倣い機構
【課題】小さな倣い力で高精度の倣いを実現できる倣い機構を安価に提供する。
【解決手段】この発明による倣い機構は、摺動保持部22と摺動部21を備えて2次元に摺動可能なスライダ機構2の下面中心から下方に突出する中空の吸排気部3を設け、この吸排気部3に吸着した倣い対象物7を倣い基準物10に押し当て、倣い対象物7と倣い基準物10の接点C1と、吸排気部3と倣い対象物7の接点が共に摺動しないように吸排気部3の吸排気エアの流量を制御して倣い対象物7を倣い基準物10に倣わせるものである。
【解決手段】この発明による倣い機構は、摺動保持部22と摺動部21を備えて2次元に摺動可能なスライダ機構2の下面中心から下方に突出する中空の吸排気部3を設け、この吸排気部3に吸着した倣い対象物7を倣い基準物10に押し当て、倣い対象物7と倣い基準物10の接点C1と、吸排気部3と倣い対象物7の接点が共に摺動しないように吸排気部3の吸排気エアの流量を制御して倣い対象物7を倣い基準物10に倣わせるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、倣い対象物を倣い基準物に倣わせるための倣い機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日の自動化された装置、設備には多数の駆動部が存在し、その駆動部の位置、あるいは、速度が制御されている。エンコーダは、この駆動部の位置・速度情報を得るためのセンサの1種であり、直動型のリニア・エンコーダと回転型のロータリ・エンコーダに大別される。また、位置検出原理には、光学式と磁気式などがある。
【0003】
この発明に係る倣い機構が取り扱う対象となる光学式ロータリ・エンコーダについて、その位置検出方法を中心に概説する。
光学式ロータリ・エンコーダは駆動部の回転部に接続される回転軸(中実、中空のいずれでも良い)と、その回転軸と一体で回転するパルス円板と、パルス円板を挟み込む一対の発光・受光素子、そして、この光学素子の駆動・処理回路などから構成される。ここで、パルス円板には、スリット状の穴加工や、マスキング処理、あるいは、所望の透過率が得られるような厚みや表面処理が施されている。これらの処理により発光ダイオード(LED)などの発光素子からの光が、パルス円板を通過して、フォトダイオード(PD)などの受光素子へ入力されることにより回転数(位置)が符号化されることになる。具体的な構成としては、回転軸と回転円板を樹脂で一体成形したものもあるが、金属製あるいは樹脂製の回転軸にガラス製の回転円板を接着固定したものが一般的である。
【0004】
昨今、各種装置類が取り扱う対象物の小型化に伴い、自動化装置、設備のコンパクト化や高精度な加工・組立のための駆動位置制御の高精度化(高分解能化)が求められている。このため、位置、あるいは、速度を検出する光学式ロータリ・エンコーダに対しても小型化と高精度化の両方が求められる。
【0005】
この実現には、パルス円板のスリット穴加工ピッチ・幅や、マスキング幅の縮小化、光学素子および処理回路の応答周波数の向上はもちろんのこと、組立精度の向上が必要不可欠である。各構成要素に許容される設置位置・設置姿勢の誤差の範囲が厳しく制約されるためである。
例えば、パルス円板が回転軸に対しずれた姿勢で接着固定された場合、光学素子であるLEDやPDなどにパルス円板が接触し、破壊する可能性がある。また、これらが接触しない場合でも、発光素子のLEDから、パルス円板を通過して受光素子のPDまで十分な光が届かず、所望の精度が得られず、回転位置センサとして利用できないこともある。
【0006】
以上のように、回転軸とパルス円板組立時には、位置ばかりでなく姿勢も高精度に調整する必要があり、回転軸とパルス円板の姿勢ずれを回転位置センサの性能を維持できる範囲内に収める必要がある。すなわち、回転軸の上面にパルス円板を高精度に倣わせる必要がある。
通常この工程はパルス円板を保持する倣い機構を、回転軸に押付けることで実現されている。以後、この押付け力を倣い力と呼ぶこととする。
一般的には倣い力が大きい方が、回転軸とパルス円板との接触点での回転モーメントが大きくなるため、倣い精度は向上する。
一方、エンコーダの小型化に伴い、パルス円板の厚みはより薄く、回転軸の直径はより小さく構成されるため、構成部品の剛性は低下する。したがって、小さな倣い力で十分な倣い精度を実現する必要がある。
【0007】
小さな倣い力と精度の向上の両立を目指した倣い機構として、静圧空気軸受けを利用するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−329749号公報(段落0016、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、小さな倣い力で高精度な倣いを実現できるが、揺動ステージの支持とスライダ機構の保持のため静圧空気軸受けを2カ所で使用しなければならず、部品点数が多く、製造にも、保守にも時間とコストがかかるという問題があった。
【0010】
この発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり。小さな倣い力で高い倣い精度を実現できる安価な倣い機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による倣い機構は、摺動保持部及びこの摺動保持部に沿って2次元に摺動可能な摺動部を備えたスライダ機構と、
摺動部から摺動方向垂直に突出した中空の吸排気部と、
この吸排気部からエアーを吸入、またはこの吸排気部にエアーを排気する吸排気ポートとを備えた倣い機構において、
吸排気部に吸着した倣い対象物を、固定した倣い基準物に押し当て、
倣い対象物と倣い基準物の接点と、吸排気部と倣い対象物の接点が共に離れないように吸排気ポートのエアー流量を制御して、倣い対象物を倣い基準物に倣わせることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明による倣い機構は、吸排気部に吸着した倣い対象物を、固定した倣い基準物に押し当て、
倣い対象物と倣い基準物の接点と、吸排気部と倣い対象物の接点が共に離れないように吸排気ポートのエアー流量を制御して、倣い対象物を倣い基準物に倣わせることを特徴とするものなので、
小さな倣い力で高精度の倣いを実現できる倣い機構を安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1による倣い機構の動作を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による倣い機構を、吸排気部の軸を含む平面で切断した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1による倣い機構を吸排気部の軸方向垂直に、図2AA線を含む平面で切断した断面図である。
