説明

光ディスク書込みのパラメータ最適化の方法及び装置

光ディスク書込みパラメータを最適化する方法であって、マーク・ランレングスを取得するステップと、マーク・ランレングスの変化量と書込みパラメータの変調量との間の関係に基づいて、書込みパラメータの変調量を決定するステップと、書込みパラメータを変調するステップとを含む方法である。その方法は、多方面の光ディスクシステムに適用可能であり、書込み処理する多方面の手法に採用でき、複数のレーザパルスのパワー又は開始時間及び終了時間を最適化することができる。これにより、マーク・ランレングスを最適化することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク書込みパラメータを最適化する方法に関し、特に複数の光ディスク書込みパラメータを同時に最適化する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、光ディスクシステムは、比較的低コスト化及び大容量化の故に、マルチメディアの視聴覚的情報や大量のデータにとって理想的なキャリアとなった。現在の光ディスクは、EFM(8〜14変調)符号化ルールを用いたCD(コンパクトディスク)、 EFM+符号化ルールを用いたDVD、17PP符号化ルールを用いたBD(ブルーレイディスク)、及び幾つかの他の特定の光ディスクを含む。前記種類の光ディスクの各々は、読取り専用の光ディスク、一回記録可能な光ディスク、及び書換え可能な光ディスクに分類できる。
【0003】
一回記録可能な光ディスクと書換え可能な光ディスクに関して、データは、レーザを記録することによって書込まれるマークと、マーク間のスペースとによって表される。各々の光ディスクはフォーカスされた読取りレーザによって種々の反射率を有するので、高周波変調された信号が生成される。アナログ高周波信号は、AC結合後に2値信号スライス装置に送られ、スライス・レベルと比較され、2値データに変換される。これにより、光ディスクのマーク及びスペースに対応するマークレベル及びスペースレベルのそれぞれを得る。次に、クロック信号へと結合後に、記録された元データを復元するために、マーク及びスペースの各々のランレングスを得ることができる。
【0004】
元データの復元は、スライスすることによって得たマーク・ランレングス及びスペース・ランレングスに依存することになるが、結局のところ、書込みによるマークの物理的長さによって定まる。スペースのその物理的長さは、スペースに隣接する2つの物理的長さによって定まるので、書込みによるマークの物理的長さの精度は、読取りによるマーク及びスペースのランレングスの偏差量を定める。それにより、光ディスクの書込み品質が定まる。
【0005】
光ディスクに精度良く書込むために、種々のタイプの光ディスクに従って、多くの種々の書込みストラテジが開発されている。例えば、一回記録可能なCD-R光ディスクに好適な方形波形状のレーザ書込みストラテジ、一回記録可能なDVDの波形開始及び終了部分に好適な、より高いパワーの“ドッグ-ボーン(dog-bone)”波形形状の書込みストラテジ、低速(10倍速の速度より低い)CD-RWに好適な“1T書込みストラテジ”、 高速相変化量型光ディスクに好適な“2T書込みストラテジ”、更に、他のタイプの光ディスクに好適な他の書込みストラテジなどがある。書込みストラテジの各タイプは、あるシーケンスにおける、様々な種々のレーザパルスで構成されている。一般に、種々のマークは、種々のレーザパルスシーケンスによって書込まれる。レーザパルスシーケンスでは、同一の種類のレーザパルスは同一のアルファベットで表現される。レーザパルスの各種類は、パルス高さ(パワー)とパルス幅(開始時間と終了時間で定まる)の2つのパラメータを有している。実用上の書込み処理の間に、書込みパラメータが変更される場合には、データ記録の品質が最終的に影響を与えられる。
【0006】
図1は、超速型CR-RWシステムに用いられる“2T書込みストラテジ”における24倍速での3T、4T及び5Tマークを書込むレーザパルスパターンを示す。図1に示すように、前記“2T書込みストラテジ”の各Tの時間は、8つの時間領域に等しく分割されている(本明細書では、各時間分割は、0.206nsである)。即ち、その書込みストラテジは、同一の幅でレーザパルスを形成したシーケンスであり、時間分割の各々のレーザパルスの高さは、種々のアルファベットで表される。特有のレーザパルスパターンは以下の通りである。
【0007】
3Tマーク
eeewwwww wwwwbbbb bbbcceee
4Tマーク
eeewwwww wbbbbbbb bbbwwwww wbbbddee
5Tマーク
eeewwwww wbbbbbbb bbbbbbww wwwwwwwe bbbffeee
【0008】
ここに、アルファベットwは、書込みパワーを表す。eは、消去パワーを表す。bは、冷却パワーを表す。そして、パラメータc、d、fは、それぞれ3T、4T及び5Tマークの後エッジを精度良く調整するパルスである。特有のパワーを所望に最適化できる。
【0009】
光ディスクの書込みの際、書込みパラメータは、元データを精度良く復元するようにマークの正確な物理的長さを得るため、書込みパラメータは最適化される必要がある。即ち、レーザパルスパワー及び/又は書込みストラテジによる開始時間と終了時間は、最適化されるべきである。
【0010】
書込みパラメータを最適化するための従来の方法は、書込みパワーと消去パワーの最適化に集中している。なぜなら、特有の書込み状況下での最適な書込み及び消去パワーは、光ディスクとそのドライバーとの間のマッチングによって決定されるためである。
【0011】
一回記録可能な光ディスクと低速型の書換え可能な光ディスクに関しては、従来技法は、書込みパワーを修正するのみであり、特有の技術的詳細については、光ディスク標準として公表されている。形式的に光ディスクを書込む前に、ドライバーは、光ディスク標準によって指定されたOPC(Optimum Power Control)ステップに従って、最適な書込みパワーを探索する。各光ディスクのATIP(Absolute Time In Pregroove)情報は、書込みストラテジに関するレーザパルスパラメータの最適化された初期値を含んでいる。ドライバーは、出発点としてこの最適化された初期値を使用し、最適な書込みパワーを見つけるために、OPCステップに従ってガンマ信号測定を実行する。しかしながら、最適な消去パワーを個別に校正する必要はない。なぜなら、ATIP情報は、この種類の光ディスクについて最適な消去パワーと最適な書込みパワーとの間の比率を含んでいるからである。詳細なOPCステップに関しては、CD-R及びCD-RWのオレンジブックの標準を参照してもらいたい。
【0012】
マルチスピード型の光ディスク書込みに関して、光ディスクドライバは、ルックアップ型のテーブルを保持している。光ディスクとドライバーとの間には、種々の相違があるので、ルックアップ型の前記テーブルは、光ディスクの書込みパラメータ値をできる限り多く含むはずである。前記テーブルを有するドライバーは、ルックアップ型の前記テーブルによって、ある特有の光ディスクの書込みパラメータにとって好適な最適値を都合よく見つけることができる。
【0013】
しかしながら、超速型CD-RW、書換え可能なDVD、及び書換え可能なブルーレイ光ディスクなどの高速の書換え可能な光ディスクに関しては、2T又は、より複雑な書込みストラテジを構成させなければならない。そのディスクのATIPコードは、これらのパラメータを最適化するための情報を含んでいないが、最適化すべき、少なくとも4つのレーザパルスパワー又はパルス幅がある。また、ドライバーの種々の光学電気部品と書込み環境で、これらのパラメータを変更する場合には、ドライバー自体が、これらパラメータを最適化しなければならない。未知の光ディスクに関しては、直ちに且つ柔軟に、書込みパラメータを最適化することが大きな課題である。
【0014】
高速型の書換え可能な光ディスクに関してパラメータを最適化する従来方法には、主に次の方法がある。B.Tieke及びF.Tangによって提唱されるデータ間ジッタの測定又はデータ-クロック間ジッタに基づいて書込みパワーを最適化する方法。Willem Geurtzenにより提唱されるベータ測定に基づいて消去パワーを最適化する方法。そして、F.Tangによって提唱されるデータ間ジッタの測定又はデータ-クロック間ジッタに基づいて消去パワーを最適化する方法。しかし、前記方法は、書込みパワー又は消去パワーを最適化することのみできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、様々な種類の光ディスク(様々な種類の一回記録可能な、又は書換え可能な光ディスクを含む)及び種々の書込みストラテジの書込みに適用できる、書込みパラメータを最適化する従来方法はない。特に、各シンボルのマーク・ランレングスを可能な限り正確なマーク・ランレングス(例えば光ディスク標準によって指定された標準マーク・ランレングス)に近づけさせる方法であって、マーク・ランレングスに関して複数のレーザパルスパラメータを同時に最適化する方法は全くない。各マークのランレングスを標準化することによって、スペース・ランレングスも、マーク及びスペースのより小さい長さジッタ又は位置ジッタを得るために標準化される。これにより、低ビット誤差率を達成でき、且つ最終的に正確な元データを得ることができる。
