説明

倒立振子型四輪走行装置

【課題】前後進及びそのままの位置で旋回、車体の方向を変えずに横方向に移動可能であり、前後進時及び横方向移動時に段差があっても十分な段差乗り越え力を備えている、倒立振子型四輪走行装置を提供する。
【解決手段】全方向車輪の第1〜第4の車輪10a〜10dを、各車輪の接地点が同一直線上に順に並ぶ配置で装置フレーム20に支持し、装置フレーム20を第1〜第4の車輪の車軸線を回転中心として揺動する倒立振子型に備え、第1の車輪と第2の車輪及び第3の車輪と第4の車輪について、平面視において一端側を近接し他端側を開き、第2の車輪と第3の車輪が、平面視において他端側を近接し一端側を開く。第1〜第4の車輪に駆動モータ15a〜15dを備え、装置フレーム20の倒れ角を検出する倒れ角センサ41の信号を入力して倒立振子型の制御モデルに基づき駆動モータを制御するコントローラ40を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後方向の移動だけでなく装置自体の向きを変えずに横方向への移動が可能な倒立振子型四輪走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の倒立振子型走行装置には、二輪走行装置と三輪走行装置とが知られている。特許文献1に記載された倒立振子型台車ロボットは、二輪走行装置であり、台車本体の左右両側に車軸が同一直線上に配置された主車輪を備えると共に各車輪に対応してモータを備え、台車本体の傾動方向の位置に配置されたジャイロセンサが検出する台車本体の傾斜角速度信号を台車本体に備えた台車制御装置に入力し、台車制御装置が倒立振子制御モデルの演算を行い指令信号を各モータに出力し、各モータが対応する主車輪を駆動する構成である。
【0003】
特許文献2に記載された同軸二輪車は、倒立振子型二輪走行装置であり、車輪軸の両端に車輪を備え、車輪軸上に傾動可能にベースを備え、ベースに備えた制御装置が各車輪に対応するモータに倒立振子制御モデルに基づいた作動指令を送り、各モータが対応する車輪を駆動する構成である。
【0004】
特許文献3に記載された三輪走行装置は、倒立振子型であり、第1の車輪、第2の車輪及び第3の車輪が、車輪外周に沿って複数配設された各回転軸に回転自由な回転体を備え全方向移動し得る全方向車輪で構成され、第1の車輪と第2の車輪が、車軸が同一直線上となるように配置され、第3の車輪が、第1の車輪と第2の車輪との間に配置されかつ車軸が第1の車輪及び第2の車輪の車軸延長線と直交する水平な直線上に配置され、第1の車輪、第2の車輪及び第3の車輪のそれぞれにホイールインモータを備え、制御装置が、倒立振子制御モデルに基づいた作動指令を各車輪に送り、かつ第1の車輪及び第2の車輪を駆動させる際に第3の車輪を駆動させず、第3の車輪を駆動させる際に第1の車輪及び第2の車輪を駆動させない構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−345030号公報
【特許文献2】特開2005−1554号公報
【特許文献3】特開2009−40165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2に記載された倒立振子型二輪走行装置は、短い距離を移動するときの移動方法と、長い距離を移動するときの移動方法とで相違がある。
まず、図12に示すように、Aの位置から右横方向に短い距離の、Bの位置へ移動するときは、Aの位置からAとBとの中間位置に対応する後方のCの位置へ方向を変えながら後進し、次いでCの位置からBの位置へ方向を変えながら前進する、という移動方法をとる。従って、後方スペースが必要であること及び後進と前進時にはバランスを取りながら正しい経路で方向変換する必要であること、が問題点として挙げられる。
次に、図13に示すように、Aの位置から右横方向に長い距離の、Dの位置へ移動するときは、Aの位置で右回りに90度旋回してからDの位置へ向かって直進し、Dの位置へ到達したら左回りに90度旋回する、という移動方法をとる。従って、Aの位置での90度旋回を正確に行う必要があること、直進移動でDの位置へ正確に止まる必要があること、Dの位置での90度旋回を正確に行う必要があること、が問題点として挙げられる。
上記2通りの移動方法から分かるように、特許文献1,2に係る倒立振子型二輪移動体は、横方向に移動する場合には切り返しが必要となるために操縦が難しく、安全にも気を使っていた。
【0007】
これに対し、特許文献3に記載された倒立振子型三輪走行装置は、横方向に移動したい場合には、そのまま横方向に移動でき、切り返しが不要である特徴を有している。しかしながら、第1の車輪及び第2の車輪による前後進時に段差を乗り越える必要がある箇所では、第3の車輪が全方向車輪で構成されているものの、段差乗り越え力が小さいために円滑な前後進が行えない場合が生じる虞があるので、段差の無い屋内などでの使用に限られていた。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、前後進及びそのままの位置で旋回できることに加え、車体の方向を変えずに横方向に移動可能であり、前後進時及び横方向移動時に段差があっても十分な段差乗り越え力を備えていて、しかも操縦が容易である、倒立振子型四輪走行装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の倒立振子制御型四輪走行装置は、車輪外周に沿って複数配設された各回転軸に回転自由な回転体を備え全方向移動し得る全方向車輪で構成された第1〜第4の車輪を有し、第1〜第4の車輪が、各車輪の接地点を同一直線上に順に並んだ配置で装置フレームに支持されると共に、装置フレームが第1〜第4の車輪の車軸線を回転中心として揺動する倒立振子型に設けられ、さらに第1の車輪と第2の車輪並びに第3の車輪と第4の車輪が、平面視において一端側が近接し他端側が開いていると共に、第2の車輪と第3の車輪が、平面視において他端側が近接し一端側が開いており、第1〜第4の車輪のそれぞれを走行駆動する駆動モータを備え、装置フレームの倒れ角を検出する倒れ角センサの信号を入力して倒立振子型の制御モデルに基づいて駆動モータを制御するコントローラを備えたことを特徴とする。
