説明

偏光板に有用な相溶性可塑剤化合物

ディスプレー装置用の偏光板における保護フィルムとして使われる環境耐候性に極めて優れたポリマーフィルムを提案するもので、それには、該ポリマーフィルムに使われる可塑剤化合物として、アリール基と直接結合しておらず、少なくとも一つのエステル結合が脂環式の環に直接的にあるいは間接的に結合しているエステル結合を含む可塑剤化合物を使用することによって達成できるとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及びディスプレーの用途に有用な可塑剤を含むポリマーフィルムに関する。更に、詳細には、本発明は、アリール基と直接結合しておらず、少なくとも一つのエステル結合が脂環式の環に直接的にあるいは間接的に結合しているエステル結合を含む可塑剤化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
増大する用途の数に対応する平面パネルディスプレーの急増によって、ディスプレー構成部品の全ての性能に関して高度な要求がなされている。液晶スイッチングモードに基づく平面パネルディスプレー及びエレクトロルミネッセンス技術は、共に、その画質を改善するため、偏光板の使用に頼りきっている。平面パネルディスプレーの移動利用や戸外利用への増大する進出に伴って、あらゆる構成部品について、改善された環境安定性が要求されるようになってきている。
【0003】
環境耐候性、特に、高温及び高湿に曝されることに関して、厳しい制限を有することが長期にわたって知られているディスプレーの一つの構成部品は、偏光板である。偏光板は、配向された偏光フィルムを含む多層構造である。偏光フィルムは、当該偏光フィルムの安定性を保持するために保護被覆が要求されている。慣用的に、図1に示されているように、保護ポリマーフィルム1は、偏光フィルム2の両面に積層されている。最も商業的に成功したクラスの偏光フィルムには、可視光スペクトルに偏光活性を与えるために着色された配向ポリビニルアルコール(PVA)が含まれている。当該保護フィルムには、光学的に透明で、寸法安定性で、機械的に靭性で、かつ化学的に偏光フィルムと相溶性であることが要求されている。これらの保護フィルムのうち最も商業的に成功したものは、他のポリマーが使用されてもよいが、セルローストリアセテート(通常、三酢酸セルロース、即ちTACとして当偏光材業界において知られている)であった。
【0004】
本発明のために、以下の用語が定義される。
「偏光フィルム」とは、本明細書では、偏光機能を達成する関連添加剤をもつ自己支持性の配向ポリマーフィルムとして定義される。例えば、二色の有機化合物又はヨウ素と複合化されて着色され、そして付随添加剤を含む硼酸塩で架橋された配向PVAが、有効な偏光フィルムである。よって、本明細書では、用語「色素」は、他に特に特定されない限り、二色性の有機化合物及びヨウ素が含まれるものと解される。
【0005】
「保護フィルム」とは、本明細書では、当該偏光フィルムに保護を与えるために、偏光フィルム上に積層され、付着され、被覆され、あるいは他に適用される、可塑剤、UV吸収剤、安定剤などのような関連添加剤をもつ自己支持性のポリマーフィルムとして定義される。保護機能には、機械的、光学的、化学的、又は他の特性のために安定性を与え、また耐環境破壊性を与えることが含まれる。偏光板の耐久性は、通常、長期間の高温及び/又は高湿環境下に曝されるときの、その偏光効率及び光透過能に基づいて測定される。
【0006】
「保護フィルム」には、例えば、キャリア層を含む複合フィルムの一部が含まれる。「偏光板」は、本発明では、少なくとも一層の偏光フィルム及び少なくとも一層の保護フィルムからなる多層ポリマーフィルム構造として定義される。本発明では、その保護フィルムが偏光板における偏光フィルムと接する第一の自己支持性のフィルムであるときに、特に好都合である。
【0007】
偏光板の環境耐候性を改善しようとするこれまでの研究は、記述されている。ほとんどの場合に、これらの努力は、偏光板における保護フィルムの湿気含量及び湿気透過性をコントロールすることに集中してきた(例えば、米国特許出願20020192397号、同20020162483号、及び同20030037703号参照)。これらの研究は、保護フィルムを可塑化することが知られている大量の有機化合物を用いることによって湿気の透過性をコントロールすることを試みてきた。本発明の目的では、可塑化化合物、即ち「可塑剤」は、ポリマーと化学的に相溶性であり、当該フィルムに対して脆性を低下させ、又は改善された柔軟性と伸びを与える化合物として定義される。
【0008】
本発明を裏付けるために、環境的負荷、即ち、高温及び/又は高湿下での、偏光板の耐候性を弱める主要な要因を決定するための集中的な研究がなされてきた。この研究によれば、例えば米国特許出願20020192397号に定義されているように、保護フィルムの許容可能な透湿度によって、偏光板に対して湿気の吸収平衡を速やかに達成させることが可能であることが示されている。偏光板の偏光効率及び光透過能についての長期破壊に影響を及ぼす主たる要因は、活性化学種、特に易動性のものの放散によることが確認されている。特に、これらの化学種は、可塑剤及び他の保護フィルム成分の分解生成物と関係することが見出されている。これらの発見は、例えば、Shinigawa 等の「セルローストリアセテートの記録安定性についての研究:CTA支持体に対する添加剤の効果」、Polym. Conserv.、105巻(1992年)。138〜150頁;及びRam 等の「ビネガーシンドロームの効果と予防」、J. Imaging Sci. & Tech.、38巻(1994年)、749〜761頁(ここで参照されるものは、全てが本明細書中に含まれる。)に見られるように過去の研究によって裏づけされている。
【0009】
偏光板の耐候性を改善するための過去の研究については、これまで述べてきた。米国特許出願20020192397号には、保護フィルムの湿気透過性をコントロールするために、大量のリン酸塩エステル可塑剤を使用することが開示されている。しかしながら、Ram 等及びShinigawa 等によって注釈されるように、リン酸エステル可塑剤は、高湿度に曝されるときに強酸性化合物が放散される。加えて、フェノールのような活性ヒドロキシアレーンも放散される。
【0010】
また、米国特許出願20020192397号には、TAC保護フィルムにおける酢酸臭気を減らすために、小分子の塩基性化合物(トリブチルアミン)を使用することも開示されている。しかしながら、小分子の塩基性化合物は、それらが容易に偏光フィルム中に移動して、偏光剤色素成分と反応するため、好ましくない。
【0011】
また、フェノールのような化学的に活性なヒドロキシアレーンを放散するエステル化合物を使用することも、好ましくない。現在の研究では、かかるヒドロキシアレーンエステル可塑剤が使用されるときには、高温及び高湿に曝される偏光板内部で、偏光フィルム中のヨウ素と反応して望ましくないインドフェノールが生ずるということが分かっている。ハロゲンに対するヒドロキシアレーンの反応性は、Morrison, R.T. 及びBoyd, R.N.の「Organic Chemistry 」、第3編、Ed. Allyn 及び Bacon、ボストン、1976年、801〜802頁(ここで参照したことによって、本明細書中に含める。)に記載されているように周知である。
【0012】
米国特許出願20020162483号及び米国特許第5,753,140合明細書には、偏光板の保護フィルムにおける湿気の透過性と湿気含量をコントロールするために、大量の芳香族エステル可塑剤を使用することが開示されている。かかる化合物は、高湿度に曝されるときに、強酸性化合物及び/又は化学的に活性なヒドロキシアレーンを放散する。米国特許出願20030037703号には、偏光板の保護フィルムの湿気の透過度をコントロールするために、可塑剤として大量の多価アルコールのモノカルボン酸エステルを使用することが開示されている。このモノカルボン酸エステルを用いるために、繰り返すが、高湿度条件では、易動性の酸性化合物が生成することとなる。
【0013】
上記したケース(米国特許出願20020192397号、同20020162483号、及び同20030037703号)では、生成される酸性化学種及びヒドロキシアレーンが、偏光板の構造中を容易に移動する潜在力を有している。強酸性の化学種は、保護フィルム、偏光フィルムに対する接着界面、そして最も著しくは、偏光フィルムにおける有機色素の劣化に関与する可能性がある。PVA偏光フィルム中の色素とかかる反応性化学種との相互作用は、偏光板の性能を低下させることに起因する重大な色相シフトを起こす可能性がある。
【0014】
加えて、上記したケース(米国特許出願20020192397号、同20020162483号、及び同20030037703号)では、湿気の透過度及び湿気含量を顕著にコントロールするために、大量のこれら化合物(>15重量%)をポリマー積層フィルム中に包含させている。これらを大量に含有させることは、それがポリマーモジュラスを低下させ、ひいては保護フィルムによる靭性を容認できない程度にまで減少させることとなるので、望ましいことではない(「可塑剤ハンドブック」、G. Wypych 編、Chem Tec Publishing 発行、ニューヨーク、第10章)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、以下の構造I:
【化1】

