に投与した物質に対する免疫応答;重症筋無力症、多発性硬化症、脈管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、全身性紅斑性狼蒼、乾癬のような皮膚疾患、リウマチ性関節炎、およびインスリン依存性糖尿病のような自己免疫疾患;ならびにAIDSのような、免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害を患う、または患うことになりうる被験体を治療するために使用可能である。本発明の方法は、たとえば(多発性骨髄腫および急性リンパ芽球性白血病を含む)白血病のようなB細胞過形成、AIDSに関連したB細胞過敏、毒素性ショック症候群、血清病、および歯周病(たとえば、Mahanondaら(2002)J.Periodontal Res.37:177−183を参照のこと)のような、B細胞またはB細胞機能が関与する疾患または障害に悩む被験体を治療するために使用可能である。血清病は、特定の医薬品または抗血清に対する望ましくない免疫応答によって引き起こされる一群の症状である。すなわち、血清病は、別の動物または別のヒトからの抗血清が、受動免疫付与を誘導する目的のために、被験体に与えられる時に発生しうる。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、B細胞またはB細胞機能が関与する疾患または障害に対する治療を提供し、そこで、治療がB細胞枯渇、すなわち、被験体におけるB細胞の数および/またはサブタイプの減少を引き起こさない。
【0071】
本発明の組成物および方法は、単独で使用可能であり(すなわち他の治療を受けていない被験体を治療するために使用可能であり)、または他の治療を受けているか、または受けた被験体に投与可能である。たとえば、特定の疾患または障害に悩んでいる被験体を、本発明の方法および組成物のみで治療可能であり、または本発明の方法および組成物、ならびにたとえば従来の化学療法または薬品治療のような、特定の疾患または障害に罹患しているか、または罹患しうる被験体に一般に投与される、別の治療または療法で治療可能である。したがって、たとえば、本発明の方法には、非免疫抑制性化合物を含む他の化合物の使用または同時投与がさらに含まれうる。したがって、本発明の方法にはさらに、たとえばコルチコステロイド、たとえばアザチオプリンのような抗炎症薬剤、およびたとえばメトトレキサートのような抗代謝薬物を含む、他の化合物の使用または同時投与が含まれうる。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法を、組織レシピエントにおける組織移植の拒絶の少なくとも1つの症状を予防、治癒または緩和するために使用する。そのような実施形態において、移植レシピエント(「レシピエント」または被験体)を、CD83および少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物、または少なくとも1つの治療用組成物で治療してよい。治療用組成物は、たとえば移植組織の試料の溶解またはホモジナイゼーションによって、移植組織から調製した、または抽出した抗原のような、移植組織に関連した抗原であってよい。一般に、本発明の方法にしたがった移植レシピエントの治療には、組織の移植前、移植と一緒に(すなわち同時に)、および/または移植後の治療が含まれうる。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、移植組織それ自身であり、したがって、治療用組成物のさらなる投与は、移植組織の導入以外、レシピエントには実施されない;そのような実施形態においては、少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物または少なくとも1つの治療用組成物も投与される。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、組織移植の拒絶のすべての有害症状を予防、治癒または緩和し、拒絶を予防するための移植被験体の連続治療が必要なくなり、そのような実施形態では、移植片寛容性が被験体において誘導されたと言われる。
【0073】
いくつかの実施形態において、移植されるべき組織のドナー(「移植ドナー」)を、意図するレシピエント内での移植のために組織を採取する前に、(たとえば本発明の方法にしたがって、CD83と、少なくとも1つの他の免疫抑制剤、および任意に少なくとも1つの治療用組成物で)治療してよい。いくつかの実施形態において、物質を、本明細書で記述したように、移植ドナーに投与するが、本治療の目的は、移植レシピエントにおいて寛容性および/または免疫抑制を誘導することである。ここでまた、治療用組成物は、移植組織(たとえば器官)に関連した抗原であってよい。いくつかの実施形態において、移植ドナーおよび移植レシピエント両方を、本発明の方法にしたがって治療してよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、移植されるべき組織を、ドナーから採取し、ついでCD83を含む溶液に暴露してよい。すなわち、たとえば組織を、移植の前に、CD83を含む溶液中で保存および/またはかん流させてよい。いくつかの実施形態において、移植されるべき組織をドナーから採取し、ついでCD83と少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物とを含む溶液に暴露してよい。すなわち、たとえば、組織をCD83と少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物とを含む溶液中で保存および/またはかん流させてよい。治療用組成物をまた、ドナーに投与してもよい。結果として、本組織が移植レシピエント内に導入されたときに、組織内の、そして組織の表面上のCD83と他の免疫抑制性化合物(単数または複数)とが、組織に関連した抗原と一緒に被験体に同時投与されることになる。本明細書で使用するところの「組織」は、別個の器官および/または特定の組織(たとえば肝臓、腎臓、心臓、肺、皮膚、膵島など)、ならびに「液体」組織(たとえば、血液、血漿のような血液成分、樹状細胞のような細胞など)を包含し、用語「組織」はまた、別個の器官および「液体」組織の部分およびサブパートを包含する。
【0075】
当業者は、レシピエントとドナー両方に対して可能である最適な結果を達成するための、移植レシピエントとドナーの評価と治療の方法に詳しい。したがって、当業者は簡単に、CD83、少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物、および任意に特定の被験体に対して適切であるような治療用組成物の用量および投与を評価および調節可能である。以上の議論から簡単に理解されるであろうように、本発明の方法は多数の工程を含み、これらの工程は、少なくとも1つの本発明の目的を達成する限り、任意の順番で実施可能である。本方法は、複数の化合物の複数回投与を含んでよいため、工程の任意のかさなりが発生しうる。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物が、たとえばアデノ関連ウイルス(「AAV」)およびAAVに由来するベクターのような遺伝子治療ベクターに対して、および/または遺伝子治療ベクターによってコードされた遺伝子産物に対して、寛容性を提供する。したがって、たとえば、遺伝子治療を、特定の遺伝子産物を欠く被験体に施す時(たとえば、被験体が特定のタンパク質の欠如をもたらす遺伝的欠損を持つ場合)、被験体内へ導入した時の遺伝子産物に対する望ましくない免疫応答を予防するために、本発明の方法を用いて被験体を治療可能である。好ましくは、本発明の組成物および方法において使用される遺伝子治療ベクターは、病因には関連しないであろう。いくつかの実施形態において、本方法および本方法の組成物が、たとえば多発性硬化症に悩んでいる被験体にしばしば投与される、ベータインターフェロンのような、被験体に繰り返し(すなわち「慢性的に」)投与され、免疫応答が望ましくない物質に対して、寛容性を提供する。
【0077】
いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物は、「寛容誘導性」である樹状細胞(「DC」)を提供し、すなわちこれらは、先に記述したように、免疫耐性を誘導可能である(すなわち「被験体を寛容化」可能である)。樹状細胞の寛容誘導性活性は、直接的または間接的に評価可能であり、インビボまたはインビトロにおいて測定可能である。好適なアッセイが当該技術分野で公知であり、たとえばインビトロでのCD4T細胞集団とのインキュベーション後の制御性T細胞の産生能力、および/またはCD14またはCD80のような細胞表面マーカーの発現における検出可能な変化が含まれる(たとえば、Steinmanら(2003)Ann.Rev.Immunol.21:685−711;Kubachら(2005)Int.J.Hematol.81:197−203を参照のこと)。
【0078】
本発明の寛容誘導性樹状細胞によって誘導される寛容性は、インビボまたはエクスビボにおいて誘導されてよく、DCによって提示された抗原に対して特異的であってよい。用語「免疫刺激性」DCは、本発明の寛容誘導性DCを「正常」DCまたはネイティブDCと区別するために本明細書で使用している。寛容誘導性DCを産生するための本発明の方法は、インビボまたはエクスビボで実施してよく、CD83および少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物に対して、細胞を暴露する工程が含まれる。細胞は、成熟化過程の間、または成熟化過程が完了した後、インビボまたはエクスビボ(インビトロ)いずれかで、CD83と他の免疫抑制性化合物(単数または複数)に暴露してよい。成熟化過程がインビトロで実施される実施形態において、「暴露」は、CD83および他の免疫抑制性化合物(単数または複数)の存在下で細胞をインキュベートしてよいこと、またはCD83と他の免疫抑制性化合物(単数または複数)の存在下で培養してよいこと(すなわち細胞が増殖および分裂しうること)を意図している。細胞を、任意の好適な様式で、CD83および他の免疫抑制性化合物(単数または複数)に暴露してよく、たとえば、CD83および他の免疫抑制性化合物(単数または複数)を、増殖培地に加えてよく、または可能である場合、1つまたはそれ以上のCD83および他の免疫抑制性化合物(単数または複数)は、それらをコードするRNAでのトランスフェクション後、培養液中の細胞によって発現されてよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、寛容誘導性DCを産生するための方法には、産生過程の間(たとえば最終成熟化過程の間)、未熟DCをCD83と少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物とに暴露することが含まれる。一般に、これらの方法において、未熟樹状細胞を、培地1mlあたり、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、50または100マイクログラムの下限、および培地1mlあたり、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、50、100または200マイクログラムの上限を持つ範囲内で、CD83に暴露してよい。もっとも好ましくは、DCを、1〜10μg/mlのCD83の存在下で成熟させる。他の免疫抑制性化合物(単数または複数)の用量は、当業者によって簡単に選択されうる。本明細書で使用するところの「未熟DC」は、細胞が、(インビトロの場合)適切に培養された場合、または(インビボの場合)成熟させられた場合、成熟樹状細胞になることが可能であることを意図する。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法には、成熟化過程の少なくとも1工程の間、細胞をCD83に暴露すること、および成熟化過程の少なくとも1工程の間、細胞を他の免疫抑制性化合物(単数または複数)に暴露することが含まれ、これらの工程は、同一の工程(単数または複数)であってよく、または異なるおよび/または重なり合わない工程(単数または複数)であってよい。いくつかの実施形態において、成熟化過程の少なくとも1工程を通して、成熟化工程の2工程以上の間、または全成熟化過程の間、細胞を、CD83および/または他の免疫抑制性化合物(単数または複数)に暴露する。
