説明

信号品質最適化装置及び信号品質最適化システム

【課題】高速なシリアル伝送における信号の品質を最適化する装置及びシステムを提供する。
【解決手段】受信部1は、受信データを入力するとともに、前記受信データの補正を指示する調整制御信号を入力した場合には前記調整制御信号に従って前記受信データを補正して出力し、前記調整制御信号を入力しない場合には前記受信データを補正せずに出力するイコライザ11と、
イコライザ11が出力したイコライザ出力データを入力し、入力したイコライザ出力データのBERを計測し、計測したBERの計測結果に基づき前記調整制御信号を生成し、生成した前記調整制御信号をイコライザ11に出力する一連の動作を、イコライザ11から入力するイコライザ出力データのBERが最低になるまで繰り返すBER計測機能部13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信する伝送信号のBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)を計測した計測結果に基づいて伝送信号を補正することにより、伝送信号の品質を最適化する信号品質最適化装置及び信号品質最適化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の信号伝送方式では、受信側において受信エラーが発生したか否かによって、受信側に搭載されたイコライザ機能を調整して波形の補正を行っていた(例えば、特許文献1)。また、受信側においてビットエラーレートを測定しその結果にもとづいて送信側のドライバを調整する制御信号を、受信側から送信側へ送信し、伝送エラーを防止する方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−274585号、信号伝送システムおよび信号伝送方法
【特許文献2】特開2002−223204号、高速シリアル伝送方法および方式
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の信号伝送方式では、以下のような課題があった。特許文献1の方式では、エラーの有無にもとづいて制御を行っているため、エラーを回避するために調整した状態が最適な状態ではないケースが考えられ、温度などの環境変化によって、すぐにまた、エラーを頻発するような状態になる可能性が高いという課題がある。また、特許文献2に示した方式では、送信側から受信側への伝送品質が悪い場合、制御信号を送信側へ送信する伝送路の品質も同様に悪い可能性が高く、制御信号が正常に伝送できなくなるという課題がある。
【0004】
この発明は、高速なシリアル伝送における信号の品質を最適化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の信号品質最適化装置は、
受信データを入力するとともに、前記受信データの補正を指示する受信データ補正指示信号を入力した場合には前記受信データ補正指示信号に従って前記受信データを補正して出力し、前記受信データ補正指示信号を入力しない場合には前記受信データを補正せずに出力する受信データ補正部と、
前記受信データ補正部が出力したデータである受信データ補正部出力データを入力し、入力した前記受信データ補正部出力データのBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)を計測し、計測したBERの計測結果に基づき前記受信データ補正指示信号を生成し、生成した前記受信データ補正指示信号を前記受信データ補正部に出力する一連の動作を、前記受信データ補正部から入力する前記受信データ補正部出力データのBERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返すBER計測機能部と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明により、高速なシリアル伝送における信号の品質を最適化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1〜図7を用いて実施の形態1を説明する。実施の形態1は、受信する伝送信号(受信データ)のBERが最低となるように補正することにより、受信する伝送信号の品質を最適化する信号品質最適化装置に関する。
【0008】
(受信部1の構成)
図1は、実施の形態1における受信部1(信号品質最適化装置の一例)の構成ブロック図である。受信部1は、イコライザ11(受信データ補正部の一例)と、受信バッファ12と、BER計測機能部13とを備えている。
(1)イコライザ11は、受信した受信データの波形を補正する。イコライザ11は、受信データを入力するとともに、前記受信データの補正を指示する調整制御信号(受信データ補正指示信号)を入力した場合には前記受信データ補正指示信号に従って前記受信データを補正して出力し、前記受信データ補正指示信号を入力しない場合には前記受信データを補正せずに出力する。調整制御信号は、BER計測機能部13が生成し出力する。これについては後述する。
