説明

偏光変換装置

【課題】光線の透過特性の良好な偏光変換装置を提供する。
【解決手段】偏光変換装置100の遮光板20上に配置された偏光変換素子本体60は、該偏光変換素子本体60を挟んで遮光板20上に配置される押え板30により保持されている。偏光変換素子本体60上に選択的に設けられた複数の位相差板50,50'の長手方向と平行な方向の偏光変換素子本体60の上下の端面は、押え板30の上側および下側保持部35(一方は図示せず)により位置が規制されて保持されている。また、偏光変換素子本体60の前記上下の端面と直交する方向である左右の端面および出射面の端部近傍は、断面L字形の複数のPBS保持部32および位相差板保持部33により保持されている。遮光板20と押え板30とは、固定手段としての複数の止めねじ79により固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光分離素子の出射面に位相差板を選択的に配置した偏光変換素子を備えた偏光変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、会議、学会、展示会などでのプレゼンテーションにプロジェクタが多用されている。このようなプロジェクタは、光学部品用筐体内に複数の光学部品を収納し、これらの光学部品を介して、光源から出射された光束を変調した後に拡大投射して投射画像を形成している。このような光学部品として、光源から出射されるランダムな偏光方向を有する光を、一方向の偏光方向を有する直線偏光光に変換する光学素子である偏光変換素子が用いられている。この光学変換素子として、入射されたランダム光をS波とP波とに分離して出射するプレート型の偏光分離素子(以下、「PBS(Polarization Beam Splitter:偏光ビームスプリッタ)」という)の出射面の一部に、S波またはP波に偏光方向を揃える位相差板が選択的に設けられたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ここで、プロジェクタの一般的な光学系の構成と、そのなかに用いられる特許文献1に記載の偏光変換素子およびその光学的な作用について図面に沿って説明する。
図5は、一般的な液晶プロジェクタの光学系構成を模式的に示す説明図である。図6は、従来の偏光変換素子を説明するものであり、PBSの出射面の一部に選択的に貼り付けられて設けられた位相差板を図5の光学系構造の液晶パネル側からみた正面図である。また、図7は、偏光変換素子の光学的な作用を説明する側面図である。
【0004】
図5に示すように、一般的に、液晶プロジェクタの光学系は、光源ランプ1、第1のフライアイレンズ2、第2のフライアイレンズ3、偏光変換素子6、照明系レンズ7a,7b、偏光子8、液晶パネル9、検光子10、および投射レンズ11により構成されている。ここで、第1のフライアイレンズ2は、複数の矩形状のレンズセルからなり、また、第2のフライアイレンズ3は、第1のフライアイレンズ2の各レンズセルに対応して配置されている矩形状のレンズセルの集合体からなっており、光源ランプ1からのアーク像を二次光源像として投射させる。また、偏光変換素子6は、第2のフライアイレンズ3から出射されたランダム光をS波とP波に分離するものであり、ここで、位相差板5は、偏光変換素子6のPBS4から出射された光をS波またはP波のいずれかの偏光方向に揃えるためのものである。
【0005】
ここで、偏光変換素子6は、図6に示すように、PBS4の出射面の一部に、複数の位相差板(1/2波長板)5が選択的に設けられて構成されている。PBS4は、光の入射面および該入射面と略平行な光の出射面を有する同一形状の第1の透光性部材(第1のプリズム)14および第2の透光性部材24をそれぞれ複数有している。
図7に示すように、第1の透光性部材14の入射面および出射面と所定の角度をなす面には偏光分離膜が形成された偏光分離膜面(ダイクロイック膜面)4aを有し、該偏光分離膜面4aと略平行な面には反射膜が形成された反射膜面4bを有している。このような第1の透光性部材14と第2の透光性部材24とが、交互に複数周期貼り合わされて、プレート型のPBS4が構成されている。そして、PBS4の出射面において、複数の第1の透光性部材14の出射面に、位相差板5が接着剤により接着されて設けられている。
【0006】
図7に示すPBS4と位相差板5とからなる偏光変換素子6において、複数のレンズセルからなる第2のフライアイレンズ3から入射されてくるランダム光(P波+S波)は、PBS4の偏光分離膜面4aにおいて、P波が透過光とされ、S波は反射光とされて分光される。偏光分離膜面4aで反射されたS波は、さらに、PBS4の反射膜面4bで反射され、照明系レンズ7aの方向(図面左方向、図5を参照)に出射される。一方、偏光分離膜面4aを透過したP波は、PBS4の出射側側面に貼り付けられた位相差板5に入射する。
