説明

光ディスク、その製造方法及び再生装置

【課題】データが記録されるデータ層を介して、視認可能なパターンを表示する光ディスク、その製造方法及び再生装置を提供する。
【解決手段】データ層は、データ層基板11、及び、データ層基板11の上面側に積層される半透過膜であるデータ層反射膜12を備える。表示層は、視認可能な表示パターン24が形成された表示層基板21、及び、表示層基板21の下面側に積層された表示層反射膜22を備える。中間層30は、データ層の上面と前記表示層の下面とを接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ記録領域面側にパターン(図案や模様等)を表示する光ディスク、その製造方法及び再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、ブルーレイディスク(BD)等の光ディスクにおいて、一般に、片面に印刷等がされてレーベル等の表示が付されており、他方の面が光ピックアップによるデータ読み取り面として用いられる。
【0003】
特許文献1では、両面式の光ディスクにおいて、片方のデータ読み取り面の一部に、印刷や、ピットでパターンを形成するピットアート法等によりレーベルを付す技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−162437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光ディスクは、データ読み取り面の、データが記録される領域にパターンを表示するものではなかった。
【0006】
本発明は、データが記録されるデータ層を介して、視認可能なパターンを表示する光ディスク、その製造方法及び再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、データ層基板(11)、及び、データ層基板(11)の上面側に積層される半透過膜であるデータ層反射膜(12)を備えるデータ層(11,12)と、視認可能な表示パターン(24)が形成された表示層基板(21)、及び、表示層基板(21)の下面側に積層された表示層反射膜(22)を備える表示層(21,22)と、データ層(11,12)の上面と表示層(21,22)の下面とを接着する中間層(30)とを備える光ディスクであることを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、データ層基板、及び、データ層基板の上面側に積層される半透過膜であるデータ層反射膜を備えるデータ層と、視認可能な表示パターンが形成された表示層基板、及び、表示層基板の下面側に積層された表示層反射膜を備える表示層とを備える光ディスクの製造方法であって、スタンパに、表示パターンを成形する表示パターン成形部を形成する工程(S5)と、表示パターン成形部が形成されたスタンパによって、透明樹脂を射出成形することにより、表示層基板を成形する工程(S6)と、表示層基板の下面に、表示層反射膜を積層する工程(S7)と、データ層基板の上面に、データ層反射膜を、半透過膜となるような厚さで積層する工程と、データ層の上面と表示層の下面とを接着する工程とを含む光ディスクの製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、データが記録されるデータ層を介して、視認可能なパターンを表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光ディスクの基本的な構成を説明する模式的な拡大断面図である。
【図2】2層式DVDの反射膜の反射率、素材を説明する表である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る光ディスクの反射膜の反射率、素材を説明する表である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る光ディスクの製造方法を説明するフローチャートである。
【図5】(a)、(b)、(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る光ディスクの製造方法を説明する工程断面図である。
