説明

偏光性及び耐摩耗性を有する光学器材及びその製造方法

【課題】偏光性及び耐摩耗性の双方を備えるコーティングを施された器材であって、基板と偏光層との間の接着剤の存在を回避しうるものを提供すること。
【解決手段】本発明は、a)基板に施された偏光層であって、前記偏光層は少なくとも一つの二色性染料を含む配向液晶ポリマー層(LCP層)を備えており、前記液晶層は光配向層上にコーティングされている、前記偏光層、及びb)前記基板上の偏光層に施された耐摩耗性コーティング、を含む器材を提供する。本発明はまた、前記器材の製造方法、及び光学ガラス又はレンズを製造するための前記器材の使用にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光及び耐磨耗性の器材、及び、例えば無機又は有機ガラスなどの適切な基板に、偏光性且つ耐摩耗性のコーティングを形成させるための方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に施される耐摩耗性のコーティングは、既に従来技術にて報告されている。例えば、特許文献1又は2は、加水分解シラン及びアルミニウム化合物を含有する耐摩耗性コーティング組成物、並びに摩擦及び衝撃に耐性を有する、コーティングされた器材を開示している。特許文献3、4及び5は、前記のような耐磨耗性コーティングが施された、ブタジエン単位を含む硬化ポリウレタン又はポリ(メタ)アクリル若しくはラテックスのプライマーコーティングを組み合わせた二層耐衝撃性及び耐摩耗性システムを開示している。前記ラテックスは、特許文献6又は7に開示のようなフォトクロミックラテックスである。かかるラテックスは、それが施された器材の衝撃抵抗性を改善することができ、また前記器材にフォトクロミック性を付与することもできる。
【0003】
偏光ガラスもまた、雪、海面、濡れた路面等に起因する光の反射によって生じる眩輝を除去し、眼自体を保護する能力を有することが、前記技術分野において良く知られている。特許文献8には、偏光で照射されて同時に架橋される光配向可能なポリマー(LPP)、及び液晶分子の局所配向が(LPP)層の配向によって誘導される、架橋液晶(LCP)を材料とするモノマーの異方性膜、を含む光学成分が開示されている。
【0004】
通常、偏光層は、基板と偏光層との間に施される接着剤層によって基板にコーティングされる。接着剤の添加は、工業的規模では費用が嵩み、また技術的に煩雑な工程である。更に、この技術は湾曲した表面に適用するのは非常に困難であり、通常は偏光膜の熱形成工程が必要となる。
【特許文献1】米国特許第4,211,823号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0614957号公報
【特許文献3】米国特許第5,316,791号公報
【特許文献4】米国特許第6,503,631号公報
【特許文献5】米国特許第6,489,028号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開第1161512号公報
【特許文献7】仏国特許第2811322号公報
【特許文献8】米国特許第5,602,661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状を打開することを意図し、偏光性及び耐摩耗性の双方を備えるコーティングされた器材であって、基板と偏光層との間の接着剤の存在を回避しうるものを新しく生産することを提案するものである。更に、前記コーティングされた器材は、前記器材が光学レンズ、更に具体的には眼科用レンズである場合に特に注目に値する、高品質な光学的性質を呈する。事実、偏光性且つ耐摩耗性の層を本願明細書に記載のとおりに光学基板に施すと、通常観察されるものを上回り、且つ少なくとも8を上回る、好ましくは少なくとも50を上回る、更に好ましくは少なくとも100を上回るコントラスト比に結びつき、少なくとも80%から6%までの、可視域における相対透過係数(Tv)を有する光学レンズを得ることが可能になる。本発明はまた、それらの光透過率に基づいてレンズを分類する標準国際規格の全区分(フィルター区分1〜4)に適合する光学レンズにも関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における偏光層とは、配向液晶(LCP)及び一つの光配向層を含む一つの層を指す。
【0007】
本発明における耐摩耗性コーティングとは、耐摩耗性の単層、又は二〜四層、好ましくは二若しくは三層、より好ましくは二層を備えた耐摩耗性の多層を指す。この耐摩耗性コーティングに関する更なる詳細は、以下の説明で定義する。
【0008】
本発明における基板とは、任意に着色コーティング、フォトクロミックコーティング、保護コーティング(例えば、溶媒による分解に対する抵抗をもたらす)、又は耐磨耗性コーティングを施すことが可能なあらゆる無機又は有機ガラスを指す。この後者のコーティングは、基板がポリカーボネートポリマーベースの有機物の基板である場合に施すのが望ましい。本発明の基板は、フォトクロミック又は着色性の官能基が基板自体の材料に含まれている、あらゆる無機又は有機ガラスであってよい。
【0009】
更に好ましくは、本発明は
a)基板に施された偏光層、並びに、
b)前記偏光層を覆う耐摩耗性の単層又は多層のコーティング、
