説明

信号測定方法と装置および電子部品

【課題】回路基板等の信号測定方法に関するものであり、プローブとの接触点で発生する反射が被測定回路に伝わり、信号波形が変化することを低減するものである。
【解決手段】信号配線106に接続されるインピーダンス整合用等の回路素子を2つ以上に分割し、その接続点にプローブ107を接触させて信号の分圧電圧を測定することで、被測定回路に隣接する回路素子101で信号の反射を減衰させている。さらに、回路素子101と102のインピーダンス値と測定した分圧電圧を用いて補正演算を行い、測定点の信号を導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板等の信号測定方法と信号測定に用いる測定装置および電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電圧測定用のプローブを回路基板上の測定点に直接接触させて信号電圧もしくは電流を測定すると、プローブの寄生誘導成分と浮遊容量成分による共振周波数でプローブの入力インピーダンスが極端に低下するため、被測定回路からプローブに大きな電流が流れ込み、共振周波数周辺の被測定信号電圧成分が大きく変化する現象が起こる。
【0003】
そこで、従来、プローブの寄生誘導成分と浮遊容量成分による共振周波数以上の電圧成分測定時には、図12に示されるように入力インピーダンスの極端な低下を避けるための抵抗素子をプローブの先端に配置した構成を有するプローブを用いる方法が用いられていた。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、非特許文献1が知られている。
【非特許文献1】Dave Dascher著「The Truth About The Fidelity of High−Bandwidth Voltage Probes:Application Note 1404」Agilent Technologies、Inc.、2002年5月13日、P.1−19
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体や電子機器の動作に不具合が生じた場合、不具合の原因を解析するため、測定した回路基板上の信号波形を測定して、不具合の原因となる信号波形を正確に測定する必要がある。しかしながら上記従来の構成では、プローブの共振による被測定信号への影響は抑制できるものの、接触点で発生する反射が被測定回路に伝わり、信号波形が変化するため、反射が問題となる数GHz以上の高周波信号成分を正確に測定することが難しく、不具合の原因解析が難航するという問題点を有していた。
【0006】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、被測定回路の信号測定精度を向上させるための測定方法と測定装置および電子部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、信号配線に接続されるインピーダンス整合用等の回路素子を分割し、その接続点にプローブを接触させて測定を行う測定方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の測定方法は、被測定回路基板とプローブとの接触点と被測定信号配線との間の回路素子によって信号の反射成分が減衰することから、被測定信号の変化を低減させる効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における信号測定方法について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1(a)は本発明の実施の形態1における測定方法の構成図、図1(b)は補正演算に用いる式、(c)はフローチャート図、図2は他の測定方法の構成図である。
【0011】
図1(a)において、被測定信号配線106はインピーダンス整合が必要な高速信号配線である。101、102は回路素子としてのインピーダンス整合用抵抗素子であり、インピーダンス整合のために、抵抗素子101、102のインピーダンス値の合計を被測定信号配線106の特性インピーダンスとできるだけ一致させることが望ましい。これらの抵抗素子101、102を信号受信部品109に充分近い位置に配置された電子部品用パッド103、104、105に実装する(ステップS1)。また、信号送信部品108が送出した信号は被測定信号配線106を流れ、信号受信部品109に伝わっている。さらに、被測定信号配線106と直接接続していない抵抗素子102の両端の分圧電圧を電圧測定用のプローブ107で測定する(ステップS2)。
【0012】
以上のような構成において、被測定回路とプローブの接触点である電子部品用パッド104の付近で発生する反射成分は抵抗素子101で減衰され、被測定信号配線106に流れる信号波形の変化を減少させることができる。
【0013】
なお、プローブ107および測定器で検出できる分圧電圧は抵抗素子101と102による分圧比で、被測定信号電圧よりも低下しているため、電圧レベルを補正するための図1(b)に示す演算を実施するか、もしくは同演算を実現する電気回路において、被測定信号電圧を導出する。ただし、図1(b)中のVsigは被測定信号配線106の電圧であり、Vmesはプローブおよび測定器で検出した分圧電圧であり、Z1は抵抗素子101のインピーダンス値であり、Z2は抵抗素子102のインピーダンス値である(ステップS3)。
