偏光変換素子および偏光変換素子の製造方法
【課題】高い偏光変換効率を備えると共に耐熱性や耐光性に優れた偏光変換素子、および偏光変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】偏光変換素子1は、光入射面1aおよび光入射面1aに略平行な光射出面1bに略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた、柱状のガラス材11、1/2λ位相差機能を有する一枚の水晶板より成る位相差板12および柱状のガラス材13を備え、ガラス材11と位相差板12との界面に光入射面1aに入射した光を二種類の偏光光に分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜14と、ガラス材11とガラス材13との界面に入射光を反射する反射膜15と、ガラス材11と位相差板12との界面に位相差板との組み合わせで位相差を補償し、偏光変換効率を高める位相差膜16がそれぞれ設けられている。
【解決手段】偏光変換素子1は、光入射面1aおよび光入射面1aに略平行な光射出面1bに略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた、柱状のガラス材11、1/2λ位相差機能を有する一枚の水晶板より成る位相差板12および柱状のガラス材13を備え、ガラス材11と位相差板12との界面に光入射面1aに入射した光を二種類の偏光光に分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜14と、ガラス材11とガラス材13との界面に入射光を反射する反射膜15と、ガラス材11と位相差板12との界面に位相差板との組み合わせで位相差を補償し、偏光変換効率を高める位相差膜16がそれぞれ設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダムな偏光方向を有する光を、一方向の偏光方向を有する光に変換する偏光変換素子および偏光変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタなどの光学機器において、ランダムな偏光方向を有する光(非偏光光)を、一方向の偏光方向を有する光に変換する光学素子として偏光変換素子が知られている。図15は、従来の一般的な偏光変換素子を説明するための模式図であり、(a)は偏光変換素子の斜視図、(b)は(a)を+Z軸方向から矢視した偏光変換素子の平面図である。
図15(a)および図15(b)において、偏光変換素子50は、入射した光を二種類の偏光光に分離するための偏光分離素子51と、偏光分離素子51の光射出面側に選択的に配置され、二種類の偏光光の一方を他方の偏光光に変換するための1/2λ位相差板52とを備えている。なお、偏光変換素子50に入射する光は、その主光線(中心軸)が、システム光軸ALに略平行に入射する。
【0003】
偏光分離素子51は、システム光軸ALに略直交する光入射面と、光入射面に略平行な光射出面と、光入射面および光射出面と所定の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた複数のガラス材51aと、複数の界面に交互に設けられた複数の偏光分離膜51b(図中に実線で示す)および反射膜51c(図中に破線で示す)とを備えている。
複数の界面の光入射面(光射出面)との所定の角度は、一般的に45°であり、ガラス材51aは、X−Y軸方向において略平行四辺形の断面形状を有しZ軸方向に延伸する柱状を成している。
【0004】
偏光分離膜51bは誘電体多層膜で形成され、入射した光線束(S偏光光+P偏光光)を、S偏光の部分光線束(S偏光光)とP偏光の部分光線束(P偏光光)とに分離して、S偏光光を反射し、P偏光光を透過する機能を有する。一方、反射膜51cは誘電体多層膜または金属膜で形成され、反射膜51cに入射したS偏光光を反射する機能を有する。
1/2λ位相差板52は、偏光分離膜51bを透過したP偏光光が通過するガラス材51aの光射出面に格子状に配列して設けられている。この1/2λ位相差板52は、入射するP偏光光を、偏光方向が直交するS偏光光に変換する機能を有している。
【0005】
なお、偏光変換素子50は、一般的に偏光変換素子50に入射する光が偏光分離膜51bのみに入射し、反射膜51cには入射しないように遮光部60bが配列された遮光板60(図15(b)中に二点鎖線で示す)が、光入射面側に配設されて用いられる。
【0006】
このように構成された偏光変換素子50は、図15(b)に示すように、柱状のガラス材51aが延伸する方向をZ軸方向に配置して用いられる。そして、遮光板60の開口部60aより偏光分離素子51のガラス材51aに入射した光(S偏光光+P偏光光)は、偏光分離膜51bにおいてS偏光光とP偏光光の2つの部分光線束に分離される。偏光分離膜51bで分離された一方のS偏光光が、反射膜51cにおいて反射されると共に、分離された他方のP偏光光が偏光分離膜51bを透過して1/2λ位相差板52においてS偏光光に変換される。すなわち、偏光変換素子50において一種類の偏光光に変換されたS偏光光が、偏光変換素子50からシステム光軸ALと略平行方向に射出される。
なお、この例では、1/2λ位相差板52をP偏光光が通過するガラス材51aの光射出面に格子状に配列して設けているが、S偏光光が通過するガラス材51aの光射出面のみに設けた場合には、一種類の偏光光に変換されたP偏光光が得られる。
【0007】
しかしながら偏光変換素子50を構成する1/2λ位相差板52として、有機材料系の位相差フィルムが用いられた従来の偏光変換素子50は、光源から射出された光が通過することによって、位相差フィルムが黄変したり、発熱したりして、位相差フィルムの光学特性の劣化を招く。すなわち耐熱性および耐光性の信頼性に劣るという問題を有している。
【0008】
こうした問題に対応するために、1/2λ位相差板に水晶を用いて構成した偏光変換素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、複数の透光性部材の傾斜端面同士が接合された透光性基材中に偏光分離膜と反射膜とが互いに平行、かつ透光性基材に対する入射光軸に斜めに配置され、第1の透光性部材の偏光分離膜が形成された傾斜端面と第2の透光性部材の傾斜端面との間に、一軸延伸された単層の高分子フィルムからなる1/2λ位相差フィルムとから構成された偏光変換素子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2003−302523号公報
【特許文献2】特開2004−145305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に示される偏光変換素子は、短冊状に加工された水晶よりなる1/2λ位相差板を、偏光分離膜または反射膜に対応して一枚ずつ格子状に配列して、接着剤で貼り合わせて製造される。したがって、耐熱性や耐光性の向上を図ることは可能であるが、1/2λ位相差板を短冊状に加工したり、所定間隔に精度良く並列して接着したりするために、取り扱い時に割れやクラックが発生し易く、しかも製造工程が煩雑化して多大な工数を必要とする課題を有する。また、一枚の1/2λ位相差板では偏光変換効率が低いという問題も有する。
【0011】
一方、特許文献2に示される偏光変換素子は、ガラス製の第1の透光性部材および第2の透光性部材と、高分子フィルムからなる1/2λ位相差フィルムとは、線膨張係数が大きく異なることから、接合部の剥れなどの不具合が発生し易く、しかも長期間に亘る耐熱性および耐光性の確保の面から課題が残る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0013】
[適用例1]
本適用例に係る偏光変換素子は、光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板および第2の透光性基材を備えた偏光変換素子であって、前記第1の透光性基材と前記位相差板との界面に形成され、前記光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、且つ一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、前記第1の透光性基材と前記第2の透光性基材との界面に形成され、入射光を反射する反射膜と、前記位相差板と前記第2の透光性基材との界面に形成され、位相差を補償する位相差膜と、を有することを特徴とする。
【0014】
これによれば、光入射面および光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた複数の第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板および第2の透光性基材を備えた偏光変換素子が、第1の透光性基材と位相差板との界面に光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、第1の透光性基材と第2の透光性基材との界面に入射光を反射する反射膜と、位相差板と第2の透光性基材との界面に位相差を補償する位相差膜を有することにより、偏光分離膜において分離されて位相差板に入射する一方の偏光光が、他方の偏光光に変換される。その際、位相差板と位相差膜とによる位相差の組み合わせで位相差膜が位相差を補償し、偏光変換効率を高めることができる。したがって、一種類の偏光方向に揃った偏光変換効率の優れた偏光光を射出する偏光変換素子が得られる。
また、位相差板が第1の透光性基材と第2の透光性基材との間に互いに貼り合わされて設けられていることによって外部環境に曝されることがなく、耐熱性および耐光性に優れると共に、薄型化した偏光変換素子が得られる。
【0015】
[適用例2]
上記適用例に係る偏光変換素子において、前記位相差膜は低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜より成り、前記位相差膜を形成する前記低屈折率層および前記高屈折率層の光学膜厚が25nm〜100nmの範囲であるのが好ましい。
【0016】
これによれば、位相差膜を形成する低屈折率層および高屈折率層のそれぞれの光学膜厚が25nm〜100nmの範囲であることにより、透過率の損失を抑制すると共に、広波長帯域(略420nm〜略680nmの可視光波長域)の入射光に対して優れた偏光変換効率を備えた偏光変換素子が得られる。また、光入射面に入射する光の広い入射角許容値(±3°程度)に対応することができる。
【0017】
[適用例3]
上記適用例に係る偏光変換素子において、前記位相差板は板厚が80μm程度の水晶板より成るのが好ましい。
【0018】
これによれば、位相差板の板厚が80μm程度の水晶板より成ることにより、位相差膜とによる位相差の組み合わせで位相差膜が位相差を補償し、広波長帯域(略420nm〜略680nmの可視光波長域)の入射光に対して偏光変換効率を高めることができる。したがって、位相差板と位相差膜とによる位相差の組み合わせを行うことにより、板厚の異なる二枚の複屈曲板(水晶板)を光学軸が直交するように積層して接合などすることなく、容易に偏光変換効率を高めることができる。
【0019】
[適用例4]
本適用例に係る偏光変換素子の製造方法は、光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板および第2の透光性基材を備え、前記第1の透光性基材と前記位相差板との界面に形成され、前記光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、且つ一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、前記第1の透光性基材と前記第2の透光性基材との界面に形成され、入射光を反射する反射膜と、前記位相差と前記第2の透光性基材との界面に形成され、位相差を補償する位相差膜と、を有する偏光変換素子の製造方法であって、一方の表面に前記位相差膜が通常蒸着で形成された水晶板と、一方の表面に前記反射膜が形成された第2のガラス板と、一方の表面に前記偏光分離膜が形成された第1のガラス板とを準備する準備工程と、前記各膜の形成面を一方向に揃えて、前記水晶板と前記第2のガラス板と前記第1のガラス板と、を多数板厚方向に順次重ね合わせ、互いが貼り合わされたガラスブロックを形成する基材貼着工程と、前記ガラスブロックを、その表面と略45°の角度を成す複数の略平行で所定の間隔を有する切断面で切断する切断工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
