説明

保護層付き現像ローラ、電子写真用プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置

【課題】トナーへのダメージを軽減するための柔軟化と、輸送時に生じる現像ローラ周辺の各種部材から受ける押圧による変形の防止を両立した現像ローラ及び画像形成初期から長期に亘って高品質な画像を得ることが出来る、かかる現像ローラを装着した電子写真用プロセスカートリッジや電子写真画像形成装置を提供する。
【解決手段】軸芯体上に表面が保護層で被覆されている導電性弾性層を設けた現像ローラを形成する際に、保護層厚さt、保護層を有する現像ローラの表面からの押込み深さ0.1t、t、10tでのユニバーサル硬度をB、C、Dとしたとき、次の関係を全て満たす保護層を現像ローラ表面に設ける。
(1)保護層と導電性弾性層とのテープ剥離試験による剥離面積が50%以上
(2)0.30B>C>0.05B
(3)C>D>0.10C
(4)3.00≦B≦50.00(N/mm2
(5)5≦t≦50(μm)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置、プリンタ、静電記録装置等の電子写真画像形成装置において、感光体周辺に配置される保護層付き現像ローラに関する。また、本発明は該保護層付き現像ローラを有する電子写真用プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機や光プリンタ等の電子写真装置、静電記録装置等には、電子写真画像形成装置が用いられている。電子写真画像形成装置には、回転可能な感光体と、その周囲に感光体を一様に帯電するための帯電手段が設けられている。さらに一様に帯電した感光体表面に露光により静電潜像を形成するための露光手段、感光体に現像剤(トナー)を供給して現像し、トナー像を形成するための現像手段が設けられる。上記に加え、感光体上のトナー像を転写材上に転写するための転写手段、転写材上のトナーを定着するための定着手段、トナー転写後の感光体表面に残留するトナーの除去を行うためのクリ−ニング手段等が設けられる。
【0003】
ここで、現像手段においては、トナーを収納する現像剤容器の開口を閉塞し、且つ、一部を容器外に露出するように現像ローラが設けられる。現像剤容器内で現像ローラに当接して設けられるトナー供給ローラと現像ローラが回転駆動することによって現像ローラ表面上にトナーを供給する。ついでトナー量規制部材により現像ローラ上の余剰なトナーを除去して、現像ローラ上に均一なトナー薄膜を形成すると同時に、トナー量規制部材および現像ローラとの摩擦によりトナー粒子に正または負の電荷を与える。さらに、正または負に帯電したトナーを、現像ローラの回転駆動によって露出部の現像領域まで搬送し、ここにおいて対向して設けられる感光体表面の静電潜像にトナーを付着させて現像が行われる(以下、現像プロセス)。
【0004】
上記現像プロセスが繰り返されると、現像ローラ、トナー量規制部材、トナー供給ローラとの摩擦によってトナーが徐々に劣化し、劣化したトナーが各種部材表面に付着することがある。劣化したトナーが各種部材の表面に付着した状態で現像プロセスを繰り返すと、トナーの帯電量が不足し、また現像ローラ上に均一なトナー薄膜を形成出来ないなど現像プロセスが上手く行われず、種々の画像弊害が生じることがある。そのため、トナーの劣化を防止するために、一般的に現像ローラには、柔軟な弾性体からなるローラが用いられることが多い。
【0005】
しかし、先述したように、現像ローラ周囲にはトナー量規制部材や感光体など各種部材が常に接している状態にある。そのため、輸送時など、長期間放置されると、各種部材から押圧を現像ローラの一定箇所に継続して受け続けるため、柔軟な弾性体からなる現像ローラの形状が変形することがある。この状態で初期画像の形成を行うと、現像ローラの変形部分において、トナー量規制部材により本来形成されるべきトナーの薄膜の形成を阻害されることがある。その結果、感光体への現像剤の供給量が変形部分で通常部分と比べて変動するため、画像上に現像ローラ周期で変形位置に相当する位置で線状の画像が生じてしまう。
【0006】
これらを解決するために現像ローラの材料や物性値などを調整することで、他部材による変形を抑制したり、変形の回復を早めたりするなど各種対策が練られている(特許文献1、2)。しかし、電子写真画像形成装置の今後の技術動向として、更なる印刷速度の高速化や、高寿命化がある。このような技術動向に対応して、現像ローラには、トナーへのダメージを確実に抑制できるような柔軟性を有すること、並びに、電子写真画像形成装置がユーザにより使用される前の保管時や輸送時における各種部材からの押圧による変形を抑えることが求められる。
【特許文献1】特開平10−268631公報
【特許文献2】特開平8−190263公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、柔軟な導電性弾性層を有し、かつ、輸送時などの長期保管時に生じ得る当該現像ローラの周辺の各種部材から受ける押圧によっても該導電性弾性層に永久変形を生じさせにくい保護層付きの現像ローラを提供することにある。また本発明の他の課題は、画像形成の初期において、現像ローラの変形によって生じる弊害を抑制でき、かつ長期に亘り、高品質な画像を提供することが可能な電子写真画像形成装置及びそれに用いられる電子写真用プロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る保護層付き現像ローラは、軸芯体と、該軸芯体上に設けられた導電性弾性層とを有しており、該導電性弾性層の表面が保護層によって被覆されている保護層付きの現像ローラであって、
該保護層の厚さをt、該保護層を設けた状態で現像ローラの表面からの押し込み深さ0.1t、t及び10tにおけるユニバーサル硬度をB、C及びDとしたとき、下記式(1)〜(5)で示される関係を全て満たすことを特徴とする保護層付き現像ローラ:
(1)該保護層と該導電性弾性層とのテープ剥離試験による剥離面積が50%以上であり、
(2)0.30B>C>0.05B;
(3)C>D>0.10C;
(4)3.00N/mm2≦B≦50.00N/mm2
(5)5μm≦t≦50μm。
【0009】
