説明

光センサ

【課題】光の左右比が飽和することが抑制された光センサを提供する。
【解決手段】半導体基板に複数の受光素子が形成され、受光素子の形成面上に、透光膜を介して遮光膜が形成され、遮光膜に、受光素子それぞれに対応して透光用の開口部が形成されている。上記形成面に沿う仮想直線に対して線対称となるように、一対の受光素子が半導体基板に形成され、これら一対の受光素子に対応する一対の開口部が、仮想直線に対して線対称となるように遮光膜に形成されており、一対の受光素子それぞれは、仮想直線の一方から他方に向って、中央がへこんだ凹形状を成し、その横幅が、一端から他端に向うにしたがって太くなっている。そして、形成面に交差する光によって、形成面に投影した、一対の開口部それぞれの少なくとも一部が、対応する受光素子、及び、その受光素子の両端を結ぶ線によって囲まれた領域に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に、光を電気信号に変換する受光素子が複数形成され、半導体基板における受光素子の形成面上に、透光膜を介して遮光膜が形成され、遮光膜に、透光用の開口部が形成された光センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、半導体基板にフォトダイオードが複数形成され、その形成面上に透光性を有する透光層が形成され、その透光層に遮光性を有する遮光マスクが形成され、その遮光マスクに光伝播エリアが複数形成された光センサが提案されている。この光センサでは、遮光マスクの光伝播エリアによって、フォトダイオードの受光面に入射する光の範囲が規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許6875974号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される光センサでは、対を成す2つのフォトダイオードが左右方向に隣接しており、これら2つのフォトダイオードそれぞれの受光面に入射する光の範囲が、2つのフォトダイオードの上方に位置する1つの光伝播エリアによって規定されている。したがって、左方から光センサに光が入射した場合、右方のフォトダイオードの出力信号が、左方のフォトダイオードの出力信号よりも大きくなる。これとは反対に、右方から光センサに光が入射した場合、左方のフォトダイオードの出力信号が、右方のフォトダイオードの出力信号よりも大きくなる。したがって、対を成す2つのフォトダイオードの出力信号を比べることで、光が左方から入射しているのか、右方から入射しているのかを検出することが可能となっている。
【0005】
ところで、上記構成では、左方のフォトダイオードの出力信号を、対を成す2つのフォトダイオードの出力信号の総和によって割った値(第1の値)と、右方のフォトダイオードの出力信号を、対を成す2つのフォトダイオードの出力信号の総和によって割った値(第2の値)と、を算出し、これら2つの値の比をとることで、光が、光センサに対して左方からどれくらい入射しているのか、若しくは、右方からどれくらい入射しているのか、を検出することができる。すなわち、光の左右比を検出することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、フォトダイオードの形成面(受光面)上に、透光層を介して遮光マスクが形成され、その遮光マスクに光伝播エリアが形成されている。斜め上方からフォトダイオードの受光面に入射する光は、遮光マスクによって遮られるが、その光がフォトダイオードの形成面に入射する範囲は、受光面と光伝播エリアとの距離に依存する。特許文献1では、その距離が透光層の厚さによって決定されており、その厚さが薄いために、フォトダイオードの形成面に入射する光の範囲が狭まっている。
【0007】
このため、光の入射方向によっては、左方のフォトダイオードの受光面に光が入射するが、右方のフォトダイオードの受光面に光が入射しない場合が生じる。この場合、右方のフォトダイオードの出力信号がゼロとなるので、2つのフォトダイオードの出力信号の総和が左方のフォトダイオードの出力信号と同等となり、第1の値が1、第2の値が0となる。これとは反対に、右方のフォトダイオードの受光面に光が入射するが、左方のフォトダイオードの受光面に光が入射しない場合、左方のフォトダイオードの出力信号がゼロとなるので、2つのフォトダイオードの出力信号の総和が右方のフォトダイオードの出力信号と同等となり、第1の値が0、第2の値が1となる。このように、いずれの値も一定となる(飽和する)ため、光が左方から入射しているのか、右方から入射しているのかを検出することはできても、光の入射角度に対応した光の左右比を検出することができなくなる。