説明

信号伝送システム、該システムに用いられる信号伝送方法及び信号伝送制御プログラム

【課題】2系統に冗長化されている構成で信頼性の高い信号伝送システムを提供する。
【解決手段】変調器331 が故障した場合、信号切替機34,36から、異常通知信号ns34,ns36がそれぞれ出力される。この場合、信号の流れの上流に近い信号切替機34に対して操作が行われ、同信号切替機34の入力が変調器332 、及び出力が記録装置351 ,352 に設定される。この結果、変調器332 から出力される正常な出力信号r2 が信号切替機34を経て記録装置351 ,352 へ入力され、以降の装置へ正常な信号が流れ、信号切替機36からの異常通知信号ns36が停止する。この場合、信号切替機34の異常通知信号ns34の出力は継続する。そして、故障した変調器331 を介さずに信号が流れ、データ通信端末371 から出力信号x1 が正常に出力されると共に、データ通信端末372 から出力信号x2 が正常に出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、信号伝送システム、該システムに用いられる信号伝送方法及び信号伝送制御プログラムに係り、特に、全部又は一部が2系統に冗長化されたテレメータ装置などの信号伝送の動作を遠隔地から監視しつつ運用する場合に適用して好適な信号伝送システム、該システムに用いられる信号伝送方法及び信号伝送制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
信号伝送の動作を遠隔地から監視しつつ運用する信号伝送システムが構築されているが、たとえばテレメータ装置から伝送されるデータを受信するテレメータ受信業務は、被制御機器の試験を実施する上で不可欠のものであり、運用ができない場合、試験計画に対して非常に大きな問題となる。特に、遠隔制御によるテレメータ受信業務では、不具合が発生した場合、処置を実施するには、現地へ作業員(修理担当者)を派遣する必要があるため、有人運用に比べ、復旧に時間を要することから、高い信頼性が要求される。よって、信頼性を向上するために、同一の構成品を2系統設置することにより冗長化されたテレメータ装置が構成されることがある。
【0003】
この種の信号伝送システムは、たとえば図4に示すように、受信装置10と、構成品111 ,112 と、構成品121 ,122 と、構成品131 ,132 と、データ通信端末141 ,142 とから構成されている。構成品111 ,112 、構成品121 ,122 、及び構成品131 ,132 は、所定の信号処理回路などで構成され、それぞれ、同一の機能を有し、また、データ通信端末141 ,142 も同一の機能を有し、2系統に冗長化された構成とされている。
【0004】
この信号伝送システムでは、たとえば観測データなどのテレメータ信号が受信装置10で受信され、同受信装置10から、同一の出力信号a1 ,出力信号a2 が出力される。出力信号a1 は、構成品111 に入力されて信号処理が行われ、同構成品111 から出力信号b1 が出力される。出力信号b1 は、構成品121 に入力されて信号処理が行われ、同構成品121 から出力信号c1 が出力される。出力信号c1 は、構成品131 に入力されて信号処理が行われ、同構成品131 から出力信号d1 が出力される。出力信号d1 は、データ通信端末141 に入力され、同データ通信端末141 から出力信号e1 が遠隔地の図示しない遠隔監視手段へ送信される。
【0005】
また、出力信号a2 は、構成品112 に入力されて信号処理が行われ、同構成品112 から出力信号b2 が出力される。出力信号b2 は、構成品122 に入力されて信号処理が行われ、同構成品122 から出力信号c2 が出力される。出力信号c2 は、構成品132 に入力されて信号処理が行われ、同構成品132 から出力信号d2 が出力される。出力信号d2 は、データ通信端末142 に入力され、同データ通信端末142 から出力信号e2 が上記遠隔監視手段へ送信される。
【0006】
上記の信号伝送システムの他、この種の関連技術としては、たとえば、特許文献1に記載されたディジタル制御装置がある。