【0007】
ここで、位相差板5は、例えば旋光特性を有する水晶板からなり、水晶板の光学軸はP波に対して45°に設定されている。このため、位相差板5に入射されたP波は、位相差板5を構成する水晶板により90°旋光されてS波の偏波光とされ、照明系レンズ7aの方向(図面左方向、図5を参照)に出射される。よって、照明系レンズ7aの方向に出射される光は、偏光分離膜面4aを透過したP波も位相差板5によりS波に旋光されることにより、偏光分離膜面4aで反射され、反射膜面4bでさらに反射されたS波と偏光方向が揃う状態になる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−309853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載の偏光変換素子6において、接着剤によりPBS4に位相差板5を貼り付ける際には、貼り付け強度および貼り付け時に発生する気泡の除去性を確保するために、十分な塗布量の接着剤を塗布する必要がある。このため、接着剤の塗布時、および、接着剤を介してPBS4の出射面に位相差板5を貼り付ける際に、位相差板5が固定される領域から接着剤がはみ出しやすい。このように、位相差板5の固定領域からはみ出した接着剤が、PBS4の出射面の光線の透過領域にまで至った場合には、接着剤により透過光の拡散が生じて光の透過効率が部分的に低下し、透過光の光量が不均一になったり、全体的な照度の低下を招いたりするなど、偏光変換素子の光学特性を劣化させる虞があるという問題があった。
また、PBS4に貼り付ける位相差板5の位置決めを手作業で行なう場合には、作業者の勘にたよる作業となるため位置ずれが生じやすく歩留りの低下を招く虞があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0011】
〔適用例1〕本適用例に係る偏光変換装置は、偏光変換素子をホルダーで保持した偏光変換装置であって、前記偏光変換素子はプレート型の偏光分離素子と複数の位相差板とからなり、前記ホルダーは、ベース板と、押え板と、前記ベース板および前記押え板を固定する固定手段と、からなり、前記偏光分離素子の一方の面には入射光領域と非入射光領域が設けられ、前記ベース板は、前記入射光領域に沿って設けられた開口部と、前記非入射光領域に沿って設けられた非開口部と、を有し、前記押え板は、複数の前記位相差板の長手方向に対向する両端部をそれぞれ保持する位相差板押え部と、前記偏光分離素子の端部を保持する偏光分離素子押え部と、を有し、前記偏光分離素子押え部が、各々の前記位相差板の出射光の光学面方向の位置を規制するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、プレート型の偏光分離素子の出射面の所定の領域に、接着剤を用いることなく、複数の位相差板を選択的に設けることができるので、位相差板が設けられる領域以外の光線の透過領域に接着剤がはみ出したり付着したりすることを防止できる。これにより、光線の透過領域に接着剤がはみ出した場合に起こり得る光の透過効率の低下を防止できるので、光の透過効率が高く、均一な光透過性を有する偏光変換装置を提供することができる。なお、プレート型の偏光分離素子とは断面が略平行四辺形の柱状体からなる透光性部材がそれぞれ交互に複数周期貼り合わされ、光の入射面および該入射面と略平行な光の出射面を有し、前記入射面と所定の角度をなす偏光分離膜面と反射膜面とを有して形成された積層体の光学素子である。
また、押え板の偏光分離素子押え部が、隣接する位相差板の出射光の光学面方向の位置を規制するように設けられているので、この端面部分をガイドとして位相差板を容易に且つ精度よく位置を規制することができるので、作業性が向上して工程の効率化が図れるとともに、位相差板の位置ずれ不良が低減する。
【0013】
〔適用例2〕上記適用例に係る偏光変換装置において、前記ベース板が前記偏光分離素子の一部の端面の位置を規制し、且つ前記押え板が前記位相差板の端面の位置を規制し、前記ベース板と前記押え板とを、相互の位置を規制しつつ互いに固定することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ベース板と押え板の位置を相互に調整して固定すれば、ベース板と押え板によってそれぞれの端面の一部の位置を規制された偏光分離素子と位相差板同士は互いの位置関係を調整できる。よって、各々の位相差板は偏光分離素子に対して、高精度に位置決めできる。
【0015】
〔適用例3〕上記適用例に係る偏光変換装置において、前記ベース板の非開口部あるいは開口部のどちらか一方と、位相差板と、がそれぞれ互いに実用上概ね同じ位置に設置されることを特徴とする。
【0016】
