説明

光コネクタ及び光ファイバ取付用治具

【課題】光ファイバを装着する際の作業性を格段に向上しうる光コネクタを提供する。
【解決手段】第1光ファイバが装着されたフェルールと、接続しようとする第2光ファイバと第1光ファイバを突き合わせた状態で保持するファイバ固定溝が形成されたベース部材と、ベース部材に当接してベース部材との間で第1光ファイバ及び第2光ファイバを狭持するファイバ押え部材と、ファイバ押え部材をベース部材に対して付勢するクランプ部材と、を有する光ファイバ接続部がハウジングに装着されてなる光コネクタにおいて、光ファイバ接続部に、第2光ファイバがファイバ固定溝に沿って挿入されることに伴い、当該第2光ファイバの被覆を除去する被覆除去部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ同士を接続するための光コネクタ、及び光コネクタに光ファイバを装着するための光ファイバ取付用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)等の普及によって光通信網が一般家庭などで多数用いられるに伴い、ユーザ宅などの接続現場で簡単に組み立て可能なメカニカルスプライス型の光ファイバコネクタ(以下、光コネクタ)が開発され、実用化されている(例えば特許文献1)。このメカニカルスプライス型の光コネクタは、フェルールに短尺の光ファイバ(以下、内蔵光ファイバ)を予め装着しておき、接続しようする光ファイバ(以下、接続光ファイバ)を内蔵光ファイバに突き当てて接続することで、組み立てられる。
【0003】
図7は、一般的なメカニカルスプライス型の光コネクタ(例えばSCコネクタ)の概略構成を示す図である。
図7に示すように、光コネクタ5は、接続光ファイバ(図示略)を内蔵光ファイバ100に突き当てて接続するための光ファイバ接続部50と、光ファイバ接続部50を収容するフレーム61と、フレーム61に対して光ファイバ接続部50を固定するストップリング62と、光ファイバ接続部50とストップリング62の間に介在し光ファイバ接続部50を接続方向に付勢するコイルばね63とを備えて構成される。フレーム61とストップリング62でいわゆるハウジングが構成され、フレーム61の先端部が接続先(例えば光コネクタ)とのインターフェースとなる。
【0004】
光ファイバ接続部50は、フェルール51、ベース部材52、ファイバ押え部材53、54及びクランプ部材55を備えて構成される。ベース部材52は、内蔵光ファイバ100を予め装着したフェルール51を保持する鍔部521と、接続光ファイバを保持するファイバ固定溝(例えばV字溝)522を有している。ファイバ固定溝522に、内蔵光ファイバ100のフェルール51の後端から突出した部分と、接続光ファイバの先端部分が載置される。
【0005】
光ファイバ接続部50では、内蔵光ファイバ100に接続光ファイバを突き当てた状態で、ベース部材52とファイバ押え部材53、54により内蔵光ファイバ100と接続光ファイバを狭持し、クランプ部材55によって付勢することによって固定する。具体的には、ベース部材52に、フェルール51、ファイバ押え部材53、54及びクランプ部材55を取り付けた後、楔(図示略)を押入することによりベース部材52とファイバ押え部材53、54の接合面をわずかに離間させ、先端部の被覆を除去した接続光ファイバをファイバ固定溝522に沿って挿入する。そして、接続光ファイバの先端を内蔵光ファイバ100の後端に突き当て、この状態で楔を引き抜くことにより、内蔵光ファイバ100と接続光ファイバを、ベース部材とファイバ押え部材53、54とで狭持し固定する。
このように、光コネクタ5は、簡単に短時間で組み立てることができるため、現場組立型の光コネクタとして好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3515677号公報
【特許文献2】特開2010−96983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、光コネクタに接続光ファイバを装着する際には、接続光ファイバと内蔵光ファイバとを高精度で調心させるために、接続光ファイバ(例えば、被覆外径250μmの光ファイバ心線)の先端部の被覆を除去する必要がある。従来は、光ファイバ取付用治具に接続光ファイバを把持させた状態で、作業者が専用の工具を用いて先端部の被覆を所定長除去し、アルコールなどで清拭していた。
しかしながら、被覆を除去された光ファイバ(裸光ファイバ)は損傷しやすいため、被覆を除去する作業や接続光ファイバを光コネクタに装着する作業において、熟練度が要求される。
【0008】
また、特許文献2には、光コネクタに接続光ファイバを装着するときなどに用いられる光ファイバ取付用治具(光ファイバガイド)に、接続光ファイバの先端部の被覆を除去する被覆除去部を設けた技術が開示されている。かかる技術を利用すると、接続光ファイバの被覆を簡単に除去することができる。しかしながら、光コネクタに装着される部分の被覆がすべて除去されることとなるため、光コネクタに接続光ファイバを装着するときに損傷しやすくなる。つまり、光コネクタに接続光ファイバを装着する場合、被覆除去長はできるだけ短くすることが望ましいが、特許文献2に記載の技術ではこれに対応することができない。さらに図26に示したように、被覆が被覆除去部で光ファイバのガラス素線より離脱せずに、光ファイバのガラス素線に沿って縮重し、被覆が除去できなくなる場合がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、光ファイバを光コネクタに装着する際の作業性を格段に向上しうる光コネクタ及び光ファイバ取付用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
第1光ファイバが装着されたフェルールと、
接続しようとする第2光ファイバと前記第1光ファイバを突き合わせた状態で保持するファイバ固定溝が形成されたベース部材と、
前記ベース部材に当接して、前記ベース部材との間で前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバを狭持するファイバ押え部材と、
前記ファイバ押え部材を前記ベース部材に対して付勢するクランプ部材と、を有する光ファイバ接続部がハウジングに装着されてなる光コネクタにおいて、
前記光ファイバ接続部に、被覆のついた前記第2光ファイバが前記ファイバ固定溝に沿って挿入されることに伴い、当該第2光ファイバの被覆を除去する被覆除去部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光コネクタにおいて、
前記第2光ファイバの被覆の厚み方向に切れ込みを入れるための切込形成手段が前記第2光ファイバの挿入経路の前記被覆除去部以前の経路上に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光コネクタにおいて、
前記被覆除去部が、前記第2光ファイバのクラッド外径よりも大きく、被覆外径よりも小さい裸ファイバ挿通孔を有し、この裸ファイバ挿通孔に前記第2光ファイバを圧入させることにより、前記第2光ファイバの被覆を除去することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の光コネクタにおいて、
前記裸ファイバ挿通孔の挿入口が、テーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の光コネクタにおいて、
前記切込形成手段が切込刃であり、少なくとも一つの切込刃が前記被覆除去部の前記裸ファイバ挿入孔の周囲に設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の光コネクタにおいて、
前記被覆除去部の前段に、前記第2の光ファイバをガイドするための前記第2光ファイバの被覆外径よりも大きい被覆ファイバ挿通孔有する被覆除去補助部を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の光コネクタにおいて、
前記被覆ファイバ挿通孔の挿入口が、テーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の光コネクタにおいて、
前記被覆除去補助部が、前記ベース部材と前記ファイバ押え部材によって狭持される部材であることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項6又は7に記載の光コネクタにおいて、
前記被覆除去補助部が、前記ベース部材又は前記ファイバ押え部材に一体的に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜9の何れか一項に記載の光コネクタにおいて、