(2)受信バッファ12は、受信したデータをイコライザ11経由で受信する。
(3)BER計測機能部13は、受信したデータのBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)を計測する。BER計測機能部13は、イコライザ11が出力したデータ(受信データ補正部出力データ)を入力し、入力したこのデータのBERを計測し、計測したBERの計測結果に基づき調整制御信号を生成し、生成した調整制御信号をイコライザ11に出力するという一連の動作を、イコライザ11から入力するデータのBERが最低の値になるまで繰り返す。
【0009】
(BER計測機能部13の構成)
図2は、BER計測機能部13の詳細構成を示した図である。図2に示すように、BER計測機能部13は、波形評価部131、BER推測部132、調整信号生成部133、データ復号部134、位相シフト部135、クロック抽出部136、及びBER測定部137とを備える。
(1)波形評価部131は、受信波形を評価してランダムジッタの標準偏差を得る。
(2)BER推測部132は、波形評価部131で得られた受信波形の標準偏差、BER測定部137で測定されたBER値、位相シフト部135でのクロック位相シフト量から、クロック位相をシフトさせない場合、すなわち本来のクロック位相におけるBER値を推定する。
(3)調整信号生成部133は、BER推測部132の結果を元にデータ波形の補正量を調整するための信号を生成する。
(4)データ復号部134は、位相シフト部135にて位相をシフトさせたクロックで受信データをサンプルする。
(5)位相シフト部135は、クロック抽出部136にて抽出したクロックの位相を任意の量だけシフトさせる。
(6)クロック抽出部136は、受信データからクロックを抽出する。
(7)BER測定部137は、データ復号部134で復号されたデータ中の誤り量を計測する。
【0010】
次に図1を参照して、受信部1の動作を説明する。
(1)まず、イコライザ11は初期状態として、補償しない状態、すなわち受信した受信データをそのまま通過させる。BER計測機能部13は、イコライザ11が補正せずにそのまま通過させた受信データを入力して誤り率(BER)を計測する。
(2)次に、BER計測機能部13は、誤り率が高い場合、補償効果を高めるようにイコライザ11を制御する。すなわち、BER計測機能部13は、初期状態のイコライザ11から補正していない受信データを入力し、入力した受信データのBERを計測し、計測したBERの計測結果に基づき、イコライザ11に対して受信データの補正を指示する調整制御信号を生成する。そして、生成した調整制御信号をイコライザ11に出力する。イコライザ11は、調整制御信号を入力し、この調整制御信号に従って受信データを補正して出力する。
(3)そして、BER計測機能部13は、イコライザ11から補正済みの受信データを入力する。次に、BER計測機能部13は、入力した補正済みの受信データのBERを計測し、計測したBERの計測結果に基づき、イコライザ11に対して受信データの補正を指示する調整制御信号を生成する。そして、生成した調整制御信号をイコライザ11に出力する。イコライザ11は、調整制御信号を入力し、この調整制御信号に従って受信データを補正して出力する。BER計測機能部13は、このような一連の動作を、誤り率が改善されるまで誤り率計測とイコライザ11の調整(調整制御信号の生成)を繰り返す。すなわち、BER計測機能部13は、イコライザ11から入力する受信データのBERが所定の値よりも小さな値(本実施の形態1では最低値)になるまで、上記の一連の動作を繰り返す。
【0011】
(BER測定方法)
次に、本方式におけるBERの測定方法について説明する。一般的に、低いBER値の測定は非常に時間がかかるため極めて困難である。そこで本実施の形態1におけるBER測定は、以下のような方法で行う。
【0012】
通常シリアルデータの取得タイミングは図3に示したようにアイダイアグラムの中央であるが、これを図4に示したように意図的にずらすことによりエラーの発生頻度を増加させる。具体的には、図2に示したように、受信データからクロック抽出部136にて抽出したクロックを、位相シフト部135で位相をずらすことにより、データ取得タイミングを変化させる。この位相をずらしたクロックを使ってデータ復号部134で受信データをサンプリングすると、エラーの発生頻度が増加し、容易にBER測定部137でBERを測定する事が出来る。
【0013】
また、波形評価部131では、図5に示したように受信データ波形のジッタヒストグラムを2個のガウス分布で近似する(Dual−Dirac模型)ことにより、ランダムジッタの標準偏差を導出する。
(1)この「標準偏差」と、
(2)前述の位相シフト部135によるデータ取得タイミングのシフト量、
(3)およびBER測定部137で測定されたデータ取得タイミングをシフトさせた時のBER値、
という3つの情報から、本来のデータ取得タイミングでのBER値(推定値)を推定し、この推定値をBERとして採用する。
【0014】
(BERと補正との関係)