これによれば、一方の表面に位相差を補償する位相差膜が形成された1/2λ位相差機能を有する水晶板と、一方の表面に入射光を反射する反射膜が形成された第2のガラス板と、一方の表面に光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜が形成された第1のガラス板とを、準備する準備工程と、各膜の形成面を一方向に揃えて板厚方向に順次重ね合わせ、互いが貼り合わされたガラスブロックを形成する基材貼着工程と、ガラスブロックをその表面と略45°の角度を成す複数の略平行で所定の間隔を有する切断線に沿って切断する切断工程とを備えることによって、位相差板と位相差膜とによる位相差の組み合わせで位相差膜が位相差を補償し、偏光変換効率を高めた多数の偏光変換素子を一度に得ることができる。すなわち、偏光変換効率を高めた安価な偏光変換素子の製造方法を得ることができる。
さらに、位相差膜16は、斜方蒸着でなくてもよく、通常蒸着が行えるので、品質の安定した蒸着を行うことができる。
【0021】
また、短冊状に加工された1/2λ位相差板を短冊状に加工したり、一枚ずつストライプ状に配列して精度良く接着したりする従来の製造方法に比べて作業性に優れ、しかも取り扱い時に割れやクラックの発生などによる不具合を回避した偏光変換素子の製造方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る偏光変換素子の構成を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示した偏光変換素子のX−Y軸方向における拡大断面図である。なお、これらの図面は、説明の便宜のために各構成要素の寸法や比率を実際のものとは異ならせてある。
【0023】
図1および図2において、偏光変換素子1は、光入射面1aおよび光入射面1aに略平行な光射出面1bに所定の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた柱状の第1の透光性基材としてのガラス材11、位相差板12および第2の透光性基材としてのガラス材13を備え、正面視長方形の直方体形状を成している。また、ガラス材11と位相差板12との界面に偏光分離膜14、ガラス材11とガラス材13との界面に反射膜15、位相差板12とガラス材13との界面に位相差膜16がそれぞれ設けられている。
【0024】
なお、複数の界面が光入射面1aおよび光射出面1bと成す所定の角度は、略45°である。したがって、ガラス材11,13は略平行四辺形の断面形状を成している(但し、両側最端部は三角柱形状を成している)。
ガラス材11およびガラス材13は、透光性基材であれば限定されず、各種光学ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、青板ガラスなどを用いることができる。本実施形態におけるガラス材11,13は、例えば白板ガラス(B270)より成る。
【0025】
位相差板12は、1/2λ位相差機能を有する一枚の水晶板より成る。具体的には、Z軸に対するカット軸105°、光学軸27°、板厚80μm程度の水晶板である。位相差板12は、偏光分離膜14を透過して入射するP偏光光を、偏光方向が直交するS偏光光に変換する機能を有する。
なお、本実施形態における水晶とは、SiO2の単結晶であり、人工水晶または天然水晶のどちらであってもよい。
【0026】
偏光分離膜14は、例えば、MgF2より成る低屈折率層と、ランタンアルミネートより成る高屈折率層とが、所定の層数および光学膜厚で交互に積層された誘電体多層膜より成り、互いに隣り合う位相差板12またはガラス材11の面上に形成されている。この偏光分離膜14は、入射する光(S偏光光+P偏光光)を、偏光方向の異なるS偏光の部分光線束(S偏光光)とP偏光の部分光線束(P偏光光)とに分離して、S偏光光を反射し、P偏光光を透過する機能を有する。
【0027】
反射膜15は、偏光分離膜14と同様に、低屈折率層と高屈折率層とが、所定の層数および光学膜厚で交互に積層された誘電体多層膜より成り、互いに隣り合うガラス材11またはガラス材13の面上に形成されている。この反射膜15は、偏光分離膜14において分離されて入射するS偏光光を反射する機能を有する。なお、反射膜15は、誘電体多層膜に代えてアルミニウム、銀などの金属膜で形成することもできるが、反射率の面などから誘電体多層膜を用いるのが好ましい。
【0028】
位相差膜16は、例えばSiO2よりなる低屈折率層と、例えばTiO2よりなる高屈折率層とが交互に積層された24層の誘電体多層膜より成り、互いに隣り合う位相差板12またはガラス材13の面上に形成されている。この位相差膜16は位相差板12との位相差の組み合わせで偏光変換効率を高める機能を有する。すなわち位相差膜16は、位相差を補償する機能を有する。
なお、偏光分離膜14、反射膜15および位相差膜16を形成する誘電体多層膜は、各基材の表面にそれぞれの誘電体材料を真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーティング法などを用いて成膜される。
【0029】
次に、位相差膜16の膜構成について説明する。
「表1」に位相差膜16の膜構成の一例を示す。膜構成は、光学膜厚nd=1/4λ(nは材料(蒸着物質)の屈折率、dは物理膜厚、λは設計波長を示す)において、設計波長345nm、入射角度45°における設計値である。
「表1」には、多層膜を構成する層No.における材料と、λ=1とした場合の4nd値と、物理膜厚(d(nm))を示す。なお、層No.は、成膜時に形成される位相差板12の表面側から順に1層、2層、3層…と表す。
【0030】
【表1】
「表1」において位相差膜16は、TiO2を1層目として、2層目にSiO2、以後3層目〜24層目の間にTiO2とSiO2が交互に繰り返し成膜された24層の誘電体多層膜で構成されている。
この24層より成る位相差膜16の内、24層目(最上層)の誘電体膜は、反射防止(AR)膜として機能する層であり、1層目〜23層目が実質的な位相差膜として機能する。
【0031】
このように構成された位相差膜16の分光透過率特性および位相差の波長分散特性を、以下に示す。
図3は、位相差膜のP波(TM波)における分光透過率特性を示すグラフであり、図4は、位相差膜のS波(TE波)における分光透過率特性を示すグラフである。
【0032】
グラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に透過率(%)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の計算値のプロット点を結んだ線図である。図中にプロット点を●(黒丸印)で示す線図が入射角45°における分光透過率特性であり、同様に△(三角印)で示す線図が入射角48°、×(ばつ印)で示す線図が入射角42°における分光透過率特性である。
【0033】
図3において、位相差膜16の可視光波長帯(略420nm〜680nm)におけるP波(TM波)の分光透過率特性は、位相差膜16に対する光の入射角45°,42°,48°(45°±3°の範囲)共に略同一の推移を示し、いずれも透過率99%以上の高い値を示す。
【0034】
一方、位相差膜16の可視光波長帯におけるS波(TE波)の分光透過率特性は、図4に示すように、低波長域(420nm〜455nm程度)において、部分的に透過率が99%未満の値を示すが、その範囲以外の波長域においては、いずれも透過率100%に限りなく近い99%以上の高い値を示す。したがって位相差膜16による透過率の損失は極めて低くい。
【0035】
これは、位相差膜16を形成するそれぞれの低屈折率層と高屈折率層(実質的に位相差膜として機能する1層目〜23層目)の光学膜厚が、薄いことにより透過率の損失を極めて低くすることができると言える。
具体的には、「表1」に示す位相差膜16を形成するそれぞれの低屈折率層と高屈折率層の4nd値は、0.28(1層目)〜1.24(2層目)の範囲である。すなわち、位相差膜16は、nd=1/4λであることから、nd(光学膜厚)が略24nm〜107nm範囲の薄い誘電体多層膜で形成されている。
【0036】
この位相差膜16における位相差の波長分散特性を参考に示す。図5は、位相差膜16の位相差の波長分散特性を示すグラフである。
グラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に位相差(deg)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の計算値のプロット点を結んだ線図である。なお、位相差の波長分散特性は、光の入射角45°における値を示す。
【0037】
図5において、位相差膜16の位相差は、波長415nmをピークとして、高波長域に向かって右肩下がりになだらかに低下し、可視光波長帯(略420nm〜680nm)における位相差は、164deg〜50deg程度の値を示す。
なお、この位相差膜16と位相差板12との組み合わせによる分光透過率特性および位相差の波長分散特性については後述する。
【0038】
こうした位相差膜16の膜構成の比較例として、低屈折率層と高屈折率層の光学膜厚が「表1」に示す位相差膜16に比べて厚い膜厚の誘電体膜を含み形成された、比較例1としての位相差膜の膜構成を「表2」に示し、比較例2としての位相差膜の膜構成を「表3」に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
「表2」に示す比較例1の位相差膜の膜構成は、光学膜厚nd=1/4λにおいて、設計波長550nm、入射角度45°における設計値であり、「表3」に示す膜構成は、設計波長1100nm、入射角度45°における設計値である。
また、「表2」および「表3」には、「表1」と同様に多層膜を構成する層No.における材料と、λ=1とした場合の4nd値と、物理膜厚(d(nm))とを示す。
【0041】
「表2」において、比較例1の位相差膜の膜構成は、TiO2を1層目として、2層目にSiO2、以後3層目〜14層目の間にTiO2とSiO2が交互に繰り返し成膜された14層の誘電体多層膜で構成されている。この14層より成る位相差膜の内、14層目(最上層)の誘電体膜は、「表1」に示す位相差膜16の膜構成と同様に反射防止(AR)膜として機能する層である。この最上層の誘電体膜については、「表3」に示す比較例2としての位相差膜の膜構成についても同様である。
【0042】
比較例1の位相差膜を形成するそれぞれの低屈折率層と高屈折率層の4nd値は、0.49(13層目)〜1.00(3層目〜12層目)の範囲である。すなわち、nd=1/4λであることから、nd(光学膜厚)は略67nm〜137nm範囲であり、「表1」に示す位相差膜16に比べて厚い誘電体多層膜を含み形成されている。
【0043】
そして、「表3」に示す比較例2の位相差膜の膜構成は、TiO2を1層目として、2層目にSiO2、以後3層目〜6層目の間にTiO2とSiO2が交互に繰り返し成膜された6層の誘電体多層膜で構成されている。
この位相差膜を形成するそれぞれの低屈折率層と高屈折率層の4nd値は、0.98(5層目)〜1.99(3層目)の範囲である。すなわち、nd=1/4λであることから、nd(光学膜厚)は略270nm〜547nm範囲であり、「表1」に示す位相差膜16に比べて極めて厚い誘電体多層膜で形成されている。
【0044】
このように膜構成された比較例1および比較例2としての位相差膜の分光透過率特性および位相差の波長分散特性を以下に示す。
図6は、比較例1としての位相差膜における分光透過率特性を示すグラフであり、図7は、比較例1としての位相差膜における位相差の波長分散特性を示すグラフである。同様に、図8は、比較例2としての位相差膜における分光透過率特性を示すグラフであり、図9は、比較例2としての位相差膜における位相差の波長分散特性を示すグラフである。
【0045】
図6および図8に示す分光透過率特性を示すグラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に透過率(%)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の計算値のプロット点を結んだ線図である。
また、各図中に実線で示す線図はP波(TM波)における分光透過率特性を示し、破線で示す線図はS波(TE波)における分光透過率特性を示す。なお、分光透過率特性は,位相差膜に対する光の入射角45°における値を示す。
【0046】
