傾斜ナノボイド含有物品の製法
傾斜ナノボイド含有物品、傾斜ナノボイド含有コーティング、及び傾斜低屈折率コーティングの製造方法及び装置が記載される。方法は、溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を提供することと、コーティングの第1の領域に近接した第1の環境、及び前記コーティングの隣接領域に近接した異なる第2の環境を提供することと、を含む。方法は、重合性物質を少なくとも部分的に重合して、不溶性ポリマーマトリックスと第2の溶液とを含む組成物を形成することを更に含む。不溶性ポリマーマトリックスは、第2の溶液で充填された複数のナノボイドを含み、第2の溶液の溶媒の大部分は除去される。コーティングの第1の領域に近接する複数のナノボイドの第1の体積分率は、コーティングの隣接に近接する前記複数のナノボイドの第2の体積分率よりも小さい。方法のための装置も記載され、装置は、ウェブラインと、コーティングセクションと、部分重合セクションと、溶媒除去セクションと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、次に列挙する2009年4月15日に出願された米国特許出願に関連し、当該出願は参照により援用される:発明の名称「Optical Construction and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65354US002);発明の名称「Retroreflecting Optical Construction」(代理人整理番号65355US002);発明の名称「Optical Film for Preventing Optical Coupling」(代理人整理番号65356US002);発明の名称「Backlight and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65357US002);発明の名称「Process and Apparatus for Coating with Reduced Defects」(代理人整理番号65185US002);及び発明の名称「Process and Apparatus for a Nanovoided Article」(代理人整理番号65046US002)。
【0002】
本出願はまた、次に列挙する本出願と同日に出願された米国特許出願に関連し、当該出願は参照により援用される:発明の名称「Gradient Low Index Article and Method」(代理人整理番号65716US002);発明の名称「Immersed Reflective Polarizer with High Off−Axis Reflectivity」(代理人整理番号65809US002);発明の名称「Immersed Reflective Polarizer with Angular Confinement in Selected Planes of Incidence」(代理人整理番号65900US002);及び発明の名称「Light Source and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65782US002)。
【背景技術】
【0003】
ナノメートルサイズの細孔又はボイド構造を有する物品は、一部の用途では、ナノボイド含有組成物(nanovoided composition)によってもたらされる光学的、物理的、又は機械的特性に基づき有用であってよい。例えば、ナノボイド含有物品(nanovoided article)は、細孔又はボイドを少なくとも部分的に取り囲むポリマーの固体ネットワーク又はマトリックスを含む。細孔又はボイドは、空気などの気体で充填される場合が多い。ナノボイド含有物品の中の細孔又はボイドの寸法は、一般に、約1ナノメートル〜約1000ナノメートルまで様々であってよい平均有効径を有しているとして記述することができる。国際純正・応用化学連合(IUPAC:The International Union of Pure and Applied Chemistry)は、ナノ細孔物質の3つのサイズカテゴリ、即ち、ボイドが2nm未満の微細孔、2nm〜50nmのメソ細孔、及びボイドが50nmを超えるマクロ細孔を規定している。異なるサイズカテゴリのそれぞれは、ナノボイド含有物品に固有の特性をもたらすことができる。
【0004】
重合誘起相分離(PIPS)、熱誘起相分離(TIPS)、溶媒誘起相分離(SIPS)、乳化重合、及び起泡剤/発泡剤を用いる重合といったいくつかの技術を用いて、多孔性又はボイド含有物品が製造されてきた。多くの場合、こうした方法で製造された多孔性又はボイド含有物品は、上記構造を形成するのに使用した界面活性剤、油、又は化学残留物などの物質を除去するために、洗浄工程などの追加処理工程を必要とする。洗浄工程は、形成される細孔又はボイドの寸法範囲及び均一性を制限し得る。こうした技術で使用することができる物質の種類もまた限定される。洗浄工程を必要としない、ナノボイド含有物品を作製するための迅速で信頼性のある技術が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本開示は、傾斜ナノボイド含有(gradient nanovoided)コーティングの製造方法を提供し、方法は、溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、コーティングの第1の領域に近接した第1の環境、及びコーティングの隣接領域に近接した異なる第2の環境を提供することと、を含む。傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法は、重合性物質を少なくとも部分的に重合して、複数のナノボイド及び第2の溶液と共連続性(bicontinuous)である不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、第2の溶液から溶媒の大部分を除去することと、を更に含む。コーティングの第1の領域に近接する複数のナノボイドの第1の体積分率は、コーティングの隣接領域に近接する複数のナノボイドの第2の体積分率よりも小さい。
【0006】
別の態様において、本開示は、傾斜低屈折率コーティングの製造方法を提供し、方法は、基材の表面上に光開始剤をコーティングすることと、分散液を光開始剤の上にコーティングすることと、UV放射線硬化性物質を少なくとも部分的に重合するために分散液をUV放射線で照射することと、重合性物質を少なくとも部分的に重合した後、溶媒の大部分を分散液から除去することと、を含む。分散液は、紫外線(UV)放射線硬化性物質と、溶媒と、複数のナノ粒子と、を含む。更に、UV放射線硬化性物質を少なくとも部分的に硬化するために分散液をUV放射線で照射することにより、複数のナノ粒子を結合し、複数のナノボイドを含む不溶性ポリマーマトリックスが形成される。複数のナノボイドは、重合性物質が枯渇している分散液とナノ粒子で充填される。更に、基材の表面に近接する複数のナノボイドの第1の体積分率は、不溶性ポリマーマトリックスの反対面に近接する複数のナノボイドの第2の体積分率よりも大きい。
【0007】
更に別の態様では、本開示は、傾斜低屈折率コーティングの製造方法を提供し、方法は、基材の表面に分散液をコーティングすることと、少なくとも100ppm(part per million)の酸素雰囲気を分散液に隣接して提供することと、UV放射線硬化性物質を少なくとも部分的に重合するために分散液をUV放射線で照射することと、重合性物質を少なくとも部分的に重合した後、溶媒の大部分を分散液から除去することと、を含む。分散液は、紫外線(UV)放射線硬化性物質と、光開始剤と、溶媒と、複数のナノ粒子と、を含む。更に、UV放射線硬化性物質を少なくとも部分的に硬化するために分散液をUV放射線で照射することにより、複数のナノ粒子が結合しており、重合性物質が枯渇している分散液とナノ粒子とで充填されている複数のナノボイドを含む、不溶性ポリマーマトリックスが形成される。また更に、基材の表面に近接する複数のナノボイドの第1の体積分率は、不溶性ポリマーマトリックスの反対面に近接する複数のナノボイドの第2の体積分率よりも大きい。
【0008】
更に別の態様では、本開示は、傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法を提供し、方法は、溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、を含む。傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法は、第2の溶液から溶媒の大部分を除去して、自由表面を有するナノボイド含有コーティングを形成することと、第3の溶液を自由表面にコーティングして、ナノボイド含有コーティングを少なくとも部分的に充填することと、第3の溶液を凝固させることと、を更に含む。更に、コーティングの自由表面に近接する複数のナノボイドの第1の体積分率は、コーティングの反対面に近接する複数のナノボイドの第2の体積分率よりも小さい。
【0009】
更に別の態様では、本開示は、傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法を提供し、方法は、溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを含む第1の層を形成することと、を含む。傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法は、第3の溶液を第1の層にコーティングして第2の層を形成することと、第3の溶液を凝固させることと、第2及び第3の溶液から溶媒の大部分を除去して、傾斜ナノボイド含有コーティングを形成することと、を含む。更に、第1の層内の複数のナノボイドの第1の体積分率は、第2の層内の複数のナノボイドの第2の体積分率と異なる。
【0010】
上記の「課題を解決するための手段」は、開示された各実施形態、又は本開示の全ての実施を記載することを意図しない。以下の図及び発明を実施するための形態は、説明的な実施形態をより具体的に例証する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書を通して、添付の図面を参照し、同じ参照番号は同じ要素を示す。
【図1A】傾斜ナノボイド含有物品の製法の概略図。
【図1B】傾斜ナノボイド含有物品の製法の概略図。
【図2A】傾斜ナノボイド含有物品の製法の概略図。
【図2B】傾斜ナノボイド含有物品の製法の概略図。
【図3A】傾斜ナノボイド含有コーティングの製法の概略図。
【図3B】図3Aの重合セクションの概略図。
【図3C】図3Bの重合セクションの概略図。
【図4A】傾斜光学フィルム(gradient optical film)の断面顕微鏡写真。
【図4B】図4Aの顕微鏡写真よりも高倍率の顕微鏡写真。
【図5A】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図5B】図5Aの顕微鏡写真よりも高倍率の顕微鏡写真。
【図6A】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図6B】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図6C】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図7A】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図7B】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図7C】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【0012】
図面は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図中で用いられる類似の数字は、類似の構成要素を示す。しかし、所与の図中の構成要素を意味する数字の使用は、同一数字でラベル付けされた別の図中の構成要素を制約するものではないことは理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
独自の傾斜形態を有するナノボイド含有物品を形成するための装置及びいくつかの独自の製法が記載される。一般に、この製法は、溶液中での物質の重合を目的とし、溶液中には溶媒が存在する。物質は、熱重合され得る、又は化学線を用いて重合され得る。溶媒中に放射線硬化性物質を含む溶液は、傾斜ナノボイド含有物品の製造に特に適している可能性がある。溶媒は複数の溶媒の混合物であることができ、特に適している溶媒は、重合性物質と反応しないものである。重合の間、形成されたポリマーの溶媒溶解性は低下して溶液から分離し、不溶性ポリマーマトリックスと、相分離している溶媒リッチなネットワークと、を含む組成物が生じる。
【0014】
ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックスと相分離している溶媒リッチなネットワークとの体積比は、組成物の厚さ方向全体にわたって異なる。溶媒は、傾斜ナノボイド含有物品をもたらす細孔及びボイドを残してその後除去される。溶液は基材の上にコーティングされて、基材上に傾斜ナノボイド含有コーティングを提供することができる。いくつかの実施形態では、基材はその後、傾斜ナノボイド含有物品を残して除去することができる。
【0015】
ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックスと相分離している溶媒リッチなネットワークとの体積比は、組成物の厚さ方向全体にわたって本質的に一定のままであってよい。場合によっては、例えば、複数の粒子などの第2の不溶性成分が厚さ方向全体にわたって変化し、それによって、孔隙率を変化させる(例えば、組成物の一部を「稠密化する」)ことができる。続いて、傾斜ナノボイド含有物品をもたらす細孔及びボイドを残した状態で溶媒を除去する。溶液を基材の上にコーティングして、基材上に傾斜ナノボイド含有コーティングを設けることができる。いくつかの実施形態では、基材はその後、傾斜ナノボイド含有物品を残して除去することができる。
【0016】
一般に、本明細書で用いられるとき、「細孔」及び「ボイド」は、ポリマーマトリックスによって部分的に又は全体的に取り囲むことができる、ナノボイド含有物品内のポリマー非含有領域を指す。「ボイド」は、たとえいかに量が少なくてもあらゆるポリマー非含有領域を指すより広い用語であり、ナノボイド含有物品の寸法によってのみ限定される。「細孔」は「ボイド」の部分集合であり、一般に、ポリマーマトリックスを実質的に通って広がるポリマー非含有領域を指す。「細孔」はナノボイド含有物品全体に広範囲に及ぶことができ、いくつかの実施形態では、他の箇所で記載されるように、物品の一方の表面を他方につなぐ。
【0017】
細孔又はボイドの有効径は、細孔又はボイドと同じ断面積を有する円の直径と関連付けることができ、この有効径を物品の寸法にわたって平均化して、平均有効径をもたらすことができる。ナノボイド含有物品は、細孔又はボイドが物品を取り囲んでいる環境と連通する「開放セル」構造体であってよい。あるいは、ナノボイド含有物品は、細孔又はボイドが固体ネットワーク又はマトリックスに取り囲まれて、物品を取り囲んでいる環境から細孔又はボイドを封止する「閉鎖セル」構造体であってよい。多くの場合、ナノボイド含有物品は、開放セル構造体と閉鎖セル構造体の組み合わせを含む。
【0018】
ナノボイド含有物品の中の細孔及びボイドの平均有効径の寸法は、一般に、約1000nm未満、100nm未満、又は更に約10nm未満の範囲であってよい。使用目的によっては、特に光との相互作用を含む用途では、細孔及びボイドの平均有効径の寸法は、使用する光の波長と同程度である。いくつかの例示的なナノボイド含有物品及びナノボイド含有物品の用途は、例えば、全て2009年4月15日に出願された、同時係属中の、代理人整理番号65062US002、発明の名称「OPTICAL FILM」;代理人整理番号65357US002、発明の名称「BACKLIGHT AND DISPLAY SYSTEM INCORPORATING SAME」;代理人整理番号65356US002、発明の名称「OPTICAL FILM FOR PREVENTING OPTICAL COUPLING」;代理人整理番号65354US002、発明の名称「OPTICAL CONSTRUCTION AND DISPLAY SYSTEM INCORPORATING SAME」;及び代理人整理番号65355US002、発明の名称「RETROREFLECTING OPTICAL CONSTRUCTION」に見出すことができる。ナノボイド含有物品の用途は、ポリマーマトリックスの機械的特性に依存し得る。ある特定の実施形態では、ポリマーマトリックスの弾性率及び強度は、溶媒が除去されたときにボイドスペースを維持するのに十分である。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスの弾性率及び強度は、溶媒が除去された後にボイドスペースを維持するのに十分でなく、その結果ナノボイドのない「崩壊性(collapsed)」コーティングがもたらされる。いくつかのそのような実施形態では、均質組成物はポリマーゲルを含む。ポリマーゲルは、流体(この場合は溶媒)によって全体積にわたって広がるが、溶媒の除去後は自己支持型でないポリマーネットワークである。このような崩壊性コーティングは、例えば、同時係属中の代理人整理番号65185US002、発明の名称「PROCESS AND APPARATUS FOR COATING WITH REDUCED DEFECTS」(2009年4月15日出願)に記載のように、コーティング欠陥が低減した均質なコーティングの製法の改良を提供する。
【0020】
本発明の処理は、物品全体にわたる細孔のサイズ及び分布の制御を可能にする。ある特定の実施形態では、例えば、同時係属中の代理人整理番号65046、発明の名称「PROCESS AND APPARATUS FOR A NANOVOIDED ARTICLE」(2009年4月15日出願)に記載のように、ナノボイド含有物品の中の細孔及びボイドは、物品全体にわたって均一に分散することができる。
【0021】
本明細書に記載の特定の実施形態では、細孔及びボイドは、例えば、傾斜ナノボイド含有物品の中に不均一に分散することができ、又は傾斜ナノボイド含有物品全体にわたるそれらのサイズ、形状、及び分布は様々であってよい。場合によっては、細孔及びボイドの少なくとも一部は物品全体にわたって連続的である。即ち、各細孔及びボイドを物品の両面につなげる、連続的であるが潜在的に蛇行した経路が存在する。連続的な経路(しばしば共連続相に起因する)は、ポリマーマトリックスの重合の間に溶媒が閉鎖セル構造体に閉じ込められる場合よりも、物品から溶媒を容易に除去するのを可能にする。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、一方の表面上ではほぼ全てのボイドが閉鎖し、この表面が溶媒に対して本質的に不浸透性になるように、ボイドの体積分率は物品全体にわたって変化する。本開示の技術によって調製される傾斜ナノボイド含有物品は、例えば、同時係属中の代理人整理番号65716US002、発明の名称「GRADIENT LOW INDEX ARTICLE AND METHOD」(本願と同日に出願)に記載のもののような傾斜光学フィルムとして使用され得る。
【0022】
ある特定の実施形態では、重合装置は、最近開発された紫外線発光ダイオード(UV LED)システムを使用する。UV LEDシステムは、寸法が小さく、フリーラジカル重合で使用されないほんの少しの赤外線又は他の波長の光を放射することができる。使用不可能な波長の放射線が減少する結果、コーティングの加熱を減少させることができる。加えて、こうした特性は、特にコーティング溶媒が存在する環境にUV硬化性組成物を暴露するのをより安全でより現実的にすることができる。UV LEDシステムは、例えば365nm、385nm、395nm、405nm等といったいくつかの所望のピーク波長で作動するように構成され得る。その他の放射線源、例えば、UVレーザ、UVランプ、可視光ランプ、閃光灯などを使用してもよく、例えば、電子線(EB)源等などの他の高エネルギー粒子発生装置を使用することができる。
【0023】
重合は迅速に起こり得、重合装置は、コーティングステーションと従来の溶媒除去ステーションとの間に設置され得る。重合装置は、硬化の開始時にコーティングされたフィルム内に溶媒のかなりの部分が尚も存在する限り、従来の乾燥装置内、又は一連の従来の乾燥装置の間に設置することも可能である。
【0024】
処理パラメータ、例えば、重合の開始時のウェブ速度、コーティング厚さ、化学線(例えば、UV LED)スペクトル及びピーク波長、強度、線量、温度、並びにコーティングの組成などは、得られる傾斜ナノボイド含有物品に影響を与え得る。得られる傾斜ナノボイド含有物品に影響を与え得る他の処理パラメータとしては、重合の間のコーティングの組成、環境制御、例えば、気相組成、気流場、及びガス流速などが挙げられる。気相組成は、溶媒組成及び濃度、並びに特に重合領域近くの酸素濃度を含み得る。コーティングされたフィルムの環境を、コーティング塗布から重合方法に至るまで制御することが望ましく、この制御は、制御されたガスを供給及び除去しながら、温度制御付きの囲いを使用して達成され得る。場合によっては、硬化(重合)及び乾燥は同時に起こり得る。乾燥技術は、薄膜形態及び均一性にも影響を与え得る。
【0025】
ポリマーマトリックスは、溶媒の除去後にボイドスペースを維持するのに十分な弾性率及び機械的一体性を有する必要がある。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、溶媒除去中及び除去後の変形を阻止する、三次元ポリマーマトリックスなどの架橋マトリックスである。ナノボイド含有物品の形成及び強度に影響を及ぼすために、粒子状充填剤(例えば、ナノ粒子などの粒子)をポリマーマトリックスに添加することができる。場合によっては、ナノ粒子の添加は、重合材料の有効弾性率を増加させること、細孔/ボイドの平均有効径及び物品全体にわたる分布を増加又は減少させること、ゲル点における重合性物質の重合率を低下させること、硬化前及び硬化中の溶液の粘度を増加させること、マトリックスの傾斜した密度の増加に影響を与えることができ、又はこれらと他の影響の組み合わせであってよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、傾斜ナノボイド含有コーティングを形成する方法は、一般に、1)溶液をコーティング装置に供給すること、2)多くのコーティング技術のうちの1つによって基材にコーティング溶液を塗布すること、3)コーティングされた基材を重合装置に移送すること(環境は、所望の組成物で薄い薄膜コーティングを実現させるように制御され得る)、4)溶媒がコーティング中に存在している間に少なくとも部分的に重合すること(重合は周囲環境下又は制御環境下で行われ得る)、5)重合環境を制御するために、重合装置の上流、下流、又はその中に制御されたガスを任意に供給すること、6)重合されたコーティングを乾燥装置に移送すること(もし自然乾燥を防止するために装置が適所に設置されていない場合には、乾燥はこの移送工程中に自然に起こり得る)、7)重合コーティングを乾燥すること、及び8)例えば、追加の熱硬化、可視光線硬化、UV硬化、又はEB硬化によって、乾燥した重合コーティングを任意に後処理すること、とを含む。
【0027】
ある特定の実施形態では、傾斜ナノボイド含有物品は、物品の厚さ方向全体にわたる異なる領域の硬化環境を制御することによって調製することができる。硬化環境は、例えば、光開始剤の濃度、重合禁止剤の濃度、光開始剤の種類、光開始光を吸収することができる化合物の種類及び濃度、及び同類のもの、又はこれらの組み合わせなどの硬化パラメータを変化させることによって制御可能である。
【0028】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、重合開始剤の濃度を用いて、傾斜ナノボイド含有物品の異なる領域の硬化環境を制御することができる。例えば、重合開始剤の濃度は、大部分(bulk)又は基材の反対側の自由表面上よりも、基材に隣接して低く又は高くあってよい。場合によっては、基材上に重合性溶液をコーティングする前に基材の表面上に反応開始剤をコーティングすることによって、重合開始剤の濃度を基材に隣接して増加させることができる。場合によっては、かかるコーティングされた重合開始剤の重合溶液中への拡散速度は、可溶性ポリマーを上塗りすることによって制御され得る。場合によっては、重合開始剤の濃度は、自由表面上に反応開始剤をコーティングすることによって、基材の反対側の自由表面に隣接して増加させることができる。場合によっては、異なる濃度の光開始剤を有する複数のコーティングを、例えば、多層コーティングの分野で既知のスライドコーティング、多層スロットコーティング、カーテンコーティング等を用いて、基材の上に順次又は同時にコーティングすることができる。
【0029】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、重合禁止剤の濃度を用いて、傾斜ナノボイド含有物品の異なる領域内の硬化環境を制御することができる。例えば、重合禁止剤の濃度は、大部分又は基材の反対側の自由表面上よりも、基材に隣接して低く又は高くあってよい。重合禁止剤は周知であり、例えば、酸素、モノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)などのヒドロキノン、フェノチアジン、若しくは2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−オキシル(TEMPO)などのピペリジン、又は同種のもの、あるいはこれらの組み合わせ又は誘導体が挙げられる。場合によっては、酸素は、使用することができるフリーラジカル重合の周知の抑制剤であり、酸素濃度は、コーティングされた物品の自由表面上でより高くあってよい。他の箇所で記載されるように、例えば、ナノボイドの体積分率を低減することにより、組成物を変化させることでナノボイド濃度を変化させるように、自由表面に隣接した重合を抑制することができる。
【0030】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、吸光度ベースの技法を用いて、コーティング全体の硬化環境を変化させることができる。z軸傾斜コーティングを形成するための吸光度ベースの技法は、コーティングを介するベールの吸光度の法則に依存し得る。ベールの法則は、試料の吸光度は、モル吸光係数、経路長、及び試料中の物質濃度に比例すると述べている。
【0031】
場合によっては、例えば、光開始光は、一連の層(strata)であると考えることができるコーティングの基材側から入射することができる。第1の層は、光の最大強度を遮り、ゲルコーティングの中の全ての種のモル吸光係数及び濃度に基づいてこの光の一部を吸収し、低強度の光を次の層へと通過させ、以下同様である。コーティングが十分に厚い場合、又は物質のモル吸光係数が十分に高い場合、実質的な光の強度プロファイルをコーティングの厚さ方向に作成して、傾斜ナノボイド含有コーティングを得ることができる。
【0032】
ある特定の実施形態では、コーティング中の成分のうちの1つは、光を多く吸収する物質であってもよく、又は光を多く吸収する物質で置き換えることができる。場合によっては、溶媒、ナノ粒子、又はポリマーは、光開始光を吸収する物質を使用することができる。場合によっては、硬化波長を物質が多く吸収する波長に変更することができる。場合によっては、光開始光を吸収する物質をコーティングに添加することができるが、その場合この物質は、例えば、熱分解、昇華、又は溶媒抽出などの二次工程で除去することができる。
【0033】
場合によっては、例えば、ナノボイド含有物品を作製するための溶媒は、典型的には、イソプロピルアルコール(IPA)とプロピレングリコールメチルエーテル(Dowanol PM)の混合物であり、これらはいずれも硬化波長で吸収しない。傾斜ナノボイド含有物品は、このような典型的な溶媒を、例えば、400nm未満の波長を吸収するトリクロロエチレン及びニトロメタン、又は典型的には330nm未満で吸収するケトンなどの、硬化波長で多く吸収する溶媒で置き換えることによって作製されてもよい。光開始剤の種類及び硬化波長は、使用する吸収種に応じて調整する必要があってよい。
【0034】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、粒子ベースの技法を用いて、コーティング全体の硬化環境を変更することができる。粒子ベースの技法は、コーティング中の粒子を使用して傾斜を形成することができる。場合によっては、例えば、外場をコーティングに適用して、場の中の成分の異なる流動性によって分離を引き起こすことができる。この場は、例えば、重力、遠心分離、磁気、熱、電気等であってよい。コーティング中の成分を特異的に分離することができる任意の場は、許容可能であってよい。
【0035】
場合によっては、コーティング中の粒子の一部を、磁性の粒子で置き換えることができる。未硬化コーティングの上に設置された電磁石は、粒子をコーティングの表面へと優先的に移動させることができる。硬化すると、これら移動した粒子は、磁力を伴わないものよりも密度の高い層を表面に形成することができる。場合によっては、コーティング中の粒子の一部を、電気泳動の粒子で置き換えることができる。未硬化コーティングの周囲に加えられた電界は、粒子をコーティングの表面へと優先的に移動させることができ、これら移動した粒子は、電界を伴わないものよりも密度の高い層を表面に形成することができる。その他のこのような場により誘発される粒子の移動は、当業者に既知である。
【0036】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、多層コーティング法を用いて、コーティング全体の硬化環境を変化させることができる。多層コーティング法は、積層体が硬化する前に順次又は連続的に堆積される、異なる処方を有する層の積層体を使用することができる。ごく近接した複数のコーティングダイのセット、又は当業者に既知の任意の他の方法、例えば、スライドコーティング、多重スロット供給ナイフコーティング、カーテンコーティング、又はこれらの組み合わせから、コーティングを繰り返し塗布することができる。
【0037】
場合によっては、層の第1のセットは、処方のそれぞれの中のナノ粒子の量を変化させることができ、積層体全体を同時に硬化させることができる。最上層は、不溶性ポリマーマトリックスを形成してもよいが、構造支持体の欠如によりその後崩壊してもよい。場合によっては、層の別のセットは、疎水性から親水性(hydrophyilic)へと変化してもよい。次に、後続工程において水性上塗りが塗布され得、水性上塗りは親水性(hydrophyilic)層のみを貫通し、疎水性層は上塗りのないままその下に残る。他の場合には、層のセットは、コーティングの中の光開始剤又は抑制剤の量を変化させることができ、その結果、最下層が最上層と異なる量を有する場合に、硬化及びポリマーマトリックス形成を変化させることができる。場合によっては、層のセットは、異なる硬化機構により硬化される組成物、例えば、順次又は同時のいずれかで硬化され得る熱硬化層及び放射線硬化層を含むことができる。
【0038】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、特に硬化後に傾斜を形成するために、制御充填法を用いて高密度領域を形成する、ないしは別の方法でコーティングを変更することができる。制御充填法は、硬化したナノボイド含有物品の上にコーティングされた材料層(例えば、上塗り)を使用して、上面を効果的に封止することができる。場合によっては、他の箇所で記載されるように、例えば、溶媒の乏しいコーティングの上に追加の溶媒をコーティングすることにより、より大きなボイド体積分率の相互接続したボイドを表面に形成するのを促進する代わりに、制御充填法を用いることができる。硬化したナノボイド含有物品の中への層の浸透は、塗布される上塗り層の量又は流動性を制御することによって制御され得る。コーティング法としては、例えば、ダイコーティング、グラビアコーティング、ナイフコーティング、スプレーコーティング等を挙げることができる。
【0039】
場合によっては、硬化したナノボイド含有物品の中へのコーティングの浸透は、他の箇所で記載されるように、ナノボイド含有物品の硬化後であるが、コーティングから溶媒が除去される前に、上塗り層をコーティングすることによって制御され得る。場合によっては、例えば、上塗りが表面の中にウィッキングしないようにゲルコーティングをわずかに湿らすだけで、コーティングの化学的性質を用いて、硬化したナノボイド含有コーティングから上塗りを排除することができる。場合によっては、エマルション又はコロイド含有層を、粒径又は濃度を変化させるのと同様のやり方で使用して、ナノボイド含有物品の1つの領域内の相互接続したボイドの体積分率を低減することができる。場合によっては、更に別の技法を用いて、硬化したナノボイド含有物品をプラズマ又は火炎処理で処理して表面を活性化し、表面が活性化された場所への上塗りの浸透を制限することができる。
【0040】