(式中、R1及びR2は、両者が非アリール基であり、nは、2以上であり、そして、少なくともR1及びR2の一つには、少なくとも1個のシクロアルキル基が含まれる。n個の多重R2は、相互に同じであっても、あるいは異なっていてもよい。)
によって表される非アリールエステル結合を有する化合物の群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む、自己支持性の保護層が提供される。
【0016】
上記構造Iにおいて、非アリール基は、構造Iにおける−C(=O)O−結合(以後、「エステル結合」という。)間に、芳香族部分との直接結合を与えない基として定義される。1個以上の芳香族基又はアリール基は、かかる基が、構造Iに示されるエステル結合と直接結合していない限り、選択的に、R1及びR2の化学構造における別の位置に存在していてもよいが、全てのエステル基は当該化合物中に存在していることが、好ましい。
【0017】
本発明の一つの実施態様では、R1及びR2の非アリール基は、それぞれが、反応してエステル結合を生成するが、結果としてそのエステル結合が直接アリール部分と結合していないような、アルコールとカルボン酸の残基である。
【0018】
本発明の一つの実施態様では、自己支持性フィルムは、偏光板における偏光フィルム用の保護フィルムとして用いられるが、当該偏光フィルムには、ディスプレーの用途に有用な色素がドープされたポリビニルアルコールが含まれる。本発明の可塑剤化合物を使用すると、偏光フィルムの環境耐候性において、予期できない程の著しい増大がもたらされるので、好都合である。
【0019】
本発明のその他の態様では、前記可塑剤化合物に加えて、保護フィルム中にオリゴマー及びポリマーの低易動性塩基性化合物を包含させると、環境耐候性に、更なる顕著な増大がもたらされる。
【0020】
本発明の更なるその他の態様では、本発明の保護フィルムの製造法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明によれば、非芳香族ポリカルボン酸と1個以上の一価アルコールとからなるエステル化合物を含むポリマーによって達成される。増大した環境耐候性材料を与える非芳香族エステル化合物の機能は、本明細書中で更に明らかとなる。
【0022】
前記で示されるように、増大した環境耐候性を与えるポリマー保護フィルムは、以下の構造I:
【化2】

(式中、R1及びR2は、両者とも非アリール基であり、nは、2以上の整数であり、そして、R1及び/又はR2は、少なくとも1個のシクロアルキル基を一部又は全部に含む。)
で表されるエステル化合物の群の少なくとも1個の化合物を含む組成からなる。
【0023】
構造Iによって明らかなように、−(C=O)O−エステル結合は、カルボキシル基のカルボニル炭素によってR1と、そしてカルボキシル基に結合するオキシ基によってR2と結合されている。
【0024】
好ましい態様では、非アリール基R1及びR2は、R1及び/又はR2基における少なくとも1個以上の基がシクロアルキル基を(全部あるいは一部に)含む限り、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、及びシクロアルケニル基からなる群より独立して選ばれる置換もしくは非置換の有機基である。前述したように、1個以上の芳香族官能基が選択的に、R1又はR2の化学構造の一部に存在してもよいが、当該1個以上の芳香族官能基は、そのエステル結合−(C=O)O−におけるカルボニル炭素又は(そのカルボニル基に結合している)オキシ原子に直接結合していてはならない。酸素、窒素、及び硫黄のようなヘテロ原子は、R1又はR2の化学構造の一部に存在してもよいが、そのヘテロ原子は、好ましくは、カルボニル炭素又はオキシ原子と直接結合していてはならない。
【0025】
1及びR2有機基の具体例には、エチル、プロピル、ブチルなどのようなアルキル基;エチレニル基、プロピレニル基などのようなアルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基などのようなシクロアルキル基;アルキルシクロアルキル、アルキレンシクロアルキルなど;及び複素環式基が含まれるが、これらの有機基は置換されてもよい。前記した有機基は、当該基の一部としてヘテロ原子が含まれる(例えば、アルキルエーテル、テトラヒドロフランなどに含まれる酸素;アルキルチオエーテルに含まれる硫黄;又はピペリジニルなどのような飽和へテロ環に含まれる窒素)ように置換されてもよい。このヘテロ原子は、カルボン酸に直接結合されていないことが好ましい。前記した有機基には、付加的な置換基(例えば、フェニル基、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロゲン原子など)が含まれていてもよい。非アリールエステルの有機基上に置換基を形成してもよい芳香族環には、例えば、フェニル環、ナフタレン環、又はアントラセン環が含まれる。
【0026】
特に好ましい態様では、R1及び/又はR2には、シクロヘキシル基又はシクロペンチル基が含まれる。
【0027】
一般に、本願で特定の成分又は基に言及されるときには、かかる言及には、1個以上(最大可能数まで)の置換基と置換されない、あるいは置換された成分も含まれるものと解されるべきである。例えば、「アルキル」又は「アルキル基」は、置換もしくは非置換のアルキルを指し、一方、「フェニル基」とは、(6個の置換基までと)置換もしくは非置換のフェニルを指している。概して、他に特に言及がないときは、本明細書中の分子に関して使われる置換基には、可塑化の使用に必要な特性を破壊しない、置換され、あるいは置換されない如何なる基も含まれる。前記した基のいずれかに係る置換基の具体例には、公知の基、例えば、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード;ヒドロキシ;アルコキシ、特に「低級アルキル」(つまり、1〜12個の炭素原子を持つもの、例えば、メトキシ、エトキシ);置換もしく非置換のアルキル、特に低級アルキル(例えば、メチル、トリフルオロメチル);チオアルキル(例えば、メチルチオ又はエチルチオ)、特に1〜12個の炭素原子をもつもののいずれか;好ましくは2〜12個の炭素原子をもつ置換もしくは非置換のアルケニル(例えば、エテニル、プロペニル、又はブテニル);置換もしくは非置換のアリール(構造Iの限定内での)、特に6〜20個の炭素原子を有するもの(例えば、フェニル);及び置換もしくは非置換のヘテロ環及び(構造Iの限界内での)へテロアリール、特にN、O、又はSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を有する5〜6員環を有するもの(例えば、ピリジル、チエニル、フリル、ピロリル);及び他の当該分野で公知な基が含まれてよい。また、アルキル基又はアルキレン基のいずれかに関しては、これらは分枝されていても、分枝されていなくともよく、環構造も含まれるものと解される。前記で示したように、非アリールエステル化合物の製造には、アルコールとカルボン酸との反応生成物が含まれる。本発明の一つの態様では、上記構造IにおけるR1及びR2の非アリール基は、それぞれ、反応してエステル結合を生成するが、結果としてそのエステル結合がアリール部分と直接結合していないようにされた、アルコール及びカルボン酸の残基である。
【0028】
特に好ましい態様では、当該カルボン酸は、以下の構造II:
【化3】