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、光の左右比が飽和することが抑制された光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、半導体基板の一面側に、光を電気信号に変換する受光素子が複数形成され、半導体基板における受光素子の形成面上に、透光膜を介して遮光膜が形成され、遮光膜に、受光素子それぞれに対応して透光用の開口部が形成された光センサであって、受光素子の形成面に沿う仮想直線に対して線対称となるように、一対の受光素子が半導体基板に形成され、これら一対の受光素子に対応する、一対の開口部が、仮想直線に対して線対称となるように遮光膜に形成されており、一対の受光素子それぞれは、仮想直線の一方から他方に向って、中央がへこんだ凹形状を成し、その横幅が、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって太くなっており、受光素子の形成面に交差する光によって受光素子の形成面に投影した、一対の開口部それぞれの投影部位の少なくとも一部が、対応する受光素子、及び、その受光素子の一方の端部と他方の端部とを結ぶ線によって囲まれた領域に位置することを特徴とする。
【0010】
以下においては、説明を簡便とするために、仮想直線に沿う方向を前後方向、この前後方向に交差し、一対の受光素子、及び、一対の開口部それぞれが並ぶ方向を左右方向と示す。また、左右方向に平行であり、一対の開口部を通る基準線から前方を前側、基準線から後方を後側と示し、一対の受光素子のうち、左方に位置する受光素子を左受光素子、右方に位置する受光素子を右受光素子と示す。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、一対の受光素子及び一対の開口部それぞれが、前後方向に対して線対称となっており、1つの受光素子に1つの開口部が対応している。そして、各受光素子は、前から後ろに向って、中央がへこんだ凹形状を成し、開口部の投影部位の少なくとも一部は、対応する受光素子、及び、その受光素子の一方の端部と他方の端部とを結ぶ線によって囲まれた領域に位置している。
【0012】
これによれば、後側から光センサに入射した光が、一対の受光素子それぞれに必ず入射されるわけではないが、前側から光センサに入射した光は、一対の受光素子それぞれに入射される。例えば、光が右前方から光センサに入射した場合、左受光素子及び右受光素子それぞれの左後方に光が入射し、光が左前方から光センサに入射した場合、左受光素子及び右受光素子それぞれの右後方に光が入射する。これにより、一対の受光素子のうち、一方の受光素子だけに前側の光が入射することが抑制され、各受光素子の出力信号が0となることが抑制される。
【0013】
また、本発明では、一対の受光素子それぞれの横幅は、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって太くなっている。これによれば、例えば、光が右前方から光センサに入射した場合、左受光素子及び右受光素子それぞれの左後方に入射する光の受光面積が異なるので、各受光素子の出力信号が異なることとなる。逆についても同様で、光が左前方から光センサに入射する場合、左受光素子及び右受光素子それぞれの右後方に入射する光の受光面積が異なるので、各受光素子の出力信号が異なることとなる。
【0014】
したがって、一対の受光素子それぞれの横幅が一定の構成とは異なり、左受光素子の出力信号を2つの受光素子の出力信号の総和によって割った値(第1の値)と、右受光素子の出力信号を2つの受光素子の出力信号の総和によって割った値(第2の値)とが異なることとなる。以上により、2つの値の比をとることで、光が、光センサに対して左方からどれくらい入射しているのか、若しくは、右方からどれくらい入射しているのか、を検出することができる。すなわち、光の左右比を検出することができる。
【0015】
以上、示したように、本発明によれば、一対の受光素子それぞれの出力信号が0となることが抑制され、それぞれの出力信号が異なるので、光の左右比が飽和することが抑制される。なお、光が前方から光センサに入射する場合、左受光素子及び右受光素子それぞれの後方に入射する光の受光面積は同一となるので、上記した2つの値は等しくなる。
【0016】
請求項2に記載のように、少なくとも二対の受光素子、及び、これらに対応する、少なくとも二対の開口部を有している構成が好ましい。
【0017】
これによれば、一対の受光素子が半導体基板に形成された構成とは異なり、少なくとも2つの左右比を算出することができるので、左右比の検出精度が向上される。