図1Aは、本開示の一態様に従って傾斜ナノボイド含有物品170を形成するための方法100の概略図を示す。溶媒120中に重合性物質130を含む第1の溶液110が提供される。第1の硬化環境「A」及び第2の硬化環境「B」が、第1の溶液110の対向部分に隣接して提供される。第1の硬化環境A及び第2の硬化環境Bのそれぞれは、例えば、硬化環境Aに隣接した光開始剤の濃度は硬化環境Bに隣接した光開始剤の濃度と異なることができる、などといった、コーティングの異なる領域内の硬化環境を変えるための上述された技法のいずれかを表すことができる。第1の硬化環境A及び第2の硬化環境Bは、第1の溶液110、組成物140、及び傾斜ナノボイド含有物品170の第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)によって、それぞれ分離することができる。一実施形態では、第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)のそれぞれは異なる。
【0041】
第1の溶液110の重合性物質130は、少なくとも部分的に重合されて、第2の溶液160の中に不溶性ポリマーマトリックス150を含む組成物140を形成する。他の箇所で記載されるように、第1の硬化環境Aに隣接する第1の領域142は、第2の硬化環境Bに隣接する第2の領域144と異なる不溶性ポリマーマトリックス150の体積分率を有することができる。図1は、例えば、第2の領域144よりも小さい不溶性ポリマーマトリックス150の体積分率を有する第1の領域142を示している。
【0042】
溶媒120の大部分は第2の溶液160から除去されて、傾斜ナノボイド含有物品170を形成する。他の箇所で記載されるように、第1の硬化環境Aに隣接する第1の領域172は、第2の硬化環境Bに隣接する第2の領域174と異なる不溶性ポリマーマトリックス150の体積分率(及び異なるナノボイドの体積分率)を有することができる。図1Aは、例えば、第2の領域174よりも小さい不溶性ポリマーマトリックス150の体積分率(及びより大きいナノボイドの体積分率)を有する第1の領域172を示している。
【0043】
第2の溶液160では重合性物質130が枯渇しているが、他の箇所で記載されるように、一部の重合性物質130は第2の溶液160中に残留することができる。傾斜ナノボイド含有物品170は、不溶性ポリマーマトリックス150と、平均有効径190を有する複数のボイド180とを含む。平均有効径190、及びボイド180の体積分率は共に、傾斜ナノボイド含有物品170全体にわたって様々であってよい。図1Aには示されていないが、第1の溶液110を基材(図示せず)の上にコーティングして、基材上に傾斜ナノボイド含有コーティングを形成することができることを理解されたい。場合によっては、他の箇所で記載されるように、傾斜ナノボイド含有物品170は、最終硬化工程を更に受けることができる中間的な傾斜ナノボイド含有物品170であってよい。
【0044】
重合性物質130は、化学、熱、又は放射線開始することができる様々な従来のカチオン又はフリーラジカル重合技法によって重合することができる任意の重合性物質であってもよく、技法は、例えば、溶媒重合、乳化重合、懸濁重合、バルク重合、及び、例えば、化学線を用いた処理などの放射線重合を含み、化学線は、例えば、可視光線及び紫外線、電子線照射、及びこれらの組み合わせを含む。
【0045】
化学線硬化性物質としては、モノマー、オリゴマー、アクリレートのポリマー、メタクリレート、ウレタン、エポキシ等が挙げられる。本開示の実施に際して好適なエネルギー硬化性基の代表的な例としては、エポキシ基、(メタ)アクリレート基、オレフィン炭素炭素二重結合、アリルオキシ基、α−メチルスチレン基、(メタ)アクリルアミド基、シアネートエステル基、ビニルエーテル基、これらの組み合わせなどが挙げられる。フリーラジカル的に重合可能な基が好ましい。いくつかの実施形態では、例示的な物質としては、アクリレート及びメタクリレートモノマーが挙げられ、特に、当該技術分野において既知のように、重合の際に架橋ネットワークを形成することができる多官能性モノマーを使用することができる。重合性物質は、モノマー、オリゴマー、及びポリマーの任意の混合物を含むことができるが、こうした物質は、少なくとも1種類の溶媒に少なくとも部分的に可溶性でなければならない。いくつかの実施形態では、物質は溶媒/モノマー混合物に可溶性である必要がある。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「モノマー」とは、1つ以上のエネルギー重合可能な基を有する比較的低分子量の(即ち、約500g/モル未満の分子量を有する)物質を意味する。「オリゴマー」とは、約500g/モルから最大約10,000g/モルの分子量を有する比較的中分子量の物質を意味する。「ポリマー」とは、少なくとも約10,000g/モル、好ましくは10,000〜100,000g/モルの分子量を有する比較的高分子量の物質を意味する。用語「分子量」とは、本明細書全体を通して用いられるとき、明示的に別段の定めをした場合を除いて数平均分子量を意味する。
【0047】
代表的なモノマー重合性物質の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、置換スチレン、ビニルエステル、ビニルエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリレート、イソ−オクチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエトキシレート(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシド、α−エポキシド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、無水マレイン酸、イタコン酸、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N−ビニルカプロラクタム、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ官能カプロラクトンエステル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0048】
オリゴマー及びポリマーは、本明細書において総称して「高分子量の成分又は種」と呼ばれる場合もある。好適な高分子量の成分は、本開示の組成物に組み込まれてもよい。そのような高分子量の成分は、例えば、粘度制御、硬化の際の収縮の低減、耐久性、可撓性、多孔性及び非多孔性基材への接着、屋外耐候性、及び/又は同様のものといった利益を提供することができる。本開示の流体組成物に組み込まれるオリゴマー及び/又はポリマーの量は、結果として得られる組成物の使用目的、反応性希釈剤の性質、オリゴマー及び/又はポリマーの性質及び重量平均分子量、並びに同様のものなどの要因に応じて、広範囲内で様々であってよい。オリゴマー及び/又はポリマー自体は、直鎖状、分枝状、及び/又は環状であってもよい。分枝状オリゴマー及び/又はポリマーは、同程度の分子量の直鎖状オリゴマー及び/又はポリマーよりも低い粘度を有する傾向がある。
【0049】
例示的な重合性オリゴマー又はポリマーとしては、脂肪族ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシポリマー、ポリスチレン(スチレンのコポリマーを含む)及び置換スチレン、シリコーン含有ポリマー、フッ素化ポリマー、これらの組み合わせなどが挙げられる。ある用途では、ポリウレタン及びアクリル含有オリゴマー及び/又はポリマーは、改善された耐久性及び耐候特性を有することができる。かかる物質は、放射線硬化性(メタ)アクリレート官能性モノマーから形成された反応性希釈剤に容易に可溶性である傾向もある。
【0050】
オリゴマー及び/又はポリマーの芳香族成分は、一般に、耐候性が劣る及び/又は耐太陽光性が劣る傾向があるので、芳香族成分は、5重量パーセント未満、好ましくは1重量パーセント未満に制限することができ、また、本開示のオリゴマー及び/又はポリマー並びに反応性希釈剤から実質的に除外することができる。したがって、直鎖状、分枝状及び/又は環状脂肪族及び/又は複素環式成分は、屋外用途で使用されるオリゴマー及び/又はポリマーを形成するのに好ましい。
【0051】
本開示で使用される好適な放射線硬化性オリゴマー及び/又はポリマーとしては、(メタ)アクリレート化ウレタン(即ち、ウレタン(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化エポキシ(即ち、エポキシ(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化ポリエステル(即ち、ポリエステル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化(メタ)アクリル、(メタ)アクリレート化シリコーン、(メタ)アクリレート化ポリエーテル(即ち、ポリエーテル(メタ)アクリレート)、ビニル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリレート化オイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
溶媒120は、所望の重合性物質130と共に溶液を形成する任意の溶媒であってよい。溶媒は、極性若しくは非極性溶媒、高沸点溶媒、又は低沸点溶媒であってもよく、好ましくは数種類の溶媒の混合物であってもよい。溶媒又は溶媒混合物は、形成される不溶性ポリマーマトリックス150が、少なくとも部分的に溶媒(又は溶媒混合物中の溶媒のうちの少なくとも1つ)に不溶性であるように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、溶媒混合物は、重合性物質のための溶媒と非溶媒の混合物であってよい。重合の間に、第1の溶液110は分離して、第2の溶液160と、重合して不溶性ポリマーマトリックス150を形成するポリマーリッチな溶液と、を形成する。ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックス150は、三次元構造をもたらすポリマー鎖連結155を有する三次元ポリマーマトリックスであってもよい。ポリマー鎖連結155は、溶媒120の除去後の不溶性ポリマーマトリックス150の変形を防ぐことができる。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、溶媒120は、コーティングの重合に使用した放射線を吸収する溶媒を含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、図1Aに示されるように、第2の溶液160は、不溶性ポリマーマトリックス150に組み込まれないいくらかの残留重合性物質135を含むことができる(即ち、第2の溶液160は、重合性物質135が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。ある特定の実施形態では、組成物140の重合の程度を最大限にすることによって、第2の溶液160中の残留重合性物質135の量を最小限にするのが好ましい。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、好ましくは、硬化環境A又はBの一方に隣接する重合性物質135の大部分を保持して、第1又は第2の領域142、144中の傾斜ナノボイド含有物品170の孔隙率を低減してもよい。
【0054】
一実施形態では、溶媒120は、例えば、不溶性ポリマーマトリックス150、又は基材(含まれる場合)の熱分解温度を超えない温度で乾燥させることによって、組成物140から容易に除去され得る。ある特定の実施形態では、乾燥中の温度は、基材が変形を起こしやすい温度未満、例えば、基材のゆがみ温度又はガラス転移温度未満に維持される。例示的な溶媒としては、線状、分枝状、及び環状炭化水素、アルコール、ケトン、及びエーテル、例えば、DOWANOL(商標)PMプロピレングリコールメチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテルなど、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、2−ブタノン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、水、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、芳香族炭化水素、イソホロン、ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、エステル(例えば、ラクテート、アセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMアセテート)、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(DEアセテート)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EBアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMアセテート)、イソ−アルキルエステル、イソヘキシルアセテート、イソヘプチルアセテート、イソオクチルアセテート、イソノニルアセテート、イソデシルアセテート、イソドデシルアセテート、イソトリデシルアセテート、又はその他のイソ−アルキルエステルなど)、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0055】
第1の溶液110は、その他の成分、例えば、反応開始剤、硬化剤、硬化促進剤、触媒、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、染料、界面活性剤、難燃剤、結合剤、顔料、熱可塑性又は熱硬化性樹脂ポリマーなどの衝撃改質剤、流れ調整剤、発泡剤、充填剤、ガラス及び高分子微小球及び微小粒子、その他の粒子(例えば、導電性粒子、熱伝導性粒子、磁性粒子など)、繊維、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含むこともできる。
【0056】
光開始剤などの反応開始剤は、第1の溶液110中に存在するモノマーの重合を促進するのに有効な量で使用することができる。光開始剤の量は、例えば、反応開始剤の種類、反応開始剤の分子量、得られる不溶性ポリマーマトリックス150の対象とする用途、重合方法(例えば、用いられる処理温度、化学線の波長など)に応じて様々であってよい。有用な光開始剤としては、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから商品名「IRGACURE(商標)」及び「DAROCURE(商標)」(IRGACURE(商標)184及びIRGACURE(商標)819など)で入手可能なものが挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、例えば、方法の異なるセクションにおける重合を制御するために、開始剤と開始剤タイプ(initiator types)の混合物を使用することができる。一実施形態では、任意の後処理重合は、熱的に生成されたフリーラジカル開始剤を必要とする熱開始重合であってもよい。他の実施形態では、任意の後処理重合は、光開始剤を必要とする化学線開始重合(actinic radiation initiated polymerization)であってもよい。後処理光開始剤は、溶液中のポリマーマトリックスを重合するのに使用した光開始剤と同じか又は異なっていてもよい。
【0058】
不溶性ポリマーマトリックス150は架橋されて、より堅いポリマーネットワークをもたらすことができる。架橋は、ガンマ線又は電子線照射のような高エネルギー放射線の使用によって、架橋剤を用いて又は用いずに達成され得る。いくつかの実施形態では、架橋剤又は架橋剤の組み合わせを、重合性モノマーの混合物に添加することができる。架橋は、他の箇所に記載される化学線源のいずれかを使用したポリマーネットワークの重合中に起こり得る。
【0059】
有用な放射線硬化架橋剤としては、米国特許第4,379,201号(Heilmannら)に記載されているもののような多官能性アクリレート及びメタクリレートが挙げられ、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカノールジ(メタ)アクリレート、米国特許第4,737,559号(Kellenら)に記載されているもののような共重合可能な芳香族ケトンコモノマー、及び同類のもの、並びにこれらの組み合わせを含む。
【0060】
第1の溶液110はまた、連鎖移動剤を含んでもよい。連鎖移動剤は、重合前のモノマー混合物に可溶性であるのが好ましい。好適な連鎖移動剤の例としては、トリエチルシラン及びメルカプタンが挙げられる。いくつかの実施形態では、連鎖移動は溶媒にも生じる可能性があるが、これは好ましいメカニズムではない。
【0061】
ある特定の実施形態では、重合工程は、低酸素濃度の雰囲気の中で放射線源を使用することを含むのが好ましい。酸素は、フリーラジカル重合を抑え、その結果硬化の程度が低下することで知られる。ある特定の実施形態では、重合工程は、例えば、約100ppm(part per million)超過、約500ppm超過、約1000ppm超過、約2000ppm超過、約3000ppm超過、又はそれ以上の高い酸素濃度の雰囲気中の放射線源を含む。
【0062】
重合及び/又は架橋させるために使用される放射線源は、化学線(例えば、スペクトルの紫外線又は可視光領域に波長を有する放射線)、加速粒子(例えば、電子線照射)、熱(例えば、加熱又は赤外線)などであってよい。いくつかの実施形態では、好ましいエネルギーは、重合及び/又は架橋の開始及び速度の制御を行う上で優れている化学線又は加速粒子である。加えて、化学線及び加速粒子は、比較的低い温度の硬化にも使用できる。このことは、熱硬化技術を用いる場合にエネルギー硬化性基の重合及び/又は架橋を開始するのに必要とされる比較的高温に対して感受性がある成分を、分解又は蒸発させるのを防ぐ。好適な硬化エネルギー源としては、UV LED、可視LED、レーザ、電子線、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンランプ、閃光ランプ、太陽光、低強度の紫外線(ブラックライト)等が挙げられる。
【0063】
溶媒120の大部分は、傾斜ナノボイド含有物品170を作製するために、溶媒除去工程で除去される。溶媒の大部分とは、溶媒の90重量%、80重量%、70重量%、60重量%超過、又は50重量%超過を意味する。溶媒は、空気浮上/空気対流を含むことができる熱オーブンの中で乾燥することによって、赤外光源若しくはその他の放射光源で乾燥することによって、真空乾燥、ギャップ乾燥、又は乾燥技術の組み合わせによって除去することができる。乾燥技術の選択は、とりわけ、所望の処理速度、溶媒除去の程度、及びコーティング形態によって決定され得る。ある特定の実施形態では、ギャップ乾燥は最小空間内で迅速な乾燥を提供するので、ギャップ乾燥は溶媒除去に優れた効果を発揮し得る。
【0064】
図1Bは、本開示の一態様に従って傾斜ナノボイド含有物品170を形成するための方法100の概略図を示す。図1Bに示されている要素110〜190のそれぞれは、図1Aに示されている同じ参照数字の要素110〜190に対応している。例えば、図1Aの第1の溶液110の説明は、図1Bの第1の溶液110の説明に対応し、以下同様である。
【0065】
溶媒120中に重合性物質130を含む第1の溶液110が提供される。重合性物質130及び溶媒120は、図1Aの重合性物質130及び溶媒120に関して説明したものとそれぞれ同じであってよい。第1の溶液110の重合性物質130は、少なくとも部分的に重合されて、第2の溶液160の中に不溶性ポリマーマトリックス150を含む組成物140を形成する。溶媒120の大部分は、ナノボイド含有物品170’を形成するために、第2の溶液160から除去される。第2の溶液160では重合性物質130が枯渇しているが、他の箇所で記載されるように、一部の重合性物質130は第2の溶液160中に残留することができる。ナノボイド含有物品170’は、不溶性ポリマーマトリックス150と、平均の第1の有効径190’を有する複数のボイド180と、を含む。図1には示されていないが、第1の溶液110を基材(図示せず)の上にコーティングして、基材上にナノボイド含有コーティングを形成することができることを理解されたい。
【0066】
ナノボイド含有物品170’を更に処理して、傾斜ナノボイド含有物品170をもたらすことができる。ある特定の実施形態では、ナノボイド含有物品170’の第2の硬化環境B近傍を稠密化する(即ち、ナノボイドの体積分率を低減する)ことができる。場合によっては、制御充填法(他の箇所に記載)を用いて、ナノボイド含有物品170’の第1の有効径190’を減少させるためにボイド180の一部を充填することができ、その結果、傾斜ナノボイド含有物品170の第2の領域174のボイド180の第2の有効径190がもたらされる。場合によっては、多層コーティング法(他の箇所に記載)を用いて第2の領域174を形成することができ、この第2の領域174は、不溶性ポリマーマトリックス150の不十分な構造支持体を有して、ナノボイド含有物品170’をこの第2の領域174内で崩壊させる。一実施形態では、第1の溶液110、組成物140、及び傾斜ナノボイド含有物品170の第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)は、それぞれは異なる。
【0067】
図2Aは、本開示の別の態様に従って傾斜ナノボイド含有物品280を形成するための方法200の概略図を示す。溶媒220中に重合性物質230とナノ粒子240とを含む第1の溶液210が提供される。第1の硬化環境「A」及び第2の硬化環境「B」が、第1の溶液210の対向部分に隣接して提供される。第1の硬化環境A及び第2の硬化環境Bのそれぞれは、例えば、硬化環境Aに隣接した光開始剤の濃度は硬化環境Bに隣接した光開始剤の濃度と異なっていてもよい、などといった、コーティングの異なる領域内の硬化環境を変えるための上述された技法のいずれかを表すことができる。第1の硬化環境A及び第2の硬化環境Bは、第1の溶液210、組成物250、及び傾斜ナノボイド含有物品280の第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)によって、それぞれ分離することができる。一実施形態では、第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)のそれぞれは異なる。
【0068】
第1の溶液210は少なくとも部分的に重合されて、第2の溶液270の中に不溶性ポリマーマトリックス260に結合されたナノ粒子240を含む組成物250を形成する。他の箇所で記載されるように、第1の硬化環境Aに隣接する第1の領域242は、第2の硬化環境Bに隣接する第2の領域244と異なる不溶性ポリマーマトリックス260の体積分率を有することができる。図2Aは、例えば、第2の領域244よりも小さい不溶性ポリマーマトリックス260の体積分率を有する第1の領域242を示している。
【0069】
溶媒220の大部分は、傾斜ナノボイド含有物品280を形成するために、第2の溶液270から除去される。他の箇所で記載されるように、第1の硬化環境Aに隣接する第1の領域282は、第2の硬化環境Bに隣接する第2の領域284と異なる不溶性ポリマーマトリックス260の体積分率(及び異なるナノボイドの体積分率)を有することができる。図2Aは、例えば、第2の領域284よりも小さい不溶性ポリマーマトリックス260の体積分率(及びより大きいナノボイドの体積分率)を有する第1の領域282を示している。
【0070】
ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックス260は、三次元構造をもたらすポリマー鎖連結265を有する三次元ポリマーマトリックスであってよい。ポリマー鎖連結265は、溶媒220の除去後の不溶性ポリマーマトリックス260の変形を防ぐことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、図2Aに示されるように、第2の溶液270は、不溶性ポリマーマトリックス260に組み込まれないいくらかの残留重合性物質235を含むことができる(即ち、第2の溶液270は、重合性物質235が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。ある特定の実施形態では、重合工程の後に、第2の溶液270中の残留重合性物質235の量を最小限にするのが好ましい。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、硬化環境A又はBの一方に隣接する重合性物質235の大部分を保持して、第1又は第2の領域282、284中の傾斜ナノボイド含有物品280の孔隙率を低減するのが望ましくあってよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、第2の溶液270は、図2Aに示されるように、不溶性ポリマーマトリックス260に結合されていないナノ粒子245のわずかな部分も含むことができる(即ち、第2の溶液270はナノ粒子240が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。重合工程の後に不溶性ポリマーマトリックス260に結合していないナノ粒子245の量を最小限に抑えるのが、一般に望ましい。しかしながら、ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、好ましくは、硬化環境A、Bの一方に隣接するナノ粒子245の量を増加させて、第1又は第2の領域282,284の中の傾斜ナノボイド含有物品280の孔隙率を低下させてもよい。本明細書で使用するとき、ポリマーマトリックスに「結合している」ナノ粒子とは、ポリマーマトリックスに完全に埋め込まれたナノ粒子、ポリマーマトリックスに部分的に埋め込まれたナノ粒子、ポリマーマトリックスの表面に付着したナノ粒子、又はこれらの組み合わせを意味する。
【0073】
ある特定の実施形態では、ナノ粒子240は、不溶性ポリマーマトリックス260に化学的に結合された表面修飾反応性ナノ粒子であってよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子240は、不溶性ポリマーマトリックス260に物理的に結合された表面修飾非反応性ナノ粒子であってよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子240は、表面修飾反応性ナノ粒子と表面修飾非反応性ナノ粒子の混合物であってよい。場合によっては、一部のナノ粒子は、同粒子上の反応基及び非反応基の両方によって官能化されてもよい。
【0074】
傾斜ナノボイド含有物品280は、不溶性ポリマーマトリックス260に結合したナノ粒子240と、平均有効径295を有する複数のボイド290と、を含む。平均有効径295、及びボイド290の体積分率は共に、傾斜ナノボイド含有物品280全体にわたって様々であってよい。図2Aには示されていないが、第1の溶液210を基材の上にコーティングして、基材上に傾斜ナノボイド含有コーティングを形成することができることを理解されたい。
【0075】
重合性物質230及び溶媒220は、図1Aの重合性物質130及び溶媒120に関して説明したのとそれぞれ同じであってよい。一実施形態では、ナノ粒子240は、無機ナノ粒子、有機(例えば、ポリマー)ナノ粒子、又は有機ナノ粒子と無機ナノ粒子の組み合わせであってよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子240は、多孔性粒子、中空粒子、中実粒子、又はこれらの組み合わせであってよい。好適な無機ナノ粒子の例としては、ジルコニア、チタニア、セリア、アルミナ、酸化鉄、ヴァナディア(vanadia)、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミナ/シリカ、及びこれらの組み合わせを含む、シリカ及び金属酸化物ナノ粒子が挙げられる。ナノ粒子は、約1000nm未満、約100nm未満、約50nm未満、又は約3nm〜約50nmの平均粒子直径を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約3nm〜約50nm、約3nm〜約35nm、又は約5〜約25nmの平均粒子直径を有し得る。ナノ粒子が凝集している場合、凝集した粒子の断面寸法は、こうした範囲のいずれか以内であってよく、また、約100nmを超えることも可能である。いくつかの実施形態では、主要寸法が約50nm未満の「ヒュームド」ナノ粒子(例えば、シリカ及びアルミナなど)、例えば、Cabot Co.(Boston,MA)から入手可能なCAB−O−SPERSE(登録商標)PG 002ヒュームドシリカ、CAB−O−SPERSE(登録商標)2017Aヒュームドシリカ、及びCAB−O−SPERSE(登録商標)PG 003ヒュームドアルミナなども含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子240は、疎水基、親水基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される表面基を含む。他の実施形態では、ナノ粒子は、シラン、有機酸、有機塩基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤から誘導された表面基を含む。他の実施形態では、ナノ粒子は、アルキルシラン、アリールシラン、アルコキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤から誘導されたオルガノシリル表面基を含む。
【0077】
用語「表面修飾ナノ粒子」は、粒子の表面に付着した表面基を含む粒子を指す。表面基は、粒子の性質を変更する。用語「粒子直径」及び「粒径」は、粒子の最大断面寸法を指す。粒子が凝集体の形態で存在する場合、用語「粒子直径」及び「粒径」は、凝集体の最大断面寸法を指す。いくつかの実施形態では、粒子は、ヒュームドシリカ粒子などのナノ粒子の高アスペクト比の凝集体であってよい。
【0078】
表面修飾ナノ粒子は、ナノ粒子の溶解度特性を修飾する表面基を有する。表面基は、一般に、粒子を第1の溶液210と相溶にするように選択される。一実施形態では、表面基は、第1の溶液210の少なくとも一成分と会合又は反応して、組成物のポリマーネットワークの化学的結合部位になるように選択され得る。
【0079】
ナノ粒子の表面を修飾するには、例えば、ナノ粒子に表面修飾剤(例えば、粉末又はコロイド分散の形態で)を加えて、表面修飾剤をナノ粒子と反応させるなどの多くの方法がある。他の有用な表面修飾法は、例えば、米国特許第2,801,185号(Iler)及び同第4,522,958号(Dasら)に記載されており、本明細書に組み込まれる。
【0080】
有用な表面修飾シリカナノ粒子としては、シラン表面修飾剤で表面修飾されたシリカナノ粒子、例えば、GE SiliconesのSilquest(登録商標)シラン(例えば、Silquest(登録商標)A−1230)、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、4−(トリエトキシシリル)−ブチロニトリル、(2−シアノエチル)トリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバミン酸(PEG3TMS)、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバミン酸(PEG2TMS)、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリス−イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。シリカナノ粒子は多数の表面修飾剤(例えば、アルコール、オルガノシラン(例えば、アルキルトリクロロシラン、トリアルコキシアリールシラン、トリアルコキシ(アルキル)シラン、及びこれらの組み合わせ)、及びオルガノチタネート、並びにこれらの混合物)で処理することが可能である。
【0081】
ナノ粒子は、コロイド分散物の形態で提供されてもよい。有用な市販の未修飾シリカ出発物質の例としては、製品名NALCO 1040、1050、1060、2326、2327、及び2329コロイド状シリカでNalco Chemical Co.(Naperville,IL)から入手可能なナノサイズのコロイド状シリカ;製品名IPA−ST−MS、IPA−ST−L、IPA−ST、IPA−ST−UP、MA−ST−M、及びMA−STゾルでNissan Chemical America Co.(Houston,TX)から、及びSnowTex(登録商標)ST−40、ST−50、ST−20L、ST−C、ST−N、ST−O、ST−OL、ST−ZL、ST−UP、及びST−OUPで同じくNissan Chemical America Co.(Houston,TX)から入手可能なオルガノシリカが挙げられる。重合性物質とナノ粒子の重量比は、約10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、55:45、60:40、70:30、80:20、若しくは90:10、又はそれ以上の範囲であってよい。ナノ粒子の重量%の好ましい範囲は、約10重量%〜約60重量%であり、使用するナノ粒子の密度及び寸法によって決定することができる。