このディジタル制御装置は、入力された信号を演算処理して信号出力するコントローラと、同コントローラから出力された複数の出力信号に基づき、論理演算又は信号選択して1つの信号を外部に出力する出力選択手段とを備えている。コントローラでは、ディジタル信号入力部、アナログ信号入力部、ディジタル信号出力部、及びアナログ信号出力部が、それぞれ対に構成されている。そして、ディジタル信号入力部から出力された複数の信号をディジタル入力選択部が、アナログ信号入力部から出力された複数の信号をアナログ入力選択部が、ディジタル信号出力部から出力された複数の信号をディジタル出力選択部が、及び、アナログ信号出力部から出力された複数の信号をアナログ出力選択部が、制御対象が安全方向に機能するよう論理演算又は選択して出力する。
【0007】
また、特許文献2に記載された伝送切替装置は、第1の伝送系統の伝送信号を検出する第1の信号検出器と、第2の伝送系統の伝送信号を検出する第2の信号検出器と、信号比較器とを備えている。また、第1の伝送系統には第1の制御装置が接続され、第2の伝送系統には第2の制御装置が接続されている。この伝送切替装置では、第1の信号検出器により検出された第1の検出信号、及び第2の信号検出器により検出された第2の検出信号が信号比較器に入力され、常時2系統の検出信号比較が行われて伝送状態の監視が行われる。信号比較器で第1の検出信号と第2の検出信号とが比較された結果、第1の伝送系統で異常が検出された場合には、信号比較器から第1の信号検出器へ系統を切り離すための異常信号が出力され、信号比較器内で第1の伝送系統が切断されて、第1の制御装置が第1の伝送系統から切り離される。
【0008】
また、特許文献3に記載されたPCM方式テレメータ装置では、送信部側にクロック信号線に接続される切換制御部が設けられている。送信及び受信主伝送系などの故障時に、受信主伝送系により、クロック信号のクロック信号線への送出が停止される。送信部は、切換制御部によってクロック信号なしの状態を検知して送信主伝送系から送信予備伝送系に切換える。また、受信部は、受信主伝送系によりクロック信号の送出を停止すると、受信主伝送系から受信予備伝送系に切換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−208770号公報
【特許文献2】特開2006−093938号公報
【特許文献3】特公昭58−019181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記関連技術では、次のような課題があった。
すなわち、図4の信号伝送システムでは、2系統に冗長化されていても、それぞれの系統の構成品で1つでも故障すれば、運用を継続することができなくなり、信頼性が不十分であるという課題がある。
【0011】
また、特許文献1に記載されたディジタル制御装置では、ディジタル信号入力部、アナログ信号入力部、ディジタル信号出力部、及びアナログ信号出力部の故障発生時においても、一方の信号入出力部が健全であれば、制御対象の制御を行うことができるが、この発明とはハード構成や処理方法が異なる。
【0012】
特許文献2に記載された伝送切替装置では、第1の伝送系統で異常が発生した場合でも、瞬時に系統が切り替えられ、伝送を停止することなく運用が行われるが、この発明の信号伝送システムのように、複数の構成品が縦続接続された構成に対応するものではなく、この発明とは構成や処理方法が異なる。
【0013】
また、特許文献3に記載されたPCM方式テレメータ装置では、クロック信号の有無により故障が判別されるので、ケーブルの断線やクロック信号を処理する装置が故障し、クロック信号の出力が断になった場合には故障の判別が可能である。ところが、故障の種類は、クロック信号の断だけでなく、クロック信号が出力されている状態で信号の異常が発生する場合も考えられる。このため、上記の課題は、解決されない。
【0014】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、2系統に冗長化されている構成で、信頼性の高い信号伝送システム、該システムに用いられる信号伝送方法及び信号伝送制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、与えられた入力信号に対して所定の信号処理を行って出力信号を後段へ送出する所定段数の信号処理手段を有し、前記信号処理手段の全部又は一部が2系統に冗長化された冗長処理手段として構成されている信号伝送システムに係り、前記冗長処理手段から出力される2系統の前記出力信号を比較し、一致しているときにそのまま2系統の出力端子を経てそれぞれ前記後段へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号を出力すると共に、与えられた切替信号に基づいて、2系統の前記出力信号のうちの1系統の出力信号のみを前記後段へ送出するための信号切替機と、該信号切替機から前記異常通知信号を受信して所定の報知を行うと共に、操作者の操作に基づいて前記切替信号を前記信号切替機に与える操作手段とが付加されていることを特徴としている。
