説明

偽造防止用インク

【課題】偽造を防止可能でかつ安価な製造費用で耐久性に優れた情報記録媒体を製造する。
【解決手段】偽造防止用画像4はインクジェット方式に適用可能な偽造防止用インクで記録されており、当該偽造防止用インクが光硬化可能化合物、光硬化促進剤及び偽造防止用材料を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体の偽造の防止に好適に用いられる偽造防止用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行、会社、学校、官公庁等のサービス産業分野では、接触式又は非接触式の電子、磁気等の情報記録媒体を発行する場合が多くなっている。これらのサービス産業分野では、接触式又は非接触式の電子、磁気等の高度な技術を用いなくても、万人が個人を容易に判別可能であることが望まれている。
【0003】
偽造を防止するための技術が特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1に記載の技術では、ホログラム形成層を設けて偽造を防止しようとしている。特許文献2に記載の技術では、パールインキ等の特殊な色変化インキで色変化印刷層を設けて見る角度により色を変化させるような構成とし、偽造を防止しようとしている。特許文献3に記載の技術では、特殊なオフセット印刷用印刷インキを用いて更に高度なセキュリティー技術を実現しようとしている。
【特許文献1】特開2003−280498号公報
【特許文献2】特開2002−301886号公報
【特許文献3】特開2003−99751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ホログラム技術自体が高度な偽造防止技術であるため、情報記録媒体の製造費用を安価に抑えられない。特許文献2に記載の技術では、事前に特殊印刷が必要なため、その点で情報記録媒体の製造費用を安価に抑えられない。特許文献3に記載の技術では、転写により偽造防止層を設けるため、この場合においても情報記録媒体の製造費用を安価に抑えられない。
【0005】
そこで、情報記録媒体の製造費用を安価に抑えるため、インクジェット方式により偽造防止用画像を記録することが考えられるが、当該インクジェット方式では、微細な吐出口からインクを吐出する関係上、水や溶剤等を多く含有させてインクの粘度を低粘化する必要があり、インクの着弾を受ける情報記録媒体がインク中の水や溶剤等の影響を受け、耐久性という面で不都合がある。
本発明の目的は、偽造を防止可能でかつ安価な製造費用で耐久性に優れた情報記録媒体を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、
インクジェット方式に適用可能な偽造防止用インクであって、
光硬化可能化合物、光硬化促進剤及び偽造防止用材料を含有することを特徴としている。
【0007】
前記偽造防止用材料は赤外線吸収剤、鱗片顔料、蛍光体、金属微粒子、高屈折率材料又は低屈折率材料であり、当該偽造防止用インクの全固形分中に5〜50重量%含有されているのが好ましい。
【0008】
前記高屈折率材料の屈折率は1.6以上であるのが好ましく、前記低屈折率材料の屈折率は1.4以下であるのが好ましい。
【0009】
本発明に係る偽造防止用インクにおいては、
光硬化した状態でJIS K 5600に準拠する引っ掻き強度(0.8mmφサファイア針スクラッチ強度)が120g以上であるのが好ましい。
【0010】
本発明に係る偽造防止用インクにおいては、
偽造防止用画像の記録に用いられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクジェット方式に適用可能であるから、安価な製造費用で情報記録媒体を製造することができ、更には、偽造を防止可能で耐久性に優れた情報記録媒体を製造することができる(下記実施例参照)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲は以下の実施形態及び図示例に限定されるものではない。
【0013】
図1はIDカード1の概略構成を示す斜視図である。
情報記録媒体としてのIDカード1はキャッシュカード、従業者証、社員証、会員証、学生証、外国人登録証、各種免許証、ICカード等のカードや、証券、手形等の重要書類等に適用可能なもので、図1に示す通り、矩形状の基体2を有している。
【0014】
基体2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、生分解性脂肪族ポリエステル、生分解性ポリカーボネート、生分解性ポリ乳酸、生分解性ポリビニルアルコール、生分解性セルロースアセテート、生分解性ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ABS、AES等の合成樹脂シート、又は上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体或いはこれら2層以上の積層体で構成されているものである。
【0015】
基体2中には後の工程で形成される画像の鮮明性を高めるために、予め白色顔料、例えば、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム等が添加されていてもよい。
【0016】
基体2は、場合によっては異なる基材又は厚さの異なる支持体を複数積層し、貼り合わせ等により構成されてもよい。基体2には、必要に応じて易接化処理が施されてもよく、カップリング剤、ラテックス、親水性樹脂、帯電防止樹脂などの樹脂層が形成されてもよく、コロナ処理、プラズマ処理等の易接処理が施されてもよい。また、基体2を高機能化するために、基体2には、エンボス、サイン、ICメモリ、光メモリ、磁気記録層、偽変造防止層、ICチップ、赤外吸収層等の層及び部品を介在させてもよい。
【0017】
基体2は、厚みが50〜1200μm程度であるのがよく、50〜1000μmであるのが好ましい。基体2の裏面側には筆記層を設けてもよい。
【0018】
基体2の表面には通常画像3と偽造防止用画像4とが記録されている。
通常画像3は、光硬化型の画像記録用インクで記録されたIDカード1の所有者の顔画像である。
偽造防止用画像4は、光硬化型の偽造防止用インクで記録されたIDカード1の所有者の顔画像であって、IDカード1ごとに異なる固有の画像である。
【0019】
なお、図1では通常画像3,偽造防止用画像4として顔画像のみを図示しているが、通常画像3,偽造防止用画像4には、顔画像の他に、罫線、社名、カード名称、注意事項、発行元電話番号、住所、名前、生年月日等の個人情報、IDカード1の固有番号、固有記号、固有表示部等が含まれる。
【0020】
基体2上には表面保護層5が形成されている。表面保護層5は、当該基体2の表面を保護するもので、通常画像3,偽造防止用画像4を含めた基体2の表面全体を覆うように形成されている。表面保護層5は、主に、IDカード1の表面強度や薬品耐性等の向上を目的とするもので、特に偽造防止機能層の見栄えなどを劣化させない為に表面保護用インクで形成されている(後述参照)。
【0021】
なお、表面保護層5は、基体2の全面を覆うように形成されていなくてもよく、通常画像3及び偽造防止用画像4上を覆うように形成されていてもよいし、単に通常画像3上を覆うように形成されていてもよいし、単に偽造防止用画像4上を覆うように形成されていてもよい。
【0022】
図2はIDカード1の製造装置100の概略構成を示す側面図である。
図2に示す通り、IDカード1の製造装置100は、IDカード1を製造する装置であり、IDカード1の基体2を支持しながら図2中A方向に搬送するプラテン12を有している。プラテン12は公知のベルトコンベア方式のものであり(詳細は図示略)、その表面が光吸収性を有する樹脂で構成されている。
【0023】
プラテン12の上方には、基体2に対し通常画像3,偽造防止用画像4を記録する画像記録部13が設けられている。画像記録部13は、基体2に対し通常画像3を記録する4つの記録ヘッド14〜17と、基体2に対し偽造防止用画像4を記録する偽造防止用記録ヘッドとしての第2の記録ヘッド18とを有している。
【0024】
記録ヘッド14〜17と第2の記録ヘッド18は公知のピエゾ素子と吐出口とを有している。
記録ヘッド14〜17では、当該ピエゾ素子が駆動されると、吐出口からイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像記録用インクを下方に向けて吐出するようになっている。他方、第2の記録ヘッド18では、当該ピエゾ素子が駆動されると、吐出口から偽造防止用インクを下方に向けて吐出するようになっている。画像記録用インクと偽造防止用インクは、光の被照射で硬化する光硬化型インクであり、その種類(組成)が互いに異なっている(後述参照)。
【0025】
基体2の搬送方向Aの画像記録部13より上流側には複数枚の基体2を集積した集積部20が設けられている。集積部20には供給ローラ21が設けられており、供給ローラ21が駆動されると、複数枚の基体2の中から所定のタイミングで基体2が1枚ずつプラテン12に供給されるようになっている。
