説明

光センサ装置の製造方法及び光センサ装置

【課題】封止部材をエッチングすることなく、光センサ装置の受光面を封止部材から露出できるようにした光センサ装置の製造方法及び光センサ装置を提供する。
【解決手段】粘着テープの粘着性を有する面であって、リードフレーム30´から露出している領域にIR素子10の受光面16を貼付する工程と、リードフレーム30´の表面にIC素子20を取り付ける工程と、リードフレーム30´とIC素子20とをワイヤー45で電気的に接続する工程と、IR素子10とIC素子20とをワイヤー46で電気的に接続する工程と、IR素子10とIC素子20とワイヤー45、46をモールド樹脂49で覆う工程と、モールド樹脂49及びリードフレーム30´から粘着テープを除去する工程と、ダイシングストリート36に沿ってモールド樹脂49及びリードフレーム30´を切断して、パッケージを形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線等の光を検出する光センサ素子と、この光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子とを備えた光センサ装置の製造方法及び光センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。かかる文献には、光電変換素子の光電変換部に光を導入するために、光電変換素子を封止する封止部材(例えば、エポキシ樹脂類に代表される熱硬化性樹脂類のような封止樹脂)に開口部が形成された構成が開示されている。この開口部の底面が、光が入射してくる外界と光電変換部との界面を成す窓となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/095834号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているように、光を導入するための窓は、封止部材を物理的又は化学的にエッチングすることにより形成される。
しかしながら、この方法では、例えば、封止部材をフォトレジスト等でマスクする工程と、マスクされた封止部材をエッチングする工程とが必要である。このため、工程数が増え、製造コストが増えてしまう可能性があった。また、光電変換部の受光面には当然のことながら、光に関して高い透過性が求められるが、エッチングにより窓を形成すると、光電変換部の受光面はエッチング雰囲気に晒されてしまう。このため、光電変換部の受光面は意図せずエッチングダメージを負ってしまい、光の透過性が低下してしまう可能性があった。
【0005】
また、特許文献1には、その図1Fに示されているように、信号処理回路を有するシリコン基板(IC素子)等の上に光電変換素子を積んだスタック構造や、その図7に示されているように、IC素子及び光電変換素子をインターポーザ上に積んだスタック構造が開示されている。前者の構造ではIC素子と光電変換素子とが金属バンプ等を介して直に接続され、後者の構造ではIC素子と光電変換素子とがインターポーザを介して電気的に接続される。前者の構造では、IC素子と光電変換素子との間で高精度な位置合わせが必要であり、接合圧力も低く制限する必要があることから、製造技術上の難易度が高い。また、両構造とも上下の基板を積層したスタック構造であり、このスタック構造を接続端子(リードフレーム)上で封止部材により封止していることから、装置全体の厚みが大きくなるという課題もあった。
そこで、この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、受光面の品質低下を抑えると共に、厚みの小さい光センサ装置を提供できるようにした光センサ装置の製造方法及び、光センサ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る光センサ装置の製造方法は、光を検出する光センサ素子と、前記光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子と、を備えた光センサ装置をリードフレームを用いて製造する方法であって、前記リードフレームの第1の面に粘着テープの粘着性を有する面を貼付する工程と、前記粘着テープの前記粘着性を有する面であって、前記リードフレームから露出している領域に前記光センサ素子の受光面を貼付する工程と、前記リードフレームの前記第1の面の反対側の第2の面上に前記半導体素子を取り付ける工程と、前記リードフレームと前記半導体素子とを電気的に接続する工程と、前記光センサ素子と前記半導体素子とを封止部材で覆う工程と、前記封止部材及び前記リードフレームから前記粘着テープを除去する工程と、前記封止部材及び前記リードフレームを切断してパッケージを形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
