説明

信号伝送装置及び信号伝送方法

【課題】簡易な回路構成で信号のパルス幅やデューティ比を一定に保つことができるよう
にする。
【解決手段】エッジ抽出回路1は、入力パルス信号Dinの立ち上がりエッジ及び立ち下り
エッジを抽出し、抽出した立ち上がりエッジ及び立ち下りエッジを正パルス信号又は負パ
ルス信号のいずれかに統一したパルス信号n2を生成する。これにより、信号伝送回路2
における入力パルス信号Dinの立ち上がりの遅延と立ち下りの遅延による変動を入力パル
ス信号Dinの立ち上がり又は立ち下りで同じ条件にできる。従って、信号伝送回路2にお
ける入力パルス信号Dinの立ち上がりと立ち下がりにおける伝播遅延時間差が生じない。
信号伝送回路2は、エッジ抽出回路1により生成されたパルス信号n2を伝送する。波形
再生回路3は、信号伝送回路2により伝送されたパルス信号n2から波形を再生して出力
パルス信号Doutを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に用いられる信号伝送装置及び信号伝送方法に関し、特に信
号のパルス幅やデューティ比を揃えることに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路において例えば遅延素子を用いた信号伝送回路が存在する。図5
は、従来例に係る信号伝送回路8の構成例を示す図である。図6は、信号伝送回路8の動
作例を示すタイミングチャートである。図5に示す信号伝送回路8は、遅延素子としての
インバータ80〜83を備えている。
【0003】
インバータ80は、図6に示すタイムスケジュール(ts)の時刻t1で、入力端子4
Bから入力パルス信号Dinを入力する。時刻t2で、インバータ80は、入力パルス信号
Dinを反転した反転信号S80をインバータ81に出力する。時刻t3で、インバータ8
1は、反転信号S80を反転した信号S81をインバータ82に出力する。時刻t4で、
インバータ82は、信号S81を反転した反転信号S82をインバータ83に出力する。
時刻t5で、インバータ83は、反転信号S82を反転した出力パルス信号Doutを出力
端子5Bに出力する。
【0004】
図6に示すように、入力パルス信号Dinの立ち上がりに対して反転信号S80の立ち下
がりの遅延時間は、遅延時間tpdf1である。反転信号S80の立ち下りに対して信号S8
1の立ち上がりの遅延時間は、遅延時間tpdr2である。信号S81の立ち上がりに対して
反転信号S82の立ち下がりの遅延時間は、遅延時間tpdf3である。反転信号S82の立
ち下りに対して出力パルス信号Doutの立ち上がりの遅延時間は、遅延時間tpdr4である。
これらの遅延時間の合計は、以下の式(1)で示される。
Tpd1 = tpdf1 + tpdr2 + tpdf3 + tpdr4・・・(1)
【0005】
また、入力パルス信号Dinの立ち下がりに対して反転信号S80の立ち上がりの遅延時
間は、遅延時間tpdr1である。反転信号S80の立ち上がりに対して信号S81の立ち下
がりの遅延時間は、遅延時間tpdf2である。信号S81の立ち下がりに対して反転信号S
82の立ち上がりの遅延時間は、遅延時間tpdr3である。反転信号S82の立ち上がりに
対して出力パルス信号Doutの立ち下がりの遅延時間は、遅延時間tpdf4である。これらの
遅延時間の合計は、以下の式(2)で示される。
Tpd2 = tpdr1 + tpdf2 + tpdr3 + tpdf4・・・(2)
【0006】
この場合、入力端子4Bに入力された入力パルス信号Dinの立ち上がりから、出力端子
5Bに出力される出力パルス信号Doutの立ち上がりまでの遅延時間(図6に示すTpd1)
と、入力端子4Bに入力された入力パルス信号Dinの立ち下がりから、出力端子5Bに出
力される出力パルス信号Doutの立ち下がりまでの遅延時間(図6に示すTpd2)とは、必
ずしも等しくない(Tpd1≠Tpd2)。これは、インバータ80〜83における信号の立ち上
がりの遅延と信号の立ち下りの遅延とには差があるので、インバータ80〜83の立ち上
がり/立ち下がりにおける伝播遅延時間差が生じるからである。このため、入力端子4B