【0026】
基体2の搬送方向Aの画像記録部13より下流側には表面保護機構30が設けられている。表面保護機構30は上記記録ヘッド14〜18,第2の記録ヘッド18と同様の構成を有しているもので、基体2に記録された通常画像3,偽造防止用画像4の表面を保護するための表面保護用インクを下方に(基体2に向けて)吐出するようになっている。表面保護用インクも、画像記録用インク及び偽造防止用インクと同様に光硬化型インクであり、これらインクとはその種類(組成)が異なっている(後述参照)。
【0027】
基体2の搬送方向Aの表面保護機構30より下流側には光照射機構40が設けられている。光照射機構40は光源41とリフレクタ42(反射体)とを有している。リフレクタ42は下方が開放した箱体であってその内面に反射板又は反射膜が設けられたものである。光照射機構40では、光源41が点灯すると、その光がリフレクタ42で反射され、当該光照射機構40の下方に光を照射することができるようになっている。
【0028】
本実施形態でいう「光」とは、例えば電子線、紫外線、α線、β線、γ線、エックス線等であり、取扱いが容易で工業的にもその利用が普及している電子線、紫外線を用いるのが好ましい。本実施形態では、280〜320nmの波長領域に最高照度をもつ光を用いることが好ましく、光源41の具体例としては、蛍光管、冷陰極管、LED(Light Emitting Diode)などがあるが、これらに限定されない。
【0029】
なお、光の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ光を照射する方法が開示されている。本実施形態においては、これらの何れの照射方法も用いてもよい。
【0030】
また、光の照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で光を照射し、かつ、全記録終了後、更に光を照射する方法も好ましい態様の1つである。光の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる基体2の収縮を抑えることが可能となる。
【0031】
基体2の搬送方向Aの光照射機構40の下方には1対の搬出ローラ51,52とスタッカー53とが設けられている。搬出ローラ51,52は互いに逆方向に回転するもので、基体2をプラテン12からスタッカー53に搬出するようになっている。スタッカー53は搬出ローラ51,52を通過した基体2をストック(蓄積)するものである。
【0032】
次に、本発明に係る「偽造防止用インク」について説明する。
【0033】
偽造防止用インクは、(A.1)光硬化可能化合物や(A.2)光硬化促進剤、(A.3)偽造防止用材料等を含有するものである。
【0034】
(A.1)光硬化可能化合物
光硬化可能化合物とは、光の照射によって重合してポリマーを形成する化合物である。重合性化合物としては、光照射の際ラジカル反応によって重合する光ラジカル重合性化合物や、カチオン化学種が反応活性種となって重合するカチオン重合系のカチオン重合性化合物が知られており、これらは例えば特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特願平7−231444号等の各号公報に記載されている。
【0035】
最近では可視光以上の長波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂も例えば、特開平6−43633号、特開平8−324137等に公開されている。また、特開平2005−153386号等では光硬化型ポリビニルアルコール誘導体の重合物が公開されている。マレイミド誘導体としては、特開昭61−250064号、特開昭62−79243号、特開平6−298817号、特開平11−124403号等が公開されている。偽造防止用インクでは、いずれの材料も適用可能である。
【0036】
偽造防止用インクにおいては、材料の人体への影響が少ない(皮膚刺激性等)、カチオン重合性化合物、光硬化型ポリビニルアルコール誘導体、マレイミド誘導体等を光硬化可能化合物として用いるのが好ましい。より好ましくはインクジェット用途において低粘度が必須であること、酸素による重合阻害受けにくく高分子量化したい耐薬品性、耐水性、高表面強度が期待できることより、カチオン重合性化合物、光硬化型ポリビニルアルコール誘導体を光硬化可能化合物として用いるのが好ましい。
【0037】
下記では、光硬化可能化合物として適用可能な(A.1.1)ラジカル重合性化合物、(A.1.2)カチオン重合性化合物、(A.1.3)光硬化型ポリビニルアルコール誘導体及び(A.1.4)マレイミド誘導体についてそれぞれ説明する。
【0038】
(A.1.1)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を有するものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するため、任意の比率で2種以上を併用してもよい。
【0039】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0040】
その他のラジカル重合性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられる。更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載された周知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0041】
ラジカル重合性化合物の偽造防止用インクに対する添加量は1〜97質量%とすることが好ましい。
【0042】
(A.1.2)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合により高分子化の起こるタイプである。カチオン重合性化合物としては、例えばエポキシタイプの光硬化性プレポリマーや1分子内にエポキシ基を2個以上含有するモノマーを適用することができる。このようなプレポリマーとしては、例えば、脂環式ポリエポキシド類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物類及びエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらのプレポリマーやモノマーは、その一種を単独で使用することもできるし、又その二種以上を混合して使用することもできる。
【0043】
カチオン重合性化合物としては、他に例えば下記の(A.1.2.1)スチレン誘導体、(A.1.2.2)ビニルナフタレン誘導体、(A.1.2.3)ビニルエーテル類、(A.1.2.4)N−ビニル化合物類、(A.1.2.5)オキセタン化合物類等を挙げることができる。
【0044】
(A.1.2.1)スチレン誘導体
スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン等が適用可能である。
【0045】
(A.1.2.2)ビニルナフタレン誘導体
ビニルナフタレン誘導体としては、例えば、2−ビニルナフタレン、α−メチル−2−ビニルナフタレン、β−メチル−2−ビニルナフタレン、4−メチル−2−ビニルナフタレン、4−メトキシ−2−ビニルナフタレン等が適用可能である。
【0046】
(A.1.2.3)ビニルエーテル類
ビニルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0047】
(A.1.2.4)N−ビニル化合物類
N−ビニル化合物類としては、例えば、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン、N−ビニルアセトアニリド、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール等が適用可能である。
【0048】
(A.1.2.5)オキタセン化合物類
オキセタン化合物類とは、オキセタン環を有する化合物を意味する。オキセタン化合物類としては、例えば、特開2001−220526号、特開2001−310937号に記載されているような、公知のオキセタン化合物を使用することができる。オキセタン化合物類として、オキセタン環を5個以上有する化合物を使用すると、偽造防止用インクの粘度が高くなって取扱いが困難になったり、また偽造防止用インクのガラス転移温度が高くなって得られる硬化物の粘着性が十分でなくなってしまう。オキセタン化合物類としてはオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0049】
下記に、オキセタン化合物類の具体例について説明するが、これらに限定されるものではない。1個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0050】
【化1】