このような方法によれば、封止部材をエッチングすることなく、光センサ素子に光を導入するための窓を封止部材に形成することができる。従来技術と比べて、封止部材に窓を形成するためのエッチング工程が不要であるため、工程数の増加や製造コストの上昇を抑えることができる。また、光センサ素子の受光面にエッチングダメージを与えずに済むため、例えば光の透過性など、受光に関する性能の品質低下を防ぐことができる。また、半導体素子上に光センサを積んだスタック構造ではなく、光センサ素子と半導体素子とをインターポーザを含めて樹脂封止した構造でもないため、比較的簡単な方法で厚みの小さい光センサ装置を作製することができる。
【0008】
なお、「光センサ装置」としては、例えば、後述するハイブリッドIR50が該当する。また、「光センサ素子」としては、例えば、後述するIR素子10が該当する。さらに、「半導体素子」としては、例えば、後述するIC素子20が該当する。また、リードフレームの「第1の面」は例えば裏面が該当し、その「第2の面」は例えば表面が該当する。さらに、「封止部材」としては、例えば、後述するモールド樹脂49が該当する。
【0009】
また、上記の光センサ装置の製造方法において、前記リードフレームは、第1の部位と、前記第1の部位よりも厚さが小さく、前記第1の部位と比べて前記第2の面が低い位置にある第2の部位と、を含み、前記半導体素子を前記リードフレームの前記第2の面に取り付ける工程では、前記半導体素子を前記第2の部位の前記第2の面に取り付けることを特徴としてもよい。このような方法によれば、例えば、厚さが全体的に均一なリードフレームに半導体素子を取り付ける場合と比較して、半導体素子の取付け位置を低くすることができるので、光センサ装置の厚さをより薄くすることができる。光センサ装置の小型、薄型化にさらに寄与することができる。
【0010】
本発明の別の態様に係る光センサ装置は、光を検出する光センサ素子と、前記光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子と、第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有し、前記第2の面に前記半導体素子が取り付けられると共に、前記半導体素子と電気的に接続されたリードフレームと、前記光センサ素子と前記半導体素子とを覆う封止部材と、を備え、前記光センサ素子の受光面は、前記リードフレームの前記第1の面と同一平面に配置された状態で、前記封止部材から露出していることを特徴とする。
【0011】
このような構成であれば、上記の製造方法により製造された光センサ装置を提供することができる。受光面にエッチングダメージを負っていない光センサ素子と、この光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子とを混載し、厚みが小さい光センサ装置を提供することができる。
また、上記の光センサ装置において、前記リードフレームは、第1の部位と、前記第1の部位よりも厚さが小さく、前記第1の部位と比べて前記第2の面が低い位置にある第2の部位と、を含み、前記半導体素子は前記第2の部位の前記第2の面に取り付けられていることを特徴してもよい。このような構成であれば、半導体素子の取付け位置を低くすることができるので、より小型、薄型化された光センサ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受光面の品質低下を抑えると共に、厚みの小さい光センサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係るIR素子10の表面側の構成例を示す図。
【図2】第1実施形態に係るIC素子20の、信号処理回路21の構成例を示す図。
【図3】第1実施形態に係るリードフレーム30の構成例を示す図。
【図4】第1実施形態に係るハイブリッドIR50の製造方法を示す図(その1)。
【図5】第1実施形態に係るハイブリッドIR50の製造方法を示す図(その2)。
【図6】第1実施形態に係るハイブリッドIR50の製造方法を示す図(その3)。
【図7】第1実施形態に係るハイブリッドIR50の製造方法を示す図(その4)。