【図4】図1(b)の状態にある倣い機構の吸排気部とパルス円板、及び完全に倣った状態にある倣い機構の吸排気部とパルス円板と回転軸とを合成した拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態1による倣い機構の加圧エアがパルス円板に加える力を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1による倣い機構の倣い動作中における加圧エアの流量の変化を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1による倣い機構を使用して組み立てたパルス円板と回転軸を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1による倣い機構を使用して組み立てたパルス円板の中心と回転軸の中心との位置ずれ誤差を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2による倣い機構の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2による倣い機構の吸排気ポートに加圧エアを供給した状態を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2による倣い機構の吸排気ポートに加圧エアを供給した状態を示す要部拡大断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2による倣い機構101の倣い動作と倣い機構101の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1による係る倣い機構1を使用してロータリ・エンコーダ(以下単にエンコーダという)の回転軸(倣い基準物)端部にエンコーダのパルス円板(倣い対象物)を倣わせて、これらを精度良く組み立てる手順について図を用いて説明する。
【0015】
まず、この発明の実施の形態1に係る倣い機構が実現しようとする「倣い」について説明する。
図1(a)に示す倣い機構1(符号3,21,22で構成される部分、詳細は後述)は、倣い基準物であるエンコーダの回転軸10の上面11に、吸排気部3に吸着しているエンコーダのパルス円板7を倣わせるための装置である。
回転軸10は回転軸10を含む図示しない筐体を把持具によって把持されているのであるが、把持部の成形精度・加工精度などにより対象ワーク毎に、毎回微妙にずれが生じる。この回転軸10の上面11にパルス円板7を精度良く接着固定するためには、回転軸10が把持固定されている状態で、毎回、回転軸10の上面11の中心位置と、倣い機構1で吸着しているパルス円板7の中心位置を計測し、その2つの中心が精度良く重なるように、パルス円板7を回転軸10に倣わせる必要がある。
【0016】
具体的には、図1(a)の状態から、倣い機構1を図1(b)のように回転軸10に押し当てた後、所定の手順でパルス円板7の上面に加圧エアを噴射して、図1(c)のようにパルス円板7の下面を回転軸10の上面11に倣わせていく。
この過程において、回転軸10とパルス円板7の接触点、及びパルス円板7と倣い機構1の接触点がそれぞれ摺り動こうとする力を、スライダ機構2のスライド動作によって吸収することがこの倣い機構1で実現する倣いの特徴である。
【0017】
この実施の形態1では倣い機構1の構成と、エンコーダの回転軸10とパルス円板7を接着するまでの工程を説明する。
なお、この「倣い」の過程で動作するのは倣い機構1側であって、回転軸10は常に固定されているものである。
【0018】
図2は本発明の実施の形態1による倣い機構1を、吸排気部3の軸を含む平面で切断した断面図である。
また、図3は倣い機構1を、吸排気部3の軸方向垂直に、図2、AA線を含む平面で切断した断面図である。
説明を簡単にするために、倣い機構1のみを示しているが、実際にはこの倣い機構1がロボットの手先などに搭載されている。
倣い機構1は、スライダ機構2と吸排気部3とで構成されている。
スライダ機構2は、摺動部21と、摺動保持部22で構成され、さらに摺動保持部22は摺動保持天板221及びこの摺動保持天板221に固定された摺動保持フランジ222で構成されている。
摺動部21は摺動面2aを介して摺動保持天板221及び摺動保持フランジ222に接触していて、この2つの部材で囲まれた空間の内部を2次元に摺動する。
図示していないが摺動面2aはボールやクロスローラなど摺動抵抗が小さな部材を利用している。
【0019】
図3に示すように、摺動部21は摺動保持222の内側で自由に回転摺動できる。
つまり、摺動部21は摺動保持フランジ222の内径と、摺動部21の半径の差の2倍の長さに渡って、図の上下左右方向に直線的に摺動可能であり、さらに吸排気ポート23を中心として回転することも可能である。
図2に示す円筒状の吸排気部3は摺動部21に図示しないネジなどで固定されるとともに摺動保持天板221中央に設けられた吸排気ポート23を介し、図示しない外部の空圧器機に接続されている。
この流路の気密は、スライダ機構2が摺動面2aを介して水平に摺動しても、シール部2bにより確保される構造となっている。
【0020】
次に、倣いの動作について詳細に説明する。
説明の順序として、最初に倣い動作のみを説明し、接着剤塗布動作などの他の動作も含めた全体の手順については、その後で説明する。
図1(a)がパルス円板7を吸着している倣い機構1を側面から見た図であり、図1(b)が倣い基準物(ここでは回転軸10)と倣い機構1が接触した状態を示す図であり、
図1(c)は倣い終期にある倣い機構1を側面から見た図である。
倣い機構1、および回転軸10が鉛直方向に対して姿勢ずれが発生している一般的な状況を示している。回転軸10のずれは、回転軸を固定している図示しない軸受を含む筐体が鉛直方向に対して姿勢ずれが発生している状況を示している。
説明を簡単にするため、倣い機構1はこれを搭載するロボットによって水平に保たれているものとするが、傾いていても構わない。
また、説明を容易にするため、回転軸10が大きく傾いた図を使用しているが実際には僅かに傾いている状態である。
なお、図に示す回転軸10の上面11は回転軸10の中心軸に対して十分な精度で直角に保持されているものとする。
【0021】
まず、図示しないパルス円板7の置き場にて、倣い機構1の上方中央に設けた吸排気ポート23から真空引きすることにより吸排気部3からエアーを吸引する。
これによりパルス円板7の上面が吸排気部3の下面に接触吸着される。
この時のパルス円板7は、吸排気部3の先端部の下面に沿っている。
次に、パルス円板7を吸着保持した状態のまま、倣い機構1を図示しないロボットなどの手段により、回転軸10の上方に移動し(図1(a)、倣い基準物である回転軸10に接触するまで下降させる(図1(b))。
パルス円板7の下面と回転軸10の上面との接触は、図示しない力センサや位置センサなどにより検出可能である。力センサの場合には接触後発生する反力の増大を検出し、位置センサの場合には接触後位置が一定値となり不変となることを検出する。
【0022】
接触状態を検出したら、吸排気ポート23からの真空引きを停止し、吸排気ポート23を大気に開放する。この時、パルス円板7の上面は吸排気部3と接触していて、下面は回転軸10に接触している。
ここから更に倣い動作が進行すると、図1(c)に示すような状態でパルス円板7が回転軸10の上面11上に倣うのであるが、この過程について次に詳述する。
図4(a)は図1(b)の状態にあるスライダ機構1とその吸排気部3に吸着されたパルス円板7(破線で表示)および、完全に倣った状態にあるスライダ機構1及びパルス円板7(実線で表示)を合成した拡大図である。
図4(b)は図4(a)の要部を更に拡大した図である。
【0023】
図において、回転軸10は固定されているので動かない。回転軸10の上面11とパルス円板7の最初の接触点をC1、パルス円板7と吸排気部3の左下端の最初の接触点をC2とする。
パルス円板7の吸着を止めて吸排気ポート23を外気に開放しても、吸排気部3の内側は外気に対して負圧状態にあるので、パルス円板はすぐには落下しない。
ここで、倣い機構1を更に下降させると、接触点C1及び接触点C2を支点としてパルス円板7が矢印方向に回転を始める。この時、吸排気ポート23から吸排気部3内部に徐々に加圧エアを供給し、パルス円板7が吸排気部3内に残存する負圧の影響を受けないで接触点C1、接触点C2を支点としてスムーズに矢印方向に回転できるように制御する。