【0082】
図2Bは、本開示の別の態様に従って傾斜ナノボイド含有物品280を形成するための方法200の概略図を示す。図2Bに示されている要素210〜290のそれぞれは、上述された図2Aに示されている同じ参照数字の要素210〜290に対応している。例えば、図2Aの第1の溶液210の説明は、図2Bの第1の溶液210の説明に対応し、以下同様である。
【0083】
溶媒220中に重合性物質230とナノ粒子240とを含む第1の溶液210が提供される。重合性物質230、溶媒220、及びナノ粒子240は、図2Aの重合性物質230、溶媒220、及びナノ粒子240に関して説明したものとそれぞれ同じであってよい。第1の溶液210は少なくとも部分的に重合されて、第2の溶液270の中に不溶性ポリマーマトリックス260に結合されたナノ粒子240を含む組成物250を形成する。溶媒220の大部分は、ナノボイド含有物品280’を形成するために、第2の溶液270から除去される。ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックス260は、三次元構造をもたらすポリマー鎖連結265を有する三次元ポリマーマトリックスであってよい。ポリマー鎖連結265は、溶媒220の除去後の不溶性ポリマーマトリックス260の変形を防ぐことができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、図2Bに示されるように、第2の溶液270は、不溶性ポリマーマトリックス260に組み込まれないいくらかの残留重合性物質235を含むことができる(即ち、第2の溶液270は、重合性物質235が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。ある特定の実施形態では、重合工程の後に、第2の溶液270中の残留重合性物質235の量を最小限にするのが好ましい。
【0085】
いくつかの実施形態では、第2の溶液270は、図2に示されるように、不溶性ポリマーマトリックス260に結合されていないナノ粒子245のわずかな部分も含むことができる(即ち、第2の溶液270はナノ粒子240が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。重合工程の後に不溶性ポリマーマトリックス260に結合していないナノ粒子245の量を最小限に抑えるのが、一般に望ましい。
【0086】
ナノボイド含有物品280’は、不溶性ポリマーマトリックス260に結合したナノ粒子240と、第1の平均有効径295’を有する複数のボイド290と、を含む。図2Bには示されていないが、第1の溶液210を基材の上にコーティングして、基材上にナノボイド含有コーティングを形成することができることを理解されたい。
【0087】
ナノボイド含有物品280’を更に処理して、傾斜ナノボイド含有物品280をもたらすことができる。ある特定の実施形態では、ナノボイド含有物品280’の第2の硬化環境B近傍を稠密化する(即ち、ナノボイドの体積分率を低減する)ことができる。場合によっては、制御充填法(他の箇所に記載)を用いて、ナノボイド含有物品280’の第1の有効径295’を減少させるためにボイド290の一部を充填することができ、その結果、傾斜ナノボイド含有物品280の第2の領域284のボイド290の第2の有効径295がもたらされる。場合によっては、多層コーティング法(他の箇所に記載)を用いて第2の領域284を形成することができ、この第2の領域284は、不溶性ポリマーマトリックス260の不十分な構造支持体を有して、ナノボイド含有物品280’をこの第2の領域284内で崩壊させる。一実施形態では、第1の溶液210、組成物250、ナノボイド含有物品280’、及び傾斜ナノボイド含有物品280の第1〜第4の厚さ(t1、t2、t3、t4)は、それぞれ異なる。
【0088】
図3Aは、本開示の一態様に従って基材302の上に傾斜ナノボイド含有コーティング356を形成するための方法300の概略図を示す。図3Aに示される方法300は連続的方法であるが、方法は、代わりに、段階的方法で実施され得ること、即ち、傾斜ナノボイド含有コーティングを形成するために、以下に記載されるコーティング、重合、及び溶媒除去工程が、別個の工程で個別の基材の上で実施され得ることを理解されたい。
【0089】
図3Aに示される方法300は、基材302を、コーティングセクション310、任意のコーティング調整セクション315、重合セクション320、第1の溶媒除去セクション340、及び任意の第2の溶媒除去セクション350に通過させて、基材302の上に傾斜ナノボイド含有コーティング356を形成する。基材302上の傾斜ナノボイド含有コーティング356は、次いで、任意の第2の重合セクション360を通過して、基材302上の任意に後硬化された傾斜ナノボイド含有コーティング366を形成した後、出口ロール370として巻き上げられる。いくつかの実施形態では、方法300は、ウェブベースの材料の製造にとって一般的な追加の処理装置(例えば、アイドラーロール、引張りローラー、操縦機構、コロナ又は火炎処理装置などの表面処理装置、積層ローラーなど)を含むことができる。いくつかの実施形態では、方法300は、異なるウェブ経路、コーティング技術、重合装置、重合装置の位置、乾燥オーブン、調整セクション等を利用することができ、記載されたセクションのいくつかは任意であってよい。
【0090】
基材302は、例えば、ポリマー基材、金属化されたポリマー基材、金属箔、これらの組み合わせなどの、ウェブラインでロールトゥロールウェブ処理(roll-to-roll web processing)するのに適した任意の既知の基材であってよい。ある特定の実施形態では、基材302は、液晶ディスプレイなどの光学ディスプレイで使用するのに適した光学品質のポリマー基材である。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、基材302は、例えば、光開始剤又は重合禁止剤などの下塗りコーティングを有する基材であってよい。下塗りコーティングは、提供される場合、コーティングセクション310の直前でコーティングすることができ(図示せず)、又は入力ロール301としてセットされる前に独立した工程でコーティングすることができる。
【0091】
基材302は、入力ロール301から巻き出され、アイドラーロール303の上を通過し、コーティングセクション310のコーティングロール304と接触する。第1の溶液305はコーティングダイ307を通過して、基材302上に第1の溶液305の第1のコーティング306を形成する。第1の溶液305は、溶媒と、重合性物質と、任意のナノ粒子と、光開始剤と、他の箇所に記載のその他の第1の溶液成分のいずれかと、を含むことができる。コーティングセクション310のコーティングダイ307と、任意のコーティング調整セクション315のコーティング調整領域309との間に配置された囲い板308は、第1の溶液305を取り囲む第1の制御環境311を提供することができる。いくつかの実施形態では、例えば、第1の溶液305の組成物に大きな変化が生じ得る前に重合が生じる場合、囲い板308及び任意のコーティング調整セクション315は任意であってよい。次に、第1の溶液305の第1のコーティング306を有する基材302は、他の箇所で記載されるように、第1の溶液305が重合される重合セクション320に入る。
【0092】
コーティングダイ307は、任意の既知のコーティングダイ及びコーティング技術を含むことができ、薄フィルムをコーティングするための任意の特定のダイ設計又は技術に限定されない。コーティング技術の例としては、当業者に既知であるように、ナイフコーティング、グラビアコーティング、スライドコーティング、スロットコーティング、スロット供給ナイフコーティング、カーテンコーティング、多層コーティングなどが挙げられる。傾斜ナノボイド含有物品のいくつかの用途は、正確な厚さ及び欠陥のないコーティングの必要性を含むことができ、図3Aに示されるように精密なコーティングロール304に対して位置付けられた精密なスロットコーティングダイ307を使用する必要があってよい。第1のコーティング306は任意の厚さで塗布され得るが、薄いコーティングが好ましく、例えば、1000マイクロメートル厚さ未満、約500マイクロメートル厚さ未満、約100マイクロメートル厚さ未満、又は更に約10マイクロメートル厚さ未満のコーティングは、代表的な特性を有する傾斜ナノボイド含有物品を提供することができる。
【0093】
他の箇所で記載されるように、第1のコーティング306は、少なくとも1種類の溶媒と重合性物質とを含んでいるので、囲い板308は、コーティングからの溶媒のあらゆる望ましくない損失を低減するように、また更には、重合を妨げる可能性のある酸素からコーティングを保護するように位置付けられる。囲い板308は、例えば、第1の制御環境311が維持され得るように、第1のコーティング306にごく接近して設置されて、コーティングダイ307及びコーティングロール304の周囲に封止を提供する成形アルミニウム板であってよい。いくつかの実施形態では、他の箇所で記載されるように、囲い板308は、コーティングを周囲室内条件から保護する、又は酸素リッチな雰囲気を提供する働きもすることができる。
【0094】
第1の制御環境311は、酸素含有量を制御するための窒素などの不活性ガス、溶媒の損失を低減するための溶媒蒸気、又は空気などの気体、窒素などの不活性ガス、及び溶媒蒸気の組み合わせを含むことができる。酸素濃度は、重合の速度及び程度の両方に影響を与え得るので、一実施形態では、第1の制御環境311内の酸素濃度は、1000ppm未満(parts−per−million)、500ppm未満、300ppm未満、未150ppm満、100ppm未満、又は更に50ppm未満まで低減される。場合によっては、達成し得る最も低い酸素濃度が好ましい。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、第1の制御環境内の酸素濃度は、コーティングの自由表面に隣接した重合を抑制するために、100ppm超過、500ppm超過、1000ppm超過、2000ppm超過、5000ppm超過、又はそれ以上まで増加される。
【0095】
任意のコーティング調整セクション315内のコーティング調整領域309は、第1のコーティング306が重合セクション320に入る前にこれを改質する追加的能力を提供する、囲い板308の拡張部である。第1の制御環境311は、コーティング調整領域309内でも依然として維持され得る。他の実施形態では、第1のコーティング306の組成物を調整又は維持するために、追加の加熱、冷却、又は入力及び排出ガスが提供され得る。例えば、溶媒蒸気が入力ガスに導入されて、重合の前に第1のコーティング306から溶媒が蒸発するのを低減することができる。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、任意のコーティング調整セクション315でコーティングに外場が適用されて、微粒子を第1のコーティングの異なる領域に移動させることができる。
【0096】
第1のコーティング306の温度を上昇又は低下させるため、追加の溶媒を揮発させて第1のコーティング306の組成物を調整するため、又はその両方のために、例えば、米国特許第5,694,701号に記載されているギャップ乾燥機などの加熱装置を使用することができる。例えば、最適なコーティングの組成(例えば、%固形分)が重合にとって最適な組成と異なる場合に組成を変更することによって所望の薄膜形態ができるようにするために、ギャップ乾燥機を使用して、重合セクションの前に溶媒の一部を除去することができる。多くの場合、コーティング調整領域309は、重合の前に、第1のコーティング306が安定化する(例えば、あらゆる表面のリップル又は傷を平滑化する)ための余分な時間を提供する働きをすることができる。
【0097】
図3Bは、本開示の一態様による、図3Aに示される方法300の重合セクション320の概略図である。図3Bは、基材302の経路の下流側から見た場合の重合セクション320の断面を示す。重合セクション320は、基材302上の第1のコーティング306を部分的に取り囲む第2の制御環境327の境界を提供するハウジング321と水晶板322とを備える。放射線源323は化学線324を生じさせ、この化学線324は、水晶板322を通過して、基材302上の第1のコーティング306を重合する。単一放射線源323ではなく、図3Bに示される放射線源アレイ325は、改善された均一性及び重合速度を重合方法にもたらすことができる。放射線源アレイ325は、放射線源323の個別制御を提供することができ、例えば、クロスウェブ又はダウンウェブプロファイルを要望通りに生成することができる。放射線源アレイ325の中の各放射線源323によって生成された熱を除去することによって温度を制御するために、冷却器326を配置することができる。
【0098】
ハウジング321は、基材302、第1のコーティング306、及び少なくとも部分的に重合された第2のコーティング336(図3Cに示されている)を取り囲むように設計された簡単な囲いであってよい。又はハウジング321は、例えば、第2の制御環境327の温度を調節することができる恒温板(図示せず)などの追加要素を備えることもできる。ハウジング321は、基材302及び第1のコーティング306を囲んで第2の制御環境327を提供するのに十分な内部寸法「h3」及び「h2」を有する。気流場は、不活性能力、コーティング組成物、コーティング均一性等に影響を与える。図3Bに示されるように、ハウジング321は、放射線源アレイ325の中の放射線源323から第2の制御環境327を分離する上部水晶板322を備えている。放射線源アレイ325は、基材302から距離「h1」の場所に位置付けられて、均一な化学線324を第1のコーティング306に提供する。一実施形態では、「h1」及び「h3」は、それぞれ1インチ(2.54cm)及び0.25インチ(0.64cm)である。いくつかの実施形態では(図示せず)、水晶板322及び放射線源323が基材302の下に位置し、第1のコーティング306を重合する前に化学線324が基材302を通過するように、重合セクション320を上下逆にすることができる。他の実施形態では(同様に図示せず)、重合セクション320は、第1のコーティング306を重合するために基材の上下に位置決めされた2つの水晶板322と2つの放射線源323とを備えることができる。
【0099】
他の箇所で記載されるように、放射線源323は任意の化学線源であってもよい。いくつかの実施形態では、放射線源323は、UV放射線を生成することができる紫外線LEDである。異なる波長で放射する放射線源の組み合わせを使用して、重合反応の速度及び程度を制御することができる。UV−LED又は他の放射線源は、動作中に熱を生成することができ、冷却器326は、例えば、空気又は水のいずれかで冷却されて、生成された熱を除去することによって温度を制御する、アルミニウムなどの金属から製造することができる。
【0100】
図3Cは、本開示の一態様による、図3Aに示される方法300の重合セクション320の概略図である。図3Cは、基材302縁部に沿って見た場合の重合セクション320の断面を示している。重合セクション320は、第2の制御環境327の境界を提供するハウジング321と水晶板322とを備えている。第2の制御環境327は、基材302上の第1のコーティング306及び少なくとも部分的に重合された第2のコーティング336を部分的に取り囲む。他の箇所で記載されるように、少なくとも部分的に重合された第2のコーティング336は、第2の溶液中の不溶性ポリマーマトリックスを含む。
【0101】
ここで第2の制御環境327について説明する。ハウジング321は、入口開口部328と出口開口部329とを含み、これらは、基材302と、基材302上のコーティング306と、それぞれの開口部との間に任意の所望の隙間を提供するように調整することができる。第2の制御環境327は、ハウジング321の温度の制御、及び第1の入力ガス331、第2の入力ガス333、第1の出力ガス335、及び第2の出力ガス334の温度、組成、圧力、及び流速の適切な制御によって維持することができる。入口開口部328及び出口開口部329の寸法の適切な調整は、第1の出力ガス335及び第2の出力ガス334の圧力及び流速の制御を支援することができる。
【0102】
第1の出力ガス335は、第2の制御環境327から入口開口部328を通って、図3Aに示される任意のコーティング調整セクション315の第1の制御環境311に流れ込むことができる。いくつかの実施形態では、第2の制御環境327及び第1の制御環境311内の圧力は、2つの環境の間の流れを防止するように調整され、第1の出力ガス335は、ハウジング321内の別の場所(図示せず)から第2の制御環境327を出ることができる。第2の出力ガス334は、第2の制御環境327から出口開口部329を通って、図3Aに示される第1の溶媒除去セクション340に流れ込む可能性がある。又は第2の出力ガス334は、ハウジング321内の別の場所(図示せず)から第2の制御環境327を出ることができる。
【0103】
第1の入力ガスマニホールド330は、ハウジング321に隣接し、入口開口部328に近接して配置されて、第1の入力ガス331を、所望の均一性を有して第1のコーティング306の幅全体に分配する。第2の入力ガスマニホールド332は、ハウジング321に隣接し、出口開口部329に近接して配置されて、第2の入力ガス333を、所望の均一性を有して第2のコーティング336の幅全体に分配する。第1及び第2の入力ガス331、333は、所望通りに、ウェブの上、ウェブの下、又はウェブの上と下の任意の組み合わせに分配することができる。第1及び第2の入力ガス331、333は同じであってもよく、又は異なってもよく、また、既知のように重合反応を抑制する可能性がある酸素濃度を低減することができる、窒素などの不活性ガスを含むことができる。第1及び第2の入力ガス331、333は、他の箇所で記載されるように、重合前又は重合中に生じる第1のコーティング306からの溶媒の損失を低減するのを助けることができる溶媒蒸気を含むこともできる。相対的流量、流速、コーティングの流動衝突又は向き、第1及び第2の入力ガス331、333のそれぞれの温度は、独立して制御することができ、重合前の第1のコーティング306の欠陥を減少させるように調整することができる。欠陥は、当該技術分野において既知のように、コーティングに対する外乱作用に起因し得る。場合によっては、第1の入力ガス331及び第2の入力ガス333の一方のみが流れていてもよい。
【0104】
ここで図3Aを参照して、方法の残りの部分について説明する。重合セクション320を離れた後、基材302上の第2の重合コーティング336は、第1の溶媒除去セクション340に入る。第1の溶媒除去セクション340は、溶媒を蒸発させるために第2の重合コーティング336を加熱することによって溶媒を除去する従来の乾燥オーブンであってよい。好ましい第1の溶媒除去セクション340は、例えば、米国特許第5,694,701号及び同第7,032,324号に記載されているようなギャップ乾燥機である。ギャップ乾燥機は、乾燥環境をより良好に制御することができ、このことは、使用目的によっては望ましい場合もある。任意の第2の溶媒除去セクション350を更に使用して、溶媒の大部分が除去されるのを確実にすることができる。
【0105】
基材302上の傾斜ナノボイド含有コーティング356は、任意の第2の溶媒除去セクション350を出た後、任意の第2の重合セクション360を通過して、任意に後硬化された傾斜ナノボイド含有コーティング366を基材302上に形成する。任意の第2の重合セクション360は、前述の化学線源のいずれかを備えることができ、また、傾斜ナノボイド含有コーティング356の重合の程度を高めることができる。いくつかの実施形態では、硬化の程度の増大は、溶媒の除去後に残留重合性物質(即ち、図1及び図2にそれぞれ示されている残留重合性物質135、235)を重合することを含み得る。基材302上の傾斜ナノボイド含有コーティング356は、任意の第2の重合セクション360を出た後、出口ロール370として巻き取られる。いくつかの実施形態では、出口ロール370は、傾斜ナノボイド含有コーティングに積層され、同時に出口ロール370上に巻かれる他の所望のフィルム(図示せず)を有することができる。他の実施形態では、他の箇所で記載されるように、追加の層(図示せず)を、傾斜ナノボイド含有コーティング356又は基材302のいずれかの上にコーティングし、硬化し、乾燥させることができる。
【0106】
図4Aは、本開示の一態様による、基材410上にコーティングされた傾斜光学フィルム400の断面顕微鏡写真である。傾斜光学フィルム400は、基材410に隣接する第1の主表面430と、第1の主表面430に近接する相互接続したボイド470の第1の局所体積分率と、を含む。傾斜光学フィルムは、「自由」表面である(即ち、硬化環境に隣接している)第2の主表面432と、第2の主表面432に近接する相互接続したボイド475の稠密化された第2の局所体積分率と、を更に含む。傾斜光学フィルム400は、第2の主表面432のすぐ近くの重合を抑制した酸素リッチな環境(3578ppmの酸素、下の実施例1の試料1aに準ずる)で調製された。図4Bは、図4Aの顕微鏡写真のより高倍率のものであり、相互接続したボイド470の第1の局所体積分率は、抑制された重合に起因して高密度になった、相互接続したボイド475の高密度の第2の体積分率よりも大きいことをより明確に示している。
【0107】
図5Aは、本開示の一態様による、基材510上にコーティングされた傾斜光学フィルム500の断面顕微鏡写真である。傾斜光学フィルム500は、基材510に隣接する第1の主表面530と、第1の主表面530に近接する相互接続したボイド570の第1の局所体積分率と、を含む。傾斜光学フィルムは、「自由」表面である(即ち、硬化環境に隣接している)第2の主表面532と、第2の主表面532に近接する相互接続したボイド575の稠密化された第2の局所体積分率と、を更に含む。傾斜光学フィルム500は、図5A〜図5Bの傾斜光学フィルム500よりも低い酸素リッチな環境(1707ppmの酸素、下の実施例1の試料3aに準ずる)で調製された。酸素リッチな環境は、第2の主表面532すぐ近くの重合を抑制した。図5Bは、図5Aの顕微鏡写真のより高倍率のものであり、相互接続したボイド570の第1の局所体積分率は、抑制された重合に起因して稠密化された、相互接続したボイド575の稠密化された第2の体積分率よりも大きいことをより明確に示している。相互接続したボイド475及び575の稠密化された第2の体積分率の相対厚さの比較は、硬化環境内の酸素濃度の増加に伴って高密度領域の厚さが増加することを示している。
【0108】
開示されるフィルム、層、構成体、及びシステムの利点の一部が、以下の実施例によって更に説明される。この実施例で列挙される特定の材料、量及び寸法、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。
【0109】
実施例において、屈折率はMetricon Model 2010 Prism Coupler(Metricon Corp.(Pennington,NJ)から入手可能)を使用して測定された。光透過性、透明度、及びヘイズは、Haze−Gard Plusヘイズメータ(BYK−Gardiner(Silver Springs,MD)から入手可能)を使用して測定された。
【実施例】
【0110】
実施例A−傾斜を生成するためにDBEFに下塗りされる光開始剤
光開始剤を基板にコーティングして、基材界面から空気界面までの密度の変化を作り出した。光開始剤コーティング溶液は、MEKに0.3重量%のIrgacure 819を混合して調製した。この光開始剤溶液を、43.2cm(17インチ)幅のスロットタイプコーティングダイを使用してDBEFフィルムの上にコーティングした。溶液は、127g/分の速度及び30.5m/分(100フィート/分)のライン速度でコーティングされた。次いで、コーティングを150°F(66℃)のオーブンの中で乾燥させた。こうして基材に下塗りされた光開始剤を得た。
【0111】
コーティング溶液「A」を調製した。まず、360gのNalco 2327コロイドシリカ粒子(40重量%固形分及び平均粒子直径約20ナノメートル)及び300gの1−メトキシ−2−プロパノールを、冷却器及び温度計を備えた2リットル3つ口フラスコの中で高速撹拌下で混合した。次に、22.15gのSilquest A−174シランを加え、この混合物を10分間撹拌した。次に、更に400gの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、加熱マントルを使用してこの混合物を85℃で6時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、水及び1−メトキシ−2−プロパノール溶媒(約700g)のほとんどをロータリーエバポレータを使用して水浴温度60℃で除去した。得られた溶液は、1−メトキシ−2−プロパノールに分散された44重量%のA−174修飾20nmシリカを有する透明なA−174修飾シリカ溶液であった。
【0112】
コーティング溶液「A」は、18.0重量%の透明なA−174修飾シリカ溶液(1−メトキシ−2−プロパノールに分散された44重量%のA−174修飾20nmシリカを有する)、23.9重量%の1−メトキシ−2−プロパノール、46.1重量%のIPA、12.0重量%のSR444からなった。Irgacure 819を0.15pph(parts per hundred)の割合でコーティング溶液「A」に添加した。コーティング溶液Aを、15.2g/分の速度で(圧力ポットを使用して)43.2cm(17インチ)幅のスロットタイプコーティングダイの中にポンプで送り込んだ。スロットコーティングダイは、光開始剤が下塗りされた基材上に1.52m/分(10ft/分)の速度で43.2cm幅のコーティングを均一に分配した。
【0113】
次に、コーティングされた基材をUV−LED硬化チャンバ(紫外線放射を通す石英窓が含まれている)の中に通すことによってコーティングを重合させた。UV−LED硬化チャンバは、4個(ダウンウェブ)×40個(クロスウェブ)の160個のUV−LED(約42.5cm×4.5cmの領域をカバーする)の矩形アレイを含んだ。LED(Nichia Inc.(Tokyo Japan)より入手可能)は、385nmの公称波長で動作し、また、8アンペアで駆動され、その結果UV−A線量は平方センチメートル当たり0.052ジュールとなった。ファン冷却式UV−LEDアレイは、Lambda GENH 60−12.5−U電力供給装置(TDK−Lambda(Neptune NJ)より入手可能)によって給電された。UV−LEDは、基材から約2.5cmの距離にある、硬化チャンバの石英窓の上に配置された。UV−LED硬化チャンバに、毎分141.6リットル/分(5立方フィート)の流速で窒素流を供給した。窒素供給に空気を導入して、UV−LEDチャンバ内の総酸素濃度を制御した。UV−LED硬化チャンバ内の酸素レベルを、気流速度を変化させて変更し、シリーズ3000酸素分析装置(Alpha Omega Instruments(Cumberland RI)から入手可能)を使用して酸素レベルをモニタした。
【0114】
UV−LEDによる重合後、コーティングされた基材を150°F(66℃)の乾燥オーブンに2分間にわたり10ft/分(1.52m/分)のウェブ速度で移送することにより硬化コーティング中の溶媒を除去した。次にDバルブを装着したFusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)より入手可能)を使用して、乾燥コーティングを後硬化した。UV Fusionチャンバには窒素流を供給し、チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。
【0115】
実施例B−傾斜光学フィルム上の体積拡散体上塗り(volume diffuser overcoat)
27.4gの1−メトキシ−2−プロパノール、27.2gのメタノール、29.6gのKSR3ポリスチレンビーズ、8.1gのPhotomer 6210、3.6gのSR833S、4.2gのSR9003、及び0.4gのDarocur 4265を混合して体積拡散体コーティング溶液「B」を調製した。
【0116】
体積拡散体コーティング溶液「B」を、ノッチバーコーティングを使用し隙間厚さ127マイクロメートルで基材にコーティングした。コーティングを150°F(66℃)で2分間乾燥した後、Fusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD))を使用し13.7m/分で硬化した。Model I600は、Dバルブを装着しており、100%出力で作動した。UV Fusionチャンバには窒素流を供給し、硬化チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。
【0117】
実施例1−傾斜光学フィルムにおける屈折率及び高密度層変化
光開始剤が下塗りされたDBEF反射偏光子フィルムにコーティング溶液Aを実施例Aに従ってコーティングして、一連のコーティングされたフィルムを作製した。各コーティングされたフィルムの硬化条件は同じであったが、空気流速及び酸素レベルを変更した。
【0118】
BYK−Gardner Haze−Gardを使用して透過率及びヘイズを測定した。コーティングの屈折率(RI)を、Model 2010 Prism Coupler(Metricon Corporation(Pennington NJ)より入手可能)を使用して測定した。Model 2010 Metriconは、632.8nmの波長で動作するHeNeレーザ及び光学プリズム(コード6567.9)を装着していた。測定はTE及びTMモードの両方で行われた。コーティングのフィルム側の屈折率を判定するために、基材がプリズム結合器と密着するようにして試料を装填した。コーティングの空気側の屈折率を判定するために、コーティングがプリズム結合器と密着するようにして試料を装填した。コーティングのそれぞれについての測定結果を表1にまとめる。
【0119】
【表1】
傾斜光学フィルムの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を得た。最初に、傾斜光学フィルムの代表的試料が選択された。次に、試料が液体窒素中で凍結された。次いで、液体窒素から試料を取り出してすぐに破砕して、傾斜光学フィルム断面を厚さ方向に沿って露出させた。次に、この後の方法での試料の帯電を防ぐため、厚さ約1nmの金/パラジウム合金の層で試料をスパッタリングした。次いで、傾斜光学フィルムの上表面と断面を、走査型電子顕微鏡を使用して撮影した。
【0120】
図6A〜図6Cは、実施例1の試料のSEMを酸素レベルが上昇する順に示している。図6Aは、酸素レベル1707ppmで硬化された試料3aを示している。図6Bは、3578ppmで硬化された試料1aを示している。図6Cは、5640ppmで硬化された試料2aを示している。空気界面の多孔性は、基材界面近くの層よりも低い。高密度層の厚さは、酸素濃度によって決まり、より高い酸素レベルはより厚い高密度層を生じさせる。
【0121】
実施例2−傾斜のない上塗りされた対照光学フィルム
傾斜光学フィルムを溶液で上塗りし、溶液が細孔に浸潤するかどうかを判定した。コーティング溶液「B」を、同時係属中の出願である発明の名称「OPTICAL FILM」(代理人整理番号65062US002)に記載の方法によって作製された傾斜光学フィルム(試料9146−1)にコーティングした。コーティング溶液は、Irgacure 819(0.15pph)及びIrgacure 184(0.45pph)をコーティング溶液「A」に混ぜ合わせて調製した。溶液をライン速度9.14m/分でTOPQ反射偏光子にコーティングした。溶液は、スロットタイプダイを使用して、速度43g/分及びコーティング幅20.3cm(8インチ)で供給された。コーティングは、395nmのUV−LED(Cree,Inc.(Durham NC))のアレイを使用して重合された。UV−LEDは2.25アンペアで動作し、平方センチメートル当たり0.03ジュールのUV−V線量を供給した。アレイは、16個(ダウンウェブ)×22個(クロスウェブ)のLEDを有した。スロットタイプマニホールドを使用して窒素を硬化チャンバに導入し、不活性雰囲気を維持した。チャンバ内の酸素濃度をSeries 3000 Alpha Omega Analyzeを使用して測定し、100ppmより低く維持した。硬化後、Fusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD))を使用してコーティングを150°F(66℃)で乾燥し、次に70°F(21℃)で後硬化した。Model I600は、Dバルブを装着しており、100%出力で作動した。UV Fusionチャンバには窒素流を供給し、後硬化チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。その結果生じた光学フィルムは他の箇所で記載されるように特徴付けられ、空気側の屈折率はRI=1.23、フィルム側の屈折率はRI=1.23であり、ΔRI=0となった。次に、実施例Bに記載の方法を用いて、コーティング溶液「B」を光学フィルム(試料9146−1)にコーティングした。記載の方法の生成部分(試料9146−1 OC)は、TOP−Q反射偏光子上の2回通過コーティングであった。Model 2010 Metriconを使用して、第2のコーティング層の塗布前(RI=1.22)及び塗布後(RI=1.49)の第1のコーティング層のフィルム側の屈折率の変化を測定した。フィルム側の屈折率はコーティング後に著しく増加し、光学フィルム内の細孔がもはや空気で充填されていないことを示した。