上記の構造によれば、ベース板は入射光を入射領域のみに導くことができる。従来技術では、この入射光を入射領域のみに導く素子は遮光板等と呼ばれ、独立した光学素子として用いられてきた。ベース板が遮光板のような、入射光のみを導くように機能すれば、遮光板を減らすことができ、部品点数を削減できる。
【0017】
〔適用例4〕上記適用例にかかる偏光変換装置において、前記位相差板押え部は、弾性体を有し、前記位相差板押え部の少なくとも先端側が所定の圧力で前記位相板を押し当てることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、接着剤を用いることなく偏光分離素子に位相差板を固定することができる。これにより、偏光変換素子本体の位相差板が固定される領域と異なる光線の透過領域に接着剤がはみ出した場合に起こり得る光の透過効率の低下を防止できるので、光の透過効率が高く、均一な光透過性を有する偏光変換装置を提供することができる。
【0019】
〔適用例5〕上記適用例にかかる偏光変換装置において、前記位相差板押え部と前記偏光分離素子押え部との平面視の長さがそれぞれ異なるように形成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、位相差板を位置決めするときに、偏光分離素子押え部と位相差板押え部との長さの違いにより位相差板が配置される領域を判別することができるので、位置決め作業の作業性が向上し、位置ずれ不良を軽減することができる。
【0021】
〔適用例6〕上記適用例にかかる偏光変換装置において、前記弾性体がばねであることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、弾性体がばねであるので、押し当てる圧力を容易に調整できる。
【0023】
〔適用例7〕上記適用例にかかる偏光変換装置において、前記ホルダーが、金属材料から構成されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、偏光変換素子本体を保持するホルダーとしての剛性を十分に確保できる。また、熱伝導性の高い金属性であるために、偏光変換素子本体で発生する熱を外部へ放熱でき、熱に弱い偏光変換素子本体の熱損傷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、偏光変換装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、偏光変換装置の一実施形態を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態の偏光変換装置の偏光変換素子本体を説明する部分側面図である。また、図3は、本実施形態の偏光変換装置に用いられるホルダーのベース板としての遮光板を説明するものであり、(a)は平面図、(b)は、(a)のA−A線断面図である。また、図4は、本実施形態のホルダーの押え板を説明するものであり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は、(a)のC−C線断面図、(d)は、(c)の変形例を示す(a)のC−C線断面図である。なお、本実施形態を説明する光学系の構成としては、従来技術において説明した図5の光学系構成図と同様の構成からなっている場合について説明する。
【0027】
〔偏光変換装置〕
図1に示すように、偏光変換装置100は、偏光分離素子(以下「PBS」という)40上に複数の位相差板50が選択的に配置されて構成される偏光変換素子本体60を、この偏光変換素子本体60の光線の入射面側を保持する遮光板20と、偏光変換素子本体60の光線の出射面側から保持する押え板30とからなるホルダー70により挟んで保持して構成されている。
以下、偏光変換装置100の各構成について詳細に説明する。
【0028】
〔偏光変換素子本体〕
図2に示すように、偏光変換素子本体60は、PBS40と、PBS40の光線の出射面側に選択的に配置される複数の位相差板50,50'とを備えている。なお、本実施形態の偏光変換素子本体60において、PBS40と複数の位相差板50,50'とは接着剤などで接着されてはおらず、上記ホルダー70により挟まれて保持された態様となっている。
PBS40は、断面が略平行四辺形の柱状の第1の透光性部材41と第2の透光性部材42とが交互に複数周期貼り合わされて構成されている。なお、本実施形態のPBS40においては、その中央に、断面が略三角形の柱状の第1の透光性部材41'が配置されている。
PBS40の一部に選択的に設けられる複数の位相差板50,50'は、本実施形態では、複数の第1の透光性部材41,41'の光線の出射面側に設けられており、第1の透光性部材41,41'を透過するP型偏光光の偏光軸を90°回転させるものである。
【0029】