前記被覆除去部と前記被覆除去補助部が一体的に形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項6〜10の何れか一項に記載の光コネクタにおいて、
前記切込形成手段が切込刃であり、前記被覆除去補助部は、内周面に少なくとも一つの切込刃が形成されたことを特徴とする。
【0021】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11の何れか一項に記載の光コネクタにおいて、
前記被覆除去部によって除去された被覆を収容する被覆収容部がさらに設けられたことを特徴とする。
【0022】
請求項13に記載の発明は、
光コネクタに接続しようとする光ファイバを挿入するための光ファイバ取付用治具であって、
前記光コネクタを保持するコネクタ保持部と、
前記光コネクタのファイバ挿入口と前記光ファイバを調心する軸合わせ部と、
前記光ファイバを送り出す送り出し機構と、を備え、
前記軸合わせ部と前記光ファイバ挿入口との間の離間距離が、1〜5mmであることを特徴とする。
【0023】
請求項14に記載の発明は、
光コネクタに接続しようとする光ファイバを挿入するための光ファイバ取付用治具であって、
前記光コネクタを保持するコネクタ保持部と、
前記光コネクタのファイバ挿入口と前記光ファイバを調心する軸合わせ部と、
前記光ファイバを送り出す送り出し機構と、を備え、
前記軸合わせ部と前記光ファイバ挿入口の間に溝が形成されたガイド部を備え、このガイド部が前記溝の開放側に凹となる湾曲状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光コネクタに接続光ファイバを装着する際に、接続光ファイバの挿入に伴い所定長の被覆が除去されるので、光コネクタに光ファイバを装着する際の作業性が格段に向上される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態に係る光コネクタの光ファイバ接続部の要部構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態の光ファイバ接続部の要部構成を示す分解斜視図である。
【図3】第1の実施形態の光ファイバ接続部の要部構成を示す断面図である。
【図4】被覆除去部材の斜視図、側面図及び正面図である。
【図5】被覆除去補助部材を示す斜視図、側面図及び正面図である。
【図6】被覆除去部材における被覆の剥離状態を示す断面図である。
【図7】一般的な光コネクタの概略構成を示す図である。
【図8】第2の実施形態の光ファイバ接続部の要部構成を示す分解斜視図である。
【図9】第2の実施形態の光ファイバ接続部の要部構成を示す断面図である。
【図10】被覆除去部材の外観形状を示す斜視図である。
【図11】被覆除去部材の外観形状を示す斜視図である。
【図12】被覆除去部材の側面図である。
【図13】被覆除去部材の上面図である。
【図14】図12におけるB−B断面図である。
【図15】図12におけるA−A断面図である。
【図16】被覆除去部のファイバ挿入側の拡大図である。
【図17】被覆除去部の外面の変形例を示す図である。
【図18】光ファイバ取付用治具の一例を示す図である。
【図19】光ファイバ取付用治具の他の一例を示す図である。
【図20】光ファイバ取付用治具の他の一例を示す図である。
【図21】光ファイバ取付用治具の他の一例を示す図である。
【図22】光ファイバ取付用治具の他の一例を示す図である。
【図23】光ファイバ取付用治具の他の一例を示す図である。
【図24】被覆除去部材における被覆の剥離状態の他の一例を示す断面図である。
【図25】ファイバ挿入時に用いられる楔形工具を示す図である。
【図26】従来の被覆除去部による被覆の剥離状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の光コネクタの概略構成は、図7に示す一般的な構成と同様である。区別のため、実施形態に係る光コネクタの符号を1とする。すなわち、本実施形態に係る光コネクタ1は、接続しようとする光ファイバ(以下、接続光ファイバ)を内蔵光ファイバに突き当てて接続するための光ファイバ接続部が、ハウジングに装着されて構成される。本実施形態では、光ファイバ接続部が特徴的な構成を備えているので、この光ファイバ接続部について説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は実施形態に係る光コネクタ1の光ファイバ接続部10の要部構成を示す斜視図で、図2は光ファイバ接続部10の分解斜視図、図3は光ファイバ接続部10の断面図である。図3(a)には接続光ファイバを装着していない状態を示し、図3(b)には接続光ファイバ200を装着した状態を示している。
なお、接続光ファイバ200として、外径125μmの裸光ファイバ201に、62.5μm厚の被覆(例えばUV樹脂被覆)202を施して、被覆外径250μmとした光ファイバ心線を用いることとする。
【0028】
図1〜3に示すように、光ファイバ接続部10は、フェルール11、ベース部材12、第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14、クランプ部材15、被覆除去部材16、及び被覆除去補助部材17を備えて構成される。
フェルール11は、例えばジルコニア等のセラミック材料で構成された略円柱状の部材であり、中心軸に沿って細孔111が形成されている。この細孔111には裸光ファイバ(被覆を施されていない光ファイバ)等の内蔵光ファイバ100が挿入され、固定されている。
内蔵光ファイバ100の先端はフェルール11の先端面から露出され、フェルール端面とともに鏡面研磨されている。内蔵光ファイバ100の後端は、フェルール11の後端側から所定長だけ突出し、ベース部材12等で保持される。なお、本実施形態では内蔵光ファイバ100の後端面が長手方向に対して垂直のものを利用したが、8°程度傾斜したものを利用しても良い。また、内蔵光ファイバ100の後端面が球面状に研磨したものを用いても良い。
【0029】
ベース部材12は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene sulfide)又はポリエーテルイミド(PEI:Polyetherimide)等の樹脂材料で構成された略半円筒状の部材である。ベース部材12は、フェルール11を保持するフェルール保持部12A、接続光ファイバ200の裸ファイバ部(被覆を除去した部分)200Aを保持する裸ファイバ保持部12B、接続光ファイバ200の被覆ファイバ部(被覆が施されたままの部分)200Bを保持する被覆ファイバ保持部12Cに区画される。
ベース部材12のフェルール保持部12Aには鍔部121が形成されており、この鍔部121にフェルール11が嵌合され、保持される。なお、ベース部材12とフェルール11を接着して固定してもよい。
【0030】
ベース部材12の裸ファイバ保持部12B、被覆ファイバ保持部12Cの表面には、長手方向に沿って断面V字状のファイバ固定溝122が形成されている。なお、ファイバ固定溝122は、断面U字状又は断面台形状でもよく、内蔵光ファイバ100及び接続光ファイバ200を第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14との間で狭持して固定できる形状であれば特に制限されない。
【0031】
具体的には、裸ファイバ保持部12Bのファイバ固定溝122は、裸光ファイバ201の外径(例えば125μm)に対応する小径用溝122aとなっている。被覆ファイバ保持部12Cのファイバ固定溝122は、接続光ファイバの被覆外径(例えば250μm)に対応する大径用溝122bとなっている。また、大径用溝122bの入口は、接続光ファイバ200を挿入しやすいように、外側に向けて拡径されている。
小径用溝122aに接続光ファイバ200の裸ファイバ部200A及び内蔵光ファイバ100が載置され、大径用溝122bに接続光ファイバ200の被覆ファイバ部200Bが載置される。
【0032】
ベース部材12の被覆ファイバ保持部12Cにおいて、裸ファイバ保持部12B側には、被覆除去部材16を載置するとともに除去された被覆202を収容する断面半円状の第1凹部123と、被覆除去補助部材17を載置する断面半円状の第2凹部124が長手方向に並んで形成されている。第1凹部123の長手方向の幅は、被覆除去部材16の幅よりも大きく、被覆除去部材16を載置したときの残余空間で被覆収容部18が形成されるようになっている。すなわち、第1凹部123の大きさは、除去される被覆202を被覆収容部18によって十分に収容しうる程度であればよい。
【0033】