を含み、前記偏光層が、一つ又は複数の染料及び任意に添加剤を含む配向液晶ポリマー層(LCP層)を有し、前記染料の少なくとも一つが二色性染料であり、前記LCP層が光配向層の上に施されている、器材に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の望ましい実施態様において、前記器材は、眼科用レンズである。その場合、前記レンズの前記基板は、無機のガラス、又は、望ましくは例えばポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタル酸及びポリカーボネートの共重合体、ポリオレフィン、ポリノルボルネン系化合物、ジエチレングリコールビス(アリールカルボン酸)の重合体及び共重合体、(メタ)アクリル系高分子の重合体及び共重合体及びビスフェノール−A−(メタ)アクリルの共重合体、チオ(メタ)アクリルの重合体及び共重合体、ウレタン及びチオウレタンの重合体及び共重合体、エポキシの重合体及び共重合体、並びにエピスルフィドの重合体及び共重合体で調製された有機ガラスであるのが望ましい。
【0011】
特有の実施形態によれば、本発明の器材は、少なくとも光配向層及びそれに続く少なくとも一つが望ましくは二色性である1又は2以上の染料を含む架橋液晶ポリマー(LCP)の層を含む偏光層と、並びに単層又は多層である更なる耐摩耗性コーティング、を含む。本発明の好ましい実施形態において、前記の更なる耐摩耗性コーティングは、単層及び二層から選択される。
【0012】
偏光層は、1〜20μm、好ましくは3〜8μmの厚さを有するのが望ましい。
【0013】
光配向ポリマーの層、液晶ポリマーの層及び二色性染料とを含む偏光層は、異方性膜を形成し、ここで偏光層を構成する層の配向に関連する。
【0014】
本発明の器材は、前記偏光層を覆うように施された耐摩耗性コーティングを有する。この耐摩耗性コーティングは、単層又は二〜四層により構成される多層であってよく、好ましくは、単層及び二層から選択される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記器材は、前記器材上のLCP層に施された耐摩耗性の単層又は二層を含み、前記器材には任意に処理が施され、前記処理は化学、熱、コロナ及びプラズマ処理から選択されるものである。本発明の有利な実施形態において、前記処理は化学、熱及びコロナ処理から選択される。本発明の実施形態において、前記処理は、前記基板上に光配向層を施す前に、器材の基板上に対して直接施されるか、また別の実施形態においては、前記処理は前記器材上にLCP層が施された後に、その器材に施される。本発明のより望ましい実施形態において、前記処理は、LCP層が施された後、且つ耐摩耗性の二層を施す前に、器材に施される熱処理である。本発明の他の望ましい実施形態において、前記処理は、基板上に光配向層を施す前に、前記器材の基板に直接施される化学処理である。
【0016】
これらの処理は、器材の基板上の積層物(光配向層、LCP層、及び耐摩耗性層)の良好な接着を可能とするものが望ましい。処理の選択は、光配向層の性質及び耐摩耗性層の性質に応じたものが望ましい。
【0017】
適切な耐摩耗性単層は、ゾル−ゲルコーティング、及びGLYMO(3グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を任意に含みうる重合可能な(メタ)アクリル系又はエポキシ(メタ)アクリル系のような、重合可能なUVコーティングから選択される。更に詳細には、適切な耐摩耗性の単層は、特許文献2、米国特許第5,619,288号公報、及び欧州特許出願公開第1301560(引用することにより本明細書に援用する)に記載の組成物により形成される。
【0018】
出願人らは、意外にも、偏光層を覆う耐摩耗性層の基板上を更にコーティング又は被覆することにより、基板上への偏光層のより良好な接着が確実になりうることを見出した。
【0019】
更に、出願人らは、偏光コーティングを重合及び配向させるのに使用される光の輝度及び線量が、十分な器材を得るのに重要な役割を果たしうることを見出した。十分な器材とは、偏光コーティング及び耐摩耗性コーティングが、前記器材の支持体を構成する基板上への良好な接着と、良好な光学的性質とを呈する器材を意味する。最後に、出願人らは、積層物を施す前、又は光配向層及びLCP層を施した後において、器材に施される処理の方式も、以上に述べたような十分な器材を得るのに重要な役割を果たし得ることを見出した。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、適切な前記耐摩耗性の単層は、アルミニウム及びシラン加水分解物、又は(メタ)アクリル系、エポキシ系、エポキシ(メタ)アクリル系のようなUV重合が可能なモノマーのいずれかをベースとする耐摩耗性組成物、及びそれらの混合物を施すことによって得られる。上記のうち、最後の化合物は、商品名(UV−NV)でUltra Optics社によって市販されている。
【0021】
前記耐摩耗性の単層は、エポキシアルコキシシラン(例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO))を主成分として、任意にジメチルジエトキシシラン(DMDES)のようなジアルキルジアルコキシシラン、コロイド状シリカ及びアルミニウムアセチルアセトン酸又はその加水分解物のような硬化触媒を含み、その残りの成分は、これらの組成物を調製するために典型的に使用される溶媒により基本的に構成される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、耐摩耗性の単層は、特許文献2の請求項8に記載の組成物を用いて、更に好ましくは前記特許文献の実施例3に記載された組成物(アルミニウム及びシラン加水分解物ベース)を用いて調製される。耐摩耗性コーティングのかかる構築は実施例として挙げられているに過ぎず、本発明が前記コーティングの使用の態様をいささかも限定するものではない。