【図6】(d)、(e)、(f)は、本発明の第1の実施の形態に係る光ディスクの製造方法を説明する工程断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る光ディスクの表示パターンを含む領域を説明する上面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る光ディスクの記録ピット周辺を説明する模式的な拡大断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る光ディスクの再生装置の、基本的な構成を説明する模式的なブロック図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る光ディスクの再生装置の動作を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る光ディスクのデータ構造を説明する模式的な図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る光ディスクの再生装置の、基本的な構成を説明する模式的なブロック図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る光ディスクの再生装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率、断面図における形状等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
又、以下に示す第1及び第2の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置、製造方法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、データ記録領域面側にパターン(図案や模様等)を表示する光ディスクであればよく、片面ディスクでもよいし、両面ディスクでもよい。
【0013】
又、以下の説明において、一例として、光ディスク1を水平面と平行にした状態において下から上へ、データ層(L0層)(11,12)、中間層30、表示層(L1層)(21,22)、印刷層31の順番で構成されているものとする。つまり、データ読み取り側を下とする。又、便宜的に、物理的に凹であるか凸であるかに係らず、上方向に凸となっている部分を高さ、下方向に凸となっている部分を深さで表すものとする。
【0014】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る光ディスク1は、図1に示すように、光ピックアップ51による読み取り可能なデータが記録されたデータ層(L0層)(11,12)と、データ層(11,12)を介して視認可能な表示パターン24を表示する表示層(L1層)(21,22)とを備える光記録媒体である。この表示パターン24で、データ読み取り面側から視認可能な図案や模様等が描かれている。
【0015】
データ層(11,12)は、上面に形成された記録ピット13によりデータが記録されたデータ層基板11と、データ層基板11の上面に積層されたデータ層反射膜12とを備える。データ層(11,12)の上面の、記録ピット13が形成されない領域は、平滑なランド部15となっている。
【0016】
表示層(21,22)は、下面に、ダミーピット23及び表示パターン24が形成された表示層基板21と、表示層基板21の下面に積層された表示層反射膜22とを備える。表示層(21,22)の下面の、ダミーピット23、表示パターン24が形成されない領域は、平滑なランド部25となっている。データ層基板11及び表示層基板21は、例えば、ポリカーボネート等の透明材料からなる。
【0017】
光ピックアップ51は、例えば、波長650nmのレーザ光を光ディスク1に出射し、データ層反射膜12からの反射光を検出することにより、データ層(11,12)に記録されたデータを読み取る。
【0018】
一般に、1層式(シングルレイヤ)DVDの反射膜は、図2に示すように、例えばアルミニウム(Al)からなり、反射率の規格が45〜85%である。また、2層式(デュアルレイヤ)DVDの反射膜は、1層目(L0層)の反射膜が例えば銀(Ag)からなり、反射率の規格が18〜30%、2層目(L1層)の反射膜が例えばAlからなり、反射率の規格が18〜30%である。
【0019】
光ディスク1は、データ層(11,12)が1層のみである1層式の記録フォーマットとなっているが、表示層(21,22)に形成された表示パターン24を、下方から、データ層(11,12)を介して視認可能とするため、図3に示すように、データ層反射膜12にAgを採用している。更に、データ層反射膜12は、反射率が1層式ディスクの反射率規格45〜85%内で、表示パターン24を、データ層(11,12)を介して視認可能とするため、反射率が約45〜60%程度、好適には約45〜55%程度、更に好適には約50%程度となるように、厚さが調整されている。なお、以上の数値は一例であり、データ層反射膜12は、表示パターン24を、データ層(11,12)を介して視認可能とする反射率や材料であればよい。つまり、データ層反射膜12は、いわゆる半透過膜となっていればよく、少なくとも、可視光の一部を透過させ、光ピックアップ51のレーザ光の一部を反射する膜であればよい。なお、データ層反射膜12を上記の数値や材料とすることによって、より好適にデータ層(11,12)を介して視認可能とすることができる。
