説明

保護膜被覆装置及びレーザー加工装置

【課題】ウエーハの加工面に段差があったり、電極等の金属バンプが配設されていても確実且つ経済的に保護膜を被覆できる保護膜被覆装置を提供する。
【解決手段】ウエーハWの表面に保護膜を被覆する保護膜被覆装置30であって、ウエーハWを吸引保持し回転するスピンナーテーブル48と、該スピンナーテーブル48に吸引保持されたウエーハWに液状樹脂を塗布する塗布手段とを具備し、該塗布手段は、液状樹脂を霧状にして噴射するスプレー手段68と、該スプレー手段68を支持するアーム70と、該アーム70に支持されたスプレー手段68を少なくともウエーハWの回転中心部から外周部に至る領域で水平方向に揺動する揺動手段72とを含んでいることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工面に保護膜を被覆する保護膜被覆装置及び保護膜被覆装置を備えたレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたシリコンウエーハ、サファイヤウエーハ等のウエーハは、レーザー加工装置によって個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の電気機器に広く利用される(特開2004−322168号公報参照)。
【0003】
上記公開公報には、ウエーハの加工面にレーザービームを照射すると、照射された領域に熱エネルギーが集中してデブリが飛散してウエーハの加工面に付着し、デバイスの品質を著しく低下させることから、レーザー加工する前にウエーハの加工面に液状樹脂を塗布して保護膜を形成し、その後ウエーハをレーザー加工する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−322168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウエーハの加工面に段差があったり、電極等の金属バンプが配設されていると、特許文献1に開示された液状樹脂のスピンコート法によると、ウエーハの加工面に液状樹脂を均一に塗布することができず、部分的に保護膜が被覆されない部分が発生するという問題がある。
【0005】
また、PVA(ポリ・ビニール・アルコール)、PEG(ポリ・エチレン・グリコール)等の液状樹脂は比較的高価であるにも拘わらず、スピンコート法による液状樹脂の塗布では実質的に90%以上の液状樹脂がウエーハの加工面から飛散して廃棄されており、不経済であるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウエーハの加工面に段差があったり、電極等の金属バンプが配設されていても、確実に且つ経済的に保護膜を被覆できる保護膜被覆装置を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、保護膜被覆装置を備えたレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明によると、ウエーハの表面に保護膜を被覆する保護膜被覆装置であって、ウエーハを吸引保持し回転するスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブルに吸引保持されたウエーハに液状樹脂を塗布する塗布手段とを具備し、該塗布手段は、液状樹脂を霧状にして噴射するスプレー手段と、該スプレー手段を支持するアームと、該アームに支持されたスプレー手段を少なくともウエーハの回転中心部から外周部に至る領域で水平方向に揺動する第1揺動手段とを含んでいることを特徴とする保護膜被覆装置が提供される。
【0009】
好ましくは、スプレー手段は、液状樹脂供給通路と、エアー供給通路と、液状樹脂供給通路とエアー供給通路とが合流し霧状の液状樹脂を噴射する噴射口とを含んでいる。
【0010】
好ましくは、保護膜被覆装置は更に、レーザー加工後のウエーハを洗浄する洗浄手段と、洗浄後のウエーハを乾燥する乾燥手段とを具備している。洗浄手段及び乾燥手段とも、アームの先端に水又はエアーを噴射する噴射ノズルが取り付けられて構成され、アームに支持された噴射ノズルは少なくともウエーハの回転中心部から外周部に至る領域で水平方向に揺動される。
【0011】