第1の透光性部材41,41'および第2の透光性部材42の材料としては、板ガラスが用いられる。ただし、ガラス以外の透光性の板状材料を用いることもできる。また、第1の透光性部材41,41'と第2の透光性部材42とのいずれか一方を、他方とは異なる色を有する材料を用いるようにしてもよい。例えば、一方の部材を無色透明な板ガラスで形成し、他方の部材を青色で透明な板ガラスで形成するようにしてもよい。このようにすれば、PBS40を作成するとき、また、PBS40あるいは偏光変換素子本体60として偏光変換装置100を構成した後で、第1の透光性部材41,41'と第2の透光性部材42との区別をつけやすいという利点がある。なお、板ガラスとしては、磨き板ガラスやフロートガラスが好ましく、特に、磨き板ガラスが好ましい。
【0030】
交互に貼り合わされてPBS40を形成する第1の透光性部材41および第2の透光性部材42のそれぞれの略平行な二つの表面のうち、一方の表面には偏光分離膜面40aが形成され、他方の表面には反射膜面40bが形成されている。本実施形態のPBS40においては、第1の透光性部材41の略平行な二つの表面のうち、一方の表面上に偏光分離膜面40aが形成され、他方の表面上に反射膜面40bが形成され、第2の透光性部材42の表面には、これらの膜のいずれも形成されていない構成を示している。なお、本実施形態において、PBS40の中央に配置される断面が略三角形の柱状の第1の透光性部材41'における偏光分離膜面40aは断面略「ハ」字状に構成されている。これにより、特に光源から出射された図中一点鎖線矢印で示す照明光軸上の強い輝度を持つ光線は、この略90°に接続された偏光分離膜面40aに照射される構成となっている。
【0031】
偏光分離膜面40aは、S偏光とP偏光のいずれか一方を選択的に透過させ、他方を選択的に反射する性質を有する偏光分離膜からなっている。通常、このような性質を有する誘電体多層膜を積層することによって、偏光分離膜面40aが形成される。
【0032】
反射膜面40bは、偏光分離膜面40aを構成する偏光分離膜とは異なる組成および構成を有する誘電体多層膜を積層することによって形成される反射膜からなっている。誘電体多層膜を積層することによって形成される反射膜面40bは、特定の直線偏光成分(例えばS偏光)を約98%程度の高い反射率で反射することができるので好ましい。反射膜面40bは、偏光分離膜面40aで反射された直線偏光成分(S偏光またはP偏光)のみを選択的に反射し、他の直線偏光成分は反射しないような誘電体多層膜で構成されたものが好ましい。なお、反射膜面40bは、アルミニウムなどを蒸着することによって形成するようにしてもよい。
以上、説明した構成の第1の透光性部材41,41'と第2の透光性部材42とは、例えば紫外線硬化タイプの光学接着剤によって交互に複数周期貼り合わされ、これによりPBS40が形成されている。
【0033】
PBS40の出射面側の一部、本実施形態においては、第1の透光性部材41,41'の出射面側には、例えば水晶の薄板からなる位相差板50,50'が選択的に配置されている。水晶からなる位相差板50,50'は、従来の有機物からなるフィルム状の位相差板に比して耐熱性や耐光性に優れている。
なお、PBS40の中央に配置される断面が略三角形の柱状の第1の透光性部材41'に配置される位相差板50'は、他の位相差板50の二枚分の大きさを有している。
【0034】
〔遮光板〕
次に、偏光変換装置100においてホルダー70を構成するベース板としての遮光板20について説明する。
図3に示すように、遮光板20は、ステンレスやアルミニウムなどの略矩形平板状の金属からなる基材21の、PBS40が配置されるPBS配置領域40'内に選択的に形成された複数の開口部25,25'が設けられている。本実施形態では、PBS40において光線の出射面に位相差板50,50’が設けられる第1の透光性部材41,41'の入射面と対応する位置に開口部25,25'が設けられている。この開口部25,25'により、偏光変換装置100の光線の入射側において配置される遮光板20は、偏光変換素子本体60への不要光の遮断を行なう遮光部として機能し、光源からの光線をより一層有効に利用することを可能にする。
PBS配置領域40'内の開口部25,25'と異なる領域は、偏光変換装置100において偏光変換素子本体60の入射面となるPBS40の入射面が当接される入射側当接部となっている。また、基材21のコーナー部近傍には、偏光変換装置100におけるホルダー70において、遮光板20と対をなす押え板30との固定手段としての止めねじ79(図1を参照)が固定される止めねじ孔29が設けられている。
【0035】
〔押え板〕
次に、上記遮光板20上に配置された偏光変換素子本体60を、遮光板20との間に挟んで保持する押え板30について説明する。
