説明

光スペクトラムアナライザ

【課題】データ取得時間間隔を短くできる光スペクトラムアナライザを実現する。
【解決手段】被測定光の光スペクトルを測定する光スペクトラムアナライザ2において、回折格子21と、回折格子制御部3と、光検出部6と、回折格子が抽出する波長成分が成分光の光強度を検出すべきサンプリング波長となる目標回折格子角度を算出し、算出した目標回折格子角度データを内部メモリに格納する演算部5と、格納された目標回折格子角度データの一部が入力され、サンプリングのタイミングを示すトリガ信号ごとに目標回折格子角度データを出力するFIFOメモリと、FIFOメモリから出力された目標回折格子角度データと回折格子の角度とに基づいてトリガ信号を生成するトリガ信号生成部と、FIFOメモリのデータ残量が所定値以下になると内部メモリから目標回折格子角度データの続きを読みだしてFIFOメモリに入力するFIFOメモリ制御部4と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射される被測定光を特定の波長成分に分光し、分光した光の強度を測定することにより前記被測定光の光スペクトルを測定する光スペクトラムアナライザに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザなどのアクティブデバイスの波長特性を測定する光スペクトラムアナライザが知られている。光スペクトラムアナライザは、入力された被測定光をモノクロメータ内部の回折格子により分光し、サンプリング波長に対応した回折格子角度での光強度を連続的に測定することにより、光スペクトルを測定する。
【0003】
図3は従来の光スペクトラムアナライザの一例を示す構成図であり、入力部1と、入力部1より被測定光が入力されるモノクロメータ2と、モノクロメータ2の内部に備えられた回折格子21と、回折格子21により分光された成分光を受光する受光器6と、受光器6の出力を増幅する増幅器7と、増幅器7の出力をA/D変換して成分光の光強度を測定するA/D変換器8と、回折格子21を駆動する(回転させる)回折格子制御部3と、成分光の光強度のサンプリングのタイミングを制御する制御部400と、サンプリングした光強度データに基づいて光スペクトラムを生成する演算部500と、生成された光スペクトラムを表示する表示部9とを備えている。
【0004】
入力部1よりモノクロメータ2へ入力された被測定光は、モノクロメータ2内部の回折格子21により分光される。分光された成分光は受光器6に入射する。
【0005】
成分光の波長は被測定光に対する回折格子21の相対角度に依存する。演算部500は、設定されたサンプリング開始/終了波長、測定ポイント数等の測定条件から、光強度の取得を行うサンプリング波長に対応した目標回折格子角度を算出し、測定開始前に得られた目標回折格子角度データ(Dsmp)を制御部400内のメモリに書き込む。
【0006】
回折格子制御部3は、サンプリング開始波長に対応する角度からサンプリング終了波長に対応する角度まで回折格子21を駆動するとともに、現在の回折格子角度(Dgrt)を制御部400に伝達する。
【0007】
制御部400は、回折格子制御部3から入力される現在の回折格子角度Dgrtとメモリに保存された目標回折格子角度とを比較し、回折格子角度Dgrtが目標回折格子角度に至ると、サンプリングのタイミングを示すトリガ信号Strgを生成する。A/D変換器8はこのトリガ信号Strgを受けてその時の光強度データDlumを取得し、制御部400に伝達する。これをトリガ信号Strgを受けるたびに繰り返し、すべてのサンプリング波長について光強度データDlumを取得する。
【0008】
演算部500は制御部400経由で光強度データDlumを受け取り、波長対光強度の光スペクトラムデータを取得する。演算部500は、さらに、取得した光スペクトラムデータに対してレベル値の補正を施し、表示データを生成し、表示部9に表示する。
【0009】
図4は制御部400の構成を示す図であり、メモリ410、比較手段420、メモリ410のアドレスを指定するインクリメンタルカウンタ430を備えている。
【0010】
まず、測定開始時に、演算部500より測定条件に応じた目標回折格子角度データDsmpがメモリ410に初期アドレスから書き込まれる。測定時は、インクリメンタルカウンタ430は初期アドレスからメモリ410のアドレスを指定し、メモリ410は指定されたアドレスのデータを比較手段420に出力する。