【0023】
適切な耐摩耗性二層は、LCP層に直接接触する第一層(この耐摩耗性層は、ウレタン官能基を含む、又は(メタ)アクリル系官能基を含む、又はブタジエン単位を含むプライマーラテックス層を含んでよい)、並びに前記耐摩耗性単層と同じ第二層を含む。適切なラテックス層は、好ましくは、以下の特許にそれぞれ記載された組成物により調製される:US5,316,791、US6,503,631及びUS6,489,028(引用により本明細書に援用)。EP1161512及びFR2811322に記載のフォトクロミックラテックスを、プライマーラテックスとして使用することも可能である。本発明で使用されるプライマーラテックス層は、更に好ましくはポリウレタンの水性分散体であり、特に好ましい市販の水性ポリウレタン分散体としては、W−240及びW−234(Baxenden(商標名))が挙げられる。本発明の好ましい実施形態によれば、耐摩耗性二層コーティングは、上記のごとき適切なプライマーラテックス層、好ましくはポリウレタンの水性分散体である第一層と、上記のような適切な耐摩耗性単層である第二層とを備えている。本発明によれば、前記第一層は器材の基板に施された偏光層であるLCP層と直接接触することは明らかである。
【0024】
本発明の特定の実施形態によれば、液晶層(LCP層)を耐摩耗性層でコーティングする前に、前記LCP層の処理が行われる。この処理は、化学、熱、コロナ及びプラズマ処理から選択される。好ましい実施形態において、この処理は熱処理である。
【0025】
本発明の別の特定の実施形態によれば、器材の基板に光配向層をコーティングする前に、前記基板の処理が実施される。この処理は、化学、熱コロナ及びプラズマから選択される。好ましい実施形態において、この処理は化学処理である。
【0026】
化学処理は、以下の工程、すなわち;
50℃の5%NaOH水溶液;次いで水、次いで脱イオン水に器材を連続的に浸漬し;更に
その器材を乾燥させる工程、を含むのが望ましい。
【0027】
あるいは、液晶層(LCP層)を耐摩耗性単層でコーティングする前に化学処理を行う場合、化学処理は、以下の工程、すなわち;
50℃の5%NaOH水溶液;次いで水、次いで脱イオン水に器材を連続的に浸漬し;イソプロピルアルコール水溶液に器材を浸漬し;
その器材を乾燥させる工程、を含むのが望ましい。
【0028】
熱処理は、通常、器材を50℃〜130℃までの温度で5分〜3時間、好ましくは100℃で1時間加熱する工程を含む。また、通常の迅速硬化プロセスを用いて短時間、前記器材を加熱することも可能である。このような加熱工程では、温度は100℃を上回り、好ましくは130℃を上回るが、通常は200℃未満が望ましい。
【0029】
コロナ処理は、正常圧にて高放電の電極により、基板に対して印加することを含む。
【0030】
プラズマ処理は、コロナ処理と類似しているが、高真空又は不活性雰囲気下にて行われる。また、正常圧下にて行うことも可能である。
【0031】
好ましくは、基板は有機材料であり、更に好ましくは有機レンズである。本発明の好ましい実施形態によれば、基板は光学ガラス又は光学レンズであり、眼科用レンズ、眼用バイザー、及び視界光学的システムから選択される。好ましい実施形態において、基板は眼科用レンズであり、これは無焦点、一焦点、二焦点、三焦点、又は累進レンズである。各々の眼科用レンズは、透明レンズ、又は太陽光若しくは光により異性化する(solar or photochromic)レンズでもよい。このような場合、偏光層及び耐磨耗性コーティングでコーティングされた基板は、反射防止コーティング及びトップコートなどの、コーティングを補強する旧来の性質を備えたオーバーコーティングを施してもよい。反射防止コーティング、及びそれらの調製方法は、前記技術分野においてよく知られている。トップコートは、典型的には疎水性トップコートであり、これは完成した光学器材において光学基板上の最外コーティングを構成し、完成した光学器材の防汚性の向上を目的とするものである。
【0032】
層は、レンズの凸側、若しくは凹側の何れかに、又はその両側に施してもよい。しかし、基板の複屈折に起因する偏光の散逸を回避するために、レンズの凸側に偏光層が付されるのが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、偏光層はレンズの凸側にスピンコーティングされ、耐摩耗性コーティングは凸及び凹側にディップコーティングされる。
【0033】
本発明はまた、染料及び少なくとも一つの二色性染料を含む液晶溶液を調製し、場合により予めその上にコーティングを有する基板に前記溶液を施し、光配向層によって液晶層を配向させ、前記配向を好ましくは架橋によって維持し、そして更に基板に耐摩耗性コーティングを施す、工程を含む器材の製造方法にも関する。
【0034】
本発明の方法によれば、偏光層は、例えば基板へのスピンコーティング又はディップコーティングによって調製又は施され、耐摩耗性層はその偏光層を覆う更なる層である。スピン、ディップ、フロー、ファンコータ又はスプレーのようなコーティング工程、特にスピンコーティング及びディップコーティング工程は実施が容易であり、ゆえに本発明の方法は産業上コストに対する効率が良く、作業が実用的である。
【0035】
