使用中のボルトネジ部の検査方法
【課題】ネジ部が覆われているボルトネジ部の減肉量・減肉面積を使用状態で検査する。
【解決手段】使用状態のボルト1の端面2にフェーズドアレイ式探触子3を密着させ、1回転させる間に、ボルト中心を通る直径方向に連続的に屈折角を変化させながら超音波ビームを入射すると共にボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信する検査方法において、サイドビューから減肉部位を特定し、ボルト端面2から減肉部5までの軸方向の長さを求め、減肉エコーの最大振幅値を読みとり、それら各超音波伝搬方向毎の最大振幅値の中からもっとも大きな最大振幅値を求め、さらにもっとも大きな最大振幅値の半分の角度を屈折角として求め、屈折角と減肉部位のボルト端面2からの軸方向距離とを用いて減肉部5の半径を求め、減肉部位の半径と予め求められているボルトの直径との差分から減肉部位の深さを求める。
【解決手段】使用状態のボルト1の端面2にフェーズドアレイ式探触子3を密着させ、1回転させる間に、ボルト中心を通る直径方向に連続的に屈折角を変化させながら超音波ビームを入射すると共にボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信する検査方法において、サイドビューから減肉部位を特定し、ボルト端面2から減肉部5までの軸方向の長さを求め、減肉エコーの最大振幅値を読みとり、それら各超音波伝搬方向毎の最大振幅値の中からもっとも大きな最大振幅値を求め、さらにもっとも大きな最大振幅値の半分の角度を屈折角として求め、屈折角と減肉部位のボルト端面2からの軸方向距離とを用いて減肉部5の半径を求め、減肉部位の半径と予め求められているボルトの直径との差分から減肉部位の深さを求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやグラウト材等によりネジ部が覆われているボルトネジ部の腐食又は減肉を使用状態において解体することなく検査する方法に関する。更に詳述すると、本発明は、ボルトネジ部の腐食又は減肉の進行状況を定量的に推定できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート中に埋設されている埋め込み基礎ボルトにおいては腐食などに因る減肉を生ずることが確認されている。機器の耐震性を維持する観点から、減肉が生じた基礎ボルトを確実に検出しなければならない。基礎ボルトの検査としては、目視検査及び打診検査が行われている。目視検査には基礎に埋め込まれた部分を確認できない問題がある。打診検査では、周囲の環境及び個人差による影響を受けるため、客観的な基準を設けることが困難である。このように、基礎ボルトにおける減肉を検出する手法はまだ確立されていない。
【0003】
種々の非破壊検査法の内、コンクリート建造物や機器の土台に隠れるボルトの減肉の検出に適用できる検査手法として好適なものとしては、体積検査法である超音波探傷法が挙げられる。超音波探傷法におけるパルスエコー法は、検査対象物の表面で探触子を走査し欠陥からのエコーを受信する方法である。この方法を利用して、目に見えないボルトの減肉を検出できると考えられる。しかしながら、従来の超音波探傷法では、ひとつの探触子は一つの方向の超音波しか高感度に送受信できない。ボルトにおける欠陥の傾き等を予め把握しない限り、その欠陥をうまく検出できる超音波の伝搬方向を決定することが困難である。そのため、従来の超音波探傷法ではボルトにおける欠陥を検出できないことがある。また、従来の超音波探傷法では、探傷波形を利用して欠陥の有無を判断する。その時、ネジ部からのエコーやモード変換によるエコーと欠陥のエコーが重なるため、ボルトにおける欠陥有無の判断は困難である。それに対して、フェーズドアレイ超音波探傷法は、複数個の振動子から構成されるアレイ探触子に対して各振動子で送受信タイミングを電気的に制御することにより一つの探触子で複数の方向に伝搬する超音波を利用することが可能な技術である。また、この方法では探傷波形の代わりに探傷結果を断面画像で表示することができる。これらのことから、フェーズドアレイ超音波探傷法を利用することにより、ボルトにおける欠陥を高精度に測定できると考えられる。
【0004】
例えば、使用状態のボルトの端面にフェーズドアレイ式探触子を密着させ、探触子をセクタスキャンして連続的に屈折角を変化させながらボルト中心を通る直径方向に超音波ビームを入射し、ボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信し、超音波エコーからボルトネジ部の直径方向の断面画像を表示させ、この断面画像から、ボルトネジ部からの超音波エコーがボルトの長さ方向に規則正しく表示されているときに健全部位と判断し、ボルトネジ部からの超音波エコーの欠落があるときに欠陥部位と判断する使用中のボルトネジ部の検査手法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−132908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のボルトねじ部の検査方法では、ボルトネジ部からの超音波エコーがボルトの長さ方向に規則正しく表示されているか否かで健全か欠陥かを判断できるに過ぎず、減肉の量や深さ、減肉の面積などの定量的な検査、即ち減肉などの進行状況を推定することはできないものである。
【0007】
つまり、減肉深さを定量的に評価できないため、安全に使用できるか否かの正確な判断ができない問題がある。実際に、基礎ボルトのような構造物等を支持するボルトには安全率が見込まれている。例えば、原子炉発電所のタンクやポンプなどの埋め込み基礎ボルトに対しては、横断面積の1/2までの減肉に耐えられるように安全許容度が見込まれている。つまり、全周に均一に減肉が発生しているのであれば、直径の30%減肉までは安全に使用できる。また、局部的な減肉あるいは腐食であっても、断面積で1/2減肉までは安全上問題ない。このため、ただ単に減肉の有無を検出できても、断面積が1/2以下になっているか否かを判断することができなければ、基礎等を破壊してまで基礎ボルトを交換する必要があるか否かの判断をすることは難しく、実用的検査手法とはいえない。
【0008】
さらに、ネジ部に減肉や亀裂があってもネジ部からの超音波エコーがあまり消失しない事態が起こってしまい、ネジ部の局部的減肉や亀裂を見過ごしてしまい検出できなこともある。また、ボルト破断などの原因究明の上でネジ部における減肉及び亀裂の識別が望まれる場合にもそれに応えることができない。
【0009】
さらに、減肉の深さが判明するだけでも基礎ボルトの安全性についての有効な判断をもとめることができるが、減肉面積が求まれば更に安全性について正確な判断が可能となる。望まれている。
【0010】
本発明は、ボルトネジ部の腐食又は減肉の進行状況を定量的に推定できる検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明は、使用状態のボルトの端面にフェーズドアレイ式探触子を密着させて1回転させる間に、ボルト中心を通る直径方向に連続的に屈折角を変化させながら超音波ビームを入射すると共にボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンを行ってネジ部エコーからボルトネジ部のセクトリアルビー及びサイドビューを作成し、その画像中のネジ部エコーの消失を利用して減肉部を検出する使用中のボルトネジ部の検査方法において、サイドビューからネジ部の指示が消失した箇所を減肉部として特定し、その指示消失部位の最大幅部分の位置をボルトの端面から減肉部までの軸方向の減肉部の位置と見なして減肉部のボルト端面からの軸方向距離lを求め、サイドビューに現れる減肉エコーの指示から各超音波伝搬方向毎の減肉エコーの最大振幅値を読みとり、それら各超音波伝搬方向毎の最大振幅値の中からもっとも大きな最大振幅値を求め、さらにもっとも大きな最大振幅値の半分の角度を屈折角θとして求め、この屈折角θと減肉部のボルト端面からの軸方向距離lとを用いて減肉部の半径rをr=l・tanθから求め、次いで減肉部の半径rと予め求められているボルトの直径Rとの差分から減肉部の深さdを求めるようにしている。
【0012】
ここで、フェーズドアレイ式探触子には周波数5MHzの探触子を用いることが好ましい。また、ネジ部エコーの消失部の最大幅位置に対する減肉エコーの出現位置の遅れとの関係で減肉深さを定性的に判断することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のボルト減肉検査方法では、露出していないボルトのネジ部の減肉の軸方向位置、周方向位置を検出できるだけでなく、減肉の最大深さを推定することができるので、減肉の量、深さ、減肉の面積など、進行状況を定量的に推定することができる。このため、検査対象となっているボルトを今後安全に使用できるか否かの正確な判断ができる。本発明者等の実験によると、ネジ部エコーの最大消失幅に対応する深さから3.6%以内の誤差で減肉位置を推定することが明らかとなった。この推定精度は、超音波探傷法においてはかなり正確なものである。
【0014】
また、周波数5MHzの探触子を用いる場合、減肉がネジ部にあるときには、ネジ部のエコーの一部が消失する現象が必ず観察でき、すべての減肉を検出できる。また、周波数5MHz の場合、ネジ部に亀裂があってもネジ部エコーが消失せず亀裂からの欠陥エコーと重なって出現することから、減肉及び亀裂によるネジ部エコーの差異を利用して、ネジ部における減肉及び亀裂の識別が可能となる。
【0015】
また、ネジ部エコーの消失部の最大幅位置に対する減肉エコーの出現位置の遅れとの関係が減肉深さと相関を有することから、減肉エコーの出現位置を画像上で判断するだけで、定性的に減肉深さの大きさを判断することが可能である。
【0016】
さらに、本発明のボルト減肉検査方法によると、局部減肉のみならず全周減肉においてもその最大深さを測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のボルト減肉検査方法の原理図で、超音波伝搬解析により、探触子により励起された縦波が減肉で2回モード変換されてから減肉のエコーとして受信されることを示したものである。
【図2】本発明のボルト減肉検査方法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【図3】本発明のボルト減肉検査方法による探傷結果の一例を示す図で、(A)はセクトリアルビュー、(B)はサイドビューを示す。
【図4】測定治具の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明のボルト減肉検査方法によるボルトの減肉深さの推定結果とレーサー計測された減肉深さとの相関を示すグラフである。
【図6】ネジ部エコーの消失を利用してサイドビューから軸方向の減肉位置を読みとるときの(A)サイドビューと、(B)マージしたサイドビューとをそれぞれ示す。
【図7】セクトリアルビューにおいて超音波伝搬方向αを設定する方法を説明する図で、(A)はセクトリアルビュー、(B)はサイドビューを示す。
【図8】超音波伝搬方向αに対応するサイドビューにおいて減肉エコーの最大振幅値を読みとる工程を説明する図で、(A)はセクトリアルビュー、(B)はサイドビューを示す。
【図9】超音波伝搬方向αに対応するサイドビューにおいて減肉エコーの最大振幅値を読みとる工程を説明する図で、(A)はセクトリアルビュー、(B)はサイドビューを示す。
【図10】減肉面積の推定方法を説明する図で、(A)は180°未満の角度の扇形の減肉の場合、(B)〜(D)は180゜以上の角度の扇形の減肉の場合で、(C)は減肉により残ったボルトの断面を、(D)はそれが近似した半円形の断面を示す。
【図11】(a)〜(h)に本発明のボルト減肉検査方法の確認実験で用いた8種類のボルト試験体を示す。