【0024】
すると接触点C1および接触点C2が、互いに接触する部品間で摺り動かない。
図4(b)に示すように倣い機構1がパルス円板7に最初に接触した時の接触点C2の位置が倣い動作中に不動であれば、接触点C2の位置は倣い終了時にはC2’の位置にある。この水平方向の位置ずれを吸収する役割をスライダ機構2が担いスライダ機構2の摺動部21が同じ長さだけ右へ移動することになる。図1(c)のスライダ機構2は、この状況を示している。
もし、スライダ機構2が無ければ、接触点C1、C2のいずれか一方、或いは双方が、それぞれ接触している部品間で摺り動かなければならない。
しかし、この場合は双方の部品間に相当の摩擦力が働くために、スムーズな倣いが実現できない。
本実施の形態では、パルス円板7の回転動作と同期して、それぞれの接触点C1、C2を摺り動かせることなくスライダ機構2が水平方向に動作するため、接触点C1を中心とする回転動作が円滑に実現され、接触点C1、C2での摩擦の問題が解決できる。
【0025】
図では説明を簡単にするため接触点C1が左端にある状態を示して説明したが、スライダ機構2は2次元で所定の範囲を自由に摺動できるので接触点がどこであっても対応できる。
【0026】
次に、倣い動作中の加圧エアの効果について更に説明する。
上述のように、倣い機構1にパルス円板7が接触した後、更に倣い機構1を下降させながら吸排気部3へ加圧エアを供給し始めるのであるが、この加圧エアの供給により、パルス円板7を倣わせる方向に働く回転モーメントが発生する。
ここで、回転モーメントは吸排気部3の中空面積全体に働く加圧エアのエア圧と回転中心C1からの距離の積の総和となるため(図5)、パルス円板7への負荷は広い範囲に分散され低い剛性のパルス円板7でも倣い動作を実現できる。
【0027】
さらに、吸排気部3とパルス円板7との当接関係が崩れた箇所からの加圧エア流量が増加するため、倣い方向へ働く力がパルス円板7に負荷され、更なる倣い力の低減が可能となる。これより、スライダ機構2に要求される摺動性は緩和され、静圧空気軸受などの高価なものではなく、クロスボールなどを利用した安価な接触式のスライダ機構2を利用できる。
また、従来のスライダ機構だけの倣い機構では、パルス円板7の上面と吸排気部3の下面との接触点のみに集中荷重がかかるため、パルス円板7の剛性により倣い力が制約され、その結果倣い精度の上限が存在してしまう問題があったがこれが解消できる。
【0028】
一方、倣い動作の完了は、加圧エアの流量変化により検出することも可能である。図6にその概念図を示す。横軸が動作履歴、縦軸が加圧エア流量である。
吸排気ポート23から真空引きを開始し(位置A)、負圧エアがある一定値となる。パルス円板7を吸着し始めると真空引きエア流量が低下し(位置B)、完全に吸着すると小さな真空引きエア流量となる(位置C)。次に、回転軸10との接触を検出後、真空引きをやめ、加圧エアを供給し始める(位置D)。パルス円板7と吸排気部3との間に生成される隙間が徐々に大きくなり、加圧エア流量も増加する。そして、倣い動作が完了すると、上記隙間はある一定値となるため、隙間から流出するエア流量も一定となる(位置E)。
以上のことから、加圧エア変化がほぼない状態が倣い動作が完了したタイミングとなる。
ここで、吸排気部3の中空断面形状は、円形、四角形などどのような形状でも同様な効果があることは言うまでも無いことである。
ただし、吸排気部3の中心から離れた距離の断面がより大きな方が、倣い動作時の加圧エアの効果は大きくなる。
【0029】
次に、接着剤の塗布も含めた全体の工程を含めて再度説明する。
パルス円板置き場にあるパルス円板7を図示しないCCDカメラなどの画像センサなどを利用して撮影し、これから吸着して取得すべきパルス円板7の上面の中心位置を2次元で検出する。この検出位置に基づき、図示しないロボットなどで倣い機構1をその真上に移動させる。
この後、吸排気ポート23から真空引きを開始し、パルス円板7へ向け倣い機構1を下降させてこれを真空吸着する。
パルス円板7を真空吸着したら、再度画像センサを利用して吸排気部3の中心と、吸着したパルス円板7の中心位置との位置ずれ量を検出し、この位置ずれを2次元で記憶する。
一方、固定されている回転軸10の軸の上面11の中心位置も画像センサにて検出し、その位置を2次元座標軸で記憶する。
【0030】
次に、接着剤を回転軸10の上面11に図示しない塗布装置にて塗布する。
回転軸10の上方、かつ、記憶している位置ずれ量からパルス円板7の中心と回転軸10の上面11の中心とが2次元で一致する位置に、倣い機構1を移動させる(図1(a))。
移動後、ロボットを下降させることにより、倣い動作を開始させる。この動作は先述した手順にて実施され、倣い動作の完了を検出し、接着剤が効果を発揮するまで、加圧エアを供給し続ける。
ここで、例えば紫外線硬化型の接着剤を利用すれば、押し付け状態を維持したまま紫外線を一定時間照射することにより、姿勢を維持したまま固定ができる。図7に組付け最終状態を示す。
【0031】
さて、倣い動作においてパルス円板7は回転軸10との接触点C1を中心に回転動作するため、初めに合わせた回転軸10とパルス円板7の中心位置は実際に接着した状態では完全に一致せずにずれが発生してしまう。
しかし、現実の回転軸10の傾きは微小であるため、位置ずれ量も十分小さな値となり、問題ない。図8を用いて具体的なずれ量Wを算出する。
図8(a)が倣い動作直前の接触状態を、図8(b)が倣い動作完了後の状態をそれぞれ示している。また、図8(c)は、図8(a)と図8(b)の部分拡大図を接触点Cにて重ねたものである。この三角形より、C1からパルス円板7の中心までの長さをaとするとき、組み立て時の誤差Wは、
W=a/cosθ−a=a(1/cosθ−1)
となる。ここで、実際のθは微小角度であるため、Wも微小値となる。
例えば、a=5mm、θ=1.5deg では、W=1.7μmとなる。
【0032】
パルス円板7と回転軸10との相対ずれ角を、倣い動作前に変位センサなどにより検出し、検出ずれ角より上記の関係式を用いた想定ずれ量Wを試算し、図示しないロボットの位置を2次元水平面内で補正することにより、倣い動作後に発生する中心位置ずれ量を低減することが可能であることは言うまでも無いことである。
【0033】
また、ここではパルス円板7を把持する倣い機構1を図示しないロボットなどで動作させる場合について述べたが、回転軸10側をロボットなどで移動させても、同様な効果が得られる。
【0034】
以上のように、この発明によると、パルス円板7を吸着状態から回転軸10に押付けた後、吸排気部3からの加圧エアにて倣い動作を実現するため、構造が単純で、倣い機構1の小型化が容易に可能となる。
また、小さな倣い対象物にも適用可能であるとともに、スライダ機構2と吸排気部3のみで構成できるため、安価な倣い機構1を提供できる。
また、倣い力は加圧エアにより吸排気部3の中空断面に負荷される分散圧力の総和となるため、パルス円板7に発生する内部応力を低減可能で、より小型でかつ剛性の小さな対象物への適用も可能となる。
また、吸排気部3とパルス円板7との当接関係が崩れると、その隙間からの加圧エア流量が増加するため、倣い方向への力がパルス円板7に負荷され、全体としての倣い荷重の低減が可能となる。
更に、倣い動作中に、吸排気部3とパルス円板7とは接触状態となるが、接触点がずれないので、摩擦力による影響を受けず、発生すべき摺動抵抗をスライダ機構2に転嫁して解消できるので、高価な空気静圧軸受等を使用しなくても精度の高い倣い機構を安価に提供できる。
【0035】
実施の形態2.