【0011】
比較手段420は、メモリ410から入力された目標回折格子角度データDsmpと回折格子21の現在の角度を示す角度情報Dgrtとを比較し、回折格子角度Dgrtが目標回折格子角度に至るとトリガ信号Strgを生成する。トリガ信号StrgはA/D変換器8およびインクリメンタルカウンタ430に伝達される。インクリメンタルカウンタ430はトリガ信号Strgを受けてカウント値をインクリメントする。これにより、A/D変換器8はサンプリング波長に対応する光強度Dlumを取得する。また、トリガ信号Strgによりメモリ410に指定するアドレスが更新され、比較手段420に出力する目標回折格子角度Dsmpが更新される。
【0012】
このように、演算部500は測定開始前に測定条件に対応したサンプリング波長に対応する目標回折格子角度データDsmpをすべて算出し、回折格子21の駆動前にメモリ410へ初期アドレスから順次書き込んでおく。これにより、回折格子21の駆動時にサンプリング波長に対応したタイミングでトリガ信号Strgが順次生成され、設定された測定ポイント数で光スペクトラムを連続的に測定することができる。
【0013】
下記特許文献には、光スペクトラムアナライザが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−314661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、光スペクトラムアナライザにおいて1pm程度の分解能を得るためには回折格子21の角度分解能は0.16秒(1/800万回転)程度必要であり、サンプリング波長範囲が1000nmの場合には、回折格子角度データDsmpは20bit以上必要となる。また、測定ポイント数を50001ポイントとした場合、目標回折格子角度データを格納するメモリ410は1Mbit以上必要となる。すなわち、メモリ410の容量によって測定ポイント数が制限されてしまう。
【0016】
また、インクリメンタルカウンタ430や比較手段420はFPGA(Field Programmable Gate Array)などの論理回路により構成される。一方、メモリ410については、FPGA内部に1Mbit以上のメモリを持たせるには容量の大きい高価なFPGAを使用する必要があるため、FPGA外部に配置したメモリICで構成する。
しかし、このメモリICはFPGAにより制御することになるため、安価なDRAM(Dynamic Random Access Memory)ではなく、リフレッシュ動作が必要ない高価なSRAM(Static Random Access Memory)を使用する必要があり、コストアップにつながる。
【0017】
また、上記のような構成では、測定開始前にメモリ410に対して全測定ポイント分の目標回折格子角度データDsmpを書き込むため、測定開始までに時間がかかる。
【0018】
その他の方式として、演算部500に目標回折格子角度データDsmpを格納し、メモリ410の代わりにFPGA内部に回折格子角度データDsmpと同ビット数のレジスタを持たせ、トリガ信号Strgの1生成毎に演算部500に対して割り込みを発生し、このレジスタの値を更新する方式が考えられる。
しかし、この場合、制御部400と演算部500の接続をPCI−33MHzとし、PCIドライバ内部で割り込み処理を実施しても割り込み認識まで8μs程度の時間が必要であり、データを書き込みは1μs必要である。
光ペクトラムアナライザのデータ取得時間間隔は最短50μs程度であるが、この方式の場合割り込み処理が頻発するため、このような短いデータ取得時間間隔の場合には演算部500の負荷が大きくなり、補正処理、描画処理に遅延が発生する可能性がある。
【0019】
本発明は、従来の問題をなくし、SRAM等のハードウェアを削減しコストダウンと測定開始時間の短縮を可能にし、描画等の遅延を発生させることなくデータ取得時間間隔を短くできる光スペクトラムアナライザを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
入射される被測定光を特定の波長成分に分光し、分光した光の強度を測定することにより前記被測定光の光スペクトルを測定する光スペクトラムアナライザにおいて、