駆動モータは、小型でコンパクトな倒立振子制御型四輪走行装置を実現するために、第1〜第4の車輪のそれぞれに組み込まれるホイールインモータであることが好ましい。
【0010】
運転者が乗ってスイッチオンすると、コントローラが倒立振子制御を行い、停止状態を記憶する。前進走行運転するには、運転者が運転指示手段であるハンドルシャフトを前傾させ、または運転指示手段であるレバーハンドル等を介して前進走行の指示信号を入力すると、コントローラが、この指示信号の入力に基づいて、倒立振子制御を加味した所要の演算を行って第1〜第4の車輪を前進させる制御信号を各駆動モータに出力する。それによって、第1〜第4の車輪が所要等速度で前進回転し、この際、第1〜第4の車輪が側横方向の成分速度を打ち消し合い、前進方向の成分速度で前進走行する。
【0011】
前進状態から、運転者がハンドルシャフトを復帰させ、またはレバーハンドル等を介して走行停止の指示信号を入力すると、各駆動モータに備えているブレーキをかけ、第1〜第4の車輪が前進走行を停止する。
【0012】
運転者がハンドルシャフトを後傾させ、またはレバーハンドル等を介して後進走行の指示信号を入力すると、コントローラは、この指示信号の入力に基づいて、倒立振子制御を加味した所要の演算を行って第1〜第4の車輪を後進させる制御信号を各駆動モータに出力する。それによって、第1〜第4の車輪が所要等速度で後進回転し、この際、第1〜第4の車輪が側横方向の成分速度を打ち消し合い、後進方向の成分速度で後進走行する。
【0013】
運転者がハンドルを右回転させると、コントローラがハンドル回転角センサの信号を入力し、第1〜第4の車輪の接地点を結ぶ直線と、ハンドルシャフトの中心を通り前記の接地点を結ぶ直線に垂直に交差する垂線と、の交点を回転中心として、倒立振子制御型四輪走行装置が右回転する。左回転は、コントローラが第1〜第4の車輪に対し左右勝手反対に駆動制御することで行われる。
【0014】
運転者がハンドルを右に傾かせると、コントローラがハンドル傾き角センサの信号を入力し、第1と第3の車輪を前進回転、第2と第4の車輪を後進回転させ、これに伴い、第1〜第4の車輪を構成している回転体がそれぞれ回転し、第1〜第4の車輪は、合成回転速度で方向変換しないで右進する。方向変換しない左進については、方向変換しないで右進と左右対称に異なる動作になる。
【0015】
運転者がハンドルを右に回しながら右下がりに傾かせると、コントローラが、ハンドル回転角センサとハンドル傾き角センサの信号を入力し、第1と第3の車輪を大きな前進回転速度で回転させると共に、また第2と第4の車輪を小さな前進回転速度で回転させ、それによって、第2と第4の車輪を構成している回転体がそれぞれ回転し、倒立振子制御型四輪走行装置は、前方向に対して30°右に向いて右進する。方向変換しない斜め方向に右進左進については、方向変換しないで斜め方向に右進と左右対称に異なる動作になる。
【0016】
本発明の倒立振子制御型四輪走行装置は、好ましい一形態として、装置フレームを、第1の車輪と第2の車輪との三角スペース、並びに第3の車輪と第4の車輪との三角スペースに足を載せるステップを備えた立ち乗り型に形成された構成とすることができる。
【0017】
本発明の倒立振子制御型四輪走行装置は、好ましい他の形態として、装置フレームを第1〜第4の車輪の上に座席を有して形成された構成とすることができる。
【0018】
本発明の倒立振子制御型四輪走行装置は、装置フレームを立ち乗り型に構成した場合、倒立振子制御に対する立ち乗りでの体重移動による良好な操縦性を得るために、装置フレームより立設され第1〜第4の車輪の配列方向垂直面に対して伏仰する方向に変位するハンドルシャフトを備え、倒れ角センサが、ハンドルシャフトの傾き角度を検出するように備えられ、コントローラが、第1〜第4の車輪に対応する駆動モータに対し倒立振子型制御を行う構成とすることが好ましい。
【0019】
そして、立ち乗りでの良好なハンドル操縦性・運転操作性を得るために、ハンドルシャフトの上端に第1〜第4の車輪の配列方向垂直面に沿ってT字状となるようにハンドルを備え、ハンドルが、水平状態から右方向及び左方向に傾き自在でありかつ弾性手段により水平状態に復帰自在であり、さらに、水平面内に一定角度内で右回動及び左回動でありかつ弾性手段により水平状態に復帰自在であり、ハンドルシャフトとハンドルとの交差部に、ハンドルの回動角度を検出する回動角センサと、ハンドルの傾き角度を検出する傾き角センサと、を備えていて、コントローラが、倒立振子型制御を行うことに加え、回動角センサの信号を入力したときはその信号に応じ、第1〜第4の車輪の合成出力が右回転又は左回転となるように第1〜第4の車輪に対応する駆動モータに対し駆動信号を出力し、また傾き角センサの信号を入力したときはその信号に応じ、第1〜第4の車輪の合成出力が方向変換しないで右進又は方向変換しないで左進となるように第1〜第4の車輪に対応する駆動モータに対し駆動信号を出力するように構成することが好ましい。