(式中、R1は、上記したと同じ非アリール基であり、そしてnは、2以下の整数、好ましくは2個の整数である。)
で表される非アリールカルボン酸(有機成分に複数の、即ち2個以上のカルボン酸基を有する化合物)である。
【0029】
繰り返すと、1個以上の芳香族官能基が、R1の化学構造の一部として存在してもよいが、その1個以上の芳香族官能基はカルボニル炭素と直接結合していてはならない。一つの態様では、そのポリカルボン酸は、3以上の、好ましくは3.5以上のpKaを有する。最も好ましくは、4以上のpKaを有するポリカルボン酸である。
【0030】
ポリカルボン酸の具体例には、次の:マロン酸、メチルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、2−エチル−2−メチルコハク酸、グルタル酸、2,4−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、メチルアジピン酸、テトラメチルヘキサンジオイック酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,10−デカンジカルボン酸、セバシン酸、ヘキサデカンジオイック酸、トリカルバリル酸、メチルトリカルバリル酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、β−ヒドロムコン酸、ヘキサフルオログルタル酸、酒石酸、クエン酸、ジグリコール酸、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、3,3'−チオジプロピオン酸、4−ケトピメリン酸、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、3,3−テトラメチレングルタル酸、樟脳酸、1,1−シクロヘキサンジ酢酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,3,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の非アリールエステルの製造に使われてもよい、好ましくは一価のアルコールは、ヒドキシル官能基が芳香族基に付着していないという要件によって制限されている。使用してもよい一価アルコールには、脂肪族又は環状アルコールが含まれる。脂肪族及び環状アルコールには、付加的な置換基(例えば、フェニル基、アルキル基、ハロゲン基など)が含有されていてもよい。
【0032】
好ましいアルコールの具体例には、好ましくは1〜32個の、より好ましくは1〜20個の、そして最も好ましくは1〜16個の炭素原子数を有する脂肪族直鎖もしくは分枝鎖有機基が含まれる。環状一価アルコールには、好ましくは3〜20個の、より好ましくは4〜14個の、そして最も好ましくは5〜8個の炭素原子数を有する単環式、二環式、又は三環式の環構造が含まれる。また、かかる一価アルコールには、鎖又は環の一部としてヘテロ原子(例えば、アルキルエーテル、テトラヒドロフランなどに含まれる酸素;アルキルチオエーテルに含まれる硫黄、又はN−メチルピペリジノールのようなモノヒドロキシ置換へテロ環に含まれる窒素など)を含有していてもよい。当該へテロ原子は、ヒドロキシ基と直接結合されていないことが好ましい。
【0033】
使用されてもよい一価アルコールの具体例には、以下の:メチルアルコール、エチルアルコール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキシルアルコール、ヘプタノール、オクタノール、ドデカノール、2−プロパノール、2−オクタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、4−ペンテン−1−オール、シクロプロパンメタノール、シクロブタノール、シクロブタンメタノール、シクロペンタノール、3−シクロペンチル−1−プロパノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、4−エチルシクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール、ノルボルネオール、デカヒドロナフトール、シクロヘキサノール、6−クロロ−1−ヘキサノール、ヘプタフルオロブタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(シクロヘキシルオキシ)エタノール、グリシドール、ヒドロキシテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン−2−メタノール、テトラヒドロピラン−4−オール、2−メチルチオエタノール、2−ヒドロキシエチルピロリジン、4−ヒドロキシ−1−メチルピペリジン、が含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明で使用する非アリールエステル化合物の分子量は、特に限定されないが、好ましくは250〜1500、そしてより好ましくは300〜750である。相対的に高い分子量の非アリールエステル化合物は、ポリマーキャスト時の低い昇華性の点で好ましいが、これに対して、相対的に低い分子量の非アリール化合物は、酢酸セルロースを含むフィルムポリマーとの改善された混和性の点で好ましい。
【0035】
本発明で使用する非アリールポリカルボン酸エステルの製造用アルコールは、単独で、あるいはこれらの二種以上の混合物で使われてよい。非アリールポリカルボン酸のカルボン酸基の全てが、保護フィルム用のポリマー相に添加されるときに、遊離のカルボン酸官能基が残留しないようにエステル化されることが、特に好ましい。
【0036】
上記に示したように、本発明に使用する非アリールエステル化合物には、その分子中にシクロアルキル環が含まれている。かかるシクロアルキル環は、当該化合物の製造に使われる非アリールポリカルボン酸又は一価アルコールのいずれか一方の、あるいは両方の官能基であってよい。特に好ましい非アリールエステルには、少なくとも1個のシクロへキシル環が含まれている。
【0037】
本発明の非芳香族ポリカルボキシレートの具体例は、ドイツ特許公開20021356号公報の3頁25行〜41頁12行に記載される化合物によって実証されており、ここで参照したことにより本明細書中に含める。加えて、本発明の非芳香族ポリカルボキシレートエステルの具体例は、以下に例示されるが、これらに限定されない。
【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
可塑剤は、フィルム中に、0.01〜30重量%、好ましくは5〜15重量%、最も好ましくは10〜15重量%の量で、含まれる。
【0049】
保護フィルムには、一般に、本発明のもの以外の一種以上の付加的な可塑剤が、より少量重量部で含まれてもよい。かかる他の可塑剤の具体例には、トリフェニルホスフェート、ビフェニルイルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びトリブチルホスフェートのようなホスフェートエステル;及びジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、及びジオクチルフタレートのようなフタレートエステル;トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、及びメチルフタリルエチルグリコレートのようなグリコール酸エステルが含まれる。
【0050】
本発明のその他の態様には、可塑剤に加えて、環境耐候性に更に顕著な増大をもたらすために、保護フィルム中にオリゴマー及びポリマーの低易動性の塩基性化合物を含有させることが含まれる。本明細書中では、低易動性とは、相溶性や拡散率に起因して制限されたマイグレート性をもつポリマーフィルム部材によって例証されるものとして定義される。かかる化合物は、フィルム中に生成される酸を捕獲する機能を有すると考えられている。オリゴマー及びポリマーの低易動性の塩基性化合物は、以下に例示されるが、これらに限定されない。
【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
この低易動性の塩基性化合物は、フィルム中に、5重量%未満の量で、好ましくは0.01〜2重量%の量で、最も好ましくは0.1〜1重量%の量で含まれる。
【0055】
また、保護フィルムには、透過率曲線における急激なUVカットオフ(波長色値)を与えるために、紫外線吸収剤が含まれる。本発明の特定の態様によれば、紫外線吸収化合物には、好ましくは、ジベンゾイルメタン、ヒドロキシフェニル−s−トリアジン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ホルムアミジン、ベンゾフェノン、又はベンゾオキサジノン化合物及びそれらの誘導体が含まれる。用いられてよい付加的に可能なUV吸収剤には、4−t−ブチルフェニルサリチレートのようなサリチレート化合物;及び[2,2'−チオビス−(4−t−オクチルフェノレート)]−n−ブチルアミンニッケル(II)が含まれる。かかる紫外線吸収化合物は、それ自体知られており、種々のポリマーフィルムに使われていることが記載されている。好ましいものは、ジベンゾイルメタン、ヒドロキシフェニル−s−トリアジン、及びヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール化合物である。紫外線吸収剤との併用技術は、現在出願中の米国特許出願20030080326号に開示されているように採用されてよく、これは、ここで参照したことにより、本明細書中に含める。