また、本出願に係る電子写真用プロセスカートリッジは、上記の保護層付き現像ローラを有し、電子写真画像形成装置の本体に脱着可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本出願に係る電子写真画像形成装置は、上記の保護層付き現像ローラを具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、高硬度かつ低接着性の保護層を柔軟な現像ローラ表面に設けることで、輸送時に他部材からの押圧により生じる変形を防止することが可能である。さらにこの保護層を設けた現像ローラが回転駆動を行うことによって、現像ローラ周辺に配置されたトナー供給ローラやトナー量規制部材などの他部材との摺擦によって、保護層は現像ローラ表面から剥離される。また、保護層剥離後には柔軟な現像ローラの表面特性によって、長期にわたって画像形成を繰り返しても、トナーへのダメージを抑制することが出来るため、常に高品質な画像を出力することが可能である。また、本発明の保護層を設けた現像ローラを使用した電子写真用プロセスカートリッジや電子写真画像形成装置は、先述した理由によって、高品質な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明にかかる現像ローラの概略図を図1に示す。図1(A)はこの現像ローラの長手方向に平行な断面を表したものであり、同1(B)は長手方向に垂直な断面を表したものである。図1の現像ローラでは、導電性軸芯体11の外周面の上に、導電性弾性層12と保護層13を順次積層した構造を有する。
【0014】
本発明の現像ローラの軸芯体11としては、材料は導電性および剛性を有している必要があり、例えば炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄、導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。ここで、合金鋼としては、例えばステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。さらに防錆対策として軸芯体材料にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきなどいずれも使用することが出来るが、寸法安定性の観点から無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、その他各種合金めっきなどがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni―P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきなどがある。めっき膜の厚みはそれぞれ0.05μm以上であれば好ましいが、より好ましくは0.1〜30μmである。
【0015】
また、軸芯体外周上の弾性層12に用いられる材料としては、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴムが挙げられる。これらの材料は単独で使用しても構わないし、又は複数種を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの材料の発泡体を弾性層に用いても良い。
【0016】
また、現像ローラの場合、求められる特性が多岐に渡るため、抵抗調整、表面性能などの機能分離を目的として、複数層の弾性層を設けることが多い。
【0017】
この際、弾性層全体の厚みは1.0mm以上、5.0mm以下であることが好ましい。ここで弾性層全体の厚みとは、複数層の弾性層が存在する場合には複数層全ての厚みをあわせた厚みを指す。弾性層の厚みがこの範囲であれば、軸芯体の硬さを弾性層によって十分に緩和し、弾性層の特性を現像ローラの特性として十分に活用することが可能である。また、より好ましい弾性層の厚みは1.5mm以上、4.5mm以下である。
【0018】
弾性層材料を導電化する手段としてはイオン導電機構、または電子導電機構による導電付与剤を弾性層材料に添加することにより導電化する手法が広く知られている。
【0019】
イオン導電機構による導電付与剤としては、
・周期表第I族金属の塩(LiCF3SO3、NaClO4、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaCl等)
・周期表第II族金属の塩(NH4Cl、(NH42SO4、NH4NO3等のアンモニウム塩、Ca(ClO42、Ba(ClO42等)
・上記塩と多価アルコール(1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等)との錯体
・上記塩とモノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等)との錯体
・陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤
などを用いることができる。
【0020】
また、電子導電機構による導電付与剤としては、以下のものを挙げることができる。
・炭素系物質(カーボンブラック、グラファイト等)
・金属や合金(アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅−ニッケル合金等)
・金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀等)
さらに上記の導電付与剤に銅、ニッケル、銀等の導電性金属めっきを施した物質等も導電付与剤として挙げることができる。
【0021】
これらイオン導電機構、電子導電機構による導電付与剤は粉末状や繊維状の形態で、単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。この中でも、カーボンブラックは導電性の制御が容易であり、また経済的であるなどの観点から好ましい。
【0022】
また軸芯体上に弾性層を作製する方法としては、押出成形法、型成形法、射出成形法などが挙げられる。これらの方法のうち型成形法が好ましい。型成形法は、他の成形方法と比べ、精度の高い導電性弾性層が連続生産により効率よく低コストで得られるため有用である。また、弾性層表面に更に新しい弾性層を設ける場合には、各層間の密着性を向上させ剥離を抑制するために、弾性層の表面をコロナ処理、フレーム処理、エキシマ処理、プラズマ処理等の表面改質方法にて改質することが好ましい。
【0023】
また、複数層の弾性層を形成する場合には、弾性層表面に再度弾性層を塗布する必要がある。
【0024】
このとき、使用できる弾性層材料や導電化手段としては先述した材料や手法を同様に用いることが出来るが、弾性層上に新たに弾性層を設けて複数層構成とする場合、新たに設ける弾性層の厚みとしては、1〜50μmが好ましい。より好ましくは1〜30μmであることが好まれる。新たに設けた弾性層の厚みがこの範囲であれば、下地に存在する弾性層の特性を活かしつつ、画像を繰り返して出力した場合の摩耗などによる劣化に対する耐久性を有することができる。