【0016】
この発明の第2の構成は、与えられた入力信号に対して所定の信号処理を行って出力信号を後段へ送出する所定段数の信号処理手段を有し、前記信号処理手段の全部又は一部が2系統に冗長化された冗長処理手段として構成されている信号伝送システムに用いられ、信号伝送制御プログラムがコンピュータに信号伝送制御させる信号伝送方法に係り、前記冗長処理手段から出力される2系統の前記出力信号を比較し、一致しているときにそのまま2系統の出力端子を経てそれぞれ前記後段へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号を出力すると共に、与えられた切替信号に基づいて、2系統の前記出力信号のうちの1系統の出力信号のみを前記後段へ送出するための信号切替機を付加しておき、前記コンピュータに、前記信号切替機から前記異常通知信号を受信して所定の報知を行わせると共に、操作者の操作に基づいて前記切替信号を前記信号切替機に与える操作処理を行わせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明の構成によれば、故障した信号処理手段を介さずに信号が流れることにより、出力信号が正常に出力され、2系統で同一の信号処理手段が故障しない限り、故障した信号処理手段を使用することなく、遠隔制御による出力信号の受信を継続することができ、また、故障した箇所の特定も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の信号伝送システムの概念を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施形態である信号伝送システムの要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図2中の信号切替器32の電気的構成を示す回路図である。
【図4】関連技術に係る信号伝送システムの要部の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記信号切替機は、上記冗長処理手段から出力される2系統の上記出力信号を比較し、不一致のときに上記異常通知信号を出力すると共に、上記切替信号に基づいて、2系統の上記出力信号のうちの1系統の出力信号を2系統の上記出力端子の任意の出力端子を経て上記後段へ送出する構成とされている信号伝送システムを実現する。
【0020】
また、上記信号切替機は、上記冗長処理手段から出力される2系統の上記出力信号を比較し、不一致のときに上記異常通知信号を出力する信号比較部と、上記操作手段(遠隔操作部)から与えられた上記切替信号に基づいて、2系統の上記出力信号のうちの1系統の出力信号を選択し、2系統の上記出力端子の任意の出力端子を選択して上記後段へ送出する信号選択部とから構成されている。
【0021】
また、上記信号選択部は、上記操作手段(遠隔操作部)から与えられた上記切替信号に基づいて、上記冗長処理手段から出力される2系統の上記出力信号のうちのいずれか一方の出力信号を選択して一方の上記出力端子を経て上記後段へ送出する第1のスイッチ手段(切替スイッチ)と、上記切替信号に基づいて、2系統の上記出力信号のうちのいずれか一方の出力信号を選択して他方の上記出力端子を経て上記後段へ送出する第2のスイッチ手段(切替スイッチ)とから構成されている。また、複数の上記冗長処理手段を有すると共に、上記各冗長処理手段に対応して上記信号切替機がそれぞれ設けられ、上記操作手段(遠隔操作部)は、複数の上記信号切替機から上記異常通知信号が出力されたとき、最も上流の上記信号切替機を優先して上記切替信号を与える構成とされている。
【0022】
図1は、この発明の信号伝送システムの概念を示すブロック図である。