上記のような補正により信号品質の最適化が可能になるが、図6を用いて「BERと補正との関係」について説明する。
(1)前記の背景技術における特許文献1では、受信したデータをチェックしてエラーの有無を検出するという手法を採用している。また、イコライザの調整を行いながらエラーが検出できなくなった時点で調整を終了している。このエラー検出方式では、そのシステムのBER値に相当する量のデータのチェックを行わなければ、エラーの有無を判断できないという課題がある。例えば、特許文献1に引用されている10Gイーサネット(登録商標)の場合、仮にBERが10−18であれば2.5ヵ年連続して計測する必要がある。現実的には、これよりもはるかに短い時間でエラーチェックを行うことになるため、図6に示したような「BERは低いが最適ではない通信状態」をエラー無しの状態と判断する可能性が高い。このような最適ではない通信状態は、温度などの環境条件により容易にBERが高い状態、すなわち通信品質が悪い状態へ変化してしまい、十分に品質の高い伝送を行う事ができないおそれがある。
(2)イコライザ(あるいは実施の形態2で説明するプリエンファシス)による波形補正は、図6に示すように、その補正量が弱ければ十分にBERが下がらず、逆に補正を強め過ぎるとBERが高くなる(悪化する)という特性を持つ。すなわち、BERの値と、イコライザ(あるいはプリエンファシス)による補正量との関係は、図6にて図示したような下に凸の2次曲線形状の特性となる。したがって、数学的手法により放物線の頂点を求めることで、BERが最低となるポイントを特定する事が可能である。このように、BERが最低となる最適な補正量が存在するため、本実施の形態1(あるいは後述する実施の形態2)における方式により、BERが最低となるようにイコライザ11(あるいはプリエンファシス)を調整することで、最良の状態でデータを受信する事が可能となる。
【0015】
なお、BERについての最低値が得られるまで繰り返すことが好ましいが、図6に示したように、最低値(頂点)近傍の所定の値を閾値として設定しておき、BERがこの閾値より小さな値となった時点で最低値と見なすようにしても構わない。
【0016】
以上のように、BER計測機能部13は、BER計測結果が最低となるようにイコライザ11を制御するので、最良の状態でデータを受信することが可能となり、安定した高品質な通信を行うことができる。
【0017】
(最適化動作の時期)
以上の実施の形態1では伝送品質の最適化動作を説明したが、この最適化処理の動作をどのようなタイミングで行なうかは規定していなかった。以下では、最適化処理の動作のタイミングを説明する。なお「最適化処理」とは、受信データのBERが最低値となるで行なわれる一連の処理を意味する。
【0018】
(1)(タイミング1:起動時)
前記実施の形態1において、自動最適化動作を、起動時の初期化処理にて行う。これにより、通常動作を妨げることなく最良の伝送品質での信号伝送を行うことができる。通常運転中には余分な動作となる最適化処理を、システム起動時の初期化処理の一つとして行うことにより、伝送品質だけでなく、伝送路の使用効率も高めることが可能となる。
(2)(タイミング2:アイドル期間中)
自動最適化処理の動作を、起動時の初期化処理の他、通常動作時に有意な通信を行なっていないアイドル期間中にも行う。アイドル期間中にも行なうことにより、温度、湿度、電源電圧などの変動による伝送品質の変化に追従することができるため、常に最良な伝送品質での信号伝送を行うことができる。
(3)なお、受信部1が送信側の装置よりも先に起動するケースがあるが以下のように問題はない。この場合、送信側の起動が遅れていることは、受信側は受信バッファ12に正常な信号が来ないため検知することが可能である。また、1対1通信の場合、片方が起動していなければ、通信を行うことは出来ない(必要が無い)。このため、このケースであれば受信側は初期化を中断して送信側の起動を待つことができる。そして、送信側が起動してから初期化処理を再開して、伝送品質の最適化処理を実施する事が出来る。
【0019】
次に図7を用いて、受信部1が、さらに、所定の調整制御信号を格納する不揮発メモリを備える場合を説明する。図7は、図1に対して受信部1が不揮発メモリ14(受信データ補正指示信号記憶部の一例)を備えた構成である。
【0020】
図7において不揮発メモリ14は、不揮発な記憶領域であり、BER計測機能部13に接続される。
【0021】
次に動作について説明する。BER計測機能部13がもつ最適なイコライザ調整値(受信データ補正指示信号)をこの不揮発メモリ14に格納する。すなわち、BER計測機能部13は、最適化処理において最低のBER値を計測した場合に、そのBER値の受信データの補正の元となった調整制御信号を不揮発メモリ14に格納する。そして、BER計測機能部13は、次回起動時において、不揮発メモリ14に格納されている値(調整制御信号)を初期値として利用することにより、より短時間で調整を完了することができる。
【0022】
