説明

侵入検知装置および侵入検知方法

【課題】誤警報を防止し、簡単な構成で、侵入行為を検知することができるようにする。
【解決手段】侵入検知装置1は、自動車の車内への侵入を検知する装置である。電波センサ11は、物体に対して送信した信号と、その信号が物体に反射して返ってきた信号から得られるドップラ信号を出力信号として出力する。分散算出部23は、出力信号が2値化された2値化信号から生成された出力信号の周波数のヒストグラムに基づいて、出力信号の所定期間の周波数の分散値を算出する。振幅値抽出部25は、出力信号の振幅値の所定期間における最大値を抽出する。侵入判定部26は、出力信号の所定期間における周波数の分散値および最大値のそれぞれを、対応する閾値と比較することにより、車内への侵入の有無を判定する。本発明は、例えば、自動車に搭載される車載装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入検知装置および侵入検知方法に関し、特に、誤警報を防止し、簡単な構成で、侵入行為を検知することができるようにする侵入検知装置および侵入検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、自動車そのものの盗難や、車内の装備の盗難等を防止するため、不審者の侵入を検出するセキュリティシステムを備えるものがある。
【0003】
セキュリティシステムの車内への不審者の侵入を検出するセンサには、例えば、電波式の検出センサ(以下、単に、電波センサと称する)が用いられる。電波センサは、所定の周波数の信号(電波)を送信し、その信号が所定の物体に反射して返ってくる信号を受信して、受信した信号(受信信号)と送信した信号(送信信号)の周波数の差から物体を検出する、ドップラ効果を利用したセンサである。
【0004】
電波センサでは、人の侵入行為とは関係のない、ボールがぶつかる等の衝撃に対しても人の侵入と同様に反応し、誤警報を出力してしまうという問題がある。この誤警報を防止する手法として、電波センサの出力信号の大きさが所定の閾値以上で、かつ、その信号が一定時間継続した場合にのみ、人の侵入行為と判断することにより、ボールの衝撃等と侵入行為とを判別する方法が、例えば、特許文献1で提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されている方法は、所定の閾値以上の出力信号が一定時間継続したことを検出する包絡線検波回路を用いているため、その包絡線検波回路の分だけ、製造コストが大きくなってしまう。
【0006】
また、妨害波等の外乱要素による誤警報を防止するため、電波センサの出力信号の周波数の分散情報に着目し、分散値が所定の値以上となったときに、人の侵入行為と判断する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−5062号公報
【特許文献2】特開2004−181982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電波は、自動車の窓を通して車外へも漏洩し、電波センサは、車外の物体に反射した信号も受信するため、特許文献2で提案されている方法では、自動車の周辺を移動する人の動きまで検知してしまい、それによる誤警報が発生してしまう。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、誤警報を防止し、簡単な構成で、侵入行為を検知することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の侵入検知装置は、自動車の車内への侵入を検知する侵入検知装置であって、物体に対して送信した信号と、その信号が前記物体に反射して返ってきた信号から得られるドップラ信号を出力信号として出力する検出センサと、前記出力信号の所定期間の周波数の分散値を算出する分散算出手段と、前記出力信号の前記所定期間の振幅値を抽出する振幅値抽出手段と、前記出力信号の前記所定期間の周波数の分散値および振幅値のそれぞれを、対応する閾値と比較することにより、前記車内への侵入の有無を判定する判定手段とを備える。
【0011】
本発明の侵入検知装置においては、物体に対して送信した信号と、その信号が物体に反射して返ってきた信号から得られるドップラ信号が出力信号として出力され、出力信号の所定期間の周波数の分散値が算出され、出力信号の所定期間の振幅値が抽出され、出力信号の所定期間の周波数の分散値および振幅値のそれぞれが対応する閾値と比較されることにより、車内への侵入の有無が判定される。
