説明

光アイソレータおよび光送信モジュール

【課題】偏波方向が異なる2つの直線偏波のレーザ光に共用できる光アイソレータおよびそれを備えた光送信モジュールを提供する。
【解決手段】光送信モジュール100は、半導体レーザ106と、それに対して相対的に定められた基準位置に設置された光アイソレータ111と、を備える。光アイソレータ111は、所定の基準姿勢からその光軸を中心として一方向に所定の回転角θだけ回転した場合に、半導体レーザ106から出射されるレーザ光の光アイソレータ111への入射角が所望の入射角θとなり、基準姿勢から光軸を中心として反対方向にθだけ回転した場合にも、半導体レーザ106から出射されるレーザ光の光アイソレータ111への入射角がθとなるよう、θとθとに基づいて決定される角度θだけ光軸に対して傾斜した入射面を有し、その入射面に設けられた偏波面に沿う直線偏波のレーザ光だけを順方向に通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アイソレータおよびそれを備えた光送信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザなどのレーザ光源と、レンズやフェルールなどの光学部材と、を備える光送信モジュールでは、レーザ光源から出射されるレーザ光がレンズで集光され、光信号の伝送路である光ファイバに入射する。ただし、光送信モジュールが光ファイバに結合する光路上でレーザ光が反射し、反射戻り光となってレーザ光源に戻ると、レーザ光源のレーザ発振が不安定となる。これを防ぐために、光送信モジュールでは反射戻り光対策を施すことが一般的である。
【0003】
反射戻り光対策の1つとして、光学部材(たとえばフェルール)の入射面を光軸に対して傾けて配置することで、近端反射光がそのままレーザ光源に戻らないようにした構造が知られている。
【0004】
また、別の対策として、たとえば特許文献1には、光送信モジュールの内部にファラデー回転子を有する光アイソレータを配置して遠端反射を抑えた構造が記載されている。なお、最近では上記反射戻り光対策を併用することが主流となっている。
【0005】
たとえばガラス製のフェルールの入射面に近端反射防止のための斜め研磨を施した場合、フェルールに入射するレーザ光はその入射面で屈折する。このため、光の結合を最大とするためには、フェルールに入射したレーザ光が光軸に対して0°となるようにレーザ光の入射角を決定すればよい。
【0006】
図6は、入射面が斜めに研磨されたフェルールの側面図である。図6に示すように、空気中からフェルールの入射面に入射するレーザ光の入射角θと屈折角θとの関係は、空気の屈折率をn、フェルールの屈折率をnとすると、次式(1)に示すスネルの法則に従う。
sinθ=nsinθ ・・・(1)
【0007】
光の結合を最大とするためには、屈折後のレーザ光が光軸に対して0°となるように、すなわち、レーザ光の屈折角θが垂直方向に対するフェルール入射面の傾斜角θと等しくなるように(θ=θ)、レーザ光の入射角θを設定する必要がある。ここで、フェルールに入射するレーザ光の伝搬方向と光軸との角度をθとすれば、レーザ光の入射角θはフェルール入射面の傾斜角θにθを加えた角度になるから(θ=θ+θ)、光の結合を最大とするθは次式(2)で表される。
θ=sin−1((n/n)sinθ)−θ ・・・(2)
【0008】
たとえば、空気の屈折率nが1、フェルールの屈折率nが1.4(ここでは、光ファイバとの接続を実現するための伝送経路であるフェルール内のコア材料が石英ガラスであるものとする)、フェルール入射面の傾斜角θが一般的な傾斜角である8°である場合、式(2)より、フェルールに入射するレーザ光の伝搬方向と光軸との角度θを3.48°とすれば光結合が最大となる(θが6°である場合、θを2.62°とすればよい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−163351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような近端反射対策に加え、遠端反射対策としてフェルールの入射端側に光アイソレータをさらに配置する場合、光アイソレータの入射面を光軸に対して傾けた上で、レーザ光源から出射されるレーザ光の偏波方向と光アイソレータの入射面に設けられた偏光子の偏波面とをそろえなければならない。
【0011】
