修飾核酸合成用アミダイド及び修飾核酸合成方法
【課題】修飾核酸合成用アミダイドを用いた修飾核酸合成方法を提供すること。
【解決手段】非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基を有し、かつ、保護基が脱保護された際に、置換基中に水酸基が発現することを特徴とする下記一般式(I)で表される修飾核酸合成用アミダイド、及び前記修飾核酸合成用アミダイドを用いた修飾核酸合成方法である。
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは前記置換基における水酸基を保護するための保護基を表し、Qは水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基を表す。
【解決手段】非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基を有し、かつ、保護基が脱保護された際に、置換基中に水酸基が発現することを特徴とする下記一般式(I)で表される修飾核酸合成用アミダイド、及び前記修飾核酸合成用アミダイドを用いた修飾核酸合成方法である。
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは前記置換基における水酸基を保護するための保護基を表し、Qは水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基含有修飾核酸の製造に好適な修飾核酸合成用アミダイド、及びそれを用いた修飾核酸合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の全遺伝子情報が既に明らかになった。その結果、研究者や科学者の興味の中心は遺伝子産物である蛋白質の解析に移行している。蛋白質の解析においては、対象となる個々の蛋白質に対してアフィニティー(結合性)を有する分子を得ることによって、初めて実質的な解析が可能になるといっても過言ではない。しかしながら、細胞中には非常に多種類の蛋白質が存在し、そのアミノ酸配列や構造が未知であるものも多い。
ある特定の蛋白質に対してアフィニティーを有する分子を得る最も一般的な手法は、動物の免疫系を用い、アフィニティー抗体を作製する方法である。しかし、この方法では動物を用いるため、多量の蛋白質や多大な工程、費用が必要となり、しかもある特定の物質に対するアフィニティー抗体は生成されないという欠点があった。
このような問題を解決するために、生物に依存しないアプタマー法(別名:SELEX法)も提案されているが、この方法で得られる分子は、特定の蛋白質に対しては強い相互作用を示すものの、必ずしも全ての蛋白質に応用可能なものではなかった。そこで本発明者らは、前記アプタマー法を改良し、修飾核酸を用いた修飾アプタマー法を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
一方で、核酸の固相合成は、20年以上も前から行われており、自動合成装置もその時点で販売されている。核酸の固相合成は、例えば、ヌクレオシドを結合させた固相担体(例えば、CPG)に核酸原料(アミダイド)を縮合反応させていくことにより行われるが、この縮合反応の際には、前記アミダイドのリン酸部分と他方の水酸基のみを縮合反応に関与させ、それ以外の反応性基は縮合反応に関与させずに行う必要がある。したがって、使用するアミダイドの塩基が有する環外アミノ基等には、保護基を導入して縮合反応への関与を防止し、全縮合反応が終了した後、保護基を脱離する(脱保護する)ことが必要となる。従来から、塩基の環外アミノ基に導入する保護基としては、ベンゾイル基、イソブチリル基等が用いられており、これらの保護基の脱保護には、濃アンモニア水を、55℃で8〜15時間、作用させる方法が一般的であった。
【0004】
しかしながら、前記したような、蛋白質に対してアフィニティー(結合性)を有する修飾核酸の製造においては、このような従来の脱保護条件では、保護基の脱保護とともに、修飾核酸における修飾部分(蛋白質との結合性を有する置換基部分)までもが脱離してしまい、安定して修飾核酸を製造することができないという問題があった。したがって、このような修飾核酸を製造するにあたっては、保護基の脱保護とともに、蛋白質との結合性を有する置換基部分までもが外れてしまわないよう、より緩やかな条件下で保護基の脱保護が可能なアミダイドを用いることが求められている。
例えば、従来の技術において、嵩高い塩基、シアザビシクロウンデセン(DBU)で脱保護可能な核酸アミダイドなどが報告されているが(非特許文献1〜2)、これらの核酸合成用アミダイドは、非プロトン性溶媒であるアセトニトリル中で不安定であり(非特許文献5)、実用には向かないものであった。また、ピリジン中、0.5M DBUの条件下、16時間で脱保護可能である核酸合成用アミダイドも報告されている(非特許文献3〜4)が、高濃度のDBU、長時間による脱保護のため、核酸塩基へのアルキル化が起こるという問題があった。また、メタノール中、K2CO3を用いた条件下で脱保護可能である核酸合成用アミダイドも報告されている(非特許文献5〜6)が、プロトン性溶媒であるメタノール中で塩基のK2CO3を使用するため、エステル等が分解するという問題があった。
【0005】
したがって、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、これにより、蛋白質等の標的物質の解析に好適な修飾核酸を安定して製造することのできる、優れた修飾核酸合成用アミダイド、及び前記修飾核酸合成用アミダイドを用いた修飾核酸合成方法の開発が、未だ望まれているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/078623号パンフレット
【非特許文献1】Acta Chem,Scand.,B37,263(1983)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,54,1657(1989)
【非特許文献3】Tetrahedron 40,4171(1992)
【非特許文献4】Nucleodied & Nuclrotides 13,2059(1994)
【非特許文献5】Tetrahedron Letters 46,6729(1990)
【非特許文献6】Nucleic Acids Reserch 21,3493(1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、これにより、水酸基含有修飾核酸を安定して製造することのできる、優れた修飾核酸合成用アミダイド、及び前記修飾核酸合成用アミダイドを用いた修飾核酸合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述の付記に記載の通りである。即ち、
本発明の修飾核酸合成用アミダイドは、後述する一般式(I)に示される通り、少なくとも塩基、置換基、及び、前記置換基における水酸基を保護するための保護基を有し、前記保護基が脱保護された際に、前記置換基中に水酸基が発現することを特徴とする。前記修飾核酸合成用アミダイドは、緩やかな条件下での脱保護が可能であるため、置換基を脱離させることなしに、保護基を容易に脱保護することができる。また、保護基が脱保護された際には、脱保護前には置換基中に発現していなかった水酸基が、置換基中に発現する(置換基表面に露出される)こととなる。
【0009】
本発明の修飾核酸合成方法は、本発明の前記修飾核酸合成用アミダイドを用いることを特徴とする。前記修飾核酸合成方法は、本発明の前記修飾核酸合成用アミダイドを用いるため、置換基を脱離させない程度の、緩やかな条件下で保護基の脱保護を行うことができる。また、保護基の脱保護により、脱保護前には置換基中に発現していなかった水酸基が、置換基中に発現する(置換基表面に露出される)。したがって、前記修飾核酸合成方法によれば、所望の水酸基含有修飾核酸を、安定して製造することができる。
【0010】
本発明の修飾核酸は、本発明の前記修飾核酸合成方法により得られることを特徴とする。前記修飾核酸は、本発明の前記修飾核酸合成方法により得られるものであるため、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)置換基を有する、水酸基含有修飾核酸である。前記修飾核酸は、水酸基を介して、蛋白質等の標的物質との結合が可能であり、したがって、前記修飾核酸は、例えば、蛋白質等の標的物質の解析に、好適に利用可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、これにより、水酸基含有修飾核酸を安定して製造することのできる、優れた修飾核酸合成用アミダイド、及び前記修飾核酸合成用アミダイドを用いた修飾核酸合成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(修飾核酸合成用アミダイド)
本発明の修飾核酸合成用アミダイドは、下記一般式(I)で表されるものであり、保護基が非プロトン性溶媒中で脱保護可能であり、かつ、保護基が脱保護された際に、置換基中に水酸基が発現することを特徴とする。
【0013】
【化6】
【0014】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは前記置換基における水酸基を保護するための保護基を表し、Qは水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基を表す。
【0015】
<置換基における水酸基を保護するための保護基>
前記一般式(I)中、Zで表される保護基は、置換基における水酸基を保護するための保護基であり、その種類としては、非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基、即ち、緩やかな条件下で脱保護可能な保護基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、前記「緩やかな条件下で脱保護可能」とは、例えば、前記保護基が、非プロトン性溶媒中で、嵩高い塩基により脱保護可能であることをいう。前記非プロトン性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。また、前記嵩高い塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、テトラメチルグアニジンなどが挙げられる。これらの中でも、前記保護基は、前記アセトニトリル中、前記DBUにより脱保護されることが好ましい。また、この場合、前記保護基の脱保護に要するDBU濃度としては、0.5M以下が好ましく、0.1M以下がより好ましく、0.01M以下が特に好ましい。また、前記保護基の脱保護に要する時間としては、8時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、15分間以内が特に好ましい。
【0016】
中でも、前記保護基としては、3−アミノプロピオン酸誘導体、4−アミノ酪酸誘導体、5−アミノ吉草酸誘導体、アミノメチル炭酸誘導体、アミノエチル炭酸誘導体、アミノ安息香酸誘導体、アミノメチル安息香酸誘導体、アミノエチル安息香酸誘導体、アミノフェニル酢酸誘導体、アミノメチルフェニル酢酸誘導体、アミノフェニルプロピオン酸誘導体、及び、アミノメチルフェニルプロピロン酸誘導体のいずれかからなる保護基が好ましい。
このような保護基の具体例としては、例えば、下記一般式(II)〜(III)に示すような保護基などが挙げられる。
【0017】
【化7】
【0018】
【化8】
【0019】
<置換基>
前記一般式(I)中、Yで表される置換基としては、前記保護基が脱保護された際に、前記置換基中に水酸基が発現する(置換基表面に水酸基が露出される)ような構造を有するものであれば、その他の構造においては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記置換基は、天然又は非天然のアミノ酸、金属錯体、蛍光色素、酸化還元色素、スピンラベル体、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、下記式(1)〜(10)で表される基などの構造を含むことができる。
