説明

保護フィルムおよびタッチパネル表示装置

【課題】硬度が低く、自己修復性による傷つき性、耐指紋視認性、及び防汚性を有する耐久性に優れた保護フィルム、及び前記保護フィルムを備えたタッチパネル表示装置を提供する。
【解決手段】透明基材フィルムの一方の面に、少なくとも軟質樹脂層を有し、該軟質樹脂層がウレタン(メタ)アクリレートとフッ素含有化合物及び/またはシロキサン結合を有する化合物から成り、且つ、その屈折率が1.44以上1.48以下であり、また、該軟質樹脂層表面の純水に対する接触角が80°以上、且つ、シクロオレフィンに対する接触角が60°以上であることを特徴とする保護フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示装置の表面に設けられる保護フィルムおよび保護フィルムを備えたタッチパネル表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイに用いられている表面材としては、ガラス板や、表面にハードコート層を形成した樹脂板が一般的である。しかし、近年は表面材として反射防止性を有するものが一般的になってきている。その反射防止の原理は、フィルムの最表面層に下層よりも低屈折率の物質から成る反射防止層を、可視光波長の1/4の膜厚(約100nm)で形成すると、干渉効果により表面反射の低減がなされるというものである。そして、反射防止性を有することにより、表面材への像の映りこみ防止、防眩性付与、眼精疲労の低減等の効果がもたらされる。このような事情から、表面材として反射防止性を有するハードコート層が形成された樹脂板の普及が近年著しくなっている。
【0003】
しかし、それら表面材を携帯電話やノートパソコンのディスプレイに用いると、これら機器の持ち運び時にキーボードによってハードコートフィルムや反射防止フィルム等の表面材に傷がついてしまう。また、それら表面材をタッチパネルに用いると指での操作時に硬質な感触や、滑る感触等があるため、押圧感が悪かった。それら表面材において、反射防止性を有しながら、傷つきや押圧感を改善するために幾つかの提案がなされている。例えば、特許文献2のように透明硬質基板上に操作面の動摩擦係数が特定の範囲にあり、自己修復性を有する軟質樹脂層が設けられ、その上に反射防止層が設けられたタッチパネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−176357号公報
【特許文献2】特開2003−15822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ディスプレイ視認性向上のために自己修復層等の軟質樹脂層に反射防止層を設けると、傷つき試験後の光学特性及び防汚性が悪化するといった耐久性に問題があった。
【0006】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、硬度が低く、自己修復性による傷つき性、耐指紋視認性、及び防汚性を有する耐久性に優れた保護フィルム、及び前記保護フィルムを備えたタッチパネル表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明としては、透明基材フィルムの一方の面に、少なくとも軟質樹脂層を有し、該軟質樹脂層がウレタン(メタ)アクリレートとフッ素含有化合物及び/またはシロキサン結合を有する化合物から成り、且つ、その屈折率が1.44以上1.48以下であることを特徴とする保護フィルムである。
【0008】
請求項2に係る発明としては、前記軟質樹脂層表面の純水に対する接触角が80°以上、且つ、シクロオレフィンに対する接触角が60°以上であることを特徴とする請求項1に記載の保護フィルムである。
【0009】
請求項3に係る発明としては、前記軟質樹脂層表面に、微細な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の保護フィルムである。
【0010】
請求項4に係る発明としては、前記軟質樹脂層に帯電防止剤が含有されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の保護フィルムである。
【0011】
請求項5に係る発明としては、前記透明基材フィルム表面の前記軟質樹脂層が形成されている面と反対側の面に導電層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の保護フィルムである。
【0012】
請求項6に係る発明としては、請求項1乃至5のいずれかに記載の保護フィルムを用いてなることを特徴とするタッチパネル表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
上記の保護フィルムを用いることにより、タッチパネル等のディスプレイに用いられる保護層として光学用途に用いることが可能であり、硬度が低く、自己修復性による傷つき性、耐指紋視認性、及び防汚性を有する耐久性に優れた保護フィルム、及び前記保護フィルムを備えた光学表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の保護フィルムの第一の実施の形態の模式断面図である。