図4(a)に示すように、押え板30は、ステンレスやアルミニウムなどの略矩形平板状の金属からなる基材31の中央に、PBS40の少なくとも光線の透過領域を含む大きさの矩形状の開口部34が形成された枠体として構成されている。押え板30の長手方向の対向する二辺側の端部近傍には、基材31の一部を略直角に折り曲げられることによりリブ37が形成されている。このリブ37により、平板状の枠体である押え板30の剛性が確保され、また、偏光変換素子本体60を遮光板20と押え板30により挟んで保持することにより構成される偏光変換装置100の剛性を高める効果を奏する。また、基材31のコーナー部近傍の、上記遮光板20の止めねじ孔29(図3を参照)と対応する位置には止めねじ孔39が設けられている。
【0036】
開口部34の長手方向の二辺と直交する方向の対向する二辺それぞれの略中央には、偏光変換素子本体60の位相差板50の長手方向と平行な方向である上下の端部をそれぞれ保持する上側および下側保持部35が設けられている。上側および下側保持部35は、基材31の一部に開口部34から突出する短冊状の突出部を一旦形成し、これを上側に略直角に折り曲げることにより形成されている。
【0037】
また、開口部34の上側および下側保持部35が設けられた二辺と直交する方向の対向する二辺には、偏光変換素子本体60の左右の端面および光線の出射面側の端部を保持する保持部であって、第2の透光性部材42の側面および出射面の端部を保持する断面略L字形状のPBS保持部32と、第1の透光性部材41の側面および第1の透光性部材41上に配置される位相差板50の出射面の端部を保持する断面略L字形状の位相差板保持部33とが、順次複数ずつ設けられている。
【0038】
複数のPBS保持部32は、基材31の一部に開口部34から突出する短冊状の突出部を一旦形成した後、これを上側に略直角に折り曲げることにより形成され第2の透光性部材42の側面を保持する側面保持部32aと、さらに側面保持部32aの先端側の所定の位置から開口部34の中央方向に略直角に折り曲げられて形成され第2の透光性部材42の出射面側の端部を保持するPBS押え部32bとを有している。
また、各PBS保持部32の少なくともPBS押え部32bの長手方向の端部は、偏光変換素子本体60を遮光板20と押え板30とにより挟んで保持した際に、隣接する第1の透光性部材41上に配置される位相差板50の長手方向の端面の位置を規制するように設けられている。
【0039】
同様に、複数の位相差板保持部33は、基材31の一部に開口部34から突出する短冊状の突出部を一旦形成した後、これを上側に略直角に折り曲げて形成され第2の透光性部材42および位相差板50の側面を保持する側面保持部33aと、さらに側面保持部33aの先端側の所定の位置から開口部34の中央方向に略直角に折り曲げて形成され位相差板50の出射面側の端部を保持する位相差板押え部33bとを有している。
図4(b),(c)に示すように、位相差板保持部33の位相差板押え部33bは、PBS保持部32のPBS押え部32bよりも位相差板50の厚み分だけ高い位置に形成されている。
【0040】
複数のPBS保持部32および位相差板保持部33において、それぞれの側面保持部32aまたは側面保持部33aと、PBS押え部32bまたは位相差板押え部33bとがなす折り曲げ角度は、PBS押え部32bまたは位相差板押え部33bの先端側がそれぞれ基材31の方向に向かう傾斜を有するように直角よりも若干小さな角度に設定されている(図示は省略)。このようにすることにより、偏光変換素子本体60を遮光板20と押え板30とにより挟んで保持した際に、偏光変換素子本体60の出射面に押し当てられたPBS保持部32のPBS押え部32bまたは位相差板保持部33の位相差板押え部33bが、それらの有するばね力によって押し上げられる方向に変形し、この弾性エネルギーの蓄勢によって偏光変換素子本体60が所定の保持力で保持されるようになっている。
【0041】
なお、図4(c)および図1においては、隣接するPBS保持部32と位相差板保持部33とが、基材31から上方に略直角に折り曲げられた屈曲部分から切り離されるように形成されているが、これに限定されない。例えば、図4(d)に示すように、隣接するPBS保持部32と位相差板保持部33との基材31から折り曲げられた屈曲部分よりも上方から切り離された構成としてもよい。このようにすれば、PBS保持部32および位相差板保持部33それぞれの各側面保持部32a,33aの剛性が確保される。
【0042】
〔偏光変換装置〕
図1に戻り、上述した偏光変換素子本体60、遮光板20、および押え板30と、により構成された偏光変換装置100について詳細に説明する。
