説明

偏光素子およびその製造方法

【課題】製造方法が簡単で量産に適した、光ピックアップ装置などに使用される小型の偏光素子を提供する。
【解決手段】本発明による偏光素子は、所定の周期Λで基板上に配置された格子を備え、光の波長をλ、格子面に対する入射角度をθ0として

Λ(cosθ0)<λ

である。格子の凸部(111)上に凸部の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層(113)を積層し、格子の凸部以外の部分には当該高い屈折率の材料からなる層を積層していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光分離素子、1/4波長板などを含む偏光素子およびその製造方法に関する。特に、コンパクト・ディスクおよびデジタル・バーサタル・ディスク用の2波長で使用することのできる、量産に適した偏光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ピックアップ装置などに使用される小型の偏光素子には種々の種類がある。(1)キューブ型に代表される、多層膜を含むガラス素子(たとえば、特許文献1)、(2)構造性複屈折を利用したサブ波長格子(光の波長以下の周期を有する格子)素子、(3)有機複屈折材料からなる回折格子を用いた素子(たとえば、特許文献2)、(4)回折格子と液晶高分子材料を用いた素子(たとえば、特許文献3)などである。
【0003】
(1)について、特許文献1の例では、多層膜を用いて光の入射角度をブリュースター角(P波の反射率が0となる入射角度)に近づけることで偏光ビームスプリッタを作成している。このような方法では、多層膜を形成するために複数の蒸着工程が必要となり生産性が悪く、また複数の複雑な機能を持たすことができない。
【0004】
(2)は、格子周期が波長と同程度かそれ以下の構造を作成することによって偏光依存性を持たせる方法である。この方法では、サブ波長格子によって大きな複屈折を持たすことができるが、ほとんどの場合、高アスペクト比の格子構造が必要となり生産が困難である。
【0005】
(3)について、特許文献2の例では、複屈折材料上に構成した格子の凹部に等方性材料を充填するという構成になっている。しかし、いずれの場合も、格子の形成にエッチング工程が必要で量産性が悪く、また両面で構成される回折格子の場合、位置合わせが難しいなど複雑な工程を必要とする。
【0006】
(4)は、回折格子の凹部に液晶高分子を含んだ材料を充填するか、あるいはこの材料で膜を形成することで偏光素子を作成する方法である。これは、液晶高分子の配向方向によって光学特性に偏光依存性があることを利用している。したがって、所定の性能を得るためには液晶の配向方向をそろえなければならず、個々の素子にラビング処理等の配向処理が必要であり、量産性に優れていない。
【0007】
このように、いずれの種類の偏光素子も製造方法が煩雑であり、量産に適したものではない。
【0008】
ここで、回折格子による偏光素子の原理について説明する。図11は、回折格子による偏光に依存するビーム分離機能の原理について説明する図である。図11において、屈折率がn1の媒質からn2の媒質に光が進む。境界には、周期Λの格子が形成されている。
【0009】
光にはTE偏光(s偏光)、TM偏光(p偏光)と呼ばれる偏光がある。回折格子に光が入射する場合に、格子の溝に対して電界が平行に振動する方向の偏光をTE偏光と呼び、電界が垂直に(磁界が平行に)振動する方向の偏光をTM偏光と呼ぶ。
【0010】
回折格子が波長λに対し、 入射角度θ0、周期Λを用いて次式の条件が満たされたとき、
Λcosθ0<λ (1)
その回折格子構造は、光にとって有効屈折率neffで表される薄膜構造内を進行しているように認識される。このとき有効屈折率neffは、入射光の偏光方向によって異なり、第1次近似では次式で書き表される。
【0011】
【数1】

ここで、fは周期Λに対する図11における山側部分(凸部)の比を表す。
上式からfが0、1以外では、各々の偏光に対する有効屈折率の値が異なっていることがわかる。
【0012】
各々の偏光状態による有効屈折率の違いの物理的意味は、光の波長よりも極めて小さい構造体を光が通過する際、構造体は散乱などを生じさせる遮蔽物として捉えられる。結果として遮蔽物を通過するのにエネルギー損失が生じ、その影響が有効屈折率として現われていると考えることができる。
【0013】
この条件の下で各々の偏光成分における有効屈折率neff=nTEまたはneff=nTM (ただしnTE≠nTM)のいずれかが、異なる媒質を進行する光の屈折の関係式(Snellの式)から変形される次式
【数2】