【図8】第1実施形態に係るハイブリッドIR50の製造方法を示す図(その5)。
【図9】第1実施形態に係るハイブリッドIR50の製造方法を示す図(その6)。
【図10】第1実施形態に係るハイブリッドIR50の構成例を示す図(その1)。
【図11】第1実施形態に係るハイブリッドIR50の構成例を示す図(その2)。
【図12】第2実施形態に係るハイブリッドIR50の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合もある。
(1)第1実施形態
(1.1)IR素子の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係るIR素子10の表面側の構成例を示す平面図である。図1に示すIR素子10は、赤外線を検出する光センサ素子であり、赤外線等の光を透過する光透過基板11と、この光透過基板11の表面側に形成された受光部12と、を備える。
【0015】
これらの中で、光透過基板11としては、GaAs基板が用いられる。また、GaAs基板の他に、例えば、Si、InAs、InP、GaP、Geなどの半導体基板、もしくは、GaN、AlN、サファイア基板、ガラス基板などの基板が用いられる。このような基板によれば、赤外線等の特定波長の光を、光透過基板11の裏面から表面にかけて効率的に透過させることができる。
また、受光部12は、複数の光電変換素子13と、光電変換素子13で光電変換された電気信号を出力するためのパッド部14と、配線15と、を有する。光電変換素子13はいずれも量子型のフォトダイオードであって、配線15によって直列に接続されている。接続される光電変換素子13の数が大きいほど発生する起電力は大きくなって、センサとしての感度が高まる。
【0016】
光電変換素子13は、例えば、光透過基板11上に形成されたインジウム(ln)及びアンチモン(Sb)を含むInSbのようなn型化合物半導体層(n層)13aと、このn層13a上に形成されたノンドープの化合物半導体層層(π層)13bと、このπ層13b上に形成され、バンドギャップがn層13a及びπ層13bよりも大きいAlInSbのような化合物半導体層13cと、この化合物半導体層13c上に形成され、p型の不純物が高濃度にドーピングされているp型化合物半導体層(p層)13dとにより構成されている。このように、n層13aと、π層13bと、n層13a及びπ層13bよりもバンドギャップが大きい化合物半導体層13cと、p層13dとが順次積層されてなる光電変換素子13は、2000nm〜7400nmの赤外線を検出することができる。
【0017】
パッド部14は、受光部12の光電変換で得られた電気信号をIC素子に出力するために設けられている。このパッド部14は、例えば、互いに離間して配置された一対のパッド電極14a及び14bを有する。一方のパッド電極14aと複数の光電変換素子13からなる列の一端との間、及び、他方のパッド電極14bと上記列の他端との間がそれぞれ、配線15によって電気的に接続されている。
【0018】
ところで、このIR素子10において、パッド部14は、IR素子10の表面のより中心に近い一部範囲(中心部)に配置されている。また、複数の光電変換素子13は、このパッド部14の周囲に配置されている。このような配置によれば、パッド電極14a、14bにワイヤーボンディングする際、圧力や超音波が加わっても光透過基板11が欠損し難いという利点がある。また、光透過基板11が欠損し難いため、パッド電極14a、14bに対して、Au等からなるワイヤーを充分な圧力や超音波で接合することができる。このため、ワイヤーをパッド電極14a、14bにより確実に圧着することができ、ワイヤーボンディングの信頼性を高めることができる。次に、このIR素子10と同一のパッケージ内に配置されるIC素子20の構成例について説明する。
【0019】
(1.2)IC素子の構成
図2は、本発明の第1実施形態に係るIC素子20の、信号処理回路21の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、IC素子20が有する信号処理回路21は、IR素子10やその他の各回路に対して必要に応じてバイアス電流もしくは電圧を与える電源回路22と、IR素子10からの電気信号を増幅する増幅回路23と、増幅された電気信号を予め設定した電圧と比較する判定回路24と、基準値としての予め設定した電圧を判定回路24に入力する基準値発生回路25とを含み、判定回路24は外部へ判定結果となるデジタル信号を出力する。信号処理回路21に含まれる上記の各要素はそれぞれ対応する要素と電気的に接続されている。