【0025】
このように弾性層上に新たに弾性層を薄く塗布する方法としては、ディッピング法、ロール塗工法、リングコート法およびスプレー塗工法など一般に知られている塗工法を用いることが出来る。その中でも、厚みを制御しやすいなどの理由からディッピング法を用いることが多い。その中でも、ディッピング法では粘度5〜50cpsの材料を用いるのが好ましい。この粘度の範囲で材料をディッピングすることで、形状を崩すことなく安定して薄く均一に弾性層を形成することができる。
【0026】
また、現像ローラの硬度としては、Asker C硬度で45度以上、70度以下であることが好ましい。Asker C硬度がこの範囲であれば、現像ローラ上に均一にトナーがコートされるとともに、現像プロセス中に現像ローラとの摩擦によってトナーが受けるダメージを抑えることが可能である。
【0027】
次に現像ローラの導電性弾性層の表面を被覆している保護層13について説明する。まず、保護層の厚みをt[μm]としたとき、保護層を設けた状態での現像ローラ表面からの押し込み深さ0.1t[μm]、t[μm]、10t[μm]における、それぞれのユニバーサル硬度をB、C、D[N/mm2]とする。本発明では以下の条件を満たす保護層を設ける。
(1)該保護層と現像ローラとのテープ剥離試験による剥離面積が50%以上。
(2)0.05B<C<0.30B。
(3)0.10C<D<C。
(4)3.00N/mm2≦B≦50.00N/mm2
(5)5μm≦t≦50μm。
【0028】
まず、(1)の条件は、保護層と現像ローラ間の接着性が非常に弱いことを表している。次いで、(2)と(3)の条件は保護層と現像ローラの硬度差が非常に大きいことを表している。即ち、保護層を設けた現像ローラが他部材と接触しながら回転駆動する際に、高硬度を有する保護層と柔軟な現像ローラとの間で変形具合に差が生じ、歪みが生じることを示している。
【0029】
また、(4)と(5)の条件である厚み5μm以上、50μm以下の保護層を設けた状態での極表面の硬度を表すユニバーサル硬度Bが、3.00N/mm2以上、50.00N/mm2以下であれば、保護層は十分な硬度を有する。また、他部材からの押圧により生じる変形の影響を保護層で十分に緩和することができる。そのため、現像ローラの変形を抑えることが可能である。
【0030】
さらに、保護層厚みおよびユニバーサル硬度Bが上記範囲であれば、回転駆動によって生じる保護層と現像ローラ間の歪みによって、保護層にクラックが生じやすい。
【0031】
上記(1)から(5)の条件を満たすことによって、輸送時に他部材から受ける押圧による変形を抑制する目的で設けられた保護層は、現像ローラが回転駆動を開始した際に生じる歪みによってクラックが生じる。さらに、保護層と現像ローラ表面の接着性が非常に弱いことからクラックを起点とし、保護層は現像ローラ表面から容易に剥離する。そのため、画像形成が行われる際には保護層が剥離したあとの、柔軟な現像ローラによって画像形成が行われる。よって、画像形成を繰り返し行っても、現像ローラとの摩擦によって生じるトナーへのダメージを抑制することが可能であり、長期に亘って高画質な画像を出力することができる。
【0032】
また、保護層のMD−1硬度の値は80度以上、98度以下であることが好ましい。保護層のMD−1硬度がこの範囲であれば、各種部材との摺擦によって、保護層にクラックがより生じやすくなり、保護層の剥離が促進される。
【0033】
また、保護層が剥離した後の現像ローラ表面の硬度を表すユニバーサル硬度Dは0.10N/mm2以上、2.00N/mm2以下であることが好ましい。ユニバーサル硬度Dがこの範囲であれば、保護層が剥離したあとに、現像プロセスの繰り返しによるトナーの劣化の抑制と、十分な初期濃度の出力をより高次元で両立することが可能である。
【0034】
さらに保護層が主にアクリルポリオールとヌレート材料からなるアクリルウレタンを含むものであることが好ましい。保護層にこれらの材料を用いることで、高硬度および剥離性という本発明に必要な性能を両立することが可能であり、上記に上げた条件を満たすことが容易になる。
【0035】
また、保護層と現像ローラ表面との接着強度を落とすために、保護層あるいは現像ローラの最外層に位置する導電性弾性層に非反応性アクリル樹脂を含有することが好ましい。ここで、非反応性とは、保護層や弾性層のベースとなる樹脂材料と反応する反応基を持たないことを指す。例えば、ベースとなる樹脂材料がポリオールとヌレート材料を反応させてなるウレタン樹脂である場合は、アクリル樹脂は活性水素の如きイソシアネート基と反応する水素や反応性2重結合、エポキシ基、カルボキシル基をもっていない化合物でなければならない。
【0036】
このような非反応性アクリル樹脂が保護層および現像ローラの最外層に位置する導電性弾性層に含有されることで、保護層と導電性弾性層の界面での剥離が容易になる。アクリル樹脂がベース樹脂材料と反応する官能基を持っている反応性アクリル樹脂である場合、アクリル樹脂がベース樹脂の一部として組み込まれてしまい、分子運動性が大きく低下するために上記効果が発現しにくくなってしまう。
【0037】
さらに非反応性アクリル樹脂の重量平均分子量Mwが120000以上、190000以下であることがより好ましい。含有される非反応性アクリルのMwが比較的高い範囲にあれば、保護層と導電性弾性層との界面での剥離がより容易になるという効果を発現することが出来る。
【0038】
また、非反応性アクリル樹脂の含有量としては、各層を形成するベースとなる樹脂材料に対して、5質量部以上、30質量部以下であることが好ましい。含有量をこの範囲にすることで、保護層と現像ローラの剥離を容易にするとともに、ベース材料からの非反応アクリル樹脂の染み出し量を抑え、他部材への汚染を防ぐことが可能である。
【0039】
次に本発明の電子写真用プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置について説明する。
【0040】
一般的に電子写真画像形成装置は、回転可能な感光体および以下の部材を有する。
・感光体表面を一様に帯電するための帯電部材
・感光体表面に静電潜像を形成するための露光部材
・感光体表面に現像剤を供給し、静電潜像を現像してトナー像とするための現像部材
・感光体表面のトナー像を転写材に転写するための転写部材
・転写部材上に転写したトナーを定着するための定着部材