【図12】(a)〜(c)に本発明のボルト減肉検査方法の確認実験で用いた3種類の埋め込みボルト試験体を示す。
【図13】試験体No.1における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図14】試験体RB−1における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図15】試験体RB−2における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図16】試験体No.4−2における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図17】試験体No.5−1における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図18】試験体No.5−2における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図19】試験体No.8における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図20】試験体No.8−2における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図21】試験体No.10における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図22】試験体No.4−1における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図23】試験体No.5における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図24】試験体No.8の減肉を対象にした解析モデルを示す説明図である。
【図25】解析で予測された試験体No.8のAスコープである。
【図26】ボルトにおける超音波の伝搬の状態を説明する図である。
【図27】減肉エコーの経路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1に本発明の本発明のボルト減肉検査方法の原理図を示す。このボルト減肉検査方法は、使用状態のボルト1の端面2にフェーズドアレイ式探触子3を密着させて、連続的に屈折角を変化させながらボルト中心を通る直径方向に超音波ビームを入射してボルト1のネジ部4から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンを行うことにより、ネジ部4に減肉部5が存在する場合にはセクトリアルビューあるいはサイドビューにネジ部エコー8の消失が起こることを利用して減肉部5の存在を確認するものである。本発明者等は、セクタスキャンの結果、ネジ部4からのエコーの周方向消失幅が最大となる軸方向位置が最も減肉している位置に対応することを知見した。同時に、本発明者等は、このボルト減肉検査方法において、ネジ部エコー8の消失から遅れて減肉エコー7が現れること、即ち減肉のエコー位置7が実際の減肉位置より遠い位置に観察されることを知見した。しかも、本発明者等は、実際の減肉位置を示すネジ部エコー8の消失部6から遠い位置に観察される減肉エコー7が減肉の深さに応じて受信信号の振幅値が変化していること、即ち振幅値に応じて表示色を変化させるように画像処理する場合には減肉の規模が表示色の変化として画像表示できることを知見した。そして、この現象については、本発明者等の超音波伝搬解析により、探触子により励起された縦波が減肉で2回モード変換されてから減肉のエコーとして受信されることにあることを明らかにした。
【0020】
本発明の使用中のボルトネジ部の検査方法は、かかる知見に基づくものであって、使用状態のボルト1の端面2にフェーズドアレイ式探触子3を密着させて1回転させる間に、ボルト中心を通る直径方向に連続的に屈折角を変化させながら好ましくは周波数5MHzの探触子から超音波ビームを入射すると共にボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンを行って、超音波エコーから作成されるネジ部4のセクトリアルビュー及びサイドビューに現れるネジ部エコー8の消失部6を利用して減肉部5の位置を特定し、かつモード変換による減肉エコーに着目し、その最大振幅の半値が得られる伝搬方向を利用して幾何学的関係から減肉部5の最大深さdを推定するものである。
【0021】
つまり、サイドビューからネジ部4の指示が消失した箇所(消失部)6の最大幅部分(ネジ部エコー8の周方向消失幅が最大となる部分)の位置を減肉部5の位置として特定し、その指示消失部6の最大幅部分の位置を減肉の位置としてボルト端面2から減肉部5までの軸方向の距離lを求める一方、サイドビューに現れる減肉エコーの指示から各超音波伝搬方向毎の減肉エコーの最大振幅値を読みとり、それら各超音波伝搬方向毎の最大振幅値の中から更にもっとも大きな最大振幅値を求めると共にこのもっとも大きな最大振幅値の半分の角度を屈折角θとして求め、この屈折角θを減肉部5の最深部までのボルトの軸に対する角度と仮定して、屈折角θと減肉部位のボルト端面からの軸方向距離lとを用いて減肉部位のボルトの半径rをr=l・tanθから求め、減肉部位の半径rと予め求められているボルトの直径Rとの差分から減肉部5の最大の深さdを求めるものである。
【0022】
具体的には、図1に示すように、使用状態のボルト1の端面2にフェーズドアレイ式探触子3を密着させて、セクタスキャンを行いながら1回転させることにより、ボルトのネジ部の全周のデータを収集し、少なくともセクトリアルビューとサイドビュー、場合によってはマージしたサイドビューを構築し、減肉の有無とその軸方向位置と軸方向の減肉長さ、減肉深さ並びに必要に応じて周方向の減肉範囲を求める。
【0023】
ここで、セクトリアルビュー(以下、SSと呼ぶ)は、ある探触子位置における異なる超音波伝搬方向に対応する探傷波形から構成された画像、即ちある探触子位置における各屈折角のAスコープ(受信エコ−強度と超音波の伝搬距離を直角座標にとって表示する方法)を輝度変調したものである。例えば、図3(A)は−30°から30°までの超音波伝搬方向に対応する探傷波形から構成された、ある位置のセクトリアルビューである。したがって、例えば探触子を0°から360°まで1°間隔で回転させるとすれば、一回転で360枚のセクトリアルビューが得られる。また、サイドビュー(以下、BSと呼ぶ)は、一定の超音波伝搬方向に対応する、異なる探触子位置における探傷波形から構成された探傷画像、即ちスキャン方向における各Aスコープを輝度変調したものである。例えば、図3(B)に例示するサイドビューは、超音波伝搬方向9°の場合における探触子位置が0°から360°までの探傷波形から構成されたものである。さらに、マージしたサイドビュー(以下、MBSと呼ぶ)は、異なる超音波伝搬方向に対応したサイドビューが重なったもの、即ち複数の屈折角成分のBスコープを重ねたものである。
【0024】
以下、本発明にかかる使用中のボルトネジ部の減肉検査方法を図2に示すフロー図に基づいてさらに詳細に説明する。
【0025】
まず、フェーズドアレイ式探触子3は、例えば図4に示すような回転治具を使って、図1に示すように使用状態のボルト1の端面2(この例では上面)に密着させる。回転治具は、検査対象となるボルト1のネジ4を利用してネジ締め付けにより固定されるベースディスク17と、そのディスク17周りに回転可能に支持される外歯付き回転ディスク12と、該外歯付き回転ディスク12の上面に固定されてフェーズドアレイ探触子3を昇降自在に支持する門型の探触子取付用フレーム13と、回転ディスク12の周面の外歯に噛み合い回転ディスク12を任意角度に回転可能とする回転ハンドル14と回転角度を検出するエンコーダ15とで主に構成されている。そして、フェースドアレイ探触子3は押付バネ16により、ボルト1の端面2に弾力的に押し付けられ、回転ハンドル14で回転ディスク12を回すことにより、ボルト1の中心軸周りに回転させられるように取り付けられる。この際に、探触子3を構成する複数の振動子は、ボルト1の中心を通る直線上に位置決めされる。尚、探触子位置をロータリーエンコーダ15によりコンピュータに入力される。また、フェースドアレイ探触子3は図示していないフェーズドアレイ用探傷器に接続される。
【0026】
上述のフェーズドアレイ式探触子3の使用状態のボルト1の端面2への装着の前段階として、ボルトの半径Rを予め測定しておくことが好ましい(S1)。勿論、ボルトの半径Rは、実測せずに設計値を用いても良いし、さらには、減肉部5の深さを演算する際に求めて入力手段からコンピュータに入力するようにしても良い。
【0027】
次いで、ネジ部エコー8の消失部6を利用してサイドビューから軸方向の減肉位置即ちボルト端面2から減肉部5までの軸方向長さlを読みとる(S2:図3(B),図6(A)参照)。このとき、サイドビューに現れるネジ部エコー8の消失部6の指示部位の最大幅部分の位置を減肉部5の位置と見なして、ボルト端面2から減肉部5までの軸方向長さlを読みとる。
【0028】
ここで、ネジ部エコー8の消失部6を観察する手法としては、例えばセクタリアルビューを観察する手法か、あるいはサイドビューを観察する手法のいずれかの手法を採ることが好ましい。
【0029】
セクタリアルビューを観察する手法によれば、セクタリアルビューにおいて、超音波伝搬方向カーソルを最小値(例えば−30°)から最大値(例えば30°)まで移動させながら、サイドビューにネジ部エコー8の消失部6及び減肉エコー7が現れるか否かを観察する。続いて、減肉エコー7が最も明瞭に観察されるように、超音波伝搬方向カーソル9を前後移動させる。
【0030】
サイドビューを観察する手法によれば、サイドビューにおいて、探触子位置カーソル10を0°から360°まで移動しながら、セクタリアルビューに減肉エコー7及びネジ部エコー8の消失部6が出現するかどうかを観察する。減肉エコー7及びネジ部エコー8の消失部6が観察されたら、セクタリアルビューにおいて超音波伝搬方向カーソル9を減肉エコー7を通るように移動して、サイドビューにネジ部エコー8の消失部6及び減肉エコー7が現れるようにする。続いて、減肉エコー7が最も明瞭に観察されるように、セクタリアルビューにおいて超音波伝搬方向カーソル9を前後移動させる。セクトリアルビューで超音波伝搬方向カーソル9をセクタースキャンで設定された屈折角の刻み幅に合わせて、1刻み例えば1°ずつ減らすように移動させれば、同超音波伝搬方向θに対応するサイドビューが自動的に現れる。
【0031】
尚、図6(B)に示すマージしたサイドビューを用いる場合には、上述のように超音波伝搬方向カーソル9を移動させる必要がない。何故ならば、異なる超音波伝搬方向に対応するサイドニューが重なったものがマージしたサイドビューとなるためである。即ち、マージしたサイドビューにおいて、いきなりネジ部エコー8の消失部6が現れる。しかも、マージしたサイドビューを用いた観察は、サイドビューでネジ部エコー8の消失部6が不明瞭な場合においても、ネジ部エコー8の消失部6が明確に観察される可能性がある。その時には、マージしたサイドビューの観察が必要となる。しかしながら、サイドビュー及びマージしたサイドビューの何れにおいても、ネジ部エコー8の消失部6が明瞭であれば、サイドビューのみの観察で十分である。したがって、サイドビューでネジ部エコー8の消失部6を明瞭に観察できる場合においては、マージしたサイドビューでの観察は不要である。仮に、サイドビューとマージしたサイドビューとからそれぞれ得られるネジ部エコー8の消失部6の最大幅に対応する軸方向位置の値が異なるときには、両者の平均値を減肉の軸方向位置とする。
【0032】