に入力された入力パルス信号Dinを出力端子5Bまで伝送すると、入力パルス信号Dinの
パルス幅やデューティ比が正しく再現されない。
【0007】
このように、信号伝送経路に多段の論理回路が備えられた半導体集積回路では、それら
の論理回路の遅延等の回路特性に起因して信号のデューティが変化するという問題がある

【0008】
このような従来例の問題に対処した特許文献1には、クロック信号のデューティを維持
するようにした信号伝送回路が開示されている。この信号伝送回路は、本経路からのクロ
ック信号とレプリカ経路からのクロック信号の位相を比較し、比較結果に応じてこれら双
方のクロック信号の位相が揃うようにデューティ調整回路を制御する。
【0009】
また、特許文献2には、デューティ比の誤差の蓄積を防止するようにした信号伝送シス
テムが開示されている。この信号伝送システムは、ハイレベルの部分の割合が増大した信
号を反転して出力してデューティ比の誤差を相殺することで、複数のデータドライバIC
を経由した場合でもデューティ比の誤差が蓄積されることを防止することを可能にしてい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−333073号公報
【特許文献2】特開2003−345310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来例に係る特許文献1に記載の信号伝送回路によれば、本経路と同一
の特性を有するレプリカ経路やデューティ調整回路を設ける必要があり、回路が複雑にな
る問題がある。特許文献2に記載の信号伝送システムによれば、デューティ比の誤差が蓄
積されることを防止できても、デューティ比の誤差が生じる可能性がある。
【0012】
そこで、本発明はこのような従来例に係る課題を解決したものであって、簡易な回路構
成で信号のパルス幅やデューティ比を一定に保つことができるようにした信号伝送装置及
び信号伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明に係る信号伝送装置は、入力パルス信号の立ち
上がりエッジに対応した第1のパルスと前記入力パルス信号の立下りエッジに対応した第
2のパルスとを生成し、前記第1のパルスと前記第2のパルスとに対応し正パルス又は負
パルスのいずれかに統一されたエッジ信号を生成するエッジ抽出回路と、前記エッジ信号
を伝送する信号伝送回路と、前記信号伝送回路からの信号に基づいた立ち上がりと立ち下
りとを有する出力パルス信号を生成する波形再生回路とを備えるものである。
【0014】
また、上述した課題を解決するために、本発明に係る信号伝送方法は、入力パルス信号
の立ち上がりエッジに対応した第1のパルスと前記入力パルス信号の立下りに対応した第
2のパルスとを生成するステップと、前記第1のパルスと前記第2のパルスとに対応し正
パルス又は負パルスのいずれかに統一されたエッジ信号を生成するステップと、前記エッ
ジ信号が信号伝送回路を伝送するステップと、波形再生回路が前記信号伝送回路からの信
号に基づいた立ち上がりと立ち下りとを有する出力パルス信号を生成するステップとを備
えるものである。
【0015】
本発明によれば、エッジ抽出回路は、入力パルス信号の立ち上がりエッジ及び立ち下り
エッジを抽出する。そして、抽出した立ち上がりエッジ及び立ち下りエッジを正パルス信
号又は負パルス信号のいずれかに統一したエッジ信号を生成する。これにより、信号伝送
回路における入力パルス信号の立ち上がりの遅延と立ち下りの遅延による変動を入力パル
ス信号の立ち上がり又は立ち下りで同じ条件にできる。従って、信号伝送回路における入
力パルス信号の立ち上がりと立ち下がりにおける伝播遅延時間差が生じない。信号伝送回
路は、エッジ抽出回路により生成されたエッジ信号を伝送する。波形再生回路は、信号伝
送回路により伝送されたエッジ信号から波形を再生して出力パルス信号を得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、入力パルス信号の立ち上がりエッジ及び立ち下りエッジを正パルス信
号又は負パルス信号のいずれかに統一したエッジ信号を信号伝送回路により伝送する。伝
