説明

保護層を組み込んだミクロ流体装置及びシステム

【課題】改善された材料取扱い特性を有するミクロフルイディックスの利点と製造コストの低減とを結合したミクロ流体方法及び装置を提供する。
【解決手段】本体構造を有するミクロ流体装置100を提供し、この本体構造は該構造中に配置された少なくとも第1の微小規模チャネル網114を含む。本体構造は、該構造内に配置された複数のポート106を有し、各ポートは第1チャネル網中の1つ以上のチャネルと流動自在に連絡している。本装置は、保護層も含み、この保護層は、保護層を貫通して配置された複数の開口を含む。保護層は本体構造に嵌まり、これにより、各開口が複数のポートの中の個別の1つと整列する。また本装置は、導電性被膜及び膜も適宜含む。更に本発明は、ミクロ流体装置100中への組成物質の配送を制御する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照: 35U.S.C.§119及び/又は§120並びに他の適用可能な法令又は規則により、本出願は、2000年4月6日提出のUSSN09/544,711の利益と優先権を主張し、その開示文献を援用する。
【0002】
発明の背景:エレクトロニクスやコンピュータ産業の場合と同様、分析化学や生化学の機器の傾向も小型化の方向に向かっている。化学及び生化学の分析において、例えばミクロ流体システムにおいて達成されるような小型化は、要求される試薬が非常に少ないこと、早いスループット、容易な自動化、及び多くの場合における改善されたデータを含めて多くの利点をもたらす。
例として、米国特許第5,498,392号及び第5,587,128号は、微小規模のフローシステム及び/又は反応チャンバーを含んだミクロ製造装置における増幅反応の性能を記載する。このようなシステムは、増幅反応で使用される高価な試薬の必要性を実質的に低減する。また、これらの装置の小さい規模により、加熱源と装置内の試薬との間の熱移動が促進される。
同様に、米国特許第5,637,469号は、結合アッセイにより試料中のアナライトを検出するために極度に小さな内部寸法を有する装置の使用を記載する。これも、このような装置の小さな規模により、小さな試薬容積という観点からの利点が与えられる。
【0003】
共有の公開国際出願WO98/00231は、高スループットのスクリーニングアッセイの実行におけるミクロ流体装置及びシステムの使用を記載する。これも、これらのシステムにより、潜在的に非常に高価な試験化合物、例えば薬剤候補、ライブラリ化合物などの必要な容積が低減される。
分析システムの小型化により実現される多くの利点にも関わらず、このような小型化は、ユーザーの取扱い、試薬の配送又は濾過、及びこのような装置とのシステムインターフェースを含めて該装置の使用において困難をもたらし得る。
従って、このような小さな規模の装置に関連した問題を伴うことなく、極度に小さな容積及び寸法に関連した利点を得るミクロ流体装置を提供することが望まれる。本発明は、これら及び他の種々の要求を満たす。
【発明の開示】
【0004】
本発明の一般的な目的は、改善された材料取扱い特性を有するミクロフルイディックスの利点と製造コストの低減とを結合したミクロ流体方法及び装置を提供することである。本発明は、このことを本体構造を有するミクロ流体装置を提供することにより一面において達成する。この本体構造は、その中に配置された第1微小規模チャネル網を含む。本体構造は、本体構造の第1表面に配置された複数のポートを含む。各ポートは、第1チャネル網における1つ以上のチャネルと流動自在に連絡している。本装置は、保護層も含み、これは保護層の第1表面内で該表面を貫通して配置された複数の開口を有する。保護層の第1表面は、開口がポートに対して整列してポートと流動自在に連絡するように、本体構造の第1表面に嵌まって(fit)いる。また、本装置は、保護層の第1表面の少なくとも一部と本体構造の第1表面との間に配置された膜も含み、膜が少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置されるようにする。本発明の好ましい実施態様では、膜(例えば半透膜部など)が膜上に固定化された材料を含み、例えば材料の凝集(例えば細胞、分子などの固まり)をふるい分けし及び/又は種々の試薬を装置に配送する。
【0005】
別の面では、本発明は、第1微小規模チャネル網を本体構造内に配置した該本体構造を備えたミクロ流体装置に関する。本体構造は、該構造の第1表面に配置された複数のポートを含む。各ポートは、第1チャネル網における1つ以上のチャネルと流動自在に連絡している。また、複数のポートの各々は、リムと内側表面とを含み、このリムは、本体構造の第1表面内の各ポートの周囲に配置され、複数のポートの少なくとも1つについてのリムの少なくとも一部及び内側表面は導電性被膜を含む。特に、本発明における導電性被膜の使用は、ミクロ流体装置間の相互汚染を最小にする。本装置は、保護層も含み、これは保護層の第1表面内において該表面を貫通して配置された複数の開口を備える。保護層の第1表面は、これらの開口が前記ポートに対して整列し且つ流動自在に連絡するように、本体構造の第1表面に嵌められる。特定の実施態様では、本装置は、膜(例えば半透膜部など)も含み、この膜は、該膜が少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置されるように、保護層の第1表面の少なくとも一部と本体構造の第1表面との間に配置される。これらの実施態様では、前記少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置された膜の少なくとも一部が、前記導電性被膜に導電的に接続される。
【0006】
また、本発明は、第1微小規模チャネル網を内部に配置した本体構造を備えたミクロ流体装置を提供する。本体構造は、該構造の第1表面内に配置された複数のポートを含み、各ポートは、第1チャネル網における1つ以上のチャネルと流動自在に連絡している。本装置も保護層を含み、この保護層は第1表面から、対向する第2表面まで延びた複数の開口を含む。これら複数の開口の各々は、保護層の第2表面における各開口の周囲に配置されたリムと内側表面とを更に含む。前記複数の開口の少なくとも1つについてのリムの少なくとも一部及び内側表面は、導電性被膜を含む。また、本装置は、膜(例えば半透膜部など)も適宜含み、この膜は、該膜が少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置されるように、保護層の第1表面の一部と本体構造の第1表面との間に配置される。別の選択肢として、少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置された膜の少なくとも一部が、導電性被膜と導電的に接続される。
【0007】
また別の面では、本発明は、第1微小規模チャネル網を内部に配置した本体構造を含むミクロ流体装置に関する。本体構造は、該本体構造の第1表面内に配置された複数のポートを有する。この各ポートは、第1チャネル網における1つ以上のチャネルと流動自在に連絡している。また、本装置は、保護層も含み、これは該保護層の第1表面内に該表面を貫通して配置された複数の開口を含む。保護層の第1表面は、開口がポートと整列し且つポートと流動自在に連絡するように、本体構造の第1表面に嵌められる。また、本装置は、複数のリングを含む。これらリングの各々は、保護層と本体構造との間で前記複数の開口の少なくとも1つの周囲に且つ前記複数の開口の1つ以上に対して整列した複数のポートの少なくとも1つの周囲に配置される。適宜、複数のリングの少なくとも1つが、本体構造、保護層又はその両方(即ち本体構造と保護層)に一体化される。
【0008】
特定の実施態様では、本装置は、膜(例えば半透膜部など)も含み、この膜は、該膜が少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置されるように、保護層の第1表面の少なくとも一部と本体構造の第1表面との間に配置され、その際、前記複数のリングの少なくとも1つについての少なくとも1つの表面の少なくとも一部が前記膜を含む。また、一般に、本発明の装置の各ウエル(例えば整列した各ポート、リング及び開口)は、開口(例えば環状隆起など)内、リング内、又はポート内のウエルの周囲に配置されたリム及び内側表面を含む。少なくとも1つのウエルについてのリムの少なくとも一部及び内側表面は、導電性被膜を適宜含む。別の実施態様では、本装置は膜(例えば半透膜部)を更に含み、この膜は、該膜が少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置されるように、保護層の第1表面の一部と本体構造の第1表面との間に配置される。別の選択肢として、複数のリングの少なくとも1つの一表面における少なくとも一部は、膜を含み、少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置された膜の少なくとも一部は、導電性被膜に導電的に接続される。
一般に、本発明の装置の保護層は、第1表面に対向した第2表面を含み、開口が第1表面から第2表面に延びている。一般に、保護層は、第2表面上に配置された複数の立ち上がり環状隆起を含む。環状隆起は、開口の各々を取り囲む。膜(例えば半透膜部など)は、第2表面上の開口を取り囲む少なくとも1つの環状隆起上に適宜配置される。
【0009】
幾つかの実施態様では、保護層が、本発明の装置における本体構造の第1表面に接着又は締結される。また、一般に、保護層は、保護層の第1表面上で本体構造を整列させるための第1整列構造を含む。保護層は、コントローラ/検出器装置上の整列構造と相補的な第2整列構造を適宜含み、コントローラ/検出器装置においてミクロ流体装置を整列する。
また、本発明は、ミクロ流体装置中に配送される組成物を制御する方法も含み、材料(例えば粒子、試薬など)を含んだ溶液を装置の1つ以上のウエル中に配置された半透膜部を通して流す工程を含む。また、本方法は、材料を装置中に配送する前に半透膜上に材料を固定化する工程を適宜含む。
関連する面では、本発明は、本発明によるミクロ流体装置を含んだミクロ流体システムを提供し、その際、該装置はミクロ流体装置を収容するよう構成されたコントローラ/検出器装置上に更に取り付けられる。コントローラ/検出器装置は、光学検出システムと材料輸送システムとを含む。これら検出システムと輸送システムは、本装置をコントローラ/検出器上に取り付ける際、ミクロ流体装置と操作可能にインターフェースされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】平面層構造を取り入れたミクロ流体装置の本体構造を略示する。