【0080】
本発明の寛容誘導性樹状細胞をまた、抗原で細胞を「パルスする」ことによって、またはRNAを細胞に形質導入することによって、提示のために抗原を取り込ませてもよい(たとえば、米国特許第6,387,701号、米国特許第6,670,186号、米国特許出願第10/362,715号を参照のこと)。さらなる利点を提供するために、本発明の方法を、当該技術分野で既知の他の方法と組み合わせてもよい(たとえば米国特許第5,831,068号、米国特許出願第11/246,387号を参照のこと)。本発明の方法の工程が、望まれる結果を生ずる任意の順番で実施してよいことが理解される。したがって、たとえば、CD83への、および/または他の免疫抑制性化合物(単数または複数)への暴露の前、または後に、細胞に抗原を取り込ませてもよい。このように、本発明の方法には、成熟化過程の間の、CD83、少なくとも1つの免疫抑制性化合物、および任意に治療用組成物(たとえば対象とする抗原)の細胞への同時投与を含む方法による、寛容誘導性樹状細胞の産生が含まれる。
【0081】
成熟免疫刺激性樹状細胞は一般に、細胞表面マーカーの特徴的なアレイを示す。したがって、一般に、成熟免疫刺激性DCは、CD14の発現を全く、またはほとんど示さない。また一般に、成熟免疫刺激性DC(インビボで産生されるネイティブDCまたはインビトロで産生されるDCのいずれか)は、たとえば、細胞表面マーカーCD80、CD83およびCD86の発現、およびIL−12の分泌のような特徴を示しうる。反対に、いくつかの実施形態において、本発明の方法によって産生された寛容誘導性DCでは、これらの特徴的細胞表面マーカーの少なくとも1つの発現のレベルが減少する。いくつかの実施形態において、本発明の方法によって産生された寛容誘導性DC上の特定の細胞表面マーカーの発現のレベルは、適切な対照細胞(たとえば、ネイティブ成熟免疫刺激性DC、またはインビトロ成熟化を介して得た成熟免疫刺激性DC)上の同一の細胞表面マーカーの発現レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%減少するか、検出不能である。いくつかの実施形態において、本発明の寛容誘導性DCは、CD83の検出不能な発現と、大幅に減少したCD80の発現を示す。いくつかの実施形態において、本発明の寛容誘導性DCは、適切な対照細胞と比較して、各マーカーに対して、少なくとも95%減少するCD83発現と、少なくとも50%減少するCD80発現を示す。また、いくつかの実施形態において、本発明の寛容誘導性DCは、成熟免疫刺激性DCよりも高いCD14の発現を示す。寛容誘導性樹状細胞は、当該技術分野で既知の(たとえばWO2004/046182を参照のこと)、または実験の項目において記述するような、または以下のような技術を用いて、産生されおよび/または機能に関してアッセイされてよい。
【0082】
たとえば、細胞を、1%ヒト血清を含む標準培地(たとえばグルタミン(200μg/ml,BioWhittaker,Verviers,Belgium)、ペニシリン/ストレプトマイシン(20μg/ml)、10mM Hepes、pH7.5(Sigma−Aldrich)、および(56℃で30分間インキュベートすることによって先に熱不活性化した)単一ドナーからの1%ヒト血清を添加したRPMI1640(BioWhittaker,Verviers,Belgium))を用いて培養可能である。ヒトPBMCは、Ficoll−Hypaque(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)中での沈降によってバフィーコート(buffy coat)から単離可能であり、IgG(コーン画分からの10μg/ml γ−グロブリン、Sigma−Aldrich)でコートした100mm培養ディッシュ上に播種し、5% CO中37℃でインキュベート可能である。1時間および7時間のインキュベーション後、非接着細胞画分を取り除き、接着細胞をさらに、サイトカインGM−CSF(800U/ml)およびIL−4(500U/ml)を添加した1% ヒト血漿培地中で培養した。インキュベーション期間の第3日に、新鮮な培地(400U/mlでGM−CSF、500U/mlでIL−4を含む)を加える。第4日または第5日に、非接着細胞を回収し、計数し、0.3〜0.5×10細胞/mlの密度で、新しいディッシュに移す。最終成熟化工程のために、1%ヒト血漿培地に、TNF−α(1.25ng/ml)、GM−CSF(40U/ml)、IL−4(200U/ml)、プロスタグランジンE(0.5pg/ml、たとえば、Lechmannら(2001)J.Exp.Med.194:1813−1821を参照のこと)、および可溶性CD83(4μg/ml)を加える。あるいは、最終成熟化工程のために、成熟化カクテルには、IL−1β、TNF−α、PGE、および可溶性CD83(4μg/ml)が含まれる。第8日に、細胞をFACSによって解析可能である。本方法によって成熟した細胞は、正常に成熟したDCと比較した時に、CD80の細胞表面発現における明確な減少(たとえば96%から66%)、およびCD83の細胞表面発現における明確な減少(たとえば、96%から30%)、およびCD14陽性細胞の増加を示している(たとえば、WO2004/046182を参照のこと)。他の細胞表面マーカー(たとえばMHCクラスIおよびII)の発現は有意に影響を受けえない。他の実施形態において、細胞を、以上で記述したようなプロトコルにしたがって成熟化可能であるが、可溶性CD83を、1、2、3またはそれ以上の日数後に成熟化カクテルに加えることができる。
【0083】
CD83および他の免疫抑制性化合物(単数または複数)に暴露した樹状細胞を、それらの寛容誘導性または免疫刺激性特性を評価するための種々の方法において、CD83および他の免疫抑制性化合物に暴露しなかった樹状細胞と比較可能である。適切なアッセイが当該技術分野で既知であり(たとえばMLRアッセイ)、いくつかを、実験の項目でも記述している。MLRアッセイの典型的な特徴は、免疫刺激性DCおよび増殖T細胞のクラスターの形成である。アッセイの1日目での可溶性CD83の添加が、典型的な細胞クラスター形成を強力に阻害する(たとえば、Lechmannら(2001)J.Exp.Med.194:1813−1821を参照のこと)。さらに、可溶性CD83は、成熟樹状細胞のT細胞増殖を刺激する能力を、濃度依存的に阻害する(たとえば、Lechmannら(2001),上記を参照のこと)。
【0084】
いくつかの実施形態において、寛容誘導性樹状細胞を、制御性T細胞を産生するために使用する(たとえば、米国特許出願第10/661,804号を参照のこと)。簡単に記すと、制御性T細胞を、CD4T細胞および/またはCD8T細胞を含む集団から産生してよい。これらのT細胞集団は、被験体から単離してよく、または培養してよい。たとえば、特定の細胞(たとえばCD4CD25T細胞またはCD4CD25T細胞)の濃縮集団を含むように、細胞表面マーカーによって分類した集団のような、T細胞の亜集団も使用してよい。ついでT細胞を、本発明の寛容誘導性樹状細胞とともに、すなわちたとえば成熟化過程の間にsCD83および少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物に暴露した樹状細胞とともに、培養またはインキュベートする。制御性T細胞をインビトロにおいて産生している場合、寛容誘導性樹状細胞はT細胞と同種異系であるか、または同系であってよい。いくつかの実施形態において、寛容誘導性DCに、抗原を取り込ませる(たとえば抗原でパルスするか、または抗原コードRNAでトランスフェクトする)。そのような実施形態において、寛容誘導性DCは、T細胞に対して抗原を提示してよい。
【0085】
寛容誘導性T細胞の産生の間、T細胞を、1回または2回以上、寛容誘導性DCに暴露してよく、および/または寛容誘導性DCとともに培養してよい。たとえば、T細胞を、数日間または数週間、DCとともに培養してよく、必要であれば混合培養液中のDCを補充してよい。いくつかの実施形態において、培養を、治療量の制御性T細胞が得られるまで続ける。他の培養技術および/または添加物を使用して、得られる結果を改善してよく、たとえば培養培地には、IL−2のようなサイトカインが含まれてもよい。
【0086】
一般に、制御性T細胞は、IL−10および/またはTGF−βを分泌し(たとえばWalshら(2004)J.Clin.Invest.114:1398−1403を参照のこと)、これらのサイトカインの分泌を確かめるためのアッセイが、当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態において、制御性T細胞は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、90%、95%または100%、混合リンパ球反応を阻害する。混合リンパ球反応アッセイは、当該技術分野でよく知られている。本発明の制御性T細胞は、抗原特異的である。CD4CD25制御性T細胞は一般に、CD4、CD25およびFoxp3を含む特徴的な細胞表面マーカーを発現し、細胞表面マーカーに対するアッセイが、当該技術分野でよく知られている。
【0087】
用語「ベクター」は、プラスミド、ウイルス、またはポリヌクレオチドの挿入または組み込みによって操作可能な、当該技術分野で既知の他の担体を意味する。そのようなベクターは、遺伝子操作のために使用可能であり(すなわち「クローニングベクター」)、または挿入されたポリヌクレオチドを複写および/または翻訳するために使用可能である(「発現ベクター」)。ベクターは一般に、細胞内での増殖のための複製起点とプロモーターとを少なくとも含む。本明細書に記載するような発現制御因子を含む、発現ベクター内に存在する制御因子が、適切な転写および翻訳を促進するために含まれる(たとえば、イントロンのためのスプライシングシグナル、インフレームでのmRNAの翻訳を許可するための、遺伝子の正確なリーディングフレームの維持、終止コドンなど)。本明細書で使用するところの用語「制御因子」には、最低限、1つまたはそれ以上の、その存在が発現に影響を与えうる成分が含まれ、本明細書で使用するところの用語「発現制御因子」は、操作可能に連結する核酸配列の発現を調節する1つまたはそれ以上の核酸配列を意味する。核酸配列に操作可能に連結した発現制御因子は、転写を制御し、必要に応じて、核酸配列の翻訳を制御する。したがって、発現制御因子には、必要に応じて、タンパク質コード遺伝子の前に、プロモーター、エンハンサー、転写終結因子、および/または開始コドン(たとえばATG)が含まれうる。ベクターはまた、たとえばリーダー配列および融合タンパク質配列のようなさらなる成分を含みうる。「操作可能に連結」は、成分が、それらの意図するように機能することを可能にする関係にある、並列位置を意味する。
【0088】
