説明

光コネクタ

【課題】被覆付光ファイバの被覆をスムーズに除去することが可能にする。
【解決手段】内蔵光ファイバと挿入光ファイバとを突き合わせ接続するメカニカルスプライス部に、被覆付き光ファイバの被覆を除去する被覆除去部を備え、被覆除去部を構成する被覆除去部材は、被覆付光ファイバ挿通孔を有する被覆付光ファイバ挿入側部分と、裸ファイバ挿通孔を有しかつ被覆付光ファイバの被覆を除去する被覆除去作用部を持つ被覆除去側部分とを持つ。被覆付光ファイバ挿通孔の内径は被覆付光ファイバの被覆部外径とほぼ同一内径、裸ファイバ挿通孔は中間部分が裸ファイバの外径とほぼ同一内径であり、その入口側に入口に向かって広がるテーパ孔を有し、出口側は裸ファイバ外径より大径である。被覆を除去された裸ファイバの先端エッジが裸ファイバ挿通孔の内壁にぶつかることは少なくなり、また、突合せ接続用の調心溝との軸ずれによる裸ファイバ断線を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内蔵光ファイバを内蔵するフェルール部の後部にメカニカルスプライス部を一体に備え、前記メカニカルスプライス部に、被覆付き光ファイバの被覆を剥がす作用をする被覆除去部を備えて被覆付き光ファイバ押込みによる突合せ接続が可能なメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
予め被覆付き光ファイバの被覆を剥がして裸ファイバを露出させることなく、光コネクタに被覆付き光ファイバのまま押し込んで対向光ファイバ(内蔵光ファイバ)と突き合わせ接続する技術が報告されている(非特許文献1)。この報告では、裸ファイバ径が0.125mm、被覆部外径が0.25mmの被覆付き光ファイバを対象としている。
この被覆付き光ファイバ押込みによる突合せ接続は、突合せ部の接続モデルとしては、円錐体の軸芯部に内径126mmの孔(調心部)をあけた被覆除去部材を用い、この円錐体状の被覆除去部材の孔先端部(挿入端)に、被覆付き光ファイバの被覆除去に必要な力以上の力で押し当てて、被覆付き光ファイバの被覆を剥がすというものである。
この細い被覆付き光ファイバを被覆除去部材の孔先端部に押し当てて、薄い被覆を裸ファイバを傷つけずに剥がすにためには、被覆付き光ファイバを極めて高い精度で孔先端部に押し当てる必要があり、したがって、被覆付き光ファイバを高い精度で孔先端部まで案内する必要がある。
【0003】
細い被覆付き光ファイバを被覆除去部材の孔先端部に押し当ててその被覆を剥がすという、上記のような被覆付き光ファイバ押込みによる被覆除去技術を、実際の現場組立光コネクタにおいて実現するには、多くの部分について、具体的な構造を考案する必要がある。
例えば、特許文献1の光コネクタは、内蔵光ファイバを有する突合せ接続方式の光コネクタでなく、光コネクタに挿入した被覆付光ファイバの被覆を除去した裸ファイバをフェルール部の光ファイバ孔に挿入して、その先端を直接接続端面とするものであるが、この光コネクタは、フェルール部に被覆除去部を設けている。
すなわち、フェルール部に設けた光ファイバ保持孔37を、被覆付き光ファイバの外径と略同一内径の第1孔部53と、裸光ファイバの外径と略同一内径の第2孔部55と、第1孔部53と第2孔部55との間に設けた被覆受け部57とを備えた構成として、被覆付き光ファイバ19を被覆付きのまま装着可能にする、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−128422
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】2009年電子情報通信学会ソサイエティ大会の通信講演論文集2「被覆付き光ファイバ心線の突合せ接続に関する考察」(B−13−8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、光コネクタ内に被覆除去部を設けたものとして、フェルール部に被覆除去部を設けたもの(特許文献1)があるが、裸ファイバ径が0.125mm、被覆付き光ファイバの被覆部外径が0.25mmという細い被覆付き光ファイバにおける薄い被覆を、細いフェルール部の内部で裸ファイバを傷つけずにかつきれいに剥がすことは簡単なことではないので、フェルール部内に被覆除去部を設ける構造を実用化するには、種々困難な面があると思われる。
【0007】
ところで、内蔵光ファイバを内蔵するフェルール部の後部にメカニカルスプライス部を一体に備えたメカニカルスプライス部一体型光コネクタの内部に被覆除去部を備えた構造とすれば、現場組立光コネクタとして一層優れたものとなる。
しかし、前記の通り、裸ファイバ径が0.125mm、被覆付き光ファイバの被覆部外径が0.25mmという細い被覆付き光ファイバにおける薄い被覆を、裸ファイバを傷つけずにかつきれいに剥がすことは簡単なことではないので、メカニカルスプライス部一体型光コネクタにおいて内部に被覆除去部を備えた構成とするには種々の点で具体的な構造を考案することが必要となる。
特に、メカニカルスプライス部に設ける被覆除去部の具体的構造が大きく被覆除去性能に影響するので、被覆除去部の構造に種々の工夫が必要となる。
【0008】
本発明は上記背景のもとになされたもので、メカニカルスプライス部一体型光コネクタにおいて内部に被覆除去部を備えた構成とする場合に、被覆付光ファイバの被覆をスムーズに除去することが可能な被覆除去部を備えたメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1の発明のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタは、内蔵光ファイバを内蔵したフェルール部と、前記フェルール部の後部に取り付けられて、前記内蔵光ファイバと外部から挿入される光ケーブルの外被を除去した被覆付き光ファイバの被覆を除去した挿入光ファイバとを突き合わせ接続するメカニカルスプライス部と、メカニカルスプライス部における前記内蔵光ファイバと挿入光ファイバとの突合せ部より後方側に設けられて前記被覆付き光ファイバの被覆を除去する被覆除去部とを備え、
前記被覆除去部を構成する被覆除去部材は、
被覆付光ファイバを案内する被覆付光ファイバ挿通孔を有する被覆付光ファイバ挿入側部分と、
前記被覆付光ファイバ挿通孔の前方に設けられ、被覆付光ファイバ挿通孔と同軸の裸ファイバ挿通孔を有するとともにその被覆付光ファイバ挿通孔側の端部に被覆付光ファイバの被覆を除去するための筒状刃が形成された被覆除去作用部を持つ被覆除去側部分とを備え、