【0051】
一般式(1)において、「R1」は水素原子やメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基である。「R2」は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等の芳香環を有する基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、またはエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等の炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基等である。
【0052】
偽造防止用インクで使用するオキセタン化合物類としては、得られる偽造防止用インクが粘着性に優れ、低粘度で作業性に優れるため、1個のオキセタン環を有する化合物を使用することが、特に好ましい。
【0053】
2個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、下記一般式(2)で示される化合物等が挙げられる。
【0054】
【化2】

【0055】
一般式(2)において、「R1」は、上記一般式(1)におけるそれと同様の基である。「R3」は、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の線状または分枝状アルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の線状または分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等の線状または分枝状不飽和炭化水素基、またはカルボニル基またはカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基等である。
【0056】
また、R3としては、下記一般式(3)、(4)及び(5)で示される基から選択される多価基も挙げることができる。
【0057】
【化3】

【0058】
一般式(3)において、「R4」は、水素原子やメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、またはカルバモイル基である。
【0059】
【化4】

【0060】
一般式(4)において、「R5」は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO、C(CF、またはC(CHを表す。
【0061】
【化5】

【0062】
一般式(5)において、「R6」は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。nは0〜2000の整数である。「R7」はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。R7としては、さらに、下記一般式(6)で示される基から選択される基も挙げることができる。
【0063】
【化6】

【0064】
一般式(6)において、「R8」は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。「m」は0〜100の整数である。
【0065】
2個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記例示化合物1、2が挙げられる。
【0066】
【化7】

【0067】
例示化合物1は、前記一般式(2)において、R1がエチル基、R3がカルボニル基である化合物である。また、例示化合物2は、前記一般式(2)において、R1がエチル基、R3が前記一般式(5)でR6及びR7がメチル基、nが1である化合物である。
【0068】
2個のオキセタン環を有する化合物において、上記の化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(7)で示される化合物がある。一般式(7)において、「R1」は、前記一般式(1)のR1と同義である。
【0069】
【化8】

【0070】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、下記一般式(8)で示される化合物が挙げられる。
【0071】
【化9】

【0072】
一般式(8)において、「R1」は、前記一般式(1)におけるR1と同義である。「R9」としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基または下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。「j」は、3または4である。
【0073】
【化10】