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、任意に添加剤を含む光配向材料溶液を前記基板にコーティングして層を形成し、次いで前記層に偏光UV照射をし、次いで少なくとも一つが二色性である1又は2以上の染料及び任意に添加剤とを含む液晶モノマー溶液を前記の層にコーティングし、得られた新しい層(LCP層)をUV光源を用いて架橋させ;化学的溶液、コロナ処理、熱処理及び/又はプラズマ処理でLCP層の表面を処理し、これらの処理の各々の後に濯ぎ工程を行い;得られた処理層に耐摩耗性コーティングを施す、工程を含む。好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、LCP層の表面の処理が熱処理である、上記の方法である。
【0036】
他の特定の実施形態によれば、本発明の方法は、化学的溶液、コロナ処理、及び/又は熱処理で器材の基板の表面を処理し、これらの処理の各々の後に濯ぎ工程を行い;任意に添加剤を含む光配向材料溶液を前記基板にコーティングして層を形成させ、次いで前記の層に偏光UV照射をし、次いで少なくとも一つが二色性である1又は2以上の染料及び任意に添加剤とを含む液晶モノマー溶液を前記の層にコーティングし、得られた新しい層(LCP層)をUV光源を用いて架橋させ;得られた処理層に耐摩耗性コーティングを施す、工程を含む。好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、基板の表面の処理の工程が化学処理である、上記の方法である。
【0037】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、
a)塩基性溶液及び水で基板を数回洗浄し、その後、化学、コロナ、熱、及びプラズマから選択される処理を施し、
b)任意に添加剤を含む光配向材料溶液を前記基板にコーティングして層を形成させ、次いで前記層に偏光UVを照射し、この照射により光配向層が例えば入射UV光の偏光軸に配向し;
c)少なくとも一つが二色性の染料である1又は2以上の染料及び任意に添加剤を含む液晶モノマー溶液を、前記工程b)の層にコーティングし、次いで得られた新しい層(LCP層)をUV光源を用いて架橋させ;
d)化学的溶液、コロナ、熱、及びプラズマから選択される少なくとも一つの処理で前記工程c)のLCP層の表面を処理し、これらの処理の後に濯ぎ工程を行い;
e)前記工程d)で得られた処理層に耐摩耗性コーティングを施す、工程を含む。
【0038】
本発明によれば、前記製造方法の工程b)、c)及びe)におけるコーティング工程は、スピン、ディップ、ファンコータ、及びスプレーから選択される方法によって行うことができる。本発明の好ましい実施形態において、製造方法の工程b)及びc)はスピンコーティング工程である。工程e)は、スピンコーティング又はディップコーティングが有効である。
【0039】
本発明によれば、前記製造方法の工程d)における濯ぎ工程は、水若しくはアルコールで濯ぐ単純な工程でよく、又は塩基性若しくは酸性の溶液若しくは界面活性剤を用いた濯ぎ工程でもよい。
【0040】
本発明の実施形態によれば、液晶層の配向は以下の光配向技術を包含する:配向層は、光反応性基を有する直線状に光配向可能な材料の偏光で照射することによって得られる。本発明の具体的な実施態様によれば、光配向層は、光配向材料を適切な溶媒(例えばアニソール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、MPK、NMP、DMF、DMA、エチル酢酸、ブチル酢酸、ジオキサン、ジエチレングリコール・ジメチル・エーテル、ジクロロメタン又はその混合液)に対して好ましくは0.5から10%、より好ましくは1%から4%の濃度で含む溶液を基板上にスピンコーティングすることにより得られる。光配向層を形成する線形光配向可能な材料は、アクリル若しくはメタクリル酸ポリマー、ポリイミド又はデンドリマーであることが望ましい。前記光配向可能なポリマーは、光反応性基として桂皮酸誘導体、カルコン又はクマリンを有し、また、(メセドリン)アクリル酸塩の骨格を有するのが望ましい。本発明で使用される適切な光配向材料は、特許第EP0763552号に詳細に記載されている。スピンコーティングの際のスピン速度は、400〜3500rpm、好ましくは1500〜2500rpmである。次いで、層は任意に乾燥される。層の乾燥時間は、1〜60分、好ましくは3〜30分でよく、溶媒の除去を可能とする温度にて適宜選択される。この温度は通常、50℃から130℃の間である。層を乾燥させる際、好ましくは5分未満、更に好ましくは数秒から2分間、迅速硬化プロセスを用いることも可能であり、その温度は100℃を超えるのがよく、通常は200℃を上回ってもよい。乾燥工程の後に、配向を保持する光重合を行い、通常はその層を好ましくは5〜300mJ/cmの線量の偏光UV光に曝露することによって形成される。
【0041】
本発明によれば、液晶、少なくとも一つが二色性である1又は2以上の染料及び任意に添加剤を含む層が、配向層上に施される。この液晶層は、液晶モノマーの溶液から得られる。本発明で使用される適切な液晶層は、詳細には国際特許出願公開第WO00/55110号に記載されている。この層は、配向層上に、液晶層に対する配向をもたらす官能基を有する配向層と接着する。液晶のこの配向は、光配向可能な層自体又は、好ましくは引き続く架橋によって固定される。この架橋は、UV照射によって行われる。本発明によれば、UV光源の輝度は、1〜200mW/cm、好ましくは2〜100mW/cmの範囲であり、UV光の線量は0.2J/cm〜30J/cmの範囲である。