【0122】
実施例3−上塗りされた傾斜光学フィルム
傾斜光学フィルム(試料9211−30)を溶液で上塗りし、溶液が細孔に浸潤するかどうかを判定した。Irgacure 819を0.06pphの装填量でコーティング溶液Aに添加した。次いで、コーティング溶液「A」を、20.3cm(8インチ)スロットタイプダイを使用し、ライン速度6.1m/分及び流速40g/分で2ミル(0.05mm)のPETフィルムに塗布した。コーティングは、395nmのUV−LED(Cree,Inc.(Durham NC))のアレイを使用して重合された。UV−LEDは5アンペアで動作し、平方センチメートル当たり0.1ジュールのUV−V線量を供給した。アレイは、16個(ダウンウェブ)×22個(クロスウェブ)LEDを有した。スロットタイプマニホールドを使用し、流速118L/分で窒素を硬化チャンバに導入した。空気と窒素供給をインラインで混合して、UV−LED硬化チャンバ内の酸素濃度5012ppmを維持した。チャンバ内の酸素濃度をSeries 3000 Alpha Omega Analyzeを使用して測定した。硬化後、Fusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD))を使用してコーティングを150°F(66℃)で乾燥させ、次に70°F(21℃)で後硬化した。Model I600は、Dバルブを装着しており、100%出力で作動した。UV Fusionチャンバには、窒素流を供給し、後硬化チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。その結果生じた光学フィルム(試料9211−30)は他の箇所で記載されるように特徴付けられ、空気側の屈折率はRI=1.47、フィルム側の屈折率はRI=1.26であり、ΔRI=0.21となった。
【0123】
次いで、実施例Bに記載の通りにコーティング溶液「B」を傾斜光学フィルムに塗布した。Model 2010 Metriconを使用して、第2のコーティング層の塗布前(RI=1.26)及び塗布後(RI=1.26)の第1のコーティング層のフィルム側の屈折率の変化を測定した。第2のコーティングを塗布すると、フィルム側の屈折率には無視できるほど小さい変化が生じ、第1のコーティングは浸透しないように封止されたことを示している。
【0124】
実施例4−光学フィルムへの接着剤浸
実施例2の光学フィルム試料9146−1のコーティング側を、光学的に透明な感圧接着剤(8171、3M Companyより入手可能)を使用してガラスに積層した。試料を85℃で150時間、熱的に時効した。Model 2010 Metriconを使用して、感圧接着剤層に対する熱的時効の前(RI=1.23)及び後(RI=1.33)のフィルム側の屈折率の変化を測定した。フィルム側の屈折率は時効後に増加し、光学フィルム内の細孔の一部がもはや空気で充填されていないことを示した。
【0125】
実施例5−傾斜光学フィルムへの接着剤浸透
実施例3の光学フィルム試料9211−30のコーティング側を、光学的に透明な感圧接着剤(8171、3M Companyより入手可能)を使用してガラスに積層した。試料を85℃で150時間、熱的に時効した。Model 2010 Metriconを使用して、感圧接着剤層に対する熱的時効の前(RI=1.26)及び後(RI=1.26)のフィルム側の屈折率の変化を測定した。熱的時効後、フィルム側の屈折率には無視できるほど小さい変化が生じ、光学フィルムは浸透しないように封止されたことを示している。
【0126】
実施例C−モノマーの選択により改善された耐久性
コーティング溶液「C」を調製した。まず、360gのNalco 2327コロイドシリカ粒子(40重量%固形分及び平均粒子直径約20ナノメートル)及び300gの1−メトキシ−2−プロパノールを、冷却器及び温度計を備えた2リットル3つ口フラスコの中で高速撹拌下で混合した。次に、22.15gのSilquest A−174シランを加え、この混合物を10分間撹拌した。次に、更に400gの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、加熱マントルを使用してこの混合物を85℃で6時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、水及び1−メトキシ−2−プロパノール溶媒(約700g)のほとんどをロータリーエバポレータを使用して水浴温度60℃で除去した。得られた溶液は、1−メトキシ−2−プロパノールに分散された44重量%のA−174修飾20nmシリカを有する透明なA−174修飾シリカ溶液であった。
【0127】
次に、120gのA−174修飾シリカ溶液、17.6gのCN2302、35.2gのSR444、1.05gのTEGO Rad 2250、0.264gのIrgacure 819、0.81gのIrgacure 184、及び156gのイソプロピルアルコールを撹拌により混合し、均質なコーティング溶液Cを形成した。
【0128】
実施例D−中間ヘイズ(Medium haze)コーティング溶液
コーティング溶液「D」を調製した。最初に、凝縮器及び温度計を備えた2リットル3つ口フラスコ内で、309gのNalco 2327(40重量%固体)と300gの1−メトキシ−2−プロパノールとを、高速攪拌で混合した。次に、9.5gのSilquest A−174及び19.0gのSilquest A−1230を加え、得られた混合物を10分間撹拌した。この混合物を加熱マントルを使用して80℃で1時間加熱した。追加の400gの1−メトキシ(mothoxy)−2−プロパノールを加え、この混合物を16時間80℃に保持した。得られた溶液を室温まで冷却し、水及び1−メトキシ−2−プロパノール溶媒(約700g)のほとんどをロータリーエバポレータを使用して水浴温度60℃で除去した。得られた溶液は、1−メトキシ−2−プロパノールに分散された48.7重量%のA174/A1230修飾20nmシリカを有する透明なA174/A1230修飾シリカ溶液であった。
【0129】
次に、63.4gの透明なA174/A1230修飾シリカ溶液、30.8gのSR 444、0.46gのIrgacure 184、及び98gのイソプロピルアルコールを撹拌により混合して、均質なコーティング溶液Dを形成した。
【0130】
実施例E−75マイクロメートルのシリカ粒子を有するコーティング溶液
コーティング溶液「E」を調製した。300gのNalco 2329シリカ粒子(40重量%固形分、平均粒径75nm)及び300gの1−メトキシ−2−プロパノールを、冷却器及び温度計を備えた1リットルフラスコの中で高速撹拌下で混合した。次に、7.96gのSilquest A−174を加え、得られた混合物を10分間撹拌した。追加の400gの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、得られた混合物を加熱マントルを使用して85℃で6時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、水及び1−メトキシ−2−プロパノール溶媒(約720g)のほとんどをロータリーエバポレータを使用して水浴温度60℃で除去した。得られた溶液は、1−メトキシ−2−プロパノールに分散した45重量%のA−174修飾75nmシリカを有するA−174修飾75nmシリカ溶液であった。
【0131】
次に、54.6gのA−174修飾75nmシリカ溶液、24.6gのSR444、70gのイソプロピルアルコール、0.122gのIrgacure 819、及び0.368gのIrgacure 184を撹拌により混合して、均質なコーティング溶液Eを形成した。
【0132】
実施例F−細長い粒子を有するコーティング溶液
コーティング溶液「F」を調製した。冷却器及び温度計を備えた2リットル3つ口フラスコの中で、960グラムのIPA−ST−UPオルガノシリカの細長い粒子、19.2グラムの脱イオン水、及び350グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを高速撹拌下で混合した。この細長粒子は、約9nm〜約15nmの範囲の直径及び約40nm〜約100nmの範囲の長さを有していた。この粒子を15.2重量%のIPAに分散し、22.8グラムのSilquest A−174シランをフラスコに加えた。得られた混合物を30分間攪拌した。
【0133】
この混合物を16時間81℃に保った。次に、溶液を室温まで冷却し、溶液中の約950グラムの溶媒を、ロータリーエバポレータを使用して水浴温度40℃で除去し、41.7重量%のA−174で修飾された細長いシリカが1−メトキシ−2−プロパノールに分散している透明なA−174で修飾された細長いシリカ溶液を得た。
【0134】
次に、200グラムの透明なA−174修飾細長シリカ溶液、83.4グラムのSR444、1.6gのTEGO Rad 2250、1.25グラムのIrgacure 184、及び233グラムのイソプロピルアルコールを混合して撹拌し、32.5重量%固形分を有する均質なコーティング溶液Fを得た。
【0135】
実施例G−コーティング手順
コーティング手順「G」を開発した。最初に、コーティング溶液を、6cc/分の速度で、10.2cm(4インチ)幅スロットタイプのコーティングダイ内にシリンジポンプで送り込んだ。スロットコーティングダイは、152cm/分(10フィート/分)で移動する基材上に10.2cm幅のコーティングを均一に分配した。
【0136】
次に、コーティングされた基材をUV−LED硬化チャンバ(紫外線放射を通す石英窓が含まれている)の中に通すことによってコーティングを重合させた。UV−LEDバンクは、8個(ダウンウェブ)×20個(クロスウェブ)の160個のUV−LED(約10.2cm×20.4cmの領域をカバーする)の矩形配列を含んだ。LED(Cree,Inc.(Durham NC)より入手可能)を385nmの公称波長で動作し、また、45ボルト、8アンペアで駆動され、その結果UV−A線量は平方センチメートル当たり0.212ジュールとなった。ファンで冷却するUV−LEDアレイは、TENMA 72−6910(42V/10A)電力供給装置(Tenma(Springboro OH)より入手可能)によって給電された。UV−LEDは、基材から約2.5cmの距離にある、硬化チャンバの石英窓の上に配置された。UV−LED硬化チャンバには、1時間当たり46.7リットル/分(100立方フィート)の流量の窒素流が供給され、これにより硬化チャンバ内の酸素濃度は約150ppmとなった。追加の酸素流を供給して、UV−LEDチャンバ内の総酸素レベルを制御した。
【0137】
UV−LEDによって重合された後、コーティングされた基材を150°F(66℃)の乾燥オーブンに10ft/分(152cm/分)のウェブ速度で1分間移動させることによって、硬化したコーティング中の溶媒を除去した。次に、Hバルブを装着したFusion System Model I300P(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)から入手可能)を用いて、乾燥コーティングを後硬化した。UV Fusionチャンバには、窒素流を供給し、チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。
【0138】
実施例6−接着剤を下塗りしたPETのコーティング
コーティング溶液Cを、実施例Hに従って、9アンペアのUV−LEDを使用し可変流速及び酸素レベルで、接着剤を下塗りしたPETフィルム(DuPont Teijin Filmsから入手可能)にコーティングした。透過率、ヘイズ、透明度、及び有効屈折率(RI)を含む光学特性を他の箇所で記載されるように測定した。コーティングのそれぞれに関する測定結果を表2にまとめる。
【0139】
【表2】
傾斜光学フィルムの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を得た。最初に、傾斜光学フィルムの代表的試料が選択された。次に、試料が液体窒素中で凍結された。次いで、液体窒素から試料を取り出してすぐに破砕して、傾斜光学フィルム断面を厚さ方向に沿って露出させた。次に、この後の方法での試料の帯電を防ぐため、厚さ約1nmの金/パラジウム合金の層で試料をスパッタリングした。次いで、傾斜光学フィルムの上表面と断面を、走査型電子顕微鏡を使用して撮影した。図7Aは、実施例6の試料10bのSEMを示しており、試料10bは実施例6で調製された試料のうちで最大ΔRIを有していた。最大ΔRIは、2つの表面におけるボイド体積分率の大きな差異に対応していた。
【0140】
実施例7−中間ヘイズ傾斜コーティングを有する光開始剤が下塗りされたPET基材
0.2重量%のIrgacure 819とMEKを混合して光開始剤(PI)コーティング溶液を調製した。このPIコーティング溶液を、圧力ポットを使用し1.75cc/分で4”(10.2cm)に調整された8”(20.3cm)幅スロットダイを通して、30フィート/分(75.6cm/分)の速度で2ミル(0.05mm)のPETフィルムにコーティングした。コーティングを150°F(66℃)のオーブンの中で乾燥させ、PI下塗りされた2ミル(0.05mm)のPETフィルムを得た。
【0141】
UV−LED(Cree,Inc.(Durham NC)より入手可能)が395nmの公称波長で動作し、13アンペアで駆動されたこと以外は実施例Hに従って、コーティング溶液DをPI下塗りされた2ミル(0.05mm)のPETフィルムにコーティングした。透過率、ヘイズ、透明度、及び有効屈折率(RI)を含む光学特性を他の箇所で記載されるように測定した。コーティングのそれぞれに関する測定結果を表3にまとめる。
【0142】
【表3】
傾斜光学フィルムの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を得た。最初に、傾斜光学フィルムの代表的試料が選択された。次に、試料が液体窒素中で凍結された。次いで、液体窒素から試料を取り出してすぐに破砕して、傾斜光学フィルム断面を厚さ方向に沿って露出させた。次に、この後の方法での試料の帯電を防ぐため、厚さ約1nmの金/パラジウム合金の層で試料をスパッタリングした。次いで、傾斜光学フィルムの上表面と断面を、走査型電子顕微鏡を使用して撮影した。図7Bは、実施例7の試料30cのSEMを示しており、試料30cは実施例7で調製された試料のうちで最大ΔRIを有していた。最大ΔRIは、2つの表面におけるボイド体積分率の大きな差異に対応していた。
【0143】
実施例8−75マイクロメートルシリカコーティング溶液を有するPI下塗りされたPET基材
コーティング溶液Eを実施例Hに従って、溶液流速5cc/分、様々な酸素レベル、及びUV−LEDを9アンペアで駆動して、PI下塗りされた2ミル(0.05mm)のPETフィルムにコーティングした。透過率、ヘイズ、透明度、及び有効屈折率(RI)を含む光学特性を他の箇所で記載されるように測定した。コーティングのそれぞれに関する測定結果を表4にまとめる。
【0144】
【表4】
傾斜光学フィルムの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を得た。最初に、傾斜光学フィルムの代表的試料が選択された。次に、試料が液体窒素中で凍結された。次いで、液体窒素から試料を取り出してすぐに破砕して、傾斜光学フィルムの断面を厚さ方向に沿って露出させた。次に、この後の方法での試料の帯電を防ぐため、厚さ約1nmの金/パラジウム合金の層で試料をスパッタリングした。次いで、光学フィルムの上表面と断面を、走査型電子顕微鏡を使用して撮影した。図7Cは、実施例8の試料17dのSEMを示しており、試料17dは実施例8で調製された試料のうちで最大ΔRIを有していた。最大ΔRIは、2つの表面におけるボイド体積分率の大きな差異に対応していた。
【0145】
実施例9−細長い粒子コーティング溶液を有するPI下塗りされたPET基材
コーティング溶液Fを実施例Hに従って、溶液流速5cc/分でPI下塗りされた2ミル(0.05mm)のPETフィルムにコーティングし、UV−LED(Cree,Inc.(Durham NC)より入手可能)は395nmの公称波長で動作し、13アンペアで駆動された。透過率、ヘイズ、透明度、及び有効屈折率(RI)を含む光学特性を他の箇所で記載されるように測定した。コーティングのそれぞれに関する測定結果を表5にまとめる。
【0146】
【表5】
指示がない限り、本明細書及び請求項で使用される特性となる大きさ、量、及び物理特性を示す全ての数字は、「約」と言う用語によって修飾されることを理解されたい。それ故に、別の指示がない限りは、本明細書及び添付の「請求項」に説明される数字のパラメータは近似値であり、本明細書に開示された教示を使用して当業者が獲得しようとする所望の特性に応じて変化し得る。
【0147】
本願で引用した全ての参照文献及び刊行物は、本開示と完全には矛盾することのない程度まで、その全てが引用によって本開示に明白に組み込まれる。本明細書において特定の実施形態が例示及び説明されてきたが、多様な代替及び/又は同等の実施が、本開示の範囲から逸脱することなく、図示され説明された特定の実施形態と置き換えられ得ることは、当業者には理解されるであろう。本出願は、本明細書で説明された特定の実施形態のいかなる翻案又は変形をも包含すべく意図されている。したがって、本開示が「特許請求の範囲」及びその同等物によってのみ限定されることを、意図するものである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、次に列挙する2009年4月15日に出願された米国特許出願に関連し、当該出願は参照により援用される:発明の名称「Optical Construction and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65354US002);発明の名称「Retroreflecting Optical Construction」(代理人整理番号65355US002);発明の名称「Optical Film for Preventing Optical Coupling」(代理人整理番号65356US002);発明の名称「Backlight and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65357US002);発明の名称「Process and Apparatus for Coating with Reduced Defects」(代理人整理番号65185US002);及び発明の名称「Process and Apparatus for a Nanovoided Article」(代理人整理番号65046US002)。
【0002】
本出願はまた、次に列挙する本出願と同日に出願された米国特許出願に関連し、当該出願は参照により援用される:発明の名称「Gradient Low Index Article and Method」(代理人整理番号65716US002);発明の名称「Immersed Reflective Polarizer with High Off−Axis Reflectivity」(代理人整理番号65809US002);発明の名称「Immersed Reflective Polarizer with Angular Confinement in Selected Planes of Incidence」(代理人整理番号65900US002);及び発明の名称「Light Source and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65782US002)。
【背景技術】
【0003】
ナノメートルサイズの細孔又はボイド構造を有する物品は、一部の用途では、ナノボイド含有組成物(nanovoided composition)によってもたらされる光学的、物理的、又は機械的特性に基づき有用であってよい。例えば、ナノボイド含有物品(nanovoided article)は、細孔又はボイドを少なくとも部分的に取り囲むポリマーの固体ネットワーク又はマトリックスを含む。細孔又はボイドは、空気などの気体で充填される場合が多い。ナノボイド含有物品の中の細孔又はボイドの寸法は、一般に、約1ナノメートル〜約1000ナノメートルまで様々であってよい平均有効径を有しているとして記述することができる。国際純正・応用化学連合(IUPAC:The International Union of Pure and Applied Chemistry)は、ナノ細孔物質の3つのサイズカテゴリ、即ち、ボイドが2nm未満の微細孔、2nm〜50nmのメソ細孔、及びボイドが50nmを超えるマクロ細孔を規定している。異なるサイズカテゴリのそれぞれは、ナノボイド含有物品に固有の特性をもたらすことができる。
【0004】
重合誘起相分離(PIPS)、熱誘起相分離(TIPS)、溶媒誘起相分離(SIPS)、乳化重合、及び起泡剤/発泡剤を用いる重合といったいくつかの技術を用いて、多孔性又はボイド含有物品が製造されてきた。多くの場合、こうした方法で製造された多孔性又はボイド含有物品は、上記構造を形成するのに使用した界面活性剤、油、又は化学残留物などの物質を除去するために、洗浄工程などの追加処理工程を必要とする。洗浄工程は、形成される細孔又はボイドの寸法範囲及び均一性を制限し得る。こうした技術で使用することができる物質の種類もまた限定される。洗浄工程を必要としない、ナノボイド含有物品を作製するための迅速で信頼性のある技術が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本開示は、傾斜ナノボイド含有(gradient nanovoided)コーティングの製造方法を提供し、方法は、溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、コーティングの第1の領域に近接した第1の環境、及びコーティングの隣接領域に近接した異なる第2の環境を提供することと、を含む。傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法は、重合性物質を少なくとも部分的に重合して、複数のナノボイド及び第2の溶液と共連続性(bicontinuous)である不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、第2の溶液から溶媒の大部分を除去することと、を更に含む。コーティングの第1の領域に近接する複数のナノボイドの第1の体積分率は、コーティングの隣接領域に近接する複数のナノボイドの第2の体積分率よりも小さい。
【0006】
別の態様において、本開示は、傾斜低屈折率コーティングの製造方法を提供し、方法は、基材の表面上に光開始剤をコーティングすることと、分散液を光開始剤の上にコーティングすることと、UV放射線硬化性物質を少なくとも部分的に重合するために分散液をUV放射線で照射することと、重合性物質を少なくとも部分的に重合した後、溶媒の大部分を分散液から除去することと、を含む。分散液は、紫外線(UV)放射線硬化性物質と、溶媒と、複数のナノ粒子と、を含む。更に、UV放射線硬化性物質を少なくとも部分的に硬化するために分散液をUV放射線で照射することにより、複数のナノ粒子を結合し、複数のナノボイドを含む不溶性ポリマーマトリックスが形成される。複数のナノボイドは、重合性物質が枯渇している分散液とナノ粒子で充填される。更に、基材の表面に近接する複数のナノボイドの第1の体積分率は、不溶性ポリマーマトリックスの反対面に近接する複数のナノボイドの第2の体積分率よりも大きい。
【0007】
更に別の態様では、本開示は、傾斜低屈折率コーティングの製造方法を提供し、方法は、基材の表面に分散液をコーティングすることと、少なくとも100ppm(part per million)の酸素雰囲気を分散液に隣接して提供することと、UV放射線硬化性物質を少なくとも部分的に重合するために分散液をUV放射線で照射することと、重合性物質を少なくとも部分的に重合した後、溶媒の大部分を分散液から除去することと、を含む。分散液は、紫外線(UV)放射線硬化性物質と、光開始剤と、溶媒と、複数のナノ粒子と、を含む。更に、UV放射線硬化性物質を少なくとも部分的に硬化するために分散液をUV放射線で照射することにより、複数のナノ粒子が結合しており、重合性物質が枯渇している分散液とナノ粒子とで充填されている複数のナノボイドを含む、不溶性ポリマーマトリックスが形成される。また更に、基材の表面に近接する複数のナノボイドの第1の体積分率は、不溶性ポリマーマトリックスの反対面に近接する複数のナノボイドの第2の体積分率よりも大きい。
【0008】
更に別の態様では、本開示は、傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法を提供し、方法は、溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、を含む。傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法は、第2の溶液から溶媒の大部分を除去して、自由表面を有するナノボイド含有コーティングを形成することと、第3の溶液を自由表面にコーティングして、ナノボイド含有コーティングを少なくとも部分的に充填することと、第3の溶液を凝固させることと、を更に含む。更に、コーティングの自由表面に近接する複数のナノボイドの第1の体積分率は、コーティングの反対面に近接する複数のナノボイドの第2の体積分率よりも小さい。
【0009】
更に別の態様では、本開示は、傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法を提供し、方法は、溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを含む第1の層を形成することと、を含む。傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法は、第3の溶液を第1の層にコーティングして第2の層を形成することと、第3の溶液を凝固させることと、第2及び第3の溶液から溶媒の大部分を除去して、傾斜ナノボイド含有コーティングを形成することと、を含む。更に、第1の層内の複数のナノボイドの第1の体積分率は、第2の層内の複数のナノボイドの第2の体積分率と異なる。
【0010】
上記の「課題を解決するための手段」は、開示された各実施形態、又は本開示の全ての実施を記載することを意図しない。以下の図及び発明を実施するための形態は、説明的な実施形態をより具体的に例証する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書を通して、添付の図面を参照し、同じ参照番号は同じ要素を示す。
【図1A】傾斜ナノボイド含有物品の製法の概略図。
【図1B】傾斜ナノボイド含有物品の製法の概略図。
【図2A】傾斜ナノボイド含有物品の製法の概略図。
【図2B】傾斜ナノボイド含有物品の製法の概略図。
【図3A】傾斜ナノボイド含有コーティングの製法の概略図。
【図3B】図3Aの重合セクションの概略図。
【図3C】図3Bの重合セクションの概略図。
【図4A】傾斜光学フィルム(gradient optical film)の断面顕微鏡写真。
【図4B】図4Aの顕微鏡写真よりも高倍率の顕微鏡写真。
【図5A】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図5B】図5Aの顕微鏡写真よりも高倍率の顕微鏡写真。
【図6A】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図6B】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図6C】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図7A】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図7B】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【図7C】傾斜光学フィルムの断面顕微鏡写真。
【0012】
図面は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図中で用いられる類似の数字は、類似の構成要素を示す。しかし、所与の図中の構成要素を意味する数字の使用は、同一数字でラベル付けされた別の図中の構成要素を制約するものではないことは理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
独自の傾斜形態を有するナノボイド含有物品を形成するための装置及びいくつかの独自の製法が記載される。一般に、この製法は、溶液中での物質の重合を目的とし、溶液中には溶媒が存在する。物質は、熱重合され得る、又は化学線を用いて重合され得る。溶媒中に放射線硬化性物質を含む溶液は、傾斜ナノボイド含有物品の製造に特に適している可能性がある。溶媒は複数の溶媒の混合物であることができ、特に適している溶媒は、重合性物質と反応しないものである。重合の間、形成されたポリマーの溶媒溶解性は低下して溶液から分離し、不溶性ポリマーマトリックスと、相分離している溶媒リッチなネットワークと、を含む組成物が生じる。
【0014】
ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックスと相分離している溶媒リッチなネットワークとの体積比は、組成物の厚さ方向全体にわたって異なる。溶媒は、傾斜ナノボイド含有物品をもたらす細孔及びボイドを残してその後除去される。溶液は基材の上にコーティングされて、基材上に傾斜ナノボイド含有コーティングを提供することができる。いくつかの実施形態では、基材はその後、傾斜ナノボイド含有物品を残して除去することができる。
【0015】
ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックスと相分離している溶媒リッチなネットワークとの体積比は、組成物の厚さ方向全体にわたって本質的に一定のままであってよい。場合によっては、例えば、複数の粒子などの第2の不溶性成分が厚さ方向全体にわたって変化し、それによって、孔隙率を変化させる(例えば、組成物の一部を「稠密化する」)ことができる。続いて、傾斜ナノボイド含有物品をもたらす細孔及びボイドを残した状態で溶媒を除去する。溶液を基材の上にコーティングして、基材上に傾斜ナノボイド含有コーティングを設けることができる。いくつかの実施形態では、基材はその後、傾斜ナノボイド含有物品を残して除去することができる。
【0016】
一般に、本明細書で用いられるとき、「細孔」及び「ボイド」は、ポリマーマトリックスによって部分的に又は全体的に取り囲むことができる、ナノボイド含有物品内のポリマー非含有領域を指す。「ボイド」は、たとえいかに量が少なくてもあらゆるポリマー非含有領域を指すより広い用語であり、ナノボイド含有物品の寸法によってのみ限定される。「細孔」は「ボイド」の部分集合であり、一般に、ポリマーマトリックスを実質的に通って広がるポリマー非含有領域を指す。「細孔」はナノボイド含有物品全体に広範囲に及ぶことができ、いくつかの実施形態では、他の箇所で記載されるように、物品の一方の表面を他方につなぐ。
【0017】
細孔又はボイドの有効径は、細孔又はボイドと同じ断面積を有する円の直径と関連付けることができ、この有効径を物品の寸法にわたって平均化して、平均有効径をもたらすことができる。ナノボイド含有物品は、細孔又はボイドが物品を取り囲んでいる環境と連通する「開放セル」構造体であってよい。あるいは、ナノボイド含有物品は、細孔又はボイドが固体ネットワーク又はマトリックスに取り囲まれて、物品を取り囲んでいる環境から細孔又はボイドを封止する「閉鎖セル」構造体であってよい。多くの場合、ナノボイド含有物品は、開放セル構造体と閉鎖セル構造体の組み合わせを含む。
【0018】
