修飾ヒアルロン酸ポリマー組成物および関連する方法
本願は、官能基で低レベルに修飾されているヒアルロン酸を含む組成物、かかる軽度に修飾されているヒアルロン酸と適切な二官能性または多官能性架橋剤との制御された反応によって形成された混合物、ならびにヒドロゲル前駆体組成物およびそれから得られるヒドロゲルを提供する。本組成物は、軽度に架橋されており、インビボ注射される場合に炎症促進性が低く、例えば、医療機器、生物医学的な接着剤および封止剤として使用することができ、他の使用の中でも生物活性剤の局所送達のために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2009年7月30日に出願された米国仮出願第61/230,074号および2010年3月9日に出願された米国仮出願第61/311,953号(これらの各々の内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)への優先権の利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、一般に、官能基で低レベルに修飾されているヒアルロン酸、かかる軽度に修飾されているヒアルロン酸と適切な二官能性または多官能性反応物との制御された反応によって形成された混合物、ならびに関係するヒドロゲルおよびヒドロゲル前駆体組成物に関する。本明細書に記載の組成物は、軽度に架橋されており、インビボ注射される場合に炎症促進性が低く、例えば、医療機器、生物医学的な接着剤および封止剤として使用することができ、他の使用の中でも生物活性剤(bioactive agent)の局所送達のために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒアルロン酸は、天然に存在するアニオン性非硫酸化グリコサミノグリカンであり、結合組織、上皮組織および神経組織にわたって広く分布している。平均70kg(154ポンド)のヒトは、身体に約15グラムのヒアルロン酸を有し、その3分の1が毎日代謝回転する(分解され、合成される)(非特許文献1)。ヒアルロン酸は、身体の多くの組織に自然に見出され、したがって生体適合性があるため、生物医学的適用に非常に適していると考えられている。実際、ヒアルロン酸(ヒアルロナンとも呼ばれる)、その誘導体化形態、およびそのコンジュゲートを含む多くのポリマー性材料は、注射可能な生体材料、ならびに医療機器および埋込み式材料として使用することができる。適用には、局所部位への治療用分子の送達、組織工学における接着剤または封止剤としての使用、関節内補充薬としての使用、および創傷治癒における使用が含まれる。ヒアルロン酸は、その天然に存在する形態で治療剤として投与され使用される場合、一般に身体から急速に除去され、頻繁な投与が必要となる。ポリマー性ゲルまたはゲル前駆体は、反応化学および反応条件、ゲル化の特徴、ならびに/または1つもしくは複数のインビトロモデルにおける治療効果に関して好ましい特性を示し得ることが多いが、特定の場合、かかる効果はインビボまたは臨床的な設定では有益な特性に置き換わらない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Stern R. Eur J Cell Biol(2004年)83巻(7号):317〜25頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、ジビニルスルホンとの反応によって、10%以下の度合いまで修飾されたヒアルロン酸を提供する。具体的には、このヒアルロン酸は、ジビニルスルホンの付加反応によって誘導体化されたヒドロキシル基を10%以下有する。
【0006】
特定の一実施形態では、ヒアルロン酸は、2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に誘導体化されたヒドロキシル基を1〜10%有する。ジビニルスルホンによって低レベルに活性化されて得られた活性化ヒアルロン酸を、本明細書では一般に(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸または「VS−HA」と呼ぶ。
【0007】
さらに別の実施形態では、ヒアルロン酸は、そのヒドロキシル基が1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%から選択される度合いまで2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に変換されている。
【0008】
さらにより具体的な実施形態では、ヒアルロン酸は、そのヒドロキシル基が二糖反復単位1個当たり約4〜5%の度合いまで2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に変換されている。
【0009】
さらに別の実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸は、約700ダルトン〜約3百万ダルトンの分子量を有する。
【0010】
第2の態様では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸と、2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルを提供する。
【0011】
関係する一実施形態では、チオール架橋剤は、2個〜約8個のチオール基を有する。さらに別の実施形態では、チオール架橋剤は、2、3、4、5、6、7および8個から選択されるいくつかのチオール基を有する。
【0012】
第2の態様を対象としたさらに別の実施形態では、チオール架橋剤は、チオール官能化ポリエチレングリコール(PEG)(すなわちPEG−チオール)である。
【0013】
前述のさらなる一実施形態では、ポリエチレングリコールチオールは、約250〜約20,000ダルトンの分子量を有する。
【0014】
関係する一実施形態では、チオール官能化ポリエチレングリコールは直鎖であり、各末端にチオール基を有し、すなわちポリエチレングリコールジチオール(PEGジチオール)である。
【0015】
さらに別の実施形態では、チオール官能化ポリエチレングリコールは、4個の腕を有し、ペンタエリスリトール核(core)を有する。
【0016】
さらに別の実施形態では、チオール官能化ポリエチレングリコールは、グリセロール、グリセロールダイマー(3,3’−オキシジプロパン−1,2−ジオール)、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、およびヘキサグリセロールから選択されるポリオール核を有する。
【0017】
さらなる一実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、10パーセント未満の未反応チオール基および10%未満の未反応ビニルスルホン基を含有する。残りの未反応チオール基の量は、例えばエルマン(Ellman)の試験を使用して決定することができる。
【0018】
またさらなる一実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、水に対して約0.5〜5.0パーセントの重量(wt/wt)パーセントのポリマーを含有する。得られたヒドロゲルについて、水に対するポリマーの例示的な重量パーセントは、1つまたは複数の実施形態では、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5および5パーセントから選択される。
【0019】
さらに別の実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、約0.10〜3.0ミリメートルの大きさの粒子の形態である。
【0020】
さらに別の実施形態では、前述のヒドロゲル粒子は、水性スラリーの形態である。
【0021】
またさらなる一実施形態では、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルは、非修飾ヒアルロン酸の水溶液に分散している。
【0022】
またさらなるより具体的な一実施形態では、ヒアルロン酸の生理食塩水溶液に架橋ヒドロゲル粒子を含む組成物が提供され、この場合、ヒドロゲル粒子は、ポリエチレングリコールジチオール(PEG−ジチオール)と、2−(ビニルスルホニル)エトキシ基で誘導体化されたヒドロキシル基を1〜10%有するヒアルロン酸との反応によって形成される。
【0023】
またさらなる一実施形態では、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルは、生物活性剤を含む。特定の一実施形態では、生物活性剤はコルチコステロイドである。またさらなる特定の一実施形態では、生物活性剤はトリアムシノロンアセトニドである。
【0024】
さらなる代替の一実施形態では、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルは、生細胞を含む。
【0025】
さらなる一実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸と、二官能性またはそれ以上の官能性のチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、ヤギの関節注射モデルにおいて低い炎症促進性を示す。
【0026】
特定の一実施形態では、ヒドロゲルは、関連の滑液中の白血球の応答によって示される低い炎症促進性を示す。
【0027】
さらに別の特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ヤギの関節注射モデルにおいて、全体的観測採点法によって示される低い炎症促進性を示す。
【0028】
またさらなる一実施形態では、ヒドロゲルは滅菌されている。
【0029】
またさらなる一実施形態では、本明細書で提供されるヒドロゲルは、シリンジにパッケージされている。
【0030】
またさらなる一実施形態では、本明細書に記載のヒドロゲル組成物のいずれかを、被験体の関節の関節内空間に投与する方法を提供する。
【0031】
さらに第3の態様では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を調製する方法を提供する。この方法は、ヒアルロン酸の二糖反復単位に対して約10%以下のヒドロキシル基をジビニルスルホンと反応させて(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を形成するのに有効な反応条件下で、ヒアルロン酸をジビニルスルホンと反応させるステップを含む。
【0032】
関係する一実施形態では、反応は、ヒアルロン酸をモル過剰のジビニルスルホンと反応させるステップを含む。
【0033】
さらなる一実施形態では、反応ステップは、周囲条件で実施される。
【0034】
さらに別の実施形態では、反応ステップは、周囲条件で10秒〜約120秒間実施される。
【0035】
さらに別の実施形態では、反応ステップは、水性塩基中で実施される。
【0036】
さらなる一実施形態では、この方法は、酸を添加することによって反応をクエンチするステップをさらに含む。関係する一実施形態では、十分な酸を添加して、約4〜6.5の範囲のpHに調節する。
【0037】
本明細書の第4の態様では、ヒドロゲルの調製方法を記載する。この方法は、架橋ヒドロゲルを形成するのに有効な反応条件下で、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を、2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤と反応させるステップを含む。適切なチオール架橋剤には、チオール官能化ポリエチレングリコール、アルカン−ジチオール等が含まれる。
【0038】
関係する一実施形態では、反応は、生理的pHで実施される。
【0039】
さらに別の実施形態では、反応は、重合開始剤なしに実施される。
【0040】
さらに別の実施形態では、反応は、外部エネルギー供給源の適用なしに実施される。
【0041】
さらに別の実施形態では、反応は、20℃〜45℃の温度で実施される。
【0042】
またさらなる一実施形態では、ヒドロゲルは、10%以下の未反応ビニルスルホン基またはチオール基を含む。好ましくは、ヒドロゲルは、5%以下の未反応ビニルスルホン基またはチオール基を含む。特定の一実施形態では、ヒドロゲルは、検出可能な未反応ビニルスルホン基またはチオール基を本質的に含まない。
【0043】
第5の態様では、シリンジを含むキットを提供し、このシリンジは、前述の通り(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルを含む。
【0044】
関係するさらに別の実施形態では、シリンジは、非修飾ヒアルロン酸の水溶液に分散している、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルを含む。関係する一実施形態では、水溶液は生理食塩水である。
【0045】
関係する一実施形態では、シリンジは、18〜21ゲージ針を使用してヒドロゲルを関節内注射するのに適した形態である。
【0046】
関係するさらに別の実施形態では、シリンジは、生物活性剤をさらに含む、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルを含む。関係する一実施形態では、生物活性剤は、ステロイド、成長因子、抗増殖剤、および抗生物質からなる群から選択される。さらにより具体的な実施形態では、ヒドロゲルは、約0.01重量%〜約20重量%の生物活性剤を含むが、これは当然のことながらその生物活性剤の効力に依存して決まる。すなわち強力でない薬剤は、一般に先の範囲の最高値に近い、例えば約10〜20重量%でヒドロゲルに含まれ、強力な生物活性剤は、先の範囲の最低値に近い、例えば約0.01〜3重量%で含有されることになる。生物活性剤がトリアムシノロンアセトニドである特定の一実施形態では、ヒドロゲルは約0.1〜1重量%の生物活性剤を含む。
【0047】
さらに別の実施形態では、シリンジは、生細胞をさらに含む、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルを含む。例示的な生細胞には、幹細胞、実質(parenchimal)幹細胞、血液由来の細胞、および骨髄細胞が含まれる。
【0048】
第6の態様では、ヒドロゲルに分散している水溶性の低い生物活性剤を含む本明細書に記載のヒドロゲルを投与することによって、水溶性の低い生物活性剤を送達する方法を提供する。
【0049】
第7の態様では、本明細書に記載の任意の1つまたは複数の態様または実施形態に従って、ヒドロゲルを対象の膝などの関節の関節内空間に注射することによって、変形性関節症、関節リウマチ、他の炎症性関節炎、および反復使用に関連する急性および慢性炎症を治療する方法を記載する。特定の一実施形態では、すなわちヒドロゲルがそれに組み込まれたコルチコステロイドを含む場合、その方法は、ヤギの関節注射モデルにおいて注射後28日目の総Mankinスコアによって特徴付けられる通り、ヒドロゲルに封入されない当量のコルチコステロイドの投与時に生じる軟骨損傷よりも、軟骨への損傷を低減するのに有効である。関係する一実施形態では、先の方法、すなわち関節の関節内空間へのヒドロゲルの注射は、対象となるヒドロゲルの注射の前に対象が経験していた疼痛と比較して、ある度合いの疼痛緩和を対象にもたらすのに有効である。一般に、疼痛緩和の開始は、注射後約1時間〜約1週間以内、より好ましくは注射後約1時間〜約3日以内に対象によって経験される。すなわち疼痛緩和の開始は、一般に、注射後約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24時間以内に始まり、または最初の24時間以内に始まらない場合には、注射後1、2、3、4、5、6もしくは7日以内に始まる。一般に、疼痛緩和の期間は約3〜9カ月、すなわち3、4、5、6、7、8、9カ月間、またはそれ以上継続すると予測される。
【0050】
第8の態様では、対象への投与の前、または投与時にコルチコステロイドを架橋ヒドロゲルに組み込むことによって、変形性関節症に罹患している被験体の関節の関節内空間へのコルチコステロイドの投与時に、軟骨への損傷を低減する方法を提供する。架橋ヒドロゲルは一般に、以下にさらに詳説のヒアルロン酸系ヒドロゲルである。例示的な架橋ヒドロゲルは、ジビニルスルホンと反応させ、その後2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤によって架橋することによって、10%以下の度合いまで修飾されたヒアルロン酸であるヒドロゲルである。驚くべきことに、コルチコステロイドを架橋ヒドロゲルに組み込むことによって、ヒドロゲルに組み込まれない当用量のコルチコステロイドの投与時に生じるよりも、軟骨への損傷が低減される。
【0051】
治療有効量のコルチコステロイドを被験体の関節の関節内空間に投与することによって変形性関節症を治療する方法における、前述に関係する本明細書の第9の態様では、コルチコステロイドを含む架橋ヒドロゲル組成物の形態でコルチコステロイドを投与するステップを含むことにより、ヒドロゲルに組み込まれない当量のコルチコステロイドの投与と比較して、軟骨への損傷が低減されるという改善を提供する。
【0052】
第7、8および9の態様に関係する特定の一実施形態では、コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバル酸チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド(benetonide)、トリアムシノロンフレトニド(furetonide)、トリアムシノロンヘキサセトニド、二酢酸トリアムシノロンなどのトリアムシノロン塩、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−酪酸エステル、ヒドロコルチゾン−17−吉草酸エステル、ジプロピオン酸アクロメタゾン(aclometasone)、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−酪酸エステル、クロベタゾール−17−プロピオン酸エステル、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、およびフロ酸フルチカゾンからなる群から選択される。
【0053】
さらにより具体的な一実施形態では、コルチコステロイドはトリアムシノロンアセトニドである。
【0054】
第10の態様では、本明細書に記載のヒドロゲルの3次元構造内に封入されたステロイドなどの水溶性の低い薬物を含む製剤を提供し、その後かかる製剤を関節の関節内空間に注射する。
【0055】
前述に関係する一実施形態では、ヒドロゲルへのステロイド粒子の捕捉は、ステロイド粒子の大部分と関節組織との直接的な接触を予防するのに有効である。
【0056】
関係するさらに別の実施形態では、ヒドロゲルへのステロイド粒子の捕捉は、関節内の局所的なステロイド濃度を最大限にすると同時に、その全身濃度を最小限に抑えるのに有効である。
【0057】
またさらなる一実施形態では、ヒドロゲルへのステロイド粒子の封入は、ステロイド粒子が関節から早期にクリアランスされるのを保護するのに有効である。
【0058】
またさらなる一実施形態では、ヒドロゲルにステロイドを封入することによって、ヒドロゲルへの封入なしに得られるよりも低い総用量でステロイドの治療効率が得られると同時に、望ましくない局所性および全身性副作用が最小限に抑えられる。
【0059】
関係する一態様では、本明細書に記載のヒドロゲルを、哺乳動物被験体の骨、歯、神経、軟骨、血管、軟組織または他の組織の上またはそれらの中に注射または移植するために使用することを提供する。
【0060】
組成物、方法、キット等のさらなる実施形態は、以下の説明、実施例および特許請求の範囲から明らかとなろう。先および以下の説明から明らかになる通り、本明細書に記載のそれぞれすべての特徴、ならびにかかる特徴の2つ以上のそれぞれすべての組合せは本開示の範囲に含まれ、ただしかかる組合せに含まれる特徴は、互いに矛盾しないものとする。さらに、任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の任意の実施形態から具体的に排除することができる。本発明のさらなる態様および利点を、特に添付の実施例および図と共に考慮しながら以下の説明に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、実施例1に記載の通り調製したビニルスルホン修飾ヒアルロン酸(HA−VS)の1H NMRスペクトルである。NMRに基づいて、ヒアルロン酸が二糖1個当たり約4パーセントのレベルのビニルスルホン置換を有することを決定付けた。
【図2】図2は、実施例16に記載の通り、水溶性の低いモデル薬物であるトリアムシノロンアセトニドの放出(パーセント)対サンプリング番号を示す図である。
【図3】図3は、実施例16に記載の通り、サンプリング点1つ当たりの、水溶性の低いモデル薬物であるトリアムシノロンアセトニドの放出された蓄積質量を示す図である。
【図4】図4は、実施例16に記載の通り、サンプリング点1つ当たりの、トリアムシノロンアセトニドの放出量を示す図である。
【図5】図5は、実施例17に記載の通り、1.5mlの注射の24時間後に評価した、試験材料の治療群に対して試験材料1を注射したヤギの膝の滑液白血球数(立方ミリメートル当たりの細胞数)を示すグラフである。試験材料1=HA−VS/PEG−(SH)2ゲル。
【図6】図6は、実施例17に記載の通り、1.5mlの注射の24時間後に評価した、試験材料の治療群に対して試験材料1を注射したヤギの膝の絶対的滑液白血球数(絶対数=総体積×滑液白血球数)を示すグラフである。試験材料1=HA−VS/PEG−(SH)2ゲル。
【図7】図7は、実施例17に記載の通り、1.5mlの注射の24時間後に評価した、試験材料の治療群に関する注射したヤギの膝の滑液白血球の特異的分布(各群当たりの平均)を表すグラフである。各試験材料について、多形核白血球(PMN)、リンパ球、単球および好酸球(Eos)の分布を示す。
【図8】図8は、実施例17に記載の通り、それぞれ代表的な試験材料について注射したヤギの膝の滑液の平均総スコア、関節組織の平均総スコア、ならびに滑液および関節組織の組合せのスコア(表6)を示すグラフであり、全体的総スコア=滑液スコア+関節の総スコアである。滑液または関節の総スコアの最大スコアは8であり、0は正常である。全体的総スコアの最大スコアは16であり、0は正常である。
【図9】図9は、実施例34に詳説の通り、試験材料で治療したヤギの関節注射後14日目の軟骨試料に関するサフラニンO染色スコアを示す図である。試験材料1:HA−VS−PEG−(SH)2、試験材料2:HA−VS−PEG−(SH)2−TA。
【図10】図10は、実施例34に詳説の通り、試験材料で治療したヤギの関節注射後28日目の軟骨試料に関するサフラニンO染色スコアを示す図である。
【図11】図11は、実施例34に詳説の通り、試験材料で治療したヤギの関節治療後28日目の軟骨試料に関するMankin採点システムの結果を示す図である。
【図12】図12は、実施例34に詳説の通り、それぞれ注射後14日目(図12)および28日目(図13)のサフラニンO染色による代表的な大腿骨内側顆(medial femoral condyle)組織像(40×)を示す図である。
【図13】図13は、実施例34に詳説の通り、それぞれ注射後14日目(図12)および28日目(図13)のサフラニンO染色による代表的な大腿骨内側顆(medial femoral condyle)組織像(40×)を示す図である。
【図14】図14は、実施例45に詳説の通り、1.5mlの関節内注射の24時間後に評価した、試験材料および対照材料に関するすべての動物の平均滑液白血球数(平均+sd)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
詳細な説明
ここで、本発明を以下により完全に説明する。しかし本発明は、多くの様々な形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。正確には、これらの実施形態は、本開示を詳細かつ完全なものとし、本開示によって本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供される。
【0063】
本明細書で先または以下に引用したあらゆる刊行物、特許文書および特許出願は、別段指定されない限りその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。参照によって本明細書に組み込まれる刊行物、特許文書または特許出願と本開示の両方において同じ用語が定義される場合には、本開示の定義が優先的定義となる。本発明の特定の種類の化合物、化学物質等の説明のために参照される刊行物、特許文書および特許出願について、かかる化合物、化学物質等に関する部分は、本文書の一部となり、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0064】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、状況によって別段明示されない限り複数の指示対象を含むことに留意すべきである。したがって、例えば「あるポリマー」への言及は、単一のポリマー、ならびに同じまたは異なるポリマーの2つ以上を含む。
【0065】
別段具体的に示されない限り、本明細書の用語の定義は、有機合成およびポリマーおよび薬学の分野で使用されている標準の定義である。
【0066】
本発明の説明および特許請求において、以下の用語法は下記の定義に従って使用される。
【0067】
「生体適合性ポリマー」は、生体組織と適合性があり、または有益な生物学的特性を有することができる分解産物を有するポリマーである。生体適合性ポリマーは、それ自体生体適合性であってよく、かつ/または生物活性剤と併用される場合に相乗的に生体適合性であってもよい。
【0068】
用語「ヒアルロン酸ポリマー」は、ヒアルロナンの反復二糖サブユニットを含むポリマーを指し、この場合、反復単位は、二糖反復サブユニットのD−グルクロン酸および/またはD−N−アセチルグルコサミン単位の1つまたは複数の位置で誘導体化され得る。ヒアルロン酸ポリマーは、ヒアルロン酸(ヒアルロナンとも呼ばれる)、誘導体化ヒアルロン酸、塩の形態、ヒアルロン酸リンカー錯体、およびヒアルロン酸コンジュゲートを包含することを意味する。用語「ヒアルロン酸」は、非修飾または非誘導体化ヒアルロン酸を指すことを意味する。
【0069】
用語「ヒアルロン酸誘導体」または「誘導体化ヒアルロン酸」または「修飾ヒアルロン酸」は、例えば、ジビニルスルホンなどの1つまたは複数の小さい化学的部分との反応によって誘導体化されているヒアルロン酸を指す。
【0070】
チオール誘導体化ヒアルロン酸ポリマーは、3つ以上の二糖反復単位を有し、少なくとも1つのスルフヒドリル(チオール)基を含む前述のヒアルロン酸ポリマーを指す。
【0071】
用語「反応性」は、容易に反応し、または有機合成の従来の条件下で実際的な速度で反応する官能基(例えばポリマー内に存在する)を指す。これは、反応しない基、または反応するために強い触媒もしくは実際的ではない反応条件を必要とする基(すなわち、「非反応性」または「不活性」基)とは対照的である。
【0072】
「分子質量」または分子量は、本明細書でヒアルロン酸などの水溶性ポリマーの状況において使用される場合、多角度光散乱によって決定されるポリマーの名目上の平均分子質量を指す。分子量は、数平均分子量または重量平均分子量のいずれかで表すことができる。別段指定されない限り、本明細書の分子量へのあらゆる言及は、数平均分子量を指す。
【0073】
用語「ヒドロゲル」は、水が連続相であり、含水量が50%(w/w)を超える、水を含有する3次元親水性ポリマー網またはゲルを指す。本明細書に記載のヒドロゲルは、一般に、所望の架橋度を達成するための架橋開始剤または反応促進剤の組込みを必要としない。
【0074】
「滅菌」組成物は、USP滅菌試験を使用して決定される、生存可能な微生物を含まない組成物である。「The United States Pharmacopeia」、第30次改訂版、The United States Pharmacopeial Convention:2008年を参照のこと。
【0075】
本明細書で使用される用語「軽度に架橋されている」または「低い架橋度を有する」は、利用可能な架橋部位の約40%〜約100%が反応して最終的な架橋ゲルを生成し、ゲルを形成するために使用された修飾ヒアルロン酸出発材料が、活性化/誘導体化された形態のヒドロキシル基を10%以下有し、したがって総体的に軽度に架橋されているとみなされるヒドロゲルを提供するように架橋反応が生じることを意味する。
【0076】
ヤギの関節注射モデルにおいて低い炎症促進性を示すヒドロゲルは、本明細書に記載のヤギの関節注射モデルにおいて評価される場合に、注射の24時間後に1立方ミリメートル当たり20,000個未満の滑液白血球細胞数、好ましくは注射の24時間後に1立方ミリメートル当たり15,000個未満の滑液白血球細胞数を示すヒドロゲルであり、この数は、注射した個々の3匹の動物から得た平均数である。
【0077】
対象となるヒドロゲルへの組込みなしに投与される当用量のコルチコステロイドよりも、「軟骨への損傷を低減する」または「軟骨損傷が少ない」コルチコステロイドを含有するヒドロゲルは、一般に、軟骨損傷を評価するための任意の適切なモデルによって特徴付けられるが、好ましくは本明細書で詳説するヤギの膝のインビボ注射モデルを使用して測定される。注射後のデータは、一般に、注射後少なくとも7日間、しかし28日間以下にわたって収集される。好ましい測定標準は、総Mankinスコアであり、既に記載の通り評価された、薬物単独よりも軟骨への損傷を低減する材料とは、当量で投与される場合にその薬物(すなわちコルチコステロイド)よりも平均スコアの改善を示す材料である。好ましくは、ヒドロゲルに組み込まれた薬物の総Mankinスコアは、ヒドロゲルに封入されない形態で投与される場合の薬物の総Mankinスコアよりも少なくとも1ポイント以上改善される。
【0078】
用語「薬物」または「薬学的に活性な薬剤」または「生物活性剤」または「活性剤」は、交換可能に使用され、生理活性を有し、治療目的で採用または使用される任意の有機または無機化合物または物質を意味する。タンパク質、ホルモン、抗癌剤、小分子化合物および模倣薬、オリゴヌクレオチド、DNA、RNAならびに遺伝子療法が、「薬物」のより広範な定義に含まれる。本明細書で使用される場合、薬物への言及、ならびに本明細書の他の化合物への言及は、適用できる場合には本明細書に記載の化合物のジアステレオマーおよび鏡像異性体などの異性体、塩、溶媒和物、および多形、特定の結晶形、ならびにラセミ混合物および純粋な異性体を含む、薬学的に許容される形態のいずれかの化合物を含むことを意味する。
【0079】
用語「固体」は、本明細書で使用される場合、結晶形、それらの多形、非結晶性の非晶質物質、沈殿物および粒子等を含む、非流体の物質を意味する。これらの固体形態のそれぞれは、大きさが約0.01ミクロン〜2000ミクロン、例えば約0.01ミクロン〜1ミクロン、1ミクロン〜100ミクロン、100ミクロン〜1000ミクロン、1000ミクロン〜2000ミクロン、1100ミクロン〜1500ミクロン、および1500ミクロン〜2000ミクロンで変わり得る。
【0080】
本明細書で言及される粒径は、粒子の直径を指し、一般にふるい分析によって決定される。記載の大きさまたは範囲は、一般に、ふるいまたはメッシュの目の大きさに相当する。大きさ(例えばmm)を決定するために、特定のメッシュまたはふるい番号に対応する粒径変換チャートを参照することができる。例えば、実施例39および40を参照のこと。
【0081】
「水不溶性薬物」または「水溶性の低い薬物」は、10mg/mL未満の水溶性を有する薬物である。
【0082】
本明細書で提供される組成物(またはヒドロゲルまたはポリマー)の、「有効量」または「薬学的に有効な量」または「治療有効量」という用語は、対象の疼痛を予防、低減または排除するなどの所望の応答を得るのに十分な、非毒性の組成物の量を指す。必要とされる正確な量は、種、年齢、および対象の全体的な状態、治療を受ける状態の重症度、使用される特定の1つまたは複数の薬物、組成物の特異性、投与方法等に応じて対象ごとに変わる。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、日常的な実験方法を使用して当業者によって決定され得る。
【0083】
急性または亜慢性疼痛の「治療」またはそれを「治療する」ことには、疼痛の阻害、すなわち疼痛の発症を停止させ、または疼痛から回復させ、または疼痛を緩和すること、すなわち対象が経験する疼痛の量を低減することが含まれる。
【0084】
「任意選択の」または「任意選択により」は、後述の環境が生じても生じなくてもよいことを意味し、したがってこの説明は、その環境が生じる場合およびその環境が生じない場合を含む。
【0085】
特定の特徴または実体に言及する用語「実質的に」は、その特徴または実体に著しい度合いまで、またはほぼ完全に(すなわち85%以上の度合い)言及することを意味する。
【0086】
用語「約」は、特に所与の量に言及する場合、プラスまたはマイナス5パーセントの偏差を包含することを意味する。
【0087】
さらなる定義は、以下の部分に見出すこともできる。
【0088】
概要
本願は、インビボ投与される場合に炎症促進性が極度に低いヒドロゲルについての本発明者らの発見に基づくものである。本開示に関係する研究の実施において、本発明者らは、有益な化学的、レオロジー的、および他の物理的特性を有するように見え、いくつかの生体適合性の許容されるインビトロおよびインビボモデルにおいて好ましく挙動する多くの生体適合性のヒドロゲルが、特に関節内注射する際に、炎症および疼痛を引き起こすおそれがあることを認めた。本明細書に記載の材料は、ヤギの関節注射モデルで調査した場合、類似のヒドロゲル組成物と比較して、炎症促進性が著しく低いことが発見された。例えば、実施例17および図4〜8を参照のこと。一般に、本発明のヒドロゲルは、関節の関節内空間に投与される場合(例えばヤギの関節注射モデルで調査した場合)、関節の関節内空間への当量の市販関節内補充薬の投与、または本明細書に記載のヒドロゲルに組み込まれない当量の活性剤の投与と比較して、軟骨への有害な、または望ましくない副作用の低減を示した。
【0089】
予想外に、本明細書に記載のものなどの架橋ヒドロゲルにコルチコステロイドを組み込むことによって、当用量またはそれを超える用量の、ヒドロゲルに封入されない形態のコルチコステロイドを投与する際に観測されるよりも、軟骨への損傷が実際に低減することも発見された。例えば、実施例34および図9〜13を参照のこと。さらに本明細書では、本発明のヒドロゲルの関節内注射が、単独で(すなわち活性剤なし)投与される場合でも、トリアムシノロンアセトニドなどのコルチコステロイドと組み合わせて投与される場合でも、局所作用または全身作用をもたらさないことを示す結果を提供する。
【0090】
本明細書に記載の優れたヒドロゲルは、一般に、十分に特徴付けられた低レベルの官能基の修飾を有するヒアルロン酸と、適切な二官能性または多官能性架橋剤との制御された反応によって形成される。得られたヒドロゲルは、開始剤もしくは反応促進剤または他の有害な添加剤を必要とすることなく、穏やかな条件下で形成される。得られたヒドロゲルは、最小数の未反応の反応基を有するように設計され、最小数の反応物および反応構成要素から形成される。ヒドロゲルは軽度に架橋されており、生物活性剤を封入し、経時的に一定の方式で、持続的に放出するのに有用であることも示されている。例えば、図2〜3を参照のこと。
【0091】
ここで組成物、方法およびキット等の特徴を、以下により詳細に論じる。
【0092】
誘導体化ヒアルロン酸ポリマー
本発明のヒドロゲルは、様々なポリマー材料から形成することができる。1つまたは複数の反応性官能性を含有する、特定の程度まで修飾されている生分解性または生体吸収性ポリマーが好ましい。好ましくは、ポリマーはポリアニオン系多糖(PAS)である。ポリアニオン系多糖の非排他的な例には、例えば、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルアミロース(CMA)、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン(dermatin)−6−硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパリン、ケラチン硫酸およびそれらの誘導体、ならびにその組合せが含まれる。かかるポリマーは当技術分野で公知であり、例えば米国特許第6,056,970号に記載されている。他の生分解性ポリマーには、フィブリン、フィブリノゲン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ペプチド、タンパク質、ゼラチンおよびコラーゲンが含まれる。
【0093】
好ましいポリマーは、ヒアルロナンとも呼ばれるヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は、交互に生じるβ1−>3グルクロン酸結合とβ1−>4グルコサミン結合によって結合しているN−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸の交互に生じる二糖単位から構成され、したがって反復単位が(1−>4)−β−D−GlcA−(1−>3)−β−D−GlcNAcとなる、天然に存在する直鎖多糖である。対象となるヒドロゲルの1つまたは複数を調製するのに使用されるヒアルロン酸は、一般に、ビニルスルホン、アクリレート、メタクリレートなどの1つまたは複数の反応性部分で誘導体化されている。好ましくは、ヒアルロン酸は、単一の反応性部分で誘導体化されている。修飾または誘導体化の程度は、ポリマー内の反応性官能基が1%〜100%のいずれかまで修飾される範囲であってよいが、一般に、低レベルのポリマー修飾が好ましい。
【0094】
ある例示的な修飾ヒアルロン酸は、そのヒドロキシル基とジビニルスルホンとの反応によって誘導体化されたヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は、一般に、約1〜約80%の修飾度の反応性ヒドロキシル基を有する。すなわち、1%の修飾または置換の程度は、ヒアルロン酸の二糖単位の平均1%がビニルスルホン基を含有することを意味する。好ましくは、ヒアルロン酸は、約1〜50%の修飾度の反応性ヒドロキシル基を有する。さらに好ましくは、ヒアルロン酸は、約1〜約25%の修飾度の反応性ヒドロキシル基を有する。特定の一実施形態では、ヒアルロン酸は、ジビニルスルホンとの反応によって10%以下の度合いまで修飾されている。具体的には、好ましい一実施形態では、ヒアルロン酸は、ジビニルスルホンの付加反応によって誘導体化されたヒドロキシル基を10%以下有する。ヒアルロン酸のヒドロキシル基は、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)基に変形する。得られた活性化ヒアルロン酸を、本明細書では一般に(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)ヒアルロン酸またはVS−HAと呼ぶ。特にヒアルロン酸は、以下の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%から選択される、ヒドロキシル基から(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)基への変換度を有することができる。あるいはヒアルロン酸は、先のパーセンテージのいずれか2つの間の範囲、例えば1〜10%、2〜10%、3〜10%、4〜10%等、例えば2〜7%、2〜6%、3〜8%、3〜7%等の提供される整数のそれぞれすべての組合せについて、その範囲に含まれるヒドロキシル基の変換度を有することができる。さらにより具体的な一実施形態では、ヒアルロン酸は、二糖反復単位1個当たり約4〜5%の、ヒドロキシル基から(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)基への変換度を有する。特定の場合、ヒアルロン酸官能基の修飾レベルは、架橋剤の濃度と共に他のパラメータを調節し最適化することによってその後の架橋反応を制御できるように、十分に特徴付けられる(すなわち決定される)。親ポリマーの置換/修飾度は、いくつかの適切な方法、例えばNMR、UVもしくはIR分析、または元素分析のいずれかによって決定することができる。ヒアルロン酸などのポリマーの置換パーセントを算出するための好ましい方法は、NMR、例えばプロトンNMRである。例えば、ヒアルロン酸の修飾度を、1H NMRスペクトルにおいてヒアルロン酸のビニルスルホン基およびアセトアミドメチル基に対応する相対的ピーク面積比に基づいて決定した実施例1を参照のこと。
【0095】
ポリマーはまた、PCT/US/2004/040726(WO2005/056608)に記載のヒドラジド反応基および/またはアミノオキシ反応基を含むことができ、かかるポリマーの誘導体化および得られたそれらのポリマー自体に関係する開示部分は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0096】
あるいはポリマーは、チオール誘導体化ヒアルロン酸などのチオールで誘導体化されているものであってよい。例示的なチオール誘導体化ヒアルロン酸ポリマーには、米国特許第6,884,788号、同第6,620,927号、同第6,548,081号、同第6,537,979号、同第6,013,679号、同第5,502,081号および同第5,356,883号に記載されているものが含まれ、かかるチオール誘導体化ポリマーに関係する部分は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0097】
ヒアルロン酸ポリマーのさらなる例には、それに限定されるものではないがT. J. Rosemanら、CONTROLLED RELEASE DELIVERY SYSTEMS、Marcel Dekker、Inc.、New York(1983年)の「Controlled Release from Glycosaminoglycan Drug Complexes」 R. V. Sparerら、第6章、107〜119頁に開示のポリマーを含む、システイン誘導体化ヒアルロン酸が含まれる。
【0098】
さらなる好ましいポリマーの例には、ヒドロカルビル、アリール、置換ヒドロカルビルまたは置換アリール基を介してN−アシル尿素基に連結しているペンダントチオール基によって誘導体化されているヒアルロン酸が含まれる。本明細書で提供される組成物および方法において使用される例示的なポリマーには、Carbylan(商標)−Sが含まれる(国際公開WO2005/056608に詳説)。
【0099】
さらなる誘導体化ポリマーには、二官能性または多官能性アクリレート、アリルまたはメタクリレート化合物などの反応性リンカーに共有結合しているヒアルロン酸が含まれる。ヒアルロン酸の修飾のための代表的なリンカーには、それに限定されるものではないが、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)−ジメタクリレート(PEGDM)、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリルアミド(PEGDAA)およびポリ(エチレングリコール)−ジメタクリルアミド(PEGDMA)、ならびにその誘導体が含まれる。先のリンカーのPEG部分は、例えば、2〜100以上のサブユニットを含むオリゴマー性(oliogomeric)またはポリマー性のものであってよい。ヒアルロン酸などのポリマーの修飾/官能化に適したさらなるリンカーには、デキストランアクリレート、デキストランメタクリレート、デキストラングリシジルメタクリレート、メタクリレート官能化ヒアルロン酸、アクリレート官能化ヒアルロン酸、グリセロールジメタクリレート、グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレート、ソルビトールアクリレートおよびその誘導体が含まれる。
【0100】
誘導体化ヒアルロン酸または他のポリマーは、一般に、約700〜3,000,000ダルトンの平均分子量を有する。例示的な分子量範囲は、約1,000〜2,000,000ダルトン、または約5,000〜1,000,000ダルトンである。さらなる適切な分子量範囲には、約50,000ダルトン〜約1,000,000ダルトン、または約100,000ダルトン〜約1,200,000ダルトン、または約90,000ダルトン〜約300,000ダルトンが含まれる。ヒアルロン酸の分子量は一般に、例えば多角度レーザー光散乱排除クロマトグラフィー(MALLS−SEC)によって決定され得る平均分子質量値である。ヒアルロン酸は、その供給源により、最大約3、またはより好ましくは最大約2の多分散性(Mw/Mn)を有することができる。一般に、ヒアルロン酸出発材料は、約2.5未満、より好ましくは約2未満の値の、より狭い分子量分布を有する。ヒアルロン酸の例示的な多分散性は、約1.02〜約2.5であり、出発材料であるヒアルロン酸は、約1.02、1.05、1.1、1.2、1.3、1.3、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2,0、2.1、2.2、2.3、2.4もしくは2.5、またはそれを超える多分散性を有することができる。あるいは、誘導体化に適したヒアルロン酸出発材料は、特異的な水中濃度で、先に提示の平均分子量範囲の任意の1つまたは複数に相当する、一般にセンチポアズで表される粘度を有することができる。
【0101】
架橋剤
本明細書に記載の有利な特徴を有するヒドロゲルを形成するのに有効な架橋剤(crossllinker)の例には、中心分子「C」上に位置する2つ以上の反応基を有する化合物が含まれる。中心分子は、直鎖または環式のアルカン、PEGオリゴマー(oliogomer)もしくはポリマー、または他の任意のかかる適切な中心分子であってよい。PEG系の架橋剤の場合、PEGは、直鎖、分岐(2個のポリマーの腕を有する)であってよく、または複数の腕を有することができる(例えば、3、4、5、6、7、8個またはそれ以上のポリマーの腕を有する)。したがってかかる場合には、中心分子は、一般に、直鎖PEG、2個の腕を有する分岐PEG、または中心核から生じるPEG腕を有する複数の腕のPEGである。かかる複数の腕を有するポリマーの例示的な核には、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセロール、グリセロールダイマー(3,3’−オキシジプロパン−1,2−ジオール)、グリセロールオリゴマー、ソルビトール、ヘキサグリセロール等が含まれる。
【0102】