【0042】
好ましい実施態様によれば、染料は二色性染料であり、これは重合可能又は重合不可能な二色性染料から各々独立して選択されうる。例えば、本発明で使用される適切な二色性染料は、国際特許出願公開第WO2004/085547号に詳細に記載されている。前記二色性染料は、液晶モノマー溶液と混合され、配向されると液晶モノマーに平行に整列される。この実施態様によって、局所的に構造化された二色性フィルタ及び二色性偏光子の形成が可能となる。本発明の有利な実施形態によれば、二色性染料は重合可能な物質である。
【0043】
二色性染料分子は、その染料がポリマーネットワーク内に取り込まれることを可能とする官能基を有する場合に特に適切であり、例えば、(メタ)アクリレート基を先端に含む染料が、液晶ジ(メタ)アクリレートのネットワーク内に好適に取り込まれる。本発明の好ましい二色性染料は、高い二色性比、高い秩序パラメータを有し、明色を示し、高い吸光係数を有し、更に良好な溶解性を有している。それらの二色性染料としては、アゾイック染料、ペリレン類、アントラキノン類、フェノキサジン類を挙げることができる。アゾイック染料は、液晶との適合性に優れており、またアゾイック染料の遷移モーメントがそれら分子の長軸に沿うという理由により、特に好ましい。アゾイック染料の他の利点の一つは、容易に調製可能である点である。
【0044】
本発明の実施形態によれば、前記工程c)は、以下の工程すなわち、
1〜20重量%、好ましくは7〜15重量%(この百分率は当然ながら乾物重量ベースである)の二色性染料を含有する液晶溶液を調製し;
この溶液を工程b)で得られた光配向層にスピンコーティングし;
前記層を40〜120℃で2〜60分間、乾燥−焼きなましを行い;更に
不活性雰囲気下にて1〜200mW/cm、好ましくは2〜100mW/cmの輝度、及び0.2J/cm〜30J/cmの線量を呈するUV光源下で照射して前記層を架橋させる、工程を含む。
【0045】
本発明の特定の実施態様によれば、液晶及び二色性染料の双方、並びに溶液に存在させてもよい他の成分を可溶化するのに適切な溶媒中に、液晶分子及び二色性染料を添加して調製した溶液を、スピンコーティングすることにより、液晶層が得られる。溶媒の例として、例えばアニソール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、MPK、NMP、DMF、DMA、エチル酢酸、ブチル酢酸、ジオキサン、ジエチレングリコール・ジメチル・エーテル、ジクロロメタン又はその混合液が挙げられる。望ましい溶媒は、シクロヘキサノン、又はアニソール/アセトン、アニソール/エチル酢酸若しくはアニソール/シクロペンタノンの、85:15から50:50の重量比の混合溶液から選択される。溶媒中の固形物の量は、典型的には5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%である。液晶及び二色性染料の固体混合物について、二色性染料の量は、1〜20重量%、好ましくは7〜15重量%である。液晶及び二色性染料の量は、所望の着色、透過率、及び最終産物に必要とされる偏光効率を得るように調整可能である。スピンは、例えば300〜3000rpmの速度で20秒〜10分間行うのが望ましい。乾燥−焼きなましの時間は、40〜120℃で約2〜60分間行うのが望ましい。
【0046】
乾燥−焼きなまし工程により溶媒の蒸発が可能となり、LPP層に誘導された好ましい方向に沿って、液晶及び二色性染料の組織構築が完成する。
【0047】
乾燥−焼きなまし工程の後、不活性雰囲気下にて、1〜200mW/cm、好ましくは2〜100mW/cmの輝度、及び0.2J/cm〜30J/cmの線量のUV光源を用いたUV照射により、層が架橋される。
【0048】
本発明はまた、眼装製品、照準道具、ウィンドウパネル、ウインドシールド又はガラス、特に有機ガラスの製造のための、本発明の器材の使用にも関する。詳細には、本発明は眼科用レンズ及び眼用バイザーの製造への、本発明の器材の使用に関する。
【0049】
以下の実施例に本発明の特定の実施態様を示すが、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0050】
偏光層を、中心厚が2mmのORMA(登録商標)レンズに施した。
【0051】
1)線形光重合層の調製
ガラスの表面を、以下の典型的な条件下(3分間、電力:600W、気体媒質は酸素:アルゴン(50:50)の混合物)、プラズマ処理によって活性化した。ケイ皮酸誘導体の側鎖(pending strains)を有するアクリルポリマーの2重量%のメチルエチルケトン溶液を調製した。この溶液を、前記の活性化した基板上に2000rpmの回転速度で1分間、スピン回転によって処理した。130℃で20分間、ホットプレート上で加熱し、溶媒を蒸発させ、厚さ50nmの光配向層が得られた。更にこの層を、100mJ/cmの線量の偏光UVにより30秒間照射した。
【0052】
2)液晶及び二色性染料の層の調製
液晶分子及び二色性染料を含有する、アニソール:アセトン(50:50)の混合溶液を調製した。この溶液の固形分は、典型的には40重量%である。溶液中の重合可能な二色性染料の量は、約10重量%である。この溶液を、前記の光配向層上にスピンコーティングした(450rpmで2分間、次いで2000rpmで5秒間)。得られた層を、87℃の温度で約10分間乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、5mW/cmの輝度及び5J/cmの線量を有するUV光源を用いた照射によってこの層を架橋させた。