【0018】
請求項3に記載のように、一対の受光素子と、それぞれに対応する開口部との距離が、他の一対の受光素子と、それぞれに対応する開口部との距離と異なる構成が好ましい。
【0019】
受光素子に入射する光の仰角は、受光素子と開口部との距離に依存する。したがって、本発明の構成において、ある受光素子と他の受光素子それぞれの出力信号を比較することで、光センサに入射する光の仰角を検出することができる。
【0020】
また、本発明では、少なくとも二対の受光素子が半導体基板に形成されている。したがって、一対の受光素子と、独立した1つの受光素子とが半導体基板に形成された構成とは異なり、仰角特性の異なる出力信号を少なくとも2つずつ得ることができる。これにより、仰角の検出精度が向上される。
【0021】
請求項4に記載のように、一対の受光素子それぞれの横幅の中心を通る線が、所定の半径を有する円弧状を成し、開口部の投影部位は、その円弧を成す線の中心に位置した構成が好ましい。
【0022】
これによれば、開口部と受光素子の横幅の中心との距離が一定となるので、前側から入射してくる光の方向が変化したとしても、一対の受光素子の受光面それぞれに入射する光の量が、各受光素子の横幅のみに依存することとなる。これにより、前側から入射してくる光の方向が変化した際に、一対の受光素子の受光面それぞれに入射する光の量が受光素子の横幅だけに依存しなくなった結果、光の左右比の検出精度が低下することが抑制される。なお、請求項5に記載のように、円弧を成す線と、円弧の中心とを結ぶ線によって構成される扇の中心角は、180°以上が良い。これによれば、前側から光センサに入射してくる光の全てを、検出範囲に含むことができる。
【0023】
請求項6に記載のように、一対の受光素子それぞれは、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって連続的に太くなる形状を成す構成が良い。これによれば、一対の受光素子それぞれが、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって不連続的に太くなる形状とは異なり、受光素子の出力信号の入射角特性を線形に近づけることができる。
【0024】
なお、受光素子のより具体的な形状としては、請求項7若しくは請求項8に記載の構成を採用することができる。すなわち、請求項7に記載のように、一対の受光素子それぞれが、他方の端部の形状が直線状となった角笛のような形状、若しくは、請求項8に記載のように、一対の受光素子それぞれが、他方の端部の形状が曲線状となった勾玉のような形状を採用することができる。
【0025】
請求項9に記載のように、遮光膜は、透光膜に多層に形成され、各層の遮光膜に形成された開口部によって、光の仰角が規定されており、受光素子の形成面から最も離れた層の開口部を除く開口部の形状は、仮想直線の一方から他方に向って、中央がへこんだ凹形状を成し、その横幅が、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって太くなっている構成が良い。
【0026】
これによれば、2つの受光素子の間に、多層の透光膜が位置するので、ある開口部から入射した光が、その開口部と対応する受光素子以外の受光素子に入射することが抑制される。これにより、各受光素子の出力信号に、ノイズが含まれることが抑制される。
【0027】
また、本発明では、形成面から最も離れた開口部以外の開口部の形状は、受光素子の形状に対応している。これによれば、形成面から最も離れた開口部以外の開口部の形状が、受光素子の形状に対応していない構成とは異なり、その開口部を構成する遮光膜によって、受光素子に入射する光が遮られることが抑制される。
【0028】
なお、受光素子の形成面から最も離れた層の開口部を除く開口部の形状としては、受光素子の形状に対応していればよく、例えば、請求項10〜12に記載の構成を採用することができる。すなわち、形成面から最も離れた層の開口部を除く開口部の形状としては、請求項9に記載のように、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって連続的に太くなる形状、又は、請求項10に記載のように、他方の端部の形状が直線状となった角笛のような形状、若しくは、請求項11に記載のように、他方の端部の形状が曲線状となった勾玉のような形状を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態に係る光センサの概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】仰角と方位角とを説明するための概略図である。