請求項5記載の発明によると、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハの加工面にレーザービームを照射して加工を施すレーザービーム照射手段とを備えたレーザー加工装置であって、レーザー加工前のウエーハの加工面に保護膜を被覆する請求項1〜4の何れかに記載の保護膜被覆装置を更に具備したことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保護膜被覆装置によると、液状樹脂を霧状にしてウエーハの加工面に塗布して保護膜を被覆するので、ウエーハの加工面に段差があったり、電極等の金属バンプが配設されていても確実にウエーハの加工面に保護膜を被覆できる。
【0013】
また、液状樹脂を霧状にして塗布すると、従来のスピンコートによる塗布に比べて液状樹脂の使用量は10%〜15%に減少し、経済性が格段に向上する。即ち、従来直径300mmのウエーハの加工面に保護膜を被覆するのに要した液状樹脂の量は40〜50mLであったものが、本発明の保護膜被覆装置によると5〜6mLに減少した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の保護膜被覆装置を具備し、ウエーハをレーザー加工して個々のチップ(デバイス)に分割することのできるレーザー加工装置2の外観を示している。
【0015】
レーザー加工装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作手段4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像手段によって撮像された画像が表示されるCRT等の表示手段6が設けられている。
【0016】
図2に示すように、加工対象の半導体ウエーハWの表面においては、第1のストリートS1と第2のストリートS2とが直交されて形成されており、第1のストリートS1と第2のストリートS2とによって区画された領域に多数のデバイスDが形成されている。
【0017】
ウエーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周縁部は環状フレームFに貼着されている。これにより、ウエーハWはダイシングテープTを介して環状フレームFに支持された状態となり、図1に示したウエーハカセット8中にウエーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウエーハカセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置される。
【0018】
ウエーハカセット8の後方には、ウエーハカセット8からレーザー加工前のウエーハWを搬出するとともに、加工後のウエーハをウエーハカセット8に搬入する搬出入手段10が配設されている。
【0019】
ウエーハカセット8と搬出入手段10との間には、搬出入対象のウエーハが一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12にはウエーハWを一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段14が配設されている。
【0020】
30は本発明実施形態に係る保護膜被覆装置であり、この保護膜被覆装置30は加工後のウエーハを洗浄する洗浄装置を兼用する。仮置き領域12の近傍には、ウエーハWと一体となったフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段16が配設されている。
【0021】
仮置き領域12に搬出されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されて保護膜被覆装置30に搬送される。保護膜被覆装置30では、後で詳細に説明するようにウエーハWの加工面に保護膜が被覆される。
【0022】
加工面に保護膜が被覆されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、チャックテーブル18に吸引されるとともに、複数の固定手段(クランプ)19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0023】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハWのレーザー加工すべきストリートを検出するアライメント手段20が配設されている。
【0024】
アライメント手段20は、ウエーハWの表面を撮像する撮像手段22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によってレーザー加工すべきストリートを検出することができる。撮像手段22によって取得された画像は、表示手段6に表示される。
