説明

光センサ回路

【目的】感度ばらつきの悪化やADコンバータへの接続の問題を生ずることなく感度を向上することのできる光センサ回路を提供する。
【構成】本発明の光センサ回路は、光電変換素子として光電流iを生成するフォトダイオードPD,光電流iを積分する積分回路1、選択回路2,増幅手段としての出力バッファ回路3を有する。光センサ回路の感度切り換えは増幅手段の増幅率を変更することにより行う。これにより増幅率を上げても感度ばらつきが大きくなるという問題は生じない。そして、増幅率の変更に合わせて積分回路1の出力初期値を変更して出力範囲が増幅率により変わらないようにするため、ADコンバータへの接続の問題も生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば三角測距の原理に基づく測距装置などに適用することのできる光センサ回路に関し、特に光電流を積分して基準電圧を初期値とする電圧信号に変換する光センサ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラの自動焦点などに用いられる測距装置では、離間した光学系を介して光センサアレイ上に被写体の2つの像を投影し、光センサアレイより得られる映像データより2像の相対変位(位相差)を求めている。被写体までの距離は位相差の逆数に定数を乗じたものとして求めることができる。カメラは広い輝度範囲の被写体に対応することが求められることから、測距装置の光センサアレイに用いられる光センサ回路も低輝度から高輝度まで広範囲の輝度に対応することが求められる。また、位相差検出の精度向上のため、光センサ回路の感度ばらつき低減も求められている。
このような光センサ回路として、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの光電変換素子から生成された光電流を積分して、基準電圧を初期値とする電圧信号に変換する光センサ回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3はこのような光センサ回路を用いた光センサアレイの第1の従来例を示す回路図であり、図4はその動作を示すタイミングチャートである。図3において、PD1は光電変換素子として光電流iを生成するフォトダイオード、11は光電流iを積分する積分回路、12は選択回路、13は出力バッファ回路である。積分回路11はオペアンプ(演算増幅器)OP11と、オペアンプOP11の反転入力端子と出力端子の間に並列に接続されたコンデンサC1,リセットスイッチRSW,および直列に接続されたコンデンサC2と感度切り替えスイッチCSWと、で構成されている。オペアンプOP11の非反転入力端子には基準電圧VREFが入力されている。また、フォトダイオードPD1と積分回路11が1つの画素回路14を構成している。選択回路12は画素選択スイッチPIXSWが画素回路と同数並置されていて、各画素選択スイッチPXSWの一端は各画素回路の出力端子であるオペアンプOP11の出力端子に接続され、他端は出力バッファ回路13に共通接続されている。なお、各画素選択スイッチPXSWの一端に接続される14以外の画素回路は、図示を省略している。選択回路12は複数の画素選択スイッチPXSWのうち1つだけをオン(導通)させ、当該画素選択スイッチPXSWに接続されている画素回路14を出力バッファ回路13に接続し、画素回路14と出力バッファ回路13で光センサ回路を構成してその出力を外部に出力させる。出力バッファ回路13は反転入力端子と出力端子が短絡されたオペアンプOP12で構成されるボルテージフォロワであり、オペアンプOP12の非反転入力端子は選択回路12と接続されている。
【0004】