【0012】
これにより、誤警報を防止し、簡単な構成で、侵入行為を検知することができる。
【0013】
前記検出センサは、例えば、電波センサまたは超音波センサにより構成され、前記分散算出手段は、例えば、分散算出部により構成され、前記振幅値抽出手段は、例えば、振幅値抽出部により構成され、前記判定手段は、例えば、侵入判定部により構成される。この分散算出部、振幅値抽出部、および侵入判定部は、例えば、CPU,ROM,RAM,ASICなどにより構成される。
【0014】
前記分散算出手段には、前記出力信号を2値化した2値化信号の1周期時間を前記所定期間内で計測させ、計測された1周期時間それぞれを周波数に変換させて生成された周波数のヒストグラムに基づいて、前記出力信号の所定期間の周波数の分散値を算出させることができる。これにより、出力信号の周波数の解析を、より簡単に行うことができる。
【0015】
前記判定手段には、前記出力信号の前記所定期間の周波数の分散値が第1の閾値を超えており、かつ、前記出力信号の前記所定期間の振幅値が第2の閾値を超えている場合に、前記車内への侵入が有ると判定させることができる。これにより、誤警報を防止し、簡単な構成で、侵入行為を検知することができる。
【0016】
前記判定手段には、前記出力信号の前記所定期間の周波数の分散値が前記第1の閾値を超えていない場合に、瞬間的な振動を検知したと判定させることができる。これにより、侵入行為を検知する場合の誤警報を防止することができる。
【0017】
前記判定手段には、前記出力信号の前記所定期間の振幅値が前記第2の閾値を超えていない場合に、車外での人の動きを検知したと判定させることができる。これにより、侵入行為を検知する場合の誤警報を防止することができる。
【0018】
本発明の侵入検知方法は、物体に対して送信した信号と、その信号が前記物体に反射して返ってきた信号から得られるドップラ信号を出力信号として出力する検出センサを用いて、自動車の車内への侵入を検知する侵入検知装置の侵入検知方法であって、前記出力信号の所定期間の周波数の分散値を算出し、前記出力信号の前記所定期間の振幅値を抽出し、前記出力信号の前記所定期間の周波数の分散値および振幅値のそれぞれを、対応する閾値と比較することにより、前記車内への侵入の有無を判定する。
【0019】
本発明の侵入検知方法においては、物体に対して送信した信号と、その信号が物体に反射して返ってきた信号から得られるドップラ信号である出力信号の所定期間の周波数の分散値が算出され、出力信号の所定期間の振幅値が抽出され、出力信号の所定期間の周波数の分散値および振幅値のそれぞれが対応する閾値と比較されることにより、車内への侵入の有無が判定される。
【0020】
これにより、誤警報を防止し、簡単な構成で、侵入行為を検知することができる。
【0021】
この侵入検知方法は、例えば、分散算出部が、物体に対して送信した信号と、その信号が物体に反射して返ってきた信号から得られるドップラ信号である出力信号の所定期間の周波数の分散値を算出し、振幅値抽出部が、出力信号の所定期間の振幅値を抽出し、侵入判定部が、出力信号の所定期間の周波数の分散値および振幅値のそれぞれを、対応する閾値と比較することにより、車内への侵入の有無を判定するステップにより構成される。この分散算出部、振幅値抽出部、および侵入判定部は、例えば、CPU,ROM,RAM,ASICなどにより構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、誤警報を防止し、簡単な構成で、侵入行為を検知することができるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した侵入検知装置による侵入検知処理の概念について説明する図である。
【図2】本発明を適用した侵入検知装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図3】ヒストグラムの生成方法について説明する図である。
【図4】侵入検知装置の量子化部と振幅値抽出部の処理を説明する図である。
【図5】侵入検知処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初に、図1を参照して、本発明を適用した侵入検知装置による侵入検知処理の概念について説明する。
【0025】
本発明の侵入検知装置1(図2)は、自動車に搭載され、車内への不審者の侵入を検知した場合に警報信号を出力する装置である。
【0026】