を満たすと、その偏光方向をもつ入射光は有効屈折率neffのもつ薄膜層を通過できなくなる。この状態は図11において、有効屈折率neffのもつ薄膜層での屈折角度θ1がほぼ90°に達しており、n2側への層に光が移動できない状態に相当する。結果的に、入射したエネルギーの発散先として、反射光が生じることとなる。
【0014】
以上、いずれか一方の偏光方向の光が格子構造から認識される有効屈折率neffの効果によって(4)式が成立すると、微小周期による偏光素子が実現することになる。
【0015】
上述のように、格子部において周期を波長以下に設定することにより、電磁波として表される光は進行に伴って、回折波が生じないため、波の重ね合わせとして表現される回折効果として認識されなくなる。波の進行に対して格子部は屈折率変化の対象としてみなされ、電磁波に与える効果は仮想的な屈折率をもつ材質内での進行と同等の性質を与える。この結果、特定の波長帯域において薄膜層と同様の効果をもたらす。格子部を仮想的な屈折率をもつ材質と仮定する手法は有効屈折率法と呼ばれている。たとえば、非特許文献1には格子形状から有効屈折率を求めるための式が記述されている。有効屈折率層は格子部の周期に対する山部の比によって有効屈折率の値が決定される。また、入射光に認識される有効屈折率の値はその偏光方向により異なる。したがって、波長以下の周期を持つ格子を利用することにより、回折格子に、偏光に依存する分離機能を持たせることが出来る。
【0016】
このように、サブ波長格子は偏光素子として機能するが、上記のように、製造方法が簡単で量産に適した、偏光素子としてのサブ波長格子は開発されていない。
【特許文献1】特開2004-117760号公報
【特許文献2】特開2003-43254号公報
【特許文献3】特開平10-265531号公報
【非特許文献1】Wanji Yu et al.,”Polarization-Multiplexed Diffractive Optical Elements Fabricated by Subwavelength Structures”, Vol.41, Issue 1/January 2002/Appl.Opt.96-100(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記の背景の下で、製造方法が簡単で量産に適した、光ピックアップ装置などに使用される小型の偏光素子に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明による偏光素子は、所定の周期Λで基板上に配置された格子を備え、光の波長をλ、格子面に対する入射角度をθ0として

Λ(cosθ0)<λ

である。格子の凸部上に凸部の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層を積層し、格子の凸部以外の部分には当該高い屈折率の材料からなる層を積層していない。
【0019】
本発明においては、格子の凸部上に凸部の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層を積層し、格子の凸部以外の部分には当該高い屈折率の材料からなる層を積層していないので、格子深さの、格子凸部の幅に対する比(アスペクト比)を小さくすることができる。
【0020】
本発明による偏光素子の製造方法は、所定の周期Λで基板上に配置された格子であって、光の波長をλ、格子面に対する入射角度をθ0として

Λ(cosθ0)<λ

である、格子を金型によって成形するステップと、格子の凸部上に、凸部を構成する材料の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層を積層するステップと、を含む。格子の凸部以外の部分には当該高い屈折率の材料からなる層を積層しない。
【0021】
本発明においては、格子の凸部上に凸部の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層を積層し、格子の凸部以外の部分には当該高い屈折率の材料からなる層を積層しないので、格子深さの、格子凸部の幅に対する比(アスペクト比)を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による偏光素子の形状を示す図である。偏光素子は、基板上に配置された格子からなる。格子の凸部111は、平坦な頭部を有し、平坦な頭部上に凸部の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層113が積層されている。当該格子の当該平坦な頭部以外の部分には当該高い屈折率の材料からなる層が積層されていない。
【0023】
格子周期、格子凸部の高さ(格子深さ)、高い屈折率の材料からなる層の厚さおよび格子凸部の幅をそれぞれ、a、b、cおよびdであらわす。
【0024】
回折格子に入射する光の入射角度をθ0、波長をλとすると、格子周期aは、以下の条件を満たす必要がある。
【0025】