【0014】
なお、本実施の形態ではインピーダンス整合用抵抗を分割して、被測定信号配線106と直接接続していない抵抗素子102の両端の電圧を測定する方法としたが、他の例として、図2のようにプルアップ用の抵抗素子を分割して、抵抗素子201および202を配置し、被測定信号配線106と直接接続していない抵抗素子202の両端の電圧を差動用プローブ207もしくはシングルエンド用プローブを2本用いて測定する方法としてもよい。このとき、抵抗素子201、202の抵抗値の合計をプルアップに用いる抵抗値と一致させることが望ましい。同様に、プルダウン用の抵抗素子を分割して、被測定信号配線と直接接続していない抵抗素子の両端の電圧を測定する方法としてもよい。このとき、分割した抵抗素子の抵抗値の合計をプルダウンに用いる抵抗値と一致させることが望ましい。
【0015】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における電子部品について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図3は本発明の実施の形態2における電子部品の構成図であり、図3(a)はその斜視図、図3(b)は図3(a)の手前から見た等価回路図である。図4は他の電子部品の例を示す斜視図である。
【0017】
図3において、301は信号測定用の電子部品であり、回路基板等に実装する面を底面と定義すると、回路基板等の電気端子と接続するための端子電極302、303を底面に有している。また、上面に電圧測定用のプローブと接続するための端子電極304を有している。さらに、基板と接続するための端子電極302と303の間には回路素子としての抵抗部305と306が配置され、抵抗部305と306の接続点とプローブとの端子電極304が電気的に接続されている。
【0018】
以上のような構成において、基板との接続用端子電極302、303とプローブとの接続用端子電極304が反対面に配置されているため、基板に実装した状態ではプローブとの接続用端子電極304のみ電子部品の上面に配置され、他の端子電極と接触することなく信号測定を容易に実施することができる効果が得られる。
【0019】
また、電子部品301を回路基板に実装するときに、基板との接続用端子電極302、303に接触させるはんだ等の接着剤が拡散してプローブとの接続用端子電極304にも接触し、基板との接続用端子電極302、303とプローブとの接続用端子電極304とがショートする可能性を低下させる効果が得られる。
【0020】
また、電子部品の基板との接続用端子電極の形状を一般的に広く用いられている1005サイズや0603サイズ等の抵抗部品の端子電極と同じ形状にして、信号を測定したい箇所のみ本電子部品を実装できるようにしてもよい。
【0021】
なお、本実施の形態では基板との接続用端子電極302、303を電子部品301の底面にのみ配置し、プローブとの接続用端子電極304を上面にのみ配置したが、他の例として、図4(a)に示すように、基板との接続用端子電極402、403を電子部品401の側面や上面に設けてもよいし、図4(b)に示すように、プローブとの接続用端子電極414を電子部品411の側面にかかるように設けてもよい。また、本実施の形態ではプローブとの接続用端子電極304を電子部品301の上面の中心付近に配置したが、図4(c)に示すように、プローブとの接続用端子電極424を電子部品421の中心からずれた位置に配置してもよいし、図4(d)に示すように、プローブとの接続用端子電極434を電子部品431の上面の端に配置してもよい。
【0022】
また、本実施の形態における他の電子部品の例を組み合わせた構成としてもよい。
【0023】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3における電子部品について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図5は本実施の形態3における電子部品の斜視図である。図6は他の電子部品の例を示す構成図である。なお、実施の形態2の構成と同様の構成を有するものについては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0025】
図5の構成において、実施の形態2と相違する点は、電子部品301のプローブとの接続端子304を窪み形状の端子電極504とした点である。
【0026】
以上のような構成により、プローブと電子部品を接続する際に、プローブの先端を電子部品の窪みの中に差し込むことで固定することができ、再現性が高く安定した測定結果を得ることができる効果がある。
【0027】
なお、本実施の形態では電子部品のプローブとの接続用端子電極504のみ窪み形状としたが、他の例として、図6のように、電子部品601の上面にプローブとの接続用端子電極604および基板との接続用端子電極302と電気的に接続された端子607を窪み形状として配置してもよい。