たとえば、光送信モジュールのレーザ光源がTMモード(Transverse Magnetic mode)で発振する半導体レーザである場合、図7(A)に示すように、フェルール212aの入射端側に配置された光アイソレータ211aの入射面を光軸に対して傾けるとともに、図7(B)に示すように、光アイソレータ211aの入射面に設けられた偏光子(入射側偏光子)の偏波面を半導体レーザから出射されるレーザ光の偏波方向(ここでは水平方向とする)にそろえなければならない。
【0012】
一方、光送信モジュールのレーザ光源がTMモードと偏波方向が90°異なるTEモード(Transverse Electric mode)で発振する半導体レーザである場合、図8(A)に示すように、フェルール212bの入射端側に配置された光アイソレータ211bの入射面を光軸に対して傾けるとともに、図8(B)に示すように、光アイソレータ211bの入射面に設けられた偏光子の偏波面を半導体レーザから出射されるレーザ光の偏波方向(ここでは垂直方向とする)にそろえなければならない。
【0013】
このように、従来の光送信モジュールでは、レーザ光源から出射されるレーザ光の偏波方向に応じて、入射面の傾斜角と偏光子の偏波面とを最適化した専用の光アイソレータ(または光アイソレータ付きレセプタクル)を別々に用いなければならず、これによる製造コストや在庫コストの増大、部品管理の煩雑さ等が問題となっていた。
【0014】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、偏波方向が異なる2つの直線偏波のレーザ光に共通して用いることができる光アイソレータおよびそれを備えた光送信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る光アイソレータは、レーザ光が入射する入射面を有し、該入射面に設けられた偏波面に沿う直線偏波のレーザ光だけを順方向に通過させる光アイソレータであって、レーザ光源に対して相対的に定められた基準位置に設置された当該光アイソレータを所定の基準姿勢からその光軸を中心として一方向に所定の回転角だけ回転させた場合に、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の前記入射面への入射角が所望の入射角となり、前記基準位置に設置された当該光アイソレータを前記基準姿勢から前記光軸を中心として前記一方向の反対方向に前記所定の回転角だけ回転させた場合にも、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の前記入射面への入射角が前記所望の入射角となるよう、前記所定の回転角と前記所望の入射角とに基づいて決定される角度だけ前記入射面が前記光軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0016】
本発明では、基準位置に設置された光アイソレータを基準姿勢からその光軸を中心として所定の回転角だけいずれの方向に回転させても、レーザ光源から出射されるレーザ光の光アイソレータへの入射角が所望の入射角となるよう、光アイソレータ111の入射面が光軸に対して傾斜している。このため、本発明によれば、光アイソレータを偏波方向が異なる(具体的には上記回転角の2倍だけ偏波方向が異なる)2つの直線偏波のレーザ光に共通して用いることができる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記所望の入射角をθ、前記所定の回転角をθ、とするとき、前記入射面の前記光軸に対する傾斜角θは、θ=θ/cosθで表される。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記所定の回転角は45°である。
【0019】
この態様によれば、光アイソレータを偏波方向が直交する(回転角45°の2倍だけ偏波方向が異なる)2つの直線偏波のレーザ光に共通して用いることができる。
【0020】
この態様では、当該光アイソレータが前記基準姿勢で水平に設置された場合に、前記光軸を含む垂直平面に直交するよう前記入射面を傾斜させ、かつ、該垂直平面に対して45°で交差する偏波面を前記入射面に設けてもよい。
【0021】
こうすれば、基準位置に水平に設置された光アイソレータをその入射面に設けられた偏波面が垂直になるよう基準姿勢から45°回転させるだけで、光アイソレータへのレーザ光の入射角を所望の入射角に維持し、垂直偏波のレーザ光だけを順方向に通過させることができる。また、この光アイソレータを偏波面が水平になるよう基準姿勢から逆方向に45°だけ回転させれば、光アイソレータへのレーザ光の入射角を所望の入射角に維持し、水平偏波のレーザ光だけを順方向に通過させることもできる。