実施の形態1の受信部1は、BER計測機能部13が、BER計測結果が所定の値よりも小さな値となるまでイコライザ11を制御するので、最良に近い状態でデータを受信することが可能となり、安定した高品質な通信を行うことができる。
【0023】
実施の形態1の受信部1は、BER計測機能部13が、BERが最低値となるまでイコライザ11を制御するので、最良の状態でデータを受信することが可能となり、安定した高品質な通信を行うことができる。
【0024】
実施の形態1の受信部1は、BER計測機能部13が、ビットエラーを増加させることによりBERを計測するので、低いBERでも、より短時間で計測することができる。
【0025】
実施の形態1の受信部1は、BER計測機能部13が、一連の最適化処理を自装置の起動時における初期化処理において実行するので、通常動作を妨げることなく最良の伝送品質でデータを伝送することができる。
【0026】
実施の形態1の受信部1は、BER計測機能部13が、一連の最適化処理を自装置の起動時における初期化処理において実行することに加えて、通信のアイドル期間中にも実行する。従って、常に良好な伝送品質を確保することができる。
【0027】
実施の形態1の受信部1は、不揮発メモリ14が、BERを最低値とした調整制御信号を記憶するので、その調整制御信号を次回の起動時に用いることができる。また、その調整制御信号を次回の起動時に用いることで、最適化処理を短時間で実行することができる。
【0028】
実施の形態2.
図8、図9を用いて実施の形態2を説明する。実施の形態1では受信側でデータを補正したのに対して、実施の形態2は、送信側装置がデータを補正する実施形態である。実施の形態2は、受信側装置が受信データのBERを測定し、測定したBERに基づき送信データの補正を指示する信号(後述するエンファシス調整パケット)を生成して送信側装置に送信する。送信側装置はこの信号を受信し、受信した前記信号に従って、送信する送信データを補正する。受信側装置は、受信する送信データのBERが最低値となるまで、送信データの補正を指示する信号を送信側装置に送信することを繰り返す。
【0029】
図8は、実施の形態2における信号品質最適化システムの構成を示す図である。信号品質最適化システムは、送受信部2a(信号品質最適化装置の一例)と送受信部2b(通信装置の一例)とを備えている。送受信部2aと送受信部2bとは同一の構成であり、対応する構成要素には同一番号の符号を付してある。
【0030】
送受信部2aの構成を説明する。図8に示すように、送受信部2aは、プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21a(送信データ補正指示信号送信部の一例)、プリエンファシス調整機能部22a、プリエンファシス調整パケット解析部23a、受信バッファ24a(受信部の一例)、送信データ切り替え機能部25a、プリエンファシス調整パケット生成部26a(送信データ補正指示信号生成部の一例)、BER計測機能部27aとを備える。
(1)プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aは、プリエンファシス調整機能を内蔵した送信バッファである。プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aは、送信データ切り替え機能部25aが端子2と接続している場合は、プリエンファシス調整機能部22aが出力する調整制御信号にしたがってプリエンファシスを調整する。また、送信データ切り替え機能部25aが端子1と接続している場合は、プリエンファシス調整パケット生成部26aが生成したプリエンファシス調整パケットを送信する。
(2)プリエンファシス調整機能部22aは、プリエンファシス調整パケット解析部23aからの指示により調整制御信号をプリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aに出力する。
(3)プリエンファシス調整パケット解析部23aは、プリエンファシス調整パケットを解析する。
(4)受信バッファ24aは、送受信部2bが送信した送信データを受信する。
(5)送信データ切り替え機能部25aは、送信するべきデータを切り替える。
(6)プリエンファシス調整パケット生成部26aは、プリエンファシス調整パケットを生成する。
(7)BER計測機能部27aは、実施の形態1における図1のBER計測機能部13と同様に、受信データのBERを計測する。ただし、BER計測機能部27aは、BER計測機能部13が生成した調整制御信号に相当するプリエンファシス調整パケットを生成しない。プリエンファシス調整パケットは、プリエンファシス調整パケット生成部26aが生成する。なお、BER計測機能部27aとプリエンファシス調整パケット生成部26aとを図1のBER計測機能部13とみれば、機能はBER計測機能部13と同様である。
(8)伝送線路31と伝送線路32とは送受信部2a,2bに接続する。
【0031】
次に動作について説明する。送受信部2bを送信側装置、送受信部2aを受信側装置として説明する。
【0032】