図9は本発明の実施の形態2による倣い機構101の断面を示す図である。ここでも、先の実施の形態1と同様に、倣い機構101のみを図示する。
実施の形態2による倣い機構101は、実施の形態1による倣い機構1とは、吸排気部3の内部の構造のみが異なる。
したがって、実施の形態1と同じ部品はそのまま使用するものとする。
【0036】
吸排気部3の内側にはストッパ31が設置され、圧縮バネ32の下面を支持し、その下方位置を制限している。この圧縮バネ32の上面は押込み部材33の上部のガイド部34と接しており、圧縮バネ32の弾性力により押込み部材33の下方位置を制限している。
押込み部材33の下方先端部には、球面軸受33aが設置され、非常に低い転がり摩擦により滑らかな回転が可能である。また、押込み部材33のガイド部34は上下方向に所定の長さを有しており、吸排気部3の内部においても所定の隙間を有し上下方向に摺動自在に設置されている。
【0037】
吸排気ポート23に加圧エア供給し、あるいは真空引きをしていない場合には、押込み部材33は、先端の球面軸受33aを含めた自重と圧縮バネ32との反力とが釣り合った位置にて静止状態にある。この時、球面軸受33a先端部の初期位置は、吸排気部3の下面位置か上方にある。
なお、別途上方にもストッパ31を設置し、押込み部材33の上面と当接させ、押込み部材33の上方位置を制限してもよい。
【0038】
吸排気ポート23に加圧エアを供給すると、押込み部材33が下方に移動し、図10に示すように、球面軸受33aの先端部が吸排気部3の下面より飛び出る。また、押込み部材33の移動速度や押込み部材33が下方に向けて発する力は加圧エアの供給量や供給圧、圧縮バネ32のバネ定数により、自在に調整可能である。さらに、押込み部材33のガイド部34に上下方向に貫通穴を設け、加圧エアを受圧する面積を調整することも可能である。
【0039】
次に、倣い機構101の倣い動作について説明する。
倣い動作以外の動作は実施の形態1と同様であるため省略し、倣い動作のみについて説明する。
吸排気ポート23から真空引きをすると、押込み部材33と吸排気部3との隙間、あるいは、ガイド部34に設けた貫通穴を介して、吸排気部3の先端部から真空引きが可能となり、図示しない倣わせ対象であるパルス円板7を吸着固定可能となる。つまり、実施の形態1での図1(a)と同じ状態となる。
次に、回転軸10への押し当て動作となるが、これも実施の形態図1(b)と同様となり、吸着固定したパルス円板7と回転軸10との接触状態の検出も同様に行う。この後、更に倣い動作が進むが、ここから先は実施の形態1とは動作が異なる。
【0040】
パルス円板7と回転軸10との接触状態を検出すると、吸排気ポート23の真空引きを停止し、加圧エアを供給する。この加圧エアにより、吸排気部3の内側と対面するパルス円板7に倣いモーメントが発生する。さらに、加圧エアの圧力により、押込み部材33も下方に移動し始め、遂には、先端部の球面軸受33aがパルス円板7と当接し、倣い動作を促進させる(図11)。
ここで、倣い動作時におけるパルス円板7の回転中心は、初期の接触点C1であり、押込み部材33との接触点である球面軸受33aとは異なるため、球面軸受33aとパルス円板7との接触位置は倣い動作の進行にともなってずれていく。
しかし、転がりを利用した低い摩擦係数のため、摩擦により発生する倣い動作を抑制するモーメントが低減され、滑らかな倣い動作が実現できる。
【0041】
実施の形態2では、実施の形態1とは異なり、球面軸受33aとの接触点に集中荷重を加えることになるが、集中荷重は圧縮バネ32のバネ定数と加圧エアの圧力、および、押込み部材33の受圧面積などで調整可能である。したがって、パルス円板7に許容しうる内部発生応力以下に荷重を調整できるので、パルス円板7を破壊するようなことはない。
倣い動作完了は、図示しない位置センサにより押込み部材33の下降量変化にて検出する。
【0042】
位置センサによって把握できる倣い機構101の位置と倣い動作の状況との関係について図12を用いて説明する。横軸が倣い動作のステップで、縦軸が倣い機構101の移動量を示している。
倣い動作を開始すると、押込み部材33の先端部はパルス円板7に向かって下降し(AからBの位置)、遂にはパルス円板7と接触する(Bの位置)。押込み部材33の下降は、倣い動作が完了する(C位置)まで続く。
このため、位置センサが出力するデータの履歴変化は「一定−増加−一定」となる。これより、押込み部材33の移動量が増加後に一定値となれば、倣い動作が完了したことを知ることができる。
なお、力センサによる検出も可能ではあるが、パルス円板7には、押込み部材33の押付け以外に、加圧エアによる力も受けるため、加圧エアの状況(圧力、流量など)を考慮した閾値を利用する必要があり、上記の位置センサによる検出よりも困難となるため、位置センサによる検出の方が好ましい。
【0043】
弾性力を発生する構成としてここでは圧縮バネ32を図示しているが、弾性力を発生可能な板バネや形状記憶合金を利用しても良いし、永久磁石や電磁石などの磁力などの反発力、あるいは、吸引力を利用しても同様の効果が得られる。
また、接触摩擦係数の小さな構成として球面軸受33aを図示しているが、小さな摩擦係数を実現できれば良いので、先端部を摩擦係数の小さな材質で構成すればよい。
さらに、ここでは、押込み部材33の中心軸に1つの先端部で構成されているが、複数個の先端部を有する構成であっても良い。
【0044】
この発明の実施の形態2によると、パルス円板7を吸着状態から回転軸10に押付けた後、吸排気部3からの加圧エアと吸排気部3内部に設置された押込み部材33を主として倣い動作を実現するため、倣い機構101のコンパクト化が可能で、小型な対象物にも適用可能であるとともに、スライダ機構2と吸排気部3のみの構成のため、より精度の高い倣い機構101を実現できる。
また、倣い動作において、パルス円板7の押圧を加圧エアの他、押込み部材3による押込みにより実現することから、より確実な倣い動作を実現できる。
また、倣い動作中に、パルス円板7と押込み部材33とは接触状態となるが、押込み部材33の先端に球面軸受33aを設置することにより摩擦抵抗を低減できるため、スライダ機構2に要求される性能を緩和できる。これにより、安価な接触式のスライダ機構2が利用でき、全体として安価に倣い機構101を構成できる。
さらに、押込み部材33の移動量を常時モニタすることにより、倣い機構101が正常に動作しているか否かを把握でき、信頼性の高い倣い機構101を提供できる。
【0045】
なお、この実施の形態2では、実施の形態1の発展型として、球面軸受33aを備えた倣い機構101を説明したが、スライダ機構2を省略しても、接触点の摩擦の影響を受けない倣い機構としての機能を発揮できる。
【符号の説明】
【0046】
1,101 倣い機構、2 スライダ機構、21 摺動部、22 摺動保持部、
221 摺動保持天板、222 摺動保持フランジ、2a 摺動面、2b シール部、
23 吸排気ポート、3 吸排気部、31 ストッパ、32 圧縮バネ、
33 押込み部材、33a 球面軸受、34 ガイド部、7 パルス円板、
10 回転軸、11 上面。
【技術分野】
【0001】
