説明

光スイッチ

【課題】大規模な光スイッチを構成する光学系において、光入出力部の配列規模拡大に伴う光結合損失の増加を抑制し、低損失な光スイッチを実現する。
【解決手段】光信号を光スイッチ内部に入力する複数の光入力ポートを有する光入力部2と、前記光信号を出力する複数の光出力ポートを有する光出力部3とを有する。光入力ポートから入力された光信号を偏向させ、選択された光出力ポートに出力する光スイッチ1である。前記光入力ポートおよび光出力ポートは、それぞれ複数の支持部材(整列基板27〜30)に二次元的に配列されて支持される。前記光入力部2および光出力部3は、それぞれ前記複数の支持部材の集合体によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信で用いられる光スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
WWW(World Wide Web)やビデオ等のストリームデータに代表されるデータトラヒックの急激な増大により、インターネットを構成する基幹ネットワークの大容量化が求められている。ネットワークの伝送路部分には、10Gbit/sを越える高速大容量光通信装置や、同一光ファイバ上に波長の異なる光信号を多重化することでさらなる大容量化を実現したWDM(Wavelength Division Multiplexing)光通信装置が導入されている。
【0003】
一方、ネットワークのノード部分においては、光信号を一旦電気信号に変換し、従来の電気回路を用いたスイッチで方路の切り替えを行った後、再び光信号に変換してネットワークに戻す方法を採ることが一般的である。ここに示した電気信号から光信号に変換する装置、あるいは光信号から電気信号に変換する装置のコストや消費電力は、信号帯域の向上に伴って大幅に上昇することが指摘されている。特に、信号速度が40Gbit/sに到達する場合には、光信号を光のままスイッチングする光スイッチを用いることが有効であるとされている。光スイッチの中でも、光ビームを用いた高密度立体配線を用いるフリースペース型光スイッチは、1000ポートを越える大規模光スイッチをコンパクトに構成することができるため、光クロスコネクト装置を構成するスイッチ部への導入が見込まれる。
【0004】
この種のフリースペース型光スイッチとしては、例えば非特許文献1に記載されているものがある。非特許文献1に開示されているフリースペース型光スイッチを図12によって説明する。図12は、フリースペース型光スイッチの第1の従来例を示す側面図である。図12に示す光スイッチ100は、入力光ファイバアレイ101と、コリメート用マイクロレンズアレイ102と、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103と、出力側マイクロ可動ミラーアレイ104と、集光用マイクロレンズアレイ105と、出力光ファイバアレイ106とから構成されている。
【0005】
光ファイバアレイ101,106は、それぞれファイバ整列用部材(図示せず)を用いることで、光ファイバ101a,106aがある一定の間隔をおいて二次元的に整列配置されたものである。マイクロレンズアレイ102,105は、それぞれ光ファイバアレイ101,106と同様に、マイクロレンズ102a,105aがある一定の間隔をおいて二次元的に整列配置されたものである。また、マイクロ可動ミラーアレイ103,104は、それぞれ光ファイバアレイ101,106と同様に、マイクロ可動ミラー103a,104aがある一定の間隔をあけて二次元的に整列配置されたものである。なお、図12において、各部品は側面図のため一次元の配列として表示されている。図12において、矢印は光ビーム107の進行方向を示している。
【0006】
入力光ファイバアレイ101を構成する個々の入力光ファイバ101aと、コリメート用マイクロレンズアレイ102を構成する個々のマイクロレンズ102aとは1対1で対応し、各々が光ファイバ101aからの出射光を光ビーム107に変換する光コリメータとして機能する。これと同様に、出力光ファイバアレイ106を構成する個々の出力光ファイバ106aと、集光用マイクロレンズアレイ105を構成する個々のマイクロレンズ105aとは1対1で対応し、各々がマイクロレンズ105aに到達した光ビーム107を光ファイバ106aに集光する光コリメータとして機能する。各々の光コリメータが形成する光ビーム107のビームウェストは、入出力マイクロ可動ミラーアレイ103,104の中間に配置されている。本光スイッチはこのビームウェスト位置を中心とした点対称の構成であり、光学的に可逆であるため、光ビームの進行方向を逆にしても光スイッチの機能として何ら変わるところなく、光信号の方路切換が成立する。
【0007】
マイクロ可動ミラー103a,104aは、マイクロマシン技術を用いて半導体基板上に形成された、直交する2つの回転軸を有する能動素子である。このマイクロ可動ミラー103a,104aにおいては、前記2つの回転軸を中心としてミラー面を任意の方向に回転させ、その傾き角度θを調整することが可能である。入力光ファイバアレイ101を構成する個々の入力光ファイバ101aと、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103を構成する個々のマイクロ可動ミラー103aとは1対1で対応している。一方、出力光ファイバアレイ106を構成する個々の出力光ファイバ106aと、出力側マイクロ可動ミラーアレイ104を構成する個々のマイクロ可動ミラー104aとは1対1で対応している。この構成により、二次元的に配列された任意の入力光ファイバ101aと出力光ファイバ106a間を選択的に接続することができる。
【0008】
続いて、第1の従来例のフリースペース型光スイッチ100における光信号の方路切換方法について説明する。光スイッチ100の光入力ポートである入力光ファイバアレイ101のうち、特定の入力光ファイバ101aに光信号が入力され、対応するマイクロレンズ102aにより光ビーム107に変換される。この光ビーム107は、他のポートの光ビームと干渉することなく、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103上の前記入力光ファイバ101aと一意に対応するマイクロ可動ミラー103aに到達する。
【0009】
前記マイクロ可動ミラー103aは、直交する2つの回転軸を中心としてミラー面の回転角度θ1を変化させることにより、ミラー面で反射した光ビーム107の進行方向を偏向させ、出力側マイクロ可動ミラーアレイ104上の特定のマイクロ可動ミラー104aを選択する。前記マイクロ可動ミラー104a上に到達した光ビーム107は、その入射角度に応じて出力光ファイバ106aへ垂直入射するようマイクロ可動ミラー104aの回転角度θ2を調整することにより、マイクロレンズ105aを介して対応する出力光ファイバ106aに一意に光結合する。これにより、特定の光出力ポートへ光信号を出力することができる。図12中の実線は、入力側マイクロ可動ミラー103aの回転角度θが0[rad]の場合の光ビーム107の進行方向を示し、破線は、回転角度θがθ1[rad]の場合の光ビーム107の進行方向をそれぞれ示している。
【0010】
上述した第1の従来例において、マイクロ可動ミラーアレイ103,104に要求される回転角度は、対応する入出力光ファイバ101a,106aの位置により変化する。具体的には、入力光ファイバアレイ101の上端又は下端に位置する入力ポートから出射した光ビーム107の方路制御に必要なマイクロ可動ミラーの最大回転角度は、入力光ファイバアレイ101の中央部に位置する入力ポートから出射した光ビーム107の方路制御に必要なマイクロ可動ミラーの最大回転角度の概ね2倍となる。
【0011】
以上のように、第1の従来例に示した構成のフリースペース型光スイッチ100においては、入出力マイクロ可動ミラーアレイ103,106に要求される回転角度が、対応する入出力光ファイバ101a,106aの位置により変化する。このため、特に入出力光ファイバアレイ101,106のコーナー部に位置する入出力光ファイバ101a,106aに対応する入出力マイクロ可動ミラー103a,106aについて、回転動作範囲に対する要求条件が高くなるという問題がある。他方で、光スイッチ100の光学系は、光入出力部すなわち光ファイバアレイ101,106およびマイクロレンズアレイ102,105から構成される光コリメータアレイと、光ビームの方路制御部すなわち入出力マイクロ可動ミラーアレイ103,104によって成り立つ簡易な構成であり、光部品の実装誤差に由来する過剰損失の抑制や光スイッチの小型化の点で有利である。
【0012】
フリースペース型光スイッチとしては、図12に示すものの他に、例えば非特許文献2に記載されているものがある。この非特許文献2に開示されたフリースペース型光スイッチの第2の従来例を図13および図14を使用して説明する。なお、以降では、前述した第1の従来例の部材と同様な部材については、前述の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより重複する説明を省略する。
【0013】
図13および図14は、非特許文献2に記載されているフリースペース型光スイッチの第2の従来例を示す側面図である。図13および図14における光スイッチ110は、入力光ファイバアレイ101と、コリメート用マイクロレンズアレイ102と、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103と、出力側マイクロ可動ミラーアレイ104と、集光用マイクロレンズアレイ105と、出力光ファイバアレイ106および凹面ミラー111とから構成されている。図13および図14において、矢印は光ビーム112aの進行方向を示している。なお、図13において、各部品は側面図のため一次元の配列として表示されている。
【0014】
続いて、第2の従来例のフリースペース型光スイッチ110における光信号の方路切換方法について説明する。入力光ファイバアレイ101から出射した光信号は、コリメート用マイクロレンズアレイ102により光ビーム群112に変換され、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103に到達する。ここで、図13に示す通り、マイクロ可動ミラーアレイ103を構成する各ミラーのY軸(図13の紙面と直交する方向の軸)を中心とする回転角度θ1を0[rad]とする場合、光ビーム群112の全ての光ビームは、一定の出射角度α1[rad]の方向に進行する。その後、凹面ミラー111で反射された光ビーム群112の光ビームは、凹面ミラー111の焦点位置に集光する。
【0015】