【0020】
一般に、IR素子を含む光センサ素子の出力信号の振幅、もしくは変動量は数μVから数mV以下と小さいため、電気信号は信号処理回路の増幅回路により増幅される。よって、IR素子10の受光部12に光が入射すると、該入射光は電気信号に変換されて増幅回路23へと出力される。増幅回路23では、電気信号を増幅して出力する。その後、増幅回路23から出力された電気信号は、人体や炎からの赤外線を感知したか否かを判断するための判定回路24に入力される(なお、この電気信号は、外部にアナログ出力しても良い。)。
【0021】
このとき、判定回路24には、基準値発生回路25により、判定回路24にて判定すべき波長の光、例えば、人体や炎からの赤外線に応じて設定された電圧(基準値電圧)が入力されており、判定回路24は、該基準値電圧と増幅された電気信号とを比較することにより、該比較結果の電気信号を外部へデジタル出力する。
なお、図2に示したような信号処理回路21を有するIC素子20は、量産性、設計の自由度等の観点から最も一般的なシリコン基板にCMOSプロセスやBiCMOSプロセス、もしくはバイポーラプロセス等により形成するのが好ましいが、GaAs基板をはじめとする化合物半導体基板に形成してもよく、用途や、使用環境等に応じて最適な材料とプロセスを選択することができる。次に、リードフレームの構成例について説明する。
【0022】
(1.3)リードフレームの構成
図3(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係るリードフレーム30の構成例を示す平面図である。図3(a)はリードフレーム30の表面側を示し、図3(b)はリードフレーム30の裏面側を示している。
図3(a)及び(b)に示すリードフレーム30は、例えば、銅(Cu)板を、フォトリソグラフィ技術により、その表面及び裏面の側からそれぞれ選択的にエッチングし、ニッケル(Ni)−パラジウム(Pd)−金(Au)等のめっき(鍍金)処理を施すことにより形成されたものである。
【0023】
図3(a)において、リードフレーム30内の白色の領域は表面と裏面との間で貫通している領域(以下、貫通領域ともいう。)31を示し、ハッチングを付した領域は表面の側からハーフエッチングされた領域(以下、ハーフエッチング領域ともいう。)32aを示す。また、グレーの領域はエッチング時にフォトレジスト等でマスクされることにより、エッチングされなかった領域(以下、非エッチング領域)33aを示す。同様に、図3(b)において、リードフレーム30内の白色の領域は貫通領域31を示し、ハッチングを付した領域は裏面の側からハーフエッチングされた、ハーフエッチング領域32bを示す。また、グレーの領域はエッチング時にフォトレジスト等でマスクされことによりエッチングされなかった、非エッチング領域33bを示す。
【0024】
また、図3(a)に示すように、リードフレーム30の表面側のハーフエッチング領域32aには、IC素子を取り付けるためのダイパッド領域34が設定されている。さらに、このダイパッド領域34の隣(図3(a)では、右隣)にある貫通領域には、IR素子10を配置するための領域35が設定されている。
さらに、図3(a)及び(b)に示すリードフレーム30の外周部は、後述のダイシング工程で、ダイシングブレード等により切断される領域(カーフ幅という。)36となっている。
【0025】
なお、後述の図4(b)に示すように、リードフレーム30の表面側が非エッチング領域33aであり、且つその裏面側も非エッチング領域33bである部位(以下、第1の部位ともいう。)37の厚さをT1とし、リードフレーム30の表面側がハーフエッチング領域32aで裏面側が非エッチング領域である部位(以下、第2の部位ともいう。)38の厚さをT2としたとき、これらの大小関係は、T1>T2となっている。T1は例えば0.4[mm]であり、T2は例えば0.2[mm]である。また、第2の部位38は、第1の部位37と比べて、その表面が断面視で凹んでいる(即ち、第2の部位38の表面は、第1の部位37の表面よりも低い位置にある。)。
ダイパッド領域34は、このような第2の部位38の表面に設定されている。次に、このリードフレーム30を用いて、光センサ装置の一種であるハイブリッドIR50を製造する方法について説明する。
【0026】
(1.4)ハイブリッドIRの製造方法