図1において、偏光変換装置100の遮光板20上に出射面側を当接させて配置された偏光変換素子本体60は、該偏光変換素子本体60を挟んで遮光板20上に配置される押え板30により保持されている。偏光変換素子本体60上に選択的に設けられた複数の位相差板50,50’の長手方向と平行な方向の偏光変換素子本体60の上下の端面は、押え板30の上側および下側保持部35(一方は図示せず)により位置が規制されて保持されている。また、偏光変換素子本体60の前記上下の端面と直交する方向である左右の端面および出射面の端部近傍は、断面L字形の複数のPBS保持部32および位相差板保持部33により保持されている。このうち、偏光変換素子本体60のPBS40の出射面は、PBS保持部32のPBS押え部32bにより保持され、PBS40上において、PBS押え部32bにより長手方向の端面の位置が規制されて配置された位相差板50,50’の出射面は、位相差板保持部33の位相差板押え部33bにより保持されている。
そして、遮光板20と押え板30とは、固定手段としての複数の止めねじ79により固定されている。
【0043】
このような偏光変換装置100を組み立てする工程においては、まず、押え板30のPBS押え部32bおよび位相差板押え部33b側を下側にして載置し、押え板30の開口部34の長手方向の二辺(図4(a)を参照)に対向する二辺に設けられた複数対の位相差板保持部33の位相差板押え部33bに、位相差板50の両端部を保持させて架け渡すように配置する。このとき、隣接する一対のPBS保持部32のPBS押え部32bの端面が位相差板50,50’の端面の位置を規制するように設けられているので、位相差板50,50’の位置合わせはPBS押え部32bの端面をガイドとした落とし込みにより容易に行える。
次に、押え板30にPBS40を組み込む。PBS40の組み込みも、押え板30の一方の対向する二辺に設けられた複数対のPBS保持部32および位相差板保持部33の各側面保持部32a,33aと、他方の対向する二辺に設けられた一対の上側および下側保持部35と、によりPBS40の四方の側面が規制されるように形成されているので、PBS40の位置合わせはそれらをガイドとした落とし込みにより容易に行える。
そして、複数の位相差板50およびPBS40が組み込まれた押え板30に遮光板20を位置合わせして重ね合わせ、複数の止めねじ79で固定することにより偏光変換装置100が得られる。
【0044】
〔偏光変換装置を用いた光学系構成〕
偏光変換装置100を、例えばプロジェクタに用いた場合の光学系構成は、従来の技術で説明した図5のプロジェクタの光学系の構成図に示したもの同様である。すなわち、図5において、光源ランプ1、第1のフライアイレンズ2、第2のフライアイレンズ3、偏光変換素子6、照明系レンズ7a,7b、偏光子8、液晶パネル9、検光子10、および投射レンズ11により構成された光学系の構成のうち、偏光変換素子6を偏光変換装置100に置き換えること以外は、従来の技術において前述した通りである。
偏光変換装置100は、第2のフライアイレンズ3から出射されたランダム光をS波とP波に分離するものであり、ここで、位相差板50,50'は、偏光変換装置100のPBS40から出射された光をS波またはP波のいずれかの偏光方向に揃えるためのものになる。なお、このような偏光変換装置100の偏光変換作用の詳細については、従来の技術にて上述した図7の偏光変換素子6と同様である。
【0045】
上記実施形態の偏光変換装置100によれば、PBS40の出射面の所定の領域に、複数の位相差板50を接着剤を用いることなく設けることができるので、位相差板50が設けられる出射面と異なる出射面の光線の透過領域に接着剤がはみ出したり付着したりする不良を防止できる。これにより、光線の透過領域に接着剤がはみ出した場合に起こり得る光の透過効率の低下を防止できるので、光の透過効率が高く、均一な光透過性を有する偏光変換装置100を提供することができる。
また、押え板30のPBS保持部32が、隣接する位相差板保持部33に配置される位相差板50の長手方向の端面を規制するように設けられていることにより、このPBS保持部32の端面部分をガイドとしての位相差板50を容易に且つ精度よく位置決めすることができるので、作業性が向上して工程の効率化が図れるとともに、位相差板50の位置ずれ不良が軽減する。
また、偏光変換素子本体60への不要光の遮断を行なう遮光板20をベース板として用いているので、光源からの光線をより一層有効に利用することが可能な偏光変換装置100を提供できる。
また、偏光変換素子本体60がホルダー70により保持されて保護されるので、偏光変換素子を破損させることなく、投影装置などの光学装置の光学系に偏光変換素子を組み込むことができる。
【0046】
(変形例)
上記実施形態の偏光変換装置100において、押え板30を、以下説明する変形例のような形態とすることにより、偏光変換装置100の製造工程の作業性を向上させることができる。
図8は、偏光変換装置100の組み立て工程において、作業性を向上せしめる押え板の変形例を説明する平面図である。なお、図8の押え板の構成のうち、PBS保持部132以外の構成は、上記実施形態の図4(a)と同じであるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