第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14は、例えばPPS又はPEI等の樹脂材料で構成された蓋部材である。第1ファイバ押え部材13は、ベース部材12の長手方向中央部(裸ファイバ保持部12Bと被覆ファイバ保持部12Cの境界付近)に形成された凸片123a等に係合した状態で、小径用溝122aを覆うようにベース部材12上に載置される。第2ファイバ押え部材14は、凸片123a等に係合した状態で、大径用溝122bを覆うようにベース部材12上に載置される。第1ファイバ押え部材13の内面及び第2ファイバ押え部材14の内面と、ベース部材12のファイバ固定溝122により挟まれた空間が、接続光ファイバ200の挿入路となる。
また、被覆除去部材16、被覆除去補助部材17を配置するために、第2ファイバ押え部材14の内面には、ベース部材12の第1凹部123に対応する位置に切欠部141が形成され、第2凹部124に対応する位置に凹部142が形成されている。
【0034】
クランプ部材15は、例えばステンレス等の金属材料で構成された断面C字状(コ字状)の部材であり、側面の一部が開放されている。クランプ部材15は、ベース部材12に第1ファイバ押え部材13及び第2ファイバ押え部材14を載置した状態で、これらを押圧狭持する。つまり、内蔵光ファイバ100及び接続光ファイバ200の裸ファイバ部200Aがベース部材12と第1ファイバ押え部材13によって保持され、接続光ファイバ200の被覆ファイバ部200Bがベース部材12と第2ファイバ押え部材14によって保持される。
このとき、ベース部材12と第1ファイバ押え部材13の接合面、及びベース部材12と第2ファイバ押え部材14の接合面は、クランプ部材15の開口から外部に露呈され、楔(図示略)を挿入できる状態となる。
【0035】
被覆除去部材16は、図4に示すように、例えばステンレス等の金属材料又はジルコニア等のセラミック材料で構成された略円柱状の部材であり、中心軸に沿って接続光ファイバ200の裸ファイバ部200Aを挿通可能な裸ファイバ挿通孔161が形成されている。図4には、被覆除去部材16の斜視図(a)、側面図(b)、接続光ファイバ200の挿入側から見た正面図(c)を示している。
裸ファイバ挿通孔161は、裸光ファイバ201の外径よりも大きく、接続光ファイバ200の被覆外径よりも小さく形成されている。つまり、接続光ファイバ200を被覆除去部材16に挿入しようとすると、接続光ファイバ200の被覆202が裸ファイバ挿通孔161の挿入口161aの周縁に当接し、さらに押圧すると被覆202が剥離、除去されるようになっている。
【0036】
このように、被覆除去部材16は、接続光ファイバ200のクラッド外径(裸光ファイバ201の外径)よりも大きく、被覆外径よりも小さい裸ファイバ挿通孔161を有し、この裸ファイバ挿通孔161に接続光ファイバ200を圧入させることにより、接続光ファイバ200の被覆202を除去する。これにより、接続光ファイバ200の挿入作業に伴い、接続光ファイバ200の被覆202が自動的に除去されるので、簡単に光コネクタ1を組み立てることができる。
【0037】
裸ファイバ挿通孔161の挿入口161aは、外側に向かって拡径するテーパ状に加工されている。これにより、被覆202を除去された裸ファイバ部200Aが、裸ファイバ挿通孔161に容易に挿入される。なお、裸ファイバ挿通孔161の挿入口161aは、テーパ状に加工されていなくてもよい。
【0038】
被覆除去部材16は、ベース部材12の第1凹部123と第2ファイバ押え部材14の切欠部141で挟まれた部分に配置される。このとき、被覆除去部材16の裸ファイバ挿通孔161と、ベース部材12及び第2ファイバ押え部材14で形成された光ファイバ挿入路の中心軸が一致した状態となる。また、このときの残余空間が、接続光ファイバ200の除去された被覆を収容する被覆収容部18となる。
【0039】
被覆除去補助部材17は、図5に示すように、例えばステンレス等の金属材料又はジルコニア等のセラミック材料で構成された略円柱状の部材であり、中心軸に沿って接続光ファイバ200を挿通可能な被覆ファイバ挿通孔171が形成されている。つまり、被覆ファイバ挿通孔171は、接続光ファイバ200の被覆外径よりも大きく形成されている。図5には、被覆除去補助部材17の斜視図(a)、側面図(b)、接続光ファイバ200の挿入側から見た正面図(c)を示している。
【0040】
被覆ファイバ挿通孔171の内周面には、接続光ファイバ200の被覆202に長手方向に沿って切り込みを形成する切込刃172が形成されている。切込刃172は、例えば周方向に90°間隔で4箇所に形成される。なお、被覆ファイバ挿通孔171を接続光ファイバ200の被覆外径とほぼ同等とすることで、被覆202に適度な深さの切込みを精度よく形成することができる。
接続光ファイバ200が被覆除去補助部材17に挿入されると、被覆ファイバ挿通孔171を通過する間に、切込刃172により被覆202に切込みが形成される。なお、切込刃172は、1箇所以上に形成されていればよい。
【0041】
このように、被覆除去補助部材17は、接続光ファイバ200の被覆外径よりも大きく、内周面に切込刃172が形成された被覆ファイバ挿通孔171を有している。これにより、接続光ファイバ200の挿入作業に伴い、被覆202に確実に所定の切込みが形成される。
【0042】
ここで、切込刃172の高さは、10μm以上被覆厚さ(例えば62.5μm)以下とするのが望ましい。切込刃172の高さが10μmより小さいと、接続光ファイバ200の被覆を容易に剥離できる程度の切込みが形成されず、切込刃172の高さが被覆厚さより大きいと裸光ファイバ201を損傷させてしまうためである。
【0043】
被覆ファイバ挿通孔171の挿入口171aは、外側に向かって拡径されるテーパ状に加工されている。これにより、被覆ファイバ挿通孔171に接続光ファイバ200を容易に挿入することができる。なお、被覆ファイバ挿通孔171の挿入口171aは、テーパ状に加工されていなくてもよい。なお、被覆ファイバ挿通孔171の送出口(挿入口171aの反対側の開口)には、後続のファイバ固定溝122との段差の発生を抑制するためにテーパを設けても良い。
【0044】
被覆除去補助部材17は、ベース部材12の第2凹部124と第2ファイバ押え部材14の凹部142で挟まれた部分に配置される。このとき、被覆除去補助部材17の被覆ファイバ挿通孔171と、ベース部材12及び第2ファイバ押え部材14で形成された光ファイバ挿入路の中心軸が一致した状態となる。
【0045】
光コネクタ1を組み立てる場合、まず、フェルール11が固定されたベース部材12に、被覆除去部材16、被覆除去補助部材17を載置し、第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14で蓋をする。そして、ベース部材12、第1ファイバ押え部材13、及び第2ファイバ押え部材14の周囲にクランプ部材15を嵌め込んで光ファイバ接続部10を組み立て、ハウジング(図示略)に装着する。
次に、クランプ部材15及びハウジングの開口を介して外部に露呈されているベース部材12と第1ファイバ押え部材13の接合面、及びベース部材12と第2ファイバ押え部材14の接合面に楔3を押入し、接合面をわずかに離間させる(図15参照)。この状態で、接続光ファイバ200の先端をベース部材12のファイバ固定溝122(大径用溝122b)に沿わせながら、接続光ファイバ200を光ファイバ接続部10に挿入する。
【0046】
挿入された接続光ファイバ200の先端部は、図6に示すように、被覆除去補助部材17を通過する際に、切込刃172により被覆202に切込みが形成される。続いて、被覆除去部材16の先端に当接した後、さらに押圧されると、このときの応力によって被覆202が容易に切り裂かされて裸光ファイバ201から剥離、除去される。そして、裸光ファイバ201だけが被覆除去部材16を通過して前方(裸ファイバ保持部12B)に挿入される。
ここで、接続光ファイバ200の先端部を予め指先や治具等で押圧しておくと、裸光ファイバ201と被覆202の密着力が低下するので、被覆除去部材16によって小さい押圧荷重で容易に被覆202を除去できるようになる。
【0047】
被覆除去部材16で除去された被覆202は、被覆収容部18に確実に収容されるので、裸光ファイバ201とともに前方に侵入して接続光ファイバ200の挿入を妨げたり、裸光ファイバ201と内蔵光ファイバ100との接続部位において異物となって良好な光接続を妨げたりすることはない。
【0048】
接続光ファイバ200をさらに押し込むと、接続光ファイバ200(裸光ファイバ201)が内蔵光ファイバ100に突き当てられ、接続される。接続光ファイバ200が内蔵光ファイバ100に突き当たるまで、被覆除去部材16では被覆202が除去される。つまり、被覆除去部材16から内蔵光ファイバ100の後端面までの部分が裸ファイバ部200Aとなる。