前記被測定光から特定の波長成分を抽出し、成分光として出力する回折格子と、
この回折格子を駆動して前記被測定光との相対角度を変化させることにより前記成分光の波長を変化させる回折格子制御部と、
前記成分光の光強度を検出する光検出部と、
前記回折格子が抽出する波長成分が前記成分光の光強度を検出すべきサンプリング波長となる目標回折格子角度を算出し、算出した目標回折格子角度データを内部メモリに格納する演算部と、
前記内部メモリに格納された前記目標回折格子角度データの一部が入力され、サンプリングのタイミングを示すトリガ信号ごとに前記目標回折格子角度データを出力するFIFO(First-In First-Out)メモリと、
このFIFOメモリから出力された前記目標回折格子角度データと前記回折格子の角度とに基づいて前記トリガ信号を生成するトリガ信号生成部と、
前記FIFOメモリのデータ残量が所定値以下になると前記内部メモリから前記目標回折格子角度データの続きを読みだして前記FIFOメモリに入力するFIFOメモリ制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の光スペクトラムアナライザにおいて、
前記FIFOメモリ制御部は、前記FIFOメモリのデータ残量が所定値以下になると前記演算部に対して割り込みを発生させ、
前記演算部は、この割り込みを受けて前記FIFOメモリに前記目標回折格子角度データを入力することを特徴とする。
【0022】
請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の光スペクトラムアナライザにおいて、
前記FIFOメモリ制御部は、前記演算部のポーリング期間中に前記FIFOメモリに前記目標回折格子角度データの入力を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、
前記被測定光から特定の波長成分を抽出し、成分光として出力する回折格子と、
この回折格子を駆動して前記被測定光との相対角度を変化させることにより前記成分光の波長を変化させる回折格子制御部と、
前記成分光の光強度を検出する光検出部と、
前記回折格子が抽出する波長成分が前記成分光の光強度を検出すべきサンプリング波長となる目標回折格子角度を算出し、算出した目標回折格子角度データを内部メモリに格納する演算部と、
前記内部メモリに格納された前記目標回折格子角度データの一部が入力され、サンプリングのタイミングを示すトリガ信号ごとに前記目標回折格子角度データを出力するFIFOメモリと、
このFIFOメモリから出力された前記目標回折格子角度データと前記回折格子の角度とに基づいて前記トリガ信号を生成するトリガ信号生成部と、
前記FIFOメモリのデータ残量が所定値以下になると前記内部メモリから前記目標回折格子角度データの続きを読みだして前記FIFOメモリに入力するFIFOメモリ制御部とを備えているため、
SRAM等のハードウェアを削減しコストダウンと測定開始時間の短縮を可能にし、描画等の遅延を発生させることなくデータ取得時間間隔を短くできる光スペクトラムアナライザを実現できる。
【0024】
請求項2の発明によれば、
前記FIFOメモリ制御部は、前記FIFOメモリのデータ残量が所定値以下になると前記演算部に対して割り込みを発生させ、前記演算部は、この割り込みを受けて前記FIFOメモリに前記目標回折格子角度データを入力するため、
FIFOメモリのデータ残量に応じて効率的に目標回折格子角度データを更新でき、演算部にかかる負担が低減され、描画等の遅延が発生するおそれをさらに低減できる。
【0025】
請求項3の発明によれば、
前記FIFOメモリ制御部は、前記演算部のポーリング期間中に前記FIFOメモリに前記目標回折格子角度データの入力を行うため、
演算部への割り込み回数を減らすことができ、演算部にかかる負担が少なくなり、描画等の遅延を発生させるおそれをさらに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による光スペクトラムアナライザの一実施例を示す構成図である。
【図2】図1の実施例の制御部の構成を示す図である。
【図3】従来の光スペクトラムアナライザの一例を示す構成図である。
【図4】図3の従来例の制御部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0027】