図4のタイミングチャートにより第1の従来例の光センサ回路の動作を説明する。まず、積分回路11の積分動作を開始する前に、リセットスイッチRSWをオンしてコンデンサC1の両端電圧を短絡し、積分回路11の出力電圧(図3のa点の電位)をVREFに初期化する。言い換えれば、基準電圧VREFは初期値を与えるものになっている。初期化動作後、リセットスイッチRSWをオフすると積分回路11の積分動作が開始する。感度切り替えスイッチCSWは積分回路の積分動作に用いられる積分容量Cを切り換えるスイッチであり、感度切り替えスイッチCSWがオンであれば積分動作に用いられる積分容量CはC=C1+C2となり、オフであればC=C1となる。フォトダイオードPD1で生成された光電流iが積分容量Cに積分されることにより、a点の電位は初期値VREFから積分時間tとともに低下していく。選択回路12により選択された画素回路14の出力は出力バッファ回路13によりインピーダンス変換されて光センサ回路の出力信号Vout1として出力される。リセットスイッチRSWがオフした瞬間の積分時間tを0とすると、出力信号Vout1は(1)式で表わされる。
【0005】
Vout1=(VREF−(i・t/C))・A ・・・(1)
ここでAは出力バッファ回路の増幅率で、A=1である。(1)式よりCの値を変えることにより光センサ回路の感度を変えられることが分かる。すなわち、感度切り替えスイッチCSWによりC=C1とすると高感度に、C=C1+C2とすると低感度になる。積分回路11の積分動作、すなわち光センサ回路の積分動作はa点の電位および出力信号Vout1が0V(GND:接地電位)に達したときに終了する。同じ光電流iに対し切り替えスイッチCSWで感度を切り換えたときの積分回路11の出力(a点の電位)と出力信号Vout1の様子を図4に示す。高感度,低感度いずれの場合も積分回路11の出力と出力信号Vout1が同形となっている。そして、高感度,低感度いずれの信号も初期値は同じVREFとなっているが、信号がGNDに達する積分時間tENDが異なっている。高感度(C=C1)の場合のtENDをt、低感度(C=C1+C2)の場合のtENDをtとすると、t/t=C1/(C1+C2)となる。
【0006】
図5は第2の従来例を示す回路図であり、図6はその動作を示すタイミングチャートである。図5において、PD2は光電変換素子として光電流iを生成するフォトダイオード、21は光電流iを積分する積分回路、22は選択回路、23は出力バッファ回路である。積分回路22はオペアンプ(演算増幅器)OP21,オペアンプOP21の反転入力端子と出力端子の間に並列に接続されたコンデンサC1およびリセットスイッチRSWで構成されている。オペアンプOP21の非反転入力端子には基準電圧VREFが入力されている。また、フォトダイオードPD2と積分回路21が1つの画素回路24を構成している。選択回路22は画素選択スイッチPIXSWが画素回路と同数並置されていて、各画素選択スイッチPXSWの一端は各画素回路の出力端子であるオペアンプOP21の出力端子に接続され、他端は出力バッファ回路23に共通接続されている。なお、各画素選択スイッチPXSWの一端に接続される24以外の画素回路は、図示を省略している。選択回路22は複数の画素選択スイッチPXSWのうち1つだけをオン(導通)させ、当該画素選択スイッチPXSWに接続されている画素回路24を出力バッファ回路23に接続し、画素回路24と出力バッファ回路23で光センサ回路を構成してその出力を外部に出力させる。出力バッファ回路23はオペアンプOP22,オペアンプOP22の反転入力端子と出力端子の間に並列に接続された第1の感度切り替えスイッチSSW1と抵抗R1,およびオペアンプOP22の反転入力端子とGNDの間に直列に接続された第2の感度切り替えスイッチSSW2と抵抗R2で構成されている。オペアンプOP22の非反転入力端子は選択回路22と接続されている。第1および第2の感度切り替えスイッチSSW1,SSW2は相補的にオンオフし、第1の感度切り替えスイッチSSW1がオンで第2の感度切り替えスイッチSSW2がオフの場合、出力バッファ回路23はボルテージフォロワとなり、出力バッファ回路23の増幅率Aは1となる。逆に第1の感度切り替えスイッチSSW1がオフで第2の感度切り替えスイッチSSW2がオンの場合、出力バッファ回路23は増幅率A=(R1+R2)/R2の非反転増幅回路となる(ここでは抵抗R1,R2の抵抗値も便宜的にR1,R2としている)。すなわち感度切り替えスイッチSSW1,SSW2および抵抗R1,R2は出力バッファ回路23の増幅率変更手段を構成し、出力バッファ回路23は1と(R1+R2)/R2という2つの増幅率を増幅率変更手段により切り換えることのできる増幅手段となっている。
【0007】