そして、楔を引き抜くと、内蔵光ファイバ100と接続光ファイバ200は、接続された状態でベース部材12と第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14によって押圧狭持され、固定される。なお、裸光ファイバ201と内蔵光ファイバ100の間には屈折率整合材を介在させるのが望ましい。ファイバ端面間の空気層による反射を抑制するためである。
【0049】
このように、実施形態の光コネクタ1は、内蔵光ファイバ(第1光ファイバ)100が装着されたフェルール11と、接続光ファイバ(第2光ファイバ)200と内蔵光ファイバ100を突き合わせた状態で保持するファイバ固定溝122が形成されたベース部材12と、ベース部材12に当接してベース部材12との間で内蔵光ファイバ100及び接続光ファイバ200を狭持するファイバ押え部材13、14と、ファイバ押え部材13、14をベース部材12に対して付勢するクランプ部材15と、を有する光ファイバ接続部10がハウジングに装着されて構成されている。
そして、接続光ファイバ200がファイバ固定溝122に沿って挿入されることに伴い、当該接続光ファイバ200の被覆202を除去する被覆除去部材(被覆除去部)16と、被覆除去部材16によって除去(剥離)された被覆202を収容する被覆収容部18を、光ファイバ接続部10に設けている。
【0050】
実施形態の光コネクタ1によれば、光コネクタ1に接続光ファイバ200を装着する際に、接続光ファイバの挿入に伴い所定長の被覆が除去されるので、接続光ファイバ200の先端部の被覆202を専用の工具を用いて除去する必要がなくなる。したがって、光コネクタ1に光ファイバを装着する際の作業性が格段に向上される。
また、内蔵光ファイバ100との接続部位と被覆除去部材16との間隔で被覆除去長が決まるので、接続光ファイバ200の先端部から被覆202が必要以上に除去されることはないので、接続光ファイバ200の強度が低下して損傷を招く虞もない。
【0051】
また、被覆除去部材16の前段(接続光ファイバ200の挿入側)に、接続光ファイバ200の被覆202に長手方向に沿って切り込みを形成する被覆除去補助部材(被覆除去補助部)17を設けている。これにより、被覆除去部材16において小さな押圧荷重で容易に被覆202を除去することができる。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では、光ファイバ接続部10に、被覆除去部材16及び被覆除去補助部材17を配設しているが、被覆除去補助部材17を配設しなくても被覆除去部材16により接続光ファイバ200の被覆を除去することは可能である。
また、実施形態では、被覆除去部材16を被覆ファイバ保持部12Cに配置しているが、裸ファイバ保持部12Bに配置するようにしてもよい。つまり、被覆除去部材16は、内蔵光ファイバ100と接続光ファイバ200の接続部位よりも前段に配置されていればよい。被覆除去部材16の位置によって、接続光ファイバ200の被覆除去長が決定されることとなる。言い換えると、接続光ファイバ200の被覆除去長に応じて、被覆除去部材の配置が決定される。
【0054】
実施形態では、被覆除去部材16及び被覆除去補助部材17を、硬度が高く寸法精度を出しやすい金属材料又はセラミック材料で構成しているが、第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14等と同様にPPSやPEI等の樹脂材料で構成することもできる。
また、実施形態では被覆除去部材16を、一つの独立部材として構成しているが、ベース部材12、第1ファイバ押え部材13又は第2ファイバ押え部材14と一体的に形成するようにしてもよい。同様に、被覆除去補助部材17を、ベース部材12、第1ファイバ押え部材13又は第2ファイバ押え部材14と一体的に形成するようにしてもよい。さらに、被覆除去部材16、被覆除去補助部材17、及び被覆収容部18が一体になったものをベース部材12に配置してもよい。
これにより、被覆除去部材16又は被覆除去補助部材17を新たに設ける必要はなく、配置する手間も省略されるので、光コネクタ1の作業性がさらに向上される。
【0055】
ここで、被覆除去補助部を構成する切込刃を、第2ファイバ押え部材14又はベース部材12に設ける場合、第2ファイバ押え部材14の切込刃とベース部材12(ファイバ固定溝122)、第2ファイバ押え部材14とベース部材12の切込刃、又はファイバ押え部材12の切込刃とベース部材12の切込刃によって、接続光ファイバ200の被覆部200Bが把持されるようにしてもよい。この場合、ファイバ押え部材14をベース部材12に載置した状態では、接続光ファイバ200の被覆部200Bよりわずかに大きい径のファイバ挿入路が形成され、ファイバ押え部材14又はベース部材12に設けられた切込刃によって接続光ファイバ200が保持されることとなる。
なお、第2ファイバ押え部材14とベース部材12とで切込刃の位置が長手方向にずれていてもよいし、把持力を増すために切込刃を複数設けてもよい。
【0056】
実施形態の光コネクタ1では、接続光ファイバ200を被覆除去部材16の裸ファイバ挿通孔161に圧入することで被覆202を除去するため、接続光ファイバ200には比較的大きな押圧荷重が加わることとなる。そのため、接続光ファイバ200が座屈する等して損傷する虞がある。
そこで、光コネクタ1の光ファイバ挿入側に、接続光ファイバ200の挿入を補助するためのファイバ挿入補助部材を設けることが望ましい。このファイバ挿入補助部材は、例えば、光コネクタの後端部(ストップリングの端面)や、接続光ファイバ200を光コネクタ1に挿入するための光ファイバ取付用治具の先端部に設けることができる。これにより、接続光ファイバ200を挿入するための押圧荷重が適切に保持されるので、光コネクタ内に滑らかに接続光ファイバ200を挿入することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
図8は第2の実施形態に係る光コネクタ1の光ファイバ接続部10aの分解斜視図、図9は光ファイバ接続部10aの断面図である。図9(a)には接続光ファイバF2を装着していない状態を示し、図9(b)には接続光ファイバF2を装着した状態を示している。
接続光ファイバF2は、例えば、外径125μmの裸光ファイバに、62.5μm厚の被覆(例えばUV樹脂被覆)を施して、被覆外径250μmとした光ファイバ心線である。
【0058】
図1、図8〜9に示すように、光ファイバ接続部10aは、フェルール11、ベース部材12、第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14、クランプ部材15、及び被覆除去部材16a等を備えて構成される。
フェルール11は、例えばジルコニア等のセラミック材料で構成された略円柱状の部材であり、中心軸に沿って細孔111が形成されている。この細孔111には裸光ファイバ(被覆を施されていない光ファイバ)等の内蔵光ファイバF1が挿入され、固定されている。
内蔵光ファイバF1の先端はフェルール11の先端面から露出され、フェルール端面とともに鏡面研磨されている。内蔵光ファイバF1の後端は、フェルール11の後端側から所定長だけ突出し、ベース部材12等で保持される。内蔵光ファイバF1の後端面は、例えば、長手方向に対して垂直又は8°程度傾斜して切断されている。なお、内蔵光ファイバF1の後端面は凸球面状に研磨加工されていてもよいし、または周縁部が面取りされるように研磨加工されていてもよい。
【0059】
ベース部材12は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene sulfide)又はポリエーテルイミド(PEI:Polyetherimide)等の樹脂材料で構成された略半円筒状の部材である。ベース部材12は、フェルール11を保持するフェルール保持部12A、接続光ファイバF2の裸ファイバ部(被覆を除去した部分)F2aを保持する裸ファイバ保持部12B、接続光ファイバF2の被覆ファイバ部(被覆が施されたままの部分)F2bを保持する被覆ファイバ保持部12Cに区画される。
ベース部材12のフェルール保持部12Aには鍔部121が形成されており、この鍔部121にフェルール11が嵌合され、保持される。なお、ベース部材12とフェルール11とを接着して固定するようにしてもよい。
【0060】
ベース部材12の裸ファイバ保持部12B、被覆ファイバ保持部12Cの表面には、長手方向に沿ってファイバ固定溝122が形成されている。このファイバ固定溝122に内蔵光ファイバF1及び接続光ファイバF2が固定される。
ファイバ固定溝122としては、例えば断面V字状、断面U字状又は断面台形状の何れかの形状が好適であるが、内蔵光ファイバF1及び接続光ファイバF2を第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14との間で狭持して固定できる形状であれば特に制限されない。