次いで、減肉エコー7の消失位置における超音波伝搬方向α0を決定する(S3:図3(A),図7参照)。超音波伝搬方向α0は、正確さは特に問題とはならず、セクタリアルビューにおいて減肉エコー7が観察されなくなる超音波伝搬方向より大きな角度にすれば足りる。例えば、図7に示すように、サイドビューの探触子位置カーソル10を左から右へ移動させること、即ち探触子回転角を変化させることにより、セクトリアルビューに減肉エコー7が出現すると、セクトリアルビューで超音波伝搬方向カーソル9を振って、サイドビューに現れる減肉エコー7を観察する。そして、セクトリアルビューだけに減肉エコー7が出現し、サイドビューには減肉エコーが出現しない状況から超音波伝搬方向9を1°ずつ減らしてサイドビューにも減肉エコーが出現する超音波伝搬方向カーソル9の位置を超音波伝搬方向α0として決定する。
【0033】
そこで、セクトリアルビューにおいて超音波伝搬方向をα(=α0)に設定する(ステップ4)。
【0034】
次いで、図8に示すように、超音波伝搬方向αに対応するサイドビューにおいて減肉エコー7の最大振幅値MaxAmp(α)を読みとる(ステップ5)。最大振幅値の読みとりは、例えば図8(B)に示すように、サイドビューに現れた減肉エコー7をカーソルの枠11で囲むと、同エコーに対応する最大振幅値がフェーズドアレイ装置に搭載されたソフトウェア(例えばZetec社製TomoScan 3に搭載されたTomoView )によって自動的に算出され、その値が表示される。そこで、その値を読みとり、現在の超音波伝搬方向αに対応する減肉エコー7の最大振幅値として入力手段を介してコンピュータに入力し、メモリに記憶させる。
【0035】
そして、(α−Δα)が0より小さいか否かを判断し(ステップ6)、0より小さくなければ(ステップ7)、再びステップ4の前に戻り、ステップ4〜ステップ6を繰り返す。このとき、超音波伝搬方向カーソル9を例えば1°ずつ減らすように移動させて、各角度即ち超音波伝搬方向に対応する最大の振幅値を読みとり(図8〜図9参照)、各々コンピュータのメモリに取り込む。
【0036】
そして、(α−Δα)が0より小さいか否かを判断して(ステップ6)、小さいと判断されたときには減肉エコーの最大振幅値MaxAmp(α)の中からもっとも大きな最大値Max(MaxAmp(α))を求めてから、その半値に対応する超音波伝搬方向θを求める(ステップ8)。上述のステップ4〜6を繰り返すと、異なる超音波伝搬方向に対応する減肉エコー最大振幅値がそれぞれ得られる。そこで、それら最大振幅値の中からもっとも大きな最大振幅値Max(MaxAmp(α))を求め、その半値に対応する超音波伝搬方向を求める。前述の半値に対応する超音波伝搬方向がセクタースキャンで設定された屈折角の刻み幅の間にある場合には、半値を挟んで刻み幅の大きな値の方の超音波伝搬方向と小さな値の方の超音波伝搬方向の値を利用して線形補間で半値に対応する伝搬方向を求める。具体的には、例えば、(yθ-y1)/(y2-y1)=(xθ-x1)/(x2-x1)から、半値が対応する超音波伝搬方向θを求める。尚、Δαはセクタースキャンで設定された屈折角の刻み幅である。ここで、超音波の反射特性から超音波ビームが角部に当たる超音波伝搬方向αで、減肉エコーの振幅が最大になる。図1に示すように、超音波ビームが最も深い減肉部に当る場合の超音波伝搬方向θがαより小さい。このことから、超音波伝搬方向α0としては、αより大きな角度を排除することができる。
【0037】
そして、MaxAmp(α)の最大値Max(MaxAmp(α))の半値に対応する超音波伝搬方向θ即ち屈折角が求まると、この屈折角θと減肉部の最深部の軸方向長さlとを利用して、減肉部5の最大深さdを中央処理装置において数式1の演算により求める(ステップ9)。
[数1]
d=R−L・tan(θ)
ここで、ボルトの半径Rは予めステップ1で実測されているが、場合によっては設計値を利用しても良い。そして、このボルトの半径Rは、減肉深さを算出するときに、メモリから読み出される。
【0038】
ここで、減肉部5の最大深さdが求まると、さらに減肉形状並びに面積を推定することもできる。例えば、減肉面積を推定するには、図10に示すように、ネジ部エコー8の消失部6の最大幅を得たサイドビューまたはマージしたサイドビューから減肉5の周方向のスタート位置Φ1及びエンド位置Φ2をそれぞれ読み取る。そして、ネジ部エコー8の消失部6の最大幅位置から得られたスタート位置Φ1とエンド位置Φ2、並びに減肉部5の最大深さ部分のボルト中心からの長さr(ボルト半径から減肉最大深さdを減算したもの)で図10(A)若しくは(B)を作図する。そして、図10(A)に示すような180°未満の角度の扇形の減肉の場合には、数式2
[数2]
減肉面積=R・R・(Φ2-Φ1)/2-R・r・sin[(Φ2-Φ1)/2]
から、減肉面積を求める。
また、図10(B)に示すような180゜以上の角度の扇形の減肉の場合には、減肉によって残されたボルトの断面が図10(C)に示されるものと考えられ、さらにそれは図10(C)に近似していることから、数式3
[数3]
減肉面積=R・R・(Φ2-Φ1)/2-R・rl・sin[(Φ2-Φ1)/2]
ここで、r1=R・cos[(Φ2-Φ1)/2]
から求められる。
【0039】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【実施例】
【0040】
まず、フェーズドアレイ超音波探傷法における基礎ボルトのネジ部の減肉の有無の判断とエコー消失現象による減肉位置の同定について実験を行った。本実験では図11 及び12に示すような2種類、計11 本の試験体を使用した。図11に示す試験体はボルトのみであるのに対して、図12に示すのはコンクリート中に埋め込まれるボルトを模擬する試験体である。以下、それぞれボルト試験体と埋め込みボルト試験体と呼ぶ。ボルトの材質は炭素鋼SS41-Bで、直径、長さ及びネジ部の長さはそれぞれ30mm、300mm及び120mmである。図11及び12に示すように、ボルト試験体No.1に欠陥を付与せず、ボルト試験体RB-1及びRB-2に深さ5mmのスリットを加工した。そのほかの試験体には局部減肉及び全周減肉を模擬した人工欠陥を付与した。また、図11及び12に示すように、欠陥個所はネジ部にあるものもあれば、ネジ部から離れたものもある。各試験体に付与した欠陥の詳細を表1に示す。表中の欠陥位置、欠陥長さ及び欠陥深さはそれぞれボルトの上端面から欠陥中心までの距離、ボルト軸方向における長さ及び軸方向に垂直な方向における最大深さを指す。
【0041】
【表1】
【0042】
(測定方法及び測定条件)
Zetec社製のTomoScan 3というフェーズドアレイ装置を測定に用いた。測定条件の設定、データ集録及び結果分析にはTomoView2.29というソフトウェアを利用した。32エレメントの周波数5MHz及び2MHzのフェーズドアレイ探触子をそれぞれ用いて、ボルト試験体及び埋め込みボルト試験体を測定した。振動子の幅及び間隔はそれぞれ0.5mm及び0.1mmである。振動子の長さは通常10mm程度であるが、ここでボルトの直径を考慮して20mmと決定した。超音波探傷試験は、フェーズドアレイ探触子3を図4に示す回転治具に取り付けてから検査対象となるボルトに装着し、回転ハンドル14を回すことにより、探触子3をボルトの中心軸周りに回転させることにより行った。探触子位置はロータリーエンコーダによりコンピュータに順次入力される。尚、ロータリーエンコーダの分解能は0.1°である。
【0043】
探傷条件を表2に示す。幅100ns (5MHzの場合)あるいは250ns(2MHz の場合)、電圧50Vのパルスを各振動子に印加して試験体に超音波を入射した。探触子で受信された超音波エコーをハイパスフィルターとローパスフィルターを掛けずにデジタイザーによってA/D 変換し、パソコンに保存した。デジタイザー周波数、感度(ゲイン)、繰り返し周波数はそれぞれ50MHz、35dB、2000Hzである。ピッチ0.5°でボルトの中心軸周りに探触子を一周回転させた。以下の要領で測定を行った。
【表2】
【0044】
(1) 探傷感度を決定する。測定対象となる試験体の底面エコーを基準に探傷感度を決定した。探傷感度が低かった場合、ソフトウェア(TomoView)のアナリシスモードでソフトゲインによって調整する。
(2) 探触子3を図4に示す冶具の探触子取付用フレーム13に装着してその冶具を探傷する試験体・ボルトに固定する。探触子及びボルト上端面の中心が重なるように探触子位置を調整する。
(3) TomoView を介してTomoScan 3をセッティングする。まず探傷モードをフェーズドアレイのパルスエコーに設定する。続いて、表2に示す測定条件と上述したパラメータを入力する。データ解析の際にビーム路程を校正するために、底面エコーが観察されるようにビーム路程の範囲を設定する。
(4) 探触子の探傷開始位置をマークしてから測定を行い、データを収録する。
(5) TomoView のアナリシスモードで収録したデータを解析する。
【0045】
(測定結果)
各試験体における測定結果を図13〜23に示す。各図の上下はそれぞれ周波数5MHz及び2MHzの探触子に対応する。図中のBE、DE及びREはそれぞれ底面エコー、遅れエコー及び欠陥による多重反射のエコーを表す。BS及びMBSの縦軸はビーム路程を、横軸は探触子位置を表す。ほかの記号の意味は前述の通りである。括弧内の数字はそのスコープに適用されたソフトゲインである。探触子の開始位置は0°、一周回転した後の位置は360°とする。因みに、BS及びMBSにおける横軸目盛ラベルにあるmmはソフトウェアのバグで、「°」の間違いである。
【0046】
図13に示すように、健全な埋め込みボルト試験体においてネジエコー、底面エコー及び遅れエコーが明瞭に観察される。但し、周波数5MHzの場合、ネジエコーが周波数2MHzよりくっきりと見える。これは周波数が高いほど波長が短いからである。一方、図14〜23に示すように、周波数5MHzの探触子を用いた場合、試験体にある全ての欠陥からのエコーが明瞭に観察される。ボルト試験体と埋め込みボルト試験体の結果を比較すると、埋め込みによる欠陥検出の影響がないことが判った。それに対して、周波数2MHzの探触子の場合、ボルト試験体における全ての欠陥を検出できたものの、埋め込みボルト試験体No.5の局部減肉2を検出できなかった。
【0047】
(1) 試験体No.1、No.4-1、No.4-2及びNo.8における底面エコーは縦軸300mmのところに出現するのに対して、ほかの試験体の底面エコーは300mm強のところに観察される。これは各試験体における音速の差異によるものと考えられる。この差異を校正するために各試験体の底面エコーの出現位置を300mmと見なした上で、測定結果を分析する。
【0048】
(2) 図14及び15に示すように、スリットによる欠陥エコーのみならずスリットでの多重反射によるエコーも検出された。
【0049】
(3) 減肉の場合には、減肉エコーが実際の減肉位置より遠いところに出現する。図17、18、19、20及び23に示すように、周波数5MHzの探触子を用いてネジ部にある減肉を測定する場合、ネジエコーの一部が消失する現象が観察される。この現象を利用して減肉の長さ及び位置を推定することができる。具体的には、BS或いはMBSの縦軸におけるネジエコーの消失長さを減肉長さ、横軸における最大の消失幅に対応するビーム路程を減肉位置とする。しかしながら、周波数2MHz の場合、波長が長いためネジエコー消失が明瞭に観察されていない。
【0050】
(4) 図14 及び15 に示すように、スリットがネジ部にある場合、ネジエコーが消失せずスリットからのエコーがネジエコーと重なる。減肉及びスリットによるネジエコーの差異を利用して、ネジ部における減肉及び割れの識別が可能と考えられる。また、全周減肉からのエコーはBS或いはMBSにおいて0〜360°にわたり観察されるのに対して、局部減肉からのエコーは限られた範囲しか観察されない。
【0051】
一例として、ボルト試験体No.5-1 の測定結果を分析する。上述のことを踏まえて、図17 から容易に同試験体のネジ部に一個の局部減肉があると判断できる。また、同図からネジエコーの消失長さ及び最大の消失幅に対応するビーム路程がそれぞれ22.0mm及び72.0mmと読み取れる。