【0020】
本発明の倒立振子制御型四輪走行装置は、好ましい他の形態として、装置フレームを第1〜第4の車輪の上に座席を有して形成された構成とすることができる。
【0021】
座席を有して座り乗り型に構成する場合は、良好な乗降性を得るため及び良好なハンドル操縦性・運転操作性を得るために、本発明者の発明に係る特許文献3に示しているフレーム構造と同様の構造を採用するのが好ましい。すなわち、第1〜第4の車輪の上に座席を備え、該座席が、懸架装置を介して下側の装置フレームに支持され、さらに該座席には座席へ座る際には設置面近傍に位置し倒立振子型制御を行う際には設置面近傍から上方へ離れた位置する可動ステップを備えた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、前後進及びそのままの位置で旋回できることに加え、車体の方向を変えずに横方向に移動可能であり、前後進時及び横方向移動時に段差があっても車輪が段差に平行にはならないので十分な段差乗り越え力を備えていてしかも操縦が容易である、倒立振子型四輪走行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る倒立振子制御型四輪走行装置を示す斜視図である。
【図2】図1の四輪走行装置の正面図である。
【図3】図1の四輪走行装置の平面図である。
【図4】図1の四輪走行装置の第1〜第4の車輪について、一部切欠き断面した概略正面図である。
【図5】図1の四輪走行装置の制御系のブロック図である。
【図6】(a)は、図1の四輪走行装置のハンドルシャフトとハンドルとの交差部の斜視図、(b)は、要部縦断面図である。
【図7】図1の四輪走行装置の前進走行を説明するための図である。
【図8】図1の四輪走行装置の後進走行を説明するための図である。
【図9】図1の四輪走行装置で右回転させる動作を説明するための図である。
【図10】図1の四輪走行装置で方向変換しないで右進させる動作を説明するための図である。
【図11】図1の四輪走行装置で方向変換しないで斜め右進させる動作を説明するための図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る倒立振子制御型四輪走行装置を示す斜視図である。
【図13】特許文献1、2に記載された、公知の倒立振子型二輪走行装置の動作を説明するための図である。
【図14】特許文献1、2に記載された、公知の倒立振子型二輪走行装置の他の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の倒立振子制御型四輪走行装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1の実施形態〕
図1〜図3に示すように、この実施形態の倒立振子制御型四輪走行装置1は、第1〜第4の車輪10a〜10dと、装置フレーム20と、駆動モータ13a〜13dと、コントローラ40と、倒れ角速度センサ41と、ハンドル回転角センサ42と、ハンドル傾き角センサ43と、補助脚44a,44bと、を備え、特に後述するハンドルシャフト31と、ハンドル32と、ステップ24a,24bと、を備え、立ち乗り型に構成されている。
【0025】
第1〜第4の車輪10a〜10dは、図3に示すように、平地に対する各車輪の接地点P1,P2,P3,P4が同一直線L上に順に並んだ配置で装置フレーム20に支持される。第1〜第4の車輪10a〜10dは、それぞれの上側半分を安全カバー15a〜15dにより保護されている。安全カバー15a〜15dは、後述するステップ24a,24bに取り外し可能に固定されている。
【0026】
第1の車輪10aと第2の車輪10b並びに第3の車輪10cと第4の車輪10dは、平面視において一端側(進行方向前側)が近接し他端側(進行方向後側)が開いていると共に、第2の車輪10bと第3の車輪10cは、平面視において一端側(進行方向前側)が開いていると共に、他端側(進行方向後側)が近接している。権利限定するものではないが、この実施形態では、後述するハンドルシャフト31が垂直なときに、図3に示すように、各車輪間を平面視した開き角が60°であり、かつ隣接の車輪同士の距離S1,S2,S3が等しいものとする。
【0027】
第1〜第4の車輪10a〜10dは、図4に示すように、全方向に移動し得る全方向車輪が採用されている。全方向車輪は、例えば、特開2002−137602号公報、特開2003−154802号公報及び特開2004−344289号公報等に開示されており、この実施形態でも、同等のものが使用されている。全方向車輪は、図4に示すように、車輪外周に沿って複数配設された各回転軸11に回転自由な回転体12を備えていることで車輪全体としての能動回転と接地している回転体12の受動回転とで全方向に移動し得る機能を有している。各回転体12は、先端部の直径が後端部の直径より小さくしたカップ状に形成されている。これにより、車輪自体が車軸方向側(即ち、図示のX側)に移動しようとするとき、地面等に接地している回転体12はその回転軸11の周りに回転することにより、地面等を転動して、車輪自体が方向転換することなく、車輪は横方向への移動を円滑に行うことができる。