【0022】
また、本発明の一態様では、前記光アイソレータは、レーザ光が入射する第1の偏光子と、前記第1の偏光子を通過するレーザ光の偏波方向を45°回転させる回転子と、偏波面が前記第1の偏光子の偏波面と45°だけ異なるよう配置され、前記回転子により偏波方向が回転したレーザ光を通過させる第2の偏光子と、を含む。
【0023】
また、本発明に係る光送信モジュールは、レーザ光源と、該レーザ光源に対して相対的に定められた基準位置に設置された光アイソレータと、を備えた光送信モジュールであって、前記光アイソレータは、当該光アイソレータを所定の基準姿勢からその光軸を中心として一方向に所定の回転角だけ回転させた場合に、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の当該光アイソレータへの入射角が所望の入射角となり、当該光アイソレータを前記基準姿勢から前記光軸を中心として前記一方向の反対方向に前記所定の回転角だけ回転させた場合にも、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の当該光アイソレータへの入射角が前記所望の入射角となるよう、前記所定の回転角と前記所望の入射角とに基づいて決定される角度だけ前記光軸に対して傾斜した入射面を有し、該入射面に設けられた偏波面に沿う直線偏波のレーザ光だけを順方向に通過させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る光送信モジュールの側断面図である。
【図2】図1に示す光アイソレータの拡大側断面図である。
【図3】図2に示す光アイソレータを基準姿勢で水平に設置した場合における、(A)光アイソレータの側面図と、(B)入射側偏光子の偏波面を示す図である。
【図4】図3に示す光アイソレータを入射側から見て右回りに所定の回転角だけ回転させた場合における、(A)光アイソレータの側断面図と、(B)入射側偏光子の偏波面を示す図である。
【図5】図3に示す光アイソレータを入射側から見て左回りに所定の回転角だけ回転させた場合における、(A)光アイソレータの側断面図と、(B)入射側偏光子の偏波面を示す図である。
【図6】入射面が斜めに研磨されたフェルールの側面図である。
【図7】TMモード発振の半導体レーザを使用する場合における、(A)従来の光アイソレータの入射面の傾斜角と、(B)入射側偏光子の偏波面と、の関係を示す図である。
【図8】TEモード発振の半導体レーザを使用する場合における、(A)従来の光アイソレータの入射面の傾斜角と、(B)入射側偏光子の偏波面と、の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係る光送信モジュール100の側断面図である。図1に示すように、光送信モジュール100は、ステム101、ステムガイド102、レンズキャップ103、ホルダ104、レセプタクル105、半導体レーザ106、半導体レーザ搭載用基板107、リードピン108、レンズ109、マグネット110、光アイソレータ111、およびフェルール112を含んで構成される。
【0027】
ステム101は、主面に対して垂直に形成された基板取り付け用の突起部を有する円盤状の金属部材である。ステム101の突起部上には、たとえば10Gbit/s以上の高周波の伝送線路が形成された中継基板(図示せず)と、レーザ光源である半導体レーザ106を搭載した半導体レーザ搭載用基板107と、が配置されている。
【0028】
半導体レーザ106は、ステム101の主面方向とは反対の方向に直線偏波のレーザ光を出射する。本実施形態では、半導体レーザ106として、TMモードで発振する半導体レーザおよびTEモードで発振する半導体レーザのいずれを用いてもよい。
【0029】
ステム101には、その裏面に2つのリードピン108が接続されている。そして、このリードピン108を介して、外部駆動回路から半導体レーザ106に駆動電流および信号が供給される。
【0030】
レンズキャップ103は、ステム101の外径より小さい外径を有するたとえば金属材料からなる有底円筒状の部材であり、ステム101の突起部を覆うようステム101の主面に固設されている。レンズキャップ103の底面には、半導体レーザ106と対向する位置にレンズ109と略同径の開口が形成されている。