図4(a)〜図9(b)は、本発明の第1実施形態に係るハイブリッドIR50の製造方法を示す工程図である。また、図10(a)〜図11は、当該製造方法により製造されたハイブリッドIR50の構成例を示す斜視図である。図4〜図10の各図において、(a)は表面側(即ち、第2の面の側)から見た平面図であり、(b)は(a)をX4−X´4〜X10−X´10線でそれぞれ切断したときの断面図である。なお、図8(a)では、図面の複雑化を回避するために上金型の図示を省略している。
【0027】
図4(a)及び(b)に示すように、まず始めに、リードフレーム30´の裏面側(即ち、第1の面の側)に粘着テープ41を貼付する。ここでは、図3(a)及び(b)に示したリードフレーム30を1つの単位パターンとし、この単位パターンが平面視で縦方向及び横方向にそれぞれ連続して並ぶように配置されたリードフレーム30´を用意する。そして、この用意されたリードフレーム30´の裏面に粘着テープ41を貼付する。リードフレーム30´の裏面側に粘着テープ41を貼付することによって、貫通領域31の底面に粘着テープ41の粘着層が露出した状態となる。
【0028】
なお、粘着テープ41としては、粘着性を有すると共に、耐熱性を有する樹脂製のテープが用いられる。粘着性については、粘着層の糊厚がより薄いほうが好ましい。また、耐熱性については、約150℃〜200℃の温度に耐えることが必要とされる。このような粘着テープ41として、例えばポリイミドテープを用いていることができる。ポリイミドテープは、約280℃に耐える耐熱性を有している。このような高い耐熱性を有するポリイミドテープは、後のモールドやワイヤーボンディング時に加わる高熱にも耐えることが可能である。また、粘着テープ41としては、ポリイミドテープの他に、以下のテープを用いることも可能である。
【0029】
・ポリエステルテープ 耐熱温度、約130℃(但し使用条件次第で耐熱温度は約200℃にまで達する)。
・テフロン(登録商標)テープ 耐熱温度:約180℃
・PPS(ポリフェニレンサルファイド) 耐熱温度:約160℃
・ガラスクロス 耐熱温度:約200℃
・ノーメックペーパー 耐熱温度:約150〜200℃
・他に、アラミド、クレープ紙が粘着テープ41として利用し得る。
【0030】
次に、図5(a)及び(b)に示すように、粘着テープ41の粘着性を有する面であって、リードフレーム30´から露出している領域(その中でも、図3(a)及び(b)に示した、IR素子を配置するための領域35)にIR素子10を貼付する。この貼付(即ち、IR素子のダイボンディング)は、IR素子10の裏面(即ち、図1に示した光電変換素子13やパッド部14が形成されている面と向かい合う面)16を貼り付け面として行う。なお、この貼付に際して、IR素子10の裏面16には予め保護膜(図示せず)を形成しておいてもよい。保護膜としては、例えばフォトレジストを用いることができる。このような保護膜は、例えば、IR素子10の基材である光透過基板11をダイシングする前に成膜しておくことができる。
【0031】
次に、図6(a)及び(b)に示すように、リードフレーム30´の表面に設定されているダイパッド領域にIC素子20を取り付ける。この取付け(即ち、IC素子のダイボンディング)は、例えば、IC素子20の裏面(即ち、上述の信号処理回路21などが形成された面と向かい合う面)を取付け面として、銀(Ag)ペースト等の接着剤を介して行う。
【0032】
次に、図7(a)及び(b)に示すように、IC素子20とリードフレーム30´、及び、IC素子20とIR素子10をそれぞれ電気的に接続する。ここでは、IC素子20の表面にあるパッド電極26とリードフレーム30´のボンディング用端子部39とをAu等からなるワイヤー45で接続すると共に、IC素子20の表面にあるパッド電極27とIR素子10の表面にあるパッド電極14a、14bとをAu等からなるワイヤー46で接続する(即ち、ワイヤーボンディングを行う)。
【0033】
なお、IC素子20とリードフレーム30´との接続は、リードフレーム30´のボンディング用端子部39からIC素子20のパッド電極26に向かってワイヤー45を伸ばす、所謂逆ボンディングによって行うことが好ましい。即ち、ボールの形成を伴う1stボンドをリードフレーム30´のボンディング用端子部39に対して行い、2ndボンドをIC素子20のパッド電極26に対して行う。このような方法であれば、IC素子20のパッド電極27よりも、リードフレーム30´のボンディング用端子部39の方が低い位置にあるため、IC素子20のパッド電極26からリードフレーム30´のボンディング用端子部39に向かってワイヤー45を伸ばす、所謂正ボンディングの場合と比較して、ボンディング後のワイヤー45の高さを低くすることができる。