一方、図7および図9に示す比較例1および比較例2としての位相差膜の位相差の波長分散特性を示すグラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に位相差(deg)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の計算値のプロット点を結んだ線図である。なお、位相差の波長分散特性は、位相差膜に対する光の入射角45°における値を示す。
【0047】
図6において、比較例1の位相差膜における分光透過率特性は、P波において波長が515nm近辺からの高波長域において99%以上の高い値を示すが、波長420nm近辺の低波長域に向かって20%程度の低い値を示す。同様にS波における分光透過率は、波長が590nm近辺から高波長域において99%以上の高い値を示すが、波長480nm程度以下の低波長域において0%程度の値を示す。
【0048】
また、図8に示す比較例2としての位相差膜における分光透過率特性は、P波において可視光波長帯(略420nm〜680nm)で97%〜99%以上の高い値で推移するが、S波においては、可視光波長帯の全域に亘ってリップルが見られる。このリップルを解消するためには、物理膜厚dが5nm〜30nmの極薄層を含む膜構成を形成して最適化することが必要である。
【0049】
一方、図7に示す比較例1の位相差膜における位相差の波長分散特性は、波長545nm(位相差が略178deg)をピークとして、低波長域および高波長域に向かって低下し、波長420nmにおいて略−1degの反転した値を示し、波長680nmにおいて66deg程度の位相差を示す。
【0050】
また、図9に示す比較例2の位相差膜における位相差の波長分散特性は、波長415nm(略50deg)をピークとして高波長域に向かってリップルを伴いながら右肩下がりに低下し、波長515nm近辺からマイナス位相差に転じ、波長680nmにおいて−38deg程度の値を示す。
【0051】
これらの図6、図8および上記図3、図4に示す分光透過率特性から、上記位相差膜16を形成する低屈折率層と高屈折率層のそれぞれの光学膜厚が、略24nm〜107nm範囲の薄い誘電体多層膜で形成されていることにより、可視光波長帯(略420nm〜680nm)における透過率の損失を極めて低く抑えた、透過率が100%に限りなく近い99%以上の高い値を示す位相差膜16が得られる。
【0052】
また、位相差膜16の位相差の波長分散特性は、図5に示すように可視光波長帯の低波長域から高波長域に向かって右肩下がりになだらかに低下する曲線を描き、比較例1としての位相差膜のように低波長域および高波長域に向かう放物線特性を描いたり、比較例2としての位相差膜のように位相差が低く、しかもマイナスに転じたりすることもない。
こうした結果から、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜より成る位相差膜16の低屈折率層と高屈折率層のそれぞれの好ましい光学膜厚は、25nm〜110nm程度の範囲であると言える。
【0053】
以上に説明した偏光変換素子1を構成する各構成要素は、偏光分離膜14を介して互いに隣り合うガラス材11と位相差板12、位相差膜16を介して互いに隣り合う位相差板12とガラス材13、反射膜15を介して互いに隣り合うガラス材11とガラス材13のそれぞれが、接着剤(図示せず)により互いに貼着(貼り合わせ)されている。接着剤としては、例えば、接着加工が容易で比較的高温度に耐えうる一液性エポキシまたは一液性アクリル系の紫外線硬化型接着剤が用いられる。貼着部は、接着剤を塗布した後、ケミカルランプや高圧水銀灯などの光を照射して接着剤が硬化され、接着固定される。
【0054】
次に、このように構成された偏光変換素子1における入射光の動作を、図2を参照しながら説明する。
光入射面1aに直交するシステム光軸ALに沿って光入射面1aに入射した光(S偏光光+P偏光光)は、ガラス材11と位相差板12との界面に形成された偏光分離膜14に略45°の入射角で入射して、S偏光光とP偏光光の2つの部分光線束に分離される。そして、偏光分離膜14で分離された一方のS偏光光が、隣り合うガラス材13との界面に形成された反射膜15に略45°の入射角で入射して、反射膜15で反射される。反射膜15で反射された反射光は、光射出面1b側に向かう。
【0055】
一方、偏光分離膜14で分離されたP偏光光は、偏光分離膜14を通過して位相差板12に入射し、位相差板12および位相差膜16を通過する。これにより、位相差板12に入射したP偏光光は、位相差板12中で等しい振幅を有する常光線と異常光線とに別れ、異なる位相速度で位相差板12中を進み、入射するP偏光光の電界ベクトルの振動方向と直交する振動方向を有するS偏光光に変換されて、反射膜15で全反射された反射光と共に光射出面1bからシステム光軸ALに略平行方向に射出される。すなわち、偏光変換素子1の光入射面1aに入射した光(S偏光光+P偏光光)は、一種類のS偏光光に変換されて光射出面1bから射出される。
【0056】
こうした入射光の動作において、偏光分離膜14で分離されたP偏光光は、位相差板12および位相差膜16を通過してS偏光光に変換される際に、位相差板12と位相差膜16とによる位相差の組み合わせで位相差膜16が位相差を補償し、位相差板12のみの場合に比べて、可視光波長帯における偏光変換効率を高めることができる。
【0057】
これは、位相差板12のみを用いた場合の低次波長板としての偏光変換性能に対して、位相差板12と位相差膜16とを組み合わせることにより、板厚の異なる二枚の複屈曲板(水晶板)を光学軸が直交するように接合した0次波長板的に機能し、位相差膜16が位相差を補償し、常光線と異常光線とが互いに補正しあって偏光変換効率を高めることができる。
【0058】
図10は、本実施形態に係る偏光変換素子1における位相差の波長分散特性を示すグラフであり、図11は、位相差板12のみを用いた(すなわち、位相差膜16を有しない)偏光変換素子における位相差の波長分散特性を示すグラフである。
それぞれのグラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に位相差(deg)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の測定値のプロット点を結んだ線図である。
【0059】
位相差の波長分散特性は、分光位相差測定装置を用いて、偏光変換素子1の光入射面1aにハロゲンランプ光(可視光)を入射角φ(システム光軸ALに対する傾き角度、図2参照)を0°、+3°、−3°で照射して測定した。
それぞれの図中にプロット点を●(黒丸印)で示す線図が入射角0°における位相差の波長分散特性(位相差特性)であり、同様に△(三角印)で示す線図が入射角+3°、×(ばつ印)で示す線図が入射角−3°における位相差特性である。
【0060】
なお、光入射面1aへの入射角φの値0°、+3°、−3°は、偏光分離膜14(位相差板12および位相差膜16)に対して入射角45°,48°,42°で入射するのに相当する。この光入射面1aへの入射光の入射角±3°の角度範囲は、入射光の光入射面1aに対する入射角許容値であり、ガラス材11の平行四辺形の辺の傾きバラツキ、形状バラツキなどの各種バラツキに対応することが可能となる範囲でもある。
【0061】
図10において、偏光変換素子1の位相差の波長分散特性は、光入射面1aへの入射角0°,+3°,−3°共に、略580nm近辺を最大値としてその波長から高波長域および低波長域に向かうに従ってなだらかに低くなる傾向を示し、特に略420nm以下の低波長域において低下するが、可視光波長帯(略420nm〜680nm)における位相差は、いずれの入射角においても略155°〜179.5°の範囲で、平均位相差165°程度の高い位相差が得られる。
【0062】
一方、図11において、位相差板12のみを用いた偏光変換素子における位相差の波長分散特性は、光入射面1aへの入射角0°,+3°,−3°共に略一致した線図を示し、略530nmを最大値として高波長域および低波長域に向かうに従って低くなる値を示すが、可視光波長帯(略420nm〜680nm)における位相差は略125°〜179°の範囲で、平均位相差135°程度である。
【0063】
以上の結果から、光入射面1aおよび光射出面1bに所定の角度を成す複数で順次貼り合わされたガラス材11、位相差板12およびガラス材13とを備え、ガラス材11と位相差板12との界面に偏光分離膜14、ガラス材11とガラス材13との界面に反射膜15、位相差板12とガラス材13との界面に位相差膜16がそれぞれ設けられた偏光変換素子1は、可視光波長帯の幅広い波長域において優れた位相差(偏光変換効率)を得ることができると共に、光入射面に入射する光に対して±3°程度の広い入射角許容値を有することができる。
【0064】
次に、このように構成された偏光変換素子1の製造方法について説明する。
図12および図13は、本実施形態に係る偏光変換素子1を製造する主要な工程を示す工程断面図であり、図12(a)、図12(b)および図13で示す。なお、これらの図面は、説明の便宜のために各構成要素の寸法や比率を実際のものとは異ならせてある。また、各基材(後述するガラス板および水晶板)は、実際の枚数とは異なる省略した枚数で示す。
【0065】
先ず、図12(a)に示す工程では、予め一方の表面に位相差膜16が形成された複数の1/2λ位相差機能を有する水晶板120と、予め一方の表面に反射膜15が形成された複数の第2のガラス板としてのガラス板130と、予め一方の面上に偏光分離膜14が形成された複数の第1のガラス板としてのガラス板110とを準備する(準備工程)。
【0066】
ガラス板110およびガラス板130は、共に略同一の矩形状の外形形状および所定厚さの白板ガラス(B270)より成る。このガラス板110,130は、偏光変換素子1の完成時に略平行四辺形の断面形状を有する柱状のガラス材11,13を形成する。
水晶板120は、ガラス板110およびガラス板130と略同一の矩形状の外形形状を成した80μm程度の板厚より成り、偏光変換素子1の完成時に位相差板12を形成する。
【0067】
水晶板120の表面上に形成された位相差膜16は、上記「表1」に示したTiO2を1層目として、2層目にSiO2、以後3層目〜24層目の間にTiO2とSiO2が交互に繰り返し成膜された24層の誘電体多層膜で構成されている。また、ガラス板130の一方の表面に形成された反射膜15およびガラス板110の一方の表面に形成された偏光分離膜14は、低屈折率層と高屈折率層とが所定の層数および光学膜厚で交互に積層された誘電体多層膜より成る。
【0068】
これらの位相差膜16、反射膜15および偏光分離膜14は、予め各成膜工程において、それぞれの誘電体材料を真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーティング法などを用いて成膜して形成されている。
【0069】
そして、図12(b)に示す工程では、それぞれ複数の位相差膜16が形成された水晶板120と、反射膜15が形成されたガラス板130と、偏光分離膜14が形成されたガラス板110と、を板厚方向に順次重ね合わせて、互いを貼り合わせる(基材貼着工程)。
【0070】
この基材の貼り合わせ(貼着)は、それぞれ水晶板120の位相差膜16が形成された面とガラス板130の反射膜15が形成された面の他方面、ガラス板130の反射膜15が形成された面とガラス板110の偏光分離膜14が形成された面の他方面、およびガラス板110の偏光分離膜14が形成された面と水晶板120の位相差膜16が形成された面の他方面を貼着面として互いの基材同士を貼着する。
【0071】
それぞれの貼着は、それぞれの界面における少なくともいずれか一方の面上に紫外線硬化型接着剤を塗布した後、ケミカルランプや高圧水銀灯などの光(紫外線)を照射することによって、紫外線硬化型接着剤が硬化され、互いの基材同士が接着固定される。
【0072】
なお、紫外線硬化型接着剤を硬化する際、紫外線を水晶板120の表面に略垂直な方向から照射することによって、複数の貼着面を同時に硬化させることができる。一方、反射膜15をアルミニウム、銀などの金属膜で形成した場合には、紫外線が金属膜で反射されてしまうために、紫外線をそれぞれの基材の表面に略水平な方向から照射する必要がある。
【0073】
これにより、複数の水晶板120、ガラス板130、ガラス板110とがこの順序に順次積層され、水晶板120とガラス板130との界面に位相差膜16、ガラス板130とガラス板110との界面に反射膜15、ガラス板110と水晶板120との界面に偏光分離膜14がそれぞれ設けられたガラスブロックが形成される。