例えば架橋剤は、チオール基またはアクリレート基を有する中心分子「C」であってよい。チオールを含有する架橋剤は、2つ以上のチオール基を含む。かかるチオール基は、ビニルスルホン誘導体化ヒアルロン酸などのビニルスルホンと反応する。例示的なチオール架橋剤には、PEG−ジチオール(HS−PEG−SH)、3個の腕を有するPEG−トリチオール(グリセリン核)、4個の腕を有するPEG−テトラチオール(ペンタエリスリトール核)、または8個の腕を有するPEG−オクタチオール(ヘキサグリセリン核)が含まれる。前述の複数の腕を有するPEG試薬は、すべてに満たない数の、チオールで官能化された腕を有することもできる。中心分子としてPEGを有するさらなる適切なチオール試薬は、Laysan Bio(Arab、Alabama)から利用可能なもの、ならびにNanoScienceから利用可能なものなどの芳香族ジチオールである。他の適切なチオール架橋剤には、ジメルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸、ジヒドロリポ酸、チオール官能化デキストラン、およびチオール官能化ヒアルロン酸が含まれる。中心分子上に位置する末端アクリレート基を有する架橋剤を使用することもできる。例えば、架橋剤としての使用に適したものは、チオール基がアクリレート(acylate)基またはメタクリレート基で置き換えられている前述の中心分子である。架橋剤のさらなる例には、PCT/US/2004/040726に記載のものが含まれる。
【0103】
架橋剤には、アクリレート、アリルまたはメタクリレート基を含む分子も含まれる。アクリレート、アリルまたはメタクリレート架橋剤は、小分子またはポリマー性の性質であってよい。一実施形態では、リンカーは、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)−ジメタクリレート(PEGDM)、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリルアミド(PEGDAA)およびポリ(エチレングリコール)ジメタクリルアミド(PEGDMA)、デキストランアクリレート、デキストランメタクリレート、デキストラングリシジルメタクリレート、メタクリレート官能化ヒアルロン酸、アクリレート官能化ヒアルロン酸、グリセロールジメタクリレート、グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレートソルビトールアクリレート、ならびにその誘導体を含む群から選択される。
【0104】
架橋剤の分子量は、一般に、修飾ヒアルロン酸または前述の他のポリマーの分子量未満である。一般に、架橋剤の分子量は、約200〜約20,000ダルトンである。架橋剤のさらなる例示的な分子量範囲は、約1,000〜約10,000ダルトン(例えば、約1kD、2kD、3kD、4kD、5kD、6kD、7kD、8kD、9kDまたは10kDの分子量を有し、kDはキロダルトンである)または約1,000〜5,000ダルトンである。PEGジチオールなどの架橋剤または前述の他の適切な架橋剤のいずれかの例示的な分子量には、中でも約3350、3400および5000ダルトンが含まれる。
【0105】
生物活性剤
本明細書で提供されるヒドロゲル、ヒドロゲル前駆体、ならびに関係する組成物および/またはキットは、任意選択により生物活性剤を含むことができる。本明細書で提供される組成物および組合せに含まれ得る生物活性剤には、抗菌剤、抗生物質、鎮痛剤、抗生物質、抗増殖剤/有糸分裂阻害薬が含まれ、これらには、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン、酵素(L−アスパラギナーゼ)などの天然産物;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(trazenes−dacarbazinine)(DTIC)などの抗増殖剤/有糸分裂阻害性アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジンおよびシタラビン)、プリン類似体および関係する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン[クラドリビン])などの抗増殖剤/有糸分裂阻害性代謝拮抗剤;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン(例えば、エストロゲン);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩およびトロンビンの他の阻害剤);血栓溶解剤(組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走(antimigratory)剤;抗分泌剤(ブレフェルジンAなど);副腎皮質ステロイド(ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバル酸チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド(またはトリアムシノロンの他の任意の薬学的に許容される塩)、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウムおよびフルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−酪酸エステル、ヒドロコルチゾン−17−吉草酸エステル、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−酪酸エステル、クロベタゾール−17−プロピオン酸エステル、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、および酢酸フルプレドニデン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、トリアムシノロンアセトニド、フルチカゾン、フロ酸エステル、非ステロイド系薬剤(サリチル酸誘導体、例えばアスピリン)などの抗炎症剤;パラアミノフェノール誘導体、すなわちアセトアミノフェン(acetominophen);インドールおよびインデン酢酸(インドメタシン、スリンダクおよびエトドラック)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナクおよびケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェンおよび誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸およびメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾンおよびオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、オーロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);分裂促進性または形態形成性の成長因子タンパク質、ペプチドまたは模倣薬;血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、TGF−β類を含む形質転換成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーおよびBMP−2、3、4、5、6、7、8などの骨形態形成性のタンパク質(BMP);インスリンおよびインスリン様成長因子(IGF)、肝細胞成長因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、ヘッジホッグタンパク質(SHHおよびIHH)、アクチビン、インヒビン、脱灰骨(DBM)および血小板由来成長因子(PDGF)、造血成長因子(G−CSF、CSF−1、GM−CSF、エリスロポエチン、インターロイキンファミリー(IL−1〜34)を含むサイトカインおよびリンホカイン)、インターフェロン、神経成長因子(NGF)、中和性アンタゴニストまたはアゴニスト抗体、成長因子受容体作動薬または拮抗薬、一酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド、転写因子、シグナル伝達カスケードメディエーター、ならびにその組合せが含まれる。
【0106】
抗生物質には、リンコマイシンファミリーの抗生物質(元々、streptomyces lincolnensisから回収されたクラスの抗生物質剤を指す);テトラサイクリンファミリーの抗生物質(元々、streptomyces aureofaciensから回収されたクラスの抗生物質剤を指す);スルホンアミドなどの硫黄系抗生物質等が含まれる。リンコマイシンファミリーの例示的な抗生物質には、リンコマイシン自体(6,8−ジデオキシ−6−[[(1−メチル−4−プロピル−2−ピロリジニル)−カルボニル]アミノ]−1−チオ−L−トレオ−α−D−ガラクト−オクトピラノシド)、クリンダマイシン、リンコマイシンの7−デオキシ、7−クロロ誘導体(例えば、7−クロロ−6,7,8−トリデオキシ−6−[[(1−メチル−4−プロピル−2−ピロリジニル)カルボニル]アミノ]−1−チオ−L−トレオ−α−D−ガラクト−オクトピラノシド)、ならびに薬理学的に許容されるその塩およびエステルが含まれる。テトラサイクリンファミリーの例示的な抗生物質には、テトラサイクリン自体(4−(ジメチルアミノ)−1,4,4α,5,5α,6,11,12α−オクタヒドロ−3,6,12,12α−ペンタヒドロキシ−6−メチル−1,11−ジオキソ−2−ナフタセンカルボキサミド)、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、メタサイクリンおよびドキシサイクリン、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩およびエステル、特に塩酸塩などの酸付加塩が含まれる。例示的な硫黄系抗生物質には、それに限定されるものではないが、スルホンアミド、スルファセタミド、スルファベンズアミド、スルファジアジン、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、ならびに薬理学的に許容されるその塩およびエステル、例えばスルファセタミドナトリウムが含まれる。抗菌剤および/または抗生物質には、エリスロマイシン、バシトラシン、ネオマイシン、ペニシリン、ポリミキシンB、テトラサイクリン、バイオマイシン、クロロマイセチンおよびストレプトマイシン、セファゾリン、アンピシリン、アザクタム、トブラマイシン、クリンダマイシンおよびゲンタマイシンなどの化合物がさらに含まれる。
【0107】
鎮痛剤には、リドカイン、ベンゾカインおよびマーカインなどの化合物が含まれる。
【0108】
本明細書で提供されるヒドロゲルは、生細胞を含むこともできる。例示的な生細胞には、幹細胞、実質幹細胞、血液由来の細胞および骨髄細胞が含まれる。
【0109】
好ましい一実施形態では、ヒドロゲルは、コルチコステロイドを含む。適切なコルチコステロイドの例には、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバル酸チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンフレトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、二酢酸トリアムシノロンなどのトリアムシノロン塩、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−酪酸エステル、ヒドロコルチゾン−17−吉草酸エステル、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−酪酸エステル、クロベタゾール−17−プロピオン酸エステル、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、およびフロ酸フルチカゾンが含まれる。
【0110】
本明細書で提供されるヒドロゲル製剤において使用するのに好ましい一化合物は、トリアムシノロン(11β,16α)−9−フルオロ−11,16,17,21−テトラヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン)または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物である。トリアムシノロンアセトニドの構造を以下に示す。
【0111】
【化1】
生物活性剤は、一般に、本明細書で提供されるヒドロゲルと混合され、それに懸濁され、または封入される。あるいは、生物活性剤はポリマーコンジュゲートの形態であってよく、またはヒドロゲルを調製するために使用される構成要素、例えば修飾ヒアルロン酸または架橋剤に、放出され得る形で共有結合していてもよい。
【0112】
ヒドロゲル
本明細書で提供されるヒドロゲルは、一般にゲルの形成に有効な条件下で、前述の修飾ヒアルロン酸または他の適切なポリマーを架橋剤(やはり前述の)と反応させることによって形成される。一般に、試薬および反応基の相対量は、反応条件と共に、最適な反応を提供するように調節される。ゲルの形成は、穏やかな制御条件下で実施される。好ましくは、得られたヒドロゲルは、修飾ヒアルロン酸および架橋剤の出発材料に含有される未反応官能基の組合せを20パーセント未満、より好ましくは修飾ヒアルロン酸および架橋剤の出発材料に含有される未反応官能基を5パーセント未満含有し、または理想的には検出可能な量の未反応ビニルスルホン基もしくはチオール基などの未反応官能基を本質的に含まない。得られたゲル材料におけるかかる低レベルの未反応官能基は、例えば関節にインビボ投与される場合に炎症促進性が低いゲル材料を提供する観点から有益である。特定の一実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、10パーセント未満の未反応チオール基およびビニルスルホン基を含有する。未反応官能基の数は、反応条件の注意深いモニタリング、反応物の比の調節、およびヒアルロン酸出発材料の修飾度に関する知識によって制御される。
【0113】
こうして形成されたヒドロゲルは、一般に、水に対して約0.5〜5.0パーセント、またはそれ以上の重量(wt/wt)パーセントのポリマーを含有する(POLY/HOH)。得られたヒドロゲルについて、水に対するポリマーの例示的な重量パーセントは、1つまたは複数の実施形態では、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5および5パーセントから選択される。
【0114】
本明細書で提供される軽度に架橋されているヒドロゲルの形成は、修飾されたヒアルロン酸出発材料における低レベルの修飾に少なくとも部分的に起因する。例えば、ジビニルスルホンとの反応によるヒアルロン酸の修飾度は、実施例6に示す通り、反応時間を適切に調節することによって制御することができる。例えば、約20%未満の修飾度を維持するために、周囲条件(例えば20〜25℃)における反応時間を一般に約3分維持すると、2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜20%ヒアルロン酸が形成される。反応は、好ましくはモル過剰のジビニルスルホン、または二官能性もしくはそれ以上の官能性のアクリレートもしくはメタクリレート試薬などの他の適切な修飾反応物を使用して実施される。実施例6の結果から分かる通り、また予測され得る通り、反応時間が短いと、修飾度の低い出発ポリマー、例えばヒアルロン酸が得られる。例えば周囲条件で非常に短い、すなわち約数秒の反応時間では、約4%置換されたビニルスルホン基を有するビニルスルホン修飾ヒアルロン酸が得られ、1分の反応時間では、8%のビニルスルホン置換ヒアルロン酸が得られた。例示的な反応時間および反応条件、ならびに得られたポリマーの得られた置換の程度については、表1を参照のこと。一実施形態では、反応条件は、約1%〜約10%の置換を有するビニルスルホン置換ヒアルロン酸を得るように調節される。関係する一実施形態では、修飾反応は、周囲条件で約10秒〜約120秒間実施される。修飾反応、例えばヒアルロン酸とジビニルスルホンの反応は、塩基条件下で、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などの水性塩基中で、または水溶性の他の任意の適切な塩基を使用して実施することができ、その後塩酸、硫酸、リン酸などの酸を添加することによって反応をクエンチする。一般に酸は、pHを約4〜6.5の範囲等に下方調節し、反応をクエンチするのに十分な時間および量で添加され、それによって親ポリマーの官能基の所望の修飾度が達成される。次いで生成物を、任意選択により、例えば透析によって精製することができ、任意選択により凍結乾燥などよって乾燥させることができる。
【0115】
次いでヒドロゲル前駆体組成物は、任意選択により、必要に応じて架橋剤の存在下で軽度に架橋される。例えば、前述のものなどの2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜20%ヒアルロン酸または2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸などのビニルスルホン修飾ヒアルロン酸を、架橋ヒドロゲルを形成するのに有効な反応条件下で、PEG−ジチオールなどのチオール官能化PEG試薬または前述の他の適切な架橋剤などの適切な架橋剤と反応させる。好ましい一実施形態では、架橋反応は、水溶液中、例えば生理条件下で実施される。一実施形態では、反応は、生理食塩水溶液中で実施される。例えば、実施例2、3、4および5を参照のこと。反応物の体積比は、得られるヒドロゲルの所望の特性に従って調節することができ、反応物の溶液の濃度、特定の分子量および反応物の構造等に応じて変わることになる。例えば、官能基と架橋剤の例示的な相対的モル比には、以下の約1〜2.5、または約1.25〜2.0、または約1.3〜約1.8が含まれ、例えば例示的な官能基は、ビニルスルホン修飾ヒアルロン酸に含有されるビニルスルホンであり、架橋剤の相対量は、PEG−ジチオールなどの架橋剤分子に含有されるチオール基などの反応基の数ではなく、架橋剤自体、例えば架橋剤分子を指す。あるいは、架橋剤は、修飾ヒアルロン酸溶液に固体として添加することができる。滅菌製剤が望ましい場合には、架橋剤は、添加の前に例えば電子線処理によって滅菌される。架橋反応は、一般に穏やかな反応条件下で、例えば約20℃〜約45℃の温度で、例えば以下の温度、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃または45℃のいずれか1つで実施される。修飾ヒアルロン酸および架橋剤反応物、ならびに他の任意の任意選択の構成要素である反応物の混合または反応の後、得られた組成物を、一般にゲルを形成するのに適した時間にわたって、例えばインキュベーター内で反応させることができる。反応物は、反応温度に応じて、一般に約8〜約36時間、または約10〜約24時間、または約12〜約18時間にわたって反応させることができる。
【0116】
架橋反応は、滅菌ヒドロゲルを提供するために滅菌条件下で、すなわち添付の実施例に一般に記載の滅菌反応物を使用して滅菌条件下で実施することができる。例えば、溶液のすべての構成要素を、反応前に滅菌濾過することによって、滅菌組成物を形成することができる。
【0117】
軽度に架橋されているさらなる例示的なヒドロゲルは、例えばCarb−S(商標)などのチオール修飾ヒアルロン酸材料を架橋することによって形成される。Carb−S(商標)は、ヒアルロン酸のカルボキシメチル化の後、カップリング剤の存在下で3,3’ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)、すなわちDTPHと反応させ、その後ジチオトレイトールなどの試薬を用いてジスルフィド基を還元することによって生成される。例えば、米国特許第US2008−002595号を参照のこと。さらなるチオール修飾ヒアルロン酸材料は、米国特許第US2009−0105093号に記載されている。先の刊行物に記載の例示的な材料は、チオールを含有するヒドラジド反応物との反応によって誘導体化されたヒアルロン酸である。ヒドロゲルは、米国特許第6,884,788号に記載のチオール修飾ヒアルロン酸材料から形成することもできる。好ましい一実施形態では、前述のチオール修飾ヒアルロン酸材料は、ヒアルロン酸ヒドロキシル基の約20%未満、またはさらにより好ましくは約10%未満が化学修飾されるようにヒアルロン酸出発材料の修飾度を低くすることを除き、記載の合成手法を使用して調製される。かかるチオール誘導体化ヒアルロン酸材料は、チオールの自己反応能力に起因して、軽度に自己架橋され得る。あるいは、軽度に架橋されているヒドロゲルは、PEG−アクリレートなどの架橋剤との反応によって形成することができる。
【0118】
1つまたは複数の特定の実施形態では、架橋ヒドロゲル組成物は、活性剤を含有する。好ましい種類の生物活性剤には、ステロイド、成長因子、抗増殖剤および抗生物質が含まれる。本発明のヒドロゲルへの組込みに特に有利な種類の活性剤は、コルチコステロイドである。例示的なコルチコステロイドには、それに限定されるものではないが、以下のトリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンフレトニドおよび二酢酸トリアムシノロンなどのトリアムシノロン塩、ならびにメチルプレドニゾロンが含まれる。一般に、得られたヒドロゲルは、生物活性剤の効力に応じて約0.01重量%〜約20重量%の生物活性剤を含有する。ヒドロゲルに含有される生物活性剤の例示的な量(総体的に湿潤ゲル重量に対する)は、例えば強力でない生物活性剤については約10重量%〜約20重量%であり、例えばトリアムシノロンアセトニドなどのより強力な生物活性剤については、生物活性剤は約0.01重量%〜約10重量%、または約0.01%〜約5%、または約0.01%〜約3%であり、または生物活性剤は約0.1〜約2%、または約0.1〜約1%である。特定の実施形態では、ヒドロゲルは、かかる生物活性剤をヒドロゲルに組み込むことによって、水溶性の低い生物活性剤を送達するために使用される。
【0119】
有利には、本発明のヒドロゲルは、穏やかな反応条件下で形成され、重合開始剤なしに形成することができる。さらに、外部エネルギー供給源の適用なしに、十分なゲル化が生じる。例えば、ゲル形成反応は、約20℃〜45℃の温度で、開始剤および反応促進剤なしに実施することができる。さらにゲル化、すなわちヒドロゲルの形成は、任意の小分子の化学的副生成物の放出なしに生じる。したがって、本明細書で提供されるヒドロゲルは、インビボ投与される際に潜在的に炎症促進反応をもたらし得る最小数の添加剤または汚染物質を含有する。
【0120】
滅菌ヒドロゲルは、例えば修飾ヒアルロン酸および架橋剤のそれぞれの水溶液を滅菌シリンジおよびまたは遠心管に入れた後、十分に混合することによって、滅菌条件下で形成することができる。一般に、材料がゲルを形成するまで、混合反応物(すなわち、修飾ヒアルロン酸および架橋剤)を、適切な温度(例えば約20℃〜45℃)に設定したインキュベーターに入れる。例えば、反応物の例示的な体積比を含むヒドロゲル製剤の代表的な調製に関する実施例2、18、21、22、23、24、25、27、28、29および30を参照のこと。
【0121】
一般に、水溶液または混合物の形態のさらなる非修飾ヒアルロン酸を、任意選択により、ゲル形成の前またはゲル形成の後にゲル前駆体製剤(例えばゲルスラリー)に添加して、ヒアルロン酸水溶液中に架橋ヒドロゲル粒子を含む組成物を提供することができる。例えば、実施例8を参照のこと。溶液中のヒアルロン酸(すなわち非修飾ヒアルロン酸)の平均分子量は、一般に、約750,000〜約1,200,000ダルトンまたはそれを超える範囲である。好ましい水溶液は、ヒアルロン酸の生理食塩水溶液であり、ヒドロゲルに添加されるヒアルロン酸の例示的な水溶液は、約0.3重量%〜約4重量%、または約0.5重量%〜約2重量%の濃度を有する。ある代表的な製剤は、以下の相対量の構成要素を含む。4mLのゲルスラリー((2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸/PEG−ジチオール)と2mLのヒアルロン酸、濃度20mg/mL。特に好ましい製剤は、4mLのゲルスラリー((2−(ビニルスルホニル)エトキシ)4%ヒアルロン酸/PEG−ジチオール)と2mLのヒアルロン酸を濃度20mg/mLで含む。一般に、得られる膨潤ゲル内の最終的なヒアルロン酸含量は、約0.05〜5パーセント(0.5mg/mL〜50mg/mL)である。好ましくは、得られる膨潤ゲル内の最終的なヒアルロン酸含量は、約0.1〜3パーセント、または約0.1〜1パーセント、または約0.5〜0.8%である。得られる膨潤ゲル内の例示的な最終的なヒアルロン酸含量は、例えば、以下のパーセンテージ、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0および5.0のいずれかに相当し得る。例えば、得られる組成物中のヒアルロン酸と架橋(例えば、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸/PEG−ジチオール)ヒドロゲル粒子の代表的な相対量(重量比)は、一般に約10:1、または約5:1、または約3:1、または約1:1の範囲に含まれる。得られる組成物は、任意選択により1つまたは複数の界面活性剤を含有することもできる。例示的な界面活性剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、Tween 80、ポリエチレングリコール(例えばPEG3350)等が含まれる。
【0122】
所望に応じて、生物活性剤は、架橋前に反応混合物に添加することができ、または形成後の架橋ゲルに添加することもできる。実施例9〜16は、ヒドロゲルの形成、ならびに生物活性剤であるトリアムシノロンアセトニドの組込みおよび代表的なヒドロゲル組成物からのその後の持続的な放出を実証するものである。あるいは、幹細胞、実質幹細胞、血液由来細胞および骨髄細胞などの生細胞を、対象となるヒドロゲルに組み込むこともできる。
【0123】
生物活性剤を伴うまたは伴わない対象となるヒドロゲルについて、ヒドロゲルは、前述の1つまたは複数のポリアニオン系多糖(PAS)溶液に分散することができる。ポリアニオン系多糖の非排他的な例には、例えば、ヒアルロン酸(HA)に加えてカルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルアミロース(CMA)、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン−6−硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパリン、ケラチン硫酸およびそれらの誘導体、ならびにその組合せが含まれる。かかるポリマーは当技術分野で公知であり、例えば米国特許第6,056,970号に記載されている。対象となるヒドロゲルが分散し得る他のポリマー溶液には、フィブリン、フィブリノゲン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ペプチド、タンパク質、ゼラチン、コラーゲンおよびポリ(エチレングリコール)が含まれる。先のポリマーの1つまたは複数の組合せを含有する溶液を使用して、対象となるヒドロゲル粒子を分散させることができる。ポリマー溶液は、少なくとも0.1mg/mLから、水または0.9%生理食塩水に最大限に溶解するまでの濃度範囲で調製することができる。前述の通り、ある好ましいポリマーは、約10mg/mL〜約25mg/mLの濃度範囲の約500,000〜3百万の分子量を有するヒアルロン酸である。ポリマー溶液とヒドロゲルの組合せは、パッケージされた最終的な組合せが滅菌されるように、無菌条件下で製造することができる。
【0124】
実施例8に記載の通り、対象となるヒドロゲルは、選択されたポリマー溶液と様々な比で混合することができる。混合される対象のヒドロゲルとポリマー溶液の体積比には、それに限定されるものではないが、約1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1が含まれ得る。混合される対象のヒドロゲルとポリマー溶液の好ましい体積比は、約3:1、2:1および1:1である。
【0125】
対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液のpHは、緩衝液、酸および塩基の添加によって改変することができる。対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液の好ましいpH範囲は、約5〜8、より好ましくは約6〜7.6である。
【0126】
対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液のイオン強度は、塩の添加によって改変することができる。対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液のイオン強度を改変するために使用される好ましい塩は、塩化ナトリウムである。対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液の好ましい最終的なイオン強度は、その対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液がおよそ等張になるように選択される。
【0127】
薬学的に許容される保存剤を、対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液に添加することもできる。これらには、安息香酸ナトリウムまたはベンジルアルコールなどの薬剤が含まれ得る。
【0128】
対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液は、特定の実施形態では、シリンジにパッケージされ得る。シリンジは、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン)もしくはガラス、または他の任意の薬学的に許容される材料から製造することができる。シリンジに含有される対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液の体積は、0.5mL〜20mLであってよく、好ましい体積は、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mLおよび7mLである。
【0129】
得られたヒドロゲル材料は、約0.10〜3.0ミリメートルの大きさの粒子に処理することができ(例えば、実施例3および4参照)、または水性ゲルスラリーの形態であってもよい。例えばゲル化材料は、細片に分割して生理食塩水と混合し、膨潤させることができる。次いで、適切な大きさの粒子を、所望のふるいの大きさ、例えば約0.10〜3.0ミリメートルを有するメッシュを介して押し出すことによって、ゲル材料から形成することができる。得られた粒子は、水性媒体に入れるとゲルスラリーを形成する。一実施形態では、ヒドロゲルを関節内空間に注射することができるように、ゲルを、18〜21ゲージ針を伴う使用に適したシリンジにパッケージする。一般に、被験体の関節内空間に注射されるヒドロゲル組成物の体積は、約0.5〜約8mL、好ましくは約3〜6mL、または約4〜6mLである。
【0130】
添付の実施例に例示の通り、ヒドロゲルは、滅菌組成物として提供され得る。
【0131】
先および実施例に記載の通り、ヒドロゲルは、シリンジなどの封止容器(任意選択により通気口付きキャップでキャップすることができる)に入れて提供することができる。次いで、シリンジをホイル製の小袋などの容器に入れ、次いで封止することができる。小袋は、真空封止し、窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガスの下で封止し、または1つもしくは複数の真空/再充填サイクル後に封止することができ、再充填ガスは、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスである。1つまたは複数の真空/再充填サイクルの下で封止される小袋について、このサイクルは、小袋が最終的に真空または不活性ガスのいずれかで封止されるように調節することができる。小袋は、任意選択により乾燥剤(dessicant)および/または脱酸素剤を含有することができる。
【0132】
使用
本明細書に記載のゲル組成物は、市販の関節内補充薬と比較して、有利には軟骨への望ましくない副作用の低減を示し、ヒドロゲルが生物活性剤をさらに含む実施形態では、ヒドロゲルに組み込まれない当量の活性剤の投与と比較して、軟骨への望ましくない副作用の低減を示す。本明細書で提供されるゲル組成物は、他の有益な特徴の中でも、実施例17および図4〜8に例示の通り、炎症促進性が極度に低い。
【0133】
本明細書に記載のヒアルロン酸ポリマー組成物は、例えば胚発生、組織構成(tissue organization)、創傷治癒、血管新生および腫瘍発生に使用するための、注射可能なまたは埋込み式の製剤において使用することができる。D. D. AllisonおよびK. J. Grande−Allen、Tissue Engineering、第12巻、8番、2131〜2140頁(2006年)、G. D. Prestwich ら、Tissue Engineering、第12巻、8番、2171〜2180頁(2006年)、G. D. Prestwich ら、Tissue Engineering、第12巻、12番、3405〜3416頁(2006年)を参照のこと。トリアムシノロンアセトニドなどのコルチコステロイドを含むヒドロゲル組成物は、対象が経験する疼痛を緩和するのに有用である。治療有効量のヒドロゲル組成物を、関節の関節内空間に注射することは、例えば対象が経験する関節痛を持続的に緩和するのに有効となり得る。理想的には、測定可能な度合いの疼痛緩和は、注射後約1時間〜1週間以内に、またはより好ましくは注射後約1時間〜1日以内に、対象によって最初に経験される。一般にヒドロゲルの注射は、注射後約3カ月〜9カ月継続する疼痛の緩和度をもたらす。治療を受ける特定の対象および状態に応じて、ヒドロゲルの治療上有効な投与量体積は、一般に約0.5mL〜20mLであり、例示的な体積には1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mLおよび7mLが含まれる。
【0134】
例えば、任意選択により1つまたは複数の生物活性剤を含有する、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、接着性組成物として、例えば、出血予防、開口した創傷の被覆、および他の生物医学的適用を含む様々な適用に使用できる組織接着剤および封止剤として使用することができる。これらの組成物は、例えば、外科的に切開されたまたは外傷により破裂した組織への対処(apposing)、創傷などからの流血の遅延、再狭窄または凝血の予防、薬物送達、熱傷の包帯、ならびに生存組織の修復および再生の援助において使用することができる。本明細書で提供されるヒアルロン酸系ポリマー組成物は、ヒトなどの哺乳動物被験体の損傷を受けた器官または組織を補充し、またはその再生を誘発するために使用することができる。組成物は、対象(例えば哺乳動物被験体)に埋め込まれ、または含有される場合に、対象に有害な影響を及ぼすことなく分解または吸収され、あるいは対象に残存する。
【0135】
対象となる組成物は、組織の充填剤、皮膚の充填剤、増量剤、および塞栓性薬剤、ならびに軟骨の欠損/傷害を修復するための薬剤、ならびに骨の修復および/または成長を強化するための薬剤として使用することができる。
【0136】
対象となる組成物は、変形性関節症もしくは関節リウマチ、または痛風もしくはピロリン酸カルシウム沈着症などの他の炎症性関節炎の治療(例えば、関節の関節内空間への注射によって)、または外科手技後に形成され得る癒着の低減もしくは予防に使用することもできる。対象となる組成物は、本明細書で提供されるヒドロゲル材料にコルチコステロイドを組み込むことによって、コルチコステロイドの注射の際の軟骨への損傷を低減するのに有用であることが発見された。
【0137】
先の特定の一手段に関して、すなわちヒドロゲルが、それに組み込まれたコルチコステロイドを含み、該方法がヒドロゲルに封入されない当量のコルチコステロイドの投与時に生じる軟骨損傷よりも、軟骨損傷を低減するのに有効である場合、かかる軟骨損傷の低減は、ヤギの関節注射モデルにおいて注射後28日目の総Mankinスコアによって特徴付けられる。総Mankinスコアの決定についての説明に関する実施例34を参照のこと。軟骨への損傷の低減を評価するためのさらなる指標も利用可能であり、かかるパラメータおよび関連のデータも、実施例34に提供する。
【0138】
いくつかの利点は、以下の1つまたは複数を含む、本明細書で提供されるヒドロゲルへのステロイド粒子の封入/組込みに関連するものである。例えば、本発明のヒドロゲルへのステロイド粒子の捕捉は、ステロイド粒子の大部分と関節組織との直接接触を予防するのに有効である。さらに、本発明のヒドロゲルへのステロイド粒子の封入は、関節内の局所的なステロイド濃度を最大限にすると同時に、その全身濃度を最小限に抑えるのに有効である。さらに、本発明のヒドロゲル製剤へのステロイド粒子の捕捉は、ステロイド粒子が関節から早期にクリアランスされるのを保護するのに有効である。最後に、ヒドロゲルへのステロイドの封入によって、ヒドロゲルへの封入なしに得られるよりも低い総用量でステロイドの治療効率が得られると同時に、望ましくない局所性および全身性副作用が最小限に抑えられる。例えば、例示的なヒドロゲル組成物からの薬物の、経時的に制御された持続的な線形方式による線形放出を実証する図2、3および4と共に実施例14〜16を参照のこと。
【0139】
生物活性剤を含むヒドロゲル系組成物について、かかる組成物は、中でも変形性関節症、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎および慢性副鼻腔炎などの状態の治療のための送達系として使用することができる。かかる組成物は、皮膚の充填剤、軟骨の欠損/傷害を修復するための薬剤、ならびに骨の修復および/または成長を強化するための薬剤として使用することもできる。
【0140】
ここで、本願を特定の実施形態と共に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。それとは対照的に、本願は、すべての代替、修飾および等価物を特許請求の範囲に含まれるものとして包含する。したがって以下は、特定の実施形態を例示する目的で本願の実施を例示するものであり、その手順および概念的態様について有用であり、容易に理解される説明になると思われるものを提供するために提示される。
【実施例】
【0141】
以下の例は、本明細書で提供する化合物、組成物および方法の生成および評価方法を当業者に完全に開示し、説明するために記載するものであり、純粋に例示的なものであることを企図する。したがって実施例は、本発明者らが本発明としてみなす範囲を決して制限するものではない。反応条件、例えば構成要素の濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、ならびに純度、収率などの生成物の特徴を最適化するために使用され得る、他の反応パラメータおよび反応条件の数々の変動および組合せが存在する。それらは、本開示の範囲に含まれるとみなされる。
【0142】
(実施例1)
ビニルスルホン誘導体化ヒアルロン酸(HA−VS)の合成−低修飾度
【0143】
【化2】
ヒアルロン酸(HA)5g[9.4×104cps(水中3%)]を秤量して、1Lの丸底フラスコに入れた。滅菌濾過水500mLをHAに添加した。フラスコをロータリーエバポレーターに取り付け、20〜100rpmで回転するように設定した。すべてのHAが溶解するまで(約16〜18時間)、溶液を回転させた。次いでHA溶液(10mg/mL)を1Lのガラスビーカーに移した。オーバーヘッド撹拌機に接続した撹拌機用パドルを溶液に挿入し、溶液を効率的に撹拌することを確実にする撹拌速度に設定した。0.25NのNaOH溶液333mL(1NのNaOH83.2mLを脱イオン水249.8mLに添加した)を、撹拌しながらHA溶液に添加した。約1分後、ジビニルスルホン溶液150mL(ジビニルスルホン18mLを脱イオン水132mLに溶解した)を、撹拌溶液に急速に添加した。15秒後(ジビニルスルホン溶液の添加が完了してから測定した)、6NのHCl約14mLを急速に添加することによって、溶液のpHを5〜6に調節した。次いで、反応溶液を、タンジェンシャルフロー濾過システム(spectraporシステム、カートリッジP/N M6−100S−301−01P)を使用して透析した。総体積は、元の溶液の体積の11倍であった。精製ステップが完了したら、溶液を約14〜20mg/mLに濃縮した。ビニルスルホン官能化HA(HA−VS)を、TFFシステムから取り出し、プラスチック容器に入れ、次いでスクリュートップの蓋で閉じた。HA−VSの試料を取り出し、−80℃で凍結し、次いで凍結乾燥させた。乾燥させた試料を1H−NMR分析にかけた。
【0144】
HA−VSのビニルスルホン置換パーセンテージの決定
乾燥させた試料約15〜17mgを秤量して、風袋引きした2mLの試験管に入れた。試料をD2O1.5mLで再構成した。試料をNMR試験管に移した。試料の1H−NMRを得(スキャン256回)、6.3〜6.5ppm(ビニルスルホン残基からの2CH2=プロトンの2つのピーク)および1.5〜2.5ppm(HAのN−アセチル基からの3CH3−プロトンの一重線)領域に特異的なピークを有するスペクトルを印刷し、積分した。修飾(パーセント)を以下の通り算出する。
【0145】
【化3】
1H−NMRスペクトル(図1)によって、ヒアルロン酸のアセトアミドメチル基に対するビニルスルホンのピークの積分に基づくと、HAが約4%のビニルスルホンの置換レベルを有することが示された。
【0146】
HA−VSの試料を使用して乾燥重量を決定し、それを使用してHA−VS溶液の特異的濃度を決定した。HA−VS濃度は18mg/mLであった。
【0147】
(実施例2)
ビニルスルホン修飾ヒアルロン酸(HA−VS)およびPEG3400−ジチオールから調製されるゲルの合成
実施例1に記載の通り調製したHA−VS溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈した。HA−VS溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れた。HA−VS溶液を、0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れた。PEG−(SH)240.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(SH)2溶液[Laysan Bio Inc.、品番SH−PEG−SH−3400−1g]を調製した。PEG−(SH)2溶液を1mLの滅菌シリンジに移し、0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−VS10mLを、50mLの滅菌遠心管に移した。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μL(0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した)を、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。50mg/mLのPEG−(SH)2滅菌溶液380μL[PEG−(SH)219mg]をHA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。先のステップを、バイオフード内で実施して滅菌性を維持した。次いで、HA−VS/PEG−(SH)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れて、ゲルの形成を促進した。少なくとも16時間後、HA−VS/PEG−(SH)2溶液が架橋されて、ゲルが形成された。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出した。
【0148】
(実施例3)
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製−単回押出し
実施例2のHA−VS/PEG−(SH)2ゲルを、ガラス棒を使用して物理的に細片に分割した。ゲルを60mLの滅菌シリンジに移し、シリンジキャップでキャップをした。0.9%の滅菌NaCl40mLをゲルに添加した。プランジャーをシリンジバレルに挿入し、シリンジを逆にした。シリンジキャップを開口して任意の圧力を放出し、次いで閉じた。シリンジを数回逆にして、生理食塩水とゲルの細片が良好に混合するようにした。ゲルを終夜(少なくとも16時間)膨潤させた。
【0149】
23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級(rating):840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。この円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーをオートクレーブにかけた。シリンジのシリンジキャップを除去し、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。遠心管を、スクリュートップの蓋でキャップをした。得られた生成物は、わずかに粘性の粒子のスラリーであり、実際に粒子は沈殿せず、概して懸濁したままである。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0150】
(実施例4)
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製−二重押出し
実施例2のHA−VS/PEG−(SH)2ゲルを、ガラス棒を使用して物理的に細片に分割した。ゲルを60mLの滅菌シリンジに移し、シリンジキャップでキャップをした。0.9%の滅菌NaCl40mLをゲルに添加した。プランジャーをシリンジバレルに挿入し、シリンジを逆にした。シリンジキャップを開口して任意の圧力を放出し、次いで閉じた。シリンジを数回逆にして、生理食塩水とゲルの細片が良好に混合するようにした。ゲルを終夜(少なくとも16時間)膨潤させた。
【0151】
23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。この円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーをオートクレーブにかけた。シリンジのシリンジキャップを除去し、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。次いで、押し出したゲルを60mLの滅菌シリンジに入れ、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。遠心管を、スクリュートップの蓋でキャップをした。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0152】