【0034】
また、IR素子10とIC素子20との接続は、IR素子10のパッド電極14a、14bからIC素子20のパッド電極27に向かってワイヤー46を伸ばすこと(つまり、IC素子20から見て逆ボンディング)によって行う。即ち、ボールの形成を伴う1stボンドをIR素子10のパッド電極14a、14bに対して行い、2ndボンドをIC素子20のパッド電極26に対して行う。このような方法であれば、IC素子20のパッド電極27よりも、IR素子10のパッド電極14a、14bの方が低い位置にあるため、ボンディング後のワイヤー46の高さを低くすることができる。
【0035】
次に、図8(a)及び(b)に示すように、リードフレーム30´の表面側に上金型47を配置すると共に、リードフレーム30´の裏面側にした下金型48を配置する。そして、上金型47と下金型48とによりリードフレーム30´を挟み込み、上金型47と下金型48とに挟まれた空間内にサイドからモールド樹脂を注入し、充填する。これにより、図9(a)及び(b)に示すように、リードフレーム30´の表面側において、IR素子10とIC素子20及びワイヤー45、46をモールド樹脂49で封止する。
【0036】
なお、モールド樹脂49としては、例えばエポキシ樹脂を用いることが可能である。また、この樹脂封止の工程では、上金型とリードフレーム30´の表面側の非エッチング領域33aとが隙間無く接触し、且つ、下金型とリードフレーム30´の裏面側の非エッチング領域33bとが隙間無く接触した状態で、両金型の重ね合わせにより形成される空間のサイドからモールド樹脂49が供給される。このため、図9(a)に示すように、樹脂封止後は、非エッチング領域33aはモールド樹脂49から露出した状態となる。また、この非エッチング領域33aで囲まれているハーフエッチング領域32aにもモールド樹脂49は供給されないため、この領域もモールド樹脂49から露出した状態となる。
【0037】
次に、リードフレーム30´の裏面側から粘着テープを除去する。粘着テープの除去後、ポストキュア、ウェットブラストを施し、さらに、IR素子10の裏面に図示しない保護膜が形成されている場合は、当該保護膜を除去する。
その後、モールド樹脂49及びリードフレーム30´を、ダイシング装置によりダイシングし、カーフ幅36を切断する。これにより、図10(a)及び(b)に示すように、モールド樹脂及びリードフレームは個々の製品(即ち、個々のハイブリッドIR50)に切り離されて、パッケージ化される。図10(b)及び図11に示すように、上記の製造方法により製造されたハイブリッドIR50では、IR素子10の裏面16はリードフレーム30の裏面と同一平面に配置された状態で、モールド樹脂49から露出している。このモールド樹脂49から露出している裏面16がIR素子10の受光面である。この受光面16に入射した光は、光透過基板11を通って表面側の受光部12(図1参照。)に到達するようになっている。
【0038】
なお、このハイブリッドIR50を、例えばインターポーザ等の配線基板に実装する場合は、リードフレーム30の表面側を配線基板に対向させ、リードフレーム30の表面側であってモールド樹脂49から露出している端子部(例えば、図10(a)や図11に示した外部配線基板接続用端子部42)を配線基板の端子部に電気的に接続する。これにより、受光面16が遮られることなく、ハイブリッドIR50を配線基板に実装することができる。
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、IR素子10の受光面16を貼り付け面として、IR素子10を粘着テープ41に貼付した状態で樹脂封止を行い、その後、粘着テープ41を除去する。これにより、モールド樹脂49をエッチングすることなくIR素子10の受光面に光を入射させることができる。
【0039】
従来技術と比べて、光を導入するための窓を形成するために、モールド樹脂49をエッチングする必要はなく、エッチング工程とこれに付随するフォトリソグラフィ工程が不要であるため、工程数の増加や製造コストの上昇を抑えることができる。また、IR素子10の受光面16にエッチングダメージを与えずに済むため、例えば光の透過性など、受光に関する性能の品質低下を防ぐことができる。また、IC素子20上にIR素子10を積んだスタック構造ではなく、IR素子10とIC素子20とをインターポーザを含めて樹脂封止した構造でもないため、比較的簡単な方法で厚みの小さいハイブリッドIR50を作製することができる。