ここで、出力側マイクロ可動ミラーアレイ104の中央部のマイクロ可動ミラー104aを凹面ミラー111の焦点位置に配置すると、凹面ミラー111で反射されたすべての光ビームは、出力側マイクロ可動ミラーアレイ104の中央部のマイクロ可動ミラー104aに到達する。図13中の実線112aは、入力光ファイバアレイ101の中央部に位置する入力光ファイバ101aから出射した光ビームを示している。この光ビーム112aは、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103の中央部のマイクロ可動ミラー103aで反射された後、凹面ミラー111の光軸中心において反射されて進行方向を変え、出力側マイクロ可動ミラーアレイ104の中央部のマイクロ可動ミラー104aで再び反射された後、集光用マイクロレンズアレイ105の中央部のマイクロレンズ105aにより集光され、出力光ファイバアレイ106の中央部の出力光ファイバ106aに光結合する。
【0016】
また、図14に示す通り、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103を構成する各マイクロ可動ミラー103aのY軸を中心とする回転角度θ1を+σ1[rad]とする場合、光ビーム群112の全ての光ビームは、一定の出射角度α2[rad]の方向に進行する。 その後、凹面ミラー111で反射された光ビーム群112の光ビームは、回転角度θ1が0[rad]の場合と同様に凹面ミラー111の焦点位置に集光するが、このときの集光位置は、出力側マイクロ可動ミラーアレイ104の中央部よりXshift だけシフトしている。シフト量Xshift は、凹面ミラー111の焦点距離fと凹面ミラー111に入射する光ビームの入射角度によって一意に定まり、凹面ミラー111における各収差の影響が無視できる場合には、以下の関係が成り立つ。
【0017】
Xshift =f・(α2−α1) ・・・(1)
σ1 =(α2−α1)/2 ・・・(2)
上記式(1)および式(2)より、出力側マイクロ可動ミラーアレイ104に到達する光ビームの位置は、入力光ファイバ101aの位置に依存することなく、凹面ミラー111の焦点距離fと入力側マイクロ可動ミラーアレイ103を構成するマイクロ可動ミラー103aの回転角度θ1によって決定される。一般に、式(1)に示した光ビームの入射角度と光ビームの到達位置との変換作用は「光学的フーリエ変換」と呼称されている。なお、この変換作用は、凸レンズや組み合わせレンズ等を用いても実現することが可能である(例えば、非特許文献3参照)。
【0018】
前記光学的フーリエ変換は、図13,10中のX−Z平面内のみではなく、Y−Z平面内にも適用可能である。この場合には、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103を構成する各マイクロ可動ミラー103aを、X軸を中心とする回転方向に動作させることにより、同様に光ビーム入射角度と光ビーム到達位置との変換作用が実現可能である。なお、本光スイッチはこの凹面ミラーの光軸に対して線対称の構成であり、光学的に可逆であるため、光ビームの進行方向を逆にしても光スイッチの機能として何ら変わるところなく光信号の方路切換が成立する。
以上説明したとおり、第2の従来例の形態によれば、凹面ミラー111に代表される光学的フーリエ変換光学素子の焦点位置に入力側マイクロ可動ミラーアレイ103および出力側マイクロ可動ミラーアレイ104を配置することにより、入力側マイクロ可動ミラー103aの回転角度に応じて一意に出力光ファイバ106aに対応する出力側マイクロ可動ミラー104aが選択されるため、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103の各マイクロ可動ミラー103aの回転動作範囲に対する要求条件が入出力光ファイバ101a,106aの位置に依存することなく等しくなる。
【0019】
この結果、第1の従来例に示した構成と比較して、特にコーナー部に位置する入出力光ファイバ101a,106aに対応するマイクロ可動ミラー103a,104aの最大回転角度を概ね1/2に軽減し、マイクロ可動ミラーアレイ103,104の回転動作範囲に対する要求条件を緩和することができる。他方で、第2の従来例の形態では、光学的フーリエ変換光学素子のそれぞれの焦点位置にコリメート用マイクロレンズアレイ102、および集光用マイクロレンズアレイ105が形成する光ビームのビームウェストを配置する必要があることから、第1の従来例と比較して光スイッチの小型化の点では不利である。また、光学的フーリエ変換光学素子が増えることで、部品の実装誤差等の累積による過剰損失が増加する可能性もある。このため、光スイッチを構成する際は、マイクロ可動ミラーの最大回転角度や光ビームのコリメート長、光学部品のレイアウト等を考慮し、第1の従来例と第2の従来例とのうちいずれの光学系の構成が適しているかを総合的に判断することになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】山本他,「3−D MEMS大規模光スイッチ」,信学技報,PS2002,2002年
【非特許文献2】M. Kozhevnikov,et al., “Compact 64×64 Micromechanical Optical Cross Connect”, IEEE Photonics Tecnology Letters, Vol.15, No.7, July 2003.
【非特許文献3】V. A. Aksyuk,et al., “238×238 Micromechanical Optical Cross Connect”, IEEE Photonics Tecnology Letters, Vol.15, No.4, April 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、これまで述べてきたフリースペース型光スイッチの従来例においては、光入出力ポート数が数百を越える大規模な光スイッチを構成するにあたり、次のような問題があった。
(1)先ず、光スイッチの入出力ポート数を拡大するのに伴い、光信号の入出力に用いる光ファイバアレイと、光ファイバアレイから入出力する光信号を光ビームに変換するマイクロレンズアレイ、ならびに光ビームを偏向するマイクロ可動ミラーアレイのそれぞれについて、配列規模を拡大する必要がある。
【0022】
これらのうち、特に光ファイバアレイは、半導体プロセスを用いて一括形成するマイクロ可動ミラーアレイや、半導体プロセスや成型技術を用いて一体形成することが可能なマイクロレンズアレイとは異なり、個々の光ファイバを整列させて実装する必要があることから、配列規模を拡大するほど配列誤差が累積しやすい。光ファイバアレイの配列誤差は、光ビームの進行方向に垂直な平面内における光ファイバとマイクロレンズの間の光軸ずれとなり、光ビームに光軸傾きを発生させる。
【0023】
このため、光ファイバアレイの配列規模を単に拡大すると、レンズ開口におけるケラレ損失や、マイクロ可動ミラーによるケラレ損失、出力側光ファイバに対する光ビームの角度ずれに由来する光結合損失が増加するという問題があった。さらに、前記光軸傾きを有する光ビームは、隣接するポートに対してクロストークを発生させ、光通話品質の劣化を引き起こすという問題があった。
加えて、光ファイバアレイの配列規模を拡大するほど、個々の光ファイバを整列させ実装する工程の難易度が高くなり、製造歩留まりが低下して製造コストが高くなるという問題があった。
【0024】
(2)また、光スイッチを構成する光学部品の配列規模が拡大すると、最も離れた入出力ポート間を接続する経路と、最も近接した入出力ポート間を接続する経路との間で、光ビームが伝搬する距離(以下、光路長と称する)の差が大きくなるという問題があった。この光路長差は、光ビームの進行方向に対する光軸ずれとなり、光結合損失のばらつきを増加させて、光受信器のダイナミックレンジに対する要求値を厳しくしてしまうという問題があった。
【0025】
(3)さらに、光スイッチを構成する光部品の配列規模が拡大すると、個々の光部品の累積配列誤差を抑制しても、光部品間を相対的に位置合わせすることが難しくなるという問題があった。例えば、入力光ファイバアレイ101およびコリメート用マイクロレンズアレイ102から構成される光コリメータアレイと、入力側マイクロ可動ミラーアレイ103との間で位置合わせを行う場合、光部品が二次元的に整列配置された面に垂直な軸について回転する方向のずれθrotが発生すると、そのずれ量がわずかであっても、配列の端部における相対的な位置ずれ量Δは次式の通り配列規模Nに応じて増大し、光コリメータから出射する光ビームがマイクロ可動ミラーの中心から外れてケラレ損失を増大させる。
【0026】
Δ=tan(θrot)×(N−1)×(光学部品の配列間隔)・・・(3)
また、このずれは隣接する光ポートへの漏光を発生させて光スイッチ性能を劣化させる要因にもなる。従って、フリースペース型光スイッチの入出力ポート数を拡大する場合、特に光ファイバアレイとコリメート用マイクロレンズアレイで構成される光コリメータアレイと、マイクロ可動ミラーアレイの間において、並進方向のみならず回転方向についても相対的な位置関係を高い精度で一致させることが重要となる。
【0027】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、大規模な光スイッチを構成する光学系において、光入出力部の配列規模拡大に伴う光結合損失の増加を抑制し、低損失な光スイッチを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的を達成するために、本発明に係る光スイッチは、光信号を光スイッチ内部に入力する複数の光入力ポートを有する光入力部と、前記光信号を出力する複数の光出力ポートを有する光出力部とを有し、前記光入力ポートから入力された光信号を偏向させ、選択された光出力ポートに出力する光スイッチにおいて、前記光入力ポートおよび光出力ポートは、それぞれ複数の支持部材に二次元的に配列されて支持されており、前記光入力部および光出力部は、それぞれ前記複数の支持部材の集合体によって形成されているものである。
【0029】
本発明は、前記発明において、前記光入力ポートおよび光出力ポートを光ファイバまたはファイバコリメータとしたものである。
本発明は、前記発明において、前記光入力部の前記集合体を構成する支持部材と、前記光出力部の前記集合体を構成する支持部材とは、光入力ポートと光出力ポートとの間の光路長の差が減少する位置に配置されているものである。
本発明は、前記発明において、前記光入力部と前記光出力部との間には、傾動可能な複数のマイクロミラーを用いて前記光入力部からの光信号を偏向させて前記光出力部に伝達するマイクロ可動ミラーアレイが設けられているものである。
【0030】
本発明は、前記発明において、前記マイクロ可動ミラーアレイは、前記光入力部からの光信号を偏向する入力側マイクロ可動ミラーアレイと、この入力側マイクロ可動ミラーアレイによって偏向された光信号を前記光出力部に向けて偏向する出力側マイクロ可動ミラーアレイとによって構成され、これらの入力側マイクロ可動ミラーアレイと出力側マイクロ可動ミラーアレイとの間には、前記入力側マイクロ可動ミラーアレイにより偏向された信号光の出射角度を前記出力側マイクロ可動ミラーアレイ上の到達位置に1対1で対応させるフーリエ変換光学素子が設けられているものである。
【0031】
本発明は、前記発明において、前記フーリエ変換光学素子を凹面ミラーとしたものである。
本発明は、前記発明において、前記凹面ミラーの反射面をトロイダル面としたものである。
【0032】