この信号伝送システムは、同図に示すように、受信装置20と、構成品211 ,212 と、信号切替器22と、構成品231 ,232 と、信号切替器24と、構成品251 ,252 と、信号切替器26と、データ通信端末271 ,272 と、遠隔操作部28とから構成されている。受信装置20は、たとえば気象観測データなどのテレメータ信号を受信し、同一の出力信号f1 ,出力信号f2 を出力する。構成品211 ,212 は、それぞれ同一の機能を有する信号処理回路などで構成され、2系統に冗長化された冗長処理手段として構成されている。構成品211 ,212 は、受信装置20の出力信号f1 ,f2 を入力して所定の信号処理を行い、出力信号g1 ,g2 を出力する。
【0023】
信号切替器22は、構成品211 ,212 から出力される出力信号g1 ,g2 を比較し、一致しているときに、そのまま2系統の出力端子を経て出力信号h1 ,h2 としてそれぞれ構成品231 ,232 (後段)へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号ns22を出力すると共に、与えられた切替信号cs22に基づいて、2系統の出力信号g1 ,g2 のうちの1系統の出力信号のみを、任意の出力端子(すなわち、2系統の出力端子の両方又は一方)を経て、出力信号h1 ,h2 の両方又は一方として上記構成品231 ,232 (後段)の両方又は一方へ送出する。構成品231 ,232 は、それぞれ同一の機能を有する信号処理回路などで構成され、冗長処理手段として構成されている。構成品231 ,232 は、信号切替器22の出力信号h1 ,h2 を入力して所定の信号処理を行い、出力信号i1 ,i2 を出力する。
【0024】
信号切替器24は、信号切替器22と同様に構成され、構成品231 ,232 から出力される出力信号i1 ,i2 を比較し、一致しているときに、そのまま2系統の出力端子を経て出力信号j1 ,j2 としてそれぞれ構成品251 ,252 (後段)へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号ns24を出力すると共に、与えられた切替信号cs24に基づいて、2系統の出力信号i1 ,i2 のうちの1系統の出力信号のみを、任意の出力端子(すなわち、2系統の出力端子の両方又は一方)を経て、出力信号j1 ,j2 の両方又は一方として上記構成品251 ,252 (後段)の両方又は一方へ送出する。構成品251 ,252 は、それぞれ同一の機能を有する信号処理回路などで構成され、冗長処理手段として構成されている。構成品251 ,252 は、信号切替器24の出力信号j1 ,j2 を入力して所定の信号処理を行い、出力信号k1 ,k2 を出力する。
【0025】
信号切替器26は、信号切替器22と同様に構成され、構成品251 ,252 から出力される出力信号k1 ,k2 を比較し、一致しているときに、そのまま2系統の出力端子を経て出力信号m1 ,m2 としてそれぞれデータ通信端末271 ,272 (後段)へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号ns26を出力すると共に、与えられた切替信号cs26に基づいて、2系統の出力信号k1 ,k2 のうちの1系統の出力信号のみを、任意の出力端子(すなわち、2系統の出力端子の両方又は一方)を経て、出力信号m1 ,m2 の両方又は一方として上記データ通信端末271 ,272 (後段)の両方又は一方へ送出する。
【0026】
データ通信端末271 ,272 は、遠隔操作部28に有線接続又は無線接続され、各信号の送受信を行う。すなわち、データ通信端末271 は、遠隔操作部28から送出される切替信号cs22,cs24,cs26を、それぞれ信号切替器22,24,26に送出する。また、データ通信端末271 は、信号切替器26の出力信号m1 を出力信号n1 として遠隔操作部28へ送出すると共に、信号切替器22,24,26の異常通知信号ns22,ns24,ns26を異常通知信号nsA22,nsA24,nsA26として遠隔操作部28へ送出する。また、データ通信端末272 は、信号切替器26の出力信号m2 を出力信号n2 として遠隔操作部28へ送出すると共に、信号切替器22,24,26の異常通知信号ns22,ns24,ns26を異常通知信号nsB22,nsB24,nsB26として遠隔操作部28へ送出する。
【0027】