侵入検知装置1には、[背景技術]で説明したように、人の侵入行為とは関係のない、ボールがぶつかる等の衝撃に対しては、警報信号を出力しないことが必要とされる。また、自動車の周辺を移動する人の動きに対して、警報信号を出力しないことも必要である。
【0027】
図1上段に示される3つのグラフは、人の侵入と判断すべき「車内の人の動き」と、人の侵入と判断すべきではない「ボールの衝撃」および「車外の人の動き」があった場合に、電波センサが出力する出力信号(出力電圧)を時系列に示した波形である。各グラフの横軸は、時間[s]を表し、縦軸は出力信号の電圧[V]を表す。なお、図1では、4秒間の出力信号が示されている。
【0028】
また、図1下段に示される3つのグラフは、上段の対応する出力信号の周波数の分布を表すヒストグラムである。各グラフの横軸は、周波数[Hz]を表し、縦軸は度数[回]を表す。なお、正常時(物体未検出時)の出力信号は度数としてカウントせず、一定レベル以上の出力信号のみに対してヒストグラムが生成されている。
【0029】
図1に示される6つのグラフを比較すると、次のようなことが言える。
【0030】
ボールが衝突したときには、車体の振動が短時間(100乃至200msec程度)であるため、出力信号の電圧の振れは、短時間で収束する。従って、ボールが衝突したときに生成されるヒストグラムの度数の合計は、他と比較して極端に少ない。また、観測される周波数は所定の周波数に集中しており、周波数の分散値は小さくなっている。
【0031】
これに対して、車内の人の動きを検出したときには、人の侵入行為は1秒以上の時間がかかるため、出力信号の電圧が振れる時間は長く、また、人の身体と複雑に反射するため、電圧の振れもさまざまとなる。そのため、車内の人の動きを検出したときには、周波数の分散値は大きくなっている。この周波数の分散値の傾向については、車外の人の動きについても同様のことが言える。
【0032】
実験では、人の動きを検出した場合の周波数の分散値は、30乃至150[Hz]程度であり、ボールの衝撃のような瞬間的な振動の周波数の分散値は、0乃至10[Hz]程度であった。
【0033】
以上より、人の動きを検出した場合の周波数の分散値と、ボールの衝撃のような瞬間的な振動の周波数の分散値とを切り分ける閾値TH1(図示せず)を設定することができる。そして、出力信号の周波数の分散値が閾値TH1を超えているかを判定することにより、「人の動き」と、「ボールの衝撃」とを判別することができる。
【0034】
次に、「車内の人の動き」と「車外の人の動き」とを比較すると、どちらも人の動きであるので、出力信号の電圧が振れる時間は長く、周波数の分散値も大きくなる。従って、分散値の大小で、「車内の人の動き」と「車外の人の動き」とを判別することは困難である。
【0035】
そこで、出力信号の振幅に着目する。出力信号の振幅は検出対象から電波センサまでの距離に依存するため、検出対象としての人までの距離が長い(遠い位置にいる)「車外の人の動き」の方が、「車内の人の動き」より、振幅は小さくなる。
【0036】
従って、「車外の人の動き」と「車内の人の動き」とを切り分ける閾値TH2を設定することができる。そして、出力信号の振幅が閾値TH2を超えているか否かにより、「車内の人の動き」と、「車外の人の動き」とを判別することができる。例えば、図1の出力信号に対する閾値TH2の例が、図1において点線で示されている。
【0037】
なお、出力信号の振幅(出力電圧)は、電波センサの特性、感度設定により変わってくるため、閾値TH2は、電波センサごとに適切な値を設定することが必要である。
【0038】
以上のように、本発明の侵入検知装置1(図2)は、電波センサから得られた出力信号の周波数の分散値が所定の閾値TH1を超えているか否かにより、「人の動き」と、「ボールの衝撃」とを判別し、出力信号の振幅が所定の閾値TH2を超えているか否かにより、「車内の人の動き」と、「車外の人の動き」とを判別する。
【0039】
図2は、本発明を適用した侵入検知装置の一実施の形態の構成例を示している。
【0040】
図2の侵入検知装置1は、電波センサ11と信号処理回路12とから構成される。また、信号処理回路12は、2値化部21、ヒストグラム生成部22、分散算出部23、量子化部24、振幅値抽出部25、侵入判定部26、および閾値記憶部27により構成される。
【0041】
この信号処理回路12は、例えば、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)やASIC (Application Specific Integrated Circuit)などで構成することができる。