【0020】
表示層(21,22)に形成されたダミーピット23は、例えば、ランダムなピットにより、螺旋状又は同心円状に形成されることができ、入射する光に対し、乱反射、回折を生じさせる。表示パターン24は、例えば、ダミーピット23が除去された領域と、ダミーピット23の領域との間のコントラストにより、視認される。ダミーピット23は光を乱反射するよう構成されているので、表示パターン24の視認時、ダミーピット23が形成されず鏡面反射を生じさせる面に表示パターン24が形成される場合と比して、反射光が生じさせるグレア現象が抑制され、表示パターン24のコントラストが明確になり、視認性がより向上する。なお、コントラストは低くなるが、ダミーピット23を設けない構成としてもよい。また、ダミーピット23は、DVDやBDの規格に基づいた長さのピットであってもよい。DVDやBDの規格に基づいた長さのピットであれば、既存の設備で製造し易い。また、ダミーピット23は、光ピックアップ51によって読み取りが不可能でもよいし、読み取り可能でもよい。
【0021】
データ層(11,12)と表示層(21,22)との間は、透明な紫外線硬化樹脂等の中間層30により接着されている。光ディスク1の上面は、例えば、印刷層31によりレーベル等が印刷され、レーベル面をなす。
【0022】
第1の実施の形態に係る光ディスク1によれば、1層式の記録フォーマットで記録されたデータ層(11,12)のデータ層反射膜12の反射率が調節されているので、データ層(11,12)を介して、表示層(21,22)の表示パターン24をデータ読み取り面側から視認可能に表示できる。
【0023】
第1の実施の形態に係る光ディスク1によれば、データが記録されたデータ層(11,12)を介して、表示パターン24を表示できるため、一般のリッピングソフトウェア等による、表示パターン24を含めた複製が極めて困難であり、目視により正規品と複製品とを識別でき、偽造を防止することができるという効果もある。
【0024】
また、第1の実施の形態に係る光ディスク1は、データ層(11,12)を介して表示パターン24を表示できるため、読み取り面が美麗であり、また、データの内容に関連したパターンを表示することにより、読み取り面からディスクを識別することができる。
【0025】
<光ディスク1製造方法>
図4のフローチャートを用いて、第1の実施の形態に係る光ディスク1の製造方法の一例を、図5(a)〜(c)、図6(d)〜(f)を参照しながら説明する。また、光ディスク1の細部についても説明する。なお、図5(a),(b)においては、ガラス基板40側を下、図5(c)においてはスタンパ42側を下とする。また、図6(d)〜(f)においては、表示基板21側を上とする。また、深さp及び高さqは、ランド形成部45を基準面としているものとし、深さp及び高さqは、ランド部25を基準面としているものとする。
【0026】
先ず、ステップS1において、図5(a)に示すように、ガラス基板40は、フォトレジスト液を塗布(スピンコート)された後、熱処理(ベーキング)されることにより、フォトレジスト膜41が被覆される。
【0027】
ステップS2において、フォトレジスト膜41は、レーザビームレコーダ(LBR)61により、ダミーピット23のピットパターンが露光処理(レーザカッティング)される。
【0028】
ステップS3において、フォトレジスト膜41が、現像液を塗布されて現像され、ステップS2における露光部を選択的に除去されることにより、ガラス基板40及びフォトレジスト膜41の残余部は、ディスク原盤となる。
【0029】
ステップS4において、図5(b)に示すように、ディスク原盤は、スパッタリング法等により、露光処理をされた面にニッケル(Ni)等の薄膜を形成され、更にNi等の電鋳を行われることにより、スタンパ42を成形する。スタンパ42は、ディスク原盤から剥離される。
【0030】