【0020】
【化9】
【0021】
前記天然又は非天然のアミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリンなどが挙げられる。
前記金属錯体としては、金属イオンに配位子が配位した化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ruビピリジル錯体、フェロセン錯体、ニッケルイミダゾール錯体などが挙げられる。
前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン系列、ローダミン系列、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素などが挙げられる。
前記酸化還元色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロイコアニリン、ロイコアントシアニン等のロイコ色素などが挙げられる。
前記スピンラベル体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄N−(ジチオカルボキシ)サルコシン(sarcosine)、TEMPO(テトラメチルピペリジン)誘導体などが挙げられる。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
【0022】
<塩基>
前記一般式(I)中、Xで表される塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、ウラシル(U)などが挙げられる。また、前記塩基に前記置換基が導入される位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アデニン塩基の6位、シトシン塩基の6位、グアニン塩基の2位などが好ましい。ここで、前記置換基は、前記保護基が緩やかな条件下で脱保護される際に、併せて脱離されてしまわないよう、前記塩基に導入されていることが必要である。
【0023】
<水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基>
前記一般式(I)中、Qは、水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基であり、前記水酸基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下に示す保護基などが挙げられる。
【0024】
【化10】
【0025】
また、前記水酸基の保護基は、非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基、即ち、緩やかな条件下で脱保護可能な保護基であることが好ましく、ここで、前記「緩やかな条件下で脱保護可能」とは、前記した置換基における水酸基を保護するための保護基の項目に記載した通りである。
【0026】
<具体例>
前記修飾核酸合成用アミダイドの具体例としては、例えば、下記構造式(1)〜(2)に示すものなどが挙げられるが、前記修飾核酸合成用アミダイドとしては、これらに限定されるものではない。
【0027】
【化11】
【0028】
【化12】
【0029】
<製造>
前記修飾核酸合成用アミダイドの合成方法としては、特に制限はなく、例えば、後述する実施例に記載の方法等により、合成することができる。
【0030】
(修飾核酸合成方法)
本発明の修飾核酸合成方法は、本発明の前記修飾核酸合成用アミダイドを用いることを特徴とする。
前記修飾核酸合成方法は、前記修飾核酸合成用アミダイドを用いて修飾核酸を合成する方法であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエステル法、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホロアミダイト法、H−ホスホネート法、チオホスファイト法等に、固相法を組み合わせた従来の核酸合成方法を利用することができる。また、前記修飾核酸合成方法は、例えば、従来の核酸自動合成装置を用いて行うことができる。
【0031】
前記修飾核酸合成方法においては、前記修飾核酸合成用アミダイドを、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、前記修飾核酸合成方法に用いるアミダイド(核酸原料)としては、前記修飾核酸合成用アミダイドのみならず、他のアミダイドを組み合わせて用いてもよい。この場合、前記他のアミダイドとしては、前記したような緩やかな条件下で脱保護可能なアミダイドを用いることが好ましく、このようなアミダイドとしては、例えば、特願2007−000576号明細書に記載の核酸合成用アミダイドなどを用いることができる。
【0032】
前記修飾核酸合成方法においては、前記修飾核酸合成用アミダイド(及び、前記他のアミダイド)の縮合反応の後、前記修飾核酸合成用アミダイド(及び、前記他のアミダイド)の保護基の脱保護を行う。前記脱保護の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記したような緩やかな条件下で行われることが好ましく、例えば、非プロトン性溶媒中で、嵩高い塩基により脱保護を行うことが好ましい。前記非プロトン性溶媒、前記嵩高い塩基としては、前記同様である。また、脱保護に要する濃度、時間としても、前記同様である。
【0033】
前記脱保護は緩やかな条件下で行われるため、前記修飾核酸合成用アミダイドにおける置換基は脱離されない。また、保護基の脱保護により、脱保護前には置換基中に発現していなかった水酸基が、置換基中に発現する(置換基表面に露出される)こととなる。
【0034】
(修飾核酸)
本発明の修飾核酸は、本発明の前記修飾核酸合成方法により得られることを特徴とする。即ち、前記修飾核酸は、その少なくとも一部に、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)置換基を有する修飾ヌクレオチド単位を含んでなるものである。
前記修飾核酸を構成するヌクレオチド単位の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜200個が好ましく、20〜100個がより好ましく、30〜80個が特に好ましい。なお、前記修飾核酸を構成するヌクレオチド単位のうち、前記修飾核酸合成用アミダイドに由来する修飾ヌクレオチド単位(水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)置換基を有する修飾ヌクレオチド単位)の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記修飾核酸は、DNA配列及びRNA配列のいずれであってもよく、また、前記DNA配列及びRNA配列は、一本鎖であってもよいし二本鎖であってもよい。
【0035】
前記修飾核酸は、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)置換基を有してなるため、水酸基を介して蛋白質等の標的物質との結合が可能であり、したがって、前記修飾核酸は、例えば、蛋白質等の標的物質の解析に、好適に利用可能である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1:修飾核酸合成用アミダイドの合成)
本発明の修飾核酸合成用アミダイドVSer、VTyrを以下のようにして合成した。なお、前記修飾核酸合成用アミダイドVSer、VTyrは、それぞれ前記した構造式(1)、(2)に対応する修飾核酸合成用アミダイドである。
なお、下記化合物I及びIIIAは、それぞれ特願2007−69378号明細書に示された合成方法に従い合成した。
【0038】
【化13】
【0039】
<IIの合成>
I 13.58g(40mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を200mLの脱水アセトニトリルに溶解し、ピリジン3.88mL(48mmol)及び硝酸銀6.79g(40mmol)を加え、氷冷下、塩化ピバロイル4.93mL(40mmol)を加え、0℃で15分間攪拌した。続いて、グリコール酸4.56g(60mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(1%酢酸、ジクロロメタン−エタノール100:0→19:1)にて精製し、目的物II 13.03g(82%)を得た。
【0040】
<IVSerの合成>
IIIA 10.58g(10mmol)を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、トリエチルシラン2.40mL(15mmol)及びジアザビシクロウンデセン2.24mL(15mmol)を加え、室温にて10分間攪拌した、反応混合物にトリフロロ酢酸1.27mL(16.5mmol)、ピリジン1.45ml(18mmol)及びジクロロメタン10mLの混合溶液を加え、反応混合物Aを得た。
II 4.97g(12.5mmol)を脱水トルエンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を30mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、N−ヒドロキシこはく酸イミド1.58g(13.8mmol)を加え、氷冷下、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.71g(13.1mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。不溶物を濾別し、濾液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて1時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール97:3→47:3)にて精製し、目的物IVSer 10.11g(95%)を得た。
【0041】
<VSerの合成>
IVSer 10.11g(9.48mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を38mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下ジメチルアミノピリジン57.9mg(0.47mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.87mL(11.4mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト2.33mL(10.4mmol)の9.5mL塩化メチレン溶液を5分以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で1時間攪拌した。続いてメタノール9.5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(2%ピリジンin酢酸エチル;ヘキサン=2:1−2%ピリジン、3%エタノールin酢酸エチル1:0→0:1)にて精製し、目的物VSer 10.31g(86%)を得た。
【0042】
<IVSer’の合成>
IVSer 533mg(0.5mmol)を2.5mLのジクロロメタンに溶解し、トリエチルシラン0.12mL(0.75mmol)及びDBU 0.11mL(0.75mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物を直接カラムクロマトグラフィー(8→16%エタノールinジクロロメタン)で精製することにより、IVSer’ 347mg(93.2%)を得た。
【0043】
【化14】
【0044】
<Xの合成>