(実施例5)
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーを搭載したシリンジの調製
調製したHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー(実施例3または実施例4から)5mLを、適用するシリンジキャップを有する10mLの滅菌ガラスシリンジ(B&D)に移した。滅菌ストッパーを、シリンジの最上部に挿入した。プランジャー棒をストッパーにねじ込んだ。シリンジを逆にし、ゲルスラリーがストッパーに達したら、シリンジキャップをわずかに緩め、シリンジ内の空気の大部分が除去されるまでプランジャーを押し下げた。シリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0153】
(実施例6)
ビニルスルホン誘導体化ヒアルロン酸の合成
異なる置換の程度を有するHA−VS組成物を、反応時間を延長したことを除き、実施例1に記載の方法を使用して調製した。反応時間を延長することによって、より高い置換の程度のビニルスルホンを得た。これらの反応の結果を、以下の表に示す。
【0154】
【表1】
(実施例7)
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルの合成
様々なレベルのビニルスルホン置換を有するHA−VS試料(実施例6)を使用して、実施例2に記載の方法および試薬比を用いてHA−VS/PEG−(SH)2ゲルを調製した。出発材料のそれぞれは、PEG−ジチオールとの反応時にゲルを形成した。
【0155】
(実施例8)
ヒアルロン酸を伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製
ヒアルロン酸2g[9.4×104cps(水中3%)]を秤量して、250mLの丸底フラスコに入れた。滅菌生理食塩水100mLを、フラスコに入れたヒアルロン酸に添加した。フラスコをロータリーエバポレーター(Buchi)に結合し、50rpmで少なくとも16時間回転させて、2%ヒアルロン酸溶液を形成した。以下の一連のステップを、バイオフード内で実施した。ヒアルロン酸溶液を、0.2umの滅菌フィルターを介して濾過した。HAVS/PEG−(SH)2ゲルスラリー(実施例3または4で調製した)を使用して、調製したHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーをヒアルロン酸と混合した一連の製剤を調製した。これらの製剤を調製するために使用したヒアルロン酸溶液およびHA−VS/PEG(SH)2ゲルスラリーの体積を、以下の表に示す。
【0156】
【表2】
先の表で同定したヒアルロン酸溶液およびHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの指示体積を、15mLの滅菌遠心管に添加した。試験管にキャップし、構成要素が十分に混合するまで上下逆にした。次いで各製剤を、シリンジキャップを有する10mLのガラスシリンジに移し、その後プランジャーを挿入し、過剰の空気を排除した。次いでシリンジキャップをきつく締めた。
【0157】
(実施例9)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルの合成
実施例1の通り調製したHA−VS溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈した。HA−VS溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れた。HA−VS溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れた。PEG3400−(SH)240.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(SH)2溶液を調製した。PEG−(SH)2溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−VS10mLを、50mLの滅菌遠心管に移した。トリアムシノロンアセトニド(Spectrum Chemicals、U.S.Pグレード、微粉化)100mgを、HAVS溶液に添加した。遠心管にキャップし、トリアムシノロンアセトニドがHA−VSと均一に混合するまで、溶液を上下逆にした。滅菌濾過した(0.2umの滅菌フィルター)0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。50mg/mLのPEG−(SH)2滅菌溶液380μLを、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。先のステップを、バイオフード内で実施した。次いでHA−VS/PEG−(SH)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れた。この段階で、HA−VS/PEG(SH)2溶液が架橋されて、ゲルが形成された。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出した。得られたゲルは、約0.2%のトリアムシノロンアセトニドを含有する。
【0158】
先の手順を、トリアムシノロンアセトニド(Spectrum Chemicals、U.S.Pグレード、微粉化)20mgをHA−VS溶液に添加したことを除き、やはり前述の通り実施した。
【0159】
(実施例10)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製:単回押出し
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例9)を、ガラス棒を使用して物理的に細片に分割した。ゲルを60mLの滅菌シリンジに移し、シリンジキャップでキャップをした。0.9%の滅菌NaCl40mLをゲルに添加した。プランジャーをシリンジバレルに挿入し、シリンジを逆にした。シリンジキャップを開口して任意の圧力を放出し、次いで閉じた。シリンジを数回逆にして、生理食塩水とゲルの細片が良好に混合するようにした。ゲルを終夜(少なくとも16時間)膨潤させた。
【0160】
23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。この円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーをオートクレーブにかけた。シリンジのシリンジキャップを除去し、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。遠心管を、スクリュートップの蓋でキャップをした。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0161】
(実施例11)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製:二重押出し
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例9)を、ガラス棒を使用して物理的に細片に分割した。ゲルを60mLの滅菌シリンジに移し、シリンジキャップでキャップをした。0.9%の滅菌NaCl40mLをゲルに添加した。プランジャーをシリンジバレルに挿入し、シリンジを逆にした。シリンジキャップを開口して任意の圧力を放出し、次いで閉じた。シリンジを数回逆にして、生理食塩水とゲルの細片が良好に混合するようにした。ゲルを終夜(少なくとも16時間)膨潤させた。
【0162】
23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。この円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーをオートクレーブにかけた。シリンジのシリンジキャップを除去し、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。次いで、押し出したゲルを60mLの滅菌シリンジに入れ、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。遠心管を、スクリュートップの蓋でキャップをした。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0163】
(実施例12)
トリアムシノロンアセトニドゲルスラリーを入れたシリンジの調製
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー(実施例10または実施例11)5mLを、適用するシリンジキャップを有する10mLの滅菌ガラスシリンジ(B&D)に移した。滅菌ストッパーを、シリンジの最上部に挿入した。プランジャー棒をストッパーにねじ込んだ。シリンジを逆にし、ゲルスラリーがストッパーに達したら、シリンジキャップをわずかに緩め、シリンジ内の空気の大部分が除去されるまでプランジャーを押し下げた。シリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0164】
(実施例13)
ヒアルロン酸を伴うトリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製
ヒアルロン酸2g[9.4×104cps(水中3%)]を秤量して、250mLの丸底フラスコに入れた。滅菌生理食塩水100mLを、フラスコに入れたヒアルロン酸に添加した。フラスコをRotavap(Buchi)に結合し、50rpmで少なくとも16時間回転させて、2%ヒアルロン酸溶液を形成した。トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー(実施例10または11で調製した)を使用して、トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーをヒアルロン酸と混合した一連の製剤を調製した。これらの製剤を調製するために使用したヒアルロン酸溶液およびトリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG(SH)2ゲルスラリーの体積を、以下の表に示す。
【0165】
【表3】
先の表で同定したヒアルロン酸溶液およびトリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの指示体積を、15mLの滅菌遠心管に添加した。試験管にキャップし、構成要素が十分に混合するまで上下逆にした。次いで各製剤を、シリンジキャップを有する10mLのガラスシリンジに移し、その後プランジャーを挿入し、過剰の空気を排除した。次いでシリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0166】
(実施例14)
トリアムシノロンアセトニドの放出試験のための試料の調製
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例11に従って調製した)1.5mLを、20mLのガラスシンチレーションバイアルに移した。ゲル化材料を入れたシンチレーションバイアルに、PBS15mL(pH7.4)をピペットで入れた。シンチレーションバイアルをスクリュー付きの蓋で閉じ、バイアルを、37℃のオーブンに入れたロッキングシェーカー(Barnstead International、Model M26125)上に置いた。
【0167】
(実施例15)
放出試験の緩衝液のサンプリング
トリアムシノロンアセトニドを搭載したゲルおよびPBS緩衝液(実施例14に記載)を入れたシンチレーションバイアルを、様々な時点で37℃のオーブンから取り出した。残りのゲルスラリーを、シンチレーションバイアルの底部に沈殿させた。スクリュー付きの蓋を除去し、セロロジカルピペットを使用してPBS緩衝液13mLを取り出し、50mLのプラスチック遠心管に移した。次いで、新しいPBS13ml(pH7.4)を、ゲルを含有するシンチレーションバイアルにピペットで入れた。
【0168】
(実施例16)
トリアムシノロンアセトニドを含有する放出媒体のHPLC分析
緩衝液試料(実施例15)13mLを、80:20のMeOH:H2Oで40mLに希釈した。試料をボルテックスし、約1mLをHPLCバイアルに移した。緩衝液試料のトリアムシノロンアセトニド含量を、以下のクロマトグラフィー条件を使用して決定した。
HPLC:Agilent 1100シリーズ
カラム:Zorbax SB−C18、5μ、4.6×160mm
カラム温度:30℃
流速:1.0mL/分
検出:UV239nm
実施時間:8分
注射体積:50μl
移動相:ACN中0.05%TFA:H2O中0.05%TFA、56:44
TAの保持時間:約3.3分 。
【0169】
緩衝液試料中のトリアムシノロンアセトニドの量を、ピーク面積をトリアムシノロンアセトニド濃度と相関させることによって較正曲線により定量化した。トリアムシノロンアセトニドの較正曲線用の試料を、メタノール中トリアムシノロンアセトニドの原液を用意し、次いでACN中0.05%TFA:H2O中0.05%TFA、56:44で連続希釈することによって調製した。先のクロマトグラフィー条件を使用してこれらの試料を分析し、得られたピーク面積を、トリアムシノロンアセトニド濃度に対してプロットした。放出(パーセント)を図2に示し、放出された蓄積質量を図3に示し、サンプリング点1つ当たりの放出量を図4に示す。
【0170】
試料を、月曜から金曜の24時間毎に取り出し、土曜/日曜にはサンプリングを実施しなかった。
【0171】
【表4】
図2に示す通り、本質的にすべての薬物が、12のサンプリング点によって放出された。薬物は、経時的に線形方式で制御された形で放出された。有利には、ゲル内に著しい量の残りの薬物が封入されずに、本質的にすべての薬物が放出された。さらに、最初に勢いよく薬物が放出されることなく、薬物が経時的にゆっくり持続方式で放出された。図3は同様に、複数のサンプリング点にわたって放出された薬物の蓄積(ミリグラム)を示す。図4に示す通り、ゲルから放出された薬物の量は、サンプリング点の間で本質的に一定であったが、このことは、薬物の経時的に制御された持続方式の線形放出を示すものである。
【0172】
(実施例17)
例示的なHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの関節内注射
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの試料(実施例5で調製した)を、参照点を提供するためのさらなる試験材料2〜4と共に、骨が十分に成長した雌性ヤギの後膝関節(膝)に関節内注射した。使用したヤギモデルに関係するさらなる説明については、D. JacksonおよびT. Simon、Osteoarthritis and Cartilage、第14巻、12版、1248〜125頁も参照のこと。
試験材料1:HA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例5)
試験材料2:ビスチオール架橋剤で架橋したPEGジアクリレート
試験材料3:ゲルを形成するために架橋した、4個の腕を有するリシン官能化PEG
試験材料4:PEGジアクリレートから生成したゲル(材料をオートクレーブにかけた) 。
【0173】
試験材料2〜4の調製に関する実施例31〜33を参照のこと。すべての注射を厳密な無菌状態で実施した。ジアゼパム(0.1〜0.5mg/kg)およびケタミン(4.4〜7.5mg/kg)の静脈内注射を実施して、動物を麻酔した。各膝を、引出し、運動範囲、腫れ、体温、捻髪音、膝蓋骨トラッキングおよび外反/内反異常について身体検査した。
【0174】
すべての注射を、通常の無菌技術を利用して実施した。左および右の後膝関節を、注射のためにその領域をクリップで止めて準備し、次いでその領域をクロルヘキシジン(chlorohexidine)スクラブで清浄にした。動物を背臥位に置いた。右の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布した。
【0175】
標準の技術を使用して、各後膝関節に注射した。2インチ21ゲージの大きさの滅菌針を、前内側進入路から関節内空間に導入した。大腿骨内側顆の外側顆間のV字壁を感じたら、針をわずかに戻した。HA−VS/PEG(SH)2ゲルスラリー1.5mlを、右関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。
【0176】
苦痛および不快感の徴候を示す任意の動物について注射後にチェックを実施し、必要に応じて追加の鎮痛剤を投与した。すべての治療を、適切な試験文書作成により記録した。
【0177】
注射した動物を、全身麻酔剤導入のためにジアゼパム0.22mg/kgおよびケタミン10mg/kgからなる静脈内注射を用いて、最初の注射の24±1時間後に人道的に屠殺した。この後、心停止が確認されるまで、麻酔下の動物に過量の濃塩化カリウム(KCl)をIV投与した。
【0178】
膝関節の収集後、関節を開口し、表5に記載の通り、注射した後膝関節の全体的な評価を実施した。写真による文書作成は行わなかった。
【0179】
【表5】
さらに、表6に概説の通り、関節の半定量的類別(grading)を単一観測者によって実施した。
【0180】
【表6】
関節の全体的な総評価スコアは、呈色、充血および浮腫のスコアの合計とした(0〜8点)。図6を参照のこと。
【0181】
開口した関節から滑液を収集した後、総体積を記録した。体液を、粘度、透明性および色について全体的に評価し、表7の通り半定量的に類別した。血球計数器を用いて、総白血球を計数した。さらに、微分顕微鏡的分析のために滑液塗抹を生成した。個々にラベルを付した滑液(cryovial)として、残りの滑液を−80℃で凍結保存した。滑液塗抹を潜在的な将来分析のために保持した。
【0182】
【表7】
滑液の総スコアは、色、透明性および糸引き性のスコアの合計とした(0〜8点)。
【0183】
結果を図5〜8のグラフに示す。図5から分かる通り、本明細書に記載の特徴を有する例示的なゲルは、試験材料2〜4について観測された滑液白血球数よりも著しく少ない滑液白血球数を示した。実際、試験材料2〜4の白血球数は、試験材料1について観測された数の約5倍、9倍および8倍を超えていた。試験材料2〜4は、製薬上の使用へのそれらの適切性を表すインビトロ挙動(例えば、化学、ゲル特性、投与の容易性等)を示すが、これらの結果は、試験材料1およびそれに類似の材料が、ヤギモデルで調査した場合、比較できると思われる試験材料と比較して炎症促進性が著しく低い点に関して、明らかに優れていることを示すものである。驚くべきことに、すべての他の指標は、関節内補充療法および他の関係する使用への他の試験材料の適切性を提示した。
【0184】
注射したヤギの膝に関する絶対的滑液白血球数(絶対数=総体積×滑液白血球数)を実証する図6は、前述のことをさらに支持している。すなわち例示的な試験材料1は、絶対的滑液白血球数に基づくと、ヤギモデルにおいて試験材料2〜4よりも際立って低い炎症反応を示している。試験材料2〜4の値は、試験材料1の約4倍、12倍および9倍を超えており、これはヤギの膝において評価した場合、試験材料1が驚くほど著しく優れていることを示すものである。
【0185】
図7は、実施例17に記載の通り、1.5mlの注射の24時間後に評価した、試験材料の治療群に関する注射したヤギの膝の滑液白血球の特異的分布(各群当たりの平均)を表すグラフである。各試験材料について、多形核白血球(PMN)、リンパ球、単球および好酸球(Eos)の分布を示す。PMNおよびEosは、様々な急性慢性炎症に関与する重要な細胞である。試験材料1に関するPMNのパーセンテージ(リンパ球(lympocyte)、単球および好酸球に対する)は、他の試験材料よりも著しく低く(試験材料2〜4が70%以上であるのに対して約50%)、このことは、調査した他の材料と比較して、例示的な試験材料1の有利に低い炎症促進性をさらに示すものである。
【0186】
最後に図8は、それぞれ代表的な試験材料について注射したヤギの膝の滑液の平均総スコア、関節組織の平均総スコア、ならびに滑液および関節組織の組合せのスコア(表6)を示す。
全体的総スコア=滑液スコア+関節の総スコア。
滑液または関節の総スコアの最大スコアは8であり、0は正常である。
全体的総スコアの最大スコアは16であり、0は正常である。
【0187】
図8に示した通り、試験材料1について特筆すべき結果が示されている。実際、前述の通り視覚的な検査によって決定したすべてのスコアについて、試験材料1は、本質的に炎症反応を引き起こさないことが示され、滑液、関節組織およびその組合せのスコアは、正常であるか、またはほぼ正常であるとみなされる。それとは対照的に、代表的な試験材料2〜4は、共に正常でない滑液および関節の視覚的特徴をもたらし、試験材料の投与によって生じる膝関節の炎症を示した。これらの結果は、インビボでの治療上の適用に対する適切性に関して、例示的な試験材料1の驚くべき有益な特性を実証するものである。
【0188】
(実施例18)
HA−VS/PEG−(SH)4ゲルの合成
実施例1の通り調製したHA−VS溶液を、脱イオン水を使用して濃度12.6mg/mLに希釈する。HA−VS溶液18mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。HA−VS溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG(SH)4であるC(CH2O(CH2CH2O)nCH2CH2SH)4[Laysan Bio Inc.、Mw10,000、品番4armPEG−SH−10kD−1g](電子線処理済み)200mgを、滅菌濾過した1M生理食塩水中0.17Mリン酸ナトリウム2mL(pH7.4)に添加する。溶解したら、PEG−(SH)4溶液をHA−VS溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、HA−VS/PEG−(SH)4溶液を室温でゲル化する。ゲル化材料を、実施例3および4に記載のものと同様にして、ゲルスラリーに変換することができる。ゲルを、実施例9、10および11に記載の手順と類似の手順を使用して、トリアムシノロンアセトニドの存在下で調製することができる。ヒアルロン酸を、実施例8に記載の手順と類似の手順で、ゲル製剤に添加することができる。ヒアルロン酸を、実施例13に記載の手順と類似の手順で、トリアムシノロンアセトニドゲル製剤に添加することができる。
【0189】
(実施例19)
カルボキシメチル−ヒアルロン酸(CM−HAまたはCARBYLAN(商標))の合成
NaOH水溶液(200ml、45%w/v)を500mLのビーカーに添加し、周囲温度で撹拌した(磁気撹拌機)。ヒアルロン酸粉末(20g)[Novozymes、MW0.8〜1.0百万]を、500mlのビーカーに添加した。2時間静置した後、ヒアルロン酸混合物を、イソプロパノール1,500mlを入れテフロン(登録商標)でコーティングした磁気撹拌棒を備えた4Lのビーカーに移し、次いでクロロ酢酸20gのイソプロパノール500ml溶液を、磁気撹拌器を用いて添加した。周囲温度で1時間撹拌した後、撹拌を停止し、材料を約10〜20分間かけて沈殿させた。できる限り多くの上清を、混合物から吸引した。蒸留水1,000mlを、得られた混合物に添加した。溶解したら、6.0NのHCl(HC1)を添加することによって、溶液のpHをpH約7.0に調節した。次いで、DI水を使用して溶液を2Lにする。DI水10Lを交換緩衝液として使用して、溶液をタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって精製した。
【0190】
さらに、カルボキシメチルヒアルロン酸の構造、合成および特徴付けは、国際公開第2005/056608号(図5および実施例3)に記載されており、その関係部分は、それら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0191】
(実施例20)
カルボキシメチル−ヒアルロン酸−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド(CM−HA−DTPHまたはCARBYLAN(商標)−S)の合成
3,3’−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)(DTP)を、過去に記載の通り合成した(Vercruysse, K. P.;Marecak, D. M.;Marecek, J. F.;Prestwich, G. D.「Synthesis and in vitro degradation of new polyvalent hydrazide cross−linked hydrogels of hyaluronic acid.」Bioconjugate Chem.(1997年)8巻:686〜694頁;Shu, X. Z.;Liu, Y.;Luo, Y.;Roberts, M. C.;Prestwich, G. D.「Disulfide crosslinked hyaluronan hydrogels.」Biomacromolecules(2002年)3巻:1304〜1311頁)。DTP(16.7g、0.07mol)を、先で調製したCarbylan(商標)溶液に添加し、HClまたはNaOH溶液のいずれかを添加することによって、溶液のpHを4.75に調節した。次いで、1−エチル−3[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)[Sigma−Aldrich]0.384gを添加し、磁気撹拌器を持続的に用いて室温で6.0NのHClを添加することによって、溶液のpHをpH4.75に維持した。
【0192】
4時間後、ジチオトレイトール(DTT)[Biovectra]50gを添加し、濃NaOH溶液を添加することによって、溶液のpHを8.5に調節した。次いで磁気撹拌器によって室温で12〜24時間撹拌した後、6.0NのHClを添加することによって、反応混合物のpHをpH3.0に調節した。酸性にした溶液を精製し、1mMのHCl20L、pH3.0を使用して、タンジェンシャル流体濾過(TFF)によって濃縮した。次いで、溶液を約1Lに濃縮した。
【0193】
カルボキシメチル−ヒアルロン酸−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)の構造、合成および特徴付けは、国際公開第2005/056608号(図5および実施例4)に記載されており、その関係部分は、それら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0194】
(実施例21)
CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲルの合成
実施例20で調製したCM−HA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度17.5mg/mLに希釈する。CM−HA−DTPH溶液30mLを、60mLの滅菌シリンジに入れる。CM−HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)2600mgを0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液15mL(pH7.4)に溶解することによって、40mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液[Laysan Bio Inc.、MW3400、品番ACRL−PEG−ACRL3400−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)2溶液を、20mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過する。滅菌濾過したCM−HADTPH20mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。PEG−(アクリレート)2溶液10mLを、CM−HADTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液を室温でゲル化する。
【0195】
(実施例22)
CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲルスラリー
CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲル(実施例21で調製した)を、それぞれ実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換する。
【0196】
(実施例23)
トリアムシノロンアセトニドを含有するCM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲル
実施例20で調製したCM−HA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈する。CM−HA−DTPH溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。CM−HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)240.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液[Laysan Bio Inc.、MW3400、品番ACRL−PEG−ACRL3400−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)2溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過する。滅菌濾過したCM−HADTPH10mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。トリアムシノロンアセトニド(Spectrum Chemicals、U.S.Pグレード、微粉化)20mgを、CM−HA−DTPH溶液に添加した。遠心管にキャップし、トリアムシノロンアセトニドがCM−HA−DTPHと均一に混合するまで、溶液を上下逆にした。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。滅菌した50mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液380μL[PEG−(アクリレート)219mg]を、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、トリアムシノロンアセトニドを含有するCM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れる。この段階で、トリアムシノロンアセトニドを含有するCM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液が架橋されて、ゲルが形成される。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出す。
【0197】
ゲルの合成を、それぞれトリアムシノロンアセトニド33mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、375mg、400mgおよび500mgを使用して反復する。
【0198】
ゲルを、実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換した。
【0199】
(実施例24)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルスラリーの合成
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルを、各ゲルを調製するためにそれぞれトリアムシノロンアセトニド33mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、375mg、400mgおよび500mgを使用したことを除き、実施例9に記載の手順と類似の手順を使用して調製する。
【0200】
ゲルを、実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換した。
【0201】
(実施例25)
CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4ゲルの合成
実施例20で調製したCM−HA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈する。CM−HA−DTPH溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。CM−HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)440.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(アクリレート)4溶液[Laysan Bio Inc.、MW10,000、品番4arm−PEG−ACRL10K−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)4溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したCM−HADTPH10mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。滅菌した50mg/mLのPEG−(アクリレート)4溶液560μL[PEG−(アクリレート)428mg]を、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れる。この段階で、CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4溶液が架橋されて、ゲルが形成される。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出す。ゲル化材料を、実施例3および4に記載のものと同様にして、ゲルスラリーに変換することができる。ゲルを、実施例9、10および11に記載の手順と類似の手順を使用して、トリアムシノロンアセトニドの存在下で調製することができる。ヒアルロン酸を、実施例8に記載の手順と類似の手順で、ゲル製剤に添加することができる。ヒアルロン酸を、実施例13に記載の手順と類似の手順で、トリアムシノロンアセトニドゲル製剤に添加することができる。
【0202】
(実施例26)
ヒアルロン酸−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド(HA−DTPH)の合成
3,3’−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)(DTP)を、過去に記載の通り合成した(Vercruysse, K. P.;Marecak, D. M.;Marecek, J. F.;Prestwich, G. D.「Synthesis and in vitro degradation of new polyvalent hydrazide cross−linked hydrogels of hyaluronic acid.」Bioconjugate Chem.(1997年)8巻:686〜694頁;Shu, X. Z.;Liu, Y.;Luo, Y.;Roberts, M. C.;Prestwich, G. D.「Disulfide crosslinked hyaluronan hydrogels.」Biomacromolecules(2002年)3巻:1304〜1311頁)。DTP(16.7g、0.07mol)を、先で調製したヒアルロン酸(DI水1000mLに溶解したヒアルロン酸20g[Mw0.8〜1.0百万])溶液に添加し、HClまたはNaOH溶液のいずれかを添加することによって、溶液のpHを4.75に調節した。次いで、1−エチル−3[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)[Sigma−Aldrich]0.384gを添加し、磁気撹拌器を持続的に用いて室温で6.0NのHClを添加することによって、溶液のpHをpH4.75に維持した。4時間後、ジチオトレイトール(DTT)[Biovectra]50gを添加し、濃NaOH溶液を添加することによって、溶液のpHを8.5に調節した。次いで磁気撹拌器によって室温で12〜24時間撹拌した後、6.0NのHClを添加することによって、反応混合物のpHをpH3.0に調節した。酸性にした溶液を精製し、1mMのHCl20L、pH3.0を使用して、タンジェンシャル流体濾過(TFF)によって濃縮した。次いで、溶液を約1Lに濃縮した。
【0203】
(実施例27)
HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲルの合成
実施例26で調製したHA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈する。HA−DTPH溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)240.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液[Laysan Bio Inc.、MW3400、品番ACRL−PEG−ACRL3400−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)2溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過する。滅菌濾過したHA−DTPH10mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。滅菌した50mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液380μL[PEG−(アクリレート)219mg]を、HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れる。この段階で、HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液が架橋されて、ゲルが形成される。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出す。
【0204】
(実施例28)
HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲルスラリー
HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲル(実施例27で調製した)を、それぞれ実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換する。
【0205】
(実施例29)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲル
実施例20で調製したCM−HA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度17.5mg/mLに希釈する。CM−HA−DTPH溶液30mLを、60mLの滅菌シリンジに入れる。CM−HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。滅菌したトリアムシノロンアセトニド粉末100mgを添加し、得られた混合物を十分に混合する。PEG−(アクリレート)2600mgを0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液15mL(pH7.4)に溶解することによって、40mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液[Laysan Bio Inc.、MW3400、品番ACRL−PEG−ACRL3400−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)2溶液を、20mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過する。滅菌濾過したCM−HADTPH20mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。10mLのPEG−(アクリレート)2溶液を、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液を室温でゲル化する。
【0206】
ゲルの合成を、それぞれトリアムシノロンアセトニド33mg、50mg、75mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、375mg、400mgおよび500mgを使用して反復する。
【0207】
ゲルを、実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換する。
【0208】
(実施例30)
HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4ゲルの合成
実施例20で調製したHA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈する。HA−DTPH溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)440.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(アクリレート)4溶液[Laysan Bio Inc.、MW10,000、品番4arm−PEG−ACRL10K−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)4溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−DTPH10mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。滅菌した50mg/mLのPEG−(アクリレート)4溶液560μL[PEG−(アクリレート)428mg]を、HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れる。この段階で、HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4溶液が架橋されて、ゲルが形成される。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出す。ゲル化材料を、実施例3および4に記載のものと同様にして、ゲルスラリーに変換することができる。ゲルを、実施例9、10および11に記載の手順と類似の手順を使用して、トリアムシノロンアセトニドの存在下で調製することができる。ヒアルロン酸を、実施例8に記載の手順と類似の手順で、ゲル製剤に添加することができる。ヒアルロン酸を、実施例13に記載の手順と類似の手順で、トリアムシノロンアセトニドゲル製剤に添加することができる。
【0209】
(実施例31)
PEG−ジアクリレートゲル(試験材料4)の調製
ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート[PEG−DA](Laysan Bio、品番ACRL−PEG−ACRL−3400−1g)1.466gを秤量して、125mLの滅菌ボトルに入れた。滅菌生理食塩水22mLをPEG−DAに添加した。溶解したら、0.2umのシリンジフィルターを介してPEG−DA/NaClを濾過して、消毒したエルレンマイヤーフラスコに入れた。0.150M炭酸塩緩衝液、pH8.2を、0.2umのシリンジフィルターを介して濾過し、この滅菌溶液1mLをPEG−DA溶液に添加した。フラスコをゴムのセプタムでキャップし、窒素を10分間発泡させることによって溶液を脱気した。0.2umフィルターをガスラインに結合して、空気が滅菌されるようにする。セプタムの蓋を備えた焼結(scintered)ガラスバイアルにアスコルビン酸ナトリウム1.2gを添加することによって、400mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム溶液を調製した。DI水3mLをバイアルに添加した。溶解したら、溶液を、0.2umのシリンジフィルターを介して濾過して、15mlの滅菌遠心管に入れた。滅菌濾過した400mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム0.8mLを、PEG−DA溶液に添加した。滅菌濾過した400mg/mLの過硫酸ナトリウム溶液0.8を、PEG−DA溶液に添加した。溶液を旋回することによって混合した。フラスコに赤色ゴムセプタム(septa)でキャップし、窒素を15分間発泡させることによって溶液を脱気した。0.2umフィルターをガスラインに結合して、使用する窒素によって溶液が脱気されるようにした。溶液を37℃で少なくとも18時間置いて、ゲルを形成させた。ゲルを30mLのシリンジに移した。23mmのレザーパンチを使用して、23mmのメッシュの円板をメッシュシートから切り出した。メッシュの円板を、除去される支持ふるいを有する25mmのポリカーボネートシリンジフィルターに入れた。ゲルを、メッシュ(1mm×1mmの目)を介して押し出して、250mLのビーカーに入れた。滅菌生理食塩水100mLを、押し出したゲル25mlに添加した。40分後に生理食塩水の上清を捨て、さらなる滅菌生理食塩水125mLを添加した。これを3回反復した。最後の洗浄後、膨潤ゲル45mlを生理食塩水45mLに添加し、スラリーを穏やかに混合した。1NのNaOHおよび1NのHClの組合せを使用して、得られた溶液のpHを7.0〜7.4に調節した。このゲルスラリー1.5mLを、5mLのガラスシリンジに充填した。シリンジキャップを使用してシリンジを閉じた。次いで、シリンジを250℃で15分間オートクレーブにかけた。
【0210】
(実施例32)
PEG−ジアクリレート/ビスチオールゲル(試験材料2)の調製
ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート[PEG−DA](Laysan Bio、品番ACRL−PEG−ACRL−3400−1g)630mgを秤量して、20mLのガラスシンチレーションバイアルに入れた。DI水6mLを添加した。溶解したら、0.2umのシリンジフィルターを介して溶液を濾過した。N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン(Sigma、A4929)48mgを、ガラスシンチレーションバイアルに入れたテトラヒドロフラン(THF)6mLに溶解した。溶解したら、この溶液をPEG−DA溶液と混合した。バイアルにセプタムのスクリューでキャップし、窒素を10分間発泡させることによって溶液を脱気した。400mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム溶液50uL(DI水を使用して調製し、0.2umのシリンジフィルターを介して濾過した)をPEG−DA溶液に添加した。400mg/mLの過硫酸ナトリウム溶液50uL(DI水を使用して調製し、0.2umのシリンジフィルターを介して濾過した)をPEG−DA溶液に添加した。セプタムで蓋をし、窒素を10分間発泡させることによって溶液を脱気した。溶液を60℃に設定したオーブンに入れた。溶液は15分後にゲルに変化した。ゲルをオーブンから取り出し、室温に冷却した。ゲルを30mLのシリンジに移した。23mmのレザーパンチを使用して、23mmのメッシュの円板をメッシュシートから切り出した。メッシュの円板を、除去される支持ふるいを有する25mmのポリカーボネートシリンジフィルターに入れた。ゲルを、メッシュ(約0.8mm×約0.8mmの目)を介して押し出して、400mLのビーカーに入れた。DI水200mLを、押し出したゲルに添加した。45分後に上清を捨て、さらなるDI水200mLを添加した。これを4回反復した。次いで、0.9%生理食塩水を使用して洗浄ステップを3回反復した。上清液体を除去し、メッシュを介して残りのゲルを再度押し出した(前述の通り)。このゲルスラリー1.5mLを、5mLのガラスシリンジに充填した。シリンジキャップを使用してシリンジを閉じた。次いで、シリンジを250℃で15分間オートクレーブにかけた。
【0211】
(実施例33)
PEG−(LYS)4ゲル(試験材料3)の調製
PEG−(lys)4[末端ヒドロキシル基がgutarice無水物で、次いでリシンで官能化されている、4個の腕を有するポリエチレングリコール(Mw10,000)]1.0gを秤量して、60mLのガラスボトルに入れた。ジクロロメタン34mLをPEG−(lys)4に添加した。ジイソプロピルカルボジイミド(Fluka、38370)333uLを、溶液に添加した。溶液は約30分後にゲルに変化した。ゲル化を少なくとも18時間継続させた。ゲルを30mLのシリンジに移した。23mmのレザーパンチを使用して、23mmのメッシュの円板をメッシュシートから切り出した。メッシュの円板を、除去される支持ふるいを有する25mmのポリカーボネートシリンジフィルターに入れた。ゲルを、メッシュ(約0.38mm×約0.38mmの目)を介して押し出して、400mLのビーカーに入れた。ゲル33mLをアセトン330mLで洗浄した。30分後にアセトンを除去した。洗浄過程を4回反復した。次いで、ゲルを真空下で乾燥させた(真空下で約18時間)。乾燥させたゲル771mgを生理食塩水52mLに添加し、ゲルを5時間膨潤させた。次いで、ゲルをメッシュ(約0.38mm×約0.38mmの目)にかけた。このゲルスラリー1.5mLを、5mLのガラスシリンジに充填した。シリンジキャップを使用してシリンジを閉じた。次いで、シリンジを250℃で15分間オートクレーブにかけた。
【0212】
(実施例34)
インビトロ試験:コルチコステロイドを含有する架橋HA−VS−PEG−(SH)2ヒドロゲルの関節内注射
ビニルスルホン修飾ヒアルロン酸とPEG−ジチオール(HA−VS−PEG−(SH)2)との反応によって調製した、コルチコステロイドであるトリアムシノロンアセトニドを含有する軽度に架橋されているヒドロゲルを、雌性ヤギの後膝関節の関節内空間に注射した。形態学的、滑液および組織学的調査を実施して、かかる注射の局所性および全身性作用を評価した。試験の詳細を以下に示す。
【0213】
A.試験材料
試験材料1.HA−VS−PEG−(SH)2(薬物なしの架橋HA系ヒドロゲル)を、以下の通り調製した。
【0214】
実施例1に記載の通り調製したHA−VS溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈した。HA−VS溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れた。HA−VS溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、20mLの滅菌シリンジに入れた。PEG−(SH)2 40.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(SH)2溶液を調製した。PEG−(SH)2溶液を3mLの滅菌シリンジに移し、0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−VS10mLを、50mLの滅菌遠心管に移した。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250uLを、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。50mg/mLのPEG−(SH)2滅菌溶液380mLを、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。次いで、HA−VS/PEG−(SH)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れた。この段階で、HA−VS/PEG−(SH)2溶液が架橋されて、ゲルが形成された。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出した。
【0215】
試験材料2.HA−VS−PEG−(SH)2−トリアムシノロンアセトニド(「HA−VS−PEG(SH)2−TA」)を、以下の通り調製した。
【0216】
トリアムシノロンアセトニド100.2mg(Sicor、U.S.Pグレード、微粉化)を、20mLのシンチレーションバイアルに入れた脱イオン水2mLと混合した。20分間超音波処理した後、材料を250°Fで15分間オートクレーブにかけた。実施例1の通り調製した濃度18.3mg/mLのHA−VS溶液9mLを、20mLの滅菌シリンジに入れた。HA−VS溶液を、0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、10mLの滅菌シリンジに入れた。PEG−(SH)235mgを脱イオン水0.7mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(SH)2溶液を調製した。PEG(SH)2溶液を3mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−VS7.6mLを、トリアムシノロンアセトニド溶液に移した。脱イオン水370μlおよび0.5Mリン酸ナトリウム溶液250uLを、HA−VSおよびトリアムシノロンアセトニドを入れたバイアルに添加した。得られた溶液を十分に混合した。滅菌した50mg/mLのPEG−(SH)2溶液380μLを、HA−VS/トリアムシノロンアセトニド溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。次いで、HAVS/トリアムシノロンアセトニド/PEG−(SH)2溶液を37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れた。この段階で、HA−VS−PEG−(SH)2−TA溶液が架橋されて、ゲルが形成された。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出した。
【0217】
試験材料3.トリアムシノロンアセトニド、2mg/ml(Kenalog−10;10mg/mLのトリアムシノロンアセトニドを生理食塩水で2mg/mLに希釈した)
試験材料4.トリアムシノロンアセトニド、8mg/ml(Kenalog−40;40mg/mLのトリアムシノロンアセトニドを生理食塩水で8mg/mLに希釈した)
対照.生理食塩水、0.9%塩化ナトリウム
すべての試験材料を、使用前に室温で保存した。各試験材料または対照材料について、1.5mlの投与量を、それぞれ個々の関節内注射のために調製した。
【0218】
B.動物
骨が十分に成長した合計24匹の雌性ヤギを、この試験で使用した。ヤギは、承認されたUSDAの供給源から得た。動物は、試験の開始時に体重63〜97ポンドであった。
【0219】
承認されたUSDAの供給源からヤギを得、ヤギは、この試験を行う前にヤギ関節炎脳炎(CAE)であり、ヨーネ病の陰性であることが決定付けられた。各動物は、試験を行う前に資格を有する獣医によって全身的な健康状態の評価を与えられた(姿勢、呼吸の容易さ、ならびに下痢および鼻汁がないことを視覚的に観測した)。動物を、疾患または跛行の任意の証拠について調査した。試験における許容性は、疾患がなく臨床的に良好であり、後膝関節の優先的な使用による病歴がないことを条件とした。ヤギを、施設が決定した適切な期間に合わせて調整した。動物飼育条件は、実験棟物に関する関係法令に従った。ヤギを、注射後に大型の室内ラン(囲い)で維持した。ヤギは常に自由に活動することができた。
【0220】
すべての動物に、1日当たり小型反芻動物用の食餌約2ポンドと柔らかい干し草を与えた。水道水を自由に摂取させた。麻酔剤投与の約12〜24時間前には食餌の提供を止め、注射の約12時間前には水の提供を止めた。
【0221】
動物を、全身的な健康状態について試験過程を通して毎日観測した。動物が術後の合併症または疾患の他の徴候、疼痛またはストレスの任意の徴候を示した場合には、適切な措置を取った。また、動物が損傷し、罹患し、または瀕死になる予定外の事象が生じた場合には、現在の獣医学的業務に従ってケアを行った。
【0222】
C.治療
試験設計は以下の通りであった。
【0223】
【表8】
体重、関節周縁および運動範囲の測定値を、各動物について注射の前(1日目)および屠殺直前(14日目または28日目)にすべての動物から得た。
【0224】
基本的な注射手順は、全対象について同一とした。すべての注射を厳密な無菌状態で実施した。ジアゼパム(0.1〜0.5mg/kg)およびケタミン(4.4〜7.5mg/kg)の静脈内注射を実施して、動物を麻酔した。各膝を、引出し、運動範囲、腫れ、体温、捻髪音、膝蓋骨トラッキングおよび外反/内反異常について身体検査した。
【0225】
すべての注射を、通常の無菌技術を利用して実施した。左および右の後膝関節を、注射のためにその領域をクリップで止めて準備し、次いでその領域をクロルヘキシジンスクラブで清浄にした。動物を背臥位に置いた。右の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布した。
【0226】
標準の技術を使用して、各後膝関節に注射した。2インチ21ゲージの大きさの滅菌針を、前内側進入路から関節内空間に導入した。大腿骨内側顆の外側顆間のV字壁を感じたら、針をわずかに戻した。適切な試験材料1.5mlを、右関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。この直後、左の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布し、右の後膝関節について前述したものと同様にして、対照材料1.5mlを左の後膝関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。
【0227】
苦痛および不快感の徴候を示す任意の動物について注射後にチェックを実施し、必要に応じて追加の鎮痛剤を投与した。すべての治療を、適切な試験文書作成により記録した。
【0228】
D.分析
採血:各動物から試験開始の直前、ならびに注射の5時間後および1、4、7、14および28日目に採血し、残りの動物のそれぞれから1、4、7、14および28日目に採血した。CBCおよび血液化学パネルを、各時点において実施した。
【0229】
剖検:動物を、全身麻酔剤導入のためにジアゼパム0.22mg/kgおよびケタミン10mg/kgからなる静脈内注射を用いて、最初の注射後14日目または28日目に人道的に屠殺した。この後、心停止が確認されるまで、麻酔下の動物に過量の濃塩化カリウム(KCl)をIV投与した。
【0230】
全体的な形態学的観測:膝関節の収集後、関節を開口し、表2に記載の通り、注射した後膝関節の全体的な評価を実施した。
【0231】
【表9】
さらに、表3に概説の通り、関節の半定量的類別を単一観測者によって実施した。
【0232】
【表10】
関節の全体的な総評価スコアは、呈色、充血および浮腫のスコアの合計とした(0〜8点)。
【0233】
滑液の評価
開口した関節から滑液を収集した後、総体積を記録した。体液を、粘度、透明性および色について全体的に評価し、表11の通り半定量的に類別した。血球計数器を用いて、総白血球を計数した。さらに、微分顕微鏡的分析のために滑液塗抹を生成した。個々にラベルを付した滑液として、任意の残りの滑液を−80℃で凍結保存した。滑液塗抹を潜在的な将来分析のために保持した。
【0234】
【表11】
滑液の総スコアは、色、透明性および糸引き性のスコアの合計である(0〜8点)。
【0235】
組織学的評価
解剖およびその後の全体的な関節表面の評価の直後、大腿骨内側顆(MFC)から各関節の矢状(sagital)切片を切り取った。これらの切片を、10%中和緩衝ホルマリンに個々に入れた。固定した組織を、処理のために翌日配達によりPremier Laboratoriesに発送した。右および左のMFC切片を、標準の組織学的技術を使用して処理し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにサフラニンO(SAF−O)と、ファストグリーンの対比染色で染色した。MFC切片のスライドを、表12に記載の通り、変形性関節症についてMankin採点システムによって評価した。
【0236】
【表12】
E.結果
様々な製剤で治療した関節の軟骨試料についてのMankin採点システムの結果を、表13a〜hおよび図11に示す。図9(治療後14日目)および図10(治療後28日目)は、様々な製剤で治療した関節の軟骨試料について、それぞれ治療後14日目および28日目のサフラニンO染色スコアを示す。
【0237】
【表13a】
【0238】
【表13b】
【0239】
【表13c】
【0240】
【表13d】
【0241】
【表13e】
【0242】
【表13f】
【0243】
【表13g】
【0244】
【表13h】
28日目の軟骨では、HA−VS−PEG−(SH)2ゲルの改変型Mankinスコアは、その対照と比較して差異がなかった。群5または6と比較して、群7および8の改変型MankinスコアのサフラニンO染色度部分の減少率はわずかに増大した。14日目〜28日目では、トリアムシノロンアセトニド単独で治療した群の両方(群7および8)の改変型Mankinスコアが増加した。これらのスコアのかかる経時的な増加は、HA−VS−PEG−(SH)2ゲルで治療した群5またはHA−VS−PEG−(SH)2−TAゲルで治療した群6については観測されない。
【0245】
この試験の結果は、HA−VS−PEG−(SH)21.5mlを単独で、または2mg/mlのトリアムシノロンアセトニドと組み合わせてHA−VS−PEG−(SH)2−TAとしてヤギの膝関節に関節内注射した28日後に、局所性または全身性作用が生じていないことを示している。HA−VS−PEG−(SH)2ゲルへのトリアムシノロンアセトニドの添加の軟骨に対する効果は、当用量またはそれを超える用量のトリアムシノロンアセトニド単独の注射の効果には満たなかった。
【0246】
サフラニンOによるグリコサミノグリカンに特異的な染色は、14日目および28日目の時点で、HA−VS−PEG−(SH)2中2mg/mL(3mg)で製剤化したトリアムシノロンアセトニドの軟骨に対する効果が、2mg/mL(3mg)および8mg/mL(12mg)の両方のボーラス用量のトリアムシノロンアセトニドよりも低いことを実証した。
【0247】
図12および13は、注射後14日目(図12)および28日目(図13)のサフラニンO染色による代表的な大腿骨内側顆組織像(40×)を示す。図は、ヒドロゲルに組み込まれたトリアムシノロンアセトニドで治療した関節の軟骨試料について、関節に直接注射した(すなわち、ヒドロゲルに組み込まない)当用量のトリアムシノロンアセトニドで治療した軟骨試料よりも多くのサフラニンO染色が見られることを示す。
【0248】
(実施例35)
押出し力の測定
HA−VS/PEG−(SH)2/HA生成物(実施例5、実施例41)およびトリアムシノロンアセトニドを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/HA(実施例38)を押し出すのに必要な力を、Chatillon電動式フォース試験器(Chatillon DFE−025デジタルフォースゲージを備えたChatillon LTCM−6電動式試験器、Ametec TCI Division)を使用して測定した。10mLのシリンジを保持した固定具を、電動式試験器のベースプレートに結合して、フォースゲージがシリンジのプランジャー棒の真上に位置するようにした。フォース試験器のスイッチを入れ、回転速度制御ダイアルを「3」に調節することによって、移動速度を1分当たり3インチに設定した。電動式試験器のアームを、その最上点に移動させた。試験する製剤を入れた10mLのガラスシリンジの端部キャップを除去し、キャップを外したその端部の先端に21ゲージ針を結合した。シリンジをシリンジホルダーに入れ、フォースゲージがシリンジプランジャー棒に軽く触れるまで、電動式試験器のアームをゆっくり下げた。16mLの試験管を、21ゲージ針の端部の下に置いた。最大力を記録するようにフォースゲージを設定した。フォースゲージを0に設定した。次いで、電動式試験器のトグルスイッチを押して、シリンジのプランジャーを押し下げ、21ゲージ針を介してシリンジの内容物を押し出した。シリンジストッパーがシリンジの底部に達する直前に、電動式試験器を停止させた。フォースゲージスクリーンに表示された最大押出し力を記録した。試験した様々な製剤の結果を、以下に示す。
【0249】
【表14】
(実施例36)
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2の押出し力の経時的安定性
HA−VS/PEG−(SH)2/HA生成物(実施例5)を押し出すのに必要な力を、Chatillon電動式フォース試験器(Chatillon DFE−025デジタルフォースゲージを備えたChatillon LTCM−6電動式試験器、Ametec TCI Division)を使用して、時間関数として測定した。生成物を生成した後と、次いで最初のその測定の1カ月後および3カ月後に、押出し力を測定した。試料は、3カ月間室温で保存した。押出し力を、以下の通り各試料について測定した。10mLのシリンジを保持した固定具を、電動式試験器のベースプレートに結合して、フォースゲージがシリンジのプランジャー棒の真上に位置するようにした。フォース試験器のスイッチを入れ、回転速度制御ダイアルを「3」に調節することによって、移動速度を1分当たり3インチに設定した。電動式試験器のアームを、その最上点に移動させた。試験する製剤を入れた10mLのガラスシリンジの端部キャップを除去し、キャップを外したその端部の先端に21ゲージ針を結合した。シリンジをシリンジホルダーに入れ、フォースゲージがシリンジプランジャー棒に軽く触れるまで、電動式試験器のアームをゆっくり下げた。16mLの試験管を、21ゲージ針の端部の下に置いた。最大力を記録するようにフォースゲージを設定した。フォースゲージを0に設定した。次いで、電動式試験器のトグルスイッチを押して、シリンジのプランジャーを押し下げ、21ゲージ針を介してシリンジの内容物を押し出した。シリンジストッパーがシリンジの底部に達する直前に、電動式試験器を停止させた。フォースゲージスクリーンに表示された最大押出し力を記録した。Lot NB30:16の結果を以下に示す。これらの結果は、21ゲージ針を介して生成物を押し出すのに必要な力に、3カ月にわたって実質的な変化がないことを示す。
【0250】
【表15】
(実施例37)
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TAゲルの調製
滅菌トリアムシノロンアセトニド170.8mg、341.3mg、511.7mgおよび682.7mgを秤量して、別個の125mLの滅菌プラスチックボトル4本に入れ、それらにそれぞれTA10mg、TA20mg、TA30mgおよびTA40mgのラベルを付した。TAを入れた各ボトルを秤の上で風袋引きし、滅菌濾過した水中14mg/mLのHA−VS(0.2um滅菌フィルター、PVDF膜を介して濾過した)14.98g、14.99g、14.99gおよび15.01gを、4本のボトルのそれぞれにTA10mgから40mgの順で添加した。得られた溶液が視覚的に均一になるまで、TA粉末およびHA−VS溶液を混合した。滅菌濾過した1Mリン酸ナトリウム(0.2um滅菌フィルターによる)0.375mL、pH7.4を、ボトルのそれぞれに添加し、得られた混合物を十分に混合した。50mg/mLのPEG−ジチオール3350[PEG(SH)2](0.2um滅菌フィルターを介して滅菌濾過した)0.543mLを各容器に添加し、十分に混合した。先のステップを、バイオフード内で実施した。混合物を、37℃のオーブンに入れて終夜置いた。製剤をオーブンから取り出し、容器の外部を70/30のIPA/水で拭き、次いでバイオフード内に移した。各ゲルを滅菌したヘラを使用して粉砕した。0.9%生理食塩水中7.83mg/mLのHA(0.2um滅菌フィルター、PVDF膜を介して濾過した)86.23g、86.25g、86.40gおよび86.23gを、それぞれTA10mg、20mg、30mgおよび40mgのラベルを付した容器に添加した。各混合物を、室温で3時間膨潤させた。次いで、各混合物を、フィルターの筐体に入れた0.85umのメッシュに通過させた[23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーを、オートクレーブにかけた]。次いで、メッシュにかけた収集した混合物を、0.85umのメッシュに再度通過させた。次いで、収集した混合物をプラスチック容器内で保存した。
【0251】
(実施例38)
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TAゲルのパッケージング
次いで、実施例37の各製剤の一定分量6mLを、シリンジキャップを有する10mLのガラスシリンジ(BD Hypakガラスシリンジ、P/N47262119)に入れた。プランジャー棒を滅菌ストッパー(BD、P/N47318319)の後部にねじ込んだ後、ストッパー/プランジャーをシリンジの首部に挿入した。シリンジを逆にして、シリンジキャップをわずかに開口した。過剰の空気が排除されるまでプランジャーを押し下げた。次いでシリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。すべての生成物をパッケージするまで、この過程を反復した。
【0252】
(実施例39)
粒径の決定−脱イオン水による洗浄
2.36mm(USA標準試験用ふるい番号8)、1.4mm(USA標準試験用ふるい番号14)、1mm(USA標準試験用ふるい番号18)、0.85mm(USA標準試験用ふるい番号20)、0.6mm(USA標準試験用ふるい番号30)、0.425mm(USA標準試験用ふるい番号40)、0.25mm(USA標準試験用ふるい番号60)および0.150mm(USA標準試験用ふるい番号100)の鋼製ふるいを、DI水で洗浄し、Kimwipesを使用して水を拭き取った。各ふるいの重量を測定した後、これらのふるいを、底部に最小(100番)を置き、最上部に最大(8番)を並べて重ねた。HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TA製剤(実施例37)100mLを、最上部のふるいにゆっくり注いだ。試料の液体構成要素の大部分が最上部のふるいを通過したら、最上部のふるいに脱イオン水約50mLをゆっくり添加して、そのふるいに保持されたゲル構成要素をすすいだ。液体構成要素がふるいを通過したら、そのふるいを積み重ねたふるいから除去した。各ふるいを洗浄し、積み重ねたふるいから除去するまで、この過程を反復した。各ふるいに残った過剰の水滴を、紙タオルを使用して拭き取った。各ふるいの総重量(ふるいと収集されたゲル)を測定した。各ふるいに収集されたゲル粒子の重量を、ふるいの総重量から最初のふるいの重量を引くことによって算出した。各ふるいに収集されたゲルのパーセンテージを、特定のふるいに収集されたゲルの重量を測定し、次いですべてのふるいに収集されたゲルの総重量で割ることによって算出した。
【0253】
【表16】
(実施例40)
粒径の決定−生理食塩水による洗浄
2.36mm(USA標準試験用ふるい番号8)、1.4mm(USA標準試験用ふるい番号14)、1mm(USA標準試験用ふるい番号18)、0.85mm(USA標準試験用ふるい番号20)、0.6mm(USA標準試験用ふるい番号30)、0.425mm(USA標準試験用ふるい番号40)、0.25mm(USA標準試験用ふるい番号60)および0.150mm(USA標準試験用ふるい番号100)の鋼製ふるいを、DI水で洗浄し、Kimwipesを使用して水を拭き取った。各ふるいの重量を測定した後、これらのふるいを、底部に最小(100番)を置き、最上部に最大(8番)を並べて重ねた。HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TA(TA10)製剤(実施例37)100mLを、最上部のふるいにゆっくり注いだ。試料の液体構成要素の大部分が最上部のふるいを通過したら、最上部のふるいに0.9%生理食塩水約50mLをゆっくり添加して、そのふるいに保持されたゲル構成要素をすすいだ。液体構成要素がふるいを通過したら、そのふるいを積み重ねたふるいから除去した。各ふるいを洗浄し、積み重ねたふるいから除去するまで、この過程を反復した。各ふるいに残った過剰の生理食塩水の水滴を、紙タオルを使用して拭き取った。各ふるいの総重量(ふるいと収集されたゲル)を測定した。各ふるいに収集されたゲル粒子の重量を、ふるいの総重量から最初のふるいの重量を引くことによって算出した。各ふるいに収集されたゲルのパーセンテージを、特定のふるいに収集されたゲルの重量を測定し、次いですべてのふるいに収集されたゲルの総重量で割ることによって算出した。
【0254】
【表17】
(実施例41)
ヒアルロン酸を伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー−HA膨潤
125mLの滅菌ボトル3本を秤の上で別個に風袋引きし、水中14mg/mLのHA−VS(0.2um滅菌フィルター、PVDF膜を介して濾過した)14.97g、14.95gおよび15.00gを、3本のボトルのそれぞれに添加した。滅菌濾過した1Mリン酸ナトリウム(0.2um滅菌フィルターを介して滅菌濾過した)0.375mL、pH7.4を、ボトルのそれぞれに添加し、十分に混合した。50mg/mLのPEG(SH)2(0.2um滅菌フィルターを介して滅菌濾過した)0.543mLを各容器に添加し、十分に混合した。先のステップを、バイオフード内で実施した。混合物を、37℃のオーブンに入れて終夜置いた。製剤をオーブンから取り出し、容器の外部を70/30のIPA/水で拭き、次いでバイオフード内に移した。各ゲルを滅菌したヘラを使用して粉砕した。次いで、0.9%生理食塩水中7.83mg/mLのHA(0.2um滅菌フィルター、PVDF膜を介して濾過した)86.40g、86.21gおよび86.31gを、容器に添加した。ゲルを、室温で3時間膨潤させた。次いで、各混合物を、フィルターの筐体に入れた0.85umのメッシュに通過させた[23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーを、オートクレーブにかけた]。次いで、メッシュにかけた収集した混合物を、0.85umのメッシュに再度通過させた。次いで、収集した混合物をプラスチック容器内で保存した。
【0255】
(実施例42)
ヒアルロン酸を伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーのパッケージング
次いで、実施例41の各製剤の一定分量6mLを、シリンジキャップを有する10mLのガラスシリンジ(BD Hypakガラスシリンジ、P/N47262119)に入れた。プランジャー棒を滅菌ストッパー(BD、P/N47318319)の後部にねじ込んだ後、ストッパー/プランジャーをシリンジの首部に挿入した。シリンジを逆にして、シリンジキャップをわずかに開口した。過剰の空気が排除されるまでプランジャーを押し下げた。次いでシリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。すべての生成物をパッケージするまで、この過程を反復した。
【0256】
(実施例43)
粒径の決定−生理食塩水による洗浄
2.36mm(USA標準試験用ふるい番号8)、1.4mm(USA標準試験用ふるい番号14)、1mm(USA標準試験用ふるい番号18)、0.85mm(USA標準試験用ふるい番号20)、0.6mm(USA標準試験用ふるい番号30)、0.425mm(USA標準試験用ふるい番号40)、0.25mm(USA標準試験用ふるい番号60)および0.150mm(USA標準試験用ふるい番号100)の鋼製ふるいを、DI水で洗浄し、Kimwipesを使用して水を拭き取った。各ふるいの重量を測定した後、これらのふるいを、底部に最小(100番)を置き、最上部に最大(8番)を並べて重ねた。ヒアルロン酸を伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー製剤(実施例41)100mLを、最上部のふるいにゆっくり注いだ。試料の液体構成要素の大部分が最上部のふるいを通過したら、最上部のふるいに0.9%生理食塩水約50mLをゆっくり添加して、そのふるいに保持されたゲル構成要素をすすいだ。液体構成要素がふるいを通過したら、そのふるいを積み重ねたふるいから除去した。各ふるいを洗浄し、積み重ねたふるいから除去するまで、この過程を反復した。各ふるいに残った過剰の生理食塩水の水滴を、紙タオルを使用して拭き取った。各ふるいの総重量(ふるいと収集されたゲル)を測定した。各ふるいに収集されたゲル粒子の重量を、ふるいの総重量から最初のふるいの重量を引くことによって算出した。各ふるいに収集されたゲルのパーセンテージを、特定のふるいに収集されたゲルの重量を測定し、次いですべてのふるいに収集されたゲルの総重量で割ることによって算出した。
【0257】
【表18】
(実施例44)
滅菌性およびエンドトキシン試験
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例42、実施例5)およびHAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TAゲル(実施例37、TA10)を、滅菌性およびエンドトキシンについて、WuXi AppTecによってそれぞれプロトコル番号BS210CBY.203およびBE215CBY.203を使用して試験した。すべての試料が滅菌されており、<0.5EU/mLのエンドトキシンレベルを有していた。
【0258】
(実施例45)
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2のインビボ生体適合性試験
以下のインビボ試験を実施して、試験材料のインビボ生体適合性を、市販で利用可能な関節内補充薬生成物に対してヤギにおいて調査した。
【0259】
試験に使用した材料:
試験材料:Hydros−HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2[Lot NB51:119]
対照材料:Synvisc−市販の関節内補充薬生成物 。
【0260】
骨が十分に成長した合計6匹の雌性ヤギを、この試験で使用した。ヤギは、承認されたUSDAの供給源から得た。動物は、試験の開始時に体重65〜99ポンドであった。ヤギは、この試験を行う前にヤギ関節炎脳炎(CAE)であり、ヨーネ病の陰性であることが決定付けられた。各動物は、試験を行う前に資格を有する獣医によって全身的な健康状態の評価を与えられた(姿勢、呼吸の容易さ、ならびに下痢および鼻汁がないことを視覚的に観測した)。動物を、疾患または跛行の任意の証拠について調査した。試験における許容性は、疾患がなく臨床的に良好であり、後膝関節の優先的な使用による病歴がないことを条件とした。ヤギを、施設が決定した適切な期間に合わせて調整した。動物飼育条件は、実験棟物に関する関係法令、すなわち動物保護法、公法99〜198で改正された公法89〜544、連邦官報52:16、米国農務省−動植物検疫所(USDA−APHIS)、1985年、およびPublic Health Service Policy on Humane Care of Laboratory Animals、Office for Protection Against Research Risks/National Institutes of Health (OPRR/NIH)、1986年9月に従った。ヤギを、注射後に大型の室内ラン(囲い)で維持した。ヤギは常に自由に活動することができた。すべての動物に、1日当たり小型反芻動物用の食餌約2ポンドと柔らかい干し草を与えた。水道水を自由に摂取させた。麻酔剤投与の約12〜24時間前には食餌の提供を止め、注射の約12時間前には水の提供を止めた。固有の耳のタグによって、各動物を同定した。
【0261】
治療
試験を以下の通り設計した。
【0262】
【表19】
基本的な注射手順は、全対象について同一とした。すべての注射を厳密な無菌状態で実施した。動物に、ジアゼパム(0.1〜0.5mg/kg)およびケタミン(4.4〜7.5mg/kg)の静脈内注射を実施して麻酔した。各膝を、引出し、運動範囲、腫れ、体温、捻髪音、膝蓋骨トラッキングおよび外反/内反異常について身体検査した。すべての注射を、通常の無菌技術を利用して実施した。左および右の後膝関節を、注射のためにその領域をクリップで止めて準備し、次いでその領域をクロルヘキシジンスクラブで清浄にした。動物を背臥位に置いた。右の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布した。
【0263】
標準の技術を使用して、各後膝関節に注射した。2インチ21ゲージの大きさの滅菌針を、前内側進入路から関節内空間に導入した。大腿骨内側顆の外側顆間のV字壁を感じたら、針をわずかに戻した。試験材料1.5mlを群1Aの右関節に、または対照材料1.5mlを群1Bの右関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。この直後、左の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布し、右の後膝関節について前述したものと同様にして、対照材料1.5mlを群1Aの左の後膝関節に、または試験材料1.5mlを群1Bの左の後膝関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。
【0264】
苦痛および不快感の徴候を示す任意の動物について注射後にチェックを実施し、必要に応じて追加の鎮痛剤を投与した。すべての治療を、適切な試験文書作成により記録した。
【0265】
動物を、全身麻酔剤導入のためにジアゼパム0.22mg/kgおよびケタミン10mg/kgからなる静脈内注射を用いて、最初の注射の24±1時間後に人道的に屠殺した。この後、心停止が確認されるまで、麻酔下の動物に過量の濃塩化カリウム(KCl)をIV投与した。
【0266】
分析
全体的な形態学的観測
膝関節の収集後、関節を開口し、表20に記載の通り、注射した後膝関節の全体的な評価を実施した。写真による文書作成を実施した。変形性の関節変化は評価しなかった。
【0267】
【表20】
さらに、表21に概説の通り、関節の半定量的類別を単一観測者によって実施した。
【0268】
【表21】
関節の全体的な総評価スコアは、呈色、充血および浮腫のスコアの合計とした(0〜8点)。
【0269】
滑液の評価
開口した関節から滑液を収集した後、総体積を記録した。体液を、粘度、透明性および色について全体的に評価し、表22の通り半定量的に類別した。血球計数器を用いて、総白血球を計数した。さらに、微分顕微鏡的分析のために滑液塗抹を生成した。個々にラベルを付した滑液として、残りの滑液を−80℃で凍結保存した。滑液塗抹を潜在的な将来分析のために保持した。
【0270】
【表22】
滑液の総スコアは、色、透明性および糸引き性のスコアの合計である(0〜8点)。
【0271】
結果
以下の表は、図14と共に、HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2が、ヤギモデルにおいて24時間後の関節と生体適合性があることを示している。
【0272】
【表23】
色:S=淡黄色(0)、Y=黄色(2)、P=ピンク色(1)、R=赤色(2)、B=血液色(3)
透明性:C=透明(0)、H=わずかに濁っている(1)、D=濁っている(2)
糸引き性(粘度):N=正常(0)、A=異常(1)、W=水っぽい(2)
TM=試験材料 。
【0273】
【表24】
前述の実施形態に対して本発明の広範な概念から逸脱することなく変更を加え得ることを当業者は理解されよう。したがって本発明は、開示の特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲に含まれる改変を包含することを企図すると理解されたい。前述の要素の、あらゆる可能なその変形形態としての任意の組合せは、本明細書で別段指定されない限り、または状況と明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2009年7月30日に出願された米国仮出願第61/230,074号および2010年3月9日に出願された米国仮出願第61/311,953号(これらの各々の内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)への優先権の利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、一般に、官能基で低レベルに修飾されているヒアルロン酸、かかる軽度に修飾されているヒアルロン酸と適切な二官能性または多官能性反応物との制御された反応によって形成された混合物、ならびに関係するヒドロゲルおよびヒドロゲル前駆体組成物に関する。本明細書に記載の組成物は、軽度に架橋されており、インビボ注射される場合に炎症促進性が低く、例えば、医療機器、生物医学的な接着剤および封止剤として使用することができ、他の使用の中でも生物活性剤(bioactive agent)の局所送達のために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒアルロン酸は、天然に存在するアニオン性非硫酸化グリコサミノグリカンであり、結合組織、上皮組織および神経組織にわたって広く分布している。平均70kg(154ポンド)のヒトは、身体に約15グラムのヒアルロン酸を有し、その3分の1が毎日代謝回転する(分解され、合成される)(非特許文献1)。ヒアルロン酸は、身体の多くの組織に自然に見出され、したがって生体適合性があるため、生物医学的適用に非常に適していると考えられている。実際、ヒアルロン酸(ヒアルロナンとも呼ばれる)、その誘導体化形態、およびそのコンジュゲートを含む多くのポリマー性材料は、注射可能な生体材料、ならびに医療機器および埋込み式材料として使用することができる。適用には、局所部位への治療用分子の送達、組織工学における接着剤または封止剤としての使用、関節内補充薬としての使用、および創傷治癒における使用が含まれる。ヒアルロン酸は、その天然に存在する形態で治療剤として投与され使用される場合、一般に身体から急速に除去され、頻繁な投与が必要となる。ポリマー性ゲルまたはゲル前駆体は、反応化学および反応条件、ゲル化の特徴、ならびに/または1つもしくは複数のインビトロモデルにおける治療効果に関して好ましい特性を示し得ることが多いが、特定の場合、かかる効果はインビボまたは臨床的な設定では有益な特性に置き換わらない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Stern R. Eur J Cell Biol(2004年)83巻(7号):317〜25頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、ジビニルスルホンとの反応によって、10%以下の度合いまで修飾されたヒアルロン酸を提供する。具体的には、このヒアルロン酸は、ジビニルスルホンの付加反応によって誘導体化されたヒドロキシル基を10%以下有する。
【0006】
特定の一実施形態では、ヒアルロン酸は、2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に誘導体化されたヒドロキシル基を1〜10%有する。ジビニルスルホンによって低レベルに活性化されて得られた活性化ヒアルロン酸を、本明細書では一般に(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸または「VS−HA」と呼ぶ。
【0007】
さらに別の実施形態では、ヒアルロン酸は、そのヒドロキシル基が1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%から選択される度合いまで2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に変換されている。
【0008】
さらにより具体的な実施形態では、ヒアルロン酸は、そのヒドロキシル基が二糖反復単位1個当たり約4〜5%の度合いまで2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に変換されている。
【0009】
さらに別の実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸は、約700ダルトン〜約3百万ダルトンの分子量を有する。
【0010】
第2の態様では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸と、2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルを提供する。
【0011】
関係する一実施形態では、チオール架橋剤は、2個〜約8個のチオール基を有する。さらに別の実施形態では、チオール架橋剤は、2、3、4、5、6、7および8個から選択されるいくつかのチオール基を有する。
【0012】
第2の態様を対象としたさらに別の実施形態では、チオール架橋剤は、チオール官能化ポリエチレングリコール(PEG)(すなわちPEG−チオール)である。
【0013】
前述のさらなる一実施形態では、ポリエチレングリコールチオールは、約250〜約20,000ダルトンの分子量を有する。
【0014】
関係する一実施形態では、チオール官能化ポリエチレングリコールは直鎖であり、各末端にチオール基を有し、すなわちポリエチレングリコールジチオール(PEGジチオール)である。
【0015】
さらに別の実施形態では、チオール官能化ポリエチレングリコールは、4個の腕を有し、ペンタエリスリトール核(core)を有する。
【0016】
さらに別の実施形態では、チオール官能化ポリエチレングリコールは、グリセロール、グリセロールダイマー(3,3’−オキシジプロパン−1,2−ジオール)、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、およびヘキサグリセロールから選択されるポリオール核を有する。
【0017】
さらなる一実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、10パーセント未満の未反応チオール基および10%未満の未反応ビニルスルホン基を含有する。残りの未反応チオール基の量は、例えばエルマン(Ellman)の試験を使用して決定することができる。
【0018】
またさらなる一実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、水に対して約0.5〜5.0パーセントの重量(wt/wt)パーセントのポリマーを含有する。得られたヒドロゲルについて、水に対するポリマーの例示的な重量パーセントは、1つまたは複数の実施形態では、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5および5パーセントから選択される。
【0019】
さらに別の実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、約0.10〜3.0ミリメートルの大きさの粒子の形態である。
【0020】
さらに別の実施形態では、前述のヒドロゲル粒子は、水性スラリーの形態である。
【0021】
またさらなる一実施形態では、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルは、非修飾ヒアルロン酸の水溶液に分散している。
【0022】
またさらなるより具体的な一実施形態では、ヒアルロン酸の生理食塩水溶液に架橋ヒドロゲル粒子を含む組成物が提供され、この場合、ヒドロゲル粒子は、ポリエチレングリコールジチオール(PEG−ジチオール)と、2−(ビニルスルホニル)エトキシ基で誘導体化されたヒドロキシル基を1〜10%有するヒアルロン酸との反応によって形成される。
【0023】
またさらなる一実施形態では、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルは、生物活性剤を含む。特定の一実施形態では、生物活性剤はコルチコステロイドである。またさらなる特定の一実施形態では、生物活性剤はトリアムシノロンアセトニドである。
【0024】
さらなる代替の一実施形態では、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルは、生細胞を含む。
【0025】
さらなる一実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸と、二官能性またはそれ以上の官能性のチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、ヤギの関節注射モデルにおいて低い炎症促進性を示す。
【0026】
特定の一実施形態では、ヒドロゲルは、関連の滑液中の白血球の応答によって示される低い炎症促進性を示す。
【0027】
さらに別の特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ヤギの関節注射モデルにおいて、全体的観測採点法によって示される低い炎症促進性を示す。
【0028】
またさらなる一実施形態では、ヒドロゲルは滅菌されている。
【0029】
またさらなる一実施形態では、本明細書で提供されるヒドロゲルは、シリンジにパッケージされている。
【0030】
またさらなる一実施形態では、本明細書に記載のヒドロゲル組成物のいずれかを、被験体の関節の関節内空間に投与する方法を提供する。
【0031】