【0031】
レンズ109は、レンズキャップ103の開口にはめ込まれ、レンズキャップ103を介してステム101に支持されている。レンズ109は、半導体レーザ106から出射されるレーザ光を集光し、集光したレーザ光を光アイソレータ111に入射させる。
【0032】
ステムガイド102は、一端がステム101の主面周縁部に固設された、ステム101と略同径の開口を有する円筒状の金属部材である。
【0033】
ホルダ104は、ステムガイド102の外径と略同一の内径を有する円筒部104aと、円筒部104aの内径より小さい内径を有する円筒部104bと、が一体形成された段差円筒状の金属部材である。
【0034】
レセプタクル105は、外部から入射されるレーザ光を順方向に通過させる光アイソレータ111と、光ファイバとの接続を実現するための伝送経路である円柱状のフェルール112と、が取り付けられた、たとえば樹脂からなる円筒状の部材である。フェルール112は、レセプタクル105の内径と略同一の外径を有するたとえばガラスからなる部材であり、レセプタクル105の後端側に予め挿入されている。フェルール112の後端面には、フェルール112の光軸と光アイソレータ111の光軸とが一致するよう(ここでは光アイソレータ111とフェルール112との境界で生じる光の屈折は無視できるほど小さいものとする)と、光アイソレータ111の出射面が貼り合わされている。
【0035】
また、レセプタクル105の外径は先端側より後端側の方が大きくなるよう形成されており、その後端面にはレセプタクル105の中心軸とホルダ104の中心軸が一致するようホルダ104の円筒部104b側端が固設されている。さらに、そのホルダ104の円筒部104a側端は、ステムガイド102の開放端に回転可能にはめ込まれている。これにより、レセプタクル105がステムガイド102を介してステム101に支持され、光アイソレータ111が半導体レーザ106に対して相対的に定められた基準位置に設置されるようになる。また、ステムガイド102に対してレセプタクル105を回転させるだけで、光アイソレータ111をその光軸を中心として回転させることが可能となっている。
【0036】
なお、マグネット110は、光アイソレータ111の外周近傍に配置される円筒状の部材であり、回転子113の偏波の回転方向を決めるものである。その回転角度量は回転子113の特性で決まり、回転方向の正負はマグネット110の極性で決まる。
【0037】
図2は、図1に示す光アイソレータの拡大側断面図である。図2に示すように、光アイソレータ111は、回転子113を入射側の偏光子114と出射側の偏光子115とで挟み込むよう構成されている。
【0038】
偏光子114は、光アイソレータ111の入射側に配置され、その偏波面に沿う直線偏波のレーザ光を通過させ、後続の回転子113に出力する。回転子113は、たとえばファラデー効果のある磁性ガーネット材料からなる部材であり、偏光子114を通過するレーザ光の偏波方向を45°だけ回転させる。偏光子115は、その偏波面が偏光子114の偏波面と45°だけ異なるよう光アイソレータ111の出射側に配置され、回転子113により偏波方向が回転したレーザ光を通過させる。これにより、光アイソレータ111は、入射側の偏光子114の偏波面に沿う直線偏波のレーザ光だけを順方向に通過させ、出射側からの反射戻り光を遮断することができる。
【0039】
さらに、光アイソレータ111の入射面で起こるレーザ光の反射を防止するのため、少なくとも光アイソレータ111の入射面(偏光子114の入射面)は、その光軸に対して傾斜するよう形成されている(本実施形態では、偏光子114の出射面も、回転子113の入射面および出射面も、偏光子115の入射面および出射面も、フェルール112の入射面の一部も、偏光子114の入射面と同様、光軸に対して傾斜している)。
【0040】
特に、本実施形態では、半導体レーザ106としてたとえばTMモードおよびTEモードのいずれで発振する半導体レーザが半導体レーザ搭載用基板107に搭載されても、光アイソレータ111(または光アイソレータ付きのレセプタクル105)を共通して用いることができるよう、光アイソレータ111の入射面(偏光子114の入射面)の光軸に対する傾斜角(斜め研磨角度)が決定されている。以下、図3から図5に基づき、この傾斜角について具体的に説明する。
【0041】