【図2】本発明の保護フィルムの第二の実施の形態の模式断面図である。
【図3】本発明の保護フィルムの第三の実施の形態の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、タッチパネル表示装置の構成部材である保護フィルムであって、優れた押圧感を有し、かつ、タッパネルに要求される光学特性、耐擦傷性、防汚性、耐久性などを有する保護フィルムを提供するものであり、その保護フィルムは透明基材フィルムおよび軟質樹脂層から構成される。
【0016】
前記保護フィルムの実施の形態を図1〜3に示すが、これに限定されるものではない。図1は、本発明の保護フィルムの第一の実施の形態を示す。また、図2は、本発明の保護フィルムの第ニの実施の形態を示めす。またさらに、図3は、本発明の保護フィルムの第三の実施の形態を示めす。
【0017】
図1は、本発明の保護フィルム1の標準的構成を示し、透明基材フィルム2の一方の面に軟質樹脂層3を形成したものである。また、図2は、前記透明基材フィルム2と前記軟質樹脂層3との間に、ハードコート層5が積層された構成である。またさらに、図3は、図2の構成において、透明基材フィルム2のもう一方の面にさらにハードコート層5を設け、その上に導電層を形成したもの、すなわち、透明基材フィルム2の両面にハードコート層が形成され、それぞれのハードコート層5の上に、一方が軟質樹脂層3、他方が導電層4が形成された構成である。
【0018】
本発明の前記透明基材フィルム2は、ディスプレイ等の画面表示装置と供されるために、物理的、機械的、化学的強度が要求されると共に、少なくとも可視光に対して透明性を有するものであることが好ましい。
【0019】
透明基材2を構成する素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂類、環状ポリオレフィン
、ポリエチレン、もしくはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂類、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66等)、アクリル、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルホン、もしくはポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂からなる未延伸フィルム、あるいは、一軸ないし二軸に延伸した延伸フィルムを挙げることができ、また、これらのフィルムは単層あるいは二層以上の複数フィルムであってもよい。
【0020】
前記透明基材フィルム2の厚みは、透明性が満足されれば特に制限されないが、加工性の面からは、10μm〜200μmの範囲であることが好ましい。厚みが10μm未満であると、透明基材2が柔軟過ぎて、加工する際の張力により伸張やシワが発生しやすく、また、厚みが200μmを超えると、フィルムの可撓性が減少し、各工程での連続巻き取りが困難になる上、厚みが増すとコストも高くなる。
【0021】
前記軟質樹脂層3はタッチパネルの最外層であり、筆記感、耐指紋付着性、耐擦傷性、防汚性、耐久性などの作用効果を供する必要があり、単層でもよく、複数層から形成されていてもよい。
【0022】
筆記感は、前記軟質樹脂層3の材質、構成や、特に厚みが大きく影響する。前記軟質樹脂層3の厚みは、好ましくは5〜200μmであり、より好ましくは10〜100μmである。この厚みが5μm未満の場合、軟質樹脂層3の弾力性が不足して復元性や筆記感が低下する。一方、200μmを越える場合、軟質樹脂層3が厚くなり過ぎて筆記感が低下する傾向を示す。
【0023】
また、指紋付着の原因は、人間の指先に付着している水分、塩分、タンパク質、アミノ酸、脂肪などの成分が、手に触れた所に付着することにより指紋として残ることで生じる。特に脂肪の屈折率は1.46程度であるため、脂肪の付着による指紋痕を目立たなくさせる対策として、前記軟質樹脂層3は屈折率が1.44以上1.48以下であることが好ましい。本発明では、特に脂肪の付着による指紋痕の目立たない光学薄膜フィルムを提供することを目的としているため、前記軟質樹脂層3の屈折率は、より好ましくは1.46である。
【0024】
また、親水性物質に対する防汚性は、前記軟質樹脂層表面の純水接触角が80°以上であることが好ましい。軟質樹脂層表面の純水接触角が80°より低いと、親水性物質に対する十分な防汚機能を有することができない。また、軟質樹脂層の純水接触角は高いほど親水性物質に対する高い防汚機能を備えることから、高いほど好ましい。
【0025】
一方、親油性物質に対する防汚性は、前記軟質樹脂層表面のシクロオレフィン接触角が60°以上であることが好ましい。軟質樹脂層表面のシクロオレフィン接触角が60°より低いと、親油性物質に対する十分な防汚機能を有することができない。また、軟質樹脂層のシクロオレフィン接触角は高いほど親油性物質に対する高い防汚機能を備えることから、高いほど好ましい。
【0026】
また、押下感、及び擦傷性に対しては、軟質樹脂層3に自己修復性を有する材料を用いることで対応できる。