【0040】
また、上記の第1実施形態では、リードフレーム30のダイパッド領域34は、ハーフエッチングが施された第2の部位38の表面(即ち、ハーフエッチング領域32a)に設定されている。このため、例えば、厚さが全体的に均一な(即ち、表面にハーフエッチングが施されていない)リードフレームにIC素子を取り付ける場合と比較して、IC素子20の取付け位置を低くすることができる。これにより、ハイブリッドIR50の厚さをより薄くすることができる。上記の逆ボンディングと共に、ハイブリッドIR50のさらなる小型、薄型化に寄与することができる。
【0041】
さらに、上記の第1実施形態では、IR素子10とIC素子20とが1つのパッケージ内に配置されている。このため、これらを別々に用意し、インターポーザ等の配線基板に対してそれぞれ実装する場合と比べて、IR素子10とIC素子20との離間距離を短くすることができ、実装密度の向上が寄与することができる。また、配線基板に対する実装の部品点数を減らすことができるため、実装にかかるコストの低減が可能である。さらに、IR素子10とIC素子20とを電気的に接続する配線(例えば、図7(a)に示したワイヤー46)の全てをモールド樹脂49で封止できるため、IR素子10とIC素子20との電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0042】
(2)第2実施形態
上記の第1実施形態では、ワイヤーボンディング工程で、IR素子10とIC素子20とをワイヤー46のみを介して電気的に接続する場合について説明した。しかしながら、本発明において、IR素子10とIC素子20との接続方法はこれに限定されることはない。
図12は、本発明の第2実施形態に係るハイブリッドIR50の構成例を示す平面図である。図12に示すように、本発明では、IR素子10のパッド電極14a、14bとリードフレーム30のボンディング用端子部40とをAu等からなるワイヤー46aで電気的に接続すると共に、このボンディング用端子部40とIC素子20のパッド電極27とをAu等からなるワイヤー46bで電気的に接続してもよい。つまり、リードフレーム30のボンディング用端子部40を経由して、IR素子10とIC素子20とを電気的に接続してもよい。このような方法であっても、上記の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0043】
また、図12に示すように、IR素子10とIC素子20とをリードフレーム30のボンディング用端子部40を経由して接続する場合は、IR素子10とボンディング用端子部40との接続、及び、IC素子20とボンディング用端子部40との接続を、それぞれ逆ボンディングによって行うことが好ましい。即ち、リードフレーム30のボンディング用端子部40からIR素子10のパッド電極14a、14bに向かってワイヤー46aを伸ばすことが好ましく、リードフレーム30のボンディング用端子部40からIC素子20のパッド電極27に向かってワイヤー46bを伸ばすことが好ましい。
このような方法であれば、正ボンディングの場合と比較して、ボンディング後のワイヤー46a、46bの高さを低くすることができるため、ハイブリッドIR50の小型、薄型化に寄与することができる。
【0044】
(3)その他の実施形態
なお、上記の第1、第2実施形態では、例えば図1に示したように、IR素子10のパッド部14として、IR素子10の表面の中心部に一対のパッド電極14a、14bを配置した構造を示したが、これはあくまで一例である。本発明において、IR素子のパッド部は、例えば、IR素子10の表面の中心部で互いに離間して配置された3つ以上のパッド電極で構成されていてもよい。また、各パッド電極の配置位置も、IR素子10の表面の中心部ではなく、例えば、受光部12の周縁部であってもよい。このような構成であっても、IR素子10とIC素子20とを電気的に接続することが可能であり、IR素子10から電気信号を出力させることができる。
【0045】
また、上記の第1、第2実施形態では、光センサ素子の一例として、2000nm〜7400nmの赤外線を検出可能なIR素子を例示した。しかしながら、本発明において光センサ素子はこれに限定されるものではない。本発明において、光センサ素子は例えば紫外線のみを検出する素子であってもよく、又は、紫外線と赤外線の両方を検出する素子であってもよい。
【0046】