「プロモーター」は、転写を指向するのに十分な、少なくとも最小配列を意味する。本発明において使用されるプロモーター、または本発明とともに使用されるプロモーターは、必要に応じて、構成的であるか、誘導可能である(たとえばBitterら(1987)Methods in Enzymology 153:516−544を参照のこと)。誘導性プロモーターは、外部シグナルまたは薬剤によって活性化される。他のプロモーター要素には、特定の細胞型、組織または生理学的状態に対する、プロモーター依存性遺伝子発現の制御を提供するのに十分であるものが含まれてよく、そのような要素は、遺伝子の5’、3’またはイントロン領域内に局在しうる。有用なプロモーターにはまた、特定の条件下でのみ活性である「条件付けプロモーター(conditional promoters)」も含まれる。たとえば、条件付けプロモーターは、特定の薬剤(たとえば化合物)が存在する時、不活性であるか、または抑制されてよく、薬剤がもはや存在しないときに活性であるか、活性化される可能性がある。
【0089】
本明細書で使用するところの、「トランスフェクトすること」または「トランスフェクション」は、真核細胞内への1つ以上の外来性核酸またはポリヌクレオチドの導入を意味する。トランスフェクションには、核酸またはポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が発現可能である様式での導入が含まれる。トランスフェクション法は当該技術分野で既知であり、エレクトロポレーション、タンパク質に基づく核酸送達複合体、脂質に基づく核酸送達複合体、およびカチオン性イオンに基づく核酸送達複合体を使用する方法、ウイルスベクター、「遺伝子ガン」送達、および種々の他の技術のような、種々の技術が含まれる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態において、細胞(たとえばDC)内に導入したポリヌクレオチドは、細胞を遺伝子操作はせず、安定に維持されない。用語「遺伝子操作された」または「形質転換された」は、外来遺伝子、または言い換えれば次々に細胞またはその子孫の遺伝子型を改変する核酸配列を含むこと、および/または発現することを意味し、いくつかの実施形態において、細胞の表現型がまた変化する。「遺伝子操作」または「形質転換」はまた、細胞の内因性ヌクレオチドへの任意の付加、欠失または破壊をも意味する。導入したポリヌクレオチドの安定的な維持は典型的に、ポリヌクレオチドが、宿主細胞と適合可能な複製起点を持つか、または染色体外レプリコン(たとえばプラスミド)または核染色体またはミトコンドリア染色体のような細胞のレプリコンへ統合されるかのいずれかであることを必要とする。
【0091】
用語「一過性にトランスフェクトした」は、トランスフェクトされたが、遺伝子操作されていない細胞のことであって、したがってその細胞の子孫が、形質導入された遺伝物質(たとえば核酸またはポリヌクレオチド)を遺伝しない細胞を意味する。遺伝物質は、RNAであってよく、またはRNAに転写されてよく、遺伝物質によってコードされるタンパク質が発現されてよい。そのような発現を、本明細書で「一過性発現」と呼ぶ。通常、一過性発現は、トランスフェクトされた遺伝物質を染色体内に取り込まないことによって達成される。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態において、樹状細胞を、RNAエレクトロポレーションを用いて、一過性にトランスフェクトする。RNAエレクトロポレーションの方法は、当該技術分野でよく知られている。一般に、mRNAは、染色体または染色体外のいずれにおいても、細胞のゲノムの恒久的一部分とはならない。所望のタンパク質を一過性に発現するために使用可能な任意の他の方法もまた、本発明の範囲内で企図される。この方法には、ゲノムの恒久的な変化が含まれず(すなわち、細胞に対して遺伝可能な遺伝的変化をもたらさない)、したがって、たとえばレトロウイルスおよびアデノウイルスのようなウイルスの使用と関連した不利益を回避する。
【0093】
所望であれば、DNAでの細胞の形質転換を、当業者に既知の従来の技術によって実施してよい。たとえば、細胞が真核生物の場合、DNA形質転換の方法には、たとえば、リン酸カルシウム共沈、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム中に含まれるプラスミドの挿入、およびウイルスベクターのような従来の機械的手段が含まれる。真核細胞をまた、対象とする核酸をコードするDNA配列、および/または本明細書に記載したもののような選択可能表現型をコードする第二の外来DNAと同時形質転換可能でもある。別の方法は、真核細胞を一過性に感染させるか、形質転換して、タンパク質を発現させるための、シミアンウイルス40(SV40)またはウシパピローマウイルスのような、真核ウイルスベクターを使用することである。形質転換に続いて、CD83を従来の方法にしたがって、単離し、精製してよい。たとえば、発現宿主(たとえば細菌)から調製した溶解物を、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィまたは他の精製技術を用いて精製可能である。実質的に純粋なタンパク質をまた、ペプチド合成機(たとえばApplied Biosystems,Inc.,Model 430A(ABI,Foster City,Calif.,USA)など)を用いる、化学合成によって得ることもできる。CD83はまた、本明細書以下の実験の項目にて記述したように産生してもよい。
【0094】
CD83と、少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物、または少なくとも1つの本発明にしたがった治療用組成物を含む、医薬品または薬学的組成物の生産、およびそのような医薬品または薬学的組成物の使用は、一般的な薬学的技術方法によって慣習的な様式で発生し、したがって当業者によって簡単に提供される。当業者は、異なる形態の投与が、異なる化合物および/または適応症に対して好適であることを理解し、もっとも適切な投与方法を選択可能である。たとえば、乾癬は、皮膚への投与のために好適な製剤で、局所で治療してよく、一方で全身性エリテマトーデスは、腹腔内注射のための好適な製剤の、被験体への投与によって治療してよい。当業者は、生化学的および免疫学的アッセイを含む、たとえば従来の臨床および実験室試験からの結果の評価のような、化合物の用量および投与の調節のための基準ならびに方法に詳しい。必要に応じて、医薬品の成分を別々に投与可能である。
【0095】
一般に、本発明の化合物は、種々の適応症および種々の型の投与経路に対して好適な医療用形態を提供するために、好適な、薬学的に許容可能なアジュバントおよび/または担体と一緒に処理される。好適な薬学的組成物にはまた、安定化剤および保存剤が含まれうる。担体、安定化剤およびアジュバントの例に関して、たとえばGennaro(1995)Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.(Mack Pub.Co.,Easton,PA,U.S.)を参照のこと。したがって、医薬品は、たとえば、迅速な投与効果または徐放性効果のような、それぞれの望まれる放出速度を得るように生産可能である。
【0096】
本発明によって提供された治療の方法には、インビボで被験体における寛容性および/または免疫抑制を誘導するための、CD83と少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物、および任意に治療用組成物(たとえば抗原)の使用が含まれる。これらの物質を被験体に投与する方法には、限定はされないが、たとえば、経口、経肺、非経口(たとえば筋肉内、関節内、腹腔内、静脈内(IV)、または皮下注射)、吸引(微細な粉末処方または微細なミスト(エアロゾル)による)、経皮、皮内、経鼻、経膣、経直腸、舌下投与経路のような、従来の生理学的に許容可能な経路が含まれる。これらの物質(すなわちCD83、少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物、および任意に治療用組成物)は、担体と一緒に投与してよく、これらは、同一の製剤内で、同一の投与経路を介して投与してよく、または異なる製剤で、および/若しくは異なる投与経路を介して投与してよい。好ましくは、各物質を、その最適用量にて、同時投与の最適な治療効果が得られるように、投与する。たとえば、抗体の投与は、静脈内注射経由であってよく、一方でCD83の投与は、腹腔内注射であってよく、免疫抑制性化合物の投与はピルでの経口投与によるものであってよい。
【0097】
担体には、任意の好適な生理学的溶液または分散剤などが含まれる。生理学的溶液には、生理食塩水または緩衝生理食塩水のような、任意の許容可能な溶液または分散培地が含まれる。担体にはまた、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸着遅延薬剤なども含まれてよい。任意の従来の培地、担体または薬剤が、活性成分と不適合である場合を除いて、その使用が企図されている。担体にはさらに、限定はされないが、たとえばインターロイキン−10(IL−10)およびTGF−βのようなサイトカインを含む、1つまたはそれ以上のさらなる化合物が含まれる。
【0098】
薬学的組成物が、特定の動物種への投与のための核酸を含む場合、本発明において使用される核酸は、その種に由来してよい。たとえば、CD83をコードする核酸(たとえばDNAまたはRNA)を含む薬学的組成物をヒトに投与する場合、核酸には、ヒト型のCD83タンパク質の配列が含まれてよい。本発明において使用される核酸は、核酸の細胞膜透過性および/または細胞取り込みを増加させる薬剤との組合せで投与可能である。これらの薬剤の例は、たとえばAntonyら(1999)Biochemistry 38:10775−10784に記載されたようなポリアミン;たとえばEscriouら(1998)Biochem.Biophys.Acta 1368:276−288によって記載されたような分岐ポリアミン;たとえばGuy−Caffeyら(1995)J.Biol.Chem.270:31391−31396によって記載されたポリアミノ脂質;Feignerら(1987)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 84:7413−7417によって記載されたようなDOTMA;およびBenimetskayaら(1998)Nucl.Acids Res.26(23):5310−5317によって記載されたようなカチオン性ポルフィリンがあげられる。
【0099】
本発明によって提供された組成物、医薬品および治療方法にはまた、本発明の方法にしたがって産生された寛容誘導性DCおよび/または制御性T細胞と、インビボで被験体の寛容性を誘導するためのそれらの使用も含まれる。本発明の寛容誘導性DCおよび制御性T細胞の被験体への投与の方法には、限定はされないが、たとえば、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射のような、従来の生理学的に許容可能な経路が含まれる。本発明の細胞(すなわち、本発明の方法によって産生された寛容誘導性DCおよび/または制御性T細胞)は、担体と一緒に投与してよい。そのような担体には、たとえば生理食塩水または緩衝生理食塩水のような、任意の好適な生理学的溶液または分散剤などが含まれる。担体にはまた、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸着遅延剤などが含まれてよい。任意の従来の培地、担体または薬剤が、活性成分(すなわち寛容誘導性DCおよび/または制御性T細胞)と不適合である場合を除いて、組成物中でのその使用が企図される。
【0100】
当業者によく知られているように、インビボで投与されるべき、本発明の細胞の用量は、宿主の種、年齢、体重および疾患状態を含む、種々のパラメータを参照して決定される。用量はまた、宿主内の標的とされる部位、たとえばドナーからの組織の移植の部位にもよる。たとえば、挿入組織の部位の直接標的化には、哺乳動物宿主の血流内への投与とは異なる用量が必要とされうる。用量は好ましくは、投与が効果的な結果を導くように選択され、これは、分子アッセイによって、または被験体における好適な症状をモニタすることによって、測定可能である。用量は、1回の投与あたり、少なくとも約1×10細胞〜少なくとも約1×10細胞の範囲であってよい。いくつかの実施形態において、用量は、約5×10細胞〜約5×10細胞の範囲である。最大の治療効果を達成するために、いくつかの用量が必要とされうる。
