説明

先行車両追従支援装置

【課題】先行車両を追従するためのステアリングホイールの目標ステアリング操舵角を運転者に提示し、先行車両に安定して追従させる。
【解決手段】先行車両と自車両との相対位置を検出する先行車両検出手段6と、自車両の車速を検出する車速検出手段7と、先行車両と自車両とが同一の円の円周上に位置するとして、先行車両検出手段6により検出された相対位置情報から円の回転半径を演算し、予め設定されたマップを用いて車速検出手段7により検出された車速と回転半径とから先行車両に追従するためのステアリングホイール3の目標ステアリング操舵角を演算する目標操舵角演算手段9と、目標操舵角演算手段9により演算された目標ステアリング操舵角を提示する目標操舵角提示手段10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は先行車両追従支援装置に係り、特に、先行車両追従走行時に先行車両を追従するために必要なステアリングホイールの目標ステアリング操舵角を運転者に提示することができる先行車両追従支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両が走行する車線等の道路環境をカメラで検知し、操舵アクチュエータにより自動的に前輪を操舵し、自車両を車線に追従させる車線追従支援装置として、特開平5−197423、特開2003−81123などが知られている。また、特開2006−298008のように、自車両の走行情報と先行車両情報とを検出し、先行車両に一定の車間距離で追従するようACC(Adaptive Cruise Control:車間距離制御)と、先行車両に追従した操舵トルクを発生するよう自動操舵制御とを行なう先行車両追従支援装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−197423号公報
【特許文献2】特開2003−81123号公報
【特許文献3】特開2006−298008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記先行車両追従支援装置には、先行車両検出手段としてレーダ(レーザーレーダ又は、ミリ波レーダ)を備え、レーダで検出した前方の先行車両に対して自車両のアクセルとブレーキの開度を制御し、先行車両との車間距離を一定に保ち走行させるものがある。このレーダを備えた先行車両追従支援装置においては、コーナリング時に運転者が適宜ステアリングホイールの操舵を行い、先行車両に対する自車両の追従走行を行なっている。
このような先行車両追従支援装置による先行車両追従走行において、運転初心者などが運転する場合、走行する道路に対する自車両の位置(車両感覚)を十分に把握することができないため、コーナリング時にステアリングホイールの操舵が安定しなくなり、先行車両に安定して追従させることができなくなる問題がある。
【0005】
この発明は、先行車両追従走行において、先行車両を追従するために必要なステアリングホイールの目標ステアリング操舵角を運転者に提示することができ、先行車両に安定して追従させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、先行車両と自車両との相対位置を検出する先行車両検出手段と、自車両の車速を検出する車速検出手段と、先行車両と自車両とが同一の円の円周上に位置するとして、前記先行車両検出手段により検出された前記相対位置情報から前記円の回転半径を演算し、予め設定されたマップを用いて前記車速検出手段により検出された車速と前記回転半径とから先行車両に追従するためのステアリングホイールの目標ステアリング操舵角を演算する目標操舵角演算手段と、前記目標操舵角演算手段により演算された目標ステアリング操舵角を提示する目標操舵角提示手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の先行車両追従支援装置は、先行車両を追従するために必要なステアリングホイールの目標ステアリング操舵角を運転者に提示することができ、先行車両に安定して追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は先行車両追従支援装置のシステム構成図である。(実施例)
【図2】図2は目標操舵角提示手段として発光体を備えたステアリングホイールの正面図である。(実施例)
【図3】図3は先行車両と自車両とのカーブにおける回転半径の求め方を説明する図である。(実施例)
【図4】図4(A)は車速が50km/h時の回転半径により設定された目標ステアリング操舵角のマップを示す図、図4(B)は車速が80km/h時の回転半径により設定された目標ステアリング操舵角のマップを示す図である。(実施例)
【図5】図5は先行車両及び自車両の位置と発光体により目標ステアリング操舵角を提示したステアリングホイールとを示す図である。(実施例)