【0028】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4における電子部品について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図7は本実施の形態4における電子部品の構成図である。
【0030】
図7の構成において、701は電圧測定用のコネクタ形状の電子部品であり、回路基板等の電気端子と接続するための端子電極702、703を底面に有している。また、上面に電圧測定用の別のコネクタ形状の電子部品と接続するための窪み形状の端子電極704、707を有しており、その一方の端子である707は基板との接続用端子電極の一方である702と電気的に接続されている。さらに、基板との接続用端子電極702と703の間には抵抗成分を持つ抵抗部705と706が配置され、抵抗部705と706の接続点および基板との接続用端子電極702と電気的に接続されていない方のプローブとの接続用端子電極704が電気的に接続されている。
【0031】
さらに、別のコネクタ形状の電子部品711は、コネクタ形状の電子部品701の窪み形状704、707と勘合する凸形状の端子電極708、709を有しており、これらの端子電極は接続ケーブル710を通じて、電圧測定用のプローブあるいは測定器と接続されている。
【0032】
以上の様な構成により、コネクタ形状の電子部品701と711を固定することで、2つのコネクタ形状の電子部品の端子電極が安定して接続され、再現性が高く安定した測定結果を得ることができる効果がある。
【0033】
なお、本実施の形態ではコネクタ形状の電子部品の窪みは704と707の1ペアであったため、1点の電圧のみ測定可能であったが、他の例として、図8の800のように、本実施の形態のコネクタ形状の電子部品801、802、803、804を合体させたようなコネクタ形状にして、同時に複数点の電圧を測定可能な構成にしてもよい。
【0034】
なお、本実施の形態では基板側のコネクタ形状の電子部品701の端子電極704、707が窪み形状で、測定器側のコネクタ形状の電子部品711の端子電極708、709が凸型形状であったが、他の例として、基板側のコネクタ形状の電子部品の端子電極が凸型形状で、測定器側のコネクタ形状の電子部品の端子電極が窪み型形状であったり、それぞれのコネクタ形状の電子部品の端子電極の一方が凸型で、他方が窪み型であってもよい。
【0035】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5における電子部品について、図面を参照しながら説明する。
【0036】
図9は本実施の形態5における電子部品の構成図である。なお、実施の形態2の構成と同様の構成を有するものについては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図9において実施の形態2と相違する点は、抵抗部905、906のインピーダンス値としての抵抗値もしくは抵抗値の大きい方の抵抗部が配置された方向を識別可能なマーク908や色分け、記号あるいは抵抗値を示す文字909、910を記した点である。
【0038】
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6における測定装置について、図面を参照しながら説明する。
【0039】
図10(a)は本実施の形態6における測定装置の構成図であり、図10(b)は図10(a)に記す、測定装置1000の動作のブロック図である。図11は他の測定装置の例を示すブロック図である。なお、実施の形態1の構成と同様の構成を有するものについては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図10(a)において、測定装置1000はケーブル1010を通じてプローブ1007と接続されており、実施の形態1の測定方法で測定された抵抗素子102の両端の電圧が測定装置で検出される。
【0041】
以上のような構成において、測定装置1000はインピーダンス値を記憶することができるインピーダンス値記憶部1105を有しており、インピーダンス値入力部1103から入力されたインピーダンス値を格納することができる。さらに、補正演算部1107では、インピーダンス値記憶部1105に格納されたインピーダンス値と測定データ入力部1106から入力された測定データを用いて、実施の形態1の補正演算を自動的に実施することができ、測定の効率を高める効果が得られる。
【0042】
なお、本実施の形態では補正演算に使用するインピーダンス値を取得するために、インピーダンス値入力部1103から入力したインピーダンス値を用いる例を示したが、他の例として、図11に示すように、部品識別情報入力部1202から入力された名称または番号等の識別情報をカギとして、部品インピーダンス情報記憶部1204にあらかじめ登録された部品のインピーダンス値を呼び出して用いてもよい。なお、部品インピーダンス情報記憶部1204は、測定装置内に存在してもよいし、取り外し可能な記憶媒体、ネットワーク上もしくはインターネット上に存在してもよい。
【0043】