【図2A−E】本発明によりミクロ流体装置に組み込む保護層の具体例を幾つかの斜視図により示す。
【図2F】本発明のミクロ流体装置と充填装置との相互作用を示す。
【図3A】完全に組み立てたミクロ流体装置を示し、これは共に嵌まった図1の層状の本体構造と図2の保護層を含む。
【図3B】完全に組み立てられた装置において本体構造を保護層に連結する別の機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明:I.一般
一般に、本発明は、ミクロ流体装置及びシステムの非常に小規模の性質を利用すると共に、このようなシステムに関連した潜在的な問題の幾つかを解消したミクロ流体装置及び方法を提供する。特に、本発明のミクロ流体装置及びシステムは、例えば本装置の基本的な本体構造に重ね合わせて取り付けられるミクロ流体装置の一部として更に保護層を含む。一般に、本発明の装置において用いられる保護層は、該層を貫通して配置される幾つかの開口を含み、これらの開口は、リザーバー(reservoir)の一部に嵌まり及び/又はそれを形成し、及び/又はミクロ流体装置のポートにアクセスする。これらの保護層は、ミクロ流体装置の操作及び製造において幾つかの利点を与える。
【0012】
ここで用いられているように、一般に、用語「微小規模」、「ミクロ製造された」又は「ミクロ流体」は、1つ以上の流体通路、チャンバー又は導管を指し、これらは500μmより短く一般に約0.1μm〜約500μmである少なくとも1つの内側断面寸法(例えば深さ、幅、長さ、直径など)を有する。本発明の装置では、微小規模のチャネル又はチャンバーは、好ましくは約0.1μm〜200μm、更に好ましくは約0.1μm〜100μm、しばしば約0.1μm〜20μmの少なくとも1つの断面寸法を有する。従って、本発明によるミクロ流体装置又はシステムは、一般に少なくとも1つの微小規模チャネル、通常は少なくとも2つの交差した微小規模チャネル、しばしば単一本体構造内に設けられた3以上の交差チャネルを含む。チャネルの交差については、十字交差、「T」交差、又は少なくとも2つのチャネルが流動自在に連絡するような幾つかの他の構造を含めて、多くの形式が存在し得る。
【0013】
ここに記載のミクロ流体装置の本体構造は、本体構造が少なくとも1つのミクロ流体チャネル要素を内部に設けるという条件で種々の形状及び/又は構造を採り得る。例えば、ある場合には本体構造は、管状構造、例えば上述した微小規模範囲の内側直径を有する溶融シリカ又はポリマー毛細管のような毛細管構造を有する。また、本体構造は、装置が使用される用途に依存して一様でない形状及び/又は構造を取り入れることもできる。好ましい面では、ミクロ流体装置の本体構造は、平面又は「チップ」構造を取り入れる。
ある場合には単一ピースの本体構造(例えば毛細管)が使用できるけれども、一般にここに記載の装置は、2つ以上の別々の層の集合を含む。この層の集合は、適切に嵌められ又は共に連結されると、例えばここに記載のチャネル及び/又はチャンバーを含んだ本発明のミクロ流体装置の本体構造を形成する。一般に、ここに記載のミクロ流体装置は、頂部、底部及び内部からなり、この内部が装置のチャネル及びチャンバーを実質的に形成する。
【0014】
図1は、平面の層構造を取り入れたミクロ流体装置の本体構造の一例を示す。図示のように、本体構造100は、少なくとも2つの層、即ち上層102と下層110を含む。下層110の上面112は、溝及び/又はウエル114を含むように製造される。次に、上層102の下面104が、下層110の上面112に嵌められ、それにより溝及び/又はチャネルが、集合本体構造の内部でチャネル又は導管及びチャンバーを形成する。
底部として種々の基板材料を使用できる。一般に、装置はミクロ製造されるので、公知のミクロ製造技術、例えばフォトリソグラフィ、湿式化学エッチング、レーザーアブレーション、反応性イオンエッチング(RIE)、空気研磨技術、射出成形、LIGA法、金属電鋳、型押及びその他の技術との適合性に基づいて基板材料が選択される。また、一般に、pH、温度、塩濃度及び印加電場の極限を含めてミクロ流体装置が曝され得る条件の全範囲との適合性を持たせるため、適切な基板材料が選択される。したがって、幾つかの好適な態様では、基板材料としては、例えばヒ化ガリウムなどのような他の基板材料だけでなく、例えばガラス、石英、シリコン又はポリシリコンなどのようなシリカベースの基板など、このようなミクロ製造技術が通常使用される半導体産業と通常関連した材料が挙げられる。半導体材料の場合には、基板材料の上に絶縁被膜又は層(例えば酸化ケイ素)を設けることがしばしば望まれ、特に装置又はその内容物に電場を印加するような用途においても同様である。好ましい態様では、ミクロ製造が容易であるばかりでなく上述した条件に対し不活性なので、本体構造を製造するのに使用される基板は、シリカベースであり、更に好ましくはガラス又は石英である。
【0015】
別の好ましい態様では、基板材料は、ポリマー材料、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(登録商標TEFLON)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ弗化ビニリデン(polyvinylidine fluoride)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)などのようなプラスチックからなる。このようなポリマー材料は、上述したような利用可能なミクロ製造技術を用いて、又はミクロ製造された原型から周知の成形技術(例えば射出成形、型押又はスタンピング)を用いて、又は金型内のポリマー前駆体材料を重合することにより容易に製造される(米国特許第5,512,131号参照)。また、最も極端な反応条件に対する一般的な不活性だけでなく製造の容易さ、低コスト及び処分可能性にとっても、このようなポリマー基板材料が好ましい。また、これらのポリマー材料は、例えば、あらゆる目的のために全体をここで援用する米国特許第5,885,470号に記載のように、ミクロ流体システムにおける有用性を増すために(例えば流体の方向性を強めるために)、処理された表面(例えば誘導体化又は塗布された表面)であってもよい。
【0016】
図示された実施態様では、本体構造100の上層102が、該層を貫通して設けられる複数のポート106を含む。これらのポートは、上層と下層とを嵌める時に集合本体構造においてチャネル又は溝の特定地点(例えば終点)と連通するように位置決めされる。ポート106は、流体が装置のチャネルにアクセスするように機能し、特定の態様では本体構造内のチャネルへの電気的なアクセスをするように機能する。後で議論するように、適宜、本体構造の上層の上面上の複数のポートの中の1つ以上の周りに(即ち取り囲んで)リングを成形する。また、ポートの少なくとも一部は、例えばポート内に直接電極を配置することなく装置内で適宜電気的接続を得るため、導電性被膜も適宜含む。導電性被膜の使用についても後に説明する。
多くの実施態様では、ミクロ流体装置は、装置の1つ以上のチャネル及び/又はチャンバーを横切って設けられた光学的検出窓116を含む。一般に、光学的検出窓は、該窓が上に設けられているチャネル/チャンバーからの光信号を通すことができるように透明である。光学的検出窓は、例えばこの層はガラス若しくは石英又は透明なポリマー材料(例えばPMMA、ポリカーボネートなど)である場合、単に本体構造の透明層の一領域とすることができる。また、装置を製造する際に不透明な基板を使用する場合、上記材料から製造された透明な検出窓を装置内に別々に製造することもできる。
【0017】
ミクロ流体装置は、例えば薬剤の発見における高スループットのスクリーニングアッセイ、免疫学的検定、診断、遺伝子分析などの実施を含めて、種々の用途において使用し得る。従って、ここに記載の装置は、複数の試料の並列又は直列導入及び分析のために複数の試料導入ポート又はリザーバーをしばしば含む。また、これらの装置は、複数の試料を分析用装置に順次に導入する試料導入ポート(例えばピペット)に連結し得る。このような試料導入システムの例は、例えば米国特許第6,046,056号及び第5,880,071号に記載されており、その各々をあらゆる目的のためそれ自体ここで援用する。後述するように、本発明は、膜を利用する方法及び装置も含み、この膜は、材料の凝集(例えば細胞、試薬又は他の粒子の固まり)をふるい分けし、さもなければ試薬又は他の材料を装置のポートに配送するものである。
好ましい態様では、本発明のミクロ流体装置は、動電学的材料輸送システムを使用して装置のチャネルを通して材料を方向付け且つ輸送する。ここで用いているように、一般に「動電学的材料輸送」とは、材料に電場を印加することにより、構造を含んだ交差チャネル及び/又はチャンバー内で材料を輸送及び方向付けするためのシステム及び方法に関する。電場の印加により、チャネル及び/又はチャンバーを通してそれらの間で材料を移動させる、即ち、陽イオンは負の電極に向かって移動する一方、陰イオンは正の電極に向かって移動する。
【0018】
このような動電学的材料輸送及び方向付けシステムは、該構造に印加された電場内での荷電種(charged species)の電気泳動の移動度に基づいたシステムを含む。特に、このようなシステムは、電気泳動材料輸送システムと云う。その他の動電学的材料方向付け・輸送システムは、チャネル又はチャンバー構造内での流体及び材料の電気浸透流のみに基づき、又はそれと上述の電気泳動力とが組み合わされる。この電気浸透流は、このような構造を横切って電場を印加することにより生じる。要するに、荷電官能基保持表面、例えばエッチングされたガラスチャネル又はガラスミクロ毛細管におけるヒドロキシル基を有するチャネル中に流体が入っているとき、それらの基はイオン化し得る。ヒドロキシル官能基の場合、例えば中性pHでのこのイオン化により、陽子が表面から放出して流体に入り、流体/表面の界面近くに陽子を集中させ、チャネル中のバルク流体を取り囲む正に荷電したシースを作る。チャネル長を横切って電圧勾配を与えることにより、陽子シースが電圧降下の方向に、即ち負電極に向けて移動する。反対方向の流れは、電圧勾配を逆にすることによるか、又は正荷電イオン化可能基保持チャネル、例えばアミノ基などを与えることにより達成される。
【0019】