さらに第3の態様では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を調製する方法を提供する。この方法は、ヒアルロン酸の二糖反復単位に対して約10%以下のヒドロキシル基をジビニルスルホンと反応させて(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を形成するのに有効な反応条件下で、ヒアルロン酸をジビニルスルホンと反応させるステップを含む。
【0032】
関係する一実施形態では、反応は、ヒアルロン酸をモル過剰のジビニルスルホンと反応させるステップを含む。
【0033】
さらなる一実施形態では、反応ステップは、周囲条件で実施される。
【0034】
さらに別の実施形態では、反応ステップは、周囲条件で10秒〜約120秒間実施される。
【0035】
さらに別の実施形態では、反応ステップは、水性塩基中で実施される。
【0036】
さらなる一実施形態では、この方法は、酸を添加することによって反応をクエンチするステップをさらに含む。関係する一実施形態では、十分な酸を添加して、約4〜6.5の範囲のpHに調節する。
【0037】
本明細書の第4の態様では、ヒドロゲルの調製方法を記載する。この方法は、架橋ヒドロゲルを形成するのに有効な反応条件下で、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を、2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤と反応させるステップを含む。適切なチオール架橋剤には、チオール官能化ポリエチレングリコール、アルカン−ジチオール等が含まれる。
【0038】
関係する一実施形態では、反応は、生理的pHで実施される。
【0039】
さらに別の実施形態では、反応は、重合開始剤なしに実施される。
【0040】
さらに別の実施形態では、反応は、外部エネルギー供給源の適用なしに実施される。
【0041】
さらに別の実施形態では、反応は、20℃〜45℃の温度で実施される。
【0042】
またさらなる一実施形態では、ヒドロゲルは、10%以下の未反応ビニルスルホン基またはチオール基を含む。好ましくは、ヒドロゲルは、5%以下の未反応ビニルスルホン基またはチオール基を含む。特定の一実施形態では、ヒドロゲルは、検出可能な未反応ビニルスルホン基またはチオール基を本質的に含まない。
【0043】
第5の態様では、シリンジを含むキットを提供し、このシリンジは、前述の通り(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルを含む。
【0044】
関係するさらに別の実施形態では、シリンジは、非修飾ヒアルロン酸の水溶液に分散している、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルを含む。関係する一実施形態では、水溶液は生理食塩水である。
【0045】
関係する一実施形態では、シリンジは、18〜21ゲージ針を使用してヒドロゲルを関節内注射するのに適した形態である。
【0046】
関係するさらに別の実施形態では、シリンジは、生物活性剤をさらに含む、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルを含む。関係する一実施形態では、生物活性剤は、ステロイド、成長因子、抗増殖剤、および抗生物質からなる群から選択される。さらにより具体的な実施形態では、ヒドロゲルは、約0.01重量%〜約20重量%の生物活性剤を含むが、これは当然のことながらその生物活性剤の効力に依存して決まる。すなわち強力でない薬剤は、一般に先の範囲の最高値に近い、例えば約10〜20重量%でヒドロゲルに含まれ、強力な生物活性剤は、先の範囲の最低値に近い、例えば約0.01〜3重量%で含有されることになる。生物活性剤がトリアムシノロンアセトニドである特定の一実施形態では、ヒドロゲルは約0.1〜1重量%の生物活性剤を含む。
【0047】
さらに別の実施形態では、シリンジは、生細胞をさらに含む、先の実施形態の任意の1つまたは複数に記載のヒドロゲルを含む。例示的な生細胞には、幹細胞、実質(parenchimal)幹細胞、血液由来の細胞、および骨髄細胞が含まれる。
【0048】
第6の態様では、ヒドロゲルに分散している水溶性の低い生物活性剤を含む本明細書に記載のヒドロゲルを投与することによって、水溶性の低い生物活性剤を送達する方法を提供する。
【0049】
第7の態様では、本明細書に記載の任意の1つまたは複数の態様または実施形態に従って、ヒドロゲルを対象の膝などの関節の関節内空間に注射することによって、変形性関節症、関節リウマチ、他の炎症性関節炎、および反復使用に関連する急性および慢性炎症を治療する方法を記載する。特定の一実施形態では、すなわちヒドロゲルがそれに組み込まれたコルチコステロイドを含む場合、その方法は、ヤギの関節注射モデルにおいて注射後28日目の総Mankinスコアによって特徴付けられる通り、ヒドロゲルに封入されない当量のコルチコステロイドの投与時に生じる軟骨損傷よりも、軟骨への損傷を低減するのに有効である。関係する一実施形態では、先の方法、すなわち関節の関節内空間へのヒドロゲルの注射は、対象となるヒドロゲルの注射の前に対象が経験していた疼痛と比較して、ある度合いの疼痛緩和を対象にもたらすのに有効である。一般に、疼痛緩和の開始は、注射後約1時間〜約1週間以内、より好ましくは注射後約1時間〜約3日以内に対象によって経験される。すなわち疼痛緩和の開始は、一般に、注射後約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24時間以内に始まり、または最初の24時間以内に始まらない場合には、注射後1、2、3、4、5、6もしくは7日以内に始まる。一般に、疼痛緩和の期間は約3〜9カ月、すなわち3、4、5、6、7、8、9カ月間、またはそれ以上継続すると予測される。
【0050】
第8の態様では、対象への投与の前、または投与時にコルチコステロイドを架橋ヒドロゲルに組み込むことによって、変形性関節症に罹患している被験体の関節の関節内空間へのコルチコステロイドの投与時に、軟骨への損傷を低減する方法を提供する。架橋ヒドロゲルは一般に、以下にさらに詳説のヒアルロン酸系ヒドロゲルである。例示的な架橋ヒドロゲルは、ジビニルスルホンと反応させ、その後2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤によって架橋することによって、10%以下の度合いまで修飾されたヒアルロン酸であるヒドロゲルである。驚くべきことに、コルチコステロイドを架橋ヒドロゲルに組み込むことによって、ヒドロゲルに組み込まれない当用量のコルチコステロイドの投与時に生じるよりも、軟骨への損傷が低減される。
【0051】
治療有効量のコルチコステロイドを被験体の関節の関節内空間に投与することによって変形性関節症を治療する方法における、前述に関係する本明細書の第9の態様では、コルチコステロイドを含む架橋ヒドロゲル組成物の形態でコルチコステロイドを投与するステップを含むことにより、ヒドロゲルに組み込まれない当量のコルチコステロイドの投与と比較して、軟骨への損傷が低減されるという改善を提供する。
【0052】
第7、8および9の態様に関係する特定の一実施形態では、コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバル酸チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド(benetonide)、トリアムシノロンフレトニド(furetonide)、トリアムシノロンヘキサセトニド、二酢酸トリアムシノロンなどのトリアムシノロン塩、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−酪酸エステル、ヒドロコルチゾン−17−吉草酸エステル、ジプロピオン酸アクロメタゾン(aclometasone)、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−酪酸エステル、クロベタゾール−17−プロピオン酸エステル、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、およびフロ酸フルチカゾンからなる群から選択される。
【0053】
さらにより具体的な一実施形態では、コルチコステロイドはトリアムシノロンアセトニドである。
【0054】
第10の態様では、本明細書に記載のヒドロゲルの3次元構造内に封入されたステロイドなどの水溶性の低い薬物を含む製剤を提供し、その後かかる製剤を関節の関節内空間に注射する。
【0055】
前述に関係する一実施形態では、ヒドロゲルへのステロイド粒子の捕捉は、ステロイド粒子の大部分と関節組織との直接的な接触を予防するのに有効である。
【0056】
関係するさらに別の実施形態では、ヒドロゲルへのステロイド粒子の捕捉は、関節内の局所的なステロイド濃度を最大限にすると同時に、その全身濃度を最小限に抑えるのに有効である。
【0057】
またさらなる一実施形態では、ヒドロゲルへのステロイド粒子の封入は、ステロイド粒子が関節から早期にクリアランスされるのを保護するのに有効である。
【0058】
またさらなる一実施形態では、ヒドロゲルにステロイドを封入することによって、ヒドロゲルへの封入なしに得られるよりも低い総用量でステロイドの治療効率が得られると同時に、望ましくない局所性および全身性副作用が最小限に抑えられる。
【0059】
関係する一態様では、本明細書に記載のヒドロゲルを、哺乳動物被験体の骨、歯、神経、軟骨、血管、軟組織または他の組織の上またはそれらの中に注射または移植するために使用することを提供する。
【0060】
組成物、方法、キット等のさらなる実施形態は、以下の説明、実施例および特許請求の範囲から明らかとなろう。先および以下の説明から明らかになる通り、本明細書に記載のそれぞれすべての特徴、ならびにかかる特徴の2つ以上のそれぞれすべての組合せは本開示の範囲に含まれ、ただしかかる組合せに含まれる特徴は、互いに矛盾しないものとする。さらに、任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の任意の実施形態から具体的に排除することができる。本発明のさらなる態様および利点を、特に添付の実施例および図と共に考慮しながら以下の説明に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、実施例1に記載の通り調製したビニルスルホン修飾ヒアルロン酸(HA−VS)の1H NMRスペクトルである。NMRに基づいて、ヒアルロン酸が二糖1個当たり約4パーセントのレベルのビニルスルホン置換を有することを決定付けた。
【図2】図2は、実施例16に記載の通り、水溶性の低いモデル薬物であるトリアムシノロンアセトニドの放出(パーセント)対サンプリング番号を示す図である。
【図3】図3は、実施例16に記載の通り、サンプリング点1つ当たりの、水溶性の低いモデル薬物であるトリアムシノロンアセトニドの放出された蓄積質量を示す図である。
【図4】図4は、実施例16に記載の通り、サンプリング点1つ当たりの、トリアムシノロンアセトニドの放出量を示す図である。
【図5】図5は、実施例17に記載の通り、1.5mlの注射の24時間後に評価した、試験材料の治療群に対して試験材料1を注射したヤギの膝の滑液白血球数(立方ミリメートル当たりの細胞数)を示すグラフである。試験材料1=HA−VS/PEG−(SH)2ゲル。
【図6】図6は、実施例17に記載の通り、1.5mlの注射の24時間後に評価した、試験材料の治療群に対して試験材料1を注射したヤギの膝の絶対的滑液白血球数(絶対数=総体積×滑液白血球数)を示すグラフである。試験材料1=HA−VS/PEG−(SH)2ゲル。
【図7】図7は、実施例17に記載の通り、1.5mlの注射の24時間後に評価した、試験材料の治療群に関する注射したヤギの膝の滑液白血球の特異的分布(各群当たりの平均)を表すグラフである。各試験材料について、多形核白血球(PMN)、リンパ球、単球および好酸球(Eos)の分布を示す。
【図8】図8は、実施例17に記載の通り、それぞれ代表的な試験材料について注射したヤギの膝の滑液の平均総スコア、関節組織の平均総スコア、ならびに滑液および関節組織の組合せのスコア(表6)を示すグラフであり、全体的総スコア=滑液スコア+関節の総スコアである。滑液または関節の総スコアの最大スコアは8であり、0は正常である。全体的総スコアの最大スコアは16であり、0は正常である。
【図9】図9は、実施例34に詳説の通り、試験材料で治療したヤギの関節注射後14日目の軟骨試料に関するサフラニンO染色スコアを示す図である。試験材料1:HA−VS−PEG−(SH)2、試験材料2:HA−VS−PEG−(SH)2−TA。
【図10】図10は、実施例34に詳説の通り、試験材料で治療したヤギの関節注射後28日目の軟骨試料に関するサフラニンO染色スコアを示す図である。
【図11】図11は、実施例34に詳説の通り、試験材料で治療したヤギの関節治療後28日目の軟骨試料に関するMankin採点システムの結果を示す図である。
【図12】図12は、実施例34に詳説の通り、それぞれ注射後14日目(図12)および28日目(図13)のサフラニンO染色による代表的な大腿骨内側顆(medial femoral condyle)組織像(40×)を示す図である。
【図13】図13は、実施例34に詳説の通り、それぞれ注射後14日目(図12)および28日目(図13)のサフラニンO染色による代表的な大腿骨内側顆(medial femoral condyle)組織像(40×)を示す図である。
【図14】図14は、実施例45に詳説の通り、1.5mlの関節内注射の24時間後に評価した、試験材料および対照材料に関するすべての動物の平均滑液白血球数(平均+sd)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
詳細な説明
ここで、本発明を以下により完全に説明する。しかし本発明は、多くの様々な形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。正確には、これらの実施形態は、本開示を詳細かつ完全なものとし、本開示によって本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供される。
【0063】
本明細書で先または以下に引用したあらゆる刊行物、特許文書および特許出願は、別段指定されない限りその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。参照によって本明細書に組み込まれる刊行物、特許文書または特許出願と本開示の両方において同じ用語が定義される場合には、本開示の定義が優先的定義となる。本発明の特定の種類の化合物、化学物質等の説明のために参照される刊行物、特許文書および特許出願について、かかる化合物、化学物質等に関する部分は、本文書の一部となり、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0064】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、状況によって別段明示されない限り複数の指示対象を含むことに留意すべきである。したがって、例えば「あるポリマー」への言及は、単一のポリマー、ならびに同じまたは異なるポリマーの2つ以上を含む。
【0065】
別段具体的に示されない限り、本明細書の用語の定義は、有機合成およびポリマーおよび薬学の分野で使用されている標準の定義である。
【0066】
本発明の説明および特許請求において、以下の用語法は下記の定義に従って使用される。
【0067】
「生体適合性ポリマー」は、生体組織と適合性があり、または有益な生物学的特性を有することができる分解産物を有するポリマーである。生体適合性ポリマーは、それ自体生体適合性であってよく、かつ/または生物活性剤と併用される場合に相乗的に生体適合性であってもよい。
【0068】
用語「ヒアルロン酸ポリマー」は、ヒアルロナンの反復二糖サブユニットを含むポリマーを指し、この場合、反復単位は、二糖反復サブユニットのD−グルクロン酸および/またはD−N−アセチルグルコサミン単位の1つまたは複数の位置で誘導体化され得る。ヒアルロン酸ポリマーは、ヒアルロン酸(ヒアルロナンとも呼ばれる)、誘導体化ヒアルロン酸、塩の形態、ヒアルロン酸リンカー錯体、およびヒアルロン酸コンジュゲートを包含することを意味する。用語「ヒアルロン酸」は、非修飾または非誘導体化ヒアルロン酸を指すことを意味する。
【0069】
用語「ヒアルロン酸誘導体」または「誘導体化ヒアルロン酸」または「修飾ヒアルロン酸」は、例えば、ジビニルスルホンなどの1つまたは複数の小さい化学的部分との反応によって誘導体化されているヒアルロン酸を指す。
【0070】
チオール誘導体化ヒアルロン酸ポリマーは、3つ以上の二糖反復単位を有し、少なくとも1つのスルフヒドリル(チオール)基を含む前述のヒアルロン酸ポリマーを指す。
【0071】
用語「反応性」は、容易に反応し、または有機合成の従来の条件下で実際的な速度で反応する官能基(例えばポリマー内に存在する)を指す。これは、反応しない基、または反応するために強い触媒もしくは実際的ではない反応条件を必要とする基(すなわち、「非反応性」または「不活性」基)とは対照的である。
【0072】
「分子質量」または分子量は、本明細書でヒアルロン酸などの水溶性ポリマーの状況において使用される場合、多角度光散乱によって決定されるポリマーの名目上の平均分子質量を指す。分子量は、数平均分子量または重量平均分子量のいずれかで表すことができる。別段指定されない限り、本明細書の分子量へのあらゆる言及は、数平均分子量を指す。
【0073】
用語「ヒドロゲル」は、水が連続相であり、含水量が50%(w/w)を超える、水を含有する3次元親水性ポリマー網またはゲルを指す。本明細書に記載のヒドロゲルは、一般に、所望の架橋度を達成するための架橋開始剤または反応促進剤の組込みを必要としない。
【0074】
「滅菌」組成物は、USP滅菌試験を使用して決定される、生存可能な微生物を含まない組成物である。「The United States Pharmacopeia」、第30次改訂版、The United States Pharmacopeial Convention:2008年を参照のこと。
【0075】
本明細書で使用される用語「軽度に架橋されている」または「低い架橋度を有する」は、利用可能な架橋部位の約40%〜約100%が反応して最終的な架橋ゲルを生成し、ゲルを形成するために使用された修飾ヒアルロン酸出発材料が、活性化/誘導体化された形態のヒドロキシル基を10%以下有し、したがって総体的に軽度に架橋されているとみなされるヒドロゲルを提供するように架橋反応が生じることを意味する。
【0076】
ヤギの関節注射モデルにおいて低い炎症促進性を示すヒドロゲルは、本明細書に記載のヤギの関節注射モデルにおいて評価される場合に、注射の24時間後に1立方ミリメートル当たり20,000個未満の滑液白血球細胞数、好ましくは注射の24時間後に1立方ミリメートル当たり15,000個未満の滑液白血球細胞数を示すヒドロゲルであり、この数は、注射した個々の3匹の動物から得た平均数である。
【0077】
対象となるヒドロゲルへの組込みなしに投与される当用量のコルチコステロイドよりも、「軟骨への損傷を低減する」または「軟骨損傷が少ない」コルチコステロイドを含有するヒドロゲルは、一般に、軟骨損傷を評価するための任意の適切なモデルによって特徴付けられるが、好ましくは本明細書で詳説するヤギの膝のインビボ注射モデルを使用して測定される。注射後のデータは、一般に、注射後少なくとも7日間、しかし28日間以下にわたって収集される。好ましい測定標準は、総Mankinスコアであり、既に記載の通り評価された、薬物単独よりも軟骨への損傷を低減する材料とは、当量で投与される場合にその薬物(すなわちコルチコステロイド)よりも平均スコアの改善を示す材料である。好ましくは、ヒドロゲルに組み込まれた薬物の総Mankinスコアは、ヒドロゲルに封入されない形態で投与される場合の薬物の総Mankinスコアよりも少なくとも1ポイント以上改善される。
【0078】
用語「薬物」または「薬学的に活性な薬剤」または「生物活性剤」または「活性剤」は、交換可能に使用され、生理活性を有し、治療目的で採用または使用される任意の有機または無機化合物または物質を意味する。タンパク質、ホルモン、抗癌剤、小分子化合物および模倣薬、オリゴヌクレオチド、DNA、RNAならびに遺伝子療法が、「薬物」のより広範な定義に含まれる。本明細書で使用される場合、薬物への言及、ならびに本明細書の他の化合物への言及は、適用できる場合には本明細書に記載の化合物のジアステレオマーおよび鏡像異性体などの異性体、塩、溶媒和物、および多形、特定の結晶形、ならびにラセミ混合物および純粋な異性体を含む、薬学的に許容される形態のいずれかの化合物を含むことを意味する。
【0079】
用語「固体」は、本明細書で使用される場合、結晶形、それらの多形、非結晶性の非晶質物質、沈殿物および粒子等を含む、非流体の物質を意味する。これらの固体形態のそれぞれは、大きさが約0.01ミクロン〜2000ミクロン、例えば約0.01ミクロン〜1ミクロン、1ミクロン〜100ミクロン、100ミクロン〜1000ミクロン、1000ミクロン〜2000ミクロン、1100ミクロン〜1500ミクロン、および1500ミクロン〜2000ミクロンで変わり得る。
【0080】
本明細書で言及される粒径は、粒子の直径を指し、一般にふるい分析によって決定される。記載の大きさまたは範囲は、一般に、ふるいまたはメッシュの目の大きさに相当する。大きさ(例えばmm)を決定するために、特定のメッシュまたはふるい番号に対応する粒径変換チャートを参照することができる。例えば、実施例39および40を参照のこと。
【0081】
「水不溶性薬物」または「水溶性の低い薬物」は、10mg/mL未満の水溶性を有する薬物である。
【0082】
本明細書で提供される組成物(またはヒドロゲルまたはポリマー)の、「有効量」または「薬学的に有効な量」または「治療有効量」という用語は、対象の疼痛を予防、低減または排除するなどの所望の応答を得るのに十分な、非毒性の組成物の量を指す。必要とされる正確な量は、種、年齢、および対象の全体的な状態、治療を受ける状態の重症度、使用される特定の1つまたは複数の薬物、組成物の特異性、投与方法等に応じて対象ごとに変わる。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、日常的な実験方法を使用して当業者によって決定され得る。
【0083】
急性または亜慢性疼痛の「治療」またはそれを「治療する」ことには、疼痛の阻害、すなわち疼痛の発症を停止させ、または疼痛から回復させ、または疼痛を緩和すること、すなわち対象が経験する疼痛の量を低減することが含まれる。
【0084】
「任意選択の」または「任意選択により」は、後述の環境が生じても生じなくてもよいことを意味し、したがってこの説明は、その環境が生じる場合およびその環境が生じない場合を含む。
【0085】
特定の特徴または実体に言及する用語「実質的に」は、その特徴または実体に著しい度合いまで、またはほぼ完全に(すなわち85%以上の度合い)言及することを意味する。
【0086】
用語「約」は、特に所与の量に言及する場合、プラスまたはマイナス5パーセントの偏差を包含することを意味する。
【0087】
さらなる定義は、以下の部分に見出すこともできる。
【0088】
概要
本願は、インビボ投与される場合に炎症促進性が極度に低いヒドロゲルについての本発明者らの発見に基づくものである。本開示に関係する研究の実施において、本発明者らは、有益な化学的、レオロジー的、および他の物理的特性を有するように見え、いくつかの生体適合性の許容されるインビトロおよびインビボモデルにおいて好ましく挙動する多くの生体適合性のヒドロゲルが、特に関節内注射する際に、炎症および疼痛を引き起こすおそれがあることを認めた。本明細書に記載の材料は、ヤギの関節注射モデルで調査した場合、類似のヒドロゲル組成物と比較して、炎症促進性が著しく低いことが発見された。例えば、実施例17および図4〜8を参照のこと。一般に、本発明のヒドロゲルは、関節の関節内空間に投与される場合(例えばヤギの関節注射モデルで調査した場合)、関節の関節内空間への当量の市販関節内補充薬の投与、または本明細書に記載のヒドロゲルに組み込まれない当量の活性剤の投与と比較して、軟骨への有害な、または望ましくない副作用の低減を示した。
【0089】
予想外に、本明細書に記載のものなどの架橋ヒドロゲルにコルチコステロイドを組み込むことによって、当用量またはそれを超える用量の、ヒドロゲルに封入されない形態のコルチコステロイドを投与する際に観測されるよりも、軟骨への損傷が実際に低減することも発見された。例えば、実施例34および図9〜13を参照のこと。さらに本明細書では、本発明のヒドロゲルの関節内注射が、単独で(すなわち活性剤なし)投与される場合でも、トリアムシノロンアセトニドなどのコルチコステロイドと組み合わせて投与される場合でも、局所作用または全身作用をもたらさないことを示す結果を提供する。
【0090】
本明細書に記載の優れたヒドロゲルは、一般に、十分に特徴付けられた低レベルの官能基の修飾を有するヒアルロン酸と、適切な二官能性または多官能性架橋剤との制御された反応によって形成される。得られたヒドロゲルは、開始剤もしくは反応促進剤または他の有害な添加剤を必要とすることなく、穏やかな条件下で形成される。得られたヒドロゲルは、最小数の未反応の反応基を有するように設計され、最小数の反応物および反応構成要素から形成される。ヒドロゲルは軽度に架橋されており、生物活性剤を封入し、経時的に一定の方式で、持続的に放出するのに有用であることも示されている。例えば、図2〜3を参照のこと。
【0091】
ここで組成物、方法およびキット等の特徴を、以下により詳細に論じる。
【0092】
誘導体化ヒアルロン酸ポリマー
本発明のヒドロゲルは、様々なポリマー材料から形成することができる。1つまたは複数の反応性官能性を含有する、特定の程度まで修飾されている生分解性または生体吸収性ポリマーが好ましい。好ましくは、ポリマーはポリアニオン系多糖(PAS)である。ポリアニオン系多糖の非排他的な例には、例えば、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルアミロース(CMA)、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン(dermatin)−6−硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパリン、ケラチン硫酸およびそれらの誘導体、ならびにその組合せが含まれる。かかるポリマーは当技術分野で公知であり、例えば米国特許第6,056,970号に記載されている。他の生分解性ポリマーには、フィブリン、フィブリノゲン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ペプチド、タンパク質、ゼラチンおよびコラーゲンが含まれる。
【0093】
好ましいポリマーは、ヒアルロナンとも呼ばれるヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は、交互に生じるβ1−>3グルクロン酸結合とβ1−>4グルコサミン結合によって結合しているN−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸の交互に生じる二糖単位から構成され、したがって反復単位が(1−>4)−β−D−GlcA−(1−>3)−β−D−GlcNAcとなる、天然に存在する直鎖多糖である。対象となるヒドロゲルの1つまたは複数を調製するのに使用されるヒアルロン酸は、一般に、ビニルスルホン、アクリレート、メタクリレートなどの1つまたは複数の反応性部分で誘導体化されている。好ましくは、ヒアルロン酸は、単一の反応性部分で誘導体化されている。修飾または誘導体化の程度は、ポリマー内の反応性官能基が1%〜100%のいずれかまで修飾される範囲であってよいが、一般に、低レベルのポリマー修飾が好ましい。
【0094】
ある例示的な修飾ヒアルロン酸は、そのヒドロキシル基とジビニルスルホンとの反応によって誘導体化されたヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は、一般に、約1〜約80%の修飾度の反応性ヒドロキシル基を有する。すなわち、1%の修飾または置換の程度は、ヒアルロン酸の二糖単位の平均1%がビニルスルホン基を含有することを意味する。好ましくは、ヒアルロン酸は、約1〜50%の修飾度の反応性ヒドロキシル基を有する。さらに好ましくは、ヒアルロン酸は、約1〜約25%の修飾度の反応性ヒドロキシル基を有する。特定の一実施形態では、ヒアルロン酸は、ジビニルスルホンとの反応によって10%以下の度合いまで修飾されている。具体的には、好ましい一実施形態では、ヒアルロン酸は、ジビニルスルホンの付加反応によって誘導体化されたヒドロキシル基を10%以下有する。ヒアルロン酸のヒドロキシル基は、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)基に変形する。得られた活性化ヒアルロン酸を、本明細書では一般に(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)ヒアルロン酸またはVS−HAと呼ぶ。特にヒアルロン酸は、以下の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%から選択される、ヒドロキシル基から(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)基への変換度を有することができる。あるいはヒアルロン酸は、先のパーセンテージのいずれか2つの間の範囲、例えば1〜10%、2〜10%、3〜10%、4〜10%等、例えば2〜7%、2〜6%、3〜8%、3〜7%等の提供される整数のそれぞれすべての組合せについて、その範囲に含まれるヒドロキシル基の変換度を有することができる。さらにより具体的な一実施形態では、ヒアルロン酸は、二糖反復単位1個当たり約4〜5%の、ヒドロキシル基から(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)基への変換度を有する。特定の場合、ヒアルロン酸官能基の修飾レベルは、架橋剤の濃度と共に他のパラメータを調節し最適化することによってその後の架橋反応を制御できるように、十分に特徴付けられる(すなわち決定される)。親ポリマーの置換/修飾度は、いくつかの適切な方法、例えばNMR、UVもしくはIR分析、または元素分析のいずれかによって決定することができる。ヒアルロン酸などのポリマーの置換パーセントを算出するための好ましい方法は、NMR、例えばプロトンNMRである。例えば、ヒアルロン酸の修飾度を、1H NMRスペクトルにおいてヒアルロン酸のビニルスルホン基およびアセトアミドメチル基に対応する相対的ピーク面積比に基づいて決定した実施例1を参照のこと。
【0095】
ポリマーはまた、PCT/US/2004/040726(WO2005/056608)に記載のヒドラジド反応基および/またはアミノオキシ反応基を含むことができ、かかるポリマーの誘導体化および得られたそれらのポリマー自体に関係する開示部分は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0096】
あるいはポリマーは、チオール誘導体化ヒアルロン酸などのチオールで誘導体化されているものであってよい。例示的なチオール誘導体化ヒアルロン酸ポリマーには、米国特許第6,884,788号、同第6,620,927号、同第6,548,081号、同第6,537,979号、同第6,013,679号、同第5,502,081号および同第5,356,883号に記載されているものが含まれ、かかるチオール誘導体化ポリマーに関係する部分は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0097】
ヒアルロン酸ポリマーのさらなる例には、それに限定されるものではないがT. J. Rosemanら、CONTROLLED RELEASE DELIVERY SYSTEMS、Marcel Dekker、Inc.、New York(1983年)の「Controlled Release from Glycosaminoglycan Drug Complexes」 R. V. Sparerら、第6章、107〜119頁に開示のポリマーを含む、システイン誘導体化ヒアルロン酸が含まれる。
【0098】
さらなる好ましいポリマーの例には、ヒドロカルビル、アリール、置換ヒドロカルビルまたは置換アリール基を介してN−アシル尿素基に連結しているペンダントチオール基によって誘導体化されているヒアルロン酸が含まれる。本明細書で提供される組成物および方法において使用される例示的なポリマーには、Carbylan(商標)−Sが含まれる(国際公開WO2005/056608に詳説)。
【0099】
さらなる誘導体化ポリマーには、二官能性または多官能性アクリレート、アリルまたはメタクリレート化合物などの反応性リンカーに共有結合しているヒアルロン酸が含まれる。ヒアルロン酸の修飾のための代表的なリンカーには、それに限定されるものではないが、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)−ジメタクリレート(PEGDM)、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリルアミド(PEGDAA)およびポリ(エチレングリコール)−ジメタクリルアミド(PEGDMA)、ならびにその誘導体が含まれる。先のリンカーのPEG部分は、例えば、2〜100以上のサブユニットを含むオリゴマー性(oliogomeric)またはポリマー性のものであってよい。ヒアルロン酸などのポリマーの修飾/官能化に適したさらなるリンカーには、デキストランアクリレート、デキストランメタクリレート、デキストラングリシジルメタクリレート、メタクリレート官能化ヒアルロン酸、アクリレート官能化ヒアルロン酸、グリセロールジメタクリレート、グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレート、ソルビトールアクリレートおよびその誘導体が含まれる。
【0100】
誘導体化ヒアルロン酸または他のポリマーは、一般に、約700〜3,000,000ダルトンの平均分子量を有する。例示的な分子量範囲は、約1,000〜2,000,000ダルトン、または約5,000〜1,000,000ダルトンである。さらなる適切な分子量範囲には、約50,000ダルトン〜約1,000,000ダルトン、または約100,000ダルトン〜約1,200,000ダルトン、または約90,000ダルトン〜約300,000ダルトンが含まれる。ヒアルロン酸の分子量は一般に、例えば多角度レーザー光散乱排除クロマトグラフィー(MALLS−SEC)によって決定され得る平均分子質量値である。ヒアルロン酸は、その供給源により、最大約3、またはより好ましくは最大約2の多分散性(Mw/Mn)を有することができる。一般に、ヒアルロン酸出発材料は、約2.5未満、より好ましくは約2未満の値の、より狭い分子量分布を有する。ヒアルロン酸の例示的な多分散性は、約1.02〜約2.5であり、出発材料であるヒアルロン酸は、約1.02、1.05、1.1、1.2、1.3、1.3、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2,0、2.1、2.2、2.3、2.4もしくは2.5、またはそれを超える多分散性を有することができる。あるいは、誘導体化に適したヒアルロン酸出発材料は、特異的な水中濃度で、先に提示の平均分子量範囲の任意の1つまたは複数に相当する、一般にセンチポアズで表される粘度を有することができる。
【0101】
架橋剤
本明細書に記載の有利な特徴を有するヒドロゲルを形成するのに有効な架橋剤(crossllinker)の例には、中心分子「C」上に位置する2つ以上の反応基を有する化合物が含まれる。中心分子は、直鎖または環式のアルカン、PEGオリゴマー(oliogomer)もしくはポリマー、または他の任意のかかる適切な中心分子であってよい。PEG系の架橋剤の場合、PEGは、直鎖、分岐(2個のポリマーの腕を有する)であってよく、または複数の腕を有することができる(例えば、3、4、5、6、7、8個またはそれ以上のポリマーの腕を有する)。したがってかかる場合には、中心分子は、一般に、直鎖PEG、2個の腕を有する分岐PEG、または中心核から生じるPEG腕を有する複数の腕のPEGである。かかる複数の腕を有するポリマーの例示的な核には、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセロール、グリセロールダイマー(3,3’−オキシジプロパン−1,2−ジオール)、グリセロールオリゴマー、ソルビトール、ヘキサグリセロール等が含まれる。
【0102】
例えば架橋剤は、チオール基またはアクリレート基を有する中心分子「C」であってよい。チオールを含有する架橋剤は、2つ以上のチオール基を含む。かかるチオール基は、ビニルスルホン誘導体化ヒアルロン酸などのビニルスルホンと反応する。例示的なチオール架橋剤には、PEG−ジチオール(HS−PEG−SH)、3個の腕を有するPEG−トリチオール(グリセリン核)、4個の腕を有するPEG−テトラチオール(ペンタエリスリトール核)、または8個の腕を有するPEG−オクタチオール(ヘキサグリセリン核)が含まれる。前述の複数の腕を有するPEG試薬は、すべてに満たない数の、チオールで官能化された腕を有することもできる。中心分子としてPEGを有するさらなる適切なチオール試薬は、Laysan Bio(Arab、Alabama)から利用可能なもの、ならびにNanoScienceから利用可能なものなどの芳香族ジチオールである。他の適切なチオール架橋剤には、ジメルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸、ジヒドロリポ酸、チオール官能化デキストラン、およびチオール官能化ヒアルロン酸が含まれる。中心分子上に位置する末端アクリレート基を有する架橋剤を使用することもできる。例えば、架橋剤としての使用に適したものは、チオール基がアクリレート(acylate)基またはメタクリレート基で置き換えられている前述の中心分子である。架橋剤のさらなる例には、PCT/US/2004/040726に記載のものが含まれる。
【0103】
架橋剤には、アクリレート、アリルまたはメタクリレート基を含む分子も含まれる。アクリレート、アリルまたはメタクリレート架橋剤は、小分子またはポリマー性の性質であってよい。一実施形態では、リンカーは、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)−ジメタクリレート(PEGDM)、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリルアミド(PEGDAA)およびポリ(エチレングリコール)ジメタクリルアミド(PEGDMA)、デキストランアクリレート、デキストランメタクリレート、デキストラングリシジルメタクリレート、メタクリレート官能化ヒアルロン酸、アクリレート官能化ヒアルロン酸、グリセロールジメタクリレート、グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレートソルビトールアクリレート、ならびにその誘導体を含む群から選択される。
【0104】
架橋剤の分子量は、一般に、修飾ヒアルロン酸または前述の他のポリマーの分子量未満である。一般に、架橋剤の分子量は、約200〜約20,000ダルトンである。架橋剤のさらなる例示的な分子量範囲は、約1,000〜約10,000ダルトン(例えば、約1kD、2kD、3kD、4kD、5kD、6kD、7kD、8kD、9kDまたは10kDの分子量を有し、kDはキロダルトンである)または約1,000〜5,000ダルトンである。PEGジチオールなどの架橋剤または前述の他の適切な架橋剤のいずれかの例示的な分子量には、中でも約3350、3400および5000ダルトンが含まれる。
【0105】
生物活性剤
本明細書で提供されるヒドロゲル、ヒドロゲル前駆体、ならびに関係する組成物および/またはキットは、任意選択により生物活性剤を含むことができる。本明細書で提供される組成物および組合せに含まれ得る生物活性剤には、抗菌剤、抗生物質、鎮痛剤、抗生物質、抗増殖剤/有糸分裂阻害薬が含まれ、これらには、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン、酵素(L−アスパラギナーゼ)などの天然産物;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(trazenes−dacarbazinine)(DTIC)などの抗増殖剤/有糸分裂阻害性アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジンおよびシタラビン)、プリン類似体および関係する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン[クラドリビン])などの抗増殖剤/有糸分裂阻害性代謝拮抗剤;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン(例えば、エストロゲン);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩およびトロンビンの他の阻害剤);血栓溶解剤(組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走(antimigratory)剤;抗分泌剤(ブレフェルジンAなど);副腎皮質ステロイド(ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバル酸チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド(またはトリアムシノロンの他の任意の薬学的に許容される塩)、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウムおよびフルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−酪酸エステル、ヒドロコルチゾン−17−吉草酸エステル、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−酪酸エステル、クロベタゾール−17−プロピオン酸エステル、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、および酢酸フルプレドニデン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、トリアムシノロンアセトニド、フルチカゾン、フロ酸エステル、非ステロイド系薬剤(サリチル酸誘導体、例えばアスピリン)などの抗炎症剤;パラアミノフェノール誘導体、すなわちアセトアミノフェン(acetominophen);インドールおよびインデン酢酸(インドメタシン、スリンダクおよびエトドラック)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナクおよびケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェンおよび誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸およびメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾンおよびオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、オーロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);分裂促進性または形態形成性の成長因子タンパク質、ペプチドまたは模倣薬;血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、TGF−β類を含む形質転換成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーおよびBMP−2、3、4、5、6、7、8などの骨形態形成性のタンパク質(BMP);インスリンおよびインスリン様成長因子(IGF)、肝細胞成長因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、ヘッジホッグタンパク質(SHHおよびIHH)、アクチビン、インヒビン、脱灰骨(DBM)および血小板由来成長因子(PDGF)、造血成長因子(G−CSF、CSF−1、GM−CSF、エリスロポエチン、インターロイキンファミリー(IL−1〜34)を含むサイトカインおよびリンホカイン)、インターフェロン、神経成長因子(NGF)、中和性アンタゴニストまたはアゴニスト抗体、成長因子受容体作動薬または拮抗薬、一酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド、転写因子、シグナル伝達カスケードメディエーター、ならびにその組合せが含まれる。
【0106】
抗生物質には、リンコマイシンファミリーの抗生物質(元々、streptomyces lincolnensisから回収されたクラスの抗生物質剤を指す);テトラサイクリンファミリーの抗生物質(元々、streptomyces aureofaciensから回収されたクラスの抗生物質剤を指す);スルホンアミドなどの硫黄系抗生物質等が含まれる。リンコマイシンファミリーの例示的な抗生物質には、リンコマイシン自体(6,8−ジデオキシ−6−[[(1−メチル−4−プロピル−2−ピロリジニル)−カルボニル]アミノ]−1−チオ−L−トレオ−α−D−ガラクト−オクトピラノシド)、クリンダマイシン、リンコマイシンの7−デオキシ、7−クロロ誘導体(例えば、7−クロロ−6,7,8−トリデオキシ−6−[[(1−メチル−4−プロピル−2−ピロリジニル)カルボニル]アミノ]−1−チオ−L−トレオ−α−D−ガラクト−オクトピラノシド)、ならびに薬理学的に許容されるその塩およびエステルが含まれる。テトラサイクリンファミリーの例示的な抗生物質には、テトラサイクリン自体(4−(ジメチルアミノ)−1,4,4α,5,5α,6,11,12α−オクタヒドロ−3,6,12,12α−ペンタヒドロキシ−6−メチル−1,11−ジオキソ−2−ナフタセンカルボキサミド)、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、メタサイクリンおよびドキシサイクリン、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩およびエステル、特に塩酸塩などの酸付加塩が含まれる。例示的な硫黄系抗生物質には、それに限定されるものではないが、スルホンアミド、スルファセタミド、スルファベンズアミド、スルファジアジン、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、ならびに薬理学的に許容されるその塩およびエステル、例えばスルファセタミドナトリウムが含まれる。抗菌剤および/または抗生物質には、エリスロマイシン、バシトラシン、ネオマイシン、ペニシリン、ポリミキシンB、テトラサイクリン、バイオマイシン、クロロマイセチンおよびストレプトマイシン、セファゾリン、アンピシリン、アザクタム、トブラマイシン、クリンダマイシンおよびゲンタマイシンなどの化合物がさらに含まれる。