a(cosθ0)<λ

回折格子に対して光を垂直に入射させる場合は、入射角度は、0度であるので、

a<λ

となる。したがって、可視光に対してaは、ほぼ、0.4マイクロメータ以下である。
【0026】
格子の幅dの、格子周期aに対する比率をデューティ比という。
【0027】
図1において、格子凸部111の断面は矩形としたが、たとえば、台形であってもよい。格子凸部111の断面を台形とした場合に、格子の幅dは、台形の上底の長さと下底の長さの平均値としてもよい。
【0028】
格子は、アクリルやポリオレフィンなどの合成樹脂で形成してもよい。格子凸部の屈折率は、1.48から1.62の範囲である。
【0029】
凸部の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層113は、酸化チタン(たとえば、Ti)などで形成してもよい。層113の屈折率は、2.0から2.6の範囲である。格子凸部の頭部上に、凸部の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層を積層するのは、格子深さbの、格子凸部の幅dに対する比(アスペクト比)をできるだけ小さくするためである。アスペクト比を小さくする理由は、後で説明する。当該高い屈折率と格子凸部の屈折率との差が0.65以上であるのが好ましい。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態による、偏光素子の製造方法を示す流れ図である。また、図3は、本発明の一実施形態による、偏光素子の製造方法を説明するための図である。
【0031】
図2のステップS010において、格子用金型を加工する。格子用金型は、Ni、NiP、Si、WC、SiC、SiO2 など、金属やガラスなどからなる。加工には、電子描画装置やエッチング装置などの微細加工装置を使用する。図3の(a)は、加工後の金型121の構成を示す図である。
【0032】
図2のステップS020において、金型によって格子を成形する。図3の(b)は、金型121の形状を格子の材料に転写して格子を成形する際の、金型121と格子の材料との関係を示す図である。転写方法としては、射出成形法、溶融再転写技術、インプリント法などがある。上記の方法で転写を行うには、格子深さbの、格子凸部の幅dに対する比(アスペクト比)が、3.0以下であるの好ましい。アスペクト比が3より大きい場合には、上記の方法で適切に転写を行うのが困難である。
【0033】
図2のステップS030において、格子を金型から離型する。図3の(c)は、離型後の格子111の形状を示す図である。
【0034】
図2のステップS040において、格子の凸部の頭部上に、格子を形成する材料の屈折率よりも高い屈折率の材料を蒸着させる。格子の谷部には、材料が蒸着しないようにする。格子の谷部の幅は、(a−d)である。格子深さbの、谷部の幅(a−d)に対する比が、1.0以上であると、格子の谷部に材料が蒸着しない。蒸着方法としては、スパッタ蒸着法、真空蒸着法などがある。図3の(d)は、蒸着後の格子の形状を示す図である。
【0035】
図4は、本発明の一実施形態による偏光分離素子の構成を示す図である。偏光分離素子においては、2種類の格子群101および103が交互に配置されている。2種類の格子群101および103におけるTE波、TM波に対する有効屈折率は一般に異なるので、2種類の格子群101および103は複屈折をもつ物質とみなせる。また、格子形状により有効屈折率が変化する。そこで、2種類の格子群101および103の格子形状を変化させ、ある偏光状態に対しては、2種類の格子群101および103の有効屈折率がほぼ等しくなるようにする。
【0036】
たとえば、2種類の格子群101および103の配列をひとつの仮想格子とみなし、当該仮想格子に対するTM波を考える。この偏光状態に対して、2種類の格子群101および103の有効屈折率がほぼ等しくなるようにする。この場合に、TM波にとって、偏光分離素子は、一様な材質からなるのと等しく、TM波は偏光分離素子を透過する。TE波にとって、2種類の格子群101および103の有効屈折率は異なるので、偏光分離素子は、格子と等しく、TE波は偏光分離素子によって回折する。このとき、回折格子の深さbと蒸着膜厚cを、0次光の透過光がなくなるように設計すれば、TM偏光は透過させ、TE偏光は回折する偏光分離素子を構成することができる。
【0037】
図4にしたがって、本実施形態の偏光分離素子の構成を説明する。
【0038】
偏光分離素子は、基板上に2種類の格子群101および103を設けたものである。基板面上に任意のXY直交座標を定める。第1の格子群101は、基板上に、Y方向に伸びる格子凸部をX方向に周期0.25マイクロメータで配置したものである。第2の格子群103は、基板上に、X方向に伸びる格子凸部をY方向に周期0.4マイクロメータで配置したものである。第1の格子群101と第2の格子群103とは、X方向に交互に周期3.7マイクロメータで配置される。第1の格子群101と第2の格子群103との周期的な配置は、第1の格子群101をY方向に伸びる格子凸部とし、第2の格子群103を格子凸部以外の部分とする仮想格子とみなすことができる。
【0039】
入射する光の波長をλ、格子面に対する入射角度をθとして、第1の格子群101の格子周期および第2の格子群103の格子周期は、

λ/cosθ

よりも小さくなるようにする。たとえば、入射する光の波長λは、デジタル・バーサタル・ディスク用波長0.66マイクロメータまたは、コンパクト・ディスク用波長0.785マイクロメータとする。格子面に対する入射角度θを、0度とすると