図8に示す押え板130は、金属からなる基材31の中央に形成された略矩形の開口部34の、長手方向の二辺と直交する方向の対向する二辺それぞれの略中央には上側および下側保持部35が設けられている。また、開口部34の上側および下側保持部35が設けられた二辺と直交する方向の対向する二辺には、偏光変換素子本体60の左右の端面および光線の出射面側の端部を保持する保持部であって、第2の透光性部材42の側面および出射面の端部を保持するPBS保持部132と、第1の透光性部材41の側面および第1の透光性部材41上の位相差板50の出射面の端部を保持する位相差板保持部33とが、順次複数ずつ設けられている。
【0048】
複数の位相差板保持部33は、基材31の一部に開口部34から突出する短冊状の突出部を一旦形成した後、これを上側に略直角に折り曲げることにより形成された側面保持部33aと、さらに側面保持部33aの先端側の所定の位置から開口部34の中央方向に折り曲げることにより形成された位相差板押え部33bとにより構成されている(図4(b),(c)を参照)。これと同様に、複数のPBS保持部132は、側面保持部と、開口部34の中央方向に折り曲げることにより形成されたPBS押え部とにより構成されている。
複数の位相差板保持部33の位相差板押え部33bとPBS保持部132のPBS押え部とは、それぞれ異なる長さにて形成されている。本変形例では、位相差板保持部33の位相差板押え部33bよりも、PBS保持部132のPBS押え部の方が短い長さで形成されている。
【0049】
このような構成の押え板130によれば、複数の位相差板保持部33およびPBS保持部132のそれぞれの出射面保持部が異なる長さにて形成されているため、作業者がそれらを容易に識別することができるので、偏光変換装置100の組み立てにおいて作業性が向上する。例えば、位相差板50を搭載する側のPBS押え部を平面視で識別できるので、位相差板50の配置位置を間違えるなどの作業ミスを防止できる。
【0050】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態およびその変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態の偏光変換装置100では、偏光変換素子本体60を保持するホルダー70のベース板として、第1の透光性部材41,41'の入射側の面と対応する位置に開口部25,25'を設け、開口部25,25'と異なる部分の光を遮断する遮光板20を用いた。これに限らず、偏光変換素子本体60の光線の透過領域全体と対応する一つの開口部が形成されたベース板を用いる構成としてもよい。この場合、偏光変換素子本体60の特定の領域の遮光をしたいのなら、偏光変換素子本体60の入射面の遮光を望む領域に、例えば金属薄膜などの光を遮断する遮光膜などを設ければよい。
【0052】
また、上記実施形態および変形例では、偏光変換素子本体60を保持する遮光板20(ベース板)および押え板30,130からなるホルダー70の基材21,31に金属材料を用いた。これに限らず、押え板30,130のPBS保持部32,132および位相差板保持部33が、偏光変換素子本体60を保持するのに十分なばね性を有していれば、例えば樹脂材料などにより構成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態の偏光変換装置100において、PBS40の出射面に配置される位相差板50,50'を構成する水晶板は、その光学軸を、入射されてくるP波に対して45°に設定されたものとした。これに限らず、位相差板50,50'を構成する水晶板の光学軸が、入射されてくるP波に対して135°に設定されたものであってもよく、入射されたP波を90°または180°のいずれかに旋光させても、S波の偏波光として出射することができる。また、位相差板50,50'に入射される光をP波ではなく、S波とするように構成してもよく、この場合においては、位相差板50,50'を構成する水晶板の光学軸を、入射されてくるS波に対して45°のみでなく135°に傾斜させて設定することにより、入射されたS波を90°または180°のいずれかに旋光させて、P波の偏波光として出射することができる。
【0054】
また、上記実施形態の偏光変換装置100では、PBS40の偏光分離膜面40aを透過したP波を、位相差板50,50'を構成する水晶板によってS波に旋光させて、偏光分離膜面40aで反射されたS波と偏光方向を揃えている例を説明した。これとは逆に、PBS40の出射面に配置する位相差板50,50'を、PBS40の偏光分離膜面40aを透過してくるP波ではなく、PBS40の反射膜面40bで反射されたS波側の出射側側面に配置して、反射膜面40bで反射されて出射されてきたS波を90°旋光させて、P波の偏波光として出射させることにより、照明系レンズ7aの方向に出射される光としてP波に偏光方向を揃えるようにしてもよい。この場合においては、位相差板50,50'を構成する水晶板の光学軸は、入射されるS波に対して45°または135°に傾斜させて設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】偏光変換装置の一実施形態を説明する斜視図。