第1〜第4の車輪10a〜10dは、同じ寸法、同じ形状に構成され、各回転の中心が同じ高さになるように、装置フレーム20に取り付けられている。平地に走行装置1が置かれた状態で各車輪10a〜10dは地面に接触する。
【0028】
第1〜第4の駆動モータ13a〜13dは、第1〜第4の車輪10a〜10dのそれぞれホイールに組み込まれるホイールインモータであり、第1〜第4の車輪10a〜10dのそれぞれを走行駆動する。ホイールインモータは従来から各種の構造のものが知られており、本実施形態では様々のタイプのものを適用可能であるが、特にステータ(stator)とそのまわりを回転するロータ(rotor)を備えた装置を使用するのが望ましい。具体的には、ステータを装置フレーム20に固定し、このステータのまわりを回転するロータに第1〜第4の車輪10a〜10dを同軸状に取り付ける。このような構成によって、各車輪はロータと共に回転する。
【0029】
装置フレーム20は、メインフレーム21と、左側のサブフレーム22aと、右側のサブフレーム22bと、左側のブラケット23aと、右側のブラケット23bと、右側の扇形のステップ24aと、左側の扇形のステップ24bと、中央の機器設置用ブラケット24cと、を有してなる。メインフレーム21、左右のサブフレーム22a ,22b及び左右のブラケット23a,23bは剛体フレームである。左側のブラケット23aは左側のサブフレーム22aのフレーム軸線に関して回動可能に取り付けられ、また右側のブラケット23bは右側のサブフレーム22bのフレーム軸線に関して回動可能に取り付けられている。これによって、第1の車輪10aと第2の車輪10bが、第3の車輪10cと第4の車輪10dと独立して2点接地になると共に、第3の車輪10cと第4の車輪10dが、第1の車輪10aと第2の車輪10bと独立して2点接地になるので、第1〜第4の車輪10a〜10dは、路面の凹凸に追従して常に4輪走行になり、確実な走行が期待できる。
【0030】
メインフレーム21は、走行方向前側において、一端が第1の車輪10aの前側付近に対応し他端が第4の車輪10dの前側付近に対応するように水平に伸びている。
【0031】
サブフレーム22aは、メインフレーム21に先端を固定され第1の車輪10aと第2の車輪10bとの間を車軸とほぼ等しい高さで後方へ水平に伸びている。サブフレーム22bは、メインフレーム21に先端を固定され第3の車輪10cと第4の車輪10dとの間を後方に伸びている。
【0032】
左側のブラケット23aと右側のブラケット23bは、それぞれに対応するサブフレーム22a又は22bに固定され、第1の車輪10a及び第2の車輪10b又は第3の車輪10c及び第4の車輪10dを回転可能に支持している。各車輪に対応して備える第1〜第4の駆動モータ13a〜13dは、この実施形態では、上述したタイプのホイールインモータを採用していて、ブラケット23a,23bは、モータ本体を支持するように構成される。
【0033】
ステップ24a,24bは、第1の車輪と第2の車輪との三角スペース及び第3の車輪と第4の車輪との三角スペースに後方へ延びているサブフレーム12a,12bに受承固定され、ステップ24a,24bの下側で電動式パワーシリンダ構造の補助脚44a,44bがサブフレーム12a,12bに固定されている。補助脚44a,44bは、詳細な構成を図示していないが、倒立振子制御が行われる前はシリンダ内に備えるばねによりピストンが下方へ伸張していて、かつロック手段がピストンの移動をロックしており、倒立振子制御が行われると、ロック手段がロック解除してピストンが縮小動作するようになっている。これにより、ステップ24a,24bに立ち乗り可能となっている。なお、倒立振子制御を終了するときに、ピストンが下方へ伸張し、次いでロック手段がピストンの移動をロックする。
【0034】
機器設置用ブラケット24cは、第2の車輪10bと第3の車輪10cとの間の三角エリアに備えられメインフレーム21に支持されている。図3に示すように、機器設置用ブラケット24c上には、コントローラ40と、第1〜第4の駆動モータ13a〜13dの駆動信号を生成するモータドライバ14a〜14d、バッテリ45が設置されている。
【0035】
装置フレーム20は、第1の車輪10aと第2の車輪10bとの車軸方向及び第3の車輪10cと第4の車輪10dとの車軸方向がそれぞれ60°相違する状態に、第1〜第4の車輪10a〜10dの各車軸を軸支し倒立振子運動を行い得るように備えられている。
【0036】
装置フレーム20と、第1〜第4の車輪10a〜10dとの取付関係は、ハンドルシャフト31が垂直に立っているときに、平面視した各車輪間の開き角が60°であり、かつ前述したように隣接の車輪同士の接地距離S1,S2,S3が等しくなるように設定されているので、倒立振子走行時にハンドルシャフト31が垂直状態から前傾状態になるときには、距離S1=距離S3>距離S2の関係になってハンドルシャフト31の倒れ角の変動に応じて接地距離S1,S2,S3を変動する。しかし、接地距離S1,S2,S3を変動しても、絶えず第1〜第4の車輪10a〜10dの接地点P1,P2,P3,P4が同一直線L上に順に並んだ配置に保たれる。
【0037】
ハンドルシャフト31は、例えばステンレス鋼管からなり、メインフレーム21の上面中央から垂直に立ち上がった状態に固設されている。倒れ角速度センサ41は、コントローラ40の若干上方に位置してハンドルシャフト31に固定して備えられ、ハンドルシャフト31の傾き角速度を検出する。倒れ角速度センサ41には、ジャイロセンサが用いられる。