【0042】
電波センサ11は、所定の周波数の信号(電波)を送信し、送信した信号が所定の物体に反射して返ってくる信号を受信する。そして、電波センサ11は、受信した信号(受信信号)と送信した信号(送信信号)の周波数の差から、物体を検出するドップラ信号を出力する。出力信号としてのドップラ信号は、信号処理回路12の2値化部21と量子化部24に供給される。
【0043】
電波センサ11は、例えば、送信信号および受信信号としての電波を送受信するアンテナ、送信信号となる所定の周波数の信号を生成する発振回路、アンテナが受信した受信信号と送信信号とを乗算する乗算回路、乗算後の信号をローパス(Low Pass)処理するローパスフィルタ、ローパス処理して得られるドップラ信号を増幅して出力するアンプ等により構成される。
【0044】
なお、電波センサ11に代えて、超音波を送受信する超音波センサを採用してもよい。
【0045】
2値化部21は、電波センサ11から出力される出力信号を2値化する。2値化部21は、出力信号を所定の閾値電圧と比較するコンパレータで構成することができる。2値化された信号(2値化信号)は、ヒストグラム生成部22に供給される。
【0046】
ヒストグラム生成部22は、2値化部21から供給される2値化信号を用いて、所定期間の出力信号の周波数成分を抽出し、周波数のヒストグラムを生成する。ここで、出力信号の周波数成分を抽出する期間は、予め決められており、例えば、図1の例と同じ直近の4秒間とする。
【0047】
図3を参照して、ヒストグラム生成部22によるヒストグラムの生成方法について説明する。
【0048】
図3最上段の出力信号に対して、2値化部21が2値化して得られる2値化信号が、図3の上から2段目の信号である。この2値化信号が、ヒストグラム生成部22に供給される。
【0049】
ヒストグラム生成部22は、例えば、2値化信号の立下がりエッジを検出し、立下がりエッジの時間間隔を計測する。ここで計測された各時間間隔が1周期の時間(1周期時間)に相当する。図3では、1周期時間として、時間t1,t2,t3,・・・・が計測されている。
【0050】
そして、ヒストグラム生成部22は、計測された1周期時間t1,t2,t3,・・・のそれぞれを周波数f1,f2,f3,・・・に変換する。ヒストグラム生成部22は、変換されて得られた各周波数を、予め設定した周波数の区分に振り分け、区分ごとの度数(頻度)を求める。以上のようにして、ヒストグラム生成部22は、2値化部21から供給される2値化信号から、出力信号の周波数のヒストグラムを生成することができる。
【0051】
このように、2値化信号から、出力信号の周波数のヒストグラムを生成することで、出力信号の周波数の解析をより簡単に行うことができる。
【0052】
なお、立下りエッジではなく、立ち上がりエッジが検出される時間間隔を求めることにより、周波数を求めるようにしてもよい。
【0053】
図2に戻り、分散算出部23は、ヒストグラム生成部22により生成された出力信号の周波数のヒストグラムに基づいて、周波数の分散値を算出し、侵入判定部26に供給する。
【0054】
一方、量子化部24は、電波センサ11から出力される出力信号を、所定のビット数のデジタル値にA/D変換し、振幅値抽出部25に供給する。A/D変換後のデジタル値は、出力信号の振幅値に対応する。
【0055】
振幅値抽出部25は、量子化部24から供給される振幅値を、ヒストグラム生成部22がヒストグラムを生成する期間と同一の期間(本実施の形態では4秒間)だけ保持する。そして、振幅値抽出部25は、保持されている所定期間中の複数の振幅値のなかから最大値を抽出し、抽出された最大値を侵入判定部26に供給する。
【0056】
図4は、量子化部24と振幅値抽出部25の処理を示している。
【0057】
電波センサ11から出力される出力信号が、一定周期でサンプリングされ、デジタルの振幅値に変換される。そして、直近の4秒間の振幅値の最大値が振幅値抽出部25で抽出され、侵入判定部26に供給される。抽出される最大値は、図4において点線の丸で囲まれている部分(ピーク値)に相当する。
【0058】
以上により、直近の所定期間の同一の出力信号における、周波数のヒストグラムと振幅値の最大値とが求められ、図2の侵入判定部26に供給される。
【0059】
侵入判定部26は、閾値記憶部27に記憶されている閾値TH1および閾値TH2を用いて、電波センサ11から出力された出力信号が、「車内の人の動き」を検出したものであるか否かを判定する。
【0060】