まず、プリエンファシス調整機能部22bは、初期状態として、一切調整しない状態でデータを出力するようにプリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21bを制御する。
【0033】
送受信部2bのプリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21bから出力された信号(送信データ)は、伝送線路31を経由して信号品質を劣化させながら、他方の送受信部2aの受信バッファ24aへ到達する。
【0034】
受信バッファ24aが受信した信号は、BER計測機能部27aへ入力される。BER計測機能部27aは、BERを計測する。BERの計測方式は実施の形態1と同じである。
【0035】
プリエンファシス調整パケット生成部26aは、BER計測機能部27aにより計測されたBERが高い(信号品質が悪い)場合は、プリエンファシスを強めるように指示するプリエンファシス調整パケット(送信データ補正指示信号の一例)を生成し、プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aに出力する。
【0036】
プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aは、入力したプリエンファシス調整パケットを出力する。以上では、送信データ切り替え機能部25aは端子1と接続している。
【0037】
このとき、プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aは、送受信部2bにデータを送信する場合の通常の伝送レートに対して、1/2とか1/4といった低い伝送レートでプリエンファシス調整パケットを出力する。これにより、伝送線路32による劣化の影響を排除することができるため、プリエンファシス調整パケットを確実に伝達することが出来る。また、前記のように、この時、送信データ切り替え機能部25aは、プリエンファシス調整パケット生成部26aとプリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aとを接続する状態(端子1と接続)となっており、通常のデータのパス(端子2と接続)とは接続されていない。
【0038】
プリエンファシス調整パケットは、伝送線路32を経由して受信バッファ24bへ入力される。受信されたプリエンファシス調整パケットは、プリエンファシス調整パケット解析部23bへ送られて、プリエンファシス調整パケット解析部23bにより解析される。その解析結果に基づいて、プリエンファシス調整機能部22bが調整制御信号を生成し、プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21bに出力する。プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21bは、入力した調整制御信号に従って送信データのプリエンファシスを調整し、出力する。
【0039】
以上の動作を繰り返すことにより、プリエンファシスの調整が不足した状態や過剰な状態などを調べることができる。プリエンファシスの調整については、図6で説明したイコライザの場合と同様である。図6の特性により、BERが最小であった時のプリエンファシスの調整状態、すなわち最適な調整状態を最終的に設定することにより、最良の伝送品質での信号伝送を実現することが出来る。
【0040】
なお、BERについての最低値が得られるまで繰り返すことが好ましいが、実施の形態1と同様に、最低値(図6の頂点)近傍の所定の値を閾値として設定しておき、BERがこの閾値より小さな値となった時点で最低値と見なすようにしても構わない。
【0041】
(自動最適化動作のタイミング)
以上の実施の形態2では、伝送品質の最適化処理を説明したが、この最適化処理の動作をどのようなタイミングで行なうかは規定しなかった。以下では、最適化処理の動作のタイミングを説明する。なお「最適化処理」とは、実施の形態1の場合と同様に、受信データのBERが最低値となるで行なわれる一連の処理を意味する。
【0042】
(1)(タイミング1:起動時)
本実施の形態2において、まず自動最適化動作を、起動時の初期化処理にて行う。これにより、通常動作を妨げることなく最良の伝送品質での信号伝送を行うことが出来る。
(2)(タイミング2:アイドル期間中)
自動最適化動作を、起動時の初期化処理の他、通常動作時に有意な通信を行なっていないアイドル期間中にも行う。温度、湿度、電源電圧などの変動による伝送品質の変化に追従することができるため、常に最良な伝送品質での信号伝送を行うことが出来る。
(3)なお、送信側装置(設例における送受信部2b)と受信側装置(設例における送受信部1a)とのどちらかが先に起動するケースであっても、次のように、特に不都合は生じない。
(送信側装置が遅れて起動するケース)
この場合、送信側の起動が遅れていることは、受信側は受信バッファ12に正常な信号が来ないため検知することが可能である。また、1対1通信のため、片方が起動していなければ、通信を行うことは出来ない(必要が無い)。このため、このケースであれば受信側は初期化を中断して送信側の起動を待つことができる。そして、送信側が起動してから初期化処理を再開して、伝送品質の最適化処理を実施する事が出来る。