【0074】
上記Aにおいて、「R10」はメチル基、エチル基またはプロピル基等の低級アルキル基である。上記Dにおいて、「p」は1〜10の整数である。
【0075】
4個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、例示化合物3が挙げられる。
【0076】
【化11】

【0077】
さらに、上記説明した以外の1〜4個のオキセタン環を有する化合物の例としては、下記一般式(9)で示される化合物が挙げられる。
【0078】
【化12】

【0079】
一般式(9)において、「R8」は前記一般式(6)のR8と同義である。「R11」はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基またはトリアルキルシリル基であり、「r」は1〜4である。「R1」は前記一般式(6)のR1と同義である。
【0080】
偽造防止用インクで使用するオキセタン化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物4、5、6がある。
【0081】
【化13】

【0082】
上述したオキセタン環を有する各化合物の製造方法は、特に限定されず、従来知られた方法に従えばよく、例えば、パティソン(D.B.Pattison,J.Am.Chem.Soc.,3455,79(1957))が開示している、ジオールからのオキセタン環合成法等がある。また、これら以外にも、分子量1000〜5000程度の高分子量を有する1〜4個のオキセタン環を有する化合物も挙げられる。これらの具体的化合物例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0083】
【化14】

【0084】
カチオン重合性化合物の偽造防止用インクに対する添加量は1〜97質量%とすることが好ましい。
【0085】
(A.1.3)光硬化型ポリビニルアルコール誘導体
光硬化型ポリビニルアルコール誘導体とは、ポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または前記親水性樹脂の誘導体、ならびにこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種であるか、またはその親水性樹脂に、光二量化型、光分解型、光重合型、光変性型、光解重合型などの変性基により変性したものである。
【0086】
光二量化型の変性基としては、ジアゾ基、シンナモイル基、スチリルピリジニウム基、スチルキノリウム基を導入したものが好ましく、光二量化後アニオン染料等の水溶性染料により染色される樹脂が好ましい。このような樹脂としては、たとえば一級アミノ基ないし4級アンモニウム基等のカチオン性基を有する樹脂、たとえば特開昭62−283339号、特開平1−198615号、特開昭60−252341号、特開昭56−67309号、特開昭60−129742号等の公報に記載された感光性樹脂(組成物)、硬化処理によりアミノ基になるアジド基のような硬化後カチオン性になる樹脂、たとえば特開昭56−67309号等の公報に記載された感光性樹脂(組成物)があげられる。
【0087】
光硬化型ポリビニルアルコール誘導体の偽造防止用インクに対する添加量は1〜97質量%とすることが好ましい。
【0088】
(A.1.4)マレイミド誘導体
マレイミド誘導体としては公知の化合物が使用できる。例えば、特開昭61−250064号、特開昭62−64813号、特開昭62−79243号、特開平6−298817号、特開平11−124403号、特開平11−292874号、特開平11−302278号、特開2000−264922号、「Polymer Materials Science and Engineering」第72巻、第470〜472頁(1995年)、「Polymer Preprints」第37巻、第348〜349頁(1996年)、「第4回フュージョンUV技術セミナー」第43〜77頁(1996年)、「PolymerLetters」第6巻、第883〜888頁(1998年)、「第9回フュージョンUV技術セミナー」第5〜20頁(2001年)等に記載された化合物が使用できる。
【0089】
マレイミド誘導体の偽造防止用インクに対する添加量は1〜97質量%とすることが好ましい。
【0090】
偽造防止用インクでは、上記カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物は単独で使用されてもよく、混合されてもよい。
【0091】
(A.2)光硬化促進剤
光硬化促進剤とは、主に光の照射によって重合性化合物の重合反応を開始させるための光重合開始剤、開始助剤、促進助剤のことを意味する。光硬化促進剤にはラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、光硬化型ポリビニルアルコール誘導体からなる重合性化合物、マレイミド誘導体からなる重合性化合物のそれぞれに適したものが適用される。
【0092】
下記では、光硬化促進剤として適用可能な(A.2.1)光重合開始剤、(A.2.2)開始助剤及び(A.2.3)促進助剤についてそれぞれ説明する。
【0093】
(A.2.1)光重合開始剤
光重合開始剤について特に制限はないが、一例としベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、チオキサトン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類。エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類、アセトフェノン類。ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等ベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、チタノセン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨ−ドニウム、スルホニウム、ホスホニウム等からなるオニウム塩、ベンゾフェノンアンモニウム塩、スルホン化物、ハロゲン化物、鉄アーレン化合物、チタノセン化合物等等があげられる。上記物質は単独で使用されてもよいし、混合して使用されてもよい。
【0094】
光重合開始剤としては、上記の化合物の他に、「UV・EB硬化技術の応用と市場」(シーエムシー出版、田畑米穂監修/ラドテック研究会編集)、「イメ−ジング用有機材料」(有機エレクトロニクス材料研究会編、ぶんしん出版、1993年の187〜192ページに記載等の文献で周知になっている化合物を適用することとしてもよい。