【0038】
図6(a),(b)に示すように、ハンドル32は、ハンドルシャフト31の上端に、下側のメインフレーム21と平行に伸びて、第1〜第4の車輪10a〜10dの配列方向垂直面に沿ってT字状となるように備えられ、両端にグリップ33,33を有している。
【0039】
ハンドル32は、ハンドルシャフト31の上端を水平に貫通しかつ軸方向に移動不能に弾持されている。ハンドルシャフト31とハンドル32との交差部、詳しくは、ハンドルシャフト31内のハンドル32が貫通する部分には、ハンドル32の水平回動及び垂直回動を取り出すためのメカニカル機構34を備えている。
【0040】
このメカニカル機構34は、ハンドルシャフト31の、ハンドル32が貫通する両側部分に、外方に張出している円筒部34a,34aを備え、各円筒部34aでゴムリング34bを保持している。ハンドル32は、ハンドルシャフト31に水平に貫通されゴムリング34b,34bにより水平状態に両端支持されている。
【0041】
従って、ハンドル32は、右側又は左側のグリップ33を手前に引くことにより、図1中の矢印Mで示すように、水平面内に一定角度内で右回動又は左回動自在であり、グリップ33に掛ける力を解除すると、ゴムリング34b,34bの弾性復帰力により平面視において正面方向に対して直角方向に復帰自在である。さらに、ハンドル32は、右側又は左側のグリップ33を押し下げることにより、図1中の矢印Nで示すように、水平状態から右側又は左側に傾き自在であり、グリップ33に掛ける力を解除すると、ゴムリング34b,34bの弾性復帰力により水平状態に復帰自在である。
【0042】
さらに、このメカニカル機構34は、ハンドルシャフト31の空間内においてハンドル32を取り巻く短管34cと、短管34cの上側と下側においてそれぞれハンドルシャフト31の内面に固定された上側固定板34d及び下側固定板34eと、短管34cの上面中央に下端を固定され上端を上側固定板34dの中央の孔に回転可能に通されている上側ピボット軸34fと、短管34cの下面中央に上端を固定され下端を下側固定板34eの中央の孔に回転可能に支持されている下側ピボット軸34gと、ハンドル32の長さ中央に固定され一方の側面より水平に突出して短管34cに開けられた孔に回転可能に通されている水平回転軸34hと、を有している。
【0043】
そして、ハンドル回転角センサ42が、上側ピボット軸34fの回転が入力となるように上側固定板に備えられ、またハンドル傾き角センサ43が、水平回転軸34hの回転が入力となるように短管34cの外面に備えられている。
【0044】
従って、ハンドル32を右回動又は左回動すると、この回動が水平回転軸34hを介して短管34cと上側ピボット軸34fに伝わり、ハンドル回転角センサ42に入力するので、ハンドル回転角センサ42が、ハンドルシャフト31のシャフト中心線を回転軸線とするハンドル32の回動角度を検出する。
【0045】
またハンドル32を右側又は左側に傾けると、この傾き角が水平回転軸34hに伝わりさらにハンドル傾き角センサ43に入力するので、ハンドル傾き角センサ43が、ハンドルシャフト31のシャフト中心線に対する垂直線(水平回転軸34hの軸線)に関して、ハンドル32の左方向又は右方向への傾き角度を検出する。
【0046】
この実施形態の倒立振子制御型四輪走行装置1は、ハンドルシャフト31を垂直に保持したときに、第1〜第4の車輪10a〜10dを除く構成部分の重心が、第1〜第4の車輪10a〜10dの接地点を結ぶ直線を通る円直面よりも例えば数cm後方に位置するように設定されているものとする。従って、この実施形態の倒立振子制御型四輪走行装置1は、ハンドルシャフト31を垂直に保持した状態から手を離すと、重力作用でハンドルシャフト31が後方へ倒れるようになっており、そこで、補助脚44a,44bのピストンをシリンダ内に備えるばねの弾発力下方へ伸張させかつロック手段でピストンの移動をロックさせた構成としていることで、ハンドルシャフト31を垂直に保持し、左右のステップ24a,24bを略水平に保ち、運転者がステップ24a,24bに乗って立てるようになっている。
【0047】
コントローラ40の機能について図5を参照して説明する。
(1)運転者がステップ24a,24bに乗って図示しない起動スイッチをオンすると、バッテリ45から給電されるコントローラ40は、装置フレーム20の倒れ角を検出する倒れ角速度センサ41の信号を入力して倒立振子型の制御モデルに基づいてモータドライバ14a〜14dを介して第1〜第4の車輪10a〜10dのホイール内に組み込まれた駆動モータ13a〜13dに対し倒立振子型制御を行う。
(2)コントローラ40は、倒立振子制御を開始すると同時に、補助脚44a,44bのロック手段をロック解除し、ばねの付勢に抗してピストンを縮小動作させる。
(3)制御開始時においては、コントローラ40は、第1〜第4の車輪10a〜10dを前進も後進もしない状態に倒立振子型制御を行う。
(4)運転者が体重移動により、ハンドルシャフト31をニュートラル角度(停止角度)よりも前方に倒せば、第1〜第4の車輪10a〜10dは前進走行し、またハンドルシャフト31をニュートラル角度よりも手前に引けば(後方に倒せば)、第1〜第4の車輪10a〜10dは後進走行する。
(5)ハンドルシャフト31がニュートラル角度になった後は、運転者がハンドル32を右回動又は左回動すれば、この回動に応じた信号をハンドル回転角センサ42がコントローラ40に入力し、コントローラ40は、右回転又は左回転するように第1〜第4の車輪10a〜10dを回転制御する。
