説明

偏光板の製造方法および偏光板の製造装置

【課題】フィルム光学特性を高精度に安定化させることができる偏光板の製造方法および偏光板の製造装置を提供する。
【解決手段】偏光膜を有する長尺状光学フィルムに少なくとも一層の他の長尺状光学フィルムを貼り付けて、多層積層体1を連続的に得る偏光板の製造方法であって、各長尺状光学フィルムのうち少なくともいずれかの被貼着フィルム25に対して、該被貼着フィルム25の貼り付け処理前に光学特性を測定し、被貼着フィルム25の光学特性および各長尺状光学フィルム25の貼り付け処理条件に対する多層積層体1の光学特性の関係を表す第1の光学特性対応情報を参照して、測定した光学特性の結果に基づいて多層積層体1が所望の光学特性となる第1の貼り付け条件を決定し、決定した第1の貼り付け条件で長尺状光学フィルムの貼り付け処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造方法および偏光板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等に用いられる偏光板は、それが用いられる液晶セルの液晶モード等に応じて偏光特性が最適化されることが望ましい。偏光板は、一般的に偏光膜とその両面にポリマーフィルムからなる保護フィルムを有する多層積層体であるので、偏光特性が、保護フィルムとして用いられるポリマーフィルムの光学特性、具体的には面内レターデーションおよび厚み方向のレターデーション等に大きく影響される。
【0003】
レターデーションにズレが生じ、このズレが一定範囲を超えると、液晶セルは十分な表示性能を発揮できなくなる。すなわち、目標のレターデーション値からのズレが大きくなると、液晶表示装置の大きさに合わせて切り出される位相差フィルム1枚の中でも、部分的に光学特性が異なることになり、均一な画面表示ができなくなる。
【0004】
一般に、延伸して得られるポリマーフィルムの光学特性に対する均斉度は、延伸前の均斉度と、延伸条件の均一性に左右される。例えば、製膜工程で温度むら等によって生じた延伸前フィルムの配向ムラや厚さムラは、延伸工程でレターデーションのばらつきとして現れる。さらに、延伸時の温度等の加工条件のむらは新たなレターデーションのばらつきを生じさせ、フィルム光学特性の不均一性を増大させることになる。
【0005】
このような問題を解消しようとするものに、例えば特許文献1に開示される位相差フィルムの製造方法がある。この製造方法は、生産ライン中の測定システムにより得られるレターデーションをもとに、フィードバック制御により、生産中の延伸条件を調整することで、レターデーションのばらつきに対応した調整を可能としている。
【0006】
しかしながら、この製造方法では、延伸工程後のライン中に設けた測定システムによりレターデーションを得、それの測定値に基づき延伸処理を調整するフィードバック制御を行うため、フィルム光学特性を高精度に安定化させることができない。図10に示すように、例えば、あるポリマーフィルムにおいて、延伸工程中の加熱温度に対し、面内レターデーションReは変化しないが、厚み方向レターデーションRthに変化が生じる場合、このレターデーションRthが目的の値となるように生産中の延伸条件が調整される。ところが、延伸工程におけるレターデーションが改善されても、その後の多層積層体(偏光板)を加工する被貼着フィルムの貼り付け工程でレターデーションのばらつきが発生すれば、多層積層体の光学特性の精度が不安定となる。また、延伸後のレターデーションを測定してフィードバック制御を行うため、フィードバック制御が間に合わなければ、未補正フィルム(無駄フィルム)が発生することになる。
【特許文献1】特開2001−272537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、フィルム光学特性を高精度に安定化させることができる偏光板の製造方法および偏光板の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記構成からなる。
(1) 偏光膜を有する長尺状光学フィルムに少なくとも一層の他の長尺状光学フィルムを貼り付けて、多層積層体を連続的に得る偏光板の製造方法であって、
前記各長尺状光学フィルムのうち少なくともいずれかの被貼着フィルムに対して、該被貼着フィルムの貼り付け処理前に光学特性を測定し、
前記被貼着フィルムの光学特性および前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理条件に対する前記多層積層体の光学特性の関係を表す第1の光学特性対応情報を参照して、前記測定した光学特性の結果に基づいて前記多層積層体が所望の光学特性となる第1の貼り付け条件を決定し、
該決定した第1の貼り付け条件で前記長尺状光学フィルムの貼り付け処理を行う偏光板の製造方法。
【0009】
この偏光板の製造方法によれば、被貼着フィルムの光学特性が貼り付け処理前に測定され、その光学特性に応じた第1の貼り付け条件にて、被貼着フィルムが貼り付け処理される。すなわち、上流工程にて測定した条件に基づき、下流の貼り付け工程にて補正制御(フィードフォワード制御)がなされる。これにより、偏光板加工前の延伸工程等で生じる製造ばらつき等の光学的影響が、偏光板加工部で補正可能となる。また、被貼着フィルムの貼り付け前に測定が行われるので、未補正フィルム(無駄フィルム)を発生することがない。
【0010】
(2) (1)に記載の偏光板の製造方法であって、
前記光学特性が、面内レターデーション、厚み方向のレターデーション、偏光主軸方向の少なくともいずれかを含む偏光板の製造方法。
【0011】