4−(FMOC−アミノメチル)安息香酸37.3g(100mmol)を400mLの脱水ジクロロメタンに懸濁し、アルゴン雰囲気下、オキサリルクロリド12.9mL(150mmol)及びジメチルフォルムアミド0.15mL(1.9mmol)を加え、室温で7時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、残渣に脱水トルエンを加えた後、減圧濃縮し、400mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、溶液Aを得た。
デオキシシチジン塩酸塩29.0g(110mmol)を脱水ピリジンで懸濁し、減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を375mLの脱水ピリジンで懸濁し、0℃でトリメチルクロロシラン46.4mL(396mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、再び0℃に冷却し、本溶液を氷冷下、溶液Aに導入した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。氷冷下100mLの水を加え、室温で8時間攪拌した。本溶液を減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル500mL及び水500mLを加え、よく攪拌し、ろ過することにより粗製の目的物X 61.6gを得た。
【0045】
<IIICの合成>
粗製のX 61.6gを脱水ピリジンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を500mLの脱水ピリジンに溶解し、氷冷下4,4’−ジメトキシトリチルクロリド33.92g(100mmol)を加え、0℃にて8時間攪拌した。続いてメタノール20mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール1:0→19:1)にて精製し、目的物IIIC 76.2g(90% 2step)を得た。
【0046】
<XIの合成>
IIIC 23.11g(26.1mmol)を脱水ジオキサンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を130mLの脱水ジオキサンに溶解し、ジメチルアミノピリジン226mg(0.21mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド10.78g(52.2mmol)及びレブリン酸5.36mL(52.2mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応溶液に5mLのメタノールを加え、30分間攪拌した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール1:0→19:1)にて精製し、目的物XI 25.2g(98%)を得た。
【0047】
<XIITyrの合成>
XI 17.86g(15mmol)を38mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、トリエチルシラン4.53mL(28.3mmol)及びジアザビシクロウンデセン4.23mL(28.3mmol)を加え、室温にて10分間攪拌した。反応混合物にトリフロロ酢酸2.39mL(31.1mmol)、ピリジン2.74ml(34.0mmol)及びジクロロメタン19mLの混合溶液を加え、反応混合物Aを得た。
p−ヒドロキシフェニル酢酸5.74g(37.7mmol)及びN−ヒドロキシこはく酸イミド5.21g(45.3mmol)をアセトニトリルに溶解し、氷冷下、ジシクロヘキシルカルボジイミド8.17g(39.6mmol)を加え、0℃で1時間攪拌した。不溶物を濾別し、濾液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて1時間攪拌した。続いてピペリジン3.7mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール19:1→9:1)にて精製し、目的物XIITyr 5.03g(64%)を得た。
【0048】
<XIIIの合成>
FMOC−Suc 33.74g(100mmol)を100mLのジクロロメタンに溶解し、氷冷下、2−(メチルアミノ)エタノール8.25mL(105mmol)を加え、室温にて一晩攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン1:1→1:0)にて精製し、目的物XIII 28.72g(97%)を得た。
【0049】
<XIVTyrの合成>
XIITyr 10.38g(11.6mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を26mLの脱水アセトニトリルに溶解し、ピリジン2.36mL(29.2mmol)を加え、反応混合物Aを得た。
トリフォスゲン1.38g(4.64mmol)を16mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ピリジン1.2mL(14.6mmol)及びXIII 4.14g(13.92mmol)の16mLジクロロメタン溶液を滴下した。反応混合物を室温にて15分間攪拌した。本反応混合物を反応混合物Aに0℃で加えた。反応混合物を室温にて15分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール94:6→91:9)にて精製し、目的物XIVTyr 12.0g(85%)を得た。
【0050】
<IVTyrの合成>
XIVTyr 9.14g(7.5mmol)を75mLのピリジンに溶解し、ヒドラジン1水和物3.11mL(64.3mmol)の希釈溶液90mL(ピリジン:酢酸=2:1)を加え、室温で5分間攪拌した。氷冷下、アセトン53mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール1:0→19:1)にて精製し、目的物IVTyr 6.26g(75%)を得た。
【0051】
<VTyrの合成>
IVTyr 5.72g(5.10mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下ジメチルアミノピリジン31mg(0.26mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.01mL(5.81mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.25mL(5.61mmol)の5.1mL塩化メチレン溶液を、5分以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で90分間攪拌した。続いてメタノール1.0mLを加え、15分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(2%ピリジンin酢酸エチル;ヘキサン=2:1−2%ピリジンin酢酸エチル0→100%、続けて2%ピリジン、20%エタノール2%ピリジンinジクロロメタン1:0→17:3)にて精製し、目的物VTyr 5.72g(85%)を得た。
【0052】
<各化合物の構造確認>
前記各化合物(II、IVSer、IVSer’、VSer、X、IIIC、XI、XIITyr、XIVTyr、IVTyr、VTyr)の構造確認を以下のようにして行った。結果を図1〜図11−3に示す。
[1H−NMR]
各サンプル約5mgを重溶媒に溶解し、測定した。内部標準は重溶媒ピークを基準とした。
[31P−NMR]
外部標準としてPPh3を用い、−6.2ppmを基準として測定した。BCMにて測定を行った。
【0053】
(実施例2:脱保護の確認(VTyr))
前記実施例1で合成した修飾核酸合成用アミダイド(VTyr)が、緩やかな条件下で脱保護可能であり、また脱保護により置換基中に水酸基が発現する(置換基表面に水酸基が露出される)ことを以下のようにして確認した。
【0054】
【化15】
【0055】
まず、実施例1で合成した、VTyrと同様の置換基及び保護基を有するXIVTyr(VTyrの中間体)(HPLC Chart1、図12)1.7mM、及び10mM DBU(10%DMF、90%アセトニトリル)溶液を室温で15分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart2、図13)。また、実施例1で合成したXIITyr(VTyrと同様の置換基を有するが、保護基は有さない)を準備した(HPLC Chart3、図14)。
次いで、HPLC Chart2の反応混合物(XIVTyrのDBU処理サンプル)と、HPLC Chart3の化合物(XIITyr)とを混合した溶液について、HPLC Chartを確認した(HPLC Chart4、図15)。
【0056】
結果、HPLC Chart2の反応混合物(XIVTyrのDBU処理サンプル)と、HPLC Chart3の化合物(XIITyr)とは一致した(HPLC Chart4、図15)。したがって、本発明の修飾核酸合成用アミダイド(VTyr)を用いて修飾核酸を合成する際に、アセトニトリル中でのDBU処理等の緩やかな条件下で脱保護を行うことにより、保護基が外され、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)、所望の水酸基含有修飾核酸を得ることができることが確認された。
なお、本実施例2におけるHPLC分析条件は以下の通り。
[HPLC分析条件]
流速1mL/min A溶液 100mM トリエチルアンモニウム酢酸緩衝液 pH=7.0
B溶液 アセトニトリル
HPLC chart1〜3
B:50→80%(0→10min)→100%(→20min)
HPLC chart4
B:50→80%(0→20min)
【0057】
(実施例3:脱保護の確認(VSer))
前記実施例1で合成した修飾核酸合成用アミダイド(VSer)が、緩やかな条件下で脱保護可能であり、また脱保護により置換基中に水酸基が発現する(置換基表面に水酸基が露出される)ことを以下のようにして確認した。
【0058】
【化16】
【0059】
まず、実施例1で合成した、VSerと同様の置換基及び保護基を有するIVSer(VSerの中間体)(HPLC Chart5、図16)0.5mM、及び10mM DBU(10%DMF、90%アセトニトリル)溶液を室温で15分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart6、図17)。また、実施例1で別途合成したIVSer’(VSerと同様の置換基を有するが、保護基は有さない)を準備した(HPLC Chart7、図18)。
次いで、HPLC Chart6の反応混合物(IVSerのDBU処理サンプル)と、HPLC Chart7の化合物(IVSer’)とを混合した溶液について、HPLC Chartを確認した(HPLC Chart8、図19)。
また、参考として、HPLC Chart6の反応混合物(IVSerのDBU処理サンプル)を酢酸中和したサンプルと、IVSerとを混合した溶液についても、HPLC Chartを確認した(HPLC Chart9、図20)。
【0060】
結果、HPLC Chart6の反応混合物(IVSerのDBU処理サンプル)と、HPLC Chart7の化合物(IVSer’)とは一致した(HPLC Chart8)。したがって、本発明の修飾核酸合成用アミダイド(VSer)を用いて修飾核酸を合成する際に、アセトニトリル中でのDBU処理等の緩やかな条件下で脱保護を行うことにより、保護基が外され、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)、所望の水酸基含有修飾核酸を得ることができることが確認された。
また、HPLC Chart9(IVSerのDBU処理サンプルを酢酸中和したサンプルと、IVSerとの重ねうち)の結果からは、DBU処理により生じた疎水性産物がIVSerと異なること、即ち、DBU処理によりIVSerが完全に消失することが確認された。