ナノボイド含有物品の中の細孔及びボイドの平均有効径の寸法は、一般に、約1000nm未満、100nm未満、又は更に約10nm未満の範囲であってよい。使用目的によっては、特に光との相互作用を含む用途では、細孔及びボイドの平均有効径の寸法は、使用する光の波長と同程度である。いくつかの例示的なナノボイド含有物品及びナノボイド含有物品の用途は、例えば、全て2009年4月15日に出願された、同時係属中の、代理人整理番号65062US002、発明の名称「OPTICAL FILM」;代理人整理番号65357US002、発明の名称「BACKLIGHT AND DISPLAY SYSTEM INCORPORATING SAME」;代理人整理番号65356US002、発明の名称「OPTICAL FILM FOR PREVENTING OPTICAL COUPLING」;代理人整理番号65354US002、発明の名称「OPTICAL CONSTRUCTION AND DISPLAY SYSTEM INCORPORATING SAME」;及び代理人整理番号65355US002、発明の名称「RETROREFLECTING OPTICAL CONSTRUCTION」に見出すことができる。ナノボイド含有物品の用途は、ポリマーマトリックスの機械的特性に依存し得る。ある特定の実施形態では、ポリマーマトリックスの弾性率及び強度は、溶媒が除去されたときにボイドスペースを維持するのに十分である。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスの弾性率及び強度は、溶媒が除去された後にボイドスペースを維持するのに十分でなく、その結果ナノボイドのない「崩壊性(collapsed)」コーティングがもたらされる。いくつかのそのような実施形態では、均質組成物はポリマーゲルを含む。ポリマーゲルは、流体(この場合は溶媒)によって全体積にわたって広がるが、溶媒の除去後は自己支持型でないポリマーネットワークである。このような崩壊性コーティングは、例えば、同時係属中の代理人整理番号65185US002、発明の名称「PROCESS AND APPARATUS FOR COATING WITH REDUCED DEFECTS」(2009年4月15日出願)に記載のように、コーティング欠陥が低減した均質なコーティングの製法の改良を提供する。
【0020】
本発明の処理は、物品全体にわたる細孔のサイズ及び分布の制御を可能にする。ある特定の実施形態では、例えば、同時係属中の代理人整理番号65046、発明の名称「PROCESS AND APPARATUS FOR A NANOVOIDED ARTICLE」(2009年4月15日出願)に記載のように、ナノボイド含有物品の中の細孔及びボイドは、物品全体にわたって均一に分散することができる。
【0021】
本明細書に記載の特定の実施形態では、細孔及びボイドは、例えば、傾斜ナノボイド含有物品の中に不均一に分散することができ、又は傾斜ナノボイド含有物品全体にわたるそれらのサイズ、形状、及び分布は様々であってよい。場合によっては、細孔及びボイドの少なくとも一部は物品全体にわたって連続的である。即ち、各細孔及びボイドを物品の両面につなげる、連続的であるが潜在的に蛇行した経路が存在する。連続的な経路(しばしば共連続相に起因する)は、ポリマーマトリックスの重合の間に溶媒が閉鎖セル構造体に閉じ込められる場合よりも、物品から溶媒を容易に除去するのを可能にする。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、一方の表面上ではほぼ全てのボイドが閉鎖し、この表面が溶媒に対して本質的に不浸透性になるように、ボイドの体積分率は物品全体にわたって変化する。本開示の技術によって調製される傾斜ナノボイド含有物品は、例えば、同時係属中の代理人整理番号65716US002、発明の名称「GRADIENT LOW INDEX ARTICLE AND METHOD」(本願と同日に出願)に記載のもののような傾斜光学フィルムとして使用され得る。
【0022】
ある特定の実施形態では、重合装置は、最近開発された紫外線発光ダイオード(UV LED)システムを使用する。UV LEDシステムは、寸法が小さく、フリーラジカル重合で使用されないほんの少しの赤外線又は他の波長の光を放射することができる。使用不可能な波長の放射線が減少する結果、コーティングの加熱を減少させることができる。加えて、こうした特性は、特にコーティング溶媒が存在する環境にUV硬化性組成物を暴露するのをより安全でより現実的にすることができる。UV LEDシステムは、例えば365nm、385nm、395nm、405nm等といったいくつかの所望のピーク波長で作動するように構成され得る。その他の放射線源、例えば、UVレーザ、UVランプ、可視光ランプ、閃光灯などを使用してもよく、例えば、電子線(EB)源等などの他の高エネルギー粒子発生装置を使用することができる。
【0023】
重合は迅速に起こり得、重合装置は、コーティングステーションと従来の溶媒除去ステーションとの間に設置され得る。重合装置は、硬化の開始時にコーティングされたフィルム内に溶媒のかなりの部分が尚も存在する限り、従来の乾燥装置内、又は一連の従来の乾燥装置の間に設置することも可能である。
【0024】
処理パラメータ、例えば、重合の開始時のウェブ速度、コーティング厚さ、化学線(例えば、UV LED)スペクトル及びピーク波長、強度、線量、温度、並びにコーティングの組成などは、得られる傾斜ナノボイド含有物品に影響を与え得る。得られる傾斜ナノボイド含有物品に影響を与え得る他の処理パラメータとしては、重合の間のコーティングの組成、環境制御、例えば、気相組成、気流場、及びガス流速などが挙げられる。気相組成は、溶媒組成及び濃度、並びに特に重合領域近くの酸素濃度を含み得る。コーティングされたフィルムの環境を、コーティング塗布から重合方法に至るまで制御することが望ましく、この制御は、制御されたガスを供給及び除去しながら、温度制御付きの囲いを使用して達成され得る。場合によっては、硬化(重合)及び乾燥は同時に起こり得る。乾燥技術は、薄膜形態及び均一性にも影響を与え得る。
【0025】
ポリマーマトリックスは、溶媒の除去後にボイドスペースを維持するのに十分な弾性率及び機械的一体性を有する必要がある。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、溶媒除去中及び除去後の変形を阻止する、三次元ポリマーマトリックスなどの架橋マトリックスである。ナノボイド含有物品の形成及び強度に影響を及ぼすために、粒子状充填剤(例えば、ナノ粒子などの粒子)をポリマーマトリックスに添加することができる。場合によっては、ナノ粒子の添加は、重合材料の有効弾性率を増加させること、細孔/ボイドの平均有効径及び物品全体にわたる分布を増加又は減少させること、ゲル点における重合性物質の重合率を低下させること、硬化前及び硬化中の溶液の粘度を増加させること、マトリックスの傾斜した密度の増加に影響を与えることができ、又はこれらと他の影響の組み合わせであってよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、傾斜ナノボイド含有コーティングを形成する方法は、一般に、1)溶液をコーティング装置に供給すること、2)多くのコーティング技術のうちの1つによって基材にコーティング溶液を塗布すること、3)コーティングされた基材を重合装置に移送すること(環境は、所望の組成物で薄い薄膜コーティングを実現させるように制御され得る)、4)溶媒がコーティング中に存在している間に少なくとも部分的に重合すること(重合は周囲環境下又は制御環境下で行われ得る)、5)重合環境を制御するために、重合装置の上流、下流、又はその中に制御されたガスを任意に供給すること、6)重合されたコーティングを乾燥装置に移送すること(もし自然乾燥を防止するために装置が適所に設置されていない場合には、乾燥はこの移送工程中に自然に起こり得る)、7)重合コーティングを乾燥すること、及び8)例えば、追加の熱硬化、可視光線硬化、UV硬化、又はEB硬化によって、乾燥した重合コーティングを任意に後処理すること、とを含む。
【0027】
ある特定の実施形態では、傾斜ナノボイド含有物品は、物品の厚さ方向全体にわたる異なる領域の硬化環境を制御することによって調製することができる。硬化環境は、例えば、光開始剤の濃度、重合禁止剤の濃度、光開始剤の種類、光開始光を吸収することができる化合物の種類及び濃度、及び同類のもの、又はこれらの組み合わせなどの硬化パラメータを変化させることによって制御可能である。
【0028】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、重合開始剤の濃度を用いて、傾斜ナノボイド含有物品の異なる領域の硬化環境を制御することができる。例えば、重合開始剤の濃度は、大部分(bulk)又は基材の反対側の自由表面上よりも、基材に隣接して低く又は高くあってよい。場合によっては、基材上に重合性溶液をコーティングする前に基材の表面上に反応開始剤をコーティングすることによって、重合開始剤の濃度を基材に隣接して増加させることができる。場合によっては、かかるコーティングされた重合開始剤の重合溶液中への拡散速度は、可溶性ポリマーを上塗りすることによって制御され得る。場合によっては、重合開始剤の濃度は、自由表面上に反応開始剤をコーティングすることによって、基材の反対側の自由表面に隣接して増加させることができる。場合によっては、異なる濃度の光開始剤を有する複数のコーティングを、例えば、多層コーティングの分野で既知のスライドコーティング、多層スロットコーティング、カーテンコーティング等を用いて、基材の上に順次又は同時にコーティングすることができる。
【0029】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、重合禁止剤の濃度を用いて、傾斜ナノボイド含有物品の異なる領域内の硬化環境を制御することができる。例えば、重合禁止剤の濃度は、大部分又は基材の反対側の自由表面上よりも、基材に隣接して低く又は高くあってよい。重合禁止剤は周知であり、例えば、酸素、モノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)などのヒドロキノン、フェノチアジン、若しくは2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−オキシル(TEMPO)などのピペリジン、又は同種のもの、あるいはこれらの組み合わせ又は誘導体が挙げられる。場合によっては、酸素は、使用することができるフリーラジカル重合の周知の抑制剤であり、酸素濃度は、コーティングされた物品の自由表面上でより高くあってよい。他の箇所で記載されるように、例えば、ナノボイドの体積分率を低減することにより、組成物を変化させることでナノボイド濃度を変化させるように、自由表面に隣接した重合を抑制することができる。
【0030】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、吸光度ベースの技法を用いて、コーティング全体の硬化環境を変化させることができる。z軸傾斜コーティングを形成するための吸光度ベースの技法は、コーティングを介するベールの吸光度の法則に依存し得る。ベールの法則は、試料の吸光度は、モル吸光係数、経路長、及び試料中の物質濃度に比例すると述べている。
【0031】
場合によっては、例えば、光開始光は、一連の層(strata)であると考えることができるコーティングの基材側から入射することができる。第1の層は、光の最大強度を遮り、ゲルコーティングの中の全ての種のモル吸光係数及び濃度に基づいてこの光の一部を吸収し、低強度の光を次の層へと通過させ、以下同様である。コーティングが十分に厚い場合、又は物質のモル吸光係数が十分に高い場合、実質的な光の強度プロファイルをコーティングの厚さ方向に作成して、傾斜ナノボイド含有コーティングを得ることができる。
【0032】
ある特定の実施形態では、コーティング中の成分のうちの1つは、光を多く吸収する物質であってもよく、又は光を多く吸収する物質で置き換えることができる。場合によっては、溶媒、ナノ粒子、又はポリマーは、光開始光を吸収する物質を使用することができる。場合によっては、硬化波長を物質が多く吸収する波長に変更することができる。場合によっては、光開始光を吸収する物質をコーティングに添加することができるが、その場合この物質は、例えば、熱分解、昇華、又は溶媒抽出などの二次工程で除去することができる。
【0033】
場合によっては、例えば、ナノボイド含有物品を作製するための溶媒は、典型的には、イソプロピルアルコール(IPA)とプロピレングリコールメチルエーテル(Dowanol PM)の混合物であり、これらはいずれも硬化波長で吸収しない。傾斜ナノボイド含有物品は、このような典型的な溶媒を、例えば、400nm未満の波長を吸収するトリクロロエチレン及びニトロメタン、又は典型的には330nm未満で吸収するケトンなどの、硬化波長で多く吸収する溶媒で置き換えることによって作製されてもよい。光開始剤の種類及び硬化波長は、使用する吸収種に応じて調整する必要があってよい。
【0034】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、粒子ベースの技法を用いて、コーティング全体の硬化環境を変更することができる。粒子ベースの技法は、コーティング中の粒子を使用して傾斜を形成することができる。場合によっては、例えば、外場をコーティングに適用して、場の中の成分の異なる流動性によって分離を引き起こすことができる。この場は、例えば、重力、遠心分離、磁気、熱、電気等であってよい。コーティング中の成分を特異的に分離することができる任意の場は、許容可能であってよい。
【0035】
場合によっては、コーティング中の粒子の一部を、磁性の粒子で置き換えることができる。未硬化コーティングの上に設置された電磁石は、粒子をコーティングの表面へと優先的に移動させることができる。硬化すると、これら移動した粒子は、磁力を伴わないものよりも密度の高い層を表面に形成することができる。場合によっては、コーティング中の粒子の一部を、電気泳動の粒子で置き換えることができる。未硬化コーティングの周囲に加えられた電界は、粒子をコーティングの表面へと優先的に移動させることができ、これら移動した粒子は、電界を伴わないものよりも密度の高い層を表面に形成することができる。その他のこのような場により誘発される粒子の移動は、当業者に既知である。
【0036】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、多層コーティング法を用いて、コーティング全体の硬化環境を変化させることができる。多層コーティング法は、積層体が硬化する前に順次又は連続的に堆積される、異なる処方を有する層の積層体を使用することができる。ごく近接した複数のコーティングダイのセット、又は当業者に既知の任意の他の方法、例えば、スライドコーティング、多重スロット供給ナイフコーティング、カーテンコーティング、又はこれらの組み合わせから、コーティングを繰り返し塗布することができる。
【0037】
場合によっては、層の第1のセットは、処方のそれぞれの中のナノ粒子の量を変化させることができ、積層体全体を同時に硬化させることができる。最上層は、不溶性ポリマーマトリックスを形成してもよいが、構造支持体の欠如によりその後崩壊してもよい。場合によっては、層の別のセットは、疎水性から親水性(hydrophyilic)へと変化してもよい。次に、後続工程において水性上塗りが塗布され得、水性上塗りは親水性(hydrophyilic)層のみを貫通し、疎水性層は上塗りのないままその下に残る。他の場合には、層のセットは、コーティングの中の光開始剤又は抑制剤の量を変化させることができ、その結果、最下層が最上層と異なる量を有する場合に、硬化及びポリマーマトリックス形成を変化させることができる。場合によっては、層のセットは、異なる硬化機構により硬化される組成物、例えば、順次又は同時のいずれかで硬化され得る熱硬化層及び放射線硬化層を含むことができる。
【0038】
ある特定の実施形態では、例えば、基材上のコーティングされた物品では、特に硬化後に傾斜を形成するために、制御充填法を用いて高密度領域を形成する、ないしは別の方法でコーティングを変更することができる。制御充填法は、硬化したナノボイド含有物品の上にコーティングされた材料層(例えば、上塗り)を使用して、上面を効果的に封止することができる。場合によっては、他の箇所で記載されるように、例えば、溶媒の乏しいコーティングの上に追加の溶媒をコーティングすることにより、より大きなボイド体積分率の相互接続したボイドを表面に形成するのを促進する代わりに、制御充填法を用いることができる。硬化したナノボイド含有物品の中への層の浸透は、塗布される上塗り層の量又は流動性を制御することによって制御され得る。コーティング法としては、例えば、ダイコーティング、グラビアコーティング、ナイフコーティング、スプレーコーティング等を挙げることができる。
【0039】
場合によっては、硬化したナノボイド含有物品の中へのコーティングの浸透は、他の箇所で記載されるように、ナノボイド含有物品の硬化後であるが、コーティングから溶媒が除去される前に、上塗り層をコーティングすることによって制御され得る。場合によっては、例えば、上塗りが表面の中にウィッキングしないようにゲルコーティングをわずかに湿らすだけで、コーティングの化学的性質を用いて、硬化したナノボイド含有コーティングから上塗りを排除することができる。場合によっては、エマルション又はコロイド含有層を、粒径又は濃度を変化させるのと同様のやり方で使用して、ナノボイド含有物品の1つの領域内の相互接続したボイドの体積分率を低減することができる。場合によっては、更に別の技法を用いて、硬化したナノボイド含有物品をプラズマ又は火炎処理で処理して表面を活性化し、表面が活性化された場所への上塗りの浸透を制限することができる。
【0040】
図1Aは、本開示の一態様に従って傾斜ナノボイド含有物品170を形成するための方法100の概略図を示す。溶媒120中に重合性物質130を含む第1の溶液110が提供される。第1の硬化環境「A」及び第2の硬化環境「B」が、第1の溶液110の対向部分に隣接して提供される。第1の硬化環境A及び第2の硬化環境Bのそれぞれは、例えば、硬化環境Aに隣接した光開始剤の濃度は硬化環境Bに隣接した光開始剤の濃度と異なることができる、などといった、コーティングの異なる領域内の硬化環境を変えるための上述された技法のいずれかを表すことができる。第1の硬化環境A及び第2の硬化環境Bは、第1の溶液110、組成物140、及び傾斜ナノボイド含有物品170の第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)によって、それぞれ分離することができる。一実施形態では、第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)のそれぞれは異なる。
【0041】
第1の溶液110の重合性物質130は、少なくとも部分的に重合されて、第2の溶液160の中に不溶性ポリマーマトリックス150を含む組成物140を形成する。他の箇所で記載されるように、第1の硬化環境Aに隣接する第1の領域142は、第2の硬化環境Bに隣接する第2の領域144と異なる不溶性ポリマーマトリックス150の体積分率を有することができる。図1は、例えば、第2の領域144よりも小さい不溶性ポリマーマトリックス150の体積分率を有する第1の領域142を示している。
【0042】
溶媒120の大部分は第2の溶液160から除去されて、傾斜ナノボイド含有物品170を形成する。他の箇所で記載されるように、第1の硬化環境Aに隣接する第1の領域172は、第2の硬化環境Bに隣接する第2の領域174と異なる不溶性ポリマーマトリックス150の体積分率(及び異なるナノボイドの体積分率)を有することができる。図1Aは、例えば、第2の領域174よりも小さい不溶性ポリマーマトリックス150の体積分率(及びより大きいナノボイドの体積分率)を有する第1の領域172を示している。
【0043】
第2の溶液160では重合性物質130が枯渇しているが、他の箇所で記載されるように、一部の重合性物質130は第2の溶液160中に残留することができる。傾斜ナノボイド含有物品170は、不溶性ポリマーマトリックス150と、平均有効径190を有する複数のボイド180とを含む。平均有効径190、及びボイド180の体積分率は共に、傾斜ナノボイド含有物品170全体にわたって様々であってよい。図1Aには示されていないが、第1の溶液110を基材(図示せず)の上にコーティングして、基材上に傾斜ナノボイド含有コーティングを形成することができることを理解されたい。場合によっては、他の箇所で記載されるように、傾斜ナノボイド含有物品170は、最終硬化工程を更に受けることができる中間的な傾斜ナノボイド含有物品170であってよい。
【0044】
重合性物質130は、化学、熱、又は放射線開始することができる様々な従来のカチオン又はフリーラジカル重合技法によって重合することができる任意の重合性物質であってもよく、技法は、例えば、溶媒重合、乳化重合、懸濁重合、バルク重合、及び、例えば、化学線を用いた処理などの放射線重合を含み、化学線は、例えば、可視光線及び紫外線、電子線照射、及びこれらの組み合わせを含む。
【0045】
化学線硬化性物質としては、モノマー、オリゴマー、アクリレートのポリマー、メタクリレート、ウレタン、エポキシ等が挙げられる。本開示の実施に際して好適なエネルギー硬化性基の代表的な例としては、エポキシ基、(メタ)アクリレート基、オレフィン炭素炭素二重結合、アリルオキシ基、α−メチルスチレン基、(メタ)アクリルアミド基、シアネートエステル基、ビニルエーテル基、これらの組み合わせなどが挙げられる。フリーラジカル的に重合可能な基が好ましい。いくつかの実施形態では、例示的な物質としては、アクリレート及びメタクリレートモノマーが挙げられ、特に、当該技術分野において既知のように、重合の際に架橋ネットワークを形成することができる多官能性モノマーを使用することができる。重合性物質は、モノマー、オリゴマー、及びポリマーの任意の混合物を含むことができるが、こうした物質は、少なくとも1種類の溶媒に少なくとも部分的に可溶性でなければならない。いくつかの実施形態では、物質は溶媒/モノマー混合物に可溶性である必要がある。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「モノマー」とは、1つ以上のエネルギー重合可能な基を有する比較的低分子量の(即ち、約500g/モル未満の分子量を有する)物質を意味する。「オリゴマー」とは、約500g/モルから最大約10,000g/モルの分子量を有する比較的中分子量の物質を意味する。「ポリマー」とは、少なくとも約10,000g/モル、好ましくは10,000〜100,000g/モルの分子量を有する比較的高分子量の物質を意味する。用語「分子量」とは、本明細書全体を通して用いられるとき、明示的に別段の定めをした場合を除いて数平均分子量を意味する。
【0047】
代表的なモノマー重合性物質の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、置換スチレン、ビニルエステル、ビニルエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリレート、イソ−オクチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエトキシレート(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシド、α−エポキシド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、無水マレイン酸、イタコン酸、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N−ビニルカプロラクタム、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ官能カプロラクトンエステル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0048】
オリゴマー及びポリマーは、本明細書において総称して「高分子量の成分又は種」と呼ばれる場合もある。好適な高分子量の成分は、本開示の組成物に組み込まれてもよい。そのような高分子量の成分は、例えば、粘度制御、硬化の際の収縮の低減、耐久性、可撓性、多孔性及び非多孔性基材への接着、屋外耐候性、及び/又は同様のものといった利益を提供することができる。本開示の流体組成物に組み込まれるオリゴマー及び/又はポリマーの量は、結果として得られる組成物の使用目的、反応性希釈剤の性質、オリゴマー及び/又はポリマーの性質及び重量平均分子量、並びに同様のものなどの要因に応じて、広範囲内で様々であってよい。オリゴマー及び/又はポリマー自体は、直鎖状、分枝状、及び/又は環状であってもよい。分枝状オリゴマー及び/又はポリマーは、同程度の分子量の直鎖状オリゴマー及び/又はポリマーよりも低い粘度を有する傾向がある。
【0049】
例示的な重合性オリゴマー又はポリマーとしては、脂肪族ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシポリマー、ポリスチレン(スチレンのコポリマーを含む)及び置換スチレン、シリコーン含有ポリマー、フッ素化ポリマー、これらの組み合わせなどが挙げられる。ある用途では、ポリウレタン及びアクリル含有オリゴマー及び/又はポリマーは、改善された耐久性及び耐候特性を有することができる。かかる物質は、放射線硬化性(メタ)アクリレート官能性モノマーから形成された反応性希釈剤に容易に可溶性である傾向もある。
【0050】
オリゴマー及び/又はポリマーの芳香族成分は、一般に、耐候性が劣る及び/又は耐太陽光性が劣る傾向があるので、芳香族成分は、5重量パーセント未満、好ましくは1重量パーセント未満に制限することができ、また、本開示のオリゴマー及び/又はポリマー並びに反応性希釈剤から実質的に除外することができる。したがって、直鎖状、分枝状及び/又は環状脂肪族及び/又は複素環式成分は、屋外用途で使用されるオリゴマー及び/又はポリマーを形成するのに好ましい。
【0051】
本開示で使用される好適な放射線硬化性オリゴマー及び/又はポリマーとしては、(メタ)アクリレート化ウレタン(即ち、ウレタン(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化エポキシ(即ち、エポキシ(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化ポリエステル(即ち、ポリエステル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化(メタ)アクリル、(メタ)アクリレート化シリコーン、(メタ)アクリレート化ポリエーテル(即ち、ポリエーテル(メタ)アクリレート)、ビニル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリレート化オイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
溶媒120は、所望の重合性物質130と共に溶液を形成する任意の溶媒であってよい。溶媒は、極性若しくは非極性溶媒、高沸点溶媒、又は低沸点溶媒であってもよく、好ましくは数種類の溶媒の混合物であってもよい。溶媒又は溶媒混合物は、形成される不溶性ポリマーマトリックス150が、少なくとも部分的に溶媒(又は溶媒混合物中の溶媒のうちの少なくとも1つ)に不溶性であるように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、溶媒混合物は、重合性物質のための溶媒と非溶媒の混合物であってよい。重合の間に、第1の溶液110は分離して、第2の溶液160と、重合して不溶性ポリマーマトリックス150を形成するポリマーリッチな溶液と、を形成する。ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックス150は、三次元構造をもたらすポリマー鎖連結155を有する三次元ポリマーマトリックスであってもよい。ポリマー鎖連結155は、溶媒120の除去後の不溶性ポリマーマトリックス150の変形を防ぐことができる。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、溶媒120は、コーティングの重合に使用した放射線を吸収する溶媒を含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、図1Aに示されるように、第2の溶液160は、不溶性ポリマーマトリックス150に組み込まれないいくらかの残留重合性物質135を含むことができる(即ち、第2の溶液160は、重合性物質135が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。ある特定の実施形態では、組成物140の重合の程度を最大限にすることによって、第2の溶液160中の残留重合性物質135の量を最小限にするのが好ましい。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、好ましくは、硬化環境A又はBの一方に隣接する重合性物質135の大部分を保持して、第1又は第2の領域142、144中の傾斜ナノボイド含有物品170の孔隙率を低減してもよい。
【0054】
一実施形態では、溶媒120は、例えば、不溶性ポリマーマトリックス150、又は基材(含まれる場合)の熱分解温度を超えない温度で乾燥させることによって、組成物140から容易に除去され得る。ある特定の実施形態では、乾燥中の温度は、基材が変形を起こしやすい温度未満、例えば、基材のゆがみ温度又はガラス転移温度未満に維持される。例示的な溶媒としては、線状、分枝状、及び環状炭化水素、アルコール、ケトン、及びエーテル、例えば、DOWANOL(商標)PMプロピレングリコールメチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテルなど、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、2−ブタノン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、水、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、芳香族炭化水素、イソホロン、ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、エステル(例えば、ラクテート、アセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMアセテート)、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(DEアセテート)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EBアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMアセテート)、イソ−アルキルエステル、イソヘキシルアセテート、イソヘプチルアセテート、イソオクチルアセテート、イソノニルアセテート、イソデシルアセテート、イソドデシルアセテート、イソトリデシルアセテート、又はその他のイソ−アルキルエステルなど)、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0055】
第1の溶液110は、その他の成分、例えば、反応開始剤、硬化剤、硬化促進剤、触媒、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、染料、界面活性剤、難燃剤、結合剤、顔料、熱可塑性又は熱硬化性樹脂ポリマーなどの衝撃改質剤、流れ調整剤、発泡剤、充填剤、ガラス及び高分子微小球及び微小粒子、その他の粒子(例えば、導電性粒子、熱伝導性粒子、磁性粒子など)、繊維、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含むこともできる。
【0056】
光開始剤などの反応開始剤は、第1の溶液110中に存在するモノマーの重合を促進するのに有効な量で使用することができる。光開始剤の量は、例えば、反応開始剤の種類、反応開始剤の分子量、得られる不溶性ポリマーマトリックス150の対象とする用途、重合方法(例えば、用いられる処理温度、化学線の波長など)に応じて様々であってよい。有用な光開始剤としては、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから商品名「IRGACURE(商標)」及び「DAROCURE(商標)」(IRGACURE(商標)184及びIRGACURE(商標)819など)で入手可能なものが挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、例えば、方法の異なるセクションにおける重合を制御するために、開始剤と開始剤タイプ(initiator types)の混合物を使用することができる。一実施形態では、任意の後処理重合は、熱的に生成されたフリーラジカル開始剤を必要とする熱開始重合であってもよい。他の実施形態では、任意の後処理重合は、光開始剤を必要とする化学線開始重合(actinic radiation initiated polymerization)であってもよい。後処理光開始剤は、溶液中のポリマーマトリックスを重合するのに使用した光開始剤と同じか又は異なっていてもよい。
【0058】
不溶性ポリマーマトリックス150は架橋されて、より堅いポリマーネットワークをもたらすことができる。架橋は、ガンマ線又は電子線照射のような高エネルギー放射線の使用によって、架橋剤を用いて又は用いずに達成され得る。いくつかの実施形態では、架橋剤又は架橋剤の組み合わせを、重合性モノマーの混合物に添加することができる。架橋は、他の箇所に記載される化学線源のいずれかを使用したポリマーネットワークの重合中に起こり得る。
【0059】
有用な放射線硬化架橋剤としては、米国特許第4,379,201号(Heilmannら)に記載されているもののような多官能性アクリレート及びメタクリレートが挙げられ、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカノールジ(メタ)アクリレート、米国特許第4,737,559号(Kellenら)に記載されているもののような共重合可能な芳香族ケトンコモノマー、及び同類のもの、並びにこれらの組み合わせを含む。