【0027】
上記特性を満たす前記軟質樹脂層として、ウレタン(メタ)アクリレート及びフッ素を有する化合物及び/又はシロキサン結合を有する化合物やその共重合体から成ることを特徴とする。
【0028】
特に、前記ウレタン(メタ)アクリレートが、活性エネルギー線硬化性組成物であることが好ましく、軟質樹脂層3の弾力性を高め、さらにその復元性を向上させることができる。また、硬化を迅速に行うことができ、保護フィルム1の連続生産性を向上させることができる。
【0029】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0030】
また、前記フッ素を有する化合物及び/又はシロキサン結合を有する化合物やその共重合体を含むことにより、摩擦係数が少なくなり、表面滑性の向上、防汚性を向上させることができ、さらには軟質樹脂層の屈折率を低い値に制御することができる。
【0031】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体とのウレタン化反応によって得ることができる。
【0032】
また、ウレタン(メタ)アクリレートの構成成分に、ポリカプロラクトンジオールやポリテトラメチレンジオール等複数の水酸基を有するオリゴマーや、トリデカノール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールステアリルアルコール、ベヘニルアルコールポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、グリセロールモノステアレート等の長鎖アルキルアルコールを使用することによって軟質樹脂層3の復元性が良好になり、表面滑性を適切にすることができる。これらの成分は単独で用いても良いし、2種類以上併用してもよい。また、優れたへこみ感と適切な復元性を得るために、前記多価アルコールやウレタン(メタ)アクリレート等の上記各種樹脂のうち長鎖部分を適度に含むものが好ましい。 長鎖部分としては、長鎖アルキル基やポリエーテル変性された長鎖アルキル基が挙げられる。これら長鎖部分の繰り返しが多く含まれることで、軟質樹脂層3の弾力性を高め、自己修復性が高くなる。
【0033】
前記軟質樹脂層を構成する樹脂組成物としては、ウレタン(メタ)アクリレートとあわせ他の樹脂組成物を加えることもできる。他の樹脂組成物としては紫外線硬化性又は熱硬化性の不飽和アクリル樹脂組成物の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基を2つ以上含んだ多官能重合性化合物を含む樹脂組成物や、そしてシリコーン系、メラミン系又はエポキシ系の多官能重合性化合物を含む樹脂組成物等を挙げることができる。
【0034】
前記シロキサン結合を有する化合物としては、例えばケイ素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。
【0035】
さらには、下記一般式(1)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。
RxSi(OR)4−x (1)
(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である)
【0036】
一般式(1)で表されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等を用いることができる。ケイ素アルコキシドの加水分解物は、一般式(1)で示される金属アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。
【0037】
シロキサン結合を有する化合物の共重合体の例としては、ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0038】
フッ素を有する化合物や共重合体の例としては、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキル第四級アンモニウム塩、フルオロアルキルエチレンオキシド付加物などのフルオロアルキル基を有する化合物;ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキル第四級アンモニウム塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物などのペルフルオロアルキル基を有する化合物;フルオロカーボン基を有する化合物;テトラフルオロエチレン重合体;フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体;フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体;含フッ素(メタ)アクリル酸エステル;含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの重合体;含フッ素(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体;含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと他モノマーの共重合体が挙げられる。