λ/cosθ

は、0.66マイクロメータまたは、0.785マイクロメータとなる。第1の格子群101の格子周期0.25マイクロメータおよび第2の格子群103の格子周期0.4マイクロメータは、0.66マイクロメータまたは、0.785マイクロメータよりも小さくなる。
【0040】
表1は、本実施形態の偏光分離素子のパラメータを示す表である。右側4列は各格子郡における蒸着層の有効屈折率を示す。表1において、TE偏光およびTM偏光は、周期3.7マイクロメータの仮想格子に関する偏光方向である。また、TM偏光の光は、基板の格子を備える面から入射され、TE偏光の光は基板の格子のない面から入射されるものとした。
【0041】
【表1】

【0042】
本実施形態の偏光分離素子において、格子深さ(格子高さ)aは、0.46マイクロメータ、高い屈折率の材料からなる層(蒸着膜層)の厚さbは、0.51マイクロメータとした。ここで、格子エッジ角度とは、図1のαで示す角度である。
【0043】
第1の格子群において、格子深さbの、格子凸部の幅dに対する比(アスペクト比)は、2.3である。第2の格子群においても、アスペクト比は、2.3である。このように、格子凸部のアスペクト比が3以下であるので、格子の製造が比較的容易である。これに対して、蒸着膜層を設けない場合は、格子凸部のアスペクト比が9以上となり、格子の製造が困難となる。
【0044】
デジタル・バーサタル・ディスク用波長0.66マイクロメータ、およびコンパクト・ディスク用波長0.785マイクロメータの光のTM波に対して、第1の格子群と第2の格子群とはほぼ等しい屈折率を示す。したがって、TM波は偏光分離素子を透過する。
【0045】
デジタル・バーサタル・ディスク用波長0.66マイクロメータ、およびコンパクト・ディスク用波長0.785マイクロメータの光のTE波に対して、第1の格子群と第2の格子群とは異なる屈折率を示す。したがって、TE波は仮想格子によって回折される。
【0046】
図5は、格子深さaを基準値から約10パーセント変化させた場合の、TM波およびTE波の透過効率の変化を示す図である。
【0047】
図6は、高い屈折率の材料からなる層の厚さbを基準値から約10パーセント変化させた場合の、TM波およびTE波の透過効率の変化を示す図である。
【0048】
図7は、入射角を0度から7度まで変化させた場合の、TM波およびTE波の透過効率の変化を示す図である。
【0049】
図5乃至図7から、デジタル・バーサタル・ディスク用波長0.66マイクロメータ、およびコンパクト・ディスク用波長0.785マイクロメータの光のTM波は、ほぼ90パーセント透過し、デジタル・バーサタル・ディスク用波長0.66マイクロメータ、およびコンパクト・ディスク用波長0.785マイクロメータの光のTE波は、ほぼ90乃至95パーセント透過しない。また、入射角が0度から7度までの範囲で、透過率の入射角依存性はほとんど見られない。
【0050】
図8は、本発明の一実施形態による1/4波長板の構成を示す図である。1/4波長板は、表2に示すパラメータを有する格子からなる。表2の右側4列は格子の各部分における有効屈折率を示す。図8に示すように、入射光の偏光方向に対して、格子の向きを45度傾ける。
【0051】
【表2】