(受信側が遅れて起動するケース)
前述のケースと同様に、受信側の起動が遅れていることは、送信側は送信側の受信バッファに正常な信号が来ないため検知することが可能である。よって、受信側が遅れている場合と同様に、受信側が起動してくるまで初期化処理を中断して受信側の起動を待ってから、初期化処理を再開し、伝送品質の最適化処理を実施する事が出来る。
【0043】
次に図9を用いて、送受信部2bが、さらに、所定の調整制御信号を格納する不揮発メモリ28b(送信データ補正指示信号記憶部の一例)を備える場合を説明する。図9は、図8の送受信部2bが、さらに、不揮発メモリ28bを備えた構成である。
【0044】
図9において不揮発メモリ28bは不揮発な記憶領域であり、プリエンファシス調整機能部22bに接続される。
【0045】
次に動作について説明する。プリエンファシス調整機能部22bに設定された最適なプリエンファシス調整値を不揮発メモリ28bに格納する。「最適なプリエンファシス調整値」とは、最適化処理の動作において、最後に受信したプリエンファシス調整パケットに対応するデータが該当する。次回起動時には、この不揮発メモリ28bに格納されたデータを初期値として利用することにより、より短時間で調整を完了することができる。
【0046】
実施の形態2の送受信部2aは、プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aが、プリエンファシス調整パケットを通常の伝送レートよりも低い伝送レートで送信するので、プリエンファシス調整パケットを確実に相手装置に送信することができる。
【0047】
実施の形態2の送受信部2aは、受信バッファ24a、BER計測機能部27a、プリエンファシス調整パケット生成部26a、及びプリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aが、BER計測結果が所定の値よりも小さな値となるまでそれぞれの動作を繰り返すので、最良に近い状態でデータを受信することが可能となり、安定した高品質な通信を行うことができる。
【0048】
実施の形態2の送受信部2aは、受信バッファ24a、BER計測機能部27a、プリエンファシス調整パケット生成部26a、及びプリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aが、BER計測結果が最低値となるまでそれぞれの動作を繰り返すので、最良の状態でデータを受信することが可能となり、安定した高品質な通信を行うことができる。
【0049】
実施の形態2の送受信部2aは、BER計測機能部27aが、ビットエラーを増加させることによりBERを計測するので、低いBERでも、より短時間で計測することができる。
【0050】
実施の形態2の送受信部2aは、受信バッファ24a、BER計測機能部27a、プリエンファシス調整パケット生成部26a、及びプリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aが、BERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返すそれぞれの動作を自装置の起動時における初期化処理において実行するので、通常動作を妨げることなく最良の伝送品質でデータを伝送することができる。
【0051】
実施の形態2の送受信部2aは、受信バッファ24a、BER計測機能部27a、プリエンファシス調整パケット生成部26a、及びプリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ21aが、BERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返すそれぞれの動作を、自装置の起動時における初期化処理において実行することに加えて、通信のアイドル期間中にも実行する。従って、常に良好な伝送品質を確保することができる。
【0052】
実施の形態2の信号品質最適化システムでは、送受信部2bの不揮発メモリ28bが、BERを最低値としたプリエンファシス調整パケットに対応するデータを記憶するので、そのデータを次回の起動時に用いることができる。また、そのデータを次回の起動時に用いることで、最適化処理を短時間で実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態1における受信装置1のブロック図。
【図2】実施の形態1におけるBER計測機能部13のブロック図。
【図3】実施の形態1におけるビットエラーの発生頻度の増加を説明する図。
【図4】実施の形態1におけるビットエラーの発生頻度の増加を説明する図。
【図5】実施の形態1におけるビットエラーの発生頻度の増加を説明する図。
【図6】実施の形態1におけるBERと補正との関係を示す図。
【図7】実施の形態1における不揮発メモリ14を備えた受信装置1のブロック図。