【0061】
具体的には、裸ファイバ保持部12Bに形成されたファイバ固定溝122は、接続光ファイバF2の裸光ファイバ外径(例えば125μm)に対応する小径用溝122aとなっている。被覆ファイバ保持部12Cに形成されたファイバ固定溝122は、接続光ファイバF2の被覆外径(例えば250μm)に対応する大径用溝122bとなっている。
大径用溝122bの一端側(接続光ファイバF2の挿入側)には、接続光ファイバF2を挿入しやすいように外側に向けて拡径された拡径部122cが形成され、他端側には、被覆除去部材16aを収容する被覆除去部材収容部122dが形成されている。被覆除去部材16aは、接続光ファイバF2がファイバ固定溝122に沿って挿入されることに伴い当該接続光ファイバF2の被覆を除去するものである。被覆除去部材16aの詳細については後述する。
【0062】
第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14は、例えばPPS又はPEI等の樹脂材料で構成された蓋部材である。第1ファイバ押え部材13は、ベース部材12の長手方向中央部(裸ファイバ保持部12Bと被覆ファイバ保持部12Cの境界付近)に形成された凸片123a等に係合した状態で、小径用溝122aを覆うようにベース部材12上に載置される。第2ファイバ押え部材14は、凸片123a等に係合した状態で、大径用溝122bを覆うようにベース部材12上に載置される。第1ファイバ押え部材13の内面及び第2ファイバ押え部材14の内面と、ベース部材12のファイバ固定溝122により挟まれた空間が、接続光ファイバF2の挿入路となる。
また、第2ファイバ押え部材14の内面には、ベース部材12の被覆除去部材収容部122dに対応する位置に切欠部141が形成されている。ベース部材12の被覆除去部材収容部122dと、第2ファイバ押え部材の切欠部141で挟まれた空間に、被覆除去部材16aが配置される。
【0063】
クランプ部材15は、例えばステンレス等の金属材料で構成された断面C字状(コ字状)の部材であり、側面の一部が開放されている。クランプ部材15は、ベース部材12に第1ファイバ押え部材13及び第2ファイバ押え部材14を載置した状態で、これらを押圧狭持する。また、ベース部材12と第1ファイバ押え部材13の接合面、及びベース部材12と第2ファイバ押え部材14の接合面は、クランプ部材15の開口から外部に露呈されており、接合面に外部から楔(図示略)を嵌入できるようになっている。
【0064】
このように、実施形態の光コネクタ1は、内蔵光ファイバ(第1光ファイバ)F1が装着されたフェルール11と、接続光ファイバ(接続しようとする第2光ファイバ)F2と内蔵光ファイバF1を突き合わせた状態で保持するファイバ固定溝122が形成されたベース部材12と、ベース部材12に当接してベース部材12との間で内蔵光ファイバF1及び接続光ファイバF2を狭持する第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え14と、第1ファイバ押え部材13及び第2ファイバ押え部材14をベース部材12に対して付勢するクランプ部材15と、接続光ファイバF2がファイバ固定溝122に沿って挿入されることに伴い当該接続光ファイバF2の被覆を除去する被覆除去部材16aとを有する光ファイバ接続部10がハウジングに装着された構成を有している。
【0065】
図10、11は被覆除去部材16aの外観形状を示す斜視図、図12は被覆除去部材16aの側面図、図13は被覆除去部材16aの上面図、図14は図12におけるB−B断面図、図15は図12におけるA−A断面図である。
図10〜15に示すように、被覆除去部材16aは、被覆除去部160とガイド部162とが連結部163により連結された一つの部材であり、例えばPPS又はPEI等の合成樹脂材料で構成される。被覆除去部材16aを光ファイバ接続部10aに装着したとき、ガイド部162がファイバ挿入方向前段に位置し、被覆除去部160がファイバ挿入方向後段に位置する。
被覆除去部材16aを、合成樹脂材料で構成することにより、被覆除去部材16aの製造コストを低減できるとともに、軽量化を図ることができる。
【0066】
被覆除去部160は、ファイバ挿入側の端部において接続光ファイバF2の被覆を除去する部位である。被覆除去部160は、略円錐形状を有し、中心軸に沿って接続光ファイバF2の裸ファイバ部F2aを挿通可能な裸ファイバ挿通孔160aが形成されている。裸ファイバ挿通孔160aは、接続光ファイバF2の裸光ファイバ外径よりも大きく、被覆外径よりも小さく形成されている。望ましくは、裸ファイバ挿通孔160の外径が、接続光ファイバF2の裸光ファイバの外径より1〜5μm大きく設定される。
本実施形態においては、裸光ファイバの外径が125μmであるので、裸ファイバ挿通孔160aの外径を126〜130μm程度とする。裸ファイバ挿通孔160aの外径が130μmより大きいと、接続光ファイバF2の裸光ファイバとのクリアランスが大きくなり、除去された被覆くずが裸ファイバ挿通孔160a内に運ばれてしまうためである。
【0067】
裸ファイバ挿通孔160aのファイバ挿入側は、ファイバ挿入口160bから内側に向かって、所定の内径となるまで縮径するテーパ状に形成されている。裸ファイバ挿通孔160aのファイバ挿入側のテーパ角θ(中心軸AXと裸ファイバ挿通孔160aの内面がなす角、図16参照)は、15〜60°に設定されるのが望ましく、例えば30°である。これにより、被覆除去後の接続光ファイバF2を裸ファイバ挿通孔160aに容易に挿入することができる。なお、裸ファイバ挿通孔160aのファイバ挿入側は、テーパ状に形成されていなくてもよい。
また、裸ファイバ挿通孔160aの他端側(ファイバ挿出側)には、空洞部160dが連設されている。空洞部160dの裸ファイバ挿通孔160a側をテーパ状に形成することにより、ベース部材12のファイバ固定溝122と裸ファイバ挿通孔160aとの間に段差があった場合でも、接続光ファイバF2の先端が破損するのを防止できる。
被覆除去部160の外面160cは、ファイバ挿入側の端部から他端側に向かって拡径するテーパ状に形成されている。つまり、被覆除去部160のファイバ挿入側の端部(ファイバ挿入口160bの周縁)は、外側に向けて鋭角に形成されている。
【0068】
ガイド部162は、被覆除去部160に接続光ファイバF2を案内する部位である。ガイド部162は、略円柱形状を有し、中心軸に沿って接続光ファイバF2の被覆ファイバ部F2bを挿通可能な被覆ファイバ挿通孔162aが形成されている。つまり、被覆ファイバ挿通孔162aは、接続光ファイバF2の被覆外径よりも大きく形成されている。
被覆ファイバ挿通孔162aのファイバ挿入側は、ファイバ挿入口162bから内側に向かって、所定の内径となるまで縮径するテーパ状に形成されている。これにより、接続光ファイバF2を被覆ファイバ挿通孔162aに容易に挿入することができる。なお、被覆ファイバ挿通孔162aのファイバ挿入口側は、テーパ状に形成されていなくてもよい。
【0069】
被覆除去部160とガイド部162は、裸ファイバ挿通孔160aと被覆ファイバ挿通孔162aの中心軸が一致した状態で所定長だけ離間して配置され、これらの両側に配置された連結部163によって一体的に接合されている。
【0070】
被覆除去部160とガイド部162の離間距離は0.5mmより大きいと、接続光ファイバF2が十分に調心されずに、接続光ファイバF2の裸光ファイバの端面が被覆除去部160の挿入端に衝突して破損したり、撓みが生じて十分な押圧力が被覆除去部160に伝わらなくなる。言い換えると、被覆除去部160とガイド部162の離間距離が0.5mm以下であれば、被覆外径に関わらず1N程度の押圧力で被覆を除去することができる。
一方、被覆除去部160とガイド部162の離間距離が0.1mmより小さいと、被覆除去部160で除去された被覆くずが被覆除去部160の外面に沿ってスムーズに逃げていかず、被覆除去時の押圧力が大きくなる。
したがって、被覆除去部160とガイド部162の離間距離は、0.1mm以上0.5mm以下であることが望ましい。特に、被覆除去部160とガイド部162の離間距離が、0.1mm以上0.3mm以下であれば、小さな押圧力で確実に接続光ファイバF2の被覆を除去することができる。
【0071】
切込刃165が、被覆除去部160のファイバ挿入側に設けられている。本実施例では、好例として、被覆除去部160の両側で連結部163につながるように設けられ、この構造によってそれぞれの切込刃165が両端で支持されているために、機械的な強度が保たれるとともに、除去された被覆を方向付けすることができる。本実施例では被覆除去部160の両側に切込刃165が設けられているが、少なくとも一つの切込刃165が被覆除去部160のファイバ挿入側に設けられることによって、被覆除去の押圧力を低減することができる。なお、切込刃165の先端は被覆除去部160の先端部からファイバ挿入側に向けて離れると押圧力が上昇してしまうので、先端部から0〜0.1mmの範囲に設定されると都合が良い。