この偏光板の製造方法によれば、フィルム面に対し、面内、厚み方向のレターデーション、偏光主軸方向のうち任意のパラメータを使用でき、例えば液晶表示装置にとって重要な偏光特性の把握が容易となり、生産安定性を高めることができる。
【0012】
(3) (1)または(2)に記載の偏光板の製造方法であって、
前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理が、前記各長尺状光学フィルムを重ね合わせた積層状態で加熱加圧する処理であり、前記貼り付け処理条件が、前記長尺状光学フィルムの加熱温度、加熱時間のうち少なくともいずれかの条件を含む偏光板の製造方法。
【0013】
この偏光板の製造方法によれば、被貼着フィルムが積層された状態で加熱加圧され、一体化された多層積層体に加工されるに際し、この貼り合せ時の加熱温度、加熱時間が第1の貼り付け条件と一致するように制御される。
【0014】
(4) (1)〜(3)のいずれか1つに記載の偏光板の製造方法であって、
前記長尺状光学フィルムの貼り付け処理後の前記多層積層体の光学特性を測定し、
前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理条件と、これにより決定する前記多層積層体の光学特性との関係を表す第2の光学特性対応情報を参照して、前記光学特性の測定結果に基づいて前記多層積層体が所望の光学特性となる第2の貼り付け条件を決定し、
該決定した第2の貼り付け条件に基づいて前記第1の貼り付け条件を補正して前記長尺状光学フィルムの貼り付け処理を行う偏光板の製造方法。
【0015】
この偏光板の製造方法によれば、貼り付け処理を後の多層積層体の光学特性が測定され、その測定結果に基づく第2の貼り付け条件にて、多層積層体が所望の光学特性となるよう貼り付け処理される。これにより、貼り付け処理を含む、貼り付け処理後の工程で生じる製造ばらつきがフィードバック制御により貼り付け処理部にて補正可能となる。
【0016】
(5) (4)に記載の偏光板の製造方法であって、
前記光学特性対応情報は、環境湿度に応じて前記貼り付け条件が設定されている偏光板の製造方法。
【0017】
この偏光板の製造方法によれば、環境湿度によって変化する光学特性に合わせて貼り付け条件が設定されるので、常に正確な補正が可能となり、偏光板を均質に維持することができる。
【0018】
(6) 偏光膜を有する長尺状光学フィルムに少なくとも一層の他の長尺状光学フィルムを貼り付けて、多層積層体を連続的に得る偏光板の製造装置であって、
前記各長尺状光学フィルムをそれぞれ重ね合わせて貼着する貼り付け手段と、
前記各長尺状光学フィルムのうち少なくともいずれかの被貼着フィルムに対して、該被貼着フィルムの貼り付け処理前に光学特性を測定する第1の光学特性測定手段と、
前記被貼着フィルムの光学特性および前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理条件に対する前記多層積層体の光学特性の関係を表す第1の光学特性対応情報が保存された情報記憶手段と、
該第1の光学特性対応情報を参照して、前記測定された被貼着フィルムの光学特性の結果に基づいて前記多層積層体が所望の光学特性となる第1の貼り付け条件を決定し、該決定した第1の貼り付け条件で前記貼り付け手段を駆動する制御手段と、
を備えた偏光板の製造装置。
【0019】
この偏光板の製造装置によれば、貼り付け手段より上流工程で生じているフィルム光学特性のばらつきが第1の光学特性測定手段にて測定され、その測定結果に対応する貼り付け条件が光学特性対応情報を参照して第1の貼り付け条件として決定される。これにより、貼り付け手段より上流工程で生じる光学特性のばらつきをなくす補正がなされる。
【0020】
(7) (6)に記載の偏光板の製造装置であって、
前記光学特性が、面内レターデーション、厚み方向のレターデーション、偏光主軸方向の少なくともいずれかを含む偏光板の製造装置。
【0021】
この偏光板の製造装置によれば、フィルム面に対し、面内、厚み方向のレターデーション、偏光主軸方向のうち任意のパラメータを使用でき、例えば液晶表示装置にとって重要な偏光特性の把握が容易となり、生産安定性を高めることができる。
【0022】
(8) (6)または(7)に記載の偏光板の製造装置であって、
前記貼り付け手段が、一対のニップローラ間に前記各長尺状光学フィルムを狭持するニップロール機構を有し、
前記一対のニップローラに狭持される前記長尺状光学フィルムの温度を変更する温度調整手段、前記ニップローラの回転速度を変更するローラ回転速度調整手段の少なくともいずれかを備えた偏光板の製造装置。
【0023】
この偏光板の製造装置によれば、各長尺状光学フィルムが一対のニップローラによって狭持された状態で加熱加圧されて貼り付け処理される。その際の長尺状光学フィルムの温度、ローラ回転速度の調整によって、各長尺状光学フィルムの加熱温度、加熱時間の調整ができ、適切な光学特性への調整が可能となる。
【0024】
(9) (8)記載の偏光板の製造装置であって、
前記温度調整手段が、前記一対のニップローラの少なくとも一方の温度を変更するローラ温度調整手段である偏光板の製造装置。
【0025】
この偏光板の製造装置によれば、ニップローラの温度を変更することで、簡単に長尺状光学フィルムの温度を変更できる。
【0026】
(10) (6)〜(9)のいずれか1つに記載の偏光板の製造装置であって、
前記貼り付け手段によるフィルムの貼り付け処理後に前記多層積層体の光学特性を測定する第2の光学特性測定手段を備え、
前記情報記憶手段が、前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理条件と、これにより決定する前記多層積層体の光学特性との関係を表す第2の光学特性対応情報をさらに有し、