【0060】
第1の溶液110はまた、連鎖移動剤を含んでもよい。連鎖移動剤は、重合前のモノマー混合物に可溶性であるのが好ましい。好適な連鎖移動剤の例としては、トリエチルシラン及びメルカプタンが挙げられる。いくつかの実施形態では、連鎖移動は溶媒にも生じる可能性があるが、これは好ましいメカニズムではない。
【0061】
ある特定の実施形態では、重合工程は、低酸素濃度の雰囲気の中で放射線源を使用することを含むのが好ましい。酸素は、フリーラジカル重合を抑え、その結果硬化の程度が低下することで知られる。ある特定の実施形態では、重合工程は、例えば、約100ppm(part per million)超過、約500ppm超過、約1000ppm超過、約2000ppm超過、約3000ppm超過、又はそれ以上の高い酸素濃度の雰囲気中の放射線源を含む。
【0062】
重合及び/又は架橋させるために使用される放射線源は、化学線(例えば、スペクトルの紫外線又は可視光領域に波長を有する放射線)、加速粒子(例えば、電子線照射)、熱(例えば、加熱又は赤外線)などであってよい。いくつかの実施形態では、好ましいエネルギーは、重合及び/又は架橋の開始及び速度の制御を行う上で優れている化学線又は加速粒子である。加えて、化学線及び加速粒子は、比較的低い温度の硬化にも使用できる。このことは、熱硬化技術を用いる場合にエネルギー硬化性基の重合及び/又は架橋を開始するのに必要とされる比較的高温に対して感受性がある成分を、分解又は蒸発させるのを防ぐ。好適な硬化エネルギー源としては、UV LED、可視LED、レーザ、電子線、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンランプ、閃光ランプ、太陽光、低強度の紫外線(ブラックライト)等が挙げられる。
【0063】
溶媒120の大部分は、傾斜ナノボイド含有物品170を作製するために、溶媒除去工程で除去される。溶媒の大部分とは、溶媒の90重量%、80重量%、70重量%、60重量%超過、又は50重量%超過を意味する。溶媒は、空気浮上/空気対流を含むことができる熱オーブンの中で乾燥することによって、赤外光源若しくはその他の放射光源で乾燥することによって、真空乾燥、ギャップ乾燥、又は乾燥技術の組み合わせによって除去することができる。乾燥技術の選択は、とりわけ、所望の処理速度、溶媒除去の程度、及びコーティング形態によって決定され得る。ある特定の実施形態では、ギャップ乾燥は最小空間内で迅速な乾燥を提供するので、ギャップ乾燥は溶媒除去に優れた効果を発揮し得る。
【0064】
図1Bは、本開示の一態様に従って傾斜ナノボイド含有物品170を形成するための方法100の概略図を示す。図1Bに示されている要素110〜190のそれぞれは、図1Aに示されている同じ参照数字の要素110〜190に対応している。例えば、図1Aの第1の溶液110の説明は、図1Bの第1の溶液110の説明に対応し、以下同様である。
【0065】
溶媒120中に重合性物質130を含む第1の溶液110が提供される。重合性物質130及び溶媒120は、図1Aの重合性物質130及び溶媒120に関して説明したものとそれぞれ同じであってよい。第1の溶液110の重合性物質130は、少なくとも部分的に重合されて、第2の溶液160の中に不溶性ポリマーマトリックス150を含む組成物140を形成する。溶媒120の大部分は、ナノボイド含有物品170’を形成するために、第2の溶液160から除去される。第2の溶液160では重合性物質130が枯渇しているが、他の箇所で記載されるように、一部の重合性物質130は第2の溶液160中に残留することができる。ナノボイド含有物品170’は、不溶性ポリマーマトリックス150と、平均の第1の有効径190’を有する複数のボイド180と、を含む。図1には示されていないが、第1の溶液110を基材(図示せず)の上にコーティングして、基材上にナノボイド含有コーティングを形成することができることを理解されたい。
【0066】
ナノボイド含有物品170’を更に処理して、傾斜ナノボイド含有物品170をもたらすことができる。ある特定の実施形態では、ナノボイド含有物品170’の第2の硬化環境B近傍を稠密化する(即ち、ナノボイドの体積分率を低減する)ことができる。場合によっては、制御充填法(他の箇所に記載)を用いて、ナノボイド含有物品170’の第1の有効径190’を減少させるためにボイド180の一部を充填することができ、その結果、傾斜ナノボイド含有物品170の第2の領域174のボイド180の第2の有効径190がもたらされる。場合によっては、多層コーティング法(他の箇所に記載)を用いて第2の領域174を形成することができ、この第2の領域174は、不溶性ポリマーマトリックス150の不十分な構造支持体を有して、ナノボイド含有物品170’をこの第2の領域174内で崩壊させる。一実施形態では、第1の溶液110、組成物140、及び傾斜ナノボイド含有物品170の第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)は、それぞれは異なる。
【0067】
図2Aは、本開示の別の態様に従って傾斜ナノボイド含有物品280を形成するための方法200の概略図を示す。溶媒220中に重合性物質230とナノ粒子240とを含む第1の溶液210が提供される。第1の硬化環境「A」及び第2の硬化環境「B」が、第1の溶液210の対向部分に隣接して提供される。第1の硬化環境A及び第2の硬化環境Bのそれぞれは、例えば、硬化環境Aに隣接した光開始剤の濃度は硬化環境Bに隣接した光開始剤の濃度と異なっていてもよい、などといった、コーティングの異なる領域内の硬化環境を変えるための上述された技法のいずれかを表すことができる。第1の硬化環境A及び第2の硬化環境Bは、第1の溶液210、組成物250、及び傾斜ナノボイド含有物品280の第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)によって、それぞれ分離することができる。一実施形態では、第1から第3の厚さ(t1、t2、t3)のそれぞれは異なる。
【0068】
第1の溶液210は少なくとも部分的に重合されて、第2の溶液270の中に不溶性ポリマーマトリックス260に結合されたナノ粒子240を含む組成物250を形成する。他の箇所で記載されるように、第1の硬化環境Aに隣接する第1の領域242は、第2の硬化環境Bに隣接する第2の領域244と異なる不溶性ポリマーマトリックス260の体積分率を有することができる。図2Aは、例えば、第2の領域244よりも小さい不溶性ポリマーマトリックス260の体積分率を有する第1の領域242を示している。
【0069】
溶媒220の大部分は、傾斜ナノボイド含有物品280を形成するために、第2の溶液270から除去される。他の箇所で記載されるように、第1の硬化環境Aに隣接する第1の領域282は、第2の硬化環境Bに隣接する第2の領域284と異なる不溶性ポリマーマトリックス260の体積分率(及び異なるナノボイドの体積分率)を有することができる。図2Aは、例えば、第2の領域284よりも小さい不溶性ポリマーマトリックス260の体積分率(及びより大きいナノボイドの体積分率)を有する第1の領域282を示している。
【0070】
ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックス260は、三次元構造をもたらすポリマー鎖連結265を有する三次元ポリマーマトリックスであってよい。ポリマー鎖連結265は、溶媒220の除去後の不溶性ポリマーマトリックス260の変形を防ぐことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、図2Aに示されるように、第2の溶液270は、不溶性ポリマーマトリックス260に組み込まれないいくらかの残留重合性物質235を含むことができる(即ち、第2の溶液270は、重合性物質235が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。ある特定の実施形態では、重合工程の後に、第2の溶液270中の残留重合性物質235の量を最小限にするのが好ましい。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、硬化環境A又はBの一方に隣接する重合性物質235の大部分を保持して、第1又は第2の領域282、284中の傾斜ナノボイド含有物品280の孔隙率を低減するのが望ましくあってよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、第2の溶液270は、図2Aに示されるように、不溶性ポリマーマトリックス260に結合されていないナノ粒子245のわずかな部分も含むことができる(即ち、第2の溶液270はナノ粒子240が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。重合工程の後に不溶性ポリマーマトリックス260に結合していないナノ粒子245の量を最小限に抑えるのが、一般に望ましい。しかしながら、ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、好ましくは、硬化環境A、Bの一方に隣接するナノ粒子245の量を増加させて、第1又は第2の領域282,284の中の傾斜ナノボイド含有物品280の孔隙率を低下させてもよい。本明細書で使用するとき、ポリマーマトリックスに「結合している」ナノ粒子とは、ポリマーマトリックスに完全に埋め込まれたナノ粒子、ポリマーマトリックスに部分的に埋め込まれたナノ粒子、ポリマーマトリックスの表面に付着したナノ粒子、又はこれらの組み合わせを意味する。
【0073】
ある特定の実施形態では、ナノ粒子240は、不溶性ポリマーマトリックス260に化学的に結合された表面修飾反応性ナノ粒子であってよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子240は、不溶性ポリマーマトリックス260に物理的に結合された表面修飾非反応性ナノ粒子であってよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子240は、表面修飾反応性ナノ粒子と表面修飾非反応性ナノ粒子の混合物であってよい。場合によっては、一部のナノ粒子は、同粒子上の反応基及び非反応基の両方によって官能化されてもよい。
【0074】
傾斜ナノボイド含有物品280は、不溶性ポリマーマトリックス260に結合したナノ粒子240と、平均有効径295を有する複数のボイド290と、を含む。平均有効径295、及びボイド290の体積分率は共に、傾斜ナノボイド含有物品280全体にわたって様々であってよい。図2Aには示されていないが、第1の溶液210を基材の上にコーティングして、基材上に傾斜ナノボイド含有コーティングを形成することができることを理解されたい。
【0075】
重合性物質230及び溶媒220は、図1Aの重合性物質130及び溶媒120に関して説明したのとそれぞれ同じであってよい。一実施形態では、ナノ粒子240は、無機ナノ粒子、有機(例えば、ポリマー)ナノ粒子、又は有機ナノ粒子と無機ナノ粒子の組み合わせであってよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子240は、多孔性粒子、中空粒子、中実粒子、又はこれらの組み合わせであってよい。好適な無機ナノ粒子の例としては、ジルコニア、チタニア、セリア、アルミナ、酸化鉄、ヴァナディア(vanadia)、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミナ/シリカ、及びこれらの組み合わせを含む、シリカ及び金属酸化物ナノ粒子が挙げられる。ナノ粒子は、約1000nm未満、約100nm未満、約50nm未満、又は約3nm〜約50nmの平均粒子直径を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約3nm〜約50nm、約3nm〜約35nm、又は約5〜約25nmの平均粒子直径を有し得る。ナノ粒子が凝集している場合、凝集した粒子の断面寸法は、こうした範囲のいずれか以内であってよく、また、約100nmを超えることも可能である。いくつかの実施形態では、主要寸法が約50nm未満の「ヒュームド」ナノ粒子(例えば、シリカ及びアルミナなど)、例えば、Cabot Co.(Boston,MA)から入手可能なCAB−O−SPERSE(登録商標)PG 002ヒュームドシリカ、CAB−O−SPERSE(登録商標)2017Aヒュームドシリカ、及びCAB−O−SPERSE(登録商標)PG 003ヒュームドアルミナなども含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子240は、疎水基、親水基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される表面基を含む。他の実施形態では、ナノ粒子は、シラン、有機酸、有機塩基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤から誘導された表面基を含む。他の実施形態では、ナノ粒子は、アルキルシラン、アリールシラン、アルコキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤から誘導されたオルガノシリル表面基を含む。
【0077】
用語「表面修飾ナノ粒子」は、粒子の表面に付着した表面基を含む粒子を指す。表面基は、粒子の性質を変更する。用語「粒子直径」及び「粒径」は、粒子の最大断面寸法を指す。粒子が凝集体の形態で存在する場合、用語「粒子直径」及び「粒径」は、凝集体の最大断面寸法を指す。いくつかの実施形態では、粒子は、ヒュームドシリカ粒子などのナノ粒子の高アスペクト比の凝集体であってよい。
【0078】
表面修飾ナノ粒子は、ナノ粒子の溶解度特性を修飾する表面基を有する。表面基は、一般に、粒子を第1の溶液210と相溶にするように選択される。一実施形態では、表面基は、第1の溶液210の少なくとも一成分と会合又は反応して、組成物のポリマーネットワークの化学的結合部位になるように選択され得る。
【0079】
ナノ粒子の表面を修飾するには、例えば、ナノ粒子に表面修飾剤(例えば、粉末又はコロイド分散の形態で)を加えて、表面修飾剤をナノ粒子と反応させるなどの多くの方法がある。他の有用な表面修飾法は、例えば、米国特許第2,801,185号(Iler)及び同第4,522,958号(Dasら)に記載されており、本明細書に組み込まれる。
【0080】
有用な表面修飾シリカナノ粒子としては、シラン表面修飾剤で表面修飾されたシリカナノ粒子、例えば、GE SiliconesのSilquest(登録商標)シラン(例えば、Silquest(登録商標)A−1230)、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、4−(トリエトキシシリル)−ブチロニトリル、(2−シアノエチル)トリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバミン酸(PEG3TMS)、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバミン酸(PEG2TMS)、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリス−イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。シリカナノ粒子は多数の表面修飾剤(例えば、アルコール、オルガノシラン(例えば、アルキルトリクロロシラン、トリアルコキシアリールシラン、トリアルコキシ(アルキル)シラン、及びこれらの組み合わせ)、及びオルガノチタネート、並びにこれらの混合物)で処理することが可能である。
【0081】
ナノ粒子は、コロイド分散物の形態で提供されてもよい。有用な市販の未修飾シリカ出発物質の例としては、製品名NALCO 1040、1050、1060、2326、2327、及び2329コロイド状シリカでNalco Chemical Co.(Naperville,IL)から入手可能なナノサイズのコロイド状シリカ;製品名IPA−ST−MS、IPA−ST−L、IPA−ST、IPA−ST−UP、MA−ST−M、及びMA−STゾルでNissan Chemical America Co.(Houston,TX)から、及びSnowTex(登録商標)ST−40、ST−50、ST−20L、ST−C、ST−N、ST−O、ST−OL、ST−ZL、ST−UP、及びST−OUPで同じくNissan Chemical America Co.(Houston,TX)から入手可能なオルガノシリカが挙げられる。重合性物質とナノ粒子の重量比は、約10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、55:45、60:40、70:30、80:20、若しくは90:10、又はそれ以上の範囲であってよい。ナノ粒子の重量%の好ましい範囲は、約10重量%〜約60重量%であり、使用するナノ粒子の密度及び寸法によって決定することができる。
【0082】
図2Bは、本開示の別の態様に従って傾斜ナノボイド含有物品280を形成するための方法200の概略図を示す。図2Bに示されている要素210〜290のそれぞれは、上述された図2Aに示されている同じ参照数字の要素210〜290に対応している。例えば、図2Aの第1の溶液210の説明は、図2Bの第1の溶液210の説明に対応し、以下同様である。
【0083】
溶媒220中に重合性物質230とナノ粒子240とを含む第1の溶液210が提供される。重合性物質230、溶媒220、及びナノ粒子240は、図2Aの重合性物質230、溶媒220、及びナノ粒子240に関して説明したものとそれぞれ同じであってよい。第1の溶液210は少なくとも部分的に重合されて、第2の溶液270の中に不溶性ポリマーマトリックス260に結合されたナノ粒子240を含む組成物250を形成する。溶媒220の大部分は、ナノボイド含有物品280’を形成するために、第2の溶液270から除去される。ある特定の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックス260は、三次元構造をもたらすポリマー鎖連結265を有する三次元ポリマーマトリックスであってよい。ポリマー鎖連結265は、溶媒220の除去後の不溶性ポリマーマトリックス260の変形を防ぐことができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、図2Bに示されるように、第2の溶液270は、不溶性ポリマーマトリックス260に組み込まれないいくらかの残留重合性物質235を含むことができる(即ち、第2の溶液270は、重合性物質235が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。ある特定の実施形態では、重合工程の後に、第2の溶液270中の残留重合性物質235の量を最小限にするのが好ましい。
【0085】
いくつかの実施形態では、第2の溶液270は、図2に示されるように、不溶性ポリマーマトリックス260に結合されていないナノ粒子245のわずかな部分も含むことができる(即ち、第2の溶液270はナノ粒子240が枯渇しているが、いくらかは依然として存在していてもよい)。重合工程の後に不溶性ポリマーマトリックス260に結合していないナノ粒子245の量を最小限に抑えるのが、一般に望ましい。
【0086】
ナノボイド含有物品280’は、不溶性ポリマーマトリックス260に結合したナノ粒子240と、第1の平均有効径295’を有する複数のボイド290と、を含む。図2Bには示されていないが、第1の溶液210を基材の上にコーティングして、基材上にナノボイド含有コーティングを形成することができることを理解されたい。
【0087】
ナノボイド含有物品280’を更に処理して、傾斜ナノボイド含有物品280をもたらすことができる。ある特定の実施形態では、ナノボイド含有物品280’の第2の硬化環境B近傍を稠密化する(即ち、ナノボイドの体積分率を低減する)ことができる。場合によっては、制御充填法(他の箇所に記載)を用いて、ナノボイド含有物品280’の第1の有効径295’を減少させるためにボイド290の一部を充填することができ、その結果、傾斜ナノボイド含有物品280の第2の領域284のボイド290の第2の有効径295がもたらされる。場合によっては、多層コーティング法(他の箇所に記載)を用いて第2の領域284を形成することができ、この第2の領域284は、不溶性ポリマーマトリックス260の不十分な構造支持体を有して、ナノボイド含有物品280’をこの第2の領域284内で崩壊させる。一実施形態では、第1の溶液210、組成物250、ナノボイド含有物品280’、及び傾斜ナノボイド含有物品280の第1〜第4の厚さ(t1、t2、t3、t4)は、それぞれ異なる。
【0088】
図3Aは、本開示の一態様に従って基材302の上に傾斜ナノボイド含有コーティング356を形成するための方法300の概略図を示す。図3Aに示される方法300は連続的方法であるが、方法は、代わりに、段階的方法で実施され得ること、即ち、傾斜ナノボイド含有コーティングを形成するために、以下に記載されるコーティング、重合、及び溶媒除去工程が、別個の工程で個別の基材の上で実施され得ることを理解されたい。
【0089】
図3Aに示される方法300は、基材302を、コーティングセクション310、任意のコーティング調整セクション315、重合セクション320、第1の溶媒除去セクション340、及び任意の第2の溶媒除去セクション350に通過させて、基材302の上に傾斜ナノボイド含有コーティング356を形成する。基材302上の傾斜ナノボイド含有コーティング356は、次いで、任意の第2の重合セクション360を通過して、基材302上の任意に後硬化された傾斜ナノボイド含有コーティング366を形成した後、出口ロール370として巻き上げられる。いくつかの実施形態では、方法300は、ウェブベースの材料の製造にとって一般的な追加の処理装置(例えば、アイドラーロール、引張りローラー、操縦機構、コロナ又は火炎処理装置などの表面処理装置、積層ローラーなど)を含むことができる。いくつかの実施形態では、方法300は、異なるウェブ経路、コーティング技術、重合装置、重合装置の位置、乾燥オーブン、調整セクション等を利用することができ、記載されたセクションのいくつかは任意であってよい。
【0090】
基材302は、例えば、ポリマー基材、金属化されたポリマー基材、金属箔、これらの組み合わせなどの、ウェブラインでロールトゥロールウェブ処理(roll-to-roll web processing)するのに適した任意の既知の基材であってよい。ある特定の実施形態では、基材302は、液晶ディスプレイなどの光学ディスプレイで使用するのに適した光学品質のポリマー基材である。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、基材302は、例えば、光開始剤又は重合禁止剤などの下塗りコーティングを有する基材であってよい。下塗りコーティングは、提供される場合、コーティングセクション310の直前でコーティングすることができ(図示せず)、又は入力ロール301としてセットされる前に独立した工程でコーティングすることができる。
【0091】
基材302は、入力ロール301から巻き出され、アイドラーロール303の上を通過し、コーティングセクション310のコーティングロール304と接触する。第1の溶液305はコーティングダイ307を通過して、基材302上に第1の溶液305の第1のコーティング306を形成する。第1の溶液305は、溶媒と、重合性物質と、任意のナノ粒子と、光開始剤と、他の箇所に記載のその他の第1の溶液成分のいずれかと、を含むことができる。コーティングセクション310のコーティングダイ307と、任意のコーティング調整セクション315のコーティング調整領域309との間に配置された囲い板308は、第1の溶液305を取り囲む第1の制御環境311を提供することができる。いくつかの実施形態では、例えば、第1の溶液305の組成物に大きな変化が生じ得る前に重合が生じる場合、囲い板308及び任意のコーティング調整セクション315は任意であってよい。次に、第1の溶液305の第1のコーティング306を有する基材302は、他の箇所で記載されるように、第1の溶液305が重合される重合セクション320に入る。
【0092】
コーティングダイ307は、任意の既知のコーティングダイ及びコーティング技術を含むことができ、薄フィルムをコーティングするための任意の特定のダイ設計又は技術に限定されない。コーティング技術の例としては、当業者に既知であるように、ナイフコーティング、グラビアコーティング、スライドコーティング、スロットコーティング、スロット供給ナイフコーティング、カーテンコーティング、多層コーティングなどが挙げられる。傾斜ナノボイド含有物品のいくつかの用途は、正確な厚さ及び欠陥のないコーティングの必要性を含むことができ、図3Aに示されるように精密なコーティングロール304に対して位置付けられた精密なスロットコーティングダイ307を使用する必要があってよい。第1のコーティング306は任意の厚さで塗布され得るが、薄いコーティングが好ましく、例えば、1000マイクロメートル厚さ未満、約500マイクロメートル厚さ未満、約100マイクロメートル厚さ未満、又は更に約10マイクロメートル厚さ未満のコーティングは、代表的な特性を有する傾斜ナノボイド含有物品を提供することができる。
【0093】
他の箇所で記載されるように、第1のコーティング306は、少なくとも1種類の溶媒と重合性物質とを含んでいるので、囲い板308は、コーティングからの溶媒のあらゆる望ましくない損失を低減するように、また更には、重合を妨げる可能性のある酸素からコーティングを保護するように位置付けられる。囲い板308は、例えば、第1の制御環境311が維持され得るように、第1のコーティング306にごく接近して設置されて、コーティングダイ307及びコーティングロール304の周囲に封止を提供する成形アルミニウム板であってよい。いくつかの実施形態では、他の箇所で記載されるように、囲い板308は、コーティングを周囲室内条件から保護する、又は酸素リッチな雰囲気を提供する働きもすることができる。
【0094】
第1の制御環境311は、酸素含有量を制御するための窒素などの不活性ガス、溶媒の損失を低減するための溶媒蒸気、又は空気などの気体、窒素などの不活性ガス、及び溶媒蒸気の組み合わせを含むことができる。酸素濃度は、重合の速度及び程度の両方に影響を与え得るので、一実施形態では、第1の制御環境311内の酸素濃度は、1000ppm未満(parts−per−million)、500ppm未満、300ppm未満、未150ppm満、100ppm未満、又は更に50ppm未満まで低減される。場合によっては、達成し得る最も低い酸素濃度が好ましい。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、第1の制御環境内の酸素濃度は、コーティングの自由表面に隣接した重合を抑制するために、100ppm超過、500ppm超過、1000ppm超過、2000ppm超過、5000ppm超過、又はそれ以上まで増加される。
【0095】
任意のコーティング調整セクション315内のコーティング調整領域309は、第1のコーティング306が重合セクション320に入る前にこれを改質する追加的能力を提供する、囲い板308の拡張部である。第1の制御環境311は、コーティング調整領域309内でも依然として維持され得る。他の実施形態では、第1のコーティング306の組成物を調整又は維持するために、追加の加熱、冷却、又は入力及び排出ガスが提供され得る。例えば、溶媒蒸気が入力ガスに導入されて、重合の前に第1のコーティング306から溶媒が蒸発するのを低減することができる。ある特定の実施形態では、他の箇所で記載されるように、任意のコーティング調整セクション315でコーティングに外場が適用されて、微粒子を第1のコーティングの異なる領域に移動させることができる。
【0096】
第1のコーティング306の温度を上昇又は低下させるため、追加の溶媒を揮発させて第1のコーティング306の組成物を調整するため、又はその両方のために、例えば、米国特許第5,694,701号に記載されているギャップ乾燥機などの加熱装置を使用することができる。例えば、最適なコーティングの組成(例えば、%固形分)が重合にとって最適な組成と異なる場合に組成を変更することによって所望の薄膜形態ができるようにするために、ギャップ乾燥機を使用して、重合セクションの前に溶媒の一部を除去することができる。多くの場合、コーティング調整領域309は、重合の前に、第1のコーティング306が安定化する(例えば、あらゆる表面のリップル又は傷を平滑化する)ための余分な時間を提供する働きをすることができる。
【0097】
図3Bは、本開示の一態様による、図3Aに示される方法300の重合セクション320の概略図である。図3Bは、基材302の経路の下流側から見た場合の重合セクション320の断面を示す。重合セクション320は、基材302上の第1のコーティング306を部分的に取り囲む第2の制御環境327の境界を提供するハウジング321と水晶板322とを備える。放射線源323は化学線324を生じさせ、この化学線324は、水晶板322を通過して、基材302上の第1のコーティング306を重合する。単一放射線源323ではなく、図3Bに示される放射線源アレイ325は、改善された均一性及び重合速度を重合方法にもたらすことができる。放射線源アレイ325は、放射線源323の個別制御を提供することができ、例えば、クロスウェブ又はダウンウェブプロファイルを要望通りに生成することができる。放射線源アレイ325の中の各放射線源323によって生成された熱を除去することによって温度を制御するために、冷却器326を配置することができる。
【0098】
ハウジング321は、基材302、第1のコーティング306、及び少なくとも部分的に重合された第2のコーティング336(図3Cに示されている)を取り囲むように設計された簡単な囲いであってよい。又はハウジング321は、例えば、第2の制御環境327の温度を調節することができる恒温板(図示せず)などの追加要素を備えることもできる。ハウジング321は、基材302及び第1のコーティング306を囲んで第2の制御環境327を提供するのに十分な内部寸法「h3」及び「h2」を有する。気流場は、不活性能力、コーティング組成物、コーティング均一性等に影響を与える。図3Bに示されるように、ハウジング321は、放射線源アレイ325の中の放射線源323から第2の制御環境327を分離する上部水晶板322を備えている。放射線源アレイ325は、基材302から距離「h1」の場所に位置付けられて、均一な化学線324を第1のコーティング306に提供する。一実施形態では、「h1」及び「h3」は、それぞれ1インチ(2.54cm)及び0.25インチ(0.64cm)である。いくつかの実施形態では(図示せず)、水晶板322及び放射線源323が基材302の下に位置し、第1のコーティング306を重合する前に化学線324が基材302を通過するように、重合セクション320を上下逆にすることができる。他の実施形態では(同様に図示せず)、重合セクション320は、第1のコーティング306を重合するために基材の上下に位置決めされた2つの水晶板322と2つの放射線源323とを備えることができる。
【0099】
他の箇所で記載されるように、放射線源323は任意の化学線源であってもよい。いくつかの実施形態では、放射線源323は、UV放射線を生成することができる紫外線LEDである。異なる波長で放射する放射線源の組み合わせを使用して、重合反応の速度及び程度を制御することができる。UV−LED又は他の放射線源は、動作中に熱を生成することができ、冷却器326は、例えば、空気又は水のいずれかで冷却されて、生成された熱を除去することによって温度を制御する、アルミニウムなどの金属から製造することができる。
【0100】
図3Cは、本開示の一態様による、図3Aに示される方法300の重合セクション320の概略図である。図3Cは、基材302縁部に沿って見た場合の重合セクション320の断面を示している。重合セクション320は、第2の制御環境327の境界を提供するハウジング321と水晶板322とを備えている。第2の制御環境327は、基材302上の第1のコーティング306及び少なくとも部分的に重合された第2のコーティング336を部分的に取り囲む。他の箇所で記載されるように、少なくとも部分的に重合された第2のコーティング336は、第2の溶液中の不溶性ポリマーマトリックスを含む。
【0101】
ここで第2の制御環境327について説明する。ハウジング321は、入口開口部328と出口開口部329とを含み、これらは、基材302と、基材302上のコーティング306と、それぞれの開口部との間に任意の所望の隙間を提供するように調整することができる。第2の制御環境327は、ハウジング321の温度の制御、及び第1の入力ガス331、第2の入力ガス333、第1の出力ガス335、及び第2の出力ガス334の温度、組成、圧力、及び流速の適切な制御によって維持することができる。入口開口部328及び出口開口部329の寸法の適切な調整は、第1の出力ガス335及び第2の出力ガス334の圧力及び流速の制御を支援することができる。
【0102】