【0072】
接続光ファイバF2を、ガイド部162を通して被覆除去部160に挿入しようとすると、接続光ファイバF2の被覆が被覆除去部160のファイバ挿入側の端部(ファイバ挿入口160bの周縁)に当接する。この状態で、さらに押圧すると、接続光ファイバF2の被覆が剥離、除去される。被覆除去部160のファイバ挿入側の端部で除去された被覆くずは、被覆除去部160とガイド部162との間に形成された空間(被覆収容部)164に収容される。
【0073】
このように、被覆除去部材16aは、被覆のついた接続光ファイバF2を案内する被覆ファイバ挿通孔162aを有するガイド部162と、被覆の除去された接続光ファイバF2の裸ファイバ部を挿通可能な裸ファイバ挿通孔160aを有し、当該接続光ファイバF2の挿入口となるファイバ挿入側の端部において接続光ファイバF2の被覆を除去する被覆除去部160と、ガイド部162と被覆除去部160とを、裸ファイバ挿通孔160aと被覆ファイバ挿通孔162aとが同軸上となるように、かつ被覆ファイバ挿通孔162aの挿出端と裸ファイバ挿通孔160aの挿入端との離間距離が0.1〜0.5mmとなるように連結する連結部163とが、一体的に形成されている。
【0074】
この被覆除去部材16aを内装した光コネクタ1においては、光コネクタ1に接続光ファイバF2を装着する際に、接続光ファイバF2の挿入に伴い所定長の被覆が除去されるので、光コネクタ1に接続光ファイバF2を装着する際の作業性が格段に向上される。また、被覆除去部160とガイド部162が被覆除去部材16aに一体的に形成されているので、両者の軸合わせ作業が不要となり、光コネクタ1の組立作業を容易化できる。
【0075】
ここで、被覆除去部160の外面160cのテーパ角θ(中心軸AXと外面160cがなす角、図16参照)は、60°以下、特に45°以下であることが望ましい。
【0076】
このように、被覆除去部160の外面160cのテーパ角θを60°以下、望ましくは45°以下とすることにより、接続光ファイバF2の被覆を、比較的弱い押圧力で除去することができる。したがって、光コネクタ1に接続光ファイバF2を装着する際に、接続光ファイバF2が屈曲する等して損傷するのを効果的に防止できる。
なお、テーパ角θの下限は特に制限されないが、鋭角になりすぎると、被覆除去部160のファイバ挿入側の強度が低下して破損しやすくなる虞があるため、テーパ角θは15°以上とするのが望ましい。
【0077】
光コネクタ1を組み立てる場合、まず、フェルール11が固定されたベース部材12に、被覆除去部材16aを載置し、第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14で蓋をする。そして、ベース部材12、第1ファイバ押え部材13、及び第2ファイバ押え部材14の周囲にクランプ部材15を嵌め込んで光ファイバ接続部10aを組み立て、ハウジング(図示略)に装着する(図9(a)参照)。
次に、クランプ部材15及びハウジングの開口を介して外部に露呈されているベース部材12と第1ファイバ押え部材13の接合面、及びベース部材12と第2ファイバ押え部材14の接合面に楔(図示略)を押入し、接合面をわずかに離間させる。この状態で、接続光ファイバF2の先端をベース部材12のファイバ固定溝122(大径用溝122b)に沿わせながら、接続光ファイバF2を光ファイバ接続部10aに挿入する(図9(b)参照)。
【0078】
挿入された接続光ファイバF2は、被覆除去部材16aのガイド部162により被覆除去部160に案内される。そしてまず、接続光ファイバF2の先端が被覆除去部160の挿入側に設けられた切込刃165に当接し、押圧力によってファイバF2の被覆に切れ込みが入り、続いて、ファイバ挿入側端部(ファイバ挿入口160bの周縁)に当接した後、さらに押圧されると、このときの応力によって被覆が切れ込みを基点として切り裂かされて裸光ファイバから剥離、除去される(予め切れ込みを入れることによって様々な被覆付光ファイバにおいて、20〜60%程度の押圧力を低減することができた)。そして、裸光ファイバだけが被覆除去部160を通過して前方(裸ファイバ保持部12B)に挿入される。
ここで、接続光ファイバF2の先端部を予め指先や治具等で押圧しておくと、裸光ファイバと被覆の密着力が低下するので、被覆除去部材16aによってさらに、小さい押圧荷重で容易に被覆を除去できるようになる。
【0079】
被覆除去部材16aで除去された被覆は、被覆収容部164に確実に収容されるので、裸光ファイバとともに前方に侵入して接続光ファイバF2の挿入を妨げたり、裸光ファイバと内蔵光ファイバF1との接続部位において異物となって良好な光接続を妨げたりすることはない。
【0080】
接続光ファイバF2をさらに押し込むと、接続光ファイバF2(裸光ファイバ)が内蔵光ファイバF1に突き当てられ、接続される。接続光ファイバF2が内蔵光ファイバF1に突き当たるまで、被覆除去部160で被覆が除去される。つまり、被覆除去部材16aから内蔵光ファイバF1の後端面までの部分が裸ファイバ部F2aとなる。
そして、接続光ファイバF2が内蔵光ファイバF1に突き当てられた後、楔を引き抜くと、内蔵光ファイバF1と接続光ファイバF2は、接続された状態でベース部材12と第1ファイバ押え部材13、第2ファイバ押え部材14によって押圧狭持され、固定される。なお、接続光ファイバF2と内蔵光ファイバF1の間には屈折率整合材を介在させるのが望ましい。ファイバ端面間の空気層による反射を抑制するためである。
【0081】
このように、実施形態の光コネクタ1では、接続光ファイバF2がベース部材12のファイバ固定溝122に沿って挿入されることに伴い、被覆除去部材16aの被覆除去部160により当該接続光ファイバF2の被覆が除去されるようになっている。
【0082】
光コネクタ1においては、裸ファイバ挿通孔160aと被覆ファイバ挿通孔162aとが同軸上となるように被覆除去部160とガイド部162が一体的に形成されているので、これらの軸合わせを行う必要がない。すなわち、被覆除去部160とガイド部162を別部材で構成した場合に比較して、光コネクタ1の組立作業が格段に向上される。
また、光コネクタ1に接続光ファイバF2を装着する際に、接続光ファイバF2の挿入に伴い所定長の被覆が除去されるので、接続光ファイバF2の先端部の被覆を専用の工具を用いて除去する必要がなくなる。したがって、光コネクタ1に接続光ファイバF2を装着する際の作業性が格段に向上される。
さらに、内蔵光ファイバF1と接続光ファイバF2の接続部位から被覆除去部材16aまでの間隔で接続光ファイバF2の被覆除去長が決まる。したがって、接続光ファイバF2の先端部から被覆が必要以上に除去されることはないので、接続光ファイバF2の強度が低下して損傷を招く虞もない。
【0083】
本実施の形態の構成によれば、被覆除去部160と切込刃165が一体として形成されているので、被覆除去時に、被覆除去部160と切込刃165の関係が一定であるので、被覆除去部160と切込刃165が別体として構成された構造よりもさらに安定して被覆の除去を行うことができる。
【0084】
なお、本実施形態においては、ガイド部162と被覆除去部160が一体化された構造の被覆除去部160の外周に切込は165を設ける例を示したが、被覆除去部160の外周ではなく、被覆ファイバ挿通孔162aの内面に切込刃165を第1の実施形態の第2凹部124部分と同様に形成しても、被覆除去部160と被覆ファイバ挿通孔162aの両者に設けても良い。
さらに、第1の実施形態における被覆除去部材16の外周に第2の実施形態の被覆除去部160に設けた切込刃165と同様に切込刃を設けても良い。この場合は、第2凹部124部分を省略することもできる。
【0085】
また、第1の実施形態、第2の実施形態では、被覆除去部材16、被覆除去部160を円錐形状のもので説明したが、図17(a)、(b)に示したように四角錐など他の形状としてもよい。この場合、面と面の接合部と面とで被覆に与える応力が異なり、切込刃と類似した効果が得られる。ただし、上述の実施例のように刃を設けた方が効率が良いために、好ましくは組み合わせて切込刃を設けると都合が良い。
【0086】
ファイバ挿入補助部材を設けた光ファイバ取付用治具の一例を図18〜23に示す。
なお、ここでは第1の実施形態で示した被覆除去部材16を備える光ファイバ接続部10の構成を例に説明する。第2の実施形態で示した被覆除去部160を備える光ファイバ接続部10aの場合であっても同様であるので、その説明は省略する。