ここで用いられる「制御された動電学的材料輸送及び方向付け」とは、上述したような動電学的システムをいい、これは複数(即ち2つ以上)の電極に印加される電圧のアクティブ制御を用いる。言い換えると、このような制御された動電学的システムは、少なくとも2つの交差チャネルを横切って印加された電圧勾配を付随して規制する。制御された動電学的材料輸送については、Ramseyの公開PCT出願WO96/04547に記載されており、あらゆる目的のため全体をここで援用する。特に、ここに記載の好適なミクロ流体装置及びシステムは、少なくとも2つの交差したチャネル又は流体導管、例えば相互連結された封入チャンバーを含んだ本体構造を備え、これらのチャネルは少なくとも3つの交差していない終点を含む。2つのチャネルの交差点とは、互いに流動自在となっている2以上のチャネル地点をいい、「T」交差、十字交差、複数チャネルの「荷馬車の車輪(wagon wheel)」交差、又は2以上のチャネルがこのように流動自在に連絡している他の任意のチャネルジオメトリを含む。チャネルの非交差終点は、別のチャネルとのチャネル交差(例えば「T」交差)の結果としてではなく、チャネルが終端する地点である。好ましい態様では、装置は、少なくとも4つの非交差終点を備えた少なくとも3つの交差チャネルを含む。単一の水平チャネルが単一の垂直チャネルと十字に交差している基本的な十字チャネル構造では、制御された動電学的材料輸送が作用して、交差点において他のチャネルから強制流を与えることにより交差点を通る材料流を制御自在に方向付ける。例えば、一つには垂直チャネルとの交差点を横切って例えば左から右に水平チャネルを通って第1材料を輸送することが望ましいと仮定する。交差点を横切るこの材料の単純な動電学的材料流は、水平チャネルの長さを横切って電圧勾配を印加すること、即ちこのチャネルの左の終点に第1電圧を印加し、それより低い第2電圧をこのチャネルの右の終点に印加すること、又は右の終点をフロートにすること(電圧を印加しないこと)により実現される。しかしながら、交差点を通るこの種の材料流により、交差点での対流効果だけでなく、使用媒質中で輸送されている材料の自然の拡散特性の両方によって交差点において相当量の拡散が生じる。
【0020】
制御された動電学的な材料輸送において、交差点を越えて輸送される材料は、サイドチャネル、例えば頂部及び底部チャネルからの低レベルフローにより拘束される。このことは、例えば垂直チャネルの頂部又は底部終点から右の終点に向かう材料フローの経路に沿って僅かな電圧勾配を印加することにより達成される。その結果は、交差点での材料フローの「締め付け(pinching)」となり、これにより材料の垂直チャネル中への拡散が妨げられる。交差点において締め付けられた容積の材料は、垂直チャネルの長さを横切って、即ち頂部終点から底部終点まで電圧勾配を加えることにより垂直チャネル中に注入できる。この注入中に水平チャネルから材料がブリードするのを避けるために、低レベルのフローをサイドチャネル中に戻して交差点からの材料の「引き戻し(pull back)を生じさせる。
【0021】
締め付けられた注入構成に加え、制御された動電学的材料輸送が、機械的又は移動する部分を含まない実質的なバルブを作るのに容易に利用される。特に、上述の十字の交差点に関し、1つのチャネル区分からもう一方への(例えば水平チャネルの左アームから右アームへの)材料のフローは、垂直チャネルから(例えば垂直チャネルの底部アームから頂部アームへの)制御されたフローにより効率的に規制され、停止され、再開される。特に、「オフ」モードでは、左及び頂部の終点を横切って電圧勾配を加えることにより、材料が左アームから交差点を通って頂部アームに輸送される。この経路に沿って(底部終点から頂部終点に)同様の電圧勾配を加えることにより、拘束されたフローが底部アームから頂部アームに送られる。次に、計量した量の材料が、印加電圧勾配を左:頂部から左:右に切り替えることにより、水平チャネルの左アームから右アーム中に分配される。時間量と印加される電圧勾配が、このように分配される材料の量を指示する。
【0022】
特に好ましい面においては、動電学的な材料の輸送は、チャネルを通る材料の移動を伝えるためにシステムのチャネルを通して適当な電流を加えることにより制御される。動電学的な材料の輸送システムにおける電流制御の使用は、共有の米国特許第5,800,690号及び公開PCT出願第98/00707号に詳細に記載されており、その両方をここで援用する。要するに、動電学的な材料輸送システムにおいては、チャネルの交差点での相対的な電位は、それらの交差点での材料の移動の方向及び速度を指示する。一般に、これらの電位の制御は、交差点での所望の電位に基づいて印加される電圧、及び交差点と電圧を印加する電極の間のチャネルの抵抗の計算に基づく。電流をモニターして制御することにより、交差点での電位が所望のレベルに維持され、印加される電圧は自動調節される。
4ウエイ十字交差点に関して説明する目的で記載したが、これらの制御された動電学的な材料輸送システムは、一層複雑な相互連結されたチャネル網(例えば相互連結された平行チャネル)に対して容易に適用できる。後に議論するように、動電学的な材料輸送システムは、電気通信を実現するため導電性被覆の使用も適宜伴う。
【0023】
A.リザーバー/ポートの物理的及び電気的隔離
前述のように、ミクロ流体システムのデザイン及び製造においては、基本的な目標は、全体のシステムを小型化することである。これは通常、容積を減少させるか、操作速度を上げるか、或いは特定の操作を増やす、例えば装置が占める同一ユニット空間内に多数の操作を導入するために行われる。しかし、これらの目標を達成する際、所定のミクロ流体システムの機能空間を効果的に規定するチャネル網は非常に小さくなる。同一ユニット空間内に小さくなったチャネル網又は一層複雑な網が導入される結果、これらのチャネル網へのアクセスポイント同士、例えばリザーバー、電気的アクセスポート同士などもますます密集して来る。
これらのアクセスポート同士が密集して来ると、実用上、或るポートを他のポートから隔離することは一層困難になる。例えば流体をシステムのチャネル網に導入するのにアクセスポートを用いた場合は、ポート同士が近接するか、ポートが小さくなるのに従って、複数の流体容量を別々に異なるポートに導入するのはますます困難になる。これは手動で、例えばピペットを用いて液体を導入する場合や、自動的方法、例えば液体取扱ロボットシステムを用いて液体を導入する場合も真実である。
【0024】
同様な問題については、アクセスポート同士を密接に配置する程、これらのポートを電気的に隔離するのはますます困難になる。これは、前述のようにチャネル網中で材料の搬送に使用される電気的感知システム、例えば電流測定(amperometric)、電位差測定(potentiometric)などの、及び/又は動電的材料搬送のような、チャネル網に操作可能に結合した電気的システムを利用するミクロ流体システムにおいて特に重要である。特に、システムのポートを電気的アクセスに使用する場合は、例えば装置表面に付着した液体、ごみ又は油のため装置表面上で、2つ以上の接近した、又は少なくとも近接した電極間で電流を橋渡しする、即ち「ショート」する可能性が増大する。
【0025】
本発明は一般に、隣接する電極間での流体及び/又は電気的リンクの形成を防止するため、隣接するリザーバー間に効果的なバリヤーを与える保護層を有するミクロ流体装置を提供することにより、これらの問題に取り組むものである。このバリヤーは適宜、各リザーバーの周囲に隆起、例えば環状リザーバーを囲む環状隆起を有する。隆起は、1つのウエルからの液体の「溢れ(spill−over)」が、他の近接するウエルに入るのを防ぐ効果がある。同様に隆起は、電気的に橋渡しする電流、例えば短絡回路が渡らなければならない長い通路長を効果的に作る。通常、これらの隆起は、保護層の表面から少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも1mmであり、ある場合は、保護層の上表面から少なくとも2mm又はそれ以上である。多くの場合、バリヤー、例えば隆起構造により付与されるバリヤーは本体構造中のリザーバーだけで付与されるバリヤーよりも、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、多くの場合、少なくとも3〜5倍、有効通路長を増大させる。
共有の米国特許第5,876,675号には、ミクロ流体装置用の個別の又は一体化した保持構造を使用することが記載されている。この特許は、あらゆる目的のためここに全体を援用する。
隣接するリザーバー間に効果的なバリヤーを提供する他、ある場合は、上表面は隣接するリザーバーを物理的又は電気的に汚染する可能性がある該表面上の液体の付着/凝集を防止する疎水性材料を含有する。このような場合、疎水性材料、例えばポリマーは保護層の表面に塗布する。しかし、以下に更に詳細に説明するように、保護層自体は、疎水性ポリマー材料から製造する。
【0026】
B.リザーバーの容量能力の増大
本発明のミクロ流体装置の保護層成分は、これら装置のリザーバーの容量能力を増大させる潜在能力も提供する。特に保護層に配置した開口は、これらリザーバーを延長することにより、装置の流体リザーバーの合計深さを増大することができる。多くのミクロ流体の用途では、液体容量は臨界的に制限されないが、例えば蒸発による流体容量の実質的変化は、特定の操作に影響を与える。これは通常、流体内の1種以上の溶質、例えば塩、酵素などの濃縮によるものである。リザーバーの液体容量能力を増大させることにより、蒸発率を低下させ、流体の部分的蒸発から生じるいかなる影響も実質的に和らげることができる。
保護層に配置される開口は通常、本体構造中のリザーバーの深さに付け加える。そうする場合、開口の深さは通常、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mm、多くの場合は少なくとも5mmである。これは通常、装置全体のリザーバー、例えば本体構造中のポートと保護層中の開口との組合せから、少なくとも5μl、好ましくは少なくとも10μl、更に好ましくは少なくとも20μl、多くの場合は少なくとも50μl、ある場合は少なくとも100μlの容量を有するリザーバーで生じる。いずれにしても、装置全体のリザーバーの容量は通常、約1〜約200μl、好ましくは約2〜100μl、更に好ましくは約5〜約100μl、なお更に好ましくは約5〜50μlである。
【0027】
II.保護層の製造
ここで説明したミクロ流体装置の保護層面は一般に、多数の各種方法を用いて多数の各種材料のいずれからも製造することができる。例えば前記装置のミクロ流体エレメントの製造において説明した材料及び方法も保護層の製造に採用できる。これらの方法は効果的であるが、好ましい面では、保護層の製造に、更に従来の製造技術が使用される。特に保護層は、本発明装置のミクロ流体エレメントの許容差まで製造する必要はないので、一般に更に精度が低く、更に安価な又は時間がかからない方法を用い、しかも更に安い材料から製造することができる。
