説明

光ケーブル

【課題】複数本の光ファイバコードを集合した集合光ケーブルの複数本を束ねた中から、不要となった集合光ケーブルを他の集合光ケーブルに影響を与えることなく容易に引き抜くことが可能な集合光ケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバコード2を複数本集合しテンションメンバと共にケーブル外被8a〜8cで一括被覆した集合光ケーブル1a〜1cであって、ケーブル外被8a〜8cは、動摩擦係数(JIS K7125)が0.3以下、硬度(JIS K7215)が55以上、引張強度(JIS K7113)が10MP以上である。集合光ケーブル8cは、中心に鋼線または繊維強化プラスチックからなるテンションメンバ7を配し、その周囲に光ファイバコード2を複数本撚り合わせ、その外周に押え巻きテープ10が横巻きで巻きつけられ、断面円形状とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバコードを集合し、テンションメンバと共にケーブル外被で一括被覆した集合光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバコードは、光ファイバ心線の周囲を長手方向に沿う高張力繊維で囲い、その外側を樹脂シースで被覆し、端部に光コネクタ等を取り付けて、屋内における光接続や光機器の接続に使用されている。また、屋内の布設に際しては、複数本の単心光ファイバコードをテンションメンバの周りに撚り合わせて集合させ、ケーブル外被により一括被覆した集合光ケーブルが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、屋内の光ファイバの布設に光インドアケーブルと称されているものがある。この光インドアケーブルは、1本〜数本の光ファイバ心線の両側にテンションメンバ(抗張力体ともいう)を配して、外被で一括被覆している。この光インドアケーブルは、近年の光配線の需要増加に対応して、通信ケーブル等が布設された既設の配管路等のスペース部分に挿通させて、追加布設する形態で使用されることがある。このため、光インドアケーブルとしては、狭いスペース部分に挿通させたりするのが容易なように、ケーブル表面の動摩擦係数が小さくなるような外被材料を用いることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−221935号公報
【特許文献2】特開2007−183477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データセンター等における光ケーブルの布設は、床下のスペース等を使って行われるが、伝送装置やサーバの増設に伴って布設ケーブル数が増加し輻輳するようになる。また、サービスの向上等で光ケーブルの種類変更等で、既設光ケーブルの交換などが必要になることがある。このため、古い光ケーブルを撤去した上で新規の光ケーブルを布設することが要望されているが、既設の古い光ケーブルの撤去に際しては、その他の使用中の光ケーブルにたいして影響を及ぼすことなく、かつ、容易に行われる必要がある。
【0006】
図4は、オフィス床下等に多条に布設された光ケーブルにおいて、不要となった光ケーブルを引き抜いて撤去する状態を示す図である。光ケーブル1は、特許文献1に開示されるような複数本の光ファイバコード2をテンションメンバ7の外周に撚り合わせ、ケーブル外被8により被覆したものである。複数本の光ケーブル1は、配線樋等に束ねるようにして収納布設されているが、この内の不要となった光ケーブル1’を撤去するに際して、光ケーブルのケーブル外被8同士の摩擦抵抗により、容易に引き抜けないという問題があった。また、ケーブル外被8の硬度や引張強度が低いものは、引き抜き時に他の光ケーブルの外被に損傷を与えるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、複数本の光ファイバコードを集合した集合光ケーブルの複数本を束ねた中から、不要となった集合光ケーブルを他の集合光ケーブルに影響を与えることなく容易に引き抜くことが可能な集合光ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による集合光ケーブルは、光ファイバコードを複数本集合しテンションメンバと共にケーブル外被で一括被覆した集合光ケーブルであって、ケーブル外被は、動摩擦係数(JIS K7125)が0.3以下、硬度(JIS K7215)が55以上、引張強度(JIS K7113)が10MP以上であることを特徴とする。
【0009】
また、上記の集合光ケーブルは、中心に鋼線または繊維強化プラスチックからなるテンションメンバを配し、その周囲に光ファイバコードを複数本撚り合わせ、その外周に押え巻きテープが横巻きで巻きつけられ、断面円形状とされている。なお、押え巻きテープは、テープ幅の1/2〜2/3の重なり幅で巻きつけることが好ましい。
また、前記のケーブル外被は、ポリエチレンを主体とした樹脂で形成され、押え巻きテープと接着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、束状に積み重ねられた多数の集合光ケーブルの中から不要となった所定の集合光ケーブルを、他の集合光ケーブルを損傷させることなく低摩擦力で容易に引き抜くことができ、作業性を向上させることができる。また、ケーブル外被を横巻きの押え巻きテープとの長手方向での一体性を高め、ケーブル外被が容易に剥がれないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の対象とする、複数本の光ファイバコードを集合し外被で一体化した集合光ケーブル例を示す図である。