本発明は、前記発明において、前記光入力部および光出力部は、それぞれ独立した一対のフレームに装着され、前記一対のフレームは、少なくとも前記光入力部から光出力部に向けて光信号が伝搬する経路上に開口部を有し、かつ前記光入力部および光出力部が所定の位置関係を保って配置されるための位置決め手段を有しているものである。
【0033】
本発明は、前記発明において、前記光入力部および光出力部は、それぞれ独立した一対の支持構造体に装着され、前記光入力部を装着した支持構造体には所定の位置関係を保って前記入力側マイクロ可動ミラーアレイが装着され、前記光出力部を装着した支持構造体には所定の位置関係を保って前記出力側マイクロ可動ミラーアレイが装着され、前記一対の支持構造体は、少なくとも前記光入力部から光出力部に向けて光信号が伝搬する経路上に開口部を有し、前記一対の支持構造体の嵌合部、あるいは前記一対の支持構造体とこれを搭載するベースの間に、前記光入力部および光出力部が所定の位置関係を保って配置されるための第1の位置決め手段を有し、前記一対の支持構造体、あるいは前記一対の支持構造体を搭載するベースに、前記フーリエ変換光学素子が、前記入力側マイクロ可動ミラーアレイと出力側マイクロ可動ミラーアレイの間で所定の位置関係を保って配置されるための第2の位置決め手段を有しているものである。
【0034】
本発明は、前記発明において、前記入力側マイクロ可動ミラーアレイおよび出力側マイクロ可動ミラーアレイは、前記光入力部あるいは光出力部に対する相対位置を調整する調整機構を備えているものである。
【0035】
本発明は、前記発明において、前記光入力部および光出力部を形成する前記複数の支持部材の集合体は、前記複数の支持部材の相対位置を調整する調整機構を備えているものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、光入力部あるいは光出力部を1つの光ファイバアレイにより構成することなく、複数の(少なくとも2つ以上の)支持部材(例えば複数の光ファイバを二次元的に配列して支持した整列基板)の集合体を用いて構成することにより、個々の支持部材の配列規模を小さくし、配列誤差の累積を抑制することができる。この結果、本発明によれば、光入力ポートおよび光出力ポートにおける光ビームの進行方向と垂直な方向の位置の精度を向上させることができるから、光入出力部の配列規模が拡大された光スイッチを提供することができる。
光入力ポートおよび光出力ポートが光ファイバである場合は、光ファイバとレンズの間の光軸ずれを許容値内に収めて、光結合損失の増加を抑えることができる。また、光ファイバとコリメートレンズが予め一体化されたファイバコリメータによって光入力ポートと光出力ポートとを構成する場合は、光入力部と光出力部との間で光軸ずれが生じることを防ぐことができる。
【0037】
また、本発明においては、光入力ポートおよび光出力ポートをそれぞれ大型で単一の支持部材に支持させる場合と比較して、一つの支持部材当たりのポート数が減少することに伴って支持部材に各ポートの構成部材を支持させる組立工程の難易度が低くなる。このため、本発明によれば、光入力部と光出力部とをより安定した製造歩留まりで作製することが可能となり、製造コストを低く抑えることができる。
【0038】
さらに、前記光入力部あるいは光出力部を構成する際に、前記複数の光ファイバアレイ、もしくはファイバコリメータアレイを、光ビームの進行方向に対して所定のオフセットを与えて配置することにより、最も離れた入出力ポート間を接続する経路と、最も近接した入出力ポート間を接続する経路との間で生じる光路長差を低減し、光ビームの進行方向に対する光軸ずれを抑制して、光結合損失のばらつきを抑えることができる。
これらの光結合損失低減の効果は、第1および第2の従来例に示したいずれの光スイッチについても有効である。
【0039】
なお、第2の従来例の光スイッチについては、前記フーリエ変換光学素子として凹面ミラーを用い、光ビームの進行方向を折り返すことにより、同様のフーリエ変換作用を有するレンズを用いる場合と較べて光スイッチの容積を小さくすることができる。この第2の従来例の光スイッチにおいては、光ビームの折り返しが行われる平面(図13,10中のX−Z平面)上で入力側および出力側マイクロ可動ミラーアレイが凹面ミラーに対し所定の傾き角をもって配置されることから、マイクロ可動ミラーアレイにより反射された光ビームが軸外光線となり、凹面ミラーにおける収差が無視できない値となる場合がある。この軸外収差については、前記凹面ミラーをX軸とY軸で曲率の異なるトロイダル面とすることで補正することができる。
【0040】
また、本発明においては、光スイッチを一対の支持構造体で構成し、それぞれに入力側の光ポートとマイクロ可動ミラーアレイ、および出力側の光ポートとマイクロ可動ミラーアレイを搭載し、この2つの支持構造体を高精度な位置決め手段を用いて組み合わせることにより、空間的に離れた位置にある各光学部品を高い精度で配置させることができる。
前記一対の支持構造体は、少なくとも光信号が伝搬する経路上に開口部を有しており、そのうち入出力の光ポート、およびマイクロ可動ミラーアレイを取り付ける開口部にも位置決めピンなどに代表される高精度な位置決め手段を有している。
【0041】
この位置決め手段を、例えば前記開口の外周部に2箇所設けることにより、光ポートとマイクロ可動ミラーアレイの間で、光学部品が二次元的に整列配置された面内における並進方向(前記面と平行な方向)のみならず、前記の面に垂直な軸を中心とした回転方向の相対的な位置関係も、短時間かつ受動的に決定することができる。このような位置決め手段は、光学部品を位置合わせする方法として一般的に用いられている手法である。
【0042】
ところで、実際には、位置決め手段の嵌め合いに必要な間隙やわずかな位置誤差が原因で光学部品の取り付けが傾き、光ポートとマイクロ可動ミラーアレイの双方に、前記の回転方向のずれが発生する可能性がある。特に、光学部品の配列規模が大きい場合、前記回転方向のずれに由来する光ポートとマイクロ可動ミラーアレイ間の位置ずれが、先述のように光スイッチ性能に悪影響を及ぼす可能性がある。本発明では、光スイッチを入力側と出力側で独立した支持構造体に分離することにより、この一対の支持構造体を組み合わせる面の開口部から前記のずれの有無、あるいはその程度を観察し、評価することができる。さらに、評価した結果に基づいて光学部品の取り付け位置を修正し、この工程を繰り返すことにより、前記のずれを補正することもできる。
【0043】
本発明における光スイッチは光学的に可逆であることから、この一対の支持構造体は入力側、出力側ともに概ね同一の構造にすることができ、評価手法も同一で構わない。このため、入力側と出力側で組立や検査の工程を独立して進めることができ、組立時間を短縮することができる。
なお、前記一対の支持構造体の間、すなわち入出力マイクロ可動ミラー間の相対的な位置誤差は、数百μm程度の範囲であれば光スイッチ動作時に各々のマイクロ可動ミラーの傾き角度を微調整することにより概ね補正可能であり、一対の支持構造体を組み合わせる時に高精度な調整を行う必要はない。
【0044】
このように、光入出力ポートとマイクロ可動ミラーアレイ間の位置ずれの有無を評価し位置ずれを補正した後、前記光学部品を搭載した一対の支持構造体を、互いに組み合わせる面に設けた位置決め手段を用いて嵌合するか、あるいは支持構造体とは独立したベースに一対の支持構造体を位置合わせする位置決め手段を設けて設置することにより、低損失な光スイッチを実現することができる。
【0045】
また、本発明において入力側マイクロ可動ミラーアレイと出力側マイクロ可動ミラーアレイとの間にフーリエ変換光学素子を設ける場合、入力側マイクロ可動ミラーアレイから反射した光は、入力側マイクロ可動ミラーに電圧を印加しない組立初期状態では全て出力側マイクロ可動ミラーアレイの中央に集光するため、入力側マイクロ可動ミラーアレイに対する出力側マイクロ可動ミラーアレイ、およびフーリエ変換光学素子の相対位置を能動的に調整することは非常に困難である。
【0046】
本発明は、光スイッチを一対の支持構造体で構成することにより、前記の発明と同様に光入出力ポートとマイクロ可動ミラーアレイ間の位置ずれの有無を評価し、位置ずれを予め補正することができる。さらに、前記一対の支持構造体を用いて入出力のマイクロ可動ミラーアレイとフーリエ変換素子を相対的に位置決めすることにより、これらの間で受動的な位置合わせを実現する。
【0047】
具体的には、入力側、および出力側のそれぞれについて、光ポートとマイクロ可動ミラーアレイを前記の発明と同様に搭載した後、この一対の支持構造体のフーリエ変換光学素子が配置される面の開口部に位置決め手段を設けるか、あるいは支持構造体とは独立したベース上に同様の位置決め手段を設けて、一対の支持構造体とフーリエ変換素子との相対的な位置関係を決定する。
【0048】
なお、入出力マイクロ可動ミラー、およびフーリエ変換光学素子の間の相対的な位置誤差は、数百μm程度の範囲であれば、光スイッチ動作時に各々のマイクロ可動ミラーの傾き角度を微調整することにより概ね補正可能である。このため、前記発明と同様に、一対の支持構造体を組み合わせる時に高精度な調整を行う必要はない。また、フーリエ変換光学素子についても、一般的な光学素子の外径公差を有するものであれば、特に高精度なホルダに搭載したりしなくても、その外径を基準として受動的な位置合わせを行うことが可能である。
【0049】
また、本発明においては、光入力ポートあるいは光出力ポートを構成する複数の支持部材をフレームに搭載し、このフレームに例えば光ファイバが二次元的に整列配置された面内における並進方向、ならびにこの面に垂直な軸を中心とした回転方向に可動な微調整機構を設けることにより、光入出力ポートの位置をマイクロ可動ミラーアレイに対して相対的に位置合わせすることができる。これにより、例えば光学部品の取り付け直しだけでは調整することの難しい回転軸方向の僅かな誤差についても、高い精度で修正することができる。
【0050】
また、本発明においては、入力側マイクロ可動ミラーアレイ、あるいは出力側マイクロ可動ミラーアレイをフレームに搭載し、このフレームに例えばマイクロ可動ミラーが二次元的に整列配置された面内における並進方向、ならびにこの面に垂直な軸を中心とした回転方向に可動な微調整機構を設けることにより、入出力マイクロ可動ミラーアレイの位置を光入出力ポートに対して相対的に位置合わせすることができる。これにより、前記発明と同様に、例えば光学部品の取り付け直しだけでは調整することの難しい回転軸方向の僅かな位置誤差についても高精度な調整を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る光スイッチの第1の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した光ファイバアレイを構成する各部分の分解斜視図である。
【図3】図1に示した光ファイバアレイの斜視図である。
【図4】光コリメータアレイを構成する各部分を示す斜視図である。
【図5】光コリメータアレイを構成する各部分を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る光スイッチの第2の実施形態の構成を示す側面図である。