【0025】
アライメント手段20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWに対してレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニット24が配設されている。レーザービーム照射ユニット24のケーシング26中には後で詳細に説明するレーザービーム発振手段等が収容されており、ケーシング26の先端にはレーザービームを加工すべきウエーハ上に集光する集光器28が装着されている。
【0026】
レーザービーム照射ユニット24のケーシング26内には、図3のブロック図に示すように、レーザービーム発振手段34と、レーザービーム変調手段36が配設されている。
【0027】
レーザービーム発振手段34としては、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器を用いることができる。レーザービーム変調手段36は、繰り返し周波数設定手段38と、レーザービームパルス幅設定手段40と、レーザービーム波長設定手段42を含んでいる。
【0028】
レーザービーム変調手段36を構成する繰り返し周波数設定手段38、レーザービームパルス幅設定手段40及びレーザービーム波長設定手段42は周知の形態のものであり、本明細書においてはその詳細な説明を省略する。
【0029】
レーザービーム照射ユニット24によりレーザー加工が終了したウエーハWは、チャックテーブル18をX軸方向に移動してから、Y軸方向に移動可能な搬送手段32により把持されて洗浄装置を兼用する保護膜被覆装置30まで搬送される。保護膜被覆装置30では、洗浄ノズルから水を噴射しながらウエーハWを低速回転(例えば300rpm)させることによりウエーハを洗浄する。
【0030】
洗浄後、ウエーハWを高速回転(例えば3000rpm)させながらエアーノズルからエアーを噴出させてウエーハWを乾燥させた後、搬送手段16によりウエーハWを吸着して仮置き領域12に戻し、更に搬出入手段10によりウエーハカセット8の元の収納場所にウエーハWは戻される。
【0031】
次に、本発明実施形態に係る保護膜被覆装置30について図4乃至図8を参照して詳細に説明する。まず図4を参照すると、保護膜被覆装置30の一部破断斜視図が示されている。
【0032】
保護膜被覆装置30は、スピンナーテーブル機構44と、スピンナーテーブル機構44を包囲して配設された洗浄水受け機構46を具備している。スピンナーテーブル機構44は、スピンナーテーブル48と、スピンナーテーブル48を回転駆動する電動モータ50と、電動モータ50を上下方向に移動可能に支持する支持機構52とから構成される。
【0033】
スピンナーテーブル48は多孔性材料から形成された吸着チャック48aを具備しており、吸着チャック48aが図示しない吸引手段に連通されている。従って、スピンナーテーブル48は、吸着チャック48aにウエーハを載置し図示しない吸引手段により負圧を作用させることにより、吸着チャック48a上にウエーハを吸引保持する。
【0034】
スピンナーテーブル48は、電動モータ50の出力軸50aに連結されている。支持機構52は、複数の(本実施形態においては3本)の支持脚54と、支持脚54にそれぞれ連結され電動モータ50に取り付けられた複数(本実施形態においては3本)のエアーシリンダ56とから構成される。
【0035】
このように構成された支持機構52は、エアーシリンダ56を作動することにより、電動モータ50及びスピンナーテーブル48を図5に示す上昇位置であるウエーハ搬入・搬出位置と、図6に示す加工位置である作業位置に位置付け可能である。
【0036】
洗浄水受け機構46は、洗浄水受け容器58と、洗浄水受け容器58を支持する3本(図4には2本のみ図示)の支持脚60と、電動モータ50の出力軸50aに装着されたカバー部材62とから構成される。
【0037】
洗浄水受け容器58は、図5及び図6に示すように、円筒状の外側壁58aと、底壁58bと、内側壁58cとから構成される。底壁58bの中央部には、電動モータ50の出力軸50aが挿入される穴51が設けられており、内側壁58cはこの穴51の周辺から上方に突出するように形成されている。
【0038】
また、図4に示すように、底壁58bには廃液口59が設けられており、この廃液口59にドレンホース64が接続されている。カバー部材62は円盤状に形成されており、その外周辺から下方に突出するカバー部62aを備えている。