【0095】
光硬化反応を進めるために開始助剤、促進助剤を用いることも出来る。
【0096】
(A.2.2)開始助剤
開始助剤とは、光照射により、電子供与、電子吸引、熱の発生等により光重合開始剤にエネルギーを供与して、光重合開始剤のラジカルまたは酸の発生効率を向上させる増感色素として作用する物質であり、光重合開始剤と組み合わせて適用される。
【0097】
開始助剤としては、例えば、キサンテン、チオキサントン色素、ケトクマリン、チオキサンテン色素、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等が適用できる。
【0098】
また、開始助剤としては、上述の化合物の他、「高分子添加剤の開発技術」(シーエムシー出版、大勝靖一監修)等の文献で増感色素として作用することが周知になっている物質を適用することとしてもよい。
なお、開始助剤は光重合開始剤の一部をなす構成要素とみなすこともできる。
【0099】
(A.2.3)促進助剤
偽造防止用インクには、これらの光重合開始剤に加え、光硬化促進反応を促進する促進助剤を添加することもできる。
促進助剤の例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等があげられる。
【0100】
促進助剤は、0.1〜10質量%という添加量で添加することが好ましい。促進助剤の添加量が0.1質量%を下回る場合、IDカード1(基体2)に着弾した偽造防止用インクは速やかに硬化しないため、ドット径やドット形状の制御が困難になるという問題点が生ずる。また、添加量が10質量%を超える場合は、重合反応時に局所的に重合し斑になり、強度バラツキ及び耐薬品性が低下してしまうなど問題がおきる。
【0101】
(A.3)偽造防止用材料
偽造防止用インクでは、偽造変造防止を目的に、偽造防止用材料として、赤外線吸収剤、燐片顔料、蛍光体、金属微粒子、高屈折率材料及び低屈折率材料のうち、いずれか一の材料を少なくとも含有することが好ましい。偽造防止用インクでは更に好ましくは、前記材料でインク形成した際に第2の治具などを使用せず目視確認可能な燐片顔料、金属微粒子、高屈折率材料、低屈折率材料が特に好ましい。
【0102】
下記では、偽造防止用材料として適用可能な(B.3.1)赤外線吸収剤、(B.3.2)鱗片顔料、(B.3.3)蛍光体、(B.3.4)金属微粒子、(B.3.5)高屈折率材料及び(B.3.6)低屈折率材料についてそれぞれ説明する。
【0103】
(A.3.1)赤外線吸収剤
赤外線吸収剤としては、赤外吸収無機材料、赤外吸収顔料、赤外吸収有機材料、赤外吸収色素、赤外蛍光体のように赤外光に吸収を有する物質であれば特に制限はない。
【0104】
赤外吸収無機材料としては、前記のNd,Yb,In,Sn等の金属およびこれらの酸化物、硫化物、ハロゲン化物など化合物およびこれらの複合物がある。中でも導電性酸化物であるITOは赤外光吸収度が高い。具体的には、赤外吸収無機材料としては、特開平7-113072、特開平7-310072、特開平8-113776等に記載の化合物が挙げられる。
【0105】
赤外吸収色素としては、シアニン系色素、スクアリウム系色素、クロコニウム系色素、アズレニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、チオピリリウム系色素、ジチオール金属錯体系色素、アントラキノン系色素、インドアニリン金属錯体系色素、分子間CT色素等が挙げられる。上記赤外吸収色素としては、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−103476号、同5-201140等に記載の化合物が挙げられる。
【0106】
(A.3.2)鱗片顔料
鱗片顔料は、雲母に反射性(高虹彩反射)を与える薄膜被膜として、可視域に透明で屈折率が2.0以上ある金属酸化物あるいは金属硫化物などを被覆したもので、例えば、Sb23、Fe23、PbO、ZnSe、CdS、Bi23、TiO2、PbCl2、CeO2、Ta25、ZnS、ZnO、CdO、Nd23、Sb23、SiOおよびInO3の単層の被覆、もしくは2層に被覆することにより形成されるものである。
【0107】
鱗片顔料は、雲母と金属酸化膜が組み合わされたとき、その屈折率の差が0.4より大きいことから、入射した白色光の反射量が多く、また、同時に雲母と金属酸化膜の界面で副屈折を起こすことから、高虹彩反射性となり、変色効果をより効果的に助長する働きをする。
【0108】
このとき、雲母を被覆する金属酸化膜の膜厚を制御することで任意の色調の高虹反射性を持った鱗片顔料とすることができる膜厚は10〜10000オングストローム、望ましくは200〜5000オングストロームの範囲の膜厚が可視域に対して高虹彩反射性となるので望ましい。具体的には、鱗片顔料としては、特開平6-145553、特開平8-209024、特開平8-269358、特開平10-101957、特開平11-273932、特開平11-315219、特開2000-1628、特開2000-44834、特開平1-158077号等に記載されている顔料を用いることができる。このような鱗片顔料の市販のものとしては「Iriodin」(商品名、MERCK社製)等がある。
【0109】
「Iriodin」は天然マイカの表面を酸化チタンおよび酸化鉄等の高屈折率の金属酸化物で被覆した安定した無機鱗片顔料であり、屈折率の高い酸化チタンの層と屈折率の低いマイカおよび周りの媒体との境界で反射した光が真珠光沢をもたらすものである。この「Iriodin」には、被覆された酸化チタンの膜厚を変えることによって虹彩色の特定な色を強調させることができる。
【0110】
色変化印刷層に用いる鱗片顔料は、反射性層に用いる鱗片顔料と干渉性が異なる鱗片顔料であれば前記したもので良い。その他にゴールドタイプやシルバータイプがある。
【0111】
(A.3.3)蛍光体
蛍光体は、例えば、特開昭50−6410号、同61−65226号、同64−22987号、同64−60671号、特開平1−168911号等に記載されており、当該蛍光体としては、特に制限はないが、結晶母体であるY22S、Zn2SiO4、Ca5(PO43Cl等に代表される金属酸化物及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを賦活剤または共賦活剤として組み合わせたものが好ましい。また、特表2002-533291,2006-28354号等のようなナノ蛍光体を用いると少ない添加量でも発色効率がよい為、これを蛍光体として用いることも可能である。偽造防止用インクでは使用するに当たり特に制限はない。
【0112】