この発明は、倣い対象物を倣い基準物に倣わせるための倣い機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日の自動化された装置、設備には多数の駆動部が存在し、その駆動部の位置、あるいは、速度が制御されている。エンコーダは、この駆動部の位置・速度情報を得るためのセンサの1種であり、直動型のリニア・エンコーダと回転型のロータリ・エンコーダに大別される。また、位置検出原理には、光学式と磁気式などがある。
【0003】
この発明に係る倣い機構が取り扱う対象となる光学式ロータリ・エンコーダについて、その位置検出方法を中心に概説する。
光学式ロータリ・エンコーダは駆動部の回転部に接続される回転軸(中実、中空のいずれでも良い)と、その回転軸と一体で回転するパルス円板と、パルス円板を挟み込む一対の発光・受光素子、そして、この光学素子の駆動・処理回路などから構成される。ここで、パルス円板には、スリット状の穴加工や、マスキング処理、あるいは、所望の透過率が得られるような厚みや表面処理が施されている。これらの処理により発光ダイオード(LED)などの発光素子からの光が、パルス円板を通過して、フォトダイオード(PD)などの受光素子へ入力されることにより回転数(位置)が符号化されることになる。具体的な構成としては、回転軸と回転円板を樹脂で一体成形したものもあるが、金属製あるいは樹脂製の回転軸にガラス製の回転円板を接着固定したものが一般的である。
【0004】
昨今、各種装置類が取り扱う対象物の小型化に伴い、自動化装置、設備のコンパクト化や高精度な加工・組立のための駆動位置制御の高精度化(高分解能化)が求められている。このため、位置、あるいは、速度を検出する光学式ロータリ・エンコーダに対しても小型化と高精度化の両方が求められる。
【0005】
この実現には、パルス円板のスリット穴加工ピッチ・幅や、マスキング幅の縮小化、光学素子および処理回路の応答周波数の向上はもちろんのこと、組立精度の向上が必要不可欠である。各構成要素に許容される設置位置・設置姿勢の誤差の範囲が厳しく制約されるためである。
例えば、パルス円板が回転軸に対しずれた姿勢で接着固定された場合、光学素子であるLEDやPDなどにパルス円板が接触し、破壊する可能性がある。また、これらが接触しない場合でも、発光素子のLEDから、パルス円板を通過して受光素子のPDまで十分な光が届かず、所望の精度が得られず、回転位置センサとして利用できないこともある。
【0006】
以上のように、回転軸とパルス円板組立時には、位置ばかりでなく姿勢も高精度に調整する必要があり、回転軸とパルス円板の姿勢ずれを回転位置センサの性能を維持できる範囲内に収める必要がある。すなわち、回転軸の上面にパルス円板を高精度に倣わせる必要がある。
通常この工程はパルス円板を保持する倣い機構を、回転軸に押付けることで実現されている。以後、この押付け力を倣い力と呼ぶこととする。
一般的には倣い力が大きい方が、回転軸とパルス円板との接触点での回転モーメントが大きくなるため、倣い精度は向上する。
一方、エンコーダの小型化に伴い、パルス円板の厚みはより薄く、回転軸の直径はより小さく構成されるため、構成部品の剛性は低下する。したがって、小さな倣い力で十分な倣い精度を実現する必要がある。
【0007】
小さな倣い力と精度の向上の両立を目指した倣い機構として、静圧空気軸受けを利用するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−329749号公報(段落0016、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、小さな倣い力で高精度な倣いを実現できるが、揺動ステージの支持とスライダ機構の保持のため静圧空気軸受けを2カ所で使用しなければならず、部品点数が多く、製造にも、保守にも時間とコストがかかるという問題があった。
【0010】
この発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり。小さな倣い力で高い倣い精度を実現できる安価な倣い機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による倣い機構は、摺動保持部及びこの摺動保持部に沿って2次元に摺動可能な摺動部を備えたスライダ機構と、
摺動部から摺動方向垂直に突出した中空の吸排気部と、
この吸排気部からエアーを吸入、またはこの吸排気部にエアーを排気する吸排気ポートとを備えた倣い機構において、
吸排気部に吸着した倣い対象物を、固定した倣い基準物に押し当て、
倣い対象物と倣い基準物の接点と、吸排気部と倣い対象物の接点が共に離れないように吸排気ポートのエアー流量を制御して、倣い対象物を倣い基準物に倣わせることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明による倣い機構は、吸排気部に吸着した倣い対象物を、固定した倣い基準物に押し当て、
倣い対象物と倣い基準物の接点と、吸排気部と倣い対象物の接点が共に離れないように吸排気ポートのエアー流量を制御して、倣い対象物を倣い基準物に倣わせることを特徴とするものなので、
小さな倣い力で高精度の倣いを実現できる倣い機構を安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1による倣い機構の動作を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による倣い機構を、吸排気部の軸を含む平面で切断した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1による倣い機構を吸排気部の軸方向垂直に、図2AA線を含む平面で切断した断面図である。
【図4】図1(b)の状態にある倣い機構の吸排気部とパルス円板、及び完全に倣った状態にある倣い機構の吸排気部とパルス円板と回転軸とを合成した拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態1による倣い機構の加圧エアがパルス円板に加える力を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1による倣い機構の倣い動作中における加圧エアの流量の変化を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1による倣い機構を使用して組み立てたパルス円板と回転軸を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1による倣い機構を使用して組み立てたパルス円板の中心と回転軸の中心との位置ずれ誤差を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2による倣い機構の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2による倣い機構の吸排気ポートに加圧エアを供給した状態を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2による倣い機構の吸排気ポートに加圧エアを供給した状態を示す要部拡大断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2による倣い機構101の倣い動作と倣い機構101の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1による係る倣い機構1を使用してロータリ・エンコーダ(以下単にエンコーダという)の回転軸(倣い基準物)端部にエンコーダのパルス円板(倣い対象物)を倣わせて、これらを精度良く組み立てる手順について図を用いて説明する。
