説明

信号等化器

【課題】レセプタクルコネクタに関し、コネクタピンを利用することで簡単な構造で安価な信号等化器を実現する。
【解決手段】外部伝送線路を回路基板に電気的に接続するためのコネクタにおいて、レセプタクルコネクタのコネクタピン(3〜6)と、前記コネクタピンに接続された主伝送線路(11〜14)と、前記コネクタピンから分岐された、所定の電気長を有する分岐ピン(7〜10)と、一端が終端抵抗で終端され他端が前記分岐ピンに接続された調整用伝送線路(15〜18)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主伝送線路を回路基板に電気接続するためのコネクタにおいて、高速に信号を伝送するための信号等化器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、ケーブルの両端にコネクタをそれぞれ取り付けたコネクタ付ケーブルにおいて、受信側コネクタあるいは送信側コネクタに、受信信号あるいは送信信号の波形整形を行う信号等化器を内蔵したものがあった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−135840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の技術では、信号等化器を内蔵したことにより、コネクタが大きくなり、また、コストが上昇するという問題点があった。
また、コネクタの構造によっては、コネクタピンの部分でクロストークが発生する発生するという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、コネクタピンを利用した簡単な構成で安価な信号等化器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、外部伝送線路を回路基板に電気的に接続するためのコネクタにおいて、レセプタクルコネクタのコネクタピンと、前記コネクタピンに接続された主伝送線路と、前記コネクタピンから分岐された、所定の電気長を有する分岐ピンと、一端が終端抵抗で終端され他端が前記分岐ピンに接続された調整用伝送線路と、を備えたことを特徴とする信号等化器にある。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、コネクタピンを分岐させて抵抗で終端するという簡易な構成で、(1)信号等化器の実現、(2)コネクタピン間で発生する近端クロストークの抑制、が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態による信号等化器の構成を示す図である。
【図2】図1の信号等化器の1本の差動伝送ケーブルに係る回路の回路図である。
【図3】この発明を使用しないレセプタクルコネクタの回路実装例を示す図である。
【図4】この発明の別の実施の形態による信号等化器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明による信号等化器を実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各図において、同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態による信号等化器の構成を示す図である。図1では、2対の差動伝送線路を想定した信号等化器の構成となっている。図1において、回路基板1上のレセプタクルコネクタ2のコネクタピン3〜6の一端にはそれぞれ、主伝送線路11〜14が接続されている。主伝送線路11と12、及び主伝送線路13と14はそれぞれに差動伝送路を構成する。またコネクタピン3〜6には、途中から分岐ピン7〜10の一端がそれぞれ接続され、各分岐ピン7〜10の他端には、終端抵抗19〜21を介してグランド23〜26に接続されて一端が終端された調整用伝送線路15〜18の他端がそれぞれ接続されている。
【0011】
また、レセプタクルコネクタ2を実装した回路基板1を嵌合させて電気的に接続させるプラグコネクタ27において、差動伝送ケーブル32にはプラグ側ピン28と29が接続され、差動伝送ケーブル33にはプラグ側ピン30と31が接続されている。そして回路基板1がプラグコネクタ27に結合されると、プラグ側ピン28はコネクタピン3と分岐ピン7に接続され(例えばこれらの接続部分に接続)、プラグ側ピン29はコネクタピン4と分岐ピン8に、プラグ側ピン30はコネクタピン5と分岐ピン9に、プラグ側ピン31はコネクタピン6と分岐ピン10に、それぞれ接続される。