【0107】
鎮痛剤には、リドカイン、ベンゾカインおよびマーカインなどの化合物が含まれる。
【0108】
本明細書で提供されるヒドロゲルは、生細胞を含むこともできる。例示的な生細胞には、幹細胞、実質幹細胞、血液由来の細胞および骨髄細胞が含まれる。
【0109】
好ましい一実施形態では、ヒドロゲルは、コルチコステロイドを含む。適切なコルチコステロイドの例には、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバル酸チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンフレトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、二酢酸トリアムシノロンなどのトリアムシノロン塩、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−酪酸エステル、ヒドロコルチゾン−17−吉草酸エステル、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−酪酸エステル、クロベタゾール−17−プロピオン酸エステル、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、およびフロ酸フルチカゾンが含まれる。
【0110】
本明細書で提供されるヒドロゲル製剤において使用するのに好ましい一化合物は、トリアムシノロン(11β,16α)−9−フルオロ−11,16,17,21−テトラヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン)または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物である。トリアムシノロンアセトニドの構造を以下に示す。
【0111】
【化1】
生物活性剤は、一般に、本明細書で提供されるヒドロゲルと混合され、それに懸濁され、または封入される。あるいは、生物活性剤はポリマーコンジュゲートの形態であってよく、またはヒドロゲルを調製するために使用される構成要素、例えば修飾ヒアルロン酸または架橋剤に、放出され得る形で共有結合していてもよい。
【0112】
ヒドロゲル
本明細書で提供されるヒドロゲルは、一般にゲルの形成に有効な条件下で、前述の修飾ヒアルロン酸または他の適切なポリマーを架橋剤(やはり前述の)と反応させることによって形成される。一般に、試薬および反応基の相対量は、反応条件と共に、最適な反応を提供するように調節される。ゲルの形成は、穏やかな制御条件下で実施される。好ましくは、得られたヒドロゲルは、修飾ヒアルロン酸および架橋剤の出発材料に含有される未反応官能基の組合せを20パーセント未満、より好ましくは修飾ヒアルロン酸および架橋剤の出発材料に含有される未反応官能基を5パーセント未満含有し、または理想的には検出可能な量の未反応ビニルスルホン基もしくはチオール基などの未反応官能基を本質的に含まない。得られたゲル材料におけるかかる低レベルの未反応官能基は、例えば関節にインビボ投与される場合に炎症促進性が低いゲル材料を提供する観点から有益である。特定の一実施形態では、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸とチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲルは、10パーセント未満の未反応チオール基およびビニルスルホン基を含有する。未反応官能基の数は、反応条件の注意深いモニタリング、反応物の比の調節、およびヒアルロン酸出発材料の修飾度に関する知識によって制御される。
【0113】
こうして形成されたヒドロゲルは、一般に、水に対して約0.5〜5.0パーセント、またはそれ以上の重量(wt/wt)パーセントのポリマーを含有する(POLY/HOH)。得られたヒドロゲルについて、水に対するポリマーの例示的な重量パーセントは、1つまたは複数の実施形態では、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5および5パーセントから選択される。
【0114】
本明細書で提供される軽度に架橋されているヒドロゲルの形成は、修飾されたヒアルロン酸出発材料における低レベルの修飾に少なくとも部分的に起因する。例えば、ジビニルスルホンとの反応によるヒアルロン酸の修飾度は、実施例6に示す通り、反応時間を適切に調節することによって制御することができる。例えば、約20%未満の修飾度を維持するために、周囲条件(例えば20〜25℃)における反応時間を一般に約3分維持すると、2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜20%ヒアルロン酸が形成される。反応は、好ましくはモル過剰のジビニルスルホン、または二官能性もしくはそれ以上の官能性のアクリレートもしくはメタクリレート試薬などの他の適切な修飾反応物を使用して実施される。実施例6の結果から分かる通り、また予測され得る通り、反応時間が短いと、修飾度の低い出発ポリマー、例えばヒアルロン酸が得られる。例えば周囲条件で非常に短い、すなわち約数秒の反応時間では、約4%置換されたビニルスルホン基を有するビニルスルホン修飾ヒアルロン酸が得られ、1分の反応時間では、8%のビニルスルホン置換ヒアルロン酸が得られた。例示的な反応時間および反応条件、ならびに得られたポリマーの得られた置換の程度については、表1を参照のこと。一実施形態では、反応条件は、約1%〜約10%の置換を有するビニルスルホン置換ヒアルロン酸を得るように調節される。関係する一実施形態では、修飾反応は、周囲条件で約10秒〜約120秒間実施される。修飾反応、例えばヒアルロン酸とジビニルスルホンの反応は、塩基条件下で、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などの水性塩基中で、または水溶性の他の任意の適切な塩基を使用して実施することができ、その後塩酸、硫酸、リン酸などの酸を添加することによって反応をクエンチする。一般に酸は、pHを約4〜6.5の範囲等に下方調節し、反応をクエンチするのに十分な時間および量で添加され、それによって親ポリマーの官能基の所望の修飾度が達成される。次いで生成物を、任意選択により、例えば透析によって精製することができ、任意選択により凍結乾燥などよって乾燥させることができる。
【0115】
次いでヒドロゲル前駆体組成物は、任意選択により、必要に応じて架橋剤の存在下で軽度に架橋される。例えば、前述のものなどの2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜20%ヒアルロン酸または2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸などのビニルスルホン修飾ヒアルロン酸を、架橋ヒドロゲルを形成するのに有効な反応条件下で、PEG−ジチオールなどのチオール官能化PEG試薬または前述の他の適切な架橋剤などの適切な架橋剤と反応させる。好ましい一実施形態では、架橋反応は、水溶液中、例えば生理条件下で実施される。一実施形態では、反応は、生理食塩水溶液中で実施される。例えば、実施例2、3、4および5を参照のこと。反応物の体積比は、得られるヒドロゲルの所望の特性に従って調節することができ、反応物の溶液の濃度、特定の分子量および反応物の構造等に応じて変わることになる。例えば、官能基と架橋剤の例示的な相対的モル比には、以下の約1〜2.5、または約1.25〜2.0、または約1.3〜約1.8が含まれ、例えば例示的な官能基は、ビニルスルホン修飾ヒアルロン酸に含有されるビニルスルホンであり、架橋剤の相対量は、PEG−ジチオールなどの架橋剤分子に含有されるチオール基などの反応基の数ではなく、架橋剤自体、例えば架橋剤分子を指す。あるいは、架橋剤は、修飾ヒアルロン酸溶液に固体として添加することができる。滅菌製剤が望ましい場合には、架橋剤は、添加の前に例えば電子線処理によって滅菌される。架橋反応は、一般に穏やかな反応条件下で、例えば約20℃〜約45℃の温度で、例えば以下の温度、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃または45℃のいずれか1つで実施される。修飾ヒアルロン酸および架橋剤反応物、ならびに他の任意の任意選択の構成要素である反応物の混合または反応の後、得られた組成物を、一般にゲルを形成するのに適した時間にわたって、例えばインキュベーター内で反応させることができる。反応物は、反応温度に応じて、一般に約8〜約36時間、または約10〜約24時間、または約12〜約18時間にわたって反応させることができる。
【0116】
架橋反応は、滅菌ヒドロゲルを提供するために滅菌条件下で、すなわち添付の実施例に一般に記載の滅菌反応物を使用して滅菌条件下で実施することができる。例えば、溶液のすべての構成要素を、反応前に滅菌濾過することによって、滅菌組成物を形成することができる。
【0117】
軽度に架橋されているさらなる例示的なヒドロゲルは、例えばCarb−S(商標)などのチオール修飾ヒアルロン酸材料を架橋することによって形成される。Carb−S(商標)は、ヒアルロン酸のカルボキシメチル化の後、カップリング剤の存在下で3,3’ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)、すなわちDTPHと反応させ、その後ジチオトレイトールなどの試薬を用いてジスルフィド基を還元することによって生成される。例えば、米国特許第US2008−002595号を参照のこと。さらなるチオール修飾ヒアルロン酸材料は、米国特許第US2009−0105093号に記載されている。先の刊行物に記載の例示的な材料は、チオールを含有するヒドラジド反応物との反応によって誘導体化されたヒアルロン酸である。ヒドロゲルは、米国特許第6,884,788号に記載のチオール修飾ヒアルロン酸材料から形成することもできる。好ましい一実施形態では、前述のチオール修飾ヒアルロン酸材料は、ヒアルロン酸ヒドロキシル基の約20%未満、またはさらにより好ましくは約10%未満が化学修飾されるようにヒアルロン酸出発材料の修飾度を低くすることを除き、記載の合成手法を使用して調製される。かかるチオール誘導体化ヒアルロン酸材料は、チオールの自己反応能力に起因して、軽度に自己架橋され得る。あるいは、軽度に架橋されているヒドロゲルは、PEG−アクリレートなどの架橋剤との反応によって形成することができる。
【0118】
1つまたは複数の特定の実施形態では、架橋ヒドロゲル組成物は、活性剤を含有する。好ましい種類の生物活性剤には、ステロイド、成長因子、抗増殖剤および抗生物質が含まれる。本発明のヒドロゲルへの組込みに特に有利な種類の活性剤は、コルチコステロイドである。例示的なコルチコステロイドには、それに限定されるものではないが、以下のトリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンフレトニドおよび二酢酸トリアムシノロンなどのトリアムシノロン塩、ならびにメチルプレドニゾロンが含まれる。一般に、得られたヒドロゲルは、生物活性剤の効力に応じて約0.01重量%〜約20重量%の生物活性剤を含有する。ヒドロゲルに含有される生物活性剤の例示的な量(総体的に湿潤ゲル重量に対する)は、例えば強力でない生物活性剤については約10重量%〜約20重量%であり、例えばトリアムシノロンアセトニドなどのより強力な生物活性剤については、生物活性剤は約0.01重量%〜約10重量%、または約0.01%〜約5%、または約0.01%〜約3%であり、または生物活性剤は約0.1〜約2%、または約0.1〜約1%である。特定の実施形態では、ヒドロゲルは、かかる生物活性剤をヒドロゲルに組み込むことによって、水溶性の低い生物活性剤を送達するために使用される。
【0119】
有利には、本発明のヒドロゲルは、穏やかな反応条件下で形成され、重合開始剤なしに形成することができる。さらに、外部エネルギー供給源の適用なしに、十分なゲル化が生じる。例えば、ゲル形成反応は、約20℃〜45℃の温度で、開始剤および反応促進剤なしに実施することができる。さらにゲル化、すなわちヒドロゲルの形成は、任意の小分子の化学的副生成物の放出なしに生じる。したがって、本明細書で提供されるヒドロゲルは、インビボ投与される際に潜在的に炎症促進反応をもたらし得る最小数の添加剤または汚染物質を含有する。
【0120】
滅菌ヒドロゲルは、例えば修飾ヒアルロン酸および架橋剤のそれぞれの水溶液を滅菌シリンジおよびまたは遠心管に入れた後、十分に混合することによって、滅菌条件下で形成することができる。一般に、材料がゲルを形成するまで、混合反応物(すなわち、修飾ヒアルロン酸および架橋剤)を、適切な温度(例えば約20℃〜45℃)に設定したインキュベーターに入れる。例えば、反応物の例示的な体積比を含むヒドロゲル製剤の代表的な調製に関する実施例2、18、21、22、23、24、25、27、28、29および30を参照のこと。
【0121】
一般に、水溶液または混合物の形態のさらなる非修飾ヒアルロン酸を、任意選択により、ゲル形成の前またはゲル形成の後にゲル前駆体製剤(例えばゲルスラリー)に添加して、ヒアルロン酸水溶液中に架橋ヒドロゲル粒子を含む組成物を提供することができる。例えば、実施例8を参照のこと。溶液中のヒアルロン酸(すなわち非修飾ヒアルロン酸)の平均分子量は、一般に、約750,000〜約1,200,000ダルトンまたはそれを超える範囲である。好ましい水溶液は、ヒアルロン酸の生理食塩水溶液であり、ヒドロゲルに添加されるヒアルロン酸の例示的な水溶液は、約0.3重量%〜約4重量%、または約0.5重量%〜約2重量%の濃度を有する。ある代表的な製剤は、以下の相対量の構成要素を含む。4mLのゲルスラリー((2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸/PEG−ジチオール)と2mLのヒアルロン酸、濃度20mg/mL。特に好ましい製剤は、4mLのゲルスラリー((2−(ビニルスルホニル)エトキシ)4%ヒアルロン酸/PEG−ジチオール)と2mLのヒアルロン酸を濃度20mg/mLで含む。一般に、得られる膨潤ゲル内の最終的なヒアルロン酸含量は、約0.05〜5パーセント(0.5mg/mL〜50mg/mL)である。好ましくは、得られる膨潤ゲル内の最終的なヒアルロン酸含量は、約0.1〜3パーセント、または約0.1〜1パーセント、または約0.5〜0.8%である。得られる膨潤ゲル内の例示的な最終的なヒアルロン酸含量は、例えば、以下のパーセンテージ、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0および5.0のいずれかに相当し得る。例えば、得られる組成物中のヒアルロン酸と架橋(例えば、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸/PEG−ジチオール)ヒドロゲル粒子の代表的な相対量(重量比)は、一般に約10:1、または約5:1、または約3:1、または約1:1の範囲に含まれる。得られる組成物は、任意選択により1つまたは複数の界面活性剤を含有することもできる。例示的な界面活性剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、Tween 80、ポリエチレングリコール(例えばPEG3350)等が含まれる。
【0122】
所望に応じて、生物活性剤は、架橋前に反応混合物に添加することができ、または形成後の架橋ゲルに添加することもできる。実施例9〜16は、ヒドロゲルの形成、ならびに生物活性剤であるトリアムシノロンアセトニドの組込みおよび代表的なヒドロゲル組成物からのその後の持続的な放出を実証するものである。あるいは、幹細胞、実質幹細胞、血液由来細胞および骨髄細胞などの生細胞を、対象となるヒドロゲルに組み込むこともできる。
【0123】
生物活性剤を伴うまたは伴わない対象となるヒドロゲルについて、ヒドロゲルは、前述の1つまたは複数のポリアニオン系多糖(PAS)溶液に分散することができる。ポリアニオン系多糖の非排他的な例には、例えば、ヒアルロン酸(HA)に加えてカルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルアミロース(CMA)、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン−6−硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパリン、ケラチン硫酸およびそれらの誘導体、ならびにその組合せが含まれる。かかるポリマーは当技術分野で公知であり、例えば米国特許第6,056,970号に記載されている。対象となるヒドロゲルが分散し得る他のポリマー溶液には、フィブリン、フィブリノゲン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ペプチド、タンパク質、ゼラチン、コラーゲンおよびポリ(エチレングリコール)が含まれる。先のポリマーの1つまたは複数の組合せを含有する溶液を使用して、対象となるヒドロゲル粒子を分散させることができる。ポリマー溶液は、少なくとも0.1mg/mLから、水または0.9%生理食塩水に最大限に溶解するまでの濃度範囲で調製することができる。前述の通り、ある好ましいポリマーは、約10mg/mL〜約25mg/mLの濃度範囲の約500,000〜3百万の分子量を有するヒアルロン酸である。ポリマー溶液とヒドロゲルの組合せは、パッケージされた最終的な組合せが滅菌されるように、無菌条件下で製造することができる。
【0124】
実施例8に記載の通り、対象となるヒドロゲルは、選択されたポリマー溶液と様々な比で混合することができる。混合される対象のヒドロゲルとポリマー溶液の体積比には、それに限定されるものではないが、約1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1が含まれ得る。混合される対象のヒドロゲルとポリマー溶液の好ましい体積比は、約3:1、2:1および1:1である。
【0125】
対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液のpHは、緩衝液、酸および塩基の添加によって改変することができる。対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液の好ましいpH範囲は、約5〜8、より好ましくは約6〜7.6である。
【0126】
対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液のイオン強度は、塩の添加によって改変することができる。対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液のイオン強度を改変するために使用される好ましい塩は、塩化ナトリウムである。対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液の好ましい最終的なイオン強度は、その対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液がおよそ等張になるように選択される。
【0127】
薬学的に許容される保存剤を、対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液に添加することもできる。これらには、安息香酸ナトリウムまたはベンジルアルコールなどの薬剤が含まれ得る。
【0128】
対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液は、特定の実施形態では、シリンジにパッケージされ得る。シリンジは、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン)もしくはガラス、または他の任意の薬学的に許容される材料から製造することができる。シリンジに含有される対象となるヒドロゲルおよび対象となるヒドロゲル/ポリマー溶液の分散液の体積は、0.5mL〜20mLであってよく、好ましい体積は、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mLおよび7mLである。
【0129】
得られたヒドロゲル材料は、約0.10〜3.0ミリメートルの大きさの粒子に処理することができ(例えば、実施例3および4参照)、または水性ゲルスラリーの形態であってもよい。例えばゲル化材料は、細片に分割して生理食塩水と混合し、膨潤させることができる。次いで、適切な大きさの粒子を、所望のふるいの大きさ、例えば約0.10〜3.0ミリメートルを有するメッシュを介して押し出すことによって、ゲル材料から形成することができる。得られた粒子は、水性媒体に入れるとゲルスラリーを形成する。一実施形態では、ヒドロゲルを関節内空間に注射することができるように、ゲルを、18〜21ゲージ針を伴う使用に適したシリンジにパッケージする。一般に、被験体の関節内空間に注射されるヒドロゲル組成物の体積は、約0.5〜約8mL、好ましくは約3〜6mL、または約4〜6mLである。
【0130】
添付の実施例に例示の通り、ヒドロゲルは、滅菌組成物として提供され得る。
【0131】
先および実施例に記載の通り、ヒドロゲルは、シリンジなどの封止容器(任意選択により通気口付きキャップでキャップすることができる)に入れて提供することができる。次いで、シリンジをホイル製の小袋などの容器に入れ、次いで封止することができる。小袋は、真空封止し、窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガスの下で封止し、または1つもしくは複数の真空/再充填サイクル後に封止することができ、再充填ガスは、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスである。1つまたは複数の真空/再充填サイクルの下で封止される小袋について、このサイクルは、小袋が最終的に真空または不活性ガスのいずれかで封止されるように調節することができる。小袋は、任意選択により乾燥剤(dessicant)および/または脱酸素剤を含有することができる。
【0132】
使用
本明細書に記載のゲル組成物は、市販の関節内補充薬と比較して、有利には軟骨への望ましくない副作用の低減を示し、ヒドロゲルが生物活性剤をさらに含む実施形態では、ヒドロゲルに組み込まれない当量の活性剤の投与と比較して、軟骨への望ましくない副作用の低減を示す。本明細書で提供されるゲル組成物は、他の有益な特徴の中でも、実施例17および図4〜8に例示の通り、炎症促進性が極度に低い。
【0133】
本明細書に記載のヒアルロン酸ポリマー組成物は、例えば胚発生、組織構成(tissue organization)、創傷治癒、血管新生および腫瘍発生に使用するための、注射可能なまたは埋込み式の製剤において使用することができる。D. D. AllisonおよびK. J. Grande−Allen、Tissue Engineering、第12巻、8番、2131〜2140頁(2006年)、G. D. Prestwich ら、Tissue Engineering、第12巻、8番、2171〜2180頁(2006年)、G. D. Prestwich ら、Tissue Engineering、第12巻、12番、3405〜3416頁(2006年)を参照のこと。トリアムシノロンアセトニドなどのコルチコステロイドを含むヒドロゲル組成物は、対象が経験する疼痛を緩和するのに有用である。治療有効量のヒドロゲル組成物を、関節の関節内空間に注射することは、例えば対象が経験する関節痛を持続的に緩和するのに有効となり得る。理想的には、測定可能な度合いの疼痛緩和は、注射後約1時間〜1週間以内に、またはより好ましくは注射後約1時間〜1日以内に、対象によって最初に経験される。一般にヒドロゲルの注射は、注射後約3カ月〜9カ月継続する疼痛の緩和度をもたらす。治療を受ける特定の対象および状態に応じて、ヒドロゲルの治療上有効な投与量体積は、一般に約0.5mL〜20mLであり、例示的な体積には1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mLおよび7mLが含まれる。
【0134】
例えば、任意選択により1つまたは複数の生物活性剤を含有する、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、接着性組成物として、例えば、出血予防、開口した創傷の被覆、および他の生物医学的適用を含む様々な適用に使用できる組織接着剤および封止剤として使用することができる。これらの組成物は、例えば、外科的に切開されたまたは外傷により破裂した組織への対処(apposing)、創傷などからの流血の遅延、再狭窄または凝血の予防、薬物送達、熱傷の包帯、ならびに生存組織の修復および再生の援助において使用することができる。本明細書で提供されるヒアルロン酸系ポリマー組成物は、ヒトなどの哺乳動物被験体の損傷を受けた器官または組織を補充し、またはその再生を誘発するために使用することができる。組成物は、対象(例えば哺乳動物被験体)に埋め込まれ、または含有される場合に、対象に有害な影響を及ぼすことなく分解または吸収され、あるいは対象に残存する。
【0135】
対象となる組成物は、組織の充填剤、皮膚の充填剤、増量剤、および塞栓性薬剤、ならびに軟骨の欠損/傷害を修復するための薬剤、ならびに骨の修復および/または成長を強化するための薬剤として使用することができる。
【0136】
対象となる組成物は、変形性関節症もしくは関節リウマチ、または痛風もしくはピロリン酸カルシウム沈着症などの他の炎症性関節炎の治療(例えば、関節の関節内空間への注射によって)、または外科手技後に形成され得る癒着の低減もしくは予防に使用することもできる。対象となる組成物は、本明細書で提供されるヒドロゲル材料にコルチコステロイドを組み込むことによって、コルチコステロイドの注射の際の軟骨への損傷を低減するのに有用であることが発見された。
【0137】
先の特定の一手段に関して、すなわちヒドロゲルが、それに組み込まれたコルチコステロイドを含み、該方法がヒドロゲルに封入されない当量のコルチコステロイドの投与時に生じる軟骨損傷よりも、軟骨損傷を低減するのに有効である場合、かかる軟骨損傷の低減は、ヤギの関節注射モデルにおいて注射後28日目の総Mankinスコアによって特徴付けられる。総Mankinスコアの決定についての説明に関する実施例34を参照のこと。軟骨への損傷の低減を評価するためのさらなる指標も利用可能であり、かかるパラメータおよび関連のデータも、実施例34に提供する。
【0138】
いくつかの利点は、以下の1つまたは複数を含む、本明細書で提供されるヒドロゲルへのステロイド粒子の封入/組込みに関連するものである。例えば、本発明のヒドロゲルへのステロイド粒子の捕捉は、ステロイド粒子の大部分と関節組織との直接接触を予防するのに有効である。さらに、本発明のヒドロゲルへのステロイド粒子の封入は、関節内の局所的なステロイド濃度を最大限にすると同時に、その全身濃度を最小限に抑えるのに有効である。さらに、本発明のヒドロゲル製剤へのステロイド粒子の捕捉は、ステロイド粒子が関節から早期にクリアランスされるのを保護するのに有効である。最後に、ヒドロゲルへのステロイドの封入によって、ヒドロゲルへの封入なしに得られるよりも低い総用量でステロイドの治療効率が得られると同時に、望ましくない局所性および全身性副作用が最小限に抑えられる。例えば、例示的なヒドロゲル組成物からの薬物の、経時的に制御された持続的な線形方式による線形放出を実証する図2、3および4と共に実施例14〜16を参照のこと。
【0139】
生物活性剤を含むヒドロゲル系組成物について、かかる組成物は、中でも変形性関節症、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎および慢性副鼻腔炎などの状態の治療のための送達系として使用することができる。かかる組成物は、皮膚の充填剤、軟骨の欠損/傷害を修復するための薬剤、ならびに骨の修復および/または成長を強化するための薬剤として使用することもできる。
【0140】
ここで、本願を特定の実施形態と共に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。それとは対照的に、本願は、すべての代替、修飾および等価物を特許請求の範囲に含まれるものとして包含する。したがって以下は、特定の実施形態を例示する目的で本願の実施を例示するものであり、その手順および概念的態様について有用であり、容易に理解される説明になると思われるものを提供するために提示される。
【実施例】
【0141】
以下の例は、本明細書で提供する化合物、組成物および方法の生成および評価方法を当業者に完全に開示し、説明するために記載するものであり、純粋に例示的なものであることを企図する。したがって実施例は、本発明者らが本発明としてみなす範囲を決して制限するものではない。反応条件、例えば構成要素の濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、ならびに純度、収率などの生成物の特徴を最適化するために使用され得る、他の反応パラメータおよび反応条件の数々の変動および組合せが存在する。それらは、本開示の範囲に含まれるとみなされる。
【0142】
(実施例1)
ビニルスルホン誘導体化ヒアルロン酸(HA−VS)の合成−低修飾度
【0143】
【化2】
ヒアルロン酸(HA)5g[9.4×104cps(水中3%)]を秤量して、1Lの丸底フラスコに入れた。滅菌濾過水500mLをHAに添加した。フラスコをロータリーエバポレーターに取り付け、20〜100rpmで回転するように設定した。すべてのHAが溶解するまで(約16〜18時間)、溶液を回転させた。次いでHA溶液(10mg/mL)を1Lのガラスビーカーに移した。オーバーヘッド撹拌機に接続した撹拌機用パドルを溶液に挿入し、溶液を効率的に撹拌することを確実にする撹拌速度に設定した。0.25NのNaOH溶液333mL(1NのNaOH83.2mLを脱イオン水249.8mLに添加した)を、撹拌しながらHA溶液に添加した。約1分後、ジビニルスルホン溶液150mL(ジビニルスルホン18mLを脱イオン水132mLに溶解した)を、撹拌溶液に急速に添加した。15秒後(ジビニルスルホン溶液の添加が完了してから測定した)、6NのHCl約14mLを急速に添加することによって、溶液のpHを5〜6に調節した。次いで、反応溶液を、タンジェンシャルフロー濾過システム(spectraporシステム、カートリッジP/N M6−100S−301−01P)を使用して透析した。総体積は、元の溶液の体積の11倍であった。精製ステップが完了したら、溶液を約14〜20mg/mLに濃縮した。ビニルスルホン官能化HA(HA−VS)を、TFFシステムから取り出し、プラスチック容器に入れ、次いでスクリュートップの蓋で閉じた。HA−VSの試料を取り出し、−80℃で凍結し、次いで凍結乾燥させた。乾燥させた試料を1H−NMR分析にかけた。
【0144】
HA−VSのビニルスルホン置換パーセンテージの決定
乾燥させた試料約15〜17mgを秤量して、風袋引きした2mLの試験管に入れた。試料をD2O1.5mLで再構成した。試料をNMR試験管に移した。試料の1H−NMRを得(スキャン256回)、6.3〜6.5ppm(ビニルスルホン残基からの2CH2=プロトンの2つのピーク)および1.5〜2.5ppm(HAのN−アセチル基からの3CH3−プロトンの一重線)領域に特異的なピークを有するスペクトルを印刷し、積分した。修飾(パーセント)を以下の通り算出する。
【0145】
【化3】
1H−NMRスペクトル(図1)によって、ヒアルロン酸のアセトアミドメチル基に対するビニルスルホンのピークの積分に基づくと、HAが約4%のビニルスルホンの置換レベルを有することが示された。
【0146】
HA−VSの試料を使用して乾燥重量を決定し、それを使用してHA−VS溶液の特異的濃度を決定した。HA−VS濃度は18mg/mLであった。
【0147】
(実施例2)
ビニルスルホン修飾ヒアルロン酸(HA−VS)およびPEG3400−ジチオールから調製されるゲルの合成
実施例1に記載の通り調製したHA−VS溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈した。HA−VS溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れた。HA−VS溶液を、0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れた。PEG−(SH)240.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(SH)2溶液[Laysan Bio Inc.、品番SH−PEG−SH−3400−1g]を調製した。PEG−(SH)2溶液を1mLの滅菌シリンジに移し、0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−VS10mLを、50mLの滅菌遠心管に移した。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μL(0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した)を、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。50mg/mLのPEG−(SH)2滅菌溶液380μL[PEG−(SH)219mg]をHA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。先のステップを、バイオフード内で実施して滅菌性を維持した。次いで、HA−VS/PEG−(SH)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れて、ゲルの形成を促進した。少なくとも16時間後、HA−VS/PEG−(SH)2溶液が架橋されて、ゲルが形成された。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出した。
【0148】
(実施例3)
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製−単回押出し
実施例2のHA−VS/PEG−(SH)2ゲルを、ガラス棒を使用して物理的に細片に分割した。ゲルを60mLの滅菌シリンジに移し、シリンジキャップでキャップをした。0.9%の滅菌NaCl40mLをゲルに添加した。プランジャーをシリンジバレルに挿入し、シリンジを逆にした。シリンジキャップを開口して任意の圧力を放出し、次いで閉じた。シリンジを数回逆にして、生理食塩水とゲルの細片が良好に混合するようにした。ゲルを終夜(少なくとも16時間)膨潤させた。
【0149】
23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級(rating):840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。この円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーをオートクレーブにかけた。シリンジのシリンジキャップを除去し、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。遠心管を、スクリュートップの蓋でキャップをした。得られた生成物は、わずかに粘性の粒子のスラリーであり、実際に粒子は沈殿せず、概して懸濁したままである。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0150】
(実施例4)
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製−二重押出し
実施例2のHA−VS/PEG−(SH)2ゲルを、ガラス棒を使用して物理的に細片に分割した。ゲルを60mLの滅菌シリンジに移し、シリンジキャップでキャップをした。0.9%の滅菌NaCl40mLをゲルに添加した。プランジャーをシリンジバレルに挿入し、シリンジを逆にした。シリンジキャップを開口して任意の圧力を放出し、次いで閉じた。シリンジを数回逆にして、生理食塩水とゲルの細片が良好に混合するようにした。ゲルを終夜(少なくとも16時間)膨潤させた。
【0151】
23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。この円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーをオートクレーブにかけた。シリンジのシリンジキャップを除去し、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。次いで、押し出したゲルを60mLの滅菌シリンジに入れ、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。遠心管を、スクリュートップの蓋でキャップをした。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0152】
(実施例5)
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーを搭載したシリンジの調製
調製したHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー(実施例3または実施例4から)5mLを、適用するシリンジキャップを有する10mLの滅菌ガラスシリンジ(B&D)に移した。滅菌ストッパーを、シリンジの最上部に挿入した。プランジャー棒をストッパーにねじ込んだ。シリンジを逆にし、ゲルスラリーがストッパーに達したら、シリンジキャップをわずかに緩め、シリンジ内の空気の大部分が除去されるまでプランジャーを押し下げた。シリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0153】
(実施例6)
ビニルスルホン誘導体化ヒアルロン酸の合成
異なる置換の程度を有するHA−VS組成物を、反応時間を延長したことを除き、実施例1に記載の方法を使用して調製した。反応時間を延長することによって、より高い置換の程度のビニルスルホンを得た。これらの反応の結果を、以下の表に示す。
【0154】
【表1】
(実施例7)
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルの合成
様々なレベルのビニルスルホン置換を有するHA−VS試料(実施例6)を使用して、実施例2に記載の方法および試薬比を用いてHA−VS/PEG−(SH)2ゲルを調製した。出発材料のそれぞれは、PEG−ジチオールとの反応時にゲルを形成した。
【0155】
(実施例8)
ヒアルロン酸を伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製
ヒアルロン酸2g[9.4×104cps(水中3%)]を秤量して、250mLの丸底フラスコに入れた。滅菌生理食塩水100mLを、フラスコに入れたヒアルロン酸に添加した。フラスコをロータリーエバポレーター(Buchi)に結合し、50rpmで少なくとも16時間回転させて、2%ヒアルロン酸溶液を形成した。以下の一連のステップを、バイオフード内で実施した。ヒアルロン酸溶液を、0.2umの滅菌フィルターを介して濾過した。HAVS/PEG−(SH)2ゲルスラリー(実施例3または4で調製した)を使用して、調製したHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーをヒアルロン酸と混合した一連の製剤を調製した。これらの製剤を調製するために使用したヒアルロン酸溶液およびHA−VS/PEG(SH)2ゲルスラリーの体積を、以下の表に示す。
【0156】
【表2】
先の表で同定したヒアルロン酸溶液およびHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの指示体積を、15mLの滅菌遠心管に添加した。試験管にキャップし、構成要素が十分に混合するまで上下逆にした。次いで各製剤を、シリンジキャップを有する10mLのガラスシリンジに移し、その後プランジャーを挿入し、過剰の空気を排除した。次いでシリンジキャップをきつく締めた。
【0157】
(実施例9)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルの合成
実施例1の通り調製したHA−VS溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈した。HA−VS溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れた。HA−VS溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れた。PEG3400−(SH)240.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(SH)2溶液を調製した。PEG−(SH)2溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−VS10mLを、50mLの滅菌遠心管に移した。トリアムシノロンアセトニド(Spectrum Chemicals、U.S.Pグレード、微粉化)100mgを、HAVS溶液に添加した。遠心管にキャップし、トリアムシノロンアセトニドがHA−VSと均一に混合するまで、溶液を上下逆にした。滅菌濾過した(0.2umの滅菌フィルター)0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。50mg/mLのPEG−(SH)2滅菌溶液380μLを、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。先のステップを、バイオフード内で実施した。次いでHA−VS/PEG−(SH)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れた。この段階で、HA−VS/PEG(SH)2溶液が架橋されて、ゲルが形成された。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出した。得られたゲルは、約0.2%のトリアムシノロンアセトニドを含有する。
【0158】
先の手順を、トリアムシノロンアセトニド(Spectrum Chemicals、U.S.Pグレード、微粉化)20mgをHA−VS溶液に添加したことを除き、やはり前述の通り実施した。
【0159】
(実施例10)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製:単回押出し
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例9)を、ガラス棒を使用して物理的に細片に分割した。ゲルを60mLの滅菌シリンジに移し、シリンジキャップでキャップをした。0.9%の滅菌NaCl40mLをゲルに添加した。プランジャーをシリンジバレルに挿入し、シリンジを逆にした。シリンジキャップを開口して任意の圧力を放出し、次いで閉じた。シリンジを数回逆にして、生理食塩水とゲルの細片が良好に混合するようにした。ゲルを終夜(少なくとも16時間)膨潤させた。
【0160】
23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。この円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーをオートクレーブにかけた。シリンジのシリンジキャップを除去し、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。遠心管を、スクリュートップの蓋でキャップをした。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0161】
(実施例11)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製:二重押出し
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例9)を、ガラス棒を使用して物理的に細片に分割した。ゲルを60mLの滅菌シリンジに移し、シリンジキャップでキャップをした。0.9%の滅菌NaCl40mLをゲルに添加した。プランジャーをシリンジバレルに挿入し、シリンジを逆にした。シリンジキャップを開口して任意の圧力を放出し、次いで閉じた。シリンジを数回逆にして、生理食塩水とゲルの細片が良好に混合するようにした。ゲルを終夜(少なくとも16時間)膨潤させた。
【0162】
23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。この円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーをオートクレーブにかけた。シリンジのシリンジキャップを除去し、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。次いで、押し出したゲルを60mLの滅菌シリンジに入れ、メッシュを入れたシリンジフィルターをシリンジと結合した。メッシュを介してゲルを押し出して、50mLの滅菌遠心管に入れた。遠心管を、スクリュートップの蓋でキャップをした。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0163】
(実施例12)
トリアムシノロンアセトニドゲルスラリーを入れたシリンジの調製
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー(実施例10または実施例11)5mLを、適用するシリンジキャップを有する10mLの滅菌ガラスシリンジ(B&D)に移した。滅菌ストッパーを、シリンジの最上部に挿入した。プランジャー棒をストッパーにねじ込んだ。シリンジを逆にし、ゲルスラリーがストッパーに達したら、シリンジキャップをわずかに緩め、シリンジ内の空気の大部分が除去されるまでプランジャーを押し下げた。シリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0164】
(実施例13)
ヒアルロン酸を伴うトリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの調製
ヒアルロン酸2g[9.4×104cps(水中3%)]を秤量して、250mLの丸底フラスコに入れた。滅菌生理食塩水100mLを、フラスコに入れたヒアルロン酸に添加した。フラスコをRotavap(Buchi)に結合し、50rpmで少なくとも16時間回転させて、2%ヒアルロン酸溶液を形成した。トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー(実施例10または11で調製した)を使用して、トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーをヒアルロン酸と混合した一連の製剤を調製した。これらの製剤を調製するために使用したヒアルロン酸溶液およびトリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG(SH)2ゲルスラリーの体積を、以下の表に示す。