【図8】実施の形態2における信号品質最適化システムの構成図。
【図9】実施の形態2における不揮発メモリ28bを備えた送受信部2bのブロック図。
【符号の説明】
【0054】
1 受信部、11 イコライザ、12 受信バッファ、13 BER計測機能部、14 不揮発メモリ、131 波形評価部、132 BER推測部、133 調整信号生成部、134 データ復号部、135 位相シフト部、136 クロック抽出部、137 BER測定部、2a,2b 送受信部、21a,21b プリエンファシス調整機能内蔵送信バッファ、22a,22b プリエンファシス調整機能部、23a,23b プリエンファシス調整パケット解析部、24a,24b 受信バッファ、25a,25b 送信データ切り替え機能部、26a,26b プリエンファシス調整パケット生成部、27a,27b BER計測機能部、28a 不揮発メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信データを入力するとともに、前記受信データの補正を指示する受信データ補正指示信号を入力した場合には前記受信データ補正指示信号に従って前記受信データを補正して出力し、前記受信データ補正指示信号を入力しない場合には前記受信データを補正せずに出力する受信データ補正部と、
前記受信データ補正部が出力したデータである受信データ補正部出力データを入力し、入力した前記受信データ補正部出力データのBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)を計測し、計測したBERの計測結果に基づき前記受信データ補正指示信号を生成し、生成した前記受信データ補正指示信号を前記受信データ補正部に出力する一連の動作を、前記受信データ補正部から入力する前記受信データ補正部出力データのBERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返すBER計測機能部と
を備えたことを特徴とする信号品質最適化装置。
【請求項2】
前記BER計測機能部は、
前記受信データ補正部から入力する前記受信データ補正部出力データのBERが最低値になるまで、前記一連の動作を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の信号品質最適化装置。
【請求項3】
前記BER計測機能部は、
前記受信データ補正部から入力した前記受信データ補正部出力データのビットエラーの発生頻度を増加させ、ビットエラーの発生頻度を増加させた前記受信データ補正部出力データに基づいて現実のBERの推測値を算出し、算出した前記推定値をBERとして採用することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の信号品質最適化装置。
【請求項4】
前記BER計測機能部は、
前記受信データ補正部から入力する前記受信データ補正部出力データのBERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返す前記一連の動作を、自装置における起動時の初期化処理において実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の信号品質最適化装置。
【請求項5】
前記BER計測機能部は、
前記受信データ補正部から入力する前記受信データ補正部出力データのBERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返す前記一連の動作を、自装置が有意な通信を行っていないアイドル期間中に実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の信号品質最適化装置。
【請求項6】
前記信号品質最適化装置は、さらに、
前記BER計測機能部が生成した前記受信データ補正指示信号であって前記所定の値よりも小さな値に対応する前記受信データ補正指示信号を不揮発的に記憶する受信データ補正指示信号記憶部を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の信号品質最適化装置。
【請求項7】
前記BER計測機能部は、
前記受信データ補正指示信号記憶部が記憶した前記受信データ補正指示信号を自装置の次回の起動時に前記受信データ補正部に出力することを特徴とする請求項6記載の信号品質最適化装置。
【請求項8】
データ通信の相手である通信装置であって送信データの補正を指示する送信データ補正指示信号を入力した場合には前記送信データ補正指示信号に従って前記送信データを補正して送信し、前記送信データ補正指示信号を入力しない場合には前記送信データを補正せずに送信する通信装置から送信された前記送信データを受信データとして受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記受信データを入力するとともに、入力した前記受信データのBERを計測するBER計測機能部と、
前記BER計測機能部が計測したBERの計測結果に基づき前記送信データ補正指示信号を生成する送信データ補正指示信号生成部と、