遠隔操作部28は、信号切替器22,24,26の異常通知信号ns22,ns24,ns26を、データ通信端末271 ,272 を介して異常通知信号nsA22,nsA24,nsA26,nsB22,nsB24,nsB26として受信して所定の報知(たとえば、アラーム、信号切替器22,24,26を特定するための表示など)を行うと共に、操作者の操作に基づいて、切替信号cs22,cs24,cs26をデータ通信端末271 を介して信号切替器22,24,26に与える。また、遠隔操作部28は、信号切替器22,24,26から異常通知信号ns22,ns24,ns26のうちの複数の異常通知信号が出力されたとき、最も上流の信号切替器を優先して切替信号cs22,cs24,cs26のうちの該当する切替信号を与える。
【実施形態】
【0028】
図2は、この発明の一実施形態である信号伝送システムの要部の電気的構成を示すブロック図である。
この形態の信号伝送システムは、同図に示すように、アンテナ30と、受信機311 ,312 と、信号切替機32と、変調器331 ,332 と、信号切替機34と、記録装置351 ,352 と、信号切替機36と、データ通信端末371 ,372 と、遠隔操作部38とから構成されている。アンテナ30は、たとえば気象観測データなどのテレメータ信号を無線信号pとして受信する。受信機311 ,312 は、それぞれ同一の機能を有し、信号処理手段が2系統に冗長化された冗長処理手段として構成されている。受信機311 ,312 は、無線信号pを入力して所定の信号処理を行い、出力信号q1 ,q2 を出力する。
【0029】
信号切替機32は、受信機311 ,312 から出力される出力信号q1 ,q2 を比較し、一致しているときに、そのまま2系統の出力端子を経て出力信号r1 ,r2 としてそれぞれ変調器331 ,332 (後段)へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号ns32を出力すると共に、与えられた切替信号cs32に基づいて、2系統の出力信号r1 ,r2 のうちの1系統の出力信号のみを、任意の出力端子(すなわち、2系統の出力端子の両方又は一方)を経て、出力信号r1 ,r2 の両方又は一方として上記変調器331 ,332 (後段)の両方又は一方へ送出する。変調器331 ,332 は、それぞれ同一の機能を有し、信号処理手段が2系統に冗長化された冗長処理手段として構成されている。変調器331 ,332 は、信号切替機32の出力信号r1 ,r2 を入力して、たとえばPCM(パルス符号変調)信号に変調し、出力信号s1 ,s2 を出力する。
【0030】
信号切替機34は、変調器331 ,332 から出力される出力信号s1 ,s2 を比較し、一致しているときに、そのまま2系統の出力端子を経て出力信号u1 ,u2 としてそれぞれ記録装置351 ,352 (後段)へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号ns34を出力すると共に、与えられた切替信号cs34に基づいて、2系統の出力信号s1 ,s2 のうちの1系統の出力信号のみを、任意の出力端子(すなわち、2系統の出力端子の両方又は一方)を経て、出力信号u1 ,u2 の両方又は一方として上記記録装置351 ,352 (後段)の両方又は一方へ送出する。記録装置351 ,352 は、それぞれ同一の機能を有するデータレコーダで構成され、信号処理手段が2系統に冗長化された冗長処理手段として構成されている。記録装置351 ,352 は、信号切替機34の出力信号u1 ,u2 を記録すると共に、出力信号v1 ,v2 として出力する。
【0031】
信号切替機36は、信号切替機32と同様に構成され、記録装置351 ,352 から出力される出力信号v1 ,v2 を比較し、一致しているときに、そのまま2系統の出力端子を経て出力信号w1 ,w2 としてそれぞれデータ通信端末371 ,372 (後段)へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号ns36を出力すると共に、与えられた切替信号cs36に基づいて、2系統の出力信号v1 ,v2 のうちの1系統の出力信号のみを、任意の出力端子(すなわち、2系統の出力端子の両方又は一方)を経て、出力信号w1 ,w2 の両方又は一方として上記データ通信端末371 ,372 (後段)の両方又は一方へ送出する。
【0032】