送後、エッジ信号から波形を再生して出力パルス信号を得る。
【0017】
この構成によって、信号伝送回路における入力パルス信号の立ち上がりの遅延と立ち下
りの遅延による変動を入力パルス信号の立ち上がり又は立ち下りで同じ条件にできる。従
って、信号伝送回路における入力パルス信号の立ち上がりと立ち下がりにおける伝播遅延
時間差が生じない。これにより、入力パルス信号を信号伝送回路により伝送しても、入力
パルス信号のパルス幅やデューティ比が変化しないので、入力パルス信号を正しく再現し
た出力パルス信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1の実施例としての信号伝送装置100の構成例を示すブロック図である。
【図2】信号伝送装置100の動作例を示すタイミングチャートである。
【図3】第2の実施例としての信号伝送装置200の構成例を示すブロック図である。
【図4】信号伝送装置200の動作例を示すタイミングチャートである。
【図5】従来例に係る信号伝送回路8の構成例を示す図である。
【図6】従来例に係る信号伝送回路8の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
続いて、図面を参照しながら本発明に係る信号伝送装置及び信号伝送方法について説明
する。図1は、本発明に係る第1の実施例としての信号伝送装置100の構成例を示すブ
ロック図である。図1に示す信号伝送装置100は、エッジ抽出回路1、信号伝送回路2
及び波形再生回路3を備えている。
【0020】
エッジ抽出回路1は、入力パルス信号Dinの立ち上がりエッジ及び立ち下りエッジを抽
出し、抽出した立ち上がりエッジ及び立ち下りエッジを正パルス信号又は負パルス信号の
いずれかに統一したエッジ信号を生成する。この例で、エッジ抽出回路1は、入力パルス
信号Dinのエッジ信号の一例を示す正パルス信号n2を生成する。エッジ抽出回路1は、
立ち上がりエッジ抽出用のAND回路10、立ち下がりエッジ抽出用のOR回路11、エ
ッジパルス多重化用のEX−OR回路12及びインバータ回路13,14を備えている。
【0021】
AND回路10は、入力端子4から入力パルス信号Dinを入力すると共にインバータ回
路13から反転信号Dxinを入力する。AND回路10は、入力した入力パルス信号Din
と反転信号Dxinの論理積をとって入力パルス信号Dinの立ち上がりエッジを抽出して正
パルス信号Dredgeを出力する。この正パルス信号Dredgeは、第1のパルスの一例である

【0022】
OR回路11は、入力端子4から入力パルス信号Dinを入力すると共にインバータ回路
13から反転信号Dxinを入力する。OR回路11は、入力した入力パルス信号Dinと反
転信号Dxinの論理和をとって入力パルス信号Dinの立ち下がりエッジを抽出して負パル
ス信号Dfedgeを出力する。この負パルス信号Dfedgeは、第2のパルスの一例である。
【0023】
EX−OR回路12は、AND回路10から立ち上がりエッジを示す正パルス信号Dre
dgeを入力し、OR回路11から立ち下がりエッジを示す負パルス信号Dfedgeを入力する
。EX−OR回路12は、入力した正パルス信号Dredgeと負パルス信号Dfedgeの排他的
論理和をとってエッジパルスを多重化した負パルス信号n1を出力する。インバータ回路
14は、EX−OR回路12から負パルス信号n1を入力し、この負パルス信号n1を反
転して、エッジパルスを多重化した正パルス信号n2を信号伝送回路2に出力する。
【0024】
信号伝送回路2は、エッジ抽出回路1により生成されたエッジ信号の一例である正パル
ス信号n2を伝送する。この例で、信号伝送回路2は一つの伝送路から構成されている。
信号伝送回路2は、複数のインバータ回路20〜N(Nは整数)を直列に接続している。
インバータ回路20〜Nの各々は、エッジパルスを多重化した正パルス信号n2を入力す
る。この正パルス信号n2は、入力パルス信号Dinの立ち上がり/立ち下りが正パルスに
変換されている。このように、入力パルス信号Dinの立ち上がりのエッジと入力パルス信
号Dinの立ち下がりのエッジとが同一極性のパルスに変換されているので、インバータ回