【図7】図6に示した光の進行方向にオフセットを有する光ファイバアレイの構造を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る光スイッチの第3の実施形態の構成を示す分解斜視図である。
【図9】本発明に係る光スイッチの第4の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る光スイッチの第5の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る光スイッチの第6の実施形態の構成を示す斜視図である。
【図12】フリースペース型光スイッチの第1の従来例の概略的な構成を示す側面図である。
【図13】フリースペース型光スイッチの第2の従来例の概略的な構成を示す側面図である。
【図14】フリースペース型光スイッチの第2の従来例の概略的な構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[第1の実施の形態]
以下、図面を用いて本発明の第1の実施形態の光スイッチについて説明する。
図1は2個のマイクロ可動ミラーを用いた光スイッチの斜視図であり、図中の矢印は光ビームの進行方向を示している。図1において、1は本発明に係る光スイッチ、2は光入力部、3は入力側マイクロ可動ミラーアレイ、4は出力側マイクロ可動ミラーアレイ、5は光出力部をそれぞれ示している。なお、本発明に関わる光スイッチ1は光学的に可逆な構成を有しているため、光ビームの進行方向を逆にしても光スイッチの機能として何ら変わるところはない。従って、本説明において光の入出力の向きは説明のために便宜的に与えた設定であり、本実施の形態を採るとき入力側あるいは出力側としての役割に限定されないことは言うまでもない。
【0053】
光入力部2は、4つの入力光ファイバアレイ6〜9を2行×2列の配列となるように集合させて配置することによって構成されている。これと同様に、光出力部5は、4つの出力光ファイバアレイ11〜14を2行×2列の配列となるように集合させて配置することによって構成されている。前記入力光ファイバアレイ6〜9と、前記出力光ファイバアレイ11〜14とは、それぞれ8行×8列の配列数を有する二次元光ファイバアレイである。
【0054】
また、前記入出力光ファイバアレイ6〜9,11〜14は、各々8行×8列の配列数を有する二次元マイクロレンズアレイ15〜18,21〜24を装着することにより、8行×8列の配列数を有する二次元光コリメータアレイとして機能する。前記マイクロ可動ミラーアレイ3,4は、それぞれ半導体製造技術により1チップのシリコン基板上に作製された、光入出力部2,5と同一の配列を有する16行×16列のマイクロ可動ミラーアレイである。
【0055】
前記光入力部2および光出力部5は、8行×8列の配列となる比較的小規模な二次元光ファイバアレイ6〜9,11〜14と、二次元マイクロレンズアレイ15〜18,21〜24とを集合化して16行×16列のアレイとすることにより、ポート数が256個ある光入出力ポートを実現する。
【0056】
前記マイクロレンズアレイ15〜18,21〜24は、前記光ファイバアレイ6〜9,11〜14と同一の配列間隔となるように形成されており、前記光ファイバアレイ6〜9,11〜14と各々の光軸が一致するよう位置合わせされることによって、光コリメータアレイとして機能する。
【0057】
各々のマイクロレンズアレイ15〜18,21〜24は、金型成型技術により作製されている。これらのマイクロレンズアレイ15〜18,21〜24におけるレンズ中心の配列精度は、±1μm以内である。また、これらのマイクロレンズアレイ15〜18,21〜24の光入出力端面には、反射防止膜が設けられている。なお、これらのマイクロレンズアレイ15〜18,21〜24は低融点ガラスや光学ポリマを用いた金型成型技術により作製する他、石英やシリコンを半導体プロセス技術により加工し作製したものであってもよい。
【0058】
また、マイクロレンズアレイ15〜18,21〜24は、前記いずれの加工技術においても、特に半導体プロセス技術において、例えば8行×8列の配列数で分割形成する場合に較べて16行×16列の配列数で一括形成する方が容易である場合は、光ファイバアレイ6〜9,11〜14と同一の配列を有することを前提として、単一のマイクロレンズアレイ部品として作製することができる。
【0059】
前記入力光ファイバアレイ6〜9および出力光ファイバアレイ11〜14は、図2および図3に示すように、光ファイバ25を保持したフェルール26と、このフェルール26を支持する整列基板27〜30と、これらの整列基板27〜30を互いに結合させて集合させる額縁状のフレーム31とによって構成されている。この実施の形態においては、前記光ファイバ25によって本発明でいう光入力ポートおよび光出力ポートが構成され、前記整列基板27〜30によって本発明でいう支持部材が構成され、整列基板27〜30とフレーム31との組立体によって本発明でいう複数の支持部材の集合体が構成されている。
【0060】
前記フェルール26は、円筒状に形成されており、光ファイバ25を軸心部に嵌入し位置決めした状態で保持している。光ファイバ25の光入出射端面25aには、反射防止膜が形成されている。
整列基板27〜30は、例えば8行×8列の配列となるように所定の間隔をおいて二次元的に配列された複数の貫通孔32がそれぞれ穿設されている。これらの整列基板27〜30は、これらの貫通孔32に前記フェルール26を挿入することにより、複数の光ファイバ25を二次元的に配列される状態で支持するとともに、複数の光ファイバ25の光入出射端面25aを整列基板27〜30の端面に露出しかつ互いに平行になるように整列させる。
【0061】
また、整列基板27〜30における前記複数の貫通孔32より外側に位置する外縁部には、他の整列基板との位置を決めて固定するために、ガイド孔33が穿設されている。このガイド孔33の孔径は、フレーム31に立設された嵌合ピン34が嵌合可能な孔径に形成されている。嵌合ピン34がガイド孔33に嵌合することにより、フレーム31に各光ファイバアレイ6〜9,11〜14を高い精度で位置決め、固定することができる。
【0062】
この位置決めは、嵌合ピン34をフレーム31の所定の位置に高い精度で位置付けておくことにより、高精度にかつ特別な位置決め操作を何ら行うことなく受動的に行うことができる。また、前記嵌合ピン34がガイド孔33に嵌合することにより、光ファイバアレイ6〜9,11〜14と同一の配置でガイド孔35(図4参照)を設けたマイクロレンズアレイ15〜18,21〜24の光軸合わせを行うことができる。
【0063】
前記フェルール26は、光コネクタ用フェルールとして一般に市販されており、その外形精度は±1μm以下である。かつ、フェルール26の外径中心と、それに保持される光ファイバ25のコア中心とのずれである偏心量は、一般に1μm以下と高い精度を有している。さらに、前記複数の貫通孔32の内径は、前記円筒形状のフェルール26の外形状と略等しいものとなっている。加えて、整列基板27〜30は、ポリマ系熱可塑性材料の他、金属やセラミック、またガラスから構成してもよい。
【0064】
これらの材料を機械加工、あるいは金型を用いて成型することにより、各々の貫通孔32の位置を、二次元アレイの全領域において±2μm以下の高精度で配列させることが可能であり、またフレーム31の嵌合ピン34に対するガイド孔33の位置精度も同様の精度で形成することができる。特に、整列基板27〜30を熱可塑性樹脂から構成する場合、トランスファ成型法により高い精度を保ちつつ安価に作製することが可能である。
【0065】
アレイ規模が大きくなった場合、1つの整列基板内に全ての貫通孔32を設けると、その配列精度は整列基板の製造精度により制限されるため、高精度に配列することは困難になる。この製造精度の限度は、機械加工の場合には工具の送り誤差の累積であったり、また成型の場合には成型部材の収縮率の不均一さなどに起因するものである。本発明では1つの光ファイバアレイの大きさを光ファイバの配列精度が損なわれることがない大きさに制限し、複数の光ファイバアレイを一つのフレーム31上に整列することで、光ファイバアレイの配列精度を損なうことなく、光スイッチ1の入出力ポート規模を拡大することができる。
【0066】
なお、本実施の形態においては、光入出力ポートを構成する光コリメータアレイとして、図4に示したように、光ファイバアレイ6〜9,11〜14とマイクロレンズアレイ15〜18,21〜24の組み合わせを挙げたが、光コリメータとしては、図5に示すように、例えば先端を非球面加工したロッドレンズ41{図5(B)参照}に光ファイバ25を光学接着剤あるいは融着により固定した単一部品でもあってもよい。
【0067】
前記のようにロッドレンズ41と光ファイバ25とを接続して構成するファイバコリメータ42は、一般に市販されており、その外形精度は±2μm以下である。図5にファイバコリメータ42を整列基板27〜30に配列させてなるファイバコリメータアレイ43の構成例を示す。ファイバコリメータ42から出射する光ビームの光軸の角度ずれ、すなわちポインティング精度は0.1°以下である。このポインティング精度は、マイクロ可動ミラー上に光ビームが到達したとき、その光ビームの光軸傾きによるビーム中心位置のシフト量が数十μmであり、光学損失に与える影響としては十分無視できる値である。
【0068】
このため、複数のファイバコリメータ42を整列させる際にその角度ずれの方向を揃える必要はない。この実施の形態においては、前記ファイバコリメータ42によって本発明でいう光入力ポートおよび光出力ポートが構成されている。なお、前記ファイバコリメータ42を構成するレンズ部分は、先端を非球面加工したロッドレンズの他、セルフォックレンズに代表される屈折率分布型のロッドレンズや、内部が空洞の金属製チューブの内側に平凸型もしくは両凸型のコリメートレンズを固定したものなどを用いることができる。
【0069】
前記整列基板27〜30に配列された複数の貫通孔32は、前記円筒形状のレンズ部分を有するファイバコリメータ42が嵌合可能な形状に形成されている。すなわち、貫通孔32の孔形状は、ファイバコリメータ42の外形と略等しい形状に形成されている。このため、前記整列基板27〜30の複数の貫通孔32に前記ファイバコリメータ42を挿入し整列させるだけで、配列誤差のきわめて小さいファイバコリメータアレイ43を低コストで作製することができる。
なお、本実施の形態において、光入出力部2,5のポート数は16行×16列の256ポートであるが、前記ポート数についてはこの値に限定されるものではない。
また、本実施の形態において、光入出力部2,5は、入出力光ファイバアレイ6〜9,11〜14とマイクロレンズアレイ15〜18,21〜24の組み合わせによって構成されているが、これらについては、図5に示したように、ファイバコリメータアレイによって構成することができる。
また、入出力光ファイバアレイ6〜9,11〜14と入出力マイクロ可動ミラーアレイ3,4との幾何的配置、およびこれらを構成する光ファイバ25、マイクロレンズアレイ15〜18,21〜24、マイクロ可動ミラーアレイ3,4の配列間隔は、本実施の形態を採るとき値に限定されないことは言うまでもない。