前記被覆付光ファイバ挿通孔の内径が被覆付光ファイバの被覆部外径とほぼ同一内径であり、かつ前記裸ファイバ挿通孔の中間部分の内径が前記裸ファイバの外径とほぼ同一内径であり、
前記裸ファイバ挿通孔の裸ファイバ外径とほぼ同一内径である中間部分より入口側がテーパ状に広がるテーパ孔となっており、出口側の内径が前記中間部分の内径より大となっていることを特徴とするメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
なお、裸ファイバ挿通孔の裸ファイバ外径とほぼ同一内径である中間部分より入口側の部分は、必ずしもその全体がテーパ孔である場合に限らず、テーパ孔の部分より入口側が、テーパ孔の最大径と同径の均一内径孔があってもよい。
【0010】
請求項2は請求項1のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記裸ファイバ挿通孔における、出口側の内径が前記中間部分の内径より大となっている部分が出口側に広がるテーパ孔となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項3は請求項1又は2のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記被覆除去側部分の裸ファイバ挿通孔における、裸ファイバ外径とほぼ同一内径である部分の長さが0.05mm〜0.5mmであることを特徴とする。
【0012】
請求項4は請求項1〜3のいずれか1項のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記被覆除去部材を、その被覆付光ファイバ挿入側部分と被覆除去側部分とを成形材料にて一体成形したことを特徴とする。
【0013】
請求項5は請求項1〜4のいずれか1項のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記被覆除去部材を、その被覆付光ファイバ挿入側部分と被覆除去側部分とを樹脂にて一体成形したことを特徴とする。
【0014】
請求項6は請求項4又は5のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記被覆除去部材は、被覆付光ファイバ挿通孔の部分と裸ファイバ挿通孔の部分とを形成する中子として1本のコアピンを用いた金型で一体成形したことを特徴とする。
【0015】
請求項7は請求項1〜6のいずれか1項のメカニカルスプライス型の現場組立光コネク
前記被覆付光ファイバ挿通孔と裸ファイバ挿通孔との間の隙間寸法が0.1〜0.3mmであることを特徴とする。
【0016】
請求項8は請求項1〜7のいずれか1項のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記被覆除去部材の被覆除去作用部は、裸ファイバ挿通孔の入口側に向かって先細りとなって孔先端に前記筒状刃が形成される錐体状部を有し、この錐体状部の側面のテーパ角度が20°〜40°であることを特徴とする。
【0017】
請求項9は請求項1〜7のいずれか1項のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記被覆除去部材の被覆除去作用部は、裸ファイバ挿通孔の入口側に向かって凹湾曲状をなして先細りとなって孔先端に前記筒状刃が形成される凹湾曲錐体状部を有することを特徴とする。
【0018】
請求項10は請求項1〜9のいずれか1項のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記被覆除去部材における被覆付光ファイバ挿通孔と裸ファイバ挿通孔との間に形成される空間が、裸ファイバ挿通孔芯と直交する二方向における、裸ファイバ挿通孔の半径方向両側にいずれも0.5mm以上の隙間を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタによれば、被覆付光ファイバの被覆を除去する被覆除去部材をメカニカルスプライス部に設けるとともに、被覆付光ファイバ挿通孔を有する被覆付光ファイバ挿入側部分と、裸ファイバ挿通孔を有するとともに被覆付光ファイバの被覆を除去するための筒状刃が形成された被覆除去作用部を持つ被覆除去側部分とを備えた構成とし、
前記被覆付光ファイバ挿通孔の内径が被覆付光ファイバの被覆部外径とほぼ同一内径であり、かつ前記裸ファイバ挿通孔の中間部分の内径が前記裸ファイバの外径とほぼ同一内径であり、前記裸ファイバ挿通孔の裸ファイバ外径とほぼ同一内径である中間部分より入口側がテーパ状に広がるテーパ孔となっており、出口側の内径が前記中間部分の内径より大となっており、裸ファイバ挿通孔の中間部分の内径よりその両側の内径が大きいので、裸ファイバを裸ファイバ挿通孔内に挿通させ易いとともに、被覆を除去された裸ファイバの先端の外周(先端のエッジ)が裸ファイバ挿通孔の内壁にぶつかる(接触する)ことが少なくなる(ぶつかる確率が小さくなる)。
すなわち、被覆を除去した裸光ファイバの外径と同一の内径部分が長ければ長いほど、被覆を除去した裸ファイバが裸ファイバ挿通孔の内壁にぶつかり易くなるが、裸ファイバの外径と同一内径の部分を裸ファイバ挿通孔の一部のみとすることで、ぶつかる確率およびぶつかった場合の距離を短くできる。
また、被覆を除去した裸光ファイバの外径と同一の内径部を含む孔のメカニカルスプライス部調心溝側の出口を広げておくことで、被覆を除去した裸光ファイバの外径と同一の内径部分と調心溝部との軸ずれによる裸ファイバ断線(出口孔縁部(エッジ)による断線)の発生を抑制することができる。
なお、裸ファイバ挿通孔の中間部分より出口側もテーパ状にするのが好ましい。
前記裸光ファイバ外径と同一内径の部分の長さSaは、0.5mm以下にするのが適切であるが、短すぎると調心機能を損なうことと考慮すると、0.05mm〜0.5mmとするのが適切である。
【0020】
請求項4によれば、被覆除去部材の被覆付光ファイバ挿入側部分と被覆除去側部分とを一体成形したものなので、被覆付光ファイバ挿入側部分の被覆付光ファイバ挿通孔と被覆除去側部分の裸ファイバ挿通孔との両孔芯を精度よく一致させることができ、被覆除去をスムーズに行うことができ、被覆除去性能を高めることができる。
また、この被覆除去部材をメカニカルスプライス部に装着する際に、被覆付光ファイバ挿入側部分及び被覆除去作用部分とについてそれぞれを調心して固定する必要がないので、作業性がよいし、高い調心精度を確保し易い。
また、一体成形品であるから、量産可能であり、コストを低減できる。