【0074】
そして、図13に示す工程では、複数の水晶板120、ガラス板130、ガラス板110が互いに接着されたガラスブロックを、その表面と成す角度θが略45°の複数の略平行で所定の間隔を有する切断線CL(図中、一点鎖線で示す)で切断する(切断工程)。
【0075】
切断線CLに沿って切断されたガラスブロックからは、図中にドットで示す領域形状の素子ユニットが複数切り出される。切断線CLに沿って切り出された素子ユニットの切断面が偏光変換素子1の光入射面1aおよび光射出面1bに対応する(図1および図2参照)。なお、切断工程の後には、形成された素子ユニットの切断面を、片面ポリッシュ装置または両面ポリッシュ装置を用いて研磨することで、切断面の平坦度および面精度を整えるのが好ましい。
【0076】
そして、切り出されたそれぞれの素子ユニットは、両端面部が所定形状に整形されて、光入射面1aおよび光射出面1bに略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされたガラス材11、位相差板12およびガラス材13とを備え、ガラス材11と位相差板12との界面に偏光分離膜14、ガラス材11とガラス材13との界面に反射膜15、位相差板12とガラス材13との界面に位相差膜16がそれぞれ設けられた偏光変換素子1が完成する(図1および図2参照)。
完成した偏光変換素子1は、光入射面1aに入射する非偏光光(S偏光光+P偏光光)を一種類のS偏光光に変換して光射出面1bから射出することができる。
【0077】
以上の偏光変換素子1の製造方法において、偏光分離膜14がガラス板110の一方の面に形成され、反射膜15がガラス板130の一方の面、位相差膜16が水晶板120の一方の面に、それぞれ形成された場合で説明したが、それぞれの界面に隣り合う基材の内の、どちらか一方の表面に形成することができる。例えば、位相差膜16を水晶板120に代えてガラス板130の反射膜15が形成された面の他方面上に形成するなど、製造工程の容易さなどを考慮して適宜選択することができる。
【0078】
また、複数の位相差膜16が形成された水晶板120と、反射膜15が形成されたガラス板130と、偏光分離膜14が形成されたガラス板110とを、板厚方向に順次重ね合わせて互いを貼り合わせる接着剤として、紫外線硬化型接着剤を用いた場合で説明したが、シランカップリング剤を塗布する又は/及び活性エネルギー線を照射するなどの直接接合法を用いた場合であってもよい。
【0079】
このように構成および製造された偏光変換素子1は、光入射面1aに入射したランダムな偏光方向を有する光(S偏光光+P偏光光)を、一種類のS偏光光またはP偏光光に変換して射出する光学素子として、液晶プロジェクタなどの照明光学系に好ましく用いることができる。
【0080】
偏光変換素子1は、液晶プロジェクタなどの照明光学系に用いる場合に、偏光変換素子1の配置方向を替えることによって、入射する非偏光光に対してP波またはS波の偏光光を射出する機能を容易に得ることができる。
【0081】
図14(a)は完成した偏光変換素子の正面、上面および側面を一括して示す模式図であり、図14(b)は図14(a)に示す偏光変換素子の正面図に対して90°の角度、右回転した状態の正面、上面および側面を一括して示す模式図である。
【0082】
図14(a)に示すように、偏光変換素子1を構成する柱状のガラス材11,13が延伸する方向をZ軸方向に配置して用いることによって、システム光軸ALに略平行に光入射面1aに入射する非偏光光(S偏光光+P偏光光)を、電界が光入射面1aに対して垂直方向のS波(TE波)の偏光光を射出することができる。
【0083】
一方、その偏光変換素子1を90°の角度、右回転して、図14(b)に示すように、偏光変換素子1を構成する柱状の各ガラス材11,13が延伸する方向をX軸方向に配置して用いることによって、システム光軸ALに略平行に光入射面1aに入射する非偏光光を、電界が光入射面1aに対して水平方向のP波(TM波)の偏光光を射出することができる。
なお、偏光変換素子1の回転方向は、右回転または左回転のどちらであってもよい。
【0084】
以上の本実施形態に係る偏光変換素子1は、光入射面1aおよび光入射面1aに略平行な光射出面1bに略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた複数のガラス材11、1/2λ位相差機能を有する位相差板12およびガラス材13を備え、ガラス材11と位相差板12との界面に光入射面1aに入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜14と、ガラス材11とガラス材13との界面に入射光を反射する反射膜15と、位相差板12とガラス材13との界面に位相差を補償する位相差膜16を有することにより、偏光分離膜14において分離されて位相差板12に入射する一方の偏光光が、他方の偏光光に変換される。その際、位相差板12と位相差膜16とによる位相差の組み合わせで位相差膜16が位相差を補償し、偏光変換効率を高めることができる。したがって、一種類の偏光方向に揃った偏光変換効率の優れた偏光光を射出する偏光変換素子1が得られる。また、位相差板12がガラス材11とガラス材13との間に互いに貼り合わされて設けられていることによって外部環境に曝されることがなく、耐熱性および耐光性に優れると共に、薄型化した偏光変換素子1が得られる。
【0085】
また、本実施形態に係る偏光変換素子1は、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜より成る位相差膜16を形成する低屈折率層と高屈折率層のそれぞれの光学膜厚が、25nm〜110nmの範囲であることにより、透過率の損失を抑制すると共に、広波長帯域((略420nm〜略680nmの可視光波長域)の入射光に対して優れた偏光変換効率を備えた偏光変換素子1が得られる。また、光入射面1aに入射する光の広い入射角許容値(±3°程度)に対応することができる。
【0086】
さらに、位相差板12の板厚が80μm程度の一枚の水晶板より成ることにより、位相差膜16と位相差板12とによる位相差の組み合わせで位相差膜16が位相差を補償し、広波長帯域((略420nm〜略680nmの可視光波長域)の入射光に対して偏光変換効率を高めることができる。したがって、位相差板12と位相差膜16とによる位相差の組み合わせを行うことにより、板厚の異なる二枚の複屈曲板(水晶板)を光学軸が直交するように積層して接合などすることなく、偏光変換効率を高めた偏光変換素子1を容易に得ることができる。
【0087】
さらにまた、本実施形態に係る偏光変換素子1の製造方法によれば、一方の表面に位相差を補償する位相差膜16が形成された1/2λ位相差機能を有する水晶板120と、一方の表面に入射光を反射する反射膜15が形成された第2のガラス板130と、一方の表面に光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光に分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜14が形成された第1のガラス板110とを準備する準備工程と、各膜の形成面を一方向に揃えて板厚方向に順次重ね合わせ、互いが貼り合わされたガラスブロックを形成する基材貼着工程と、ガラスブロックをその表面と略45°の角度を成す複数の略平行で所定の間隔を有する切断線CLに沿って切断する切断工程とを備えることによって、位相差板12と位相差膜16とによる位相差の組み合わせで位相差膜16が位相差を補償し、偏光変換効率を高めた多数の偏光変換素子1を一度に得ることができる。
【0088】
また、短冊状に加工された1/2λ位相差板を短冊状に加工したり、一枚ずつストライプ状に配列して精度良く接着したりする従来の製造方法に比べて、作業性に優れ、しかも取り扱い時に割れやクラックの発生などによる不具合を回避した偏光変換素子1の製造方法が得られる。さらに、位相差膜16は、斜方蒸着でなくてもよく、通常蒸着が行えるので、品質の安定した蒸着を行うことができる。従来技術においては出射面に位相差膜を設ける蒸着であるので、斜方蒸着で行わなくてはいけないが、位相差膜16は、入射光の角度が45°であるので、通常蒸着で膜形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施形態に係る偏光変換素子の構成を模式的に示す斜視図。
【図2】図1に示した偏光変換素子のX−Y軸方向における拡大断面図。
【図3】位相差膜のP波における分光透過率特性を示すグラフ。
【図4】位相差膜のS波における分光透過率特性を示すグラフ。
【図5】位相差膜の位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図6】比較例1の位相差膜における分光透過率特性を示すグラフ。
【図7】比較例1の位相差膜における位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図8】比較例2の位相差膜における分光透過率特性を示すグラフ。
【図9】比較例2の位相差膜における位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図10】本実施形態に係る偏光変換素子における位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図11】比較例としての偏光変換素子における位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図12】本実施形態に係る偏光変換素子を製造する主要な工程を示す工程断面図。
【図13】本実施形態に係る偏光変換素子を製造する主要な工程を示す工程断面図。
【図14】(a)は完成した偏光変換素子の正面、上面および側面を一括して示す模式図であり、(b)は(a)に示す偏光変換素子の正面図に対して90°の角度右回転した状態の正面、上面および側面を一括して示す模式図。
【図15】(a)は従来の偏光変換素子の斜視図、(b)は(a)を+Z軸方向から矢視した偏光変換素子の平面図。
【符号の説明】
【0090】
1…偏光変換素子、1a…光入射面、1b…光射出面、11…第1の透光性基材としてのガラス材、12…位相差板、13…第2の透光性基材としてのガラス材、14…偏光分離膜、15…反射膜、16…位相差膜、110…第1のガラス板、120…1/2λ位相差機能を有する水晶板、130…第2のガラス板、AL…システム光軸、CL…切断線、φ…入射角。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダムな偏光方向を有する光を、一方向の偏光方向を有する光に変換する偏光変換素子および偏光変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタなどの光学機器において、ランダムな偏光方向を有する光(非偏光光)を、一方向の偏光方向を有する光に変換する光学素子として偏光変換素子が知られている。図15は、従来の一般的な偏光変換素子を説明するための模式図であり、(a)は偏光変換素子の斜視図、(b)は(a)を+Z軸方向から矢視した偏光変換素子の平面図である。
図15(a)および図15(b)において、偏光変換素子50は、入射した光を二種類の偏光光に分離するための偏光分離素子51と、偏光分離素子51の光射出面側に選択的に配置され、二種類の偏光光の一方を他方の偏光光に変換するための1/2λ位相差板52とを備えている。なお、偏光変換素子50に入射する光は、その主光線(中心軸)が、システム光軸ALに略平行に入射する。
【0003】
偏光分離素子51は、システム光軸ALに略直交する光入射面と、光入射面に略平行な光射出面と、光入射面および光射出面と所定の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた複数のガラス材51aと、複数の界面に交互に設けられた複数の偏光分離膜51b(図中に実線で示す)および反射膜51c(図中に破線で示す)とを備えている。
複数の界面の光入射面(光射出面)との所定の角度は、一般的に45°であり、ガラス材51aは、X−Y軸方向において略平行四辺形の断面形状を有しZ軸方向に延伸する柱状を成している。
【0004】
偏光分離膜51bは誘電体多層膜で形成され、入射した光線束(S偏光光+P偏光光)を、S偏光の部分光線束(S偏光光)とP偏光の部分光線束(P偏光光)とに分離して、S偏光光を反射し、P偏光光を透過する機能を有する。一方、反射膜51cは誘電体多層膜または金属膜で形成され、反射膜51cに入射したS偏光光を反射する機能を有する。