【0070】
このように構成された本実施の形態における光スイッチ1においては、例えば、整列基板27〜30の貫通孔32やガイド孔33の位置や形状等を高い寸法精度で形成し、光ファイバ25を貫通孔32にフェルール26あるいはファイバコリメータ42を介して挿入して整列基板27〜30に固定すれば、光スイッチ1の主要部品である二次元光コリメータアレイを極めて小さい配列誤差で作製することができる。さらに、ガイド孔33を介して複数の整列基板27〜30をフレーム31に配列することによって、例えばポート数が200個を超える大規模な光スイッチの光入出力ポートを高精度かつ簡易に構成することが可能となる。
【0071】
[第2の実施の形態]
本発明に係る光スイッチは、図6および図7に示すように構成することができる。
図6は2個のマイクロ可動ミラーと凹面ミラーとを用いた光スイッチの側面図、図7はこの実施の形態による光ファイバアレイの斜視図である。図6中の矢印は光ビームの進行方向を示している。図6および図7において、前記図1〜図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。なお、本発明に関わる光スイッチは光学的に可逆な構成を有しているため、光ビームの進行方向を逆にしても光スイッチの機能として何ら変わるところはない。従って、本説明において光の入出力の向きは説明のために便宜的に与えた設定であり、本実施の形態を採るとき入力側あるいは出力側としての役割に限定されないことは言うまでもない。
【0072】
図6に示す光スイッチ51は、光入力部52と、入力側マイクロ可動ミラーアレイ53と、凹面ミラー54と、出力側マイクロ可動ミラーアレイ55と、光出力部56とを備えている。図6において、符号57は光ビーム群を示している。
前記光入力部52は、各々8行×8列の配列規模を有する4つの入力光ファイバアレイ6〜9に、この入力光ファイバアレイと同一の配列を有する入力マイクロレンズアレイ15〜18を位置合わせすることにより4つの光コリメータアレイとし、これを2行×2列に配置することにより、全体としてポート数256の光入力ポートを構成する。
【0073】
また、光出力部56は、光入力部52と同様に、出力光ファイバアレイ11〜14と出力マイクロレンズアレイ21〜24とからなる8行×8列の光コリメータアレイが2行×2列に配置されてポート数256の光出力ポートを構成する。前記入出力光ファイバアレイ6〜9,11〜14および前記入出力マイクロレンズアレイ15〜18,21〜24は、各々を構成する光ファイバ、もしくはマイクロレンズが、概ね1mmの間隔で二次元的に配列されている。
【0074】
前記マイクロ可動ミラーアレイ53,55は、それぞれ半導体製造技術により1チップのシリコン基板上に作製された、光コリメータアレイと同一の配列を有する16行×16列のマイクロ可動ミラーアレイである。
前記光入力部52、入力側マイクロ可動ミラーアレイ53、凹面ミラー54、出力側マイクロ可動ミラーアレイ55、光出力部56は、図6に示すように、それぞれ光ビームの進行方向に対してδ[rad]の傾き角度を持ってW型に配置されている。
【0075】
前記入出力マイクロ可動ミラーアレイ53,55は、焦点距離150mmの凹面ミラー54の焦点位置にそれぞれ配置されている。また、前記光入出力部52、56は、それぞれ入力側もしくは出力側マイクロ可動ミラーアレイ53,55と、概ね150mmの距離をおいてそれぞれ配置されている。この実施の形態で示す前記凹面ミラー54は、X方向の曲率半径が315mm、Y方向の曲率半径が300mmのトロイダルミラーである。
【0076】
本実施の形態による光スイッチにおいて、入出力光ファイバアレイ間の最も離れた光ファイバどうしを接続する場合は、最も近接した光ファイバどうしを接続する場合と比較して、概ね20mmの光路長差を生じる。この実施の形態においては、この光路長差を低減するために、前記光入出力部を構成する4個の光ファイバアレイについて、図6中のY方向(図6の紙面と直交する方向)に並ぶ2個を1組として、光の進行方向に対し所定のオフセットを付与してある。
【0077】
このようにオフセットを付与した光入力部52の構成を図7に示す。前記入力光ファイバアレイ6〜9については、凹面ミラー54に近接する位置にある光ファイバアレイ7,9を入力側マイクロ可動ミラーアレイ53に概ね10mm近接させた。このように光ファイバアレイにオフセットを付与するに当たっては、図7に示すように、フレーム31に段部61を形成することによって行っている。
【0078】
これと同様に、前記出力光ファイバアレイ11〜14については、凹面ミラー54に近接する位置にある光ファイバアレイ11,13を出力側マイクロ可動ミラーアレイ55に概ね10mm近接させてフレーム31に固定し配置した。
このような構成を採ることにより、光スイッチ全体の光路長ばらつきを概ね10mmの範囲内に抑制し、光路長差による光結合損失ばらつきを0.1dB以下に収めることができた。
【0079】
凹面ミラー54の反射面54aの光軸、すなわち曲率中心を通る軸に対し、大きく角度を持った斜め入射で光ビームが入射する場合、先に示したようにビーム群の集光位置は1点に定まらず、位置誤差が生じる。凹面ミラー光軸に対して斜め入射する面(この場合X−Z面)での曲率半径を垂直な面(Y−Z面)の曲率半径に対し大きくするトロイダル面とすることで、この位置誤差を低減することができ、各マイクロ可動ミラーの回転動作範囲に対する要求条件を均一にすることができ、ミラー回転角度を有効に使用する光スイッチが構成できる。
また、凹面ミラー54の反射面54aをトロイダル面とすることにより、曲率がX軸とY軸とで等しく形成されている場合と比較して、凹面ミラー54における軸外収差を低減し、その値を0.5dB以下とすることができた。
なお、本実施の形態において、光入出力部52,56のポート数は16行×16列の256ポートであるが、前記ポート数についてはこの値に限定されるものではない。また、光入出力部52,56は、8行×8列の配列を有する光ファイバアレイを4個ずつ使用して構成し、これを2つずつ組にしてそのうちの一方をマイクロ可動ミラー53,55に近接させているが、必要に応じて16行×8列の光ファイバアレイ2個の組み合わせとし、そのうちの一方を近接させる構成を採ることもできる。
【0080】
また、本実施の形態においては、光ファイバアレイ7,9,11,13をマイクロ可動ミラーアレイ53,55に近接させることによって光路長差を低減しているが、必要に応じてマイクロ可動ミラーアレイ53,55から遠ざけることもできる。さらに、例えばポート数が1000を超える、よりポート数の多い光スイッチの光入出力部を構成する場合、これらを構成する光ファイバアレイの数を2個あるいは4個に限定する必要はなく、例えば16個の光ファイバアレイで構成し、これらを多段にして近接あるいは遠ざける構成を採ることができる。
【0081】
また、本実施の形態において、光入出力部52,56は、入出力光ファイバアレイ6〜9,11〜14とマイクロレンズアレイ15〜18,21〜24の組み合わせによって構成されているが、これらについては、図5に示したように、ファイバコリメータアレイによって構成することができる。
また、入出力光ファイバアレイ6〜9,11〜14と凹面ミラー54、入出力マイクロ可動ミラーアレイ53,55との幾何的配置、およびこれらを構成する光ファイバ25、マイクロレンズアレイ15〜18,21〜24、マイクロ可動ミラーアレイ53,55の配列間隔は、本実施の形態を採るとき値に限定されないことは言うまでもない。
【0082】
このように構成された本実施の形態における光スイッチ51においては、例えば、光入出力部52,56をそれぞれ4個の入出力光ファイバアレイ6〜9,11〜14によって構成し、そのうちの2個について光ビームの進行方向に対し相対的にオフセットを与えることにより、光スイッチ51の大規模化に伴う光路長差の拡大を抑制し、光路長差に由来する光結合損失のばらつきを極めて小さくすることができる。また、凹面ミラー54の反射面54aをX軸とY軸とで曲率が異なるトロイダル面とすることにより、凹面ミラー54における軸外収差を0.5dB程度に抑制することができる。
【0083】
[第3の実施の形態]
以下、図面を用いて本発明の第3の実施の形態の光スイッチについて説明する。本発明に係る光スイッチは、図8に示すように構成することができる。
図8は第3の実施の形態による光スイッチの分解斜視図である。図8において、前記図1〜図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。なお、本発明に関わる光スイッチは光学的に可逆な構成を有しているため、光ビームの進行方向を逆にしても光スイッチの機能として何ら変わるところはない。従って、本説明において光の入出力の向きは説明のために便宜的に与えた設定であり、本実施の形態を採るとき入力側あるいは出力側としての役割に限定されないことは言うまでもない。
【0084】
図8に示す光スイッチ1は、本発明の第1の実施の形態で示した光スイッチの構造を分解して示したものであり、光スイッチの入力側を構成する支持構造体60aに光入力部2と入力側マイクロ可動ミラーアレイ3を、光スイッチの出力側を構成する支持構造体60bに出力側マイクロ可動ミラーアレイ4と光出力部5をそれぞれ搭載している。この実施の形態においては、前記支持構造体60a,60bによって請求項8記載の発明でいう「一対の支持構造体」が構成されている。光入出力部および入出力マイクロ可動ミラーアレイは、それぞれ配列規模が16行×16列でポート数が256である。なお、説明を簡易にするため、出力側の支持構造体60bの上面は描画を省略する。また、各光学部品の配列規模も図面上は略して表示する。
【0085】
前記の支持構造体60a,60bは、光入出力部2,5を搭載するための開口部61と、マイクロ可動ミラーアレイ3,4を搭載するための開口部63と、入出力の支持構造体同士を組み合わせて入出力マイクロ可動ミラーアレイ間の光結合を成立させるための開口部66とを備えている。
光入出力部2,5を搭載するための開口部61には、所定の位置に、光ファイバアレイ6〜9,11〜14を搭載した整列基板27〜30を搭載するための複数の位置決めピン62を高い位置精度で設けている。この位置決めピン62を、前記整列基板27〜30に形成された複数のガイド孔33に嵌合させることにより、光ファイバアレイを図8中のX−Y平面における並進方向だけでなく、この面に垂直なZ軸を中心とした回転方向に対しても高い精度で受動的に位置決めし、固定することができる。
【0086】
マイクロ可動ミラーアレイ3,4を搭載する開口部63にも同様に、マイクロ可動ミラーアレイ3,4を搭載するための複数の位置決めピン64を高い位置精度で設けている。この位置決めピン64をマイクロ可動ミラーアレイ側に設けた複数のガイド孔65に嵌合させることにより、マイクロ可動ミラーアレイ3,4を高い精度で受動的に位置決めし、固定することができる。前記の支持構造体60a,60bのそれぞれを、例えば金属ブロックの削り出しや成型加工等により一体形成部品として作製すると、前記光ファイバアレイ6〜9,11〜14を搭載するための複数の位置決めピン62の位置誤差とマイクロ可動ミラーアレイ3,4を搭載するための位置決めピン64の位置誤差、ならびにこれらの位置決めピン62,64の間の相対的な位置誤差は、概ね10μmから25μmに収めることが可能である。