具体的には、侵入判定部26は、分散算出部23から供給される周波数の分散値が閾値TH1を超えているかを判定することにより、「人の動き」と「ボールの衝撃」とを判別し、振幅値抽出部25から供給される振幅値の最大値が閾値TH2を超えているかを判定することにより、「車内の人の動き」と「車外の人の動き」とを判別する。そして、侵入判定部26は、「車内の人の動き」であると判別した場合、「車内の人の動き」を検出したとして、警報信号を出力する。警報信号は、例えば、自動車の制御ユニット(Electronic Control Unit)に供給される。
【0061】
図5のフローチャートを参照して、侵入検知処理について説明する。例えば、この処理は、運転者が、侵入検知装置1が搭載されている自動車のドアをロックして自動車から一定距離以上離れたとき、開始することができる。なお、電波センサ11による電波の送受信は、この処理が開始したときから、運転者が自動車に戻るまで継続して行われているものとする。
【0062】
初めに、ステップS1において、2値化部21は、電波センサ11から出力される出力信号を2値化する。
【0063】
ステップS2において、ヒストグラム生成部22は、2値化信号の立下がりエッジを検出することにより、2値化信号の1周期時間を順次計測する。
【0064】
ステップS3において、ヒストグラム生成部22は、計測された1周期時間それぞれを周波数に変換する。
【0065】
ステップS4において、ヒストグラム生成部22は、直近の4秒間の出力信号についての、周波数のヒストグラムを生成する。
【0066】
ステップS5において、量子化部24は、電波センサ11から出力される出力信号を、所定のビット数のデジタル値にA/D変換する。
【0067】
ステップS6において、振幅値抽出部25は、直近の4秒間の出力信号をA/D変換して得られた振幅値のなかから最大値を抽出し、侵入判定部26に供給する。
【0068】
なお、上述したステップS1乃至S4の処理と、ステップS5およびS6の処理は、並行して実行することができる。
【0069】
ステップS7において、侵入判定部26は、分散算出部23から供給された周波数の分散値が閾値TH1を超えているかを判定する。ステップS7で、周波数の分散値が閾値TH1を超えていないと判定された場合、処理は終了する。この場合は、「車内の人の動き」ではない、例えば、上述した「ボールの衝撃」のようなものを検出したと考えられる。
【0070】
一方、ステップS7で、周波数の分散値が閾値TH1を超えていると判定された場合、処理はステップS8に進み、侵入判定部26は、振幅値抽出部25から供給された振幅値、即ち、出力信号の最大値が閾値TH2を超えているかを判定する。
【0071】
ステップS8で、出力信号の最大値が閾値TH2を超えていないと判定された場合、処理は終了する。この場合は、「車内の人の動き」ではない、例えば、通行人の通過など「車外の人の動き」を検出したと考えられる。
【0072】
一方、ステップS8で、出力信号の最大値が閾値TH2を超えていると判定された場合、処理はステップS9に進む。ステップS9では、侵入判定部26は、「車内の人の動き」を検出したとして、警報信号を出力して、処理を終了する。
【0073】
図5の侵入検知処理は、運転者が自動車に戻るまで、継続的に実行することができる。
【0074】
以上のように、侵入検知装置1の侵入検知処理によれば、第1の判定として、電波センサ11から得られた出力信号の周波数の分散値が閾値TH1を超えているかを判定することにより、「人の動き」と「ボールの衝撃」とを判別し、第2の判定として、電波センサ11から得られた出力信号の最大値が閾値TH2を超えているかを判定することにより、「車内の人の動き」と「車外の人の動き」とを判別する。そして、最終的に「車内の人の動き」が検出されたと判定された場合、警報信号が出力される。
【0075】
この侵入検知装置1では、特許文献1で提案されている技術のように包絡線検波回路を用いなくてもよいため、簡単な回路構成で、侵入行為を検知することができる。
【0076】
また、「ボールの衝撃」および「車外の人の動き」を「車内の人の動き」から除外することができるので、誤警報も防止することができる。
【0077】
従って、侵入検知装置1によれば、誤警報を防止し、簡単な構成で、侵入行為を検知することができる。
【0078】