前記制御手段が、前記第2の光学特性測定手段による前記多層積層体の光学特性の測定結果に基づいて、前記第2の光学特性対応情報を参照して、前記多層積層体が所望の光学特性となる第2の貼り付け条件を決定し、該決定した第2の貼り付け条件に基づいて前記第1の貼り付け条件を補正して前記貼り付け手段を駆動制御する偏光板の製造装置。
【0027】
この偏光板の製造装置によれば、貼り付け処理後の光学特性の変化が測定され、その測定値に応じた貼り付け条件(第2の貼り付け条件)にて、より高精度な貼り付け補正処理が可能となる。すなわち、多層積層体が所望の光学特性となる条件に貼り付け条件が補正されて貼り付け処理される。これにより、貼り付け処理を含む、貼り付け処理後の工程で生じる製造ばらつきがフィードバック制御により貼り付け処理内で補正可能となる。
【0028】
(11) (6)〜(10)のいずれか1つに記載の偏光板の製造装置であって、
前記貼り付け手段周囲の環境湿度を測定する湿度測定手段を備え、
前記制御手段が、前記湿度測定手段による湿度測定結果に応じて、前記貼り付け条件を変更する偏光板の製造装置。
【0029】
この偏光板の製造装置によれば、環境湿度によって変化する光学特性に合わせて貼り付け条件が設定されるので、常に正確な補正が可能となり、偏光板を均質に維持することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る偏光板の製造方法および製造装置によれば、偏光板加工前の延伸工程等で生じる光学特性の製造ばらつきを第1の貼り付け条件にて偏光板加工時に補正でき、フィルム光学特性を高精度に安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、偏光板の製造方法および偏光板の製造装置について、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る実施形態を説明するための偏光板の用いられた液晶表示装置の側面図である。
偏光板1,1は、液晶セル3の表裏面で、偏光軸が直交するクロスニコル状態で配置される。偏光板1は、偏光膜を有する偏光フィルム5とその両面にポリマーフィルムからなる保護フィルム7a,7bを有する多層積層体として構成される。保護フィルム7a,7bは、所望の偏光特性の偏光板1を得るように設計される。したがって、所望の偏光特性の偏光板1を連続的に安定的に製造するという課題は、保護フィルム7a,7b用に設計されたポリマーフィルムを、光学特性の変動がないように、連続して安定的に供給し、偏光フィルム5と連続して貼り付けることで達成される。本構成例では、偏光膜を有する長尺状の偏光フィルム5に、少なくとも一層の長尺状の光学フィルムである保護フィルム7a,7bを貼り付けることにより、多層積層体となった偏光板1を連続的に得る。
【0032】
図2は偏光板の製造装置の概略を示した構成図である。
同図に示されるように、偏光板の製造装置100は、偏光板1を構成する各光学フィルムを重ね合わせて相互に貼り付けする貼り付け手段としての偏光板加工部8を有し、この偏光板加工部8の工程前段に第1光学特性測定部10を配置して、偏光板加工部8へ向かう光学フィルム(図示例では一例として保護フィルム7a)の光学特性を測定する。光学特性としては、光学フィルムの面内レターデーション、厚み方向のレターデーション、偏光主軸方向の少なくともいずれかを含む特性である。この光学特性の測定結果は、偏光板加工部8へフィードフォーワード制御されて、偏光板加工条件が適宜変更される。また、偏光板加工部8の工程後段に第2光学特性測定部12を配置して、偏光板加工部8により積層加工された偏光板1の光学特性を測定する。この光学特性の測定結果は、偏光板加工部8にフィードバック制御されて、偏光板加工条件が適宜変更される。
【0033】
上記図2に示す基本構成をより具体化した一構成例を図3に示す。
この構成の偏光板の製造装置100は、偏光板加工部8として加熱ロール機構9を有する。加熱ロール機構9は、上下一対のニップローラ23a、23bを有し、これらニップローラ23a,23bとの間に偏光板1を構成する各光学フィルムが狭持される。そして、ニップローラ23aは加熱可能なヒートローラからなる。勿論、双方のニップローラ23a,23bをヒートローラで構成して、双方を温度制御してもよい。これらニップローラ23aは、図示しない回転駆動部に接続され、回転速度を自在に制御可能に構成されている。
【0034】
加熱ロール機構9による貼り付け処理前に各光学フィルムの光学特性を測定する第1光学特性測定部10は、保護フィルム7aに対しては検出器10A、偏光フィルム5に対しては検出器10B、保護フィルム7bに対しては検出器10Cがそれぞれ配置され、各光学フィルムの光学特性を測定可能にしている。なお、これら検出器10A,10B,10Cは、いずれか1つの光学フィルムを選択的に測定するが、2つまたは全ての検出器をそれぞれ同時に機能させて、光学特性の測定を行ってもよい。以下の説明では、検出器10Aを機能させて保護フィルム7aに対する光学特性を検出して、偏光板加工条件を補正する例を示す。勿論、これに限らず、例えば他の検出器10Bを機能させて、吸収軸方位/偏光度等を測定したり、検出器10Cを機能させて、光散乱度や光散乱角度分布(表面散乱処理がされている場合)等を測定し、適宜調整することであってもよい。さらに、検出器10Bを機能させて偏光フィルム5の吸収軸方位のずれを測定し、その結果に基づいて、保護フィルム7aに対する貼り合わせ角を調整することも可能である。
【0035】
また、加熱ロール機構9による貼り付け処理後の偏光板1に対して光学特性を測定する第2光学特性測定部12を設けてもよい。この第2光学特性測定部12は、加熱ロール機構9から偏光板1の巻き取りロール15までの搬送途中に配置された詳細を後述する光学特性の検出器である。