【0056】
本発明に用いられる保護フィルムには、表面潤滑性を与えるために、任意に、有機又は無機化合物の粒子が含まれてもよい。無機化合物の具体例には、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、珪酸カルシウム水和物、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、及びリン酸カルシウムが含まれる。有機化合物(ポリマー)の具体例には、シリコン樹脂、フルオロ樹脂及びアクリル樹脂が含まれる。好ましくは、現在出願中の米国特許出願20030180528号に開示されているようなアクリル樹脂であり、これは、ここで参照したことにより本明細書中に含める。
【0057】
本発明の保護フィルムにおけるポリマー相としての使用が可能な好ましいポリマーの具体例には、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレン−2,6−ナフタレート);セルロースエステル(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレート);ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン);アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート);ポリカーボネートエステル(例えば、ポリカーボネート);ノルボルネン樹脂等が含まれる。
【0058】
一つの好ましい態様では、本発明の保護フィルムは、ポリマーがセルロースアセテート、特にセルローストリアセテートである自己支持性ポリマーフィルムの形態である。セルローストリアセテートとしては、公知な材料が使用できる。セルローストリアセテートの結合酢酸アセチル値は、35〜70重量%の範囲、特に55〜65重量%の範囲にある。セルロースアセテートの重量平均分子量は、70,000〜200,000、特に80,000〜190,000の範囲にあることが好ましい。セルロースアセテートの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、2〜7、特に2.5〜4の範囲にある。セルロースアセテートは、ウッドパルプ又はコットンリンターのいずれかに由来するセルロース出発材料から得られる。セルロースアセテートは、アセチル値が所望の範囲を満たす限り、プロピオン酸又は酪酸のような脂肪酸を用いてエステル化されてもよい。
【0059】
保護フィルムは、5〜200μ、好ましくは15〜100μ、より好ましくは約20〜80μの厚さを有してよい。
【0060】
好ましい態様では、保護フィルムは、0.1〜15nmの平面内遅延、10〜100nmの平面外遅延、及び1%未満の全体曇りを示す。かかる保護フィルムは、更に、25℃及び50%RHで5重量%未満の平衡湿気含量を示す。
【0061】
本発明による保護フィルムは、種々の方法で作製されてよい。一つの好ましい態様では、かかるフィルムは、溶剤塗布法又は流延法を用いて作製される。溶剤塗布法の詳細は、現在出願中の米国特許出願2003/0215582号に記載されており、その教示を、参照したことにより本明細書中に含める。溶剤流延法は、ポリマー溶液を溶液供給装置(ダイ)のスリットから支持体上に流延して、流延層を乾燥させてフィルムを形成させることの工程が含まれる。大量生産では、この方法は、例えば、ポリマー溶液(例えばセルローストリアセテートのドープ)を連続移動バンドコンベアー(例えば無端ベルト)又は連続回転ドラム上に流延し、次いで、流延層の溶剤を蒸発させることからなる工程によって行うことができる。小規模生産では、当該方法は、例えば、溶液供給装置のスリットからのポリマー溶液を、この供給装置を移動させることによって、金属板又はガラス板のような通常サイズを有する固定の支持体上に流延させ、次いで、流延層から溶剤を蒸発させる工程によって行うことができる。
【0062】
いかなる支持体も、その表面に形成されたフィルムがそこから剥離できる特性を有している限り、当該溶剤流延法に用いることができる。金属板又はガラス板以外の支持体(例えば、プラスチックフィルム)も、上記特性を有する限り、使用可能である。いかなるダイも、それが均一速度で溶液を供給できる限り、用いることができる。また、溶液をダイに供給する方法として、溶液を均一速度で供給するためポンプを用いる方法も、使用することができる。小規模生産において、溶液を適当な量で保留可能なダイを使用することもできる。
【0063】
溶剤流延法で用いるポリマーは、溶剤に溶解可能であることが必要である。また、当該ポリマーから形成されるフィルムは、一般に、光学製品に適用されるため高い透明性を有していることが必要である。更に、当該ポリマーは、可塑剤と相溶性を有していることが好ましい。溶剤被覆法又は溶剤流延法に用いられるポリマーとしては、セルローストリアセテートが好ましい。しかしながら、ポリエステル、セルロースエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネートエステル、又はノルボルネン樹脂を含むがこれらに限定されない他のポリマーも、それらが上記条件満足する限り、使用することができる。
【0064】
溶剤流延法以外の、その他の可能な保護フィルム形成方法としては、ポリマーと添加剤を溶融状態で混合して、該混合物を押出す工程を含む周知な押出溶融法を挙げることができる。当該方法は、通常、溶剤流延法を使用できないポリマーに適用される。
【0065】
本発明のその他の見地では、自己支持性フィルムは、典型的に、偏光フィルムが、ディスプレーの用途に有用な色素をドープしたポリビニルアルコールを含む偏光板における偏光フィルム用の保護フィルムとして用いられる。しかしながら、当該分野で周知な慣用フィルムを含むいかなる偏光フィルムが使われてもよい。上述したように、偏光フィルムの一つのタイプは、ポリビニルアルコールフィルム(PVA)を延伸し、次いで得られた延伸フィルム上に偏光要素としてヨウ素を吸収させることによって製造される。偏光要素としてヨウ素を用いて作るこれらの偏光子は、高い光透過性と高い偏光効率を示す良好な光学的特性を有している。高温、高湿の条件下でより耐候性があると考えられているその他のタイプの偏光フィルムでは、偏光子におけるヨウ素に代わるものとして二色性有機色素が用いられている。偏光フィルム用の二色性有機色素の多くの具体例は、次の特許文献、例えば、米国特許第5,310,509号、同第5,340,504号、同第5,446,135号明細書、特開2002−296417号、同2000−329936号、特開平05−273788号、特開昭63−243166合意公報、欧州特許第549342号明細書、米国特許第5,667,719号明細書、及び「Proceedings of the SPIR-Int. Soc. Opt. Eng.」、2407巻、62〜72頁、「Highly Durable Dyed Polarizer for Use in LCD Projections (LCD投射に使用する高耐候性着色偏光子)」に見られるが、これらの全ては、記載された偏光フィルムに関してここで参照したことによって本明細書中に含まれる。
【0066】
偏光要素として二色性有機色素を用いて作る偏光フィルムは、ヨウ素を用いる偏光フィルムに比して、水や熱に対してより良好な耐候性を有する傾向があるが、酸性の化学種の存在下における色相変化に対して増大した感度を示す傾向がある。偏光フィルムの製造に際して、水溶性アゾ色素を用いることは普通の手段である。二種以上の色素を組合せると、種々な色相に着色された偏光フィルムを作ることが可能となる。偏光フィルムに対して中間色相を与えるために、高度の二色性をもつ複数の色素を用いることが普通である。
【0067】
二色性色素(カラーインデックス総称)の具体例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない。C.I.直接イエロー12、C.I.直接ブルー202、C.I.直接レッド31、C.I.直接イエロー44、C.I.直接イエロー28、C.I.直接オレンジ107、C.I.直接レッド79、C.I.直接ブルー71、C.I.直接ブルー78、C.I.直接レッド2、C.I.直接レッド81、C.I.直接ヴァイオレット51、C.I.直接オレンジ26、C.I.直接レッド247、C.I.直接ブルー168、C.I.直接グリーン85、C.I.直接ブラウン223、C.I.直接ブラウン106、C.I.直接イエロー142、C.I.直接ブルー1、及び
【0068】
【化17】