蛍光体の結晶母体の好ましい例としては、例えば、ZnS、Y22S、Y3Al512、Y2SiO5、Zn2SiO4、Y23、BaMgAl1017、BaAl1219、(Ba,Sr,Mg)O・aAl23、(Y,Gd)BO3、YO3、(Zn,Cd)S、SrGa24、SrS、GaS、SnO2、Ca10(PO46(F,Cl)2、(Ba,Sr)(Mg、Mn)Al1017、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2、(La,Ce)PO4、CeMgAl1119、GdMgB510、Sr227、Sr4Al1425等が挙げられる。
【0113】
以上の結晶母体及び賦活剤または共賦活剤は、同族の元素と一部置き換えたものでも構わないし、とくに元素組成に制限はない。
【0114】
(A.3.4)金属微粒子
金属微粒子の金属としては、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、タンタル、インジウム、コバルト、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン,タングステン、亜鉛、等を用いることができる。このような金属微粒子の分散物の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法などの物理的生成法や、コロイド法、共沈法などの、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられる。金属微粒子は、好ましくは、特開平11−76800号、同11−80647号、同11−319538号、特開2000−239853等に示されたコロイド法、特開2001−254185、同2001−53028、同2001−35255、同2000−124157、同2000−123634などに記載されたガス中蒸発法により製造されるのがよい。
【0115】
(A.3.5)高屈折率材料
高屈折率材料には、特開平2000-266908記載の金属アルコキシド、具体的にはチタンアルコキシド、特開2004-50810等記載のチタンポリマー、金属酸化物微粒子などがある。高屈折率材料としては、特に制限はないが、屈折率が1.60以上の金属酸化物微粒子、チタンアルコキシドを用いることが好ましい。このような金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タリウム、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム等が挙げられる。これらのなかでも、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム等の微粒子が好ましい。さらにはこれら微粒子にドープをしてもよく、具体的にはアンチモン、スズ、フッ素等の異種元素でドープしてもよい。
【0116】
(A.3.6)低屈折率材料
低屈折率材料としては、フッ素系化合物、シリカ系化合物が挙げられる。低屈折率材料としては、特に制限はないが、好ましくは1.4以下の材料であることが好ましい。具体的には、低屈折率材料としては、特開2001-233611記載のシリカ微粒子、特開2000-266908記載のフッ素含有樹脂、シリケートオリゴマーから形成される化合物、及びSiO2ゾルと反応性有機ケイ素化合物から形成される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物などが用いられる。フッ素含有樹脂としては、フッ素含有不飽和エチレン性単量体成分を主として含有する重合物及びフッ素含有エポキシ化合物を挙げることが出来、更にはフッ化マグネシウム等を挙げることができる。
【0117】
前記記載の赤外線吸収剤、燐片顔料、蛍光体、金属微粒子、高屈折率材料、低屈折率材料は、偽造防止用インクの全固形分中に、5〜50重量%の比率で添加するのが好ましい。添加は少なくともひとつの材料を含有すればよく、場合により2種以上混合しても良い。添加量が5重量%未満である場合、判別することが出来ず、偽造防止機能を消失してしまい問題がある。50重量%より大であると偽造防止機能は向上するものの、インク粘度が上昇しインクジェットインクとして機能しなくなり問題となる。
【0118】
偽造防止用インクには、必要に応じて高分子分散剤、粘度調整剤、重合禁止剤、酸化防止剤、界面活性剤、レベリング添加剤、水、有機溶剤などを添加してもよい。その添加量は、偽造防止用インク中に、0.000〜10重量%とすることが好ましい。
【0119】
また必要に応じて、偽造防止用インクには、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、エラストマーを添加することが出来る。その添加量は、偽造防止用インク中に、0.1〜30重量%とすることが好ましい。
【0120】
偽造防止用インク中に偽造防止用材料を分散させるために、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
【0121】
また、偽造防止用インクには、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。偽造防止用インクは、特殊な材料のため高分子分散剤を用いることが好ましい。
【0122】
偽造防止用インクでは、偽造防止用材料を用いる為、判別できることが重要である。判別を決定つける因子は、作製された偽造防止用インク中に含まれる偽造造防止用材料の添加量と粒径とがポイントになる。
【0123】
発色効率等が特異的なナノ粒子使用の場合を除き、分散系の偽造防止用インクとなる、鱗片状粉末、蛍光体、金属微粒子を用いた場合、最大粒径は0.5〜30μmすることが好ましく、好ましくは0.5〜20μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズル(吐出口)の詰まりを抑制することができる。平均粒径が、30μmより大きい場合は、ヘッド目詰まり等の問題がおきる。0.5μm未満では通常の材料の場合、目視判別性が低下し偽造防止効果が劣化する。
【0124】
偽造防止用インクは30〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましい。
【0125】
偽造防止用インクは、粘度が30℃において1〜1000mPa・sであることが好ましく、3〜500mPa・sであることが更に好ましい。粘度が1000mPa・sより大きいと、偽造防止用インクの液の供給に問題が生じる。また、粘度が低いとムラなどが発生し偽造防止機能が低下する。
【0126】
また、所望の屈折率を得る為に、前記高屈折率材料を使用せず、前記記載の光硬化可能化合物を高屈折率層に用い芳香族系、脂環系、ハロゲン系、チタン含有系の光硬化可能材料を用い屈折率を制御してもよい。