(6)またハンドルシャフト31がニュートラル角度になった後は、運転者がハンドル32を右側又は左側に傾ければ、この傾き角に応じた信号をハンドル傾き角センサ43がコントローラ40に入力し、コントローラ40は、左方向又は右方向へ前進するように第1〜第4の車輪10a〜10dを回転制御する。
【0048】
続いて、全方向車輪を用いた第1〜第4の車輪10a〜10dにより、前進、後進、右回転、左回転、方向変換しない右進、方向変換しない左進、斜め右進及び斜め左進を行うことについて図7〜図11を参照して詳述する。
【0049】
〔前進走行〕
図7(a)に示すように、運転者Pが乗ってスイッチオンすると、コントローラ40が倒立振子制御を行い、車輪を含まない装置重量と運転者の体重との合成の重心位置が4つの車輪の接地線を通る垂直面にあるように倒立振子制御のアルゴリズムによって決定する。この場合、運転者がステップ24a,24bに乗ったことにより、第1〜第4の車輪10a〜10dを除く装置構成部分と運転者の体重の合計の重心位置が後方へずれる場合には、コントローラ40は、演算によってこの重心の位置が、第1〜第4の車輪10a〜10dの接地点を結ぶ直線を通る円直面上に来るように倒立振子型制御を行う。従って、コントローラ40は、ハンドルシャフト31を垂直状態よりも所要前側に傾けた状態を停止状態として記憶する。
そして、図7(b)に示すように、運転者Pが体重移動により、ハンドルシャフト31をニュートラル角度(停止角度)よりも前方に倒せば、このときの傾き角α1及び傾き角α1になる変化率、すなわち傾き角速度を倒れ角速度センサ41が検出してセンサ信号がコントローラ40に入力する。コントローラ40は、倒立振子制御を加味した所要の演算を行って第1〜第4の車輪10a〜10dを前進させる制御信号をサーボモータに出力し、それによってサーボモータが出力するモータ駆動信号で駆動モータ13a〜13dが所要速度で回転する。
図7(c)に示すように、コントローラ40は、ハンドルシャフト31の傾き角α1及び傾き角速度に応じて、第1〜第4の車輪10a〜10dの、各接地位置の回転体12の回転速度H1xy,H2xy,H3xy,H4xyを加味し、第1〜第4の車輪10a〜10dの前進方向のy成分速度H1y,H2y,H3y,H4yが等しくなるように、第1〜第4の車輪10a〜10dの前進回転速度H1,H2,H3,H4を決定し制御信号を出力する。従って、倒立振子制御型四輪走行装置1は、前進方向のy成分速度H1y(=H2y,H3y,H4y)で前進走行する。
【0050】
〔後進走行〕
倒立振子制御型四輪走行装置1が図7(b)に示す前進状態から、図8(a)に示すように、運転者Pが体重移動によりハンドル32を後方に引いて、ハンドルシャフト31が、ニュートラル角度よりも小さい角度になるときは、コントローラ40は、前進信号の出力中における倒れ角速度センサ41からの入力が後進であることを判断して、駆動モータ13a〜13dに備えているブレーキをかける。
また倒立振子制御型四輪走行装置1が図7(a)に示す停止状態から、図8(a)に示すように、運転者Pが体重移動によりハンドル32を後方に引いて、ハンドルシャフト31が、ニュートラル角度よりも小さい角度になるときは、コントローラ40は、後進信号を出力する。すなわち、コントローラ40は、倒れ角速度センサ41が検出したマイナス方向の倒れ角および倒れ角速度を入力すると、第1〜第4の車輪10a〜10dの全てが後進回転となるようにかつ倒れ角速度に対応した等しい回転数となるように制御する。
図8(b)に示すように、コントローラ40は、ハンドルシャフト31の傾き角−α1及び傾き角速度に応じて、第1〜第4の車輪10a〜10dの、各接地位置の回転体12の回転速度H5xy,H6xy,H7xy,H8xyを加味し、第1〜第4の車輪10a〜10dの後進方向のy成分速度H5y,H6y,H7y,H8yが等しくなるように、第1〜第4の車輪10a〜10dの後進回転速度H5,H6,H7,H8を決定し制御信号を出力する。従って、倒立振子制御型四輪走行装置1は、後進方向のy成分速度H5y(=H6y,H7y,H8y)で後進走行する。
【0051】
〔右回転〕
倒立振子制御型四輪走行装置1が図7(a)に示す停止状態から、図9(a)に示すように、運転者Pがハンドル32を右回転させると、この右回転をハンドル回転角センサ42が検出してセンサ信号がコントローラ40に入力する。コントローラ40は、図9(b)に示すように平面視において、第1〜第4の車輪10a〜10dの接地点を結ぶ直線Lと、ハンドルシャフト31の中心を通り前記の接地点を結ぶ直線Lに垂直に交差する垂線と、の交点Roを回転中心として、倒立振子制御型四輪走行装置1が右回転するように制御信号を出力する。コントローラ40は、第1の車輪10aと第4の車輪10dがサークルRad上を接線速度H9y,H12y(=H9y)で旋回し、かつ第2の車輪10bと第3の車輪10cがサークルRcd上を接線速度H10y,H11y(=H10y)で旋回するように、第1〜第4の車輪10a〜10dの、各接地位置の回転体12の回転速度H9xy,H10xy,H11xy,H12xyを加味し、第1〜第4の車輪10a〜10dの実回転速度H9,H10,H11,H12を算出する演算を行い、駆動制御信号を出力する。
左回転については、右回転と対称に異なる動作になるので説明を省略する。
【0052】
〔方向変換しない右進〕