【図4】左右比を示すグラフ図である。
【図5】光センサの変形例を示す平面図である。
【図6】光センサの変形例を示す平面図である。
【図7】光センサの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る光センサを車両に搭載した場合の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光センサの概略構成を示す平面図である。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、仰角と方位角とを説明するための概略図である。図4は、左右比を示すグラフ図である。なお、図1では、後述する受光素子21〜24及び開口部51〜54を実線で示し、受光素子21〜24及び開口部51〜54それぞれの形成位置を規定する直線を、仮想直線VLとして二点鎖線で示す。また、以下においては、後述する受光素子20の形成面10aに沿い、車両の前後を貫く方向を前後方向、形成面10aに沿い、車両の左右を貫く方向を左右方向と示す。ちなみに、上記した仮想直線VLは、前後方向に沿っている。
【0031】
光センサ100は、車両のフロントパネルに搭載され、主として、太陽の位置を検出するのに使用される。光センサ100は、図1及び図2に示すように、要部として、半導体基板10と、受光素子20と、透光膜30と、遮光膜40と、開口部50と、を有する。半導体基板10の一面側に受光素子20が形成され、受光素子20の形成面10a上に透光膜30が形成され、透光膜30に遮光膜40が形成されている。そして、遮光膜40には、透光用の開口部50が形成され、この開口部50を介して、光が受光素子20に入射するようになっている。図示しないが、光センサ100は、受光素子20の出力信号を処理する算出部を有しており、この算出部によって、光センサ100に入射してくる光の仰角や方位角が概算される。以下においては、先ず、光センサ100の要部10〜50の概略構成を示した後に、光センサ100の特徴点を説明する。
【0032】
半導体基板10は、矩形状を成し、上記した受光素子20や、算出部を構成する電子素子(図示略)が形成されている。これら電子素子は、半導体基板10に形成された配線パターン(図示略)を介して電気的に接続されている。
【0033】
受光素子20は、光を電気信号に変換するものである。本実施形態に係る受光素子20は、PN接合を有するフォトダイオードであり、半導体基板10の形成面10a側に形成されている。形成面10aには、二対の受光素子21〜24が形成されており、受光素子21,22が対を成し、受光素子23,24が対を成している。これら受光素子21〜24は、光センサ100の特徴点なので、後で詳説する。
【0034】
透光膜30は、光透過性と絶縁性とを有する材料から成る。このような性質を有する材料としては、例えばアクリル樹脂がある。図2に示すように、透光膜30は、形成面10a上に、多層に形成されている。本実施形態では、3層の透光膜31〜33が形成面10a上に積層されている。
【0035】
遮光膜40は、遮光性と導電性を有する材料から成る。このような性質を有する材料としては、例えばアルミニウムがある。図2に示すように、遮光膜40は、2層の透光膜30の間に形成されており、多層の遮光膜40が、透光膜30を介して形成面10a上に形成されている。本実施形態では、2つの遮光膜41,42が透光膜30に形成されており、遮光膜41,42それぞれに、開口部50が形成されている。なお、図示しないが、遮光膜40は、半導体基板10に形成された配線パターンと電気的に接続しており、各電子素子を電気的に接続する配線としての機能も果たすようになっている。
【0036】
開口部50は、受光素子20に入射する光を規定するものである。遮光膜41,42それぞれに、二対の開口部51〜54が形成されており、開口部51,52が対を成し、開口部53,54が対を成している。これら開口部51〜54は、光センサ100の特徴点なので、後で詳説する。
【0037】