【0127】
低屈折率材料においても、前記低屈折率材料を使用せず、前記記載の光硬化可能化合物を低屈折率層に用いシリコーン系フッ素系の光硬化可能材料を用い屈折率を制御してもよい。
【0128】
偽造防止用インクでは、その表面強度が(JIS K 5600に基づく引っ掻き硬度(0.8mmφサファイア針スクラッチ強度))120g以上であることが必要である。120g以下である場合、第三者に擦り取られたりし容易に変造されてしまい問題となる。
【0129】
当該表面強度の計測では、始めに偽造防止用インクによる層(層厚20μm)を188μ-ホワイトPET(U298W)上に形成しサンプルを作製し、その後、耐摩耗性試験機(HEIDON−18)を用い、0.1mmφのサファイア針で0〜300gで荷重を変化させて、サンプル表面を摺動させ、偽造防止用画像等に傷が付き始めるときの荷重を測定する。その荷重が大きいほど表面強度が良好である。
【0130】
なお、偽造防止用インクには、下記画像記録用インクの項目で説明する着色剤が含有されてもよい。
【0131】
次に、「画像記録用インク」について説明する
【0132】
画像記録用インクは、(B.1)光硬化可能化合物や(B.2)光硬化促進剤、(B.3)着色剤等を含有するものである。
【0133】
(B.1)(B.2)光硬化可能化合物,光硬化促進剤
光硬化可能化合物及び光硬化促進剤は、上記偽造防止用インクの項目で説明したものと同様のものである。
【0134】
(B.3)着色剤
画像記録用インクでは、前記光硬化可能化合物、光硬化促進剤に加え着色剤を用いることが出来る。
着色剤としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジオキサンジン系、ジケトピロロピロール系等の各種の有彩色有機顔料、カーボンブラック、チタンホワイト、シリカ、マイカ、酸化亜鉛等の無機顔料等が挙げられる。
【0135】
具体的には、着色剤としては、光硬化可能化合物の重合性化合物の主成分に溶解または分散できる色材が適用可能であり、耐光性の点で顔料が好ましい。画像記録用インクに添加する色材の添加量は、分散後の発色性等によって決定するが、0.1〜15質量%とすることが好ましい。色材の添加量を0.1質量%未満とした場合、色材が十分に発色せず、IDカード1(基体2)に記録された通常画像3の色再現性を低下させるという問題が生ずる。また、色材を15質量%を超えて添加した場合には、光の照射によってインクドットが速やかに硬化しなかったり、通常画像3の画質が低下するという問題が生ずる。
【0136】
次に、「表面保護用インク」について説明する。
【0137】
表面保護用インクは、光硬化性樹脂で構成した透過率90%以上のインクである。「透過率90%以上の表面保護用インク」とは、厚さ25μmの透明PET上に膜厚20μmの表面保護用インク層を形成してその層を500mJの光で硬化させた場合において、日立製作所製Spectrophotometer U-3200を用いて測定した波長400nmの光に対する透過率が90%以上であるものをいう。
【0138】
表面保護用インクとしては、前記記載の光硬化可能化合物及び光硬化促進剤からなる光硬化性樹脂を用いることがより好ましい。表面保護層5を表面保護用インクで構成する場合、インクジェット方式で記録および形成するため工程数が少なくてプリンター価格が安くすみ便利である。
【0139】
次に、「IDカード1の製造方法」について説明する。
【0140】
供給ローラ21、プラテン12及び搬出ローラ51,52が作動した状態において、基体2が1枚ずつ集積部20からプラテン12に供給され、当該基体2はプラテン12に支持されながら画像記録部13、表面保護機構30及び光照射機構40の下方をこの順に搬送方向Aに沿って搬送され、搬出ローラ51,52からスタッカー53に搬出される。
【0141】
この状態において、基体2が画像記録部13の下方を通過するときは、各記録ヘッド13〜17が画像記録用インクを吐出して当該基体2に通常画像3を記録し(第1の記録工程)、その後第2の記録ヘッド18が偽造防止用インクを吐出して当該基体2に偽造防止用画像4を記録する(第2の記録工程)。
【0142】
基体2が表面保護機構30の下方を通過するときは、表面保護機構30が表面保護用インクを吐出して基体2の表面に表面保護層5を形成する(表面保護工程)。
【0143】
基体2が光照射機構40の下方を通過するときは、光源41が点灯して基体2に対し光を照射し、基体2上の通常画像3,偽造防止用画像4,表面保護層5を硬化させる(光照射工程)。
以上の記録工程から表面保護工程を経て光照射工程までの各処理を実行することでIDカード1を製造することができる。
【0144】
以上の実施形態では、特殊な偽造防止用インクで偽造防止用画像4を記録するため、IDカード1の偽造を防止できかつ耐久性を向上させることができる。更に、当該偽造防止用インクによる偽造防止用画像4の記録にあたっては、インクジェット方式で記録するため、オンデマンドでIDカード1ごとに異なる固有の偽造防止用画像4を記録することができるとともに、安価な製造費用でIDカード1を製造することができる。以上から、偽造を防止可能でかつ安価な製造費用で耐久性に優れたIDカード1を製造することができる。
【0145】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計変更をおこなってもよい。
【0146】
一の改良・設計変更事項として、図4に示す通り、画像記録部13中に偽造防止用インクを吐出する第2の記録ヘッド19を追加して設けてもよい。この場合、第2の記録ヘッド18と第2の記録ヘッド19とでは、互いに組成が異なる偽造防止用インクを吐出するようにしてもよいし、互いに組成が同じである偽造防止用インクを吐出するようにしてもよい。
【0147】
他の改良・設計変更事項として、IDカード1の製造装置100中から表面保護機構30をなくしてIDカード1に表面保護層5を形成しないようにしてもよい。
【実施例】
【0148】
(1)偽造防止用インク1〜10の作製
下記表1〜3に記載した光硬化可能化合物と偽造防止用材料とを同表中の比率で混合し、その混合物を、ジルコニアビーズを用いて4時間サンドグラインダーで分散し、その後更に、超音波分散機で10分間分散し、8種類の偽造防止用材料分散物を得た。
【0149】
次に、各偽造防止用材料分散物に対し、下記表1〜3に記載の光硬化促進剤を同表中の比率で混合して攪拌し、その後、当該各偽造防止用材料分散物を1μmのメンブレンフィルターでろ過し、50℃に加熱しながら減圧によって脱水し、10種類の「偽造防止用インク1〜10」を得た。
【0150】
【表1】