その一例として、図2は、本発明の保護層を設けた現像ローラおよび前記現像ローラを具備した電子写真用プロセスカートリッジを用いた電子写真画像形成装置の概略構成を示す断面図である。先述の通り図2の電子写真画像形成装置には、現像ローラ201、トナー供給ローラ202、トナー203およびトナー量規制部材204を有する現像装置205を有する。この現像装置205に加え、感光体206、クリーニングブレード207、廃トナー収容容器208、帯電部材209からなる電子写真用プロセスカートリッジが電子写真画像形成装置の本体に脱着可能に装着されている。
【0041】
この電子写真用プロセスカートリッジとして新しいものを使用する場合には電子写真画像形成装置に組み込む必要がある。その際に初期動作としてトナー203を現像ローラ201やトナー供給ローラ202に供給するために複数回の回転駆動動作が行われる。この初期動作は画像形成には寄与しておらず、この初期動作の際に、先述したように高硬度保護層は、他部材との間で行われる複数回の摺擦によって現像ローラからの剥離が行われる。そのため、実際の画像形成時には保護層が剥離した後の、柔軟な現像ローラによる高品質な画像形成が可能である。
【0042】
実際の画像形成の際には、感光体206は矢印方向に回転し、感光体206を帯電処理するための帯電部材209によって一様に帯電され、感光体206に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光210により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光体206に対して接触配置される現像装置205によってトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0043】
可視化された感光体206上のトナー像は、転写部材である転写ローラ211によって記録媒体である紙212に転写される。トナー像を転写された紙212は、定着装置213により定着処理され、装置外に排紙され一連のプロセスが終了する。
【0044】
一方、転写されずに感光体206表面に残存した転写残トナーは、感光体表面をクリーニングするためのクリーニングブレード207により掻き取られる。その後、掻き取られたトナーは廃トナー容器208に収納され、クリーニングされた感光体206は上記プロセスを繰り返し行う。
【0045】
現像装置205は、現像剤203を収容した現像容器と、現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置し感光体206と対向設置された現像ローラ201とを備え、感光体206上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0046】
トナー供給ローラ202の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体上にレーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ201への現像剤供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。例えば、軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた弾性ローラを用いることができる。
【0047】
本発明の電子写真用プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置は、現像部材中で感光体表面に現像剤を供給するための現像ローラが本発明の保護層を設けた現像ローラであることを特徴とする。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
以下の手順により、保護層を有する二層の導電性弾性層からなる現像ローラの製造を行った。
【0049】
(第一導電性弾性層の作製)
軸芯体としてSUS304製の直径8mmの芯金にニッケルメッキを施し、さらに厚み約1μmのプライマーDY39−051(商品名、東レダウコーニング社製)を塗布し、温度150℃で30分間焼き付けしたものを用いた。ついで、軸芯体を金型に配置し、液状シリコーンゴム材料SE6274A(商品名、東レダウコーニングシリコーン社製)およびSE6274B(商品名、東レダウコーニング社製)を重量比1:1の割合でスタティックミキサーを用いて混合した。その後、混合した液状シリコーンゴムを金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、金型を加熱して液状シリコーンゴムを温度150℃、15分間加硫硬化し、冷却後脱型した。その後にさらに、温度180℃で1時間加熱し硬化反応を完結させ、第一弾性層を軸芯体周囲に設けた。作成した第一導電性弾性層ローラの直径は16mmであった。
【0050】
(第二導電性弾性層の作製)
次に、前記第一導電性弾性層ローラの外周に第二導電性弾性層を設けた。第二導電性弾性層材料として、ニッポランN5033(商品名、日本ポリウレタン工業社製)100質量部に、ポリイソシアネートコロネートL(商品名、日本ポリウレタン工業社製)10.4質量部を加えて樹脂成分とした。続いて、この樹脂成分100質量部に対して、抵抗調整剤としてカーボンブラックMA−100(商品名、三菱化学株式会社製)18質量部およびメチルエチルケトン(MEK)を加え、攪拌モーターで混合攪拌を700rpm、1時間の条件下で行った。次に、上記混合溶液を横型分散機NVM-03(商品名、アイメックス社製)で周速7m/sec、流量1cc/min、分散液温度15 ℃の条件下で2時間均一分散した。さらにMEKを加え、塗工後の樹脂層の膜厚が10μmになるように固形分15質量%に調製した。続いて、この溶液を380メッシュの網でろ過したものを第二導電性弾性層材料とした。
【0051】
次にこの第二導電性弾性層材料を液流速250cc/min、液温23℃で循環させた直径32mmのシリンダー中に侵入速度100mm/secで前記第一弾性層外周に浸漬させた。損状態で、10秒間停止させた後に、初速300mm/sec、終速200mm/secの条件で引き上げて10分間、自然乾燥させた。次いで、温度140℃にて2時間加熱処理することで、第二導電性弾性層の硬化を行い、第二導電性弾性層厚み10μmの現像ローラを作製した。
【0052】
(保護層の作製)