【図2】本実施形態の偏光変換素子本体を説明する部分側面図。
【図3】(a)は、本実施形態のベース板としての遮光板を説明する平面図、(b)は、(a)のA−A線断面図。
【図4】(a)は、本実施形態の押え板を説明する平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は、(a)のC−C線断面図、(d)は、(c)の変形例を示す(a)のC−C線断面図。
【図5】一般的な液晶プロジェクタの光学系構成を模式的に示す説明図。
【図6】従来の偏光変換素子を説明する正面図。
【図7】偏光変換素子の光学的な作用を説明する側面図。
【図8】押え板の変形例を説明する平面図。
【符号の説明】
【0056】
1…光源ランプ、2…第1のフライアイレンズ、3…第2のフライアイレンズ、4,40…偏光分離素子としてのPBS、4a,40a…偏光分離膜面、4b,40b…反射膜面、5,50…位相差板、6…偏光変換素子、7a…照明系レンズ、7b…照明系レンズ、8…偏光子、9…液晶パネル、10…検光子、11…投射レンズ、14,41,41'…第1の透光性部材、20…ベース板としての遮光板、24,42…第2の透光性部材、25,25'…開口部、30,130…押え板、32,132…偏光分離素子保持部としてのPBS保持部、32a,33a…側面保持部、32b…偏光分離素子押え部としてのPBS押え部、33…位相差板保持部、33b…位相差板押え部、60…偏光変換素子本体、70…ホルダー、79…固定手段としての止めねじ、100…偏光変換装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光変換素子をホルダーで保持した偏光変換装置であって、
前記偏光変換素子はプレート型の偏光分離素子と複数の位相差板とからなり、
前記ホルダーは、ベース板と、押え板と、前記ベース板および前記押え板を固定する固定手段と、からなり、
前記偏光分離素子の一方の面には入射光領域と非入射光領域が設けられ、
前記ベース板は、前記入射光領域に沿って設けられた開口部と、前記非入射光領域に沿って設けられた非開口部と、を有し、
前記押え板は、複数の前記位相差板の長手方向に対向する両端部をそれぞれ保持する位相差板押え部と、前記偏光分離素子の端部を保持する偏光分離素子押え部と、を有し、
前記偏光分離素子押え部が、各々の前記位相差板の出射光の光学面方向の位置を規制するように設けられていることを特徴とする偏光変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光変換装置において、
前記ベース板が前記偏光分離素子の一部の端面の位置を規制し、且つ前記押え板が前記位相差板の端面の一部の位置を規制し、
前記ベース板と前記押え板とを、相互の位置を規制しつつ互いに固定することを特徴とする偏光変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の偏光変換装置において、
前記ベース板の非開口部あるいは開口部のどちらか一方と、位相差板と、がそれぞれ互いに実用上概ね同じ位置に設置されることを特徴とする偏光変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の偏光変換装置において、
前記位相差板押え部は、弾性体を有し、前記位相差板押え部の少なくとも先端側が所定の圧力で前記位相差板を押し当てることを特徴とする偏光変換装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の偏光変換装置において、
前記位相差板押え部と前記偏光分離素子押え部との平面視の長さがそれぞれ異なるように形成されていることを特徴とする偏光変換装置。
【請求項6】
請求項4に記載の偏光変換装置において、
前記弾性体がばねであることを特徴とする偏光変換装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の偏光変換装置において、
前記ホルダーが、金属材料から構成されていることを特徴とする偏光変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−186703(P2009−186703A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25999(P2008−25999)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】