【0015】
まず、この発明の実施の形態1に係る倣い機構が実現しようとする「倣い」について説明する。
図1(a)に示す倣い機構1(符号3,21,22で構成される部分、詳細は後述)は、倣い基準物であるエンコーダの回転軸10の上面11に、吸排気部3に吸着しているエンコーダのパルス円板7を倣わせるための装置である。
回転軸10は回転軸10を含む図示しない筐体を把持具によって把持されているのであるが、把持部の成形精度・加工精度などにより対象ワーク毎に、毎回微妙にずれが生じる。この回転軸10の上面11にパルス円板7を精度良く接着固定するためには、回転軸10が把持固定されている状態で、毎回、回転軸10の上面11の中心位置と、倣い機構1で吸着しているパルス円板7の中心位置を計測し、その2つの中心が精度良く重なるように、パルス円板7を回転軸10に倣わせる必要がある。
【0016】
具体的には、図1(a)の状態から、倣い機構1を図1(b)のように回転軸10に押し当てた後、所定の手順でパルス円板7の上面に加圧エアを噴射して、図1(c)のようにパルス円板7の下面を回転軸10の上面11に倣わせていく。
この過程において、回転軸10とパルス円板7の接触点、及びパルス円板7と倣い機構1の接触点がそれぞれ摺り動こうとする力を、スライダ機構2のスライド動作によって吸収することがこの倣い機構1で実現する倣いの特徴である。
【0017】
この実施の形態1では倣い機構1の構成と、エンコーダの回転軸10とパルス円板7を接着するまでの工程を説明する。
なお、この「倣い」の過程で動作するのは倣い機構1側であって、回転軸10は常に固定されているものである。
【0018】
図2は本発明の実施の形態1による倣い機構1を、吸排気部3の軸を含む平面で切断した断面図である。
また、図3は倣い機構1を、吸排気部3の軸方向垂直に、図2、AA線を含む平面で切断した断面図である。
説明を簡単にするために、倣い機構1のみを示しているが、実際にはこの倣い機構1がロボットの手先などに搭載されている。
倣い機構1は、スライダ機構2と吸排気部3とで構成されている。
スライダ機構2は、摺動部21と、摺動保持部22で構成され、さらに摺動保持部22は摺動保持天板221及びこの摺動保持天板221に固定された摺動保持フランジ222で構成されている。
摺動部21は摺動面2aを介して摺動保持天板221及び摺動保持フランジ222に接触していて、この2つの部材で囲まれた空間の内部を2次元に摺動する。
図示していないが摺動面2aはボールやクロスローラなど摺動抵抗が小さな部材を利用している。
【0019】
図3に示すように、摺動部21は摺動保持222の内側で自由に回転摺動できる。
つまり、摺動部21は摺動保持フランジ222の内径と、摺動部21の半径の差の2倍の長さに渡って、図の上下左右方向に直線的に摺動可能であり、さらに吸排気ポート23を中心として回転することも可能である。
図2に示す円筒状の吸排気部3は摺動部21に図示しないネジなどで固定されるとともに摺動保持天板221中央に設けられた吸排気ポート23を介し、図示しない外部の空圧器機に接続されている。
この流路の気密は、スライダ機構2が摺動面2aを介して水平に摺動しても、シール部2bにより確保される構造となっている。
【0020】
次に、倣いの動作について詳細に説明する。
説明の順序として、最初に倣い動作のみを説明し、接着剤塗布動作などの他の動作も含めた全体の手順については、その後で説明する。
図1(a)がパルス円板7を吸着している倣い機構1を側面から見た図であり、図1(b)が倣い基準物(ここでは回転軸10)と倣い機構1が接触した状態を示す図であり、
図1(c)は倣い終期にある倣い機構1を側面から見た図である。
倣い機構1、および回転軸10が鉛直方向に対して姿勢ずれが発生している一般的な状況を示している。回転軸10のずれは、回転軸を固定している図示しない軸受を含む筐体が鉛直方向に対して姿勢ずれが発生している状況を示している。
説明を簡単にするため、倣い機構1はこれを搭載するロボットによって水平に保たれているものとするが、傾いていても構わない。
また、説明を容易にするため、回転軸10が大きく傾いた図を使用しているが実際には僅かに傾いている状態である。
なお、図に示す回転軸10の上面11は回転軸10の中心軸に対して十分な精度で直角に保持されているものとする。
【0021】
まず、図示しないパルス円板7の置き場にて、倣い機構1の上方中央に設けた吸排気ポート23から真空引きすることにより吸排気部3からエアーを吸引する。
これによりパルス円板7の上面が吸排気部3の下面に接触吸着される。
この時のパルス円板7は、吸排気部3の先端部の下面に沿っている。
次に、パルス円板7を吸着保持した状態のまま、倣い機構1を図示しないロボットなどの手段により、回転軸10の上方に移動し(図1(a)、倣い基準物である回転軸10に接触するまで下降させる(図1(b))。
パルス円板7の下面と回転軸10の上面との接触は、図示しない力センサや位置センサなどにより検出可能である。力センサの場合には接触後発生する反力の増大を検出し、位置センサの場合には接触後位置が一定値となり不変となることを検出する。
【0022】
接触状態を検出したら、吸排気ポート23からの真空引きを停止し、吸排気ポート23を大気に開放する。この時、パルス円板7の上面は吸排気部3と接触していて、下面は回転軸10に接触している。
ここから更に倣い動作が進行すると、図1(c)に示すような状態でパルス円板7が回転軸10の上面11上に倣うのであるが、この過程について次に詳述する。
図4(a)は図1(b)の状態にあるスライダ機構1とその吸排気部3に吸着されたパルス円板7(破線で表示)および、完全に倣った状態にあるスライダ機構1及びパルス円板7(実線で表示)を合成した拡大図である。
図4(b)は図4(a)の要部を更に拡大した図である。
【0023】
図において、回転軸10は固定されているので動かない。回転軸10の上面11とパルス円板7の最初の接触点をC1、パルス円板7と吸排気部3の左下端の最初の接触点をC2とする。
パルス円板7の吸着を止めて吸排気ポート23を外気に開放しても、吸排気部3の内側は外気に対して負圧状態にあるので、パルス円板はすぐには落下しない。
ここで、倣い機構1を更に下降させると、接触点C1及び接触点C2を支点としてパルス円板7が矢印方向に回転を始める。この時、吸排気ポート23から吸排気部3内部に徐々に加圧エアを供給し、パルス円板7が吸排気部3内に残存する負圧の影響を受けないで接触点C1、接触点C2を支点としてスムーズに矢印方向に回転できるように制御する。
【0024】
すると接触点C1および接触点C2が、互いに接触する部品間で摺り動かない。
図4(b)に示すように倣い機構1がパルス円板7に最初に接触した時の接触点C2の位置が倣い動作中に不動であれば、接触点C2の位置は倣い終了時にはC2’の位置にある。この水平方向の位置ずれを吸収する役割をスライダ機構2が担いスライダ機構2の摺動部21が同じ長さだけ右へ移動することになる。図1(c)のスライダ機構2は、この状況を示している。