なお、本実施の形態では測定装置1000内に補正演算を行うための機能ブロックが存在する例を示したが、他の例として、プローブ1007内に補正演算を行うための機能ブロックの一部もしくは全部があってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の信号測定方法と装置および電子部品は、回路基板上の信号測定時にプローブを接続することで発生する信号の反射の影響を低減させることができ、高精度な測定を実現する方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態1における測定方法の構成図
【図2】同実施の形態における他の測定方法の例を示す構成図
【図3】本発明の実施の形態2における電子部品の構成図
【図4】同実施の形態における他の電子部品の例を示す斜視図
【図5】本発明の実施の形態3における電子部品の斜視図
【図6】同実施の形態における他の電子部品の例を示す構成図
【図7】本発明の実施の形態4における電子部品の構成図
【図8】同実施の形態における他の電子部品の例を示す斜視図
【図9】本発明の実施の形態5における電子部品の構成図
【図10】本発明の実施の形態6における測定装置の構成図
【図11】同実施の形態における他の測定装置の例を示すブロック図
【図12】従来の測定方法の構成図
【符号の説明】
【0046】
101,102,201,202 抵抗素子(回路素子)
103,104 電子部品用パッド
105 グランド電位の電子部品用パッド(参照電位を有する導体)
106 被測定信号配線
107,1007 プローブ
108 信号送信部品
109 信号受信部品
205 電源電位の電子部品用パッド(参照電位を有する導体)
207 差動用プローブ
301,401,411,421,431,601 測定用電子部品(電子部品)
302,303,402,403,702,703 基板との接続用端子電極
304,404,414,424,434,504,604 プローブとの接続用端子電極
305,306,705,706,905,906 抵抗部(回路素子)
607 基板との接続端子と接続された部品上面の端子電極
701,711,801,802,803,804 コネクタ形状の電子部品
704,707,708,709 コネクタ形状の電子部品の端子電極
710,1010 ケーブル
800 複数点の測定が可能なコネクタ形状の電子部品
908 マーク
909,910 文字
1000 測定装置
1103 インピーダンス値入力部
1105 インピーダンス値記憶部
1106 測定データ入力部
1107 補正演算部
1108 補正演算データ出力部
1202 部品識別情報入力部
1204 部品ピーダンス情報記憶部
S1 回路素子配置ステップ
S2 分圧測定ステップ
S3 補正演算ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板等の信号測定方法において、被測定箇所と参照電位を有する導体との間にインピーダンスを有する少なくとも2個の回路素子を直列に接続して配置する回路素子配置ステップと、前記回路素子によって分圧された前記被測定箇所の分圧電圧を前記被測定箇所に隣接していない少なくとも1個の回路素子の両端の電圧を測定することで測定する分圧電圧測定ステップと、前記回路素子のインピーダンス値を用いて前記分圧電圧から前記被測定箇所の電圧を導出する補正演算ステップとを含むことを特徴とする信号測定方法。
【請求項2】
前記直列に接続して配置された回路素子がインピーダンス整合用抵抗である請求項1に記載の信号測定方法。
【請求項3】
前記直列に接続して配置された回路素子がプルアップ用抵抗もしくはプルダウン用抵抗である請求項1に記載の信号測定方法。
【請求項4】
少なくとも2個の回路素子が直列に接続されて配置されている電子部品であって、前記直列に配置された回路素子の接続点および両端に接続された少なくとも3個の端子電極を有しており、前記回路素子の接続点に接続された端子電極が配置された面と、前記回路素子の両端に接続された少なくとも2個の端子電極が配置された面とが前記電子部品の反対面に位置することを特徴とする電子部品。
【請求項5】
前記電子部品の測定用電極が窪み形状であることを特徴とする請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記電子部品の形状がコネクタ形状で、他のコネクタ形状の電子部品と固定して接続することが可能であることを特徴とする請求項4または5に記載の電子部品。
【請求項7】
直列に接続されて配置された回路素子のインピーダンス値やインピーダンス値の大小を判別することが可能なマーク、色分け、記号あるいは文字が記されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
直列に接続された少なくとも2個の回路素子により分圧された電圧を測定することが可能な測定装置であって、回路素子のインピーダンス値を記憶する手段を有し、測定された分圧電圧と前記回路素子のインピーダンス値を用いて、回路素子の任意の端子の信号を自動的に補正演算する手段を有することを特徴とする信号測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−285852(P2007−285852A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113144(P2006−113144)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】