【0101】
必要に応じて、本発明の細胞の予備投与もまた使用してよい。したがって、たとえば、細胞を移植組織の生存を延長するために使用すべき場合、移植レシピエント内への細胞の投与を、たとえば移植の1週間前など、移植の前に実施してよい。投与はまた、移植組織の受容または拒絶反応がないことを確かにするために、移植の時点、またはその後(たとえば移植の1〜2週間後、または臨床評価に基づいて必要である間)実施してもよい。必要に応じて、治療にはまた、本明細書にて記述した2つ以上の個々の治療が含まれてよく、したがって、たとえば、患者に対する一連の治療には、sCD83と少なくとも1つの他の免疫抑制性化合物との投与が含まれてよく、そして寛容誘導性DCの投与も含まれてよい。
【0102】
本明細書で引用された各特許、特許出願、科学論文、書籍または書籍の見出しおよび他の参考文献は、そのすべてが、各個々の引用が特別にかつ個々に、参照によって組み込まれるべきことを示す場合と同程度まで、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0103】
以下にて、本発明の種々の側面が、実施例によってより詳細に記述されている。しかしながら、本発明は、これらの実施例によって例示された実施形態のみに限定はされず、全体として、本出願においてより十分に記述されたような利点を提供する。
【実施例】
【0104】
実験
一般方法:
一般的な技術に関して、Current Protocols in Immunology、Coicoら編(Wiley,Hoboken,NJ)を参照のこと。
【0105】
ウエスタンブロッティング/クマシーブルー染色:sCD83を評価するための典型的な手順は以下のとおりであった。sCD83の各試料に関して、1マイクログラムのsCD83を、ランニング緩衝液および2マイクロリットルのβ−メルカプトエタノールとともに調製した。試料を10分間、96度で加熱し、Invitrogenの4〜12%ポリアクリルアミドゲル上で泳動した。ゲルをクマシーブルーで直接染色するか、もしくは所望であれば、膜に移した。膜を、1/1000 CD83 4B5モノクローナル一次抗体で、ついで1/20,000ヤギ抗−ラット二次抗体でプローブし、シグナルをAmersham化学発光試薬で展開した。
【0106】
霊長類混合リンパ球反応(「MLR」):PBMCを、Ficoll勾配分離を用いて、2匹の異なるカニクイザルの血液試料から単離した。刺激細胞を、マイトマイシンCまたは放射線処理で、非増殖性にした。刺激細胞および応答細胞を、3×10細胞/ウェルで播種し、滴定量のsCD83で処理した。96時間の時点で、H−チミジン(1μCi/ウェル)を培養液に加えた。細胞を18〜20時間後に回収し、T細胞増殖の量を測定するために解析した。
【0107】
TNF−α、CD86およびCCR5に対する染色:TNF−α(細胞内)ならびにCD86およびCCR5(表面)に対する染色を以下のように実施した。全血試料を、カニクイザルより得て、sCD83とともに12時間インキュベートした。試料を100ng/mL LPSと100U/mL IFN−γで6時間刺激した。TNF−αに対する細胞内染色を、市販のFix/Permキットを用いて実施した。あるいは、CD86およびCCR5に対する表面染色を、標準的な技術を用いて実施した。染色後、赤血球細胞を溶解させ、結果を、BD Flow Cytometer(Becton Dickinson)によって解析した。
【0108】
B細胞増殖プロトコル:マウス脾臓細胞の単一細胞懸濁液を調製し、赤血球細胞をACK溶解緩衝液を用いて溶解させた(Current Protocols in Immunology、Coicoら編(Wiley,Hoboken,NJ)を参照のこと)。B細胞をCD19 MACSビーズを用いて精製し、10細胞/ウェルの純粋なB細胞を、滴定量のsCD83とともに、3時間予備インキュベートした。ついでB細胞を2μg/mL LPSで刺激した。48時間の時点で、1μCiのH−チミジン/ウェルを培養液に加えた。細胞を18〜20時間後に回収して、B細胞増殖の量を測定した。
【0109】
インビトロ研究のための抗体産生プロトコル:IgMおよびIgG産生は以下のとおりであった。(C57Bl/6マウスからの)2×10B細胞/ウェルの純粋な集団を、滴定濃度のsCD83(15〜90μg/mL)の存在下、(抗体産生を誘導するために)20μg/mLのLPSとともに培養した。上清を培養の72時間後に回収し、上清中のIgMとIgGの産生をELISAによって測定した。
【0110】
アイソタイプ変換:(C57Bl/6マウスからの)2×10B細胞/ウェルの純粋な集団を、以下の処理の1つで培養した:20μg/mLのLPS(IgG2bを誘導するため)、;20μg/mL LPS、800U/mL IL−4および150U/mL IL−5(IgG1を誘導するため);または20μg/mL LPSおよび1000 U/mL IFN−γ(IgG2aを誘導するため)。各処理のために、いくつかの細胞を、60μg/mL sCD83とともに培養し、いくつかを未処理対照として設計した。細胞を72時間後に回収し、簡単に酸洗浄をして、Fcレセプター結合免疫グロブリンを除去した。ついで細胞を、表面IgG2b、IgG1およびIgG2aをそれぞれ検出するために、以下のうちの1つを使用して染色した:抗−IgM−FITCおよび抗−IgG2b−RPE、抗−IgM−FITCおよび抗−IgG1−RPE、または抗−IgM−FITCおよび抗−IgG2a−RPE。
【0111】
エクスビボ研究のための抗体産生プロトコル:B細胞増殖:C57Bl/6マウスに、C3Hマウスからの異所性心臓同種移植片を与えた。マウスを未処理のままにするか、または腹腔内注射によって、100μgのsCD83の1日用量で処理した。次いでマウスを、未処理マウスのおおよその平均生存期間であった8日目に屠殺した。B細胞をついでマウス脾臓より回収し、10B細胞/ウェルの純粋な集団を、細胞を刺激するために、2μg/mLのLPSとともに培養した(sCD83は加えない)。培養の48時間後、H−チミジンを加え、さらに18〜20時間の培養後、細胞を回収して、H−チミジン取り込みを測定した。
【0112】
IgMおよびIgGの産生:C57Bl/6マウスに、C3Hマウスからの異所性心臓同種移植片を与えた。マウスを未処理のままにするか、または腹腔内注射による、100μgのsCD83の1日用量で処理した。ついでマウスを、未処理マウスのおおよその平均生存期間であった8日目に屠殺した。B細胞をレシピエントマウスの脾臓から回収し、(抗体産生を誘導するため、sCD83を加えない)2×10B細胞/ウェルで、20ug/mL LPSとともに培養した。培養の72時間後、上清を回収し、IgMおよびIgG産生をELISAによって測定した。
【0113】
移植:マウス株の選択の手順および基準が当該技術分野で既知である。たとえば、Wangら(2003)J.Immunol.171:3823−3836を参照のこと。
実施例1
組換え可溶性CD83の産生
細菌株およびプラスミド:GSTに融合した、CD83の細胞外ドメイン(sCD83)をコードするcDNAを含むpGEX2ThCD83extのプラスミドを、IPTG誘導tacプロモーターの制御下にある、組換えGST−hCD83extの産生のための発現ベクターとして使用した(たとえばLechmannら(2002)Protein Expression and Purification 24:445−452を参照のこと)。GSTとhCD83extとの間の連結におけるトロンビン開裂部位の設計のために、最終sCD83産物は、アミノ末端に、4つの余剰アミノ酸(Gly−Ser−Pro−Gly)を持つ。
【0114】
GST−sCD83の培養:Alexander Steinkasserer博士によって提供された大腸菌産生株を、−80℃にて凍結保存し、50μg/mLアンピシリン(Amp)を含む、LB寒天プレート(5g/L NaCl、5g/L Bacto酵母抽出物、10g/L Bactoトリプトンおよび15g/L Bacto寒天)上にストリーキングすることによって再活性化した。プレートを、約15時間、37℃にてインキュベートした。2、3の単離した単一コロニーを使用して、50μg/mL Ampを含む600mL LB培地に植菌した。培養液をついで、回転式振盪培養器上で、200rpmで約16時間、37℃にてインキュベートした。(600mLまでの)種培養液を使用して、1〜15リットルの実質容量の培養培地(5g/L NaCl、20g/L Bacto酵母抽出物、20g/L Bactoトリプトン、および5g/L グルコース)を含むバイオリアクター(MBR Bioreactor AG,Wetzikon,Switzerland)に植菌した。細胞が、2.0±0.2OD600の指定された細胞密度まで増殖したときに、培養液に、GST−hCD83ext産生の誘導のために、0.5mM イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を加えた。50μL/LでのAntifoam 289(Sigma,St.Louis,MO,USA)も、培養の間の過剰な発泡を避けるために培養液に加えた。エアレーションのために、バイオリアクターを、1.5vvmで、濾過滅菌した空気でパージした。培養液pHを、pH電極(Ingold Messtechnik AG,Zurich,Switzerland)、pHコントローラー(Model pH−40,New Brunswick Scientific Co.,Edison,NJ,USA)、および2つの蠕動ポンプ(Watson Marlow,Falmouth,UK)の組合せを用いて、3N NHOHまたは3N HPOを加えることによって、7.00±0.15に維持した。誘導の後、バイオリアクターを、6時間、28℃および600〜650rpmで運転した。
【0115】
sCD83の後処理:培養後、細胞を、6000×gおよび2℃での遠心によって回収し、重量を量り、後で使用するために−80℃で保存した。典型的には、約20g湿潤細胞重量(wcw)の細胞ペーストを、8〜10OD600の細胞密度を持つ培養液1リットルから得ることができたが、これは、1g wcwが、400〜500OD600ユニットとほぼ等価であることを意味する。hCD83extの精製のために溶解物を調製するために、0.05gwcw/mLでの細胞懸濁液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.3)中に、適切な量の凍結細胞ペーストを懸濁させることによって調製した。約20〜25OD600での100mLの細胞懸濁液のバッチを、標準的なチップでの超音波処理装置(Misonix,Farmingdale,NY,USA)を用いて、4分間、断続的に(0.5秒オン/0.5秒オフ)、超音波処理した。処理した細胞溶解物をついで、15,000×gおよび2℃で15分間遠心し、細胞残骸を除去した。総可溶性タンパク質を含む上清を、タンパク質精製のための引き続くクロマトグラフィ処理の前に、0.45μmフィルターで濾過した。
【0116】