算出部は、受光素子20の出力信号に基づいて、光センサ100(車両)に入射する外光の仰角や方位角を概算するものである。別の表現を用いれば、算出部は、太陽の大体の高さと、太陽が車両の左右いずれの方向にどの程度位置しているのか(左右比)を算出するものである。太陽の大体の高さは、対を成さない受光素子21,23、若しくは、対を成さない受光素子22,24の出力信号を比べることで算出される。左右比は、第1受光素子21の出力信号を、2つの受光素子21,22の出力信号の総和で割った値(第1の値)と、第2受光素子22の出力信号を、2つの受光素子21,22の出力信号の総和で割った値(第2の値)との比をとることで、算出される。若しくは、第3受光素子23の出力信号を、2つの受光素子23,24の出力信号の総和で割った値(第3の値)と、第4受光素子24の出力信号を、2つの受光素子23,24の出力信号の総和で割った値(第4の値)との比をとることで、算出される。その理由は、光センサ100の作用効果を説明する際に述べる。なお、図3に示すように、仰角θは、水平面から上方の角度を示し、方位角φは、車両周りの角度を示す。
【0038】
次に、本実施形態に係る光センサ100の特徴点を説明する。図1に示すように、対を成す受光素子21,22は、仮想直線VLに対して線対称となっており、対を成す受光素子23,24は、仮想直線VLに対して線対称となっている。そして、第1受光素子21及び第3受光素子23それぞれが、仮想直線VLから左方に位置し、第2受光素子22及び第4受光素子24それぞれが、仮想直線VLから右方に位置している。受光素子21〜24それぞれは、前から後ろに向って中央部がへこんだ凹形状(略C字状)を成し、その横幅が、仮想直線VLから離れた端部21a〜24aから、仮想直線VL側の端部21b〜24bに向って連続的に太くなっている。そして、端部21b〜24bの形状が直線状となっており、受光素子21〜24それぞれの横幅の中心を通る線(図1で破線で示した線)が、所定の半径を有する円弧状と成っている。以上により、受光素子21〜24それぞれの全体形状が、角笛のような形状を成している。なお、円弧を成す線と、円弧の中心とを結ぶ線によって構成される扇の中心角が180°となっており、上記した横幅とは、円弧を成す線(横幅の中心を通る線)に交差する方向の長さを示している。本実施形態では、対を成す受光素子21,22のほうが、対を成す受光素子23,24よりも大きくなっている。
【0039】
図1に示すように、対を成す開口部51,52は、仮想直線VLに対して線対称となっており、対を成す開口部53,54は、仮想直線VLに対して線対称となっている。そして、形成面10aから離れた遮光膜42の開口部51〜54それぞれの形状が、円形となっており、図示しないが、遮光膜41に形成された開口部51〜54それぞれの形状が、各受光素子21〜24の形状に対応している。すなわち、遮光膜41に形成された開口部51〜54それぞれの形状が、角笛のような形状を成している。
【0040】
また、図1に示すように、形成面10aに交差する光によって形成面10aに投影された、開口部51〜54それぞれの投影部位の一部が、対応する受光素子21〜24、及び、その受光素子21〜24の端部21a〜24aと端部21b〜24bとを結ぶ線によって囲まれた領域に位置している。更に、本実施形態では、破線によって示した円弧の中心に、開口部51〜54の投影部位の中心が位置しており、開口部51〜54の中心と、受光素子21〜24の横幅の中心との距離が一定となっている。そして、図1及び図2に示すように、対を成す受光素子21,22と、それぞれに対応する開口部51,52との距離が、対を成す受光素子23,24と、それぞれに対応する開口部53,54との距離と異なっている。
【0041】
次に、本実施形態に係る光センサ100の作用効果を説明する。上記したように、受光素子21〜24それぞれは、前から後ろに向って中央部がへこんだ凹形状を成し、受光素子21〜24それぞれの横幅の中心を通る、円弧を成す線と、円弧の中心とを結ぶ線によって構成される扇の中心角は、180°となっている。これにより、後側から光センサ100(車両)に入射した光が、各受光素子21〜24それぞれに入射するわけではないが、前側から光センサ100に入射してきた光は、開口部51〜54を介して、各受光素子21〜24の後ろ側に入射する。このように、前側から光センサ100に入射してくる光の全てが検出範囲に含まれるので、対を成す受光素子21,22(23,24)のうち、一方の受光素子だけに前側の光が入射することが抑制され、各受光素子21〜24の出力信号が0となることが抑制される。
【0042】