図3は、図2に示す光アイソレータ111を予め定められた基準姿勢で水平に設置した場合における、(A)光アイソレータ111の側面図と、(B)入射側の偏光子114の偏波面を示す図である。図4は、図3に示す光アイソレータを入射側から見て右回りに所定の回転角だけ回転させた場合における、(A)光アイソレータ111の側断面図と、(B)偏光子114の偏波面を示す図である。図5は、図3に示す光アイソレータ111を入射側から見て左回りに所定の回転角θだけ回転させた場合における、(A)光アイソレータ111の側断面図と、(B)偏光子114の偏波面を示す図である。
【0042】
図3(A)に示すように、光アイソレータ111の入射面(偏光子114の入射面)は、光アイソレータ111が基準位置に水平に設置された場合にその光軸を含む垂直平面に直交するよう傾斜している。また、図3(B)に示すように、光アイソレータ111の入射面には、その垂直平面に対して45°で交差する方向に沿う偏波面が設けられている。
【0043】
ここで、光アイソレータ111の入射面(偏光子114の入射面)の光軸に対する傾斜角θ(図3(A)参照)は、半導体レーザ106に対して相対的に定められた基準位置に設置された光アイソレータ111(図1参照)をレセプタクル105の回転調芯によって基準姿勢からその光軸を中心として一方向に所定の回転角θだけ回転させた場合に、半導体レーザ106から出射されるレーザ光の入射面への入射角が所望の入射角θとなり(図4(A)(B)参照))、基準位置に設置された光アイソレータ111をレセプタクル105の回転調芯によって基準姿勢から光軸を中心として上記方向とは反対方向にθだけ回転させた場合にも、半導体レーザ106から出射されるレーザ光の入射面への入射角がθとなるよう(図5(A)(B)参照)、調芯による回転角θと回転調芯後の入射角θとに基づいて決定されている。
【0044】
より具体的には、光軸に対する傾斜角θが、次式(3)で表される値になるよう、たとえば斜め研磨などによって、光アイソレータ111の入射面(偏光子114の入射面)が形成されている。
θ=θ/cosθ ・・・(3)
【0045】
なお、式(3)は、θ,θ,θの間に成立する関係式(4)から導かれたものである(図3〜図5参照)。
θ=θ(cosθ) ・・・(4)
【0046】
これにより、基準位置に設置された光アイソレータ111を基準姿勢からその光軸を中心としてθだけいずれの方向に回転させても、半導体レーザ106から出射されるレーザ光の光アイソレータ111への入射角はθとなる。このため、光アイソレータ111を偏波方向が異なる(具体的にはθの2倍だけ偏波方向が異なる)2つの直線偏波のレーザ光に共用することが可能となり、レセプタクル105の回転調芯の効率を向上させることができる。
【0047】
特に、図4(B)および図5(B)に例示するように、θ=45°とすれば、光アイソレータ111を偏波方向が直交する2つの直線偏波(水平偏波のレーザ光と垂直偏波のレーザ光)に共通して用いることができるようになる。このため、半導体レーザ106が、TMモードで発振する半導体レーザおよびTEモードで発振する半導体レーザのいずれであっても、光アイソレータ111を共通して用いることができる。この場合、たとえば、回転調芯後の入射角θを8°にしたければ傾斜角θは11.3°となり、回転調芯後の入射角θを6°にしたければ傾斜角θは8.5°となる。
【0048】
以上説明した光送信モジュール100では、半導体レーザ106に対して相対的に定められた基準位置に設置された光アイソレータ111を基準姿勢からその光軸を中心として所定の回転角θだけいずれの方向に回転させても、半導体レーザ106から出射されるレーザ光の光アイソレータへの入射角が所望の入射角θとなるよう、光アイソレータ111の入射面が光軸に対して傾斜角θだけ傾斜している。このため、光アイソレータ111を偏波方向が異なる(具体的には回転角θの2倍だけ偏波方向が異なる)2つの直線偏波のレーザ光に共通して用いることができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、レーザ光が入射する入射面を有し、その入射面に設けられた偏波面に沿う直線偏波のレーザ光だけを順方向に通過させる光アイソレータおよびそれを備えた光送信モジュールに広く適用可能である。
【0050】
たとえば、上記実施形態では断面が矩形の光アイソレータを示したが、光アイソレータの断面はこれに限定されない。もちろん、光送信モジュールを構成する他の部品についても同様である。