【0016】
概要において、従来の最適化方法は多くの欠陥を有しているので、全ての場合で適用でき、複数の書込みパラメータを同時に最適化する、光ディスク書込みのパラメータを最適化する方法が必要となる。
【0017】
本発明は、正確なマーク・ランレングスを得ることができる、光ディスク書込みパラメータを最適化する方法及び装置を提供することを目的とする。更に、本発明は、複数の光ディスク書込みパラメータを同時に最適化する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、光ディスク書込みパラメータを最適化する装置を提供する。
【0019】
更に、本発明は、マーク・ランレングスの変化量を取得するステップと、マーク・ランレングスの変化量と変調量との間の関係に基づいてパラメータの変調量を決定するステップと、前記のパラメータの値を変調するステップとを含む、光ディスク書込みパラメータを最適化する方法を提供する。
【0020】
本発明により、マーク・ランレングスの変化量におけるパラメータ変調量の影響が定められる。
【0021】
本発明によって提供された最適化方法と装置によって、正確なマーク・ランレングスを得られる故に、複数の書込みパラメータを同時に最適化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
複数の書込みパラメータを同時に最適化する最適化方法を提供するために、発明者は、光ディスク書込みにおいて、パラメータ変化量がマーク・ランレングスに影響を与える理由を慎重に分析した。分析した結果、従来の最適化方法が単一のパラメータの最適化に制限される理由を見出し、その間に新たな最適化方法として、新たな提案をもたらした。
【0023】
図2は、光ディスク書込みシステムにおけるマーク・ランレングスを取得する図であり、そのパラメータ変化量がマーク・ランレングスに影響する理由を示している。
【0024】
一回記録可能な又は書換え可能な光ディスクに書込みしている際に、書込み装置110は、書込みパラメータの設定に従って光ディスクにマークを書込み、隣接するマーク間にスペースを形成させる。マーク及びスペースは、それ自体、物理的長さを有し、その物理的長さは、書込みパラメータによって決定される。
【0025】
光ディスクのマーク及びスペースが、読取り装置120によって読取られると、高周波変調信号が、物理的なマーク長さ又は物理的なスペース長さのいずれかに従って生成される。読取り装置120からの高周波信号は、2値信号スライス装置140を介して、スライス・レベル決定装置130からのスライス閾値と比較して、2値データへと変換される。これにより、マークレベル及びスペースレベルが取得される。最終的にランレングス測定装置160は、マーク及びスペースのランレングスを得るように、内部又は外部クロック装置150によって生成されたクロック信号に従って、2値信号スライス装置140からのマークレベル及びスペースレベルを測定する。
【0026】
上述の処理において用いられるスライス閾値は、2値信号スライス装置140によるフィードバックされたマークレベル及びスペースレベルに従って、スライス・レベル決定装置130によって決定され、ダイナミックに変化量し続ける。その原理は、スライス・レベル決定装置が、内部的にスライスされた2値データのランレングスを統合するということによる。一般に、スペース・ランレングスの値は正側であり、マーク・ランレングスの値は負側である。スライス閾値は、全てのスペース・ランレングスの合計が、全てのマークのランレングスの合計にアプローチすることを確実にさせるように、“最小値に向かうDSV(Digital SumValue)”の原理は、負側のフィードバック制御をスライス閾値に適用する。これにより、高周波信号が変化量するときに、スライス閾値の再バランス化を生じさせる。
【0027】
図3は、高周波信号の前記変化量が、スライス・レベルの再バランス化を生じさせる上述の処理についての、より明確な図である。同図では、実線は、再バランス化前の安定した状態を示し、破線は、再バランス化後の状態を示す。S0及びS1は、再バランス化前後の高周波信号をそれぞれ示し、L0及びL1は、再バランス化前後のスライス閾値をそれぞれ示す。dSは、読取り高周波信号の変化量であり、Δhは、再バランス化によって生じるスライス閾値のシフト量である。高周波信号が、dSの変化量で位置S0から位置S1に変化量するので、スライス閾値は、Δhの量だけL0からL1に対応して移動する。
【0028】
従って、書込みパラメータの変化量(dPj)の故に、物理的なマーク長さも依存して変化量する(dPhyLj)。物理的なマーク長さ及び物理的なスペース長さの変化量は、更に高周波信号の変化量を生じさせる。高周波信号の変化量の故に、測定されたマーク・ランレングスも依存して、変化量する (ΔMarkRLi)。しかしながら、マーク・ランレングスは、高周波信号に関わるだけではなく、マーク・ランレングス自体が高周波信号によって影響されるスライス・レベルにも関わる。
【0029】
これは、ある書込みパラメータの変化量が、対応するマーク・ランレングスの変化量を生じさせるだけでなく、他の全てのマークのランレングスにも影響することを意味する。従って、測定されたマーク・ランレングスの変化量は、物理的なマーク長さの実際の変化量ではない。結果として、測定されたマーク・ランレングスは、全ての書込みパラメータの設定に依存する(例えば、CDシステムにおける3Tマークの物理的長さの変化量は、6Tマークのランレングスの実測値に影響する)。
【0030】
本発明で言及するマーク又はスペースの物理的長さ又はランレングスは、テストにおける、ある種類のマーク又はスペースについての、複数の物理的長さの平均長さ又はランレングスサンプルを示しており、物理的長さの全体の結果を評価するのに用いられる。これにより、熱干渉、測定雑音、及びそれと同様のものの影響を排除できる。
【0031】
各パラメータの変化量が最終的に全てのマーク・ランレングスに直接的に影響するので、従来の方法では、マーク・ランレングスについて同時に変化量する2つ以上のパラメータの複雑な影響を予期できないか、又は、従来の最適化方法では、単一のパラメータの最適化に制限される。複数のパラメータの最適化が関わると、従来の最適化方法は、無力化するか、又は個別に各々のパラメータを最適化する方法へと簡素化することになる。
【0032】
複数のパラメータ及びマーク・ランレングスの影響を慎重に分析した後、本発明を、複数のパラメータを同時に最適化する最適化方法として進歩的に提唱する。特有の内容について、以下の実施例で詳細に説明する。
【0033】
図4は、本発明による光ディスク書込みパラメータの最適化装置の構造図である。前記最適化装置200は、マーク・ランレングスの変化量を取得する取得装置210と、書込みパラメータの変調量を決定する決定装置230と、前記書込みパラメータの値を変調する変調装置240とを備える。
【0034】
最適化を実行するとき、取得装置210は、マーク・ランレングス測定装置160からのマーク・ランレングスに従って、マーク・ランレングスの変化量を取得する。その後、決定装置230は、マーク・ランレングスの変化量と書込みパラメータの変調量との間の関係に従って、書込みパラメータの変調量を確認する。最終的に、変調装置240は、決定装置230によって決定された書込みパラメータの変調量に従って、前記書込みパラメータを変調する。これにより、マーク・ランレングスを規定するように最適化できる。
【0035】
また、光ディスク書込みパラメータ最適化装置は、最適化を実行するか否かを判定する判定装置220を備えることもできる。従って、最適化の際、取得装置210が、マーク・ランレングスの変化量を取得した後、判定装置220は、最適化を実行すべきか否かを決定するように判定する。
【0036】
最適化の目標によって規定されるマーク・ランレングスを達成すれば、前記装置によって実行される最適化は必要なくなり、従来の書込み装置による直接的な書込みを実行することができる。最適化する必要が生じると、決定装置230は、書込みパラメータの変調量を確認して、最終的に、変調装置240が決定装置230で決定される書込みパラメータの変調量に従って前記書込みパラメータを変調する。これにより、マーク・ランレングスは最適目標に達することができる。
【0037】
上述の装置は、一回記録可能な又は書換え可能なCD 、DVD又はブルーレイ光ディスクに好適である。
【0038】
マーク・ランレングスを最適目標に到達させるため、複数のレーザパルスのパワー又は開始時間及び終了時間を同時に最適化することができるように、本発明の最適化方法の全ての処理を前記装置によって実行することができる。
【0039】
本発明の最適化方法について、以下の図及び実施例に関連して詳細に説明する。本発明の光ディスク書込みパラメータの最適化方法の実施例Aは、超速型CD-RWディスクの複数の光ディスク書込みパラメータを最適化することに関する。最適化処理において、書込みは、24倍速で実行され、測定は、10倍速で読取られる。最適化処理は、EFM符号化ルールに従って生成したランダムデータシーケンスを用い、マーク書込みを制御するために、表1に示すように“2T書込みストラテジ”を用いる。
【0040】
表1: 実施例Aに用いられる書込みストラテジ
【0041】
【表1】