保護層形成用塗料液の材料として、アクリルポリオール(商品名:H3368、日立化成株式会社製)100質量部に、HDIイソシアヌレート(商品名:TPAB80E、旭化成株式会社製)86.2質量部を加えて樹脂成分とした。続いて、この樹脂成分固形分100質量部に対して、タルク(商品名:LMS−100、富士タルク工業株式会社製)80質量部およびMw=120000の非反応性アクリル樹脂(商品名:HA−1470、日立化成株式会社製)20質量部を加えた。その後、MEKを加え、攪拌モーターで混合攪拌を700 rpm、1時間の条件下で行った。上記混合溶液を横型分散機(商品名:NVM−03;アイメックス社製)で周速7m/sec、流量1cc/min、分散液温度15 ℃で、Φ=1.5mmのガラスビーズ(商品名:DMB503B、ホッターズバロティニーズ社製)を用い3時間分散した。続いて、この溶液を380メッシュの網でろ過し、ガラスビーズを取り除いて、保護層形成用塗料(1)とした。
【0053】
この保護層形成用塗料(1)を膜形成後に厚み約50μmになるよう、スプレー塗工した後、温度160℃に設定したオーブンにて、2時間加熱処理し、保護層を設けた現像ローラを得た。
【0054】
同条件で複数本の保護層を設けた現像ローラを作製し、以下の測定、評価を行った。
【0055】
(保護層厚み測定方法)
保護層厚みの測定方法について述べる。まず、保護層を設けた現像ローラを温度25℃、湿度45%RHの環境に24時間放置した。その後、同環境下において、保護層を設けた現像ローラの長手方向両端から20mm内側部分および、中央部分から鋭利な剃刀を使用して、扇形状のサンプルを切り出した。これらサンプルにおいて、断面部分を光学顕微鏡によって、倍率2000倍に拡大し、保護層の厚みをランダムに10点測定した。これら測定によって得られた(3サンプル)×(10点測定)=30点の厚みを平均し、保護層の厚みとした。
【0056】
(ユニバーサル硬度測定方法)
ユニバーサル硬度測定には、超微小硬度計H−100(商品名、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を使用した。まず、保護層を設けた現像ローラを温度25℃、湿度45%RHの環境に24時間放置した。その後、同環境下において、測定を行った。測定には形状が四角錐で対面角度が136°に規定されているダイヤモンド圧子を使用し、押し込み荷重が60秒間で二次関数的に1000mNとなるよう、設定し測定を行った。測定個所は保護層を設けた現像ローラの長手方向両端から20mm内側部分および、中央部分の3点とした。
【0057】
3点測定することによって、押し込み深さとユニバーサル硬度の関係を示すグラフが3本求められる。それぞれのグラフにおいて、上記で求めた保護層厚みから、保護層を設けた現像ローラにおけるユニバーサル硬度B、C、Dを算出した。得られたユニバーサル硬度B、C、Dを各々平均したものを、この保護層を設けた現像ローラでのユニバーサル硬度B、C、Dの値とした。
【0058】
(保護層のテープ剥離試験方法)
まず、保護層を設けた現像ローラを温度25℃、湿度45%RHの環境に24時間放置した。その後、同環境下において測定を行った。保護層を設けた現像ローラにおいて、ローラの長手方向両端から20mm内側部分および中央部分において、10mm×10mmの面積において、鋭利な剃刀を使用し、1mm間隔で碁盤の目状に切り込みを入れた。その後、各点において、10mm×10mmの面積を十分に覆うように粘着テープを配置した。また、この試験には粘着テープとして、温度25℃、湿度45%RHの環境に24時間以上放置しておいた布粘着テープ<LS>No121(商品名、ニチバン株式会社製)を使用した。この状態において、図3に示すように、保護層を設けた現像ローラ31を直径20mmの金属ローラ上に配置し、軸芯体両端にそれぞれ300gの荷重をかけて、金属ローラ32と圧接させた。このとき、保護層を設けた現像ローラ31は金属ローラ32に従属して回転可能な状態であり、かつ粘着テープで覆われている面は上向きとなるよう配置した。この状態から金属ローラを20rpmの速度で12秒間回転させることによって、隙間無く粘着テープを貼り付けた。この後、保護層を設けた現像ローラを取り出した状態で5分間放置した後、ローラ表面に対して垂直方向に20mm/secの速度で粘着テープを剥した。粘着テープを剥した後、光学顕微鏡によってローラ表面を観察し、10mm×10mmの面積中において、保護層が剥離している面積を計算した。
【0059】
(保護層のMD−1硬度測定方法)
保護層形成用塗料を体積100mm×100mm×30mmの耐熱容器に流し込み、温度160℃のオーブンにて加熱処理を行った。このとき、シート厚みは約100μm〜200μmになるように塗料量を調整した。保護層形成用塗料によるシートが完成した後、温度25℃、湿度45%RHの環境に24時間シートを放置した。24時間後、この環境下において、シートを20mm×20mmの大きさに切断し、厚みが2.0mm以上になるように複数枚重ね、マイクロゴム硬度計MD−1(高分子計器社製)を使用し、保護層のMD−1硬度を測定した。
【0060】
(現像ローラ変形弊害評価方法)
保護層を設けた現像ローラを電子写真用プロセスカートリッジ(商品名:EP−85トナーカートリッジ(ブラック)、キヤノン株式会社製)に組み込み、この電子写真用プロセスカートリッジを温度40℃、湿度95%RHの環境に15日間放置した。その後、電子写真用プロセスカートリッジを温度25℃、湿度45%RHの環境に移し、24時間放置した。放置後、温度25℃、湿度45%RHの環境において、電子写真用プロセスカートリッジを電子写真画像形成装置の本体(商品名:LBP5500 キヤノン株式会社製)に搭載し、ベタ黒画像を出力した。
【0061】
この画像において、放置中のトナー量規制部材との当接による現像ローラの変形起因とみられる画像弊害を評価することで、現像ローラ変形弊害の評価とした。変形起因とみられる画像弊害がほとんど確認できない場合は「A」、わずかに画像弊害が確認できる場合は「B」、はっきりと確認できる場合は「C」として評価を行った。
【0062】
(トナーへのダメージ(かぶり値)評価方法)
現像プロセスを繰り返すことによって、トナーはダメージを受け、劣化したトナーは現像ローラ表面に付着する。このようにトナー付着が発生した現像ローラを用いてベタ白画像形成を行うとトナーの帯電量が不足するため、帯電量が不足したトナーは感光体へと移動し、更に、転写紙へと移ってしまう。このように本来画像が描かれないベタ白画像上にトナーが載ってしまう現象のことを「かぶり」とする。このかぶりの程度を測定することで、現像ローラへのトナー付着量、つまり、トナーへのダメージの指標として評価を行った。評価方法は以下の通りである。
【0063】