GSTアフィニティクロマトグラフィによってGST−CD83融合タンパク質を捕獲するために、上記で調製した溶解物100mLを、4mL/分の流速で、20mL GSTrapカラム(GE Healthcare,Baie d’Urfe,Quebec,Canada)内にロードした。カラムに結合させる一方で、GST−hCD83ext融合物を、インサイチュにおいて、10U/mLトロンビンで開裂させた(すなわち「カラム上開裂」。これを実施するために、GST−hCD83ext融合物と結合したGSTrapカラム内のPBS結合緩衝液を、カラム内への手動注入によって、同容量の10U/mLトロンビンを含む結合緩衝液で置換した。開裂は、約2.5時間、室温で実施し、主にトロンビンと夾雑したhCD83extを含む、GSTrapカラム中の大部分の液体を、1カラム容量の結合緩衝液を用いて押し出した。GST部位を残りの未消化GST−hCD83と一緒に、溶出緩衝液を用いて溶出した。カラム上開裂の良好な性能を維持するために、GSTrapカラムを、1M NaOHおよび6M グアニジンHClで洗浄して、カラム内にトラップされた種々のタンパク質夾雑物を除去した。
【0117】
CD83からトロンビンおよび他の夾雑タンパク質を除去するために、ポリッシング工程を実施した。HPLCシステムも、本精製工程の実施のために使用することが可能であるが、強力なアニオン交換カラム(XK16/20中の30mL HiTrap Q HP,GE Healthcare)を備えるFPLCシステム(AKTApurifier UPC10,GE Healthcare)を処理のために使用した。使用したローディング緩衝液および溶出緩衝液は、それぞれ、50mM NaClを含むTris緩衝液(20mM、pH7.5)および1M NaClを含むTris緩衝液であった。最初に、FPLCシステムのアニオン交換カラムをローディング緩衝液で平衡化した。ついで、先に記載したGSTrapカラムから溶出したタンパク質溶液を、カラム内にロードした。hCD83extを含む画分を溶出し、プールし、高圧攪拌セル(Amicon、YM10ディスク付きModel 8050、Millipore Canada,Cambridge,Ontario Canada)、または同様の限外濾過ユニットを用いる限外濾過で濃縮し、ついで−20℃で保存した。本産物の蓄積を、蓄積量が、さらなるエンドトキシン除去のための処理に十分な量になるまで、毎日実施した。
【0118】
さらなるエンドトキシン除去のために、約1gの蓄積sCD83を、ポリッシング工程と同一の実験装置およびプロトコルを用いて、アニオン交換クロマトグラフィによって処理した。本処理工程のためのすべての緩衝液を、注射用蒸留水(WFI)を用いて調製した。hCD83extを含む画分をプールし、高圧攪拌セルを用いる限外濾過で濃縮した。最後に、CD83産物画分を、エンドトキシン除去のために、Mustang Eフィルター(Pall Life Sciences,Mississauga,Ontario,Canada)または同様の濾過ユニットを用いる濾過に供することができ、ついで濾過滅菌可能である。各産物の画分のエンドトキシンをアッセイした。
【0119】
解析プロトコル:培養液試料を、分光光度計(DU(登録商標)520、Beckman Coulter,Fullerton,CA,USA)で、OD600における細胞密度を測定するために、生理食塩水で適切に希釈した。解析のための細胞抽出物の調製のために、40OD600ユニットの量の細胞(「OD600×mL」と定義する)を、6000×g、2℃で10分間遠心した。細胞ペレットを、3mL PBS中で再懸濁させ、French Press(Thermo Electron Corporation,USA)によって破壊し、ついで15,000×g、2℃で15分間遠心して、細胞残骸を除去した。細胞破壊はまた、他の物理的方法(たとえば超音波処理)または化学的方法を用いて引き起こしてよい。可溶性タンパク質を含む上清を、GSTアッセイおよびSDSゲルのために使用した。不溶性タンパク質と細胞残骸を含むペレットを、リン酸緩衝液で洗浄し、TE/SDS緩衝液(10mM Tris HCl、pH8.0、1mM EDTA、1% SDS)中で再懸濁させ、100℃まで5分間加熱して溶解させた。ペレットのタンパク質分を、不溶性画分として解析した。
【0120】
GST機能を、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(CDNB)およびグルタチオンを用いて、室温でアッセイした。GST(およびその融合物)は、2つの基質間の反応を触媒して、340nmにおいて検出可能な共役産物を形成する。1ユニット(UGST)は、1 OD340/分での吸収の増加を引き起こす酵素の量として定義される。(UGST/mLでの)容積活性(volumetric activity)は、(UGST/OD600ユニットでの)特定の活性と(OD600での)細胞密度との積である。エンドトキシンは、市販のアッセイキット(LAL QCL−1000,Cambrex Bio Science Inc.,Walkersville,MD,USA)を用いてアッセイし、容積エンドトキシン濃度(EU/mL)は、(EU/mgでの)特定のエンドトキシン濃度と(mg/mLでの)タンパク質濃度との積である。ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を、4%ポリアクリルアミド濃縮ゲルによって濃縮し、12.5%ポリアクリルアミド分離ゲルを用いて、Mini−PROTEAN(登録商標)II電気泳動セル(Bio−Rad,Hercules,CA)中で実施した。細胞抽出物のタンパク質試料(0.12OD600ユニットの可溶性および不溶性画分の両方)と、適切な量の精製した産物をロードした。電気泳動を、約45分間、200Vの一定の電圧で実施した。ゲルをクマシーブルーまたは硝酸銀で染色し、乾燥させ、スキャンして、処理試料からのエンドトキシンの除去を確認した。精製したタンパク質を、−20℃または−80℃のいずれかで、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)(pH7.5)中で凍結し、保存した。
実施例2
可溶性CD83は、自己免疫疾患のマウスモデルにおいて、広範囲の免疫抑制を誘導しない
実験的自己免疫疾患脳脊髄炎(「EAE」)が、罹患した組織の高密度自己攻撃性CD4リンパ球浸潤を含む、全身性エリテマトーデス(「SLE」)と、病理学的特徴を共有する疾患である、多発性硬化症の動物モデルとしての役割を果たす。可溶性CD83は、EAEの誘導の結果生じる麻痺を軽減可能であることが報告された(たとえば、Zinserら(2004)J.Exp.Med.200:345−351を参照のこと)。本発明者らは、このマウス疾患モデルに関して、CD83によって誘導される免疫抑制が、特異的であるかどうか、または広範囲の免疫抑制であるかどうかを決定することを希望した。
【0121】
EAEを誘導するために、マウスを、中枢神経系のミエリン鞘周辺ニューロンの構成物である、ミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG)に由来するペプチド、および百日咳毒素で免疫した(たとえば、Zinserら(2004)J.Exp.Med.200:345−351を参照のこと)。10日後に開始して、マウスに、10日間毎日、可溶性CD83(100μg)を接種した。可溶性CD83の最後の注射から28日後に、マウスに、キーホールリンペットヘモシアニン(「KLH」、10μg/マウス)を皮下注射した。10日後、脾臓細胞をマウスより採取し、異なる用量のKLHで再刺激した。本刺激に応答したリンパ球増殖を、[H]−チミジン取り込みによって測定した。(図1に示した)結果は、これらのマウスからのリンパ球が、KLHに応答して増殖することを明らかにしており、動物が免疫コンピテントであること、および可溶性CD83が、長期間続く広範囲の免疫抑制を誘導しなかったことを示す。
実施例3
CD83の有効性の時間枠の終点の特性化
被験体が投与した別の抗原に対して寛容化しうる、CD83の投与後の時間間隔を決定するために、マウスを評価した。可溶性CD83(100μg)を、2日ごとに10回、注射によってCBAマウスに投与した。11日後、処理した動物を、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH、10μg)で免疫した。10日後、脾臓細胞を採取し、再刺激アッセイを、その内容が参照によって組み込まれている、WO2004/046182に記載のように実施した。(図2に示した)結果によって、この免疫付与間隔で、被験体は抗原に対して寛容化されないことが明らかにされた。
【0122】
別の同様の実験を、脾臓細胞を処置した動物から22日後に採取し、再刺激アッセイによって評価して実施した。これらの結果は、先に記載したものと同様であり、図3に示す。
実施例4
マウス骨髄前駆細胞からの、寛容誘導性DCの産生
C57/BL6マウスおよびBALB/Cマウス(オスまたはメス、Charles River,Wiga,Sulzfeld,Germany)を、1〜4月齢で使用した。骨髄由来樹状細胞(「BM−DC」)の産生を、Lutzら(1999)J.Immunol.Meth.223:77に記載のとおりに実施した。RPMI 1640(Life Technologies,Karlsruhe,Germany)に、100U/mlペニシリン(Sigma)、100μg/mlストレプトマイシン(Sigma)、2mM L−グルタミン(Sigma)、50μg/ml ME(Sigma)、および10%熱不活性化濾過FCS(PAA,Colbe,Germany)を加えた。GM−CSFを、200U/ml(PrepoTech/Tebu,Rocky Hill,N.J.)で、インキュベーション期間の第0、3、6および8日に使用した。
【0123】
同種異系MLRアッセイを以下のように実施した。CD4およびCD8 T細胞を、BALB/Cマウスの鼠径部リンパ節および間葉性リンパ節から単離し、BM−DCのための調製プロトコルの第9日まで処理した(異なる割合の)BM−DCと一緒に3日間、同時培養した(2×10細胞/ウェル)。培養液は96−ウェル培養ディッシュ中であり、培地は、100U/mlペニシリン、100pg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、50μg/ml ME、および10%熱不活性化濾過FCSを添加した、200マイクロリットル RPMI 1640であった。細胞を[H]−チミジン(1μCi/ウェル;Amersham Pharmacia Biotech)で16時間パルスした。培養液上清を、Inotech 1H−110回収器(Inotech,Dottikon,Switzerland)を用いてガラスファイバーフィルター上に回収し、フィルターを、Wallac 1450マイクロプレート計数機(Wallac,Turku,Finnland)中で計数した。
【0124】
同種異系MLRアッセイの結果によって、マウス免疫刺激性樹状細胞およびマウスT細胞間のクラスターの形成が、可溶性CD83(ここでは、hCD83ext)によって阻害されたことが示された。さらに、可溶性CD83は、濃度依存的に、マウスの免疫刺激性樹状細胞の、T細胞を刺激する能力を阻害し、T細胞は、DCへの暴露に応答して増殖しなかった。
実施例5
sCD83は、B細胞増殖と機能をエクスビボで抑制する
sCD83のB細胞に対する効果を、以下のように、一連の実験において測定した。
【0125】
移植レシピエントB細胞の増殖に対する、エクスビボでのsCD83の効果:C3Hマウスの心臓を、C57BL/6マウスの腹腔内へ移植した。移植の8日後(未処理マウスにおいて、移植片が典型的に拒絶されうる時)に、マウスを屠殺した。B細胞をレシピエントマウスから精製し、培養し、LPSで刺激した。H−チミジン取り込みを、計数/分(cpm)として測定した。結果を図4に示しており、sCD83が、エクスビボB細胞増殖を抑制することが明らかにされている。
【0126】
B細胞によるエクスビボ抗体産生に対するsCD83の効果:C3Hマウスの心臓を、C57BL/6マウスの腹腔内に移植した。移植の8日後(未処理マウスにおいて、移植片が典型的に拒絶されうる時)に、マウスを屠殺した。B細胞をレシピエントマウスから精製し、培養し、LPSで刺激した。培養の72時間後、上清を回収し、IgMおよびIgGの産生を、ELISAを用いて測定した。結果を図5に示しており、sCD83が、エクスビボ抗体産生を抑制することが明らかにされている。