【0052】
底面エコーの出現位置310mm を300mm と校正すると、同局部減肉の位置及び長さはそれぞれ69.7mm 及び21.3mm と推定できる。同様に、図13 〜 23 から推定した各試験体における欠陥の性状を表3に示す。欠陥エコー位置及び欠陥位置は欠陥または減肉エコーのビーム路程及び測定結果から推定した欠陥位置を意味する。
【表3】
【0053】
ネジエコーの消失を利用して推定した欠陥位置及び欠陥長さの値に下線が付いている。表中の×は推定できないことを表す。表3に示すように、ネジ部にある欠陥は割れか減肉の識別ができるものの、それ以外の欠陥(ネジ部にない欠陥)については、全周にわたるものか否かしか判断できない。試験体RB-1 及びRB-2 における欠陥をすべて検出でき、位置も正確に推定できた。それ以外の試験体については、表1及び3を比較すると、欠陥エコー位置は実際の欠陥位置に比べて値が大きくなることが判る。試験体No.4-1 及び4-2 において、実際の欠陥位置が同じであるにも関わらず、欠陥エコー位置がそれぞれ165mm 及び140mm と大きく異なる。これはそれぞれの欠陥深さが5mm 及び10mm と違うことによるものと考えられる。即ち、欠陥エコー位置は欠陥性状に大きく依存することが判った。また、ネジ部にある減肉については、周波数5MHz の測定結果から推定した減肉の位置及び長さの最大誤差はそれぞれ3.6%及び14.3%である。一方、上述の理由から周波数2MHz の場合には、殆どの減肉の位置及び長さを正確に推定することができない。
【0054】
以上のことから、(1)ネジエコーが消失するか否かを踏まえて、ネジ部における減肉及び割れの識別が可能であること、 (2)ネジエコーの消失長さ及び最大消失幅に対応するビーム路程から、ネジ部にある減肉の長さ及び位置を推定することができること、(3)減肉のエコー位置は欠陥の性状に大きく依存すること及び(4) 周波数2MHzの探触子より、周波数5MHz のほうが基礎埋め込みボルト試験体の減肉検出に適することが明らかになった。また、上述のように、減肉がネジ部から離れた場合、測定結果から減肉位置などを推定できない問題が生ずるので、埋め込み基礎ボルトにはその全長にネジを切ることが好ましい。
【0055】
(数値解析)
試験体No.8 の局部減肉を対象に図24 に示す解析モデルを用いて、有限要素法による超音波伝搬解析を行った。簡単化のため、平面ひずみ問題と仮定し、ボルトのネジ部を無視した。ボルト長さ及び減肉深さをそれぞれ200mm及び5mmとした。図11及び12を参考に図24 に示すような減肉形状を決定した。ヤング率、ポアソン比及び質量密度はそれぞれ270MPa/m、0.285及び7,900kg/mである。要素サイズは0.05mmで、時間刻みは2nsである。
【0056】
ボルトの上端面に中心周波数2MHz の力を与えて、ボルト内を屈折角10°で伝搬する縦波を励起させる。解析により予測されたAスコープを図25に示す。同図に示すように、底面エコー及び減肉エコーがそれぞれ200mm及び134mmのところに出現する。また、底面エコーの後に遅れエコーも観察される。これは図19に示す測定結果と良く一致する。欠陥エコーを突き止めるため、励起後の異なる時刻における超音波伝搬の様子を図26に示す。図中のL、RL、RS、MS及びML はそれぞれ縦波、縦波反射波、横波反射波、横波モード変換波及び縦波モード変換波を表す。同図に示すように、励起された縦波が減肉に当たると横波モード変換波が生じる。この横波はボルトの左側面に当たって、横波反射波が発生する。この横波が減肉でモード変換され、縦波モード変換波が生じる。この縦波はボルトの上端面に向かって伝搬し、減肉エコーとして受信される。つまり、減肉エコーは図27(図1)に示すような経路を経て受信されることが明らかになった。即ち、励起された縦波がまず減肉でモード変換され、そして反対側の側面で反射される。続いて、横波反射波が減肉で再びモード変換されることにより、生じた縦波モード変換が減肉エコーとして観察される。また、図25 に示すN及びMエコーは、それぞれ縦波反射波RL及び縦波Lがボルトの左側面及び減肉に当たることにより、発生された異なる縦波によるものである。試験体の場合、それらの縦波がネジ部で散乱されるためエコーとして観察されない。
【0057】
(1) 周波数5MHzの探触子の場合、各試験体の底面エコー及び欠陥エコーが明瞭に観察され、埋め込みによる欠陥検出への影響がないことが判った。それに対して、周波数2MHz の場合、ボルト試験体における全ての欠陥を検出できたが、埋め込みボルト試験体にある局部減肉を一つ検出できなかった。
(2) 割れからの欠陥エコー位置は実際の欠陥位置と良く一致するものの、減肉からの減肉エコー位置は実際の欠陥位置より遠くに出現する。これは、探触子により励起された縦波の減肉でのモード変換によるものということを超音波伝搬シミュレーションにより明らかにした。
(3) 周波数5MHz の場合、ネジ部にある減肉によりネジエコーの一部が消失する現象が観察された。この現象を利用して減肉の位置及び長さをそれぞれ3.6%及び14.3%以内の誤差で推定できた。一方、周波数2MHz の場合、ネジ部に減肉があってもネジエコーがあまり消失しない。
(4) 周波数5MHz の場合、ネジ部にスリットがあってもネジ部エコーが消失せずスリットからの欠陥エコーと重なって出現する。このような減肉及びスリットによるネジエコーの差異を利用して、ネジ部における減肉及び割れの識別が可能と考えられる。また、全周減肉の場合、BS或いはMBSにおいて減肉エコーが0〜360°にわたり観察されるのに対して、局部減肉の場合、減肉エコーが限られた範囲しか観察されない。
(5) 減肉の位置が同じであるにも関わらず減肉深さによって減肉エコー位置が大きく変化することから、エコーの出現位置は減肉深さに大きく依存することが明らかになった。
(6) 周波数5MHzの探触子は周波数2MHzの探触子より、基礎ボルトにける減肉の検出に適することが明らかになった。
【0058】
次に、人工的に減肉を形成した直径36mmのボルトを用いて本発明方法によって減肉深さを推定した。
まず、ボルトの半径Rを測定する。ここで、ボルトの直径Rはノギスによる測定で18mmであった。次に、ボルト1の端面2に治具を介してフェーズドアレイ式探触子3を密着させて回転可能に装着し、連続的に屈折角を変化させながらボルト中心を通る直径方向に超音波ビームを入射してボルト1のネジ部4から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンを行い、セクトリアルビューとサイドビュー並びに必要に応じてマージされたサイドビューを構成する。
【0059】
そして、ネジ部エコー8の消失部6の最大幅の位置を減肉部5のボルト端面2からの軸方向位置とみなし、軸方向長さlをサイドビューあるいはマージしたサイドビューから読みとる。図6に示すように、サイドビューからネジ部エコー8の消失部6の最大幅に対応する軸方向位置が99mmであることから、同減肉部5の最深部の軸方向位置を99mmとする。因みに、マージしたサイドビューからも同様な結果が得られた。そこで、画像から読みとった軸方向長さlの値(99mm)を入力手段を用いてコンピュータに入力する。
【0060】
次いで、サイドビューの探触子カーソル10を左から右へ移動する(図7(B)参照)。そして、セクトリアルビューに減肉エコー7が出現すると、セクトリアルビューで超音波伝搬方向カーソル9を振って(図7(A)参照)、サイドビューに現れる減肉エコーを観察する。本実験の場合には、図7に示すように超音波伝搬方向が13°のとき、サイドビューで減肉エコー7が観察されるが、それより小さな伝搬方向になると、サイドビューで減肉エコー7が観察されるようになった。そのため、減肉エコーの消失位置における超音波伝搬方向α0を13とした。
【0061】
そして、最初にα=α0であるので、セクトリアルビューにおいて超音波伝搬方向αを13°に設定する。
【0062】
そして、セクタースキャンで設定された屈折角の刻み幅でセクトリアルビュー上で超音波伝搬方向カーソル9を角度が小さくなる方向に振って減肉エコー7に対応する最大振幅値を順次読みとる。例えば、超音波伝搬方向カーソルを10°に合わせて、自動に同方向に対応するサイドビューが現れる(図10参照)。図10(B)に示すように、減肉エコー7を枠11で囲んで同エコー7に対応する最大振幅値がフェーズドアレイ装置に搭載されたソフトウェアによって自動的に算出され、その値46.5%が表示された。また、同様に伝搬方向が9°の場合、減肉エコー最大振幅値が70.3%と読み取った。
【0063】
上述の最大振幅値の読みとりを繰り返すと、表4に示すように異なる超音波伝搬方向に対応する減肉エコー最大振幅値が得られる。
【表4】
【0064】
表4により、伝搬方向が8°の場合、最大振幅が最大となり、その値が78.1%である。その半値39.05%が伝搬方向が6°と7°の間にある。伝搬方向が6°と7°の値を利用して線形補間で39.05%に対応する伝搬方向を求める。具体的には、数式4から半値の超音波伝搬方向が算出される。半値39.05%が対応する超音波伝搬方向θ=6.025°と算出された。
[数4]
(yθ-y1)/(y2-y1)=(xθ-x1)/(x2-x1)
【0065】
そこで、この超音波伝搬方向θと、減肉部の軸方向長さlと、ボルト半径Rとから、最大減肉部の最大深さdをd=R-L・tan(θ)より算出する。
【0066】
この結果、
d=R-L・tan(θ)
=18−99・tan(6.025)
=7.55mm
と得られた。
【0067】
この手法を適用し、上述の試験体No.5-1、No.5-1、No.8-2、No.8の4本の他、軸方向長さ71mmの所に模擬減肉を有する直径30mmおよび軸方向長さ96mmの所に模擬減肉を有する36mmのボルト試験体の計8本のボルトについて減肉深さの推定を行った。同時に、それら8本のボルトの模擬減肉の深さをレーザー計測によって実測した。その結果を図5に示す。この結果から、本発明のボルト減肉検査方法によると、最大誤差1.84mm及び平均2乗誤差1.06mmで減肉深さを高精度に推定できることが証明された。この測定精度は、超音波探傷においては極めて高い精度であるといえる。
【符号の説明】
【0068】
1 基礎ボルト
2 ボルトの端面
3 フェーズドアレイ探触子
4 ネジ部
5 減肉部
6 ネジ部エコー消失部
7 減肉エコー
8 ネジ部エコー
9 超音波伝搬方向カーソル
10 探触子位置カーソル
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやグラウト材等によりネジ部が覆われているボルトネジ部の腐食又は減肉を使用状態において解体することなく検査する方法に関する。更に詳述すると、本発明は、ボルトネジ部の腐食又は減肉の進行状況を定量的に推定できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート中に埋設されている埋め込み基礎ボルトにおいては腐食などに因る減肉を生ずることが確認されている。機器の耐震性を維持する観点から、減肉が生じた基礎ボルトを確実に検出しなければならない。基礎ボルトの検査としては、目視検査及び打診検査が行われている。目視検査には基礎に埋め込まれた部分を確認できない問題がある。打診検査では、周囲の環境及び個人差による影響を受けるため、客観的な基準を設けることが困難である。このように、基礎ボルトにおける減肉を検出する手法はまだ確立されていない。
【0003】