上記変形弊害評価終了後、電子写真用プロセスカートリッジと電子写真画像形成装置本体を続けて温度25℃、湿度45%RHの環境に24時間放置した。放置後、印字率1%の画像を20000枚出力した後、ベタ白画像を出力し、かぶりの値を測定した。
【0064】
かぶりの値は反射濃度計TC−6DS/A(東京電色技術センター社製)を用いて、画像形成前の転写紙の反射濃度と、ベタ白画像の画像形成を行った後の転写紙の反射濃度を測定し、その差分をかぶりの値とした。
【0065】
転写紙の反射濃度を求めるには、転写紙の画像印刷領域を左上から順に5cm×5cmの領域に分割し、各領域の中心において反射濃度を測定した。こうして得られた反射濃度のうち、最小び値をその転写紙の反射濃度とした。
【0066】
このかぶり値が1.0より小さければ「A」、1.0以上かつ3.0より小さければ「B」、3.0以上かつ5.0より小さければ「C」、5.0以上であれば「D」として、評価を行った。
【0067】
これらの測定結果、および評価結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層形成用塗料(1)を用いて、保護層の形成を行った。膜形成後の膜厚が約25μmとなるように塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様の方法で、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0069】
(実施例3)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
第二導電性弾性層材料に加えるカーボンブラックの量を23質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層形成用塗料(1)を用いて、保護層の形成を行った。膜形成後の膜厚が約20μmとなるように塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様の方法で、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
(実施例4)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
第二導電性弾性層材料に加えるカーボンブラックの量を25質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層形成用塗料(1)を用いて、保護層の形成を行った。膜形成後の膜厚が約20μmとなるように塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様の方法で、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0071】
(実施例5)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
樹脂成分固形分100質量部に対して、非反応性アクリル樹脂を加える量を10質量部とした以外は実施例1と同様に行い、保護層形成用塗料(2)を作製した。この塗料を用いて、保護層の形成を行った。塗料と、膜形成後の膜厚が約25μmとなるように塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0072】
(実施例6)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層形成用塗料(2)を用いて、保護層の形成を行った。塗料と、膜形成後の膜厚が約5μmとなるように塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0073】
(実施例7)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
樹脂成分固形分100質量部に対して、非反応性アクリル樹脂を加える量を5質量部とした以外は実施例1と同様に行い、保護層形成用塗料(3)を作製した。この塗料を用いて、保護層の形成を行った。塗料と、膜形成後の保護層の膜厚が約20μmとなるよう塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。
この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
(実施例8)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層形成用塗料液の材料として、アクリルポリオール(商品名:H3368、日立化成株式会社製)100質量部に、HDIイソシアヌレート(商品名:TPAB80E、旭化成株式会社製)86.2質量部を加えて樹脂成分とした。続いて、この樹脂成分固形分100質量部に対して、タルク(商品名:LMS−100、富士タルク工業株式会社製)80質量部を加えた。その後、MEKを加え、攪拌モーターで混合攪拌を700 rpm、1時間の条件下で行った。上記混合溶液を横型分散機(商品名:NVM−03;アイメックス社製)で周速7 m/sec、流量1 cc/min、分散液温度15 ℃で、Φ=1.5mmのガラスビーズ(商品名:DMB503B、ホッターズバロティニーズ社製)を用い3時間分散した。続いて、この溶液を380メッシュの網でろ過し、ガラスビーズを取り除いて、保護層形成用塗料(4)とした。この塗料を用いて、保護層の形成を行った。塗料と、膜形成後の保護層の膜厚が約20μmとなるよう塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
(実施例9)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
加える非反応性アクリル樹脂をMw=190000の非反応性アクリル樹脂(商品名:BR−118、三菱レイヨン株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で行い、保護層形成用塗料(5)を作製した。この塗料を用いて保護層の形成を行った。塗料を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0076】
(実施例10)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