【図2】本発明による集合光ケーブルにおいて、複数本の光ファイバコードを押え巻きテープで横巻きで巻付けた例を示す図である。
【図3】本発明による集合光ケーブルの評価結果を示す図である。
【図4】従来技術の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の対象とされる集合光ケーブル(以下、単に光ケーブルという)の例を示す例で、図1(A)は2心の光ファイバコードを集合した断面フラット状の光ケーブル、図1(B)は4心の光ファイバコードを集合した断面フラット状の光ケーブル、図1(C)は6心の光ファイバコードを集合した断面円形状の光ケーブルの例を示す。図中、1a〜1cは集合光ケーブル、2は光ファイバコード、3は心線被覆、4は光ファイバ心線、5は高張力繊維、6はコード外被、7はテンションメンバ、7aは抗張力線、7bは被覆、8a〜8cはケーブル外被、9はノッチ、10は押え巻きテープ、11は引裂き紐を示す。
【0013】
図1(A)に示す光ケーブル1aは、中心に配したテンションメンバ7の両側に単心の光ファイバコード2を沿わせ、ケーブル外被8aで一括被覆した2心の光ケーブルである。光ファイバコード2は、例えば、外径125μmのガラスファイバの外周を外径250μm前後の保護被覆を施し、さらに外径0.9mmの心線被覆3を施した光ファイバ心線4が用いられる。そして、この光ファイバ心線4の外周に、アラミド繊維等の高張力繊維5を介して外径が1.5mm〜2.2mm程度のコード外被6で覆って光ファイバコード2とされる。
【0014】
テンションメンバ7は、鋼線または繊維強化プラスチック(FRP)で形成され、例えば、外径が1.4mm以下の抗張力線(鋼線)7aの表面に樹脂被覆7bを施したものを用いることができる。また、抗張力線7aがFRPの場合は、ガラス繊維またはアラミド繊維等の高張力繊維を樹脂で固めた線材が用いられ、鋼線の場合と同様に樹脂被覆が施されていてもよい。ケーブル外被8aは、後述するように、所定の動摩擦係数と硬度と引張強度を有する樹脂材料が用いられ、押出成形により形成される。また、ケーブル外被8aのフラット状断面の両端縁にV字状のノッチ9を設けて引裂き可能とし、光ファイバコード2の取出しを容易にしている。なお、光ケーブル1aの光ファイバコード2として、外径1.7mmのものを用いると、フラット状断面の短径側が4mm、長径側が7mm程度となる。
【0015】
図1(B)に示す光ケーブル1bは、中心に配したテンションメンバ7の両側に単心の光ファイバコード2を2本ずつ一列に並ぶように沿わせ、ケーブル外被8bで一括被覆した4心の集合光ケーブルである。光ファイバコード2およびテンションメンバ7は、図1(A)の例と同様なものを用いることができる。また、ケーブル外被8bは、後述するように、所定の動摩擦係数と硬度と引張強度を有する樹脂材料により、押出成形により形成され、ケーブル外被8bのフラット状断面の両端縁にV字状のノッチ9を設けて引裂き可能とし、光ファイバコード2の取出しを容易にしている。なお、光ケーブル1bの光ファイバコード2として、外径1.7mmのものを用いると、フラット状断面の短径側が4mm、長径側が10.4mm程度となる。
【0016】
図1(C)に示す集合光ケーブル1cは、中心に配したテンションメンバ7の周りに単心の光ファイバコード2を、複数本(図は6本の例)撚り合わせてなる。光ファイバコード2の外周には、不織布等からなる押え巻きテープ10、好ましくはノンハロゲン製で難燃性を有するテープを、開き巻きまたは重ね巻きの横巻きで巻き付けて集合保持する。そして、その外側をケーブル外被8cで被覆して断面円形状の多心の光ケーブルとされる。なお、光ファイバコード2およびテンションメンバ7は、図1(A)(B)の例と同様なものを用いることができる。
【0017】
ケーブル外被8cは、図1(A)(B)の例と同様に、所定の動摩擦係数と硬度と引張強度を有する樹脂材で、押出成形により形成される。ケーブル外被8cの内部には、引裂き紐11を埋設しておき、該引裂き紐を引き出すことによりケーブル外被8cを長手方向に引裂き、光ファイバコード2の取出しを容易にしている。
また、上記の押え巻きテープ10を用いることなく、ケーブル外被8cで直に被覆するようにしてもよいが、押え巻きテープ10を横巻きで巻き付けることにより、テープエッジ部分にケーブル外被8cに対して段差が生じ、ケーブル外被8cの軸方向移動を抑制して押え巻きテープ10を含むケーブルコアに対する結合力を高めることができる。
【0018】
また、ケーブル外被8cにポリエチレン樹脂を主体とした樹脂材料が用いられる場合、押え巻きテープ10に同じくポリエチレン樹脂を主体とした不織布からなるテープを用いるとよい。この場合、ケーブル外被8cの押出し成形時の熱で、ケーブル外被8cと押え巻きテープ10とが接着一体化し、ケーブル外被8cの移動をより効果的に抑制することができる。なお、光ケーブル1cの光ファイバコード2として、外径1.7mmのものを用いると、外径8mm程度の光ケーブルとなる。
【0019】