図1は本発明による光スペクトラムアナライザの一実施例を示す構成図であり、図3の従来例の制御部400を制御部4に、演算部500を演算部5に置き換えたものである。
【0028】
本実施例の光スペクトラムアナライザは、入力部1と、入力部1より被測定光が入力されるモノクロメータ2と、モノクロメータ2の内部に備えられた回折格子21と、回折格子21により分光された成分光を受光する受光器6と、受光器6の出力を増幅する増幅器7と、増幅器7の出力をA/D変換して成分光の光強度を測定するA/D変換器8と、回折格子21を駆動する(回転させる)回折格子制御部3と、成分光の光強度のサンプリングのタイミングを制御する制御部4と、サンプリングした光強度データに基づいて光スペクトラムを生成する演算部5と、生成された光スペクトラムを表示する表示部9とを備えている。演算部5はCPU、制御部4はFPGAで構成する。
【0029】
入力部1よりモノクロメータ2へ入力された被測定光は、モノクロメータ2内部の回折格子21により分光される。分光された成分光は受光器6に入射し、光強度データに変換される。
【0030】
成分光の波長は被測定光に対する回折格子21の相対角度に依存する。演算部5は、設定されたサンプリング開始/終了波長、測定ポイント数等の測定条件から、光強度の取得を行うサンプリング波長に対応した目標回折格子角度を算出する。
【0031】
演算部5は、表示部9に光スペクトラムを表示するための描画処理等も実施するため、ウィンドウズ(登録商標)のようなOS(オペレーティングシステム)を実行させて動作させる。そのため、演算部5は数100MByteの内部メモリ容量を持っており、数Mbitの目標回折格子角度データDsmpを演算部5の内部メモリに保持させておくことは容易に可能である。演算部5は、得られた目標回折格子角度を一旦すべて演算部5内の内部メモリに記憶させ、後述するように測定開始前にこの内部メモリから目標回折格子角度データの一部を読み出して制御部4内のメモリに書き込む。
【0032】
回折格子制御部3は、サンプリング開始波長に対応する角度からサンプリング終了波長に対応する角度まで回折格子21を駆動するとともに、現在の回折格子角度Dgrtを制御部4に伝達する。
【0033】
なお、回折格子角度θと波長λの関係は、モノクロメータ2の構成がツェルニ・ターナ配置の場合、
λ=2d/{m・cos(a)・sinθ}
d:回折格子の溝本数
m:回折次数
a:回折格子に対する入射光および出射光のためす角度/2
である。
【0034】
測定時における回折格子21の駆動は、振動抑制のため一定速度とする必要がある。光強度データDlumを等波長間隔で連続的に取得するために、トリガ信号Strgは時間一定間隔ではなく、波長一定間隔となるように生成される。
【0035】
制御部4は、回折格子制御部3から入力される現在の回折格子角度Dgrtとメモリに保存された目標回折格子角度とに基づいて、サンプリングのタイミングを示すトリガ信号Strgを生成する。A/D変換器8はこのトリガ信号Strgを受けてその時の光強度データDlumを取得する。
【0036】
図2は制御部4の構成を示す図であり、複数段からなるFIFOメモリ41と、比較手段42を備えている。
【0037】
測定開始時に、演算部5より目標回折格子角度データDsmpがFIFOメモリ41が満杯となるまで入力される。測定時には、FIFOメモリ41に蓄積された目標回折格子角度データDsmpが比較手段42に出力される。
【0038】
比較手段42は、FIFOメモリ41から入力される目標回折格子角度データDsmpと回折格子21の現在の角度を示す角度情報Dgrtとを比較し、回折格子角度Dgrtが目標回折格子角度に至るとトリガ信号Strgを生成する。
【0039】
トリガ信号StrgはA/D変換器8およびFIFOメモリ41に伝達される。A/D変換器8はトリガ信号Strgを受けてサンプリング波長に対応する光強度Dlumを取得する。また、FIFOメモリ41はトリガ信号Strgを受けて出力データを更新し、次のサンプリング波長に対応する新しい目標回折格子角度データDsmpを比較手段42に提供する。
【0040】