倒立振子制御型四輪走行装置1が図7(a)に示す停止状態から、図10(a)に示すように、運転者Pがハンドル32を右に傾かせると、この傾き角をハンドル傾き角センサ43が検出してセンサ信号がコントローラ40に入力する。コントローラ40は、図10(b)に示すように、第1の車輪10aを実回転速度H13で前進回転、第2の車輪10bを実回転速度H14(=|H13|)で後進回転、第3の車輪10cを実回転速度H15(=H13)で前進回転、第4の車輪10dを実回転速度H16(=|H13|)で後進回転させるように制御する。このとき、|H13|=|H14|=|H15|=|H16|である。すると、第1〜第4の車輪10a〜10dの実回転に伴い、第1〜第4の車輪10a〜10dを構成している回転体12がそれぞれH13xy,H14xy,H15xy,H16xyで回転する。このとき、|H13xy|=|H14xy|=|H15xy|=|H16xy|である。従って、第1〜第4の車輪10a〜10dは、合成回転速度H13g,H14g,H15g,H16gで回転する。このとき、H13g=H14g=H15g=Hgである。すなわち、倒立振子制御型四輪走行装置1は、方向変換しないでH13gの速度で右進する。
方向変換しない左進については、方向変換しないで右進と左右対称に異なる動作になるので説明を省略する。
【0053】
〔方向変換しない斜め方向の右進〕
倒立振子制御型四輪走行装置1が図7(a)に示す停止状態から、図11(a)に示すように、運転者がハンドル32を右に回しながら右下がりに傾かせると、このときの回転角と傾き角をハンドル回転角センサ42とハンドル傾き角センサ43がそれぞれに検出して両センサ信号がコントローラ40に入力する。コントローラ40は、両センサ42,43からの信号入力に基づいて、図11(b)に示すように、第1〜第4の車輪10a〜10dをそれぞれ実回転速度H17,H18,H19,H20で前進回転させるように制御する。このとき、|H18|=|H20|,|H19|=|H17|とする。さらに、第2及び第4の車輪10b,10dの接地位置の回転体12の回転速度H18xy,H20xyと、の合成回転速度H18g,H20gが、第1及び第3の車輪10a,10cの実回転速度H17,H19に等しくなるように設定される。それによって、倒立振子制御型四輪走行装置1は、前方向に対して30°右に向いて右進する。
方向変換しない斜め方向に右進左進については、方向変換しないで斜め方向に右進と左右対称に異なる動作になるので説明を省略する。
【0054】
上記の動作の説明において、回転速度の大きさは、ハンドルシャフト31の倒れ角及び倒れ角速度、ハンドル32の回転角、傾き角に応じた大きさがコントローラ40から出力される。
【0055】
〔第2の実施形態〕
図12に示すように、この実施形態の倒立振子制御型四輪走行装置1Aは、第1〜第4の車輪10a〜10dと、座席202を有する装置フレーム20Aと、各車輪のフレーム内に設けられた駆動モータ(図中に符号なし)と、コントローラ40Aと、座席202の下面に備えられた倒れ角速度センサ41と、座席202の下面に備えられた補助脚44c,44dと、操縦レバー46と、を備えて構成されている。
装置フレーム20Aは、第1の車輪10aと第2の車輪10bの間に立ち上がる基台フレーム201a,201bと、座席202と、ステップ203とを有してなる。図示しないが、基台フレーム201a,201bに、第1の実施形態において示した左側のブラケット23aと、右側のブラケット23bとが設けられる。この実施形態では、補助脚44c,44dが前後配置に設けられることで、非運転時における座席202の水平を保持する。
この実施形態では、第1の実施形態のハンドルシャフト31と、ハンドル32とを備えていない。またハンドル回転角センサ42と、ハンドル傾き角センサ43を備えておらず、この2つのセンサの機能を操縦レバー46の入力操作で処理している。コントローラ40Aは、上述した第1の実施形態のコントローラ40が行う前進、後進、右回転、左回転、方向変換しない右進・左進や斜め右進・左進の各動作を操縦レバー46の入力操作に基づいて行う。
【0056】
第2の実施形態は、1人乗り座席を有する倒立振子制御型四輪走行装置を示したが、第2の車輪10bと第3の車輪10cとの間隔を大きくして、2人乗り座席を有する倒立振子制御型四輪走行装置として構成することができる。
【0057】
以上詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
本発明の走行装置は、産業、学術、家庭用の器具、装置、機械、玩具が移動するための手段として適用可能である。例えば、移動型ロボットの脚として上記走行装置を適用できる。また人が移動するための手段や物を搬送するための運搬具或いは、農作業用の移動する機械の移動手段として、また遊園地やテーマパークなどのレジャー施設における遊具の移動機構としても利用可能である。さらに、本発明は、老人や体の不自由な障害者などが利用する介助・福祉用の機械・器具にも利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A 倒立振子制御型四輪走行装置
10a 第1の車輪
10b 第2の車輪
10c 第3の車輪
10d 第4の車輪
11 回転軸
12 回転体
13a 第1の駆動モータ
13b 第2の駆動モータ
13c 第3の駆動モータ
13d 第4の駆動モータ
14a〜14d モータドライバ
20,20A 装置フレーム
24a,24b ステップ