2つのガラス層から製造する積層ミクロ流体装置では、一つの層において例えば穿孔又は空気摩耗技術によりポート又はリザーバーを製造するには、かなりの時間がかかる可能性がある。更にこのような製造に要する時間は、基板を厚くさせながら、非直線的、例えば指数関数的に増大する。逆に基板を薄くすると、リザーバーの製造に要する時間は指数関数的に減少する。最終のミクロ流体装置中のリザーバーの容量の一部は、適宜保護層エレメントによって供給されるので、ミクロ流体装置の本体構造の製造に使用される基板層は、実質的に一層薄くすることができる。即ち、リザーバーの所望とする全容量は、基板の厚さの関数である。その結果、本体構造中のリザーバーの製造に伴う時間及び費用は、実質的に減少する。
【0028】
保護層は通常、多数の各種製造可能ないずれかのプラスチックから製造した射出成形ポリマー又はプラスチック部品からなる。例えば保護層は通常、ミクロ流体装置の本体構造用の前述のようないずれかのポリマー材料、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(登録商標TEFLON)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ弗化ポリビニリデン、ABSなどから製造される。代わりの面では、保護層は適宜、非ポリマー材料、例えばガラス、石英、シリコンのようなシリカをベースとする基板や、セラミック又は金属から製造される。
装置の本体構造に保護層を取り付けるのも、接着剤結合、超音波溶着、溶剤溶着、熱結合など、周知の方法によって行われる。好ましい面では、保護層は接着材料を用いて装置の本体構造に付着させる。更に好ましくは、紫外線硬化性接着剤を用いて保護層を本体構造と結合させる。このような接着剤は、例えば3Mコーポレーションから一般に市販品として入手できる。特に好ましい面では、選択した接着剤は、電気絶縁性、例えば非導電性、適用緩衝液に不溶及び/又は非浸出性(non−leaching)、低蛍光性などである。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、ミクロ流体装置は、保護層の下にあるミクロ流体装置中のリザーバー又はポートの周りに配置されたリングを有する。リングは適宜、保護層の第1表面上の開口の周りに成形され、保護層と一体的である。或いはリングは、本体構造の第1表面中に配置されたポートの周りに成形され、本体構造と一体的である。更に代わりの方法として、リングは保護層や本体構造から離れている。本体構造に保護層を付着させると、リングは各ポートと整列した各開口間に配列されることになる。以下、更に議論するように、リングは適宜、導電性被膜及び/又は膜を有する。
リングは、接着剤、例えば紫外線硬化性接着剤(前述)がポートの中に入って、ポート内にある何らかのアッセイ成分と接触するのを防止するように働く。従って、リングは適宜、円形リング、或いはその他、機能的に同等の形状、例えば長方形又は多角形の形状とする。リングについては、「厚い」及び/又は「厚さ」という用語は、リングの内縁端から外縁端までの距離のことである。リングの厚さは、円形リングのように1つであるか、或いは他のリング形状を選んだ場合は複数である。しかし、各リングの厚さは、約1μM〜約1,000μMの範囲である。例えばリングの厚さは適宜、約50μM〜約750μMの範囲、例えば約500μMである。比較的大きいリングでは、通常、ポート及び/又は開口の周りにボイドが形成される。比較的狭いリング、例えば約100μM〜約500μMの範囲のリングが一般に好ましい。
【0030】
リングは多数の各種材料から製造される。例えばリングが保護層又は本体構造と一体化される場合は、これら2種のそれぞれの成分から同一の材料及び同一の工程で作られる。上記に議論したとおり、これらの材料としては適宜、広範な各種のポリマー又は非ポリマー材料がある。リングが保護層及び本体構造から離れている場合は、上記に議論したような、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(登録商標TEFLON)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー)、ガラス、石英、シリコン、ヒ化ガリウム、酸化シリコン、セラミック、金属、ラテックス、又はシリコーンなどのいずれかのポリマー又は非ポリマー材料やその他の材料から製造される。
【0031】
代わりの面では、本体構造は締結機構により保護層に取り付けられる。このような面では、本体構造の上表面と保護層の下表面との間に任意の可とう性ガスケット、例えばラテックス、シリコーンなどを置く。可とう性ガスケットは適宜、内部一体化成分として上記に議論したリングも有する。次に本体構造は、保護層に対し圧縮力で締結し、封止接合構造を形成する。好適な締結機構は、本体構造/保護層アッセンブリーから離れていてよい、即ち、スクリュークランプ、クリップ型クランプ、例えば本体構造及び保護層の端部を締結するクランプなどでよい。或いは保護層の一部として、その中に本体構造をスナップ止め(snap)した一体化締結機構を供給する。このような締結システムは、図3Bを参照して、以下に更に詳細に説明する。
【0032】
III.膜及び/又は導電性被膜を取り入れたミクロ流体装置及び方法
一般に操作可能で且つ商業的に価値のあるミクロ流体装置の開発プロセスには通常、種々の技術的障害を乗り越えることが含まれる。例えば細胞をベースとする実用的なミクロ流体アッセイの開発における一つの技術的問題は、微小規模のチャネルを塞いで操作不能にする細胞の塊又は凝集を除去することであった。他の挑戦は、試薬が例えばサンプル中に溶解するように、試薬をミクロ流体装置内にまとめて入れる(integrate)ための機能的な試薬配送システムを作ることであった。別の問題は、複数の装置中で例えば電極を用いると、ミクロ流体装置間で相互汚染が生じることであった。本発明はこれら全ての技術的問題に対する各種解決法を提供する。これらの解決法は、同一装置中で適宜単独で又は組合せて使用される。
【0033】
例えば本発明は、ミクロ流体装置中に配送される材料組成物を制御する方法を提供する。これらの方法は、ミクロ流体装置中に配置されたチャネル網及び該チャネル網と流動自在に連絡する少なくとも1つのウエルを供給する工程を有する。ウエルは、ウエル内又は上に配置された半透膜部を有する。第1の選択肢として、これらの方法は、材料(例えば粒子又は試薬など)を含む第1溶液を半透膜部経由でウエル中に流入させる工程を有する。第2の選択肢は、前記材料を半透膜部上に固定化する工程を有する。その後、第2の選択肢は、前記材料の少なくとも若干量が第2溶液に溶解し、半透膜部を通ってミクロ流体装置に入るように、第2溶液と前記半透膜部上に固定化した材料とを混合する工程を有する。この混合工程は適宜、ミクロ流体装置を振動、渦動、遠心運動などにより、半透膜部に付着した材料の少なくとも若干量を第2溶液に溶解する物理的技術を含む。どちらの場合も、第1又は第2溶液をウエルに流入させる前に、チャネル網には、少なくとも部分的に流体を満たすか、或いは第1又は第2溶液を少なくとも1つのウエルに流入させる前に、チャネル網は流体を含まない。
【0034】
選択した選択肢に関係なく、材料の凝集はふるい分けしてミクロ流体装置のチャネル網に入るのを防止する。ここで用いた「材料の凝集」という表現は、細胞の塊又は試薬分子などの材料の塊又は群れのことであり、これらがもし装置に入ったならば、チャネル網を塞ぐ恐れがある。利用される半透膜は、大きさに基づいて材料の凝集を選択的に排除する。通常、半透膜部の細孔の大きさは、少なくとも約0.1nmである。好ましい実施態様では、半透膜部の細孔の大きさは、少なくとも約10μm〜約100μmの範囲であり、細胞の塊を排除する。膜は適宜、ウエルの少なくとも一部分を覆い、且つ各ウエルを他のウエルから封止するように、本体構造と保護層との間に配置される。或いは膜は、ウエルの上又は上方に置かれる。
【0035】
好適な半浸透膜部としては適宜、例えば織布メッシュ膜、ミクロろ過膜、ナノろ過膜、透析膜、電気透析膜、予備蒸発(prevaporation)膜、逆浸透膜、超ろ過膜、複合膜、荷電膜、導電塗工膜、親水膜、疎水膜、ポリマーベースの膜、非ポリマーベースの膜、多孔質プラスチック母材膜(例えばPOREX(登録商標)Porous Plasticなど)、多孔質金属母材膜、ポリエチレン膜、二弗化ポリビニリデン膜、ポリアミド膜、ナイロン膜、セラミック膜、ポリエステル膜、金属膜、ポリテトラフルオロエチレン(登録商標TEFLON)膜、ポリアラミド膜、ポリカーボネート膜、粉末状活性炭膜、ポリプロピレン膜、ガラス繊維膜、ガラス膜、ニトロセルロース膜、セルロース膜、硝酸セルロース膜、酢酸セルロース膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜又はポリオレフィン膜などがある。Cheryan,Ultrafiltration and Microfiltration Handbook(第2編)Technomic Publishing Company,Lancaster,PA(1998年),Mulder,Basic Principles of Membrane Technology(第2編),Dordrecht;Kluwer(1996年),Ho及びSirkar(編)Membrane Handbook Van Nostrand Reinhold,New York(1992年)など、膜についての多数の刊行物も有用である。
【0036】
本発明方法は種々の材料を含有する。好ましい態様では、材料としては、細胞又は試薬分子などの粒子がある。ウエル中に流れる材料は通常、複数の細胞又は複数組の細胞を有し、またウエルに流れる第1溶液の容積は適宜、約0.5〜20μlであり、適宜約5〜15μlの範囲或いは例えば約10μlである。ウエル中に装入されたこの範囲の細胞サンプルの容量は、通常、例えば従来の細胞ろ過技術で使用される数百マイクロリッターよりも大幅に向上する。材料は適宜、原子、一組の原子、分子、一組の分子、ビーズ、一組のビーズ、機能化したビーズ、一組の機能化したビーズ、抗原、一組の抗原、蛋白質、一組の蛋白質、ペプチド、一組のペプチド、酵素、一組の酵素、核酸、一組の核酸、脂質、一組の脂質、炭水化物、一組の炭水化物、無機分子、一組の無機分子、有機分子、一組の有機分子、薬剤、一組の薬剤、受容体、一組の受容体、配位子、一組の配位子、抗体、一組の抗体、神経伝達物質、一組の神経伝達物質、サイトカイン、一組のサイトカイン、ケモカイン(chemokine)、一組のケモカイン、ホルモン又は一組のホルモンなどの試薬も含有する。