【0036】
そして、第1光学特性測定部10によって測定される光学フィルムの光学特性および加熱ロール機構9による各光学フィルムの貼り付け処理条件とこれにより決定する多層積層体(偏光板1)の光学特性との関係を表す光学特性対応情報(第1の光学特性対応情報)は、情報記憶部17に記憶されている。また、第2光学特性測定部12によって測定される偏光板1の光学特性および加熱ロール機構9による各光学フィルムの貼り付け処理条件との光学特性の関係を表す光学特性対応情報(第2の光学特性対応情報)も、情報記憶部17に記憶されている。
【0037】
さらに、偏光板の製造装置100は、情報記憶部17に記憶された各光学特性対応情報を参照して、測定した光学フィルムの光学特性の結果に基づいて、偏光板1が所望の光学特性となる第1の貼り付け条件を設定し、この設定された第1の貼り付け条件で加熱ロール機構9を駆動制御する制御部19を備えている。制御部19には、第1光学特性測定部10の検出器10A,10B,10C、情報記憶部17、および第2光学特性測定部12が接続され、また、一対のニップローラ23a,23bの温度を変更するローラ温度調整部20と、ニップローラ23a,23bの回転速度を変更するローラ回転速度調整部21と、環境湿度を測定する湿度センサ23とに接続されている。
【0038】
制御部19は、上記接続された各部を制御することで、保護フィルム7a、偏光フィルム5、保護フィルム7bを、ニップローラ23a,23bの直前で被貼着フィルム25として挟み込み、これら光学フィルムが積層された状態の被貼着フィルム25を一対のニップローラ23a,23bによって加熱加圧して相互に貼り付け処理し、巻き取りロール15に巻き取るまでの工程を制御する。その際、ニップローラ23aのローラ温度、回転速度が、ローラ温度調整部20、ローラ回転速度調整部21によって適宜調整可能となる。
【0039】
つまり制御部19は、ローラ温度調整部20によりニップローラ23aの温度を調整することで、被貼着フィルム25の加熱温度を所望の温度に調整し、ローラ回転速度調整部21によりニップローラ23aの回転速度を調整することで、ニップローラ23aと被貼着フィルム25との接触時間を増減して、被貼着フィルム25への加熱時間を調整する。これらの調整によって、被貼着フィルム25の加熱温度と加熱時間を前述の第1の貼り付け条件となるように設定する。なお、湿度センサ23による湿度測定結果に応じて、この第1の貼り付け条件を、この湿度変化に伴う光学特性の変化に対応させて適宜変更する。
【0040】
また、制御部19は、第2光学特性測定部12により測定された偏光板1の光学特性の測定結果に基づいて、各フィルム7a,5,7bの貼り付け処理条件とこれにより決定する偏光板1の光学特性との関係を表す第1の光学特性対応情報を参照して、偏光板1が所望の光学特性となる第2の貼り付け条件を選定し、この選定された第2の貼り付け条件に基づいて、既に求められている第1の貼り付け条件を補正し、加熱ロール機構9を制御する。
【0041】
この偏光板の製造装置100では、基本動作として、加熱ロール機構9よりも上流側の前工程で生じているフィルム光学特性のばらつきが第1光学特性測定部10で測定され、その測定値に対応する貼り付け条件が第1の光学特性対応情報を参照することで、第1の貼り付け条件として決定される。これにより、加熱ロール機構9より上流工程にて生じる製造ばらつきを考慮した補正がなされる。
【0042】
これに加え、第2光学特性測定部12により、貼り付け処理後の偏光板1の光学特性の変化が測定され、その測定値に応じた第2の貼り付け条件により、より高精度な貼り付け補正処理が可能となる。すなわち、偏光板1が所望の光学特性となる第2の貼り付け条件に基づいて貼り付け処理される。これにより、貼り付け処理を含む、貼り付け処理後の工程で生じる製造ばらつきがフィードバック制御により加熱ロール機構9で補正可能となっている。
【0043】
なお、上記構成の第2光学特性測定部を省略して、被貼着フィルム25の貼り付け処理前に光学特性を測定して、その測定結果に基づいて貼り付け処理条件をフィードフォーワード制御するだけの構成としてもよい。
【0044】
なお、上記例ではローラ温度調整部20がニップローラ23aの温度を変更する構成となっているが、これに限らず、例えば、ニップローラ23a,23bの搬送路後方に、各フィルム7a,5,7bの温度を変更可能な乾燥装置を配置し、この乾燥装置により各フィルムの温度を調整する構成としてもよい。その場合には、各フィルムの貼り付け前に塗布される粘着剤を確実に乾燥させることができる。その他、適宜な位置、手段で各フィルム7a,5,7bの温度を調整してもよい。
【0045】
上記構成の製造装置100を用いた偏光板1の製造方法をより詳細に説明する。
以下の説明において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また実質的に直交もしくは平行とは、厳密な角度±10°の範囲を意味する。また、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
【0046】
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0047】
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
【0048】
【数1】

【0049】
式中、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
【0050】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0051】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