なお、本実施例3におけるHPLC分析条件は以下の通り。
[HPLC分析条件]
流速1mL/min A溶液 100mM トリエチルアンモニウム酢酸緩衝液 pH=7.0
B溶液 アセトニトリル
HPLC chart4〜9
B:30→80%(0→20min)
【0061】
なお、本発明の修飾核酸合成用アミダイドが、アセトニトリル中でのDBU処理等の緩やかな条件下で脱保護され、これにより、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)状態の、所望の水酸基含有修飾核酸を生成できる機構としては、例えば、図21A及び図21Bに示すような機構が推測される。即ち、アセトニトリル中でのDBU処理により、まず保護基中のフルオレニル基が外され、その後、発現した(表面に露出した)アミンがカルボニル基又はカーボネート基を攻撃することにより、自発的に環を形成して、保護基全体が外されるという機構である。これにより、置換基中に水酸基が発現し(置換基表面に水酸基が露出し)、水酸基含有修飾核酸(本発明の修飾核酸)が生成されることとなる(図21A、図21B)。
【0062】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 下記一般式(I)で表されることを特徴とする修飾核酸合成用アミダイドであって、保護基が非プロトン性溶媒中で脱保護可能であり、かつ、保護基が脱保護された際に、置換基中に水酸基が発現することを特徴とする修飾核酸合成用アミダイド。
【化17】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは前記置換基における水酸基を保護するための保護基を表し、Qは水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基を表す。
(付記2) 非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF、及び、N−メチルピロリドンからなる群より選択される少なくともいずれかである付記1に記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記3) 保護基が、嵩高い塩基により脱保護可能である付記1から2のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記4) 嵩高い塩基が、DBU、DBN、及び、テトラメチルグアニジンからなる群より選択される少なくともいずれかである付記3に記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記5) 保護基が、0.01M DBU濃度以下で脱保護可能である付記1から4のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記6) 保護基が、15分間以内に脱保護可能である付記1から5のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記7) 置換基における水酸基を保護するための保護基が、3−アミノプロピオン酸誘導体、4−アミノ酪酸誘導体、5−アミノ吉草酸誘導体、アミノメチル炭酸誘導体、アミノエチル炭酸誘導体、アミノ安息香酸誘導体、アミノメチル安息香酸誘導体、アミノエチル安息香酸誘導体、アミノフェニル酢酸誘導体、アミノメチルフェニル酢酸誘導体、アミノフェニルプロピオン酸誘導体、及び、アミノメチルフェニルプロピロン酸誘導体のいずれかからなる保護基である付記1から6のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記8) 置換基における水酸基を保護するための保護基が、下記一般式(II)〜(III)のいずれかで表される保護基である付記1から7のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【化18】
【化19】
(付記9) 置換基が、塩基の環外アミノ基に結合してなる付記1から8のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記10) 塩基が、アデニン、グアニン、及び、シトシンのいずれかである付記1から9のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記11) 下記構造式(1)〜(2)のいずれかで表される付記1から10のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【化20】
【化21】
(付記12) 付記1から11のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイドを用いることを特徴とする修飾核酸合成方法。
(付記13) 修飾核酸合成用アミダイドの縮合反応の後、前記修飾核酸合成用アミダイドの保護基の脱保護が行われる付記12に記載の修飾核酸合成方法。
(付記14) 非プロトン性溶媒中で脱保護が行われる付記12から13のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記15) 嵩高い塩基により脱保護が行われる付記12から14のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記16) 0.01M DBU濃度以下で脱保護が行われる付記12から15のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記17) 15分間以内に脱保護が行われる付記12から16のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記18) 核酸自動合成装置を用いて行われる付記12から17のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記19) 付記12から18のいずれかに記載の修飾核酸合成方法により得られることを特徴とする修飾核酸。
(付記20) 水酸基が発現した置換基を有してなる付記19に記載の修飾核酸。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の修飾核酸合成用アミダイド、及び本発明の修飾核酸合成方法によれば、水酸基を含有する本発明の修飾核酸を効率的に得ることができる。得られた前記修飾核酸は、水酸基を介して蛋白質等の標的物質との結合が可能であり、したがって、前記修飾核酸は、例えば、蛋白質等の標的物質の解析に、好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、実施例1における化合物IIの1H−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例1における化合物IVSerの 1H−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例1における化合物IVSer’の1H−NMRスペクトルである。
【図4−1】図4−1は、実施例1における化合物VSerの1H−NMRスペクトルである。
【図4−2】図4−2は、実施例1における化合物VSerの31P−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例1における化合物Xの1H−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例1における化合物IIICの1H−NMRスペクトルである。
【図7】図7は、実施例1における化合物XIの1H−NMRスペクトルである。
【図8】図8は、実施例1における化合物XIITyrの1H−NMRスペクトルである。
【図9】図9は、実施例1における化合物XIVTyrの1H−NMRスペクトルである。
【図10】図10は、実施例1における化合物IVTyrの1H−NMRスペクトルである。
【図11−1】図11−1は、実施例1における化合物VTyrの1H−NMRスペクトルである。
【図11−2】図11−2は、実施例1における化合物VTyrの31P−NMRスペクトルである。
【図11−3】図11−3は、実施例1における化合物VTyrのHHcosyスペクトルである。
【図12】図12は、実施例2におけるHPLC Chart1である。
【図13】図13は、実施例2におけるHPLC Chart2である。
【図14】図14は、実施例2におけるHPLC Chart3である。
【図15】図15は、実施例2におけるHPLC Chart4である。
【図16】図16は、実施例3におけるHPLC Chart5である。
【図17】図17は、実施例3におけるHPLC Chart6である。
【図18】図18は、実施例3におけるHPLC Chart7である。
【図19】図19は、実施例3におけるHPLC Chart8である。
【図20】図20は、実施例3におけるHPLC Chart9である。
【図21A】図21Aは、本発明の修飾核酸合成用アミダイド(VSer)における脱保護機構を表した図である。
【図21B】図21Bは、本発明の修飾核酸合成用アミダイド(VTyr)における脱保護機構を表した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基含有修飾核酸の製造に好適な修飾核酸合成用アミダイド、及びそれを用いた修飾核酸合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の全遺伝子情報が既に明らかになった。その結果、研究者や科学者の興味の中心は遺伝子産物である蛋白質の解析に移行している。蛋白質の解析においては、対象となる個々の蛋白質に対してアフィニティー(結合性)を有する分子を得ることによって、初めて実質的な解析が可能になるといっても過言ではない。しかしながら、細胞中には非常に多種類の蛋白質が存在し、そのアミノ酸配列や構造が未知であるものも多い。
ある特定の蛋白質に対してアフィニティーを有する分子を得る最も一般的な手法は、動物の免疫系を用い、アフィニティー抗体を作製する方法である。しかし、この方法では動物を用いるため、多量の蛋白質や多大な工程、費用が必要となり、しかもある特定の物質に対するアフィニティー抗体は生成されないという欠点があった。
このような問題を解決するために、生物に依存しないアプタマー法(別名:SELEX法)も提案されているが、この方法で得られる分子は、特定の蛋白質に対しては強い相互作用を示すものの、必ずしも全ての蛋白質に応用可能なものではなかった。そこで本発明者らは、前記アプタマー法を改良し、修飾核酸を用いた修飾アプタマー法を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
一方で、核酸の固相合成は、20年以上も前から行われており、自動合成装置もその時点で販売されている。核酸の固相合成は、例えば、ヌクレオシドを結合させた固相担体(例えば、CPG)に核酸原料(アミダイド)を縮合反応させていくことにより行われるが、この縮合反応の際には、前記アミダイドのリン酸部分と他方の水酸基のみを縮合反応に関与させ、それ以外の反応性基は縮合反応に関与させずに行う必要がある。したがって、使用するアミダイドの塩基が有する環外アミノ基等には、保護基を導入して縮合反応への関与を防止し、全縮合反応が終了した後、保護基を脱離する(脱保護する)ことが必要となる。従来から、塩基の環外アミノ基に導入する保護基としては、ベンゾイル基、イソブチリル基等が用いられており、これらの保護基の脱保護には、濃アンモニア水を、55℃で8〜15時間、作用させる方法が一般的であった。
【0004】
しかしながら、前記したような、蛋白質に対してアフィニティー(結合性)を有する修飾核酸の製造においては、このような従来の脱保護条件では、保護基の脱保護とともに、修飾核酸における修飾部分(蛋白質との結合性を有する置換基部分)までもが脱離してしまい、安定して修飾核酸を製造することができないという問題があった。したがって、このような修飾核酸を製造するにあたっては、保護基の脱保護とともに、蛋白質との結合性を有する置換基部分までもが外れてしまわないよう、より緩やかな条件下で保護基の脱保護が可能なアミダイドを用いることが求められている。