図6のタイミングチャートにより第2の従来例の光センサ回路の動作を説明する。まず、積分回路21の積分動作を開始する前に、リセットスイッチRSWをオンしてコンデンサC1の両端電圧を短絡し、積分回路21の出力電圧(図5のa点の電位)をVREFに初期化する。初期化動作後、リセットスイッチRSWをオフすると積分回路21の積分動作が開始する。フォトダイオードPD2で生成された光電流iが積分容量CであるコンデンサC1に積分されることにより、a点の電位は初期値VREFから積分時間tとともに低下していく。選択回路22により選択された画素回路24の出力は出力バッファ回路23によりA倍に増幅されて光センサ回路の出力信号Vout2として出力される。リセットスイッチRSWがオフした瞬間の積分時間tを0とすると、出力信号Vout2は(2)式で表わされる。
【0008】
Vout2=(VREF−(i・t/C1))・A ・・・(2)
ここで、増幅率Aは上述のように、1または(R1+R2)/R2である。(2)式より2つの感度切り替えスイッチSSW1,SSW2で増幅率Aを変更することにより、光センサ回路の感度を変えられることが分かる。すなわち、A=1とすれば低感度、A=(R1+R2)/R2とすれば高感度となる。積分回路21の積分動作、すなわち光センサ回路の積分動作はa点の電位および出力信号Vout2が0V(GND:接地電位)に達したときに終了する。同じ光電流iに対し増幅率Aを切り換えたときの積分回路21の出力(a点の電位)とVout2を、図6に示す。積分回路21の出力波形は高感度,低感度の感度によらないものになっている。出力信号Vout2は、高感度,低感度どちらの場合も同じ時刻に積分動作を開始し、同じ時刻で全積分動作を終了していて、各時刻の高感度のVout2が低感度のVout2のA倍となっている。但し、光センサ回路を高感度にするそもそもの目的は積分時間を短縮することにあるため、高感度においては積分を最後まで行わず、出力信号Vout2が初期値(VREF×A)よりVREF変化した時点(Vout2=VREF×(A−1)となった時点)で積分を終了させる。また、低感度の場合の出力信号Vout2は、積分回路21の出力と同形になっている。
【0009】
高感度,低感度における積分時間(出力信号Vout2が初期値からVREF変化するまでの時間)をそれぞれt,tとすると、tとtの関係は次の(3)式で表される。
/t=1/A(高感度)=R1/(R1+R2) ・・・(3)
【特許文献1】特開平11−304584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、光センサ回路は広い輝度範囲に対応できることと、感度ばらつきの減少の双方が求められている。より広い輝度範囲に対応するためには光センサ回路の感度を向上させて、より低い輝度にも対応できるようにする必要がある。図3に示す第1の従来例の光センサ回路をより高感度化させるためには、積分回路11の積分容量をさらに小さくする必要がある。光センサ回路を集積回路により実現する場合、コンデンサC1,C2の容量を小さくすることはそのレイアウト面積を小さくすることに相当する。レイアウト面積を集積回路の製造限界近くまで小さくすると、今度はレイアウト面積のばらつき、すなわちコンデンサの容量ばらつきが問題となってしまう。そのため感度ばらつきも増大してしまい、高感度化と感度ばらつきの低減が両立しないという課題があった。
一方、図5に示す第2の従来例の光センサ回路では増幅率を上げても感度ばらつきが大きくなるという問題は生じないが、ADコンバータへの接続が問題となる。光センサ回路の出力から位相差を求めるためには、まず光センサ回路のアナログ出力をADコンバータによりデジタル化して後段のロジック回路に引き渡す必要がある。図6に示すように、光センサ回路の出力範囲は増幅率Aにより低感度と高感度とでA倍異なるが、ADコンバータの入力電圧範囲は固定されているため、ADコンバータが2つの感度の双方に対し適切な入力範囲をもつことができなくなってしまう。例えば、低感度の光センサ回路の出力範囲0〜VREFに合わせてADコンバータの入力電圧範囲を定めると、高感度の場合の出力範囲がADコンバータの入力電圧範囲を超えてしまうという問題が生じる。また、高感度の光センサ回路の出力範囲0〜VREF×Aに合わせてADコンバータの入力電圧範囲を定めると、低感度における出力範囲0〜VREFの出力信号をデジタル化する際の量子化精度が悪くなってしまうという問題が生じてしまう。そして、第2の実施例に関し背景技術で説明したように、高感度において実際に後段の信号処理に供せられるのはVREF×(A−1)〜VREF×Aの出力信号範囲だけであるので、高感度における量子化精度が悪くなってしまうという問題も生じてしまう。