【0069】
【化18】

【0070】
本発明の一つの好ましい態様による光学ポリマーフィルムの形態における保護フィルムの製造方法は、当該フィルム用のポリマー相としてセルローストリアセテートを用いるこのケースにおいて、詳細に説明する。本発明にしたがって、混合容器に、溶媒、セルローストリアセテート、及び一種以上の可塑剤を仕込み、(加圧下が所望の場合には、加熱下に)撹拌しながら、セルロースアセテートを溶解させて、ドープを調製する。
【0071】
その他の第二の混合容器に、溶媒及び選定された紫外線(UV)吸収剤、化学安定化剤、及び可塑剤を仕込み、撹拌によって溶解させる。表面潤滑を改善するための粒子を添加するケースでは、当該粒子を、得られるUV吸収剤含有溶液中に投入し、分散液を調製する分散機を用いて、この混合物を分散させる。UV吸収剤含有溶液の適当量をドープ収容の容器に供給して、それらを混合する。この混合物(ドープ)を、適宜、ドープ用のフィルターを通してキャスティングヘッドに供給し、このキャスティングヘッドから金属製のドラム又は連続ベルト(支持体)上に流延させる。この流延フィルムを、支持体が1回転する間に乾燥させ、自己支持性を有するフィルムを形成してこの乾燥フィルムを支持体から分離し、次いで、このフィルムを十分乾燥させて、ロールに巻き取る。その他の態様では、出願中の米国特許出願2003/0215582号明細書に記載されるように(ここでの教示は、参照したことにより本明細書中に含める)、このフィルムを完全に乾燥させて、キャスティング支持体上に巻き取ってもよい。
【0072】
ドープと紫外線吸収剤を含有する溶液は、キャスティングヘッド前部の配管に固定された静的攪拌機を用いて混合し、キャスティングヘッドに供給し、そしてそのキャスティングヘッドから金属ドラム(支持体)上に流延することができる。溶剤流延法では、そこで用いるポリマー(例えば、セルローストリアセテート)が溶解可能である限り、いかなる溶剤も使用できる。当該溶剤は、単独溶剤であっても、混合溶剤であってもよい。溶剤流延法に使用される溶剤の具体例には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン及びシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素;クロロメタン、ジクロロメタン、四塩化炭素及びトリクロロエタンのような塩素化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びn−ブチルアルコールのようなアルコール;アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンのようなケトン;及びメチルホルメート、エチルホルメート、メチルアセテート及びエチルアセテートのようなエステル、又はジオキソランが含まれる。
【0073】
ポリマーとしてセルローストリアセテートを用いるケースでは、ジクロロメタンとメタノールの混合溶剤が好ましい。イソプロピルアルコール及びn−ブチルアルコールのような他の溶剤も、セルローストリアセテートが析出されない限り(例えば、ドープの調製作業時やドープへの粒子の添加時に)、使用することができる。ドープ中のセルローストリアセテートと溶剤の割合は、重量で10:90〜30:70(セルローストリアセテート:溶剤)であることが好ましい。
【0074】
ドープ又は分散液の調製作業時には、分散剤、蛍光染料、消泡剤、潤滑剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、酸捕捉剤、退色抑制剤、及び保恒剤のような種々な添加剤が、そのドープ又は分散液に添加されてもよい。加えて、光、熱、湿気及び酸素の作用に対する保護積層体フィルムの耐候性の向上が、ヒンダードアミン光安定化剤、ヒンダードフェノール、酸スカベンジャー、及びUV安定化剤といったリストから選ばれる化学安定化剤を添加することによって付与されてもよい。安定化剤の併用技術が、米国特許第6,767,937号明細書(ここで参照したことにより、本明細書書中に含める)に開示されるように、使われてもよい。
【0075】
種々な機能層、例えば、ハードコート層、グレア防止層、低反射層、反射防止層、汚れ防止層、帯電防止層、導電層、光学的異方性層、液晶層、配向層、接着層、及び下塗り層などが、本発明のポリマーフィルム上に付与されてもよい。これらの機能層は、塗布、蒸着、スパッタリング、プラズマ放電、又はフレーム放電など、通常知られた方法によって付与することができる。前記機能層を含む偏光板には、本発明のポリマーフィルムを含む各種の要素からなる多層フィルム構造が含まれる。
【0076】
好ましい態様では、当該保護フィルムは、偏光フィルムとその偏光フィルムの片側又は両側に保護フィルムを含む偏光板の製造に用いられる。
【0077】
偏光フィルムは、例えば、米国特許第5,310,509号明細書に記載されるように(ここで参照したことによって、この特許を、本明細書中に含める)、ディスプレー級偏光子の製造用に設計された商業規模の処理施設で製造される。その具体例1では、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが、有機の二色性色素で着色されて、一軸延伸される。これに代えて、米国特許出願20020162483号明細書の、特にセクション0224に記載されるように(ここで参照したことにより、この出願も本明細書に含める)、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが水中で膨潤化され、一軸延伸されて、水性ヨウ素で着色される。次いで、偏光フィルムは、硼酸水溶液中に浸漬され、水洗されて、乾燥される。
【0078】
特別な態様によれば、偏光板は以下のように作製される。キャリア又は他の機能フィルムと選択的に結合された多層構造又は複合フィルム状の保護フィルムは、光学的に均一な積層構造を作製するのに好適な種々な接着剤を用いて偏光フィルムに積層されてよい。例えば、セルローストリアセテートフィルムは、高温(例えば、60℃)下に、塩基水溶液(例えば、2NのNaOH)中に浸漬することによって、表面を加水分解し、次いで水洗し、鉱酸水溶液(例えば、10重量%HCl)中で中性化し、再度水洗して、乾燥する。表面が加水分解されたセルローストリアセテートの接着は、その表面が加水分解されたセルローストリアセテートシートがPVA偏光フィルムの片面又は両面上に搬送されたときに、当該積層工程のその間隙にPVA水溶液を添加使用することによって促進させることができる。得られた積層偏光板は、次いで、過剰の内部湿気を除くために乾燥される。
【0079】
保護フィルムがキャリア又は他の機能フィルムと結合されて多層構造又は複合フィルムとなるケースでは、その保護フィルムは、偏光フィルムと最も接近した自己支持層であることが好ましい。しかしながら、かかるケースでは、5μ未満の結束層又は接着層が、偏光フィルムと保護フィルムとの間に存在してもよい。
【実施例】
【0080】
以下の実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の技術的範囲をこれらの実施例によって限定するものでないことは言うまでもない。
【0081】
シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシルエステルの製造
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物(60g)、ヘキサノール(85g)、及びp−トルエンスルホン酸(100mg)のトルエン(500mL)混合物溶液を、3日間還流し、その反応混合物から水を除去した。反応が完了した後、真空下で溶媒を除いたところ、粘調なオイル状物を得た。この粗物質をヘプタンに再度溶解して、シリカゲル層を通したところ、淡黄色のオイル状物として、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシルエステル(80g)を得た。
【0082】
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルエステルの製造
1,2,3−プロパントリカルボン酸(25g)、シクロヘキサノール(55g)、及びp−トルエンスルホン酸(100mg)のトルエン(500mL)混合物溶液を、2日間還流し、その反応混合物から水を除去した。反応が完了した後、真空下で溶媒を除いたところ、粘調なオイル状物を得た。この粗物質をヘプタンに再度溶解して、シリカゲル層を通したところ、淡黄色のオイル状物として、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルエステル(50g)を得た。
【0083】
シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、モノエチルエステル、モノヘキサデシルエステルの製造
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヘキサデシルエステル(白色固体、mp=54〜55℃)(8g)(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物(1当量)、ヘキサデカノール(1当量)、トリエチルアミン(1当量)のエチルアセテート溶液から室温下、24時間で調製)の50mLテトラヒドロフラン混合物溶液を、室温下で一晩、オキサアリルで処理した。真空下で溶媒を除去した後、得られた酸クロリドを50mLの無水アルコールに溶解し、そして炭酸ナトリウム(2.2g)を添加した。この混合物を、3時間撹拌し、濾過して、真空下で濃縮した。淡黄色の液体生成物を、ヘキサンに溶解し、シリカゲル層を通過させた。溶媒を除去したところ、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸モノエチルエステルモノヘキサデシルエステル(5.3g)を、透明無色の液体(これを室温下で冷却すると、ワックス状の固体を形成する)として得た。
【0084】
酸性加水分解生成物の試験
二色性有機色素に対するエステル可塑剤の酸性加水分解生成物の反応性に係る比較を、一連の化合物に関して評価した。酸性化合物は、本発明に記載の化合物並びに米国特許出願20020192397号、同20020162483号、及び同20030037703号明細書(各出願明細書は、参照したことによって本明細書中に含める)に記載の化合物の潜在的加水分解生成物の代表として選んだ。この試験は、高温、高湿下に曝される環境的暴露に対して、偏光板用の保護フィルムに使用される可塑剤が、その反応化学種の放散によってどの程度の破壊能力を有するかを模擬実験するものである。
【0085】
それぞれの酸性化合物について、上記した代表の二色性化合物(CAS番号121227−50−7)を0.04mg/mL含有する1:1のDMSO:水の混合物を用いて、5ミリモル溶液を調整した。当該溶液の周期的な時間のアリコートを用いて、これを下記するHPLCによって、この溶液を100℃下に24時間保持したときの二色性色素化合物の減量を測定することによって評価した。HPLC分析は、640nmでの検出器をもつ50μLの抽出実験溶液を用いて、2.0mL/分、0.1M酢酸ナトリウム(1:1のメタノール:アセトニトリル)の移動相下で、YMC−AQ−302カラム上で行った。以下の表1は、酸性化合物に対する暴露下でのCAS番号121227−50−7の二色性色素について得られた観測減量を要約したものである。
【0086】
【表1】