種々の非破壊検査法の内、コンクリート建造物や機器の土台に隠れるボルトの減肉の検出に適用できる検査手法として好適なものとしては、体積検査法である超音波探傷法が挙げられる。超音波探傷法におけるパルスエコー法は、検査対象物の表面で探触子を走査し欠陥からのエコーを受信する方法である。この方法を利用して、目に見えないボルトの減肉を検出できると考えられる。しかしながら、従来の超音波探傷法では、ひとつの探触子は一つの方向の超音波しか高感度に送受信できない。ボルトにおける欠陥の傾き等を予め把握しない限り、その欠陥をうまく検出できる超音波の伝搬方向を決定することが困難である。そのため、従来の超音波探傷法ではボルトにおける欠陥を検出できないことがある。また、従来の超音波探傷法では、探傷波形を利用して欠陥の有無を判断する。その時、ネジ部からのエコーやモード変換によるエコーと欠陥のエコーが重なるため、ボルトにおける欠陥有無の判断は困難である。それに対して、フェーズドアレイ超音波探傷法は、複数個の振動子から構成されるアレイ探触子に対して各振動子で送受信タイミングを電気的に制御することにより一つの探触子で複数の方向に伝搬する超音波を利用することが可能な技術である。また、この方法では探傷波形の代わりに探傷結果を断面画像で表示することができる。これらのことから、フェーズドアレイ超音波探傷法を利用することにより、ボルトにおける欠陥を高精度に測定できると考えられる。
【0004】
例えば、使用状態のボルトの端面にフェーズドアレイ式探触子を密着させ、探触子をセクタスキャンして連続的に屈折角を変化させながらボルト中心を通る直径方向に超音波ビームを入射し、ボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信し、超音波エコーからボルトネジ部の直径方向の断面画像を表示させ、この断面画像から、ボルトネジ部からの超音波エコーがボルトの長さ方向に規則正しく表示されているときに健全部位と判断し、ボルトネジ部からの超音波エコーの欠落があるときに欠陥部位と判断する使用中のボルトネジ部の検査手法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−132908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のボルトねじ部の検査方法では、ボルトネジ部からの超音波エコーがボルトの長さ方向に規則正しく表示されているか否かで健全か欠陥かを判断できるに過ぎず、減肉の量や深さ、減肉の面積などの定量的な検査、即ち減肉などの進行状況を推定することはできないものである。
【0007】
つまり、減肉深さを定量的に評価できないため、安全に使用できるか否かの正確な判断ができない問題がある。実際に、基礎ボルトのような構造物等を支持するボルトには安全率が見込まれている。例えば、原子炉発電所のタンクやポンプなどの埋め込み基礎ボルトに対しては、横断面積の1/2までの減肉に耐えられるように安全許容度が見込まれている。つまり、全周に均一に減肉が発生しているのであれば、直径の30%減肉までは安全に使用できる。また、局部的な減肉あるいは腐食であっても、断面積で1/2減肉までは安全上問題ない。このため、ただ単に減肉の有無を検出できても、断面積が1/2以下になっているか否かを判断することができなければ、基礎等を破壊してまで基礎ボルトを交換する必要があるか否かの判断をすることは難しく、実用的検査手法とはいえない。
【0008】
さらに、ネジ部に減肉や亀裂があってもネジ部からの超音波エコーがあまり消失しない事態が起こってしまい、ネジ部の局部的減肉や亀裂を見過ごしてしまい検出できなこともある。また、ボルト破断などの原因究明の上でネジ部における減肉及び亀裂の識別が望まれる場合にもそれに応えることができない。
【0009】
さらに、減肉の深さが判明するだけでも基礎ボルトの安全性についての有効な判断をもとめることができるが、減肉面積が求まれば更に安全性について正確な判断が可能となる。望まれている。
【0010】
本発明は、ボルトネジ部の腐食又は減肉の進行状況を定量的に推定できる検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明は、使用状態のボルトの端面にフェーズドアレイ式探触子を密着させて1回転させる間に、ボルト中心を通る直径方向に連続的に屈折角を変化させながら超音波ビームを入射すると共にボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンを行ってネジ部エコーからボルトネジ部のセクトリアルビー及びサイドビューを作成し、その画像中のネジ部エコーの消失を利用して減肉部を検出する使用中のボルトネジ部の検査方法において、サイドビューからネジ部の指示が消失した箇所を減肉部として特定し、その指示消失部位の最大幅部分の位置をボルトの端面から減肉部までの軸方向の減肉部の位置と見なして減肉部のボルト端面からの軸方向距離lを求め、サイドビューに現れる減肉エコーの指示から各超音波伝搬方向毎の減肉エコーの最大振幅値を読みとり、それら各超音波伝搬方向毎の最大振幅値の中からもっとも大きな最大振幅値を求め、さらにもっとも大きな最大振幅値の半分の角度を屈折角θとして求め、この屈折角θと減肉部のボルト端面からの軸方向距離lとを用いて減肉部の半径rをr=l・tanθから求め、次いで減肉部の半径rと予め求められているボルトの直径Rとの差分から減肉部の深さdを求めるようにしている。
【0012】
ここで、フェーズドアレイ式探触子には周波数5MHzの探触子を用いることが好ましい。また、ネジ部エコーの消失部の最大幅位置に対する減肉エコーの出現位置の遅れとの関係で減肉深さを定性的に判断することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のボルト減肉検査方法では、露出していないボルトのネジ部の減肉の軸方向位置、周方向位置を検出できるだけでなく、減肉の最大深さを推定することができるので、減肉の量、深さ、減肉の面積など、進行状況を定量的に推定することができる。このため、検査対象となっているボルトを今後安全に使用できるか否かの正確な判断ができる。本発明者等の実験によると、ネジ部エコーの最大消失幅に対応する深さから3.6%以内の誤差で減肉位置を推定することが明らかとなった。この推定精度は、超音波探傷法においてはかなり正確なものである。
【0014】
また、周波数5MHzの探触子を用いる場合、減肉がネジ部にあるときには、ネジ部のエコーの一部が消失する現象が必ず観察でき、すべての減肉を検出できる。また、周波数5MHz の場合、ネジ部に亀裂があってもネジ部エコーが消失せず亀裂からの欠陥エコーと重なって出現することから、減肉及び亀裂によるネジ部エコーの差異を利用して、ネジ部における減肉及び亀裂の識別が可能となる。
【0015】
また、ネジ部エコーの消失部の最大幅位置に対する減肉エコーの出現位置の遅れとの関係が減肉深さと相関を有することから、減肉エコーの出現位置を画像上で判断するだけで、定性的に減肉深さの大きさを判断することが可能である。
【0016】
さらに、本発明のボルト減肉検査方法によると、局部減肉のみならず全周減肉においてもその最大深さを測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のボルト減肉検査方法の原理図で、超音波伝搬解析により、探触子により励起された縦波が減肉で2回モード変換されてから減肉のエコーとして受信されることを示したものである。
【図2】本発明のボルト減肉検査方法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【図3】本発明のボルト減肉検査方法による探傷結果の一例を示す図で、(A)はセクトリアルビュー、(B)はサイドビューを示す。
【図4】測定治具の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明のボルト減肉検査方法によるボルトの減肉深さの推定結果とレーサー計測された減肉深さとの相関を示すグラフである。
【図6】ネジ部エコーの消失を利用してサイドビューから軸方向の減肉位置を読みとるときの(A)サイドビューと、(B)マージしたサイドビューとをそれぞれ示す。
【図7】セクトリアルビューにおいて超音波伝搬方向αを設定する方法を説明する図で、(A)はセクトリアルビュー、(B)はサイドビューを示す。
【図8】超音波伝搬方向αに対応するサイドビューにおいて減肉エコーの最大振幅値を読みとる工程を説明する図で、(A)はセクトリアルビュー、(B)はサイドビューを示す。
【図9】超音波伝搬方向αに対応するサイドビューにおいて減肉エコーの最大振幅値を読みとる工程を説明する図で、(A)はセクトリアルビュー、(B)はサイドビューを示す。
【図10】減肉面積の推定方法を説明する図で、(A)は180°未満の角度の扇形の減肉の場合、(B)〜(D)は180゜以上の角度の扇形の減肉の場合で、(C)は減肉により残ったボルトの断面を、(D)はそれが近似した半円形の断面を示す。
【図11】(a)〜(h)に本発明のボルト減肉検査方法の確認実験で用いた8種類のボルト試験体を示す。
【図12】(a)〜(c)に本発明のボルト減肉検査方法の確認実験で用いた3種類の埋め込みボルト試験体を示す。
【図13】試験体No.1における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図14】試験体RB−1における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図15】試験体RB−2における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図16】試験体No.4−2における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図17】試験体No.5−1における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図18】試験体No.5−2における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図19】試験体No.8における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図20】試験体No.8−2における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図21】試験体No.10における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図22】試験体No.4−1における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図23】試験体No.5における測定結果を示すもので、(a)は周波数5MHzの探触子、(b)は周波数2MHzの探触子を用いた結果である。
【図24】試験体No.8の減肉を対象にした解析モデルを示す説明図である。
【図25】解析で予測された試験体No.8のAスコープである。
【図26】ボルトにおける超音波の伝搬の状態を説明する図である。
【図27】減肉エコーの経路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1に本発明の本発明のボルト減肉検査方法の原理図を示す。このボルト減肉検査方法は、使用状態のボルト1の端面2にフェーズドアレイ式探触子3を密着させて、連続的に屈折角を変化させながらボルト中心を通る直径方向に超音波ビームを入射してボルト1のネジ部4から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンを行うことにより、ネジ部4に減肉部5が存在する場合にはセクトリアルビューあるいはサイドビューにネジ部エコー8の消失が起こることを利用して減肉部5の存在を確認するものである。本発明者等は、セクタスキャンの結果、ネジ部4からのエコーの周方向消失幅が最大となる軸方向位置が最も減肉している位置に対応することを知見した。同時に、本発明者等は、このボルト減肉検査方法において、ネジ部エコー8の消失から遅れて減肉エコー7が現れること、即ち減肉のエコー位置7が実際の減肉位置より遠い位置に観察されることを知見した。しかも、本発明者等は、実際の減肉位置を示すネジ部エコー8の消失部6から遠い位置に観察される減肉エコー7が減肉の深さに応じて受信信号の振幅値が変化していること、即ち振幅値に応じて表示色を変化させるように画像処理する場合には減肉の規模が表示色の変化として画像表示できることを知見した。そして、この現象については、本発明者等の超音波伝搬解析により、探触子により励起された縦波が減肉で2回モード変換されてから減肉のエコーとして受信されることにあることを明らかにした。