【0165】
【表3】
先の表で同定したヒアルロン酸溶液およびトリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの指示体積を、15mLの滅菌遠心管に添加した。試験管にキャップし、構成要素が十分に混合するまで上下逆にした。次いで各製剤を、シリンジキャップを有する10mLのガラスシリンジに移し、その後プランジャーを挿入し、過剰の空気を排除した。次いでシリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。
【0166】
(実施例14)
トリアムシノロンアセトニドの放出試験のための試料の調製
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例11に従って調製した)1.5mLを、20mLのガラスシンチレーションバイアルに移した。ゲル化材料を入れたシンチレーションバイアルに、PBS15mL(pH7.4)をピペットで入れた。シンチレーションバイアルをスクリュー付きの蓋で閉じ、バイアルを、37℃のオーブンに入れたロッキングシェーカー(Barnstead International、Model M26125)上に置いた。
【0167】
(実施例15)
放出試験の緩衝液のサンプリング
トリアムシノロンアセトニドを搭載したゲルおよびPBS緩衝液(実施例14に記載)を入れたシンチレーションバイアルを、様々な時点で37℃のオーブンから取り出した。残りのゲルスラリーを、シンチレーションバイアルの底部に沈殿させた。スクリュー付きの蓋を除去し、セロロジカルピペットを使用してPBS緩衝液13mLを取り出し、50mLのプラスチック遠心管に移した。次いで、新しいPBS13ml(pH7.4)を、ゲルを含有するシンチレーションバイアルにピペットで入れた。
【0168】
(実施例16)
トリアムシノロンアセトニドを含有する放出媒体のHPLC分析
緩衝液試料(実施例15)13mLを、80:20のMeOH:H2Oで40mLに希釈した。試料をボルテックスし、約1mLをHPLCバイアルに移した。緩衝液試料のトリアムシノロンアセトニド含量を、以下のクロマトグラフィー条件を使用して決定した。
HPLC:Agilent 1100シリーズ
カラム:Zorbax SB−C18、5μ、4.6×160mm
カラム温度:30℃
流速:1.0mL/分
検出:UV239nm
実施時間:8分
注射体積:50μl
移動相:ACN中0.05%TFA:H2O中0.05%TFA、56:44
TAの保持時間:約3.3分 。
【0169】
緩衝液試料中のトリアムシノロンアセトニドの量を、ピーク面積をトリアムシノロンアセトニド濃度と相関させることによって較正曲線により定量化した。トリアムシノロンアセトニドの較正曲線用の試料を、メタノール中トリアムシノロンアセトニドの原液を用意し、次いでACN中0.05%TFA:H2O中0.05%TFA、56:44で連続希釈することによって調製した。先のクロマトグラフィー条件を使用してこれらの試料を分析し、得られたピーク面積を、トリアムシノロンアセトニド濃度に対してプロットした。放出(パーセント)を図2に示し、放出された蓄積質量を図3に示し、サンプリング点1つ当たりの放出量を図4に示す。
【0170】
試料を、月曜から金曜の24時間毎に取り出し、土曜/日曜にはサンプリングを実施しなかった。
【0171】
【表4】
図2に示す通り、本質的にすべての薬物が、12のサンプリング点によって放出された。薬物は、経時的に線形方式で制御された形で放出された。有利には、ゲル内に著しい量の残りの薬物が封入されずに、本質的にすべての薬物が放出された。さらに、最初に勢いよく薬物が放出されることなく、薬物が経時的にゆっくり持続方式で放出された。図3は同様に、複数のサンプリング点にわたって放出された薬物の蓄積(ミリグラム)を示す。図4に示す通り、ゲルから放出された薬物の量は、サンプリング点の間で本質的に一定であったが、このことは、薬物の経時的に制御された持続方式の線形放出を示すものである。
【0172】
(実施例17)
例示的なHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの関節内注射
HA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーの試料(実施例5で調製した)を、参照点を提供するためのさらなる試験材料2〜4と共に、骨が十分に成長した雌性ヤギの後膝関節(膝)に関節内注射した。使用したヤギモデルに関係するさらなる説明については、D. JacksonおよびT. Simon、Osteoarthritis and Cartilage、第14巻、12版、1248〜125頁も参照のこと。
試験材料1:HA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例5)
試験材料2:ビスチオール架橋剤で架橋したPEGジアクリレート
試験材料3:ゲルを形成するために架橋した、4個の腕を有するリシン官能化PEG
試験材料4:PEGジアクリレートから生成したゲル(材料をオートクレーブにかけた) 。
【0173】
試験材料2〜4の調製に関する実施例31〜33を参照のこと。すべての注射を厳密な無菌状態で実施した。ジアゼパム(0.1〜0.5mg/kg)およびケタミン(4.4〜7.5mg/kg)の静脈内注射を実施して、動物を麻酔した。各膝を、引出し、運動範囲、腫れ、体温、捻髪音、膝蓋骨トラッキングおよび外反/内反異常について身体検査した。
【0174】
すべての注射を、通常の無菌技術を利用して実施した。左および右の後膝関節を、注射のためにその領域をクリップで止めて準備し、次いでその領域をクロルヘキシジン(chlorohexidine)スクラブで清浄にした。動物を背臥位に置いた。右の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布した。
【0175】
標準の技術を使用して、各後膝関節に注射した。2インチ21ゲージの大きさの滅菌針を、前内側進入路から関節内空間に導入した。大腿骨内側顆の外側顆間のV字壁を感じたら、針をわずかに戻した。HA−VS/PEG(SH)2ゲルスラリー1.5mlを、右関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。
【0176】
苦痛および不快感の徴候を示す任意の動物について注射後にチェックを実施し、必要に応じて追加の鎮痛剤を投与した。すべての治療を、適切な試験文書作成により記録した。
【0177】
注射した動物を、全身麻酔剤導入のためにジアゼパム0.22mg/kgおよびケタミン10mg/kgからなる静脈内注射を用いて、最初の注射の24±1時間後に人道的に屠殺した。この後、心停止が確認されるまで、麻酔下の動物に過量の濃塩化カリウム(KCl)をIV投与した。
【0178】
膝関節の収集後、関節を開口し、表5に記載の通り、注射した後膝関節の全体的な評価を実施した。写真による文書作成は行わなかった。
【0179】
【表5】
さらに、表6に概説の通り、関節の半定量的類別(grading)を単一観測者によって実施した。
【0180】
【表6】
関節の全体的な総評価スコアは、呈色、充血および浮腫のスコアの合計とした(0〜8点)。図6を参照のこと。
【0181】
開口した関節から滑液を収集した後、総体積を記録した。体液を、粘度、透明性および色について全体的に評価し、表7の通り半定量的に類別した。血球計数器を用いて、総白血球を計数した。さらに、微分顕微鏡的分析のために滑液塗抹を生成した。個々にラベルを付した滑液(cryovial)として、残りの滑液を−80℃で凍結保存した。滑液塗抹を潜在的な将来分析のために保持した。
【0182】
【表7】
滑液の総スコアは、色、透明性および糸引き性のスコアの合計とした(0〜8点)。
【0183】
結果を図5〜8のグラフに示す。図5から分かる通り、本明細書に記載の特徴を有する例示的なゲルは、試験材料2〜4について観測された滑液白血球数よりも著しく少ない滑液白血球数を示した。実際、試験材料2〜4の白血球数は、試験材料1について観測された数の約5倍、9倍および8倍を超えていた。試験材料2〜4は、製薬上の使用へのそれらの適切性を表すインビトロ挙動(例えば、化学、ゲル特性、投与の容易性等)を示すが、これらの結果は、試験材料1およびそれに類似の材料が、ヤギモデルで調査した場合、比較できると思われる試験材料と比較して炎症促進性が著しく低い点に関して、明らかに優れていることを示すものである。驚くべきことに、すべての他の指標は、関節内補充療法および他の関係する使用への他の試験材料の適切性を提示した。
【0184】
注射したヤギの膝に関する絶対的滑液白血球数(絶対数=総体積×滑液白血球数)を実証する図6は、前述のことをさらに支持している。すなわち例示的な試験材料1は、絶対的滑液白血球数に基づくと、ヤギモデルにおいて試験材料2〜4よりも際立って低い炎症反応を示している。試験材料2〜4の値は、試験材料1の約4倍、12倍および9倍を超えており、これはヤギの膝において評価した場合、試験材料1が驚くほど著しく優れていることを示すものである。
【0185】
図7は、実施例17に記載の通り、1.5mlの注射の24時間後に評価した、試験材料の治療群に関する注射したヤギの膝の滑液白血球の特異的分布(各群当たりの平均)を表すグラフである。各試験材料について、多形核白血球(PMN)、リンパ球、単球および好酸球(Eos)の分布を示す。PMNおよびEosは、様々な急性慢性炎症に関与する重要な細胞である。試験材料1に関するPMNのパーセンテージ(リンパ球(lympocyte)、単球および好酸球に対する)は、他の試験材料よりも著しく低く(試験材料2〜4が70%以上であるのに対して約50%)、このことは、調査した他の材料と比較して、例示的な試験材料1の有利に低い炎症促進性をさらに示すものである。
【0186】
最後に図8は、それぞれ代表的な試験材料について注射したヤギの膝の滑液の平均総スコア、関節組織の平均総スコア、ならびに滑液および関節組織の組合せのスコア(表6)を示す。
全体的総スコア=滑液スコア+関節の総スコア。
滑液または関節の総スコアの最大スコアは8であり、0は正常である。
全体的総スコアの最大スコアは16であり、0は正常である。
【0187】
図8に示した通り、試験材料1について特筆すべき結果が示されている。実際、前述の通り視覚的な検査によって決定したすべてのスコアについて、試験材料1は、本質的に炎症反応を引き起こさないことが示され、滑液、関節組織およびその組合せのスコアは、正常であるか、またはほぼ正常であるとみなされる。それとは対照的に、代表的な試験材料2〜4は、共に正常でない滑液および関節の視覚的特徴をもたらし、試験材料の投与によって生じる膝関節の炎症を示した。これらの結果は、インビボでの治療上の適用に対する適切性に関して、例示的な試験材料1の驚くべき有益な特性を実証するものである。
【0188】
(実施例18)
HA−VS/PEG−(SH)4ゲルの合成
実施例1の通り調製したHA−VS溶液を、脱イオン水を使用して濃度12.6mg/mLに希釈する。HA−VS溶液18mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。HA−VS溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG(SH)4であるC(CH2O(CH2CH2O)nCH2CH2SH)4[Laysan Bio Inc.、Mw10,000、品番4armPEG−SH−10kD−1g](電子線処理済み)200mgを、滅菌濾過した1M生理食塩水中0.17Mリン酸ナトリウム2mL(pH7.4)に添加する。溶解したら、PEG−(SH)4溶液をHA−VS溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、HA−VS/PEG−(SH)4溶液を室温でゲル化する。ゲル化材料を、実施例3および4に記載のものと同様にして、ゲルスラリーに変換することができる。ゲルを、実施例9、10および11に記載の手順と類似の手順を使用して、トリアムシノロンアセトニドの存在下で調製することができる。ヒアルロン酸を、実施例8に記載の手順と類似の手順で、ゲル製剤に添加することができる。ヒアルロン酸を、実施例13に記載の手順と類似の手順で、トリアムシノロンアセトニドゲル製剤に添加することができる。
【0189】
(実施例19)
カルボキシメチル−ヒアルロン酸(CM−HAまたはCARBYLAN(商標))の合成
NaOH水溶液(200ml、45%w/v)を500mLのビーカーに添加し、周囲温度で撹拌した(磁気撹拌機)。ヒアルロン酸粉末(20g)[Novozymes、MW0.8〜1.0百万]を、500mlのビーカーに添加した。2時間静置した後、ヒアルロン酸混合物を、イソプロパノール1,500mlを入れテフロン(登録商標)でコーティングした磁気撹拌棒を備えた4Lのビーカーに移し、次いでクロロ酢酸20gのイソプロパノール500ml溶液を、磁気撹拌器を用いて添加した。周囲温度で1時間撹拌した後、撹拌を停止し、材料を約10〜20分間かけて沈殿させた。できる限り多くの上清を、混合物から吸引した。蒸留水1,000mlを、得られた混合物に添加した。溶解したら、6.0NのHCl(HC1)を添加することによって、溶液のpHをpH約7.0に調節した。次いで、DI水を使用して溶液を2Lにする。DI水10Lを交換緩衝液として使用して、溶液をタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって精製した。
【0190】
さらに、カルボキシメチルヒアルロン酸の構造、合成および特徴付けは、国際公開第2005/056608号(図5および実施例3)に記載されており、その関係部分は、それら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0191】
(実施例20)
カルボキシメチル−ヒアルロン酸−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド(CM−HA−DTPHまたはCARBYLAN(商標)−S)の合成
3,3’−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)(DTP)を、過去に記載の通り合成した(Vercruysse, K. P.;Marecak, D. M.;Marecek, J. F.;Prestwich, G. D.「Synthesis and in vitro degradation of new polyvalent hydrazide cross−linked hydrogels of hyaluronic acid.」Bioconjugate Chem.(1997年)8巻:686〜694頁;Shu, X. Z.;Liu, Y.;Luo, Y.;Roberts, M. C.;Prestwich, G. D.「Disulfide crosslinked hyaluronan hydrogels.」Biomacromolecules(2002年)3巻:1304〜1311頁)。DTP(16.7g、0.07mol)を、先で調製したCarbylan(商標)溶液に添加し、HClまたはNaOH溶液のいずれかを添加することによって、溶液のpHを4.75に調節した。次いで、1−エチル−3[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)[Sigma−Aldrich]0.384gを添加し、磁気撹拌器を持続的に用いて室温で6.0NのHClを添加することによって、溶液のpHをpH4.75に維持した。
【0192】
4時間後、ジチオトレイトール(DTT)[Biovectra]50gを添加し、濃NaOH溶液を添加することによって、溶液のpHを8.5に調節した。次いで磁気撹拌器によって室温で12〜24時間撹拌した後、6.0NのHClを添加することによって、反応混合物のpHをpH3.0に調節した。酸性にした溶液を精製し、1mMのHCl20L、pH3.0を使用して、タンジェンシャル流体濾過(TFF)によって濃縮した。次いで、溶液を約1Lに濃縮した。
【0193】
カルボキシメチル−ヒアルロン酸−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)の構造、合成および特徴付けは、国際公開第2005/056608号(図5および実施例4)に記載されており、その関係部分は、それら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0194】
(実施例21)
CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲルの合成
実施例20で調製したCM−HA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度17.5mg/mLに希釈する。CM−HA−DTPH溶液30mLを、60mLの滅菌シリンジに入れる。CM−HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)2600mgを0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液15mL(pH7.4)に溶解することによって、40mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液[Laysan Bio Inc.、MW3400、品番ACRL−PEG−ACRL3400−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)2溶液を、20mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過する。滅菌濾過したCM−HADTPH20mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。PEG−(アクリレート)2溶液10mLを、CM−HADTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液を室温でゲル化する。
【0195】
(実施例22)
CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲルスラリー
CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲル(実施例21で調製した)を、それぞれ実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換する。
【0196】
(実施例23)
トリアムシノロンアセトニドを含有するCM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲル
実施例20で調製したCM−HA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈する。CM−HA−DTPH溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。CM−HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)240.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液[Laysan Bio Inc.、MW3400、品番ACRL−PEG−ACRL3400−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)2溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過する。滅菌濾過したCM−HADTPH10mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。トリアムシノロンアセトニド(Spectrum Chemicals、U.S.Pグレード、微粉化)20mgを、CM−HA−DTPH溶液に添加した。遠心管にキャップし、トリアムシノロンアセトニドがCM−HA−DTPHと均一に混合するまで、溶液を上下逆にした。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。滅菌した50mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液380μL[PEG−(アクリレート)219mg]を、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、トリアムシノロンアセトニドを含有するCM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れる。この段階で、トリアムシノロンアセトニドを含有するCM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液が架橋されて、ゲルが形成される。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出す。
【0197】
ゲルの合成を、それぞれトリアムシノロンアセトニド33mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、375mg、400mgおよび500mgを使用して反復する。
【0198】
ゲルを、実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換した。
【0199】
(実施例24)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルスラリーの合成
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−VS−PEG−(SH)2ゲルを、各ゲルを調製するためにそれぞれトリアムシノロンアセトニド33mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、375mg、400mgおよび500mgを使用したことを除き、実施例9に記載の手順と類似の手順を使用して調製する。
【0200】
ゲルを、実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換した。
【0201】
(実施例25)
CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4ゲルの合成
実施例20で調製したCM−HA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈する。CM−HA−DTPH溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。CM−HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)440.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(アクリレート)4溶液[Laysan Bio Inc.、MW10,000、品番4arm−PEG−ACRL10K−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)4溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したCM−HADTPH10mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。滅菌した50mg/mLのPEG−(アクリレート)4溶液560μL[PEG−(アクリレート)428mg]を、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れる。この段階で、CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4溶液が架橋されて、ゲルが形成される。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出す。ゲル化材料を、実施例3および4に記載のものと同様にして、ゲルスラリーに変換することができる。ゲルを、実施例9、10および11に記載の手順と類似の手順を使用して、トリアムシノロンアセトニドの存在下で調製することができる。ヒアルロン酸を、実施例8に記載の手順と類似の手順で、ゲル製剤に添加することができる。ヒアルロン酸を、実施例13に記載の手順と類似の手順で、トリアムシノロンアセトニドゲル製剤に添加することができる。
【0202】
(実施例26)
ヒアルロン酸−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド(HA−DTPH)の合成
3,3’−ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)(DTP)を、過去に記載の通り合成した(Vercruysse, K. P.;Marecak, D. M.;Marecek, J. F.;Prestwich, G. D.「Synthesis and in vitro degradation of new polyvalent hydrazide cross−linked hydrogels of hyaluronic acid.」Bioconjugate Chem.(1997年)8巻:686〜694頁;Shu, X. Z.;Liu, Y.;Luo, Y.;Roberts, M. C.;Prestwich, G. D.「Disulfide crosslinked hyaluronan hydrogels.」Biomacromolecules(2002年)3巻:1304〜1311頁)。DTP(16.7g、0.07mol)を、先で調製したヒアルロン酸(DI水1000mLに溶解したヒアルロン酸20g[Mw0.8〜1.0百万])溶液に添加し、HClまたはNaOH溶液のいずれかを添加することによって、溶液のpHを4.75に調節した。次いで、1−エチル−3[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)[Sigma−Aldrich]0.384gを添加し、磁気撹拌器を持続的に用いて室温で6.0NのHClを添加することによって、溶液のpHをpH4.75に維持した。4時間後、ジチオトレイトール(DTT)[Biovectra]50gを添加し、濃NaOH溶液を添加することによって、溶液のpHを8.5に調節した。次いで磁気撹拌器によって室温で12〜24時間撹拌した後、6.0NのHClを添加することによって、反応混合物のpHをpH3.0に調節した。酸性にした溶液を精製し、1mMのHCl20L、pH3.0を使用して、タンジェンシャル流体濾過(TFF)によって濃縮した。次いで、溶液を約1Lに濃縮した。
【0203】
(実施例27)
HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲルの合成
実施例26で調製したHA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈する。HA−DTPH溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)240.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液[Laysan Bio Inc.、MW3400、品番ACRL−PEG−ACRL3400−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)2溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過する。滅菌濾過したHA−DTPH10mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。滅菌した50mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液380μL[PEG−(アクリレート)219mg]を、HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れる。この段階で、HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液が架橋されて、ゲルが形成される。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出す。
【0204】
(実施例28)
HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲルスラリー
HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲル(実施例27で調製した)を、それぞれ実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換する。
【0205】
(実施例29)
トリアムシノロンアセトニドを含有するHA−DTPH/PEG−(アクリレート)2ゲル
実施例20で調製したCM−HA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度17.5mg/mLに希釈する。CM−HA−DTPH溶液30mLを、60mLの滅菌シリンジに入れる。CM−HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。滅菌したトリアムシノロンアセトニド粉末100mgを添加し、得られた混合物を十分に混合する。PEG−(アクリレート)2600mgを0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液15mL(pH7.4)に溶解することによって、40mg/mLのPEG−(アクリレート)2溶液[Laysan Bio Inc.、MW3400、品番ACRL−PEG−ACRL3400−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)2溶液を、20mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過する。滅菌濾過したCM−HADTPH20mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。10mLのPEG−(アクリレート)2溶液を、CM−HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、CM−HA−DTPH/PEG−(アクリレート)2溶液を室温でゲル化する。
【0206】
ゲルの合成を、それぞれトリアムシノロンアセトニド33mg、50mg、75mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、375mg、400mgおよび500mgを使用して反復する。
【0207】
ゲルを、実施例3および4に記載の手順と類似の手順を使用して、ゲルスラリーに変換する。
【0208】
(実施例30)
HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4ゲルの合成
実施例20で調製したHA−DTPHの溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈する。HA−DTPH溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れる。HA−DTPH溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、50mLの滅菌遠心管に入れる。PEG−(アクリレート)440.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(アクリレート)4溶液[Laysan Bio Inc.、MW10,000、品番4arm−PEG−ACRL10K−1g]を調製する。PEG−(アクリレート)4溶液を、1mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−DTPH10mLを、50mLの滅菌遠心管に移す。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250μLを、HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。滅菌した50mg/mLのPEG−(アクリレート)4溶液560μL[PEG−(アクリレート)428mg]を、HA−DTPH溶液に添加する。得られた溶液を十分に混合する。次いで、HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れる。この段階で、HA−DTPH/PEG−(アクリレート)4溶液が架橋されて、ゲルが形成される。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出す。ゲル化材料を、実施例3および4に記載のものと同様にして、ゲルスラリーに変換することができる。ゲルを、実施例9、10および11に記載の手順と類似の手順を使用して、トリアムシノロンアセトニドの存在下で調製することができる。ヒアルロン酸を、実施例8に記載の手順と類似の手順で、ゲル製剤に添加することができる。ヒアルロン酸を、実施例13に記載の手順と類似の手順で、トリアムシノロンアセトニドゲル製剤に添加することができる。
【0209】
(実施例31)
PEG−ジアクリレートゲル(試験材料4)の調製
ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート[PEG−DA](Laysan Bio、品番ACRL−PEG−ACRL−3400−1g)1.466gを秤量して、125mLの滅菌ボトルに入れた。滅菌生理食塩水22mLをPEG−DAに添加した。溶解したら、0.2umのシリンジフィルターを介してPEG−DA/NaClを濾過して、消毒したエルレンマイヤーフラスコに入れた。0.150M炭酸塩緩衝液、pH8.2を、0.2umのシリンジフィルターを介して濾過し、この滅菌溶液1mLをPEG−DA溶液に添加した。フラスコをゴムのセプタムでキャップし、窒素を10分間発泡させることによって溶液を脱気した。0.2umフィルターをガスラインに結合して、空気が滅菌されるようにする。セプタムの蓋を備えた焼結(scintered)ガラスバイアルにアスコルビン酸ナトリウム1.2gを添加することによって、400mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム溶液を調製した。DI水3mLをバイアルに添加した。溶解したら、溶液を、0.2umのシリンジフィルターを介して濾過して、15mlの滅菌遠心管に入れた。滅菌濾過した400mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム0.8mLを、PEG−DA溶液に添加した。滅菌濾過した400mg/mLの過硫酸ナトリウム溶液0.8を、PEG−DA溶液に添加した。溶液を旋回することによって混合した。フラスコに赤色ゴムセプタム(septa)でキャップし、窒素を15分間発泡させることによって溶液を脱気した。0.2umフィルターをガスラインに結合して、使用する窒素によって溶液が脱気されるようにした。溶液を37℃で少なくとも18時間置いて、ゲルを形成させた。ゲルを30mLのシリンジに移した。23mmのレザーパンチを使用して、23mmのメッシュの円板をメッシュシートから切り出した。メッシュの円板を、除去される支持ふるいを有する25mmのポリカーボネートシリンジフィルターに入れた。ゲルを、メッシュ(1mm×1mmの目)を介して押し出して、250mLのビーカーに入れた。滅菌生理食塩水100mLを、押し出したゲル25mlに添加した。40分後に生理食塩水の上清を捨て、さらなる滅菌生理食塩水125mLを添加した。これを3回反復した。最後の洗浄後、膨潤ゲル45mlを生理食塩水45mLに添加し、スラリーを穏やかに混合した。1NのNaOHおよび1NのHClの組合せを使用して、得られた溶液のpHを7.0〜7.4に調節した。このゲルスラリー1.5mLを、5mLのガラスシリンジに充填した。シリンジキャップを使用してシリンジを閉じた。次いで、シリンジを250℃で15分間オートクレーブにかけた。
【0210】
(実施例32)
PEG−ジアクリレート/ビスチオールゲル(試験材料2)の調製
ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート[PEG−DA](Laysan Bio、品番ACRL−PEG−ACRL−3400−1g)630mgを秤量して、20mLのガラスシンチレーションバイアルに入れた。DI水6mLを添加した。溶解したら、0.2umのシリンジフィルターを介して溶液を濾過した。N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン(Sigma、A4929)48mgを、ガラスシンチレーションバイアルに入れたテトラヒドロフラン(THF)6mLに溶解した。溶解したら、この溶液をPEG−DA溶液と混合した。バイアルにセプタムのスクリューでキャップし、窒素を10分間発泡させることによって溶液を脱気した。400mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム溶液50uL(DI水を使用して調製し、0.2umのシリンジフィルターを介して濾過した)をPEG−DA溶液に添加した。400mg/mLの過硫酸ナトリウム溶液50uL(DI水を使用して調製し、0.2umのシリンジフィルターを介して濾過した)をPEG−DA溶液に添加した。セプタムで蓋をし、窒素を10分間発泡させることによって溶液を脱気した。溶液を60℃に設定したオーブンに入れた。溶液は15分後にゲルに変化した。ゲルをオーブンから取り出し、室温に冷却した。ゲルを30mLのシリンジに移した。23mmのレザーパンチを使用して、23mmのメッシュの円板をメッシュシートから切り出した。メッシュの円板を、除去される支持ふるいを有する25mmのポリカーボネートシリンジフィルターに入れた。ゲルを、メッシュ(約0.8mm×約0.8mmの目)を介して押し出して、400mLのビーカーに入れた。DI水200mLを、押し出したゲルに添加した。45分後に上清を捨て、さらなるDI水200mLを添加した。これを4回反復した。次いで、0.9%生理食塩水を使用して洗浄ステップを3回反復した。上清液体を除去し、メッシュを介して残りのゲルを再度押し出した(前述の通り)。このゲルスラリー1.5mLを、5mLのガラスシリンジに充填した。シリンジキャップを使用してシリンジを閉じた。次いで、シリンジを250℃で15分間オートクレーブにかけた。
【0211】
(実施例33)
PEG−(LYS)4ゲル(試験材料3)の調製
PEG−(lys)4[末端ヒドロキシル基がgutarice無水物で、次いでリシンで官能化されている、4個の腕を有するポリエチレングリコール(Mw10,000)]1.0gを秤量して、60mLのガラスボトルに入れた。ジクロロメタン34mLをPEG−(lys)4に添加した。ジイソプロピルカルボジイミド(Fluka、38370)333uLを、溶液に添加した。溶液は約30分後にゲルに変化した。ゲル化を少なくとも18時間継続させた。ゲルを30mLのシリンジに移した。23mmのレザーパンチを使用して、23mmのメッシュの円板をメッシュシートから切り出した。メッシュの円板を、除去される支持ふるいを有する25mmのポリカーボネートシリンジフィルターに入れた。ゲルを、メッシュ(約0.38mm×約0.38mmの目)を介して押し出して、400mLのビーカーに入れた。ゲル33mLをアセトン330mLで洗浄した。30分後にアセトンを除去した。洗浄過程を4回反復した。次いで、ゲルを真空下で乾燥させた(真空下で約18時間)。乾燥させたゲル771mgを生理食塩水52mLに添加し、ゲルを5時間膨潤させた。次いで、ゲルをメッシュ(約0.38mm×約0.38mmの目)にかけた。このゲルスラリー1.5mLを、5mLのガラスシリンジに充填した。シリンジキャップを使用してシリンジを閉じた。次いで、シリンジを250℃で15分間オートクレーブにかけた。
【0212】
(実施例34)
インビトロ試験:コルチコステロイドを含有する架橋HA−VS−PEG−(SH)2ヒドロゲルの関節内注射
ビニルスルホン修飾ヒアルロン酸とPEG−ジチオール(HA−VS−PEG−(SH)2)との反応によって調製した、コルチコステロイドであるトリアムシノロンアセトニドを含有する軽度に架橋されているヒドロゲルを、雌性ヤギの後膝関節の関節内空間に注射した。形態学的、滑液および組織学的調査を実施して、かかる注射の局所性および全身性作用を評価した。試験の詳細を以下に示す。
【0213】
A.試験材料
試験材料1.HA−VS−PEG−(SH)2(薬物なしの架橋HA系ヒドロゲル)を、以下の通り調製した。
【0214】
実施例1に記載の通り調製したHA−VS溶液を、脱イオン水を使用して濃度14mg/mLに希釈した。HA−VS溶液11mLを、20mLの滅菌シリンジに入れた。HA−VS溶液を、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、20mLの滅菌シリンジに入れた。PEG−(SH)2 40.1mgを脱イオン水0.802mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(SH)2溶液を調製した。PEG−(SH)2溶液を3mLの滅菌シリンジに移し、0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−VS10mLを、50mLの滅菌遠心管に移した。0.5Mリン酸ナトリウム溶液250uLを、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。50mg/mLのPEG−(SH)2滅菌溶液380mLを、HA−VS溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。次いで、HA−VS/PEG−(SH)2溶液を、37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れた。この段階で、HA−VS/PEG−(SH)2溶液が架橋されて、ゲルが形成された。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出した。
【0215】
試験材料2.HA−VS−PEG−(SH)2−トリアムシノロンアセトニド(「HA−VS−PEG(SH)2−TA」)を、以下の通り調製した。
【0216】
トリアムシノロンアセトニド100.2mg(Sicor、U.S.Pグレード、微粉化)を、20mLのシンチレーションバイアルに入れた脱イオン水2mLと混合した。20分間超音波処理した後、材料を250°Fで15分間オートクレーブにかけた。実施例1の通り調製した濃度18.3mg/mLのHA−VS溶液9mLを、20mLの滅菌シリンジに入れた。HA−VS溶液を、0.2μmの滅菌シリンジフィルターを介して濾過して、10mLの滅菌シリンジに入れた。PEG−(SH)235mgを脱イオン水0.7mLに溶解することによって、50mg/mLのPEG−(SH)2溶液を調製した。PEG(SH)2溶液を3mLの滅菌シリンジに移し、0.2umの滅菌シリンジフィルターを介して濾過した。滅菌濾過したHA−VS7.6mLを、トリアムシノロンアセトニド溶液に移した。脱イオン水370μlおよび0.5Mリン酸ナトリウム溶液250uLを、HA−VSおよびトリアムシノロンアセトニドを入れたバイアルに添加した。得られた溶液を十分に混合した。滅菌した50mg/mLのPEG−(SH)2溶液380μLを、HA−VS/トリアムシノロンアセトニド溶液に添加した。得られた溶液を十分に混合した。次いで、HAVS/トリアムシノロンアセトニド/PEG−(SH)2溶液を37℃のインキュベーターに少なくとも16時間入れた。この段階で、HA−VS−PEG−(SH)2−TA溶液が架橋されて、ゲルが形成された。次いで、ゲル化材料をインキュベーターから取り出した。
【0217】
試験材料3.トリアムシノロンアセトニド、2mg/ml(Kenalog−10;10mg/mLのトリアムシノロンアセトニドを生理食塩水で2mg/mLに希釈した)
試験材料4.トリアムシノロンアセトニド、8mg/ml(Kenalog−40;40mg/mLのトリアムシノロンアセトニドを生理食塩水で8mg/mLに希釈した)
対照.生理食塩水、0.9%塩化ナトリウム
すべての試験材料を、使用前に室温で保存した。各試験材料または対照材料について、1.5mlの投与量を、それぞれ個々の関節内注射のために調製した。
【0218】
B.動物
骨が十分に成長した合計24匹の雌性ヤギを、この試験で使用した。ヤギは、承認されたUSDAの供給源から得た。動物は、試験の開始時に体重63〜97ポンドであった。
【0219】
承認されたUSDAの供給源からヤギを得、ヤギは、この試験を行う前にヤギ関節炎脳炎(CAE)であり、ヨーネ病の陰性であることが決定付けられた。各動物は、試験を行う前に資格を有する獣医によって全身的な健康状態の評価を与えられた(姿勢、呼吸の容易さ、ならびに下痢および鼻汁がないことを視覚的に観測した)。動物を、疾患または跛行の任意の証拠について調査した。試験における許容性は、疾患がなく臨床的に良好であり、後膝関節の優先的な使用による病歴がないことを条件とした。ヤギを、施設が決定した適切な期間に合わせて調整した。動物飼育条件は、実験棟物に関する関係法令に従った。ヤギを、注射後に大型の室内ラン(囲い)で維持した。ヤギは常に自由に活動することができた。
【0220】
すべての動物に、1日当たり小型反芻動物用の食餌約2ポンドと柔らかい干し草を与えた。水道水を自由に摂取させた。麻酔剤投与の約12〜24時間前には食餌の提供を止め、注射の約12時間前には水の提供を止めた。
【0221】
動物を、全身的な健康状態について試験過程を通して毎日観測した。動物が術後の合併症または疾患の他の徴候、疼痛またはストレスの任意の徴候を示した場合には、適切な措置を取った。また、動物が損傷し、罹患し、または瀕死になる予定外の事象が生じた場合には、現在の獣医学的業務に従ってケアを行った。
【0222】
C.治療
試験設計は以下の通りであった。
【0223】
【表8】
体重、関節周縁および運動範囲の測定値を、各動物について注射の前(1日目)および屠殺直前(14日目または28日目)にすべての動物から得た。
【0224】
基本的な注射手順は、全対象について同一とした。すべての注射を厳密な無菌状態で実施した。ジアゼパム(0.1〜0.5mg/kg)およびケタミン(4.4〜7.5mg/kg)の静脈内注射を実施して、動物を麻酔した。各膝を、引出し、運動範囲、腫れ、体温、捻髪音、膝蓋骨トラッキングおよび外反/内反異常について身体検査した。
【0225】