【0053】
3)耐摩耗性層の調製
a)耐摩耗性単層:
耐摩耗性単層を、欧州特許第0614957B1号の実施例3に従って調製した。この層は、組成物の総重量に対して22%のグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、62%のコロイダルシリカ(メタノール中、30%の固体を含有)、及び0.70%のアルミニウムアセチルアセトナート(触媒)を含んでおり、残分は本質的に、水及び従来の溶媒からなっている。この耐摩耗性単層をディップコーティングによってレンズの両面に配し、100℃にて3時間硬化させた。層の厚さは3.5μmであった。
【0054】
b)耐摩耗性二層:
耐摩耗性二層を、以下の工程を用いて調製した。
第一に、米国特許第5,316,791号の実施例1に記載のプロトコルに従い、基板として市販されているW−240ポリウレタンの水性分散体を使用してプライマーラテックス層を形成させた。この積層はディップコーティングによって施し、次いで85℃にて4分間硬化させた。層の厚さは1μmであった。
第二に、上記3)a)と同じ条件にて、プライマーラテックス層を施した。
【0055】
4)クロスハッチ試験:
この試験は、レンズ上のコーティング(単数又は複数)の接着を評価するために行った。これは、標準NF T 30−038規格:「塗料及びワニス箔のグリッド試験」に準拠したものである。
【0056】
レンズの耐摩耗性コーティングに、格子状になるように切断具で切り込みを入れた。5片の接着テープを連続的に格子上に載せて、その後引き剥がした。試験の判定は、四角形の目視検査によって行い(場合によってアーク灯下で)、コーティング(単数若しくは複数)の基板上に残っているか否かで特定した。
【0057】
5)結果
前記方法の工程1)、2)及び3)により器材を複数種調製し、前記4)に記載の方法により検査した。
【0058】
−器材1(Al):
前記工程1)及び2)に記載の偏光層;
前記工程3)a)に記載の耐摩耗性単層;
を含む。
【0059】
−器材2(A2):
前記工程1)及び2)に記載の偏光層;
前記工程3)b)に記載の耐摩耗性二層;
を含む。
【0060】
−器材3(A3):
LCP層が一つの重合不可能な二色性染料を含有する、前記工程1)及び2)に記載の偏光層;
前記工程3)a)に記載の耐摩耗性単層;
を含む。
【0061】
−器材4(A4):
LCP層が一つの重合不可能な二色性染料を含有する、前記工程1)及び2)に記載の偏光層;
前記工程3)b)に記載の耐摩耗性二層;
を含む。
【0062】
−器材5(A5):
LCP層が60mW/cmの輝度及び10J/cmの線量のUV光源を用いて照射及び架橋された、前記工程1)及び2)に記載の偏光層;
前記工程3)a)に記載の耐摩耗性単層;
を含む。
【0063】
−器材6(A6):
LCP層が60mW/cmの輝度及び10J/cmの線量のUV光源を用いて照射及び架橋された、前記工程1)及び2)に記載の偏光層;
前記工程3)b)に記載の耐摩耗性二層;
を含む。
【0064】
−器材7(A7):
前記工程1)及び2)に記載の偏光層;
Ultra Optics社により市販されている商品名(UV−NV)のUV重合可能な単層からなる耐摩耗性単層;
を含む。
【0065】
表1に、上記の処理タイプ毎の、基板上への偏光コーティング及び耐摩耗性コーティングの接着の結果を示す。(+)は、すべてのコーティング層が基板上に接着していることを意味しており、(−)は、偏光コーティング及び耐摩耗性コーティングが基板上に接着していないことを意味している。この結果は、クロスハッチ試験に基づいたものである。
【表1】

*化学処理:以下の溶液に連続的に浸漬:50℃の5%NaOH水/水/脱イオン水/(耐摩耗性単層については、任意にイソプロピルアルコール)。器材(A7)については、化学処理は水中への浸漬工程のみである。
*熱処理:100℃で3時間加熱。
*コロナ処理:電圧が2×8kVである一つの電極を使用。
*nt:試験せず。
【0066】
6)耐摩耗性
耐摩耗性は、以下のとおりのスチールウール試験を用いて測定した。
【0067】
レンズを、1インチ(2.54cm)の直径の旋回ロッドの一端に、コーティングされた表面を上にして両面テープで取り付けた。次いで、背圧として5ポンド(2.267kg)の錘で、スチールウール(000等級)をコーティングされた表面に対して押圧した。次いで、スチールウールに対して200サイクルでレンズを振動させて、ヘイズを測定した。Pacific Scientific Hazemeter XL−211型を用いて測定する場合、初期値と最終値のヘイズ差が、スチールウール引っ掻き抵抗性の数値として示される。試験の結果、耐摩耗性コーティングを施したすべての器材について、スチールウール試験での良好な結果が見られた。
【実施例2】
【0068】
ポリチオウレタン製のレンズに、偏光層を施した。好ましいポリチオールは、1,2−ビス(2’−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン(MDO)である。好ましいイソシアネートは、m−キシリレンジイソシアネートである。
【0069】
1)線形光重合層の調製