データ通信端末371 ,372 は、遠隔操作部38に有線接続又は無線接続され、各信号の送受信を行う。すなわち、データ通信端末371 は、遠隔操作部38から送出される切替信号cs32,cs34,cs36を、それぞれ信号切替機32,34,36に送出する。また、データ通信端末371 は、信号切替機36の出力信号w1 を出力信号x1 として遠隔操作部38へ送出すると共に、信号切替機32,34,36の異常通知信号ns32,ns34,ns36を異常通知信号nsA32,nsA34,nsA36として遠隔操作部38へ送出する。また、データ通信端末372 は、信号切替機36の出力信号w2 を出力信号x2 として遠隔操作部38へ送出すると共に、信号切替機32,34,36の異常通知信号ns32,ns34,ns36を異常通知信号nsB32,nsB34,nsB36として遠隔操作部38へ送出する。
【0033】
遠隔操作部38は、信号伝送制御プログラムに基づいて機能するコンピュータで構成され、信号切替機32,34,36の異常通知信号ns32,ns34,ns36を、データ通信端末371 ,372 を介して異常通知信号nsA32,nsA34,nsA36,nsB32,nsB34,nsB36として受信して、所定の報知(たとえば、アラーム、信号切替機32,34,36を特定するための情報を図示しないモニタなどで表示する)行うと共に、操作者の操作に基づいて、切替信号cs32,cs34,cs36をデータ通信端末371 を介して信号切替機32,34,36に与える。また、遠隔操作部38は、信号切替機32,34,36から異常通知信号ns32,ns34,ns36のうちの複数の異常通知信号が出力されたとき、最も上流の信号切替機を優先して切替信号cs32,cs34,cs36のうちの該当する切替信号を与える。なお、上記アンテナ30、受信機311 ,312 、信号切替機32、変調器331 ,332 、信号切替機34、記録装置351 ,352 、信号切替機36、及びデータ通信端末371 ,372 は、無人運用装置として構成され、遠隔操作部38は、この無人運用装置に対して遠隔地に配置されている。
【0034】
図3は、図2中の信号切替機32の電気的構成を示す回路図である。
この信号切替機32は、図3に示すように、信号比較部41と、信号選択部42とから構成されている。信号比較部41は、受信機311 ,312 から出力される2系統の出力信号q1 ,q2 を比較し、不一致のときに異常通知信号ns32を出力する。この信号選択部42は、遠隔操作部38から与えられた切替信号cs32に基づいて、2系統の出力信号q1 ,q2 のうちの1系統の出力信号(操作者により正常と判定された出力信号)を選択し、2系統の出力端子の両方又は一方の出力端子を経て、出力信号r1 ,r2 の両方又は一方として上記変調器331 ,332 (後段)の両方又は一方へ送出する。信号選択部42は、特に、この実施形態では、切替スイッチ421 ,422 を有している。切替スイッチ421 は、切替信号cs32に基づいて、出力信号q1 ,q2 のうちのいずれか一方の出力信号を選択して一方の出力端子を経て変調器331 (後段)へ送出する。切替スイッチ422 は、切替信号cs32に基づいて、出力信号q1 ,q2 のうちのいずれか一方の出力信号を選択して他方の出力端子を経て変調器332 (後段)へ送出する。また、信号切替機34,36も、信号切替機32と同様の構成となっている。
【0035】
次に、この形態の信号伝送システムに用いられる信号伝送方法の処理内容について説明する。
この信号伝送システムでは、信号切替機32,34,36により、前段の各冗長処理手段から出力される2系統の出力信号q1 ,q2 、出力信号s1 ,s2 、出力信号v1 ,v2 がそれぞれ比較され、一致しているときにそのまま2系統の出力端子を経てそれぞれ後段へ送出される一方、不一致のときに異常通知信号ns32,ns34,ns36が出力されると共に、遠隔操作部38から与えられた切替信号cs32,cs34,cs36に基づいて、2系統の出力信号のうちの1系統の出力信号のみが後段へ送出される。また、コンピュータで構成された遠隔操作部38により、異常通知信号ns32,ns34,ns36が受信されて所定の報知が行われると共に、操作者の操作に基づいて切替信号cs32,cs34,cs36を信号切替機32,34,36にそれぞれ与える(操作処理)。
【0036】