【0039】
前記共重合体は、軟質樹脂層形成用硬化性組成物の骨格に導入されていてもよいし、個別に存在していてもよい。 ただし、上記材料を組み合わせた軟質樹脂層の屈折率は1.44以上1.48以下に調整したものとする。
【0040】
また、電離放射線として紫外線を用い、紫外線照射により塗膜を硬化して軟質樹脂層を形成するために、軟質樹脂層の組成物(塗液)に光重合開始剤を加えてもよい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を用いることができる。
【0041】
また、上記塗膜形成において、ハジキ、ムラなどの塗膜欠陥の発生防止に、表面調整剤を加えても良い。前記表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれるが、いずれも形成される塗膜の表面張力を低下させる働きを備える。レベリング剤の例としては、アクリル共重合体やシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。
【0042】
また、前記軟質樹脂層の組成物(塗液)に、更なる機能を付与する目的で、他の添加剤を加えても良い。例えば、機能性添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、密着性向上剤、電磁波遮蔽剤、色調調整剤、ネオン光遮蔽剤等を用いることができる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系及びヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0043】
前記軟質樹脂層の組成物(塗液)の粘度を下げるため、放射線硬化性官能基を有するモ
ノマー及び/又はオリゴマーや溶剤を加えてもよい。溶剤の例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤などが挙げられる。
【0044】
前記軟質樹脂層表面には、微小な凹凸が形成されていてもよい。表面の微小な凹凸は表面に防眩性を発現させることができる。
【0045】
このような微小な凹凸の形成方法としては、例えば、前記軟質樹脂層の形成時に、表面に微細な凹凸が形成されたロールやフィルムを押し当てることで形成することができる。また、透光性微粒子を軟質樹脂層の組成物に添加することにより形成することができる。
【0046】
本発明において、微細な凹凸とはJIS B 0601(1994)で定義される軟質樹脂層表面の十点平均粗さRzが0.5μm以上5.0μm以下の範囲内であればよい。
【0047】
前記透光性微粒子としては、無機質の微粒子や樹脂微粒子(プラスチックビーズ)が挙げられるが、透明性や屈折率の調整が容易な点から樹脂微粒子が好ましい。そのような樹脂微粒子を形成する材料としては、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂には架橋樹脂が含まれる。また、透光性微粒子としてシリカ系微粒子やフッ素系微粒子を用いることもできる。アクリル−スチレン共重合樹脂においては、両単量体の共重合割合を変化させることにより、屈折率を任意に調整することができる。 前記微粒子を用いる場合、指紋視認性の観点から屈折率1.44以上1.48以下の軟質樹脂層と同等の屈折率を有するものが好ましい。
【0048】
また、前記軟質樹脂層の組成物(塗液)に帯電防止剤を加えることもできる。これにより、保護フィルムに帯電防止効果を付与することができる。帯電防止剤の例としては、アルキルホスフェートなどのアニオン系帯電防止剤、第4級アンモニウム塩などのカチオン系帯電防止剤やこれらの官能基を有する共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン系帯電防止剤、リチウム・ナトリウム・カリウムなどのアルカリ金属塩を使用した帯電防止剤が挙げられる。
【0049】
また、図2、3に示す前記ハードコート層としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。これらの樹脂組成物を含む塗液を塗布し、塗布後電離放射線を照射することによりハードコート層を形成することができる。
【0050】
また、タッチパネル用途として前記保護フィルムに導電層を設けることもできる。導電層の例としては、酸化錫(SnO)、酸化インジウム(In)と酸化錫の混合焼結体(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)等をスパッタリング法などのドライプロセスによって設けたものや、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン又はポリキノキサリン等の有機導電性高分子をウエットプロセスによって設けたものを用いることができる。
【0051】
本発明の保護フィルムに係る前記軟質樹脂層、ハードコート層及び導電層の形成方法と