1/2λ位相差板52は、偏光分離膜51bを透過したP偏光光が通過するガラス材51aの光射出面に格子状に配列して設けられている。この1/2λ位相差板52は、入射するP偏光光を、偏光方向が直交するS偏光光に変換する機能を有している。
【0005】
なお、偏光変換素子50は、一般的に偏光変換素子50に入射する光が偏光分離膜51bのみに入射し、反射膜51cには入射しないように遮光部60bが配列された遮光板60(図15(b)中に二点鎖線で示す)が、光入射面側に配設されて用いられる。
【0006】
このように構成された偏光変換素子50は、図15(b)に示すように、柱状のガラス材51aが延伸する方向をZ軸方向に配置して用いられる。そして、遮光板60の開口部60aより偏光分離素子51のガラス材51aに入射した光(S偏光光+P偏光光)は、偏光分離膜51bにおいてS偏光光とP偏光光の2つの部分光線束に分離される。偏光分離膜51bで分離された一方のS偏光光が、反射膜51cにおいて反射されると共に、分離された他方のP偏光光が偏光分離膜51bを透過して1/2λ位相差板52においてS偏光光に変換される。すなわち、偏光変換素子50において一種類の偏光光に変換されたS偏光光が、偏光変換素子50からシステム光軸ALと略平行方向に射出される。
なお、この例では、1/2λ位相差板52をP偏光光が通過するガラス材51aの光射出面に格子状に配列して設けているが、S偏光光が通過するガラス材51aの光射出面のみに設けた場合には、一種類の偏光光に変換されたP偏光光が得られる。
【0007】
しかしながら偏光変換素子50を構成する1/2λ位相差板52として、有機材料系の位相差フィルムが用いられた従来の偏光変換素子50は、光源から射出された光が通過することによって、位相差フィルムが黄変したり、発熱したりして、位相差フィルムの光学特性の劣化を招く。すなわち耐熱性および耐光性の信頼性に劣るという問題を有している。
【0008】
こうした問題に対応するために、1/2λ位相差板に水晶を用いて構成した偏光変換素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、複数の透光性部材の傾斜端面同士が接合された透光性基材中に偏光分離膜と反射膜とが互いに平行、かつ透光性基材に対する入射光軸に斜めに配置され、第1の透光性部材の偏光分離膜が形成された傾斜端面と第2の透光性部材の傾斜端面との間に、一軸延伸された単層の高分子フィルムからなる1/2λ位相差フィルムとから構成された偏光変換素子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2003−302523号公報
【特許文献2】特開2004−145305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に示される偏光変換素子は、短冊状に加工された水晶よりなる1/2λ位相差板を、偏光分離膜または反射膜に対応して一枚ずつ格子状に配列して、接着剤で貼り合わせて製造される。したがって、耐熱性や耐光性の向上を図ることは可能であるが、1/2λ位相差板を短冊状に加工したり、所定間隔に精度良く並列して接着したりするために、取り扱い時に割れやクラックが発生し易く、しかも製造工程が煩雑化して多大な工数を必要とする課題を有する。また、一枚の1/2λ位相差板では偏光変換効率が低いという問題も有する。
【0011】
一方、特許文献2に示される偏光変換素子は、ガラス製の第1の透光性部材および第2の透光性部材と、高分子フィルムからなる1/2λ位相差フィルムとは、線膨張係数が大きく異なることから、接合部の剥れなどの不具合が発生し易く、しかも長期間に亘る耐熱性および耐光性の確保の面から課題が残る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0013】
[適用例1]
本適用例に係る偏光変換素子は、光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板および第2の透光性基材を備えた偏光変換素子であって、前記第1の透光性基材と前記位相差板との界面に形成され、前記光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、且つ一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、前記第1の透光性基材と前記第2の透光性基材との界面に形成され、入射光を反射する反射膜と、前記位相差板と前記第2の透光性基材との界面に形成され、位相差を補償する位相差膜と、を有することを特徴とする。
【0014】
これによれば、光入射面および光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた複数の第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板および第2の透光性基材を備えた偏光変換素子が、第1の透光性基材と位相差板との界面に光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、第1の透光性基材と第2の透光性基材との界面に入射光を反射する反射膜と、位相差板と第2の透光性基材との界面に位相差を補償する位相差膜を有することにより、偏光分離膜において分離されて位相差板に入射する一方の偏光光が、他方の偏光光に変換される。その際、位相差板と位相差膜とによる位相差の組み合わせで位相差膜が位相差を補償し、偏光変換効率を高めることができる。したがって、一種類の偏光方向に揃った偏光変換効率の優れた偏光光を射出する偏光変換素子が得られる。
また、位相差板が第1の透光性基材と第2の透光性基材との間に互いに貼り合わされて設けられていることによって外部環境に曝されることがなく、耐熱性および耐光性に優れると共に、薄型化した偏光変換素子が得られる。
【0015】
[適用例2]
上記適用例に係る偏光変換素子において、前記位相差膜は低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜より成り、前記位相差膜を形成する前記低屈折率層および前記高屈折率層の光学膜厚が25nm〜100nmの範囲であるのが好ましい。
【0016】
これによれば、位相差膜を形成する低屈折率層および高屈折率層のそれぞれの光学膜厚が25nm〜100nmの範囲であることにより、透過率の損失を抑制すると共に、広波長帯域(略420nm〜略680nmの可視光波長域)の入射光に対して優れた偏光変換効率を備えた偏光変換素子が得られる。また、光入射面に入射する光の広い入射角許容値(±3°程度)に対応することができる。
【0017】
[適用例3]
上記適用例に係る偏光変換素子において、前記位相差板は板厚が80μm程度の水晶板より成るのが好ましい。
【0018】
これによれば、位相差板の板厚が80μm程度の水晶板より成ることにより、位相差膜とによる位相差の組み合わせで位相差膜が位相差を補償し、広波長帯域(略420nm〜略680nmの可視光波長域)の入射光に対して偏光変換効率を高めることができる。したがって、位相差板と位相差膜とによる位相差の組み合わせを行うことにより、板厚の異なる二枚の複屈曲板(水晶板)を光学軸が直交するように積層して接合などすることなく、容易に偏光変換効率を高めることができる。
【0019】
[適用例4]
本適用例に係る偏光変換素子の製造方法は、光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板および第2の透光性基材を備え、前記第1の透光性基材と前記位相差板との界面に形成され、前記光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、且つ一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、前記第1の透光性基材と前記第2の透光性基材との界面に形成され、入射光を反射する反射膜と、前記位相差と前記第2の透光性基材との界面に形成され、位相差を補償する位相差膜と、を有する偏光変換素子の製造方法であって、一方の表面に前記位相差膜が通常蒸着で形成された水晶板と、一方の表面に前記反射膜が形成された第2のガラス板と、一方の表面に前記偏光分離膜が形成された第1のガラス板とを準備する準備工程と、前記各膜の形成面を一方向に揃えて、前記水晶板と前記第2のガラス板と前記第1のガラス板と、を多数板厚方向に順次重ね合わせ、互いが貼り合わされたガラスブロックを形成する基材貼着工程と、前記ガラスブロックを、その表面と略45°の角度を成す複数の略平行で所定の間隔を有する切断面で切断する切断工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
これによれば、一方の表面に位相差を補償する位相差膜が形成された1/2λ位相差機能を有する水晶板と、一方の表面に入射光を反射する反射膜が形成された第2のガラス板と、一方の表面に光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜が形成された第1のガラス板とを、準備する準備工程と、各膜の形成面を一方向に揃えて板厚方向に順次重ね合わせ、互いが貼り合わされたガラスブロックを形成する基材貼着工程と、ガラスブロックをその表面と略45°の角度を成す複数の略平行で所定の間隔を有する切断線に沿って切断する切断工程とを備えることによって、位相差板と位相差膜とによる位相差の組み合わせで位相差膜が位相差を補償し、偏光変換効率を高めた多数の偏光変換素子を一度に得ることができる。すなわち、偏光変換効率を高めた安価な偏光変換素子の製造方法を得ることができる。
さらに、位相差膜16は、斜方蒸着でなくてもよく、通常蒸着が行えるので、品質の安定した蒸着を行うことができる。
【0021】
また、短冊状に加工された1/2λ位相差板を短冊状に加工したり、一枚ずつストライプ状に配列して精度良く接着したりする従来の製造方法に比べて作業性に優れ、しかも取り扱い時に割れやクラックの発生などによる不具合を回避した偏光変換素子の製造方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る偏光変換素子の構成を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示した偏光変換素子のX−Y軸方向における拡大断面図である。なお、これらの図面は、説明の便宜のために各構成要素の寸法や比率を実際のものとは異ならせてある。
【0023】
図1および図2において、偏光変換素子1は、光入射面1aおよび光入射面1aに略平行な光射出面1bに所定の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた柱状の第1の透光性基材としてのガラス材11、位相差板12および第2の透光性基材としてのガラス材13を備え、正面視長方形の直方体形状を成している。また、ガラス材11と位相差板12との界面に偏光分離膜14、ガラス材11とガラス材13との界面に反射膜15、位相差板12とガラス材13との界面に位相差膜16がそれぞれ設けられている。
【0024】
なお、複数の界面が光入射面1aおよび光射出面1bと成す所定の角度は、略45°である。したがって、ガラス材11,13は略平行四辺形の断面形状を成している(但し、両側最端部は三角柱形状を成している)。
ガラス材11およびガラス材13は、透光性基材であれば限定されず、各種光学ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、青板ガラスなどを用いることができる。本実施形態におけるガラス材11,13は、例えば白板ガラス(B270)より成る。
【0025】
位相差板12は、1/2λ位相差機能を有する一枚の水晶板より成る。具体的には、Z軸に対するカット軸105°、光学軸27°、板厚80μm程度の水晶板である。位相差板12は、偏光分離膜14を透過して入射するP偏光光を、偏光方向が直交するS偏光光に変換する機能を有する。
なお、本実施形態における水晶とは、SiO2の単結晶であり、人工水晶または天然水晶のどちらであってもよい。
【0026】
偏光分離膜14は、例えば、MgF2より成る低屈折率層と、ランタンアルミネートより成る高屈折率層とが、所定の層数および光学膜厚で交互に積層された誘電体多層膜より成り、互いに隣り合う位相差板12またはガラス材11の面上に形成されている。この偏光分離膜14は、入射する光(S偏光光+P偏光光)を、偏光方向の異なるS偏光の部分光線束(S偏光光)とP偏光の部分光線束(P偏光光)とに分離して、S偏光光を反射し、P偏光光を透過する機能を有する。