例えば、従来の技術において、嵩高い塩基、シアザビシクロウンデセン(DBU)で脱保護可能な核酸アミダイドなどが報告されているが(非特許文献1〜2)、これらの核酸合成用アミダイドは、非プロトン性溶媒であるアセトニトリル中で不安定であり(非特許文献5)、実用には向かないものであった。また、ピリジン中、0.5M DBUの条件下、16時間で脱保護可能である核酸合成用アミダイドも報告されている(非特許文献3〜4)が、高濃度のDBU、長時間による脱保護のため、核酸塩基へのアルキル化が起こるという問題があった。また、メタノール中、K2CO3を用いた条件下で脱保護可能である核酸合成用アミダイドも報告されている(非特許文献5〜6)が、プロトン性溶媒であるメタノール中で塩基のK2CO3を使用するため、エステル等が分解するという問題があった。
【0005】
したがって、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、これにより、蛋白質等の標的物質の解析に好適な修飾核酸を安定して製造することのできる、優れた修飾核酸合成用アミダイド、及び前記修飾核酸合成用アミダイドを用いた修飾核酸合成方法の開発が、未だ望まれているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/078623号パンフレット
【非特許文献1】Acta Chem,Scand.,B37,263(1983)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,54,1657(1989)
【非特許文献3】Tetrahedron 40,4171(1992)
【非特許文献4】Nucleodied & Nuclrotides 13,2059(1994)
【非特許文献5】Tetrahedron Letters 46,6729(1990)
【非特許文献6】Nucleic Acids Reserch 21,3493(1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、これにより、水酸基含有修飾核酸を安定して製造することのできる、優れた修飾核酸合成用アミダイド、及び前記修飾核酸合成用アミダイドを用いた修飾核酸合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述の付記に記載の通りである。即ち、
本発明の修飾核酸合成用アミダイドは、後述する一般式(I)に示される通り、少なくとも塩基、置換基、及び、前記置換基における水酸基を保護するための保護基を有し、前記保護基が脱保護された際に、前記置換基中に水酸基が発現することを特徴とする。前記修飾核酸合成用アミダイドは、緩やかな条件下での脱保護が可能であるため、置換基を脱離させることなしに、保護基を容易に脱保護することができる。また、保護基が脱保護された際には、脱保護前には置換基中に発現していなかった水酸基が、置換基中に発現する(置換基表面に露出される)こととなる。
【0009】
本発明の修飾核酸合成方法は、本発明の前記修飾核酸合成用アミダイドを用いることを特徴とする。前記修飾核酸合成方法は、本発明の前記修飾核酸合成用アミダイドを用いるため、置換基を脱離させない程度の、緩やかな条件下で保護基の脱保護を行うことができる。また、保護基の脱保護により、脱保護前には置換基中に発現していなかった水酸基が、置換基中に発現する(置換基表面に露出される)。したがって、前記修飾核酸合成方法によれば、所望の水酸基含有修飾核酸を、安定して製造することができる。
【0010】
本発明の修飾核酸は、本発明の前記修飾核酸合成方法により得られることを特徴とする。前記修飾核酸は、本発明の前記修飾核酸合成方法により得られるものであるため、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)置換基を有する、水酸基含有修飾核酸である。前記修飾核酸は、水酸基を介して、蛋白質等の標的物質との結合が可能であり、したがって、前記修飾核酸は、例えば、蛋白質等の標的物質の解析に、好適に利用可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、これにより、水酸基含有修飾核酸を安定して製造することのできる、優れた修飾核酸合成用アミダイド、及び前記修飾核酸合成用アミダイドを用いた修飾核酸合成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(修飾核酸合成用アミダイド)
本発明の修飾核酸合成用アミダイドは、下記一般式(I)で表されるものであり、保護基が非プロトン性溶媒中で脱保護可能であり、かつ、保護基が脱保護された際に、置換基中に水酸基が発現することを特徴とする。
【0013】
【化6】
【0014】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは前記置換基における水酸基を保護するための保護基を表し、Qは水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基を表す。
【0015】
<置換基における水酸基を保護するための保護基>
前記一般式(I)中、Zで表される保護基は、置換基における水酸基を保護するための保護基であり、その種類としては、非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基、即ち、緩やかな条件下で脱保護可能な保護基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、前記「緩やかな条件下で脱保護可能」とは、例えば、前記保護基が、非プロトン性溶媒中で、嵩高い塩基により脱保護可能であることをいう。前記非プロトン性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。また、前記嵩高い塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、テトラメチルグアニジンなどが挙げられる。これらの中でも、前記保護基は、前記アセトニトリル中、前記DBUにより脱保護されることが好ましい。また、この場合、前記保護基の脱保護に要するDBU濃度としては、0.5M以下が好ましく、0.1M以下がより好ましく、0.01M以下が特に好ましい。また、前記保護基の脱保護に要する時間としては、8時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、15分間以内が特に好ましい。
【0016】
中でも、前記保護基としては、3−アミノプロピオン酸誘導体、4−アミノ酪酸誘導体、5−アミノ吉草酸誘導体、アミノメチル炭酸誘導体、アミノエチル炭酸誘導体、アミノ安息香酸誘導体、アミノメチル安息香酸誘導体、アミノエチル安息香酸誘導体、アミノフェニル酢酸誘導体、アミノメチルフェニル酢酸誘導体、アミノフェニルプロピオン酸誘導体、及び、アミノメチルフェニルプロピロン酸誘導体のいずれかからなる保護基が好ましい。
このような保護基の具体例としては、例えば、下記一般式(II)〜(III)に示すような保護基などが挙げられる。
【0017】
【化7】
【0018】
【化8】
【0019】
<置換基>
前記一般式(I)中、Yで表される置換基としては、前記保護基が脱保護された際に、前記置換基中に水酸基が発現する(置換基表面に水酸基が露出される)ような構造を有するものであれば、その他の構造においては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記置換基は、天然又は非天然のアミノ酸、金属錯体、蛍光色素、酸化還元色素、スピンラベル体、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、下記式(1)〜(10)で表される基などの構造を含むことができる。
【0020】
【化9】
【0021】
前記天然又は非天然のアミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリンなどが挙げられる。
前記金属錯体としては、金属イオンに配位子が配位した化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ruビピリジル錯体、フェロセン錯体、ニッケルイミダゾール錯体などが挙げられる。
前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン系列、ローダミン系列、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素などが挙げられる。
前記酸化還元色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロイコアニリン、ロイコアントシアニン等のロイコ色素などが挙げられる。
前記スピンラベル体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄N−(ジチオカルボキシ)サルコシン(sarcosine)、TEMPO(テトラメチルピペリジン)誘導体などが挙げられる。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
【0022】
<塩基>
前記一般式(I)中、Xで表される塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、ウラシル(U)などが挙げられる。また、前記塩基に前記置換基が導入される位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アデニン塩基の6位、シトシン塩基の6位、グアニン塩基の2位などが好ましい。ここで、前記置換基は、前記保護基が緩やかな条件下で脱保護される際に、併せて脱離されてしまわないよう、前記塩基に導入されていることが必要である。
【0023】
<水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基>
前記一般式(I)中、Qは、水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基であり、前記水酸基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下に示す保護基などが挙げられる。
【0024】
【化10】
【0025】
また、前記水酸基の保護基は、非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基、即ち、緩やかな条件下で脱保護可能な保護基であることが好ましく、ここで、前記「緩やかな条件下で脱保護可能」とは、前記した置換基における水酸基を保護するための保護基の項目に記載した通りである。
【0026】
<具体例>
前記修飾核酸合成用アミダイドの具体例としては、例えば、下記構造式(1)〜(2)に示すものなどが挙げられるが、前記修飾核酸合成用アミダイドとしては、これらに限定されるものではない。
【0027】
【化11】
【0028】
【化12】
【0029】
<製造>
前記修飾核酸合成用アミダイドの合成方法としては、特に制限はなく、例えば、後述する実施例に記載の方法等により、合成することができる。
【0030】
(修飾核酸合成方法)
本発明の修飾核酸合成方法は、本発明の前記修飾核酸合成用アミダイドを用いることを特徴とする。
前記修飾核酸合成方法は、前記修飾核酸合成用アミダイドを用いて修飾核酸を合成する方法であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエステル法、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホロアミダイト法、H−ホスホネート法、チオホスファイト法等に、固相法を組み合わせた従来の核酸合成方法を利用することができる。また、前記修飾核酸合成方法は、例えば、従来の核酸自動合成装置を用いて行うことができる。