【0020】
本発明の使用中のボルトネジ部の検査方法は、かかる知見に基づくものであって、使用状態のボルト1の端面2にフェーズドアレイ式探触子3を密着させて1回転させる間に、ボルト中心を通る直径方向に連続的に屈折角を変化させながら好ましくは周波数5MHzの探触子から超音波ビームを入射すると共にボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンを行って、超音波エコーから作成されるネジ部4のセクトリアルビュー及びサイドビューに現れるネジ部エコー8の消失部6を利用して減肉部5の位置を特定し、かつモード変換による減肉エコーに着目し、その最大振幅の半値が得られる伝搬方向を利用して幾何学的関係から減肉部5の最大深さdを推定するものである。
【0021】
つまり、サイドビューからネジ部4の指示が消失した箇所(消失部)6の最大幅部分(ネジ部エコー8の周方向消失幅が最大となる部分)の位置を減肉部5の位置として特定し、その指示消失部6の最大幅部分の位置を減肉の位置としてボルト端面2から減肉部5までの軸方向の距離lを求める一方、サイドビューに現れる減肉エコーの指示から各超音波伝搬方向毎の減肉エコーの最大振幅値を読みとり、それら各超音波伝搬方向毎の最大振幅値の中から更にもっとも大きな最大振幅値を求めると共にこのもっとも大きな最大振幅値の半分の角度を屈折角θとして求め、この屈折角θを減肉部5の最深部までのボルトの軸に対する角度と仮定して、屈折角θと減肉部位のボルト端面からの軸方向距離lとを用いて減肉部位のボルトの半径rをr=l・tanθから求め、減肉部位の半径rと予め求められているボルトの直径Rとの差分から減肉部5の最大の深さdを求めるものである。
【0022】
具体的には、図1に示すように、使用状態のボルト1の端面2にフェーズドアレイ式探触子3を密着させて、セクタスキャンを行いながら1回転させることにより、ボルトのネジ部の全周のデータを収集し、少なくともセクトリアルビューとサイドビュー、場合によってはマージしたサイドビューを構築し、減肉の有無とその軸方向位置と軸方向の減肉長さ、減肉深さ並びに必要に応じて周方向の減肉範囲を求める。
【0023】
ここで、セクトリアルビュー(以下、SSと呼ぶ)は、ある探触子位置における異なる超音波伝搬方向に対応する探傷波形から構成された画像、即ちある探触子位置における各屈折角のAスコープ(受信エコ−強度と超音波の伝搬距離を直角座標にとって表示する方法)を輝度変調したものである。例えば、図3(A)は−30°から30°までの超音波伝搬方向に対応する探傷波形から構成された、ある位置のセクトリアルビューである。したがって、例えば探触子を0°から360°まで1°間隔で回転させるとすれば、一回転で360枚のセクトリアルビューが得られる。また、サイドビュー(以下、BSと呼ぶ)は、一定の超音波伝搬方向に対応する、異なる探触子位置における探傷波形から構成された探傷画像、即ちスキャン方向における各Aスコープを輝度変調したものである。例えば、図3(B)に例示するサイドビューは、超音波伝搬方向9°の場合における探触子位置が0°から360°までの探傷波形から構成されたものである。さらに、マージしたサイドビュー(以下、MBSと呼ぶ)は、異なる超音波伝搬方向に対応したサイドビューが重なったもの、即ち複数の屈折角成分のBスコープを重ねたものである。
【0024】
以下、本発明にかかる使用中のボルトネジ部の減肉検査方法を図2に示すフロー図に基づいてさらに詳細に説明する。
【0025】
まず、フェーズドアレイ式探触子3は、例えば図4に示すような回転治具を使って、図1に示すように使用状態のボルト1の端面2(この例では上面)に密着させる。回転治具は、検査対象となるボルト1のネジ4を利用してネジ締め付けにより固定されるベースディスク17と、そのディスク17周りに回転可能に支持される外歯付き回転ディスク12と、該外歯付き回転ディスク12の上面に固定されてフェーズドアレイ探触子3を昇降自在に支持する門型の探触子取付用フレーム13と、回転ディスク12の周面の外歯に噛み合い回転ディスク12を任意角度に回転可能とする回転ハンドル14と回転角度を検出するエンコーダ15とで主に構成されている。そして、フェースドアレイ探触子3は押付バネ16により、ボルト1の端面2に弾力的に押し付けられ、回転ハンドル14で回転ディスク12を回すことにより、ボルト1の中心軸周りに回転させられるように取り付けられる。この際に、探触子3を構成する複数の振動子は、ボルト1の中心を通る直線上に位置決めされる。尚、探触子位置をロータリーエンコーダ15によりコンピュータに入力される。また、フェースドアレイ探触子3は図示していないフェーズドアレイ用探傷器に接続される。
【0026】
上述のフェーズドアレイ式探触子3の使用状態のボルト1の端面2への装着の前段階として、ボルトの半径Rを予め測定しておくことが好ましい(S1)。勿論、ボルトの半径Rは、実測せずに設計値を用いても良いし、さらには、減肉部5の深さを演算する際に求めて入力手段からコンピュータに入力するようにしても良い。
【0027】
次いで、ネジ部エコー8の消失部6を利用してサイドビューから軸方向の減肉位置即ちボルト端面2から減肉部5までの軸方向長さlを読みとる(S2:図3(B),図6(A)参照)。このとき、サイドビューに現れるネジ部エコー8の消失部6の指示部位の最大幅部分の位置を減肉部5の位置と見なして、ボルト端面2から減肉部5までの軸方向長さlを読みとる。
【0028】
ここで、ネジ部エコー8の消失部6を観察する手法としては、例えばセクタリアルビューを観察する手法か、あるいはサイドビューを観察する手法のいずれかの手法を採ることが好ましい。
【0029】
セクタリアルビューを観察する手法によれば、セクタリアルビューにおいて、超音波伝搬方向カーソルを最小値(例えば−30°)から最大値(例えば30°)まで移動させながら、サイドビューにネジ部エコー8の消失部6及び減肉エコー7が現れるか否かを観察する。続いて、減肉エコー7が最も明瞭に観察されるように、超音波伝搬方向カーソル9を前後移動させる。
【0030】
サイドビューを観察する手法によれば、サイドビューにおいて、探触子位置カーソル10を0°から360°まで移動しながら、セクタリアルビューに減肉エコー7及びネジ部エコー8の消失部6が出現するかどうかを観察する。減肉エコー7及びネジ部エコー8の消失部6が観察されたら、セクタリアルビューにおいて超音波伝搬方向カーソル9を減肉エコー7を通るように移動して、サイドビューにネジ部エコー8の消失部6及び減肉エコー7が現れるようにする。続いて、減肉エコー7が最も明瞭に観察されるように、セクタリアルビューにおいて超音波伝搬方向カーソル9を前後移動させる。セクトリアルビューで超音波伝搬方向カーソル9をセクタースキャンで設定された屈折角の刻み幅に合わせて、1刻み例えば1°ずつ減らすように移動させれば、同超音波伝搬方向θに対応するサイドビューが自動的に現れる。
【0031】
尚、図6(B)に示すマージしたサイドビューを用いる場合には、上述のように超音波伝搬方向カーソル9を移動させる必要がない。何故ならば、異なる超音波伝搬方向に対応するサイドニューが重なったものがマージしたサイドビューとなるためである。即ち、マージしたサイドビューにおいて、いきなりネジ部エコー8の消失部6が現れる。しかも、マージしたサイドビューを用いた観察は、サイドビューでネジ部エコー8の消失部6が不明瞭な場合においても、ネジ部エコー8の消失部6が明確に観察される可能性がある。その時には、マージしたサイドビューの観察が必要となる。しかしながら、サイドビュー及びマージしたサイドビューの何れにおいても、ネジ部エコー8の消失部6が明瞭であれば、サイドビューのみの観察で十分である。したがって、サイドビューでネジ部エコー8の消失部6を明瞭に観察できる場合においては、マージしたサイドビューでの観察は不要である。仮に、サイドビューとマージしたサイドビューとからそれぞれ得られるネジ部エコー8の消失部6の最大幅に対応する軸方向位置の値が異なるときには、両者の平均値を減肉の軸方向位置とする。
【0032】
次いで、減肉エコー7の消失位置における超音波伝搬方向α0を決定する(S3:図3(A),図7参照)。超音波伝搬方向α0は、正確さは特に問題とはならず、セクタリアルビューにおいて減肉エコー7が観察されなくなる超音波伝搬方向より大きな角度にすれば足りる。例えば、図7に示すように、サイドビューの探触子位置カーソル10を左から右へ移動させること、即ち探触子回転角を変化させることにより、セクトリアルビューに減肉エコー7が出現すると、セクトリアルビューで超音波伝搬方向カーソル9を振って、サイドビューに現れる減肉エコー7を観察する。そして、セクトリアルビューだけに減肉エコー7が出現し、サイドビューには減肉エコーが出現しない状況から超音波伝搬方向9を1°ずつ減らしてサイドビューにも減肉エコーが出現する超音波伝搬方向カーソル9の位置を超音波伝搬方向α0として決定する。
【0033】
そこで、セクトリアルビューにおいて超音波伝搬方向をα(=α0)に設定する(ステップ4)。
【0034】
次いで、図8に示すように、超音波伝搬方向αに対応するサイドビューにおいて減肉エコー7の最大振幅値MaxAmp(α)を読みとる(ステップ5)。最大振幅値の読みとりは、例えば図8(B)に示すように、サイドビューに現れた減肉エコー7をカーソルの枠11で囲むと、同エコーに対応する最大振幅値がフェーズドアレイ装置に搭載されたソフトウェア(例えばZetec社製TomoScan 3に搭載されたTomoView )によって自動的に算出され、その値が表示される。そこで、その値を読みとり、現在の超音波伝搬方向αに対応する減肉エコー7の最大振幅値として入力手段を介してコンピュータに入力し、メモリに記憶させる。
【0035】
そして、(α−Δα)が0より小さいか否かを判断し(ステップ6)、0より小さくなければ(ステップ7)、再びステップ4の前に戻り、ステップ4〜ステップ6を繰り返す。このとき、超音波伝搬方向カーソル9を例えば1°ずつ減らすように移動させて、各角度即ち超音波伝搬方向に対応する最大の振幅値を読みとり(図8〜図9参照)、各々コンピュータのメモリに取り込む。
【0036】
そして、(α−Δα)が0より小さいか否かを判断して(ステップ6)、小さいと判断されたときには減肉エコーの最大振幅値MaxAmp(α)の中からもっとも大きな最大値Max(MaxAmp(α))を求めてから、その半値に対応する超音波伝搬方向θを求める(ステップ8)。上述のステップ4〜6を繰り返すと、異なる超音波伝搬方向に対応する減肉エコー最大振幅値がそれぞれ得られる。そこで、それら最大振幅値の中からもっとも大きな最大振幅値Max(MaxAmp(α))を求め、その半値に対応する超音波伝搬方向を求める。前述の半値に対応する超音波伝搬方向がセクタースキャンで設定された屈折角の刻み幅の間にある場合には、半値を挟んで刻み幅の大きな値の方の超音波伝搬方向と小さな値の方の超音波伝搬方向の値を利用して線形補間で半値に対応する伝搬方向を求める。具体的には、例えば、(yθ-y1)/(y2-y1)=(xθ-x1)/(x2-x1)から、半値が対応する超音波伝搬方向θを求める。尚、Δαはセクタースキャンで設定された屈折角の刻み幅である。ここで、超音波の反射特性から超音波ビームが角部に当たる超音波伝搬方向αで、減肉エコーの振幅が最大になる。図1に示すように、超音波ビームが最も深い減肉部に当る場合の超音波伝搬方向θがαより小さい。このことから、超音波伝搬方向α0としては、αより大きな角度を排除することができる。