【0052】
次に、第2光学特性測定部12について説明する。
図4は偏光測定器を用いて偏光板(多層積層体)1のベクトルを測定する方法の一例を示す斜視図である。
処理条件の制御に用いられる特性値αは、保護フィルム7aの偏光特性を示す値であるのが好ましく、二色性(ディアテニュエーション)ベクトルD、又は偏光能(ポラリザンス)ベクトルPであるのが好ましい。二色性(ディアテニュエーション)ベクトルDとは、ポアンカレ球上において、透過光量が最大となる偏光状態を表し、偏光能(ポラリザンス)ベクトルPとは、ポアンカレ球上において、無偏光を入射した時の出射偏光状態を表す。第2光学特性測定部12として、デュアル・ローテート・リターダー方式の偏光測定器を用いると、偏光膜と、複屈折性ポリマーフィルムとの積層体のD及びPが測定できるので好ましい。デュアル・ローテート・リターダー方式の偏光測定器は、測定ヘッドが、偏波を作り出す偏光ジェネレータ12aと、偏波を検出する偏光アナライザ12bとを含み、双方のヘッドが、高速回転する波長板と偏光子とで構成されている偏光測定器である。市販品として、Axometrics社のミュラーマトリクス・ポラリメータがあり、これを用いることができる。
【0053】
特性値αは、その他、繰り込みエリプソメトリーや、一般化エリプソメトリーにより求められる成分でもよいし、ストークスパラメータ(S123)、消光度、透過率、反射率、リタデーション、ヘイズ、散乱率、遅相軸、偏光軸、透湿度、弾性率、水分量、帯電率、導電率、及び抵抗値から選択される少なくとも一種であってもよい。
【0054】
繰り込みエリプソメトリーにて得られる特性値としては、tpp、tps、tsp、tss等があり、これらの特性値は、下記の式(3)を満たす。
【0055】
【数2】

・・・式(3)
【0056】
等方性媒質ではジョーンズマトリクスにおける非対角成分は0になるが、光学異方性媒質では、一般的に0以外の値を持つ。繰り込みエリプソメトリーでは、ψ及びΔが測定値として得られので、この測定値を用いて、次式により解析する。
【0057】
【数3】

・・・式(4)
【0058】
一方、一般化エリプソメトリーでは、非対角成分を含めた次式の三項目が測定される。
【0059】
【数4】

・・・式(5)
【0060】
一般的には、ΔはP波S波の位相差、ψはP波S波の強度比に主に関係するパラメータである。よって、これらの値を解析することによって、試料のリターダンスやアブソーバンスに関する情報を得ることができる。多層モデルによる理論値と計測値を比較し、その差が最小になるようにモデルのパラメータをフィッティングすることができる。
【0061】
以上の方法は、繰り込みエリプソメトリーについては、N. Tanaka, M. Kimura and T. Akahane: Jpn. J. Appl. Phys. 42(2003) 486-491;及び、一般化エリプソメトリーについては、M. Schubert, B. Rheinlander, C. Cremer, H. Schmiedel, J. A. Woollam, C. M. Herzinger and B. Johs: J. Opt. Soc. Am. A13(1996) 1930-1940 に詳細が記載されている。
【0062】
また、上記の計測方法は、液晶セル3と偏光板1が貼合された状態や、液晶セル3のみの計測にも応用できる。液晶セル3は、液晶、配向膜、カラーフィルター、透明電極、ITO、透明絶縁膜、ガラス等を含む多層構造からなっている。それらをモデル化して、モデルによる理論値と計測値とを比較し、その差が最小となるように、モデルのパラメータをフィッティングすることで、上記各層の物理パラメータ(屈折率、吸収係数、複屈折率、膜厚等)を得ることができる。これらのパラメータを用いて設計を行うことで、光学フィルム及び、液晶セル3のパラメータを得ることができる。さらに、上記計測を波長ごとに行うことにより、良好な色味についても、理想のパラメータを得ることが可能である。また、セルに電圧を印加した状態で上記計測を行うと、黒状態や白状態だけでなく、中間調の表示性能についても、理想のパラメータを得ることができる。
【0063】
さらに、干渉を含むような複雑な系については、Y. Ohno, T. Ishinabe, T. Miyashita and T. Uchida, IDW' 07 p. 47 (2007)のように、拡張ジョーンズベクトルをさらに拡張した方法を用いて、より正確なパラメータを得ることもできる。
【0064】
図4に、第2光学特性測定部12として、デュアル・ローテート・リターダー方式の偏光測定器を用いて、保護フィルム7a(図中、積層構造は省略し、単層として示した)の二色性ベクトルD、及び偏光能ベクトルPを測定する方法の一例を示す。第1の光学特性測定部10は、偏光ジェネレータ11aによって偏波を作り出し、保護フィルム7aに入射させ、保護フィルム7aを通過した偏波を偏光アナライザ11bで検出する。
【0065】
保護フィルム7aが、レターデーションを示す複屈折フィルムである場合は、保護フィルム7aの表面の法線方向に対して極角θ(0°<θ<90°)だけ傾けた方向から偏波を入射させるのが好ましく、保護フィルム7aの長手方向d1を基準として、方位角φ(0°<φ<90°)の方向において、法線から極θだけ傾けた方向から偏波を入射した光の偏光状態を検出するのが好ましい。
【0066】