【0037】
前述のように、材料組成物の制御方法は適宜、材料をミクロ流体装置に配送する前に、材料(例えば標識した抗体、試薬、又はその他の粒子)を半透膜部上に固定化する工程を有する。或いは材料は、種々の技術又は組合せ技術を用いて固定化する。更に固定化工程は、半透膜部を少なくとも1つのウエル上に置く前に適宜行われる。好ましい実施態様では、固定化工程は、材料の少なくとも若干量が半透膜部に付着するように、半透膜部上で第1溶液を脱水する工程を有する。この固定化方法は適宜、空気乾燥するか、加熱乾燥するか、凍結乾燥するか、又は乾燥用試薬を用いるなどにより、第1溶液を脱水する工程を有する。前述のように、この技術は適宜、例えば1つ以上のウエルの上方に膜を置く前に、半透膜部上に材料含有第1溶液を点在させ(spot)、脱水する工程を有する。
【0038】
別の実施態様では、半透膜部は、疎水性被膜を有するか、或いは疎水性物質で構成され、また材料は、半透膜部上で疎水性引力によって固定化するように、疎水性材料である。同様に、半透膜部は親水性被膜を有するか、或いは親水性物質で構成され、また材料は、半透膜部上で親水性引力によって固定化するように、親水性材料である。多数の疎水性及び親水性の被膜又は物質が公知であり、適宜本発明の方法及び装置に使用される。例えば好適な疎水性の被膜又は物質としては適宜、例えば疎水性ポリマー、フルオロカーボンポリマー、塩素化ポリシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン(登録商標TEFLON)、ポリグリシン、ポリアラニン、ポリバリン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、塩素末端ポリジメチルシロキサンテロマー、ビス(パーフルオロドデシル)末端ポリ(ジメチルシロキサン−共ダイマー酸)、又はそれらの誘導体がある。一般にTEFLON(登録商標)が好ましく、各種市場の供給源から容易に入手できる。適切な親水性被膜及び物質としては適宜、例えば親水性ポリマー、ポリイミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、親水性ポリサッカライド、ヒアルロン酸、コンドロイチンサルフェート、又はそれらの誘導体などがある。
その他の固定化技術としては、例えば半浸透膜に正味(net)電荷を含有させる工程がある。一方、材料は、半透膜部上で静電引力によって固定化するように、半透膜部とは逆の正味電荷を有する。
【0039】
本発明はミクロ流体装置にも関し、この装置は、少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に膜(例えば半透膜部)が配置されるように、保護層の第1表面の少なくとも一部と本体構造の第1表面との間に膜を配置したものである。この装置の一面は適宜、特に装置中に配送された材料(例えば試薬、細胞又はその他の粒子)組成物を制御するために適宜利用される。使用される半透膜部の種類は、前記大きさの細孔を有する他、適宜前述のいずれの種類も含む。
前述のように、例えば複数のミクロ流体装置で電極を使用する際は、場合によってはミクロ流体装置間で相互汚染が生じる。このような形状の汚染は通常、装置のウエル中に位置する液体中に電極を直接置いた時に起こる。この問題に取り組むため、本発明は適宜、乾燥した接触電極を用いてこの種の汚染を最小にする導電性被膜を使用する。導電性被膜は適宜、例えばメッキ、電鋳又は蒸着などにより付着させる。また導電性被膜は適宜、例えば該被膜が1つ以上のウエルの内側表面の少なくとも一部を被覆すると共に、該ウエルの上部リムを越えて伸びるように、装置の1つ以上のウエル中に押し込んだ金属又は他の導電性材料のプレフォーム片を有する。導電性被膜は適宜、例えば装置のミクロチャネルと導電性供給源との間に適宜導電的接続が作られるように、装置の1つ以上のウエル中に押し込んだ導電性材料の薄いリング(又はその他の機能的に同等の形状)を有する。
【0040】
一実施態様では、複数のポートの各々は、本体構造の第1表面における各ポートの周囲に配置されたリム及び内側表面を有し、該複数のポートの少なくとも1つについてのリムの少なくとも一部及び内側表面は導電性被膜を有する。この実施態様では、例えば保護層を、ウエルとは流動自在に連絡しないが、ポートのリム及び/又は内側表面に配置した導電性被膜とは導電的に連絡する導電性入口を有するよう変形することにより、適宜導電性被膜と電極との間に導電性接触が作られる。リムは通常、例えば少なくとも約1μmの複数のポートの各々の縁端から伸びる少なくとも1つの幅を有する。
別の実施態様では、1対の整列した開口とポートとの間に膜(例えば半透膜部)が配置されるように、保護層の内側表面の少なくとも一部と本体構造の第1表面との間に膜も適宜配置される。1対の整列した開口とポートとの間に配置された膜の一部は適宜、導電性被膜と導電的に接続する。使用される半透膜部の種類は、前記大きさの細孔を有する他、適宜前述のいずれの種類も含む。この実施態様では保護層も適宜、導電性供給源(例えば電極)を導電性被覆と導電的に連絡させる入口を有する。
【0041】
また本発明のミクロ流体装置は通常、第1表面に対向して第2表面を備えた保護層を有し、保護層では複数の開口が第1表面から第2表面まで伸びている。これら複数の開口は、保護層の第2表面及び内側表面内の各開口の周囲に配置されたリムを有し、リムの少なくとも一部及び開口の少なくとも1つの内側表面は導電性被膜を有する。このリムは一般に、例えば少なくとも1μmの複数の開口の各々の縁端から伸びる少なくとも1つの幅を有する。この実施態様では、膜が1対の、整列した開口とポートとの間に配置されるように、保護層の第1表面の少なくとも一部と本体構造の第1表面との間に膜が適宜配置される。更に、膜の少なくとも一部も適宜、導電性被覆に導電的に接続する。
上記に議論したとおり、本発明のミクロ流体装置は、接着剤(例えば紫外線硬化性接着剤)がポートの中に入って、ポート内のアッセイ成分と接触するのを防止するように働く複数のリングを有する。リングは適宜、保護層の第1表面上の開口の周りに成形され、保護層と一体的である。或いはリングは、本体構造の第1表面中に配置されたポートの周りに成形され、本体構造と一体的である。更に代わりの方法として、リングは保護層や本体構造から離れている。いずれにしても、装置は適宜、保護層の第1表面の少なくとも一部と本体構造の第1表面との間に配置された膜(例えば半透膜部)を有する。膜は通常、複数のリングの少なくとも1つの表面の少なくとも一部が膜を含むように、少なくとも1対の、整列した開口及びポートの間に配置される。更に、使用される半透膜部の種類は、前記大きさの細孔を有する他、適宜前述のいずれの種類も含む。
【0042】
導電性被覆を有する他の実施態様では、整列した、ポート、リング及び開口は、保護層の第2表面及び内側表面上の環状隆起内のウエルの周囲に配置されたリムを有するウエルを規定する。少なくとも1つのウエルのリム及び内側表面は適宜、導電性被覆を有する。相互汚染を最小にするため、例えばウエル内の液体中に電極を挿入する代わりに、ウエルの導電性被覆リムに電極を接触させることにより、適宜簡単に導電的接続が達成する。リムは通常、例えば少なくとも1μmの各ウエルの縁端から伸びる少なくとも1つの幅を有する。
この実施態様では、保護層は適宜、導電性供給源(例えば電極)が導電性被覆と導電的に連絡できるように入口を有する。この装置も適宜、保護層の第1表面の少なくとも一部と本体構造の第1表面との間に膜(例えば半透膜部)を有する。膜は適宜、リングの少なくとも1つの表面の少なくとも一部が膜を含むように、例えば1対の、整列した開口及びポートの間に配置される。別の選択肢は、第2表面上の少なくとも1つの開口を取り囲む少なくとも1つの環状隆起の上方に膜を配置することである。使用される半透膜部の種類は、前記大きさの細孔を有する他、適宜前述のいずれの種類も含む。更に、1対の整列した開口及びポートの間に配置された膜の少なくとも一部は適宜導電性被膜に導電的に接続する。
【0043】
導電性被覆(例えば単一又は多層の被膜)を有する本発明のいずれの実施態様においても、該被膜としては適宜、例えば熱導電性被膜及び/又は電気導電性(例えば半導電性及び/又は超導電性など)被膜がある。本質的にはいかなる導電性被膜も適宜使用され、例えば金属含有導電性被膜、メタロイド含有導電性被膜及び/又は金属−メタロイド含有導電性被膜がある。前述のように、導電性被膜は適宜、メッキ、電鋳又は蒸着などにより付着させる。これら及びその他の技術は当該技術分野で公知である。
導電性被膜用に好適な金属としては、例えばLi、Be、Na、Mg、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Fr、Ra、Ac、ランタニド、アクチニド、及びそれらの化合物及び/又は組合せが挙げられる。例えばメタロイド含有導電性被膜に使用されるメタロイド(又は半金属)としては適宜、例えばAl、Ge、As、Po、B、Si、Te、At、及びそれらの化合物及び/又は組合せが挙げられる。或いは被膜は、金属及びメタロイドの両方(即ち金属−メタロイド含有導電性被膜)を含む合金を含有する。また導電性被膜は適宜、例えばカーボン及びグラファイト、金属の酸化物及び硫化物のような金属塩、金属水素化物、又は導電性有機ポリマー(例えばポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、それらの誘導体など)などを含有する。このような被膜は当該技術分野で多数知られ、市場の供給源から容易に入手できる。
【0044】
IV.図示の実施態様
本発明のミクロ流体装置と関連して使用される保護層の一面を図2の、上面図(図2A)、側面図(図2B)、下面図(図2C)、上部斜視図(図2D)及び下部斜視図(図2E)で示す。図示のように、保護層200は形状が平坦で、上平面202及び下平面204を有する。また例えば上平面から下平面まで保護層を貫通して配置された複数の開口206も有する。開口206は、本体構造が保護層200の下平面204に合体した時、(例えば図1に示すように)ミクロ流体装置の本体構造中のポート/リザーバーと整列するよう保護層内に設けてある。図示していないが、前述のように、接着剤、例えば紫外線硬化性接着剤がポートの中に入り、ポート内にあるアッセイ成分と接触するのを防止するため、上記整列した開口及びポートの間にこれらを取り囲んでリングも適宜配置される。図示していないが、更にここで議論したように、材料の凝集をふるい分けしてから材料を装置に配送するなどにより装置内の材料組成物の制御に使用するため、上記整列した開口及びポートの間に適宜、膜(例えば半透膜)が配置される。例えば装置間の相互汚染を最小にするため、導電性被膜も適宜使用される。