実施例6
シクロスポリン、タクロリムス、またはMMFと同時投与したsCD83は、同種移植片移植レシピエントにおける心臓移植片の生着を増加させる
心臓を、示したようにドナーマウスから採取し、レシピエントマウスの腹腔内に移植した(すなわち、腹腔内、異所性心臓移植)。いくつかの処理を移植の前に開始して、レシピエントマウスを示したように処理した。移植組織の平均生着期間を、各処理に関して測定した。
【0127】
C57BL/6ドナーマウスおよびBALB/cレシピエントマウスを使用した。各処理群に対する、移植組織の処理および生着は、表1に示したとおりである。この一連の実験において、sCD83での処理を、「−1日目」(すなわち移植の日の前日)〜7日目まで、100μgのsCD83の毎日の腹腔内注射で開始し、ついで28日目まで、2日ごと注射を続けた。本出願において、「−1日目」は、「0日目」と呼ばれる移植の前日を一般に意味する。シクロスポリンでの処理は、治療量未満の用量(5mg/kg/日)、または高用量(15mg/kg/日)のいずれかで、毎日の皮下注射によってであった。タクロリムスでの処理は、8mg/kg/日の治療量未満の用量の、毎日の経口投与によってであり、MMFでの処理は、80mg/kg/日の低用量の毎日の経口投与によってであった。その結果によって、シクロスポリン、タクロリムス、またはMMFと同時投与したsCD83が、同種移植片移植レシピエントにおける心臓移植片の生着を増加させたことが明らかにされる。
【0128】
【表1】

【0129】
さらなる実験において、移植レシピエントを、より短い投与コース、および異なる投与経路で処理した。マウスを、一般に上述したように処理し、心臓をC57BL/6ドナーマウスから採取し、BALB/cレシピエントマウスの腹腔内に移植した。100μg/マウス/日の用量での可溶性CD83と、15mg/kg/日の用量でのシクロスポリンを、−1日目〜7日目に、レシピエントマウスに静脈内に投与した。移植組織の平均生着期間は、100日を超えた。
実施例7
sCD83は、移植レシピエントにおいて、アロ抗体誘導を阻害する
組織非適合個体間の組織の移植は、移植拒絶を刺激する。拒絶過程には、免疫応答の細胞性の応答および体液性の応答の両方が含まれうる。移植された器官の急性拒絶は、ドナー特異的アロ抗原(すなわち外来組織適合抗原)に対して指向される抗体応答によって媒介されうる。あるいは、アロ抗体応答は、細胞媒介性応答によって促進されたドナー組織破壊の結果として誘導されうる。いずれの場合でも、レシピエントにおけるアロ抗体応答の存在は、典型的にはドナー由来脾臓細胞を染色することによって、ドナー由来細胞に結合可能なレシピエント血清中の抗体の力価を測定することによって検出可能である。sCD83が、移植実験において、移植片の生着期間を増加させたので、本発明者らは、sCD83が、移植レシピエントにおけるアロ抗体の誘導に影響を与えたかどうかを決定することを希望した。
【0130】
これらの実験において、血清を(対照処理個体、sCD83処理個体および無処理個体からの)移植レシピエントから回収した。脾臓細胞を、移植ドナー(単数または複数)から採取し、移植レシピエント血清とともにインキュベートした。アロ抗血清からの抗体の、移植ドナー脾臓細胞の表面への結合を、マウスIgMおよびIgGのFc断片に対して特異的な抗体を用いて選択的にモニタした。本手順の利点は、Igが細胞外供給源(すなわちレシピエント血清)に由来する場合にのみFc断片とアクセス可能であるので、ドナー細胞(たとえば、ドナー脾臓細胞集団内のB細胞)から受動的に発現したマウス抗体を測定しないことであり、ドナーB細胞の表面上のドナー由来IgのFc断片などが、Fcレセプター内に組み込まれ、または細胞内に維持され、したがって、染色のために使用不可能である。染色細胞は、FACSを用いて解析可能である。
【0131】
移植手順において、心臓をC3Hマウスから採取し、C57BL/6マウス内に移植し、ついでこれをsCD83で処理するか、または未処理のままにした。血清をC57BL/6移植レシピエントから、移植の8日後(未処理マウスが移植を典型的に拒絶しうる(すなわち完全組織拒絶を示す)おおよその時間)に回収した。このレシピエント血清をついで、C3Hドナーからの脾臓細胞を染色するために使用し、アロ抗体結合を、抗IgG Fc断片または抗IgM Fc断片のいずれかに特異的なFITC共役抗体で検出した。その結果によって、sCD83で処置した移植レシピエントが、ナイーブマウス(すなわち移植を受けていないマウス)からの血清中のレベルと等価であった、低アロ抗体活性(すなわちIgMまたはIgGの低いドナー特異的結合)を持ったことが示された(図6を参照のこと)。C3H心臓移植を受け、そしてsCD83で処置したC57BL/6マウスは、低いアロ抗体活性を持ち、これは、非移植ナイーブC57BL/6マウスに由来した血清と等価である。反対に、未処理であり、移植組織を拒絶した移植レシピエントは、対照におけるよりも有意に高いレベルで存在する検出可能なアロ抗体を有していた。未処理移植レシピエントからの血清はまた、対照のレベルを上回るC3H−ドナー由来脾臓細胞を染色可能であった。これらの実験によって、sCD83が、外来抗原(たとえば移植組織)に対するB細胞によるドナー特異的抗体産生を抑制し、器官拒絶を予防可能であることが明らかにされる。
実施例8
シロリムスおよびCD45RB mAbと同時投与したsCD83は、同種移植片移植レシピエントにおける、長期の心臓移植片の生着率を達成する
心臓を、示したようにドナーマウスから採取し、レシピエントマウスの腹腔内に移植した(すなわち異所性移植)。レシピエントマウスを示したように処理し、いくつかの処理を移植の前に開始した。同種移植片の生着をモニタし、以下のようにスコア化した。「A」強く鼓動。「B」脈動の強度の穏やかな減少、「C」脈動の強度の顕著な減少、「D」心拍動の完全な停止。移植組織の平均生着期間を、各処理に関して測定した。
【0132】
最初の一連の実験において、C3HドナーマウスとBALB/cレシピエントマウスを使用した。各処理群に対する移植組織の処理および生着は、表2に示したとおりである。この一連の実験において、sCD83処理を−1日目(すなわち、移植の前日)に開始し、28日目まで続け、各日、100μgのsCD83を各マウスに、腹腔内注射によって投与した。シロリムス処理は0日目(すなわち移植の日)に開始し、14日目まで続け、各日に、2mg/kgのシロリムスを経口で各マウスに投与した。抗CD45RB処理は0日目に開始し、14日目まで続け、各日に、100μgの抗CD45RB(BioExpress,Inc.,West Lebanon,New Hampshire)を各マウスに静脈内投与した。
【0133】
【表2】

【0134】
さらなる一連の実験において、C3Hマウス心臓を、C57BL/6マウスの腹腔内に移植した(結果を表3および図7に示している)。処理なしで、心臓移植片が、脈管炎、出血、血栓症およびCD4CD8細胞の浸潤によって特徴づけられる、急性細胞性および体液性拒絶によって、8.5±0.6日以内に拒絶された。高レベルのIgGおよびIgMも、移植組織内、ならびにレシピエントの血中で検出された。sCD83のみでの処理(すなわち、1日目〜7日目に毎日、ついで8日目〜16日目に2日ごと(q.o.d.)、マウスあたり100μgのsCD83の腹腔内注射)が、急性拒絶の症状を減少させ、10.7±1.5日まで、心臓移植片の生着を増加させ、400μgのsCD83での同じ処理は、15±1.0日まで、心臓移植片の生着を2倍にした。他の処理には、治療量未満の、抗CD45RBモノクローナル抗体(「mAb」)(すなわち、100μg/マウスの0日目〜14日目の毎日の静脈内注射)、またはシロリムス(すなわち、2mg/kgの0日目〜14日目の毎日の経口投与(「p.o.」)」)が含まれた。これらの実験における治療量未満の用量は、相当するヒト用量に基づいた。
【0135】
思いがけなく、注射あたり100μgのより少ない用量でのsCD83が、抗CD45RB mAbまたはシロリムスいずれかのこれらの治療量未満の用量と相乗的な効果を示し、sCD83との併用処理はさらに、それぞれ、32±3.6日、および39.3±4.7日まで、移植片生着を改善した。抗CD45RB mAbとシロリムスとの併用処理は、50.3±3.1日まで生着を増加させた。注目すべきことに、抗CD45RB mAbおよびシロリムスの両方との併用でのsCD83が、急性拒絶を効果的に予防し、100日を超える無期限の生着によって、移植片耐性を誘導した(p<0.01 対抗CD45RB mAbおよびシロリムスの併用処理)。sCD83、抗CD45RB mAb、およびシロリムスの併用で処理した(すなわち「三重処理」)マウスからの移植心臓を、手術後100日目(「POD100」)に試験し、血管障害なしで、正常の組織構造を示した。この実験によって、シロリムスと抗CD45RB mABとのsCD83の同時投与を含む処理が、移植心臓組織の長期間の許容を誘導したことが明らかにされた。
【0136】
【表3】

【0137】
本発明は、操作の任意の特定の機構によって縛られない一方で、一般に、C3H組織のBALB/cマウスへの移植が、抗体媒介性拒絶のためのモデル系として考えられ、一方C3H組織のC57BL/6マウスへの移植が、T細胞媒介性拒絶のためのモデル系として考えられる。sCD83のみでの処理、および他の物質と同時投与したsCD83は、両方の系で移植片生着を改善し、これは、sCD83が、B細胞によって媒介される望ましくない免疫応答、ならびに、T細胞によって媒介されるものを抑制可能であることを明らかにする。言い換えれば、sCD83は、C3H対BALB/cマウス心臓移植モデルにおける体液性移植片拒絶を抑制可能であり、そして、C3H対C57BL/6マウス心臓移植モデルにおける急性細胞性移植片拒絶を抑制可能である。
【0138】
sCD83、抗CD45RB mAb、およびシロリムスの三重処理を受けたレシピエントマウスをまた、寛容誘導性DC(すなわちCD11cMHCIIlowCD40lowCD86lowIL12細胞)、および制御性T細胞(CD4CD25Foxp3細胞)の産生における、処理の効果を測定するために試験した。寛容誘導性DCと制御性T細胞両方の量の増加が、手術後100日目において試験したときに、これらのマウスで見られた(図8、図9および図10に示したフローサイトメトリーの結果を参照のこと)。CXCR6マーカーが、未熟DCの特徴であり、一方で、CXCR4およびCCR7マーカーが成熟DCの特徴である。図9および図10におけるアスタリスクは、p<0.01で異なった結果を示している。したがって、これらの結果によって、sCD83に基づく治療が、寛容誘導性DCおよび制御性T細胞の両方の産生を誘導したことが明らかになる。
実施例9
sCD83は、インビトロでのTNF−α産生と、mDC活性化マーカーの表面発現を抑制する
本発明者らは、末梢血DC、単球およびT細胞に対するヒトsCD83のインビトロでの機能的特性を試験することを希望した。カニクイザルからの成熟DC(「mDC」)を、HLA−DR陽性、系列陰性(すなわちCD3、CD20、CD14およびCD16陰性)、およびCD11c陽性であった細胞として、4色で染色するFACSを用いて同定した。細胞内TNF−α、IL−6および表面マーカーCD83、CD80、CD86およびCCR5(活性化成熟DCにおいて増加する)もモニタした。
【0139】
sCD83のmDCに対する効果を評価するために、カニクイザルからの単離PBMC(1×10細胞)をsCD83とともに一晩インキュベートした。細胞をLPS(1μg/ml)およびIFN−γ(100U/ml)で6時間刺激した。細胞内TNF−αレベルおよび表面マーカーを、FACSを用いてmDC中で検出した。3つの実験のうちの1つの代表的な結果を、図11に示しており、結果を、%陽性細胞と平均蛍光ユニット(MFU)として表した。この結果によって、sCD83が、mDCによる、TNF−αのインビトロ産生を抑制し、またmDC活性化マーカーCD83、CD86、CCR5およびCD80の表面発現を抑制したことが示される。