もし、スライダ機構2が無ければ、接触点C1、C2のいずれか一方、或いは双方が、それぞれ接触している部品間で摺り動かなければならない。
しかし、この場合は双方の部品間に相当の摩擦力が働くために、スムーズな倣いが実現できない。
本実施の形態では、パルス円板7の回転動作と同期して、それぞれの接触点C1、C2を摺り動かせることなくスライダ機構2が水平方向に動作するため、接触点C1を中心とする回転動作が円滑に実現され、接触点C1、C2での摩擦の問題が解決できる。
【0025】
図では説明を簡単にするため接触点C1が左端にある状態を示して説明したが、スライダ機構2は2次元で所定の範囲を自由に摺動できるので接触点がどこであっても対応できる。
【0026】
次に、倣い動作中の加圧エアの効果について更に説明する。
上述のように、倣い機構1にパルス円板7が接触した後、更に倣い機構1を下降させながら吸排気部3へ加圧エアを供給し始めるのであるが、この加圧エアの供給により、パルス円板7を倣わせる方向に働く回転モーメントが発生する。
ここで、回転モーメントは吸排気部3の中空面積全体に働く加圧エアのエア圧と回転中心C1からの距離の積の総和となるため(図5)、パルス円板7への負荷は広い範囲に分散され低い剛性のパルス円板7でも倣い動作を実現できる。
【0027】
さらに、吸排気部3とパルス円板7との当接関係が崩れた箇所からの加圧エア流量が増加するため、倣い方向へ働く力がパルス円板7に負荷され、更なる倣い力の低減が可能となる。これより、スライダ機構2に要求される摺動性は緩和され、静圧空気軸受などの高価なものではなく、クロスボールなどを利用した安価な接触式のスライダ機構2を利用できる。
また、従来のスライダ機構だけの倣い機構では、パルス円板7の上面と吸排気部3の下面との接触点のみに集中荷重がかかるため、パルス円板7の剛性により倣い力が制約され、その結果倣い精度の上限が存在してしまう問題があったがこれが解消できる。
【0028】
一方、倣い動作の完了は、加圧エアの流量変化により検出することも可能である。図6にその概念図を示す。横軸が動作履歴、縦軸が加圧エア流量である。
吸排気ポート23から真空引きを開始し(位置A)、負圧エアがある一定値となる。パルス円板7を吸着し始めると真空引きエア流量が低下し(位置B)、完全に吸着すると小さな真空引きエア流量となる(位置C)。次に、回転軸10との接触を検出後、真空引きをやめ、加圧エアを供給し始める(位置D)。パルス円板7と吸排気部3との間に生成される隙間が徐々に大きくなり、加圧エア流量も増加する。そして、倣い動作が完了すると、上記隙間はある一定値となるため、隙間から流出するエア流量も一定となる(位置E)。
以上のことから、加圧エア変化がほぼない状態が倣い動作が完了したタイミングとなる。
ここで、吸排気部3の中空断面形状は、円形、四角形などどのような形状でも同様な効果があることは言うまでも無いことである。
ただし、吸排気部3の中心から離れた距離の断面がより大きな方が、倣い動作時の加圧エアの効果は大きくなる。
【0029】
次に、接着剤の塗布も含めた全体の工程を含めて再度説明する。
パルス円板置き場にあるパルス円板7を図示しないCCDカメラなどの画像センサなどを利用して撮影し、これから吸着して取得すべきパルス円板7の上面の中心位置を2次元で検出する。この検出位置に基づき、図示しないロボットなどで倣い機構1をその真上に移動させる。
この後、吸排気ポート23から真空引きを開始し、パルス円板7へ向け倣い機構1を下降させてこれを真空吸着する。
パルス円板7を真空吸着したら、再度画像センサを利用して吸排気部3の中心と、吸着したパルス円板7の中心位置との位置ずれ量を検出し、この位置ずれを2次元で記憶する。
一方、固定されている回転軸10の軸の上面11の中心位置も画像センサにて検出し、その位置を2次元座標軸で記憶する。
【0030】
次に、接着剤を回転軸10の上面11に図示しない塗布装置にて塗布する。
回転軸10の上方、かつ、記憶している位置ずれ量からパルス円板7の中心と回転軸10の上面11の中心とが2次元で一致する位置に、倣い機構1を移動させる(図1(a))。
移動後、ロボットを下降させることにより、倣い動作を開始させる。この動作は先述した手順にて実施され、倣い動作の完了を検出し、接着剤が効果を発揮するまで、加圧エアを供給し続ける。
ここで、例えば紫外線硬化型の接着剤を利用すれば、押し付け状態を維持したまま紫外線を一定時間照射することにより、姿勢を維持したまま固定ができる。図7に組付け最終状態を示す。
【0031】
さて、倣い動作においてパルス円板7は回転軸10との接触点C1を中心に回転動作するため、初めに合わせた回転軸10とパルス円板7の中心位置は実際に接着した状態では完全に一致せずにずれが発生してしまう。
しかし、現実の回転軸10の傾きは微小であるため、位置ずれ量も十分小さな値となり、問題ない。図8を用いて具体的なずれ量Wを算出する。
図8(a)が倣い動作直前の接触状態を、図8(b)が倣い動作完了後の状態をそれぞれ示している。また、図8(c)は、図8(a)と図8(b)の部分拡大図を接触点Cにて重ねたものである。この三角形より、C1からパルス円板7の中心までの長さをaとするとき、組み立て時の誤差Wは、
W=a/cosθ−a=a(1/cosθ−1)
となる。ここで、実際のθは微小角度であるため、Wも微小値となる。
例えば、a=5mm、θ=1.5deg では、W=1.7μmとなる。
【0032】
パルス円板7と回転軸10との相対ずれ角を、倣い動作前に変位センサなどにより検出し、検出ずれ角より上記の関係式を用いた想定ずれ量Wを試算し、図示しないロボットの位置を2次元水平面内で補正することにより、倣い動作後に発生する中心位置ずれ量を低減することが可能であることは言うまでも無いことである。
【0033】
また、ここではパルス円板7を把持する倣い機構1を図示しないロボットなどで動作させる場合について述べたが、回転軸10側をロボットなどで移動させても、同様な効果が得られる。
【0034】
以上のように、この発明によると、パルス円板7を吸着状態から回転軸10に押付けた後、吸排気部3からの加圧エアにて倣い動作を実現するため、構造が単純で、倣い機構1の小型化が容易に可能となる。
また、小さな倣い対象物にも適用可能であるとともに、スライダ機構2と吸排気部3のみで構成できるため、安価な倣い機構1を提供できる。
また、倣い力は加圧エアにより吸排気部3の中空断面に負荷される分散圧力の総和となるため、パルス円板7に発生する内部応力を低減可能で、より小型でかつ剛性の小さな対象物への適用も可能となる。
また、吸排気部3とパルス円板7との当接関係が崩れると、その隙間からの加圧エア流量が増加するため、倣い方向への力がパルス円板7に負荷され、全体としての倣い荷重の低減が可能となる。
更に、倣い動作中に、吸排気部3とパルス円板7とは接触状態となるが、接触点がずれないので、摩擦力による影響を受けず、発生すべき摺動抵抗をスライダ機構2に転嫁して解消できるので、高価な空気静圧軸受等を使用しなくても精度の高い倣い機構を安価に提供できる。
【0035】
実施の形態2.