路20〜Nにおいてパルスの立ち上がり/立ち下りで生じる伝播遅延時間差が発生しない
。従って、入力パルス信号Dinのパルス幅やデューティ比が変化しない。信号伝送回路2
は、正パルス信号n2を遅延させた正パルス信号n3を波形再生回路3に出力する。
【0025】
波形再生回路3は、信号伝送回路2により伝送された正パルス信号n2から波形を再生
して出力パルス信号Doutを得る。波形再生回路3は、D−FF(Delay Flip Flop)回路
50、スイッチ回路51及びSR−FF(Set-Reset Flip Flop)回路52を備えている
。D−FF回路50は、クロック入力が信号伝送回路2に接続され、出力がスイッチ回路
51の制御端子に接続される。D−FF回路50は、正パルス信号n3が入力される度に
スイッチ回路51のON/OFFを切り替えるようにトグルする。例えばD−FF回路5
0は、クロック(CLOCK)として正パルス信号n3が入力され、クロックのタイミン
グで入力Dがハイレベルならば出力Qからハイレベルの信号n5をスイッチ回路51に出
力し、入力Dがローレベルならば出力Qからローレベルの信号n5をスイッチ回路51に
出力する。D−FF回路50は、出力Qの信号n5を反転させた信号n4を出力XQから
入力Dに入力する。なお、D−FF回路50は、外部のリセットスイッチなどが押されて
リセット信号RSTを入力して出力Qをローレベルに設定する。
【0026】
スイッチ回路51は、D−FF回路50から信号n5を入力してSR−FF回路52の
経路をセット側又はリセット側に切り替える。例えば、スイッチ回路51は、信号n5が
ローレベルの場合にはセット側に経路を切り替え、信号n5がハイレベルの場合にはリセ
ット側に経路を切り替える。
【0027】
SR−FF回路52は、セット入力がスイッチ回路51の一方の出力に接続され、リセ
ット入力がスイッチ回路51の他方の出力に接続される。SR−FF回路52は、入力パ
ルス信号Dinの立ち上がりを抽出した正パルス信号n3によりセットすると共に、入力パ
ルス信号Dinの立ち下がりを抽出した正パルス信号n3によりリセットして波形を再生し
た出力パルス信号Doutを生成して出力端子5から出力する。
【0028】
続いて、信号伝送装置100の動作例について説明する。図2は、信号伝送装置100
の動作例を示すタイミングチャートである。図2に示すタイムスケジュール(ts)の時
刻t1で、外部からリセット信号RSTをD−FF回路50に出力してリセットする。
【0029】
時刻t2で、エッジ抽出回路1は、入力パルス信号Dinを入力する。また時刻t2で、
入力パルス信号Dinとインバータ回路13からの反転信号Dxinとの論理積をAND回路
10によりとって入力パルス信号Dinの立ち上がりエッジを抽出して正パルス信号Dredg
eを生成する。
【0030】
時刻t6で、入力パルス信号Dinとインバータ回路13からの反転信号Dxinとの論理
和をOR回路11によりとって入力パルス信号Dinの立ち下がりエッジを抽出して負パル
ス信号Dfedgeを生成する。
【0031】
時刻t2,t6で、正パルス信号Dredgeと負パルス信号Dfedgeの排他的論理和をEX
−OR回路12によりとって、エッジパルスを多重化した負パルス信号n1を生成する。
また時刻t2,t6で、この負パルス信号n1をインバータ回路14により反転して、エ
ッジパルスを多重化した正パルス信号n2を生成する。この正パルス信号n2により、入
力パルス信号Dinのエッジが同一極性のパルスに変換されているので、インバータ回路2
0〜Nにおいてパルスの立ち上がり/立ち下りで生じる伝播遅延時間差が発生しない。
【0032】
時刻t3で、正パルス信号n2が信号伝送回路2を伝送して遅延した正パルス信号n3
を波形再生回路3のD−FF回路50により入力する。時刻t3に示す正パルス信号n3
のクロックの立ち上がりで、D−FF回路50の出力XQからローレベルの信号n4を入
力Dに入力する。この場合、時刻t3から若干遅延した時刻t5で、D−FF回路50の
出力XQからローレベルの信号n4を入力Dに入力する。また時刻t5で、D−FF回路