【0087】
このように、一対の支持構造体60の上に高い位置精度で設けられた複数の位置決めピン62,64を用いて光入出力部2,5とマイクロ可動ミラーアレイ3,4の相対的な配置を決定することにより、アレイ部品が整列配置された面内における並進方向、およびこの面に垂直な軸を中心とした回転方向の自由度を拘束し、空間的に離れた位置にある光入出力部2,5とマイクロ可動ミラーアレイ3,4の間を高い精度で受動的に位置合わせすることができる。ただし、前記入力側および出力側の支持構造体60а、60bをそれぞれ一体形成する場合、加工が難しくなると同時に高額になるため、前記支持構造体60a,60bを構成する板や枠組みを複数の部材で構成し、これらをネジで止めるなどすることにより一体化するのでも構わない。
【0088】
この場合、前記光ファイバアレイ6〜9,11〜14を搭載するための複数の位置決めピン62とマイクロ可動ミラーアレイ3,4を搭載するための位置決めピン64の間の位置誤差は、先に述べた値よりも大きくなる。あるいは、一体形成技術で作製する場合でも、支持構造体60a,60bの形状によっては、前記光ファイバアレイを搭載するための複数の位置決めピン62同士、およびマイクロ可動ミラーアレイ3,4を搭載するための位置決めピン64同士を高い位置精度で形成することはできても、これらの間の相対的な位置精度を出すことが難しくなる場合もある。
【0089】
このような場合は、支持構造体60а、60b同士を組み合わせる以前に、前記のように光入力部2と入力側マイクロ可動ミラーアレイ3、あるいは光出力部5と出力側マイクロ可動ミラーアレイ4を一方の支持構造体に搭載した後、光入出力部2,5を構成する光ファイバアレイ6〜9,11〜14から光を入力して光ビームを形成し、入出力の支持構造体60a,60bの開口部66から前記光ビームに照射されたマイクロ可動ミラーアレイ3,4を光学顕微鏡で観察することにより、光ファイバアレイ6〜9,11〜14とマイクロ可動ミラーアレイ3,4の相対的な位置ずれの有無およびその程度を予め確認することができる。マイクロ可動ミラーアレイ3,4は全箇所観察してもよいが、アレイ領域の四隅など回転方向のずれの影響が最も顕著に現れる複数の箇所のみに限定しても、光学部品の配列規模が大きい場合に特に問題となる前記の回転方向の位置ずれについて、その影響を感度良く評価することができる。
【0090】
評価する手段としては、同様に光ビームを形成してマイクロ可動ミラーアレイ3,4で反射させ、その反射光の光強度を光検出器により測定して、ケラレ損失による過剰損失の有無を確認する方法などもある。しかしながら、光学顕微鏡を用いるほうが、光ビームとマイクロ可動ミラーの中心ずれの量とその方向を視覚的に容易に検出することができる。ここで、光学部品の配列規模が大きい場合、例えばアレイ領域の四隅が数mmから数十mmの間隔をあけて存在することになる。これらの測定箇所を一度に観測しようとすると、顕微鏡の倍率を下げたり光検出器の受光面積を大きくしたりしなければならず、個々の箇所に対する測定分解能が低下する。
【0091】
光入出力部2,5とマイクロ可動ミラーアレイ3,4の間で許容される位置ずれ量はマイクロ可動ミラー径と光ビーム径の関係にも依存するが概ね100μm程度であり、このような精度で位置ずれの影響を検出するには、高分解能の測定機器をリニアステージ等に搭載して移動させ、観察する箇所を個々に測定する必要がある。このように、回転方向のずれを高精度に評価するには、ある程度の空間を確保することが要求されるため、光スイッチの支持構造体60を入出力で分離せずに評価することは事実上困難である。
【0092】
なお、評価の結果、前記のずれが許容範囲を超えた場合、光ファイバアレイ6〜9,11〜14あるいはマイクロ可動ミラーアレイ3,4のいずれかの固定を緩めてその取り付け位置を微調整することにより、ずれを補正することも可能である。本実施の形態では、この補正と前記のずれの評価を繰り返し実施することにより、配列規模が16行×16列でポート数が256の光スイッチについて、その回転方向のずれ量を、光ビームとマイクロ可動ミラーの相対的な中心ずれを100μm以下に収めることができた。
【0093】
さらに、入力側、および出力側のそれぞれについて前記ずれを補正した支持構造体60a、60b同士を、開口部66の端面に設けた嵌合ピン67および嵌合孔68を合わせて固定し、光スイッチ1を完成する。この実施の形態においては、前記嵌合ピン67と嵌合孔68との嵌合部と、前記位置決めピン62とガイド孔33との嵌合部と、前記位置決めピン64とガイド孔65との嵌合部とによって、請求項8記載の発明でいう位置決め手段が構成されている。
この結果、光スイッチ1の挿入損失評価において、マイクロ可動ミラーにおけるケラレ損失を0.5dB以内に抑制し、挿入損失の平均値1.1dBを実現することができた。
なお、本実施の形態では、光学部品を16行×16列に配列した例を示したが、本発明の効果はこの配列規模に限定されないことはいうまでもない。
【0094】
また、本実施の形態では光入出力部2,5を光ファイバアレイ6〜9,11〜14としたが、これらは光ファイバとマイクロレンズが予め一体となった光コリメータアレイであっても構わない。
また、本実施の形態では光入出力部2,5を同一面上に配置したが、本発明の第2の実施の形態のようにオフセットを与えて光路長差を与えて配置しても構わない。
また、本実施の形態では、マイクロ可動ミラーアレイ3,4を複数の基板に分割した形で個々に取り付ける例を示したが、これらは同一の電極基板上に搭載されていてもよく、この場合、前記電極基板の複数の箇所に貫通孔65を設けても良い。
【0095】
また、本実施の形態では、支持構造体60a,60bの開口部は光入出力部2,5を搭載する面61、マイクロ可動ミラーアレイ3,4を搭載する面63および一対の支持構造体60を嵌合する面66の3箇所としているが、必要に応じて支持構造体60a,60bを枠組みのみの形状とし、他に開口を設けても構わない。
また、本実施の形態では、一対の支持構造体60を組み合わせる手段として、支持構造体60a,60bの開口部66に嵌合ピン67と嵌合孔68を設けて位置決めし嵌合させているが、位置決め構造はピンと孔の組み合わせに限定するものではない。同様に、一対の支持構造体60と光入出力部2,5、およびマイクロ可動ミラーアレイ3,4を位置決めし嵌合する構造についても、例えば精密な外径精度を有する微小ボールと矩形の受け穴の組み合わせ等を用いてもよく、ピンと孔の組み合わせに限定するものではないことは言うまでもない。
【0096】
さらに、一対の支持構造体60を組み合わせる手段としては、入力側および出力側の支持構造体60a,60b同士を前記の通り嵌合させる他、図8中に二点鎖線で示すように、支持構造体60a,60bとは独立したベース69に一対の支持構造体60を位置合わせする嵌合ピン70を設け、入力側および出力側の支持構造体60a,60bのそれぞれについて開口部61、63、66以外の面に嵌合孔68を設けて、これらを嵌合させることにより実現しても構わない。なお、前記ベース69と支持構造体60a,60bの位置決め構造については、ここに記したピンと孔の組み合わせに限定するものではない。
【0097】
[第4の実施の形態]
以下、図面を用いて本発明の第4の実施形態の光スイッチについて説明する。本発明に係る光スイッチは、図9に示すように構成することができる。
図9は第4の実施の形態の形態による光スイッチの分解斜視図である。図9において、前記図1〜図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。なお、本発明に関わる光スイッチは光学的に可逆な構成を有しているため、光ビームの進行方向を逆にしても光スイッチの機能として何ら変わるところはない。従って、本説明において光の入出力の向きは説明のために便宜的に与えた設定であり、本実施の形態を採るとき入力側あるいは出力側としての役割に限定されないことは言うまでもない。
【0098】
図9に示す光スイッチ51は、本発明の第2の実施の形態で示した光スイッチの構造を分解して示したものであり、光スイッチの入力側を構成する支持構造体60aに光入力部52と入力側マイクロ可動ミラーアレイ53を、光スイッチの出力側を構成する支持構造体60bに出力側マイクロ可動ミラーアレイ55と光出力部56をそれぞれ搭載している。光入出力部52,56および入出力マイクロ可動ミラーアレイ53,55は、それぞれ配列規模が16行×16列でポート数が256である。なお、説明を簡易にするため、支持構造体60aおよび支持構造体60bの外面は描画を一部省略する。また、各光学部品の配列規模も図面上は略して表示する。前記の支持構造体60a,60bは、光入出力部52,56を搭載するための開口部61、入出力マイクロ可動ミラーアレイ53,55を搭載する開口部63、凹面ミラー54を搭載する開口部71、ならびに入出力マイクロ可動ミラーアレイ53,55と凹面ミラー54の間の光結合を成立させるための開口部66を備えている。
【0099】
入力側および出力側の支持構造体60a、60bには、上述した第3の実施の形態と同様に、高い位置精度で設けられた複数の位置決めピン62、64を用いて、光ファイバアレイ6〜9,11〜14で構成された光入出力部52,56と入出力マイクロ可動ミラーアレイ53,55を、整列配置された面内における並進方向、およびこの面に垂直な軸を中心とした回転方向について高い精度で搭載した。さらに、第3の実施の形態と同様に、入力側ならびに出力側のそれぞれについて、光入出力部52,56を構成する光ファイバアレイ6〜9,11〜14から光を入力して光ビームを形成し、支持構造体の開口部66から前記光ビームに照射されたマイクロ可動ミラーアレイ53,55を光学顕微鏡で観察することにより、光ファイバアレイ6〜9,11〜14とマイクロ可動ミラーアレイ53,55の相対的な位置ずれの有無を評価し、配列規模が16行×16列でポート数が256の光スイッチについて、光ビームとマイクロ可動ミラーの相対的な中心ずれを100μm以下に収めることができた。
【0100】
続いて、前記入力側および出力側の支持構造体60a,60b、ならびに凹面ミラー54の配置に合わせて複数の位置決めピン70を設けたベース69の上に、底面に位置決め用の複数の嵌合孔68を設けた支持構造体60a、60bをそれぞれ搭載し、前記位置決めピン70と嵌合孔68を合わせて固定する。最後に、前記ベース69上の凹面ミラー54を配置する位置に設けた複数の位置決めピン70に、凹面ミラー54の背部および側部の平坦面を突き当てることにより、凹面ミラーを位置決めして固定し、光スイッチ51を完成させる。
【0101】
この結果、光スイッチ51の挿入損失評価において、マイクロ可動ミラーにおけるケラレ損失を0.5dB以内に抑制し、光スイッチの挿入損失の平均値4.2dBを実現することができた。この実施の形態においては、ベース69に支持構造体60a,60bを位置決めするための位置決めピン70と嵌合孔68とによって、請求項9記載の発明でいう第1の位置決め手段が構成されている。また、この実施の形態においては、ベース69に凹面ミラー54を位置決めするために設けた位置決めピン70によって、請求項9記載の発明でいう第2の位置決め手段が構成されている。