図9は本発明の実施の形態2による倣い機構101の断面を示す図である。ここでも、先の実施の形態1と同様に、倣い機構101のみを図示する。
実施の形態2による倣い機構101は、実施の形態1による倣い機構1とは、吸排気部3の内部の構造のみが異なる。
したがって、実施の形態1と同じ部品はそのまま使用するものとする。
【0036】
吸排気部3の内側にはストッパ31が設置され、圧縮バネ32の下面を支持し、その下方位置を制限している。この圧縮バネ32の上面は押込み部材33の上部のガイド部34と接しており、圧縮バネ32の弾性力により押込み部材33の下方位置を制限している。
押込み部材33の下方先端部には、球面軸受33aが設置され、非常に低い転がり摩擦により滑らかな回転が可能である。また、押込み部材33のガイド部34は上下方向に所定の長さを有しており、吸排気部3の内部においても所定の隙間を有し上下方向に摺動自在に設置されている。
【0037】
吸排気ポート23に加圧エア供給し、あるいは真空引きをしていない場合には、押込み部材33は、先端の球面軸受33aを含めた自重と圧縮バネ32との反力とが釣り合った位置にて静止状態にある。この時、球面軸受33a先端部の初期位置は、吸排気部3の下面位置か上方にある。
なお、別途上方にもストッパ31を設置し、押込み部材33の上面と当接させ、押込み部材33の上方位置を制限してもよい。
【0038】
吸排気ポート23に加圧エアを供給すると、押込み部材33が下方に移動し、図10に示すように、球面軸受33aの先端部が吸排気部3の下面より飛び出る。また、押込み部材33の移動速度や押込み部材33が下方に向けて発する力は加圧エアの供給量や供給圧、圧縮バネ32のバネ定数により、自在に調整可能である。さらに、押込み部材33のガイド部34に上下方向に貫通穴を設け、加圧エアを受圧する面積を調整することも可能である。
【0039】
次に、倣い機構101の倣い動作について説明する。
倣い動作以外の動作は実施の形態1と同様であるため省略し、倣い動作のみについて説明する。
吸排気ポート23から真空引きをすると、押込み部材33と吸排気部3との隙間、あるいは、ガイド部34に設けた貫通穴を介して、吸排気部3の先端部から真空引きが可能となり、図示しない倣わせ対象であるパルス円板7を吸着固定可能となる。つまり、実施の形態1での図1(a)と同じ状態となる。
次に、回転軸10への押し当て動作となるが、これも実施の形態図1(b)と同様となり、吸着固定したパルス円板7と回転軸10との接触状態の検出も同様に行う。この後、更に倣い動作が進むが、ここから先は実施の形態1とは動作が異なる。
【0040】
パルス円板7と回転軸10との接触状態を検出すると、吸排気ポート23の真空引きを停止し、加圧エアを供給する。この加圧エアにより、吸排気部3の内側と対面するパルス円板7に倣いモーメントが発生する。さらに、加圧エアの圧力により、押込み部材33も下方に移動し始め、遂には、先端部の球面軸受33aがパルス円板7と当接し、倣い動作を促進させる(図11)。
ここで、倣い動作時におけるパルス円板7の回転中心は、初期の接触点C1であり、押込み部材33との接触点である球面軸受33aとは異なるため、球面軸受33aとパルス円板7との接触位置は倣い動作の進行にともなってずれていく。
しかし、転がりを利用した低い摩擦係数のため、摩擦により発生する倣い動作を抑制するモーメントが低減され、滑らかな倣い動作が実現できる。
【0041】
実施の形態2では、実施の形態1とは異なり、球面軸受33aとの接触点に集中荷重を加えることになるが、集中荷重は圧縮バネ32のバネ定数と加圧エアの圧力、および、押込み部材33の受圧面積などで調整可能である。したがって、パルス円板7に許容しうる内部発生応力以下に荷重を調整できるので、パルス円板7を破壊するようなことはない。
倣い動作完了は、図示しない位置センサにより押込み部材33の下降量変化にて検出する。
【0042】
位置センサによって把握できる倣い機構101の位置と倣い動作の状況との関係について図12を用いて説明する。横軸が倣い動作のステップで、縦軸が倣い機構101の移動量を示している。
倣い動作を開始すると、押込み部材33の先端部はパルス円板7に向かって下降し(AからBの位置)、遂にはパルス円板7と接触する(Bの位置)。押込み部材33の下降は、倣い動作が完了する(C位置)まで続く。
このため、位置センサが出力するデータの履歴変化は「一定−増加−一定」となる。これより、押込み部材33の移動量が増加後に一定値となれば、倣い動作が完了したことを知ることができる。
なお、力センサによる検出も可能ではあるが、パルス円板7には、押込み部材33の押付け以外に、加圧エアによる力も受けるため、加圧エアの状況(圧力、流量など)を考慮した閾値を利用する必要があり、上記の位置センサによる検出よりも困難となるため、位置センサによる検出の方が好ましい。
【0043】
弾性力を発生する構成としてここでは圧縮バネ32を図示しているが、弾性力を発生可能な板バネや形状記憶合金を利用しても良いし、永久磁石や電磁石などの磁力などの反発力、あるいは、吸引力を利用しても同様の効果が得られる。
また、接触摩擦係数の小さな構成として球面軸受33aを図示しているが、小さな摩擦係数を実現できれば良いので、先端部を摩擦係数の小さな材質で構成すればよい。
さらに、ここでは、押込み部材33の中心軸に1つの先端部で構成されているが、複数個の先端部を有する構成であっても良い。
【0044】
この発明の実施の形態2によると、パルス円板7を吸着状態から回転軸10に押付けた後、吸排気部3からの加圧エアと吸排気部3内部に設置された押込み部材33を主として倣い動作を実現するため、倣い機構101のコンパクト化が可能で、小型な対象物にも適用可能であるとともに、スライダ機構2と吸排気部3のみの構成のため、より精度の高い倣い機構101を実現できる。
また、倣い動作において、パルス円板7の押圧を加圧エアの他、押込み部材3による押込みにより実現することから、より確実な倣い動作を実現できる。
また、倣い動作中に、パルス円板7と押込み部材33とは接触状態となるが、押込み部材33の先端に球面軸受33aを設置することにより摩擦抵抗を低減できるため、スライダ機構2に要求される性能を緩和できる。これにより、安価な接触式のスライダ機構2が利用でき、全体として安価に倣い機構101を構成できる。
さらに、押込み部材33の移動量を常時モニタすることにより、倣い機構101が正常に動作しているか否かを把握でき、信頼性の高い倣い機構101を提供できる。
【0045】
なお、この実施の形態2では、実施の形態1の発展型として、球面軸受33aを備えた倣い機構101を説明したが、スライダ機構2を省略しても、接触点の摩擦の影響を受けない倣い機構としての機能を発揮できる。
【符号の説明】
【0046】
1,101 倣い機構、2 スライダ機構、21 摺動部、22 摺動保持部、
221 摺動保持天板、222 摺動保持フランジ、2a 摺動面、2b シール部、
23 吸排気ポート、3 吸排気部、31 ストッパ、32 圧縮バネ、
33 押込み部材、33a 球面軸受、34 ガイド部、7 パルス円板、
10 回転軸、11 上面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動保持部及びこの摺動保持部に沿って2次元に摺動可能な摺動部を備えたスライダ機構と、
前記摺動部から摺動方向に対して垂直に突出した中空の吸排気部と、
この吸排気部からエアーを吸入、またはこの吸排気部にエアーを排気する吸排気ポートとを備えた倣い機構において、
吸排気部に吸着した倣い対象物を、固定した倣い基準物に押し当て、
前記倣い対象物と前記倣い基準物の接点と、前記吸排気部と前記倣い対象物の接点が共に摺動しないように前記吸排気ポートのエアー流量を制御して、前記倣い対象物を前記倣い基準物に倣わせることを特徴とする倣い機構。
【請求項2】
前記倣い基準物と前記倣い対象物が接触した後は、前記吸排気部からエアーを排出することを特徴とする請求項1に記載の倣い機構。
【請求項3】
前記吸排気部内には、前記吸排気部からの排気エアーの圧力を受けることにより突出して前記倣い対象物を支持する球面玉軸受を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の倣い機構。
【請求項1】
摺動保持部及びこの摺動保持部に沿って2次元に摺動可能な摺動部を備えたスライダ機構と、
前記摺動部から摺動方向に対して垂直に突出した中空の吸排気部と、
この吸排気部からエアーを吸入、またはこの吸排気部にエアーを排気する吸排気ポートとを備えた倣い機構において、
吸排気部に吸着した倣い対象物を、固定した倣い基準物に押し当て、
前記倣い対象物と前記倣い基準物の接点と、前記吸排気部と前記倣い対象物の接点が共に摺動しないように前記吸排気ポートのエアー流量を制御して、前記倣い対象物を前記倣い基準物に倣わせることを特徴とする倣い機構。
【請求項2】
前記倣い基準物と前記倣い対象物が接触した後は、前記吸排気部からエアーを排出することを特徴とする請求項1に記載の倣い機構。
【請求項3】
前記吸排気部内には、前記吸排気部からの排気エアーの圧力を受けることにより突出して前記倣い対象物を支持する球面玉軸受を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の倣い機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−276432(P2010−276432A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128394(P2009−128394)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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