高インデックスレンズを、55℃のNaOH(5%)溶液で超音波を用いて洗浄した。次いで、それを水及び脱イオン水(任意にイソプロピルアルコール)に浸漬した。ケイ皮酸誘導体の側鎖を有するアクリルポリマーの2重量%を添加した、メチルエチルケトンとシクロペンタノン(10:1)の混合溶液を調製し、この溶液を基板上にスピン回転により施した。なお、500rpmにて3秒間、その後2500rpmで20秒間の回転速度にて行った。その後、100℃で20分間オーブン中にて加熱し、溶媒を蒸発させ、厚さ150nmの光配向層が形成された。更にこの層を、100mJ/cmの線量で偏光UV下にて照射した。
【0070】
2)液晶及び二色性染料の層の調製
液晶分子及び二色性染料を含むシクロヘキサノン溶液を調製した。この溶液の固形分量は、典型的には40重量%である。二色性染料の量は、約10重量%である。この溶液を、光配向層にスピンコーティングした(25秒間、500rpmで回転)。得られた層を87℃の温度で約10分間乾燥させ、溶媒を蒸発させた後、この層を窒素雰囲気下にて30mJ/cmの線量のUV光源で照射し、架橋させた。
【0071】
3)耐摩耗性二層の調製
実施例1に記載の方法を用いて調製した。
【0072】
4)結果
器材(B1):前記1)、2)、3)の二層及び架橋可能な染料
【0073】
器材(B2):5J/cmのUV線量以外は、(B1)と同様、前記1)、2)、及び3)。
【0074】
クロスハッチ試験の結果、器材(B2)は、(B1)よりも優れていた。
【0075】
スチールウール試験の結果、耐摩耗性コーティングを施されたすべての器材において、良好な結果を示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光性且つ耐摩耗性を有する器材であり、
a)基板に施された偏光層、並びに、
b)前記偏光層を覆う耐摩耗性の単層又は多層、
を含み、前記偏光層が、一つ又は複数の染料及び任意に添加剤を含む配向液晶ポリマー層(LCP層)を有し、前記染料の少なくとも一つが二色性染料であり、前記LCP層が光配向層の上に施されている、器材。
【請求項2】
前記光配向層が、アクリル又はメタクリル系ポリマーである、請求項1記載の器材。
【請求項3】
前記光配向層が、好ましくはケイ皮酸誘導体である光反応性基を含む、請求項1又は2のいずれか一つに記載の器材。
【請求項4】
前記染料が二色性染料であり、重合可能及び重合不可能な二色性染料から各々独立して選択することが可能である、請求項1から3のいずれか一つに記載の器材。
【請求項5】
前記染料が、重合可能な二色性染料である、請求項4記載の器材。
【請求項6】
前記二色性染料が、アゾイック染料である、請求項1から5のいずれか一つに記載の器材。
【請求項7】
耐摩耗性コーティングが、単層又は二層である、請求項1から6のいずれか一つに記載の器材。
【請求項8】
前記器材が、化学、熱、コロナ及びプラズマ処理から選択される少なくとも一つの処理によって処理されている、請求項1から7のいずれか一つに記載の器材。
【請求項9】
前記処理が、基板の上に光配向層を施す前に、前記器材の前記基板の上に対して直接行われる、請求項8記載の器材。
【請求項10】
前記処理が、化学処理である、請求項9記載の器材。
【請求項11】
前記処理が、前記器材にLCP層が施された後、且つ耐摩耗性層を施す前に、前記器材に対して行われる、請求項8記載の器材。
【請求項12】
前記処理が、熱処理である、請求項11記載の器材。
【請求項13】
耐摩耗性の前記単層が、ゾル−ゲル耐摩耗性コーティング、及び重合可能な耐摩耗性UVコーティングから選択される、請求項7記載の器材。
【請求項14】
耐磨耗性の前記単層が、アルミニウム及びシラン加水分解物ベースの耐摩耗性組成物を施すことによって得られる、請求項7及び13のいずれか一つに記載の器材。
【請求項15】
耐摩耗性層が、
LCP層と直接接する第一層であって、ウレタン、(メタ)アクリル及びブタジエンから選択される官能基を備えたプライマーラテックス層を含むものである、前記第一層、及び
請求項14に記載の組成を有する第二層、
を含む二層である、請求項7記載の器材。
【請求項16】
前記プライマーラテックス層が、ポリウレタンの水性分散体である、請求項15記載の器材。
【請求項17】
前記耐摩耗性層が、
ポリウレタンの水性分散体を含む第一層、並びに
アルミニウム及びシラン加水分解物を含む第二耐摩耗性層、
を含む二層である、請求項15又は16のいずれか一つに記載の器材。
【請求項18】
前記偏光層が、1〜20μmの厚さを有する、請求項1から17のいずれか一つに記載の器材。
【請求項19】
前記偏光層が、3〜8μmの厚さを有する、請求項18記載の器材。
【請求項20】
基板が、光学ガラス又は光学レンズである、請求項1から19のいずれか一つに記載の器材。
【請求項21】
基板が、視界光学システム、眼用バイザー、及び眼科用レンズから選択され、前記眼用バイザー及び眼科用レンズが、透明レンズ、又は太陽光若しくは光により異性化するレンズである、請求項1から18のいずれか一つに記載の器材。
【請求項22】
基板が、眼科用レンズである、請求項1から21のいずれか一つに記載の器材。
【請求項23】
染料及び少なくとも一つの二色性染料を含む液晶溶液を調製し、可能であれば予めコーティングを施された基板に前記液晶溶液を施し、光配向層によって液晶層を配向させ、前記配向を好ましくは架橋によって維持し、更に基板に耐摩耗性コーティングを施す、工程を含む、器材の製造方法。
【請求項24】