ステップS5において、図5(c)に示すように、スタンパ42は、YAG、YVO、COレーザ等の長波長レーザ光を出力するレーザマーカ62により、表示層基板21のダミーピット23を成形するピット成形部43が形成された面に、表示パターン24のパターンが書き込まれ、表示層基板21の表示パターン24を成形する表示パターン成形部44が形成される。図5(c)に示すように、ランド部25を成形する面であるランド成形部45からの、表示パターン成形部44の深さpの値は、ピット成形部43の高さqの値より大きくなるように形成されている。例えば、表示パターン成形部44の深さpは約1000nmであり、ピット成形部43の高さqは約120nmとすることができる。表示パターン成形部44の深さp、ピット成形部43の高さqは、それぞれ表示パターン24の深さp、ダミーピット23の高さqに対応する。深さpと深さpとは、ほぼ同じ値となる。また、高さqと高さqとは、ほぼ同じ値となる。よって、表示パターン24の深さpの値は、ダミーピット23の高さqの値より大きくなるように形成されている。
【0031】
ステップS6において、図6(d)に示すように、スタンパ42は、例えば、表面にポリカーボネート樹脂等の透明材料が射出され、射出成形法により、表示層基板21が成形される。表示層基板21は、スタンパ42から剥離される。
【0032】
ステップS7において、図6(e)に示すように、表示層基板21は、ダミーピット23、表示パターン24が形成された面に、スパッタリング法によりAl等の金属を積層され、反射率約24%以下となる表示層反射膜22が形成される。表示層基板21及び表示層反射膜22は、表示層(21,22)をなす。
【0033】
ステップS8において、図6(f)に示すように、紫外線硬化樹脂からなる中間層30により、表示層(21,22)と、データ層基板11の上面に、Ag等の金属からなるデータ層反射膜12を、反射率が約50%となるような厚さで積層されることにより別途製作されたデータ層(11,12)とを張り合わせて接着し、適宜、表示層(21,22)の上面に印刷等を行えば、第1の実施の形態に係る光ディスク1が完成する。
【0034】
光ディスク1の表示パターン24は、表示パターン24の深さpの値が、ダミーピット23の高さqの値より大きくなるように形成されているので、コントラストが明確であり、視認性が良い。
【0035】
<ノイズ低減処理>
例えば、図7に示すように、表示層(21,22)の、例えば同心円状の表示領域Aに含まれるように表示パターン24が形成されている場合、データ層(11,12)の、表示領域Aと重畳する領域において、光学的ノイズとなる表示層反射膜22からの反射光を低減するノイズ低減処理を施してもよい(図7において破線のハッチングで表示領域Aを示す)。ノイズ低減処理により、光ディスク1の再生時、再生ジッタに与える影響を最小限にすることができる。ノイズ低減処理は、表示層(21,22)に形成された表示パターン24を、データ層(11,12)を介して視認可能な範囲で施される。なお、図7において、表示領域Aにおいては、一様な(例えば表示パターン24によって塗りつぶされているような状態)の表示パターン24となっているものとする。
【0036】
例えば、データ層基板11における表示領域Aと重畳する領域で、図8に示すように、記録ピット13の幅hを広くすること、或いは記録ピット13の傾斜角θを大きくして90°に近づけることにより記録ピット13の形状を調節して、スパッタリングによる、データ層反射膜12となるAgの蓄積量を増加させることができる。よって、データ層反射膜12は、光の透過率が低下するので、表示層反射膜22からの反射光を低減し、光学的ノイズを低減することができる。このように、表示パターン24と重畳する領域と重畳しない領域とで、データ層基板のピット形状を異ならせることで、より良好なデータ再生を実現できる。
【0037】
また、ノイズ低減処理は、表示領域Aと重畳する領域で、データ層反射膜12の上面に、光ピックアップ51から出射される光の透過率が低い材料(透過率低減層)を更に積層することにより施されても良い。光ピックアップ51から出射される光の透過率が低い材料は、例えば、Alを含む金属等を採用可能であり、データ層反射膜12の上面の、表示領域Aと重畳する領域以外をマスクし、スパッタリング等を行うことにより、データ層反射膜12に積層される。光ピックアップ51から出射される光の透過率が低い材料は、接着剤等であっても良い。また、表示領域Aと重畳する領域で、データ層反射膜12の厚さを厚くするようにしてもよい。なお、透過率低減層は、表示層反射膜22の下側に設けてもよい。
【0038】
また、ノイズ低減処理は、表示層反射膜22の表示領域Aに施された反射防止(AR)処理としても良く、AR処理により、光ピックアップ51から出射される波長の光の反射を低減することができる。AR処理は、例えば表示層反射膜22を試薬により粗面化よって、表示層反射膜22から光ピックアップ51への反射光を低減し、光学的ノイズを低減することができる。