201a,201b 基台フレーム
202 座席
203 ステップ
31 ハンドルシャフト
32 ハンドル
34 メカニカル機構
40,40A コントローラ
41 倒れ角速度センサ
42 ハンドル回転角センサ
43 ハンドル傾き角センサ
44a〜44d 補助脚
45 バッテリ
46 操縦レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪外周に沿って複数配設された各回転軸に回転自由な回転体を備え全方向移動し得る全方向車輪で構成された第1〜第4の車輪を有し、該第1〜第4の車輪が、各車輪の接地点を同一直線上に順に並んだ配置で装置フレームに支持されると共に、該装置フレームが上記第1〜第4の車輪の車軸線を回転中心として揺動する倒立振子型に設けられ、さらに第1の車輪と第2の車輪並びに第3の車輪と第4の車輪が、平面視において一端側が近接し他端側が開いていると共に、第2の車輪と第3の車輪が、平面視において他端側が近接し一端側が開いており、上記第1〜第4の車輪のそれぞれを走行駆動する駆動モータを備え、上記装置フレームの倒れ角を検出する倒れ角センサの信号を入力して倒立振子型の制御モデルに基づいて上記駆動モータを制御するコントローラを備えたことを特徴とする、倒立振子制御型四輪走行装置。
【請求項2】
前記装置フレームが、前記第1の車輪と前記第2の車輪との三角スペース、並びに前記第3の車輪と前記第4の車輪との三角スペースに足を載せるステップを備えた立ち乗り型に形成された構成である、請求項1に記載の倒立振子制御型四輪走行装置。
【請求項3】
前記装置フレームより立設され、該装置フレームの前記第1〜第4の車輪に対する回転中心の周りに揺動するハンドルシャフトを備え、
前記倒れ角センサが、上記ハンドルシャフトの傾き角度を検出するように備えられ、
前記コントローラが、上記第1〜第4の車輪に対応する駆動モータに対し前記倒立振子型制御を行う構成である、請求項1又は2に記載の倒立振子制御型四輪走行装置。
【請求項4】
前記ハンドルシャフトの上端に前記第1〜第4の車輪の配列方向垂直面に沿ってT字状となるようにハンドルを備え、
該ハンドルが、水平状態から右方向及び左方向に傾き自在でありかつ弾性手段により水平状態に復帰自在であり、さらに、水平面内に一定角度内で右回動及び左回動でありかつ弾性手段により水平状態に復帰自在であり、
上記ハンドルシャフトと上記ハンドルとの交差部に、上記ハンドルの回動角度を検出するハンドル回転角センサと、上記ハンドルの傾き角度を検出するハンドル傾き角センサと、を備えていて、
前記コントローラが、上記倒立振子型制御を行うことに加え、上記ハンドル回転角センサの信号を入力したときはその信号に応じ、前記第1〜第4の車輪の合成出力が右回転又は左回転となるように前記第1〜第4の車輪に対応する駆動モータに対し駆動信号を出力し、また上記ハンドル傾き角センサの信号を入力したときはその信号に応じ、前記第1〜第4の車輪の合成出力が方向変換しないで右進又は方向変換しないで左進となるように前記第1〜第4の車輪に対応する駆動モータに対し駆動信号を出力するように構成された、請求項3に記載の倒立振子制御型四輪走行装置。
【請求項5】
前記第1〜第4の車輪の上に座席を有し、該座席が懸架装置を介して下側の前記装置フレームに支持された構成である、請求項1に記載の倒立振子制御型四輪走行装置。
【請求項6】
接地面近傍に下降して位置し倒立振子型制御を行う際には設置面近傍から上昇して位置する可動ステップを備えた構成である、請求項5に記載の倒立振子制御型四輪走行装置。
【請求項7】
前記倒れ角センサが、前記座席の水平面に対する傾斜角度を検出するように備えられ、
前記コントローラが、上記倒れ角センサの信号を入力して上記第1〜第4の車輪に対応する駆動モータに対し上記倒立振子型制御を行う構成である、請求項1又は2に記載の倒立振子制御型四輪走行装置。
【請求項8】
前記座席に座った操作者が操作できる位置に、右回転又は左回転の指示並びに右方向又は左方向に変換しつつ前進することの4通りのいずれかを指示するハンドルを備え、
上記ハンドルが指示する右回転又は左回転を検出するハンドル回転角センサと、上記ハンドルが指示する右方向又は左方向に変換しつつ前進する指示を検出するハンドル傾き角センサと、を備えていて、
前記コントローラが、上記倒立振子型制御を行うことに加え、上記ハンドル回転角センサの信号を入力したときはその信号に応じ、前記第1〜第4の車輪の合成出力が右回転又は左回転となるように前記第1〜第4の車輪に対応する駆動モータに対し駆動信号を出力し、また上記ハンドル傾き角センサの信号を入力したときはその信号に応じ、前記第1〜第4の車輪の合成出力が方向変換しないで右進又は方向変換しないで左進となるように前記第1〜第4の車輪に対応する駆動モータに対し駆動信号を出力するように構成された、請求項7に記載の倒立振子制御型四輪走行装置。
【請求項9】
前記駆動モータは、第1〜第4の車輪のそれぞれに組み込まれるホイールインモータである、請求項1乃至8のいずれかに記載の倒立振子制御型四輪走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−111048(P2011−111048A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269329(P2009−269329)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】