【0042】
ここに、アルファベットwは、書込みパワーを表し、eは、消去パワーを表す。そして、bは、冷却パワーを表し、g及びhは、予め定めたパワーを表す。パラメータcは、全ての3Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーであり、パラメータdは、全ての4Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーである。そして、パラメータfは、全ての5Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーである。
【0043】
最適化を開始する前に、最適化に必要なパラメータを決定する。マーク3T、4T及び5Tは、全てのマークについてのサンプル量の70%を取得し、より高い周波数を有するので、電気信号のビット検出に極めて重要であり、最適化されるように決定されるパラメータは、c、d及びfであり、マーク3T、4T及び5Tを正確なマーク・ランレングスに到達させる。
【0044】
本実施例で決定される最適目標は、光ディスク標準によって指定されたマーク・ランレングスである。測定が10倍速で読取られるので、3Tマークの最適目標は69.45nsとなり、4Tマークの最適目標は92.6nsとなり、5Tマークの最適目標は115.75nsとなる。その際、許容誤差範囲は、±0.5nsとして設定される。
【0045】
特有の最適化処理は、図5に示されているとおりである。 最適化を開始後に、ステップS10は、まず、各書込みパラメータに初期値を設定するように実行する。
【0046】
最適化されないパラメータに関しては、そのパラメータ値は予め定められている。OPCステップによれば、書込みパワーPw=40mW、消去パワーPe=8mW、冷却パワーPb=0.1mW、g及びhのパワーは、Pg=Ph=4mWとなる。
【0047】
Pc、Pd、及びPfは、最適化すべきパラメータc、d、及びfのパワーであり、その初期値は、ドライバーの許容範囲内でランダムに設定することができる。最適化処理の実働負荷を低減させるために、通常、Pc、Pd、及びPfは、消去パワーの半分に設定される。即ち、前記初期値は、本実施例においてPc=Pd=Pf=4mWである。
【0048】
次に、ステップS20は、書込まれたデータのマーク・ランレングスを測定するように実行され、図9のマーク◆によって示すように、測定された3T、4T及び5Tマーク・ランレングスは、3T、4T及び5Tマーク・ランレングスの偏差量を取得するために、3T、4T及び5Tマーク・ランレングスの最適目標からそれぞれ差分される。それら偏差量は、3T、4T及び5Tマーク・ランレングスの所望の変化量でもある。3Tマーク・ランレングスの変化量は、ΔMarkRL3T=1.58nsであり、4Tマーク・ランレングスの変化量は、ΔMarkRL4T=−1.86nsであり、5Tマーク・ランレングスの変化量は、ΔMarkRL5T=−1.15nsである。図9において、測定されたマーク・ランレングスがマーク・ランレングスの各々の最適目標と一致しているとき、マーク・ランレングスの変化量はゼロである。
【0049】
次に、判定ステップS40は、最適化が必要か否かを決定するように実行される。本実施例では、最適化処理で設定される許容誤差範囲は、±0.5nsであり、その比較では、3T、4T及び5Tマークのランレングスの偏差量が全て、最適目標の許容誤差範囲を超えているか否かを示しており、それら偏差量は最適化されるべきものである。
【0050】
次に、ステップS51及びS52は実行され、最適化すべきパラメータの変調量がステップS30から取得したマーク長さの変化量に従って決定される。
【0051】
ここで、ステップS51において、マーク3T、4T及び5Tの物理的長さの所望の変化量は、次の行列式で与えられる。
【数1】