【0039】
このように、表示領域Aと重畳する領域に光の透過率を低くする材料からなる層を設けたり、表示パターン24と重畳する領域と重畳しない領域とで、データ層反射膜12の厚さを異ならせることで、表示層反射膜22から光ピックアップ51への反射光を低減し、より良好なデータ再生を実現できる。
【0040】
また、図5(c)に示す表示パターン成形部44の深さpは、光ディスク1の中間層30の、表示パターン24と重畳する領域の厚さが70μm以上となるような深さとされることにより、表示層反射膜22から光ピックアップ51への反射光を低減し、光学的ノイズを低減することができる。
【0041】
<光ディスク1再生装置>
以下、光ディスク1の表示パターン24を用いて、光ディスク1の読み取り(再生)を制御することができる光ディスク1の再生装置について説明する。
【0042】
第1の実施の形態に係る光ディスク1の再生装置5は、図9に示すように、光ピックアップ51と、光ピックアップ51の駆動を制御する駆動制御部52と、光ディスク1を回転させるスピンドルモータ53と、表示層(21,22)に記録された表示パターン24をデータ層(11,12)を介して撮影するイメージセンサ54と、再生装置5が行う種々の演算を処理する処理部50とを備える。
【0043】
駆動制御部52は、光ピックアップ51の光学系の制御の他、光ディスク1の読み取り位置を変更するために、図示を省略したアクチュエータを制御し、光ピックアップ51を、光ディスク1の半径方向に移動させる。
【0044】
イメージセンサ54は、例えば、光ディスク1と平行に、光ディスク1の回転軸を通る直線上に配置されたCCD一次元イメージセンサ等を採用可能である。イメージセンサ54は、光ピックアップ51と同様に光ディスク1の半径方向に移動されるような構成としても良い。イメージセンサ54は、その他、CCD、CMOS等の二次元イメージセンサにより、静止状態の光ディスク1を撮影するようにしても良い。
【0045】
図10のフローチャートを用いて、再生装置5の動作の一例を説明する。
【0046】
先ず、ステップS11において、処理部50のパターン情報取得部501の制御により、イメージセンサ54は、スピンドルモータ53により回転され、図示を省略した光源により照明された光ディスク1の表示パターン24を、データ層(11,12)を介して走査し、撮影する。パターン情報取得部501は、イメージセンサ54が撮影した表示パターン24の画像情報であるパターン情報を取得する。
【0047】
ステップS12において、処理部50の認証判定部502は、認証判定部502が保持する所定の認証情報と、パターン情報取得部501が取得したパターン情報とを照合することにより、光ディスク1に対する認証処理を行う。
【0048】
ステップS13において、認証判定部502は、光ディスク1に対する認証の可否により、光ディスク1が正規品か否かを判定する。
【0049】
認証判定部502が、光ディスク1に対する認証が成立し、光ディスク1を正規品と判定する場合、ステップS14において、処理部50の再生部503は、駆動制御部52を介して光ピックアップ51を制御し、スピンドルモータ53により回転される光ディスク1のデータ層(21,22)に記録されたデータを読み取る。再生部503は、光ディスク1に記録されたデータが、音声、動画等の時系列データである場合、適宜、時系列データの再生に必要な処理を行う。光ディスク1に対する認証が成立せず、ステップS13において、光ディスク1を正規品でないと判定する場合、処理を終了する。
【0050】
なお、図9に示す処理部50のパターン情報取得部501、認証判定部502、再生部503等は、それぞれ論理構造としての表示であり、それぞれ同一のハードウェアである演算処理装置により構成されて良く、別個のハードウェアにより構成されても構わない。
【0051】
第1の実施の形態に係る光ディスク1の再生装置5によれば、光ディスク1に表示される表示パターン24のパターン情報に応じて、再生の可否を判定するので、光ディスク1の複製防止に寄与することができる。
【0052】