一例を挙げると、光透過基板11上にn層と、π層と、n層及びπ層よりもバンドギャップが大きい化合物半導体層と、p層とが順次積層されてなる光電変換素子13において、n層にInSbではなく、AlN、InGaP、InGaAsP、InAsSbといった他の材料を用いれば、波長が約250nmの紫外線から、波長が約12μmの赤外線までを検出可能な光センサ素子を作成することが可能である。このような場合は、紫外線から赤外線までを検出する光センサ素子と、この光センサ素子から出力される電気信号を処理するIC素子20とを、1つのパッケージ内に備えた光センサ装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 IR素子
11 光透過基板
12 受光部
13 光電変換素子
14 パッド部
14a パッド電極
14b パッド電極
15 配線
16 裏面(受光面)
20 IC素子
21 信号処理回路
22 電源回路
23 増幅回路
24 判定回路
25 基準値発生回路
26、27 パッド電極
30、30´ リードフレーム
31 貫通領域
32a ハーフエッチング領域
32b ハーフエッチング領域
33a 非エッチング領域
33b 非エッチング領域
34 ダイパッド領域
35 IR素子を配置するための領域
36 ダイシングストリート
37 第1の部位
38 第2の部位
39、40 リードフレームのボンディング用端子部
41 粘着テープ
42 リードフレームの外部配線基板接続用端子部
45、46、46a、46b ワイヤー
47 上金型
48 下金型
49 モールド樹脂
50 ハイブリッドIR

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を検出する光センサ素子と、前記光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子と、を備えた光センサ装置をリードフレームを用いて製造する方法であって、
前記リードフレームの第1の面に粘着テープの粘着性を有する面を貼付する工程と、
前記粘着テープの前記粘着性を有する面であって、前記リードフレームから露出している領域に前記光センサ素子の受光面を貼付する工程と、
前記リードフレームの前記第1の面の反対側の第2の面上に前記半導体素子を取り付ける工程と、
前記リードフレームと前記半導体素子とを電気的に接続する工程と、
前記光センサ素子と前記半導体素子とを封止部材で覆う工程と、
前記封止部材及び前記リードフレームから前記粘着テープを除去する工程と、
前記封止部材及び前記リードフレームを切断してパッケージを形成する工程と、を含むことを特徴とする光センサ装置の製造方法。
【請求項2】
前記リードフレームは、
第1の部位と、
前記第1の部位よりも厚さが小さく、前記第1の部位と比べて前記第2の面が低い位置にある第2の部位と、を含み、
前記半導体素子を前記リードフレームの前記第2の面に取り付ける工程では、
前記半導体素子を前記第2の部位の前記第2の面に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の光センサ装置の製造方法。
【請求項3】
光を検出する光センサ素子と、
前記光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子と、
第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有し、前記第2の面に前記半導体素子が取り付けられると共に、前記半導体素子と電気的に接続されたリードフレームと、
前記光センサ素子と前記半導体素子とを覆う封止部材と、を備え、
前記光センサ素子の受光面は、前記リードフレームの前記第1の面と同一平面に配置された状態で、前記封止部材から露出していることを特徴とする光センサ装置。
【請求項4】
前記リードフレームは、
第1の部位と、
前記第1の部位よりも厚さが小さく、前記第1の部位と比べて前記第2の面が低い位置にある第2の部位と、を含み、
前記半導体素子は前記第2の部位の前記第2の面に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の光センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−114167(P2012−114167A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260533(P2010−260533)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】