加える非反応性アクリル樹脂をMw=70000の非反応性アクリル樹脂(商品名:LR−574、三菱レイヨン株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で行い、保護層形成用塗料(6)を作製した。この塗料を用いて保護層の形成を行った。塗料を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。この保護層を設けた現像ローラについては、変形弊害評価の際に、最初の数枚において画像上に薄い白縦スジが確認されたが、すぐに消失した。そのため、変形弊害評価にはスジが消失した後の画像を使用した。
【0077】
(実施例11)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
第二導電性弾性層材料に加えるカーボンブラックの量を16質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層形成用塗料液の材料として、アクリルポリオール(商品名:H3368、日立化成株式会社製)100質量部に、イミノ基型メラミン(商品名:サイメルC712、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)42.9質量部を加えて樹脂成分とした。続いて、この樹脂成分固形分100質量部に対して、タルク(商品名:LMS−100、富士タルク工業株式会社製)80質量部および非反応性アクリル樹脂(商品名:HA−1470、日立化成株式会社製)25質量部を加えた。その後、MEKを加え、攪拌モーターで混合攪拌を700 rpm、1時間の条件下で行った。上記混合溶液を横型分散機(商品名:NVM−03;アイメックス社製)で周速7 m/sec、流量1 cc/min、分散液温度15 ℃で、Φ=1.5mmのガラスビーズ(商品名:DMB503B、ホッターズバロティニーズ社製)を用い3時間分散した。続いて、この溶液を380メッシュの網でろ過し、ガラスビーズを取り除いて、保護層形成用塗料(7)とした。この塗料を用いて、保護層の形成を行った。塗料と、膜形成後に厚み約25μmになるよう、塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0078】
この保護層を設けた現像ローラについては、変形弊害評価の際に、最初の数枚において画像上にいくつかの斑点が発生したが、数枚で消失した。そのため、変形弊害評価には斑点が消失した後の画像を使用した。
【0079】
(実施例12)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例11と同様に行った。
(保護層の作製)
樹脂成分固形分100質量部に対して、非反応性アクリル樹脂を加える量を20質量部とした以外は実施例11と同様に行い、保護層形成用塗料(8)を作製した。この塗料を用いて、保護層の形成を行った。塗料と膜形成後の膜厚が約50μmとなるように塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0080】
(実施例13)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例11と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層形成用塗料(8)を用いて、保護層の形成を行った。塗料と、膜形成後の膜厚が約25μmとなるように塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0081】
(実施例14)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例11と同様に行った。
(保護層の作製)
樹脂成分固形分100質量部に対して、非反応性アクリル樹脂を加える量を15質量部とした以外は実施例11と同様に行い、保護層形成用塗料(9)を作製し、この塗料を用いて保護層の形成を行った。塗料と、膜形成後の保護層の膜厚が約25μmとなるよう塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。
この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0082】
(実施例15)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例11と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層形成用塗料(9)を用いて、保護層の形成を行った。塗料と、保護層の膜厚が約15μmとなるよう塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
(実施例16)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例11と同様に行った。
(保護層の作製)
樹脂成分固形分100質量部に対して、非反応性アクリル樹脂を加える量を12質量部とした以外は実施例11と同様に行い、保護層形成用塗料(10)を作製し、この塗料を用いて保護層の形成を行った。塗料と、膜形成後の保護層の膜厚が約20μmとなるよう塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0084】
(実施例17)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例11と同様に行った。
(保護層の作製)
樹脂成分固形分100質量部に対して、加えるタルクの量を40質量部とした以外は実施例11と同様に行い、保護層形成用塗料(11)を作製し、この塗料を用いて保護層の形成を行った。塗料を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。この保護層を設けた現像ローラについては、変形弊害評価の際に、最初の数枚において画像上にいくつかの斑点が発生したが、数枚で消失した。そのため、変形弊害評価には斑点が消失した後の画像を使用した。
【0085】
(比較例1)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。この現像ローラには保護層を設けずに、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0086】