また、光ディスク1の表示パターン24は、レーザマーカ62等のレーザ光により形成可能なので、オフセット印刷、グラビア印刷により印刷されたパターンと比して高精度であり、表示パターン24を用いた認証処理を高精度に行うことができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る光ディスク1aは、データ構造の概略を図11に示すように、光ピックアップ51が、表示層(L1層)(21,22)の一部を読み取ることができる構成になっている。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と実質的に同様の構成については重複する説明を省略する。
【0054】
光ディスク1aの表示層(21,22)は、図11に示すように、例えば内周側から、リードイン領域と、リードアウト領域と、ダミーピット23及び表示パターン24が記録される表示領域Aと、リードアウト領域から離間した表示領域A内の一部に、光ディスク1aに対する認証処理に用いられる鍵情報が記録された鍵記録領域を有する。表示層(21,22)のリードイン領域には、表示層(21,22)上の、鍵記録領域の位置を示す鍵位置情報が記録されている。また、鍵記録領域はトラッキング走査することが可能になっている。また、各領域はドーナツ状の領域となっているものとする。
【0055】
光ディスク1aのデータ層(L0層)(11,12)は、内周側から、リードイン領域と、データ領域と、リードアウト領域とを有する。データ層(11,12)に記録されるデータは、表示層(21,22)の鍵記録領域に記録された鍵情報により復号可能な方式で暗号化されている。
【0056】
光ディスク1aのデータ層反射膜12は、例えば、Ag等の金属からなり、反射率が18〜30%となっている。
【0057】
光ディスク1aは、表示層(21,22)の表示パターン24による光学的ノイズを防止するために、データ層(11,12)の、表示層(21,22)の表示領域Aと重畳する領域Bで記録ピット13の形状を変更する等、第1の実施の形態において説明したノイズ低減処理を施されても良い。また、リードイン領域を、表示領域A及び鍵記録領域よりも外周側に設けてもよい。
【0058】
第2の実施の形態に係る光ディスク1aによれば、規則性や連続性のないダミーピット23が形成され、通常の光ピックアップ51によってトラッキング走査することができない表示領域Aを有するため、一般のリッピングソフトウェア等による、鍵記録領域に記録された鍵情報を含めた複製が極めて困難であり、光ディスク1aの複製を防止することができる。
【0059】
また、第2の実施の形態に係る光ディスク1aによれば、データが記録されたデータ層(11,12)を介して、表示パターン24を表示できるため、一般のリッピングソフトウェア等による、表示パターン24を含めた複製が極めて困難であり、目視により正規品と複製品とを識別でき、偽造を防止することができる。
【0060】
また、光ディスク1aは、データ層(11,12)を介して表示パターン24を表示できるため、読み取り面が美麗であり、また、データの内容に関連したパターンを表示することにより、読み取り面からディスクを識別することができる。
【0061】
<光ディスク1a再生装置>
第2の実施の形態に係る光ディスク1aの再生装置5aは、図12に示すように、イメージセンサ54を備えず、処理部50aが、パターン情報取得部501に代わり、鍵位置情報取得部504、鍵情報取得部505を有する点等において、第1の実施の形態に係る光ディスク1の再生装置5と異なる。
【0062】
図13のフローチャートを用いて、再生装置5aの動作の一例を説明する。
【0063】
先ず、ステップS21において、処理部50aの鍵位置情報取得部504は、駆動制御部52を介して、光ピックアップ51の駆動を制御し、光ピックアップ51により、光ディスク1aの表示層(21,22)のリードイン領域から、鍵位置情報(半径位置やアドレス位置)を取得する。
【0064】
ステップS22において、処理部50aの鍵情報取得部505は、鍵位置情報取得部504が取得した鍵位置情報に基づいて、駆動制御部52を介して光ピックアップ51を鍵記録領域まで移動させ、光ピックアップ51により、鍵記録領域から鍵情報を取得する。
【0065】
ステップS23において、処理部50aの認証判定部502は、認証判定部502が保持する所定の認証情報と、鍵情報取得部505が取得した鍵情報とを照合することにより、光ディスク1aに対する認証処理を行う。
【0066】
ステップS24において、認証判定部502は、光ディスク1aに対する認証の可否により、光ディスク1aが正規品か否かを判定する。
【0067】
認証判定部502が、光ディスク1aに対する認証が成立し、光ディスク1aを正規品と判定する場合、ステップS25において、処理部50の再生部503は、光ピックアップ51により、光ディスク1のデータ層(21,22)に記録され、暗号化されたデータを読み取り、鍵情報取得部505が取得した鍵情報を用いて復号し、再生する。光ディスク1aに対する認証が成立せず、ステップS24において、光ディスク1を正規品でないと判定する場合、処理を終了する。