【0102】
本実施の形態にあるように、入力側マイクロ可動ミラーアレイ53と出力側マイクロ可動ミラーアレイ55との間にフーリエ変換光学素子(凹面ミラー54)を設ける場合、入力側マイクロ可動ミラーアレイ53から反射した光は、入力側マイクロ可動ミラー53に電圧を印加しない組立初期状態では全て出力側マイクロ可動ミラーアレイ55の中央に集光する。そのため、入力側マイクロ可動ミラーアレイ53に対する出力側マイクロ可動ミラーアレイ55、およびフーリエ変換光学素子の相対位置および相対傾きを能動的に調整することは非常に困難である。そのため光入力部52からの入力光を基準に入力側から順次、部材を位置合わせしていくような組立手法では要求される位置合わせ精度を実現できない。
【0103】
一方、本実施の形態で用いるようなフーリエ光学素子の焦点距離は数十mmと長く、その光軸方向、および並進方向の位置決めに要求される精度は、先述の光ビームとマイクロ可動ミラー間に要求させる精度に比べると大幅に緩められる。本実施の形態では、より高精度な位置合わせが要求される光入力部52と入力側マイクロ可動ミラー53、および光出力部56と出力側マイクロ可動ミラー55を、それぞれ支持構造体60a、60bに搭載し、さらに個別に高精度に位置合わせを行った後、比較的要求精度の緩い、フーリエ変換光学素子(本実施の形態では凹面ミラー54)、および支持構造体60a、60bの3部材間を別途受動的な位置合わせを行うような構成を採用している。これにより非常に簡単な手順で要求される位置合わせ精度を実現することが可能になる。
【0104】
なお、本実施の形態では、光学部品を16行×16列に配列した例を示したが、本発明の効果はこの配列規模に限定されないことはいうまでもない。
また、本実施の形態では光入出力部52,56を光ファイバアレイ6〜9,11〜14としたが、これらは光ファイバとマイクロレンズが予め一体となった光コリメータアレイであっても構わない。
また、本実施の形態では光入出力部52,56を同一面上に配置したが、本発明の第2の実施の形態のようにオフセットを与えて光路長差を与えて配置しても構わない。
【0105】
また、本実施の形態では、フーリエ変換素子として凹面ミラー54を用いているが、本発明の範囲を逸脱しない範囲で他のフーリエ変換素子を適用しても構わない。
また、本実施の形態では、マイクロ可動ミラーアレイ53,55を複数の基板に分割した形で個々に取り付ける例を示したが、これらは同一の電極基板上に搭載されていてもよく、この場合、前記電極基板の複数の箇所に貫通孔65を設けても良い。
【0106】
また、本実施の形態では、支持構造体60a,60bの開口部は光入出力部52,56を搭載する面61、マイクロ可動ミラーアレイ53,55を搭載する面63および一対の支持構造体60を嵌合する面66の3箇所としているが、必要に応じて支持構造体を枠組みのみの形状とし、他に開口を設けても構わない。
また、一対の支持構造体60と凹面ミラー54を組み合わせる手段としては、前記の通り複数の位置決めピン70を設けたベース69上に各部品を搭載する他、支持構造体60a,60bの凹面ミラー54を搭載する開口部71に複数の位置決めピン70を搭載した枠を設け、一対の支持構造体60を互いの開口部66に設けた位置決め手段により嵌合させた後、前記開口部71に設けた複数の位置決めピン70に凹面ミラー54の外形を突き当てて位置決めを行うことにより実現しても構わない。なお、前記ベース69と支持構造体60a,60bの位置決め構造については、ここに記したピンと孔の組み合わせに限定するものではない。また、一対の支持構造体60と光入出力部52,56、およびマイクロ可動ミラーアレイ53,55を位置決めし嵌合する構造についても、第4の実施の形態と同様に、ピンと孔の組み合わせに限定するものではないことは言うまでもない。
【0107】
[第5の実施の形態]
以下、図面を用いて本発明の第5の実施形態の光スイッチについて説明する。
図10は第5の実施の形態の形態による光スイッチの光入力部の分解斜視図である。図10において、前記図1〜図9によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。なお、本発明に関わる光スイッチは光学的に可逆な構成を有しているため、光ビームの進行方向を逆にしても光スイッチの機能として何ら変わるところはない。従って、本説明において光の入出力の向きは説明のために便宜的に与えた設定であり、本実施の形態を採るとき入力側あるいは出力側としての役割に限定されないことは言うまでもない。
【0108】
図10に示す光入力部2あるいは52は、本発明の第1および第2の実施の形態で示した光スイッチ1、51の光入力部の構造を分解して示したものである。光入力部2,52および入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53は、それぞれ配列規模が16行×16列でポート数が256である。
光入出力部2,52を搭載するための開口部61は、図10中のX−Y平面における並進方向、およびこの面に垂直なZ軸を中心とした回転方向に駆動可能な微調整機構72を有している。微調整機構72は、同一平面上に配置された外枠72аと内枠72bを備え、これらの間は複数の板ばね72cによって接続されている。内枠72bには、入力光ファイバアレイ6〜9を搭載した複数の整列基板27〜30を取り付けるための複数の位置決めピン62を概ね±10μmの位置精度で設けており、これらを前記整列基板27〜30に設けた複数のガイド孔33に嵌合させて高い精度で受動的に位置決めする。
【0109】
内枠72bは、整列部材27〜30に対して分離された4つの部分から構成されており、内枠72bに取り付けられた整列部材27〜30を外枠72aに対して独立に位置調整することができる。すなわち光入力部2,52を構成する整列部材27〜30(支持部材)を個別に入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53に対して位置調整することができる。このように複数の整列部材27〜30(支持部材)に対して個別に調整可能な調整機構を備えることにより、整列部材27〜30の製造精度の個体差や、各整列部材を取り付ける際の位置誤差を調整することが可能になり、より高精度な組立が実現できる。
【0110】
前記外枠72аと分割された内枠72bの各分割部分との間には、そのY方向の一辺に2箇所の調整ネジ(図示せず)が取り付けられ、これらをねじ込むことによりX方向の並進、およびZ軸を中心とした回転について、内枠72bを移動させることができる。同様に、前記外枠72аと内枠72bの各分割部分のX方向の一辺には1箇所の調整ネジ(図示せず)が取り付けられ、これをねじこむことにより、Y方向の並進について内枠72bを移動させることができる。これらのネジの動きを組み合わせることにより、X−Y平面内の任意の方向に対して、数十μm以下のごく僅かな位置ずれを補正することが可能となる。なお、前記の調整ネジは、直交する辺の一方に2個所、他方の一辺に1箇所設けることにより並進方向の移動および回転の両方を実現するものであり、例えばX方向の一辺に2個所、Y方向の一辺に1箇所設けても前記と同様の補正を実現することができる。
【0111】
本実施の形態では、内枠72bが分割され、各分割部分が外枠72aに対して調整可能な調整機構を示したが、内枠72bが分割されず、一体で外枠72aに対して調整できるような調整機構であっても、光入力部2,52を一体で入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53に対して簡易に位置調整することができる。
【0112】
本実施の形態では、光入力部2,52を構成する光ファイバアレイ6〜9から光を入力して光ビームを形成し、支持構造体60aの支持構造体同士を嵌合させるための開口部66から前記光ビームに照射されたマイクロ可動ミラーアレイ3、53を光学顕微鏡で観察しながら、前記微調整機構72を用いて、入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53に対する光入力部2,52のずれの補正を実施した。その結果、光入力部2,52あるいは入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53の位置が、支持構造体60aの開口部61あるいは63の中心からわずかに偏って取り付けられており、図10中のZ軸を中心とする回転方向を調整すると同時にX方向とY方向がずれてしまうような場合についても、光ビームとマイクロ可動ミラーの相対的な中心ずれを概ね50μm以下に収めることができた。
【0113】
なお、本実施の形態では、光学部品を16行×16列に配列した例を示したが、本発明の効果はこの配列規模に限定されないことはいうまでもない。
また、本実施の形態では光入力部2,52を光ファイバアレイとしたが、これらは光ファイバとマイクロレンズが予め一体となった光コリメータアレイであっても構わない。
また、本実施の形態では光入力部2,52を同一面上に配置したが、本発明の実施の形態2のようにオフセットを与えて光路長差を与えて配置しても構わない。
また、本実施の形態では、支持構造体60aの開口部は光入力部2,52を搭載する面61、マイクロ可動ミラーアレイ3,53を搭載する面63および一対の支持構造体60を嵌合する面66の3箇所としているが、必要に応じて支持構造体を枠組みのみの形状とし、他に開口を設けても構わない。
また、支持構造体60aと光入力部2,52、およびマイクロ可動ミラーアレイ3,53を位置決めし嵌合する構造についても、第4の実施の形態と同様に、ピンと孔の組み合わせに限定するものではない。
【0114】
[第6の実施の形態]
以下、図面を用いて本発明の第6の実施形態の光スイッチについて説明する。
図11は第6の実施の形態の形態による光スイッチの光入力部の分解斜視図である。図11において、前記図1〜図10によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。なお、本発明に関わる光スイッチは光学的に可逆な構成を有しているため、光ビームの進行方向を逆にしても光スイッチの機能として何ら変わるところはない。従って、本説明において光の入出力の向きは説明のために便宜的に与えた設定であり、本実施の形態を採るとき入力側あるいは出力側としての役割に限定されないことは言うまでもない。
【0115】
図11に示す光入力部2あるいは52は、本発明の第1および第2の実施の形態で示した光スイッチ1、51の光入力部の構造を分解して示したものである。光入力部2、52および入力側マイクロ可動ミラーアレイ3、53は、それぞれ配列規模が16行×16列でポート数が256である。
入力側マイクロ可動ミラーアレイ3、53を搭載するための開口部63は、図11中のX−Y平面における並進方向、およびこれと直交するZ軸を中心とした回転方向に駆動可能な微調整機構72を有している。
【0116】