【0037】
そして、MaxAmp(α)の最大値Max(MaxAmp(α))の半値に対応する超音波伝搬方向θ即ち屈折角が求まると、この屈折角θと減肉部の最深部の軸方向長さlとを利用して、減肉部5の最大深さdを中央処理装置において数式1の演算により求める(ステップ9)。
[数1]
d=R−L・tan(θ)
ここで、ボルトの半径Rは予めステップ1で実測されているが、場合によっては設計値を利用しても良い。そして、このボルトの半径Rは、減肉深さを算出するときに、メモリから読み出される。
【0038】
ここで、減肉部5の最大深さdが求まると、さらに減肉形状並びに面積を推定することもできる。例えば、減肉面積を推定するには、図10に示すように、ネジ部エコー8の消失部6の最大幅を得たサイドビューまたはマージしたサイドビューから減肉5の周方向のスタート位置Φ1及びエンド位置Φ2をそれぞれ読み取る。そして、ネジ部エコー8の消失部6の最大幅位置から得られたスタート位置Φ1とエンド位置Φ2、並びに減肉部5の最大深さ部分のボルト中心からの長さr(ボルト半径から減肉最大深さdを減算したもの)で図10(A)若しくは(B)を作図する。そして、図10(A)に示すような180°未満の角度の扇形の減肉の場合には、数式2
[数2]
減肉面積=R・R・(Φ2-Φ1)/2-R・r・sin[(Φ2-Φ1)/2]
から、減肉面積を求める。
また、図10(B)に示すような180゜以上の角度の扇形の減肉の場合には、減肉によって残されたボルトの断面が図10(C)に示されるものと考えられ、さらにそれは図10(C)に近似していることから、数式3
[数3]
減肉面積=R・R・(Φ2-Φ1)/2-R・rl・sin[(Φ2-Φ1)/2]
ここで、r1=R・cos[(Φ2-Φ1)/2]
から求められる。
【0039】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【実施例】
【0040】
まず、フェーズドアレイ超音波探傷法における基礎ボルトのネジ部の減肉の有無の判断とエコー消失現象による減肉位置の同定について実験を行った。本実験では図11 及び12に示すような2種類、計11 本の試験体を使用した。図11に示す試験体はボルトのみであるのに対して、図12に示すのはコンクリート中に埋め込まれるボルトを模擬する試験体である。以下、それぞれボルト試験体と埋め込みボルト試験体と呼ぶ。ボルトの材質は炭素鋼SS41-Bで、直径、長さ及びネジ部の長さはそれぞれ30mm、300mm及び120mmである。図11及び12に示すように、ボルト試験体No.1に欠陥を付与せず、ボルト試験体RB-1及びRB-2に深さ5mmのスリットを加工した。そのほかの試験体には局部減肉及び全周減肉を模擬した人工欠陥を付与した。また、図11及び12に示すように、欠陥個所はネジ部にあるものもあれば、ネジ部から離れたものもある。各試験体に付与した欠陥の詳細を表1に示す。表中の欠陥位置、欠陥長さ及び欠陥深さはそれぞれボルトの上端面から欠陥中心までの距離、ボルト軸方向における長さ及び軸方向に垂直な方向における最大深さを指す。
【0041】
【表1】
【0042】
(測定方法及び測定条件)
Zetec社製のTomoScan 3というフェーズドアレイ装置を測定に用いた。測定条件の設定、データ集録及び結果分析にはTomoView2.29というソフトウェアを利用した。32エレメントの周波数5MHz及び2MHzのフェーズドアレイ探触子をそれぞれ用いて、ボルト試験体及び埋め込みボルト試験体を測定した。振動子の幅及び間隔はそれぞれ0.5mm及び0.1mmである。振動子の長さは通常10mm程度であるが、ここでボルトの直径を考慮して20mmと決定した。超音波探傷試験は、フェーズドアレイ探触子3を図4に示す回転治具に取り付けてから検査対象となるボルトに装着し、回転ハンドル14を回すことにより、探触子3をボルトの中心軸周りに回転させることにより行った。探触子位置はロータリーエンコーダによりコンピュータに順次入力される。尚、ロータリーエンコーダの分解能は0.1°である。
【0043】
探傷条件を表2に示す。幅100ns (5MHzの場合)あるいは250ns(2MHz の場合)、電圧50Vのパルスを各振動子に印加して試験体に超音波を入射した。探触子で受信された超音波エコーをハイパスフィルターとローパスフィルターを掛けずにデジタイザーによってA/D 変換し、パソコンに保存した。デジタイザー周波数、感度(ゲイン)、繰り返し周波数はそれぞれ50MHz、35dB、2000Hzである。ピッチ0.5°でボルトの中心軸周りに探触子を一周回転させた。以下の要領で測定を行った。
【表2】
【0044】
(1) 探傷感度を決定する。測定対象となる試験体の底面エコーを基準に探傷感度を決定した。探傷感度が低かった場合、ソフトウェア(TomoView)のアナリシスモードでソフトゲインによって調整する。
(2) 探触子3を図4に示す冶具の探触子取付用フレーム13に装着してその冶具を探傷する試験体・ボルトに固定する。探触子及びボルト上端面の中心が重なるように探触子位置を調整する。
(3) TomoView を介してTomoScan 3をセッティングする。まず探傷モードをフェーズドアレイのパルスエコーに設定する。続いて、表2に示す測定条件と上述したパラメータを入力する。データ解析の際にビーム路程を校正するために、底面エコーが観察されるようにビーム路程の範囲を設定する。
(4) 探触子の探傷開始位置をマークしてから測定を行い、データを収録する。
(5) TomoView のアナリシスモードで収録したデータを解析する。
【0045】
(測定結果)
各試験体における測定結果を図13〜23に示す。各図の上下はそれぞれ周波数5MHz及び2MHzの探触子に対応する。図中のBE、DE及びREはそれぞれ底面エコー、遅れエコー及び欠陥による多重反射のエコーを表す。BS及びMBSの縦軸はビーム路程を、横軸は探触子位置を表す。ほかの記号の意味は前述の通りである。括弧内の数字はそのスコープに適用されたソフトゲインである。探触子の開始位置は0°、一周回転した後の位置は360°とする。因みに、BS及びMBSにおける横軸目盛ラベルにあるmmはソフトウェアのバグで、「°」の間違いである。
【0046】
図13に示すように、健全な埋め込みボルト試験体においてネジエコー、底面エコー及び遅れエコーが明瞭に観察される。但し、周波数5MHzの場合、ネジエコーが周波数2MHzよりくっきりと見える。これは周波数が高いほど波長が短いからである。一方、図14〜23に示すように、周波数5MHzの探触子を用いた場合、試験体にある全ての欠陥からのエコーが明瞭に観察される。ボルト試験体と埋め込みボルト試験体の結果を比較すると、埋め込みによる欠陥検出の影響がないことが判った。それに対して、周波数2MHzの探触子の場合、ボルト試験体における全ての欠陥を検出できたものの、埋め込みボルト試験体No.5の局部減肉2を検出できなかった。
【0047】
(1) 試験体No.1、No.4-1、No.4-2及びNo.8における底面エコーは縦軸300mmのところに出現するのに対して、ほかの試験体の底面エコーは300mm強のところに観察される。これは各試験体における音速の差異によるものと考えられる。この差異を校正するために各試験体の底面エコーの出現位置を300mmと見なした上で、測定結果を分析する。
【0048】
(2) 図14及び15に示すように、スリットによる欠陥エコーのみならずスリットでの多重反射によるエコーも検出された。
【0049】
(3) 減肉の場合には、減肉エコーが実際の減肉位置より遠いところに出現する。図17、18、19、20及び23に示すように、周波数5MHzの探触子を用いてネジ部にある減肉を測定する場合、ネジエコーの一部が消失する現象が観察される。この現象を利用して減肉の長さ及び位置を推定することができる。具体的には、BS或いはMBSの縦軸におけるネジエコーの消失長さを減肉長さ、横軸における最大の消失幅に対応するビーム路程を減肉位置とする。しかしながら、周波数2MHz の場合、波長が長いためネジエコー消失が明瞭に観察されていない。
【0050】
(4) 図14 及び15 に示すように、スリットがネジ部にある場合、ネジエコーが消失せずスリットからのエコーがネジエコーと重なる。減肉及びスリットによるネジエコーの差異を利用して、ネジ部における減肉及び割れの識別が可能と考えられる。また、全周減肉からのエコーはBS或いはMBSにおいて0〜360°にわたり観察されるのに対して、局部減肉からのエコーは限られた範囲しか観察されない。
【0051】
一例として、ボルト試験体No.5-1 の測定結果を分析する。上述のことを踏まえて、図17 から容易に同試験体のネジ部に一個の局部減肉があると判断できる。また、同図からネジエコーの消失長さ及び最大の消失幅に対応するビーム路程がそれぞれ22.0mm及び72.0mmと読み取れる。
【0052】
底面エコーの出現位置310mm を300mm と校正すると、同局部減肉の位置及び長さはそれぞれ69.7mm 及び21.3mm と推定できる。同様に、図13 〜 23 から推定した各試験体における欠陥の性状を表3に示す。欠陥エコー位置及び欠陥位置は欠陥または減肉エコーのビーム路程及び測定結果から推定した欠陥位置を意味する。
【表3】
【0053】
ネジエコーの消失を利用して推定した欠陥位置及び欠陥長さの値に下線が付いている。表中の×は推定できないことを表す。表3に示すように、ネジ部にある欠陥は割れか減肉の識別ができるものの、それ以外の欠陥(ネジ部にない欠陥)については、全周にわたるものか否かしか判断できない。試験体RB-1 及びRB-2 における欠陥をすべて検出でき、位置も正確に推定できた。それ以外の試験体については、表1及び3を比較すると、欠陥エコー位置は実際の欠陥位置に比べて値が大きくなることが判る。試験体No.4-1 及び4-2 において、実際の欠陥位置が同じであるにも関わらず、欠陥エコー位置がそれぞれ165mm 及び140mm と大きく異なる。これはそれぞれの欠陥深さが5mm 及び10mm と違うことによるものと考えられる。即ち、欠陥エコー位置は欠陥性状に大きく依存することが判った。また、ネジ部にある減肉については、周波数5MHz の測定結果から推定した減肉の位置及び長さの最大誤差はそれぞれ3.6%及び14.3%である。一方、上述の理由から周波数2MHz の場合には、殆どの減肉の位置及び長さを正確に推定することができない。
【0054】
以上のことから、(1)ネジエコーが消失するか否かを踏まえて、ネジ部における減肉及び割れの識別が可能であること、 (2)ネジエコーの消失長さ及び最大消失幅に対応するビーム路程から、ネジ部にある減肉の長さ及び位置を推定することができること、(3)減肉のエコー位置は欠陥の性状に大きく依存すること及び(4) 周波数2MHzの探触子より、周波数5MHz のほうが基礎埋め込みボルト試験体の減肉検出に適することが明らかになった。また、上述のように、減肉がネジ部から離れた場合、測定結果から減肉位置などを推定できない問題が生ずるので、埋め込み基礎ボルトにはその全長にネジを切ることが好ましい。
【0055】
(数値解析)
試験体No.8 の局部減肉を対象に図24 に示す解析モデルを用いて、有限要素法による超音波伝搬解析を行った。簡単化のため、平面ひずみ問題と仮定し、ボルトのネジ部を無視した。ボルト長さ及び減肉深さをそれぞれ200mm及び5mmとした。図11及び12を参考に図24 に示すような減肉形状を決定した。ヤング率、ポアソン比及び質量密度はそれぞれ270MPa/m、0.285及び7,900kg/mである。要素サイズは0.05mmで、時間刻みは2nsである。
【0056】