また、被覆付光ファイバ挿通孔の部分と裸ファイバ挿通孔の部分とを形成する中子として1本のコアピンを用いた金型で一体成形すると、被覆付光ファイバ挿入側部分の被覆付光ファイバ挿通孔と被覆除去側部分の裸ファイバ挿通孔との両孔芯をさらに高精度に一致させることができる。
【0021】
請求項7によれば、被覆付光ファイバ挿通孔と裸ファイバ挿通孔との間の隙間寸法aを0.1〜0.3mmとしたので、被覆付光ファイバの被覆を除去する機能を有効に果たすことが可能となる。
すなわち、隙間aが長いと被覆付光ファイバが座屈して被覆を除去することができなくなる。また、隙間aが短すぎると、実質的に被覆の剛性が高くなるので、被覆除去部材の刃の鋭さに限界があることで、被覆が破れずに裸ファイバに沿って波付けパイプのような状態のまま滑ってしまう恐れがある。しかし、0.1〜0.3mmという適切な隙間寸法aとすると、そのような現象を起こさずに、スムーズに被覆を除去することができ、被覆付光ファイバの被覆を除去する機能を有効に果たすことが可能となる。
【0022】
請求項8において、被覆除去部材の被覆除去作用部は、先端に筒状刃が形成される錐体状部を有している。この錐体状部の側面のテーパ角度が10°程度以下であれば、筒状刃の刃先が薄くなり過ぎて、強度が弱くなり破損し易くなり、一方、45°以上であれば、筒状刃の刃先の切れ味が鈍って、被覆除去する際に必要な押込み力(被覆除去力)が増大する。しかし、錐体状部の側面のテーパ角度を20°〜40°の範囲にすると、強度を確保しながら、被覆除去する際に必要な押込み力を低減させることができる。
また、請求項9のように、錐体状部の側面を先端に向かって凹湾曲状をなす形状とすると、筒状刃の刃先では薄くしても刃先から離れるにつれて厚くなる。したがって、切れ味と強度とを兼ね備えた筒状刃を得ることができる。
また、錐体状部の側面が凹湾曲していることで、筒状刃の刃先で切り込んだ筒状の被覆を凹湾曲の側面に沿って押し広げる作用が大となり、筒状の被覆に亀裂が入り易くなり、被覆屑が複数に裂かれ易くなるので、被覆屑を裸ファイバから剥がす作用が効果的に行われる。すなわち、被覆が裸ファイバに沿って波付けパイプのような状態のまま滑ってしまうことを防止する効果がある。これにより被覆除去性能が向上する。
また、被覆が複数に裂かれて複数本に分解された被覆屑となり易いので、被覆屑を収納し易くなる。
また、錐体状部を角錐体状にした場合には、角錐の稜線のエッジ部で被覆が複数に裂かれ易くなる。
【0023】
請求項10によれば、被覆除去部材の被覆付光ファイバ挿通孔と裸ファイバ挿通孔との間に形成される空間が、裸ファイバ挿通孔芯と直交する二方向(実質的に厚み方向と幅方向)における、裸ファイバ挿通孔の半径方向両側にいずれも0.5mm以上の隙間を有するので、被覆屑を収納するスペースを確保することができる。これにより、被覆除去長さを長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタの一実施例の斜視図であり、光コネクタを光ケーブルの被覆付き光ファイバに押込み補助治具及びクサビ部材を用いて取り付ける状況を示す図である。
【図2】図1において、押込み補助治具及びクサビ部材を除いて示した斜視図である。
【図3】(a)は図2の平面図、(b)は同正面図、(c)は同底面図である。
【図4】上記光コネクタの縦断面を一部を省略しかつ簡略化して示した図である。
【図5】上記光コネクタにおけるプラグフレームの斜視図である。
【図6】図5のプラグフレームの詳細を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図、(e)は(a)のB’−B’断面図である。
【図7】上記光コネクタにおけるストップリングの斜視図である。
【図8】図7のストップリングの詳細を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は(a)のC−C断面図、(e)は(b)のD−D断面図、(f)は(b)の左側面図、(g)は(b)の右側面図である。
【図9】上記光コネクタにおける可動ガイドの斜視図である。
【図10】図9の可動ガイドの詳細を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(a)の左側面図、(e)は(a)の右側面図である。
【図11】図10(b)のE−E断面図である。
【図12】上記光コネクタの内部の部材であるメカニカルスプライス部のベース部の詳細を示すもので、(a)はベース部の正面図、(b)は同平面図、(c)は(a)のF−F断面図、(d)は(b)の右側面図、(e)は(a)のG−G断面図である。
【図13】図12のベース部に取り付けられる開放ガイドを示すもので、(a)は底面図(図12(c)に対応する図)、(b)は(a)を下から見た図、(d)は(a)の2倍に拡大した左側面図である。
【図14】図12(a)のベース部にフェルールを固定したものに蓋、可動ガイド、被覆除去部材を装着した状態をクサビ部材とともに示す図である。
【図15】(a)は図12(d)を拡大した図、(b)は図14の右側面図である。
【図16】図1〜図3における外被把持部材を蓋体を開いた状態で示した斜視図である。
【図17】図14における被覆除去部材を拡大して示したもので、(a)は斜視図、(b)は、被覆付き光ファイバの被覆を除去する状況を併せて示した平面図である。
【図18】図16に示した被覆除去部材の詳細構造を示すもので、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は(a)のK−K断面図、(e)は(d)の要部のJ−J断面図である。
【図19】(a)、(b)、(c)は被覆除去部材の錐体状部が円錐体状部の場合における側面のテーパ角度について説明するもので、(a)は角度θが40°の場合、(b)は角度θが20°の場合、(c)は円錐体状部の側面が凹湾曲面の場合である。 (d)、(e)、(f)は錐体状部が角錐体状部の場合における角錐体状部を正面から見た図(図21(e)に相当する図)であり、(d)は角錐体状部が四角錐体状部の場合、(e)は(d)の四角錐体状部の側面が凹湾曲面の場合、(f)は錐体状部が三角錐体状部でありかつその側面が凹湾曲面である場合を示す。
【図20】被覆除去部材における被覆除去側部分45の裸ファイバ挿通孔の形状についての変形例を示すもので、(a)は被覆除去部材の平面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は(a)のL−L断面図である。
【図21】被覆除去部材における被覆除去側部分45の裸ファイバ挿通孔の形状についての他の変形例を示すもので、被覆除去部材の図23(d)に相当する断面図である。