第1の出力ガス335は、第2の制御環境327から入口開口部328を通って、図3Aに示される任意のコーティング調整セクション315の第1の制御環境311に流れ込むことができる。いくつかの実施形態では、第2の制御環境327及び第1の制御環境311内の圧力は、2つの環境の間の流れを防止するように調整され、第1の出力ガス335は、ハウジング321内の別の場所(図示せず)から第2の制御環境327を出ることができる。第2の出力ガス334は、第2の制御環境327から出口開口部329を通って、図3Aに示される第1の溶媒除去セクション340に流れ込む可能性がある。又は第2の出力ガス334は、ハウジング321内の別の場所(図示せず)から第2の制御環境327を出ることができる。
【0103】
第1の入力ガスマニホールド330は、ハウジング321に隣接し、入口開口部328に近接して配置されて、第1の入力ガス331を、所望の均一性を有して第1のコーティング306の幅全体に分配する。第2の入力ガスマニホールド332は、ハウジング321に隣接し、出口開口部329に近接して配置されて、第2の入力ガス333を、所望の均一性を有して第2のコーティング336の幅全体に分配する。第1及び第2の入力ガス331、333は、所望通りに、ウェブの上、ウェブの下、又はウェブの上と下の任意の組み合わせに分配することができる。第1及び第2の入力ガス331、333は同じであってもよく、又は異なってもよく、また、既知のように重合反応を抑制する可能性がある酸素濃度を低減することができる、窒素などの不活性ガスを含むことができる。第1及び第2の入力ガス331、333は、他の箇所で記載されるように、重合前又は重合中に生じる第1のコーティング306からの溶媒の損失を低減するのを助けることができる溶媒蒸気を含むこともできる。相対的流量、流速、コーティングの流動衝突又は向き、第1及び第2の入力ガス331、333のそれぞれの温度は、独立して制御することができ、重合前の第1のコーティング306の欠陥を減少させるように調整することができる。欠陥は、当該技術分野において既知のように、コーティングに対する外乱作用に起因し得る。場合によっては、第1の入力ガス331及び第2の入力ガス333の一方のみが流れていてもよい。
【0104】
ここで図3Aを参照して、方法の残りの部分について説明する。重合セクション320を離れた後、基材302上の第2の重合コーティング336は、第1の溶媒除去セクション340に入る。第1の溶媒除去セクション340は、溶媒を蒸発させるために第2の重合コーティング336を加熱することによって溶媒を除去する従来の乾燥オーブンであってよい。好ましい第1の溶媒除去セクション340は、例えば、米国特許第5,694,701号及び同第7,032,324号に記載されているようなギャップ乾燥機である。ギャップ乾燥機は、乾燥環境をより良好に制御することができ、このことは、使用目的によっては望ましい場合もある。任意の第2の溶媒除去セクション350を更に使用して、溶媒の大部分が除去されるのを確実にすることができる。
【0105】
基材302上の傾斜ナノボイド含有コーティング356は、任意の第2の溶媒除去セクション350を出た後、任意の第2の重合セクション360を通過して、任意に後硬化された傾斜ナノボイド含有コーティング366を基材302上に形成する。任意の第2の重合セクション360は、前述の化学線源のいずれかを備えることができ、また、傾斜ナノボイド含有コーティング356の重合の程度を高めることができる。いくつかの実施形態では、硬化の程度の増大は、溶媒の除去後に残留重合性物質(即ち、図1及び図2にそれぞれ示されている残留重合性物質135、235)を重合することを含み得る。基材302上の傾斜ナノボイド含有コーティング356は、任意の第2の重合セクション360を出た後、出口ロール370として巻き取られる。いくつかの実施形態では、出口ロール370は、傾斜ナノボイド含有コーティングに積層され、同時に出口ロール370上に巻かれる他の所望のフィルム(図示せず)を有することができる。他の実施形態では、他の箇所で記載されるように、追加の層(図示せず)を、傾斜ナノボイド含有コーティング356又は基材302のいずれかの上にコーティングし、硬化し、乾燥させることができる。
【0106】
図4Aは、本開示の一態様による、基材410上にコーティングされた傾斜光学フィルム400の断面顕微鏡写真である。傾斜光学フィルム400は、基材410に隣接する第1の主表面430と、第1の主表面430に近接する相互接続したボイド470の第1の局所体積分率と、を含む。傾斜光学フィルムは、「自由」表面である(即ち、硬化環境に隣接している)第2の主表面432と、第2の主表面432に近接する相互接続したボイド475の稠密化された第2の局所体積分率と、を更に含む。傾斜光学フィルム400は、第2の主表面432のすぐ近くの重合を抑制した酸素リッチな環境(3578ppmの酸素、下の実施例1の試料1aに準ずる)で調製された。図4Bは、図4Aの顕微鏡写真のより高倍率のものであり、相互接続したボイド470の第1の局所体積分率は、抑制された重合に起因して高密度になった、相互接続したボイド475の高密度の第2の体積分率よりも大きいことをより明確に示している。
【0107】
図5Aは、本開示の一態様による、基材510上にコーティングされた傾斜光学フィルム500の断面顕微鏡写真である。傾斜光学フィルム500は、基材510に隣接する第1の主表面530と、第1の主表面530に近接する相互接続したボイド570の第1の局所体積分率と、を含む。傾斜光学フィルムは、「自由」表面である(即ち、硬化環境に隣接している)第2の主表面532と、第2の主表面532に近接する相互接続したボイド575の稠密化された第2の局所体積分率と、を更に含む。傾斜光学フィルム500は、図5A〜図5Bの傾斜光学フィルム500よりも低い酸素リッチな環境(1707ppmの酸素、下の実施例1の試料3aに準ずる)で調製された。酸素リッチな環境は、第2の主表面532すぐ近くの重合を抑制した。図5Bは、図5Aの顕微鏡写真のより高倍率のものであり、相互接続したボイド570の第1の局所体積分率は、抑制された重合に起因して稠密化された、相互接続したボイド575の稠密化された第2の体積分率よりも大きいことをより明確に示している。相互接続したボイド475及び575の稠密化された第2の体積分率の相対厚さの比較は、硬化環境内の酸素濃度の増加に伴って高密度領域の厚さが増加することを示している。
【0108】
開示されるフィルム、層、構成体、及びシステムの利点の一部が、以下の実施例によって更に説明される。この実施例で列挙される特定の材料、量及び寸法、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。
【0109】
実施例において、屈折率はMetricon Model 2010 Prism Coupler(Metricon Corp.(Pennington,NJ)から入手可能)を使用して測定された。光透過性、透明度、及びヘイズは、Haze−Gard Plusヘイズメータ(BYK−Gardiner(Silver Springs,MD)から入手可能)を使用して測定された。
【実施例】
【0110】
実施例A−傾斜を生成するためにDBEFに下塗りされる光開始剤
光開始剤を基板にコーティングして、基材界面から空気界面までの密度の変化を作り出した。光開始剤コーティング溶液は、MEKに0.3重量%のIrgacure 819を混合して調製した。この光開始剤溶液を、43.2cm(17インチ)幅のスロットタイプコーティングダイを使用してDBEFフィルムの上にコーティングした。溶液は、127g/分の速度及び30.5m/分(100フィート/分)のライン速度でコーティングされた。次いで、コーティングを150°F(66℃)のオーブンの中で乾燥させた。こうして基材に下塗りされた光開始剤を得た。
【0111】
コーティング溶液「A」を調製した。まず、360gのNalco 2327コロイドシリカ粒子(40重量%固形分及び平均粒子直径約20ナノメートル)及び300gの1−メトキシ−2−プロパノールを、冷却器及び温度計を備えた2リットル3つ口フラスコの中で高速撹拌下で混合した。次に、22.15gのSilquest A−174シランを加え、この混合物を10分間撹拌した。次に、更に400gの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、加熱マントルを使用してこの混合物を85℃で6時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、水及び1−メトキシ−2−プロパノール溶媒(約700g)のほとんどをロータリーエバポレータを使用して水浴温度60℃で除去した。得られた溶液は、1−メトキシ−2−プロパノールに分散された44重量%のA−174修飾20nmシリカを有する透明なA−174修飾シリカ溶液であった。
【0112】
コーティング溶液「A」は、18.0重量%の透明なA−174修飾シリカ溶液(1−メトキシ−2−プロパノールに分散された44重量%のA−174修飾20nmシリカを有する)、23.9重量%の1−メトキシ−2−プロパノール、46.1重量%のIPA、12.0重量%のSR444からなった。Irgacure 819を0.15pph(parts per hundred)の割合でコーティング溶液「A」に添加した。コーティング溶液Aを、15.2g/分の速度で(圧力ポットを使用して)43.2cm(17インチ)幅のスロットタイプコーティングダイの中にポンプで送り込んだ。スロットコーティングダイは、光開始剤が下塗りされた基材上に1.52m/分(10ft/分)の速度で43.2cm幅のコーティングを均一に分配した。
【0113】
次に、コーティングされた基材をUV−LED硬化チャンバ(紫外線放射を通す石英窓が含まれている)の中に通すことによってコーティングを重合させた。UV−LED硬化チャンバは、4個(ダウンウェブ)×40個(クロスウェブ)の160個のUV−LED(約42.5cm×4.5cmの領域をカバーする)の矩形アレイを含んだ。LED(Nichia Inc.(Tokyo Japan)より入手可能)は、385nmの公称波長で動作し、また、8アンペアで駆動され、その結果UV−A線量は平方センチメートル当たり0.052ジュールとなった。ファン冷却式UV−LEDアレイは、Lambda GENH 60−12.5−U電力供給装置(TDK−Lambda(Neptune NJ)より入手可能)によって給電された。UV−LEDは、基材から約2.5cmの距離にある、硬化チャンバの石英窓の上に配置された。UV−LED硬化チャンバに、毎分141.6リットル/分(5立方フィート)の流速で窒素流を供給した。窒素供給に空気を導入して、UV−LEDチャンバ内の総酸素濃度を制御した。UV−LED硬化チャンバ内の酸素レベルを、気流速度を変化させて変更し、シリーズ3000酸素分析装置(Alpha Omega Instruments(Cumberland RI)から入手可能)を使用して酸素レベルをモニタした。
【0114】
UV−LEDによる重合後、コーティングされた基材を150°F(66℃)の乾燥オーブンに2分間にわたり10ft/分(1.52m/分)のウェブ速度で移送することにより硬化コーティング中の溶媒を除去した。次にDバルブを装着したFusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)より入手可能)を使用して、乾燥コーティングを後硬化した。UV Fusionチャンバには窒素流を供給し、チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。
【0115】
実施例B−傾斜光学フィルム上の体積拡散体上塗り(volume diffuser overcoat)
27.4gの1−メトキシ−2−プロパノール、27.2gのメタノール、29.6gのKSR3ポリスチレンビーズ、8.1gのPhotomer 6210、3.6gのSR833S、4.2gのSR9003、及び0.4gのDarocur 4265を混合して体積拡散体コーティング溶液「B」を調製した。
【0116】
体積拡散体コーティング溶液「B」を、ノッチバーコーティングを使用し隙間厚さ127マイクロメートルで基材にコーティングした。コーティングを150°F(66℃)で2分間乾燥した後、Fusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD))を使用し13.7m/分で硬化した。Model I600は、Dバルブを装着しており、100%出力で作動した。UV Fusionチャンバには窒素流を供給し、硬化チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。
【0117】
実施例1−傾斜光学フィルムにおける屈折率及び高密度層変化
光開始剤が下塗りされたDBEF反射偏光子フィルムにコーティング溶液Aを実施例Aに従ってコーティングして、一連のコーティングされたフィルムを作製した。各コーティングされたフィルムの硬化条件は同じであったが、空気流速及び酸素レベルを変更した。
【0118】
BYK−Gardner Haze−Gardを使用して透過率及びヘイズを測定した。コーティングの屈折率(RI)を、Model 2010 Prism Coupler(Metricon Corporation(Pennington NJ)より入手可能)を使用して測定した。Model 2010 Metriconは、632.8nmの波長で動作するHeNeレーザ及び光学プリズム(コード6567.9)を装着していた。測定はTE及びTMモードの両方で行われた。コーティングのフィルム側の屈折率を判定するために、基材がプリズム結合器と密着するようにして試料を装填した。コーティングの空気側の屈折率を判定するために、コーティングがプリズム結合器と密着するようにして試料を装填した。コーティングのそれぞれについての測定結果を表1にまとめる。
【0119】
【表1】
傾斜光学フィルムの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を得た。最初に、傾斜光学フィルムの代表的試料が選択された。次に、試料が液体窒素中で凍結された。次いで、液体窒素から試料を取り出してすぐに破砕して、傾斜光学フィルム断面を厚さ方向に沿って露出させた。次に、この後の方法での試料の帯電を防ぐため、厚さ約1nmの金/パラジウム合金の層で試料をスパッタリングした。次いで、傾斜光学フィルムの上表面と断面を、走査型電子顕微鏡を使用して撮影した。
【0120】
図6A〜図6Cは、実施例1の試料のSEMを酸素レベルが上昇する順に示している。図6Aは、酸素レベル1707ppmで硬化された試料3aを示している。図6Bは、3578ppmで硬化された試料1aを示している。図6Cは、5640ppmで硬化された試料2aを示している。空気界面の多孔性は、基材界面近くの層よりも低い。高密度層の厚さは、酸素濃度によって決まり、より高い酸素レベルはより厚い高密度層を生じさせる。
【0121】
実施例2−傾斜のない上塗りされた対照光学フィルム
傾斜光学フィルムを溶液で上塗りし、溶液が細孔に浸潤するかどうかを判定した。コーティング溶液「B」を、同時係属中の出願である発明の名称「OPTICAL FILM」(代理人整理番号65062US002)に記載の方法によって作製された傾斜光学フィルム(試料9146−1)にコーティングした。コーティング溶液は、Irgacure 819(0.15pph)及びIrgacure 184(0.45pph)をコーティング溶液「A」に混ぜ合わせて調製した。溶液をライン速度9.14m/分でTOPQ反射偏光子にコーティングした。溶液は、スロットタイプダイを使用して、速度43g/分及びコーティング幅20.3cm(8インチ)で供給された。コーティングは、395nmのUV−LED(Cree,Inc.(Durham NC))のアレイを使用して重合された。UV−LEDは2.25アンペアで動作し、平方センチメートル当たり0.03ジュールのUV−V線量を供給した。アレイは、16個(ダウンウェブ)×22個(クロスウェブ)のLEDを有した。スロットタイプマニホールドを使用して窒素を硬化チャンバに導入し、不活性雰囲気を維持した。チャンバ内の酸素濃度をSeries 3000 Alpha Omega Analyzeを使用して測定し、100ppmより低く維持した。硬化後、Fusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD))を使用してコーティングを150°F(66℃)で乾燥し、次に70°F(21℃)で後硬化した。Model I600は、Dバルブを装着しており、100%出力で作動した。UV Fusionチャンバには窒素流を供給し、後硬化チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。その結果生じた光学フィルムは他の箇所で記載されるように特徴付けられ、空気側の屈折率はRI=1.23、フィルム側の屈折率はRI=1.23であり、ΔRI=0となった。次に、実施例Bに記載の方法を用いて、コーティング溶液「B」を光学フィルム(試料9146−1)にコーティングした。記載の方法の生成部分(試料9146−1 OC)は、TOP−Q反射偏光子上の2回通過コーティングであった。Model 2010 Metriconを使用して、第2のコーティング層の塗布前(RI=1.22)及び塗布後(RI=1.49)の第1のコーティング層のフィルム側の屈折率の変化を測定した。フィルム側の屈折率はコーティング後に著しく増加し、光学フィルム内の細孔がもはや空気で充填されていないことを示した。
【0122】
実施例3−上塗りされた傾斜光学フィルム
傾斜光学フィルム(試料9211−30)を溶液で上塗りし、溶液が細孔に浸潤するかどうかを判定した。Irgacure 819を0.06pphの装填量でコーティング溶液Aに添加した。次いで、コーティング溶液「A」を、20.3cm(8インチ)スロットタイプダイを使用し、ライン速度6.1m/分及び流速40g/分で2ミル(0.05mm)のPETフィルムに塗布した。コーティングは、395nmのUV−LED(Cree,Inc.(Durham NC))のアレイを使用して重合された。UV−LEDは5アンペアで動作し、平方センチメートル当たり0.1ジュールのUV−V線量を供給した。アレイは、16個(ダウンウェブ)×22個(クロスウェブ)LEDを有した。スロットタイプマニホールドを使用し、流速118L/分で窒素を硬化チャンバに導入した。空気と窒素供給をインラインで混合して、UV−LED硬化チャンバ内の酸素濃度5012ppmを維持した。チャンバ内の酸素濃度をSeries 3000 Alpha Omega Analyzeを使用して測定した。硬化後、Fusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD))を使用してコーティングを150°F(66℃)で乾燥させ、次に70°F(21℃)で後硬化した。Model I600は、Dバルブを装着しており、100%出力で作動した。UV Fusionチャンバには、窒素流を供給し、後硬化チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。その結果生じた光学フィルム(試料9211−30)は他の箇所で記載されるように特徴付けられ、空気側の屈折率はRI=1.47、フィルム側の屈折率はRI=1.26であり、ΔRI=0.21となった。
【0123】
次いで、実施例Bに記載の通りにコーティング溶液「B」を傾斜光学フィルムに塗布した。Model 2010 Metriconを使用して、第2のコーティング層の塗布前(RI=1.26)及び塗布後(RI=1.26)の第1のコーティング層のフィルム側の屈折率の変化を測定した。第2のコーティングを塗布すると、フィルム側の屈折率には無視できるほど小さい変化が生じ、第1のコーティングは浸透しないように封止されたことを示している。
【0124】
実施例4−光学フィルムへの接着剤浸
実施例2の光学フィルム試料9146−1のコーティング側を、光学的に透明な感圧接着剤(8171、3M Companyより入手可能)を使用してガラスに積層した。試料を85℃で150時間、熱的に時効した。Model 2010 Metriconを使用して、感圧接着剤層に対する熱的時効の前(RI=1.23)及び後(RI=1.33)のフィルム側の屈折率の変化を測定した。フィルム側の屈折率は時効後に増加し、光学フィルム内の細孔の一部がもはや空気で充填されていないことを示した。
【0125】
実施例5−傾斜光学フィルムへの接着剤浸透
実施例3の光学フィルム試料9211−30のコーティング側を、光学的に透明な感圧接着剤(8171、3M Companyより入手可能)を使用してガラスに積層した。試料を85℃で150時間、熱的に時効した。Model 2010 Metriconを使用して、感圧接着剤層に対する熱的時効の前(RI=1.26)及び後(RI=1.26)のフィルム側の屈折率の変化を測定した。熱的時効後、フィルム側の屈折率には無視できるほど小さい変化が生じ、光学フィルムは浸透しないように封止されたことを示している。
【0126】
実施例C−モノマーの選択により改善された耐久性
コーティング溶液「C」を調製した。まず、360gのNalco 2327コロイドシリカ粒子(40重量%固形分及び平均粒子直径約20ナノメートル)及び300gの1−メトキシ−2−プロパノールを、冷却器及び温度計を備えた2リットル3つ口フラスコの中で高速撹拌下で混合した。次に、22.15gのSilquest A−174シランを加え、この混合物を10分間撹拌した。次に、更に400gの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、加熱マントルを使用してこの混合物を85℃で6時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、水及び1−メトキシ−2−プロパノール溶媒(約700g)のほとんどをロータリーエバポレータを使用して水浴温度60℃で除去した。得られた溶液は、1−メトキシ−2−プロパノールに分散された44重量%のA−174修飾20nmシリカを有する透明なA−174修飾シリカ溶液であった。
【0127】
次に、120gのA−174修飾シリカ溶液、17.6gのCN2302、35.2gのSR444、1.05gのTEGO Rad 2250、0.264gのIrgacure 819、0.81gのIrgacure 184、及び156gのイソプロピルアルコールを撹拌により混合し、均質なコーティング溶液Cを形成した。
【0128】
実施例D−中間ヘイズ(Medium haze)コーティング溶液
コーティング溶液「D」を調製した。最初に、凝縮器及び温度計を備えた2リットル3つ口フラスコ内で、309gのNalco 2327(40重量%固体)と300gの1−メトキシ−2−プロパノールとを、高速攪拌で混合した。次に、9.5gのSilquest A−174及び19.0gのSilquest A−1230を加え、得られた混合物を10分間撹拌した。この混合物を加熱マントルを使用して80℃で1時間加熱した。追加の400gの1−メトキシ(mothoxy)−2−プロパノールを加え、この混合物を16時間80℃に保持した。得られた溶液を室温まで冷却し、水及び1−メトキシ−2−プロパノール溶媒(約700g)のほとんどをロータリーエバポレータを使用して水浴温度60℃で除去した。得られた溶液は、1−メトキシ−2−プロパノールに分散された48.7重量%のA174/A1230修飾20nmシリカを有する透明なA174/A1230修飾シリカ溶液であった。
【0129】
次に、63.4gの透明なA174/A1230修飾シリカ溶液、30.8gのSR 444、0.46gのIrgacure 184、及び98gのイソプロピルアルコールを撹拌により混合して、均質なコーティング溶液Dを形成した。
【0130】
実施例E−75マイクロメートルのシリカ粒子を有するコーティング溶液
コーティング溶液「E」を調製した。300gのNalco 2329シリカ粒子(40重量%固形分、平均粒径75nm)及び300gの1−メトキシ−2−プロパノールを、冷却器及び温度計を備えた1リットルフラスコの中で高速撹拌下で混合した。次に、7.96gのSilquest A−174を加え、得られた混合物を10分間撹拌した。追加の400gの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、得られた混合物を加熱マントルを使用して85℃で6時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、水及び1−メトキシ−2−プロパノール溶媒(約720g)のほとんどをロータリーエバポレータを使用して水浴温度60℃で除去した。得られた溶液は、1−メトキシ−2−プロパノールに分散した45重量%のA−174修飾75nmシリカを有するA−174修飾75nmシリカ溶液であった。
【0131】
次に、54.6gのA−174修飾75nmシリカ溶液、24.6gのSR444、70gのイソプロピルアルコール、0.122gのIrgacure 819、及び0.368gのIrgacure 184を撹拌により混合して、均質なコーティング溶液Eを形成した。
【0132】
実施例F−細長い粒子を有するコーティング溶液
コーティング溶液「F」を調製した。冷却器及び温度計を備えた2リットル3つ口フラスコの中で、960グラムのIPA−ST−UPオルガノシリカの細長い粒子、19.2グラムの脱イオン水、及び350グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを高速撹拌下で混合した。この細長粒子は、約9nm〜約15nmの範囲の直径及び約40nm〜約100nmの範囲の長さを有していた。この粒子を15.2重量%のIPAに分散し、22.8グラムのSilquest A−174シランをフラスコに加えた。得られた混合物を30分間攪拌した。
【0133】
この混合物を16時間81℃に保った。次に、溶液を室温まで冷却し、溶液中の約950グラムの溶媒を、ロータリーエバポレータを使用して水浴温度40℃で除去し、41.7重量%のA−174で修飾された細長いシリカが1−メトキシ−2−プロパノールに分散している透明なA−174で修飾された細長いシリカ溶液を得た。
【0134】
次に、200グラムの透明なA−174修飾細長シリカ溶液、83.4グラムのSR444、1.6gのTEGO Rad 2250、1.25グラムのIrgacure 184、及び233グラムのイソプロピルアルコールを混合して撹拌し、32.5重量%固形分を有する均質なコーティング溶液Fを得た。
【0135】
実施例G−コーティング手順
コーティング手順「G」を開発した。最初に、コーティング溶液を、6cc/分の速度で、10.2cm(4インチ)幅スロットタイプのコーティングダイ内にシリンジポンプで送り込んだ。スロットコーティングダイは、152cm/分(10フィート/分)で移動する基材上に10.2cm幅のコーティングを均一に分配した。
【0136】
次に、コーティングされた基材をUV−LED硬化チャンバ(紫外線放射を通す石英窓が含まれている)の中に通すことによってコーティングを重合させた。UV−LEDバンクは、8個(ダウンウェブ)×20個(クロスウェブ)の160個のUV−LED(約10.2cm×20.4cmの領域をカバーする)の矩形配列を含んだ。LED(Cree,Inc.(Durham NC)より入手可能)を385nmの公称波長で動作し、また、45ボルト、8アンペアで駆動され、その結果UV−A線量は平方センチメートル当たり0.212ジュールとなった。ファンで冷却するUV−LEDアレイは、TENMA 72−6910(42V/10A)電力供給装置(Tenma(Springboro OH)より入手可能)によって給電された。UV−LEDは、基材から約2.5cmの距離にある、硬化チャンバの石英窓の上に配置された。UV−LED硬化チャンバには、1時間当たり46.7リットル/分(100立方フィート)の流量の窒素流が供給され、これにより硬化チャンバ内の酸素濃度は約150ppmとなった。追加の酸素流を供給して、UV−LEDチャンバ内の総酸素レベルを制御した。
【0137】
UV−LEDによって重合された後、コーティングされた基材を150°F(66℃)の乾燥オーブンに10ft/分(152cm/分)のウェブ速度で1分間移動させることによって、硬化したコーティング中の溶媒を除去した。次に、Hバルブを装着したFusion System Model I300P(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)から入手可能)を用いて、乾燥コーティングを後硬化した。UV Fusionチャンバには、窒素流を供給し、チャンバ内に約50ppmの酸素濃度をもたらした。
【0138】
実施例6−接着剤を下塗りしたPETのコーティング
コーティング溶液Cを、実施例Hに従って、9アンペアのUV−LEDを使用し可変流速及び酸素レベルで、接着剤を下塗りしたPETフィルム(DuPont Teijin Filmsから入手可能)にコーティングした。透過率、ヘイズ、透明度、及び有効屈折率(RI)を含む光学特性を他の箇所で記載されるように測定した。コーティングのそれぞれに関する測定結果を表2にまとめる。
【0139】
【表2】
傾斜光学フィルムの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を得た。最初に、傾斜光学フィルムの代表的試料が選択された。次に、試料が液体窒素中で凍結された。次いで、液体窒素から試料を取り出してすぐに破砕して、傾斜光学フィルム断面を厚さ方向に沿って露出させた。次に、この後の方法での試料の帯電を防ぐため、厚さ約1nmの金/パラジウム合金の層で試料をスパッタリングした。次いで、傾斜光学フィルムの上表面と断面を、走査型電子顕微鏡を使用して撮影した。図7Aは、実施例6の試料10bのSEMを示しており、試料10bは実施例6で調製された試料のうちで最大ΔRIを有していた。最大ΔRIは、2つの表面におけるボイド体積分率の大きな差異に対応していた。
【0140】
実施例7−中間ヘイズ傾斜コーティングを有する光開始剤が下塗りされたPET基材
0.2重量%のIrgacure 819とMEKを混合して光開始剤(PI)コーティング溶液を調製した。このPIコーティング溶液を、圧力ポットを使用し1.75cc/分で4”(10.2cm)に調整された8”(20.3cm)幅スロットダイを通して、30フィート/分(75.6cm/分)の速度で2ミル(0.05mm)のPETフィルムにコーティングした。コーティングを150°F(66℃)のオーブンの中で乾燥させ、PI下塗りされた2ミル(0.05mm)のPETフィルムを得た。
【0141】
UV−LED(Cree,Inc.(Durham NC)より入手可能)が395nmの公称波長で動作し、13アンペアで駆動されたこと以外は実施例Hに従って、コーティング溶液DをPI下塗りされた2ミル(0.05mm)のPETフィルムにコーティングした。透過率、ヘイズ、透明度、及び有効屈折率(RI)を含む光学特性を他の箇所で記載されるように測定した。コーティングのそれぞれに関する測定結果を表3にまとめる。
【0142】
【表3】
傾斜光学フィルムの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を得た。最初に、傾斜光学フィルムの代表的試料が選択された。次に、試料が液体窒素中で凍結された。次いで、液体窒素から試料を取り出してすぐに破砕して、傾斜光学フィルム断面を厚さ方向に沿って露出させた。次に、この後の方法での試料の帯電を防ぐため、厚さ約1nmの金/パラジウム合金の層で試料をスパッタリングした。次いで、傾斜光学フィルムの上表面と断面を、走査型電子顕微鏡を使用して撮影した。図7Bは、実施例7の試料30cのSEMを示しており、試料30cは実施例7で調製された試料のうちで最大ΔRIを有していた。最大ΔRIは、2つの表面におけるボイド体積分率の大きな差異に対応していた。
【0143】
実施例8−75マイクロメートルシリカコーティング溶液を有するPI下塗りされたPET基材
コーティング溶液Eを実施例Hに従って、溶液流速5cc/分、様々な酸素レベル、及びUV−LEDを9アンペアで駆動して、PI下塗りされた2ミル(0.05mm)のPETフィルムにコーティングした。透過率、ヘイズ、透明度、及び有効屈折率(RI)を含む光学特性を他の箇所で記載されるように測定した。コーティングのそれぞれに関する測定結果を表4にまとめる。
【0144】
【表4】
傾斜光学フィルムの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を得た。最初に、傾斜光学フィルムの代表的試料が選択された。次に、試料が液体窒素中で凍結された。次いで、液体窒素から試料を取り出してすぐに破砕して、傾斜光学フィルムの断面を厚さ方向に沿って露出させた。次に、この後の方法での試料の帯電を防ぐため、厚さ約1nmの金/パラジウム合金の層で試料をスパッタリングした。次いで、光学フィルムの上表面と断面を、走査型電子顕微鏡を使用して撮影した。図7Cは、実施例8の試料17dのSEMを示しており、試料17dは実施例8で調製された試料のうちで最大ΔRIを有していた。最大ΔRIは、2つの表面におけるボイド体積分率の大きな差異に対応していた。
【0145】
実施例9−細長い粒子コーティング溶液を有するPI下塗りされたPET基材
コーティング溶液Fを実施例Hに従って、溶液流速5cc/分でPI下塗りされた2ミル(0.05mm)のPETフィルムにコーティングし、UV−LED(Cree,Inc.(Durham NC)より入手可能)は395nmの公称波長で動作し、13アンペアで駆動された。透過率、ヘイズ、透明度、及び有効屈折率(RI)を含む光学特性を他の箇所で記載されるように測定した。コーティングのそれぞれに関する測定結果を表5にまとめる。
【0146】
【表5】