θは30〜70°であるのが好ましく、φは±30〜±60°であるのが好ましい。偏光アナライザ11bで検出された偏光状態を示す検出値は、制御部19に入力され、二色性ベクトルD及び/又は偏光能ベクトルPが算出される。制御部19にはあらかじめ、偏光板1の用途に応じて設計された偏光板1の、最適な設計値D0及び/又はP0を、実装評価又はモデル化による理論計算より入力されていて、算出したD及びPと設計値D0又はP0との差ΔD0又はΔP0が算出される。連続して検出し、ΔD0又はΔP0をモニタリングしてもよい。また、DとP、D0とP0は規格化しても、同様に扱うことができる。
【0067】
以上の方法は、Y. Ootani :O plus E 29 p.20 (2007));及びS-Y. Lu and R.A.Chipman : J.Opt.Soc.Am.A 13 p.1106(1996);に詳細が記載されていて、その内容を参照して、極角θ及び方位角φ等を決定することができる。
【0068】
次に、上記構成の偏光板の製造装置100による偏光板1の製造手順について、図面を参照して具体的に説明する。
図5は偏光板の製造方法の手順を示すフローチャート、図6は第1の貼り付け条件に基づく調整手順を(a)〜(d)に示した動作説明図、図7は第1の貼り付け条件に基づく調整がなされる際の貼付前レターデーション変化(a)、調整温度(b)、貼付後レターデーション変化(c)を示した説明図である。
【0069】
ここでは、保護フィルム7aに対して偏光板加工前に光学特性を測定して、その測定結果に基づいて偏光板加工の貼り付け条件を変更する例を説明する。先ず、偏光板1の製造に先立ち、光学特性対応情報である補正テーブルを作成しておく(S1)。つまり、貼り付け条件によって偏光板加工前の保護フィルム7aの面内レターデーションRe、厚み方向レターデーションRth値等のパラメータが、偏光板加工後にどのように変化するかを調べる。このために、偏光板加工前の保護フィルム7aの光学特性を測定し、偏光板加工を行った後、上記の方法によりインラインまたはオフラインにて再度測定を行う。この測定処理を、偏光板加工条件を変化させつつ行い、また偏光板加工前の、Re,Rth値の異なるいくつかのサンプルに対して同様の測定を行い、偏光板加工条件と、加工前後での光学特性値変化の関係を求め、これを補正テーブルとする。なお、補正テーブルに限らず、曲線近似などの手段により光学特性変化を数式化して表してもよい。
【0070】
保護フィルム7aの光学特性および保護フィルム7aの貼り付け処理条件とこれにより決定する偏光板1の光学特性との関係を表す補正テーブルの用意ができた後、偏光板の製造装置100を稼働し、図6(a)に示すように、保護フィルム7a、偏光フィルム5、保護フィルム7bを加熱ロール機構9へ供給する。同時に、偏光フィルム5貼り付け前の保護フィルム7aの光学特性を第1光学特性測定部である検出器10Aにて測定する(S2)。
【0071】
測定される光学特性は、面内レターデーションRe、厚み方向のレターデーションRth、偏光主軸方向の少なくともいずれかを含む。フィルム面に対し、面内、厚み方向のレターデーション、偏光主軸方向のうち任意のパラメータを使用することで、例えば液晶表示装置にとって重要な偏光特性の把握が容易となり、局所的に生じた欠陥等がより検出しやすくなる。もって、偏光板の生産安定性を高めることができる。
【0072】
次に、光学特性の測定値は制御部19へ送られ、制御部19が測定光学特性に変化がありと判断すると(S3)、図6(b)に示すように、制御部19がフィードフォーワード制御により加熱ロール機構9を調整制御する。このときの制御は、補正テーブルを参照して、貼り付け後の偏光板1が所望の光学特性となるように第1の貼り付け条件を決定し、この第1の貼り付け条件で加熱ロール機構9による貼り付け処理を行うものである。
【0073】
具体的な第1の貼り付け条件とは、ニップローラ23a,23bに対する加熱加圧処理の条件であり、ニップローラ23aの加熱温度、回転速度の少なくともいずれかを含む。保護フィルム7a,7b、偏光フィルム5が積層された状態で、一対のニップローラ23a,23bによって加熱加圧して一体化された偏光板1に加工する際に、この貼り付け時のニップローラ23aの温度、各フィルム7a,5,7bへの加熱時間が、第1の貼り付け条件と一致するように制御されることとなる。なお、環境湿度に応じて光学特性は変化するため、偏光板加工時の環境湿度を測定して、測定湿度に応じて適宜第1の貼り付け条件を変更しておく。
【0074】
このようにして、偏光板1の貼り付け加工条件を変更する(S4)と、図6(c)に示すように、第1の貼り付け条件で偏光板1の貼り付け加工がなされ(S5)、偏光板加工前の延伸工程等で生じる製造ばらつき(図6中に波線で示す)が加熱ロール機構9で補正されることになる。なお、測定光学特性に変化がなしと判断されれば、加工条件は変更されないまま貼り付け処理が続行される。
【0075】
例えば、図7(a)に示すように、温度依存性のある厚み方向レターデーションRthにおいては、厚み方向レターデーションRthの増減に応じて、図7(b)に示すように、ニップローラ23aへの加熱量を低減・増加させる。その結果、図7(c)に示すように、厚み方向レターデーションRthが所望の値に維持され、NGの発生しない偏光板1が製造される(図6(d)参照)。
【0076】
このように、本製造方法では、各光学フィル7a,7b、偏光フィルム5の光学特性が貼り付け処理前に測定され、その光学特性に応じた第1の貼り付け条件にて、被貼着フィルム25が貼り付け処理される。すなわち、上流工程にて測定した条件に基づき、下流の貼り付け工程にて補正制御(フィードフォーワード制御)がなされる。従って、例えば貼着後の測定でフィードバック制御を行う場合に発生しやすい、未補正フィルム(無駄フィルム)の発生がない。
【0077】
次に、貼り付け処理後に光学特性を測定してフィードバック制御する第2光学特性測定部を機能させた場合を説明する。