微調整機構72は、同一平面上に配置された外枠72аと内枠72bを備え、これらの間は複数の板ばね72cによって接続されている。内枠72bには、入力側マイクロ可動ミラーアレイ3、53を取り付けるための複数の位置決めピン62を概ね±10μmの位置精度で設けており、これらを前記入力側マイクロ可動ミラーアレイ3、53に設けた複数のガイド孔65に嵌合させて高い精度で受動的に位置決めする。
【0117】
内枠72bは、入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53に対して分離された4つの部分から構成されており、内枠72bに取り付けられた入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53を外枠72aに対して独立に位置調整することができる。このように複数の入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53に対して個別に調整可能な調整機構を備えることにより、入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53の製造精度の個体差や、各入力側マイクロ可動ミラーアレイを取り付ける際の位置誤差を調整することが可能になり、より高精度な組立が実現できる。
【0118】
前記外枠72аと分割された内枠72bの各分割部分との間には、そのY方向の一辺に2箇所の調整ネジ(図示せず)が取り付けられ、これらをねじ込むことによりX方向の並進、およびZ軸を中心とした回転について、内枠72bを移動させることができる。同様に、前記外枠72аと内枠72bの各分割部分のX方向の一辺には1箇所の調整ネジ(図示せず)が取り付けられ、これをねじこむことにより、Y方向の並進について内枠72bを移動させることができる。これらのネジの動きを組み合わせることにより、X−Y平面内の任意の方向に対して、数十μm以下のごく僅かな位置ずれを補正することが可能となる。なお、前記の調整ネジは、直交する辺の一方に2個所、他方の一辺に1箇所設けることにより並進方向の移動および回転の両方を実現するものであり、例えばX方向の一辺に2個所、Y方向の一辺に1箇所設けても前記と同様の補正を実現することができる。
【0119】
本実施の形態では、内枠72bが分割され、各分割部分が外枠72aに対して調整可能な調整機構を示したが、内枠72bが分割されず、一体で外枠72aに対して調整できるような調整機構であっても、入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53を一体で光入力部2,52に対して簡易に位置調整することができる。
本実施の形態では、光入力部2,52を構成する光ファイバアレイ6〜9から光を入力して光ビームを形成し、支持構造体60aの支持構造体同士を嵌合させるための開口部66から前記光ビームに照射された入力側マイクロ可動ミラーアレイ3、53を光学顕微鏡で観察しながら、前記微調整機構を用いて、光入力部2,52に対する入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53のずれの補正を実施した。
【0120】
その結果、光入力部2,52あるいは入力側マイクロ可動ミラーアレイ3,53の位置が、支持構造体60aの開口部61あるいは63の中心からわずかに偏って取り付けられており、図10中のZ軸を中心とする回転方向を調整すると同時にX方向とY方向がずれてしまうような場合についても、上述した第5の実施の形態と同様に、光ビームとマイクロ可動ミラーの相対的な中心ずれを概ね50μm以下に収めることができた。
【0121】
なお、本実施の形態では、光学部品を16行×16列に配列した例を示したが、本発明の効果はこの配列規模に限定されないことはいうまでもない。
また、本実施の形態では光入力部2,52を光ファイバアレイとしたが、これらは光ファイバとマイクロレンズが予め一体となった光コリメータアレイであっても構わない。
また、本実施の形態では光入力部2,52を同一面上に配置したが、本発明の第2の実施の形態のようにオフセットを与えて光路長差を与えて配置しても構わない。
また、本実施の形態では、支持構造体60аの開口部は支持構造体60aの開口部は光入力部2,52を搭載する面61、マイクロ可動ミラーアレイ3,53を搭載する面63および一対の支持構造体60を嵌合する面66の3箇所としているが、必要に応じて支持構造体を枠組みのみの形状とし、他に開口を設けても構わない。
また、支持構造体60aと光入力部2,52、およびマイクロ可動ミラーアレイ3,53を位置決めし嵌合する構造についても、第4の実施の形態と同様に、ピンと孔の組み合わせに限定するものではない。
【符号の説明】
【0122】
1,51…光スイッチ、2,52…光入力部、3,53…入力側マイクロ可動ミラーアレイ、4,55…出力側マイクロ可動ミラーアレイ、5,56…光出力部、6〜9…入力光ファイバアレイ、11〜14…出力光ファイバアレイ、15〜18,21〜24…二次元マイクロレンズアレイ、27〜30…整列基板、25…光ファイバ、26…フェルール、31…フレーム、32…貫通孔、33,35…ガイド孔、34…嵌合ピン、42…ファイバコリメータ、54…凹面ミラー、54a…反射面、60…一対の支持構造体、60a…入力側の支持構造体、60b…出力側の支持構造体、61…光ファイバアレイ搭載用の開口部、62…光ファイバアレイ搭載用の位置決めピン、63…マイクロ可動ミラーアレイ搭載用の開口部、64…マイクロ可動ミラーアレイ搭載用の位置決めピン、65…貫通孔、66…一対の支持構造体を組み合わせる開口部、67…支持構造体の嵌合ピン、68…支持構造体の嵌合孔、69…ベース、70…ベース上の嵌合ピン、71…凹面ミラー搭載用の開口部、72…微調整機構、72а…微調整機構の外枠、72b…微調整機構の内枠、72c…板ばね。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を光スイッチ内部に入力する複数の光入力ポートを有する光入力部と、
前記光信号を出力する複数の光出力ポートを有する光出力部とを有し、
前記光入力ポートから入力された光信号を偏向させ、選択された光出力ポートに出力する光スイッチにおいて、
前記光入力ポートおよび光出力ポートは、それぞれ複数の支持部材に二次元的に配列されて支持されており、
前記光入力部および光出力部は、それぞれ前記複数の支持部材の集合体によって形成されていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の光スイッチにおいて、
前記光入力ポートおよび光出力ポートは、光ファイバまたはファイバコリメータであることを特徴とする光スイッチ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光スイッチにおいて、
前記光入力部の前記集合体を構成する支持部材と、前記光出力部の前記集合体を構成する支持部材とは、光入力ポートと光出力ポートとの間の光路長の差が減少する位置に配置されていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載の光スイッチにおいて、
前記光入力部と前記光出力部との間には、傾動可能な複数のマイクロミラーを用いて前記光入力部からの光信号を偏向させて前記光出力部に伝達するマイクロ可動ミラーアレイが設けられていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項5】
請求項4記載の光スイッチにおいて、
前記マイクロ可動ミラーアレイは、前記光入力部からの光信号を偏向する入力側マイクロ可動ミラーアレイと、この入力側マイクロ可動ミラーアレイによって偏向された光信号を前記光出力部に向けて偏向する出力側マイクロ可動ミラーアレイとによって構成され、
これらの入力側マイクロ可動ミラーアレイと出力側マイクロ可動ミラーアレイとの間には、前記入力側マイクロ可動ミラーアレイにより偏向された信号光の出射角度を前記出力側マイクロ可動ミラーアレイ上の到達位置に1対1で対応させるフーリエ変換光学素子が設けられていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項6】
請求項5記載の光スイッチにおいて、
前記フーリエ変換光学素子は凹面ミラーであることを特徴とする光スイッチ。
【請求項7】
請求項6記載の光スイッチにおいて、
前記凹面ミラーの反射面はトロイダル面であることを特徴とする光スイッチ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちいずれか一つに記載の光スイッチにおいて、
前記光入力部および光出力部は、それぞれ独立した一対のフレームに装着され、
前記一対のフレームは、少なくとも前記光入力部から光出力部に向けて光信号が伝搬する経路上に開口部を有し、かつ前記光入力部および光出力部が所定の位置関係を保って配置されるための位置決め手段を有していることを特徴とする光スイッチ。
【請求項9】
請求項5ないし請求項7のうちいずれか一つに記載の光スイッチにおいて、
前記光入力部および光出力部は、それぞれ独立した一対の支持構造体に装着され、
前記光入力部を装着した支持構造体には所定の位置関係を保って前記入力側マイクロ可動ミラーアレイが装着され、
前記光出力部を装着した支持構造体には所定の位置関係を保って前記出力側マイクロ可動ミラーアレイが装着され、
前記一対の支持構造体は、少なくとも前記光入力部から光出力部に向けて光信号が伝搬する経路上に開口部を有し、
前記一対の支持構造体の嵌合部、あるいは前記一対の支持構造体とこれを搭載するベースの間に、前記光入力部および光出力部が所定の位置関係を保って配置されるための第1の位置決め手段を有し、
前記一対の支持構造体、あるいは前記一対の支持構造体を搭載するベースに、前記フーリエ変換光学素子が、前記入力側マイクロ可動ミラーアレイと出力側マイクロ可動ミラーアレイの間で所定の位置関係を保って配置されるための第2の位置決め手段を有していることを特徴とする光スイッチ。
【請求項10】
請求項5ないし請求項9のうちいずれか一つに記載の光スイッチにおいて、
前記入力側マイクロ可動ミラーアレイおよび出力側マイクロ可動ミラーアレイは、前記光入力部あるいは光出力部に対する相対位置を調整する調整機構を備えていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちいずれか一つに記載の光スイッチにおいて、
前記光入力部および光出力部を形成する前記複数の支持部材の集合体は、前記複数の支持部材の相対位置を調整する調整機構を備えていることを特徴とする光スイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−28235(P2011−28235A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135298(P2010−135298)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年1月22日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告(信学技報 Vol.108 No.419)」に発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】