【0052】
格子深さbの、格子凸部の幅dに対する比(アスペクト比)は、1.0である。このように、格子凸部のアスペクト比が3以下であるので、格子の製造が比較的容易である。これに対して、蒸着膜層を設けない場合は、格子凸部のアスペクト比が8以上となり、格子の製造が困難となる。
【0053】
図9は、高い屈折率の材料からなる層(蒸着膜)の厚さcに対して、入射した光の位相変化を示す図である。cを0.375マイクロメータとすれば、デジタル・バーサタル・ディスク用波長0.66マイクロメータ、およびコンパクト・ディスク用波長0.785マイクロメータの光に対して、位相変化はほぼ90度となる。
【0054】
図10は、本発明の偏光素子を使用した光ピックアップシステムの構成を示す図である。図10において、レーザ光源201から発したビームは、0次回折光として偏光分離素子203を透過し、1/4波長板205および対物レンズ207を経てディスク(DVDまたはCD)209に至る。ディスク209で反射されたビームは、対物レンズ207および1/4波長板205を経由して偏光分離素子203に戻る。ビームは、偏光分離素子203によって1次回折光として回折され、フォトダイオード211および213によって検出される。
【0055】
レーザ光源201の発する光は、TM偏光(p偏光)されたものであり、ほぼ90%の効率で0次回折光として偏光分離素子203を透過する。この光は、1/4波長板205によって円偏光に変換される。この光がディスク209で反射されて、1/4波長板205を逆方向に通過すると、TE偏光(s偏光)された光となる。偏光分離素子203は、このTE偏光は、1次回折光が約30%、−1次回折光が約30%、0次回折光が10%以下で、残りはより高次の回折光となる。
【0056】
ここで、レーザ光源201は、二波長半導体レーザユニットであってもよい。本発明の実施形態による偏光分離素子203および1/4波長板205は、デジタル・バーサタル・ディスク用波長0.66マイクロメータおよびコンパクト・ディスク用波長0.785マイクロメータに対して、ほぼ同様の特性を示すので、両方の波長に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態による偏光素子の形状を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による、偏光素子の製造方法を示す流れ図である。
【図3】本発明の一実施形態による、偏光素子の製造方法を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態による偏光分離素子の構成を示す図である。
【図5】格子深さaを基準値から約10パーセント変化させた場合の、TM波およびTE波の透過効率の変化を示す図である。
【図6】高い屈折率の材料からなる層の厚さbを基準値から約10パーセント変化させた場合の、TM波およびTE波の透過効率の変化を示す図である。
【図7】入射角を0度から7度まで変化させた場合の、TM波およびTE波の透過効率の変化を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態による1/4波長板の構成を示す図である。
【図9】高い屈折率の材料からなる層の厚さbに対して、入射した光の位相変化を示す図である。
【図10】本発明の偏光素子を使用した光ピックアップシステムの構成を示す図である。
【図11】回折格子による偏光に依存するビーム分離機能の原理について説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
101…第1の格子群、103…第2の格子群、111…格子の凸部、113…凸部の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期Λで基板上に配置された格子を備え、光の波長をλ、格子面に対する入射角度をθ0として

Λ(cosθ0)<λ

であり、格子の凸部上に凸部の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層を積層し、格子の凸部以外の部分には当該高い屈折率の材料からなる層を積層していない偏光素子。
【請求項2】
格子が合成樹脂からなる請求項1に記載の偏光素子。
【請求項3】
当該高い屈折率の材料が、酸化チタンである請求項1または2に記載の偏光素子。
【請求項4】
当該高い屈折率の材料からなる層が、蒸着により積層されたものである請求項1から3のいずれかに記載の偏光素子。
【請求項5】
格子深さの、格子凸部の幅に対する比が3以下である請求項1から4のいずれかに記載の偏光素子。
【請求項6】
格子深さの、格子谷部の幅に対する比が1.0以上である請求項1から5のいずれかに記載の偏光素子。
【請求項7】
当該高い屈折率と格子凸部の屈折率との差が0.65以上である請求項1から6のいずれかに記載の偏光素子。
【請求項8】
所定の周期Λで基板上に配置された格子であって、光の波長をλ、格子面に対する入射角度をθ0として

Λ(cosθ0)<λ

である、格子を金型によって成形するステップと、
格子の凸部上に、凸部を構成する材料の屈折率よりも高い屈折率の材料からなる層を積層するステップと、を含み、格子の凸部以外の部分には当該高い屈折率の材料からなる層を積層しない偏光素子の製造方法。
【請求項9】
格子が合成樹脂からなる請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
当該高い屈折率の材料が、酸化チタンである請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
当該高い屈折率の材料からなる層を、蒸着により積層する請求項8から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
格子深さの、格子凸部の幅に対する比が3以下である請求項8から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
格子深さの、格子谷部の幅に対する比が1.0以上である請求項8から12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
当該高い屈折率と格子凸部の屈折率との差が0.65以上である請求項8から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
基板面上に任意のXY直交座標を定めた場合に、基板上に、Y方向に伸びる格子凸部をX方向に第1の周期Λで配置した第1の格子群と、X方向に伸びる格子凸部をY方向に第2の周期Λで配置した第2の格子群とを、X方向に交互に第3の周期Λで配置した偏光分離素子であって、第1の格子群および第2の格子群が、請求項1から7のいずれかに記載の偏光素子からなり、進行方向がX軸を含む面内である光の所定の偏光波に対して、第1の格子群と第2の格子群の有効屈折率がほぼ等しく、別の偏光波に対して、第1の格子群と第2の格子群の有効屈折率は異なり、当該別の偏光波に対して、第1の格子群と第2の格子群は、仮想格子として機能するように構成され、仮想格子面に対する入射角度をθとして、第3の周期Λ

λ/cosθ

よりも大きい偏光分離素子。
【請求項16】
コンパクト・ディスクおよびデジタル・バーサタル・ディスク用の2波長で使用することのできる、請求項15に記載の偏光分離素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−85974(P2009−85974A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377621(P2005−377621)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(597073645)ナルックス株式会社 (38)
【Fターム(参考)】