【0039】
このように構成されたカバー部材62は、電動モータ50及びスピンナーテーブル48が図6に示す作業位置に位置付けられると、カバー部62aが洗浄水受け容器58を構成する内側壁58cの外側に隙間を持って重合するように位置付けられる。
【0040】
保護膜被覆装置30は、スピンナーテーブル48に保持された加工前の半導体ウエーハに液状樹脂を塗布する塗布手段66を具備している。塗布手段66は、スピンナーテーブル48に保持された加工前のウエーハの加工面に向けて液状樹脂を霧状にして噴射するスプレーノズル68と、スプレーノズル68を支持する概略L形状のアーム70と、アーム70に支持されたスプレーノズル68を少なくともウエーハの回転中心部から外周部に至る領域で水平方向に揺動する正転・逆転可能な電動モータ72とから構成される。スプレーノズル68はアーム70を介して図示しない液状樹脂供給源に接続されている。
【0041】
保護膜被覆装置30はレーザー加工後のウエーハを洗浄する洗浄装置を兼用する。よって、保護膜被覆装置30は、スピンナーテーブル48に保持された加工後のウエーハを洗浄するための洗浄水供給手段74及びエアー供給手段76を具備している。
【0042】
洗浄水供給手段74は、スピンナーテーブル48に保持された加工後のウエーハに向けて洗浄水を噴出する洗浄水ノズル78と、洗浄水ノズル78を支持するアーム80と、アーム80に支持された洗浄水ノズル78を揺動する正転・逆転可能な電動モータ82とから構成される。洗浄水噴射ノズル78はアーム80を介して図示しない洗浄水供給源に接続されている。
【0043】
エアー供給手段76は、スピンナーテーブル48に保持された洗浄後のウエーハに向けてエアーを噴出するエアーノズル84と、エアーノズル84を支持するアーム86と、アーム86に支持されたエアーノズル84を揺動する正転・逆転可能な電動モータ(図示せず)を備えている。エアーノズル84はアーム86を介して図示しないエアー供給源に接続されている。
【0044】
図7に示すように、スプレーノズル68とアーム70は一体的に形成されている。スプレーノズル68は、例えば0.2MPa液状樹脂供給源90に接続された液状樹脂供給通路88と、例えば0.4MPaエアー供給源94に接続されたエアー供給通路92と、液状樹脂供給通路88とエアー供給通路92とが合流し霧状の液状樹脂を噴射する噴射口96を含んでいる。
【0045】
次に、このように構成された保護膜被覆装置30の作用について説明する。ウエーハ搬送手段16の旋回動作によって加工前の半導体ウエーハが保護膜被覆装置30のスピンナーテーブル48に搬送され、吸着チャック48aにより吸引保持される。
【0046】
この時、スピンナーテーブル48は図5に示すウエーハ搬入・搬出位置に位置付けられており、スプレーノズル68、洗浄水ノズル78及びエアーノズル84は図4及び図5に示すように、スピンナーテーブル48の上方から隔離した待機位置に位置付けられている。
【0047】
加工前のウエーハが保護膜被覆装置30のスピンナーテーブル48上に保持されたならば、ウエーハWの加工面である表面に液状樹脂を噴霧して保護膜を被覆する保護膜被覆工程を実行する。
【0048】
保護膜被覆工程を実施するには、まず、スピンナーテーブル48を図6及び図8に示すように作業位置に位置付けるとともに、スピンナーテーブル48を10〜100rpm(好ましくは30〜50rpm)で矢印A方向に回転させながら、スプレーノズル68をウエーハWの外周部に位置付けて霧状の液状樹脂を噴射しつつ約40秒かけてウエーハWの中心部手前(例えばウエーハの半径の約4/5)に至り、その後ウエーハの中心部から霧状の液状樹脂を噴射しつつ約40秒かけてウエーハWの外周部に戻り、矢印Bで示すようにスプレーノズル68の一往復でウエーハの加工面上に保護膜を被覆する。尚、中心部までスプレーノズル68を移動すると中心部の膜厚が厚くなるので中心部の手前で折り返している。
【0049】
本実施形態の液状樹脂のスプレー塗布方法によって、直径300mmのウエーハの加工面に10μm厚の保護膜を被覆するのに要した液状樹脂の量は約5〜6mLであった。比較のために、従来のスピンコート塗布方法によると、液状樹脂の量は40〜50mL必要であり、本発明の液状樹脂のスプレー塗布方法によると、液状樹脂の使用量は従来量の10%〜15%と顕著に減少し、経済性が格段に向上することが判明した。
【0050】