図8は第1および第2の貼り付け条件に基づく調整手順を(a)〜(g)に示した動作説明図、図9は第1および第2の貼り付け条件に基づく調整がなされる際の貼付前レターデーション変化(a)(d)、調整温度(b)(e)、貼付後レターデーション変化(c)(f)を示した説明図である。
【0078】
本構成例による製造方法では、さらに、貼り付け処理を行った後の偏光板1の光学特性を測定し(S6)、測定された偏光板1の光学特性に基づいて、各フィルム7a,5a,7bの貼り付け処理条件とこれにより決定する偏光板1の光学特性との関係を表す第2の光学特性対応情報である補正テーブルを参照して、偏光板1が所望の光学特性となる第2の貼り付け条件を決定する。この第2の貼り付け条件に基づいて先の第1の貼り付け条件を補正して貼り付け処理を行う。ここで、第2の光学特性対応情報は、第1の貼り付け条件の少なくとも一部を変更する情報を含み、例えば、第1の貼り付け条件としてのパラメータのバイアス成分を調整したり、ゲインを調整する等の微調整を行う情報とすることができる。
【0079】
これにより、図8(a)〜(c)に示すように、前述したフィードフォーワード制御を行った後、図8(d)に示すように、加熱ロール機構9の下流で偏光板1にNGが発生した場合でも、これを直ちに補正することができる。つまり、発生したNG部分が第2の光学特性測定部12にて測定され、制御部19にて目的とする光学特性となっていないことが判断されると(S7)、第2の貼り付け条件へと加工条件が変更される(S8)。すなわち、図8(e)に示すように、制御部19は、加熱ロール機構9に対してフィードバック制御を行う。加熱ロール機構9は、第2の光学特性対応情報により決定した第2の貼り付け条件に基づいて、既に決定されていた第1の貼り付け条件を補正して偏光板1の貼り付け処理を行う。
【0080】
具体的には、図9(a)に示すように貼り付け処理前にレターデーション値Rthが変動し、図9(b)に示すように加熱温度を調整しても、貼り付け処理後のレターデーション値Rthが所望の値にならない場合、レターデーション値Rthの異常を検出して、図9(e)に示すように、加熱温度の制御パターン(温度昇降パターン)はそのままに、バイアス成分を低下させる補正を加える。この補正により、図9(f)に示すように、貼り付け後のレターデーション値Rthは、目的とする値となる。
【0081】
これにより、図8(f)に示すように、貼り付け処理を含む、貼り付け処理後の工程で生じる製造ばらつきがフィードバック制御により加熱ロール機構9にて補正されるので、NG発生位置からフィードバック制御によるNG解消位置までの長さを最小限に抑えることができる。
【0082】
したがって、上記した偏光板の製造方法によれば、被貼着フィルム25の貼り付け処理前に光学特性を測定し、測定された光学特性に基づいて補正テーブルを参照し、偏光板1が所望の光学特性となる第1の貼り付け条件で被貼着フィルム25の貼り付け処理を行うので、偏光板加工前の延伸工程等で生じる製造ばらつきを、加熱ロール機構9を第1の貼り付け条件で駆動することで補正でき、フィルム光学特性を高精度に安定化させて製造することができる。
【0083】
また、貼り付け処理後に光学特性を測定し、この測定された光学特性に基づいて補正テーブルを参照し、偏光板1が所望の光学特性となる第2の貼り付け条件に基づいて、先の第1の貼り付け条件を補正することで、上流工程で生じる全ての製造ばらつきを考慮した補正が可能となり、均一特性の偏光板1をより高精度に安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る実施形態を説明するための偏光板の用いられた液晶表示装置の側面図である。
【図2】偏光板の製造装置の概略を示した構成図である。
【図3】図2に示した偏光板加工部を具現化した一構成例を示す構成図である。
【図4】偏光測定器を用いて偏光板のベクトルを測定する方法の一例を示す斜視図である。
【図5】偏光板の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】第1の貼り付け条件に基づく調整手順を(a)〜(d)に示した動作説明図である。
【図7】第1の貼り付け条件に基づく調整がなされる際の貼付前レターデーション変化(a)、調整温度(b)、貼付後レターデーション変化(c)を示した説明図である。
【図8】第1および第2の貼り付け条件に基づく調整手順を(a)〜(g)に示した動作説明図である。
【図9】第1および第2の貼り付け条件に基づく調整がなされる際の貼付前レターデーション変化(a)(d)、調整温度(b)(e)、貼付後レターデーション変化(c)(f)を示した説明図である。
【図10】ポリマーフィルムにおける偏光板加工前の面内レターデーションReを(a)、厚み方向レターデーションRthを(b)に示した光学特性変化の説明図である。
【符号の説明】
【0085】
1 偏光板(多層積層体)
3 液晶セル
5 偏光フィルム
7a、7b 保護フィルム
8 偏光板加工部
9 加熱ロール機構(貼り付け手段)
10 第1光学特性測定部(第1の光学特性測定手段)
10A,10B,10C 検出器
12 第2光学特性測定部(第2の光学特性測定手段)
12a 偏光ジェネレータ
12b 偏光アナライザ
15 巻き取りロール
17 情報記憶部(情報記憶手段)
19 制御部(制御手段)
20 ローラ温度調整部(温度調整手段、ローラ温度調整手段)
21 ローラ回転速度調整部(ローラ回転速度調整手段)
23 湿度センサ(湿度測定手段)
25 被貼着フィルム
100 偏光板の製造装置
Re 面内レターデーション
Rth 厚み方向のレターデーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光膜を有する長尺状光学フィルムに少なくとも一層の他の長尺状光学フィルムを貼り付けて、多層積層体を連続的に得る偏光板の製造方法であって、