図2は、図1(C)の構成において、押え巻きテープ10を重ね巻きしたとき、その重ね幅Sを、テープ幅Dの1/2〜2/3で巻き付ける例である。ケーブル外被8cの外表面8c’には、押え巻きテープ10を重ね部分により長手方向に凹凸ができる。上記の重ね幅Sとすることにより、凸の幅は凹の幅より大きくなる。これにより、図2(B)に示すように、複数本の光ケーブル1c同士が隣り合って、ケーブル外被8c同士が互いにが接触するような場合、凸部分のみが互いに接触してその接触面積を少なくすることが可能となる。この結果、光ケーブル同士の摩擦接触面が減少して、光ケーブルの引き抜き力を低減させることができる。
【0020】
図3は、ケーブル外被に種々の樹脂材料(A〜G)を用いたときの、動摩擦係数と引抜き性(ケーブル長10m)、ケーブル外被の引張強度と光ケーブル引き剥き時の外被損傷性、ケーブル外被のD硬度と光ケーブル引き剥き時の外被磨耗性、を検証した結果を示す図である。試験に用いた光ケーブルは、図1(c)に示した形状の6心のもので、光ケーブル外径が8mm、質量55kg/km、ケーブル外被の厚さ1.0mm、で形成したものである。
【0021】
試験に用いた光ケーブルのケーブル外被の樹脂材料(A〜G)には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とし、難燃性を備えたものを使用し、シリコン系の滑材を添加してその動摩擦係数(JISK7125)を変化させた。また、併せてその他の添加材等によりケーブル外被の引張強度(JISK7113)と、D硬度(JIS 7215)についても変化させ、各外被材料の上記動摩擦係数、引張強度、D硬度についてそれぞれ測定した。
【0022】
上記の試験用の光ケーブルを長さ10mで、図4に示すように配線樋に収納して、真ん中の光ケーブルを引抜いて検証した。
引抜試験の結果は、動摩擦係数が0.1〜0.3の範囲内にある外被材料E〜Gの光ケーブルについては、人の手で容易に引抜くことができたが、動摩擦係数が0.3を超える外被材料A〜Dの光ケーブルについては、人の手では容易に引抜くことができなかった。
【0023】
この光ケーブル引抜時の外被損傷性については、引張強度が10MPa以上ある外被材料A,B,E,Gの光ケーブルについては、ケーブル外被が引きちぎれることはなかったが、引張強度が10MPa未満の外被材料C,D,Fの光ケーブルについては、ケーブル外被が引きちぎれてしまった。
また、ケーブル外被のD硬度が55以上ある外被材料A,D,E,Fの光ケーブルについては、内部の光ファイバが露出することはなかったが、ケーブル外被のD硬度が55未満の外被材料B,C,Gの光ケーブルについては、ケーブル外被が磨耗し内部ケーブルが露出してしまった。
【0024】
図3の検証結果から、複数本の光ケーブルが束ねられた状態で、内側の光ケーブルを引抜いて容易に撤去することができ、布設の作業性に優れた光ケーブルのケーブル外被は、動摩擦係数が0.3以下、硬度が55以上、引張強度が10MP以上であることが必要とされる。上記の条件を全て備えたものとしては、外被材料Eが該当する。したがって、本発明における光ケーブルのケーブル外被としては、外被材料Eに近い材料を用いるのが好ましい。
【0025】
なお、動摩擦係数があまり小さいと、ボビン等への巻き取りで巻き崩れが生じやすくなるので、0.1以上とするのが望ましい。また、ケーブル外被の硬度があまり大きいと剛性が大きく作業性が低下することから、硬度は62以下とされ、引張強度が大きすぎると温度変化による伸縮量が大きく、光ファイバの突き出しという問題があるので、20MPa以下とするのが望ましい。
【符号の説明】
【0026】
1〜1c…集合光ケーブル、2…光ファイバコード、3…心線被覆、4…光ファイバ心線、5…高張力繊維、6…コード外被、7…テンションメンバ、7a…抗張力線、7b…被覆、8〜8c…ケーブル外被、9…ノッチ、10…押え巻きテープ、11…引裂き紐。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバコードを複数本集合しテンションメンバと共にケーブル外被で一括被覆した集合光ケーブルであって、
前記ケーブル外被は、動摩擦係数(JIS K7125)が0.3以下、硬度(JIS K7215)が55以上、引張強度(JIS K7113)が10MPa以上であることを特徴とする集合光ケーブル。
【請求項2】
中心に鋼線または繊維強化プラスチックからなるテンションメンバを配し、その周囲に前記光ファイバコードが複数本撚り合わせられ、その外周に押え巻きテープが横巻きで巻きつけられ、断面円形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の集合光ケーブル。
【請求項3】
前記押え巻きテープは、テープ幅の1/2〜2/3の重なり幅で巻付けられていることを特徴とする請求項2に記載の集合光ケーブル。
【請求項4】
前記ケーブル外被は、ポリエチレンを主体とした樹脂材料で押出し成形により形成され、前記押え巻きテープは、前記ケーブル外被と接着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集合光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−83423(P2012−83423A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227557(P2010−227557)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【Fターム(参考)】