【図6】図6は先行車両追従支援装置による目標ステアリング操舵角提示のフローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図6は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は道路、2は自車両、3はステアリングホイール、4は先行車両追従支援装置である。自車両2に搭載された先行車両追従支援装置4は、先行車両5(図3参照)に自車両2が一定の車間距離で追従するよう制御するACC(Adaptive Cruise Control:車間距離制御)機能を有し、先行車両5と自車両2との相対位置を検出するレーダ(レーザーレーダ又は、ミリ波レーダ)からなる先行車両検出手段6を備え、自車両2の車速vを検出する車速検出手段7を備えている。先行車両検出手段6と車速検出手段7とは、追従支援制御部8に接続されている。
追従支援制御部8は、目標操舵角演算手段9を備えている。目標操舵角演算手段9は、図3に示すように、先行車両5と自車両2とが道路1の同一の円(カーブ)の円周上に位置するとして、前記先行車両検出手段6により検出された前記相対位置情報から前記円の回転半径rを演算し、予め設定されたマップ(図4参照)を用いて前記車速検出手段7により検出された車速vと前記回転半径rとから先行車両5に追従するためのステアリングホイール3の目標ステアリング操舵角θを演算する。
前記目標操舵角演算手段9により演算された目標ステアリング操舵角θは、目標操舵角提示手段10により提示される。目標操舵角提示手段10は、図2に示すように、ステアリングホイール3外周上のほぼ上半分に等間隔に設けられた複数の発光体11からなり、追従支援制御部8に備えた目標操舵角提示制御手段12により点灯・消灯を制御される。目標操舵角提示制御手段12は、目標ステアリング操舵角θになるようにステアリングホイール3を回転操作した時に、ステアリングホイール3の上端に位置する発光体11aのみを点灯させるように制御する。
【0011】
前記先行車両検出手段6により検出された相対位置情報からの、円の回転半径rの求め方を説明する。図3に示すように、自車両2の位置座標を原点(x=0、y=0)、先行車両5の位置座標を(x,y)、円の中心の位置座標を(a,b)とすると、
円の方程式より、
(x−a)+(y−b)=r 式1
となる。
このとき、
a:円の中心x座標(この場合半径rと同じ)
b:円の中心y座標(この場合0)
である。
【0012】
前記式1に、a,bを代入して、
(x−r)+(y−0)=r
−2Xr+r+y=r
2xr=x+y
r=(x+y)/2x
よって、先行車両2の位置座標から、先行車両5と自車両2とが位置する道路1のカーブの回転半径rを求めることができる。
【0013】
前記追従支援制御部8は、例えば、図4に示すように、車速とカーブの回転半径rとに応じて設定した目標ステアリング操舵角θのマップを備えている。図4(A)は、車速vが50km/h時の回転半径rにより設定された目標ステアリング操舵角θのマップである。図4(B)は、車速vが80km/h時の回転半径rにより設定された目標ステアリング操舵角θのマップである。前記目標操舵角演算手段9は、図4に示すように予め設定されたマップを用いて、車速vと回転半径rとから先行車両5に追従するためのステアリングホイール3の目標ステアリング操舵角θを演算する。
【0014】
先行車両追従支援装置4は、先行車両5に追従するためのステアリングホイール3の目標ステアリング操舵角θを求める場合に、例えば、図5に示すように、
・自車両2の位置(x=0;y=0)
・先行車両の位置(x=5m;y=50m)
・道路1のカーブの回転半径r(約253m)
・自車両2の車速v(50km/h)
とすると、図4(A)のマップより、目標ステアリング操舵角θを約13度と求めることができる。
図2に示すように、直線走行で中立位置にあるステアリングホイール3のホイール回転中心Cを通り上下方向に延びる線分を基準線Lとすると、図5に示す自車両2は右カーブを走行しているので、ステアリングホイール3外周上の略上半分に設けた複数の発光体11は基準線L上を中心として回転方向左側の約13度に位置する発光体11aが点灯される。運転者は、点灯された発光体11aがステアリングホイール3の上端に位置するように、ステアリングホイール3を右方向に回転操作することで目標ステアリング操舵角θに操作することができ、先行車両5に追従することができる。
【0015】
次に、先行車両追従支援装置4の作用を説明する。
先行車両追従支援装置4は、図6に示すように、目標ステアリング操舵角提示の制御がスタートすると(S01)、先行車両検出手段6により検出された相対位置情報から先行車両5の(x,y)座標を取得し(S02)、自車両2の車速vが設定車速(例えば、50km/h)以上であるかを判断する(S03)。
この判断(S03)がYESの場合は、道路1のカーブ回転半径rを演算(r=(x+y)/2x)し(S04)、求められた回転半径rの含まれる設定範囲内(例えば、100m<r<1000m)に先行車両5が存在するかを判断する(S06)。