前記各長尺状光学フィルムのうち少なくともいずれかの被貼着フィルムに対して、該被貼着フィルムの貼り付け処理前に光学特性を測定し、
前記被貼着フィルムの光学特性および前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理条件に対する前記多層積層体の光学特性の関係を表す第1の光学特性対応情報を参照して、前記測定した光学特性の結果に基づいて前記多層積層体が所望の光学特性となる第1の貼り付け条件を決定し、
該決定した第1の貼り付け条件で前記長尺状光学フィルムの貼り付け処理を行う偏光板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の偏光板の製造方法であって、
前記光学特性が、面内レターデーション、厚み方向のレターデーション、偏光主軸方向の少なくともいずれかを含む偏光板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の偏光板の製造方法であって、
前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理が、前記各長尺状光学フィルムを重ね合わせた積層状態で加熱加圧する処理であり、前記貼り付け処理条件が、前記長尺状光学フィルムの加熱温度、加熱時間のうち少なくともいずれかの条件を含む偏光板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の偏光板の製造方法であって、
前記長尺状光学フィルムの貼り付け処理後の前記多層積層体の光学特性を測定し、
前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理条件と、これにより決定する前記多層積層体の光学特性との関係を表す第2の光学特性対応情報を参照して、前記光学特性の測定結果に基づいて前記多層積層体が所望の光学特性となる第2の貼り付け条件を決定し、
該決定した第2の貼り付け条件に基づいて前記第1の貼り付け条件を補正して前記長尺状光学フィルムの貼り付け処理を行う偏光板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の偏光板の製造方法であって、
前記光学特性対応情報は、環境湿度に応じて前記貼り付け条件が設定されている偏光板の製造方法。
【請求項6】
偏光膜を有する長尺状光学フィルムに少なくとも一層の他の長尺状光学フィルムを貼り付けて、多層積層体を連続的に得る偏光板の製造装置であって、
前記各長尺状光学フィルムをそれぞれ重ね合わせて貼着する貼り付け手段と、
前記各長尺状光学フィルムのうち少なくともいずれかの被貼着フィルムに対して、該被貼着フィルムの貼り付け処理前に光学特性を測定する第1の光学特性測定手段と、
前記被貼着フィルムの光学特性および前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理条件に対する前記多層積層体の光学特性の関係を表す第1の光学特性対応情報が保存された情報記憶手段と、
該第1の光学特性対応情報を参照して、前記測定された被貼着フィルムの光学特性の結果に基づいて前記多層積層体が所望の光学特性となる第1の貼り付け条件を決定し、該決定した第1の貼り付け条件で前記貼り付け手段を駆動する制御手段と、
を備えた偏光板の製造装置。
【請求項7】
請求項6記載の偏光板の製造装置であって、
前記光学特性が、面内レターデーション、厚み方向のレターデーション、偏光主軸方向の少なくともいずれかを含む偏光板の製造装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7記載の偏光板の製造装置であって、
前記貼り付け手段が、一対のニップローラ間に前記各長尺状光学フィルムを狭持するニップロール機構を有し、
前記一対のニップローラに狭持される前記長尺状光学フィルムの温度を変更する温度調整手段、前記ニップローラの回転速度を変更するローラ回転速度調整手段の少なくともいずれかを備えた偏光板の製造装置。
【請求項9】
請求項8記載の偏光板の製造装置であって、
前記温度調整手段が、前記一対のニップローラの少なくとも一方の温度を変更するローラ温度調整手段である偏光板の製造装置。
【請求項10】
請求項6〜請求項9のいずれか1項記載の偏光板の製造装置であって、
前記貼り付け手段によるフィルムの貼り付け処理後に前記多層積層体の光学特性を測定する第2の光学特性測定手段を備え、
前記情報記憶手段が、前記各長尺状光学フィルムの貼り付け処理条件と、これにより決定する前記多層積層体の光学特性との関係を表す第2の光学特性対応情報をさらに有し、
前記制御手段が、前記第2の光学特性測定手段による前記多層積層体の光学特性の測定結果に基づいて、前記第2の光学特性対応情報を参照して、前記多層積層体が所望の光学特性となる第2の貼り付け条件を決定し、該決定した第2の貼り付け条件に基づいて前記第1の貼り付け条件を補正して前記貼り付け手段を駆動制御する偏光板の製造装置。
【請求項11】
請求項6〜請求項10のいずれか1項記載の偏光板の製造装置であって、
前記貼り付け手段周囲の環境湿度を測定する湿度測定手段を備え、
前記制御手段が、前記湿度測定手段による湿度測定結果に応じて、前記貼り付け条件を変更する偏光板の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−85503(P2010−85503A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251929(P2008−251929)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】