指示がない限り、本明細書及び請求項で使用される特性となる大きさ、量、及び物理特性を示す全ての数字は、「約」と言う用語によって修飾されることを理解されたい。それ故に、別の指示がない限りは、本明細書及び添付の「請求項」に説明される数字のパラメータは近似値であり、本明細書に開示された教示を使用して当業者が獲得しようとする所望の特性に応じて変化し得る。
【0147】
本願で引用した全ての参照文献及び刊行物は、本開示と完全には矛盾することのない程度まで、その全てが引用によって本開示に明白に組み込まれる。本明細書において特定の実施形態が例示及び説明されてきたが、多様な代替及び/又は同等の実施が、本開示の範囲から逸脱することなく、図示され説明された特定の実施形態と置き換えられ得ることは、当業者には理解されるであろう。本出願は、本明細書で説明された特定の実施形態のいかなる翻案又は変形をも包含すべく意図されている。したがって、本開示が「特許請求の範囲」及びその同等物によってのみ限定されることを、意図するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法であって、
溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、
前記コーティングの第1の領域に近接した第1の環境、及び前記コーティングの隣接領域に近接した異なる第2の環境を提供することと、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び前記第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、を含み、
前記コーティングの前記第1の領域に近接する前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記コーティングの前記隣接領域に近接する前記複数のナノボイドの第2の体積分率よりも小さく、
前記第2の溶液から前記溶媒の大部分を除去することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の環境が重合禁止剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合禁止剤が、酸素、ヒドロキノン、フェノチアジン、若しくはピペリジン、又はこれらの組み合わせ若しくは誘導体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の領域に近接した酸素濃度が、前記第2の領域に近接した酸素濃度よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の領域の重合開始剤濃度が、前記隣接領域の重合開始剤濃度よりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の溶液中に化学線吸収物質を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の溶液をコーティングすることが多層コーティングを含み、前記第1の溶液が異なる組成物を有する複数の層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の層の少なくとも2つが、異なる濃度の光開始剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングされた第1の溶液に与えられる場を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記場が、磁場、電界、若しくは温度場、又はこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記重合性物質が架橋性物質を含み、少なくとも部分的に重合することが、前記架橋性物質を架橋することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、少なくとも2種類の有機溶媒のブレンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒の大部分を除去することが、熱オーブンの中で乾燥すること、赤外光源若しくはその他の放射光源で乾燥すること、真空乾燥、ギャップ乾燥、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の溶液の重量パーセント固形分が約10%を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の溶液の重量パーセント固形分が、約10%〜90%、約10%〜60%、又は約30%〜50%である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の溶液がナノ粒子を更に含み、前記ナノ粒子の少なくとも一部が、前記重合工程の間に前記不溶性ポリマーマトリックスに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子が表面修飾ナノ粒子を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記表面修飾ナノ粒子が、反応性ナノ粒子、非反応性ナノ粒子、又はこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記反応性ナノ粒子の大部分が、前記不溶性ポリマーマトリックスと化学結合を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記非反応性ナノ粒子の大部分が、前記不溶性ポリマーマトリックスと物理的結合を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記重合性物質と前記ナノ粒子の重量比が、約30:70〜約90:10の範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合することが、前記第1の溶液を化学線で照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の溶液が光開始剤を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化学線が紫外線(UV)を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記紫外線が、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)によって生成される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのLEDが、365、385、395又は405ナノメートルのピーク波長を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の領域が、前記コーティングの第1の表面に近接しており、前記隣接領域が、前記コーティングの反対面に近接している、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記基材がロールの上に提供され、前記コーティング工程、前記少なくとも部分的な重合工程、及び前記除去工程が連続的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
傾斜低屈折率コーティングの製造方法であって、
基材の表面上に光開始剤をコーティングすることと、
紫外線(UV)硬化性物質と、
溶媒と、
複数のナノ粒と、を含む、分散液を前記光開始剤の上にコーティングすることと、
前記紫外線硬化性物質を少なくとも部分的に重合するために前記分散液を紫外線で照射して、前記複数のナノ粒子が結合し、前記重合性物質が枯渇している前記分散液と前記ナノ粒子とで充填されている複数のナノボイドを含む、不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、を含み、
前記基材の前記表面に近接する前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記不溶性ポリマーマトリックスの反対面に近接する前記複数のナノボイドの第2の体積分率よりも大きく、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合した後、前記溶媒の大部分を前記分散液から除去することと、を含む、方法。
【請求項30】
前記紫外線硬化性物質が架橋性物質を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノ粒子が、ポリマーマトリックスとの化学結合を形成する反応性ナノ粒子を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記溶媒が、少なくとも2種類の有機溶媒のブレンドを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記溶媒の大部分を除去することが、熱オーブンの中で乾燥すること、赤外光源若しくはその他の放射光源で乾燥すること、真空乾燥、ギャップ乾燥、又はこれらの組み合わせを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記分散液の重量パーセント固形分が、重合工程の間、約10%〜90%、約10%〜60%、又は約30%〜40%である、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記紫外線が、少なくとも1個の発光ダイオードによって生成される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記溶媒の除去後に、前記分散液を重合することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記基材の前記表面に近接する前記低屈折率コーティングの屈折率が、約1.4未満である、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記分散液を照射することが、少なくとも100ppm(part per million)の酸素雰囲気を前記分散液に隣接して提供することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
傾斜低屈折率コーティングの製造方法であって、
紫外線(UV)硬化性物質と、
光開始剤と、
溶媒と、
複数のナノ粒子と、を含む分散液を、基材の表面にコーティングすることと、
少なくとも100ppm(part per million)の酸素雰囲気を前記分散液に隣接して提供することと、
前記紫外線硬化性物質を少なくとも部分的に重合するために前記分散液を紫外線で照射して、前記複数のナノ粒子が結合し、前記重合性物質が枯渇している前記分散液と前記ナノ粒子とで充填されている複数のナノボイドを含む、不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、を含み、
前記基材の前記表面に近接する前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記不溶性ポリマーマトリックスの反対面に近接する前記複数のナノボイドの第2の体積分率よりも大きく、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合した後、前記溶媒の大部分を前記分散液から除去することと、を含む、方法。
【請求項40】
前記酸素雰囲気が500ppmを超える酸素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記酸素雰囲気が1000ppmを超える酸素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
記酸素雰囲気が2000ppmを超える酸素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記酸素雰囲気が3000ppmを超える酸素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記紫外線硬化性物質が架橋性物質を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記ナノ粒子が、ポリマーマトリックスとの化学結合を形成する反応性ナノ粒子を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記溶媒が、少なくとも2種類の有機溶媒のブレンドを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記溶媒の大部分を除去することが、熱オーブンの中で乾燥すること、赤外光源若しくはその他の放射光源で乾燥すること、真空乾燥、ギャップ乾燥、又はこれらの組み合わせを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記分散液の重量パーセント固形分が、重合工程の間、約10%〜90%、約10%〜60%、又は約30%〜50%である、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記光開始剤が、少なくとも2種類の異なる光開始剤のブレンドを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記紫外線が、少なくとも1つの発光ダイオードによって生成される、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記溶媒の除去後に、前記分散液を重合することを更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記基材の前記表面に近接する前記低屈折率コーティングの屈折率が、約1.4未満である、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法であって、
溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び前記第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、
前記第2の溶液から前記溶媒の大部分を除去して、自由表面を有するナノボイド含有コーティングを形成することと、
第3の溶液を前記自由表面にコーティングして、前記ナノボイド含有コーティングを少なくとも部分的に充填することと、
前記第3の溶液を凝固させることと、を含み、
前記コーティングの前記自由表面に近接する前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記コーティングの反対面に近接する前記複数のナノボイドの第2の体積分率よりも小さい、方法。
【請求項54】
前記第3の溶液が第2の溶媒を含み、凝固させることが、前記第2の溶媒を除去することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第3の溶液が硬化性物質を含み、凝固させることが、前記硬化性物質を硬化することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記硬化性物質が紫外線硬化性物質を含み、凝固させることが、紫外線で重合することを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法であって、
溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び前記第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを含む第1の層を形成することと、
第3の溶液を前記第1の層にコーティングして、第2の層を形成することと、
前記第3の溶液を凝固させることと、
前記第2の及び第3の溶液から前記溶媒の大部分を除去して、傾斜ナノボイド含有コーティングを形成することと、を含み、
前記第1の層内の前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記第2の層内の前記複数のナノボイドの第2の体積分率と異なる、方法。
【請求項58】
前記第3の溶液が第3の溶媒を含み、凝固させることが、前記第3の溶媒を除去することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第3の溶液が硬化性物質を含み、凝固させることが、前記硬化性物質を硬化することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記硬化性物質が紫外線硬化性物質を含み、凝固させることが、紫外線で重合することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項1】
傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法であって、
溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、
前記コーティングの第1の領域に近接した第1の環境、及び前記コーティングの隣接領域に近接した異なる第2の環境を提供することと、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び前記第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、を含み、
前記コーティングの前記第1の領域に近接する前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記コーティングの前記隣接領域に近接する前記複数のナノボイドの第2の体積分率よりも小さく、
前記第2の溶液から前記溶媒の大部分を除去することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の環境が重合禁止剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合禁止剤が、酸素、ヒドロキノン、フェノチアジン、若しくはピペリジン、又はこれらの組み合わせ若しくは誘導体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の領域に近接した酸素濃度が、前記第2の領域に近接した酸素濃度よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の領域の重合開始剤濃度が、前記隣接領域の重合開始剤濃度よりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の溶液中に化学線吸収物質を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の溶液をコーティングすることが多層コーティングを含み、前記第1の溶液が異なる組成物を有する複数の層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の層の少なくとも2つが、異なる濃度の光開始剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングされた第1の溶液に与えられる場を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記場が、磁場、電界、若しくは温度場、又はこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記重合性物質が架橋性物質を含み、少なくとも部分的に重合することが、前記架橋性物質を架橋することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、少なくとも2種類の有機溶媒のブレンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒の大部分を除去することが、熱オーブンの中で乾燥すること、赤外光源若しくはその他の放射光源で乾燥すること、真空乾燥、ギャップ乾燥、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の溶液の重量パーセント固形分が約10%を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の溶液の重量パーセント固形分が、約10%〜90%、約10%〜60%、又は約30%〜50%である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の溶液がナノ粒子を更に含み、前記ナノ粒子の少なくとも一部が、前記重合工程の間に前記不溶性ポリマーマトリックスに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子が表面修飾ナノ粒子を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記表面修飾ナノ粒子が、反応性ナノ粒子、非反応性ナノ粒子、又はこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記反応性ナノ粒子の大部分が、前記不溶性ポリマーマトリックスと化学結合を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記非反応性ナノ粒子の大部分が、前記不溶性ポリマーマトリックスと物理的結合を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記重合性物質と前記ナノ粒子の重量比が、約30:70〜約90:10の範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合することが、前記第1の溶液を化学線で照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の溶液が光開始剤を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化学線が紫外線(UV)を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記紫外線が、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)によって生成される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのLEDが、365、385、395又は405ナノメートルのピーク波長を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の領域が、前記コーティングの第1の表面に近接しており、前記隣接領域が、前記コーティングの反対面に近接している、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記基材がロールの上に提供され、前記コーティング工程、前記少なくとも部分的な重合工程、及び前記除去工程が連続的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
傾斜低屈折率コーティングの製造方法であって、
基材の表面上に光開始剤をコーティングすることと、
紫外線(UV)硬化性物質と、
溶媒と、
複数のナノ粒と、を含む、分散液を前記光開始剤の上にコーティングすることと、
前記紫外線硬化性物質を少なくとも部分的に重合するために前記分散液を紫外線で照射して、前記複数のナノ粒子が結合し、前記重合性物質が枯渇している前記分散液と前記ナノ粒子とで充填されている複数のナノボイドを含む、不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、を含み、
前記基材の前記表面に近接する前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記不溶性ポリマーマトリックスの反対面に近接する前記複数のナノボイドの第2の体積分率よりも大きく、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合した後、前記溶媒の大部分を前記分散液から除去することと、を含む、方法。
【請求項30】
前記紫外線硬化性物質が架橋性物質を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノ粒子が、ポリマーマトリックスとの化学結合を形成する反応性ナノ粒子を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記溶媒が、少なくとも2種類の有機溶媒のブレンドを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記溶媒の大部分を除去することが、熱オーブンの中で乾燥すること、赤外光源若しくはその他の放射光源で乾燥すること、真空乾燥、ギャップ乾燥、又はこれらの組み合わせを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記分散液の重量パーセント固形分が、重合工程の間、約10%〜90%、約10%〜60%、又は約30%〜40%である、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記紫外線が、少なくとも1個の発光ダイオードによって生成される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記溶媒の除去後に、前記分散液を重合することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記基材の前記表面に近接する前記低屈折率コーティングの屈折率が、約1.4未満である、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記分散液を照射することが、少なくとも100ppm(part per million)の酸素雰囲気を前記分散液に隣接して提供することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
傾斜低屈折率コーティングの製造方法であって、
紫外線(UV)硬化性物質と、
光開始剤と、
溶媒と、
複数のナノ粒子と、を含む分散液を、基材の表面にコーティングすることと、
少なくとも100ppm(part per million)の酸素雰囲気を前記分散液に隣接して提供することと、
前記紫外線硬化性物質を少なくとも部分的に重合するために前記分散液を紫外線で照射して、前記複数のナノ粒子が結合し、前記重合性物質が枯渇している前記分散液と前記ナノ粒子とで充填されている複数のナノボイドを含む、不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、を含み、
前記基材の前記表面に近接する前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記不溶性ポリマーマトリックスの反対面に近接する前記複数のナノボイドの第2の体積分率よりも大きく、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合した後、前記溶媒の大部分を前記分散液から除去することと、を含む、方法。
【請求項40】
前記酸素雰囲気が500ppmを超える酸素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記酸素雰囲気が1000ppmを超える酸素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
記酸素雰囲気が2000ppmを超える酸素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記酸素雰囲気が3000ppmを超える酸素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記紫外線硬化性物質が架橋性物質を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記ナノ粒子が、ポリマーマトリックスとの化学結合を形成する反応性ナノ粒子を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記溶媒が、少なくとも2種類の有機溶媒のブレンドを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記溶媒の大部分を除去することが、熱オーブンの中で乾燥すること、赤外光源若しくはその他の放射光源で乾燥すること、真空乾燥、ギャップ乾燥、又はこれらの組み合わせを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記分散液の重量パーセント固形分が、重合工程の間、約10%〜90%、約10%〜60%、又は約30%〜50%である、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記光開始剤が、少なくとも2種類の異なる光開始剤のブレンドを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記紫外線が、少なくとも1つの発光ダイオードによって生成される、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記溶媒の除去後に、前記分散液を重合することを更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記基材の前記表面に近接する前記低屈折率コーティングの屈折率が、約1.4未満である、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法であって、
溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び前記第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを形成することと、
前記第2の溶液から前記溶媒の大部分を除去して、自由表面を有するナノボイド含有コーティングを形成することと、
第3の溶液を前記自由表面にコーティングして、前記ナノボイド含有コーティングを少なくとも部分的に充填することと、
前記第3の溶液を凝固させることと、を含み、
前記コーティングの前記自由表面に近接する前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記コーティングの反対面に近接する前記複数のナノボイドの第2の体積分率よりも小さい、方法。
【請求項54】
前記第3の溶液が第2の溶媒を含み、凝固させることが、前記第2の溶媒を除去することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第3の溶液が硬化性物質を含み、凝固させることが、前記硬化性物質を硬化することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記硬化性物質が紫外線硬化性物質を含み、凝固させることが、紫外線で重合することを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
傾斜ナノボイド含有コーティングの製造方法であって、
溶媒中に重合性物質を含む第1の溶液を基材上にコーティングすることと、
前記重合性物質を少なくとも部分的に重合して、第2の溶液で充填されている複数のナノボイド及び前記第2の溶液と共連続性である不溶性ポリマーマトリックスを含む第1の層を形成することと、
第3の溶液を前記第1の層にコーティングして、第2の層を形成することと、
前記第3の溶液を凝固させることと、
前記第2の及び第3の溶液から前記溶媒の大部分を除去して、傾斜ナノボイド含有コーティングを形成することと、を含み、
前記第1の層内の前記複数のナノボイドの第1の体積分率が、前記第2の層内の前記複数のナノボイドの第2の体積分率と異なる、方法。
【請求項58】
前記第3の溶液が第3の溶媒を含み、凝固させることが、前記第3の溶媒を除去することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第3の溶液が硬化性物質を含み、凝固させることが、前記硬化性物質を硬化することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記硬化性物質が紫外線硬化性物質を含み、凝固させることが、紫外線で重合することを含む、請求項57に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【公表番号】特表2013−508144(P2013−508144A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535398(P2012−535398)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053669
【国際公開番号】WO2011/050232
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053669
【国際公開番号】WO2011/050232
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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