【図22】上記の被覆除去部材を樹脂一体成形する金型を模式的に示したもので、(a)は金型の上型と下型とを合せた状態(コアピンは不図示)で示した断面図、(b)は(a)の下型にコアピンを配置した状態を示す平面図(M−M矢視図にコアピンを図示したもの)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施したメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明の一実施例のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ1の斜視図であり、メカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ1を光ケーブル4の被覆付き光ファイバ5に押込み補助治具14及びクサビ部材15を用いて取り付ける状況を示す図である。図2は図1において、押込み補助治具14及びクサビ部材15を除いて示した斜視図、図3(a)は図2の平面図、(b)は同正面図、(c)は同底面図である。図4は上記メカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ1の内部構造の概略を示す縦断面図であり、一部を省略しかつ簡略化して示している。
【0027】
このメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ(以下、略して単に光コネクタともいう)1は、内蔵光ファイバ(裸ファイバ)2を内蔵したフェルール部3と、前記フェルール部3の後部に一体に取り付けられて、前記内蔵光ファイバ2と外部から挿入される光ケーブル4の外被4aを除去した被覆付き光ファイバ5の被覆5aを除去された挿入光ファイバ(図17に符号6で示す)とを突き合わせ接続するメカニカルスプライス部7と、前記フェルール部3とメカニカルスプライス部7とが一体化されたメカニカルスプライス部一体化フェルール部8をその前進限を規定して前後に摺動可能に収容するプラグフレーム9と、前記プラグフレーム9に固定されるとともに前記メカニカルスプライス部7をC形板バネ26を介して前方に弾性的に付勢するストップリング10と、コネクタ後端部で前記光ケーブル4の外被4aを把持する外被把持部材11とを備えている。
前記被覆付光ファイバ5の被覆部の外径は0.25mm、被覆を除去した裸ファイバの外径は0.125mmである。
【0028】
図5は前記プラグフレーム9の斜視図、図6(a)はプラグフレーム9の平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図、(e)は(a)のB’−B’断面図である。
プラグフレーム9は、前記の通りメカニカルスプライス部一体化フェルール部8をその前進限を規定して前後に摺動可能に収容するもので、メカニカルスプライス部一体化フェルール部8の鍔部8aを摺動可能に嵌合させる円筒内面9aを持ち、その先端の段差部9bによって前進限を規定する。また、ストップリング10の前方側の円筒部分10aを嵌入させる円筒内面9cを有する。9dはカバー13の側面にあけた穴部に係合してカバー13を係止する係止部分、9eはストップリング10の係合突起10bに係合してストップリング10を係止する係止部である。9fはクサビ部材15の差込片15aを通過させる孔である。
カバー13は、プラグフレーム9の部分に装着されており、光コネクタ接続の際に挿入するアダプタ内面形状に合せた外形を有するが、コネクタの種類によってカバーの形状及びプラグフレームの形状が変わる。
【0029】
図7は前記光コネクタにおけるストップリング10の斜視図、図8(a)はストップリング10の平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は(a)のC−C断面図、(e)は(b)のD−D断面図、(f)は(b)の左側面図、(g)は(b)の右側面図である。
ストップリング10は、前記の通り、その円筒部分10aがプラグフレーム9内に嵌合し係合突起10bで係止されるとともに、メカニカルスプライス部7をコイルバネ27を介して前方に弾性的に付勢する。円筒部分10aと反対側の後端側に、後述の可動ガイド21の被覆付光ファイバ誘導部24を収容するコ字形枠部10cで囲まれた空間10c’を持つ。コ字形枠部10cの両側壁10dの内面に可動ガイド21を案内する溝10eを持つ。10fはクサビ部材15の差込片15aを通過させる孔である。
ストップリング10の上部には、外被把持部材11が脱落しないように拘束する前記レバー12がヒンジ軸12aにより回転可能に取り付けられている。
【0030】
ストップリング10内には、図9〜図11に示す可動ガイド21の円筒部分22が挿入されている。図9は可動ガイド21の斜視図、図10(a)は可動ガイドの正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(a)の左側面図、(e)は(a)の右側面図である。図11は図10(b)のE−E断面図である。
可動ガイド21は、詳細は後述するが、図14、図17に示した被覆除去部材20に被覆付き光ファイバ5を押し当ててその被覆5aを除去する被覆除去中に、前記押し当て力で被覆付き光ファイバ5が座屈しない程度の光ファイバ長さ方向の許容隙間mを確保するための被覆付光ファイバ保持構造の一部をなす部材である。前記許容隙間mは2.1mm程度とされている。
この可動ガイド21は、円筒外周面を持つ筒状部22を備えて、この筒状部22が前記メカニカルスプライス部7に被せられるとともに、筒状部22の円筒外周面がストップリング10内に摺動可能に嵌装されており、メカニカルスプライス部7に対して前後方向に移動可能である。
この可動ガイド21は、前記筒状部22の後端に、被覆付光ファイバ5を導入する概略角形の被覆付光ファイバ誘導部24を一体に備えている。この被覆付光ファイバ誘導部24は、図11にも示すように、円錐面状の案内面24aの先端に被覆付光ファイバ径より僅かに大きな内径の被覆付光ファイバ挿通孔24bを備えている。
前記筒状部22の筒状中空部23は被覆付光ファイバ誘導部24の内部まで延出しており、被覆付光ファイバ誘導部24の突き当り部に垂直内壁24cを有する。この垂直内壁24cが後述するように、開放ガイド31の後端面を押す。外被把持部材11で押されて前進する可動ガイド21はその垂直内壁24cがメカニカルスプライス部7の後端面に当たって止まる。この時点では、メカニカルスプライス部7のベース部30の設けた突起30fが、可動ガイド21に設けた係止孔22bに入り込んでいるので、可動ガイド21はその位置から後退しない。