比較手段42は、更新された目標回折格子角度データDsmpと角度情報Dgrtとを比較し、回折格子角度Dgrtが目標回折格子角度に至ると次のトリガ信号Strgを生成する。FIFOメモリ41は、新たに生成されたトリガ信号Strgを受けて再度目標回折格子角度Dsmpを更新する。
【0041】
測定時はトリガ信号Strgが生成されるたびにFIFOメモリ41に蓄積されたデータが1段ずつ減少する。FIFOメモリ41のデータ残量が所定値(たとえば半分)になったときに、FIFOメモリ41は演算部5に対して割り込み信号Sintを発生する。演算部5は、この割り込み信号Sintを受けて、再度FIFOメモリ41が満杯となるまで目標回折格子角度データDsmpを入力する。
【0042】
以上の動作を繰り返すことで、回折格子21の駆動時にサンプリング波長に対応したタイミングでトリガ信号Strgが順次生成され、設定された測定ポイント数で光スペクトラムを連続的に測定することができる。
【0043】
A/D変換器8で取得した各光強度データDlumは、制御部4経由で演算部5に伝達され、光スペクトラムデータが生成される。演算部5は、さらに、生成された光スペクトラムデータに対してレベル値の補正を施し、表示データを生成し、表示部9に表示する。
【0044】
FIFOメモリ41は論理回路消費量が少ないので、制御部4を構成するFPGAの内部に実装可能である。したがって、従来例のように外付けの大容量メモリ(SRAM等)を用いる必要がなく、実装面積低減とコストダウンが可能である。
また、従来例のように測定開始前に全測定ポイント分の目標回折格子角度データDsmpをSRAMに書き込む必要がないため、測定開始までの時間を短縮できる。
また、従来例のように、目標回折格子角度データDsmpを格納するSRAMの容量に起因する測定ポイント数の制限をなくすことができる。
【0045】
本実施例の効果の一例を記載する。制御部4と演算部5の接続をPCI−33MHzとし、PCIドライバ内部で割り込み処理を実施した場合には、前述のように、割り込み処理に8μs、書き込み処理に1μs必要である。
本実施例において、FIFOメモリの段数を16段とし、半分の残り8段となったときに割り込み信号Sintを生成するようにした場合、一回の割り込み処理に必要な時間は、
8μs+1μs×8=16μs
であり、一回の割り込みに対する処理時間はレジスタのみとした場合の2倍程度となる。しかしながら、割り込み回数が1/8回となるため、全体的には演算部5に対する負荷を大幅に低減でき、描画処理等の遅延を発生させないで済む。
【0046】
本実施例は以上のように構成され、
被測定光から特定の波長成分を抽出し、成分光として出力する回折格子21と、この回折格子21を駆動して被測定光との相対角度を変化させることにより成分光の波長を変化させる回折格子制御部3と、成分光の光強度を検出する受光部6と、
回折格子21が抽出する波長成分が成分光の光強度を検出すべきサンプリング波長となる目標回折格子角度を算出し、算出した目標回折格子角度データDsmpを内部メモリに格納する演算部5と、演算部5の内部メモリに格納された目標回折格子角度データDsmpの一部が入力され、サンプリングのタイミングを示すトリガ信号Strgごとに目標回折格子角度データDsmpを出力するFIFOメモリ41と、このFIFOメモリ41から出力された目標回折格子角度データDsmpと回折格子の角度Dgrtとに基づいてトリガ信号Strgを生成する比較手段42と、FIFOメモリ41のデータ残量が所定値以下になると演算部5の内部メモリから目標回折格子角度データDsmpの続きを読みだしてFIFOメモリ41に入力する制御部4とを備えているため、
SRAM等のハードウェアを削減しコストダウンと測定開始時間の短縮を可能にし、描画等の遅延を発生させることなくデータ取得時間間隔を短くできる光スペクトラムアナライザを実現できる。
【0047】
また、制御部4は、FIFOメモリ41のデータ残量が所定値以下になると演算部5に対して割り込み信号Sintを発生させ、演算部5は、この割り込み信号Sintを受けてFIFOメモリ41に目標回折格子角度データDsmpを入力するため、
FIFOメモリ41のデータ残量に応じて効率的に目標回折格子角度データDsmpを更新でき、演算部5にかかる負担が低減され、描画等の遅延が発生するおそれをさらに低減できる。
【0048】