【0031】
前記修飾核酸合成方法においては、前記修飾核酸合成用アミダイドを、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、前記修飾核酸合成方法に用いるアミダイド(核酸原料)としては、前記修飾核酸合成用アミダイドのみならず、他のアミダイドを組み合わせて用いてもよい。この場合、前記他のアミダイドとしては、前記したような緩やかな条件下で脱保護可能なアミダイドを用いることが好ましく、このようなアミダイドとしては、例えば、特願2007−000576号明細書に記載の核酸合成用アミダイドなどを用いることができる。
【0032】
前記修飾核酸合成方法においては、前記修飾核酸合成用アミダイド(及び、前記他のアミダイド)の縮合反応の後、前記修飾核酸合成用アミダイド(及び、前記他のアミダイド)の保護基の脱保護を行う。前記脱保護の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記したような緩やかな条件下で行われることが好ましく、例えば、非プロトン性溶媒中で、嵩高い塩基により脱保護を行うことが好ましい。前記非プロトン性溶媒、前記嵩高い塩基としては、前記同様である。また、脱保護に要する濃度、時間としても、前記同様である。
【0033】
前記脱保護は緩やかな条件下で行われるため、前記修飾核酸合成用アミダイドにおける置換基は脱離されない。また、保護基の脱保護により、脱保護前には置換基中に発現していなかった水酸基が、置換基中に発現する(置換基表面に露出される)こととなる。
【0034】
(修飾核酸)
本発明の修飾核酸は、本発明の前記修飾核酸合成方法により得られることを特徴とする。即ち、前記修飾核酸は、その少なくとも一部に、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)置換基を有する修飾ヌクレオチド単位を含んでなるものである。
前記修飾核酸を構成するヌクレオチド単位の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜200個が好ましく、20〜100個がより好ましく、30〜80個が特に好ましい。なお、前記修飾核酸を構成するヌクレオチド単位のうち、前記修飾核酸合成用アミダイドに由来する修飾ヌクレオチド単位(水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)置換基を有する修飾ヌクレオチド単位)の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記修飾核酸は、DNA配列及びRNA配列のいずれであってもよく、また、前記DNA配列及びRNA配列は、一本鎖であってもよいし二本鎖であってもよい。
【0035】
前記修飾核酸は、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)置換基を有してなるため、水酸基を介して蛋白質等の標的物質との結合が可能であり、したがって、前記修飾核酸は、例えば、蛋白質等の標的物質の解析に、好適に利用可能である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1:修飾核酸合成用アミダイドの合成)
本発明の修飾核酸合成用アミダイドVSer、VTyrを以下のようにして合成した。なお、前記修飾核酸合成用アミダイドVSer、VTyrは、それぞれ前記した構造式(1)、(2)に対応する修飾核酸合成用アミダイドである。
なお、下記化合物I及びIIIAは、それぞれ特願2007−69378号明細書に示された合成方法に従い合成した。
【0038】
【化13】
【0039】
<IIの合成>
I 13.58g(40mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を200mLの脱水アセトニトリルに溶解し、ピリジン3.88mL(48mmol)及び硝酸銀6.79g(40mmol)を加え、氷冷下、塩化ピバロイル4.93mL(40mmol)を加え、0℃で15分間攪拌した。続いて、グリコール酸4.56g(60mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(1%酢酸、ジクロロメタン−エタノール100:0→19:1)にて精製し、目的物II 13.03g(82%)を得た。
【0040】
<IVSerの合成>
IIIA 10.58g(10mmol)を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、トリエチルシラン2.40mL(15mmol)及びジアザビシクロウンデセン2.24mL(15mmol)を加え、室温にて10分間攪拌した、反応混合物にトリフロロ酢酸1.27mL(16.5mmol)、ピリジン1.45ml(18mmol)及びジクロロメタン10mLの混合溶液を加え、反応混合物Aを得た。
II 4.97g(12.5mmol)を脱水トルエンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を30mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、N−ヒドロキシこはく酸イミド1.58g(13.8mmol)を加え、氷冷下、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.71g(13.1mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。不溶物を濾別し、濾液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて1時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール97:3→47:3)にて精製し、目的物IVSer 10.11g(95%)を得た。
【0041】
<VSerの合成>
IVSer 10.11g(9.48mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を38mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下ジメチルアミノピリジン57.9mg(0.47mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.87mL(11.4mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト2.33mL(10.4mmol)の9.5mL塩化メチレン溶液を5分以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で1時間攪拌した。続いてメタノール9.5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(2%ピリジンin酢酸エチル;ヘキサン=2:1−2%ピリジン、3%エタノールin酢酸エチル1:0→0:1)にて精製し、目的物VSer 10.31g(86%)を得た。
【0042】
<IVSer’の合成>
IVSer 533mg(0.5mmol)を2.5mLのジクロロメタンに溶解し、トリエチルシラン0.12mL(0.75mmol)及びDBU 0.11mL(0.75mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物を直接カラムクロマトグラフィー(8→16%エタノールinジクロロメタン)で精製することにより、IVSer’ 347mg(93.2%)を得た。
【0043】
【化14】
【0044】
<Xの合成>
4−(FMOC−アミノメチル)安息香酸37.3g(100mmol)を400mLの脱水ジクロロメタンに懸濁し、アルゴン雰囲気下、オキサリルクロリド12.9mL(150mmol)及びジメチルフォルムアミド0.15mL(1.9mmol)を加え、室温で7時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、残渣に脱水トルエンを加えた後、減圧濃縮し、400mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、溶液Aを得た。
デオキシシチジン塩酸塩29.0g(110mmol)を脱水ピリジンで懸濁し、減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を375mLの脱水ピリジンで懸濁し、0℃でトリメチルクロロシラン46.4mL(396mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、再び0℃に冷却し、本溶液を氷冷下、溶液Aに導入した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。氷冷下100mLの水を加え、室温で8時間攪拌した。本溶液を減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル500mL及び水500mLを加え、よく攪拌し、ろ過することにより粗製の目的物X 61.6gを得た。
【0045】
<IIICの合成>
粗製のX 61.6gを脱水ピリジンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を500mLの脱水ピリジンに溶解し、氷冷下4,4’−ジメトキシトリチルクロリド33.92g(100mmol)を加え、0℃にて8時間攪拌した。続いてメタノール20mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール1:0→19:1)にて精製し、目的物IIIC 76.2g(90% 2step)を得た。
【0046】
<XIの合成>
IIIC 23.11g(26.1mmol)を脱水ジオキサンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を130mLの脱水ジオキサンに溶解し、ジメチルアミノピリジン226mg(0.21mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド10.78g(52.2mmol)及びレブリン酸5.36mL(52.2mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応溶液に5mLのメタノールを加え、30分間攪拌した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール1:0→19:1)にて精製し、目的物XI 25.2g(98%)を得た。
【0047】
<XIITyrの合成>
XI 17.86g(15mmol)を38mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、トリエチルシラン4.53mL(28.3mmol)及びジアザビシクロウンデセン4.23mL(28.3mmol)を加え、室温にて10分間攪拌した。反応混合物にトリフロロ酢酸2.39mL(31.1mmol)、ピリジン2.74ml(34.0mmol)及びジクロロメタン19mLの混合溶液を加え、反応混合物Aを得た。
p−ヒドロキシフェニル酢酸5.74g(37.7mmol)及びN−ヒドロキシこはく酸イミド5.21g(45.3mmol)をアセトニトリルに溶解し、氷冷下、ジシクロヘキシルカルボジイミド8.17g(39.6mmol)を加え、0℃で1時間攪拌した。不溶物を濾別し、濾液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて1時間攪拌した。続いてピペリジン3.7mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール19:1→9:1)にて精製し、目的物XIITyr 5.03g(64%)を得た。