なお、被覆付光ファイバ誘導部24の円錐状の案内面24a及び被覆付光ファイバ挿通孔24bは、その一部を可動片25の案内面25a及び部分孔面25bが形成している。図9ではこの可動片25を外した状態で示している。
なお、被覆付光ファイバ誘導部24の側面には、外被把持部材11の後述するアーム50が通過する溝24dが形成されている。22aはクサビ部材15の差込片15aを通過させる孔である。なお、その他の孔(開口)もある。
なお、図10に示したロックレバー35は、詳細説明は省略するが、可動ガイド21を位置決めされた所定の位置にセットしておき、光ケーブル4の外被を把持した外被把持部材11を前進させて被覆付光ファイバ5を前進させる際に、外被把持部材11が適切なタイミングで可動ガイド21を前方に移動させるように、その適切なタイミングまで可動ガイド21の前進を拘束するためのロック機能を持つ。
【0031】
図12は上記光コネクタ1におけるメカニカルスプライス部7の詳細を示すもので、(a)はメカニカルスプライス部7のベース部30の正面図、(b)は同平面図、(c)は(a)のF−F断面図、(d)は(b)の右側面図、(e)は(a)のG−G断面図である。図13は図12のベース部に取り付けられる開放ガイド31を示すもので、(a)は底面図(図12(c)に対応する図)、(b)は(a)を下面から見た図、(d)は(a)の2倍に拡大した左側面図である。
メカニカルスプライス部7は、ベース部30とこのベース部30に被せられる蓋部33と前記ベース部30と蓋部33とを弾性的にクランプするC形板バネとを備えるとともに、ベース部30の蓋部33との合わせ面10cに、内蔵光ファイバ2と挿入光ファイバ6とを収容する調心溝32a及び前記被覆付き光ファイバ5の部分を収容する被覆部収容溝32bを一直線上に備えた構造である。また、被覆部収容溝32bと調心溝32aとの間に、被覆除去部材20を装着する凹所30aを設けている。30b(30b、30b、30b、30b)は、クサビ部材15が差し込まれるクサビ差込部である。このクサビ差込部30bの部分以外の部分はベース部30の合せ面30cより隆起した隆起部30dとなっている。また、ベース部30の合せ面30cに、開放ガイド31を斜めに移動させる作用をする斜め凸条30eを設けている。
【0032】
開放ガイド31は、図13に示すように、概ね長方形断面の角部に被覆付光ファイバ5を把持するための円弧部と直線部とを持つ切欠き31aを有し、また、ベース部30の合せ面30cの斜め凸条30eに嵌合する斜め凹溝31bを持つ。
図14は 図12(a)のメカニカルスプライス部7にフェルール部3を一体化したメカニカルスプライス部一体化フェルール部8のベース部30に蓋33、開放ガイド31、被覆除去部材20を装着した状態をクサビ部材15ととも簡略化して示す図である。また、可動ガイド21を2点鎖線で示す。
【0033】
図15(a)は図12(d)を拡大した図、(b)は(a)に開放ガイド31及び蓋部33を装着した状態で示した図である。
【0034】
被覆付光ファイバの被覆を除去する被覆除去部材20は、図17、図18に示すように、厚みの薄い直方体の前方寄りの位置に図示例では貫通の空所40が形成された樹脂一体成形品であり、被覆付光ファイバ5を案内する被覆付光ファイバ挿通孔42を有する被覆付光ファイバ挿入側部分44と、前記被覆付光ファイバ挿通孔42の前方に設けられ、被覆付光ファイバ挿通孔42と同軸の裸ファイバ挿通孔41を有するとともにその被覆付光ファイバ挿通孔42側の端部に被覆付光ファイバ5の被覆を除去するための筒状刃43aが形成された被覆除去作用部43を持つ被覆除去側部分45とを備えている。
前記被覆付光ファイバ挿通孔42の内径Dは被覆付光ファイバ5の被覆部外径とほぼ同一内径であり、かつ前記裸ファイバ挿通孔41の内径dは裸ファイバ6の外径とほぼ同一内径である。なお、被覆付光ファイバ挿通孔42は被覆付光ファイバ5の被覆部外径とほぼ同一内径Dの部分の入口側の部分が入口側に向かったテーパ状に拡がっている。
この被覆除去作用部43の先端部(すなわち筒状刃)43aに、被覆付光ファイバ挿通孔42を通した被覆付光ファイバ5を押し当てることで、被覆付光ファイバ5の被覆を裸ファイバから剥がすように除去する。
被覆5aは、例えば円周方向の2、3箇所で光ファイバ長さ方向に裂けるなどして、裸ファイバ6から除去される。図17(b)に示すように、除去される被覆(被覆屑)5a’は、被覆付き光ファイバ5の被覆5aから取り去られるのでなく、根元の部分で被覆付き光ファイバ5の被覆5aに繋がった状態で裸ファイバ6から剥される。
【0035】
図18に被覆除去部材20の各部の寸法を示す。被覆除去部材20の幅W=約2.0mm、長さL=約3.3mm、厚みT=約1.0mm、被覆除去作用部(円錐体状部)43の高さh=約0.3mm、裸ファイバ挿通孔41の長さm=約1mm、空所40の幅w=約0.7mmなどである。
このような各部の寸法のなかで、被覆付光ファイバ挿通孔42と裸ファイバ挿通孔41との間の隙間寸法をaは0.1〜0.3mmとするのが適切である。
前記隙間aが長いと被覆付光ファイバが座屈して被覆を除去することができなくなる。また、隙間aが短すぎると、実質的に被覆の剛性が高くなるので、被覆除去部材20が樹脂成形品であり刃の鋭さに限界があることで、被覆が破れずに裸ファイバに沿って波付けパイプのような状態のまま滑ってしまう恐れがある。しかし、0.1〜0.3mmという適切な隙間寸法aとすると、そのような現象を起こさずに、スムーズに被覆を除去することができ、被覆付光ファイバの被覆を除去する機能を有効に果たすことが可能となる。
【0036】
被覆除去部材20の被覆除去作用部43は、空所40の前方壁面40aから被覆付光ファイバ挿通孔42側に突出する錐体状をなしており、その先端部では、裸ファイバ挿通孔41の内面に対して厚みが極めて薄くされて、前記の筒状刃43aとなっている。すなわち、裸ファイバ挿通孔41の入口側(後端側)に向かって先細りとなって孔先端に前記筒状刃43aが形成されている。空所40の前方壁面40aから突出する錐体状の部分、すなわちは錐体状部43が覆除去作用部である。
【0037】
図19に被覆除去作用部である前記錐体状部43の側面の種々の態様を示す。
図17、図18、及び図19(a)、(b)の錐体状部43は円錐体状部である。
この錐体状部43の側面のテーパ角度θは、20°〜40°とするのが適切である。図19(a)はテーパ角θ=40°、図19(b)はテーパ角θ=20°で示している。