また、上記したように、受光素子21〜24それぞれの横幅は、端部21a〜24aから端部21b〜24bに向って連続的に太くなっている。これによれば、例えば、図1に実線矢印で示すように、右前方から光が入射してきた場合、その光は、開口部51〜54を介して、各受光素子21〜24の左後方に入射する。そして、その光を受光する面積が、第1受光素子21よりも第2受光素子22の方が大きく、第3受光素子23よりも第4受光素子24の方が大きくなる。これに対して、図1に破線矢印で示すように、左前方から光が入射してきた場合、その光を受光する面積の関係が逆となる。すなわち、光を受光する面積が、第2受光素子22よりも第1受光素子21の方が大きく、第4受光素子24よりも第3受光素子23の方が大きくなる。この結果、右前方から光が入射してきた場合、第2受光素子22の出力信号が第1受光素子21の出力信号よりも大きくなり、第3受光素子23の出力信号が第4受光素子24の出力信号よりも大きくなる。反対に、左前方から光が入射してきた場合、第1受光素子21の出力信号が第2受光素子22の出力信号よりも大きくなり、第4受光素子24の出力信号が第3受光素子23の出力信号よりも大きくなる。
【0043】
したがって、算出部の説明にて定義した、第1の値と第2の値との比、若しくは、第3の値と第4の値との比をとることで、光が、光センサ100に対して左方からどれくらい入射しているのか、若しくは、右方からどれくらい入射しているのか、を検出することができる。すなわち、光の左右比を算出することができる。例えば、第1の値と第2の値との比が、2:3であれば、太陽が前方から右方にその値の程度位置しており、8:1であれば、太陽が前方から左方にその値の程度位置していることがわかる。参考として、図4に、光センサ100によって算出される左右比の方位角特性を示す。図4に示すグラフの横軸が、方位角を示し、縦軸が左右比を示している。第1の値が実線で表され、第2の値が破線で表されている。これによれば、本発明に係る光センサ100の場合、方位角が±90°の場合であっても、左右比が飽和していないことがわかる。
【0044】
以上、示したように、本発明によれば、対を成す受光素子21,22(23,24)それぞれの出力信号が0となることが抑制され、それぞれの出力信号が異なるので、光の左右比が飽和することが抑制される。なお、光が車両に対して真向かいから入射する場合、対を成す受光素子21,22(23,24)それぞれの後方に入射する光の受光面積は同一となるので、第1の値と第2の値(第3の値と第4の値)それぞれが0.5となり、互いに等しくなる。この場合、左右比は、1:1となる。
【0045】
本実施形態では、二対の受光素子21〜24が半導体基板10に形成され、これらに対応する、二対の開口部51〜54が遮光膜40に形成されている。これによれば、一対の受光素子が半導体基板に形成された構成とは異なり、少なくとも2つの左右比を算出することができるので、左右比の検出精度が向上される。
【0046】
本実施形態では、対を成す受光素子21,22と、それぞれに対応する開口部51,52との距離が、対を成す受光素子23,24と、それぞれに対応する開口部53,54との距離と異なっている。そのため、受光素子と開口部との形成位置によって規定される、受光素子の受光面に入射する光の仰角が、対を成さない受光素子21,23(22,24)それぞれで異なっている(図2参照)。したがって、これら2つの受光素子21,23(22,24)の出力信号を比較して、高いほうの出力信号を検出することで、太陽の大体の高さを算出することができる。また、一対の受光素子と、独立した1つの受光素子とが半導体基板に形成された構成とは異なり、仰角特性の異なる出力信号を少なくとも2つずつ得ることができるので、仰角の検出精度が向上される。
【0047】
本実施形態では、受光素子21〜24それぞれの横幅の中心を通る線が、所定の半径を有する円弧状と成し、その円弧の中心に、開口部51〜54の投影部位の中心が位置している。これにより、開口部51〜54の中心と、受光素子21〜24の横幅の中心との距離が一定となっている。これによれば、前側から入射してくる光の方向が変化したとしても、対を成す受光素子21,22(23,24)の受光面それぞれに入射する光の量が、各受光素子21〜24の横幅のみに依存することとなる。これにより、前側から入射してくる光の方向が変化した際に、対を成す受光素子21,22(23,24)の受光面それぞれに入射する光の量が受光素子21〜24の横幅だけに依存しなくなった結果、光の左右比の検出精度が低下することが抑制される。
【0048】
本実施形態では、受光素子21〜24それぞれの横幅が、端部21a〜24aから端部21b〜24bに向って連続的に太くなっている。これによれば、受光素子21〜24それぞれが、端部21a〜24aから端部21b〜24bに向うにしたがって不連続的に太くなる形状とは異なり、受光素子21〜24の出力信号の入射角特性を線形に近づけることができる。
【0049】
本実施形態では、遮光膜40は、透光膜30に多層に形成され、遮光膜41,42に形成された開口部51〜54によって、光の仰角が規定されている。これによれば、任意の2つの受光素子の間に、2層の遮光膜41,42が位置するので、ある開口部から入射した光が、その開口部と対応する受光素子以外の受光素子に入射することが抑制される。これにより、各受光素子21〜24の出力信号に、ノイズが含まれることが抑制される。