【0027】
反射膜15は、偏光分離膜14と同様に、低屈折率層と高屈折率層とが、所定の層数および光学膜厚で交互に積層された誘電体多層膜より成り、互いに隣り合うガラス材11またはガラス材13の面上に形成されている。この反射膜15は、偏光分離膜14において分離されて入射するS偏光光を反射する機能を有する。なお、反射膜15は、誘電体多層膜に代えてアルミニウム、銀などの金属膜で形成することもできるが、反射率の面などから誘電体多層膜を用いるのが好ましい。
【0028】
位相差膜16は、例えばSiO2よりなる低屈折率層と、例えばTiO2よりなる高屈折率層とが交互に積層された24層の誘電体多層膜より成り、互いに隣り合う位相差板12またはガラス材13の面上に形成されている。この位相差膜16は位相差板12との位相差の組み合わせで偏光変換効率を高める機能を有する。すなわち位相差膜16は、位相差を補償する機能を有する。
なお、偏光分離膜14、反射膜15および位相差膜16を形成する誘電体多層膜は、各基材の表面にそれぞれの誘電体材料を真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーティング法などを用いて成膜される。
【0029】
次に、位相差膜16の膜構成について説明する。
「表1」に位相差膜16の膜構成の一例を示す。膜構成は、光学膜厚nd=1/4λ(nは材料(蒸着物質)の屈折率、dは物理膜厚、λは設計波長を示す)において、設計波長345nm、入射角度45°における設計値である。
「表1」には、多層膜を構成する層No.における材料と、λ=1とした場合の4nd値と、物理膜厚(d(nm))を示す。なお、層No.は、成膜時に形成される位相差板12の表面側から順に1層、2層、3層…と表す。
【0030】
【表1】
「表1」において位相差膜16は、TiO2を1層目として、2層目にSiO2、以後3層目〜24層目の間にTiO2とSiO2が交互に繰り返し成膜された24層の誘電体多層膜で構成されている。
この24層より成る位相差膜16の内、24層目(最上層)の誘電体膜は、反射防止(AR)膜として機能する層であり、1層目〜23層目が実質的な位相差膜として機能する。
【0031】
このように構成された位相差膜16の分光透過率特性および位相差の波長分散特性を、以下に示す。
図3は、位相差膜のP波(TM波)における分光透過率特性を示すグラフであり、図4は、位相差膜のS波(TE波)における分光透過率特性を示すグラフである。
【0032】
グラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に透過率(%)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の計算値のプロット点を結んだ線図である。図中にプロット点を●(黒丸印)で示す線図が入射角45°における分光透過率特性であり、同様に△(三角印)で示す線図が入射角48°、×(ばつ印)で示す線図が入射角42°における分光透過率特性である。
【0033】
図3において、位相差膜16の可視光波長帯(略420nm〜680nm)におけるP波(TM波)の分光透過率特性は、位相差膜16に対する光の入射角45°,42°,48°(45°±3°の範囲)共に略同一の推移を示し、いずれも透過率99%以上の高い値を示す。
【0034】
一方、位相差膜16の可視光波長帯におけるS波(TE波)の分光透過率特性は、図4に示すように、低波長域(420nm〜455nm程度)において、部分的に透過率が99%未満の値を示すが、その範囲以外の波長域においては、いずれも透過率100%に限りなく近い99%以上の高い値を示す。したがって位相差膜16による透過率の損失は極めて低くい。
【0035】
これは、位相差膜16を形成するそれぞれの低屈折率層と高屈折率層(実質的に位相差膜として機能する1層目〜23層目)の光学膜厚が、薄いことにより透過率の損失を極めて低くすることができると言える。
具体的には、「表1」に示す位相差膜16を形成するそれぞれの低屈折率層と高屈折率層の4nd値は、0.28(1層目)〜1.24(2層目)の範囲である。すなわち、位相差膜16は、nd=1/4λであることから、nd(光学膜厚)が略24nm〜107nm範囲の薄い誘電体多層膜で形成されている。
【0036】
この位相差膜16における位相差の波長分散特性を参考に示す。図5は、位相差膜16の位相差の波長分散特性を示すグラフである。
グラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に位相差(deg)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の計算値のプロット点を結んだ線図である。なお、位相差の波長分散特性は、光の入射角45°における値を示す。
【0037】
図5において、位相差膜16の位相差は、波長415nmをピークとして、高波長域に向かって右肩下がりになだらかに低下し、可視光波長帯(略420nm〜680nm)における位相差は、164deg〜50deg程度の値を示す。
なお、この位相差膜16と位相差板12との組み合わせによる分光透過率特性および位相差の波長分散特性については後述する。
【0038】
こうした位相差膜16の膜構成の比較例として、低屈折率層と高屈折率層の光学膜厚が「表1」に示す位相差膜16に比べて厚い膜厚の誘電体膜を含み形成された、比較例1としての位相差膜の膜構成を「表2」に示し、比較例2としての位相差膜の膜構成を「表3」に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
「表2」に示す比較例1の位相差膜の膜構成は、光学膜厚nd=1/4λにおいて、設計波長550nm、入射角度45°における設計値であり、「表3」に示す膜構成は、設計波長1100nm、入射角度45°における設計値である。
また、「表2」および「表3」には、「表1」と同様に多層膜を構成する層No.における材料と、λ=1とした場合の4nd値と、物理膜厚(d(nm))とを示す。
【0041】
「表2」において、比較例1の位相差膜の膜構成は、TiO2を1層目として、2層目にSiO2、以後3層目〜14層目の間にTiO2とSiO2が交互に繰り返し成膜された14層の誘電体多層膜で構成されている。この14層より成る位相差膜の内、14層目(最上層)の誘電体膜は、「表1」に示す位相差膜16の膜構成と同様に反射防止(AR)膜として機能する層である。この最上層の誘電体膜については、「表3」に示す比較例2としての位相差膜の膜構成についても同様である。
【0042】
比較例1の位相差膜を形成するそれぞれの低屈折率層と高屈折率層の4nd値は、0.49(13層目)〜1.00(3層目〜12層目)の範囲である。すなわち、nd=1/4λであることから、nd(光学膜厚)は略67nm〜137nm範囲であり、「表1」に示す位相差膜16に比べて厚い誘電体多層膜を含み形成されている。
【0043】
そして、「表3」に示す比較例2の位相差膜の膜構成は、TiO2を1層目として、2層目にSiO2、以後3層目〜6層目の間にTiO2とSiO2が交互に繰り返し成膜された6層の誘電体多層膜で構成されている。
この位相差膜を形成するそれぞれの低屈折率層と高屈折率層の4nd値は、0.98(5層目)〜1.99(3層目)の範囲である。すなわち、nd=1/4λであることから、nd(光学膜厚)は略270nm〜547nm範囲であり、「表1」に示す位相差膜16に比べて極めて厚い誘電体多層膜で形成されている。
【0044】
このように膜構成された比較例1および比較例2としての位相差膜の分光透過率特性および位相差の波長分散特性を以下に示す。
図6は、比較例1としての位相差膜における分光透過率特性を示すグラフであり、図7は、比較例1としての位相差膜における位相差の波長分散特性を示すグラフである。同様に、図8は、比較例2としての位相差膜における分光透過率特性を示すグラフであり、図9は、比較例2としての位相差膜における位相差の波長分散特性を示すグラフである。
【0045】
図6および図8に示す分光透過率特性を示すグラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に透過率(%)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の計算値のプロット点を結んだ線図である。
また、各図中に実線で示す線図はP波(TM波)における分光透過率特性を示し、破線で示す線図はS波(TE波)における分光透過率特性を示す。なお、分光透過率特性は,位相差膜に対する光の入射角45°における値を示す。
【0046】
一方、図7および図9に示す比較例1および比較例2としての位相差膜の位相差の波長分散特性を示すグラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に位相差(deg)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の計算値のプロット点を結んだ線図である。なお、位相差の波長分散特性は、位相差膜に対する光の入射角45°における値を示す。
【0047】
図6において、比較例1の位相差膜における分光透過率特性は、P波において波長が515nm近辺からの高波長域において99%以上の高い値を示すが、波長420nm近辺の低波長域に向かって20%程度の低い値を示す。同様にS波における分光透過率は、波長が590nm近辺から高波長域において99%以上の高い値を示すが、波長480nm程度以下の低波長域において0%程度の値を示す。
【0048】
また、図8に示す比較例2としての位相差膜における分光透過率特性は、P波において可視光波長帯(略420nm〜680nm)で97%〜99%以上の高い値で推移するが、S波においては、可視光波長帯の全域に亘ってリップルが見られる。このリップルを解消するためには、物理膜厚dが5nm〜30nmの極薄層を含む膜構成を形成して最適化することが必要である。
【0049】
一方、図7に示す比較例1の位相差膜における位相差の波長分散特性は、波長545nm(位相差が略178deg)をピークとして、低波長域および高波長域に向かって低下し、波長420nmにおいて略−1degの反転した値を示し、波長680nmにおいて66deg程度の位相差を示す。
【0050】
また、図9に示す比較例2の位相差膜における位相差の波長分散特性は、波長415nm(略50deg)をピークとして高波長域に向かってリップルを伴いながら右肩下がりに低下し、波長515nm近辺からマイナス位相差に転じ、波長680nmにおいて−38deg程度の値を示す。
【0051】
これらの図6、図8および上記図3、図4に示す分光透過率特性から、上記位相差膜16を形成する低屈折率層と高屈折率層のそれぞれの光学膜厚が、略24nm〜107nm範囲の薄い誘電体多層膜で形成されていることにより、可視光波長帯(略420nm〜680nm)における透過率の損失を極めて低く抑えた、透過率が100%に限りなく近い99%以上の高い値を示す位相差膜16が得られる。
【0052】
また、位相差膜16の位相差の波長分散特性は、図5に示すように可視光波長帯の低波長域から高波長域に向かって右肩下がりになだらかに低下する曲線を描き、比較例1としての位相差膜のように低波長域および高波長域に向かう放物線特性を描いたり、比較例2としての位相差膜のように位相差が低く、しかもマイナスに転じたりすることもない。
こうした結果から、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜より成る位相差膜16の低屈折率層と高屈折率層のそれぞれの好ましい光学膜厚は、25nm〜110nm程度の範囲であると言える。
【0053】
以上に説明した偏光変換素子1を構成する各構成要素は、偏光分離膜14を介して互いに隣り合うガラス材11と位相差板12、位相差膜16を介して互いに隣り合う位相差板12とガラス材13、反射膜15を介して互いに隣り合うガラス材11とガラス材13のそれぞれが、接着剤(図示せず)により互いに貼着(貼り合わせ)されている。接着剤としては、例えば、接着加工が容易で比較的高温度に耐えうる一液性エポキシまたは一液性アクリル系の紫外線硬化型接着剤が用いられる。貼着部は、接着剤を塗布した後、ケミカルランプや高圧水銀灯などの光を照射して接着剤が硬化され、接着固定される。
【0054】
次に、このように構成された偏光変換素子1における入射光の動作を、図2を参照しながら説明する。