錐体状部43の側面のテーパ角度が10°程度以下であれば、筒状刃43aの刃先が薄くなり過ぎて、強度が弱くなり破損し易くなり、一方、45°以上であれば、筒状刃43aの刃先の切れ味が鈍って、被覆除去する際に必要な押込み力(被覆除去力)が増大する。しかし、錐体状部43の側面のテーパ角度θを20°〜40°の範囲にすると、強度を確保しながら、被覆除去する際に必要な押込み力を低減させることができる。
【0038】
図19(c)に示した錐体状部43は、先端に向かって先細りの円錐体状部の側面を凹湾曲させた形状としている。このように錐体状部43の側面を凹湾曲面にすると、筒状刃43aの刃先では薄くしても刃先から離れるにつれて厚くなる。したがって、切れ味と強度とを兼ね備えた筒状刃を得ることができる。図示例では先端部でのテーパ角θが20°である。
また、錐体状部43の側面が凹湾曲していることで、筒状刃43aの刃先で切り込んだ筒状の被覆を凹湾曲の側面に沿って押し広げる作用が大となり、筒状の被覆に亀裂が入り易くなり、被覆屑が複数に裂かれ易くなるので、被覆屑を裸ファイバから剥がす作用が効果的に行われる。すなわち、被覆が裸ファイバに沿って波付けパイプのような状態のまま滑ってしまうことを防止する効果がある。これにより被覆除去性能が向上する。
また、被覆が複数に裂かれて複数本に分解された被覆屑となり易いので、被覆屑を収納し易くなる。
【0039】
図19(d)の錐体状部43は四角錐体状である。このように錐体状部43を四角錐状などの角錐体状にすると、角錐の稜線のエッジ部で被覆が複数に裂かれ易くなる。
図19(e)の錐体状部43は四角錐体状でかつ側面を凹湾曲させている。また、図19(f)の錐体状部43は三角錐体状でかつ側面を凹湾曲させている。このような形状にすると、稜線のエッジ部による被覆の引裂き効果が向上し、被覆が早期に複数に分解され易くなる。
【0040】
図18について述べたように、被覆除去部材20は厚みT=約1.0mmの薄い直方体状をなし、前方寄りに貫通の空所40を有し、厚みTの中間高さ位置における空所40の前方側に裸ファイバ挿通孔41、後方側に被覆付光ファイバ挿通孔42を有している。すなわち、裸ファイバ挿通孔41と被覆付光ファイバ挿通孔42との間に形成される空間は、被覆除去部材20の裸ファイバ挿通孔芯を挟む厚み方向の両側の隙間寸法nがそれぞれ0.5mmである。また、被覆除去部材20の裸ファイバ挿通孔芯を挟む幅方向の両側の隙間寸法nもそれぞれ0.5mmである。
この隙間寸法nは実施例では0.5mmとしているが、それ以上(0.5mm以上)であることが望ましい。すなわち、被覆除去部材20における被覆付光ファイバ挿通孔42と裸ファイバ挿通孔41との間に形成される空間は、裸ファイバ挿通孔芯と直交する二方向(厚み方向と幅方向)における、裸ファイバ挿通孔41の半径方向両側にいずれも0.5mm以上の隙間を形成することが望ましい。なお、隙間寸法nの機能上の上限はないが、被覆除去部材20はメカニカルスプライス部7のベース部30にコンパクトに装着する必要があるので、その面からの実際上の上限はある。
被覆付光ファイバ挿通孔42と裸ファイバ挿通孔41との間に形成される空間が、被覆除去部材20の厚み方向の両側にそれぞれ0.5mm以上の隙間nを形成する空間であれば、被覆屑を収納するスペースを確保することができ、これにより、被覆除去長さ(ストリップ長)を長くすることができる。この実施例ではストリップ長として4mmを想定している。なお、図12(a)、(c)に示したベース部30には、被覆屑を収納するための凹所30fを設けている。
【0041】
図20は裸ファイバ挿通孔の径についての変形例を示す。
この被覆除去部材120の裸ファイバ挿通孔141は、裸ファイバ外径とほぼ同一内径である部分141aの前後(出口側及び入口側)がテーパ状に広がるテーパ孔141b、14cとなっている。出口側のテーパ孔を141b、入口側のテーパ孔を14cで示す。
例えば、裸ファイバ外径と同一内径部分141aの長さSaを0.1mm、出口側のテーパ孔141bの長さSbを0.7mm、入口側のテーパ孔14cの長さScを0.2mmとすることができる(なお、図ではその比率では描いていない)。
このように、裸ファイバ挿通孔141の裸ファイバ外径とほぼ同一内径である部分14aの前方及び後方に、それぞれ前方又は後方にテーパ状に広がるテーパ孔141b、14cを設けると、被覆を除去された裸ファイバ6の先端の外周が裸ファイバ挿通孔141の内壁にぶつかる(接触する)ことが少なくなる(ぶつかる確率が小さくなる)。
すなわち、被覆を除去した裸光ファイバ6の外径と同一の内径部分が長ければ長いほど、被覆を除去した裸ファイバ6が裸ファイバ挿通孔の内壁にぶつかり易くなるが、実施例のように裸ファイバの外径と同一内径の部分141aを裸ファイバ挿通孔141の一部のみとすることで、ぶつかる確率およびぶつかった場合の距離を短くできる。また、短いとゴミなどの影響を受けることが少なくなる。また、裸ファイバ挿通孔141に挿入する際に必要な力も小さくすむ。
また、裸ファイバ挿通孔141の出口側(メカニカルスプライス部調心溝側)をテーパ状に広げておく(テーパ孔141b)ことで、被覆を除去した裸光ファイバの外径と同一の内径部分141aと調心溝(図4、図12、図14に示した調心溝32a)との軸ずれによる裸ファイバ断線(出口孔縁部(エッジ)pによる断線)の発生を抑制することができる。
この場合、被覆除去作用部43の裸ファイバ挿通孔141における、裸ファイバ外径と同一内径の部分141aの長さは、短すぎると調心機能を損なうので、0.05mm〜0.5mmとするのが適切である。
なお、裸ファイバ挿通孔141の中間部141aより出口側部分は、テーパ孔141bに代えて、中間部141aの内径より大径の均等内径孔としてもよい。
【0042】
図21は裸ファイバ挿通孔の径についての他の変形例を示す。
この被覆除去部材120’の裸ファイバ挿通孔141’も、裸ファイバ外径とほぼ同一内径の部分141a’の前後がテーパ状に広がるテーパ孔141b’、14c’となっているが、後方側のテーパ孔14c’は、入口側に設けた裸ファイバ外径より大径の均一内径の孔141d’に続く部分として形成している。
この場合、例えば、裸ファイバ外径と同一内径部分141a’の長さSaを0.1mm、出口側のテーパ孔141b’の長さSbを0.2mm、入口側のテーパ孔141c’の長さScを0.1mm、大径の均一内径孔141d’の長さを0.6mmとすることができる。
この実施例では、出口側のテーパ孔141b’が短く、裸ファイバ外径と同一内径部分141a’が前方の調心溝32aに接近しているので、裸光ファイバ外径と同一内径部分141a’と調心溝32aとの間の軸ずれを防止し易い。
【0043】
図22に図17、図18に示した被覆除去部材20を樹脂一体成形する金型の一例を簡略化して示す。