【0140】
単球におけるsCD83の効果を評価するために、カニクイザルからの単離PBMC(1×10細胞)を一晩、sCD83(1×10細胞)とともにインキュベートした。細胞内TNF−αレベルおよび表面マーカーを、FACSを用いて単球中で検出した。3つの実験のうちの1つの代表的な結果を、図12に示しており、結果を、%陽性細胞と平均蛍光ユニット(MFU)として表した。この結果によって、sCD83が、単球によるTNF−αのインビトロ産生を穏やかに抑制し、また単球活性化マーカーの表面発現を抑制したことが示される。
【0141】
CD4T細胞におけるsCD83の効果を評価するために、これらの細胞を、カニクイザルから精製し、ついで、sCD83または抗CD28 mAbの存在下または非存在下で、6日間刺激した。ついで細胞を染色して、制御性T細胞(すなわちCD4CD25Foxp3細胞)を同定し、FACSによって解析した。(図13に示した)結果によって、sCD83が制御性T細胞の産生を促進することが示唆される。
【0142】
制御性T細胞をまた、以下のようにカニクイザルから調製した樹状細胞を用いて調製した。カニクイザル骨髄樹状細胞を、GM−CSFおよびIL−4の存在下、7日間、CD14単球細胞から産生し、50ug/mlでの可溶性CD83を、3日目〜7日目に、いくつかの培養液に加え、IL−1β、IL−6、TNF−αおよびPGE−2の成熟化カクテルを5日目〜7日目に加えた。T細胞(1×10/ml)を、ネガティブ選択によって単離し、異なる比で、sCD83(50μg/ml)で処理した、または処理していない同種成熟樹状細胞で刺激した。ついで細胞を染色して、制御性T細胞(すなわちCD4CD25Foxp3細胞)を同定し、FACSによって解析した。(図14に示した)結果によって、増加した制御性T細胞が、特に試験した高いDC:T比で、可溶性CD83で処理した樹状細胞によって産生されたことが示される。
実施例10
インビトロでのB細胞増殖および機能のsCD83抑制
インビトロでのB細胞増殖におけるsCD83の効果の評価:C57BL/6B細胞を、sCD83の存在下または非存在下で、LPSで刺激する。培養の48時間後、H−チミジン取り込みを、カウント/分(cpm)として測定する。結果を、sCD83が、インビトロでのB細胞増殖を抑制するかどうかを決定するために評価する。
【0143】
B細胞によるIgMおよびIgG産生におけるsCD83の効果の評価:C57BL/6B細胞を、sCD83の存在下または非存在下で、LPSで刺激する。培養の72時間後、上清を回収し、IgMまたはIgG産生を、ELISAを用いて測定した。結果を、sCD83が、インビトロでのB細胞抗体産生を抑制するかどうかを決定するために評価する。
実施例11
寛容誘導性樹状細胞の産生と、樹状細胞機能の評価
寛容誘導性樹状細胞は、以下のように産生可能である。グルタミン(200μg/ml,BioWhittaker,Verviers,Belgium)、ペニシリン/ストレプトマイシン(20μg/ml)、10mM Hepes,pH7.5(Sigma−Aldrich)、および(56℃にて30分間インキュベートすることによって予め熱不活性化した)単一ドナーからの1% ヒト血漿を添加した1% ヒト血漿を含む標準培地(たとえばRPMI1640(BioWhittaker,Verviers,Belgium)を用いて細胞を培養可能である。ヒトPBMCを、Ficoll−Hypaque(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)中の沈殿によって軟膜から単離し、IgG(コーン画分からの10μg/ml γ−グロブリン、Sigma−Aldrich)でコートした100mm培養ディッシュ上に播種し、5%CO中37℃においてインキュベート可能である。1時間および7時間のインキュベーション後、非接着細胞画分を除去し、接着細胞をさらに、サイトカインGM−CSF(800U/ml)およびIL−4(500U/ml)を含む1%ヒト血漿培地中でさらに培養する。インキュベーション期間の3日目に、(400U/mlのGM−CSFと500U/mlのIL−4を含む)新鮮な培地を加える。第4日または第5日に、非接着細胞を回収し、計数し、0.3〜0.5×10細胞/mlの密度で、新しいディッシュ内に移した。最終成熟化工程のために、1%ヒト血漿培地に、TNF−α(1.25ng/ml)、GM−CSF(40U/ml)、IL−4(200U/ml)、プロスタグランジンE(0.5pg/ml、たとえば、Lechmannら(2001)J.Exp.Med.194:1813−1821を参照のこと)、および可溶性CD83(4μg/ml)を加える。あるいは、最終成熟化工程のために、成熟化カクテルには、IL−1β、TNF−α、PGE、および可溶性CD83(4μg/ml)が含まれる。8日目に、細胞をFACSによって解析可能である。本方法によって成熟させた細胞によって、正常に成熟させたDC(たとえばWO2004/046182)と比較した場合に、CD80の細胞表面発現の明らかな減少(たとえば96%から66%)、およびCD83の細胞表面発現の明らかな減少(たとえば96%から30%)ならびに、CD14陽性細胞の増加が明らかになる。他の細胞表面マーカー(たとえば、MHCクラスIおよびII)の発現は、有意に影響を受け得ない。他の実施形態において、細胞を、先に記載したようなプロトコルにしたがって成熟化するが、可溶性CD83および他の免疫抑制性化合物(単数または複数)を、1、2、3またはそれ以上の日数後(別々に、または一緒に、先に記載したように)、成熟化カクテルに加えることができる。
【0144】
樹状細胞を、以下のように、同種異系混合リンパ球反応(「MLR」)アッセイを用いて評価してよい。CD4およびCD8 T細胞を、軟膜から単離する。簡単に記すと、回収した非接着細胞画分を、ニューロアミダーゼ処理したヒツジ赤血球とともにインキュベートし、Ficoll勾配遠心によって回収し、単一のABドナーからの5%ヒト血清を含むRPMI中で培養する。ついで細胞を、様々な比の成熟同種異系免疫刺激性DCで刺激する。細胞を、様々な濃度の可溶性CD83(WO2004/046182に記載されたような「hCD83ext」)と、または対照としてBSA(BioRad)とともにインキュベートするか、または処理しない。T細胞(2×10細胞/ウェル)およびDCを、96−ウェル細胞培養ディッシュ中、単一のABドナーからの5%ヒト血清を添加したRPMI中で、4日間同時培養する。細胞に、[H]−チミジン(1μCi/ウェル;Amersham Pharmacia Biotech)で16時間パルスする。培養上清を、IH−110ハーベスター(Inotech.Dottikon,Switzerland)を用いてガラス繊維フィルター上に回収し、フィルターを、Wallac 1450マイクロプレートカウンター(Wallac,Turku,Finnland)中で計数する。
実施例12
種々の刺激に対する応答での、CD83有効性の時間枠の終点の決定
マウスを、CD83とKLHの投与間の種々の間隔(すなわち10日間、8日間、6日間、4日間、2日間、1日間)後のそれらの免疫応答に関して、本質的に実施例3に記載したように評価する。間隔は、KLHを用いる再刺激が、免疫応答を誘発しない間と定義し、この間隔は、本実験での感応性の時間枠の末端を記録する。
【0145】
被験体を、本質的に先に記載したように評価したが、他の免疫刺激を試験する。これらのプロトコルは、KLH抗原に対する第三者の皮膚移植片を代用する。他のプロトコルは、CD83での処理の間、および後(CD83処理の前日、CD83処理の次の日、CD83処理の3日後)のリーシュマニア感染を代わりに用いる。他のプロトコルは、CD83の投与の間、および後のLCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)での感染を代わりに用いる。
実施例13
CD83に応答したメモリーT細胞再活性化の評価
マウスにLCMVを感染させ、28日後にCD83を注射する。末梢血単核細胞(PBMC)を、IFNγおよびIL−2を産生するが、標的細胞を殺さない、LCMV−特異的メモリーT細胞の存在に関して評価する。
実施例14
制御性T細胞に対するCD83の効果の評価
抗原特異的T細胞を、インビトロで産生し、可溶性CD83の存在下または非存在下で、樹状細胞に暴露する。ついで、T細胞について増殖(CFSE)、アポトーシス(Annexin V)、サイトカイン産生(IFN−γおよびIL−10)、およびFoxp3の存在をアッセイすることによって、CD83の効果を評価する。適切なアッセイが当該技術分野で既知である。
【0146】
哺乳動物より、インビトロで培養および/またはアッセイ可能であるように、T細胞を単離する。PBMCを、確立された手順にしたがって、Ficoll−Hypaque密度勾配遠心を用いて、赤血球細胞および好中球から分離する。細胞を、1%ウシ胎児血清(FBS)を含む、改変AIM−V(2mMグルタミン、10μg/ml硫酸ゲンタマイシン、および50μg/mlストレプトマイシンを含むAIM−V(GIBCO)からなる)で洗浄する。T細胞を、標準的な手順にしたがって、カラムまたは磁気ビーズに結合した適切なモノクローナル抗体での、ネガティブまたはポジティブ選択によって濃縮する。細胞の分液を、CD4、CD8、CD3およびCD14の発現を含む細胞表面発現系に関して解析する。
【0147】
場合によっては、細胞を洗浄し、上記のように改変した5%FBSおよび100U/ml組換えIL−2(rIL−2)を含むAIM−V(添加AIM−V)へ濃度あたり約5×10細胞で再懸濁する。T細胞をついで、sCD83の存在下または非存在下で、免疫刺激性および寛容誘導性樹状細胞に暴露可能である。
【0148】
増殖を刺激するために、OKT3モノクローナル抗体(Ortho Diagnostics)を、10ng/mlの濃度まで加えることができる。細胞を、24ウェルプレート(0.5mlの細胞懸濁液/ウェル)中にプレートし、5%COの湿潤インキュベーター中、約37℃の温度で培養する。OKT3抗体のような反応性組成物に応答したT細胞の増殖を、たとえばH−チミジン取り込みを測定することによって定量的にモニタ可能である(たとえば、Carusoら(1997)Cytometry 27:71を参照のこと)。
【0149】
樹状細胞に対する暴露の間および後の、T細胞によって分泌されたサイトカインの型および量の解析は、機能的活性の指標でありうる。サイトカインを、サイトカイン産生の速度と総量を測定するために、ELISAまたはELISPOTアッセイによって測定可能である。たとえば、Fujihashiら(1993)J.Immunol.Meth.160:181、TanquayおよびKillion(1994)Lymphokine Cytokine Res.13:259、Parkhurstら(1996)Immunol.157:2539を参照のこと。
実施例15
CD83で産生された制御性T細胞を用いる、免疫の養子伝達の評価
マウスを、10μgのKLHで免疫する。CD83(100μg)を、KLH免疫付与の前日、翌日、そして3日後に投与する。KLH免疫付与の10日後、脾臓細胞をこれらの動物から調製し、ナイーブマウスに移してその後KLHで免疫し、抗原に対する免疫応答に関してアッセイする。
実施例16
寛容誘導性DCを用いる、耐性の養子伝達
可溶性CD83を含む成熟化工程で調製した寛容誘導性DCを、実施例4に記載したように調製する。未熟DCに、対象とする抗原、または対象とする抗原をコードする核酸を取り込ませる。これらのDCを被験体内に移し、抗原に対する被験体の免疫応答を評価する。
実施例17
可溶性CD83と移植器官の同時投与