光入射面1aに直交するシステム光軸ALに沿って光入射面1aに入射した光(S偏光光+P偏光光)は、ガラス材11と位相差板12との界面に形成された偏光分離膜14に略45°の入射角で入射して、S偏光光とP偏光光の2つの部分光線束に分離される。そして、偏光分離膜14で分離された一方のS偏光光が、隣り合うガラス材13との界面に形成された反射膜15に略45°の入射角で入射して、反射膜15で反射される。反射膜15で反射された反射光は、光射出面1b側に向かう。
【0055】
一方、偏光分離膜14で分離されたP偏光光は、偏光分離膜14を通過して位相差板12に入射し、位相差板12および位相差膜16を通過する。これにより、位相差板12に入射したP偏光光は、位相差板12中で等しい振幅を有する常光線と異常光線とに別れ、異なる位相速度で位相差板12中を進み、入射するP偏光光の電界ベクトルの振動方向と直交する振動方向を有するS偏光光に変換されて、反射膜15で全反射された反射光と共に光射出面1bからシステム光軸ALに略平行方向に射出される。すなわち、偏光変換素子1の光入射面1aに入射した光(S偏光光+P偏光光)は、一種類のS偏光光に変換されて光射出面1bから射出される。
【0056】
こうした入射光の動作において、偏光分離膜14で分離されたP偏光光は、位相差板12および位相差膜16を通過してS偏光光に変換される際に、位相差板12と位相差膜16とによる位相差の組み合わせで位相差膜16が位相差を補償し、位相差板12のみの場合に比べて、可視光波長帯における偏光変換効率を高めることができる。
【0057】
これは、位相差板12のみを用いた場合の低次波長板としての偏光変換性能に対して、位相差板12と位相差膜16とを組み合わせることにより、板厚の異なる二枚の複屈曲板(水晶板)を光学軸が直交するように接合した0次波長板的に機能し、位相差膜16が位相差を補償し、常光線と異常光線とが互いに補正しあって偏光変換効率を高めることができる。
【0058】
図10は、本実施形態に係る偏光変換素子1における位相差の波長分散特性を示すグラフであり、図11は、位相差板12のみを用いた(すなわち、位相差膜16を有しない)偏光変換素子における位相差の波長分散特性を示すグラフである。
それぞれのグラフは、横軸に波長(nm)、縦軸に位相差(deg)を示し、波長領域400nm〜700nmにおける5nm毎の測定値のプロット点を結んだ線図である。
【0059】
位相差の波長分散特性は、分光位相差測定装置を用いて、偏光変換素子1の光入射面1aにハロゲンランプ光(可視光)を入射角φ(システム光軸ALに対する傾き角度、図2参照)を0°、+3°、−3°で照射して測定した。
それぞれの図中にプロット点を●(黒丸印)で示す線図が入射角0°における位相差の波長分散特性(位相差特性)であり、同様に△(三角印)で示す線図が入射角+3°、×(ばつ印)で示す線図が入射角−3°における位相差特性である。
【0060】
なお、光入射面1aへの入射角φの値0°、+3°、−3°は、偏光分離膜14(位相差板12および位相差膜16)に対して入射角45°,48°,42°で入射するのに相当する。この光入射面1aへの入射光の入射角±3°の角度範囲は、入射光の光入射面1aに対する入射角許容値であり、ガラス材11の平行四辺形の辺の傾きバラツキ、形状バラツキなどの各種バラツキに対応することが可能となる範囲でもある。
【0061】
図10において、偏光変換素子1の位相差の波長分散特性は、光入射面1aへの入射角0°,+3°,−3°共に、略580nm近辺を最大値としてその波長から高波長域および低波長域に向かうに従ってなだらかに低くなる傾向を示し、特に略420nm以下の低波長域において低下するが、可視光波長帯(略420nm〜680nm)における位相差は、いずれの入射角においても略155°〜179.5°の範囲で、平均位相差165°程度の高い位相差が得られる。
【0062】
一方、図11において、位相差板12のみを用いた偏光変換素子における位相差の波長分散特性は、光入射面1aへの入射角0°,+3°,−3°共に略一致した線図を示し、略530nmを最大値として高波長域および低波長域に向かうに従って低くなる値を示すが、可視光波長帯(略420nm〜680nm)における位相差は略125°〜179°の範囲で、平均位相差135°程度である。
【0063】
以上の結果から、光入射面1aおよび光射出面1bに所定の角度を成す複数で順次貼り合わされたガラス材11、位相差板12およびガラス材13とを備え、ガラス材11と位相差板12との界面に偏光分離膜14、ガラス材11とガラス材13との界面に反射膜15、位相差板12とガラス材13との界面に位相差膜16がそれぞれ設けられた偏光変換素子1は、可視光波長帯の幅広い波長域において優れた位相差(偏光変換効率)を得ることができると共に、光入射面に入射する光に対して±3°程度の広い入射角許容値を有することができる。
【0064】
次に、このように構成された偏光変換素子1の製造方法について説明する。
図12および図13は、本実施形態に係る偏光変換素子1を製造する主要な工程を示す工程断面図であり、図12(a)、図12(b)および図13で示す。なお、これらの図面は、説明の便宜のために各構成要素の寸法や比率を実際のものとは異ならせてある。また、各基材(後述するガラス板および水晶板)は、実際の枚数とは異なる省略した枚数で示す。
【0065】
先ず、図12(a)に示す工程では、予め一方の表面に位相差膜16が形成された複数の1/2λ位相差機能を有する水晶板120と、予め一方の表面に反射膜15が形成された複数の第2のガラス板としてのガラス板130と、予め一方の面上に偏光分離膜14が形成された複数の第1のガラス板としてのガラス板110とを準備する(準備工程)。
【0066】
ガラス板110およびガラス板130は、共に略同一の矩形状の外形形状および所定厚さの白板ガラス(B270)より成る。このガラス板110,130は、偏光変換素子1の完成時に略平行四辺形の断面形状を有する柱状のガラス材11,13を形成する。
水晶板120は、ガラス板110およびガラス板130と略同一の矩形状の外形形状を成した80μm程度の板厚より成り、偏光変換素子1の完成時に位相差板12を形成する。
【0067】
水晶板120の表面上に形成された位相差膜16は、上記「表1」に示したTiO2を1層目として、2層目にSiO2、以後3層目〜24層目の間にTiO2とSiO2が交互に繰り返し成膜された24層の誘電体多層膜で構成されている。また、ガラス板130の一方の表面に形成された反射膜15およびガラス板110の一方の表面に形成された偏光分離膜14は、低屈折率層と高屈折率層とが所定の層数および光学膜厚で交互に積層された誘電体多層膜より成る。
【0068】
これらの位相差膜16、反射膜15および偏光分離膜14は、予め各成膜工程において、それぞれの誘電体材料を真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーティング法などを用いて成膜して形成されている。
【0069】
そして、図12(b)に示す工程では、それぞれ複数の位相差膜16が形成された水晶板120と、反射膜15が形成されたガラス板130と、偏光分離膜14が形成されたガラス板110と、を板厚方向に順次重ね合わせて、互いを貼り合わせる(基材貼着工程)。
【0070】
この基材の貼り合わせ(貼着)は、それぞれ水晶板120の位相差膜16が形成された面とガラス板130の反射膜15が形成された面の他方面、ガラス板130の反射膜15が形成された面とガラス板110の偏光分離膜14が形成された面の他方面、およびガラス板110の偏光分離膜14が形成された面と水晶板120の位相差膜16が形成された面の他方面を貼着面として互いの基材同士を貼着する。
【0071】
それぞれの貼着は、それぞれの界面における少なくともいずれか一方の面上に紫外線硬化型接着剤を塗布した後、ケミカルランプや高圧水銀灯などの光(紫外線)を照射することによって、紫外線硬化型接着剤が硬化され、互いの基材同士が接着固定される。
【0072】
なお、紫外線硬化型接着剤を硬化する際、紫外線を水晶板120の表面に略垂直な方向から照射することによって、複数の貼着面を同時に硬化させることができる。一方、反射膜15をアルミニウム、銀などの金属膜で形成した場合には、紫外線が金属膜で反射されてしまうために、紫外線をそれぞれの基材の表面に略水平な方向から照射する必要がある。
【0073】
これにより、複数の水晶板120、ガラス板130、ガラス板110とがこの順序に順次積層され、水晶板120とガラス板130との界面に位相差膜16、ガラス板130とガラス板110との界面に反射膜15、ガラス板110と水晶板120との界面に偏光分離膜14がそれぞれ設けられたガラスブロックが形成される。
【0074】
そして、図13に示す工程では、複数の水晶板120、ガラス板130、ガラス板110が互いに接着されたガラスブロックを、その表面と成す角度θが略45°の複数の略平行で所定の間隔を有する切断線CL(図中、一点鎖線で示す)で切断する(切断工程)。
【0075】
切断線CLに沿って切断されたガラスブロックからは、図中にドットで示す領域形状の素子ユニットが複数切り出される。切断線CLに沿って切り出された素子ユニットの切断面が偏光変換素子1の光入射面1aおよび光射出面1bに対応する(図1および図2参照)。なお、切断工程の後には、形成された素子ユニットの切断面を、片面ポリッシュ装置または両面ポリッシュ装置を用いて研磨することで、切断面の平坦度および面精度を整えるのが好ましい。
【0076】
そして、切り出されたそれぞれの素子ユニットは、両端面部が所定形状に整形されて、光入射面1aおよび光射出面1bに略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされたガラス材11、位相差板12およびガラス材13とを備え、ガラス材11と位相差板12との界面に偏光分離膜14、ガラス材11とガラス材13との界面に反射膜15、位相差板12とガラス材13との界面に位相差膜16がそれぞれ設けられた偏光変換素子1が完成する(図1および図2参照)。
完成した偏光変換素子1は、光入射面1aに入射する非偏光光(S偏光光+P偏光光)を一種類のS偏光光に変換して光射出面1bから射出することができる。
【0077】
以上の偏光変換素子1の製造方法において、偏光分離膜14がガラス板110の一方の面に形成され、反射膜15がガラス板130の一方の面、位相差膜16が水晶板120の一方の面に、それぞれ形成された場合で説明したが、それぞれの界面に隣り合う基材の内の、どちらか一方の表面に形成することができる。例えば、位相差膜16を水晶板120に代えてガラス板130の反射膜15が形成された面の他方面上に形成するなど、製造工程の容易さなどを考慮して適宜選択することができる。
【0078】
また、複数の位相差膜16が形成された水晶板120と、反射膜15が形成されたガラス板130と、偏光分離膜14が形成されたガラス板110とを、板厚方向に順次重ね合わせて互いを貼り合わせる接着剤として、紫外線硬化型接着剤を用いた場合で説明したが、シランカップリング剤を塗布する又は/及び活性エネルギー線を照射するなどの直接接合法を用いた場合であってもよい。
【0079】
このように構成および製造された偏光変換素子1は、光入射面1aに入射したランダムな偏光方向を有する光(S偏光光+P偏光光)を、一種類のS偏光光またはP偏光光に変換して射出する光学素子として、液晶プロジェクタなどの照明光学系に好ましく用いることができる。
【0080】
偏光変換素子1は、液晶プロジェクタなどの照明光学系に用いる場合に、偏光変換素子1の配置方向を替えることによって、入射する非偏光光に対してP波またはS波の偏光光を射出する機能を容易に得ることができる。
【0081】
図14(a)は完成した偏光変換素子の正面、上面および側面を一括して示す模式図であり、図14(b)は図14(a)に示す偏光変換素子の正面図に対して90°の角度、右回転した状態の正面、上面および側面を一括して示す模式図である。
【0082】
図14(a)に示すように、偏光変換素子1を構成する柱状のガラス材11,13が延伸する方向をZ軸方向に配置して用いることによって、システム光軸ALに略平行に光入射面1aに入射する非偏光光(S偏光光+P偏光光)を、電界が光入射面1aに対して垂直方向のS波(TE波)の偏光光を射出することができる。
【0083】
一方、その偏光変換素子1を90°の角度、右回転して、図14(b)に示すように、偏光変換素子1を構成する柱状の各ガラス材11,13が延伸する方向をX軸方向に配置して用いることによって、システム光軸ALに略平行に光入射面1aに入射する非偏光光を、電界が光入射面1aに対して水平方向のP波(TM波)の偏光光を射出することができる。