上記の行列式は、マーク・ランレングスの変化量とマークの物理的長さの変化量との間の関係に基づいて決定することができる。
【0052】
【数2】

【0053】
即ち、dPhyLc=1.197ns、dPhyLd=−2.243ns、及びdPhyLf=−1.533ns。
【0054】
次に、ステップS52は、物理的長さの所望の変化量に従って、全てのパラメータの変調量を決定するように実行される。
【0055】
物理的なマークの長さの変化量とパラメータとの間の関係(即ち、dPr=dPhyLr/Kr)に基づいて、係数Kc=−0.83(ns/mW)、Kd=−1.27(ns/mW)、Kf=−1.05(ns/mW)の組み合わせにおいて、所望のパワー変調量dPc=dPhyLc/Kc=1.197/−0.83=−1.442mW、dPd=−2.243/−1.27=1.766mW、dPf=−1.533/−1.05=−1.46mWを得ることができる。
【0056】
パワー変調量を取得後に、ステップS60は、各パラメータの設定パワー値を調整するように実行される。パラメータのパワー値は、Pc = 4−1.442 = 2.558mW、Pd = 4 + 1.766 = 5.766mW、及びPf = 4 + 1.46 = 5.46mWのように、調整される。
【0057】

【0058】
次に、判定ステップS40は実行され、その結果が、ΔMarkRL3T= 0.105ns、ΔMarkRL4T= −0.05ns、及びΔMarkRL5T= −0.198nsである。3T、4T及び5Tマーク・ランレングスの変調量が大幅に減少することが分かる。上述の結果は、最適目標範囲が、1回の最適化の後に満たされていることを示しており、最適化処理を繰り返す必要はない。
【0059】
最適目標に達した後に、ステップS70は、パラメータの最適化されたパワー値を用いることにより、正確な書込みを実行するように行うことができる。
【0060】
上述の最適化処理で、ステップ51にて採用した式(1)のマーク・ランレングス変化量と物理的なマーク長さの変化量との間の関係は、以下のステップにより決定される。
【0061】
まず、マーク・ランレングス変化量と物理的なマーク長さの変化量との間の関係は、複数の書込みパラメータと関連付けられるときに決定され、その原理は以下の通りである。
【0062】
一般的に説明すると、最適化を必要とする総じてMの書込みパラメータjがあり、j=1,2,…Mと表す。シンボルPjは、jの設定値を表すのに用いられる。dPjは、パラメータjの変化量を表すのに用いられる。パラメータjによって直接的に影響を与えられる、マークの物理的長さの変化量は、dPjによってそれぞれ生じるものであり、ΔMarkRLi(j=1,2,…M)である。信号スライス装置によってスライスされるマーク・ランレングスの変化量は、ΔMarkRLi (i=1,2,…N)である。ここに、シンボルiは、標準によって許容されるマークの種類である。例えば、EFM符号化ルールに適合するCD光ディスクシステムでは、iを、3T、4T、…11Tマークとするこができ、i=1,2,…9でそれぞれ表される。
【0063】
パラメータ変化量とマーク・ランレングスの変化量との間の関係は、以下のようにするこができる。
【0064】
【数3】

【0065】
上述の処理について、背景技術として図2に関連して、詳細に説明する。マーク・ランレングスの変化量を生じさせる理由を慎重に分析した後に、物理的なマーク長さの変化量とマーク・ランレングスの変化量との間の関係を得ることができる。
【0066】
動作中の2値信号スライス装置では、スライス閾値は、短期間の過渡後に通常安定化する。スライス装置は、高周波信号に対して極めて大きな時定数を有するため、スライス閾値は、一期間中では一定レベルとして考えることもできる。その際、読取り高周波信号は、通常、全てのマーク及びステップにおいて、同一の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを有する。立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジは、スライス閾値付近では直線的であり、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの勾配の絶対値は、“K”である。
【0067】
更に、マークiの種々のサンプル量は、スライス閾値の変化量において種々の影響を有しうる。サンプルマーク量の分布について記述するために、重み付け係数jpを規定することが必要となる。jpは、全てのマークのサンプル量におけるパラメータjによって直接的に影響を与えられるマークのサンプル量の割合を示している。一般に、最適化するための符号化ルールに従って生成されたランダムデータを用いるときには、分布重み付け係数は符号化ルールに関連付けられており、最適化するためのユーザによって規定されたデータを用いるときは、分布重み付け係数は、符号化ルールに関連付けられない。
【0068】
スライス閾値がバランスの取れている位置の初期状態にあるとき、パラメータjが変化量dPjによって変化量すれば、dPjによって生じる対応するマークの物理的長さの変化量は、dPhyLjである。従って、読取り高周波信号は変化量しうる。“最小値に向かうDSV”の原理によれば、スライス閾値は、スライス後の全てのマークについての測定されたランレングスの合計の変化量を補償するため、Δhシフトする。最終的に、全てのマークについての測定されたランレングスを、ΔMarkRLiだけ変化量させる。以下の式(2)は、図3のスライス閾値の再バランス化の結果を示すのに用いられる。
【0069】
dPhyL1×1p+…+dPhyLj×jp+…+dPhyLM×Mp=−(Δh/K)×2 (2)
又は、以下のように、式(2)を一般的公式へと表すことができる。
【数4】

【0070】
マークiのランレングスの測定された変化量は、後述する式(3)のように、物理的なマーク長さの実際の変化量とスライス閾値のシフトによって表すことができる。
【0071】
【数5】

【0072】
ここに、eijは、影響係数であり、パラメータjがマークiに直接的に影響を与えると、eij =1となり、パラメータjがマークiに直接的に影響を与えないと、eij =0となる。
【0073】
式(2) 及び(3)の組み合わせから、複数の書込みパラメータに関する、物理的なマーク長さの変化量とマーク・ランレングスの変化量との間での、式(4)の変換関数が得られる。
【0074】
【数6】