【0011】
この発明は上記問題を解決するものであって、感度ばらつきの悪化やADコンバータへの接続の問題を生ずることなく感度を向上することのできる光センサ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、受光した光量に応じた値の光電流を生成する光電変換手段と、該光電流を積分して第1の所定電圧を初期値とする光電流積分信号に変換する光電流積分手段と、前記光電流積分信号を増幅して出力する増幅手段と、前記第1の所定電圧値を変更する初期値変更手段と、前記増幅手段の増幅率を変更する増幅率変更手段と、を備える光センサ回路であることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記光積分信号が第2の所定電圧を終端値とするものであり、前記第1の所定値と前記第2の所定値の差に前記増幅率を乗じた値が一定であるように、前記初期値変更手段と前記増幅率変更手段が連動して前記第1の所定値および前記増幅率を変更することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記光電流が小さいと判断されるときは前記第1の所定値と前記第2の所定値の差の絶対値を小さくするように前記第1の所定値を変更するとともに前記増幅率の絶対値を大きくし、前記光電流が大きいと判断されるときは前記第1の所定値と前記第2の所定値の差の絶対値を大きくするように前記第1の所定値を変更するとともに前記増幅率の絶対値を小さくすることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに係る発明において、前記光電流積分手段が、その反転入力端子に前記光電変換手段が接続された第1の演算増幅器と、該第1の演算増幅器の反転入力端子と出力端子の間に並列に接続された容量およびスイッチ手段と、第1の切り替え手段を介して前記第1の演算増幅器の非反転入力端子に接続された複数の基準電圧と、を有し、前記切り替え手段は前記複数の基準電圧のうちの1つを選択して前記第1の演算増幅器の非反転入力端子に接続することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに係る発明において、前記増幅手段は第2の切り替え手段を介して複数の前記光電流積分手段に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明の光センサ回路は、光電変換手段,光電流積分手段,増幅手段,初期値変更手段および増幅率変更手段を備え、光センサ回路の感度切り換えは増幅率変更手段により増幅手段の増幅率を変更することにより行う。これにより増幅率を上げても感度ばらつきが大きくなるという問題は生じない。そして、増幅率の変更に合わせて初期値変更手段により光電流積分手段の出力初期値を変更して出力範囲が増幅率により変わらないようにするから、ADコンバータへの接続の問題も生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、本明細書の全図において相互に対応する部位には同一符号を付し、重複部分については後述での説明を適宜省略する。
図1は本実施の形態の光センサ回路の構成を示す回路図であり、図2はそのタイミングチャートである。図1において、PDは光電変換素子として光電流iを生成するフォトダイオード、1は光電流iを積分する積分回路、2は選択回路、3は増幅手段としての出力バッファ回路である。積分回路1はオペアンプOP1,オペアンプOP1の反転入力端子と出力端子の間に並列に接続されたコンデンサC1およびリセットスイッチRSWで構成されている。積分回路1は従来例2の図5に示される積分回路21とほぼ同じ構成であるが、オペアンプOP1の非反転入力端子に2つ基準電圧VREF1,VREF2が2つの基準電圧選択スイッチREFSW1,REFSW2により切り換えられて接続されるようになっているところが相違している。