この金型70で被覆除去部材20の被覆付光ファイバ挿入側部分44と被覆除去側部分45とを樹脂一体成形する場合、被覆除去部材20の外形に合わせたキャビティを形成する上型71と下型72との間に、被覆付光ファイバ挿通孔42の部分と裸ファイバ挿通孔41の部分とを形成する中子として1本のコアピン73を配置する。被覆除去部材20の空所40に対応する部分には、上型71及び下型72の底面からそれぞれ隆起する、空所40の輪郭に対応させた隆起部71a、72aを設ける。
このように、被覆付光ファイバ挿通孔42の部分と裸ファイバ挿通孔41の部分とを形成する中子として1本のコアピン73を用いた金型70で樹脂一体成形すると、被覆付光ファイバ挿入側部分44の被覆付光ファイバ挿通孔42と被覆除去側部分45の裸ファイバ挿通孔41との両孔芯を高精度に一致させることができ、被覆除去をスムーズに行うことができ、被覆除去性能を高めることができる。
この被覆除去部材20をメカニカルスプライス部に装着する際に、被覆付光ファイバ挿入側部分及び被覆除去作用部分とについてそれぞれを調心して固定する必要がないので、作業性がよく、また高い調心精度を確保できる。
また、樹脂一体成形品であるから、量産可能であり、コストを低減できる。
樹脂材料としては、熱膨張係数が小さく、強度の高く、また、流動性が高く樹脂成形時に流動性が高く寸法精度を出し易い材料がよいが、例えばPPS(ポリフェニレンスルフィド)、LCP(液晶ポリマー)などを用いることができる。
【0044】
図16は前記外被把持部材11の蓋体を開いた状態の斜視図である。
この外被把持部材11は、把持部材本体51とこの把持部材本体51にヒンジ部52を介して開閉可能に取り付けられてた蓋体53とを備え、前記把持部材本体51の前方側の左右両側に、可動ガイド21に係合させるための係合爪50aを設けたアーム50を設けている。
前記把持部材本体51は光ケーブル4の外被部分を把持する外被把持部分55と被覆付光ファイバ5の被覆部を把持する被覆把持部分56とを一体に備え、また蓋体53も光ケーブル4の外被部分を把持する外被把持部分57と被覆付光ファイバ5の被覆部を把持する被覆把持部分58とを一体に備えている。すなわち、光ケーブル4の外被部分と被覆付き光ファイバ5の被覆部分とが一体部材で把持される。
把持部材本体51の外被把持部分55は、実施例では概ね断面長方形の外被を持つドロップケーブルである光ケーブル4の外径に合せた深いコ字形枠部61を有し、このコ字形枠部61の左右側壁62の内面に断面三角形の縦長の突起62aを設け、底部に小突起を設けている。
蓋体53の外被把持部分57は、把持部材本体51のコ字形枠部61に被せられる天井部65と、コ字形枠部61に設けた係止用突起61aに係止される係止孔66aを持つ係止部66とからなり、直角状をなしている。
蓋体53の前記天井部65の内側面に円錐状突起65aを設けている。
把持部材本体51側の被覆把持部分56は、その上面に、被覆付光ファイバ5を収容する図示例ではV溝である位置決め溝67aを有している。
なお、被覆除去部材を成形する金型は必ずしも1本のコアピンによる金型に限定されない。
また、成形材料は樹脂を用いるのが好適であるが、ジルコニアなどのセラミックを用いることも考えられる。
【0045】
上記のメカニカルスプライス型現場組立光コネクタ1を組み立てる際の作業手順及び動作について説明する。
(1)光ケーブル4の外被4aを例えば5cmなどの適宜の長さだけ削除して被覆付き光ファイバ5を露出させる。
(2)次いで、光ケーブル5の外被部分を、蓋体53を開けた外被把持部材11のコ字形枠部61内に収容し、蓋体53を閉じて光ケーブル4の外被を把持した後、被覆付き光ファイバ5を光ファイバ用カッターで正確に所定の長さで切断する。
(3)メカニカルスプライス部7のベース部30にC形板バネで弾性的に装着されている蓋33を、クサビ部材15の差込片15aをメカニカルスプライス部7のクサビ差込部30bに差し込んで開いておく。
(4)この段階で可動ガイド21は、ロックレバー35で位置決めされた所定の位置にセットされており、前に進まない状態になっている。
(5)外被把持部材11で外被を把持された光ケーブル4の被覆付き光ファイバ5を可動ガイド21内に通しメカニカルスプライス部7の被覆部収容溝32bに挿入し、外被把持部材11を前進させて被覆部収容溝32bに沿って送り込む。その際、光コネクタ1の後端部に取り付けた押し込み補助治具14に載せて外被把持部材11を前進させる。
(6)外被把持部材11を、さらに前方に押し込むと、被覆付き光ファイバ5の先端面が被覆除去部材20の被覆除去作用部43の先端面部(円筒状刃)43aに当たり(この当たった時点をA時点と呼ぶ)、引き続き被覆付き光ファイバ5が押し込まれることで、被覆除去作用部43の円筒状刃43aで被覆5aが裸ファイバから剥がされつつ、露出した裸ファイバ6が裸ファイバ挿通孔41を通過してメカニカルスプライス部7の裸ファイバ用の調心溝32a内を前進する。この頃に(この前進の段階で)外被把持部材11が可動ガイド21に当たり(この当たった時点をB時点と呼ぶ)
、外被把持部材11と可動ガイド21とが一体となって動く。
(7)なお、前記の外被把持部材11を押し込む過程における前記A時点(被覆付き光ファイバ5の先端面が被覆除去部材20の被覆除去作用部43の先端面43aに当たった時点)からB時点(外被把持部材11が可動ガイド21に当たった時点)の間に、外被把持部材11のアーム50の先端がロックレバー35を押してロックレバー35を可動ガイド21の側面から離間させる動作があり、この動作で、可動ガイド21の前進を規制していたロックレバー35のロックが解除され、可動ガイド21が前進できる状態となる。
(8)外被把持部材11をさらに前方に押し込むと、外被把持部材11と一体に前進する可動ガイド21の被覆付光ファイバ誘導部24の垂直内壁24cがメカニカルスプライス部7の開放ガイド31の後端面に当たり(接触し)、開放ガイドが作動する状態となる。
(10)外被把持部材11をさらに前方に押し込むと、被覆付き光ファイバ5の被覆除去(剥がし)がさらに進行しつつ裸ファイバ(挿入光ファイバ)6がメカニカルスプライス部7の調心溝32a内を前進して内蔵光ファイバ2に突き当たり、かつ(厳密には突き当たった次の瞬間に)所定の突き合わせ圧力が発生する。被覆除去時の押込み力は5N以下とする。