【0075】
ここに、変換行列の係数はVij=−jp+eijである。
【0076】
その後、上述の変換関数は、マーク・ランレングスの変化量と物理的なマーク長さの変化量との間の関係を得るために逆変換する。特有の方法は、以下の通りである。
【0077】
M=Nであり、変換行列が数学的に非正則、即ち、変換行列の行列式がゼロと等しくないとき、以下のように表される。
【数7】

【0078】
式(4)は、複数の書込みパラメータに関する、マーク・ランレングスの変化量と物理的なマーク長さの変化量との間の関係を得るための逆変換であり、以下のように表される。
【数8】

【0079】
本実施例では、シンボルdPcは、パラメータcのパワー変化量を示し、dPdは、パラメータdのパワー変化量を示し、dPfは、パラメータfのパワー変化量を示している。シンボルdPhyLcは、dPcによって生じる3Tマークの物理的長さの変化量が示し、dPhyLdは、dPdによって生じる4Tマークの物理的長さの変化量が示し、dPhyLfは、dPfによって生じる5Tマークの物理的長さの変化量が示す。ΔMarkRL3Tは、3Tマークのランレングスの測定される変化量を示し、ΔMarkRL4Tは、4Tマークのランレングスの変化量を示し、ΔMarkRL5Tは、5Tマークのランレングスの変化量を示す。
【0080】
従って、式(2)により、 スライス閾値の再バランス化等価式を以下のように得ることができる。
DPhyLc×cp+dPhyLd×dp+dPhyLf×fp=−(Δh/K)×2
【0081】
式(3)により、スライス後に測定されるときの3T、4T及び5Tマークのランレングスの変化量は、以下のように表すことができる。
【数9】

【0082】
従って、物理的長さの変化量と、パラメータc、d及びfに関連する、式(4)に対応する3T、4T及び5Tマークのランレングス変化量との間の関係は、以下のように表すことができる。
【数10】

【0083】
本実施例は、EFM符号化ルールを採用し、生成したランダムデータシーケンスにおける、マークサンプル量の分布はほぼ一定である。本実施例の最適化処理は、25000個のマークを含むランダムデータシーケンスを採用している。そこでは、マークの各種類のサンプル量分布は、表2に示すとおりである。
【0084】
表2:EFMルールによるサンプルマーク量の分布
【0085】
【表2】

【0086】
従って、3T、4T及び5Tマークのサンプル分布について記述するために3つの重み付け係数を規定することができる。cp=7660/25000=0.31は、パラメータcによって直接的に影響を与えられる3Tマークのサンプル量の割合を示し、dp=5514/25000=0.22は、パラメータdによって直接的に影響を与えられる4Tマークのサンプル量の割合を示し、fp=4310/25000=0.17は、パラメータfによって直接的に影響を与えられる5Tマークのサンプル量の割合を示す。式(6)にこれらの係数を代入すると、次式が得られる。
【数11】

【0087】
変換行列の行列式がゼロと等しくないので、即ち次式が成立している。
【数12】

【0088】
式(5)に対応する変換関数は、次式のように、逆変換行列によって得ることができる。
【数13】

【0089】
上記の式は、ステップS51で用いられたマーク・ランレングスの変化量と物理的なマーク長さの変化量との間の式(1)の関係である。
【0090】
dPr=dPhyLr/Krによって表される、ステップS52で用いられるような、物理的なマーク長さの変化量と書込みパラメータ値との間の関係や、係数Kc=−0.83(ns/mW)、Kd=−1.27(ns/mW)及びKf=−1.05(ns/mW)は、以下に説明するステップによって決定される。
【0091】
まず、ある書込みパラメータrと、物理的なマーク長さの変化量との間の関係が決定される。
【0092】
パラメータrのみがdPrによって設定値Prから変化量するときには(ここに、dPr≠0、dPx=0(x=1,2,…M, x≠r)、パラメータrによって直接的に影響を与えられるマークの物理的長さの変化量dPhyLrがゼロと等しくない)、他のマークの物理的長さは変化量せず、即ち、dPhyLx=0である。パラメータrによって直接的に影響を与えられるマークがsであれば、そのマークのランレングスの変化量は、ΔMarkRLsである。パラメータrによって直接的に影響を与えられないマークがtであれば、そのマークのランレングスの変化量は、ΔMarkRLtである。
【0093】
マーク・ランレングスの測定された変化量を記述するために、以下の式を式(3)から得ることができる。
ΔMarkRLs = (Δh/K) ×2+dPhyLr
ΔMarkRLt = (Δh/K) ×2
結果として、ΔMarkRLs = ΔMarkRLt+dPhyLr
dPhyLr = ΔMarkRLs−ΔMarkRLt 式(7)
【0094】
通常、レーザパルスパラメータrの変化量と、rによって影響を与えられるマークの物理的長さの変化量との間の関係は、dPhyLr=f(dPr)として表すことができる。
【0095】
物理的なマーク長さの変化量とレーザパルスパラメータの変化量との間の関係を取得するために、多数回の書込み試験が、各回毎に変化量するPrで実行される。次に、マーク・ランレングスの変化量は、以下の式に示すような、マーク・ランレングスの変化量とレーザパルスパラメータの変化量との間の関係を取得するために測定される。
ΔMarkRLs=f1(Pr)、ΔMarkRLt=f2(Pr)
【0096】
式(7)と組み合わせ、式dPhyLr=ΔMarkRLs−ΔMarkRLt= f1(Pr)−f2(Pr)= f1-2(Pr)が得られる。
【0097】
レーザパルスパラメータの初期値Pr0を前記等価式に代入し、レーザパルスパラメータrの変化量dPrとマークの物理的長さの変化量dPhyLrとの間の関係を導くことができる。
dPhyLr = f1−2(Pr)= f1−2(Pr0+dPr) = f(dPr)
【0098】
物理的なマーク長さの所望の変化量dPhyLrとレーザパルスパラメータの初期値Pr0とに基づいて、レーザパルスパラメータの所望の変化量dPrを算出することができる。
【0099】
共通型の光ディスク書込みに関して、書込みストラテジのパラメータ(レーザパルスのパワー、開始時間及び終了時間)を合理的に規定することにより、直接的に影響を与える前記パラメータと物理的なマーク長さの変化量との間の関係は、ある範囲において略線形である。従って、所望の変化量dPhyLrを以下のように規定することができる。
ΔMarkRLs=K1×dPr 且つΔMarkRLs=K2×dPr
従って、式(7)から次式となる。
dPhyLr=K1×dPr−K2×dPr=(K1−K2)×dPr=Kr×dPr (8)
【0100】
次に、dP=dPhyLr/Krは、逆変換によって導くことができる。ここに、強度係数Krは、rによって直接的に影響を与えられるマークの物理的長さの変化量を示すのに用いられ、レーザパルスパラメータrの変化量によって生じる。従って、強度係数Krを、最適化の計算に都合よく用いることができる。
【0101】
最終的に、係数Krが決定される。
【0102】
本実施例において、各書込みパラメータの係数Kc、Kd、Kf (ns/mW)、即ち、3T、4T、5Tマークの後エッジのレーザパルスパラメータの変化量によって生じる3T、4T、5Tマークの物理的長さの変化量を決定する必要がある。
【0103】
一連の書込み試験が、ステップS10にて決定された各パラメータの初期値に従って、各回毎に変化量するc、d及びfで実行される。次に、最適目標に対する3T、4T及び5Tマークのランレングスの変化量が測定され、取得した測定結果は、図6、7及び8に示すように、線形傾向で表われる。次に、パラメータの強度係数は、線形傾向の勾配に基づいて計算される。
【0104】
パラメータcに関して測定の結果である図6では、4T及び5Tのマーク・ランレングスの変化量が、パラメータcに関して同一である。これら勾配の平均を、測定誤差を除去するためにK2とする。
【0105】
従って、K1=−0.58(ns/mW)及びK2=−0.25(ns/mW)が得られる。
【0106】
式(8)により、Kc= K1−K2=−0.58−0.25=−0.83(ns/mW)。
【0107】
同様に、図7及び8 から、Kd=−1.27(ns/mW)及びKf=−1.05(ns/mW)が得られる。
【0108】
従って、物理的なマーク長さの変化量と書込みパラメータの変化量との間の関係dPr=dPhyLr/Kr、及び強度係数Kc=−0.83(ns/mW)、Kd=−1.27(ns/mW)、Kf=−1.05(ns/mW)が得られる。
【0109】
更に、本発明は上述した実施例に限定されない。そして、多くの変更をすることができる。
【0110】
複数のパラメータを同時に最適化する、そのような提案は、一回記録可能な又は書換え可能なCD 、DVD又はブルーレイの光ディスクシステムに適用できる。例えば、DVD+R及びDVD+RW書込みシステム又はBD-RW書込みシステムなどである。
【0111】
適用可能な書込みストラテジとしては、方形型レーザパルス書込みストラテジ、“ドッグ‐ボーン”書込みストラテジ、“1T書込みストラテジ”、“2T書込みストラテジ”及び同様なものとすることができる。
【0112】
最適化すべき書込みパラメータを、レーザパルスパワーだけでなく、レーザパルスの開始時間及び終了時間とすることができる。即ち、レーザパルスの開始時間及び終了時間を最適化している間も変化量なく、書込みストラテジのレーザパルスパワーを維持することにより、マーク・ランレングスを最適目標に到達させるようにマークの前エッジ及び後エッジを正確に調整することも可能である。
【0113】
本発明が様々な状況で書込みパラメータの最適化に適用可能であることを示すために、本発明の様々な態様の実施例を、後述するように簡潔に取り入れる。ここに、実施例Aで説明した同様な要素又は明白な応用のものは、これ以上説明しない。
【0114】
本発明の最適化方法の実施例Bは、実施例Aに用いられたような同一の光ディスクにおいて、光ディスク書込みの複数のパラメータを最適化することに関する。差異点は、表3に示すように、マークの書込みを制御するための“2T書込みストラテジ”を用いることである。
【0115】
表3:実施例Bに用いられる書込みストラテジ
【0116】
【表3】