【0050】
本実施形態では、遮光膜41に形成された開口部51〜54それぞれの形状が、各受光素子21〜24の形状に対応している。これによれば、遮光膜41に形成された開口部51〜54それぞれの形状が、各受光素子21〜24の形状に対応していない構成とは異なり、遮光膜41によって、受光素子21〜24に入射する光が遮られることが抑制される。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0052】
本実施形態では、光センサ100が車両に搭載された例を示した。しかしながら、光センサ100の適用としては、上記例に限定されない。
【0053】
本実施形態では、二対の受光素子21〜24が半導体基板10に形成された例を示した。しかしながら、対を成す受光素子20の組み数としては、1組以上であればよく、上記例に限定されない。
【0054】
本実施形態では、受光素子21〜24それぞれの横幅が、端部21a〜24aから端部21b〜24bに向って連続的に太くなった例を示した。しかしながら、受光素子21〜24それぞれの横幅が、端部21a〜24aから端部21b〜24bに向って不連続的に細くなった構成を採用することもできる。しかしながら、この場合、受光素子21〜24の出力信号の入射角特性が線形から遠ざかるので、本実施形態で示したように、連続的に太くなる形状が好ましい。
【0055】
上記したように、本実施形態では、受光素子21〜24それぞれの横幅が、端部21a〜24aから端部21b〜24bに向って連続的に太くなった例を示した。しかしながら、図5に示すように、受光素子21〜24それぞれの横幅が、端部21a〜24aから端部21b〜24bに向って連続的に細くなった構成を採用することもできる。図5は、光センサの変形例を示す平面図である。
【0056】
本実施形態では、図1に示すように、受光素子21〜24それぞれの横幅の中心を通る円弧を成す線と、円弧の中心とを結ぶ線によって構成される扇の中心角が、180°である例を示した。しかしながら、図6に示すように、中心角が180°以上であっても良い。これによれば、光センサ100の後ろ側から入射してくる光の一部を、検出範囲として含むことができる。図6は、光センサの変形例を示す平面図である。
【0057】
本実施形態では、端部21b〜24bの形状が直線状となっており、受光素子21〜24それぞれの全体形状が、角笛のような形状を成している例を示した。しかしながら、受光素子21〜24それぞれの全体形状としては、上記例に限定されず、例えば、図7に示すように、端部21b〜24bの形状が曲線状となっており、受光素子21〜24それぞれの全体形状が、勾玉のような形状を成していても良い。なお、この場合、端部21b〜24bそれぞれの横幅が途中から細くなるが、端部21b、22bそれぞれの細くなる部位は、2つの開口部51,52を結ぶ線よりも前側に位置し、端部23b、24bそれぞれの細くなる部位は、2つの開口部53,54を結ぶ線よりも前側に位置している。したがって、光センサ100に前方から入射する光は、この途中から細くなる部位に入射し難くなっており、細くなる部位は、前方から入射してくる光の左右比を検出するのに寄与し難くなっている。図7は、光センサの変形例を示す平面図である。
【0058】
本実施形態では、透光膜30が3層であり、遮光膜40が2層である例を示した。しかしながら、透光膜30及び遮光膜40それぞれの層数は上記例に限定されず、例えば、透光膜30が4層であり、遮光膜40が3層である構成を採用することもできる。
【0059】
本実施形態では、遮光膜41に形成された開口部51〜54それぞれの形状が、角笛のような形状を成している例を示した。しかしながら、遮光膜41に形成された開口部51〜54それぞれの形状としては、各受光素子21〜24の形状に対応していればよく、上記例に限定されない。例えば、図7に示した受光素子21〜24のように、勾玉のような形状を成していても良い。
【0060】
本実施形態では、遮光膜40が、遮光性と導電性を有する材料から成る例を示した。しかしながら、遮光膜40によって、半導体基板10に形成された各電子素子を電気的に接続しなくとも良い場合、遮光膜40を、光を吸収する性質を有する材料によって形成しても良い。
【0061】
なお、本実施形態では、特に外光の日射量の検出について言及していなかったが、例えば、対を成さない受光素子21,23(22,24)の出力信号を比較して、高いほうの出力信号に基づいて、日射量を概算することができる。
【符号の説明】