【0087】
酸性加水分解生成物4は、本発明で使用可能な可塑剤化合物1−26(上記)と関連する潜在的な分解生成物である。酸性加水分解生成物5は、可塑剤化合物53と関連している。酸性加水分解生成物1〜3は、本発明で必要とされる可塑剤化合物以外の可塑剤化合物と関連している。
【0088】
上記表1に示される結果によると、本発明での使用が記載される化合物に相当する酸性化合物は、最小の二色性色素の減量を示すことが明確に表されている。逆に、種々の他のエステル可塑剤化合物の加水分解によって放散される酸性化合物は、二色性色素に著しい減量をもたらしている。
【0089】
保護積層フィルムの評価
実施例1A
ポリマードープ用の混合容器に、100重量部のセルローストリアセテート(TAC)(結合酢酸値60.8%)、11.24重量部の可塑剤化合物1、0.107重量部のParsol(登録商標)1789(4−(1,1−ジメチルエチル)−4'−メトキシジベンゾイルメタン)、0.91重量部のTinuvin(登録商標)328(2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール)、0.16重量部のTinuvin(登録商標)326(2−(2'−ヒドロキシ‐3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、405重量部のジクロロメタン、及び45.0重量部のメタノールを仕込み、そして全部の成分を、ドープを調製するために、加熱下に撹拌して溶解させた。
【0090】
混合ドープを、押出ダイに供給して、移動する金属支持体上に流延した。この流延フィルムをキャスティング表面から分離した後、当該フィルムを、加熱ゾーンを通過させて乾燥し、偏光板の保護積層フィルム部材に好適なポリマーフィルムを提供する、厚さ80μmを有するセルロースアセテートフィルムを製造した。
【0091】
実施例1B及び1C
ドープ及び保護積層フィルムを製造する全ての重量部は、実施例1Bでは、5.62重量部の可塑剤化合物1を使用し、実施例1Cでは、16.86重量部の可塑剤化合物1を使用したことを除いて、実施例1Aに記載したとおりであった。
【0092】
実施例2A、2B及び2C
異なる重量部、即ち、実施例2Bでは5.62重量部、実施例2Aでは11.24重量部、そして実施例2Cでは16.86重量部の可塑剤化合物53を、以下のように化合物1に代えて使用したことを除いて、ポリマードープを実施例1Aのように製造した。ドープ及び保護積層フィルムを製造する他の全ての重量部は、実施例1Aに記載したとおりであった。
【0093】
実施例3
11.24重量部の可塑剤化合物53を化合物1に代えて使用し、そして0.56重量部のポリ(4−ビニルピリジン)をドープに加えたことを除き、ポリマードープを実施例1Aのように製造した。ドープ及び保護積層フィルムを製造する他の全ての重量部は、実施例1Aに記載したとおりであった。
【0094】
比較例1A、1B及び1C
異なる重量部、即ち比較例1Bでは5.62重量部、比較例1Aでは11.24重量部のトリフェニルホスフェートを化合物1に変えて使用し、そして比較例1Cでは、16.86重量部のトリフェニルホスフェートを使用したことを除き、ポリマードープを実施例1Aのように製造した。ドープ及び保護積層フィルムを製造する他の全ての重量部は、実施例1Aに記載したとおりであった。
【0095】
比較例2
11.24重量部のトリフェニルホスフェートを化合物1に変えて使用し、そして0.56重量部のポリ(4−ビニルピリジン)をドープに加えたことを除き、ポリマードープを実施例1Aのように製造した。ドープ及び保護積層フィルムを製造する他の全ての重量部は、実施例1Aに記載したとおりであった。
【0096】
比較例3
可塑剤化合物を使用しなかったことを除き、ポリマードープを実施例1Aのように製造した。ドープ及び保護積層フィルムを製造する他の全ての重量部は、実施例1Aに記載したとおりであった。
【0097】
保護積層フィルムの性能
各例の保護積層フィルムに関して、可塑剤と偏光板積層体との相溶性を評価した。特に、可塑剤が保護積層体フィルムの表面に移行する傾向は、偏光フィルムに対する接着に強い影響を及ぼす。可塑剤の表面過剰濃度は、Specac Golden Gate(登録商標)ATR Accessory 製のBioRad(登録商標)FTS60FTIR分光光度計を用いてATR−FTIRによって評価した。以下の表2では、表面過剰の可塑剤(又は負数で示される不足)の傾向は、フィルムの上面1.2μにおいて観測されることが示されている。表面過剰の減少は、可塑剤とポリマーフィルムとの改善された相溶性を示している。
【0098】
【表2】