【0048】
<XIIIの合成>
FMOC−Suc 33.74g(100mmol)を100mLのジクロロメタンに溶解し、氷冷下、2−(メチルアミノ)エタノール8.25mL(105mmol)を加え、室温にて一晩攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン1:1→1:0)にて精製し、目的物XIII 28.72g(97%)を得た。
【0049】
<XIVTyrの合成>
XIITyr 10.38g(11.6mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を26mLの脱水アセトニトリルに溶解し、ピリジン2.36mL(29.2mmol)を加え、反応混合物Aを得た。
トリフォスゲン1.38g(4.64mmol)を16mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ピリジン1.2mL(14.6mmol)及びXIII 4.14g(13.92mmol)の16mLジクロロメタン溶液を滴下した。反応混合物を室温にて15分間攪拌した。本反応混合物を反応混合物Aに0℃で加えた。反応混合物を室温にて15分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール94:6→91:9)にて精製し、目的物XIVTyr 12.0g(85%)を得た。
【0050】
<IVTyrの合成>
XIVTyr 9.14g(7.5mmol)を75mLのピリジンに溶解し、ヒドラジン1水和物3.11mL(64.3mmol)の希釈溶液90mL(ピリジン:酢酸=2:1)を加え、室温で5分間攪拌した。氷冷下、アセトン53mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール1:0→19:1)にて精製し、目的物IVTyr 6.26g(75%)を得た。
【0051】
<VTyrの合成>
IVTyr 5.72g(5.10mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下ジメチルアミノピリジン31mg(0.26mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.01mL(5.81mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.25mL(5.61mmol)の5.1mL塩化メチレン溶液を、5分以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で90分間攪拌した。続いてメタノール1.0mLを加え、15分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(2%ピリジンin酢酸エチル;ヘキサン=2:1−2%ピリジンin酢酸エチル0→100%、続けて2%ピリジン、20%エタノール2%ピリジンinジクロロメタン1:0→17:3)にて精製し、目的物VTyr 5.72g(85%)を得た。
【0052】
<各化合物の構造確認>
前記各化合物(II、IVSer、IVSer’、VSer、X、IIIC、XI、XIITyr、XIVTyr、IVTyr、VTyr)の構造確認を以下のようにして行った。結果を図1〜図11−3に示す。
[1H−NMR]
各サンプル約5mgを重溶媒に溶解し、測定した。内部標準は重溶媒ピークを基準とした。
[31P−NMR]
外部標準としてPPh3を用い、−6.2ppmを基準として測定した。BCMにて測定を行った。
【0053】
(実施例2:脱保護の確認(VTyr))
前記実施例1で合成した修飾核酸合成用アミダイド(VTyr)が、緩やかな条件下で脱保護可能であり、また脱保護により置換基中に水酸基が発現する(置換基表面に水酸基が露出される)ことを以下のようにして確認した。
【0054】
【化15】
【0055】
まず、実施例1で合成した、VTyrと同様の置換基及び保護基を有するXIVTyr(VTyrの中間体)(HPLC Chart1、図12)1.7mM、及び10mM DBU(10%DMF、90%アセトニトリル)溶液を室温で15分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart2、図13)。また、実施例1で合成したXIITyr(VTyrと同様の置換基を有するが、保護基は有さない)を準備した(HPLC Chart3、図14)。
次いで、HPLC Chart2の反応混合物(XIVTyrのDBU処理サンプル)と、HPLC Chart3の化合物(XIITyr)とを混合した溶液について、HPLC Chartを確認した(HPLC Chart4、図15)。
【0056】
結果、HPLC Chart2の反応混合物(XIVTyrのDBU処理サンプル)と、HPLC Chart3の化合物(XIITyr)とは一致した(HPLC Chart4、図15)。したがって、本発明の修飾核酸合成用アミダイド(VTyr)を用いて修飾核酸を合成する際に、アセトニトリル中でのDBU処理等の緩やかな条件下で脱保護を行うことにより、保護基が外され、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)、所望の水酸基含有修飾核酸を得ることができることが確認された。
なお、本実施例2におけるHPLC分析条件は以下の通り。
[HPLC分析条件]
流速1mL/min A溶液 100mM トリエチルアンモニウム酢酸緩衝液 pH=7.0
B溶液 アセトニトリル
HPLC chart1〜3
B:50→80%(0→10min)→100%(→20min)
HPLC chart4
B:50→80%(0→20min)
【0057】
(実施例3:脱保護の確認(VSer))
前記実施例1で合成した修飾核酸合成用アミダイド(VSer)が、緩やかな条件下で脱保護可能であり、また脱保護により置換基中に水酸基が発現する(置換基表面に水酸基が露出される)ことを以下のようにして確認した。
【0058】
【化16】
【0059】
まず、実施例1で合成した、VSerと同様の置換基及び保護基を有するIVSer(VSerの中間体)(HPLC Chart5、図16)0.5mM、及び10mM DBU(10%DMF、90%アセトニトリル)溶液を室温で15分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart6、図17)。また、実施例1で別途合成したIVSer’(VSerと同様の置換基を有するが、保護基は有さない)を準備した(HPLC Chart7、図18)。
次いで、HPLC Chart6の反応混合物(IVSerのDBU処理サンプル)と、HPLC Chart7の化合物(IVSer’)とを混合した溶液について、HPLC Chartを確認した(HPLC Chart8、図19)。
また、参考として、HPLC Chart6の反応混合物(IVSerのDBU処理サンプル)を酢酸中和したサンプルと、IVSerとを混合した溶液についても、HPLC Chartを確認した(HPLC Chart9、図20)。
【0060】
結果、HPLC Chart6の反応混合物(IVSerのDBU処理サンプル)と、HPLC Chart7の化合物(IVSer’)とは一致した(HPLC Chart8)。したがって、本発明の修飾核酸合成用アミダイド(VSer)を用いて修飾核酸を合成する際に、アセトニトリル中でのDBU処理等の緩やかな条件下で脱保護を行うことにより、保護基が外され、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)、所望の水酸基含有修飾核酸を得ることができることが確認された。
また、HPLC Chart9(IVSerのDBU処理サンプルを酢酸中和したサンプルと、IVSerとの重ねうち)の結果からは、DBU処理により生じた疎水性産物がIVSerと異なること、即ち、DBU処理によりIVSerが完全に消失することが確認された。
なお、本実施例3におけるHPLC分析条件は以下の通り。
[HPLC分析条件]
流速1mL/min A溶液 100mM トリエチルアンモニウム酢酸緩衝液 pH=7.0
B溶液 アセトニトリル
HPLC chart4〜9
B:30→80%(0→20min)
【0061】
なお、本発明の修飾核酸合成用アミダイドが、アセトニトリル中でのDBU処理等の緩やかな条件下で脱保護され、これにより、水酸基が発現した(水酸基が表面に露出した)状態の、所望の水酸基含有修飾核酸を生成できる機構としては、例えば、図21A及び図21Bに示すような機構が推測される。即ち、アセトニトリル中でのDBU処理により、まず保護基中のフルオレニル基が外され、その後、発現した(表面に露出した)アミンがカルボニル基又はカーボネート基を攻撃することにより、自発的に環を形成して、保護基全体が外されるという機構である。これにより、置換基中に水酸基が発現し(置換基表面に水酸基が露出し)、水酸基含有修飾核酸(本発明の修飾核酸)が生成されることとなる(図21A、図21B)。
【0062】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 下記一般式(I)で表されることを特徴とする修飾核酸合成用アミダイドであって、保護基が非プロトン性溶媒中で脱保護可能であり、かつ、保護基が脱保護された際に、置換基中に水酸基が発現することを特徴とする修飾核酸合成用アミダイド。
【化17】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは前記置換基における水酸基を保護するための保護基を表し、Qは水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基を表す。
(付記2) 非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF、及び、N−メチルピロリドンからなる群より選択される少なくともいずれかである付記1に記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記3) 保護基が、嵩高い塩基により脱保護可能である付記1から2のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記4) 嵩高い塩基が、DBU、DBN、及び、テトラメチルグアニジンからなる群より選択される少なくともいずれかである付記3に記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記5) 保護基が、0.01M DBU濃度以下で脱保護可能である付記1から4のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記6) 保護基が、15分間以内に脱保護可能である付記1から5のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記7) 置換基における水酸基を保護するための保護基が、3−アミノプロピオン酸誘導体、4−アミノ酪酸誘導体、5−アミノ吉草酸誘導体、アミノメチル炭酸誘導体、アミノエチル炭酸誘導体、アミノ安息香酸誘導体、アミノメチル安息香酸誘導体、アミノエチル安息香酸誘導体、アミノフェニル酢酸誘導体、アミノメチルフェニル酢酸誘導体、アミノフェニルプロピオン酸誘導体、及び、アミノメチルフェニルプロピロン酸誘導体のいずれかからなる保護基である付記1から6のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記8) 置換基における水酸基を保護するための保護基が、下記一般式(II)〜(III)のいずれかで表される保護基である付記1から7のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【化18】
【化19】