なお、上述した実施の形態では、振幅値抽出部25が、量子化部24から供給される振幅値を一定期間保持し、その保持されている振幅値のなかから最大値を抽出し、侵入判定部26に供給するようにしたが、本実施の形態の変形例として、振幅値抽出部25には、量子化部24から供給された振幅値のすべてを侵入判定部26に供給させるようにすることができる。この場合、侵入判定部26は、振幅値抽出部25から供給された振幅値のすべてについて閾値TH2と比較する。これにより、最大値に限らず、所定のレベル以上の振幅値であれば、車内の人の動きであると判定することができる。
【0079】
また、侵入検知装置1は、車内への人の侵入を最終的に検知すればよいので、「車内の人の動き」と判定された場合にのみ、所定の信号(警報信号)が出力されるようにしたが、上述したように、「ボールの衝撃」と「車外の人の動き」とを区別することもできるので、例えば、「車外の人の動き」が検出された場合に、自動車の所有者(運転者)が近づいてきたことを想定して、そのことを表す信号を出力するようにしてもよい。これにより、例えば、「車外の人の動き」を検出した出力信号を、ドアの開錠等を行うウェルカム動作を行わせるか判定するための認証処理のトリガ信号とすることができる。
【0080】
なお、上述した例では、「人の動き」以外の検出動作の例として「ボールの衝撃」が検出された例について説明したが、上述した侵入検知処理が、「ボールの衝撃」以外の動作も検出可能であることは言うまでもない。
【0081】
本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0082】
本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 侵入検知装置
11 電波センサ
12 信号処理回路
21 2値化部
22 ヒストグラム生成部
23 分散算出部
24 量子化部
25 振幅値抽出部
26 侵入判定部
27 閾値記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車内への侵入を検知する侵入検知装置であって、
物体に対して送信した信号と、その信号が前記物体に反射して返ってきた信号から得られるドップラ信号を出力信号として出力する検出センサと、
前記出力信号の所定期間の周波数の分散値を算出する分散算出手段と、
前記出力信号の前記所定期間の振幅値を抽出する振幅値抽出手段と、
前記出力信号の前記所定期間の周波数の分散値および振幅値のそれぞれを、対応する閾値と比較することにより、前記車内への侵入の有無を判定する判定手段と
を備える侵入検知装置。
【請求項2】
前記分散算出手段は、前記出力信号を2値化した2値化信号の1周期時間を前記所定期間内で計測し、計測された1周期時間それぞれを周波数に変換して生成された周波数のヒストグラムに基づいて、前記出力信号の所定期間の周波数の分散値を算出する
請求項1に記載の侵入検知装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記出力信号の前記所定期間の周波数の分散値が第1の閾値を超えており、かつ、前記出力信号の前記所定期間の振幅値が第2の閾値を超えている場合に、前記車内への侵入が有ると判定する
請求項2に記載の侵入検知装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記出力信号の前記所定期間の周波数の分散値が前記第1の閾値を超えていない場合に、瞬間的な振動を検知したと判定する
請求項3に記載の侵入検知装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記出力信号の前記所定期間の振幅値が前記第2の閾値を超えていない場合に、車外での人の動きを検知したと判定する
請求項4に記載の侵入検知装置。
【請求項6】
物体に対して送信した信号と、その信号が前記物体に反射して返ってきた信号から得られるドップラ信号を出力信号として出力する検出センサを用いて、自動車の車内への侵入を検知する侵入検知装置の侵入検知方法であって、
前記出力信号の所定期間の周波数の分散値を算出し、
前記出力信号の前記所定期間の振幅値を抽出し、
前記出力信号の前記所定期間の周波数の分散値および振幅値のそれぞれを、対応する閾値と比較することにより、前記車内への侵入の有無を判定する
侵入検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−210500(P2010−210500A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58233(P2009−58233)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】