【0012】
図2には回路基板1とプラグコネクタ27が電気的に接続された状態での、1つの作動伝送線路(外部伝送線路)である差動伝送ケーブル32に係る回路の回路図を示す。差動伝送ケーブル32にはプラグ側ピン28、29が接続され、プラグ側ピン28には、コネクタピン3と主伝送線路11が順次直列に接続され、また分岐ピン7、調整用伝送線路15、終端抵抗19、グランド23が順次直列に接続されている。プラグ側ピン29には、コネクタピン4と主伝送線路12が順次直列に接続され、また分岐ピン8、調整用伝送線路16、終端抵抗20、グランド24が順次直列に接続されている。
【0013】
なお、分岐ピン7〜10は所定の電気長(信号の遅延時間を基準とした長さ)を有する。また調整用伝送線路15〜18は、例えばそれぞれの外部伝送線路である差動伝送ケーブル32、33の減衰特性に合わせて調整した電気長を有する。また、分岐ピン7〜10の特性インピーダンス値はそれぞれコネクタピン3〜6の特性インピーダンス値とは異なる。
【0014】
以下、図2を用いて動作について説明する。なお差動伝送ケーブル33側の回路図も基本的に同じである。図2において、差動伝送ケーブル32から伝送された信号はプラグ側ピン28、29及びコネクタピン3、4を伝搬し、主伝送線路11、12に到達する。このとき、差動伝送ケーブル32のもつ誘電体損失および導体損失は、高い周波数になる程、また伝送距離が長くなる程、大きくなり、従って減衰が大きくなる。高い周波数成分が減衰すると伝送波形に歪が生じて正しいデータが伝送できなくなるが、分岐ピン7、8及び調整用伝送線路15、16の出力部に接続された終端抵抗19,20の作用により低い周波数成分が抑制され、平坦な周波数特性が実現できる。
【0015】
差動伝送ケーブル32を伝送された信号は、コネクタピン3、4を伝搬するとともに、分岐ピン7、8を伝搬して終端抵抗19、20に到達し、負の反射となって再びコネクタピン3、4に加わる。このとき、コネクタピン3、4と分岐ピン7、8の分岐点から見た分岐ピン側の入力インピーダンスZinは
【0016】
Zin=Z×(R+j×Z×tanβl)/(Z+j×R×tanβl)
【0017】
となる。ここでZは分岐ピン7、8の特性インピーダンス値、βlは分岐ピン7、8の電気長、Rは終端抵抗19、20の抵抗値、jは虚数単位を示す。低い周波数の信号では、入力インピーダンスZin=Rとなり、終端抵抗19、20により減衰が生じる。これに対し、高い周波数の信号では、入力インピーダンスZが大きな値になるため、終端抵抗Rによる減衰が減少する。特に電気長βl=π/2の時にZin=Z×Z/Rとなる。このとき、Z≧Rとすれば分岐ピン7、8がハイインピーダンスに見えるため、終端抵抗19、20による減衰が大きく減少する。
【0018】
さらに、この発明による信号等化器を用いると、レセプタクルコネクタ2で発生する近端クロストークを抑制する効果がある。
【0019】
図3はこの発明を使用しないレセプタクルコネクタ2の回路実装例を示す図である。図3は差動伝送線路を想定した回路実装の構成となっている。図3において、それぞれ主伝送線路11と12及び13と14が差動伝送線路である。レセプタクルコネクタ2のレセプタクル側使用ピン34〜37には主伝送線路11〜14のそれぞれの一端が接続されている。また、レセプタクル側未使用ピン38〜41はそれぞれオープンとなっている。
【0020】
この時、レセプタクル側使用ピン35とレセプタクル側使用ピン36において、間に配置されているレセプタクル側未使用ピン39、40が自身の電気長の1/4の長さに対応した共振器として動作し、レセプタクル側使用ピン35とレセプタクル側使用ピン36間で近端クロストークが発生する。
【0021】
この発明では、レセプタクル側未使用ピン39、40に相当する分岐ピン8、9を、調整用伝送線路16、17を介し終端抵抗20、21で終端することにより、共振が発生せず、近端クロストークの発生を抑制する効果がある。
【0022】
実施の形態2.