【0117】
ここに、アルファベットwは、書込みパワーを表し、eは、消去パワーを表す。そして、bは、冷却パワーを表し、hは、予め定めたパワーを表す。パラメータcは、全ての3Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーであり、パラメータdは、全ての4Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーである。そして、パラメータfは、全ての5Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーである。gは、全ての6Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーである。
【0118】
最適化されるべきパラメータは、c、d、f及びgであり、これらパラメータは、正確なマーク・ランレングスを到達させるために、全ての3T、4T、5T及び6Tマークの後エッジを正確に調整するようにそれぞれ用いられる。
【0119】
従って、表2に示すように、EFM符号化ルールによって、マークサンプル量の分布に従って、3T、4T、5T及び6Tマークのサンプル分布を記述するために、4つの重み付け係数を規定することができる。cp=0.31は、パラメータcによって直接的に影響を与えられる3Tマークのサンプル量の割合を示す。dp=0.22は、パラメータdによって直接的に影響を与えられる4Tマークのサンプル量の割合を示す。fp=0.17は、パラメータfによって直接的に影響を与えられる5Tマークのサンプル量の割合を示す。gp=0.10は、パラメータgによって直接的に影響を与えられる6Tマークのサンプル量の割合を示す。
【0120】
従って、マーク・ランレングスの変化量と物理的なマーク長さの変化量との間の変換行列は、式(1)に対応して、次式のように表される。
【数14】

【0121】
パラメータc、d、f及びgは、実施例Aに用いた方法と同一の方法を用いることによって、同時に最適化することができ、以下、これ以上の詳細な説明はしない。
【0122】
更に、あるパラメータによって直接的に影響を与えられるマークの重み付け係数は、符号化ルールに従って生成することに制限されず、ユーザによっても規定することができる。このように、分布の重み付け係数は符号化ルールに関連付けられない。本発明の最適化方法の実施例Cは、実施例Bと同様の複数パラメータ最適化を用いる。
【0123】
実施例Cでは、ユーザが自由に最適化試験に用いられるデータを規定することを可能とする。そのため、3T、4T、5T及び6Tマークのサンプル分布を記述する4つの重み付け係数は、cp=0.3、dp=0.2、fp=0.1、gp=0.05であり、各重み付け係数は、パラメータc、d、f及びgにより直接的に影響を与えられるマークのサンプル量の割合を示す。
【0124】
従って、式(9)によって表されるような、マーク・ランレングスの変化量と物理的なマーク長さの変化量に対応している変換行列は、次式によって表される。
【数15】

【0125】
パラメータc、d、f及びgを同時に最適化するのに同一の方法を使用できる。
【0126】
本発明の最適化方法の実施例Dは、実施例Aに用いられたような同一の光ディスクにおいて、光ディスク書込みの複数のパラメータを最適化することに関する。表4に示すように、マークの書込みを制御するための“2T書込みストラテジ”を用いる。
【0127】
表4:実施例4に用いられる書込みストラテジ
【0128】
【表4】