【0045】
図示するように、保護層200中の開口206は、装置の本体構造上にあるポートの格子状模様に合わせるため、同様な格子状模様で設けられる。通常、開口及びポート(集合的に、リザーバー)の格子状配列は、通常のマルチウエル板、例えば96−ウエル、384−ウエル、1536−ウエルなどの間隔に合わせるため、規則的な中心上、例えば9mm、4.5mmなど上に配置される。
図示のように、環状隆起208は、各々別個の開口206を取り囲んで保護層200の上表面202上に設けられる。この隆起は、装置全体で隣接するリザーバー間のバリヤーとなる上、得られた装置の各リザーバーの有効容積を増大させるように働く。更に、保護層中の開口206は適宜、上表面では広く、下表面では狭いテーパー壁210を備える。テーパー壁は、流体をミクロ流体装置のポートに導入する際、開口にロート様機能を与える。即ち、広い方の開口部は、流体のリザーバーへの導入を容易にする。開口壁及び環状隆起に配置されたリムも適宜、導電性被膜を有する。
【0046】
また図示のように、保護層200の下平面204上には、ミクロ流体装置100の本体構造(図1)を保証するため、整合用構造として働く一連の立ち上がり隆起212が製造され、下平面は結合又は合体プロセス中、保護層に対し適切に整列される。隆起として示したが、装置の本体構造を被覆層と整列させるため、下平面上には多数の各種整合用構造を設けてよいことは理解されよう。例えば本体構造に適合するように構成した凹み領域を使用して、本体構造を凹み領域に置けば、本体構造が保護層中の開口と適切に整列する位置となる。或いは保護層と適切に整列させる際、整合用ピンを下面から伸ばして設け、その上に本体構造を載せてもよい。
保護層200の下面204上には、小さな高いスポット214がある。これらの高いスポット又は隆起は、本体構造を保護層と合体させる際、本体構造を下面204の僅かにずれた(set off)位置に維持する。高いスポット214によるこの小さなずれは、本体構造を保護層に取り付けるため、結合用接着剤を本体構造と保護層との間に挿入させるものである。
【0047】
図示のように、保護層200は、下平面204から伸びて、効果的に中空の背持たれ構造を作る側壁216を有する。この中空背持たれ構造は、保護層の全体的な輪郭を変更することなく、ミクロ流体装置の本体構造を保護層の下面に取り付けるもので、例えば組合せた装置−保護層を表面に平らに置いたり、或いは他の同様な装置と重ねることができ、また製造、例えば成形部品の硬化などに有益である。保護層は、被覆層に本体構造を取り付けるための整合用構造を提供する他、図示のように、別の整合用構造218及び220も有する。これらの整合用構造は、コントローラ/検出器のような適切なベースユニット(図示せず)中に装置全体を適切に整列させるものである。特に、保護層を貫通して配置した整合用孔218は、コントローラ/検出器(図示せず)上に設けられる整合用ピンに相補的である。コントローラ/検出器のピンを装置全体上の孔と合わせることにより、装置と前記機器の適当なエレメント、例えば電極、光学的検出器、熱障害物などとの適切な整列が保証される。保護層200は、整合用孔218の他、傾斜コーナー220も有する。これは更に、装置のコントローラ/検出器中への適切な整列を保証する。また同様な目的を達成するため、不規則な縁端、例えば傾斜、垂れ下がりなどの縁端、整合用ピン、不均一な形状など、多数の各種整合用構造が使用できる。
【0048】
図2Aに示すように、保護層は都合の良い特徴を有する。例えば保護層と組立装置とを手動で取り扱う握り表面を供給するため、側壁には型押模様(textured)領域222を設けられる。また保護層を貫通して登録ポート224が設けられる。コントローラ/検出器中に挿入されたミクロ流体装置の種類を登録するため、保護層中には種々の数、大きさ及び/又は形状の登録ポートが適宜設けられる。これは、適切なインターフェースの使用、及び/又は適切な制御プログラムの走行を保証するものである。
【0049】
図3Aは、保護層200の下面と合体すると共に、前述のように、例えば接着剤を用いて結合させた本体構造100を有する完全組み立てミクロ流体装置300を示す。前述のように、保護層及び本体構造の整列した開口及びポートを取り囲んでそれらの間にはリングも適宜配置される。更に、整列した開口とポートとの間には適宜膜も配置される。例えば図3Aに示すような平坦な装置の寸法は、装置の利用目的に応じて実質的に変えることができる。しかし完全に組み立てた装置は通常、長方形を有し、また一辺(side)は約5mm〜約200mm、好ましくは約10mm〜約100mm、更に好ましくは約20mm〜約70mmの範囲、例えば約50mmである。例えば一辺が約50mmの正方形の装置を示す。このような装置は、取り扱いが容易であり、またこの大きさの基板、即ち写真用スライドを取り扱うために既に寸法合わせした機器に容易にアクセス可能である。
【0050】
図3Bは、装置の保護層中に一体化した締結機構を示す。図示のように、特に保護層200(一部を示す)は、底面上にクリップタブ310を有する。これらのクリップは曲がって本体構造100を挿入し、次いでスナップ作動して、本体構造100を、係り312により保護層200に対して所定の位置でロックする。ガスケット314は、これら2つの構造間を封止すると共に、クリップで本体構造と保護層とを圧縮力で締結するのに必要な可とう性を与える。ガスケット314は適宜、ラテックス又はシリコーンなどの可とう性材料、又はポリテトラフルオロエチレン(登録商標TEFLON)、ポリプロピレンなどの半硬質材料から製造される。ガスケットは適宜、内部一体成分として、上記に議論したリングも有する。
平坦な本体構造に取り付けた平坦な保護層として図示したが、適切な保護層は適宜、平坦ではないミクロ流体装置、例えば管状キャピラリーなどに結合させる。この場合、保護層中の開口はまた、ポート、例えばキャピラリーチャネルの入口及び出口と整列するように製造する。
【0051】
本発明と関連して使用するために説明した保護層は、前記利点、例えばリザーバーの隔離、リザーバー容量の増大などの他、適宜その他の有用な利点も有する。例えば保護層中の開口の形状は適宜、充填(filling)装置、例えば注入器又はポンプ上の相補的構造を収容するように構成する。即ち、ある場合は、ミクロ流体装置のチャネル網を流体で満たすのを助けるため、正圧供給源を使用することが望ましい。これは通常、充填溶液、例えばランニング緩衝液、分離母材などに対し、キャピラリー動作によるチャネル網中への吸い上げ作用が粘度効果のため遅い場合に有用である。操作中、ランニング緩衝液、分離母材などは、ミクロ流体装置の1つのリザーバーに入れる。次いで、このリザーバーに正圧を適用し、これにより流体をチャネル網全体に押し込める。
【0052】
正圧の適用は、実際に内部の流体に接触することなく、リザーバー全体に封止可能に、嵌まる装置を用いて行うのが好ましい。このような装置の例を、保護層上に適切に形成した開口も含めて、図2Fに示す。図示のように、充填装置250は、注入器252及び硬質管254、例えば針を有する。硬質管/針は、ゴム製、例えばラテックス、シリコーンなどのボールストッパー256を貫通して挿入される。このボールストッパーは保護層200中の開口206内に適切に、嵌まるように選ばれる。開口206の円錐形により、ボールストッパー256は開口206内に挿入できる。次いで、ストッパーの開口壁に対する圧縮力により、正圧の(positive)封止が生じる。更に、ボールストッパー256内には、リザーバー106内の流体に接触することなく、リザーバー106に加圧できるように、硬質管/針254が配置されている。特に管の長さがストッパーの表面を殆ど又は全く越えないように、例えばストッパーの表面を越えて伸びる管の長さが2mm未満、好ましくは1mm未満、更に好ましくは0.5mm未満でストッパーを貫通して管が挿入される。
【0053】
次に注入器252の作動により加圧すると、リザーバー106内の流体は、装置100のチャネル網(図示せず)中に押し込まれる。代わりの形状のストッパー258及び260も、充填装置用として示した。好ましいストッパー260では、ストッパーのボール部分は開口内に入って、ボール部分の圧縮力が正圧封止を供給する。このボールの形状によって、充填装置の封止能力に悪影響を与えることなく、充填装置を、普通の状態(normal)から保護層200の平面までの約15°以下の角度で挿入可能である。或いは平坦な出っ張り264が開口106を取り囲む保護層の上面に接触するまで、バールを挿入することができる。これは、ボールストッパーの他に、充填装置用の第2の封止を供給する。注入器として図示したが、外部ポンプ、ピペットなど、いかなる圧力供給源も実質的に充填装置用として好適であることは理解されよう。ストッパーの頂部には適宜、注入器252又はポンプ出口を収容するための凹み領域266がある。
保護層により別の機能も適宜達成される。例えばある場合は、ミクロ流体装置に導入されるサンプルに対する分離機能、例えばろ過、細胞分離、分子量分離、親和性、電荷による(based)か又は疎水性相互反応型の分離を行うのが望ましいことがある。従って、保護層上に開口内又は開口を亘って適切なろ過又は分離媒体或いは膜を適宜設ける。保護層を装置の本体構造と一体化した場合、本体構造へのサンプルの導入は、ろ過器又は膜の通過、並びに粒状成分及びポリマー材料などの分離を必要とする。
【0054】
別の一面では、保護層中の開口が装置の本体構造上のリザーバーの2つ以上、例えば2、3、4、5、10又は更には20の異なるリザーバーと連絡している場合、保護層は流体の取り扱い及び方向付け機能、例えばマニホールド機能を行う。このようなシステムでは、ミクロ流体装置の本体構造内で単一のサンプルに対し複数の異なる分析を行う場合、例えば単一の患者サンプルに対し複数の診断テストを行う場合の診断的利用に特に有用である。当該技術分野に精通する通常の者ならば、その他、種々の変更が可能であることは明らかであろうし、これらの変更は、付属の特許請求の範囲で述べたとおり、一般に本発明により包含される。
或いは保護層は、例えば一体化した光学的エレメント、例えばレンズ、格子、被膜、研磨した検出窓など、共有の米国特許第6,100,541号(Negleなど、2000年8月8日発行)に"Microfluidic Devices and Systems Incorporating Integrated Optical Elements"と題して記載されるようなミクロ流体装置及びシステムの操作に有用なその他の成分を含んでいてもよい。この特許はあらゆる目的で全体をここに援用する。これらの成分は、外部検出システムから光学的エレメントを補うか置換するものである。