(11)外被把持部材11・可動ガイド21をさらに押し込むと、可動ガイド21で押された開放ガイド31が、その斜め凹溝31bが嵌合しているメカニカルスプライス部7のベース部30の斜め凸条30eに沿って斜めに前進して断面中心側から外方に離れることで、被覆付き光ファイバ5の把持が開放される。これにより、断面中心側から外方に移動した開放ガイド31が存在していた空間の部分がたわみ空間となって、その空間において被覆付き光ファイバ5にたわみが生じる。すなわち、挿入ファイバ6の内蔵光ファイバ2に対する突き合わせ圧力が被覆付き光ファイバ5のたわみに変換される。このたわみで良好な光接続がなされる適性な突き合わせ圧力が確保される。
(12)この状態でクサビ部材15を抜き取るとC形板バネの挟持力が作用し、メカニカルスプライス部7のベース部30と蓋部33とで内蔵光ファイバ2と裸ファイバである挿入光ファイバ6と被覆付き光ファイバ5とを把持する。
(13)次いで、ストップリング10に取り付けたレバー12を、光ケーブル4の外被を把持している外被把持部材11に被せるように倒して、外被把持部材11が脱落しないように拘束する。
以上でメカニカルスプライス型現場組立光コネクタの組立が完了する。
【符号の説明】
【0046】
1 メカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ(光コネクタ)
2 内蔵光ファイバ(裸ファイバ)
3 フェルール部
4 光ケーブル
4a 外被(外被部分)
5 被覆付光ファイバ
5a 被覆(被覆部分)
6 挿入光ファイバ(裸ファイバ)
7 メカニカルスプライス部
8 メカニカルスプライス部一体フェルール部
9 プラグフレーム
10 ストップリング
11 外被把持部材
12 レバー
13 カバー
20、120、120’ 被覆除去部材
21 可動ガイド
30 ベース部
33 蓋部
32a 調心溝
32b 被覆部収容溝
30a (被覆除去部材を配置する)凹所
31 開放ガイド
40 空所
41、141、141’ 裸ファイバ挿通孔
141a、141a’ (裸ファイバ挿通孔の)裸ファイバ径と同一内径の部分
141b、141b’ (裸ファイバ挿通孔の出口側の)テーパ状の部分
141c、141c’ (裸ファイバ挿通孔の入口側の)テーパ状の部分
42 被覆付光ファイバ挿通孔
43 被覆除去作用部(錐体状部)
44 被覆付光ファイバ挿入側部分
45 被覆除去側部分
51 把持部材本体
53 蓋体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵光ファイバを内蔵したフェルール部と、前記フェルール部の後部に取り付けられて、前記内蔵光ファイバと外部から挿入される光ケーブルの外被を除去した被覆付き光ファイバの被覆を除去した挿入光ファイバとを突き合わせ接続するメカニカルスプライス部と、メカニカルスプライス部における前記内蔵光ファイバと挿入光ファイバとの突合せ部より後方側に設けられて前記被覆付き光ファイバの被覆を除去する被覆除去部とを備え、
前記被覆除去部を構成する被覆除去部材は、
被覆付光ファイバを案内する被覆付光ファイバ挿通孔を有する被覆付光ファイバ挿入側部分と、
前記被覆付光ファイバ挿通孔の前方に設けられ、被覆付光ファイバ挿通孔と同軸の裸ファイバ挿通孔を有するとともにその被覆付光ファイバ挿通孔側の端部に被覆付光ファイバの被覆を除去するための筒状刃が形成された被覆除去作用部を持つ被覆除去側部分とを備え、
前記被覆付光ファイバ挿通孔の内径が被覆付光ファイバの被覆部外径とほぼ同一内径であり、かつ前記裸ファイバ挿通孔の中間部分の内径が前記裸ファイバの外径とほぼ同一内径であり、
前記裸ファイバ挿通孔の裸ファイバ外径とほぼ同一内径である中間部分より入口側がテーパ状に広がるテーパ孔となっており、出口側の内径が前記中間部分の内径より大となっていることを特徴とするメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項2】
前記裸ファイバ挿通孔における、出口側の内径が前記中間部分の内径より大となっている部分が出口側に広がるテーパ孔となっていることを特徴とする請求項1記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項3】
前記被覆除去側部分の裸ファイバ挿通孔における、裸ファイバ外径とほぼ同一内径である部分の長さが0.05mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項4】
前記被覆除去部材を、その被覆付光ファイバ挿入側部分と被覆除去側部分とを成形材料にて一体成形したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項5】
前記被覆除去部材を、その被覆付光ファイバ挿入側部分と被覆除去側部分とを樹脂にて一体成形したことを特徴とする請求項4記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項6】
前記被覆除去部材は、被覆付光ファイバ挿通孔の部分と裸ファイバ挿通孔の部分とを形成する中子として1本のコアピンを用いた金型で一体成形したことを特徴とする請求項4又は5記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項7】
前記被覆付光ファイバ挿通孔と裸ファイバ挿通孔との間の隙間寸法が0.1〜0.3mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項8】
前記被覆除去部材の被覆除去作用部は、裸ファイバ挿通孔の入口側に向かって先細りとなって孔先端に前記筒状刃が形成される錐体状部を有し、この錐体状部の側面のテーパ角度が20°〜40°であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項9】
前記被覆除去部材の被覆除去作用部は、裸ファイバ挿通孔の入口側に向かって凹湾曲状をなして先細りとなって孔先端に前記筒状刃が形成される凹湾曲錐体状部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項10】
前記被覆除去部材における被覆付光ファイバ挿通孔と裸ファイバ挿通孔との間に形成される空間が、裸ファイバ挿通孔芯と直交する二方向における、裸ファイバ挿通孔の半径方向両側にいずれも0.5mm以上の隙間を形成していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−15744(P2013−15744A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149750(P2011−149750)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591044647)株式会社 スズキ技研 (36)
【Fターム(参考)】