【0099】
表2に示される結果によると、可塑剤と保護フィルムとの相溶性における著しい改善は、通常使用するトリフェニルホスフェートに比して、本発明で用いる非アリールエステル化合物を含有させることによってもたらされたことが明確に示されている。
【0100】
保護フィルムの性能(接触角)
上記したように、各例の保護フィルムを、アルカリ表面加水分解によって偏光フィルムに積層するため、作製した。表面加水分解された保護フィルムと偏光フィルムとの間に引き続いて行う接着の質と均一性は、フィルムの表面エネルギーによって測定される。表面エネルギーの直接表示としては、水の接触角が用いられる。したがって、水の接触角がより高いことは、表面エネルギーがより低くなり、接着特性に関しては逆行する傾向となり得ることを示している。
【0101】
PVA偏光フィルムに対する効果的な接着を促進するため、35°未満の水接触角が望ましい。更に、均一な接着を促進するためには、均一な表面エネルギー(均一な表面接触角)が望ましいことは明らかである。以下の表3には、加水分解直後のものと加水分解後11日間、25℃、50%RH下で保管されたものの両者に関して、120秒後に測定されたアルカリ加水分解された各例のフィルムの水接触角が向上していることが示されている。
【0102】
【表3】

【0103】
表3に示された結果は、本発明で使用する非アリールエステル化合物を含有させると、表面加水分解後に、保護フィルムの表面エネルギーが低く、安定となり、かつ均一となることが明瞭に示されている。逆に、通常使用するトリフェニルホスフェートでは、表面加水分解後、時間と共に接着力が弱まる程度まで、表面エネルギーが著しく不均一となり、かつ急激に上昇することが示されている。これらの結果は、保護フィルムの可塑剤として本発明の非アリールエステル化合物ではその相溶性が向上することと一致している。これらの結果は、本発明で使用する可塑剤化合物では、前記表2に示されるような表面凝離に対して相対的に低い傾向をもつこととも一致している。
【0104】
偏光板の耐候性
各例の偏光板について、80℃、90%相対湿度下での保管による環境耐候性に関して評価した。偏光板について、1400時間までの間の偏光効率と光透過性の保留性に関して定期的に評価した。D65照明(1964年観測装置)標準を用いて、CIE人知覚光透過率(Y値)の測定を行った。偏光効率(PE)は、以下の式1:
【数1】

に示されるように算定される。
【0105】
二色性色素のPVA偏光フィルムを、中間色相を得るため、直接オレンジ39、直接レッド81、直接ヴァイオレット9、及び直接ブルー98の混合物で着色して作製した。アルカリ加水分解後の各例の保護積層フィルムを使用し、積層ロール間隙に、水:メタノール:PVAの接着剤を用いて、保護積層フィルムを偏光フィルムの両側に積層することにより偏光板を作製した。環境耐候性試験のため、偏光板を乾燥し、光学級の感圧接着剤を用いて、Corning(登録商標)タイプ1737−Gガラスに接着した。以下の表4は、80℃、90%RH条件下に暴露後の、二色性色素の偏光板における偏光効率(PE)、及び光透過率(Y)の変化を示している。
【0106】
【表4】

【0107】
上記表4の結果によれば、偏光板に付着される保護積層フィルム中に本発明の非芳香族エステル化合物を含有させると、二色性色素偏光板の耐候性に顕著な改善がもたらされることが明瞭に示されている。逆に、通常使用するトリフェニルホスフェートでは、偏光板の性能が急激に落ち込んでいることが分かる。顕著な改善は、オリゴマー又はポリマーの低易動性塩基性化合物の添加によるものであることが示されている。
【0108】
一軸延伸後に、KI及びI2水溶液で着色されたヨウ素着色偏光板を作製した。アルカリ加水分解後の各例の保護積層フィルムを用いて、積層間隙に水:メタノール:PVAの接着剤を用い、偏光フィルムの両側に積層することによって偏光板を作製した。環境耐候性試験のため、偏光板を乾燥し、光学級の感圧接着剤を用いて、Corning(登録商標)タイプ1737−Gガラスに接着した。以下の表5は、最高性能に関して、80℃、90%RH条件下に暴露後の、ヨウ素着色された偏光板における偏光効率(PE)、及び光透過率(Y)の変化を示している。
【0109】
【表5】

【0110】
上記表5に示される結果によれば、偏光板に付着される保護積層フィルム中に本発明の非芳香族エステル化合物を含有させると、ヨウ素着色された偏光板の耐候性に顕著な改善がもたらされることが明瞭に示されている。逆に、可塑剤を含有しない又は通常使用するトリフェニルホスフェートを含有する保護フィルムでは、偏光板の性能が急激に落ち込んでいることが連想される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、偏光フィルムのそれぞれの側に保護フィルムからなる層構成が示される偏光板の断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1 保護ポリマーフィルム
2 偏光フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板を形成するために偏光フィルムの片面又は両面に配置される保護層として使用される自己支持性ポリマーフィルムであって、当該ポリマーフィルムが、ポリマー相中に、少なくとも一種の、以下の構造I:
【化1】