すなわち、基準電圧VREF1,VREF2および基準電圧選択スイッチREFSW1,REFSW2は積分回路1の積分初期値を変更する初期値変更手段を構成している。2つの基準電圧選択スイッチREFSW1,REFSW2は相補的にオンオフし、スイッチREFSW1がオンのときスイッチREFSW2がオフで基準電圧VREF1がオペアンプOP1の非反転入力端子に接続され、スイッチREFSW1がオフのときスイッチREFSW2がオンで基準電圧VREF2がオペアンプOP1の非反転入力端子に接続される。また、フォトダイオードPDと積分回路1が1つの画素回路4を構成している。選択回路2は画素選択スイッチPIXSWが画素回路と同数並置されていて、各画素選択スイッチPXSWの一端は各画素回路の出力端子であるオペアンプOP1の出力端子に接続され、他端は出力バッファ回路3に共通接続されている。なお、各画素選択スイッチPXSWの一端に接続される4以外の画素回路は、図示を省略している。出力バッファ回路3の機能・構成は従来例2の図5に示される出力バッファ回路23と同じであるので(オペアンプOP22の名前がOP2に変わるだけである)、詳細な説明は省略する。
【0016】
本実施の形態では、次の(4)式が成立するように、VREF1,VREF2,R1,R2の値を設定しておく。
VREF1=VREF2・(R1+R2)/R2 ・・・(4)
なお、(4)式よりVREF1>VREF2となる。光センサ回路の感度を低感度にする場合はスイッチREFSW1,SSW1をオンにし、スイッチREFSW2,SSW2をオフにして、積分回路1の積分初期値をVREF1とするとともに出力バッファ回路3の構成をボルテージフォロワ(増幅率A=1)にする。光センサ回路の感度を高感度にする場合はスイッチREFSW1,SSW1をオフにし、スイッチREFSW2,SSW2をオンにして、積分回路1の積分初期値をVREF2とするとともに出力バッファ回路3の構成を非反転増幅回路(増幅率A=(R1+R2)/R2)にする。
【0017】
図2のタイミングチャートにより図1に示す実施の形態の光センサ回路の動作を説明する。図2には、同じ光電流iに対する出力信号Voutの波形が、低感度と高感度の場合の双方について示されている。最終的に得られる出力信号Voutの波形は、図に示す第1の従来例の光センサ回路出力信号Vout1の波形に類似したものとなるが、感度を積分容量に依存せずに変更させるため、感度ばらつきが悪化することはないものになっている。光センサ回路の動作としては、積分回路1の積分動作を開始する前に、まずリセットスイッチRSWをオンしてコンデンサC1の両端電圧を短絡し、積分回路1の出力電圧(図1のa点の電位)をVREF1(低感度の場合)もしくはVREF2(高感度)に初期化する。初期化動作後、リセットスイッチRSWをオフすると積分回路1の積分動作が開始する。フォトダイオードPDで生成された光電流iが積分容量C1に積分されることにより、a点の電位は初期値VREF1もしくはVREF2から積分時間tとともに低下していく。選択回路2により選択された画素回路4の出力は出力バッファ回路3によりA倍に増幅されて光センサ回路の出力信号Voutとして出力される。積分回路1の出力はリセットスイッチRSWがオフした瞬間の積分時間tを0とすると、低感度の場合の出力信号Voutは(5)式で表わされる。
【0018】
Vout=(VREF1−(i・t/C)) ・・・(5)
一方、高感度の場合の出力信号Voutは(6)式で表わされる。
Vout=(VREF2−(i・t/C))・(R1+R2)/R2)・・・(6)
また、高感度,低感度における積分時間(出力信号VoutがGNDに達するまでの時間)をそれぞれt,tとすると、tとtの関係は次の(7)式で表される。
/t=1/A(高感度)=R1/(R1+R2) ・・・(7)
(5)式と(6)式より、t=0における低感度および高感度の出力信号Vout初期値はそれぞれVREF1とVREF2・(R1+R2)/R2になるが、(4)式より両者は等しくなる。すなわち、図2に示すように、積分回路1の出力範囲は異なるものの、光センサ回路が(4)式を満たすよう構成されているため、光センサ回路の出力Vout自体の出力範囲は感度によらず常に0〜VREF1となり、本実施の形態の光センサ回路はADコンバータへの接続に問題のないものになっている。また、上述のように積分回路1の積分容量C1を徒に小さくする必要がないため、感度ばらつきも小さくできるものとなっている。