【0062】
10・・・半導体基板
20・・・受光素子
30・・・透光膜
40・・・遮光膜
50・・・開口部
100・・・光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一面側に、光を電気信号に変換する受光素子が複数形成され、前記半導体基板における前記受光素子の形成面上に、透光膜を介して遮光膜が形成され、前記遮光膜に、前記受光素子それぞれに対応して透光用の開口部が形成された光センサであって、
前記受光素子の形成面に沿う仮想直線に対して線対称となるように、一対の受光素子が前記半導体基板に形成され、これら一対の受光素子に対応する、一対の開口部が、前記仮想直線に対して線対称となるように前記遮光膜に形成されており、
一対の前記受光素子それぞれは、前記仮想直線の一方から他方に向って、中央がへこんだ凹形状を成し、その横幅が、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって太くなっており、
前記受光素子の形成面に交差する光によって前記受光素子の形成面に投影した、一対の前記開口部それぞれの投影部位の少なくとも一部が、対応する前記受光素子、及び、その受光素子の一方の端部と他方の端部とを結ぶ線によって囲まれた領域に位置することを特徴とする光センサ。
【請求項2】
少なくとも二対の前記受光素子、及び、これらに対応する、少なくとも二対の前記開口部を有していることを特徴とする請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
一対の前記受光素子と、それぞれに対応する前記開口部との距離が、他の一対の前記受光素子と、それぞれに対応する前記開口部との距離と異なることを特徴とする請求項2に記載の光センサ。
【請求項4】
一対の前記受光素子それぞれの横幅の中心を通る線が、所定の半径を有する円弧状を成し、
前記開口部の投影部位は、その円弧を成す線の中心に位置していることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の光センサ。
【請求項5】
前記円弧を成す線と、前記円弧の中心とを結ぶ線によって構成される扇の中心角が、180°以上となっていることを特徴とする請求項4に記載の光センサ。
【請求項6】
一対の前記受光素子それぞれは、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって連続的に太くなる形状を成すことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の光センサ。
【請求項7】
一対の前記受光素子それぞれは、前記他方の端部の形状が直線状となっており、角笛のような形状を成すことを特徴とする請求項6に記載の光センサ。
【請求項8】
一対の前記受光素子それぞれは、前記他方の端部の形状が曲線状となっており、勾玉のような形状を成すことを特徴とする請求項6に記載の光センサ。
【請求項9】
前記遮光膜は、前記透光膜に多層に形成され、各層の遮光膜に形成された前記開口部によって、光の仰角が規定されており、
前記受光素子の形成面から最も離れた層の開口部を除く開口部の形状は、前記仮想直線の一方から他方に向って、中央がへこんだ凹形状を成し、その横幅が、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって太くなっていることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の光センサ。
【請求項10】
前記受光素子の形成面から最も離れた層の開口部を除く開口部の形状は、一方の端部から他方の端部に向うにしたがって連続的に太くなる形状を成すことを特徴とする請求項9に記載の光センサ。
【請求項11】
前記受光素子の形成面から最も離れた層の開口部を除く開口部の形状は、前記他方の端部の形状が直線状となっており、角笛のような形状を成すことを特徴とする請求項10に記載の光センサ。
【請求項12】
前記受光素子の形成面から最も離れた層の開口部を除く開口部の形状は、前記他方の端部の形状が曲線状となっており、勾玉のような形状を成すことを特徴とする請求項10に記載の光センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60011(P2012−60011A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203295(P2010−203295)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】