【0055】
V.システムの説明
上記から判るように、ここで説明したミクロ流体装置は一般に、コントローラ装置と共同で操作する。通常のコントローラ装置は、ミクロ流体装置のチャネル及びチャンバーの内部及び間の材料、例えば流体の移動に影響を与えるための材料輸送システムを有する。例えば圧力による流体流を用いるか或いは圧力で作動するミクロポンプ及びバルブを取り入れたたミクロ流体システムの場合、コントローラ装置は通常、圧力供給源や、ミクロ流体装置上の相補的ポートに適切な圧力を配送するための適切なマニホールドを有する。次にコントローラ装置は、装置のチャネルに制御状態でこれらの流体を通すため、圧力/真空を加えてポンプ及びバルブを作動させ、或いは直接、流体に圧力/真空を加える。動電学的物質輸送システムを採用したミクロ流体システムの場合、コントローラは通常、装置をコントローラ中に取り付ける際、前述のように、ミクロ流体装置内のチャネルの長さに亘って電圧勾配を配送できる電力源(supply)を有する。特定の好ましい電力源は、例えば公開国際出願第WO 98/00707号に記載されている。この出願特許はあらゆる目的のため全体をここに援用する。
【0056】
従って、コントローラは通常、装置のチャネルに電圧勾配を配送するための適切なインターフェースを有する。このようなインターフェースは一般に、共有の米国特許第5,989,402号に詳細に記載されている。この特許はあらゆる目的のため全体をここに援用する。要するに、このようなインターフェースは通常、電力源から電気リードに操作可能に結合した多数の電極を有する。コントローラも通常、組み重ね(nesting)領域、例えばウエル又はプラットホームを有し、この上にミクロ流体装置を取り付ける。電極は、装置のチャネルと電気的に接触するように配置する。好ましい一面では、このような配置は、装置の頂部全体を閉じるように、組み重ね領域に丁番付けした「二枚貝の殻(clam shell)」蓋(lid)を供給することにより達成される。例えば図1〜3に示すような装置は、上方に対面するリザーバーと共に、組み重ね領域上に取り付けられる。次に上記貝殻蓋を閉じると、貝殻蓋の下面から突き出た電極は、これらリザーバー中の流体と電気的に接触するように、ミクロ流体装置の上面上のリザーバー中に入る。
例えばミクロ流体装置が置かれる環境条件を最適レベルで維持するため、コントローラ装置には適宜、環境制御エレメントが含まれる。例えばコントローラは適宜、熱制御エレメント、例えば加熱ブロック、ペルチエ(peltier)装置などを有する。
【0057】
好ましい面では、コントローラ装置は制御エレメントの他、ミクロ流体装置で行った操作の結果を検出するための検出システムも有する。従って、コントローラ装置はコントローラ/検出器装置とも云われる。
特に好ましい検出システムは、蛍光検出システムを有する。通常、これら検出システムは、コントローラ/検出器装置内にレーザー、レーザーダイオード、LED又は高強度ランプのような光源を有する。この検出器は通常、コントローラ/検出器装置上に取り付けたミクロ流体装置の検出窓において光源を検出するための適切な光学部品、例えばレンズ、ビームスプリッター、フィルター及びジクロイクス(dichroics)なども有する。これらの光学部品も装置のチャネルから出る蛍光発光を集め、反射した励起光を選別し、次いで例えばフォトダイオード又は光電子増倍管(PMT)を用いて蛍光発光を検出する。その他の光学的検出システムは適宜、コントローラ/検出器装置中に例えば吸光度又は比色検出システムなどとして入っている。蛍光による検出システムも吸光度による検出システムも当該技術分野で周知である。
コントローラ/検出器装置も通常、適当なプロッセッサー、例えば材料輸送システムの操作、例えば適用電圧、タイミングなどを指示する、適切にプログラムされたコンピュータとインターフェースしている。プロセッサーも通常、コントローラ/検出器装置の検出システムに操作可能に接続しているので、コンピュータはこの検出システムから集めたデータを受け取り、蓄積し、処理することができる。
【実施例】
【0058】
VI.
A.ミクロ流体装置での膜の使用
ナイロンメッシュ膜片(細孔寸法40μm)をDNA 7500 LabChip(登録商標)保護層の第1表面上に置いた。次いで、ns88チップを保護層上に向け、更に紫外線硬化性DYMAX(登録商標)接着剤を、標準の製造技術を用いて塗布した。この接着剤は、チップの下で膜を通って吸い上がったが、装置のウエル中に配置された膜の上では浸食しなかった。接着剤の硬化後、ウエルの中の1つの膜上に5μlの緩衝液を置いた。緩衝液は連続的に膜を通過してチップのミクロチャネルを満たした。
【0059】
各刊行物又は特許出願を詳細に個別的に示して援用するのと同じ程度に全ての刊行物及び特許出願をここに援用する。本発明は明確化及び理解の目的で図解及び例示により若干詳細に説明したが、付属の特許請求の範囲内で或る種の変化及び改良が実施できることは明らかであろう。
【符号の説明】
【0060】
100‥‥ミクロ流体装置又は本体構造102‥‥上層104‥‥上層の下面106‥‥ポート又はリザーバー110‥‥下層112‥‥下層の上面116‥‥検出窓200‥‥保護層202‥‥上平面204‥‥下平面206‥‥開口208‥‥環状隆起210‥‥テーパー壁212‥‥立ち上がり隆起214‥‥高いスポット216‥‥側壁218、220‥‥整合用構造222‥‥型押模様領域224‥‥登録ポート250‥‥充填器252‥‥注入器254‥‥硬質管又は針256、258、260‥‥ストッパー310‥‥クリップタブ312‥‥係り314‥‥ガスケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料組成物のミクロ流体装置への配送を制御する方法であって、
ミクロ流体装置中に配置した少なくとも1つのチャネル網と、該少なくとも1つのチャネル網と流動自在に連絡するウエルであって、ウエル内又はウエル上に配置された少なくとも1つの半透膜部を有する少なくとも1つのウエルとを供給する工程と、
少なくとも1つの材料を含む少なくとも1つの第1溶液を前記少なくとも1つの半透膜部経由で前記少なくとも1つのウエル中に流入させる工程、又は
前記少なくとも1つの材料を前記少なくとも1つの半透膜部上に固定化し、少なくとも第2溶液をミクロ流体装置の前記少なくとも1つのウエルに流入させ、そして、前記第2溶液と前記少なくとも1つの半透膜部上に固定化した少なくとも1つの材料とを混合させ、これにより、前記少なくとも1つの材料の少なくとも若干量を第2溶液に溶解させて前記少なくとも1つの半透膜部を通ってミクロ流体装置に入れる工程と
を含む、材料組成物のミクロ流体装置への配送を制御する方法。
【請求項2】
前記第1又は第2溶液を少なくとも1つのウエルに流入させる前に、少なくとも1つの流体を前記少なくとも1つのチャネル網中に少なくとも部分的に満たす請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1又は第2溶液を少なくとも1つのウエルに流入させる前に、前記少なくとも1つのチャネル網は流体を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの材料が、細胞又は一組の細胞からなる少なくとも1つの粒子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの材料が、原子、一組の原子、分子、一組の分子、ビーズ、一組のビーズ、機能化したビーズ、一組の機能化したビーズ、抗原、一組の抗原、蛋白質、一組の蛋白質、ペプチド、一組のペプチド、酵素、一組の酵素、核酸、一組の核酸、脂質、一組の脂質、炭水化物、一組の炭水化物、無機分子、一組の無機分子、有機分子、一組の有機分子、薬剤、一組の薬剤、受容体、一組の受容体、配位子、一組の配位子、抗体、一組の抗体、神経伝達物質、一組の神経伝達物質、サイトカイン、一組のサイトカイン、ケモカイン、一組のケモカイン、ホルモン、及び一組のホルモンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の試薬である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
混合工程が更に、ミクロ流体装置を振動、渦動、又は遠心運動させて、前記少なくとも1つの半透膜部に付着した少なくとも1つの材料の少なくとも若干量を第2溶液に溶解する物理的技術を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの半透膜部を少なくとも1つのウエル上に配置する前に固定化工程を行う請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの半透膜部が疎水性被膜からなり、前記少なくとも1つの材料が疎水性材料からなり、前記少なくとも1つの材料は前記少なくとも1つの半透膜部上で疎水性引力によって固定化している請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの半透膜部が親水性被膜からなり、前記少なくとも1つの材料が親水性材料からなり、前記少なくとも1つの材料は前記少なくとも1つの半透膜部上で親水性引力によって固定化している請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの半透膜部が正味電荷を有し、前記少なくとも1つの材料が前記少なくとも1つの半透膜部とは逆の正味電荷を有し、前記少なくとも1つの材料は前記少なくとも1つの半透膜部上で静電引力によって固定化している請求項1に記載の方法。
【請求項11】
固定化工程が、前記少なくとも1つの材料の少なくとも若干量が前記少なくとも1つの半透膜部に付着するように、少なくとも1つの材料を含む第1溶液を、少なくとも1つの半透膜部上で脱水する工程からなる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
空気乾燥するか、加熱乾燥するか、凍結乾燥するか、或いは乾燥用試薬を用いて、第1溶液を脱水する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