【0019】
なお、今までの説明において低感度と高感度とは相対的な感度の違いを示すものであり、絶対的な感度を示すものでないことは言うまでもない。
また、出力バッファ回路3として、例えば特許文献1に示されるような他の形式の増幅回路を適用してもよい。この場合、当該増幅回路の複数の増幅率をAi(i=1,2,・・・)とし、増幅率Aiに対応して積分回路1に与えられる基準電圧をViとすると、Ai×Viがiによらず一定になるようにしておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の光センサ回路の構成を示す回路図である。
【図2】図1に示す回路のタイミングチャートである。
【図3】第1の従来例の光センサ回路の構成を示す回路図である。
【図4】図3に示す回路のタイミングチャートである。
【図5】第2の従来例の光センサ回路の構成を示す回路図である。
【図6】図5に示す回路のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0021】
1 積分回路
2 選択回路
3 出力バッファ回路
4 画素回路
C1 コンデンサ
OP1,OP2 オペアンプ
PD フォトダイオード
PIXSW 画素選択スイッチ
R1,R2 抵抗
REF1,REF2 基準電圧
REFSW1,REFSW2 基準電圧選択スイッチ
SSW1,SSW2 感度切り替えスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光した光量に応じた値の光電流を生成する光電変換手段と、該光電流を積分して第1の所定電圧を初期値とする光電流積分信号に変換する光電流積分手段と、前記光電流積分信号を増幅して出力する増幅手段と、前記第1の所定電圧値を変更する初期値変更手段と、前記増幅手段の増幅率を変更する増幅率変更手段と、を備えることを特徴とする光センサ回路。
【請求項2】
前記光積分信号が第2の所定電圧を終端値とするものであり、前記第1の所定値と前記第2の所定値の差に前記増幅率を乗じた値が一定であるように、前記初期値変更手段と前記増幅率変更手段が連動して前記第1の所定値および前記増幅率を変更することを特徴とする請求項1に記載の光センサ回路。
【請求項3】
前記光電流が小さいと判断されるときは前記第1の所定値と前記第2の所定値の差の絶対値を小さくするように前記第1の所定値を変更するとともに前記増幅率の絶対値を大きくし、前記光電流が大きいと判断されるときは前記第1の所定値と前記第2の所定値の差の絶対値を大きくするように前記第1の所定値を変更するとともに前記増幅率の絶対値を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の光センサ回路。
【請求項4】
前記光電流積分手段が、その反転入力端子に前記光電変換手段が接続された第1の演算増幅器と、該第1の演算増幅器の反転入力端子と出力端子の間に並列に接続された容量およびスイッチ手段と、第1の切り替え手段を介して前記第1の演算増幅器の非反転入力端子に接続された複数の基準電圧と、を有し、前記切り替え手段は前記複数の基準電圧のうちの1つを選択して前記第1の演算増幅器の非反転入力端子に接続することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光センサ回路。
【請求項5】
前記増幅手段は第2の切り替え手段を介して複数の前記光電流積分手段に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光センサ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−317383(P2006−317383A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142441(P2005−142441)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】