【0087】
図18〜23に示すように、光ファイバ取付用治具2は、台座21、光コネクタ1を保持するコネクタ保持部22、挿入される接続光ファイバ200を光コネクタ1側に案内するファイバガイド部(台座に形成されたガイド溝(例えばU溝))23、光コネクタ1(ハウジング)のファイバ挿入口と接続光ファイバ200を調心する軸合わせ部24等を備えて構成されている。
図18〜23で示すいずれの例においても、接続光ファイバ200を光コネクタ1に挿入する際、接続光ファイバ200に比較的大きな挿入圧がかかるように、光コネクタ1のハウジングはコネクタ保持部22に嵌合され、強固に固定される。
【0088】
図18、19に示す光ファイバ取付用治具2は、さらに、接続光ファイバ200を自動的に光コネクタ1内に挿入するための送り出しローラ25を備えている。つまり、図18、19に示す光ファイバ取付用治具2では、ファイバガイド部23と送り出しローラ25等で、送り出し機構が構成される。
図18において、送り出しローラ25及び補助ローラ26は、駆動モータ27により回転駆動され、被覆除去に必要な2〜12Nの挿入圧で接続ファイバ200が送り出されるように制御される。
また、送り出しローラ25の接触点(送り出しローラ25が接続光ファイバ200と接触する点)から光コネクタ1のファイバ挿入口までの離間距離tは、この部分で接続光ファイバ200が不要に撓まないように1〜5mmに設定するのが望ましい。特に、離間距離tを2〜3mmに設定することで、通常利用される剛性の異なる(被覆材料の異なる)すべての光ファイバに対応することができる。
【0089】
図18に示す光ファイバ取付用治具2では、送り出しローラ25に軸合わせ部24を兼用させているが、図19に示すように、送り出しローラ25と軸合わせ部24を別々に構成してもよい。この場合、送り出しローラ25の接触点から軸合わせ部24の挿入端までの離間距離t2と、軸合わせ部24の送出端から光コネクタ1のファイバ挿入口までの離間距離t1を、それぞれ1〜5mm、好ましくは2〜3mmに設定する。
【0090】
図18、19に示す光ファイバ取付用治具2を用いて接続光ファイバ200を光コネクタ1に挿入する場合、作業者が送り出しローラ25の近傍まで接続光ファイバ200を挿入する。光ファイバ取付用治具2に設けられたセンサ(図示略)により接続光ファイバ200の挿入が検知されると、制御装置は駆動モータ27を動作させて、送り出しローラ25を回転させる。これに伴い、接続光ファイバ200が所定の挿入圧で光コネクタ1内に導入される。
【0091】
そして、制御装置は、予め設定された挿入圧となったときに、駆動モータ27の動作を停止させる。具体的には、図18、19に示す光ファイバ取付用治具2においては、例えば、挿入される接続光ファイバ200毎に内蔵光ファイバ100に突き当てたときの押圧荷重の最適値(例えば、メーカごとに規定されている)が記憶装置(図示略)にプリセットされている。制御装置(図示略)は、センサによる検出結果(挿入圧の変化)を監視し、ファイバ挿入時の挿入圧がプリセットされた最適値となったときに、内蔵光ファイバ100に所定の押圧荷重で接続光ファイバ200が突き当てられていると判断し、駆動モータ27を停止させる。
これによって、自動で接続光ファイバ200の被覆除去および光コネクタ1への挿入工程を完了することができる。
【0092】
なお、接続光ファイバ200の挿入圧の最適値はプリセットに限らず、現場で最適な値を決定し適宜記憶させるようにしてもよい。また、接続光ファイバ200が内蔵光ファイバ100に突き当たったか否かは、光コネクタ1の他端に赤色レーザを取り付け、挿入する接続光ファイバ200の撓み部あるいは他端で赤色光を観察することで検知できる。
【0093】
また、光ファイバ取付用治具2の台座21に、光コネクタ1のベース部材12と第1ファイバ押え部材13との接合面、又はベース部材12と第2ファイバ押え部材14との接合面を離間させる楔を設け、接続光ファイバ200の挿入完了とともに楔が外れる、例えば、光コネクタ1のハウジングと台座21の勘合状態が解除されるようにしてもよい。このとき、同時に送り出しローラ25の押圧状態も解除し、接続光ファイバ200の破損を防ぐようにする。これにより、ファイバ挿入時の作業者の負担をさらに軽減することができる。
【0094】
図20、21に示す光ファイバ取付用治具2は、接続光ファイバ200を把持する把持部29と、接続光ファイバ200を手動で光コネクタ1内に挿入するための押圧部材28を備えている。つまり、図20、21に示す光ファイバ取付用治具2では、ファイバガイド部23、把持部29、押圧部材28等で、送り出し機構が構成される。
【0095】
図20、21に示す光ファイバ取付用治具2を用いて接続光ファイバ200を光コネクタ1に挿入する場合、作業者が接続光ファイバ200を光コネクタ1内に挿入し、接続光ファイバ200を被覆除去補助部材17に到達させる。そして、さらに押し込むことにより、必要とされる挿入圧を生じるような撓みを接続光ファイバ200に形成させる。この状態で、軸合わせ部24から所定長だけ離れた位置に設けられた把持部29により、接続光ファイバ200を固定する。
そして、接続光ファイバ200の撓みを上方から押圧部材28で押圧し(図20の場合)、又は把持部29から撓みを絞り込むように押圧部材28をスライドさせ(図21の場合)、接続光ファイバ200を光コネクタ1内に挿入する。
【0096】
図22に示す光ファイバ取付用治具2は、接続光ファイバ200を把持するとともに、接続光ファイバ200を手動で光コネクタ1内に挿入するための把持部29を備えている。具体的には、把持部29は、接続光ファイバ200を把持した状態で、台座21上を長手方向にスライド可能に構成されている。つまり、図22に示す光ファイバ取付用治具2では、ファイバガイド部23、把持部29等で、送り出し機構が構成される。また、図22に示す光ファイバ取付用治具2では、ファイバガイド部23が開放側に凹状となるように、台座21が湾曲して形成されている。
【0097】
図22に示す光ファイバ取付用治具2を用いて接続光ファイバ200を光コネクタ1に挿入する場合、作業者が接続光ファイバ200を光コネクタ1内に挿入し、接続光ファイバ200を被覆除去補助部材17に到達させる。この状態で、軸合わせ部24から所定長だけ離れた位置に設けられた把持部29により、接続光ファイバ200を固定する。そして、把持部29を光コネクタ1側にスライドさせることにより接続光ファイバ200を押し込んで、光コネクタ1内に挿入する。
このとき、ファイバガイド溝23が開放側に凹状となっているので、押圧されたときに接続光ファイバ200には下方向に撓みが生じるように力が働くが、下方向に生じようとする撓みはファイバガイド部23により規制される。したがって、接続光ファイバ200を光コネクタ1内に挿入する際に、接続光ファイバ200に撓みが生じることはなく、効率的に押し込むことができる。
【0098】
図18〜22では、接続光ファイバ200が不要に撓まないように、光コネクタ1と軸合わせ部24の端面の離間距離tが近接して設計されるが、図23に示すように、光コネクタ1と軸合わせ部24との間に湾曲させたガイド溝30を設けてもよい。このガイド溝30によって、光コネクタ1と軸合わせ部24との間で接続光ファイバ200に生じる撓みが規制される。
【0099】
また、被覆除去部材16において、接続光ファイバ200の被覆202との当接面積が小さくなるように、裸ファイバ挿通孔161の挿入口161aの端面を、例えば鋭角に加工してもよい。これにより、より小さな押圧荷重で接続光ファイバ200の被覆202を剥離することができる。
この場合、図24に示すように、被覆除去部材16における挿入口161aの外面と長手方向のなす角度αを60°未満とするのが望ましい。これにより、接続光ファイバ200から除去された被覆202を、被覆除去部材16を伝いながら進行させることができる。発明者らの実験により、当分野で用いられる多くの光ファイバについて、上記の現象が確認されている。
一方、被覆除去部材16の外面のテーパ部分の全長を短くするために、角度αを30°以上とするのが望ましい。
つまり、図24に示すように、角度αを30〜60°とすることにより、除去された被覆202は被覆除去部材16の挿入口161aの先に収容されるので、除去された被覆202が、接続光ファイバ200(裸ファイバ201)と内蔵光ファイバ100との接続部に混入するのを抑制できる。したがって、除去された被覆202が接続部に混入することにより接続損失が増大するのを効果的に防止することができる。
【0100】
また、被覆除去部材16の挿入口161aの内面のテーパについては、第2ファイバ押え部材14とベース部材12(ファイバ固定溝122)との間で接続ファイバ200が曲がるのを妨げず、被覆202の除去を妨げない角度として、10〜60°の範囲とすることが好ましい。