内部に少なくとも第1微小規模のチャネル網を配置してなる本体構造であって、該本体構造は、該構造の少なくとも第1表面に配置された複数のポートを有し、各ポートは第1チャネル網中の1つ以上のチャネルと流動自在に連絡している前記本体構造と、 保護層の少なくとも第1表面を貫通して該表面内に複数の開口を配置してなる保護層であって、該開口が前記ポートと流動自在に整列するように、該保護層の第1表面は前記本体構造の第1表面に嵌まっている前記保護層と、 少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に少なくとも1つの膜部が配置されるように、前記保護層の第1表面の少なくとも一部と前記本体構造の第1表面との間に配置された前記少なくとも1つの膜と、を有するミクロ流体装置。
【請求項14】
前記保護層が更に、前記本体構造を保護層の第1表面上に整列させるための少なくとも第1整合用構造を有する請求項13に記載のミクロ流体装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの膜が、少なくとも1つの半透膜部からなる請求項13に記載のミクロ流体装置。
【請求項16】
内部に少なくとも第1微小規模のチャネル網を配置してなる本体構造であって、該本体構造は、該構造の少なくとも第1表面に配置された複数のポートを有し、各ポートは、第1チャネル網中の1つ以上のチャネルと流動自在に連絡し、該複数のポートの各々は、前記本体構造の第1表面内の各ポートの周囲に配置されたリムと内側表面とを有し、該複数のポートの少なくとも1つについてのリムの少なくとも一部及び内側表面は導電性被膜を有する前記本体構造と、 保護層の少なくとも第1表面を貫通して該表面内に複数の開口を配置してなる保護層であって、該開口が前記ポートと整列し且つ流動自在に連絡するように、該保護層の第1表面は前記本体構造の第1表面に嵌まっている前記保護層と、を有するミクロ流体装置。
【請求項17】
前記保護層が更に、前記本体構造を保護層の第1表面上に整列させるための少なくとも第1整合用構造を有する請求項16に記載のミクロ流体装置。
【請求項18】
更に、少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に少なくとも1つの膜部が配置されるように、前記保護層の第1表面の少なくとも一部と前記本体構造の第1表面との間に配置された前記少なくとも1つの膜を有し、前記少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置された少なくとも1つの膜の少なくとも一部は前記導電性被膜に導電的に接続している請求項16に記載のミクロ流体装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの膜が、少なくとも1つの半透膜部である請求項18に記載のミクロ流体装置。
【請求項20】
内部に少なくとも第1微小規模のチャネル網を配置してなる本体構造であって、該本体構造は、該構造の少なくとも第1表面内に配置された複数のポートを有し、各ポートは第1チャネル網中の1つ以上のチャネルと流動自在に連絡している前記本体構造と、 第1表面から、対向する第2表面まで伸びた複数の開口を有する保護層であって、該複数の開口の各々は更に、前記保護層の少なくとも第2表面の各開口の周囲に配置された少なくとも1つのリムと内側表面とを有し、該複数の開口の少なくとも1つについての少なくとも1つのリムの少なくとも一部及び内側表面は導電性被膜を有する前記保護層と、を有するミクロ流体装置。
【請求項21】
前記保護層が更に、前記本体構造を保護層の第1表面上に整列させるための少なくとも第1整合用構造を有する請求項20に記載のミクロ流体装置。
【請求項22】
更に、少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に少なくとも1つの膜部が配置されるように、前記保護層の第1表面の少なくとも一部と前記本体構造の第1表面との間に配置された前記少なくとも1つの膜を有する請求項20に記載のミクロ流体装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの膜が、少なくとも1つの半透膜部である請求項22に記載のミクロ流体装置。
【請求項24】
前記少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置された少なくとも1つの膜の少なくとも一部が、前記導電性被膜に導電的に接続している請求項22に記載のミクロ流体装置。
【請求項25】
内部に少なくとも第1微小規模のチャネル網を配置してなる本体構造であって、該本体構造は、該構造の少なくとも第1表面に配置された複数のポートを有し、各ポートは第1チャネル網中の1つ以上のチャネルと流動自在に連絡している前記本体構造と、 保護層の少なくとも第1表面を貫通して該表面内に複数の開口を配置してなる保護層であって、該開口が前記ポートと流動自在に整列するように、該保護層の第1表面は前記本体構造の第1表面に嵌まっている前記保護層と、 複数のリングの各々が前記保護層と前記本体構造との間に、前記複数の開口の少なくとも1つの周囲に、且つ前記複数の開口の1つ以上と整列した前記複数のポートの少なくとも1つの周囲に配置された前記複数のリングと、を有するミクロ流体装置。
【請求項26】
前記複数のリングの少なくとも1つが、本体構造、保護層又はそれら両方と一体化している請求項25に記載のミクロ流体装置。
【請求項27】
各リングの厚さが約1μM〜約1,000μMである請求項25に記載のミクロ流体装置。
【請求項28】
前記保護層が更に、前記本体構造を保護層の第1表面上に整列させるための少なくとも第1整合用構造を有する請求項25に記載のミクロ流体装置。
【請求項29】
更に、少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に少なくとも1つの膜が配置されるように、前記保護層の第1表面の少なくとも一部と前記本体構造の第1表面との間に配置された前記少なくとも1つの膜を有し、前記複数のリングの少なくとも1つについての少なくとも1つの表面の少なくとも一部が、前記少なくとも1つの膜を有する請求項25に記載のミクロ流体装置。
【請求項30】
前記少なくとも1つの膜が、少なくとも1つの半透膜部である請求項29に記載のミクロ流体装置。
【請求項31】
前記保護層が更に、 前記第1表面に対向する第2表面を有し、前記開口が該第1表面から該第2表面まで伸びている前記第2表面と、 前記第2表面上に配置され、前記開口の各々を取り囲む複数の立ち上がり環状隆起と、を有する請求項25に記載のミクロ流体装置。
【請求項32】
更に、前記第2表面上の少なくとも1つの開口を取り囲む少なくとも1つの環状隆起の上に配置された少なくとも1つの膜を有する請求項31に記載のミクロ流体装置。
【請求項33】
前記少なくとも1つの膜が、少なくとも1つの半透膜部である請求項32に記載のミクロ流体装置。
【請求項34】
各々整列したポート、リング及び開口がウエルからなる請求項25に記載のミクロ流体装置。
【請求項35】
各ウエルが更に、前記開口、リング又はポート中のウエルの周囲に配置された少なくとも1つのリムと内側表面とを有し、該少なくとも1つのウエルについての少なくとも1つのリムの少なくとも一部及び内側表面は、導電性被膜を有する請求項34に記載のミクロ流体装置。
【請求項36】
更に、少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に少なくとも1つの膜が配置されるように、前記保護層の第1表面の少なくとも一部と前記本体構造の第1表面との間に配置された前記少なくとも1つの膜を有し、前記複数のリングの少なくとも1つについての少なくとも1つの表面の少なくとも一部が、前記少なくとも1つの膜を有し、前記少なくとも1対の整列した開口とポートとの間に配置された少なくとも1つの膜の少なくとも一部は前記導電性被膜に導電的に接続している請求項35に記載のミクロ流体装置。
【請求項37】
前記少なくとも1つの膜が少なくとも1つの半透膜部である請求項36に記載のミクロ流体装置。
【請求項38】
前記保護層が更に、 前記第1表面に対向する第2表面を有し、前記開口が該第1表面から該第2表面まで伸びている前記第2表面と、 前記第2表面上に配置され、前記開口の各々を取り囲む複数の立ち上がり環状隆起と、を有する請求項13又は16に記載のミクロ流体装置。
【請求項39】
請求項13、16、20又は25に記載のミクロ流体装置と、 前記ミクロ流体装置を収容するように構成したコントローラ/検出器装置であって、光学的検出システム及び材料輸送システムを有し、該検出システム及び該輸送システムは前記ミクロ流体装置と操作可能にインターフェースしている前記コントローラ/検出器装置と、を有するミクロ流体システム。
【請求項40】
前記保護層が、前記本体構造の第1表面に接着又は締結した請求項13、16、20又は25に記載のミクロ流体装置。
【請求項41】
前記保護層が、コントローラ/検出器装置においてミクロ流体装置を整列させるため、該コントローラ/検出器装置上の整合用構造に相補的な少なくとも第2整合用構造を有する請求項14、17、21又は28に記載のミクロ流体装置。
【請求項42】
前記少なくとも1つの半透膜部が、該膜部上に固定化された少なくとも1つの材料からなる請求項15、19、23、30、33又は37に記載のミクロ流体装置。
【請求項43】
前記保護層は更に、少なくとも1つの導電供給源が前記導電性被膜と導電的に連絡できるように、少なくとも1つの入口を有する請求項16、18、35又は36に記載のミクロ流体装置。
【請求項44】
前記導電性被膜が、電気的に導電性の被膜である請求項16、20、24又は35に記載のミクロ流体装置。
【請求項45】
前記導電性被膜が、金属含有導電性被膜、メタロイド含有導電性被膜、及び金属−メタロイド含有導電性被膜よりなる群から選ばれる請求項16、20、24又は35に記載のミクロ流体装置。

【図1】
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【図2A−E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2012−211914(P2012−211914A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−133822(P2012−133822)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【分割の表示】特願2001−574851(P2001−574851)の分割
【原出願日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願人】(506076709)カリパー・ライフ・サイエンシズ・インク. (11)
【Fターム(参考)】