任意に添加剤を含む光配向材料溶液を前記基板にコーティングして層を形成し、次いで前記層に偏光UV照射をし、次いで少なくとも一つが二色性である1又は2以上の染料及び任意に添加剤とを含む液晶モノマー溶液を前記の層にコーティングし、得られた新しい層(LCP層)をUV光源を用いて架橋させ;化学的溶液、コロナ処理、熱処理及び/又はプラズマ処理でLCP層の表面を処理し、これらの処理の各々の後に濯ぎ工程を行い;得られた処理層に耐摩耗性コーティングを施す、工程を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
LCP層の表面の処理が、熱処理である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
化学的溶液、コロナ処理、及び/又は熱処理で器材の基板の表面を処理し、これらの処理の各々の後に濯ぎ工程を行い;任意に添加剤を含む光配向材料溶液を前記基板にコーティングして層を形成させ、次いで前記の層に偏光UV照射をし、次いで少なくとも一つが二色性である1又は2以上の染料及び任意に添加剤とを含む液晶モノマー溶液を前記の層にコーティングし、得られた新しい層(LCP層)をUV光源を用いて架橋させ;得られた処理層に耐摩耗性コーティングを施す、工程を含む、請求項23記載の方法。
【請求項27】
基板の表面の処理が、化学処理である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
a)塩基性溶液及び水で基板を数回洗浄し、その後、化学、コロナ、熱、及びプラズマから選択される処理を施し、
b)任意に添加剤を含む光配向材料溶液を前記基板にコーティングして層を形成させ、次いで前記層に偏光UVを照射し、この照射により光配向層が例えば入射UV光の偏光軸に配向し;
c)少なくとも一つが二色性の染料である1又は2以上の染料及び任意に添加剤を含む液晶モノマー溶液を、前記工程b)の層にコーティングし、次いで得られた新しい層(LCP層)をUV光源を用いて架橋させ;
d)化学的溶液、コロナ、熱、及びプラズマから選択される少なくとも一つの処理で前記工程c)のLCP層の表面を処理し、これらの処理の後に濯ぎ工程を行い;
e)前記工程d)で得られた処理層に耐摩耗性コーティングを施す、
工程を含む、請求項23記載の方法。
【請求項29】
光配向層、液晶層、及び耐摩耗性層のコーティング工程が、スピン、ディップ、ファンコータ、及びスプレーから選択される方法によって行われる、請求項23から28のいずれか一つに記載の方法。
【請求項30】
光配向層、及び液晶層のコーティング工程がスピンコーティングであり、且つ耐摩耗性層のコーティング工程がスピンコーティング又はディップコーティングである、請求項23から29のいずれか一つに記載の方法。
【請求項31】
光配向層のコーティング工程が、以下の工程すなわち:
光配向材料溶液を基板にスピンコーティングして層を得;
前記層を50〜130℃の温度で3〜30分の時間、又は迅速硬化プロセスを用いて乾燥させ;
5〜300mJ/cmの線量で偏光UV光を用いて乾燥させた前記層を光重合する、
工程を含む、請求項23記載の方法。
【請求項32】
液晶層のコーティング工程が、以下の工程すなわち:
1〜20重量%、好ましくは7〜15重量%の二色性染料を含有する液晶溶液を調製し;
この液晶溶液を工程b)で得られた光配向層にスピンコーティングし;
得られた層を40〜120℃の温度で2〜60分の時間、乾燥−焼きなましを行い;
不活性雰囲気下にて1〜200mW/cm、好ましくは2〜100mW/cmの輝度、及び0.2J/cm〜30J/cmの線量を呈するUV光源下で照射することによって前記層を架橋させる、
工程を含む、請求項23記載の方法。
【請求項33】
眼装製品、照準器、ウィンドウパネル、ウインドシールド又はガラス、特に有機ガラスの製造のための、請求項1から22のいずれか一つに記載の器材の使用。
【請求項34】
無焦点、一焦点、二焦点、三焦点又は累進レンズである眼科用のレンズであって、各々、透明レンズ、又は太陽光若しくは光により異性化するレンズである眼科用のレンズの製造のための、請求項1から22のいずれか一つに記載の器材の使用。
【請求項35】
前記レンズの基板が、無機のガラス、又は、望ましくはポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタル酸及びポリカーボネートの共重合体、ポリオレフィン、ポリノルボルネン系化合物、ジエチレングリコールビス(アリールカルボン酸)の重合体及び共重合体、(メタ)アクリル系高分子の重合体及び共重合体及びビスフェノール−A−(メタ)アクリルの共重合体、チオ(メタ)アクリルの重合体及び共重合体、ウレタン及びチオウレタンの重合体及び共重合体、エポキシの重合体及び共重合体、並びにエピスルフィドの重合体及び共重合体で調製された有機ガラスである、請求項34に記載の使用。


【公表番号】特表2007−536589(P2007−536589A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512126(P2007−512126)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005789
【国際公開番号】WO2005/109049
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(505425373)エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラレ ドプテイク) (74)
【出願人】(506370858)ロリック テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】