液状樹脂を噴射しながらスプレーノズル68を矢印Bに示すように一往復させる代わりに、ウエーハWの外周部から約80秒かけてウエーハの中心部に至り液状樹脂のスプレーを終了する方法も採用可能である。或いは、スプレーノズル68を約80秒かけてウエーハの外周部から中心を通り他の外周部まで揺動させるようにしても良い。尚、この場合ウエーハの中心部においてスプレーノズル68を比較的速い速度で通過させる事が好ましい。
【0051】
ウエーハの加工面にスプレーノズル68により塗布された液状樹脂は経時的に硬化して、図9に示すように半導体ウエーハWの表面に保護膜98を形成する。保護膜98の厚さは0.5〜10μm程度が好ましい。
【0052】
保護膜98を形成する液状樹脂としては、PVA(ポリ・ビニール・アルコール)PEG(ポリ・エチレン・グリコール)、PEO(酸化ポリエチレン)等の水溶性のレジストが望ましい。
【0053】
保護膜被覆工程によって半導体ウエーハWの表面に保護膜98が被覆されたならば、スピンナーテーブル48を図5に示すウエーハ搬入・搬出位置に位置付けるとともに、スピンナーテーブル48に保持されているウエーハの吸引保持を解除する。
【0054】
そして、スピンナーテーブル48上のウエーハWは、ウエーハ搬送手段16によってチャックテーブル18に搬送され、チャックテーブル18により吸引保持される。さらに、チャックテーブル18がX軸方向に移動してウエーハWは撮像手段22の直下に位置付けられる。
【0055】
撮像手段22でウエーハWの加工領域を撮像して、レーザービームを照射するレーザービーム照射ユニット24の集光器28とストリートSとの位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理が実行され、レーザービーム照射位置のアライメントが遂行される。
【0056】
このようにして、チャックテーブル18上に保持されているウエーハWのストリートS1又はS2を検出し、レーザービーム照射位置のアライメントが行われたならば、チャックテーブル18をレーザービームを照射する集光器28が位置するレーザービーム照射領域に移動し、ウエーハWのストリートS1又はS2に沿って集光器28からレーザービームを保護膜98を通して照射する。
【0057】
レーザービーム照射工程においては、図10に示すようにレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニット24の集光器28からウエーハWの加工面である表面側から保護膜98を通して所定のストリートSに向けてパルスレーザービームを照射しながら、チャックテーブル18をX軸方向に所定の送り速度(例えば100mm/秒)で移動する。
【0058】
尚、レーザー加工条件は例えば以下の通りである。
【0059】
光源 :YAGレーザー
波長 :355nm(YAGレーザーの第3高調波)
出力 :3.0W
繰り返し周波数 :20kHz
集光スポット径 :1.0μm
送り速度 :100mm/秒
レーザービーム照射工程を実施することによって、ウエーハWはストリートSに沿って分割される。この時、図10に示すようにレーザービームの照射によりデブリ100が発生しても、このデブリ100は保護膜98によって遮断され、デバイスDの電子回路及びボンディングパッド等に付着することはない。
【0060】
このようにして、半導体ウエーハWを個々のデバイスDに分割したら、チャックテーブル18は最初にウエーハWを吸引保持した位置に戻され、ここでウエーハWの吸引保持を解除する。そして、ウエーハWは搬送手段32によって保護膜形成装置30のスピンナーテーブル48に搬送され、吸着チャック48aにより吸引保持される。
【0061】
この時、スプレーノズル68、洗浄水ノズル78及びエアーノズル84は、図4及び図5に示すようにスピンナーテーブル48の上方から隔離した待機位置に位置付けられている。
【0062】
そして、実質的にスプレーノズル68と同じ構成で純水源とエアー源に接続された洗浄水ノズル78から純水とエアーとから成る洗浄水を噴射しながらウエーハWを低速回転(例えば300rpm)させることによりウエーハWを洗浄する。
【0063】
この時、洗浄水ノズル78は、図8に示したスプレーノズル68と同様にウエーハの外周部から回転中心部に至る領域で水平方向に揺動されながら洗浄水を噴射する。尚、洗浄ノズル78はウエーハの中心部まで至り、全面を洗浄する。
【0064】
その結果、ウエーハWの表面に被覆されていた保護膜98は水溶性の樹脂によって形成されているので、図11に示すように保護膜98を容易に洗い流すことができるとともに、レーザー加工時に発生したデブリ100も除去される。
【0065】