腎臓移植を、非近交系、若年性カニクイザルにおいて実施し、各サルに、別のサルから採取した腎臓を与える。移植手順の間、レシピエントのサルに、3〜6mg/kg/日の用量で、可溶性CD83を、静脈内または腹腔内に注射する。投与は、毎日1回〜毎日4回の、28日間である。対照のサルには、移植器官を与えるが、可溶性CD83は与えない。移植手順の後、サルを、移植器官の生着と血液供給に関してモニタする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植組織ではない少なくとも1つの治療用組成物に対して被験体を寛容化する方法であって、該少なくとも1つの治療用組成物を、被験体にCD83とともに同時投与する工程を含む、治療用組成物前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの治療用組成物の少なくとも1用量および前記CD83の少なくとも1用量を、互いに3日以内に被験体に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体が自己免疫疾患を持ち、そして前記治療用組成物が該自己免疫疾患に関連した抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記治療用組成物が、AAV遺伝子治療ベクターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CD83をコードする核酸を被験体に導入することによって、前記CD83を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記治療用組成物が、対象とするポリペプチドであり、そして該ポリペプチドをコードする核酸を被験体に導入し、それによって該核酸が該ポリペプチドに翻訳されることによって該ポリペプチドを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの治療用組成物に対して被験体を寛容化する方法であって、
(a)CD83および前記少なくとも1つの治療用組成物にインビトロにおいて暴露した寛容誘導性樹状細胞を提供する工程、
(b)T細胞の集団を、前記寛容誘導性樹状細胞に暴露する工程、および
(c)前記被験体に、前記T細胞の集団を提供する工程治療用組成物
を含み、それによって前記被験体が、前記少なくとも1つの治療用組成物に対して寛容化される、前記方法。
【請求項8】
移植ドナーからの組織に対して、移植被験体を寛容化する方法であって、
(a)組織の採取の前に、移植ドナーにCD83を投与する工程、
(b)移植被験体へ組織を挿入する工程、および
(c)移植被験体へCD83を同時投与する工程
を含み、それによって移植被験体が組織に対して寛容化される、前記方法。
【請求項9】
第一の免疫抑制性化合物を、組織を採取する前に移植ドナーに投与する工程をさらに含み、ここで前記CD83および該第一の免疫抑制性化合物が移植ドナーに同時投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の免疫抑制性化合物が、シロリムスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第二の免疫抑制性化合物を、組織を採取する前に移植ドナーに投与する工程をさらに含み、ここで前記CD83および該第二の免疫抑制性化合物が移植ドナーに同時投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の免疫抑制性化合物がシロリムスであり、前記第二の免疫抑制性化合物が抗CD45RB mAbである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
移植組織に対して被験体を寛容化する方法であって、
(a)移植ドナーから組織を採取する工程、
(b)sCD83を含む溶液に、移植組織を暴露する工程、および
(c)被験体に前記組織を移植し、それによってCD83を移植組織とともに被験体に同時投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項14】
第一の免疫抑制性化合物を被験体に投与する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第一の免疫抑制性化合物が、シロリムスである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第二の免疫抑制性化合物を被験体に投与する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第二の免疫抑制性化合物が、抗CD45RB mAbである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
自己免疫疾患を発症するリスクを減少させる方法であって、
(a)自己免疫疾患を発症するリスクが増加した被験体を同定する工程、
(b)sCD83と、自己免疫疾患の発症と関連した抗原とを前記患者に同時投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項19】
免疫応答の不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状を予防、治癒、または緩和するために、被験体を治療する方法であって、CD83と第一の免疫抑制性化合物とを被験体に同時投与する工程を含む、前記方法。
【請求項20】
前記第一の免疫抑制性化合物が、カルシニューリン阻害剤、プリン代謝阻害剤、および増殖阻害剤からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第一の免疫抑制性化合物が、シクロスポリンおよびタクロリムスからなる群より選択される、カルシニューリン阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第一の免疫抑制性化合物が、シロリムスおよびエベロリムスからなる群より選択される増殖阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第一の免疫抑制性化合物が、抗CD45RBであるモノクローナル抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記第一の免疫抑制性化合物が、ミコフェノール酸モフェチルであるプリン代謝阻害剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
第二の免疫抑制性化合物を前記被験体に投与する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記第一の免疫抑制性化合物がシロリムスであり、前記第二の免疫抑制性化合物が抗CD45RB mAbである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
CD83および前記第一の免疫抑制性化合物を、互いに3日以内に投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
治療用組成物を被験体へ投与する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記治療用組成物が移植組織である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記被験体が自己免疫疾患を患っている、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
CD83をコードする核酸を被験体に導入することによって、前記CD83を投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記被験体が移植レシピエントであり、そして前記治療用組成物が移植組織に関連した抗原である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
移植される組織へCD83を移植前に投与する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
移植される組織へのCD83の前記投与が、移植レシピエントへの移植のために組織を採取する前に、移植ドナーへCD83を投与することによって実施される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの治療間隔の間、被験体を治療するために使用するシロリムスの量を減少させる方法であって、シロリムスとCD83とを被験体に同時投与し、それによって前記被験体に投与されたシロリムスの量を、前記少なくとも1つの治療間隔の間、添付文書において推奨された量よりも少なくする工程を含む、前記方法。
【請求項36】
B細胞またはB細胞機能が関与する疾患または障害について、B細胞枯渇を伴うことなく被験体を治療するための方法であって、B細胞またはB細胞機能が関与する疾患または障害を患っているか、または発症する可能性のある被験体を同定する工程、および前記被験体にsCD83を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項37】
治療用ポリペプチドに対する望まれない免疫応答を治療するための、CD83と治療用ポリペプチドとを含む医薬品。
【請求項38】
治療用ポリペプチドに対する望まれない免疫応答を治療するための、CD83をコードする核酸と治療用ポリペプチドをコードする核酸とを含む医薬品。
【請求項39】
治療用ポリペプチドに対する望まれない免疫応答を治療するための、CD83と治療用ポリペプチドをコードする核酸とを含む医薬品。
【請求項40】
治療用組成物に対する望まれない免疫応答を治療するための、移植組織ではない治療用組成物とCD83をコードする核酸とを含む治療用組成物医薬品。
【請求項41】
移植組織に対する望まれない免疫応答を治療するための、CD83と別の治療用組成物または別の免疫抑制性化合物とを含む、医薬品。
【請求項42】
前記免疫抑制性化合物が、カルシニューリン阻害剤、プリン代謝阻害剤および増殖阻害剤からなる群より選択される、請求項41に記載の医薬品。
【請求項43】
前記免疫抑制性化合物が、シクロスポリンおよびタクロリムスからなる群より選択されるカルシニューリン阻害剤である、請求項42に記載の医薬品。
【請求項44】
前記免疫抑制性化合物が、シロリムスおよびエベロリムスからなる群より選択される増殖阻害剤である、請求項42に記載の医薬品。
【請求項45】
前記免疫抑制性化合物が、抗CD45RBであるモノクローナル抗体である、請求項41に記載の医薬品。
【請求項46】
前記免疫抑制性化合物が、ミコフェノール酸モフェチルであるプリン代謝阻害剤である、請求項42に記載の医薬品。
【請求項47】
第二の免疫抑制性化合物をさらに含む、請求項41に記載の医薬品。
【請求項48】
免疫抑制性化合物シロリムスと抗CD45RB mAbである第二の免疫抑制性化合物とを含む、請求項47に記載の医薬品。
【請求項49】
B細胞またはB細胞機能が関与する疾患または障害を治療するための、CD83を含む医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−501556(P2010−501556A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525563(P2009−525563)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/018048
【国際公開番号】WO2008/024242
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(506175781)アルゴス・セラピューティクス・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】