(比較例2)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例11と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層形成用塗料液の材料として、アクリルポリオール(商品名:H3368、日立化成株式会社製)100質量部に、イミノ基型メラミン(商品名:サイメルC712、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)42.9質量部を加えて樹脂成分とした。続いて、この樹脂成分固形分100質量部に対して、タルク(商品名:LMS−100、富士タルク工業株式会社製)80質量部を加えた。その後、MEKを加え、攪拌モーターで混合攪拌を700 rpm、1時間の条件下で行った。次に、上記混合溶液を横型分散機NVM−03(商品名、アイメックス社製)で周速7 m/sec、流量1 cc/min、分散液温度15 ℃で、Φ=1.5mmのガラスビーズ(商品名:DMB503B、ホッターズバロティニーズ社製)を用い3時間分散した。続いて、この溶液を380メッシュの網でろ過し、ガラスビーズを取り除いて、保護層形成用塗料(12)とした。この塗料を用いて保護層の形成を行った。塗料と、保護層の膜厚が約40μmとなるよう塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。この保護層を設けた現像ローラについては、変形弊害評価の際に、画像上に濃度ムラが確認された。この濃度ムラはしばらく解消されなかった。そのため、変形弊害評価には濃度ムラを含めて画像評価を行った。
【0087】
(比較例3)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例3と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層材料として、実施例4で使用した第二導電性弾性層材料を使用した。塗料を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0088】
(比較例4)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層の膜厚が約3μmとなるよう塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。この保護層を設けた現像ローラについては、変形弊害評価の際に、最初の数枚において画像上にいくつかの斑点が発生したが、数枚で消失した。そのため、変形弊害評価には斑点が消失した後の画像を使用した。
【0089】
(比較例5)
(第一導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(第二導電性弾性層の作製)
実施例1と同様に行った。
(保護層の作製)
保護層の膜厚が約70μmとなるよう塗工条件を変えた以外は、実施例1と同様に行い、保護層を設けた現像ローラを作製した。この保護層を設けた現像ローラについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。この保護層を設けた現像ローラについては、変形弊害評価の際に、激しい縦スジが発生し、画像評価が出来なかった。
【0090】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の現像ローラの一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の電子写真画像形成装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の保護層の剥離試験に使用した装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0092】
11 軸芯体
12 導電性弾性層
13 保護層
201 現像ローラ
202 トナー供給ローラ
203 トナー
204 トナー量規制部材
205 現像装置
206 感光ドラム
207 クリーニングブレード
208 廃トナー収容容器
209 帯電部材
210 レーザー光
211 転写ローラ
212 紙
213 定着装置
31 保護層を設けた現像ローラ
32 金属ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体上に設けられた導電性弾性層とを有しており、該導電性弾性層の表面が保護層によって被覆されている保護層付きの現像ローラであって、
該保護層の厚さをt、該保護層を設けた状態で現像ローラの表面からの押し込み深さ0.1t、t及び10tにおけるユニバーサル硬度をB、C及びDとしたとき、下記式(1)〜(5)で示される関係を全て満たすことを特徴とする保護層付き現像ローラ:
(1)該保護層と該導電性弾性層とのテープ剥離試験による剥離面積が50%以上であり、
(2)0.30B>C>0.05B;
(3)C>D>0.10C;
(4)3.00N/mm2≦B≦50.00N/mm2
(5)5μm≦t≦50μm。
【請求項2】
前記ユニバーサル硬度Dの値が0.10N/mm2以上、2.00N/mm2以下である請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記保護層のMD−1硬度の値が80度以上、98度以下である請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記保護層がアクリルポリオールとヌレート材料からなるアクリルウレタンを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記保護層及び前記導電性弾性層の少なくとも一方が非反応性アクリル樹脂を含有する請求項1乃至4のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記非反応性アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が120000以上、190000以下である請求項5に記載の現像ローラ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の現像ローラを具備し、電子写真画像形成装置に脱着可能に構成されていることを特徴とする電子写真用プロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の現像ローラを具備していることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−265168(P2009−265168A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111526(P2008−111526)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】