前記送信データ補正指示信号生成部が生成した前記送信データ補正指示信号を、前記通信装置にデータを送信する場合の通常の伝送レートよりも低い伝送レートで前記通信装置に送信する送信データ補正指示信号送信部と
を備えたことを特徴とする信号品質最適化装置。
【請求項9】
前記受信部と、前記BER計測機能部と、前記送信データ補正指示信号生成部と、前記送信データ補正指示信号送信部とのそれぞれは、
それぞれの動作を、前記受信データのBERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返すことを特徴とする請求項8記載の信号品質最適化装置。
【請求項10】
前記受信部と、前記BER計測機能部と、前記送信データ補正指示信号生成部と、前記送信データ補正指示信号送信部とのそれぞれは、
前記受信データのBERが最低値になるまで、それぞれの動作を繰り返すことを特徴とする請求項9記載の信号品質最適化装置。
【請求項11】
前記BER計測機能部は、
前記受信部から入力した前記受信データのビットエラーの発生頻度を増加させ、ビットエラーの発生頻度を増加させた前記受信データに基づいて現実のBERの推測値を算出し、算出した前記推定値をBERとして採用することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の信号品質最適化装置。
【請求項12】
前記受信部と、前記BER計測機能部と、前記送信データ補正指示信号生成部と、前記送信データ補正指示信号送信部とのそれぞれは、
前記受信データのBERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返すそれぞれの動作を、自装置における起動時の初期化処理において実行することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の信号品質最適化装置。
【請求項13】
前記受信部と、前記BER計測機能部と、前記送信データ補正指示信号生成部と、前記送信データ補正指示信号送信部とのそれぞれは、
前記受信データのBERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返すそれぞれの動作を、自装置が前記通信装置との間で有意な通信を行っていないアイドル期間中に実行することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の信号品質最適化装置。
【請求項14】
データ通信の相手である通信装置であって送信データの補正を指示する送信データ補正指示信号を入力した場合には前記送信データ補正指示信号に従って前記送信データを補正して送信し前記送信データ補正指示信号を入力しない場合には前記送信データを補正せずに送信する通信装置と、
前記通信装置から送信された前記送信データを受信データとして受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記受信データを入力するとともに、入力した前記受信データのBERを計測するBER計測機能部と、
前記BER計測機能部が計測したBERの計測結果に基づき前記送信データ補正指示信号を生成する送信データ補正指示信号生成部と、
前記送信データ補正指示信号生成部が生成した前記送信データ補正指示信号を、前記通信装置にデータを送信する場合の通常の伝送レートよりも低い伝送レートで前記通信装置に送信する送信データ補正指示信号送信部と
を有する信号品質最適化装置と
を備え、
前記信号品質最適化装置は、
前記受信部と、前記BER計測機能部と、前記送信データ補正指示信号生成部と、前記送信データ補正指示信号送信部とのそれぞれが、
それぞれの動作を前記受信データのBERが所定の値よりも小さな値となるまで繰り返し、
前記通信装置は、
前記信号品質最適化装置の前記送信データ補正指示信号送信部が送信した前記送信データ補正指示信号であって前記所定の値よりも小さな値に対応する前記送信データ補正指示信号を不揮発的に記憶する送信データ補正指示信号記憶部を有することを特徴とする信号品質最適化システム。
【請求項15】
前記通信装置は、さらに、
前記送信データ補正指示信号記憶部が前記送信データ補正指示信号を記憶した場合に、自装置の次回の起動時に前記送信データ補正指示信号記憶部の記憶している前記送信データ補正指示信号を入力し、入力した前記送信データ補正指示信号に従って前記送信データを補正する送信データ補正部と、
前記送信データ補正部が補正した送信データを送信するデータ送信部と
を備えたことを特徴とする請求項14記載の信号品質最適化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−318227(P2007−318227A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142829(P2006−142829)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】