(付記9) 置換基が、塩基の環外アミノ基に結合してなる付記1から8のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記10) 塩基が、アデニン、グアニン、及び、シトシンのいずれかである付記1から9のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
(付記11) 下記構造式(1)〜(2)のいずれかで表される付記1から10のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【化20】
【化21】
(付記12) 付記1から11のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイドを用いることを特徴とする修飾核酸合成方法。
(付記13) 修飾核酸合成用アミダイドの縮合反応の後、前記修飾核酸合成用アミダイドの保護基の脱保護が行われる付記12に記載の修飾核酸合成方法。
(付記14) 非プロトン性溶媒中で脱保護が行われる付記12から13のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記15) 嵩高い塩基により脱保護が行われる付記12から14のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記16) 0.01M DBU濃度以下で脱保護が行われる付記12から15のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記17) 15分間以内に脱保護が行われる付記12から16のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記18) 核酸自動合成装置を用いて行われる付記12から17のいずれかに記載の修飾核酸合成方法。
(付記19) 付記12から18のいずれかに記載の修飾核酸合成方法により得られることを特徴とする修飾核酸。
(付記20) 水酸基が発現した置換基を有してなる付記19に記載の修飾核酸。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の修飾核酸合成用アミダイド、及び本発明の修飾核酸合成方法によれば、水酸基を含有する本発明の修飾核酸を効率的に得ることができる。得られた前記修飾核酸は、水酸基を介して蛋白質等の標的物質との結合が可能であり、したがって、前記修飾核酸は、例えば、蛋白質等の標的物質の解析に、好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、実施例1における化合物IIの1H−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例1における化合物IVSerの 1H−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例1における化合物IVSer’の1H−NMRスペクトルである。
【図4−1】図4−1は、実施例1における化合物VSerの1H−NMRスペクトルである。
【図4−2】図4−2は、実施例1における化合物VSerの31P−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例1における化合物Xの1H−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例1における化合物IIICの1H−NMRスペクトルである。
【図7】図7は、実施例1における化合物XIの1H−NMRスペクトルである。
【図8】図8は、実施例1における化合物XIITyrの1H−NMRスペクトルである。
【図9】図9は、実施例1における化合物XIVTyrの1H−NMRスペクトルである。
【図10】図10は、実施例1における化合物IVTyrの1H−NMRスペクトルである。
【図11−1】図11−1は、実施例1における化合物VTyrの1H−NMRスペクトルである。
【図11−2】図11−2は、実施例1における化合物VTyrの31P−NMRスペクトルである。
【図11−3】図11−3は、実施例1における化合物VTyrのHHcosyスペクトルである。
【図12】図12は、実施例2におけるHPLC Chart1である。
【図13】図13は、実施例2におけるHPLC Chart2である。
【図14】図14は、実施例2におけるHPLC Chart3である。
【図15】図15は、実施例2におけるHPLC Chart4である。
【図16】図16は、実施例3におけるHPLC Chart5である。
【図17】図17は、実施例3におけるHPLC Chart6である。
【図18】図18は、実施例3におけるHPLC Chart7である。
【図19】図19は、実施例3におけるHPLC Chart8である。
【図20】図20は、実施例3におけるHPLC Chart9である。
【図21A】図21Aは、本発明の修飾核酸合成用アミダイド(VSer)における脱保護機構を表した図である。
【図21B】図21Bは、本発明の修飾核酸合成用アミダイド(VTyr)における脱保護機構を表した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されることを特徴とする修飾核酸合成用アミダイドであって、保護基が非プロトン性溶媒中で脱保護可能であり、かつ、保護基が脱保護された際に、置換基中に水酸基が発現することを特徴とする修飾核酸合成用アミダイド。
【化1】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは前記置換基における水酸基を保護するための保護基を表し、Qは水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基を表す。
【請求項2】
非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF、及び、N−メチルピロリドンからなる群より選択される少なくともいずれかである請求項1に記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項3】
保護基が、嵩高い塩基により脱保護可能である請求項1から2のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項4】
嵩高い塩基が、DBU、DBN、及び、テトラメチルグアニジンからなる群より選択される少なくともいずれかである請求項3に記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項5】
置換基における水酸基を保護するための保護基が、3−アミノプロピオン酸誘導体、4−アミノ酪酸誘導体、5−アミノ吉草酸誘導体、アミノメチル炭酸誘導体、アミノエチル炭酸誘導体、アミノ安息香酸誘導体、アミノメチル安息香酸誘導体、アミノエチル安息香酸誘導体、アミノフェニル酢酸誘導体、アミノメチルフェニル酢酸誘導体、アミノフェニルプロピオン酸誘導体、及び、アミノメチルフェニルプロピロン酸誘導体のいずれかからなる保護基である請求項1から4のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項6】
置換基における水酸基を保護するための保護基が、下記一般式(II)〜(III)のいずれかで表される保護基である請求項1から5のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【化2】
【化3】
【請求項7】
置換基が、塩基の環外アミノ基に結合してなる請求項1から6のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項8】
下記構造式(1)〜(2)のいずれかで表される請求項1から7のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【化4】
【化5】
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイドを用いることを特徴とする修飾核酸合成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の修飾核酸合成方法により得られることを特徴とする修飾核酸。
【請求項1】
下記一般式(I)で表されることを特徴とする修飾核酸合成用アミダイドであって、保護基が非プロトン性溶媒中で脱保護可能であり、かつ、保護基が脱保護された際に、置換基中に水酸基が発現することを特徴とする修飾核酸合成用アミダイド。
【化1】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは前記置換基における水酸基を保護するための保護基を表し、Qは水素原子、水酸基、又は保護基で保護された水酸基を表す。
【請求項2】
非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF、及び、N−メチルピロリドンからなる群より選択される少なくともいずれかである請求項1に記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項3】
保護基が、嵩高い塩基により脱保護可能である請求項1から2のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項4】
嵩高い塩基が、DBU、DBN、及び、テトラメチルグアニジンからなる群より選択される少なくともいずれかである請求項3に記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項5】
置換基における水酸基を保護するための保護基が、3−アミノプロピオン酸誘導体、4−アミノ酪酸誘導体、5−アミノ吉草酸誘導体、アミノメチル炭酸誘導体、アミノエチル炭酸誘導体、アミノ安息香酸誘導体、アミノメチル安息香酸誘導体、アミノエチル安息香酸誘導体、アミノフェニル酢酸誘導体、アミノメチルフェニル酢酸誘導体、アミノフェニルプロピオン酸誘導体、及び、アミノメチルフェニルプロピロン酸誘導体のいずれかからなる保護基である請求項1から4のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項6】
置換基における水酸基を保護するための保護基が、下記一般式(II)〜(III)のいずれかで表される保護基である請求項1から5のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【化2】
【化3】
【請求項7】
置換基が、塩基の環外アミノ基に結合してなる請求項1から6のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【請求項8】
下記構造式(1)〜(2)のいずれかで表される請求項1から7のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイド。
【化4】
【化5】
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の修飾核酸合成用アミダイドを用いることを特徴とする修飾核酸合成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の修飾核酸合成方法により得られることを特徴とする修飾核酸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図11−3】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図11−3】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【公開番号】特開2009−62307(P2009−62307A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230730(P2007−230730)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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