(式中、
1及びR2は、両方が−C(=O)O−エステル結合と結合した非アリール基であり、
nは、2以上の整数であり、ここで、それぞれのR2は、同じであっても、異なっていてもよく、そして、
少なくとも1個のシクロアルキル基が、R1及びR2のいずれか、あるいは両方に存在している)
によって表される可塑剤化合物を含むことを特徴とする、自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項2】
1及びR2が、それぞれ、アルコール及びカルボン酸の反応生成物から得られる残基である、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項3】
非アリール基R1及びR2が、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選ばれ、当該基は置換もしくは非置換であってよく、そしてヘテロ原子がR1及びR2の化学構造の一部として存在してもよいが、いかなるヘテロ原子もエステル結合のカルボニル炭素またはオキシと直接結合していてはならない、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項4】
芳香族基がエステル結合のカルボニル炭素又はオキシと直接結合していない限り、芳香族基がR1及びR2の一部として存在していない、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項5】
置換基が、独立して、フェニル基、アルキル基、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、又は複素環式基から選ばれる、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項6】
シクロアルキル基がシクロヘキシル又はシクロペンチル基である、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項7】
1がシクロヘキシル、シクロペンチル、アルキルシクロヘキシル、又はアルキルシクロペンチル基である、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項8】
少なくとも1個のR2がシクロアルキル基又はアルキルシクロアルキルであり、そしてR1がシクロアルキルでない、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項9】
少なくとも2個のR2基が、独立して、シクロアルキル基又はアルキルシクロアルキルである、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項10】
少なくとも1個のR2基及びR1基が、独立して、シクロアルキル基又はアルキルシクロアルキル基である、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項11】
可塑剤化合物が、それぞれが一価アルコールの残基にエステル結合している2個以上のカルボキシレート残基を含有するシクロアルキルポリカルボン酸から誘導される、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項12】
前記シクロアルキルポリカルボン酸が、それぞれが一価アルコールの残基にエステル結合している2個以上のカルボキシレート残基を含有するシクロヘキシルポリカルボン酸である、請求項11に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項13】
それぞれの一価アルコールが、3〜16個の炭素原子を有する、直鎖、分枝状又は環状のアルキル一価アルコールである、請求項11に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項14】
少なくとも1個の一価アルコールが、6個の炭素原子を有する、直鎖、分枝状又は環状のアルキル一価アルコールである、請求項13に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項15】
可塑剤化合物が、3以上のpKaを有するポリカルボン酸の反応生成物である、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項16】
前記ポリマー相が、ポリエステル、セルロースエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカルボネートエステル、又はノルボルネン樹脂から選ばれるポリマーを含む、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項17】
前記ポリマーが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ビスフェノール−A−ポリカーボネート、ビスフェノール−A−トリメチルシクロヘキサン−ポリカーボネート、ビスフェノール−A−フタレート−ポリカーボネート、及びノルボルネン樹脂である、請求項16に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項18】
セルロースエステル、ポリカーボネートエステル、及びノルボルネン樹脂から選ばれるポリマー、及び以下の構造:
【化2】

(式中、
1及びR2は、両方が−C(=O)O−エステル結合と結合した非アリール基であり、
nは、2以上の整数であり、ここで、それぞれのR2は、同じであっても、異なっていてもよく、そして、
1個以上のシクロアルキル基が、R1及びR2のいずれか、あるいは両方に存在している)
によって表される少なくとも一種の可塑剤化合物を含むことを特徴とする、自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項19】
前記ポリマーが、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ビスフェノール−A−ポリカーボネート、ビスフェノール−A−トリメチルシクロヘキサン−ポリカーボネート、ビスフェノール−A−フタレート−ポリカーボネート、及びノルボルネン樹脂である、請求項18に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項20】
前記ポリマーがセルロースエステルである、請求項18に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項21】
前記ポリマーがセルロースアセテートである、請求項20に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項22】
前記可塑剤化合物が1〜30重量%の範囲で存在する、請求項18に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項23】
前記可塑剤化合物が5〜15重量%の範囲で存在する、請求項22に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項24】
前記ポリマーフィルムが5〜200μmの厚さを有する、請求項18に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項25】
ホスフェートエステル、フタレートエステル、又はグリコール酸エステルから選ばれる可塑剤を更に含む、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項26】
オリゴマー又はポリマーの低易動性塩基性化合物を更に含む、請求項1に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項27】
前記低易動性の塩基性化合物が、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(アクリロニトリル−co−ブタジエン)(アミン末端)、ポリ[N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミン−co−2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン]、ポリ(1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン)、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(変性エピクロロヒドリン)、ポリエチレンイミン(80%エトキシル化物)、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、ポリ(ビニルクロリド−co−1−メチル−4−ビニルピペリアジン)、及びポリ(4−ビニルピリジン−co−ブチルメタクリレート)から選ばれる、請求項26に記載の自己支持性ポリマーフィルム。
【請求項28】
キャリア基板と、偏光板を形成するために偏光フィルムの片面又は両面に配置される層として使用される自己支持性ポリマーフィルムとを含む複合フィルムであって、当該ポリマーフィルムが、ポリマー相中に、以下の構造I:
【化3】

(式中、
1及びR2は、両方が−C(=O)O−エステル結合と結合した非アリール基であり、
nは、2以上の整数であり、ここで、それぞれのR2は、同じであっても、異なっていてもよく、そして、
1及びR2のいずれか、あるいは両方が少なくとも1個のシクロアルキル基を含む)
によって表される少なくとも一種の可塑剤化合物を含むことを特徴とする、複合フィルム。
【請求項29】
ポリマーと請求項1に記載の構造によって表される化合物とを含む溶液を、支持体上に塗付し又は流延させる工程を含んでなる自己支持性フィルムの製造方法。
【請求項30】
偏光材料層と少なくとも1層の請求項1に記載の自己支持性フィルムとを含む集積多層フィルム構造を含んでなる偏光板であって、前記自己支持性フィルム中に含有する可塑剤化合物がそのエステル結合と直接結合するアリール基を全く含まないことを特徴とする、前記偏光板。
【請求項31】
前記偏光材料層が、二層の前記自己支持性フィルム間に配設されている、請求項30に記載の偏光板。
【請求項32】
前記偏光材料が一種以上の二色性色素を含む、請求項30に記載の偏光板。
【請求項33】
前記偏光材料がヨウ素を含む、請求項30に記載の偏光板。
【請求項34】
少なくとも1層の請求項1に記載の自己支持性フィルムと偏光材料層とが集積多層フィルム構造の形態で含む偏光板を含んでなるディスプレー装置。
【請求項35】
前記ディスプレー装置が液晶ディスプレー装置か又はエレクトロルミネッセンスディスプレー装置である、請求項34に記載のディスプレー装置。
【請求項36】
少なくとも1層の請求項1に記載の自己支持性フィルムと偏光フィルムとを積層して、集積多層フィルム構造を形成させた偏光板の製造方法において、前記自己支持性フィルムを偏光フィルムに隣接させてこれらを並行に配列させることを特徴とする、偏光板の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−513836(P2008−513836A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532367(P2007−532367)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/031675
【国際公開番号】WO2006/033824
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】