この判断(S05)がYESの場合は、車速v・回転半径r・目標ステアリング操舵角θのマップ(図4(A))と求められた回転半径rとから目標ステアリング操舵角θを演算し(S06)、求められた目標ステアリング操舵角θに位置する発光体11aを点灯させ(S07)、処理(S02)にリターンする。
一方、前記判断(S03)がNOの場合、また、前記判断(S05)がNOの場合は、発光体11を消灯し(S08)、処理(S02)にリターンする。
【0016】
このように、先行車両追従支援装置4は、先行車両5と自車両2とが同一の円の円周上に位置するとして、先行車両検出手段6により検出された相対位置情報から円の回転半径rを演算し、予め設定されたマップを用いて車速検出手段7により検出された車速vと回転半径rとから先行車両5に追従するためのステアリングホイール3の目標ステアリング操舵角θを演算し、演算された目標ステアリング操舵角θを提示する。
これにより、この先行車両追従支援装置4は、先行車両5を追従するために必要なステアリングホイール3の目標ステアリング操舵角θを運転者に提示することができ、運転者は提示された目標ステアリング操舵角θになるようステアリングホイール3を操舵することで、先行車両5に自車両2を安定して追従させることができる。
また、先行車両追従支援装置4は、ステアリングホイール3外周上のほぼ上半分に等間隔に複数の発光体11を設け、目標ステアリング操舵角θになるようにステアリングホイール3を回転操作した時にステアリングホイール3上端に位置する発光体11aのみを点灯させる。
これにより、この先行車両追従支援装置4は、先行車両5に追従するためのステアリング操舵角θを、運転者にわかりやすく提示することができる。
【0017】
この実施例の先行車両追従支援装置4は、ACC(Adaptive Cruise Control)での利用を考えた場合に最適なものとして、レーダからなる先行車両検出手段6を備えている。しかし、先行車両検出手段6は、以下のようにすることも考えられる。
先行車両は、搭載されたGPSから先行車両の位置情報を取得し、車車間通信により先行車両位置情報を送信する。自車両は、先行車両位置情報を受信する。また、自車両は、自車両に搭載されたGPSにより自車両の位置情報を取得する。そして、自車両は、受信した先行車両位置情報と取得した自車両位置情報とから先行車両と自車両との相対位置を検出する。検出された相対位置情報から、回転半径、目標ステアリング操舵角を演算し、演算された目標ステアリング操舵角を提示することで、上述実施例と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明は、先行車両を追従するために必要なステアリングホイールの操舵角を運転者に提示することができ、四輪車に限らず、二輪車にも適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 道路
2 自車両
3 ステアリングホイール
4 先行車両追従支援装置
5 先行車両
6 先行車両検出手段
7 車速検出手段
8 追従支援制御部
9 目標操舵角演算手段
10 目標操舵角提示手段
11 発光体
12 目標操舵角提示制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車両と自車両との相対位置を検出する先行車両検出手段と、
自車両の車速を検出する車速検出手段と、
先行車両と自車両とが同一の円の円周上に位置するとして、前記先行車両検出手段により検出された前記相対位置情報から前記円の回転半径を演算し、予め設定されたマップを用いて前記車速検出手段により検出された車速と前記回転半径とから先行車両に追従するためのステアリングホイールの目標ステアリング操舵角を演算する目標操舵角演算手段と、
前記目標操舵角演算手段により演算された目標ステアリング操舵角を提示する目標操舵角提示手段とを備えることを特徴とする先行車両追従支援装置。
【請求項2】
前記目標操舵角提示手段は、ステアリングホイール外周上のほぼ上半分に等間隔に設けられた発光体であり、
目標ステアリング操舵角になるようにステアリングホイールを回転操作した時にステアリングホイール上端に位置する、発光体のみを点灯させるように制御する目標操舵角提示制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の先行車両追従支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−76639(P2012−76639A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224701(P2010−224701)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】