ボルトの上端面に中心周波数2MHz の力を与えて、ボルト内を屈折角10°で伝搬する縦波を励起させる。解析により予測されたAスコープを図25に示す。同図に示すように、底面エコー及び減肉エコーがそれぞれ200mm及び134mmのところに出現する。また、底面エコーの後に遅れエコーも観察される。これは図19に示す測定結果と良く一致する。欠陥エコーを突き止めるため、励起後の異なる時刻における超音波伝搬の様子を図26に示す。図中のL、RL、RS、MS及びML はそれぞれ縦波、縦波反射波、横波反射波、横波モード変換波及び縦波モード変換波を表す。同図に示すように、励起された縦波が減肉に当たると横波モード変換波が生じる。この横波はボルトの左側面に当たって、横波反射波が発生する。この横波が減肉でモード変換され、縦波モード変換波が生じる。この縦波はボルトの上端面に向かって伝搬し、減肉エコーとして受信される。つまり、減肉エコーは図27(図1)に示すような経路を経て受信されることが明らかになった。即ち、励起された縦波がまず減肉でモード変換され、そして反対側の側面で反射される。続いて、横波反射波が減肉で再びモード変換されることにより、生じた縦波モード変換が減肉エコーとして観察される。また、図25 に示すN及びMエコーは、それぞれ縦波反射波RL及び縦波Lがボルトの左側面及び減肉に当たることにより、発生された異なる縦波によるものである。試験体の場合、それらの縦波がネジ部で散乱されるためエコーとして観察されない。
【0057】
(1) 周波数5MHzの探触子の場合、各試験体の底面エコー及び欠陥エコーが明瞭に観察され、埋め込みによる欠陥検出への影響がないことが判った。それに対して、周波数2MHz の場合、ボルト試験体における全ての欠陥を検出できたが、埋め込みボルト試験体にある局部減肉を一つ検出できなかった。
(2) 割れからの欠陥エコー位置は実際の欠陥位置と良く一致するものの、減肉からの減肉エコー位置は実際の欠陥位置より遠くに出現する。これは、探触子により励起された縦波の減肉でのモード変換によるものということを超音波伝搬シミュレーションにより明らかにした。
(3) 周波数5MHz の場合、ネジ部にある減肉によりネジエコーの一部が消失する現象が観察された。この現象を利用して減肉の位置及び長さをそれぞれ3.6%及び14.3%以内の誤差で推定できた。一方、周波数2MHz の場合、ネジ部に減肉があってもネジエコーがあまり消失しない。
(4) 周波数5MHz の場合、ネジ部にスリットがあってもネジ部エコーが消失せずスリットからの欠陥エコーと重なって出現する。このような減肉及びスリットによるネジエコーの差異を利用して、ネジ部における減肉及び割れの識別が可能と考えられる。また、全周減肉の場合、BS或いはMBSにおいて減肉エコーが0〜360°にわたり観察されるのに対して、局部減肉の場合、減肉エコーが限られた範囲しか観察されない。
(5) 減肉の位置が同じであるにも関わらず減肉深さによって減肉エコー位置が大きく変化することから、エコーの出現位置は減肉深さに大きく依存することが明らかになった。
(6) 周波数5MHzの探触子は周波数2MHzの探触子より、基礎ボルトにける減肉の検出に適することが明らかになった。
【0058】
次に、人工的に減肉を形成した直径36mmのボルトを用いて本発明方法によって減肉深さを推定した。
まず、ボルトの半径Rを測定する。ここで、ボルトの直径Rはノギスによる測定で18mmであった。次に、ボルト1の端面2に治具を介してフェーズドアレイ式探触子3を密着させて回転可能に装着し、連続的に屈折角を変化させながらボルト中心を通る直径方向に超音波ビームを入射してボルト1のネジ部4から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンを行い、セクトリアルビューとサイドビュー並びに必要に応じてマージされたサイドビューを構成する。
【0059】
そして、ネジ部エコー8の消失部6の最大幅の位置を減肉部5のボルト端面2からの軸方向位置とみなし、軸方向長さlをサイドビューあるいはマージしたサイドビューから読みとる。図6に示すように、サイドビューからネジ部エコー8の消失部6の最大幅に対応する軸方向位置が99mmであることから、同減肉部5の最深部の軸方向位置を99mmとする。因みに、マージしたサイドビューからも同様な結果が得られた。そこで、画像から読みとった軸方向長さlの値(99mm)を入力手段を用いてコンピュータに入力する。
【0060】
次いで、サイドビューの探触子カーソル10を左から右へ移動する(図7(B)参照)。そして、セクトリアルビューに減肉エコー7が出現すると、セクトリアルビューで超音波伝搬方向カーソル9を振って(図7(A)参照)、サイドビューに現れる減肉エコーを観察する。本実験の場合には、図7に示すように超音波伝搬方向が13°のとき、サイドビューで減肉エコー7が観察されるが、それより小さな伝搬方向になると、サイドビューで減肉エコー7が観察されるようになった。そのため、減肉エコーの消失位置における超音波伝搬方向α0を13とした。
【0061】
そして、最初にα=α0であるので、セクトリアルビューにおいて超音波伝搬方向αを13°に設定する。
【0062】
そして、セクタースキャンで設定された屈折角の刻み幅でセクトリアルビュー上で超音波伝搬方向カーソル9を角度が小さくなる方向に振って減肉エコー7に対応する最大振幅値を順次読みとる。例えば、超音波伝搬方向カーソルを10°に合わせて、自動に同方向に対応するサイドビューが現れる(図10参照)。図10(B)に示すように、減肉エコー7を枠11で囲んで同エコー7に対応する最大振幅値がフェーズドアレイ装置に搭載されたソフトウェアによって自動的に算出され、その値46.5%が表示された。また、同様に伝搬方向が9°の場合、減肉エコー最大振幅値が70.3%と読み取った。
【0063】
上述の最大振幅値の読みとりを繰り返すと、表4に示すように異なる超音波伝搬方向に対応する減肉エコー最大振幅値が得られる。
【表4】
【0064】
表4により、伝搬方向が8°の場合、最大振幅が最大となり、その値が78.1%である。その半値39.05%が伝搬方向が6°と7°の間にある。伝搬方向が6°と7°の値を利用して線形補間で39.05%に対応する伝搬方向を求める。具体的には、数式4から半値の超音波伝搬方向が算出される。半値39.05%が対応する超音波伝搬方向θ=6.025°と算出された。
[数4]
(yθ-y1)/(y2-y1)=(xθ-x1)/(x2-x1)
【0065】
そこで、この超音波伝搬方向θと、減肉部の軸方向長さlと、ボルト半径Rとから、最大減肉部の最大深さdをd=R-L・tan(θ)より算出する。
【0066】
この結果、
d=R-L・tan(θ)
=18−99・tan(6.025)
=7.55mm
と得られた。
【0067】
この手法を適用し、上述の試験体No.5-1、No.5-1、No.8-2、No.8の4本の他、軸方向長さ71mmの所に模擬減肉を有する直径30mmおよび軸方向長さ96mmの所に模擬減肉を有する36mmのボルト試験体の計8本のボルトについて減肉深さの推定を行った。同時に、それら8本のボルトの模擬減肉の深さをレーザー計測によって実測した。その結果を図5に示す。この結果から、本発明のボルト減肉検査方法によると、最大誤差1.84mm及び平均2乗誤差1.06mmで減肉深さを高精度に推定できることが証明された。この測定精度は、超音波探傷においては極めて高い精度であるといえる。
【符号の説明】
【0068】
1 基礎ボルト
2 ボルトの端面
3 フェーズドアレイ探触子
4 ネジ部
5 減肉部
6 ネジ部エコー消失部
7 減肉エコー
8 ネジ部エコー
9 超音波伝搬方向カーソル
10 探触子位置カーソル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用状態のボルトの端面にフェーズドアレイ式探触子を密着させて1回転させる間に、前記ボルト中心を通る直径方向に連続的に屈折角を変化させながら超音波ビームを入射すると共に前記ボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンして前記超音波エコーから作成されるボルトネジ部のセクトリアルビー及びサイドビューから減肉部を検出する使用中のボルトネジ部の検査方法において、
前記サイドビューからネジ部の指示が消失した箇所を減肉部位として特定し、その指示消失部位の最大幅部分の位置を前記ボルトの端面から減肉部位までの軸方向の減肉部位の位置と見なして減肉部位のボルト端面からの軸方向距離lを求めるステップと、
前記サイドビューに現れる減肉エコーの指示から各超音波伝搬方向毎の減肉エコーの最大振幅値を読みとり、それら各超音波伝搬方向毎の最大振幅値の中からもっとも大きな最大振幅値を求めるステップと、もっとも大きな前記最大振幅値の半分の角度を屈折角θとして求めるステップと、
前記屈折角θと前記減肉部位のボルト端面からの軸方向距離lとを用いて減肉部位の半径rを数式1から求めるステップと、
前記減肉部位の半径rと予め求められている前記ボルトの直径Rとの差分から前記減肉部位の深さdを求めるステップとから成る使用中のボルトネジ部の検査方法。
r=l・tanθ (式1)
【請求項2】
前記フェーズドアレイ式探触子には周波数5MHzの探触子を用いるものである請求項1記載の使用中のボルトネジ部の検査方法。
【請求項3】
前記ネジ部エコーの消失部の最大幅位置に対する前記減肉エコーの出現位置の遅れとの関係で減肉深さを定性的に判断するものである請求項1または2記載の使用中のボルトネジ部の検査方法。
【請求項1】
使用状態のボルトの端面にフェーズドアレイ式探触子を密着させて1回転させる間に、前記ボルト中心を通る直径方向に連続的に屈折角を変化させながら超音波ビームを入射すると共に前記ボルトのネジ部から反射する超音波エコーを受信するセクタスキャンして前記超音波エコーから作成されるボルトネジ部のセクトリアルビー及びサイドビューから減肉部を検出する使用中のボルトネジ部の検査方法において、
前記サイドビューからネジ部の指示が消失した箇所を減肉部位として特定し、その指示消失部位の最大幅部分の位置を前記ボルトの端面から減肉部位までの軸方向の減肉部位の位置と見なして減肉部位のボルト端面からの軸方向距離lを求めるステップと、
前記サイドビューに現れる減肉エコーの指示から各超音波伝搬方向毎の減肉エコーの最大振幅値を読みとり、それら各超音波伝搬方向毎の最大振幅値の中からもっとも大きな最大振幅値を求めるステップと、もっとも大きな前記最大振幅値の半分の角度を屈折角θとして求めるステップと、
前記屈折角θと前記減肉部位のボルト端面からの軸方向距離lとを用いて減肉部位の半径rを数式1から求めるステップと、
前記減肉部位の半径rと予め求められている前記ボルトの直径Rとの差分から前記減肉部位の深さdを求めるステップとから成る使用中のボルトネジ部の検査方法。
r=l・tanθ (式1)
【請求項2】
前記フェーズドアレイ式探触子には周波数5MHzの探触子を用いるものである請求項1記載の使用中のボルトネジ部の検査方法。
【請求項3】
前記ネジ部エコーの消失部の最大幅位置に対する前記減肉エコーの出現位置の遅れとの関係で減肉深さを定性的に判断するものである請求項1または2記載の使用中のボルトネジ部の検査方法。
【図1】
【図2】
【図5】
【図11】
【図12】
【図24】
【図25】
【図27】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図26】
【図2】
【図5】
【図11】
【図12】
【図24】
【図25】
【図27】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図26】
【公開番号】特開2011−163773(P2011−163773A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23348(P2010−23348)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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