【0151】
【表2】

【0152】
【表3】

【0153】
(2)試料1〜10の作製
上記偽造防止用インク1〜10を用いた図2の製造装置100で「試料1〜10(760μm厚のICカード)」を作製した(通常画像や表面保護層を形成していない。)。
【0154】
なお、上記製造装置100の使用にあたって、第2の記録ヘッド18には、最小液滴サイズ7pl、スーパードロップ方式(1滴/ドロップ、2滴/ドロップ)にて7pl、14plのマルチサイズドロップが得られるピエゾタイプのインクジェットノズル(ノズル径23μm)を適用し、インク及びヘッドが50℃になるよう温度制御しながら駆動周波数10kHzでベタの偽造防止用画像を記録した。光源41として、120W/cmのメタルハライドランプ(日本電池社製MAL400NL 3kW電源)を適用し、当該光源41を瞬間照度が24W/cm2になるように設置した。
【0155】
(3)試料1〜10の評価
(3.1)偽造変造性
各試料1〜10について偽造を容易におこなえるか否かを10人の人物(カード材料設計者を除く。)に判断してもらい、試料1〜10ごとに偽造変造性を評価した。当該偽造変造性を下記式に従い数値化してそのその算出結果を下記表4に示した。
偽造変造性(%)=(偽造が容易と答えた人数)/(回答者人数)
【0156】
(3.2)耐水性
各試料1〜10を水道水含有カップに投入して23℃で3日間浸漬させ続け、画像劣化状況で耐水性を評価した。その評価結果を下記表4に示す。
なお、表4中、「○」,「△」,「×」の各基準は下記に従っている。
○ … 浸漬前と比較して変化がない
△ … 僅かに差異があるが、機能が低下していない
× … 差異があり、ベタ画像及び情報の機能が消失している
【0157】
(3.3)耐薬品性
各試料1〜10をトルエン溶液含有カップに投入して23℃で1時間浸漬させ続け、画像劣化状況で耐薬品性を評価した。その評価結果を下記表4に示す。
なお、表4中、「○」,「△」,「×」の各基準は下記に従っている。
○ … 浸漬前と比較して変化がない
△ … 僅かに差異があるが、機能が低下していない
× … 差異があり、ベタ画像及び情報の機能が消失している
【0158】
(3.4)スクラッチ強度(耐摩耗性)
耐摩耗性試験機(HEIDON-18)を用い、0.1mmφのサファイア針で0〜300gの範囲内で荷重を変化させながら、各試料1〜10の表面を摺動させ、ベタ画像に傷が付き始める時の荷重を試料1〜10ごとに測定した。その測定結果を下記表4に示す。
なお、当該測定結果においては荷重が大きいほど良好であることを示している。
【0159】
【表4】

【0160】
(4)まとめ
表4に示す通り、試料1〜8と比較の試料9,10とを対比すると、試料1〜8は試料9,10と比較して偽造変造性,耐水性,耐薬品性,スクラッチ強度の全ての面で優れている。以上から、上記偽造防止用インクは、情報記録媒体の偽造防止と耐久性の向上とに有用であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】IDカード1の概略構成を示す斜視図である。
【図2】IDカード1の製造装置100の概略構成を示す側面図である。
【図3】IDカード1の製造方法の一部工程を説明するための図面である。
【図4】IDカード1の製造装置100の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0162】
1 IDカード(情報記録媒体)
2 基体
3 通常画像
4 偽造防止用画像
5 表面保護層
100 IDカードの製造装置
12 プラテン
13 画像記録部
14〜17 記録ヘッド
18 第2の記録ヘッド(偽造防止用記録ヘッド)
20 集積部
21 供給ローラ
30 表面保護機構
40 光照射機構
41 光源
42 リフレクタ
51,52 搬出ローラ
53 スタッカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式に適用可能な偽造防止用インクであって、
光硬化可能化合物、光硬化促進剤及び偽造防止用材料を含有することを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項2】
請求項1に記載の偽造防止用インクにおいて、
前記偽造防止用材料が赤外線吸収剤、鱗片顔料、蛍光体、金属微粒子、高屈折率材料又は低屈折率材料であり、当該偽造防止用インクの全固形分中に5〜50重量%含有されていることを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項3】
請求項2に記載の偽造防止用インクにおいて、
前記高屈折率材料の屈折率が1.6以上であることを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項4】
請求項2に記載の偽造防止用インクにおいて、
前記低屈折率材料の屈折率が1.4以下であることを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の偽造防止用インクにおいて、
光硬化した状態でJIS K 5600に準拠する引っ掻き強度(0.8mmφサファイア針スクラッチ強度)が120g以上であることを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の偽造防止用インクにおいて、
偽造防止用画像の記録に用いられることを特徴とする偽造防止用インク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−291239(P2007−291239A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120836(P2006−120836)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】