なお、偏光変換素子1の回転方向は、右回転または左回転のどちらであってもよい。
【0084】
以上の本実施形態に係る偏光変換素子1は、光入射面1aおよび光入射面1aに略平行な光射出面1bに略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた複数のガラス材11、1/2λ位相差機能を有する位相差板12およびガラス材13を備え、ガラス材11と位相差板12との界面に光入射面1aに入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜14と、ガラス材11とガラス材13との界面に入射光を反射する反射膜15と、位相差板12とガラス材13との界面に位相差を補償する位相差膜16を有することにより、偏光分離膜14において分離されて位相差板12に入射する一方の偏光光が、他方の偏光光に変換される。その際、位相差板12と位相差膜16とによる位相差の組み合わせで位相差膜16が位相差を補償し、偏光変換効率を高めることができる。したがって、一種類の偏光方向に揃った偏光変換効率の優れた偏光光を射出する偏光変換素子1が得られる。また、位相差板12がガラス材11とガラス材13との間に互いに貼り合わされて設けられていることによって外部環境に曝されることがなく、耐熱性および耐光性に優れると共に、薄型化した偏光変換素子1が得られる。
【0085】
また、本実施形態に係る偏光変換素子1は、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜より成る位相差膜16を形成する低屈折率層と高屈折率層のそれぞれの光学膜厚が、25nm〜110nmの範囲であることにより、透過率の損失を抑制すると共に、広波長帯域((略420nm〜略680nmの可視光波長域)の入射光に対して優れた偏光変換効率を備えた偏光変換素子1が得られる。また、光入射面1aに入射する光の広い入射角許容値(±3°程度)に対応することができる。
【0086】
さらに、位相差板12の板厚が80μm程度の一枚の水晶板より成ることにより、位相差膜16と位相差板12とによる位相差の組み合わせで位相差膜16が位相差を補償し、広波長帯域((略420nm〜略680nmの可視光波長域)の入射光に対して偏光変換効率を高めることができる。したがって、位相差板12と位相差膜16とによる位相差の組み合わせを行うことにより、板厚の異なる二枚の複屈曲板(水晶板)を光学軸が直交するように積層して接合などすることなく、偏光変換効率を高めた偏光変換素子1を容易に得ることができる。
【0087】
さらにまた、本実施形態に係る偏光変換素子1の製造方法によれば、一方の表面に位相差を補償する位相差膜16が形成された1/2λ位相差機能を有する水晶板120と、一方の表面に入射光を反射する反射膜15が形成された第2のガラス板130と、一方の表面に光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光に分離し、一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜14が形成された第1のガラス板110とを準備する準備工程と、各膜の形成面を一方向に揃えて板厚方向に順次重ね合わせ、互いが貼り合わされたガラスブロックを形成する基材貼着工程と、ガラスブロックをその表面と略45°の角度を成す複数の略平行で所定の間隔を有する切断線CLに沿って切断する切断工程とを備えることによって、位相差板12と位相差膜16とによる位相差の組み合わせで位相差膜16が位相差を補償し、偏光変換効率を高めた多数の偏光変換素子1を一度に得ることができる。
【0088】
また、短冊状に加工された1/2λ位相差板を短冊状に加工したり、一枚ずつストライプ状に配列して精度良く接着したりする従来の製造方法に比べて、作業性に優れ、しかも取り扱い時に割れやクラックの発生などによる不具合を回避した偏光変換素子1の製造方法が得られる。さらに、位相差膜16は、斜方蒸着でなくてもよく、通常蒸着が行えるので、品質の安定した蒸着を行うことができる。従来技術においては出射面に位相差膜を設ける蒸着であるので、斜方蒸着で行わなくてはいけないが、位相差膜16は、入射光の角度が45°であるので、通常蒸着で膜形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施形態に係る偏光変換素子の構成を模式的に示す斜視図。
【図2】図1に示した偏光変換素子のX−Y軸方向における拡大断面図。
【図3】位相差膜のP波における分光透過率特性を示すグラフ。
【図4】位相差膜のS波における分光透過率特性を示すグラフ。
【図5】位相差膜の位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図6】比較例1の位相差膜における分光透過率特性を示すグラフ。
【図7】比較例1の位相差膜における位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図8】比較例2の位相差膜における分光透過率特性を示すグラフ。
【図9】比較例2の位相差膜における位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図10】本実施形態に係る偏光変換素子における位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図11】比較例としての偏光変換素子における位相差の波長分散特性を示すグラフ。
【図12】本実施形態に係る偏光変換素子を製造する主要な工程を示す工程断面図。
【図13】本実施形態に係る偏光変換素子を製造する主要な工程を示す工程断面図。
【図14】(a)は完成した偏光変換素子の正面、上面および側面を一括して示す模式図であり、(b)は(a)に示す偏光変換素子の正面図に対して90°の角度右回転した状態の正面、上面および側面を一括して示す模式図。
【図15】(a)は従来の偏光変換素子の斜視図、(b)は(a)を+Z軸方向から矢視した偏光変換素子の平面図。
【符号の説明】
【0090】
1…偏光変換素子、1a…光入射面、1b…光射出面、11…第1の透光性基材としてのガラス材、12…位相差板、13…第2の透光性基材としてのガラス材、14…偏光分離膜、15…反射膜、16…位相差膜、110…第1のガラス板、120…1/2λ位相差機能を有する水晶板、130…第2のガラス板、AL…システム光軸、CL…切断線、φ…入射角。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板および第2の透光性基材を備えた偏光変換素子であって、
前記第1の透光性基材と前記位相差板との界面に形成され、前記光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、且つ一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、
前記第1の透光性基材と前記第2の透光性基材との界面に形成され、入射光を反射する反射膜と、
前記位相差板と前記第2の透光性基材との界面に形成され、位相差を補償する位相差膜と、
を有することを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光変換素子であって、
前記位相差膜は低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜より成り、前記位相差膜を形成する前記低屈折率層および前記高屈折率層の光学膜厚が25nm〜110nmの範囲であることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の偏光変換素子であって、
前記位相差板は板厚が80μm程度の水晶板より成ることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項4】
光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板、および第2の透光性基材を備え、前記第1の透光性基材と前記位相差板との界面に形成され、前記光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、且つ一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、前記第1の透光性基材と前記第2の透光性基材との界面に形成され、入射光を反射する反射膜と、前記位相差板と前記第2の透光性基材との界面に形成され、位相差を補償する位相差膜を有する偏光変換素子の製造方法であって、
一方の表面に前記位相差膜が通常蒸着で形成された水晶板と、一方の表面に前記反射膜が形成された第2のガラス板と、一方の表面に前記偏光分離膜が形成された第1のガラス板とを準備する準備工程と、
前記各膜の形成面を一方向に揃えて、前記水晶板と前記第2のガラス板と前記第1のガラス板と、を多数板厚方向に順次重ね合わせ、互いが貼り合わされたガラスブロックを形成する基材貼着工程と、
前記ガラスブロックを、その表面と略45°の角度を成す複数の略平行で所定の間隔を有する切断面で切断する切断工程と、
を備えたことを特徴とする偏光変換素子の製造方法。
【請求項1】
光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板および第2の透光性基材を備えた偏光変換素子であって、
前記第1の透光性基材と前記位相差板との界面に形成され、前記光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、且つ一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、
前記第1の透光性基材と前記第2の透光性基材との界面に形成され、入射光を反射する反射膜と、
前記位相差板と前記第2の透光性基材との界面に形成され、位相差を補償する位相差膜と、
を有することを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光変換素子であって、
前記位相差膜は低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜より成り、前記位相差膜を形成する前記低屈折率層および前記高屈折率層の光学膜厚が25nm〜110nmの範囲であることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の偏光変換素子であって、
前記位相差板は板厚が80μm程度の水晶板より成ることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項4】
光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に略45°の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた第1の透光性基材、1/2λ位相差機能を有する位相差板、および第2の透光性基材を備え、前記第1の透光性基材と前記位相差板との界面に形成され、前記光入射面に入射した光をS偏光光とP偏光光とに分離し、且つ一方の偏光光を透過し他方の偏光光を反射する偏光分離膜と、前記第1の透光性基材と前記第2の透光性基材との界面に形成され、入射光を反射する反射膜と、前記位相差板と前記第2の透光性基材との界面に形成され、位相差を補償する位相差膜を有する偏光変換素子の製造方法であって、
一方の表面に前記位相差膜が通常蒸着で形成された水晶板と、一方の表面に前記反射膜が形成された第2のガラス板と、一方の表面に前記偏光分離膜が形成された第1のガラス板とを準備する準備工程と、
前記各膜の形成面を一方向に揃えて、前記水晶板と前記第2のガラス板と前記第1のガラス板と、を多数板厚方向に順次重ね合わせ、互いが貼り合わされたガラスブロックを形成する基材貼着工程と、
前記ガラスブロックを、その表面と略45°の角度を成す複数の略平行で所定の間隔を有する切断面で切断する切断工程と、
を備えたことを特徴とする偏光変換素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−192868(P2009−192868A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34077(P2008−34077)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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