【符号の説明】
【0051】
100 光送信モジュール、101 ステム、102 ステムガイド、103 レンズキャップ、104 ホルダ、104a,104b 円筒部、105 レセプタクル、106 半導体レーザ、107 半導体レーザ搭載用基板、108 リードピン、109 レンズ、110 マグネット、111,211a,211b 光アイソレータ、112,212a,212b フェルール、113 回転子、114,115 偏光子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光が入射する入射面を有し、該入射面に設けられた偏波面に沿う直線偏波のレーザ光だけを順方向に通過させる光アイソレータであって、
レーザ光源に対して相対的に定められた基準位置に設置された当該光アイソレータを所定の基準姿勢からその光軸を中心として一方向に所定の回転角だけ回転させた場合に、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の前記入射面への入射角が所望の入射角となり、
前記基準位置に設置された当該光アイソレータを前記基準姿勢から前記光軸を中心として前記一方向の反対方向に前記所定の回転角だけ回転させた場合にも、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の前記入射面への入射角が前記所望の入射角となるよう、
前記所定の回転角と前記所望の入射角とに基づいて決定される角度だけ前記入射面が前記光軸に対して傾斜している、
ことを特徴とする光アイソレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の光アイソレータにおいて、
前記所望の入射角をθ、前記所定の回転角をθ、とするとき、前記入射面の前記光軸に対する傾斜角θは、
θ=θ/cosθ
で表されることを特徴とする光アイソレータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光アイソレータにおいて、
前記所定の回転角は45°である、
ことを特徴とする光アイソレータ。
【請求項4】
請求項3に記載の光アイソレータにおいて、
当該光アイソレータが前記基準姿勢で水平に設置された場合に、前記光軸を含む垂直平面に直交するよう前記入射面が傾斜し、かつ、該垂直平面に対して45°で交差する偏波面が前記入射面に設けられている、
ことを特徴とする光アイソレータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光アイソレータにおいて、
レーザ光が入射する第1の偏光子と、
前記第1の偏光子を通過するレーザ光の偏波方向を45°だけ回転させる回転子と、
偏波面が前記第1の偏光子の偏波面と45°だけ異なるよう配置され、前記回転子により偏波方向が回転したレーザ光を通過させる第2の偏光子と、
を含むことを特徴とする光アイソレータ。
【請求項6】
レーザ光源と、該レーザ光源に対して相対的に定められた基準位置に設置された光アイソレータと、を備えた光送信モジュールであって、
前記光アイソレータは、当該光アイソレータを所定の基準姿勢からその光軸を中心として一方向に所定の回転角だけ回転させた場合に、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の当該光アイソレータへの入射角が所望の入射角となり、当該光アイソレータを前記基準姿勢から前記光軸を中心として前記一方向の反対方向に前記所定の回転角だけ回転させた場合にも、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の当該光アイソレータへの入射角が前記所望の入射角となるよう、前記所定の回転角と前記所望の入射角とに基づいて決定される角度だけ前記光軸に対して傾斜した入射面を有し、該入射面に設けられた偏波面に沿う直線偏波のレーザ光だけを順方向に通過させる、
ことを特徴とする光送信モジュール。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−237693(P2011−237693A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110644(P2010−110644)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】