【0068】
第2の実施の形態に係る光ディスク1aの再生装置5aによれば、鍵情報が記録された鍵領域の位置を示す情報を読み出し、光ピックアップ51の移動するため、規則性や連続性のないダミーピット23が形成され、通常の光ピックアップ51によってトラッキング走査することができない表示領域Aに挟まれた(囲まれた)領域に記録された鍵情報を読み出すことができる。
【0069】
また、第2の実施の形態に係る光ディスク1aの再生装置5aによれば、光ディスク1aの表示領域A内の一部に記録された鍵情報に応じて、再生の可否を判定し、暗号化されたデータを復号して再生するので、光ディスク1の複製防止に寄与することができる。
【0070】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0071】
既に述べた第1の実施の形態においては、表示パターン24を画像コードとし、イメージセンサ54を各種コードリーダとして機能させるようにしても良い。画像コードは、データ・マトリクス,QRコード,PDF417,マキシコード、ベリコード等の二次元コード、JAN、ITF、CODE39、NW−7、CODE128等の一次元コード、1.5次元バーコードのような一次元コードを二次元コード的に積み重ねたスタックバーコード等、種々の規格のコードを採用可能である。
【0072】
また、表示パターン24に鍵情報を記録し、表示パターン24に記録された鍵情報により復号可能な方式で暗号化されたデータを、データ層(11,12)に記録するようにしても良い。
【0073】
既に述べた第1及び第2の実施の形態においては、表示層(21,22)の表示領域Aは、ダミーピット23の分布により視認可能に形成される所謂ピットアートにより形成されても良い。この場合、表示領域Aのピットアートを、すべてCAV(角速度一定)方式で記録することにより、ピットアートからなる表示パターンを、光ピックアップを用いて走査することができる。
【0074】
また、表示層(21,22)にダミーピット23を設けず、鏡面反射を生じさせる表示層基板21に表示パターン24を成形するように、レーザマーカ62により、ピット成形部43を有さないスタンパ42にパターンを書き込むようにしても良い。
【0075】
また、表示パターン24は、レーザマーカ62による書き込みに限るものでなく、スタンパ42にマスクし、エッチングを行うことにより形成されるパターンや、フォトレジスト膜41に、参照光と、所定のパターンの光とを照射することにより生じる干渉から形成されるホログラム等としても良く、或いは、これらの組み合わせから形成されても良い。
【0076】
また、再生装置5,5aの認証判定部502が保持する認証情報は、認証判定部502により、ネットワークを経由して取得されるようにしても良い。
また、表示層反射膜22、データ層反射膜12は、表示パターン24がデータ層(11,12)を介して視認可能であり、光ディスク1,1aに記録されるデータが光ピックアップ51により読み取り可能である限り、それぞれ、Al、Ag等を含む合金等から構成されても良い。
【0077】
上記の他、第1及び第2の実施の形態を組み合わせて応用した構成等、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0078】
また、DVD−ROMやBD−ROM等の記録ピットによってデータが記録済みのROMディスクを例に説明したが、周知のDVD−RやBD−Rなどの追記型ディスクや、DVD−RWやBD−REなどの書き換え型ディスクであってもよい。その場合は、データ層反射膜とデータ層基板との間に、色素や相変化材料等による記録膜を設ければよい。また、データ層基板には、グルーブを設ければよい。追記型ディスクや書き換え型ディスクの場合、ピットの代わりに、記録膜にレーザでマークを付すことによってデータを記録する。
【符号の説明】
【0079】
1,1a…光ディスク
5…再生装置
5a…再生装置
11…データ層基板
12…データ層反射膜
13…記録ピット
15,25…ランド部
21…表示層基板
22…表示層反射膜
23…ダミーピット
24…表示パターン
30…中間層
31…印刷層
40…ガラス基板
41…フォトレジスト膜
42…スタンパ
43…ピット成形部
44…表示パターン成形部
45…ランド成形部
50,50a…処理部
51…光ピックアップ
52…駆動制御部