50の出力Qからハイレベルの信号n5がスイッチ回路51に出力される。
【0033】
時刻t7で、正パルス信号n2が信号伝送回路2を伝送して遅延した2番目の正パルス
信号n3を波形再生回路3のD−FF回路50により入力する。時刻t7に示す正パルス
信号n3のクロックの立ち上がりで、D−FF回路50の出力XQからハイレベルの信号
n4を入力Dに出力する。この場合、時刻t7から若干遅延した時刻t9で、D−FF回
路50の出力XQからハイレベルの信号n4を入力Dに出力する。また時刻t9で、D−
FF回路50の出力Qからローレベルの信号n5がスイッチ回路51に出力される。この
ように、D−FF回路50は、正パルス信号n3が入力される度にハイレベルとローレベ
ルの信号n5を交互に出力して、スイッチ回路51のON/OFFを切り替えるようにト
グル動作する。
【0034】
時刻t3で、D−FF回路50からのローレベルの信号n5によりスイッチ回路51が
セット側に切り替えられている。このとき、入力パルス信号Dinの立ち上がりを抽出した
正パルス信号n3によりSR−FF回路52をセットして、時刻t4で出力パルス信号D
outのパルスを立ち上げる。
【0035】
時刻t7で、D−FF回路50からのハイレベルの信号n5によりスイッチ回路51が
リセット側に切り替えられている。このとき、入力パルス信号Dinの立ち下がりを抽出し
た2番目の正パルス信号n3によりSR−FF回路52をリセットして、時刻t8でパル
スを立ち下げて出力パルス信号D1outを生成する。以下同様にして出力パルス信号D2o
utを生成する。
【0036】
このように本発明に係る第1の実施例としての信号伝送装置100によれば、入力パル
ス信号Dinの立ち上がりエッジ及び立ち下りエッジを正パルス信号又は負パルス信号のい
ずれかに統一したエッジ信号を信号伝送回路2により伝送する。伝送後、エッジ信号から
波形を再生して出力パルス信号Doutを得る。
【0037】
この構成によって、信号伝送回路2における入力パルス信号Dinの立ち上がりの遅延と
立ち下りの遅延による変動を入力パルス信号Dinの立ち上がり又は立ち下りで同じ条件に
できる。従って、信号伝送回路2における入力パルス信号Dinの立ち上がりと立ち下がり
における伝播遅延時間差が生じない。これにより、入力パルス信号Dinを信号伝送回路2
により伝送しても、入力パルス信号Dinのパルス幅やデューティ比が変化しないので、入
力パルス信号Dinを正しく再現した出力パルス信号Doutを得ることができる。
【実施例2】
【0038】
続いて、本発明に係る第2の実施例としての信号伝送装置200について説明する。図
3は、第2の実施例としての信号伝送装置200の構成例を示すブロック図である。図3
に示す信号伝送装置200と信号伝送装置100の主な違いは、エッジ抽出回路1Aにお
いてエッジパルスの多重化を行わないことである。これに伴い、図1に示した波形再生回
路3のD−FF回路50及びスイッチ回路51が不要になり、SR−FF回路52のみで
波形再生回路を構成することができる。
【0039】
図3に示す信号伝送装置200は、エッジ抽出回路1A、信号伝送回路2A,2B及び
SR−FF回路52Aを備えている。エッジ抽出回路1Aは、立ち上がりエッジ抽出用の
AND回路10A、立ち下がりエッジ抽出用のOR回路11A及びインバータ回路13A
,14Aを備えている。
【0040】
AND回路10Aは、入力端子4Aから入力パルス信号Dinを入力すると共にインバー
タ回路13Aから反転信号Dxinを入力する。AND回路10Aは、入力した入力パルス
信号Dinと反転信号Dxinの論理積をとって入力パルス信号Dinの立ち上がりエッジを抽
出して正パルス信号Dredgeを出力する。
【0041】
OR回路11Aは、入力端子4Aから入力パルス信号Dinを入力すると共にインバータ
回路13Aから反転信号Dxinを入力する。OR回路11Aは、入力した入力パルス信号
Dinと反転信号Dxinの論理和をとって入力パルス信号Dinの立ち下がりエッジを抽出し
て負パルス信号Dfedgeをインバータ回路14Aに出力する。
【0042】
インバータ回路14AはOR回路11Aの出力に接続され、正パルス又は負パルスのい