図4はこの発明の別の実施の形態による信号等化器の構成を示す図である。図4は上記と同様に2つの差動伝送線路を想定した信号等化器の構成となっている。なおプラグコネクタ(図1の符号27参照)側の図示は省略されている。図4では、コネクタのピンを分岐させるのではなく、既存のコネクタのピン同士を接続することで、信号等化器を構成している。図4において、レセプタクルコネクタ2の信号ピン42〜45の一端に主伝送線路11〜14の一端がそれぞれ接続されている。主伝送線路11と12、主伝送線路13と14はそれぞれ差動伝送線路を構成する。また、信号ピン42〜45はそれぞれ、例えば抵抗器、コンデンサ、インダクタンス等のいずれかからなる導電性を有する接続部材46〜49を介し、スタブピン50〜53が接続されている。スタブピン50〜53の一端にはそれぞれ、終端抵抗19〜21を介してグランド23〜26に接続されて一端が終端された調整用伝送線路15〜18の他端がそれぞれ接続されている。
【0023】
なお、スタブピン50〜53は所定の電気長を有する。また調整用伝送線路15〜18は、例えばそれぞれの外部伝送線路である差動伝送ケーブル(図1,2参照)の減衰特性に合わせて調整した電気長を有する。また、スタブピン50〜53の特性インピーダンス値はそれぞれ信号ピン42〜45の特性インピーダンス値とは異なる。
【0024】
図4の動作原理は図1の実施の形態と同様であるため省略する。
【0025】
この発明の信号等化器は特に高周波回路機器に適用される。さらにはこの発明の信号等化器は、ケーブルによる信号伝送やバックプレーンによる信号伝送等の運用に適用が可能である。また上記実施の形態では2極(2つの差動伝送線路)の構成について示したが、1極あるいは3極以上の様々な極数をもつコネクタに対して適用されうる。すなわち、コネクタのレセプタクルコネクタの各コネクタピン又は各信号ピンのそれぞれに対して、この発明の信号等化器の構成を施すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 回路基板、2 レセプタクルコネクタ、3〜6 コネクタピン、7〜10 分岐ピン、11〜14 主伝送線路、15〜18 調整用伝送線路、19〜22 終端抵抗、23〜26 グラウンド、27 プラグコネクタ、28〜31 プラグ側ピン、32,33 差動伝送ケーブル、34〜37 レセプタクル側使用ピン、38〜41 レセプタクル側未使用ピン、42〜45 信号ピン、46〜49 接続部材、50〜53 スタブピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部伝送線路を回路基板に電気的に接続するためのコネクタにおいて、
レセプタクルコネクタのコネクタピンと、
前記コネクタピンに接続された主伝送線路と、
前記コネクタピンから分岐された、所定の電気長を有する分岐ピンと、
一端が終端抵抗で終端され他端が前記分岐ピンに接続された調整用伝送線路と、
を備えたことを特徴とする信号等化器。
【請求項2】
分岐ピンの特性インピーダンス値は、コネクタピンの特性インピーダンス値と異なることを特徴とする請求項1に記載の信号等化器。
【請求項3】
外部伝送線路を回路基板に電気的に接続するためのコネクタにおいて、
レセプタクルコネクタの信号ピンと、
前記信号ピンに接続された主伝送線路と、
一端が終端抵抗で終端された調整用伝送線路と、
一端が前記調整用伝送線路の他端に接続された所定の電気長を有するスタブピンと、
前記信号ピンと前記スタブピンを電気的に接続する接続部材と、
を備えたことを特徴とする信号等化器。
【請求項4】
スタブピンの特性インピーダンス値は、信号ピンの特性インピーダンス値と異なることを特徴とする請求項3に記載の信号等化器。
【請求項5】
接続部材が抵抗器又はコンデンサ又はインダクタからなることを特徴とする請求項3又は4に記載の信号等化器。
【請求項6】
調整用伝送線路が、前記外部伝送線路の減衰特性に合わせて調整された電気長を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の信号等化器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−267484(P2010−267484A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117741(P2009−117741)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】