【0129】
ここに、アルファベットw、e、b、g及びhは、実施例Aと同一の規定による。差異点を以下に説明する。パラメータcは、3Tマークの後エッジの消去パワーeを制御する開始時間を規定することと、全ての3Tマークの後エッジを正確に変調するように用いられることである。パラメータdは、4Tマークの後エッジの消去パワーeを制御する開始時間を規定することと、全ての4Tマークの後エッジを正確に変調するように用いられることである。パラメータfは、5Tマークの後エッジの消去パワーeを制御する開始時間を規定することと、全ての5Tマークの後エッジを正確に変調するように用いられることである。
【0130】
最適化すべきパラメータc、d及びfの初期値は、表4に示されている時間である。即ち、1つ時分割間隔が1.206nsであり、それぞれエンド側から4つの時分割、2つの時分割及び3つの時分割として示される時間である。
【0131】
従って、式(1)によって表されるように、マーク・ランレングスの変化量と、物理的なマーク長さの変化量との変換行列について、次式のように用いることができる。
【数16】

【0132】
しかしながら、ステップ52において、書込みマークの物理的長さの変化量と、パラメータ値変化量との間の関係は、予め定める必要がある。即ち、ある書込みパラメータの強度係数(ns/ns)である。言い換えれば、マークはパラメータによって直接的に影響を与えられ、前記パラメータの開始時間及び終了時間の変化量(ns)によって生じる物理的なマーク長さの変化量(ns)を予め定める必要がある。それら変化量を試験で得ることもできる。
【0133】
従って、実施例Aに用いられる方法によれば、複数のレーザパルスの持続時間(即ち、パルス幅)を同時に最適化することは明らかである。
【0134】
本発明の最適化方法の実施例Eは、EFM+符号化ルールを用いて書換え可能なDVDシステムに適用可能である。
【0135】
一回記録可能な又は書換え可能なDVD光ディスクシステムでは、EFM+符号化ルールに従って生成されたランダムデータシーケンスが最適化処理の実行に用いられると、毎回2つの14Tのランレングスが固定距離で手動にて挿入され、他のマークのサンプル量の分布がほぼ一定であることが分かる。そのため、表5に示すように、重み付け係数を適応的に変更すべきである。
【0136】
表5:EFM+ルールによるマークサンプル量の分布
【0137】
【表5】

【0138】
実施例Aに用いられる方法は、DVDの書込み用の複数のパラメータを最適化するために用いるおとができることは明らかである。
【0139】
更に、本発明は、ある種類のマークの一部を最適化する方法に適用することもできる。
【0140】
本発明の最適化方法の実施例Fは、実施例A.に用いられるものと同一の光ディスクにおいて、光ディスク書込みの複数のパラメータを最適化することに関する。しかし、差異点は、マークの書込みを制御するための表6に示すように、“2T書込みストラテジ”を用いることである。
【0141】
表6:実施例Fに用いられる書込みストラテジの基本的部分
【0142】
【表6】

【0143】
特に、表7に示すレーザパルスパターンは、3Tスペースに隣接する、3T、4T及び5Tマークの書込みを制御するように用いられる。
【0144】
表7:実施例Fに用いられる書込みストラテジの特有部分
【0145】
【表7】

【0146】
表6及び7において、アルファベットwは、書込みパワーを表し、eは、消去パワーを表す。そして、bは、冷却パワーを表し、パラメータcは、3Tスペースに隣接する3Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーであり、パラメータdは、3Tスペースに隣接する4Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーである。そして、パラメータfは、3Tスペースに隣接する5Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーである。
【0147】
最適化すべきパラメータは、c、d及びfであり、各パラメータは、正確なマーク・ランレングスを到達させるように、3Tスペースに隣接する全ての3T、4T及び5Tマークの後エッジを正確に調整するようにそれぞれ用いられる。
【0148】
これにより、表2に示すように、EFM符号化ルールによってマークサンプル量の分布に従って、3つの重み付け係数が、3T、4T及び5Tマークのサンプル分布を記述するために規定することができる。cp=0.3l×0.31=0.096は、パラメータcによって直接的に影響を与えられる3Tマークのサンプル量の割合を示している。dp=0.3l×0.22=0.068は、パラメータdによって直接的に影響を与えられる4Tマークのサンプル量の割合を示している。fp=0.3l×0.17=0.053は、パラメータfによって直接的に影響を与えられる5Tマークのサンプル量の割合を示している。
【0149】
従って、式(1)によって表されるように、マーク・ランレングスの変化量と物理的なマーク長さの変化量に対応する変換行列は、次式のように表される。
【数17】

【0150】
実施例Aに用いた方法と同一の方法によって、パラメータc、d及びfを同時に最適化することができ、これにより、3Tスペースに隣接する3T、4T及び5Tマークを特有に制御できる。
【0151】
本発明の最適化方法の実施例Gは、実施例Fに用いられるものと同一の光ディスクにおいて光ディスク書込みの複数のパラメータを最適化することに関するものであり、マークの書込みを制御するための表6に示されるように、“2T書込みストラテジ”を用いる。
【0152】
しかしながら、相違点は、表7に示すように3Tスペースに隣接する3T、4T及び5Tマークの書込み後エッジを制御する代わりに、3Tスペースに隣接する3Tマークの書込みと、4Tスペースに隣接する4Tマークの書込みと、5Tスペースに隣接する5Tマークの書込みとを制御するために表8のレーザパルスパターンを用いることである。
【0153】
表8:実施例Gに用いられる書込みストラテジの特有部分
【0154】
【表8】

【0155】
表8において、アルファベットwは、書込みパワーを表し、eは、消去パワーを表す。そして、bは、冷却パワーを表し、パラメータcは、3Tスペースに隣接する3Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーであり、パラメータdは、4Tスペースに隣接する4Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーである。そして、パラメータfは、5Tスペースに隣接する5Tマークの後エッジを正確に変調するためのパワーである。
【0156】
最適化すべきパラメータは、c、d及びfであり、各パラメータは、正確なマーク・ランレングスを到達させるように、3Tスペースに隣接する3Tマーク、4Tスペースに隣接する4Tマーク及び5Tスペースに隣接する5Tマークの後エッジを正確に調整するようにそれぞれ用いられる。
【0157】
これにより、表2に示すように、EFM符号化ルールによってマークサンプル量の分布に従って、3つの重み付け係数が、3T、4T及び5Tマークのサンプル分布を記述するために規定することができる。cp=0.3l×0.31=0.096は、パラメータcによって直接的に影響を与えられる3Tマークのサンプル量の割合を示している。dp=0.22×0.22=0.048は、パラメータdによって直接的に影響を与えられる4Tマークのサンプル量の割合を示している。fp=0.17×0.17=0.029は、パラメータfによって直接的に影響を与えられる5Tマークのサンプル量の割合を示している。
【0158】
従って、式(11)によって表されるように、マーク・ランレングスの変化量と物理的なマーク長さの変化量に対応する変換行列は、次式のように表される。
【数18】