なお、本実施例では、FIFOメモリ41はデータ残量に応じて目標回折格子角度データDsmpの更新が行われたが、FIFOメモリ41が十分に深い容量を有している場合には、割り込み信号Sint生成前であって演算部5のポーリング期間中にFIFOメモリ41に目標回折格子角度データDsmpの入力を行うようにしてもよい。これにより、さらに演算部5への割り込み回数を減らすことができ、演算部5にかかる負担が少なくなり、描画等の遅延を発生させるおそれをさらに低減できる。
【0049】
また、モノクロメータ2の構成によっては、回折格子角度に応じ、分解能や光強度を調整する光学スリットを移動させる必要がある。光学スリットの移動にはステッピングモータを使用するが、この駆動パルスの生成にも本発明を応用できる。
すなわち、FIFOメモリに駆動パルスを生成すべき目標回折格子角度データを格納しておき、現在の回折格子角度がFIFOから出力される目標回折格子角度データに至ったときにステッピングモータの駆動パルスを生成する。駆動パルス生成後はFIFOメモリの出力データを更新するとともに、FIFOメモリのデータ残量が所定値以下になった場合に目標回折格子角度データの続きをFIFOメモリに入力するように構成する。
【0050】
さらに、フィルタなどのパッシブデバイスの波長特性を測定する場合には、波長可変光源とパワーメータを組み合わせて測定する。波長可変光源は回折格子または回折格子と対に配置されたミラーを駆動し、この角度に応じた波長の光を出力する。この場合の波長特性測定では、波長可変光源の出力光の波長が測定波長に一致した場合にパワーメータへトリガ信号を出力する。出力光の波長は角度データと対応するので、パワーメータへのトリガ信号の生成も本発明の光スペクトラムアナライザと同様な構成となるため、本発明を応用できる。
【0051】
なお、受光部6は光検出部に相当し、FIFOメモリ42は内部メモリに相当し、比較手段42はトリガ信号生成部に相当し、制御部4はFIFOメモリ制御部に相当する。
【符号の説明】
【0052】
21 回折格子
3 回折格子制御部
4 制御部
41 FIFOメモリ
42 比較手段
5 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射される被測定光を特定の波長成分に分光し、分光した光の強度を測定することにより前記被測定光の光スペクトルを測定する光スペクトラムアナライザにおいて、
前記被測定光から特定の波長成分を抽出し、成分光として出力する回折格子と、
この回折格子を駆動して前記被測定光との相対角度を変化させることにより前記成分光の波長を変化させる回折格子制御部と、
前記成分光の光強度を検出する光検出部と、
前記回折格子が抽出する波長成分が前記成分光の光強度を検出すべきサンプリング波長となる目標回折格子角度を算出し、算出した目標回折格子角度データを内部メモリに格納する演算部と、
前記内部メモリに格納された前記目標回折格子角度データの一部が入力され、サンプリングのタイミングを示すトリガ信号ごとに前記目標回折格子角度データを出力するFIFOメモリと、
このFIFOメモリから出力された前記目標回折格子角度データと前記回折格子の角度とに基づいて前記トリガ信号を生成するトリガ信号生成部と、
前記FIFOメモリのデータ残量が所定値以下になると前記内部メモリから前記目標回折格子角度データの続きを読みだして前記FIFOメモリに入力するFIFOメモリ制御部と、
を備えたことを特徴とする光スペクトラムアナライザ。
【請求項2】
前記FIFOメモリ制御部は、前記FIFOメモリのデータ残量が所定値以下になると前記演算部に対して割り込みを発生させ、
前記演算部は、この割り込みを受けて前記FIFOメモリに前記目標回折格子角度データを入力することを特徴とする請求項1に記載の光スペクトラムアナライザ。
【請求項3】
前記FIFOメモリ制御部は、前記演算部のポーリング期間中に前記FIFOメモリに前記目標回折格子角度データの入力を行うことを特徴とする請求項1に記載の光スペクトラムアナライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−226980(P2011−226980A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98708(P2010−98708)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】