また、被覆除去部材16の送出口(挿入口161aの反対側の開口)には、後続のファイバ固定溝122との段差の発生を防ぐために、テーパあるいはR面を設けるのが望ましい。これにより、ファイバ固定溝122との位置ズレ誤差を吸収し、クランプしたときのファイバ折れを防ぐことができる。
【0101】
被覆除去補助部材17においては、発明者らの実験により、被覆202に入れる切り込みの位置を制御することで、除去された被覆202の放出方向を制御できることが確認されている。
例えば、上下方向に切込刃172を形成した場合は、接続光ファイバ200の被覆202の上下に切り込みが形成される。そして、被覆除去部16によって被覆202が破断され、水平方向左右(図24において手前側と奥側)に放出される。
また例えば、図24において、奥側(クランプ部材15の基部側)に切込刃172を形成した場合は、接続光ファイバ200の被覆202の奥側だけに切り込みが形成される。そして、被覆除去部16によって被覆202が破断され、クランプ部材15の開放側に放出される。
このような構成を採用して、さらに除去された被覆202を外部に誘導する溝をベース部材12に設けることで、除去された被覆202を効率的に光コネクタ1から外部に排出できる。
【0102】
また、実施形態では、被覆除去補助部材17を、光コネクタ1のハウジング内に設けたが、ハウジング外(例えば、図18〜23の光ファイバ取付用治具の送出部)に設けてもよい。
【0103】
また、実施形態では、光コネクタ1に接続光ファイバ200を挿入する際、クランプ部材15及びハウジングの開口を介して外部に露呈されているベース部材12と第1ファイバ押え部材13の接合面、及びベース部材12と第2ファイバ押え部材14の接合面に楔3を押入し、接合面をわずかに離間させるようにしている。
このとき、接続光ファイバ200の剛性は被覆材料によって変化するため、ベース部材12(ファイバ固定溝122)と第2ファイバ押え部材14との間隙によって、挿入時に内部で生じる形状(撓みなど)も異なってくる。したがって、挿入される接続光ファイバ200の種類に応じて、ベース部材12と第2ファイバ押え部材14によって形成される間隙を調整するのが望ましい。
【0104】
例えば、図25に示すように両方の長辺の2箇所に凸片(楔)を設けた楔形工具3を利用することで、ベース部材12と第2ファイバ押え部材14によって形成される間隙を簡便に調整することができる。
すなわち、図25に示す楔形工具3は、ベース部材12と第1ファイバ押え部材13の接合面に裸ファイバ部200Aを挿通可能な間隙を形成する楔3a、3cと、ベース部材12と第2ファイバ押え部材14の接合面に被覆部200Bを挿通可能な間隙を形成する楔3b、3dを有している。ここで、楔3bと楔3dの厚さが異なる。挿入する接続光ファイバ200の種類(被覆材料の剛性)に応じて、楔形工具3の向きを変えることで、最適な間隙(ファイバ挿入路)を形成することができる。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 光コネクタ
10 光ファイバ接続部
10a 光ファイバ接続部
11 フェルール
111 細孔
12 ベース部材
121 鍔部
122 ファイバ固定溝
13 第1ファイバ押え部材(ファイバ押え部材)
14 第2ファイバ押え部材(ファイバ押え部材)
15 クランプ部材
16 被覆除去部材
16a 被覆除去部材
160 被覆除去部
161 裸ファイバ挿通孔
17 被覆除去補助部材
171 被覆ファイバ挿通孔
172 切込刃
18 被覆収容部
100 内蔵光ファイバ
200 接続光ファイバ(接続しようとする光ファイバ、光ファイバ心線)
201 裸光ファイバ
202 被覆
F1 内蔵光ファイバ
F2 接続光ファイバ
F2a 裸ファイバ部
F2b 被覆ファイバ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光ファイバが装着されたフェルールと、
接続しようとする第2光ファイバと前記第1光ファイバを突き合わせた状態で保持するファイバ固定溝が形成されたベース部材と、
前記ベース部材に当接して、前記ベース部材との間で前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバを狭持するファイバ押え部材と、
前記ファイバ押え部材を前記ベース部材に対して付勢するクランプ部材と、を有する光ファイバ接続部がハウジングに装着されてなる光コネクタにおいて、
前記光ファイバ接続部に、被覆のついた前記第2光ファイバが前記ファイバ固定溝に沿って挿入されることに伴い、当該第2光ファイバの被覆を除去する被覆除去部を設けたことを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記第2光ファイバの被覆の厚み方向に切れ込みを入れるための切込形成手段が前記第2光ファイバの挿入経路の前記被覆除去部以前の経路上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記被覆除去部が、前記第2光ファイバのクラッド外径よりも大きく、被覆外径よりも小さい裸ファイバ挿通孔を有し、この裸ファイバ挿通孔に前記第2光ファイバを圧入させることにより、前記第2光ファイバの被覆を除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記裸ファイバ挿通孔の挿入口が、テーパ状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記切込形成手段が切込刃であり、少なくとも一つの切込刃が前記被覆除去部の前記裸ファイバ挿入孔の周囲に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記被覆除去部の前段に、前記第2の光ファイバをガイドするための前記第2光ファイバの被覆外径よりも大きい被覆ファイバ挿通孔有する被覆除去補助部を設けたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記被覆ファイバ挿通孔の挿入口が、テーパ状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記被覆除去補助部が、前記ベース部材と前記ファイバ押え部材によって狭持される部材であることを特徴とする請求項6又は7に記載の光コネクタ。
【請求項9】
前記被覆除去補助部が、前記ベース部材又は前記ファイバ押え部材に一体的に形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の光コネクタ。
【請求項10】
前記被覆除去部と前記被覆除去補助部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項6〜9の何れか一項に記載の光コネクタ。
【請求項11】
前記切込形成手段が切込刃であり、前記被覆除去補助部は、内周面に少なくとも一つの切込刃が形成されたことを特徴とする請求項6〜10の何れか一項に記載の光コネクタ。
【請求項12】
前記被覆除去部によって除去された被覆を収容する被覆収容部がさらに設けられたことを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の光コネクタ。
【請求項13】
光コネクタに接続しようとする光ファイバを挿入するための光ファイバ取付用治具であって、
前記光コネクタを保持するコネクタ保持部と、
前記光コネクタのファイバ挿入口と前記光ファイバを調心する軸合わせ部と、
前記光ファイバを送り出す送り出し機構と、を備え、
前記軸合わせ部と前記光ファイバ挿入口との間の離間距離が、1〜5mmであることを特徴とする光ファイバ取付用治具。
【請求項14】
光コネクタに接続しようとする光ファイバを挿入するための光ファイバ取付用治具であって、
前記光コネクタを保持するコネクタ保持部と、
前記光コネクタのファイバ挿入口と前記光ファイバを調心する軸合わせ部と、
前記光ファイバを送り出す送り出し機構と、を備え、
前記軸合わせ部と前記光ファイバ挿入口の間に溝が形成されたガイド部を備え、このガイド部が前記溝の開放側に凹となる湾曲状に形成されていることを特徴とする光ファイバ取付用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−14159(P2012−14159A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115470(P2011−115470)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(593200593)株式会社成和技研 (15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】