すなわち、正常時では、アンテナ30から出力される無線信号pが受信機311 に入力され、同受信機311 の出力信号q1 が信号切替機32を経て変調器331 に入力される。変調器331 の出力信号s1 は信号切替機34を経て記録装置351 に入力され、同記録装置351 の出力信号v1 が信号切替機36を経てデータ通信端末371 に入力される。データ通信端末371 の出力信号x1 は、遠隔操作部38へ送出される。また、アンテナ30から出力される無線信号pが受信機312 に入力され、同受信機312 の出力信号q2 が信号切替機32を経て変調器332 に入力される。変調器332 の出力信号s2 は信号切替機34を経て記録装置352 に入力され、同記録装置352 の出力信号v2 が信号切替機36を経てデータ通信端末372 に入力される。データ通信端末372 の出力信号x2 は、遠隔操作部38へ送出される。
【0037】
一方、たとえば変調器331 が故障した場合、信号切替機34,36から、異常通知信号ns34,ns36がそれぞれ出力される。この場合、信号の流れの上流に近い信号切替機34に対して操作が行われ、同信号切替機34の入力が変調器332 、及び出力が記録装置351 ,352 に設定される。この結果、変調器332 から出力される正常な出力信号r2 が信号切替機34を経て記録装置351 及び記録装置352 へ入力され、以降の装置へ正常な信号が流れ、信号切替機36からの異常通知信号ns36が停止する。この場合、信号切替機34の異常通知信号ns34の出力は継続する。これにより、故障した変調器331 を介さずに信号が流れ、データ通信端末371 から出力信号x1 が正常に出力されると共に、データ通信端末372 から出力信号x2 が正常に出力される。
【0038】
また、この後、受信機312 が故障した場合、信号切替機32,36から、異常通知信号ns32,ns36がそれぞれ出力される。この場合、信号の流れの上流に近い信号切替機32に対して操作が行われ、同信号切替機32の入力が受信機311 に設定され、また、変調器331 が故障しているので、同信号切替機32の出力が変調器332 に設定される。しかし、受信機312 が故障しているため、信号切替機36の異常通知信号ns36は出力され続ける。よって、信号切替機32の受信機311 からの入力を変調器332 に出力する。すると、正常なデータが変調器332 及び信号切替機34を経て記録装置351 、352 に流れ、信号切替機36の異常通知信号ns36が停止する。この場合、信号切替機32の異常通知信号ns32は、出力が継続する。これにより、故障した受信機312 及び変調器331 を介さずに信号が流れ、データ通信端末371 から出力信号x1 が正常に出力されると共に、データ通信端末372 から出力信号x2 が正常に出力される。
【0039】
以上のように、この実施形態では、故障した信号処理手段を介さずに信号が流れ、データ通信端末371 から出力信号x1 が正常に出力されると共に、データ通信端末372 から出力信号x2 が正常に出力されるので、2系統で同一の信号処理手段が故障しない限り、故障した信号処理手段を使用することなく、遠隔制御による出力信号x1 ,x2 の受信を継続することができ、また、故障した箇所の特定も行うことができる。
【0040】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、上記実施形態では、全ての信号処理手段が2系統に冗長化されているが、一部の信号処理手段のみが冗長化されていても、上記実施形態とほぼ同様の作用、効果が得られる。また、図2中の各信号処理手段は、同図2の構成に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、信号処理手段が冗長化された構成とされ、信号伝送の動作を遠隔地から監視しつつ運用する信号伝送システム全般に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
211 ,212 構成品(信号処理手段、冗長処理手段)
22,24,26,32,34,36 信号切替機
231 ,232 構成品(信号処理手段、冗長処理手段)
251 ,252 構成品(信号処理手段、冗長処理手段)
271 ,272 データ通信端末(信号処理手段)
28,38 遠隔操作部(操作手段)
311 ,312 受信機(信号処理手段、冗長処理手段)
331 ,332 変調器(信号処理手段、冗長処理手段)
351 ,352 記録装置(信号処理手段、冗長処理手段)
371 ,372 データ通信端末(信号処理手段)
41 信号比較部
42 信号選択部