ずれかに統一されたエッジ信号を生成する。この例で、インバータ回路14Aは、OR回
路11Aから負パルス信号Dfedgeを入力し、この負パルス信号Dfedgeを反転して、入力
パルス信号Dinの立ち下がりエッジを抽出した正パルス信号Dxfedgeを信号伝送回路2B
に出力する。
【0043】
信号伝送回路2Aは第1の信号伝送回路の一例であり、複数のインバータ回路20A〜
N(Nは整数)を直列に接続している。また信号伝送回路2Bは第2の信号伝送回路の一
例であり、複数のインバータ回路20B〜N(Nは整数)を直列に接続している。信号伝
送回路2A,2Bは、同じ遅延時間を持つように同様の回路と負荷条件で構成されている

【0044】
インバータ回路20A〜Nの各々は、エッジ抽出回路1Aからの入力パルス信号Dinの
立ち上がりエッジを示す正パルス信号Dredgeを伝送する。インバータ回路20B〜Nの
各々は、入力パルス信号Dinの立ち下がりエッジを示す正パルス信号Dxfedgeを伝送する
。これにより、入力パルス信号Dinの立ち上がり/立ち下がりエッジが同一極性の正パル
スに変換されているので、インバータ回路20A〜N,20B〜Nにおいてパルスの立ち
上がり/立ち下りで生じる伝播遅延時間差が発生しない。従って、入力パルス信号Dinの
パルス幅やデューティ比が変化しない。信号伝送回路2A,2Bはそれぞれ、正パルス信
号Dredge、正パルス信号Dxfedgeを遅延させてSR−FF回路52Aに出力する。
【0045】
SR−FF回路52Aは波形再生回路の一例であり、セット入力が信号伝送回路2Aに
接続され、リセット入力が信号伝送回路2Bに接続される。SR−FF回路52Aは、入
力パルス信号Dinの立ち上がりを抽出した正パルス信号Dredgeによりセットすると共に
、入力パルス信号Dinの立ち下がりを抽出した正パルス信号Dxfedgeによりリセットして
波形を再生した出力パルス信号Doutを生成して出力端子5Aから出力する。
【0046】
続いて、信号伝送装置200の動作例について説明する。図4は、信号伝送装置200
の動作例を示すタイミングチャートである。図4に示すタイムスケジュール(ts)の時
刻t1で、エッジ抽出回路1Aは、入力パルス信号Dinを入力する。時刻t1で、入力パ
ルス信号Dinとインバータ回路13Aからの反転信号Dxinとの論理積をAND回路10
Aによりとって入力パルス信号Dinの立ち上がりエッジを抽出して正パルス信号Dredge
を生成する。
【0047】
時刻t4で、入力パルス信号Dinとインバータ回路13Aからの反転信号Dxinとの論
理和をOR回路11Aによりとって入力パルス信号Dinの立ち下がりエッジを抽出して負
パルス信号Dfedgeを生成する。また、時刻t4で、負パルス信号Dfedgeをインバータ回
路14Aにより反転して、正パルス信号Dxfedgeを生成する。これらの正パルス信号Dre
dge、正パルス信号Dxfedgeにより、入力パルス信号Dinのエッジが同一極性のパルスに
変換されているので、インバータ回路20A〜N,20B〜Nにおいてパルスの立ち上が
り/立ち下りで生じる伝播遅延時間差が発生しない。
【0048】
時刻t2で、正パルス信号Dredgeをインバータ回路20A〜Nにより遅延させた正パ
ルス信号nA3をSR−FF回路52によりセットして、時刻t3で出力パルス信号Dou
tのパルスを立ち上げる。この正パルス信号nA3は、入力パルス信号Dinの立ち上がり
を抽出した正パルス信号である。
【0049】
また時刻t5で、正パルス信号Dxfedgeをインバータ回路20B〜Nにより遅延させた
正パルス信号nB3をSR−FF回路52によりリセットして、時刻t6でパルスを立ち
下げる。この正パルス信号nB3は、入力パルス信号Dinの立ち下がりを抽出した正パル
ス信号である。このようにして、出力パルス信号D3outを生成する。以下同様にして出
力パルス信号D4outを生成する。
【0050】
このように本発明に係る第2の実施例としての信号伝送装置200によれば、EX−O
R回路12やD−FF回路50、スイッチ回路51を不要にできるので、回路構成を簡易
化できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、半導体集積回路に用いられる信号伝送装置に適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0052】
1,1A・・・エッジ抽出回路、2・・・信号伝送回路、2A,2B・・・信号伝送回
路(第1及び第2の信号伝送回路)、3・・・波形再生回路、12・・・EX−OR回路
、52A・・・SR−FF回路(波形再生回路)、100,200・・・信号伝送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力パルス信号の立ち上がりエッジに対応した第1のパルスと前記入力パルス信号の立
下りエッジに対応した第2のパルスとを生成し、前記第1のパルスと前記第2のパルスと
に対応し正パルス又は負パルスのいずれかに統一されたエッジ信号を生成するエッジ抽出
回路と、
前記エッジ信号を伝送する信号伝送回路と、
前記信号伝送回路からの信号に基づいた立ち上がりと立ち下りとを有する出力パルス信
号を生成する波形再生回路とを備えることを特徴とする信号伝送装置。
【請求項2】
前記エッジ抽出回路は、
前記入力パルス信号に接続されるインバータ回路と、
前記入力パルス信号と前記インバータ回路の出力とに接続され、前記第1のパルスを生
成するAND回路と、
前記入力パルス信号と前記インバータ回路の出力とに接続され、前記第2のパルスを生
成するOR回路と、
前記AND回路の出力と前記OR回路の出力とに接続され、前記第1のパルスと前記第
2のパルスとに対応し正パルス又は負パルスのいずれかに統一されたエッジ信号を生成す
ると共に、前記第1のパルスと前記第2のパルスとを多重化するEX−OR回路とを備え

前記信号伝送回路は、一つの信号伝送回路で形成され、
前記波形再生回路は、
入力が前記信号伝送回路に接続されるスイッチ回路と、
セット入力が前記スイッチ回路の一方の出力に接続され、リセット入力が前記スイッチ
回路の他方の出力に接続されるフリップフロップ回路と、
クロック入力が前記信号伝送回路に接続され、出力が前記スイッチ回路の制御端子に接
続されるD−FF回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記エッジ抽出回路は、
前記入力パルス信号に接続されるインバータ回路と、
前記入力パルス信号と前記インバータ回路の出力とに接続され、前記第1のパルスを生
成するAND回路と、
前記入力パルス信号と前記インバータ回路の出力とに接続され、前記第2のパルスを生
成するOR回路と、
前記OR回路の出力に接続され、前記第1のパルスと前記第2のパルスとに対応し正パ
ルス又は負パルスのいずれかに統一されたエッジ信号を生成するインバータ回路とを備え

前記信号伝送回路は、
前記第1のパルスを伝送する第1の信号伝送回路と、
前記インバータ回路の出力を伝送する第2の信号伝送回路とを備え、
前記波形再生回路は、
セット入力が前記第1の信号伝送回路に接続され、リセット入力が前記第2の信号伝送
回路に接続されるフリップフロップ回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の信号
伝送装置。
【請求項4】
入力パルス信号の立ち上がりエッジに対応した第1のパルスと前記入力パルス信号の立
下りに対応した第2のパルスとを生成するステップと、
前記第1のパルスと前記第2のパルスとに対応し正パルス又は負パルスのいずれかに統
一されたエッジ信号を生成するステップと、
前記エッジ信号が信号伝送回路を伝送するステップと、
波形再生回路が前記信号伝送回路からの信号に基づいた立ち上がりと立ち下りとを有す
る出力パルス信号を生成するステップとを備えることを特徴とする信号伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−272931(P2010−272931A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120755(P2009−120755)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】