53…スピンドルモータ
54…イメージセンサ
61…レーザビームレコーダ
62…レーザマーカ
501…パターン情報取得部
502…認証判定部
503…再生部
504…鍵位置情報取得部
505…鍵情報取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ層基板、及び、前記データ層基板の上面側に積層される半透過膜であるデータ層反射膜を備えるデータ層と、
視認可能な表示パターンが形成された表示層基板、及び、前記表示層基板の下面側に積層された表示層反射膜を備える表示層と、
前記データ層の上面と前記表示層の下面とを接着する中間層と
を備えることを特徴とする光ディスク。
【請求項2】
前記表示層基板には、ダミーピットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク。
【請求項3】
前記ダミーピットは、前記表示層基板の下面において高さ方向に凸に形成され、
前記表示パターンは、前記表示層基板の下面において深さ方向に凸に形成され、
前記表示パターンの深さの値が、ダミーピットの高さの値より大きく形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光ディスク。
【請求項4】
前記データ層は、前記表示パターンを含む表示領域と重畳する領域において、前記表示層反射膜からの反射光を低減するノイズ低減処理がなされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光ディスク。
【請求項5】
前記データ層の前記表示領域と重畳する領域の記録ピットは、前記表示領域と重畳する領域の記録ピットよりも、幅が広いピット、或いは傾斜角が大きいピットであることを特徴とする請求項4記載の光ディスク。
【請求項6】
前記表示層基板には、
前記データ層に記録されているデータを再生するための鍵情報が記録されているとともに、前記表示パターンが形成されている表示領域に挟まれた鍵記録領域と、
前記表示領域及び鍵記録領域よりも、内周側又は外周側に形成され、前記鍵記録領域の位置を示す情報が記録されるリードイン領域と
が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項7】
データ層基板、及び、前記データ層基板の上面側に積層される半透過膜であるデータ層反射膜を備えるデータ層と、
視認可能な表示パターンが形成された表示層基板、及び、前記表示層基板の下面側に積層された表示層反射膜を備える表示層と
を備える光ディスクの製造方法であって、
スタンパに、前記表示パターンを成形する表示パターン成形部を形成する工程と、
前記表示パターン成形部が形成された前記スタンパによって、透明樹脂を射出成形することにより、前記表示層基板を成形する工程と、
前記表示層基板の下面に、前記表示層反射膜を積層する工程と、
前記データ層基板の上面に、前記データ層反射膜を、半透過膜となるような厚さで積層する工程と、
前記データ層の上面と前記表示層の下面とを接着する工程と
を含むことを特徴とする光ディスクの製造方法。
【請求項8】
前記スタンパは、ダミーピットを成形するピット成形部が形成されており、
前記表示パターン成形部を形成する工程において、前記ピット成形部が形成された領域に、前記表示パターンを成形することを特徴とする請求項7記載の光ディスクの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光ディスクを再生する再生装置において、
前記表示パターンを撮像するイメージセンサと、
前記イメージセンサが撮像する前記表示パターンの画像情報に基づいて、前記光ディスクの再生を制御する処理部と
を備えることを特徴とする再生装置。
【請求項10】
請求項6に記載の光ディスクを再生する再生装置において、
前記鍵記録領域に記録されている鍵情報に基づいて、前記光ディスクを再生する処理部を備えることを特徴とする再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−142052(P2012−142052A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293878(P2010−293878)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(509159894)ビクタークリエイティブメディア株式会社 (2)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】