421 ,422 切替スイッチ(スイッチ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられた入力信号に対して所定の信号処理を行って出力信号を後段へ送出する所定段数の信号処理手段を有し、前記信号処理手段の全部又は一部が2系統に冗長化された冗長処理手段として構成されている信号伝送システムであって、
前記冗長処理手段から出力される2系統の前記出力信号を比較し、一致しているときにそのまま2系統の出力端子を経てそれぞれ前記後段へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号を出力すると共に、与えられた切替信号に基づいて、2系統の前記出力信号のうちの1系統の出力信号のみを前記後段へ送出するための信号切替機と、
該信号切替機から前記異常通知信号を受信して所定の報知を行うと共に、操作者の操作に基づいて前記切替信号を前記信号切替機に与える操作手段とが付加されていることを特徴とする信号伝送システム。
【請求項2】
前記信号切替機は、
前記冗長処理手段から出力される2系統の前記出力信号を比較し、不一致のときに前記異常通知信号を出力すると共に、前記切替信号に基づいて、2系統の前記出力信号のうちの1系統の出力信号を2系統の前記出力端子の任意の出力端子を経て前記後段へ送出する構成とされていることを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
【請求項3】
前記信号切替機は、
前記冗長処理手段から出力される2系統の前記出力信号を比較し、不一致のときに前記異常通知信号を出力する信号比較部と、
前記操作手段から与えられた前記切替信号に基づいて、2系統の前記出力信号のうちの1系統の出力信号を選択し、2系統の前記出力端子の任意の出力端子を選択して前記後段へ送出する信号選択部とから構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の信号伝送システム。
【請求項4】
前記信号選択部は、
前記操作手段から与えられた前記切替信号に基づいて、前記冗長処理手段から出力される2系統の前記出力信号のうちのいずれか一方の出力信号を選択して一方の前記出力端子を経て前記後段へ送出する第1のスイッチ手段と、
前記切替信号に基づいて、2系統の前記出力信号のうちのいずれか一方の出力信号を選択して他方の前記出力端子を経て前記後段へ送出する第2のスイッチ手段とから構成されていることを特徴とする請求項3記載の信号伝送システム。
【請求項5】
複数の前記冗長処理手段を有すると共に、前記各冗長処理手段に対応して前記信号切替機がそれぞれ設けられ、
前記操作手段は、
複数の前記信号切替機から前記異常通知信号が出力されたとき、最も上流の前記信号切替機を優先して前記切替信号を与える構成とされていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の信号伝送システム。
【請求項6】
与えられた入力信号に対して所定の信号処理を行って出力信号を後段へ送出する所定段数の信号処理手段を有し、前記信号処理手段の全部又は一部が2系統に冗長化された冗長処理手段として構成されている信号伝送システムに用いられ、信号伝送制御プログラムがコンピュータに信号伝送制御させる信号伝送方法であって、
前記冗長処理手段から出力される2系統の前記出力信号を比較し、一致しているときにそのまま2系統の出力端子を経てそれぞれ前記後段へ送出する一方、不一致のときに異常通知信号を出力すると共に、与えられた切替信号に基づいて、2系統の前記出力信号のうちの1系統の出力信号のみを前記後段へ送出するための信号切替機を付加しておき、
前記コンピュータに、
前記信号切替機から前記異常通知信号を受信して所定の報知を行わせると共に、操作者の操作に基づいて前記切替信号を前記信号切替機に与える操作処理を行わせることを特徴とする信号伝送方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1乃至5のいずれか一に記載の操作手段として機能させることを特徴とする信号伝送制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−195716(P2012−195716A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57448(P2011−57448)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】