しては、湿式成膜法が好ましい。湿式成膜法は、真空蒸着法やスパッタリング法やCVD法などの真空成膜法と比較して、安価に反射防止機能を有する保護フィルムを製造することができる。また、予め透明基材フィルム2の表面にケン化処理やコロナ放電処理等の前処理を施すことで密着性の向上が図れる。
【0052】
本発明の保護フィルムを用いたタッチパネル表示装置は、抵抗膜式や静電容量式等従来のタッチパネルの多くの方式が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例により本発明の詳細な説明をする。
【0054】
<実施例1>
透明基材フィルムとして、フィルム厚40μmのポリエチレンテレフタレートフィ
ルムを用意した。ウレタンメタクリレート系樹脂とフッ素含有化合物の共重合体と光重合開始剤と溶媒を含む塗液を用意し、該塗液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、乾燥後紫外線照射をおこなうことにより透明基材フィルム上に軟質樹脂層を形成し、保護フィルムを作製した。
【0055】
<実施例2>
透明基材フィルムとして、フィルム厚40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。ウレタンメタクリレート系樹脂とフッ素含有化合物の共重合体と屈折率1.48の透光性微粒子と光重合開始剤と溶媒を含む塗液を用意し、該塗液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、乾燥後紫外線照射をおこなうことにより透明基材フィルム上に軟質樹脂層を形成し、保護フィルムを作製した。
【0056】
<実施例3>
透明基材フィルムとして、フィルム厚40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。ウレタンメタクリレート系樹脂と少量のシロキサン結合を有する化合物の共重合体と屈折率1.48の透光性微粒子と光重合開始剤と溶媒を含む塗液を用意し、該塗液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、乾燥後、紫外線照射をおこなうことにより透明基材フィルム上に軟質樹脂層を形成し、保護フィルムを作製した。
【0057】
<比較例1>
透明基材フィルムとして、フィルム厚40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。熱硬化性ウレタン系樹脂とフッ素含有化合物の共重合体と溶媒を含む塗液を用意し、該塗液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、加熱より透明基材フィルム上に軟質樹脂層を形成し、保護フィルムを作製した。
【0058】
<比較例2>
透明基材フィルムとして、フィルム厚40μmのポリエチレンテレフタレートフィ
ルムを用意した。実施例1と別のウレタンメタクリレート系樹脂とフッ素含有化合物と光重合開始剤と溶媒を含む塗液を用意し、該塗液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、乾燥後紫外線照射をおこなうことにより透明基材フィルム上に軟質樹脂層を形成し、保護フィルムを作製した。
【0059】
<比較例3>
透明基材フィルムとして、フィルム厚40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。ウレタンメタクリレート系樹脂と屈折率1.48の透光性微粒子と光重合開始剤と溶媒を含む塗液を用意し、該塗液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布
し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、乾燥後紫外線照射をおこなうことにより透明基材フィルム上に軟質樹脂層を形成し、保護フィルムを作製した。なお、比較例3にあっては、軟質樹脂層を形成するための塗液には、フッ素含有化合物およびシロキサン結合を有する化合物は含まれていない。
【0060】
実施例1〜3及び比較例1〜3で作製した保護フィルムにあっては、JIS B 0601(1994)に基づき、軟質樹脂層表面の十点平均粗さ(Rz)を求めた。また、JIS K 7142(2008)に基づき軟質樹脂層の屈折率を求めた。また、JIS R 3257(1999)に基づき軟質樹脂層表面の接触角を求めた。[表1]に実施例1〜3及び比較例1〜3で作製した保護フィルムの構成及び軟質樹脂層表面の十点平均表面粗さ(Rz)、軟質樹脂層の屈折率及び軟質樹脂層表面の純水接触角、シクロオレフィン接触角をまとめたものを示す。
【0061】
【表1】

【0062】
次に、本実施の形態の効果を確認するために、上記実施例1〜3及び比較例1〜3で作製した保護フィルムを用いてタッチパネルを作製し、保護フィルムの軟質樹脂層が最表面となるようにタッチパネル表示装置に組み込んで、以下の方法で該タッチパネルの評価をおこなった。
【0063】
<評価項目と評価方法>