洗浄工程が終了したら、乾燥工程を実行する。即ち、洗浄水ノズル78を待機位置に位置付けるとともに、エアーノズル84の噴出口をスピンナーテーブル48上に保持されたウエーハWの外周部上方に位置付ける。
【0066】
そして、スピンナーテーブル48を例えば3000rpmで回転しつつエアーノズル84からスピンナーテーブル48に保持されているウエーハWに向けてエアーを噴出する。この時、エアーノズル84から噴出されたエアーがスピンナーテーブル48に保持されたウエーハWの外周部に当たる位置から中心部に当たる位置までの揺動範囲で揺動される。その結果、ウエーハWの表面が乾燥される。
【0067】
ウエーハWを乾燥させた後、搬送手段16によりウエーハWを吸着して仮置き領域12に戻し、更に搬出入手段10によりウエーハカセット8の元の収納場所にウエーハWは戻される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】レーザー加工装置の外観斜視図である。
【図2】フレームと一体化されたウエーハを示す斜視図である。
【図3】レーザービーム照射ユニットのブロック図である。
【図4】保護膜被覆装置の一部破断斜視図である。
【図5】スピンナーテーブルが上昇された状態の保護膜被覆装置の縦断面図である。
【図6】スピンナーテーブルが下降された状態の保護膜被覆装置の縦断面図である。
【図7】スプレーノズルの縦断面図である。
【図8】スプレーノズルの揺動範囲を説明する説明図である。
【図9】保護膜が被覆された半導体ウエーハの拡大断面図である。
【図10】レーザービーム照射工程を示す説明図である。
【図11】洗浄工程により保護膜が除去された状態のウエーハの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0069】
2 レーザー加工装置
18 チャックテーブル
24 レーザービーム照射ユニット
28 集光器
30 保護膜被覆装置
48 スピンナーテーブル
66 液状樹脂塗布手段
68 スプレーノズル
70 アーム
72 電動モータ
74 洗浄手段
78 洗浄水ノズル
76 乾燥手段
84 エアーノズル
88 液状樹脂供給通路
92 エアー供給通路
96 噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの表面に保護膜を被覆する保護膜被覆装置であって、
ウエーハを吸引保持し回転するスピンナーテーブルと、
該スピンナーテーブルに吸引保持されたウエーハに液状樹脂を塗布する塗布手段とを具備し、
該塗布手段は、液状樹脂を霧状にして噴射するスプレー手段と、該スプレー手段を支持するアームと、該アームに支持されたスプレー手段を少なくともウエーハの回転中心部から外周部に至る領域で水平方向に揺動する第1揺動手段とを含んでいることを特徴とする保護膜被覆装置。
【請求項2】
該スプレー手段は、液状樹脂供給通路と、エアー供給通路と、該液状樹脂供給通路と該エアー供給通路とが合流し霧状の液状樹脂を噴射する噴射口とを含んでいることを特徴とする請求項1記載の保護膜被覆装置。
【請求項3】
洗浄液を噴射する洗浄水ノズルと、該洗浄水ノズルを支持する第2アームと、該第2アームに支持された該洗浄水ノズルを少なくともウエーハの回転中心部から外周部に至る領域で水平方向に揺動する第2揺動手段とを有する洗浄手段を更に具備した請求項1又は2記載の保護膜被覆装置。
【請求項4】
エアーを噴射するエアーノズルと、該エアーノズルを支持する第3アームと、該第3アームに支持された該エアーノズルを少なくともウエーハの回転中心部から外周部に至る領域で水平方向に揺動する第3揺動手段とを有する乾燥手段を更に具備した請求項3記載の保護膜被覆装置。
【請求項5】
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハの加工面にレーザービームを照射して加工を施すレーザービーム照射手段とを備えたレーザー加工装置であって、
レーザー加工前のウエーハの加工面に保護膜を被覆する請求項1〜4の何れかに記載の保護膜被覆装置を更に具備したことを特徴とするレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−12508(P2010−12508A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176536(P2008−176536)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】