【0159】
実施例Aに用いた方法と同一の方法によって、パラメータc、d及びfを同時に最適化することができ、これにより、3Tスペースに隣接する3Tマークの書込みと、4Tスペースに隣接する4Tマークの書込みと、5Tスペースに隣接する5Tマークの書込みとを特有に制御できる。
【0160】
本発明の複数の実施例について図面を参照して上述したが、これらの実施例及び図面は、本発明の性質、内容及び応用を示す目的のためだけのものである。当業者にとって、上述に基づいて様々な変更及び修正をすることは明らかであり、本発明の趣旨と範囲内にそのような変更及び修正があるべきである。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】超速型CD-RWシステムにおける3T、4T及び5Tマークを書込むための“2T書込みストラテジ”のレーザパルスターンである。
【図2】光ディスク書込みシステムにおけるマーク・ランレングスを取得する模式図である。
【図3】高周波信号の変化量によって生じるスライス・レベルの再バランス化の模式図である。
【図4】本発明による光ディスク書込みパラメータ最適化装置の構造図である。
【図5】本発明による好適な実施例に従って動作するフローチャートである。
【図6】パラメータcの強度(ns/mW)を決定する試験及び測定値である。
【図7】パラメータdの強度(ns/mW)を決定する試験及び測定値である。
【図8】パラメータfの強度(ns/mW)を決定する試験及び測定値である。
【図9】3T、4T及び5Tマークのランレングス逸脱を一回最適化した後の結果を示す図であり、と、光ディスク書込みシステムによって設定された最適目標が標準によって指定される各マークの標準長さとなる様子を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの書込みパラメータを最適化するシステムであって、
マーク・ランレングスの変化量を取得する手段と、
前記書込みパラメータの変調量を決定する手段と、
前記書込みパラメータを変調する手段と、
を備える光ディスク書込みパラメータ最適化システム。
【請求項2】
前記書込みパラメータが、最適化を必要とするか否かを判定する手段を更に備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
光ディスクの書込みパラメータを最適化する方法であって、
(a) マーク・ランレングスの変化量を取得するステップと、
(b) 前記マーク・ランレングスの変化量と前記書込みパラメータの変調量との間の関係に基づいて、前記書込みパラメータの変調量を決定するステップと、
(c) 前記書込みパラメータを変調するステップと、
を含む光ディスク書込みパラメータを最適化する方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)が、
(b1)前記マーク・ランレングスの変化量と物理的なマーク長さの変化量との間の関係に基づいて、前記物理的なマーク長さの変化量を決定するステップと、
(b2)前記物理的なマーク長さの変化量と前記書込みパラメータの変調量との間の関係に基づいて、前記書込みパラメータの変調量を決定するステップとを更に含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b1)の前記マーク・ランレングスの変化量と前記物理的なマーク長さの変化量との間の関係が、
前記マーク・ランレングスの変化量における前記物理的なマーク長さの変化量の影響関係を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記マーク・ランレングスの変化量における前記物理的なマーク長さの変化量の影響関係が、
前記物理的なマーク長さの変化量と前記マーク・ランレングスの変化量との間の関係と、
前記マーク・ランレングスの変化量における前記物理的なマーク長さの変化量の影響度の特性量とを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記影響度の特性量が、
前記マーク・ランレングスの変化量における前記物理的なマーク長さの変化量の影響係数を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記書込みパラメータが、複数の書込みパラメータを含む請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記マーク・ランレングスの変化量と前記物理的なマーク長さの変化量との間の前記関係が、
【数1】

となる変換行列を含み、
最適化を必要とする前記書込みパラメータが、j=1,2,…Mであり、
dPhyLjが、最適化を必要とするj列目の書込みパラメータによって直接的に影響を与えられ、前記マークの前記物理的長さの変化量を表し、
ΔMarkRLiが、前記マーク・ランレングスの測定されたi行目の変化量を表し、
前記変換行列において、前記係数Vijは影響係数であり、パラメータjがマークiに直接的に影響を与えるときは、係数Vijが、マークiにおけるパラメータjの影響Vij=−jp+1を表し、パラメータjがマークiに直接的に影響を与えないときは、係数Vijが、Vij=−jp+1を表し、
jpが、全マークサンプルに対して、最適化を必要とする前記j列目の書込みパラメータによって直接的に影響を与えられる前記マークサンプルの数の割合を表している、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記影響係数の前記変換行列の行列式が、ゼロと等しくなく、
【数2】

として表される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(b2)が、
(b2.1)前記書込みパラメータ(r)を最適化するために複数のパラメータ値(Pr)で書込み試験を行うステップと、
(b2.2)ΔMarkRLsと前記パラメータ値(Pr)との間の関数関係ΔMarRLs = f1(Pr)を得るために、前記書込みパラメータ(r)によって直接的に影響を与えられる、前記マーク(s)の動きの長さの変化量ΔMarkRLsを測定するステップと、
(b2.3) ΔMarkRLtと前記パラメータ値(Pr)との間の関数関係ΔMarRLt=f2(Pr)を得るために、前記書込みパラメータ(r)によって直接的に影響を与えられる、前記マーク(t)の動きの長さの変化量ΔMarkRLtを測定するステップと、
(b2.4)前記マークの前記物理的長さの変化量(dPhyLr)と最適化を必要とする前記パラメータ値(Pr)との間の関係dPhyLr = ΔMarkRLs−ΔMarkRLt = f1(Pr)−f2(Pr) = f1-2(Pr) = f(Pr0+dPr)を得るために(ここに、Pr0は、前記書込みパラメータ(r)の元値であり、dPrは、前記パラメータ値の変化量である)、前記ステップ(b2.2)の結果から前記ステップ(b2.3)の結果を差分するステップとを含む請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記光ディスクにランダムデータを書込むステップを更に含む請求項3に記載の方法。
【請求項13】
継続的な最適化を必要とするか否かを確認するために、予め定められた最適目標で、各マーク・ランレングスの前記変化量を比較するステップを更に含む請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記継続的な最適化を必要としないときは、光ディスクに書込まれるパラメータ値として現在のパラメータ値と定めるステップを更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記書込みパラメータが、レーザパルスのパワーを含む請求項3〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記書込みパラメータが、レーザパルスの開始時間及び終了時間を含む請求項3〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
方形波形状の書込みストラテジ、“ドッグ‐ボーン”波形形状の書込みストラテジ、“1T書込みストラテジ”、又は、“2T書込みストラテジ”が、前記光ディスク書込みに採用される請求項3〜14のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−512651(P2007−512651A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540748(P2006−540748)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052495
【国際公開番号】WO2005/052934
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】