タッチパネル表示装置の評価項目として、指紋視認性、指紋拭き取り性、マジック拭き取り性、押下感、擦傷性、耐久性及び量産性について評価した。
【0064】
[指紋視認性]
タッチパネル表示装置表面に指紋を付着させ、指紋痕がほとんど見えなければ○、指紋痕がわずかに見えるが使用上問題なければ○△、指紋痕が見え、清潔感が無ければ×と評価した。
【0065】
[指紋拭き取り性]
タッチパネル表示装置表面に指紋を付着させ、ティッシュで拭き取った回数で評価を行った。10回未満で拭き取れれば○、20回未満で拭きとれれば○△、指紋跡が消えなければ×とした。
【0066】
[マジック拭き取り性]
タッチパネル表示装置表面(保護フィルムの軟質樹脂層表面)にマジックインキで約2cmの線をひき、ティッシュで拭き取った回数で評価を行った。3回未満で拭き取れれば○、マジック跡が消えなければ×とした。
【0067】
[押下感]
タッチパネル表面に指で触れた際に、へこみ感を感じれば○、へこみ感を感じなければ×と評価した。
【0068】
[擦傷性]
タッチパネル表面を、スチールウール(#0000)を用い、200g荷重で10往復擦り、30秒後の傷の有無を目視評価した。傷が確認されなかったものを○、傷が確認されたものを×とした。
【0069】
[耐久性]
タッチパネル表面を、200gの重りを100回往復させ、防汚性の評価を行った。また、裏面を黒のスプレーにて塗工し、色ムラやキズの確認を行った。評価前の前記特性とほぼ変化が見られなければ○、いずれか又は両方の評価結果が大きく劣化したものを×とした。
【0070】
[量産性]
上記実施例の保護フィルム作製に要した時間をもとに、実施例1を○として比較を行い、実施例1よりも明らかに時間を要したものを×とした。
【0071】
[防眩性]
タッチパネル表面に蛍光灯を映りこませ、防眩性の評価をおこなった。写りこませた蛍光灯の像がぼやけて観察されて防眩性があれば有り、なければ無しとした。
【0072】
評価結果について[表2]に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
<比較結果>
実施例1〜3で得られた本発明品によるタッチパネル評価の結果、実施例1の防眩性以外は、いずれも良好な結果を示した。なお、防眩性は軟質樹脂層表面の凹凸構造によりで機能を付与できることが、他の実施例から明らかになった。一方、比較例1〜3で得られた比較例品によるタッチパネル評価の結果、比較例1は、生産コストを左右する量産性に劣り、また、比較例2及び3は、タッチパネルで最も重要な要求性能の一つである指紋視認性が劣り、いずれも実用性には至らない結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係わる保護フィルム、及び前記保護フィルムを備えた光学表示装置を用いることで、自己修復性による傷つき性、耐指紋視認性、及び防汚性を有する耐久性に優れた保護フィルムを作成することができ、光学産業、特にタッチパネル産業の新たな需要を生み出すことができる。また、本発明の保護フィルムはタッチパネル表示装置以外の表示装置にも適用できる。例えば、キーボードが併設されており折り畳み可能なノートパソコンや携帯電話にあっては折り畳んだ際に表示面がキーボードによって傷つく場合があり、本発明の軟質樹脂層を備える保護フィルムを表示面に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 保護フィルム
2 透明基材フィルム
3 軟質樹脂層
4 導電層
5 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムの一方の面に、少なくとも軟質樹脂層を有し、該軟質樹脂層がウレタン(メタ)アクリレートとフッ素含有化合物及び/またはシロキサン結合を有する化合物から成り、且つ、その屈折率が1.44以上1.48以下であることを特徴とする保護フィルム。
【請求項2】
前記軟質樹脂層表面の純水に対する接触角が80°以上、且つ、シクロオレフィンに対する接触角が60°以上であることを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
前記軟質樹脂層表面に、微小な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
前記軟質樹脂層表面に導電性材料が含有されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項5】
前記透明基材フィルム表面の前記軟質樹脂層が形成されている面と反対側の面に導電層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の保護フィルムを用いてなることを特徴とするタッチパネル表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196868(P2012−196868A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62331(P2011−62331)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】