すべての注射を、通常の無菌技術を利用して実施した。左および右の後膝関節を、注射のためにその領域をクリップで止めて準備し、次いでその領域をクロルヘキシジンスクラブで清浄にした。動物を背臥位に置いた。右の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布した。
【0226】
標準の技術を使用して、各後膝関節に注射した。2インチ21ゲージの大きさの滅菌針を、前内側進入路から関節内空間に導入した。大腿骨内側顆の外側顆間のV字壁を感じたら、針をわずかに戻した。適切な試験材料1.5mlを、右関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。この直後、左の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布し、右の後膝関節について前述したものと同様にして、対照材料1.5mlを左の後膝関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。
【0227】
苦痛および不快感の徴候を示す任意の動物について注射後にチェックを実施し、必要に応じて追加の鎮痛剤を投与した。すべての治療を、適切な試験文書作成により記録した。
【0228】
D.分析
採血:各動物から試験開始の直前、ならびに注射の5時間後および1、4、7、14および28日目に採血し、残りの動物のそれぞれから1、4、7、14および28日目に採血した。CBCおよび血液化学パネルを、各時点において実施した。
【0229】
剖検:動物を、全身麻酔剤導入のためにジアゼパム0.22mg/kgおよびケタミン10mg/kgからなる静脈内注射を用いて、最初の注射後14日目または28日目に人道的に屠殺した。この後、心停止が確認されるまで、麻酔下の動物に過量の濃塩化カリウム(KCl)をIV投与した。
【0230】
全体的な形態学的観測:膝関節の収集後、関節を開口し、表2に記載の通り、注射した後膝関節の全体的な評価を実施した。
【0231】
【表9】
さらに、表3に概説の通り、関節の半定量的類別を単一観測者によって実施した。
【0232】
【表10】
関節の全体的な総評価スコアは、呈色、充血および浮腫のスコアの合計とした(0〜8点)。
【0233】
滑液の評価
開口した関節から滑液を収集した後、総体積を記録した。体液を、粘度、透明性および色について全体的に評価し、表11の通り半定量的に類別した。血球計数器を用いて、総白血球を計数した。さらに、微分顕微鏡的分析のために滑液塗抹を生成した。個々にラベルを付した滑液として、任意の残りの滑液を−80℃で凍結保存した。滑液塗抹を潜在的な将来分析のために保持した。
【0234】
【表11】
滑液の総スコアは、色、透明性および糸引き性のスコアの合計である(0〜8点)。
【0235】
組織学的評価
解剖およびその後の全体的な関節表面の評価の直後、大腿骨内側顆(MFC)から各関節の矢状(sagital)切片を切り取った。これらの切片を、10%中和緩衝ホルマリンに個々に入れた。固定した組織を、処理のために翌日配達によりPremier Laboratoriesに発送した。右および左のMFC切片を、標準の組織学的技術を使用して処理し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにサフラニンO(SAF−O)と、ファストグリーンの対比染色で染色した。MFC切片のスライドを、表12に記載の通り、変形性関節症についてMankin採点システムによって評価した。
【0236】
【表12】
E.結果
様々な製剤で治療した関節の軟骨試料についてのMankin採点システムの結果を、表13a〜hおよび図11に示す。図9(治療後14日目)および図10(治療後28日目)は、様々な製剤で治療した関節の軟骨試料について、それぞれ治療後14日目および28日目のサフラニンO染色スコアを示す。
【0237】
【表13a】
【0238】
【表13b】
【0239】
【表13c】
【0240】
【表13d】
【0241】
【表13e】
【0242】
【表13f】
【0243】
【表13g】
【0244】
【表13h】
28日目の軟骨では、HA−VS−PEG−(SH)2ゲルの改変型Mankinスコアは、その対照と比較して差異がなかった。群5または6と比較して、群7および8の改変型MankinスコアのサフラニンO染色度部分の減少率はわずかに増大した。14日目〜28日目では、トリアムシノロンアセトニド単独で治療した群の両方(群7および8)の改変型Mankinスコアが増加した。これらのスコアのかかる経時的な増加は、HA−VS−PEG−(SH)2ゲルで治療した群5またはHA−VS−PEG−(SH)2−TAゲルで治療した群6については観測されない。
【0245】
この試験の結果は、HA−VS−PEG−(SH)21.5mlを単独で、または2mg/mlのトリアムシノロンアセトニドと組み合わせてHA−VS−PEG−(SH)2−TAとしてヤギの膝関節に関節内注射した28日後に、局所性または全身性作用が生じていないことを示している。HA−VS−PEG−(SH)2ゲルへのトリアムシノロンアセトニドの添加の軟骨に対する効果は、当用量またはそれを超える用量のトリアムシノロンアセトニド単独の注射の効果には満たなかった。
【0246】
サフラニンOによるグリコサミノグリカンに特異的な染色は、14日目および28日目の時点で、HA−VS−PEG−(SH)2中2mg/mL(3mg)で製剤化したトリアムシノロンアセトニドの軟骨に対する効果が、2mg/mL(3mg)および8mg/mL(12mg)の両方のボーラス用量のトリアムシノロンアセトニドよりも低いことを実証した。
【0247】
図12および13は、注射後14日目(図12)および28日目(図13)のサフラニンO染色による代表的な大腿骨内側顆組織像(40×)を示す。図は、ヒドロゲルに組み込まれたトリアムシノロンアセトニドで治療した関節の軟骨試料について、関節に直接注射した(すなわち、ヒドロゲルに組み込まない)当用量のトリアムシノロンアセトニドで治療した軟骨試料よりも多くのサフラニンO染色が見られることを示す。
【0248】
(実施例35)
押出し力の測定
HA−VS/PEG−(SH)2/HA生成物(実施例5、実施例41)およびトリアムシノロンアセトニドを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/HA(実施例38)を押し出すのに必要な力を、Chatillon電動式フォース試験器(Chatillon DFE−025デジタルフォースゲージを備えたChatillon LTCM−6電動式試験器、Ametec TCI Division)を使用して測定した。10mLのシリンジを保持した固定具を、電動式試験器のベースプレートに結合して、フォースゲージがシリンジのプランジャー棒の真上に位置するようにした。フォース試験器のスイッチを入れ、回転速度制御ダイアルを「3」に調節することによって、移動速度を1分当たり3インチに設定した。電動式試験器のアームを、その最上点に移動させた。試験する製剤を入れた10mLのガラスシリンジの端部キャップを除去し、キャップを外したその端部の先端に21ゲージ針を結合した。シリンジをシリンジホルダーに入れ、フォースゲージがシリンジプランジャー棒に軽く触れるまで、電動式試験器のアームをゆっくり下げた。16mLの試験管を、21ゲージ針の端部の下に置いた。最大力を記録するようにフォースゲージを設定した。フォースゲージを0に設定した。次いで、電動式試験器のトグルスイッチを押して、シリンジのプランジャーを押し下げ、21ゲージ針を介してシリンジの内容物を押し出した。シリンジストッパーがシリンジの底部に達する直前に、電動式試験器を停止させた。フォースゲージスクリーンに表示された最大押出し力を記録した。試験した様々な製剤の結果を、以下に示す。
【0249】
【表14】
(実施例36)
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2の押出し力の経時的安定性
HA−VS/PEG−(SH)2/HA生成物(実施例5)を押し出すのに必要な力を、Chatillon電動式フォース試験器(Chatillon DFE−025デジタルフォースゲージを備えたChatillon LTCM−6電動式試験器、Ametec TCI Division)を使用して、時間関数として測定した。生成物を生成した後と、次いで最初のその測定の1カ月後および3カ月後に、押出し力を測定した。試料は、3カ月間室温で保存した。押出し力を、以下の通り各試料について測定した。10mLのシリンジを保持した固定具を、電動式試験器のベースプレートに結合して、フォースゲージがシリンジのプランジャー棒の真上に位置するようにした。フォース試験器のスイッチを入れ、回転速度制御ダイアルを「3」に調節することによって、移動速度を1分当たり3インチに設定した。電動式試験器のアームを、その最上点に移動させた。試験する製剤を入れた10mLのガラスシリンジの端部キャップを除去し、キャップを外したその端部の先端に21ゲージ針を結合した。シリンジをシリンジホルダーに入れ、フォースゲージがシリンジプランジャー棒に軽く触れるまで、電動式試験器のアームをゆっくり下げた。16mLの試験管を、21ゲージ針の端部の下に置いた。最大力を記録するようにフォースゲージを設定した。フォースゲージを0に設定した。次いで、電動式試験器のトグルスイッチを押して、シリンジのプランジャーを押し下げ、21ゲージ針を介してシリンジの内容物を押し出した。シリンジストッパーがシリンジの底部に達する直前に、電動式試験器を停止させた。フォースゲージスクリーンに表示された最大押出し力を記録した。Lot NB30:16の結果を以下に示す。これらの結果は、21ゲージ針を介して生成物を押し出すのに必要な力に、3カ月にわたって実質的な変化がないことを示す。
【0250】
【表15】
(実施例37)
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TAゲルの調製
滅菌トリアムシノロンアセトニド170.8mg、341.3mg、511.7mgおよび682.7mgを秤量して、別個の125mLの滅菌プラスチックボトル4本に入れ、それらにそれぞれTA10mg、TA20mg、TA30mgおよびTA40mgのラベルを付した。TAを入れた各ボトルを秤の上で風袋引きし、滅菌濾過した水中14mg/mLのHA−VS(0.2um滅菌フィルター、PVDF膜を介して濾過した)14.98g、14.99g、14.99gおよび15.01gを、4本のボトルのそれぞれにTA10mgから40mgの順で添加した。得られた溶液が視覚的に均一になるまで、TA粉末およびHA−VS溶液を混合した。滅菌濾過した1Mリン酸ナトリウム(0.2um滅菌フィルターによる)0.375mL、pH7.4を、ボトルのそれぞれに添加し、得られた混合物を十分に混合した。50mg/mLのPEG−ジチオール3350[PEG(SH)2](0.2um滅菌フィルターを介して滅菌濾過した)0.543mLを各容器に添加し、十分に混合した。先のステップを、バイオフード内で実施した。混合物を、37℃のオーブンに入れて終夜置いた。製剤をオーブンから取り出し、容器の外部を70/30のIPA/水で拭き、次いでバイオフード内に移した。各ゲルを滅菌したヘラを使用して粉砕した。0.9%生理食塩水中7.83mg/mLのHA(0.2um滅菌フィルター、PVDF膜を介して濾過した)86.23g、86.25g、86.40gおよび86.23gを、それぞれTA10mg、20mg、30mgおよび40mgのラベルを付した容器に添加した。各混合物を、室温で3時間膨潤させた。次いで、各混合物を、フィルターの筐体に入れた0.85umのメッシュに通過させた[23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーを、オートクレーブにかけた]。次いで、メッシュにかけた収集した混合物を、0.85umのメッシュに再度通過させた。次いで、収集した混合物をプラスチック容器内で保存した。
【0251】
(実施例38)
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TAゲルのパッケージング
次いで、実施例37の各製剤の一定分量6mLを、シリンジキャップを有する10mLのガラスシリンジ(BD Hypakガラスシリンジ、P/N47262119)に入れた。プランジャー棒を滅菌ストッパー(BD、P/N47318319)の後部にねじ込んだ後、ストッパー/プランジャーをシリンジの首部に挿入した。シリンジを逆にして、シリンジキャップをわずかに開口した。過剰の空気が排除されるまでプランジャーを押し下げた。次いでシリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。すべての生成物をパッケージするまで、この過程を反復した。
【0252】
(実施例39)
粒径の決定−脱イオン水による洗浄
2.36mm(USA標準試験用ふるい番号8)、1.4mm(USA標準試験用ふるい番号14)、1mm(USA標準試験用ふるい番号18)、0.85mm(USA標準試験用ふるい番号20)、0.6mm(USA標準試験用ふるい番号30)、0.425mm(USA標準試験用ふるい番号40)、0.25mm(USA標準試験用ふるい番号60)および0.150mm(USA標準試験用ふるい番号100)の鋼製ふるいを、DI水で洗浄し、Kimwipesを使用して水を拭き取った。各ふるいの重量を測定した後、これらのふるいを、底部に最小(100番)を置き、最上部に最大(8番)を並べて重ねた。HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TA製剤(実施例37)100mLを、最上部のふるいにゆっくり注いだ。試料の液体構成要素の大部分が最上部のふるいを通過したら、最上部のふるいに脱イオン水約50mLをゆっくり添加して、そのふるいに保持されたゲル構成要素をすすいだ。液体構成要素がふるいを通過したら、そのふるいを積み重ねたふるいから除去した。各ふるいを洗浄し、積み重ねたふるいから除去するまで、この過程を反復した。各ふるいに残った過剰の水滴を、紙タオルを使用して拭き取った。各ふるいの総重量(ふるいと収集されたゲル)を測定した。各ふるいに収集されたゲル粒子の重量を、ふるいの総重量から最初のふるいの重量を引くことによって算出した。各ふるいに収集されたゲルのパーセンテージを、特定のふるいに収集されたゲルの重量を測定し、次いですべてのふるいに収集されたゲルの総重量で割ることによって算出した。
【0253】
【表16】
(実施例40)
粒径の決定−生理食塩水による洗浄
2.36mm(USA標準試験用ふるい番号8)、1.4mm(USA標準試験用ふるい番号14)、1mm(USA標準試験用ふるい番号18)、0.85mm(USA標準試験用ふるい番号20)、0.6mm(USA標準試験用ふるい番号30)、0.425mm(USA標準試験用ふるい番号40)、0.25mm(USA標準試験用ふるい番号60)および0.150mm(USA標準試験用ふるい番号100)の鋼製ふるいを、DI水で洗浄し、Kimwipesを使用して水を拭き取った。各ふるいの重量を測定した後、これらのふるいを、底部に最小(100番)を置き、最上部に最大(8番)を並べて重ねた。HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TA(TA10)製剤(実施例37)100mLを、最上部のふるいにゆっくり注いだ。試料の液体構成要素の大部分が最上部のふるいを通過したら、最上部のふるいに0.9%生理食塩水約50mLをゆっくり添加して、そのふるいに保持されたゲル構成要素をすすいだ。液体構成要素がふるいを通過したら、そのふるいを積み重ねたふるいから除去した。各ふるいを洗浄し、積み重ねたふるいから除去するまで、この過程を反復した。各ふるいに残った過剰の生理食塩水の水滴を、紙タオルを使用して拭き取った。各ふるいの総重量(ふるいと収集されたゲル)を測定した。各ふるいに収集されたゲル粒子の重量を、ふるいの総重量から最初のふるいの重量を引くことによって算出した。各ふるいに収集されたゲルのパーセンテージを、特定のふるいに収集されたゲルの重量を測定し、次いですべてのふるいに収集されたゲルの総重量で割ることによって算出した。
【0254】
【表17】
(実施例41)
ヒアルロン酸を伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー−HA膨潤
125mLの滅菌ボトル3本を秤の上で別個に風袋引きし、水中14mg/mLのHA−VS(0.2um滅菌フィルター、PVDF膜を介して濾過した)14.97g、14.95gおよび15.00gを、3本のボトルのそれぞれに添加した。滅菌濾過した1Mリン酸ナトリウム(0.2um滅菌フィルターを介して滅菌濾過した)0.375mL、pH7.4を、ボトルのそれぞれに添加し、十分に混合した。50mg/mLのPEG(SH)2(0.2um滅菌フィルターを介して滅菌濾過した)0.543mLを各容器に添加し、十分に混合した。先のステップを、バイオフード内で実施した。混合物を、37℃のオーブンに入れて終夜置いた。製剤をオーブンから取り出し、容器の外部を70/30のIPA/水で拭き、次いでバイオフード内に移した。各ゲルを滅菌したヘラを使用して粉砕した。次いで、0.9%生理食塩水中7.83mg/mLのHA(0.2um滅菌フィルター、PVDF膜を介して濾過した)86.40g、86.21gおよび86.31gを、容器に添加した。ゲルを、室温で3時間膨潤させた。次いで、各混合物を、フィルターの筐体に入れた0.85umのメッシュに通過させた[23mmのレザーパンチを使用して、直径23mmのポリエステルメッシュの円板(McMaster Carr、カタログ番号9218T13、メッシュの大きさ:20.3×20.3、四角形/矩形の大きさ:0.0331’’、ミクロン等級:840ミクロン、開口面積パーセンテージ:46、糸の直径:0.0157’’)を切り出した。円板を25mmのシリンジフィルターホルダー(Cole Palmer、カタログ番号EW−29550−42)に挿入し、フィルターホルダーを閉じた。メッシュを入れたフィルターホルダーを、オートクレーブにかけた]。次いで、メッシュにかけた収集した混合物を、0.85umのメッシュに再度通過させた。次いで、収集した混合物をプラスチック容器内で保存した。
【0255】
(実施例42)
ヒアルロン酸を伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリーのパッケージング
次いで、実施例41の各製剤の一定分量6mLを、シリンジキャップを有する10mLのガラスシリンジ(BD Hypakガラスシリンジ、P/N47262119)に入れた。プランジャー棒を滅菌ストッパー(BD、P/N47318319)の後部にねじ込んだ後、ストッパー/プランジャーをシリンジの首部に挿入した。シリンジを逆にして、シリンジキャップをわずかに開口した。過剰の空気が排除されるまでプランジャーを押し下げた。次いでシリンジキャップをきつく締めた。先のステップを、バイオフード内で実施した。すべての生成物をパッケージするまで、この過程を反復した。
【0256】
(実施例43)
粒径の決定−生理食塩水による洗浄
2.36mm(USA標準試験用ふるい番号8)、1.4mm(USA標準試験用ふるい番号14)、1mm(USA標準試験用ふるい番号18)、0.85mm(USA標準試験用ふるい番号20)、0.6mm(USA標準試験用ふるい番号30)、0.425mm(USA標準試験用ふるい番号40)、0.25mm(USA標準試験用ふるい番号60)および0.150mm(USA標準試験用ふるい番号100)の鋼製ふるいを、DI水で洗浄し、Kimwipesを使用して水を拭き取った。各ふるいの重量を測定した後、これらのふるいを、底部に最小(100番)を置き、最上部に最大(8番)を並べて重ねた。ヒアルロン酸を伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲルスラリー製剤(実施例41)100mLを、最上部のふるいにゆっくり注いだ。試料の液体構成要素の大部分が最上部のふるいを通過したら、最上部のふるいに0.9%生理食塩水約50mLをゆっくり添加して、そのふるいに保持されたゲル構成要素をすすいだ。液体構成要素がふるいを通過したら、そのふるいを積み重ねたふるいから除去した。各ふるいを洗浄し、積み重ねたふるいから除去するまで、この過程を反復した。各ふるいに残った過剰の生理食塩水の水滴を、紙タオルを使用して拭き取った。各ふるいの総重量(ふるいと収集されたゲル)を測定した。各ふるいに収集されたゲル粒子の重量を、ふるいの総重量から最初のふるいの重量を引くことによって算出した。各ふるいに収集されたゲルのパーセンテージを、特定のふるいに収集されたゲルの重量を測定し、次いですべてのふるいに収集されたゲルの総重量で割ることによって算出した。
【0257】
【表18】
(実施例44)
滅菌性およびエンドトキシン試験
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2ゲル(実施例42、実施例5)およびHAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2/TAゲル(実施例37、TA10)を、滅菌性およびエンドトキシンについて、WuXi AppTecによってそれぞれプロトコル番号BS210CBY.203およびBE215CBY.203を使用して試験した。すべての試料が滅菌されており、<0.5EU/mLのエンドトキシンレベルを有していた。
【0258】
(実施例45)
HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2のインビボ生体適合性試験
以下のインビボ試験を実施して、試験材料のインビボ生体適合性を、市販で利用可能な関節内補充薬生成物に対してヤギにおいて調査した。
【0259】
試験に使用した材料:
試験材料:Hydros−HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2[Lot NB51:119]
対照材料:Synvisc−市販の関節内補充薬生成物 。
【0260】
骨が十分に成長した合計6匹の雌性ヤギを、この試験で使用した。ヤギは、承認されたUSDAの供給源から得た。動物は、試験の開始時に体重65〜99ポンドであった。ヤギは、この試験を行う前にヤギ関節炎脳炎(CAE)であり、ヨーネ病の陰性であることが決定付けられた。各動物は、試験を行う前に資格を有する獣医によって全身的な健康状態の評価を与えられた(姿勢、呼吸の容易さ、ならびに下痢および鼻汁がないことを視覚的に観測した)。動物を、疾患または跛行の任意の証拠について調査した。試験における許容性は、疾患がなく臨床的に良好であり、後膝関節の優先的な使用による病歴がないことを条件とした。ヤギを、施設が決定した適切な期間に合わせて調整した。動物飼育条件は、実験棟物に関する関係法令、すなわち動物保護法、公法99〜198で改正された公法89〜544、連邦官報52:16、米国農務省−動植物検疫所(USDA−APHIS)、1985年、およびPublic Health Service Policy on Humane Care of Laboratory Animals、Office for Protection Against Research Risks/National Institutes of Health (OPRR/NIH)、1986年9月に従った。ヤギを、注射後に大型の室内ラン(囲い)で維持した。ヤギは常に自由に活動することができた。すべての動物に、1日当たり小型反芻動物用の食餌約2ポンドと柔らかい干し草を与えた。水道水を自由に摂取させた。麻酔剤投与の約12〜24時間前には食餌の提供を止め、注射の約12時間前には水の提供を止めた。固有の耳のタグによって、各動物を同定した。
【0261】
治療
試験を以下の通り設計した。
【0262】
【表19】
基本的な注射手順は、全対象について同一とした。すべての注射を厳密な無菌状態で実施した。動物に、ジアゼパム(0.1〜0.5mg/kg)およびケタミン(4.4〜7.5mg/kg)の静脈内注射を実施して麻酔した。各膝を、引出し、運動範囲、腫れ、体温、捻髪音、膝蓋骨トラッキングおよび外反/内反異常について身体検査した。すべての注射を、通常の無菌技術を利用して実施した。左および右の後膝関節を、注射のためにその領域をクリップで止めて準備し、次いでその領域をクロルヘキシジンスクラブで清浄にした。動物を背臥位に置いた。右の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布した。
【0263】
標準の技術を使用して、各後膝関節に注射した。2インチ21ゲージの大きさの滅菌針を、前内側進入路から関節内空間に導入した。大腿骨内側顆の外側顆間のV字壁を感じたら、針をわずかに戻した。試験材料1.5mlを群1Aの右関節に、または対照材料1.5mlを群1Bの右関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。この直後、左の後膝関節を、クロルヘキシジンスクラブと70%イソプロピルアルコールで交互に3回清浄にし、ヨウ素溶液を塗布し、右の後膝関節について前述したものと同様にして、対照材料1.5mlを群1Aの左の後膝関節に、または試験材料1.5mlを群1Bの左の後膝関節に注射した。注射針を除去し、注射部位に圧力をかけて維持した。次いで、注射した後膝関節を、全運動範囲にわたって20回回転させた。
【0264】
苦痛および不快感の徴候を示す任意の動物について注射後にチェックを実施し、必要に応じて追加の鎮痛剤を投与した。すべての治療を、適切な試験文書作成により記録した。
【0265】
動物を、全身麻酔剤導入のためにジアゼパム0.22mg/kgおよびケタミン10mg/kgからなる静脈内注射を用いて、最初の注射の24±1時間後に人道的に屠殺した。この後、心停止が確認されるまで、麻酔下の動物に過量の濃塩化カリウム(KCl)をIV投与した。
【0266】
分析
全体的な形態学的観測
膝関節の収集後、関節を開口し、表20に記載の通り、注射した後膝関節の全体的な評価を実施した。写真による文書作成を実施した。変形性の関節変化は評価しなかった。
【0267】
【表20】
さらに、表21に概説の通り、関節の半定量的類別を単一観測者によって実施した。
【0268】
【表21】
関節の全体的な総評価スコアは、呈色、充血および浮腫のスコアの合計とした(0〜8点)。
【0269】
滑液の評価
開口した関節から滑液を収集した後、総体積を記録した。体液を、粘度、透明性および色について全体的に評価し、表22の通り半定量的に類別した。血球計数器を用いて、総白血球を計数した。さらに、微分顕微鏡的分析のために滑液塗抹を生成した。個々にラベルを付した滑液として、残りの滑液を−80℃で凍結保存した。滑液塗抹を潜在的な将来分析のために保持した。
【0270】
【表22】
滑液の総スコアは、色、透明性および糸引き性のスコアの合計である(0〜8点)。
【0271】
結果
以下の表は、図14と共に、HAを伴うHA−VS/PEG−(SH)2が、ヤギモデルにおいて24時間後の関節と生体適合性があることを示している。
【0272】
【表23】
色:S=淡黄色(0)、Y=黄色(2)、P=ピンク色(1)、R=赤色(2)、B=血液色(3)
透明性:C=透明(0)、H=わずかに濁っている(1)、D=濁っている(2)
糸引き性(粘度):N=正常(0)、A=異常(1)、W=水っぽい(2)
TM=試験材料 。
【0273】
【表24】
前述の実施形態に対して本発明の広範な概念から逸脱することなく変更を加え得ることを当業者は理解されよう。したがって本発明は、開示の特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲に含まれる改変を包含することを企図すると理解されたい。前述の要素の、あらゆる可能なその変形形態としての任意の組合せは、本明細書で別段指定されない限り、または状況と明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸であって、そのヒドロキシル基の10%以下が、ジビニルスルホンとの反応によって誘導体化されている、ヒアルロン酸。
【請求項2】
2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に誘導体化されたヒドロキシル基を1〜10%有する、請求項1に記載のヒアルロン酸(「(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸」)。
【請求項3】
ヒドロキシル基が、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%から選択される度合いまで2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に変換されている、請求項2に記載のヒアルロン酸。
【請求項4】
ヒドロキシル基が二糖反復単位1個当たり約4〜5%の度合いまで2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に変換されている、請求項2に記載のヒアルロン酸。
【請求項5】
約700ダルトン〜約3百万ダルトンの平均分子量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のヒアルロン酸。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のヒアルロン酸と、2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲル。
【請求項7】
前記チオール架橋剤が2個〜8個のチオール基を有する、請求項6に記載のヒドロゲル。
【請求項8】
前記チオール架橋剤が、2、3、4、5、6、7および8個から選択されるいくつかのチオール基を有する、請求項6に記載のヒドロゲル。
【請求項9】
前記チオール架橋剤が、チオール官能化ポリエチレングリコールである、請求項6に記載のヒドロゲル。
【請求項10】
前記チオール官能化ポリエチレングリコールが、約250〜約20,000ダルトンの分子量を有する、請求項9に記載のヒドロゲル。
【請求項11】
前記チオール官能化ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコールジチオール(PEGジチオール)である、請求項10に記載のヒドロゲル。
【請求項12】
前記チオール官能化ポリエチレングリコールが、グリセロール、グリセロールダイマー(3,3’−オキシジプロパン−1,2−ジオール)トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、およびヘキサグリセロールから選択されるポリオール核を有する、請求項9に記載のヒドロゲル。
【請求項13】
前記チオール官能化ポリエチレングリコールが、4個の腕を有し、ペンタエリスリトール核を有する、請求項12に記載のヒドロゲル。
【請求項14】
10%未満の未反応チオールおよび10%未満の未反応ビニルスルホン基を含む、請求項6から13のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項15】
水に対して約0.5〜5.0パーセントの範囲の重量(wt/wt)パーセンテージのポリマーを含む、請求項6から14のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項16】
生物活性剤を含む、請求項6から15のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項17】
ヒアルロン酸水溶液中に、請求項6から15のいずれか一項に記載のヒドロゲルの粒子を含む組成物。
【請求項18】
前記ヒドロゲル粒子が、約0.10〜3.0ミリメートルの範囲の大きさを有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
水性スラリーの形態での、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
前記水溶液が生理食塩水である、請求項17から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
滅菌された、請求項17から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
生物活性剤をさらに含む、請求項17から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記生物活性剤がコルチコステロイドである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記コルチコステロイドがトリアムシノロンアセトニドである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
生細胞を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
シリンジにパッケージされた、請求項17から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
シリンジにパッケージされた、請求項6から16のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項28】
21ゲージ針を介して押し出すことができる、請求項26に記載の組成物または請求項27に記載のヒドロゲル。
【請求項29】
被験体の関節の関節内空間に投与するための、請求項6から16のいずれか一項に記載のヒドロゲルの使用。
【請求項30】
被験体の関節の関節内空間に投与するための、請求項17から25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項31】
急性または慢性炎症を治療するための、請求項29または請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記急性または慢性炎症が、変形性関節症、関節リウマチ、他の炎症性関節炎、および反復使用に関連する、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
哺乳動物被験体の骨、歯、神経、軟骨、血管、軟組織または他の組織の上またはそれらの中に注射または移植するための、請求項6から16のいずれか一項に記載のヒドロゲルの使用。
【請求項34】
哺乳動物被験体の骨、歯、神経、軟骨、血管、軟組織または他の組織の上またはそれらの中に注射または移植するための、請求項17から25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項35】
ヒアルロン酸の二糖反復単位に対して約10%以下のヒドロキシル基をジビニルスルホンと反応させて(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を形成するのに有効な反応条件下で、ヒアルロン酸をジビニルスルホンと反応させるステップを含む、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を調製する方法。
【請求項36】
ヒアルロン酸をモル過剰のジビニルスルホンと反応させるステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記反応ステップが、周囲条件で実施される、請求項35または請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記反応ステップが、10秒〜約120秒間実施される、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記反応ステップが、水性塩基中で実施される、請求項35から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
酸を添加することによって前記反応をクエンチするステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
架橋ヒドロゲルを形成するのに有効な反応条件下で、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を、2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤と反応させるステップを含む、請求項6から13のいずれか一項に記載のヒドロゲルを調製する方法。
【請求項42】
前記反応が、生理的pHで実施される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記反応が、重合開始剤なしに実施される、請求項41または請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記反応が、外部エネルギー供給源の適用なしに実施される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記反応が、20℃〜45℃の範囲の温度で実施される、請求項44に記載の方法。
【請求項1】
ヒアルロン酸であって、そのヒドロキシル基の10%以下が、ジビニルスルホンとの反応によって誘導体化されている、ヒアルロン酸。
【請求項2】
2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に誘導体化されたヒドロキシル基を1〜10%有する、請求項1に記載のヒアルロン酸(「(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸」)。
【請求項3】
ヒドロキシル基が、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%から選択される度合いまで2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に変換されている、請求項2に記載のヒアルロン酸。
【請求項4】
ヒドロキシル基が二糖反復単位1個当たり約4〜5%の度合いまで2−(ビニルスルホニル)エトキシ基に変換されている、請求項2に記載のヒアルロン酸。
【請求項5】
約700ダルトン〜約3百万ダルトンの平均分子量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のヒアルロン酸。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のヒアルロン酸と、2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤との反応によって形成されたヒドロゲル。
【請求項7】
前記チオール架橋剤が2個〜8個のチオール基を有する、請求項6に記載のヒドロゲル。
【請求項8】
前記チオール架橋剤が、2、3、4、5、6、7および8個から選択されるいくつかのチオール基を有する、請求項6に記載のヒドロゲル。
【請求項9】
前記チオール架橋剤が、チオール官能化ポリエチレングリコールである、請求項6に記載のヒドロゲル。
【請求項10】
前記チオール官能化ポリエチレングリコールが、約250〜約20,000ダルトンの分子量を有する、請求項9に記載のヒドロゲル。
【請求項11】
前記チオール官能化ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコールジチオール(PEGジチオール)である、請求項10に記載のヒドロゲル。
【請求項12】
前記チオール官能化ポリエチレングリコールが、グリセロール、グリセロールダイマー(3,3’−オキシジプロパン−1,2−ジオール)トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、およびヘキサグリセロールから選択されるポリオール核を有する、請求項9に記載のヒドロゲル。
【請求項13】
前記チオール官能化ポリエチレングリコールが、4個の腕を有し、ペンタエリスリトール核を有する、請求項12に記載のヒドロゲル。
【請求項14】
10%未満の未反応チオールおよび10%未満の未反応ビニルスルホン基を含む、請求項6から13のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項15】
水に対して約0.5〜5.0パーセントの範囲の重量(wt/wt)パーセンテージのポリマーを含む、請求項6から14のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項16】
生物活性剤を含む、請求項6から15のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項17】
ヒアルロン酸水溶液中に、請求項6から15のいずれか一項に記載のヒドロゲルの粒子を含む組成物。
【請求項18】
前記ヒドロゲル粒子が、約0.10〜3.0ミリメートルの範囲の大きさを有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
水性スラリーの形態での、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
前記水溶液が生理食塩水である、請求項17から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
滅菌された、請求項17から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
生物活性剤をさらに含む、請求項17から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記生物活性剤がコルチコステロイドである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記コルチコステロイドがトリアムシノロンアセトニドである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
生細胞を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
シリンジにパッケージされた、請求項17から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
シリンジにパッケージされた、請求項6から16のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項28】
21ゲージ針を介して押し出すことができる、請求項26に記載の組成物または請求項27に記載のヒドロゲル。
【請求項29】
被験体の関節の関節内空間に投与するための、請求項6から16のいずれか一項に記載のヒドロゲルの使用。
【請求項30】
被験体の関節の関節内空間に投与するための、請求項17から25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項31】
急性または慢性炎症を治療するための、請求項29または請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記急性または慢性炎症が、変形性関節症、関節リウマチ、他の炎症性関節炎、および反復使用に関連する、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
哺乳動物被験体の骨、歯、神経、軟骨、血管、軟組織または他の組織の上またはそれらの中に注射または移植するための、請求項6から16のいずれか一項に記載のヒドロゲルの使用。
【請求項34】
哺乳動物被験体の骨、歯、神経、軟骨、血管、軟組織または他の組織の上またはそれらの中に注射または移植するための、請求項17から25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項35】
ヒアルロン酸の二糖反復単位に対して約10%以下のヒドロキシル基をジビニルスルホンと反応させて(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を形成するのに有効な反応条件下で、ヒアルロン酸をジビニルスルホンと反応させるステップを含む、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を調製する方法。
【請求項36】
ヒアルロン酸をモル過剰のジビニルスルホンと反応させるステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記反応ステップが、周囲条件で実施される、請求項35または請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記反応ステップが、10秒〜約120秒間実施される、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記反応ステップが、水性塩基中で実施される、請求項35から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
酸を添加することによって前記反応をクエンチするステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
架橋ヒドロゲルを形成するのに有効な反応条件下で、(2−(ビニルスルホニル)エトキシ)1〜10%ヒアルロン酸を、2つ以上のチオール基を有するチオール架橋剤と反応させるステップを含む、請求項6から13のいずれか一項に記載のヒドロゲルを調製する方法。
【請求項42】
前記反応が、生理的pHで実施される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記反応が、重合開始剤なしに実施される、請求項41または請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記反応が、外部エネルギー供給源の適用なしに実施される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記反応が、20℃〜45℃の範囲の温度で実施される、請求項44に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−501091(P2013−501091A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522921(P2012−522921)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/043108
【国際公開番号】WO2011/014432
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512023339)カービラン バイオサージェリー, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/043108
【国際公開番号】WO2011/014432
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512023339)カービラン バイオサージェリー, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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